う~ん、上院のVanceのCasting Voteに至る共和党リーダーシップ、特に上院WhipのJohn Barrasso (R-WY)による票固めも見事だったけど、上院可決後僅か2日後の7月3日にあれだけ揉めそうな下院で両院Conferenceを経由せず上院バージョンそのまま可決させたMike “Magic” Johnsonそして共和党下院WhipのTom Emmer (R-MN)の手腕は予想を上回った。もちろん両院共に彼らの背後には強力な影響力を誇るトランプが居るからだけど、「2024年11月米国選挙結果と米国税制」で僅か半年前はOne-Trackの大型法案を夏までに通すのは至難の業って思われてたけど、トランプ言う通り「One Bill」で7月4日の独立記念日に署名に漕ぎつけた。今年の7月4日からの一年は米国建国250年目に当たり、明日の署名は普段にも増してホワイトハウスがShow-Upさせることだろう。史上最年少でWhite House Press Secretaryに抜擢された才女のKaroline Leavittのプレス会見は普段でも相当テンションが高いけど、明日は最高潮に達するかもね。One Billはそれだけでなく税制以外にも米国社会に大きな影響を持つ国境警備、国防、エナジー、社会政策、等に広範な影響を与える「Big Bill」でもあり、これだけの規模の法案をこのスピードで可決に導いたのは驚異的だ。
最終的にどんな税制?
紆余曲折あったんで最終的にどんな形に収まったかもう一回7月1日の上院法案を見直す必要があるけど、例の899は入ってないからね。安心した?
個々の規定は今後掘り下げるとしてBullet的に法人税周りを超ハイレベルに触れておくと次の通り。
クロスボーダー課税
まずTCJAで一変したクロスボーダー課税は若干のTweakがあるけど大枠ストラクチャーは現状維持。TCJAではGILTIとFDIIが対で導入されたけど(前からしつこく言ってるけどOECDがやったみたいにこの2つを分離して取り扱ってはいけない。TCJAの趣旨が理解されていない証拠)、GILTI控除は50%が40%に引き下げられ(控除なんで低い方が不利)、GILTIバスケットのFTC制限が80%から90%に緩和されたんでGILTI理論税率は14%に(従来は13.125%でOBBBAの改正がなければ16.4%になるところでした。
FDII控除は37.5%から33.35%に引き下げ。結果FDIIの理論税率は14%。OBBBAの改正がなければ16.4%になるところでした。全部GILTIと一緒じゃんって思った人がいたらその通り。この2つは対で導入されてるんで当然ミラーイメージ。米国外向けビジネス(IP保有含む)を米国でも国外でも変わらない状態として、米国企業の全てを低税率CFCから行うっていうBase Erosion的な行動規範を変えさせるためのもの。Global BlendingなのはFDIIは米国で一本の計算だからミラーイメージ的に当然。「Global BlendingだからきちんとしたGlobalミニマム税には当たらない」とか「FDIIは弊害税制」とか双方をバラバラにみて「対」で考えないから頓珍漢な扱いになる。
双方共に(対なんで)みなしルーティン所得に当たる償却有形資産の10%(QBAI)が撤廃された。結果としてGILTIはCFCのTested Income全体を合算することになる。GILTIはGlobal Intangible Low-Taxed Incomeだったけど、みなしルーティン所得が撤廃されてしまったんで「Intangible Income」への課税とは言えなくなって単に「Net CFC tested income」と改名。FDIIも同様にIntangibleっていう要素がなくなったんで「Foreign-derived deduction eligible income」に改名。GILTIの方はGILTYに聞こえるんで(元々それが理由で洒落で命名したはず)Connotationが悪く改名したいって思ってた議員が居たそうだ。
次にBEATだけど、14%だのBase Erosion %が2%引き下げとか18.9%のHigh-Tax Exceptionとか全部お蔵入りになって単にBEATミニマム税率が10.5%にセコめの引き上げ。OBBBAがなかったら使用できなくなってたR&Dクレジット、Low Income Housingやエネジークレジットの80%も温存。GILTIやFDIIに倣って名称変更してBEATの代わりに「Slow Jam」になった。っていうのは冗談で内容全然変わんないんでBEATはBEAT。
Downward Attribution不適用復活
Out-of-Underプラニングに網を掛ける狭義な目的でTCJAで規定されたCFC判断時のDownward Attribution適用。実際には超Overbroadで広範に予期せぬ影響とかがあったけど、ようやく元通りCFC判断時にDownward Attributionの不適用8年ぶりに復活した。あれから8年か~。お疲れさまでしたって感じ。元々の立法趣旨を反映した「Foreign Controlled United States Shareholder」規定が新規に導入された。
取り合えずはクロスボーダー課税の大物はこんな感じでした。次回は米国内事業に関するハイライト。