Saturday, August 31, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (6)

前回のポスティングでは法人税率に触れたんで今回はどちらかというと個人所得税関係。法人税が歳入に占める割合が8%程度なのに比べて2023年会計年度ベース(2023年9月期)で個人所得税は$3,713Bで歳入の80%以上を占める。正確にはこの金額所得税に加えて社会保障税(FICA・SECA)が含まれる。個人所得税は歳入への影響が大きいことに加え、有権者を直撃する税金なんで当然市民の関心は高い。

2025年TCJA CliffはGILTI、FDII、BEAT、一括償却とか法人税周りの規定も対象だけど、金額的にもポリティカルにも個人所得税の規定をどうするかがフォーカス。一般有権者には「GILTIレートを16%に引き上げずに13.125%に据え置くことにしました」って言っても「ギルティー?なにそれ?」ってなって琴線に触れることはない。「個人所得税率を39.6%に引き上げずに37%に据え置くことにしました」って言う方が分かり易いし選挙でも受ける。

個人所得税と法人税で歳入の90%を占めるけど、残りの10%は何かっていうと関税、Excise Tax、連邦準備委員会の歳入などで構成される。この数字だけ見てもトランプの思い付きの「所得税を関税に置き換える」っていうアイディアはDOA。でもタイムマシーンで前回触れた憲法の16th Amendmentが批准された1913年当時に戻ると連邦の歳入の90%は酒税(Liquor、Beer、Wine)そしてタバコ税っていうExcise Taxが占めていた。16th Amendmentは最後まで抵抗したWyoming州(さすが!)が世界大戦はもはや不可避っていうプレッシャーで折れて批准が達成された。それでIncome Taxが逆に90%を占めるに至る。Wyoming州って全米で最初にLLC法を導入したり実はデラウェア州よりも先を行く州。今でも個人所得税も法人税もない。冬もう少し温かければいいんだけどね~。

YellowstoneのNorth Gateから北上して一旦Wyomingの州境を超えてMontana州のLivingstonっていう宿場街みたいなところでSteak食べて一休。Livingstonの数ブロックで構成されるDowntownは雰囲気あるよね。たまに貨物列車が通過する音とか、なぜかいつも商店街(?)の向こうにたまたま満月が見えて。で、Interstate 90で一気にBillingsへ。その先の分岐で94に行くか90のまま行くか迷って、でも90にStayして、そのまま法定速度80Mなんで10%くらいの猶予を加味して90M(それでも周りが広すぎてバックしてるとは言わないけど止まってるみたい!)で南下する感じで突き抜けて再度Wyoming州経由South Dakota州まで突き抜けるコースは何回体感してもLiberateされるんで機会があったら皆さんもぜひ。Interstate 90ではどこから出現するのか分からないけど急に後ろにHighway Patrolが居たりするんだよね。The Wyoming Highway Patrolだ。レンタカーでランダムのFlorida、Georgia、Alabamaとかのナンバープレート(レンタカーに多いよね。特にFlorida)だったらいいかもしれないけど、自分のマシーンでNew Yorkプレートだと何か一本釣りされた感じ。

1918年に憲法18th Amendmentが批准されて米国は禁酒法時代になり、その後、憲法21st Amendmentで1933年に禁酒法が撤廃されるまでthe Wyoming Department of Law Enforcementは禁酒法違反を取り締まるのが唯一の使命だったっていうから凄い。1933年に禁酒法が撤廃されると同時にDepartment of Law Enforcementは解体されて、「the lives, property and constitutional rights of all people in Wyoming」を守るっていう使命のWyoming Highway Patrolが誕生して今日に至る。常に憲法に忠実な使命だ。

で、Pulloverされて路肩に停車。そこまではどこの州のInterstateでも同じ。Wyoming Highway Patrolに免許証みせて、「何マイルで飛ばしてたと思う?」って聞かれたら「う~ん、よく見てなかったんですが89マイルくらいでしょうか…?」とか言うと「ははは、ほとんど100マイルだよ。Good Try」ってなる。「ええ~空いてたんでついうっかりしていました。実は今日中にMount Rushmoreに着きたくて焦っていました」(Mount Rushmoreは少なくとも夏は11時までPublicにオープンしている)とかいう展開になり「それは急いだほうがいいね。だけどスピード出し過ぎないように。Good Luck。Interstate 90のトラフィックにのるまで先導してあげましょう」とかで一件落着になる。いつもなるとは限んないんで責任持てないけどね。

米国って禁酒法が終わってまだ90年しか経ってないんだよね。NYCでも「Speakeasy」バーが今では観光ノリで残ってるから、Mount RushmoreからSioux Falls(スーフォールスって読みます)、La Crosse、Madison、Chicago、Youngstown、とか通ってようやくLincoln Tunnel抜けてManhattanに戻ったらWyomingの景色を思い出しながらSpeakeasyでWind-downというかChillしてみてね。この旅程ある程度ゆっくり消化するにはYellowstoneから始まっても最低1週間は必要。西海岸から出発する場合は2週間ほど見ておくと随所で楽しめる。NYCから出発して西まで行って帰る往復だと、道中WFHで仕事しながらだろうから1か月以上必要かもね。でも価値あるからぜひ。

Tax Credits

ハリスの個人所得税関係の提案はWealth Transfer策のRefundableクレジット系が多い。トランプ提案同様、財源を含む具体的な詳細は分からず選挙後の実効性は不明。17歳未満の扶養子女に関して認められる個人所得税の税額控除(Child Tax Credit 「CTC」)を$3,600へ引き上げ、さらに新生児は$6,000というスーパーサイズCTC。CTCは所得制限があったり還付ポーションがあったりそれ自体複雑な規定だけどCTCセッションじゃないんでCTCの金額面にフォーカスする。

もともと$1,000だったCTCは2017年のTCJAで$2,000に増額されている。ところがこの$2,000のCTCも2025年TCJA Cliffのひとつで何もしないと2026年から自動的に$1,000に戻ってしまう。それは大変っていうことで両候補が自分が当選したら$1,000に戻さないどころか増額しますっていう提案をしているというのが背景。実はCTCにはもう一つ特筆すべき展開があって実は今年下院を通過した法案パッケージにCTCの$2,000引き上げが盛り込まれていた。The Tax Relief for American Families and Workers Actだ。この法案、CTCばかりでなくTCJA規定で2025年を待たずに既に自動改訂で憂き目にあっている規定の悪影響緩和が含まれてた。すなわち、R&D支出の資産計上の延期、100%ボーナス償却の復活、支払利息損金算入制限163(j)のベース額EBITをEBITDAに戻す、というビジネス関連のGoodiesだ。さらに条約を締結できない台湾に恩典を与える規定も入っていて盛りだくさんな法案だった。下院では両党、特に中庸派からサポートされて可決された。民主党の急進派はビジネスに甘い、共和党のFreedom Caucus派は就労義務に近い要件を直近過年度の状況を適用して判断できるCTCは勤労意欲にマイナス、という異なるイデオロギーで反対に回っていた。上院では共和党の反対で否決されている。

もともとサンダースよりも急進派の上院議員として知られるハリスがCTC増額を提案するのは自然。VP候補のワルズもミネソタ州がTrifectaになった段階で$1,750っていう全米で最も寛大な前払い・還付CTCを州レベルで可決させている。さらにワルズは州居住者240万人にRebateを交付したり、その財源として高額所得者の控除を減額、事業に対してはGILTIを州税にも導入、高額投資所得に1%のInvestment Tax導入、とカリフォルニア州をも超えるWealth Transfer派として知られているんでハリスの提案と整合性があるポリシー導入の実績を持つ。ちなみに「ミネソタ州でGILTI合致して歳入に大きく寄与するようなMNCとかあるんだっけ?」って不思議に思うかもしれないけど、実はUnited Health Group、Target、Best Buy、3Mなどはミネソタ州が本店所在地だ。ただ、これらのポリシーの影響で個人の高所得者は隣のSouth Dakota、南のTexasやFloridaのような個人所得税のない州に移住したケースが多いというセンサスデータがあるようだ。州税だったら引っ越せば解決するけど連邦で同じことされると市民権返上でもしない限り移住で税負担をManageすることはできない。

一方不思議なのはトランプ陣営。VP候補のJDバンスがOver-the-topの$5,000CTCを提案している。バンスは$2,000のCTCを否決した上院の議員。当人は上院投票の日、選挙活動でDCにいなかったということで投票はしてないらしいけど、この手の歳出に慎重な共和党支持の有権者からしてみると何ソレって感じだろう。寛容なCTCや同様のポリシーを支持するんだったらわざわざトランプに票を投じなくてもハリスに入れたらいい訳だからこれで有権者受けするんだろうか。しかもCTC増額を敢えて先制攻撃したのはバンス。ハリスはお株を取られては大変と、慌てて反撃に応じるがさすがのハリスもAcross-the-boardに$5,000は無理と判断したのか$3,600を提案。$5,000って聞いた後だと「結構セコイね」って感じるかもしれないけど、元々$1,000だからね。今でこそ時限立法で$2,000になっているけど。前回のポスティングで触れたポール・ライアンの「ポリティカルに延長せざるを得ない規定は時限でもいい」っていうコメントは言い当ててるよね。でもバンスが$5,000ってAll-Inだったんで何とかRaiseしないと急進派としては恰好つかないってことで新生児には$6,000を提案している。コストは組み合わせ次第だけと$1.3Tは下らないと言われてて「まるで軍拡戦争」って揶揄されたりしてる。

民主党がTrifectaになったらCTC増額は十分にあり得るけど、共和党がTrifectaになったからと言って$2,000に躊躇してたんだから$5,000のCTCになるとは考え難い。勝敗を左右するSwing Stateで受けたいっていうのは分かるけど党や候補者としてどんな国にしたいかっている大枠ポリシーのフレームワークの中で規律ある提案にしないと信憑性に欠ける。

ハリスは他にもEarned Income Tax Credit(EIC)から扶養子女要件撤廃、初めてマイホームを購入する者に$25,000のクレジット等を提案している。これらの恩典はもちろんだけど所得制限が設けられるんで一定の所得に達するとPhase-outされ最後は恩典ゼロになる。

ということで今日は両候補とCTCでした。

Thursday, August 29, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (5)

元民主党でIndependentとして大統領選に出馬していたRobert F Kennedy Jr. (RFK Jr.)が撤退そしてトランプ公認を発表したり、まだまだ紆余曲折が続く大統領選挙。RFK Jr.はその名の通りRobert F Kennedyの息子だからトランプを公認とはね…。

そんな中、税制動向にかかわるコメントもちらほら出てきたんで代表的なものに触れておきたい。ただ前回触れた通りTrifectaにならないと税法は通らないし、またさらに言えば、Trifectaを得たとしても大統領の意向が最終的な法律に反映されるとは限らない。選挙活動中の公約は選挙目的だから実権を握った後のスタンスと同じじゃないし現時点のポリシー提案はディスカウントして聞いておくべき。特に今回の両候補の話しは…。

法人税率

ハリスは選挙運動広報のJames Singerを通じて法人税は28%に引き上げる方針を確認。もともとバイデン政権が28%を目指していたんで想定通り。

法人税率ってヘッドライン的に注目度合いは高いけど、米国の歳入に占める法人税の割合は実は高くない。2023年会計年度ベース(2023年9月期)でトータル歳入は約$4.5Tで、うち法人税は$368Bだから8%程度だ。一方個人所得税が$3,713Bを占める。法人税は21%だから単純計算すると法人税1%当たり$17.5Bの歳入になる。ってことは7%Headlineレートを上げると$122.5Bの増収。10年間で$1.2Tだからハリスが提唱する諸々のGoodiesの一部はファイナンスすることができる。

法人税が歳入に占める割合が低いのは、Corporationっていう形態自体が少ないのが大きな理由。LLCでCorporation同様にLimited Liabilityのシールドが得られ、ケースバイケースだけどClosely Heldの局面で1人のメンバーが持つLLC持分が差し押さえられたりしても、他メンバーの視点からLLC側のProtectionはCorporationより強力なケースもあるし、企業統治もCorporationよりかなりFlexible。LLCっていうのはCorporate Lawで統治が規定されるCorporationと異なり、メンバー間の契約で統治形態を含む権利関係が決まる。LLCは契約のCreatureだ。守秘面でもベールに包まれてるし、なんと言ってもCorporationと違ってパススルー課税の選択が可能。LLCのようなパススルー主体は最終的に所得が個人にフローアップしていくことが多いんで歳入は個人所得税としてカウントされる。もちろんCorporateベンチャーもあるんでそれらはJVメンバーのCorporateに配賦されるけどね。

ちなみにLLCが秘密のベールに包まれてるっていう点だけど、LLCはDelaware州等の州会社法(LLC法)に基づいて組成されるんで、一般市民ばかりでなく連邦政府にも実態が分からない。そこでCorporate Transparecy Act(「CTA」)ってい法律ができ行政府の複数の省庁で構成されるFinCENが規則を策定して、連邦政府にLLCを含む主体の最終的な個人Beneifical Ownerを開示させようとしてる。連邦と州の権限を規定するFederalism(およびAntFederalism)の観点から連邦にそんな権利はなく憲法違反っていう訴訟がアラバマ地方裁で起こり原告が勝利している。当訴訟の原告以外には判決の効果は及ばないけどCTAの行方は不透明。この手の訴訟や議論は他国では考え難いかもしれないけど、米国は元々州の集まりだった状態で各州が憲法を批准してようやく立派な連邦政府ができあがって来たっていう歴史に基づき連邦政府の権限は限定的。税金にしてもその歴史からWealth TaxみたいなDirect Taxは負担額を各州の人口数でApportionしないといけないとか(実質そんな法律は不可能)、1800年代から連邦の課税権には紆余曲折があって、1895年には究極の最高裁判決Pollockで止めを刺され、1913年の16th Amerndmentで連邦にIncome taxを徴収する権利(正確にはApportionなしでIncome taxを課すことができる権利)が認められるに至っている。この辺りの歴史から税制を取り巻く法的環境が他国とはかけ離れてて、国際合意とかで他国がいろいろ決めても連邦憲法的にできることとできないことがある。例えばUTPRなんかは仮に16th AmendmentはパスしてもSubstantive Due Process条項違反で違憲になる可能性があるんじゃないかなって思う。2017年のCFC留保所得一括課税の合憲性が問われたMooreケースも米国ならではの争いだろう。Mooreは超Deepで面白いからそのうちね。個人的には口頭弁論(Oral Argument)まで聞いたくらいのオタクぶりだからね!他にも最高裁の口頭弁論はThrillingなんでLoper Brightとかも聞いたけど憲法論は歴史の勉強にもなる。いろんなケースの口頭弁論聞き過ぎて声で9人のJusticeの誰が話してるか分かるまでになった。SotomayerとKagan、またRobertsとAlitoの区別は注意して聞いてないと分かり難いけどね。声や話し方が似てるっていうのもあるけど、質問内容的にこの組み合わせは似てるからね。

ということでCorporationの話しに戻るけど、上場企業(PTPはQualifying Income条件を満たさないと法的形態はパートナーシップやLLCでも税務上は強制的にCorporate扱い)、VCファンドからラウンド毎にファンディングしてもらうスタートアップ、日本を含むInbound企業の外国親会社に所得がパススルーして欲しくない米国現地法人(少なくともUpper TierのCommon Parent)とか、仕方なくCorporationにならざるを得ないケースを除き、わざわざ二重課税のCorporationを選択して事業を行うケースは少ない。結果としてCorporationの数は相対的に少ない。チョッと前になるけど、法人数と法人税額の日米比較とか2021年バイデン政権発足当時(こんな風に政権終わっちゃうなんて誰も想像しなかった頃。懐かしいね!)のポスティング「財務省によるバイデン「The Made in America Tax Plan」補足説明」で触れてるんで読んでみて欲しい。

軽くオサライすると、法人課税対象のC Corporation数は170万社程度(Tax Foundation調べ)。一方パススルー主体(S Corporation含む)は740万社、DREのオーナーを含む個人事業主2,300万人。一方日本は国税庁のデータによると法人数は約270万(最近のデータでは280万)って米国より100万社多い。日本の個人事業主の数ははっきりしないみたいだけど、フリーランサーが1,000万人程度らしい(ランサーズ調べ)。数は変わってきてるだろうけど方向的に$368Bを170万社で割ると一法人当り$216K。日本の法人税は直近のデータで約147,000億円。為替レートが乱高下するんでいくらでドルに換算するべきか悩むところだけど150円換算すると$98B。280万社で割ると一法人当り$35K。米国の170万社にはMagnificent Sevenみたいな巨大な企業も含まれるんで平均出してもあんまり意味ないけど、歳入に占める法人税の割合を基に「米国企業は他国との比較でFair Shareを払っていない」っていうコメントは会社法その他の環境が違い過ぎて正しくない。

で、トランプの法人税率は?っていうと本人は20%がきりがいい、とか2017年税制改正のブループリントで最初に提案されてた15%に言及したりしているけど、まともな提案には聞こえずTCJAの21%温存が現実的だろう。後日話すけどTCJAの多くの規定、特に個人所得税関係が2025年末で自動的に失効する。TCJAのCliff問題だ。ただ、21%の税率は法改正がない限りPermanent。政策オタクで2017年税制改正を主導した一人ポール・ライアンが「新たな法律で延長できる可能性が高い規定は自動失効になっててもいいけど、ポリティカルに延長が困難であろう規定は自動失効させない」って趣旨の発言をしてたけど、なるほど予算調整法でできたTCJAでも21%はだからPermanentなんだね。

バイデンのIRAも予算調整法でエネジークレジット規定の多くは10年で失効するけど、CAMTはPermanent。ただ、CAMTは未だに規則案も出てないほど非実務的(?)な規定だし、支払ったCAMTは後年クレジットが取れるんであくまで時間差。BookベースはWorkしないから1987年~89年だけの短命に終わった以前のBusiness Untaxed Reported Profits (BURP) みたいに予算調整法云々とは関係なくそのうち廃案になるんじゃないかって思うけどね。BURP(バープ=おくび、あいき、つまり「げっぷ」)っていう略が全てを物語ってる感じ。規則の出来や内容はともかくCAMTは「キャムティー」だから略は可愛いよね。GILTIにしてもBEATにしても略した時に何になるかを考えて命名する近年の規定と違って1980年台後半はそういうどうでもいい観点はなかったのかもね。

トランプはCAMTの廃止には触れていないんで基本的には当面温存されるのかもしれない。ちなみにCAMTは結構な歳入になるってプロジェクションされてはいたけど、前述の通り将来年度にクレジットになるんで歳入増は初期的な現象。単年ベースで最高時に$35B程度って言われてる。だったら一層のこと法人税率1~2%引き上げてCAMT撤廃してくれた方がコンプライアンス負荷面からマシって思う大企業も多いのでは。米国にはないけど他国のピラー2対応とか税務室が充実しているはずの米国企業もさすがにコンプライアンスは限界に達してる感がある。

ということで今日は法人税比べでした。

Friday, August 9, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (4)

前回と前々回は大統領候補者を取り巻く現状(混乱?)を触れるに留まってしまい、税制動向に話しになかなか至らなかったけど、今回から税制および関連のポリシーに関して。

三権分立と米国議会制度

大統領選の話しをする際、僕が枕詞(?)みたいに必ず冒頭に触れるポイントに米国連邦憲法および議会制度(Congress)がある。Congressは欧州や日本の「Parliamentary」制度とはチョッと異なり、財務省や大統領府(ホワイトハウス)が属する行政府とは独立した立法府で、かつ立法府は各々独立した下院・上院で構成される。税制を含む歳入・歳出マターは下院で起草され審議の上法案が通ると、下院とは独立している上院が審議し、最後は同じ法案を両院を通過しないと法律にならない。立法は行政府とは完全に独立していて大統領でも直接的な関与はない。大統領は両院を通過した法律を署名する・署名しない(拒否権)という権限を持つ。大統領が拒否権を行使した法案は上院の2/3の票があればOverrideできる。

法律は議会のみが制定っていうポイントは、行政府に属する官僚チームは選挙で選ばれてる訳じゃなくて、また終身雇用的に存在することから、一般市民に説明責任がなく必ずしも市民の利益を第一に考えてポリシー策定するとは限らない、大げさに言えば市民の意思に反したポリシーや規則で一般市民の自由が束縛されたり奪われるリスクを考えての憲法上の対応策。共和制ローマやマグナカルタの影響も受ける連邦憲法の三権分立や法の支配を実現するための一つの決め事だ。官僚の人が悪者ってことではなく、歴史の教訓から人間のサガとしてそうなりがちなんで制度的にストラクチャー面から牽制する仕組み。

ただ、行政府のテクノクラート系の人材は専門分野の知識が豊富なんで、専門知識が求められる際には議会が認める範囲で規則策定権が与えられる。税法だと連結納税規則なんかがそうだよね。条文section 1502そのもの読んでも何も分かんないもんね。他にもCAMTとか行政府に丸投げに近い形で規則を策定させるようになる。しつこいけど議会が規則策定権を与えないと行政府は規則は作れない。また議会が条文で与えた範囲のみで規則を策定する必要がある。この範囲をどう判断するかは常にグレーだけどね。Anti-Abuseとかどこまで策定権が与えられてるのか主観的だし。2016年のオバマ政権末期に最終化されたSection 385のFunding規則とか、条文でそんな権限付与されてるかな~?って思うよね。ちなみにSection 385っていうのはそれだけではOperateしてなくてDebt/Equity Classificationの判断基準にかかわる規則策定権を財務省に与えてるのみ。にもかかわらず出てきた規則はDebt/Equity Classificationの判断基準は一切規定せず(この点は未だに判例ベースのCommon Law)、Common LawでDebtと認められた債務をBase Erosionの観点からEquityとみなす、っていう全然異なる趣旨のもの。たまに「米国税法のDebt/Equity Classificationはsection 385で検討」みたいなコメントを見ることがあるけどそれは不正確で、米国税法のDebt/Equity ClassificationはCommon Lawで判断する。債権の性格的にCommon LawでDebtになって(その時点で本来のDebt/Equity Classificationの検討は終了)初めてSection 385のBase Erosion規則、Funding規則の適用となる。すなわち税務上も債権はDebtという性格が認められるけど、借りたお金の使途が気に入らないんで(Base ErosionのためにDebt Push-Downされている)Equity扱いするという順番。Funding規則のハードルを越えるとめでたく(?)次に163(j)その他の多くの支払利息損金算入制限を検討できることになる。またIRAで導入された自社株買い懲罰課税(Excise Tax)の規則案に盛り込まれてる外国親会社が自社株買いしてる場合のFunding規則とかも権限逸脱有力候補だろう。自社株買いの規則は一部最終化されてるけどFunding規則は未だに案の状態。「それはないでしょう」みたいなコメントが殺到し、財務省の方で検討しているんだけど、その間に後述のLoper Bright判例が出てしまったんで冷却効果大で真剣に見直してくれるといいけどね。どちらもたまたま「Funding規則」って名前だけど、Fundingっていう名の付く規則はロクなのがないね!他にもFIRPTA大特集で触れた「QFPFはsection 897目的で外国法人ではない」って条文が名言しているのに規則では外国法人になったり。DC REIT判断時の「C CorporationのLook-throughルール」もかなりArbitrary。って愚痴(?)はこの辺で止めときます。

議会と行政府の関係は、憲法の理想からだんだんぶれてきていて行政府の力が大きくなってきてた。この辺りの一部行き過ぎとも言える規則策定時の行政府裁量拡大に2024年に複数の司法のメスが入っている。1984年の最高裁判決Chevron以降、議会が制定した法律が不明確だったり法律が取り扱いに言及してないケースで、司法判断時に法律の解釈は行政府による解釈を尊重するっていう決まりになっていた。Chevron原則だ。この原則下では実質、行政府が立法してるような結果となるケースも多く、「そんなこと法律のどこに書いてあんの?」とか近年はその傾向に拍車が掛かってた。こんな状態、すなわち行政府が巨大になり自らの世界で存在している状況を米国で「Administrative State」って言ったりする。一般的にはFDRのNew DealでAdministrative State的なポリシーが一定の完成をみたって言われていてその後もUp and Downはあるとは言えあの米国連邦憲法下でも人間というか国家のサガ的に拡大が進んできて、それと同時に連邦政府の歳出も増える一方。Administrative Stateと似たようなポリティカル表現に「Swamp」とかもあるし、更に陰謀めいてくると「Deep Purple」じゃなくて「Deep State」っていうのもある。これらは一般市民とはかけ離れたところで国が運営されている状態だ。オフィシャルな用語じゃないんで意味の範囲はルースだ。ちなみにBEPS 2.0で「なぜ米国は一旦合意しておいて梯子を外すのか」という質問を受けることがあるけど、憲法上、立法には関与がない行政府が他国と約束したところで実行する権限を持っていないんで本当の約束にはなり得ないよね。

で、つい最近Loper Brightっていう最高裁判決でChevron原則が撤廃された。敢えて略して言うと、この判決は連邦憲法成立当時目指されていた三権分立ストラクチャーに忠実に、立法は議会、Executive Branchの行政府は法の施行、法律が不明確だったりSilentだったりする場合は司法府の裁判所が判断、という体制に国家統治を戻したっていうもの。また、ほぼ同じタイミングで最高裁はCorner Postっていう判決も下し、行政府の規則等で損害を受けたケースの時効成立有無に関して、従来の規則最終化からタイミングを計るっていう考え方を、そうではなく行政府の規則で損害を受けた時点を起点にするとしている。多くの訴訟に繋がるかもしれないけど、規則は長年にわたって有効なものが多く、損害を受けるタイミングが規則最終化から3年とか特定の年数以内とは限らないし、また損害を受けないと訴訟を持ち込むためのStandingが生じないからCorner Postの判決は個人的にはそれはそうあるべきなんじゃないかと思うけどね。

Loper BrightとCorner Postの組み合わせ、さらにWest Virginia v EPAの「Major Decisions」原則、JerkesyケースにおけるSEC内部の裁決機関(Tribunal)違憲判決、とかで行政府の規則策定権を含む権限はかなり限定された感がある。このSECに対する判決は、Chevron原則時代の状況を考えると法律を策定・施行・法律違反かどうかの判断、の3つを全て行政府が担当していることになり得る状況にストップを掛けている。監査法人を監督しているPCAOBとかも同じストラクチャーなんで施行に影響があり得るよね。SECと違って直接連邦裁判所に訴訟を持ち込めないって聞いたことがあるんで、内部Tribunalで裁決できなくなると司法省に話しを持ってくのかな?複雑そうだよね。税法にかかわる憲法解釈ではMooreもあるしね(この件は選挙が落ち着いたら書くね)。憲法関係メガ判決連打のRoberts Court凄いよね。

税法を可決する議会も財務省の解釈が必ずしも尊重されなくなると、議会へのプレッシャーは高まる。すなわち、より強固な立法趣旨を残し、かつ条文自体曖昧な部分が少なくなるように努める必要が生じる。となると同じ税務のプロ中のプロIRSのChief Counsel Officeと並んで同じくプロの議会(「the Hill」)のJoint Committee等に属するの人材の活躍の場が増えるし責任重大になるね。IRAみたいに2週間でとりあえず可決、立法趣旨にかかわる記録なし、後は財務省お願いします、みたいなのはNGだね。

細かい制度上の話しはいろいろあるけど、税制は下院・上院を通過しないと成り立たないっていう点、またCongress制度では党議拘束がないので自分が属する党の議員が起草した法案に党議員が賛同するとは限らない、すなわち党内派閥の力関係や駆け引きが重要、っていう点、は税制審議を見守る際に必ず頭に置いておく必要がある。特定の党が両院を押さえていても、その党の議員が提出する法案可決に何の保証もない。多数党と他党の議席数差が僅少な場合には党内調整が困難を極めることも多い。同じ民主党でも今では主力の急進派とトラディショナルなリベラル(リベラルって今日日の民主党を描写する際には変な用語だけどね)では相当フォーカスが違うし、共和党のリベタリアン的なFreedom CaucusとCenter Right的な一派もそう。むしろ、両党の中庸派同士の方がポリシー的には合意できる部分が多いようにも感じることも少なくない。カリフォルニア州のような極端な左翼州、フロリダ州のような保守州(これも変な用語だけどね)以外ではむしろ両党中庸派のポリシーに賛同する一般市民が少なくないっていうのが肌感覚かな。

Trifecta

これらの点から大統領選挙だけにフォーカスして米国の税制を含む法律動向を考えても余り意味がない。シナリオは下院、上院、大統領府、っていう3府がどちらの政党(第三党がない前提で…)になるか、で考える必要がある。「組み合わせ」算数的には8通りあり、微妙なダイナミクスを考える際には8つのシナリオを見てみるのも面白いけど、ここでは「3府一党支配(2党なので2通りの可能性)」とそうでない場合の計3通りに分けて考えてみたい。ちなみに3府を一党が支配する状況を英語で「Trifecta」(トライフェクタ)って言うんで、毎回「一党が3府云々…」で書かなくていいようにここではTrifectaって用語を使用する。Trifectaは州政府の3府(大統領の代わりに州知事)にも同様に適用があって、憲法で一般市民の生活にかかわる多くの法律が州レベルのものなんでDay-to-Dayの生活にはこちらも重要。パームツリーが風に吹かれてて写真で見ると似たようなカリフォルニア州(大きな政府で官僚の力が強く規制が多く高税率)とテキサス州やフロリダ州(個人自由主義で(個人所得税は)無税)とか別の国みたいだもんね。これは米国の良さのひとつ。国家主権のような性格を持ってて各々異なるポリシーを持つ州が国内にあるんで、市民は嫌なら他の州に引っ越すことができる。憲法上、州間の移動は自由で他州市民に差別的な法律を適用することも禁じられてる。企業も同じ。Tesla、Space X、最近ではChevronがカリフォルニア州からテキサス州に脱出したり、Intelはカリフォルニア州からナッシュビルのあるテネシー州に脱出してる。これらは設立州ではなく本店所在地の話し。

またSuper-Trifectaっていう用語もあって、これは単に3府を制してるばかりでなく、Super-Majorityを有している状況。厳格な定義はないかもしれないけど、連邦レベルでは上院で(予算調整法を介した特殊な51票ベース以外の通常の法案可決に必要な)60議席を握っている状況と考えればいい。真っ二つに国民のイデオロギーが分かれがちな今の米国で上院60議席確保はなかなかのチャレンジなんで、ここでいうTrifectaは上院過半数で考えておく。これが具体的に意味するのは、税制改正は予算調整法を介してのみ可能ということ。予算調整法には10年間を超えて赤字になってはいけないとか多くの歯止めがあるんで調整が困難を極めるよね。ちなみにIRAもTCJAも予算調整法を利用して法制化されている。

さらにTrifectaになったからと言ってその党の多数や大統領府が希望する内容の法案を可決できるとは限らない。BBBAはその内容的に共和党の賛成は1票も想定されてなかったんで、民主党は上院で1票も失えない状況だった。長期に亘る党幹部の説得にもかかわらずManchin、Sinema両上院議員が首を縦に振らず結局、Skinny Downバージョン(って言ってもまだ巨額の歳出)になったIRAに落ち着いている。ちなみにManchinもSinemaも民主党を離脱しIndependentになり、今回の選挙には出馬していない。Manchinは一時第三党(No Label)の大統領候補になるんでは、っていう憶測があったけど結局、No Label自体徹底的に潰されてしまった。共和党も2016年にはTrifectaを実現し、「オバマケア廃案」と「減税」に着手したものの、党内調整が難航し「オバマケア廃案」は結局は失敗に終わっている。減税も当初の法人税15%で完全なテリトリアル課税でSub F廃止、または法人税とは言え消費税に近いDBCFTに全面置き換え、等の野心的なアイディアは頓挫し、既存の法人税にオーバーレイする形でTCJAになっている。

トランプ政権下の税制および経済ポリシー

トランプが当選した場合、どんな税制になるかは共和党がTrifectaを実現できるかどうかに掛かっている。民主党が2020年から2年のTrifectaをフルに活用してインフレ覚悟で巨額歳出を伴うIRAを通したのを目の当たりに、共和党幹部的には前回の2020年から2年のTrifecta時にそのメリットを十分に活用できなかった反省があり、「今度こそ」という勢いで新人も少なくない議員に予算調整法の枠で可能なこと、そうでないこと、等のトレーニング中。「Team of Vipers」っていうノンフィクションを読むと2020年時のオバマケア廃案を目指してた時代のホワイトハウス内のダイナミクスが垣間見えて面白い。ただ本や報道は全てそうだけど、著者の視点・イデオロギーに基づく描写っていう点は常に忘れないように。

トランプは規律に基づく強固な信念に基づくポリシーがあるっていうよりも、小さな連邦政府・再度強い米国っていうテーマ内で場当たり的なアイディアが多い。ベガスの集会で急に「チップ(半導体ではなくサービスに対して手渡すTipのこと)は非課税」とかシニア層には「公的年金受給は非課税」とか言い出したり、「法人税は20%っていうのが数字が丸くていいね」とか「15%なんかどうか?」とか、終いには「所得税は撤廃して代わりに関税で歳入を上げる」とか英語で言うところの「All over the place」。

ということで、次回のポスティングではこれらのトランプが「思いついた」アイディアの検証と小さな政府に期待するシンクタンク等の非公認アイディアに触れてみたい。

Sunday, July 21, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (3)

ええ~、つい数時間前に反乱を起こしてる民主党議員とバイデン推進一派との確執でバイデンが持ちこたえるかどうかはここ数日が勝負ってポスティングしたけど、その間にバイデンやっぱりDrop-OutっていうBreaking Newsが入ってきた。数時間の勝負だったんだね。

で、後任に注目が集まるけどテクニカルには白紙撤回。バイデンは副大統領のハリスを支援表明。ただ副大統領だからって自動的にバイデンの後任になる訳ではない。他にも以前から噂されてた左翼州知事たち、ミシガンのウィトマー、イリノイのプリツカー、カリフォルニアのニューサムとか。バイデンが集めた選挙資金はバイデン・ハリスチケットで集めたものなんで、ハリスであれば全額自由に使えるとのこと。他の候補者になる場合にはそうはいかない。下手すると返金?

税務面では誰になってもバイデンと大差ないだろう。取り急ぎ。

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (2)

前回のポスティングで触れた通り、天の神様の言う通りシュシュシュのシュで今回から2024年米国選挙とその後の税制やM&A動向に関して軽く特集することにしたんだけど、夏になったのをいいことにNYC、中西部、フロリダ、西海岸、日本とか各地でかまけてたらあっという間に1か月経ってしまった。

その間、6月27日にはアトランタでトランプとバイデンの大統領ライブ討論会があったけど、皆様もご存じの通りバイデンは支離滅裂。テレプロンプターで側近が書いた台本を読まないとまともな話しができない実態を世界中の人々に露呈してしまった。実際にはテレプロンプターがあっても棒読みしてるだけなんで、台詞を読むばかりでなく「演出その他の説明」もそのまま読んじゃったりする。これは冗談ではなく「ここでチョッと休止(Pause)」、「ここで引用終わり(End of Quote)」「人物の姓(Last Name)」とかをそのまま読むんで痛々しいというか聴いてる方が苦しい。

NATOサミットに至ってはウクライナのゼレンスキー大統領を紹介する際に「それでは皆様、強固な意志を持って勇敢に戦うウクライナ大統領、「プーチン大統領」をお迎えしましょう(「 I want to hand it over to the President of Ukraine, who has as much courage as he has determination, ladies and gentlemen, President Putin!」)」(苦笑)となってしまった。その後の会見ではハリス副大統領にかかわる質問に「私はトランプ副大統領にはいつ大統領になっても任務を遂行できるという完全な信頼を置いているからこそ副大統領に選んだのだ(I wouldn’t have picked Vice-President Trump to be vice-president if she was not qualified to be president)」とかもう無茶苦茶。人間、誰でも間違えはあるけど、ウクライナの大統領を戦争相手ロシアのプーチンって呼んじゃったり、自分の副大統領を対戦相手のトランプって間違えちゃったりするのは間違いの鉄人領域。Deep PurpleのギタリストをJimmy Pageとか余りに違い過ぎて間違いたくても間違えられないもんね。

で、散々な結果に終わったライブ討論会直後から民主党内にはバイデンでは不味いのではないかっていう声がちらほら出てきた。この展開に関して逆に不思議なのは、そんなことは前から分かってたことで大統領選候補を正式に任命する民主党全国大会やオハイオ州のルールの関係でその前にオンラインで指名するタイミング間近のこの期におよんで急にパニックになってる点。日頃からバイデンと接してるホワイトハウス側近、民主党幹部や党OB重鎮達は日常のやり取りその他からバイデンの支離滅裂ぶりは既に百も承知のはず。バイデンと接した外国の首脳からも懸念は漏れ伝わってきてた。にもかかわらず4年間に亘りその実態を国民にひた隠しにし、ホワイトハウスのプレス担当のKJPは討論会前まで「バイデンは機転が利き過ぎてて私でも付いていくのが大変なくらい…」とか記者に回答してた。KJPは50歳くらいで頭の回転も早いんで彼女が付いてけないはずはなく記者対策のスピンなんだろうけど。トランプ政権時代のケイリーとかもそうだけどプレスに吊るしあげられるからあのポジションも大変だよね。もちろんケイリーを責めるのはCNNやMSNBCで、KJPを責めるのはFox。分かり易いね!

で、ここ数週間の民主党の動きを見ていると、じゃあ討論会で実態が露呈されなかったらそのまま党一致でバイデンを大統領候補に指名してたってことになる。バレなきゃよかったってことなのかな?国民主権はどこに?

でも民主党はテレプロンプターがないと話しができないような人物をなぜ大統領にしたがってたんだろうか。副大統領、左翼州の知事数名、他に能力のある候補はいるだろうに。一般市民ではそんな真相は知る術もないけど、バイデン本人に判断能力がない方が反って裏から操り続け易くて、それを利用して利を得ることができる一派がいるって考えるのが自然だよね。それが奥さんのジルや妹のバル、息子のハンターとかのファミリー系なのか、オバマ時代からのブレーンのアニタやロン、議会対策のスティーブ(リチェティ)、Chief of Staffのジェフなのか、はたまた思った以上に過激な急進派政権になった点を評価し今後も同路線で行ってくれることを期待してるであろうマルクス・社会主義のバーニー一派なんだろうか。

失態が国民にバレて自分たちが選挙でとばっちりを食らっては溜まんないって心配し始めたSwing Stateの民主党議員とバイデン推進一派との確執が浮き彫りになる中、バイデンが持ちこたえるかどうかはここ数日が勝負だろう。民主党は自分たちが勝たないと「民主主義が終わる」って黙示録のように主張するけど、選挙で負けたらそれはそれで国民の判断なんで単に民主党のポリシーに国民が賛同していないってことで民主主義そのものは機能していることになるはず。それとも国民は良く分かってないからより優れた自分たちが一党支配的に権力の座に付いてないと民主主義じゃなくなるってことなのかな?何だかチョッと変だよね。

僕の周りを見ても両党や両候補者に嫌気がさしている中庸な一般市民は結構多く、第三の党(No Label)の立ち上げに期待してた向きもあったけど、これもつぶされてしまった。国民主権はどこに(Reprise)?

民主党がバタバタしてると思ったら7月13日にはトランプ暗殺未遂。屋外ラリーで演説中に130メートル離れた屋外会場の近くにある平屋建て倉庫みたいな建物の屋根からライフルで撃たれ、たまたま不法移民の数の説明をしてて会場のスクリーンに投影されたチャートの方を見るため横を向いた瞬間だったので弾は右耳上部を貫通したけど、頭を動かさなかったら頭蓋骨を直撃だっただろう。犯人はその場で別の建物の屋根に居たSecret Serviceに射殺されたけど、トランプが話しているステージの僅か130メートル先の建物のビルがなぜ無防備だったのか謎は多い。例によって「票稼ぎのやらせだったんでは」とか「Secret Serviceもグルだったんでは」とか根も葉もない陰謀説が流布中。

トランプ暗殺に関しては元Foxのタッカーが以前からそのリスクに警鐘を鳴らしてた。タッカー曰くトランプの存在自体を許せない一派は「今ではでっちあげだったとされるロシア疑惑、弾劾裁判2回、多くの訴訟、刑事罰確定」とこれでもかこれでもかと総力を結してトランプ潰しにかかったけど、その都度Surviveするばかりか国民の支持は高くなるばかりで、「残された手段は…」というような話し。未遂とは言えまさか本当にそんなことが起こるとはね。

過去にもリンカーン、JFK、未遂ではレーガン、とか米国には暗い過去があるけど、今回の事件は「起こってもおかしくない」って前から噂されてた点が米国の国としての質の低下を反映してる気がする。僕が最初に米国に来た頃(相当昔でブッシュシニアの末期・ビルクリントンの幕開けの頃)「この国は凄い」と思った理由の一つに「国民が意見を戦わせてDisagreeしても共存している大人の国」っていう点がある。時間はかかるかもしれないけど国民が良しと思う政策を実行してくれる議員(特に州レベル)を選挙で選び州や国の方向を決定していくっていう本当の民主主義だ。 有名なところではイデオロギー的には真逆なレーガン(80年代の大統領で共和党)とオニール(その当時の下院議長で民主党)とか、最高裁判事で憲法解釈に対するアプローチが逆のスカリアとギンズバーグが好例。喧喧囂囂の議論の後は貴重なFriendship関係にあったっていうからね。トランプとバイデンとかでは考えられない。日常生活でも意見が合わないからといって直ぐに相手の人格を否定したり、増してや暴力に訴えるなんて奴は「Civility」に欠ける幼稚で最低っていう雰囲気が漲っていた。

今の米国はだいぶちがっちゃってるよね。意見が合わない相手は力や暴力を使ってもやっつけないといけないみたいなアプローチが是認されてる感じ。しかもそんなアプローチはフリンジなOutlaw一派が提唱している訳ではなく、ポリティシャン、メディア、エリート大学を含む広範な支配階級にも蔓延している感がある。ポリティシャンのここ数年の言動は冷静な議論を奨励しているようには見えず、むしろ過激になる一方。反対意見が通ると「民主主義が終わってしまう」ので、手段は問わずに押さえつけるみたいな怖い雰囲気だ。30年前に感じた米国、イデオロギーや意見が違っても相手をRespectするカルチャーはどこに?

この現状は民主主義のリーダーだった国としてはとても嘆かわしいことだ。どんな意見が正しいかっていう点に必ずしも確固たる答えはなく、民主主義である限り全会一致はあり得ない。選挙を通じて選ばれた議員が議論を尽くした結果法律ができてるんだったら例えその内容に賛成できなくても納得感があるはず。それが民主主義、Civilityだったはず。歴史が証明するようにCivilityを失った人・社会はもろい。国としてこの点を是正しないと米国も先が危ない。そんな時はまずは国のリーダーがお手本を示すべき場面。特に年齢を重ねてるんであればそれをメリットとして若造にはマネができない高尚なレベルで戦ってもらいたいところ。それがバイデンとトランプじゃね~。

で、暗殺未遂から2日後の7月15日には共和党大会で副大統領候補にJDバンスが任命された。JDバンスの名前は初めて聞いた読者の皆さんも多いのではって思うけど、彼はオハイオ州の小さな街に生まれ貧困その他の恵まれない環境で育ったそう。高校卒業後、米国海兵隊でイラクに行った後、オハイオ州立大学卒。フル奨学金でYaleのLaw Schoolに行き、政治活動、Law Firm、そしてVenture Capitalで一旗揚げてシリコンバレーの大御所、Peter Thiel, Eric Schmidt, そしてネットスケープ(!)のMarc Andreessen等と関係を築く。2022年には上院議員にオハイオから出馬し当選。っていうアメリカンドリームを地で行く人物。生い立ち的にSwing Stateの中西部州一般市民とコネクトできるのは強み。彼の生い立ちや苦境は自叙伝「Hillbilly Elegy - A Memoir of a Family and Culture in Crisis」で知ることができるんで興味があったら軽く読んでみると面白い。

ただ、JDバンスは税制や規制緩和面からは疑問が残る人選。個人的にはトランプ独特の規律が欠けるっていうかランダムな意思決定を露呈してるように感じてしまった。経済界からは経験豊富なNorth Dakota知事のバーガム、国家統治面からはWest Virginia知事のヤンキンとか、トランプにはない「大人」感のある監督・監視ができる人物の登用を期待してたと思うんだけどね。同じ経済界でもテックと金融では受け止め方が異なるかもね。JDバンスの税制感は後日。

前置きでこの一か月を軽く振り返るつもりだったけど余りに多くのことがあり長くなってしまいました。まだまだ11月までFake Newsを含む多くの出来事があるだろう。毎日の生活に影響がある政策論以外は余り知ったりかかわりたくないって感じてる一般市民も多い。

本題の税制動向だけど、バイデンのポリシーは予算教書とかで分かる通り増税。MMTとか言ってとんでもない額のお金を使ってしまいインフレ・金利高を招き、今や国の借金に対する利払いが国防予算より多いというお粗末な状況で歳入はいくらあっても足りない。一方のトランプは?っていうと例によって「Who Knows...」的な世界だけどここから次回。

Sunday, June 23, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ

前回FIRPTA規則最終化速報を終えて今日から新トピック。米国タックスの世界は話題が恒常的に盛りだくさんでポスティングに値するトピックは常にOverloaded。Overloaded過ぎてDown the drainになっちゃうと「Somebody Get Me a Doctor」の世界になってまた超カッコいいギターソロとかの話しで長くなるんで自制しとくね(安心した?)。

で数多くのトピック候補から「Short List」を作ってみた。まず判例から列挙すると、YA Global(オフショアLending FundとECI)、Liberty Global(Economic Substance Doctrine(「ESD」))、Moore(一番最近の最高裁判例で2017年の留保金一括課税Transition Taxの合憲性)、Soroban(ファンドマネージャーがLPSとして組成するInvestment Management Vehicle LPSのLPとして受け取る報酬に対するSelf-Employment Tax(日本の国民保険みたいなもの)免除是非)、などが頭に浮かぶ。

行政府のRegulatory廻りでは、自社株買い1%懲罰課税(Excise Tax)を外国親会社が本国で自社株買いしている際に米国子会社に懲罰課税に適用しようとする超訳分かんない「Fundingルール」。

三面記事っぽいトピックの筆頭はトランプ再登場でメインストリームメディアが興奮しまくってこれでもかって報道を続ける11月の選挙とその後の税制の行方、大谷選手の報酬ストラクチャーと課税繰り延べ、IRS職員による富裕層の申告書リーク、などなど。

どれにしようかな?

結局は天の神様の言う通りシュシュシュのシュなんだけど、結果をお伝えする前に主要なShort Listトピックを簡単にWhirlpool的にツアーすると次の通り。

YA Global

まず「YA Global」。これはインバウンドPracticeに従事して長い僕としてはいつか語らずを得ない「Must」トピック。米国内のDirect Lending(Loan Origination)は直ぐにUS Trade or BusinessになってFeeや利子所得がECIになりがち。YA Global自体はケイマンのオフショアファンドで外国人LP用Vehicle。例によってスポンサーが米国に所有するInvestment Management Coが存在し、オフショアファンドに代わってLoan Originationをしてた。YA Globalやオフショアファンド一般に限らずファンド自体に従業員なんかもちろんいないファンドの世界に共通のストラクチャーだ。で、どんなLending活動がどんな基準でUS Trade or Businessになるのかっていう点に裁判所がどんな指針を提供してくれるかって興味津々で、ファンドCommunityやLegal Advisorに間では「初のLendingケース!」っていうことで裁判所の法解釈を首を長くして待ってた。YA Globalケースの争点となった事実関係は2006年~2009年だからそろそろ結果知りたかったよね。

YA Globalの投資Thesisやストラクチャーは今日のLendingファンドとは異なり結構Extremeな事実関係だったんで、結果としての敗訴はLegalコミュニティー的には覚悟済みだったって言えるけど、判決ではAgency、US Trade or Business、ECI、ペナルティ、おまけに475のDealer認定までBlow-by-blowで全敗。ただ意外かつ超ガッカリだったのは「どんなLending活動がUS Trade or Businessになるか」っていう肝心の議論はなく(判決文ではその検討は不要とすら位置付けられていた)、サービスFeeを受け取ってるんで何らかのサービスが提供されたに違いにないっていう逆説的なアプローチでUS Trade or Businessが認定されてた点。何らかの活動がUS Trade or Businessになり、そこにEffectivelyにConnectしてる所得がECIっていうのが法的なフレームワークなんで何回読んでも違和感が消えない。

その他の判例

Liberty Globalは、古くからのCommon Lawを条文化して今日に至るESDはReorganizationやEntity Classificationには適用がないっていう立法趣旨があるにもかかわらず、条文のRelevanceテストを逆さに適用してESDを適用し、$2.4Bに上る課税所得の認識が必要っていい渡した超ショッキングピンクなケース。YA Globalと共通して法律の適用法が逆説的でビックリしたけど、両社共に社名に「Global」ってついてるのが偶然だけど面白いよね。これらの判例のLessonは社名にGlobalってついてたら至急改名が望まれる?っていう点かもね。ちなみにYA GlobalはTax Courtケース、Liberty Globalはコロラド地裁ケースなんで納税者により控訴審に持ち込まれる。More to comeだ。

Mooreは判決の具体的な争点そのものは2017年の留保所得一括課税(テクニカルにはSub F課税のTransition Tax)が所得のRealizationを前提としている連邦憲法に違反するという納税者の訴えを最高裁が7‐2で却下したもの。違憲になってたらTransition Taxの還付、パートナーシップやS法人の課税の合憲性その他に多大な影響があった。ただ、民主党急進派は「Realizationがなくても合憲ってことはその延長でWealth Taxも合憲」って拡大解釈するリスクが多くその点からも注目を集めてた。最高裁の主たる判決文では今回の判決はWealth Taxを認めるような意図はないって釘を刺してるけど、Wealth Taxの是非を問う判決じゃないんであくまでDictaに過ぎず、今後も議論は続きそう。Mooreそのものは最高裁判決なのでFinal。

自社株買い1%懲罰課税とFundingルール

これは語りだすと長いけど、2023年に公表されたNoticeで展開された訳の分からないPer Se Fundingルールに「SignificantなModification」を施し、化粧直ししたFundingルールが財務省規則案に盛り込まれた話し。そんな規則策定権どこにあるの~とか法律を書き換えてるとか大不評なんで最終規則でどうなるでしょうか。

そして勝者は?

日本企業に対するインパクト的にはYA GlobalとFundingルールかな、って思う一方、最近取材とかクライアントからのカジュアルな質問に対応してて、やっぱり皆さんの関心が高いな~って感じざるを得ないのは2024年選挙と選挙結果の税法動向インパクト。たまに「トランプとバイデンどっちが当選しますか~?」みないな質問もあって面食らうけど。僕は占い師じゃないからね。ただ、選挙結果次第でアメリカは全く違う国になるのは確か。ってことでまずは2024年選挙と税法、そしてそれが終わったらYA GlobalのDeep Dive。Fundingルールは規則最終化時に廃案になってるかどうかで特集ってことにしました。このポスティングのタイトルでバレバレだった?。これらだけで今年も終わりそうな勢いなんであんまりVan Halenとかで盛り上がらないように要注意だね。

それでは早速次回のポスティングから2024年選挙特集。

Sunday, May 19, 2024

FIRPTAアップデート(QFPF規則最終化)

前回のポスティングではつい先日最終化されたFIRPTA関係の規則のうちREITがDC REITかどうかを判断する際の米国法人株主の取り扱いに触れた。規則では同じくDC REIT判断時のQFPFの取り扱いも一部最終化してるんで今回はQFPFの取り扱いに関してチラッと触れておきたい。

規則案のQFPF関係の規定に関しては「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (9))」および「(10)」で特集してるけど、そのうちDC REITの判断目的でQFPFはどこの国の人?っていう部分が最終化されている。一方、QFPFであると同時にsection 892の恩典を得ることができる外国政府に適格となる主体が、USRPHCになってもCCEにならないっていう有難い規則案は別途最終化するらしい。このルールの方がより早く最終化されるよう願ってるんだけどね。

QFPFの国籍

以前のポスティングで触れた通り、PATH Actを修正した2018年のTechnical Corrections Actにより、QFPFはFIRPTA規定目的(for purposes of section 897)では外国法人にも米国非居住者個人(NRA)にも当たらないって規定された。これは行政府が策定する財務省規則ではなくIRCの「条文」だ。IRCは憲法上のSubreme Lawのひとつ。ということは問答無用にFIRPTA目的ではQFPFは米国人扱いなんだよねって言うのが自然の解釈。すなわち米国内税法の定義的には米国人と外国人って互いに排他的な関係にあるんで、外国人じゃなかったら米国人、外国人だったら米国人じゃないし、両方ってことはないはず。

で、FIRPTA目的全体でQFPFは外国人ではないって条文を文字通りそのまま解釈すると、QFPFのREIT持分は米国人が所有しているって取り扱う以外の余地はないように見える。QFPFはもちろん実際にはDomestic Corporationじゃないんで限定Look-throughルールの適用もないだろうし。となるとDC REIT適格判定時には納税者有利な結果となる。

ところが規則案ではこの点に関してDC REIT判断目的ではQFPFは外国人と取り扱うと規定していた。すなわちREITがDC REITになり難くなるってことだ。ポリシー的に驚きはなかったんだけど、問題は条文にはそうは書いてない、って点で無理やり感が払拭し難かった。まあこじ付けられないこともないのかな~っていう理由は以前のポスティングを参照して欲しい。

最終規則のQFPF国籍

規則案には反対意見が多く寄せられた。財務省曰く一件だけ規則案に賛成という奇特なコメントがあったそうだ。反対意見は予想通り、条文の文言でクリスタルクリアな規定に関してポリシー的な見地から異なる解釈を規則という形で強制するのは行政府の規則策定権逸脱というもの。財務省はいろいろと理由を列挙して合意できないとし、結局規則案のQFPFはDC REIT判断時は米国人扱いっていうポジションで最終化された。QFPF自体はFIRPTA免除なんでDC REIT株式譲渡益免税の恩典有無に影響は受けないけど、QFPFが投資しているREITの他の外国人投資家にはバッドニュース。

ということでFIRPTA規則最終化速報でした。Van Halenの話しとかないから短かったね。次回は新トピック。何になるでしょうか。