Sunday, September 8, 2019

日米租税条約議定書発効と源泉税

数回に亘り、批准の動向をポスティングしてきた2013年の日米租税条約の議定書だけど、ついに8月30日に6年越しの米国批准手続きを経て発効した。議定書とかProtocolっていうと名前が堅苦しいけど、要は2003年の日米租税条約の改正のこと。既に簡単な内容とか議定書そのものが発効した後に、各規定が実際に効果を持ち始めるタイミングは前回までのポスティングでカバー済みなので、ここで繰り返えす必要はないけど、発効が際どく8月中だったので、源泉税の軽減は11月1日以降の支払いから有効となる点は一応注目に値する。

例えば、米国の観点からは、支払利息は法的な支払いタイミングが11月1日以降であれば、利息算定の基となる経過期間に10月31日以前の期間が含まれていても源泉税率はゼロ%となる。発生ベースで考える必要はない。源泉税課税が法的に発生するのはあくまで支払いのタイミングだからだ。もちろん、相殺とか元本組み入れは支払い同様と取り扱われる。

源泉税率の軽減って、条約の趣旨が一番分かり易く具現化されてるって感じ。源泉税は支払側が徴収して納付するけど、あくまで受け手の代理人という身分で行っている訳で、実際の納税者は利息等を受け取る外国人。したがって、源泉税はECIやPE帰属所得に対する申告課税と並び「Resident Country」ではない側の国が「Sourcing Country」として外国人に課税権を行使するパターンの典型。条約の特権を受けることができない場合、米国内国法では投資所得は原則30%の源泉税対象となる。

で、租税条約による源泉税率の軽減は、内国法で認められるSourcing Country側の課税を緩和するという、これまた典型的な条約の軽減措置。租税条約っていうのは通常の契約と同様に、締結国が各々のSourcing Countryとしての課税権の一部を軽減・緩和するという「対価」の交換をもって成立する二国間の法的な契約。日本では元々20%、米国では30%の源泉税をお互いにゼロにするので、個々の規定ベースでは対価の価値は必ずしもパラレルではないけどね。契約法をかじったことがある人は分かると思うけど、契約が成立する要件の一つとなる「対価」は、お金を払ったり、サービスを提供したりする行為ばかりでなく、法的な権利を自ら放棄することでも立派に構成させることができる。

外国関連者に源泉税対象となる支払いを行う際、米国税法では米国支払い側の当金額にかかわる損金算入は発生ベースではなく、支払ベースの現金主義で認められるのが原則。これは課税と損金のマッチング概念。受け手となる外国人が米国で課税される、すなわち源泉税が課せられるタイミングと損金算入のタイミングを合わせようとするもの。なので損金算入をトリガーする「支払い」の定義も源泉税をトリガーする取引と規定されている。このようなマッチング規定がないと、関連者に発生する利息とかロイヤルティーを長期に亘り未払いの状態を続けることで、損金側だけ発生ベースで認識し、外国関連者側の米国における所得認識を延々と繰り延べることが可能となってしまう。

課税が支払いベースっていうのを利用して、長期間に亘り所得認識を繰り延べる案を見るたびに、Section 457Aで網が掛けられる前の、ヘッジファンドマネージャーがケイマンとかのオフショアフィーダーから受け取るIncentive Fee(CarryみたいなIncentive Allocationではなく)を10年も繰り延べしていた姿を思い出して苦笑してしまう。ヘッジファンドとかPEのスポンサーたちみたいに、常に自ら限界に挑戦し、かついろんなプロフィールの投資家全ての米国課税関係に応えようとする(でないと次の投資家が集まらないしね)クライアントを持っているとそれはそれは勉強になる。ファンドのスポンサーはどんなにお金持ちでもNY気質で気が短く激しいので失敗は許されないし。でも現実には複雑なストラクチャーになればなるほど、ストラクチャーや申告が100%クリーンと言うのは難しい、というか不可能っていうのが実務家の視点(言い訳?)。それにしてもヘッジファンドは源泉税とかに対する感度も際立ってると言える。

ケイマンフィーダーと言えば、PEの世界ではPEがパススルーに投資する際に毎回組成されるAIVの一部を構成することがあるし、ヘッジファンド投資は流動性が高いのでAIVは不向きとなることから、ヘッジファンドの世界ではファンドをストラクチャーする際にもともと単純にケイマン法人を組成して、「普通の」非課税団体(CalPERS、SERS、NCRS、MainPERSみたいな州の一部となるスーパー非課税団体ではないという意味で普通の)や日本企業を含む外国からの投資家向けにブロッカーとして用意してたけど、ヘッジファンドのオフショアフィーダーがデラウェア州LPSであるマスターファンド、またはブロッカー直下のミニマスターファンド経由で受け取る配当所得が30%源泉税の対象となる問題がある。ケイマン法人だからもちろん条約はないしね。利子所得は条約有無にかかわらず、元々基本的に利益連動や関連者からのものでない限りそもそも内国法で源泉税対象でないから問題ないけど。ヘッジファンドは派手にトレーディングするから、配当所得は少ないかもしれないけど、それでも状況次第では30%源泉税対象となる投資がある程度のポーションを占めると、投資リターンには悪影響。

で、配当に対する30%源泉の問題は、従来、スワップ、しかもデルタワンのスワップで解決するっていうのがヘッジファンド界の常識というか、常套手段だった。というのは想定元本から受け取る所得は配当ではないので、受け手の居住地を基に源泉地を決めるというのが基本的な考え方だからだ。そんな安易な源泉税回避法に業を煮やした議会がSection 871(m)を導入し、デルタワンスワップ策は封じ込められてしまった。 だったらと、今度はケイマン法人ではなくケイマンLPSでせめて条約締結国の投資家には条約に基づく10%とか15%の軽減税率で源泉税が済むように工夫するようなトレンドになっている。投資家のクラス次第だけど。SWFなんかはだったらオフショアフィーダーに鞍替えしてるのかな。マスターファンドでCommercial Activitiesがないと信じてるんだったら引き続きドメスティックフィーダーなのかもね。一方、UBTIが発生したら困まる「普通の」非課税団体から見ると、派手にレバレッジを導入するヘッジファンドがパススルーでは大変。だったらと、彼らのためにCTBしてあげたりして。う~ん、概念的にはシンプルでも、実務的にW-8とか、とてもファンドのバックオフィスがペーパーワークに耐え得ないのでは、って心配になってくる複雑なストラクチャーだ。源泉税コストっていうのは投資の世界ではとても重要。

で、話しが何となく脱線してきたけど、米国税法では、源泉税対象となる支払いの米国支払い側の損金算入は発生ベースではなく、支払ベース、すなわち現金主義で認められるのが原則っていう上の話しの続き。源泉税が条約でゼロ%となる場合、このマッチングは意味がない。支払っても支払ってなくても源泉税がなく、タイミングにかかわらず米国はSourcing Countryとしての課税権を完全に諦めてしまっているので、マッチングする相手がいない。だったら支払い側の損金算入は通常の内国法のAll-Eventテストで判断すればいいのでは?ということになる。

で、ここからはロジックでは説明できないけど、判例その他の沿革があり、現状の財務省規則下では、支払利息に関しては例え条約で源泉税がゼロ%でも外国の関連者に対するものは現金主義でのみ損金算入が認められる。マッチングするものがなくてもね。一方、支払利息以外、典型的な例はロイヤルティーだけど、に関しては条約で源泉税がゼロ%となる場合、マッチングのしようがないので、発生ベースで損金算入となる。したがって日本の親会社に支払うロイヤルティーは条約で源泉税が免除されている限り、2003年以降、発生ベースで損金算入できる一方、2019年11月1日以降に支払う利息の源泉税がゼロ%になるからと言って、発生ベースを適用することはできず、支払利息の損金算入は支払い時点まで待たないと認められない。その場合、Section 163(j)とか他の制限規定がキックインしてくるのも支払い時点だ。支払利息は目の敵にされていて、他の所得と異なり、外国関連者に対するものである限り、米国源泉でなくても支払うまで損金算入が認められない。米国源泉でなければ源泉税の対象でないので、マッチングの必要はなくこれもチョッと不思議。

ちなみに源泉税率が軽減されているけどゼロでないケースは、外国関連者への支払い全額に関して現金主義に基づく損金算入が求められる。BEATとか旧163(j)適用時には、30%が10%に軽減されているようなケースでは支払いを3分の1と3分の2に分岐して取り扱いを決めてたけど、Section 267目的ではそんなことはしない。

ということで、議定書による改正でインパクトが大きいのは関連者間の支払利息に対する源泉税、仲裁規定、不動産持分法人の定義だけど、仲裁は二国間協議との絡みで面白いので次回、チラッと触れてみたい。

Wednesday, July 17, 2019

日米租税条約「議定書」6年越しの批准

昨日、スペインの議定書が上院で批准されたが、今日(2019年7月17日)日本の議定書も圧倒的多数でめでたく批准された。議定書の合意は2013年1月24日だから、実に6年6カ月経ってようやく米国側の批准が完了したことになる。ちなみに日本の国会は2013年6月に批准を早々に終えているので、随分待たされた感じ。議定書に「批准書は、できる限り速やかに交換されるものとする」と両国が宣言しているのがおかしい。

昨日のポスティングでも触れたけど、今後、日米間で批准文書の交換が行われて正式に発効に漕ぎつける。後は形式的な手続きと言えるけど、米国でまず批准文書がドラフトされ、国務省が大統領府間と調整して大統領による署名を行う。署名されたら日米で文書交換され、議定書はめでたく発効となる。

で、実は議定書自体はそれで効力が発生するけど、実際に源泉税に関しては効力発生日から3カ月後を含む月の初日から実際の適用がある。以前に支払利息の支払いをもうチョッと待てばゼロ%というようなことを書いたことがあるけど、正確には仮に7月に批准書が交換されたら、10月1日から源泉税が下がる。源泉税以外の税金に関しては、議定書の効力発生後の1月1日以降に開始する課税年度から適用となる。源泉税に関しては、トランプ大統領が7月中に署名するか、8月にずれ込むか、で発効タイミングが10月1日となるか11月1日となるか、差が出ることになるね。他はいずれにしても2020年1月1日以降に開始する課税年度から、が原則。例外は仲裁手続き、情報交換、租税徴収支援で、これらに関しては批准書交換時から適用となる。

もう忘れてしまった人も多いと思うけど、議定書の目玉は源泉税の更なる軽減、仲裁手続きの導入、租税徴収にかかわる相互援助の拡大。源泉税に関しては支払利息に対する源泉税が撤廃されたのと、配当に対する源泉税率0%の適格要件のうち、「50%超」の持分保有割合要件が「50%以上」に、また「12カ月」の保有期間要件が「6カ月」に緩和されている。

ちょっとオタクっぽいけど、米国不動産持分(USRPI)の定義が、日米租税条約特有の有利な定義から米国内国法の定義に統一されている。外国人が米国の不動産を譲渡すると、譲渡損益はみなし事業所得となり、申告課税の対象となる。その際、この不動産の定義には米国法人株式が含まれる。米国法人株式は、上場企業の5%未満株主のケースを除き、原則、自動的にUSRPIとみなさるけど、米国法人が「過去5年間」に一度も米国不動産保有法人、すなわちUSRPIが資産時価に占める割合が50%超の法人、でなかったことを証明できる場合には、その株式はUSRPIの定義から除外されることになっている。これは米国内国法の定義だけど、従来の条約では、5年テストを適用せず、「株式譲渡時点」において米国不動産保有法人でなければ当該株式はUSRPIとならないと、日本居住者に有利な規定となっていた。今回の改正では残念ながら、この有利な定義は撤廃となり、米国内国法のUSRPIの定義で全てを整理することとなった。ちょっとループホールみたいな恩典だったから仕方がないかもね。

ということで速報でした。

Tuesday, July 16, 2019

スペイン租税条約「議定書」批准・日米は明日

米国時間16日火曜日、上院は本会議で長年眠っていた米国・スペイン租税条約の議定書を圧倒的多数で可決した。ケンタッキー州のとある酒造屋さんがスペインとの議定書を批准して欲しい、と地元の上院議員Mitch McCornellに懇願したことに始る租税条約批准手続きだけに、まずはスペインから取り上げられたのだろう。

Rand Paulは投票前に、情報交換規定が米国市民のプライバシーを侵害するリスクがあるという演説をしたばかりでなく、情報交換規定の条件をタイトにする修正案を提出したようだけど、修正案はあっけなく却下され、議定書は94対2で可決された。Rand Paul以外にも一人反対票を投じた議員が居ることになるけど誰だろうね。最近の上院は全て51対49とか、党ラインできれいに票が割れ、超党的に可決されることはなかっただけに94対2という投票結果は新鮮。スイス、日本、ルクセンブルクの議定書は、明日(17日)DCで審議が開始される。スイスの次に日本の投票となるそうだから早ければ明日中に批准が完了することになる。Stay Tuned。

ちなみに議定書が法的効果を持つのは日米間で批准文書の交換が行われた日となる。米国側の上院批准後の手続きとしては、批准文書がドラフトされ大統領がこれに署名する。大統領による署名手続きは国務省と大統領府間での調整マターとなるので、どれだけ直ぐ実現するかチョッと不明。トランプ大統領がTwitter投稿に忙しかったりすると、一週間から数週間掛かる可能性もある。で、署名されたら日米で文書交換され、議定書がめでたく発効となる。文書交換時には両政府より何らかの発表があるだろう。

Saturday, July 13, 2019

日米租税条約「議定書」いよいよ来週批准?

さすがMitch McCornnellとしかいいようがない。10年近く停滞していた条約の批准プロセスが、McConnellの鶴の一声でいきなり始動し、「Senate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)」で早々に日本、スイス、ルクセンブルグ、スペイン4か国との議定書が可決され、何と、数カ月前までは到底不可能と考えられていた本会議における議場審議および可決投票が来週早々にも敢行されるらしい。この辺りの最近の進展に関しては「日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??」「日米租税条約「議定書」本当に批准間近(2)?」で特集しているのでぜひ参照して欲しい。

条約ブロッカーのRand Paulは、この期に及んでも「簡素手続きに基づく安易な可決は許さない」と最後の抵抗を試みてるようだけど、ここまで来たら超劣勢というか万事休すに近い。本会議で正式手続きさえ踏めば、時間は掛かるけど3分の2の多数決で批准できる訳だからRand Paulが一人で反対票を投じても焼け石に水。いよいよ時間の問題だ。政治家は票をどれだけ集められるかが最終的には勝負だから、一票ではね。票と言えば、条約とは全然関係ないけど、下院のNancy Pelosiと新人議員の力の差異も結局はここに尽きるね。

それにしてもやはり持つべきは影響力を持つ地元議員。ポリティクスはLocalという誰かの名言があるけど本当にその通り。新人議員とかがTweeterで誹謗中傷合戦を演じてユートピア的な話しに終始している間に、McConnellは地元ケンタッキーのスペイン系(?)の酒造のためにここまで尽力していたとは。日本の議定書も棚ぼた的に日の目を見ることになりそうな展開で、ケンタッキーの酒造屋さんに感謝。日本でFTCの枠が十分ないような会社は、週末に米国から利息支払って10%源泉とかにならないように。来週まで待てばゼロ%かもしれないからねって、思ってたけど、良く見たら議定書自体の効力は批准文書交換時だけど、源泉税はその3か月後の1日からだから、10月まで待たないとダメでした。

Saturday, July 6, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (5)

前回はSub FやGILTI課税の適用時の米国パートナーシップの取り扱いを語る際に避けては通れないSection 318の概要だった。で、今回はこの複雑なSection 318のクロスボーダー課税への適用に関して引き続き・・・と思ってたら、「Happy 4th」の独立記念日が訪れた。Thanksgiving、クリスマス~新年と並び、米国企業、そして自分が属する米国Firmの活動が急にストップまたはスローダウンするので、日本以外からのメールが急減していつもより時間ができる。5月の日本10連休の際は日本企業や日本Firmからのメールが一斉にストップして、その際も朝起きてOvernightで溜まったメールが少なくて健やか(?)な時期を過ごすことができたけど、どちらかと言うと米国FirmがCloseしている方が、Firm内のインターナル系の諸々のメールが減るので、よりテクニカルなことに時間を避くことができる感じ。なんで、ブログのポスティングも比較的サクサクとアップデートできたりしている。

独立記念日と言えば花火。East RiverのBrooklyn Bridgeエリアから摩天楼をバックに70,000発打ち上げられたNYCの花火は圧巻。ちなみに隅田川の花火は20,000発だそうだ。ギネスのドバイの50万発には及ばないけど、ManhattanとQueensというビル密集の間でやるので実際の発数よりも迫力。その昔、物心ついたころに、自由が丘の自宅の洗濯干し場(なぜか屋根の上に舞台みたいに洗濯ものを干すエリアがあった)から多摩川の花火を、当時とても貴重だった「アイスキャンディー」を「きくそうやさん」(としか覚えてないんだけど、近所の駄菓子屋)から届けてもらい、見ていた夏を思い出す。あれも今思えば二子橋の辺でやってた花火大会だろう。多摩川の二子橋が、East RiverのBrooklyn Bridgeに変わっただけで、結局夏は川に掛けられた橋の花火大会を満喫しているところがおかしい。しかも気付いたらレモンシャーベット(テクニカルにはレモンジェラート)を食べながら見てたので、かなりのDéjà vu(?)ぶり。だけど、遠い昔とは言え、本当に過去に体験しているのでDéjà vuという表現は間違いだね。NYCって街はチョッと汚くて、古くて他の街みたいに整然としたところがないけど、実は効率的にできていて、アメリカの他の街では感じられない魅力満載。独立記念日の花火のバックに見える街を見ていると、ますますそんな気にさせてくれる。花火大会前のコンサートもLuke Bryan, Brad Paisley, Derek Hough, Jennifer Hudson, Ciara、Khalidと一流どころが揃ってた。

で、花火も終わったので、またクロスボーダー課税と株式保有の話し。外国法人の株式を誰が何%保有してるかって言うと、一瞬簡単な事実認定に聞こえるかもしれないけど、実際にはこれが複雑。外国法人の株主に米国株主が存在するか、外国法人がCFCになるか、米国株主が合算株主となるか、合算株主に帰属するPro-rataのSub FやTested Income等の合算額はいくらか、というクロスボーダー課税の検討各ステップで、株主保有%の正確な把握は避けては通れない確認事項。

前回、保有持分の考え方は「直接」「間接」「みなし」の3通りがある点に触れ、「みなし」保有はSub CのSection 318を借用して決定する点に触れた。ここでさらに、検討を複雑にしているのが、Section 318をクロスボーダー課税目的で借用する際、元祖Section 318を部分的に変更している点だ。ただでさえ複雑なSection 318に追加の部分的変更を加えることで、規則の難易度はアップするけど、これらの微調整は、米国内の組織再編等と必ずしも事情が同じでないクロスボーダー課税への影響を思慮深く反映している。元祖Section 318に対するクロスボーダー課税検討時の変更は次の通り。

まず、家族間のみなし保有規定を適用する際、「非居住者外国人」が保有している株式を、「米国市民・米国居住者」が保有しているとみなすことはない。例えば、日本に住んでいる日本人でグリーンカードを保有していないお父さん・お母さんが保有する株式は、仮に息子や娘が米国籍・グリーンカードを保有していたり、米国にF、J、M、Qビザ以外(これらのビザ保有者は連邦税法上、非居住者扱いとなるケースがほとんど)で居住していても、この例外規定があるお陰で、お父さん・お母さんが保有する株式、例えば、日本の自分の会社がCFCになったりしない。

次に、事業主体が保有する株式は、持分保有比率に応じて事業主体のオーナーが保有していると取り扱うUpward Attribution適用時に、もしオーナーが事業主体の50%超の議決権を有している場合には、元祖Section 318の持分相応ではなく、事業主体が保有している「全」株式をオーナーが保有していると取り扱う。例えば、事業主体が外国法人の100%株式を保有し、この事業主体の持分を80%保有しているオーナーが居るとすると、Sub Cの「通常」のSection 318ではUpward Attributionを事業主体に対する持分に応じて外国法人の株式保有%を決定することができるため、オーナーは外国法人の80%を保有していることになる。ところがクロスボーダー課税を考える際には、オーナーは事業主体の持分を50%超保有していることから、事業主体が保有する外国法人の株式100%をまるまる保有していると取り扱う。

更に、Upward Attributionを適用する際、法人から株主にみなし持分がフローアップしてくる際、Sub Cの「通常」のSection 318では、前回のポスティングで触れた通り、価値ベースで50%以上の持分を保有する株主に対してのみ、法人が保有する株式を、価値ベースの持分に応じて株主が保有しているものと取り扱うが、クロスボーダー課税の適用時には、50%以上ではなく、同じく価値ベースで10%以上の持分を保有する株主は、法人が保有する株式を価値ベースの持分に応じて保有していると取り扱われる。もちろん、上述の2つめの例外があるので、50%超の議決権を保有する場合には、持分ベースではなく、全株式を保有していると取り扱われる。ちなみにこれらのルールを読んで気付いたと思うけど、持分の判断時に議決権を見るのか価値を見るのか、両方を見るのか、の区別が重要。Sub Cの組織再編とか現物出資の際の「Control」要件と連結納税や適格再編の際の「Control」要件も、どのクラスの株式の何を見るのかの部分に差異があり、トリッキーであると同時にプラニングの温床となってるのにチョッと似てる。う~んDeep。

で、実は税制改正前は「3つ目の例外」があった。それはクロスボーダー課税を考える際には、Downward Attributionを適用して、米国人でない者(外国法人、外国パートナーシップを含む)が保有する株式を、米国人(米国法人、米国パートナーシップを含む)が保有しているとは取り扱わない、というものだった。家族関係に基づくみなし保有の例外に似てるけど、税制改正でナンとこの3つ目の貴重な例外が撤廃されてしまった。この改正のせいで、Section 318のDownward Attributionをクロスボーダー課税を考える際に常に適用しないといけなくなり、日本企業のように米国が頂点でないグループとかファンドは急に多くのCFCを保有しているとみなされる結果となっている。この変更の立法趣旨は、濫用に網を掛ける目的とされているけど、両院の法案をバタバタとすり合わせる過程で、法文の微調整を行うことができず、結果として、法文を読む限り、全ての状況でDownward Attributionが適用されることになる。この点にかかわるTechnical Correctionという法文修正案が「ドラフト」されているが、法案として議会にも提出されていないし、仮に提出されたとしても下院は民主党の手に堕ちていることから可決の可能性はないに近い。となると、法文に準じて、常にDownward Attributionを適用してSub FとかGILTIを考えないといけない、というかなりインパクトの高い改正となってしまっている。

さて、ここからが話しの神髄。Sub FやGILTIは「CFC」の所得を「米国株主」が合算するというシステム。そのためにはまず誰が米国株主で、それに基づき外国法人がCFCとなるかの判断が必要。CFCは「外国法人の課税年度内に1日でも米国株主が議決権または価値の50%超を保有する外国法人」と規定されている。プエルトリコ、グアム、アメリカンサモア、北マリアナ諸島で組成されている法人に関しては特殊な規定があるが、ここでは余り関連がないので省く。

CFCの定義を読めば分かると思うけど、外国法人がCFCかどうかの判断時には、外国法人の株主に米国株主が存在するかどうかを判断しないといけない。以前のポスティングで触れたけど、ここで言う「米国株主」っていう用語は法的に定義されていて、単に株式を保有している米国人という意味ではなく、10%以上の議決権または価値を保有する米国人を意味する。実は税制改正前は、米国株主は「議決権」10%以上の米国人となっており、価値は判断に影響がなかったけど、濫用が見られるということで価値ベースの判断も加えられた(CFCの定義は以前から議決権または価値)。直接CFCや米国株主の定義には関係ないけど、税制改正による変更と言えば、改正前は外国法人が課税年度内に少なくとも30日間CFCの状態にないと、その課税年度は米国株主によるSub F合算の必要がなかったけど、この30日ルールも濫用防止目的で撤廃され、改正後は一日でもCFCだと合算が必要となった。

米国株主の定義は、Sub F関係の規定ばかりでなくInternal Revenue Code全てに適用される定義とされているので、税法上「United States shareholder」という用語が出て来たら、それはこの定義を充たす者ということになる。

ここで言う米国人の定義は広範で、米国市民、米国居住者、米国パートナーシップ、米国法人、米国遺産、米国裁判所が信託管理に関して主たる法権を持ち、米国人が信託の意思決定を行使できる信託、となっている。今回のテーマ的にはパートナーシップは課税関係はパススルーだけど、この目的では人格を伴う「Person」となっていて、米国パートナーシップも米国人と取り扱われている点が重要。

米国株主を特定したら、それらの者が合算で50%超の議決権または価値を保有する外国法人がCFCとなる。米国株主およびCFCの判断時には、「直接」「間接」「みなし」全ての持分を加味して決定する必要がある。

前半、花火の話しとかしてしまって長くなってきたので、合算株主は次回。

Wednesday, July 3, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (4)

前回のポスティングでは、GILTI最終規則で採択された米国パートナーシップに対するAggregateアプローチに至る変遷等に関して触れたけど、今回はAggregateアプローチの内容そのものに関して。前回も言ったけど、このAggregateアプローチも、テクニカル面の理解は決して容易ではない。Sub FやGILTIを考える際のステップは、「米国株主の特定」、「CFCの特定」、「合算株主の特定」、「合算額の計算」という複数で構成されるけど、各ステップに適用される外国法人に対する持分保有の考え方をステップバイステップで「Dutifully」に適用する必要がある。米国税務の考え方って直感的に理解し難い部分が多いけど、ここもそのひとつ。

で、最終規則では、上の4つの思考ステップのうち、最初の2ステップとなる米国株主の特定およびその結果に基づくCFCの特定は、従来通りパートナーシップも米国株主となる場合は、そのまま米国株主と取り扱って考えるとしている。米国株主の特定時には、3つの持分を合算する必要がある。まずは「直接」保有規定。直接、本当に事実関係として保有している株式のことで、分かり易いし議論の余地のない絶対的な持分だ。

次が「間接」保有規定。ここの部分がパートナーシップを含む米国主体と外国主体を別扱いしている諸悪の根源と言える部分。外国法人、外国パートナーシップ、外国遺産が保有する株式は、各々持分に応じて株主、パートナー、受益者が保有しているものと取り扱うとしている。これは後述のみなし持分規定ではなく、Look-throughする間接持分規定。この間接持分規定は米国パートナーシップを含む「米国」の主体には適用がない。したがって「間接」の保有持分で課税関係を判断する際には、米国パートナーシップのパートナーに持分が「間接」的にフローアップしてくることはない。一方、間接保有規定の適用対象となる外国パートナーシップに関しては、外国パートナーシップが保有する株式は、各パートナーが持分に応じて保有していると取り扱われる。パートナーが外国主体の場合には、この間接持分の適用を反復適用して、最終的に米国パートナシップを含む米国主体に行きついたところで間接持分の適用は終わりとなる。

3つめの保有規定は米国税法、特にSub Cを取り扱う際に亡霊のように常に付きまとう「みなし」保有にかかわるもの。Constructive OwnershipとかAttributionとか言われ、Section 304を含む多くのシチュエーションに登場し、AttributionがまたAttributionしたりして、かなり「頭の体操」的な規定だ。みなし保有を規定している条文は複数あるけど、Sub FではSub CのSection 318を適用するよう規定されている。ちなみに同じ「Sub」でもSub FはSubpart F、Sub CはSubchaprter CだからCの方が格が上(?)だからね。Subpart FはSubchapter Nの一部。Section 318をきちんと理解するのは大変。サワリだけ紹介しておくと、Section 318は元々組織再編、出資、清算、分配その他、「法人と株主間」取引に対する取り扱いを規定しているSub Cに属する規定、しかもSection 318を適用するとわざわざ言及している条文にのみ適用があるもの。Sub Cは法人税(Corporate)部分だけど(だからCって訳ではなくこれは偶然)、法人税申告書となる1120とか作成する際には余り直接的に関係ない。そっちは普通の(?)税法、Section 61とかの世界が支配的だ。で、Section 318だけど、今回のクロスボーダー課税の例に見られるように、Sub C以外の条文でもその適用を「借用」するケースも多い。

Section 318によるみなし保有は大別すると3パターン。一つ目は家族が保有する株式は、同じ家族内の他の者が保有していると取り扱う「家族みなし保有規定」。配偶者、子供(養子含む)、孫、親が保有している株式は本人が保有しているとみなされるという規定。家族みなし保有の規定を読んでいつも面白いな、と思うのが、孫が保有してくる株式は本人、すなわち孫から見たおじいちゃんやおばあちゃんが保有している、ってみなされるのに、逆は規定されていない。一方通行で、おじいちゃんやおばあちゃんが保有している株式に関して、孫が保有しているとは取り扱われないことになる。おじいちゃんやおばあちゃんが、名義的に孫に株式を持たせることはあっても、孫がおじいちゃんやおばあちゃんに株式を保有してもらうようなプラニングは方向的には懸念は少ないということなのだろうか。確かに比較的考え難いよね。あと兄弟も入ってないね。お兄さんとかお姉さんに株式持ってもらったりしたら、勝手に換金化されちゃうリスクがあるからかな。

2つめのみなし保有は事業主体が保有する株式はそのオーナーが持分比率に応じて保有していると取り扱う「Upward Attribution」。なぜUpwardかと言うと、事業主体からその上のオーナーに持分が上がってくるから。ちなみに組織図によってはオーナーが下に来ているようなデザインを見たことあるけど、直感的に分かり難いし、多分どちらかと言うとマイナーな表示法だろう。そんな組織図は、まるで昔の英国のバランスシートが負債が左で、資産が右に来てるやつを見てるみたいだ。Upward Attributionはパートナーシップ、遺産、信託、法人の4タイプの主体と各々のパートナー、受益者、株主に対して規定されている。パートナーシップに関しては、パートナーシップが保有する株式は各パートナーがパートナーシップに対する持分に応じて保有しているものと取り扱われる。法人に関しては、若干規定が緩和されていて、価値ベースで50%以上の持分を保有する株主に対してのみ、法人が保有する株式を、価値ベースの持分に応じて株主が保有していると取り扱う。この部分の「みなし」保有規定は、先に触れたクロスボーダー課税時の外国主体に適用される「間接」保有規定とダブる。ポイントとしては、クロスボーダー課税で「間接」保有を語る際には、米国パートナーシップからのUpwardのAttributionはなく、同じストラクチャーでも「みなし」保有を語る際には、Upward Attributionがあるという点だ。すなわち、クロスボーダー課税の検討時に、パートナーが外国法人の株式を保有していると取り扱われるかどうか、っていう判断をする際に「間接」持分の話しをしているのか、「みなし」持分の話しをしているのか、で同一の事実関係でも税務上の法的な結果は異なることとなる。「なにそれ?」って思うかもしれないけど、条文法というのはそういうもの。

3つめのみなし保有規定は、逆に事業主体のオーナーが保有する株式は事業主体が保有していると取り扱う「Downward Attribution」。この規定は意外な結果を招き易く、直感的に分かり難いという意味で、3つのみなし保有規定の中で一番トリッキー。Upward Attribution同様に対象はパートナーシップ、遺産、信託、法人だけど、適用はチョッと異なる。まず、パートナーシップに関しては、パートナーが保有する株式は「全て」パートナーシップが保有していると取り扱われる。例えば、パートナーシップ持分を1%保有しているパートナーが、別の法人株式を1億株保有している場合、パートナーシップは1億の1%の100万株ではなく、ナンと1億株まるまる保有していると取り扱われてしまう。PEとかHedgeファンドのストラクチャー図を見ると、いつも誰がどの法人株式を何%保有していると取り扱われるのかな~、というメンタルExerciseの世界への突入を禁じ得ないのはDownward Attributionのせい。2017年(場合によっては2018年)の課税年度の一大仕事となったTansition Tax適用時には、Transition Taxの対象となるかどうかの判断をする際に、この規定の影響が大きいこと、またさらに実務的に株式保有の実態をパートナーシップ側で捕捉できない可能性もあることから、Transition Taxの規則案では5%未満、最終規則では10%未満のパートナーからは、Transition Tax目的ではDownward Attributionに基づくみなし保有を無視していいことになっていた。ただし、これはTransition Taxのみに適用される緩和措置で、他の規定に影響はない。法人に関しても、価値ベースで50%以上保有する株主が保有する(他法人の)株式は、全株に関して法人が保有しているように取り扱われる。例えば、複数の100%子会社を世界中に保有する日本法人2社が50・50でJVを米国に法人形態で設立したとする。この米国JV法人は、日本法人2社が保有する世界中の100%子会社は全て保有していると取り扱われる。以前はそうなってもCFCとなるかどうかとかのクロスボーダー課税検討の際には、Downward AttributionはTurn Offするという思慮深い例外規定があったが、この例外規定が税制改正で撤廃されて物議を醸しだしているのはみんなもご存知の通り。ちなみに、この検討時に米国法人のサイズは一切問われない。例えば、大手企業が趣味で米国に100ドル出資して50%以上の株式を保有するホットドッグスタンドやラーメン屋さんを設立したら、大手企業保有の全世界子会社は全てCFCとなる。合算持分が存在するかどうかは別の話しだけど。

この3つの基幹規定に加え、オプションの取り扱いが規定されていて、株式取得オプション保有者は対象となる株式を保有しているものと取り扱われる。株式取得オプションそのものを取得するオプション保有者に関しても同様。

で、一旦「みなし」保有規定に基づき、保有していると取り扱われると、「実際に」保有していると同様に取り扱われるのが原則。すると、そこから更に「みなし」保有が展開していくことがある。ただ、この点に関しては例外が2つあって、まず家族関係でみなし保有していると取り扱われる株式に関しては、その理由で更に他の家族メンバーにみなし保有を生じさせることはない。でないと先祖代々「ひいおじいさん・おばあさん」「ひいひいおじいさん・おばあさん」とか「曾孫」とかにも影響があったり、義理の両親とかに保有関係がいっちゃったり、と制御不能になってしまう。もうひとつの例外は、Downward Attributionされてきたみなし保有が事業主体から他のオーナーにUpward Attributionすることはない、というもの。これ以外の状況では、連鎖反応的に「反復適用」があり得る。例えば、子供が株式を保有している法人が保有している株式に関して、みなしで子供が保有していると取り扱われる場合、当株式は子供が実際に保有している同様に取り扱われるので(この時点では家族間のみなし保有規定の適用ではない)、親もその株式を保有していると取り扱われる(ここが家族間のみなし保有でここから他の家族メンバーには行かない)。となると、親がパートナーシップに少額でも出資していようもんなら、パートナーシップまで、この株式を保有していることになる。そして当パートナーシップが他のパートナーシップや法人の50%以上の持分を保有していると、それらの事業主体も・・、と「風が吹けば桶屋が儲かる」的にチェーンで繋がっていき、最初にチェーンをトリガーした子供とは一切関係がない者にも影響が及ぶことがある。

実際にTransition Taxの規則に取り上げられていた例だけど、米国パートナーシップに10%個人パートナーと5%の法人パートナーが存在してると仮定する。10%個人パートナーは外国法人の10%持分を保有している。90%の他の株主は全員非関連の外国人とすると、Transition Tax目的では、少なくとも一社10%の米国「法人」株主が存在しないと、Transition Taxの対象となる特定外国法人にならないとされていることから、個人パートナーだけを見れば当外国法人は特定外国法人には当たらないことになる。ところが、5%法人パートナーが米国内に100%子会社を保有しているとするとチョッと意外な展開となる。パートナーからパートナーシップに対するDownward Attributionで、パートナーシップは個人パートナーが保有する外国法人10%と法人が保有する100%米国子会社の双方をまるまる保有していると取り扱われる。この段階で米国子会社は実際にパートナーシップに100%保有されていると取り扱われるため、パートナーシップが保有する株式は全て今度は米国子会社にDownward Attributionしてくる。となると、パートナーシップが保有していると取り扱われる外国法人10%(もともと個人パートナーが実際に保有していた株式)は米国子会社保有となる。すると、この外国法人には少なくとも1社、10%以上の米国法人株主が存在することとなり、Transition Taxの対象となる。結果として個人パートナーは外国法人の1987年以降の留保所得に対してTransition Taxを支払うことになる。これはチョッと酷い、また多分知らぬが仏で終わってしまうのでは、ということで上述のTransition Tax適用時のパートナーシップへのDownward Attributionに限って、5%や10%の例外規定が適用されるに至っている。

と、Section 318の概要だったけど、これを知らないとクロスボーダー課税の米国パートナーシップの話しは全く通じないので簡単に背景を共有した。背景だけでだんだん長くなってきたので、次回はいよいよSection 318のクロスボーダー課税への適用に関して。

Tuesday, July 2, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (3)

前回のポスティングでは、GILTIにかかわる財務省規則が最終化されたのを機に、見直しが行われている米国クロスボーダー課税を考える際の「米国パートナーシップ」の取り扱いに関して触れ始めた。クロスボーダー課税を考える際の米国パートナーシップの位置づけは、テクニカルには過去長い間、燻っていた問題そのものだけど、以前はSub F所得というCFCが国外で認識する所得の極一部のみにかかわる「些細」な問題だったと言え、テクニカル面で複雑な割に、実務的には重要性に欠けていたことから余り時間を掛けて検討したりするインセンティブに欠けていたと言える。もちろん、賢い米国MNCは米国パートナーシップのSub F上の取り扱いが特殊な点に目を付け、CFCの下に米国パートナーシップ組成してSub F所得の「ブロッカー」にしたり、またIRSがそのようなプラニングに網を掛けようとしてNoticeを公表したり、と一部マニアックな世界ではエキサイティングな世界を展開していた。とは言え、マイナーな分野だった事実は否めないだろう。

そんな呑気な状況は、CFCが国外で認識する所得を米国株主側で毎期合算するGILTI課税の税制改正による導入で一変する。GILTIは、Subpart F所得と異なり、米国株主側の属性なので、誰が米国株主としてTested Income等を取り込み、それをどう加工してGILTI計算を行うのか、という従来のSub F所得合算では存在しなかった検討もこの問題の重要性に拍車を掛けていると言える。CFCの所得を毎期全額取り込むという新しい概念のクロスボーダー課税制度が導入されたため、CFCの課税所得をどのように算定するのか、という根本的な問題が他にも浮き彫りになっている。CFCの課税所得は、基本的には米国税法に基づき、CFCをあたかも「米国法人」かのように取り扱って算定、というのが従来のSub F所得時代からのルールだけど、この点も米国パートナーシップの取り扱い同様、従来はそれ程真剣に考えられていた感じはなく、CFCの課税所得を米国で毎期全額合算する制度に移行した今、ガイダンス不足の実態が白日の下に晒されている感じ。実際には米国法人でないCFCをどのように米国法人かのように考えて、米国税法を適用して課税所得の算定をするのか、というベーシックな検討の重要性が飛躍的に高まっている。この点は別の機会に触れるけど、CFCを米国法人のように取り扱って課税所得を計算するのであれば、米国法人にしか認めないと明確に法律で規定されているFDII控除をCFCで取ってみようとか、クリエイティブだけど、「なるほど・・座布団10枚」みたいな常識では考えられないような議論も登場してくる。財務省は「明らかに本当の米国法人にしか適用がない規定は、CFCには適用することは認められない」と常識的には当たり前だけど、法律の適用としてはとても難しいアプローチで、反論し今後ルールを策定をするとしている。

で、米国パートナーシップだけど、財務省のポリシー的な選択肢は元々2つのはずだった。従来のSub F所得同様に、法文を文字通り適用し、米国パートナーシップを合算米国株主としてパートナーシップレベルでGILTI合算させてしまうアプローチが一つ。または、Sub F所得と異なり、GILTIは米国株主レベルで複数のCFCの属性を通算させて計算するという立法趣旨を尊重し、Sub F所得の取り扱いから乖離して、米国パートナーシップを外国パートナーシップ同様にLook-throughしてGILTI合算を考える、というアプローチがもうひとつだ。後者は合算株主を定義している法文を文字通り解釈するとサポートが難しいが、逆にGILTIの立法趣旨はより良く反映しているアプローチと言える。ただ、後者を選択すると、米国パートナーシップが保有するCFCに対して、間接・みなし持分を加味しても10%以上の持分保有に至らない米国人パートナーが、GILTI合算対象から除外されるというチョッとIRSにとっては悔しい結果にもなる。かと言って前者のアプローチ、すなわち米国パートナーシップを合算株主と取り扱う考え方、は米国パートナーシップの利用したストラクチャーを工夫して、プラニングに利用されるのではないか、という懸念もあっただろう。例えば、不都合な属性を米国株主側で他のCFCの属性と通算しないでもいいよう、その部分だけ内部で組成する米国パートナーシップに保有させてみたりとか、Subpart F所得に対するブロッカー・ストラクチャーの例を見ても、米国パートナーシップが悪の温床となる得るリスクは現実のものだ。

このような不整合・不都合をバランス良く解消するため、2018年9月に公表された規則案では、両オプションの双方を組み合わせるという高尚なハイブリッド・アプローチを採択していた。ハイブリッド・アプローチでは、米国パートナーシップの米国パートナーがみなし持分保有を通じてパートナーシップが保有するCFCの10%以上の持分を保有するケース、すなわちパートナーシップばかりでなくパートナー自らも米国株主となっているケースは、米国パートナーシップを合算株主とせずLook-throughと考え、GILTI計算はパートナーシップ・レベルでは行わず、Tested Income、Tested Loss、QBAI、外国法人税等のCFC属性をパートナーに配賦し、米国パートナーが保有するかもしれない他のCFCの属性と通算してGILTI計算をする。その場合、米国パートナーが米国法人だと、50%のGILTI控除が取れたり、GILTIバスケットの外国税額控除が取れる、という追加メリットもある。

それ以外のパートナー、すなわちみなし持分を加味しても10%未満の持分しか保有しないパートナーは自らだけの状況を見ると米国株主には当たらないので、その者に関しては米国パートナーシップ・レベルでGILTI計算を行い、GILTI合算額そのものをパートナーに配賦する、というものだ。オプション2つを併用し、組み合わせているのでハイブリッド。

規則案で提案されたこのハイブリッド・アプローチはポリシー的には、バランスが取れていて確かに一理あるものだった。でも、その適用は複雑で、1065とかK-1とか作成するのは大変だっただろうし、従来からのパートナーシップ税制との絡み、例えば704(b)のキャピタルアカウントの考え方とかへの影響も複雑だった。規則案公表直後から、ハイブリッド・アプローチに対しては喧々囂々の議論があり、財務省にも反対意見が寄せられたことだろう。規則案公表後の業界や法曹界のパネルディスカッションに登場していた財務省やIRSのChief Counsel Officeの方も、この件に関しては、若干ディフェンシブな印象を受けていたので、規則最終化の際に何らかの形で簡素化されるだろう、と考えていた。

という訳で、ハイブリッド・アプローチは、志こそ高いものだったけど、実務対応面での懸念は大きく、最終規則では予想通り撤回され、全てのパートナーに関して、合算株主を決定する際に米国パートナーシップをLook-throughするという「Aggregateアプローチ」で統一されることになった。Aggregateというのは、パートナーシップ税法を語る際に、Entityアプローチと対比的に使われる用語で、パートナーシップはパートナーの集合体(なのでAggregate)と扱い、各パートナーに帰属するパートナーシップ資産、属性はパートナーそのものに属するかのように考えるアプローチを意味する。1954年の税制改正でSub Kが導入されてから、法人課税との比較においてAggregate概念は一貫してパートナーシップ税制のコアな原則だ。Section 752のパートナーシップレベルの負債を、パートナーの投資簿価に加算するような面倒な計算もOutside簿価とInside簿価を可能な限りタンデムにしようとするAggregateアプローチの現れだ。ただ、今回の税制改正では、Sectiton 163(j)の支払利息損金算入制限をパートナーシップレベルで適用したり、特定の状況にはEntityアプローチを適用したりしている。Aggregateアプローチを全体のアーキテクチャーとして構築されているSub KにEntityアプローチを散りばめたりすると、適用時の複雑性が大きく増す。400ページを超えるSection 163(j)の財務省規則案も、CFCと並びパートナーシップへの適用をどのように考えるかで苦労している。

GILTI最終規則で採択されたAggregateアプローチも、テクニカル面の理解は決して容易ではない。というのも、前回のポスティングでも触れた通り、Sub FやGILTIを考えるステップは、米国株主の特定、CFCの特定、合算株主の特定、合算額の計算、という複数のものだけど、各ステップに適用される外国法人に対する持分の考え方が異なっていて、この分野のことを四六時中考えているオタッキーな輩でもない限り、なかなか直感的に理解できるものではないからだ。

ここからは面倒な「みなし保有」規定の話しにならざるを得ないので、次回。