Friday, April 9, 2021

財務省によるバイデン「The Made in America Tax Plan」補足説明

昨日、上院財政委員会によるクロスボーダー課税改正案フレームワークに触れたけど、今度は財務省がホワイトハウスFact Sheetで提案された「The Made in America Tax Plan」の補足説明を公表した。

立法府の財政委員会と異なり、財務省はホワイトハウスと同じく行政府に属するだけに案自体はホワイトハウスのFact Sheetに記載されていたものを踏襲している。っていうか、方向は逆で、財務省のインプットに基づきホワイトハウス案が策定というか取りまとめられた訳なんで規定内容は同一。財務省の補足説明は、実際の規定の説明よりも、いかにTCJAで大企業がラッキーし、一般市民は窮地に陥り、オフショア化が加速したか、っていう民主党のナラティブに多くのページを割いている。これはホワイトハウス案や昨日特集した財政委員会フレームワークと共通のメッセージだ。

法人税歳入の各国比較

財務省の補足説明では、ホワイトハウス案同様、法人税率引き上げが正当っていう理由のひとつに、GDP比で米国の法人税歳入は他国より低いっていう指摘が数か所に出てくるけど、他国はCheck-the-Boxとかパススルー主体の活用が米国ほど普及してない点、環境が異なるんじゃないかな。米国では上場企業を除き、基本、ビジネスはパススルーなんで事業所得でも歳入は個人所得税って形で認識されるケースが他国より多いはず。TCJAの法人税率の引き下げ、199Aの使い勝手が思ったほど良くない点、で定量分析のバランスは若干シフトしたとは言え、同族企業とかがC Corporationというストラクチャーを採択するのはかなり稀。以前は買収時に必ずC Corporationに転換させてPEファンドだって、今ではポートフォリオカンパニーの多くをパススルーのまま所有することが普通になっている。敢えて言えば、ストックオプションとかのEquity報酬の設計を考えるとC Corporationの方がいいことがあるんで、一部のセクターではそれが理由で二重課税覚悟でC Corporationってストラクチャーでスタートアップすることはあるにはあるけどね。パススルーのProfits InterestをEquity報酬に使うこともテクニカルには問題ないけど、規則がややこしいし、従業員にW-2とは別にK-1とか出すと受け取った方は「何これ?」ってなって大混乱必至なんで確かにEquity報酬だけのことを考えるとC Corporationに一日の長があると言える。

ちなみに米国の法人(C Corporation)数は170万社と言われている(Tax Foundation調べ)。一方パススルー主体(S Corporation含む)は740万社、個人事業主2,300万人。個人事業主っていうと伝統的なSole Proprietor、フリーランサーとかギグワーカーを想像するかもしれないけど、DREを通じて事業を展開している個人単独オーナー(Community Property(夫婦共有財産)制度の州では夫妻2人オーナーのケースも可)を含むから結構な規模のケースもあり得る。日本の法人数は国税庁のデータによると約270万と米国より100万社多い。日本の個人事業主の数は明確ではないみたいだけど、YouTuberとかサイドでお小遣い稼いでるようなケースまで含むとフリーランサーが1,000万人程度と言われている(ランサーズ調べ)。

絶対額では米国の法人税歳入は$280B、パススルー経由の所得に対する最終オーナー課税を含む個人所得税が$1,900B程度。給与税(厚生年金や国民年金、老齢者医療保険等の社会保障税トータル)が$1,300Bだ。日本の財務省データによると日本の法人税歳入はザックリ10兆円。所得税は19兆円だ。100円換算で法人税$100Bなんで、主体数の割に米国法人税歳入は悪くない気がする。

これらの数字を見ても、ホワイトハウス案が法人税増税を正当化する一つの理由としているデータ、「法人税」歳入がGDPに占める割合の他国との比較、は実際のところ比較可能性が低いと思われる。前々回の「バイデン政権下のタックスポリシー(10) ホワイトハウス ・インフラ増税案「Fact Sheet」公表(2)」で、CTBのヒストリーとかチラッと触れたんでそちらも参照して欲しい。

財務省の補足説明にはOECD加盟国の法人税歳入のGDP比ランキングが載ってるんだけど、一等賞はなんとルクセンブルク。法人税歳入がGDPの6%を占める。確か法人税率17%程度なんだけどね。僅差で2位に付けるノルウェーも法人税率は22%。米国が21%から28%に引き上げる理由としては説得力に欠ける感じ。そもそもルクセンブルクもノルウェーも米国と経済環境違い過ぎるしね。ちなみに日本は6位。最下位はギリシャで%が表示されてないように見える。法人税は普通にあるはずだからGDPとかのデータがなくて計算できないのかな。まさかね。米国は36ヵ国中33位に位置しビリから4番目。

またイエレン長官が他国にメッセージ発信しているのと同期する形で、自国が世界一レベルの法人高税率に復活するに当たり、「Race to the bottom」を避けて法人税率を高止まりさせないといけないと他国を牽制している。OECD加盟国の平均法人税率は1980年には45%だったものが、2000年には32.2%、現在では23.3%まで凋落していると嘆いてるけど、まさかみんなで結託して45%レベルに戻そうって訳じゃないよね。23%を「Bottom」な異常値とみるか、VAT等も組み合わせて正常なレベルと見るかは解釈によるけど、経済のグローバル化やデジタル化に伴い、法人税っていう制度自体が経済実態に馴染まなくて限界に近くなってしまい、そんな制度下でグローバル課税ルールをあれこれ変えても所詮は時間稼ぎに過ぎないことを認識し、米国も少なくとも使用地ベースのVAT導入、欲を言えば2017年の税制改正前にUC Berkeleyの経済学者が押していた斬新なDBCFT的な抜本的な新制度の導入を真剣に考えるべきだろう。そうすればグローバルで真の「Leadership」を発揮できるし、Base Erosion とかInversionの懸念も大概において払拭される。

で、具体的な税制内容に関して、財務省の補足説明には、ホワイトハウス案に関して面白い追加説明がいくつかあるのでそれらの点に関してまとめておく。

BEATはSHIELDに

BEATは撤廃し、代わりにStopping Harmful Inversions and Ending Low-tax Developments、略して「SHIELD」を導入するとしている。BEAT、GloBEとかSHIELDとかバンド名みたいで名前はいかしてる。ただ、Low-tax Developmentsってチョッと無理やりSHIELDにした感がありあり。僕だったら「Sheer Heart Innovation and Extremely Lean Discipline」とかにしたかも。意味をなしてないって?確かに。

SHIELDは概念的にはピラー2のUTPR。国外関連者に支払う費用のうち、支払先の国でグローバルミニマム税率以上の法人税が課されない場合には、損金不算入とするというもの。トリガー税率は今後合意する「Strong」なグローバルミニマム税率としてるけど、グローバルミニマム税率に合意する前にSHIELDを導入する場合には、GILTI税率を参照するとしている。っていうことは21%。そんな国いっぱいあるだろうし、CFCに費用支払ってSHIELDで28%の損金効果が否認され、その上それがTested IncomeでフローアップしてきてGILTIで21%課税だとすると、100の費用支払って実効税率49%?算数おかしいかな。

SHIELDのBase Erosion にかかわる説明で面白いのは、「外国」法人がタックスヘイブンに所得を迂回させているのでSHIELDが必要と記載している点。外国法人より米国法人が激しくBase Erosion しているのは2008年に財務省自らが取りまとめたレポートで明らかになっていたはず。同じ外国法人でも昔米国法人だったInversion法人は派手にBase Erosion に従事しているっていう結果も出ていた。

で、これがSHIELDのELD部分だとすると、次はSHIの部分。すなわち米国税法がTCJA前の著しく不利なものに逆戻りしてしまうと、米国法人では国際競争に勝てないということで国籍離脱のInversionが横行するのでは、っていう懸念に予め釘をさすためInversion規制強化。

Inversion規制強化

そう。Inversionです。オバマ政権末期のフラッシュバック。現状Section 367と並ぶInversion規定であるSection 7874はブッシュ政権の2004年のJobs Actで法律になってるけど、これを行政府の権限で徹底的にタイトにしたのがオバマ政権時代の財務省。ファイザーがアイルランドに国籍離脱するDealがサインされた後に、ファイザーのDeal阻止のためと言ってもいい規則を慌てて策定し、ファイザーのDealはClosingしなかった。確か税制規則が余りに不利に変更された展開をもってMAC条項をトリガーしてBreak-up Feeとかなしで契約解消したんじゃなかったかな。section 367やsection 7874のIncome Taxに加えてInversionする法人幹部のEquity報酬にはペナルティ課税が適用されることもある。7874と同時に法律化された4985だね!Jobs Act懐かしい。2004年だから17年前だ。最終化された時、南カリフォルニアのLa Cienegaドライブしてて、慌ててToys"R"Us(もうなくなっちゃったんでちまたでは「Toys"were"Us」なんて言われて気の毒)のパーキングロットに入ってアラートをドラフトしたのが昨日のことのようだ。2017年TCJA可決時は確かニューヨークのChelseaに居て、またしても慌ててChelsea Pierのスケートリンクでアラートドラフトしたような。もしかしたらロンドンのシティーでこちらも慌ててPret a Mangerに飛び込んでドラフトしたんだったかも。シティーは上院可決の時だったかもね。民主党増税が可決する時間は果たしてどこにいるでしょうか。寒くなる前だったらSouth DakotaのBlack Hills辺りか、東の州境のSioux FallsとかMindをFreeにしてくれる場所で書けるといいな~、って今から楽しみ。

Section 7874を乱暴なほど簡素化して言うと、外国法人による買収・合併その他の取引後、ターゲット米国法人の旧株主が継続して外国法人の80%以上の持分を所有していると, 外国法人の本拠地で買収後のグループ事業の25%以上(人件費、資産、グロス所得ベース)が従事されてないと、Inversionして外国法人になったつもりでも米国税法上は米国法人と取り扱うっていう規定。会社法上は外国法人だからDual Residentとかなって条約使えないとかややこしい。また、持分継続が80%には至らないまでも60%以上だと米国税務上も晴れて外国法人にはなれるけど、その後10年間に亘り、本当の外国法人であれば米国課税ネットに引っ掛からない譲渡益等で構成されるInversion Gainが米国で課税対象になる、っていうもの。Section 7874導入前はこの手の組織再編や「買収」は自作自演のもので、究極の株主構成とか変わらない単独Investionが多く実行されていた。Section 7874で、もともと米国外のどこか一国、しかもある程度低税率な国、で主たる事業に従事してたVirgin MediaやTim Hortonsケースみたいな特殊例を除くと、少なくとも誰か結構サイズの大きい別の法人や投資家が絡まないとInvestionできなくなったんだけど、その基準を法律以上に「がんじがらめ」に締め付けたのが上述のオバマ政権時代の財務省規則だ。未だに行政府による越権行為と見る者も絶えない。

で、財務省の補足説明によると、バイデン増税案下では、Section 7874のみなし米国法人規定をトリガーする持分継続基準を80%から50%に引き下げるっていうもの。TCJA以降、勝負は60%になるかどうかだったから、80%からいきなり50%とは思い切り下がるね。余りに下がり過ぎて違う法律みたい。株主レベルのInversion規制に当たるSection 367と同じレベル。また、仮に持分的にInversionに成功しても、管理・支配が米国に残っているとみなされると、その場合も米国税法上は米国法人と取り扱うとしている。この管理支配基準は以前から提案されては消え、を繰り返しているので果たして議会は取り上げるか疑問。

それにしてもInversionはもう絶滅種に指定されたに等しいかなって思ってたけど、最近Inversionをまた耳にするようになったのはSPACのストラクチャリング。SPACは上場時点で米国内外どちらのターゲットと最終的にDe-SPACするか不明なので、米国企業としかDe-SPACしないって決めてるSPACは別として、上場時点ではケイマン諸島に設立されるケースが多い。その後、ターゲットが米国法人の場合は、そのままDe-SPACするとInversionになるので、SPAC自体をDomesticationさせるしかない。InboundのFだ。逆に万一、米国内事業のみをターゲットにするつもりでSPACをデラウェア州とかに設立してて、後から外国法人とDe-SPACするような事態になると、米国法人がトップに来るのは得策ではない、っていうかバイデン増税が実現したら不合理極まりないので、SPACをOutbound Fかなんかで外国法人に生まれ変わらせよう、ってことになるけど、その行為自体がInversionになる。ということで、最初からSPACをデラウェア州法人にしたりするのはチョッと勇気がいる。見方によっては向こう見ず?この手の取引、仮にSection 7874のInversion規定を克服できたとしても、株主レベルのSection 367課税や上場で得た資金をDe-SPACまで信託に眠らせてる期間にかかわるPFICの問題とか、多くの複雑な問題を伴う。CarryみたいなスポンサーのクラスB株式の課税関係とか個人所得税側の問題もかなり面白い。PEファンドのスポンサーが、共通のノウハウは流用できるとは言え、投資概念的に全く異なるSPACに積極的なのは、実質Carryを1061の縛りなく受け取れるっていう旨味に魅かれているんだろう。SPACは相当前からあるけど、コロナ禍の2020年に急に息を吹き返した面白いBlind Pool的なストラクチャーで、Inversionその他の課税検討事項が満載なExcitingなトピックなんでいつか特集してみたい。

SPACが急激に件数を伸ばし、ほこりをかぶっていたInversion規定を再度復習する機会が増える一方、製薬会社とかがアイルランドにInversionするとか「伝統的な」InversionはTCJA以降、ほとんど聞かない。SPACのInversionってSHIELDが網を掛けようとしているBase Erosion のG線上のアリア、じゃなくて延長線上のInversionとはチョッと異なる感じだけどね。

ただ、共通する問題としてはあんまり米国法人税制度を不利なものに戻し、かつInversionも不可能に近くしてしまうと、最初から米国には法人を設立しないのがベストっていう単純な結果になる。北風ビュンビュン吹かせてコートを飛ばす作戦は過去の例からいたちごっこに陥るように見えるし、北風がいくら凄くても旅人が来なければコートも飛ばせない。大手米国外企業が米国法人を買収する際の有利不利にも少なからず影響があり得る。自ら吹かす北風がバイデン政権が目指す「アメリカの投資促進」の向かい風になって自分たちのコートが飛んじゃわないといいけどね。

Inversionは学術的には面白い規定なので5年ほど前にナンと「23回」のポスティングに亘り特集したことがあるから、JOHN LENNON/PLASTIC ONO BANDのThe Ultimate Collection Deluxe Box Setをプリオーダーしようかどうか迷ってる人はまずInversionのDeluxe Box Setの「Inversion/インバージョン(プラスSpin-Off)(1)」シリーズに目を通してみて欲しい(?)。

SHIELDはあくまで行政府の提案であり、昨日触れた財政委員会フレームワークでは代わりにBEAT強化がうたわれているんでまだまだ最終的な方向は未定。グローバルミニマム税強化をOECDやIF各国に強制したいがために、ピラー2の実現可能性に配慮し評判の悪いBEATをUTPR化しようとしているのかもしれないけど、BEPS 2.0への協調体制にかかわる議会側の反応も現時点ではまだはっきりしない。共和党下院議員は財務省に現状の説明を求める書簡を送ったりしてるようだけど。

税引前利益15%ミニマム税

財務諸表の税引前利益に対する15%ミニマム税はバイデン選挙活動中からの提案だけど、財務省は対象を税引前利益$2B以上(100円換算で2,000億円)の法人に限定するとしてホワイトハウス案を緩和している。 税引前利益が$2B以上の米国法人は約200社あり、バイデン政権の増税案を加味した後で、うち45社が15%ミニマム税の対象になるという試算結果が共有されている。これらの「Sky-High」的な利益を認識する法人にフォーカスすることにしたそうだ。

Sky-High、いいね。さすがに僕もまだ子供だったけど、UKのJigsawっていうグループがその昔、大ヒットさせた曲の名前と同じだ。ファルセット・ボーカルにエコーが掛かって神秘的に始まり、それがサビでメジャーになって一気にクライマックス、みたいな気持ちいい曲でした。あの頃のUKって、まだビートルズがそのうち再結成するんじゃないかみたいな甘い夢を見ながら、再結成の日が来るまではポスト・ビートルズが誰かっていう探索下、ビートルズのサイケデリック的な部分を継承したPink Floydみたいなバンドと並び、ビートルズの歌ものっぽい部分に触発されたポップグループが登場しては消え、みたいな時代。Pilotとかもそうだけど、Jigsawも曲調はそんなノリ。もちろん当時は音しか聴いたことなかったけど、今では簡単に動いてる姿を見ることができる。大概のケースで音から想像してたイメージが壊れるんで見ない方が子供の頃の夢をキープできる。Jigsawもそうで、「Sky-High~」のコーラス部分でメンバー全員がのけ反ったりしてて凄い。結局のところビートルズを超えるどころか、どの存在も足元にも及ばなかったし、ビートルズ自体の再結成もなかったね。ビートルズってもちろんArtisticな価値も凄いけど、4人揃ってカッコいい珍しいバンドだったよね。家の応接間にある家具みたいな(笑)ステレオでよくいろんな曲聴いたな。何枚もレコード買うお小遣いなかったからHey Judeのシングルとか数枚しかなくて、毎日繰り返し同じレコード聴いたり、友達のお兄さんが持ってた「LP」をカセットにダビングしてもらってテープが伸びるほど聴いたり、FM東京でトップ10聴いたり。応接間のステレオ、当時一瞬だけ流行ってた4チャンネルのステレオだったような…。

ちなみに後から見る動画で、逆に動く姿を見て評価が高まったのはJimi Hendrix。レコードで聞くHendrixって、Bold as Loveに入っている曲のバッキングのギターとか、Cry Babyの使い方とかマネできないな~って思ってたけど、伝説ギタリストと言われる理由が今一つ良く理解できてなかった。ロンドンでクリームのステージに飛び入りして神様クラプトンが「ブっ飛んだ(Blown Away)」ていう話しは東京で普通に生活している子供達にも伝わってきてたんだけど、なぜそこまでの存在なのかチョッと不思議だった。ところが、映画館や厚生年金ホールでWoodstockとかモントレーPop Festivalの映画(インターネットなかったんで)を見てビックリ。超人+天才っていうのはああいう人のことを言うんだなって納得。特にモントレーはアメリカデビューで(Hendrixはシアトル出身だけど、アメリカでは最初ヒットせず先にロンドンでチャス・チャンドラーに発掘されマーキーとかで有名になり、SGT Pepper前後の金字塔時代のビートルズとかも見に来ていたという話し)、ロンドンのライブハウスでやってたんであろう頃の勢いが炸裂してて、文字通りブッ飛んでしまった。それからしばらくRock Me Baby (後年のLover Man)のイントロを(グレコの)ストラトでコピーようと試みたけど、結局、子供の僕には一年経っても全然できなかった。Blackmoreとかってテクニカルだけど時間かければコピーできる一方、Hendrixだけはマネできなかった。今落ち着いて見てみると6弦がどうしてあんなに唸ってるか分かる気がしてきたけどね。この歳でHendrixコピーしてもチョッとね(苦笑)。

で、Sky-High増税大賞受賞の栄誉に輝く法人は上述の通り45社。補足説明では、15%ミニマム税に抵触するSky-High法人の一社当りの平均追加法人税は毎年$300Mっていう試算結果が出てるんで、プラスの歳入はSky-High合計で$13.5B。法人税歳入総額が$280Bだから、この増収は大きい。想定されるFTCの金額とか公のデータでは分からないんで45社の申告書とか見たんだろうか。歳入増はSky-Highだけど対象法人数は極端に少なくてRock-Bottom。上で触れた通り米国の法人(C Corporation)数は170万社で、そのうち45社だからほとんどゼロ%に近い。身元も割れてるだろうから、狙い撃ちで、そんな法律って刑法だったら「A bill of attainder」で憲法違反みたいだよね。

15%ミニマム税の計算時には、FTCばかりでなく、R&Dやクリーンエネジー、低所得者住居を含むクレジットを加味してくれるそうだ。使用限度額とかCarryoverとか通常の法人税とは別トラッキングする必要が出てくるだろうから、面倒そう。せっかくAMTなくなったのにね。この「The Made in America Tax Plan」、会計事務所の雇用には絶大な効果かも。TCJAやCARESで既にキャパがいっぱいなので、テクノロジーの駆使もMust。

ということで今日は財務省の「The Made in America Tax Plan」補足説明でした。いろいろと資料が乱発気味で整理が大変だけど、実際の審議はまだまだこれから。

Thursday, April 8, 2021

上院財政委員会がホワイトハウス案とはチョッと異なるクロスボーダー課税改正フレームワークを公表

ここ2回のポスティングでは行政府に属するホワイトハウスの増税案「Fact Sheet」の「The Made in America Tax Plan」に触れた。昨日、今度は立法府の議会、それも上院財政委員会が独自のクロスボーダー課税の改正フレームワークを公表した。「多国籍企業にフェアシェアの税金を負担させ米国民に投資するフレームワーク」という格好いい副題付きだ。

ポリティシャンの資料はどっちの政党が作成するものも「American People」のため云々とかそれらしい枕詞が付く。実際の「People」はポリティシャンにそんなことして欲しいって思ってるかな、って考えさせられることもあるけど。

一般Peopleはもちろんのこと、一般議員さんもGILTIとかFDIIが云々と言われても内容分かってないだろうし、分かる気もないだろうから、クロスボーダー課税のあり方に関して本当の意味での政策議論には至り難い。その意味で、財政委員会フレームワークやFact Sheetが大前提として掲げている「阿漕な大手企業を懲らしめるぞ」っていう銭形平次や水戸黄門風の部分に一番インパクトがあるんじゃないかな。そこをどう「感じる」かで自ずとその前提に基づきその後展開されるGILTIとかの話しもついでにどう受け止めるか決まるんだろう。例えば、大企業はけしからん、って思ったら、その後にGILTIからQBAIカーブアウトを除外するって言われても「それではメーカーがかわいそうでは...」とか思わず、なんかよく分かんないけど「そうだそうだ」となる確率大。テクニカルな詳細とか、実際の経済的なインパクトは結局のところ多くの人にとって無意味に近い。なんだかな~、って感はあるけどね。

一般に共和党との比較で民主党は、大手企業とPeopleを対比、っていうか敵対関係にあるようなフレームワークで論じることが多いけど、企業もPeopleが作ったもので、たくさんのPeopleに給与支払ったり、健康保険を手当てしたり、街への寄付とかして頑張ってるケースも多くあり、また大手企業で働いてないPeopleにとっても、退職後の資産は多くのケースで401(k)やIRA等を通じて大手企業のマーケットキャップとリンクしている。つまり結構なケースで、実は一心同体だったりする。米国や世界を救ったワクチン開発のスピードを見ても、米国の繁栄の基盤は政府やポリティシャンの政策ではなく、民間企業の力にあるっていう現実を加味して、長期的に米国企業とPeopleが共に繁栄できる政策の策定を願いたいところ。ただ、こんなことは僕が言うまでもなくバイデン政権の重鎮たちはファンドや投資で有能に蓄財しているスマートなキャピタリストたちも多い訳だから良く理解した上での話しなんだろうけど。

TCJAで勤勉な市民は窮地に?

で、財政委員会フレームワークは、TCJAを徹底的にこき下ろし、大企業はTCJAの恩典で繁栄している一方、勤勉な一般市民は生活必需品の購買、家のレントの支払いもTCJAの弊害でままならない、いう観測から始まる。コロナで多くの州知事が経済をロックダウンさせるまで、TCJA下、2020年2月の段階で失業率は各州で史上最低を記録するに至っていた事実を考えると、TCJAが理由で勤勉な市民が以前より窮地に陥っていたというナラティブはチョッと釈然としない。

TCJAでオフショア化に拍車?

また、TCJAは、米国外所得を半分しか米国で課税しないという恩典(50%GILTI控除のこと)を多国籍企業に与えたため、ますますオフショア化が進んでしまった、って嘆いてるけど、TCJA前は米国外所得は分配されるまで0%課税だった点(したがって誰も国外所得に米国法人税を支払っていなかったに近い)、TCJAはGILTIと並行してFDIIを導入することで、米国企業の国外事業からの所得はどこから行っても13.125%の実効税率としLevel Playing Fieldとした点、を考えるとこちらの憶測もそうなのかな~、って思ってしまう。

GILTIもFDIIもフォーカスはペーパーワークひとつでどこの国にも比較的容易に持ち出せたり(実際にはそう簡単ではないんだけど物理的な財産を動かすよりは楽なはず)、米国に置くことができる無形資産およびそこからの超過利益。今日の経済の実態を良く反映している。そのため、設備とかの有形償却資産から認識されるルーティン所得はGILTIやFDIIの対象ではなく、米国でも米国外でも現地で普通に課税されればそれで終わり。GILTIやFDIIの算式上、設備等を米国外に所有する方がGILTIの弊害は下がり、FDIIの恩典は上がる。この点は、確かに財政委員会フレームワークやホワイトハウスのFact Sheetが指摘するように、設備を米国外に置くインセンティブとなる。算数的にはそうだけど、実際にはGILTIのQBAI(ルーティン所得としてGILTIから除外される金額の基となる資産簿価)を増額したり、FDIIのQBAIを減額するためにわざわざ国外に工場とか移すかな?無形資産と異なり、簡単に引っ越せないし、工場とかって市場国への近接度合い、労働力、賃金コスト、カントリーリスク等、を基にベストなロケーションを選択するケースが大半じゃないだろうか。さらの巨額の富を築いているハイテク企業の価値はほとんど無形資産なので、有形償却資産をどこに位置させるか、はGILTIやFDIIが主にフォーカスしていると思われるセクターには余り重要な検討でない気がする。逆にQBAIのカーブアウトは工場を市場国の近くに設立したりするメーカーには大事な除外金額だ。

この財政委員会フレームワーク、筆者は委員会議長のワイデン(オレゴン州)を筆頭に、ブラウン(オハイオ州)、ワーナー(バージニア州)の3名。もちろん全員民主党だ。「バイデン」のホワイトハウス案に「ワイデン」の財政委員会フレームワーク。韻を踏んでて面白いね。ワイデンは全ての資産をMark-to-Marketで毎期課税しようっていう提案をしてたことで知られている。全てMark-to-Marketで課税する制度では、Tax-Free Reorgとか意味を持たなくなってしまう。

財政委員会フレームワークの大概の方向性はホワイトハウスのFact Sheetに準じてるけど、いくつか面白い差異があり、その点を中心に簡単にまとめてみると次の通り。

GILTIはカーブアウトなしの28%?

GILTI計算時のQBAI(みなしルーティン所得除外)撤廃はFact Sheetや財務省高官の学界時代の論文と整合性がある提案だけど、財政委員会フレームワークではQBAI除外を筋の通らないインセンティブと位置付けて撤廃するとしている。QBAIリターンはテリトリアル課税の恩典にあり付ける数少ないCFCの所得だったんだけどね。これがGILTI対象となると貴重なテリトリアル課税対象の原資がまたひとつなくなってしまう。この話しはコロナ前夜の2020年前半に「絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得」っていうシリーズで特集しているので興味があったらぜひ参照して欲しい。

GILTI増税はホワイトハウス案では21%だけど、財政委員会フレームワークではナンと米国の法人税率と同じレートにアップする可能性も示唆している。でないと真のワールドワイド課税にならない、ということ。え~、いつから真のワールドワイド課税に移行することになったの?紛いなりにもテリトリアル課税に移行したのかと思ってたんでチョッとビックリ。

GILTIがグローバル・ブレンディングな点を問題視しているのは財政委員会フレームワークも同様だけど、ホワイトハウス案のようにGILTIに国別バスケットを導入するのも一案とした上で、代替案としてCFCを低税率国と高税率国に属する2つのグループに大別し、高税率国グループに属するCFCには高税率除外規定でGILTI不適用とし、低税率国に属するCFC群をひとつのGILTIバスケットにまとめてFTCを算定するような方向性を示している。財務省がGILTI高税率除外を規則と言う形で規定・公表しているけど、それとは若干異なる新高税率除外を法文で規定するようなイメージだろうか。現時点の高税率除外規則は法的に行政府に認められる権限を逸脱していると考える向きもあるので、議会がきちんと高税率除外を法文に盛り込むのはウェルカム。ただ、財政委員会フレームワークでは高税率を米国GILTI税率に合致させるような方向で、仮に21%とすると、多くの国が「低税率国」になってしまい、低税率国群内でブレンディングを認めるとなると疑似グローバルブレンディング化するんじゃないだろうか。現状ではGILTIバスケットはExcess Creditのケースが多いと思うけど、バイデン・ワイデン案のGILTIワールドではGILTI税率が高すぎるので、FTCは取り切れてExcess Limitationとなるケースが多いだろう。GILTI税率を基準に高税率除外規定を設けると、基本Excess Creditの状況にはならない。

FTCのルールも変わるのかもしれないけど、今のFTCシステムだと、GILTIの表面税率が21%になったとすると、FTCとして適用できる外国法人税は80%が上限だから、GILTIのグローバルミニマム税率は実質26.25%になる。州税入れると30%強。これってグローバルミニマム税じゃなくてグローバルマキシマム税状態。EUもそこまでして自国の企業ダメにはしないでしょ、ってWSJがこき下ろしてたけど、グローバル所得に毎期30%課税されたら米国多国籍企業の競争力はガタ落ち?どうなることでしょうか。

GILTIでトリガーされる最終税額を語る際にはFTCがキーだけど、FTCを語るには費用配賦・按分がキー。R&D費用のFTC計算時の配賦・按分法に関しては規則がアップデートされたばかりだけど、財政委員会フレームワークでは米国で行うR&Dの費用やマネージメント費用は全額米国源泉に配賦するとしている。昔からあるR&D費用のExclusive配賦法にチョッと似てるけど、それを更に強化したような感じ。マネージメント費用って何のことか明確じゃないけど、Stewardship費用のことかな。こちらもつい最近規則が最終化されているけど、当然GILTIバスケットに配賦が求められていたので、もし国内のみに配賦するのであればウェルカム。ついでに支払利息もExclusiveに米国源泉に配賦ってしてくれたらいいけどね、って言ったらバイデンやワイデンにいい加減にしろ、って笑われるね。

ちなみにホワイトハウス案で国別バスケットにする場合、各国バスケットに既存の費用配賦・按分法でFTC限度額計算するのかな。4つのバスケットでも大変な騒ぎなのに、100のバスケットとか出てきたら大変そう。支払利息とか各国のCFC株式税務簿価に基づいて按分したりするんだろうか。TCJAとCARESでコンプライアンス負荷は限界に達しつつあるけど、ダメ押しだ。

FDIIは別の姿で温存

財政委員会フレームワークは、ホワイトハウス案とは異なりFDIIは廃止していない。ただ、GILTIのミラーイメージで残る訳ではない。今のFDIIは米国法人の課税所得がルーティン所得を超える部分を「Intangible Income」とみなし、そのうち米国外の顧客に帰する部分が対象となる。財政委員会フレームワークではこの「Deemed Intangible Income」を「Deemed Innovation Income」に置き換えるとしている。Deemed Innovation Incomeっていうと何か凄そうな予感を与えてくれるけど、実は米国で生じるR&D費用や従業員トレーニング費用のこと。全然Incomeじゃないじゃん、って思うかもしれないけど、これを「みなしで」Incomeにするということらしい。なんか変だよね。同じDIIでも内容は大違い。FDIIもForeign Derived 「Innovative」 Incomeと改名し、「Intangible」への言及は抹殺。既存のFDII算定式では、DIIをDEIの全額と外国派生額で按分するけど、財政委員会フレームワーク案も最後はR&D費用等を外国派生ポーションに按分するんだろうか。でないとただのR&Dクレジットみたいだし、名前にあるForeign Derivedっていう部分の意味がなくなっちゃうよね。所得でなく費用を見るところが分かり難いFDII。

FDII適用税率はGILTIに合わせるとしている。つまり21%。これは高い方がいいからグッドニュース。財政委員会フレームワークでは、今の仕組みはGILTIは10.5%でFDIIは13.125%で国外所得を優遇しているので統一するって書かれてるけど、GILTIバスケットのFTCに使える外国法人税は80%で頭打ちだから、米国側のGILTIバスケットへの費用配賦・按分を無視するとしても、国外で13.125%の法人税を支払っていないとGILTIは消えないんで、FTCとは関係ないFDIIとはここでバランスを取ってると思うけどね。つまりFTCの規定を変更しないと、双方の表面税率を21%としてもFDIIは21%でGILTIは26.25%。ただ、新FDIIはGILTIと全然ミラーイメージじゃないんで税率だけシンクロさせてもあんまり意味がないような...。

BEAT改造

BEATも今のままでは見た目ばかりで実効性がないコケ威しだと扱き下ろし、再生可能エネルギーや低所得者住居クレジットの恩典を減額していて弊害が多いとしている。これは面白いコメント。というのはBEATミニマム税計算目的では、税額控除は認められないのが原則な中、2025年まではR&Dクレジットは全額、再生可能エネルギーおよび低所得者住居クレジットは80%までBEATミニマム税の減額目的で使用が認められているからだ。おそらく80%に減額されてる点を問題視してるんだろうけど、他のクレジット特にFTCとかは全く加味できないんで、それに比べると優遇されてるように感じていた。財政委員会フレームワークでは、米国投資を促進する目的で議会が規定しているクレジットはBEATミニマム税目的でも全額認めるべきとしている。更にFTCを認めるかどうかは、BEATから予想される歳入増次第ということ。BEATが租税条約違反ではないかという議論の主たる根拠はFTC否認、と言っても実質は21%のうち10%部分否認みたいなもんだけど、にあったのでFTCを認めれくれるのであればかなりすっきりする。

BEATミニマム税は現時点ではBase Erosion Benefitを加算調整した課税所得に10%を掛けて特定のクレジットで減額して計算されるけど、財政委員会フレームワークでは通常の所得は10%で、Base Erosion Benefit部分にはより高い税率を適用するとしている。BEAT税率を二重構造とすることで、「Base Eroder」(Day Tripperみたいな響き!)にフォーカスした制度にするということだ。

GILTI、FDII、BEAT、全部用語はTCJAのままだけど、内容は別物だね。ってそうこうしている間に今度は財務省がホワイトハウス案の補足説明を出してるので、次回はそっちを特集したい。

Friday, April 2, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(10) ホワイトハウス ・インフラ増税案「Fact Sheet」公表(2)

前回はバイデンのホワイトハウスが$2Tにのぼるインフラ投資案およびその財源としての増税案を公表したThe American Jobs Planにかかわる「Fact Sheet」に関して簡単に速報した。34ページで構成されるFact Sheetに占める増税案部分は「The Made in America Tax Plan」と別セクションになってるけど、僅か4ページの極めて大雑把なものだ。

それにしてもこれだけ派手な増税構想を打ち上げ、大企業を悪の枢軸かのごとく徹底的にやりこめた挙句に「これらのステップを通じてアメリカへの投資を促進する時がきました」って締めくくるあたり、どの世界もポリティシャンっていうのは厚顔無恥じゃないとやってけないよね。冗談みたいで思わず笑ってしまった。「The Made in America Tax Plan」ね。確かにカーブアウトなしの21%グローバルミニマム税はアメリカならではのイノベーション!

法人が税法上の「Loophole」を活用していてとんでもない、っていうコメントが炸裂しているけど、「Loophole」そのものを最初から法律に盛り込まなければいいと思うんだけどね。ここで言う「Loophole」の多くって、長年掛けてポリティシャン(ロビイスト?)が、民間に従事して欲しい分野とか投資して欲しい活動を優遇するために法律化してきた規定の多くが含まれるはず。Loopholeっていうと脱法的っていう含意があるけど、実際には議会にごちそう出されて食べたら怒られるみたいな状況?その意味では、新規に規定される、または既存の恩典が延長・拡張されることが想定されるクリーンエネジーに対する優遇措置だって結局は「Loophole」の一部を構成するようになる訳で、政府やポリティシャンが経済活動にアクティブに関与しようとする限り、必然的に税法に政策的な「Loophole」が増え続ける。その「Loophole」、使ってもらうために用意されるので、当然民間に活用してもらわないと意味がないのでは。つまり議会が制定した「Loophole」を合法的に使用しておかしいことはないし、その運用に際してはこれでもか、っていう詳細かつ複雑な財務省規則が公表されるのでコンプライアンスするにはそれなりのコストも掛かる。Fact Sheetが糾弾している大企業による外部アドバイザーを起用して検討する「Loophole」の利用っていう場合の、「Loophole」のどれだけがそのような政策に基づくものなのか、または阿漕な脱法的プラニングなのか、は不明だけど、個人的な経験から法的に怪しいことは少ない気がする。法人税制度自体に限界を感じるので今の経済に即した、Base Erosion という概念すら存在しない消費地ベースの新たな課税制度の導入を検討してみるしかない。

バイデン自身だってファーストレディのジルと共に、高齢者医療の財源となるMedicare社会保障税の節税のためS法人経由で所得をBookし、$13Mに上る所得に対する社会保障税を支払っていないというLoopholeを利用したアグレッシブなプラニングに従事してる、っていう報道があったけど、それだって合法的だったらある意味仕方がないし、問題があるんだったら最終的には議会が法律を変えるしかない。

ただ、多くの「Loophole」が税法を複雑にして、コンプライアンスの負荷が上がり、勝者・敗者が出るのはその通り。また、これらの「Loophole」をサポートするため、表面税率を高く設定しないといけなくなるので、以前から税法簡素化の話しがでるたびに特定Interestに与えられる「Loophole」を撤廃して、代わりに皆に適用する税率を低くするべきという議論は出るんだけど、結局ロビイストとかの暗躍で実現困難だろうね。政府やポリティシャンが恣意的に決めるクレジットとか、結局はウォールストリートが現金化してたりして、狙った通りの効果が得られないケースも多そうだしね。

敗者と言えば化石燃料関係に従事する企業。Fact Sheetでは「汚染者」という名で糾弾した上、税法上の全ての恩典を取り上げると宣言している。もちろん環境に悪いことはよくないし空気もきれいに越したことはなく、ようやくクリーンエネジーが実用に至るテクノロジーが整ってきたんだと思うけど、今まで長年、国民に必要なエネジーを提供し、安全保障上も最重要なセクターのひとつであるが故に議会が特別な恩典を規定していたんだろうけど、用なし(?)になったとたんけちょんけちょんだ。「汚染者」ね。もう少し大人っぽい表現を使っても良かってリタイアさせてあげてもよかったんでは、って感じたけどね。自分が年取ると、ワシントンのポリティシャンや世の中全体がなんか子供っぽく見えることがあって、ジェネレーションのGapってこんななんだな~って痛感して反省(笑)。レーガン(共和党)とTip O'Neill(民主党)の2人みたいな大人の世界の米国にはもう戻ることはないのは分かるけど、オバマ(民主党)とJohn Boehner(「ベイナー」って発音します)(共和党)の2人の間柄だって、レーガンとO'Neillと比べるとかなり最近だけど、まだアダルト感が残ってたように思うけどね。Old-Fashion過ぎるって?かもね。バイデン自身はもちろん僕より更に2ジェネレーションくらい上かもしれないけど、Fact Sheet書いてるのはもちろん本人じゃないし。

で、バイデン政権の増税規模の壮大さには度肝を抜かれるけど、考えてみれば現時点ではあくまでも行政府側の提案なので、中庸民主党議員とかが抵抗を示して、若干譲歩したようなフリして、それでも結局は結構な増税という路線なのだろうか。前から何回か触れている通り、個人的には28%まで上がるとは未だに信じてないんだけど、あそこまで法人のことけちょんけちょんに言ってるからには相当近くまで引き上げられるのかな。前も触れた通り、法人税が歳入に占める割合って少ない。Fact Sheetにも、1980年以前はもっと比率が高く、税率を引き上げてその頃の比率に戻すというようなコメントがある。ただ1980年以前って、1997年から使ってるCheck-the-Boxより20年近く前だし、そもそもCTBどころか、LLCっていう主体が始めて登場したのが1977年のワイオミング州会社法だから(大自然だけど、この辺りはさすがワイオミング州だよね。LLCってニューヨーク州とかデラウェア州で生まれたものじゃないからね)、上場企業以外は基本パススルーで所得が個人にフローアップしていく環境にある今日の法人税収とは比較可能性に欠ける。当時はパススルーにするには信託をAssociationにしないように、とかのレベルで腐心するか、GPやLPで無限責任をどう最小限にするか、みたいな話しだっただろうからね。Kinter原則の6つのテストだね!懐かしい~。

前回のポスティングでも書いたけど、Fact SheetのOECDのピラー2への急接近には目を見張るものがある。アメリカは再度世界のリーダーとなり、世界的な法人税率低減傾向に断固立ち向かうそうだ。自国の法人税率が世界一レベルに復活してしまっても、相対的に競争力が落ちないよう他国にも「Race to the bottom」とかに従事することないよう釘をさしたりしてる訳だけど、他国の企業には大迷惑?ピラー2に見られるグローバルミニマム税の導入、ピラー1と比較すると、コンセンサス作りの難易度は低いかもしれないけど、Fact Sheetでは単なるグローバルミニマム税ではなく「Strong」なグローバルミニマム税の導入を促している。自国でGILTIを有形償却リターンを撤廃した上、21%に増税する提案をしているので、相対的な競争力が落ちないよう他国もより厳しいグローバルミニマム税を導入して欲しい、ということだろう。ただ、21%はFTC加味すると26.5%で、州税も要れると30%超えるからいくら「Strong」って形容しても「ミニマム税」というにはチョッと高過ぎ。米国企業と異なってもともとBase Erosion なんてしてない企業も多かったり、Check-the-BoxとかないんでCFC課税が機能している他国は面食らっているのでは。真面目にやってる他国の多国籍企業から見ると大きなお世話感は否めないだろう。BEATもUTPRみたいに生まれ変わるようなことも書いてあるし。ピラー2は俄かに息を吹き返してるね。

さらに、Fact Sheetには、Inversion規制が甘すぎるのでもっと厳しくすると記載されている。Inversion規制の強化っていうと2017年以前のオバマ政権時代末期がフラッシュバックしてくる。当時はTCJA前で、米国の税制が余りに使い勝手が悪いので、他国に引っ越してしまう法人が急増していてそれを阻止するため厳しい制限を財務省規則という形で乱発してたけど、今回も予めそんな動きを牽制する作戦。でもInversion規制って既に強固過ぎて、特にTCJA以降はInversionでトリガーされる不利益が大きく、Inversionなどほぼできないか、できたとしてもTransition Taxが大きくなったり、BEATに抵触し易くなったり、Downward Attributionもクロスボーダーで適用となってるし、恩典が限られるんじゃないかな。この期のおよんでInversion規制の強化って、これ以上どうやって強化するつもりだろうか。設立国基準を撤廃し、管理支配ベースにする案をまた浮上させるつもりかも。

Inversion対策ってまさしく太陽と北風の童話の世界で、Inversionしないでもいいように相対的に米国の税法をマシにするのが太陽アプローチ。TCJAは税率を下げ、またGILTIとFDIIをセットでLevel Playing Fieldにしたり、してたのでどちらかというと太陽。一方、これだけInversion規制が行き届いている中、北風アプローチのInversion対策強化をうたわざるを得ない辺り、増税案で米国税法がまた他国よりかなり不利なものとなり、国籍離脱を試みる企業が出没するリスクを気にしてるってことなんだろうか。

インフラ投資案+増税案、この内容では共和党からは一票も入らないだろうから、予算調整法の枠で通過させるしかない。その場合、厳格に予算調整法のスコープ内の法律でないといけないので、インフラ投資案のうちどれだけの部分が予算調整法適格となるか不明。

という訳でFact Sheet第二弾でした。バイデン政権の税制改正動向は進展あり次第触れていきたい。次のマイルストーンはグリーンブックかな。

Wednesday, March 31, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(9) ホワイトハウス ・インフラ増税案「Fact Sheet」公表

前回まで、バイデンの選挙活動中の提案、政権誕生後に任命された財務省高官新メンバーの過去の言動や文献、最近の議会ヒアリング等から想定されるバイデン政権下の増税案の方向に触れてきた。そんな中、米国時間の昨日、バイデン大統領府は「Fact Sheet」と呼ばれる資料で$2T(Bじゃないからね)に上るインフラ投資およびその財源として増税案を正式に公表した。増税提案の内容そのものは大概において前回までのポスティング通りで特筆するべき新提案はないように見えた。ただ、TCJAを、時にトランプ税とか読んで批判している論調は、その激しさが眼を引いた。財務省租税分析局長に就任しているキム・クロージングが学者時代に公表していた論文に通じるものがあり、誰がドラフトしたか計り知れる気がする。

この資料、マニフェストっていうかかなり宣伝っぽい内容だけど、ポリティシャンの公表する資料なのでそれは当然というか仕方がないとして、ポリシー提案文書を「Fact Sheet」って名付けて公開しているのはチョッと不思議。道路や橋の老齢化等の指摘をもってFact Sheetって呼んでるんだろうか?道とか老齢化が激しいのは本当で、これはどんなスタンダード下でもFactって言っても論争は起きないだろう。油断してると道路の穴とかヒットして直ぐにタイヤだめになるしその度にPep Boysとか行かないといけないし、特殊なタイヤだからって言われてわざわざTireRack.ComでオーダーしてPep Boysでサービスだけしてもらったりね。そういえば、交通インフラのアップグレードで思い出したけど、結局JFKはコロナ禍でも比較的良く行ったけど 久しぶりにLa Guardiaの方に足を運んだら、ターミナルBが見違えっててビックリ。そういえば毎日のように出張してたその昔、って言っても僅か一年前なんだけどね、改修後のターミナルBがもうすぐ誕生ってあちこちに書いてあって完成を楽しみにしてたのを思い出した。改修前のターミナルBは1940年っぽさが炸裂してたから。コロナ禍の中ひっそりと完成してたんだ~って思うと感無量(?)。でも、しばらくあんまり関係ないかもね。長距離フライトはどうしてもJFKだしね。

で、ホワイトハウスのFact Sheetだけど、今の世の中Fact CheckとかFact Sheetとか言われても、各自が思うところの都合のいいナラティブをFactって言うことが多いので、Factを辞書通り「実際に起こった事実」という本来の意味で捉える人は少ないだろう。でもよく考えてみるとFactって昔から同じように本当は掴みどころがなかったんだろうね。昔はイノセントで、僕が子供の頃はもちろんインターネットなんてなかったし、新聞やテレビのニュースで報道されることは単純にFactって勘違いしてた。そうじゃないっていう事実(Fact?)がいろいろな情報ソースにアクセスできるようになって浮き彫りになっているだけで、世界や人間の世界は昔から同じなんだろう。ローマ時代とかもね。でも、Fact Sheetってタイトルで増税案が公表されると、増税がFactになってしまってるみたいでチョッと怖い。

Fact Sheetを読んで興味深いのは、インフラにかかわる巨額歳出とか当然盛り込まれているであろう内容に加え、名指しする形で米国が中国との比較で優位なポジションを築くため、と明記されていた点。先日開催された米中会議でブリンケン国務長官が中国にお説教されて帰ってきたっていう弱腰外交イメージを払拭するためだろうか。チョッと取って付けた感は否めないけどね。また、インフラがかなり広義なんで、コロナ対策ではコロナの名前でいろんな民主党支持基盤に資金を提供したように、インフラ対策もインフラの名前であちこちにお金がばらまかれる。何と言っても先日のコロナ歳出と合わせて$4Tだからハイステークだよね。$4Tって日本やドイツの一国のGDP同等で、こんな金額がばらまかれるかと思うとその大盤振る舞いの凄さが分かる。

で、もちろんだけどFact Sheetに対する反応はまちまち。とは言えどれも想定内。「歳出が少な過ぎる」っていう左翼系民主党議員の批判、そんなことよりまずは連邦所得税算定時の州税控除の復活の方が先、という中庸民主党議員の中間選挙を見据えた現実的な反応、コロナ法案で中庸案を提示したにもかかわらず一切相手にされなかった共和党による拒絶(?)反応、法案に自己権益を盛り込んでもらおうと働きかけるロビイストとか、自分の選挙区にお金を落とそうとする議員さんたちとかね。

Fact Sheetはピラー2に極めて前向きな点が印象的だった。他国がグローバル・ミニマム税を導入するのを奨励し、OECDと共に「Race to the bottom」を封じていくそうだ。であればGILTIもぜひピラー2に準じて欲しいところ。国別FTCのところだけピラー2風にする一方、税率は21%にして有形資産リターンのカーブアウト撤廃、ではピラー2と整合性が欠ける。また親会社の所在国がIIRを採択したら、インバウンド企業が米国傘下にCFCを所有するストラクチャーでもGILTIを非適用にしてくれるとか、その手のピラー2との共存論もあれば良かったけど。そういうのは盛り込まれてない。逆にピラー2が21%でカーブアウトなし、なんてなったら世界中に大迷惑。ピラー1に全く触れてないのも興味深い。BEPS 2.0は、この夏にはピラー2に関してアクションプランみたいなものを最終化して合意をみたような形に持ち込むのでは、っていう予想を裏付けてる気がした。

米国内外における今後の審議、どうなるでしょうか。

Wednesday, March 17, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(8) CbCR開示・そして国際協調?BEPS 2.0の運命はいかに

前回は「BEAT、お前もか」ということで、既に気が重いBEATが更に強力になる可能性に触れた。前回書かなかったけど、下院歳入委員会ではBEAT適用対象法人の判断時にBase Erosion%テストを撤廃するばかりでなく、3年間平均売上基準も$500Mから$100Mに引き下げよう、っていう法案も浮上している。COGSになる金額もBase Erosion Paymentになったり、本当にこんなになったら踏んだり蹴ったり。

で、今日はCbCRの公開義務にチラッと触れて、その後、主にバイデン政権の多国主義回帰宣言とBEPS 2.0の運命について。

CbCRだけど、バイデン政権には上場企業にCbCRを開示させたらどうか、っていう米国では考え難い提案がある。投資家に有益な情報を提供できるというのが表向きの理由だけど、CbCRの見え方次第で、必ずしも全体像を良く理解してない第三者やメディアが、それだけで中傷したりするリスク大だから、むしろ本当の狙いは後者の抑止力だろう。

BEPS 2.0に関しては、バイデンの「America is back」宣言で米国が旧来の多国主義に戻ったのを機にOECDは「星々が一列に並び幸運が訪れた」と喜びを隠せない様子。財務省には初の多国主義税務官とでもいうのだろうか「Multilateral Tax Official」が任命されたりして期待は嫌でも高まっている。

ただ、以前からのポスティングで何回も触れてる通り、BEPS 2.0が暗礁に乗り上げていたのはトランプ政権のせいではなく、とてもグローバルで実現可能とは思えない超複雑な設計・規定が最大の理由じゃないだろうか。さらに、仮にあれだけ複雑かつ根本的に現状と異なるピラー1と2の双方を世界で無理やり導入としたとしても、その結果グローバルで増える税収は$50B~80Bのレンジと言われており、下限値はアップル一社の税引後利益より低い。え~、それだけために?って感があるけど、巨額の歳入が期待できないとなると参加国としても気合が入り難い。

米国がOECDに突き付けてた難題は主に2つあって、ひとつは例のピラー1の「Safe Harbor」化。結局最後までSafe Harbor化って具体的に何なのか誰も分からないままイエレン新財務長官は先日「ピラー1をSafe Harbor化することにはもうこだわりません」とすんなり撤回。そしてもう一つはピラー1の対象を元々のターゲットであるデジタルばかりでなく、広範なConsumer Facing Business(CFB)に拡大しようとした点。CFBへのこだわりはトランプ政権ではなくオバマ政権からの遺物なので、バイデン政権が引き下がるとは考え難い。CFBに関しては未だにスコープがはっきりしない。

BEPS 2.0の規定内容そのものの現状を見てみると、ブループリントは出てるけど、ピラー1の目玉であるAmount Aを算定する際の超過利益の額(逆に言えばルーティング利益の額)やそのうちどのUpper部分を市場国に配賦するのかっていう基礎的な部分すらまだ決まってない。係争解決もパネルを設置とかは提案されてるけど未だに不明。遠いところにしか存在しない別の国の多国籍企業がAmount Aを払ってくれなかったら、どうやって法的に支払いを強制するんだろうか。Amount Bのように比較的、物議を醸しそうもない金額に関しても%もスコープも未だはっきりしない。ピラー2に関しても、STTRをまず最初に適用し、それを加味してIIR、IIRが機能しないケースはバックストップでUTPR、条約次第でSOR・・・、複数のCarryforwardsで複数年平準化、人件費や償却費用でカーブアウト計算、とても世界中で執行できるような制度ではないように見える。

バイデンやイエレン長官が両手を広げてOECDのアプローチを歓迎するスピーチをしたとしても、それだけで今のブループリントのままBEPS 2.0が近々に合意されるとは考え難い。米国多国籍企業の見解もバラバラだし、米国議会どころか行政府内も必ずしも一枚岩とは思えない。議会に至ってはOECDに言われて法律を変えたり、米国モデル条約に近いものでも批准できない上院が、OECDの多国条約を批准するとは思えない。さらに、GILTIを21%にして、ルーティン所得のカーブアウトを撤廃しようと言うバイデン政権の方向性もピラー2とは全く逆で、ちぐはぐ感は否めない。

そんな中、DSTは着々と拡散モードで、米国内でもメリーランド州が国内DSTを可決している。BEPS 2.0に何らかの合意が見られるとしても、それが機能し始めるまで少なくとも5年とかの歳月が掛かるとすると、その間、各国がDSTを撤回するとは思えない。幾度となる壁にぶつかるBEPS 2.0の迷走ぶりやDSTの台頭を見ていると、法人税という制度自体がデジタル経済に合わなくなっているっていう事実を認識せざるを得ない。2017年の米国税制改正時に当初たたき台になっていたブループリント(OECDのブループリントじゃないからね)に仕向地キャッシュフロータックス(DBCFT)っていうのがあったけど、実質VATのような税制で、こっちの方が今日の経済に合ってる感じ。

ということで実現が難しいんだったら、バイデンにしてもイエレン長官にしても変なリップサービスで、OECDに一時のぬか喜びを与えない方がいいんじゃないかな、って心配になるけどね。BEPS 2.0の運命はいかに。

Saturday, March 13, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(7) 「BEAT, お前もか」

さて、前回まで3回に亘り、GILTI増税案の話しをしてきたけど。今日はBEAT。バイデン政権にはBEATも手緩いと考えている一派がいる。まさしく「BEAT、お前もか」の心境(何それ?)。

BEATも「GILTI増税(続)ワンちゃんの名前は「GI」に?」で触れたGILTI立法趣旨同様、米国がテリトリアル課税に移行するにあたり、そのまま移行してしまうと、全世界実効税率ゼロ%となり兼ねないため、想定される派手なBase Erosionに網を掛けるためのものだ。ピラー2のUTPRとIIRの関係とは異なり、BEATはGILTIを補完するために規定されている訳ではなく、全く別の規定としてGILTIと共存している。例えば、米国法人がCFCにロイヤルティーを支払い、仮にそのロイヤルティー所得がCFC側でGILTI対象のTested Incomeの一部を構成するとしても、関係なくBase Erosion Paymentになる。したがって最悪のシナリオだと、まず米国側で損金算入効果がBEAT税率10%に低減され、更にまるで往復ビンタかのように、CFCからTested Incomeとしてフローアップしてくる同額に米国で10.5%(FTC前)課税される。

バイデン政権が抱いている現状のBEATが手緩いという感覚も、GILTIに対する感覚同様、米国外関連者への支払いは全て悪という前提で課税は当然、というアプローチに見え、もともとBEAT導入時の、過度に阿漕なBase Erosionに網を掛ける、というアプローチの更に先を行っているように見える。

で、まずは例によって現状のBEAT規定のおさらいから。ちなみにBEAT課税そのものに関しては2018年から何回か詳細に触れているので、細かい点は過去のポスティングを参照して欲しい。

BEATはIRCのsection 59Aに規定され、法文のタイトルは「Tax on Base Erosion Payments of Taxpayers with Substantial Gross Receipts」。これだけだと、どうして「BEAT」っていうキャッチーな略になるのか分からないと思うけど、これはもともとBEATが、両院が可決した法文のSubtitle D(国際課税部分)のPart IIで section 14401として「Base Erosion and Anti-Abuse Tax」というヘッディング下に導入され、その後IRCにCodifyされる過程でも、今度は税法上のPart VIIに「Base Erosion and Anti-Abuse Tax」が足され、その傘下に独立した条文として規定されることになったことによる。「Base Erosion and Anti-Abuse Tax」なんでBEATなんだけど、これは予めキャッチーAcronymにするために考えて命名されている。GILTIも同様。

ただし、条文名やPartのタイトルとかが何であっても、それらが条文の規定内容や適用可能性に影響を持つことは一切ない。この点はわざわざ税法にも明記されている。「BEAT」という条文名やタイトルを見て「私はBase Erosionを通じたAbuseはしていないので、Anti-Abuse規定の対象ではありませんよ」みたいな屁理屈を封じるためだ。

で、BEATだけど、税額決定をカバーしている税法上の一部に属し、BEATミニマム税がある場合、他の税金に加えて賦課すると規定されている。TCJAで法人に関しては撤廃されたAMTが、同パートのSection 55から59に規定されてたけど、BEATは59A。BEATはAMTの代わりという議会や財政委員会の感覚通りの構成だ。「A」っていうのは、単純に付け加える番号がない場合に便宜的に使われるだけで、263A (UNICAP)、 245A (DRD), 951A (GILTI)とかいろいろあるけど、アルファベットそのものに何か意味がある訳ではない。

AMTは、将来生じる通常法人税にクレジットされるっていう規定があったんで時差だったけど、BEATには同様の規定はなく、BEATミニマム税は一旦賦課されると払い損。この点、AMTの代わりっていうのは語弊があると思うんだけどね。

還付やクレジット不可となると、何がBEATミニマム税なのか、っていう点が当然気になるよね。これはBEAT修正課税所得に10%掛けた暫定BEAT税額が通常法人税を超過する金額。BEAT税率は2026年から12.5%で、銀行や証券会社は常に1%プラス。課税年度毎の算定なので、超過額がなければそれでおしまい。Excess Limitationsを繰り越ししたりして複数年で平準化させるような規定はない。

また、ここで言う通常法人税は一部クレジットを調整して算定するよう法文では規定されてるけど、算式的には財務省規則のアプローチ、すなわち暫定BEAT税額の方を調整すると考える方が分かり易い。一次方程式の世界だから数式の右と左のどっちで調整するかは見せ方の問題で、プラスとマイナスを混同しなければどっちでも結果は同じ。財務省規則風にアプローチすると、BEATミニマム税算定時に比較対象となる通常法人税は全てのクレジットを引いた後となる一方、暫定BEAT税額はR&Dクレジットだけがフルに認められる。更にBEATミニマム税の80%を上限に「低所得者住居」「再生可能エネルギー発電」「一部のエネルギー」クレジットが認められる。超過額がない、または少ない、方がいい訳だから、通常法人税は高く、暫定BEAT税額は低い方がいい。なので、通常法人税にクレジットが全て認められたり、暫定BEAT税額にはクレジットが取れなかったりするのは不利な取り扱いとなる。特に、比較対象となる通常法人税はFTC後なので、暫定BEAT税額にFTCが認められないのは痛い。GILTI後の世界では、CFC所得を合算した後に巨額のFTCでその弊害を除去するのが米国多国籍企業の基本的な姿になるからFTCの影響は多大。しかもR&Dクレジットやその他のクレジットの恩典は2025年までの時限措置で、その後は暫定BEAT税額にクレジットは一切認められなくなる。

BEATミニマム税はBEAT適用法人のみが対象だけど、これは過去3年間の平均売上が$500M以上、そしてBase Erosion%が3%以上の法人。この2つの判断は、法人個社や連結納税グループ単位ではなく、直接間接に50%超の資本関係にある「Aggregate」グループで合算して行う。この合算法だけでも本が書けるくらい複雑だ。

で、適用対象となると、上述のBEAT計算をさせられる。これは法人個社、または連結納税している場合には、連結納税グループ単位の計算。暫定BEAT税額は修正課税所得に10%掛けた金額だけど、修正課税所得っていうのは、通常の課税所得にBase Erosion Tax Benefitおよび繰り越しや繰り戻しNOLを使用している場合にはNOLにBase Erosion%(NOL発生年度ベース)を掛けた金額を加算して計算する。

適用対象となるかどうか、またNOLのうちいくらを加算するか、の判断時に登場するBase Erosion%は、毎課税年度に計上する控除額(=Deduction)総計を分母、Base Erosion Tax Benefitを分子として算定する。Deductionは税法上定義される金額で、特筆すべき点としては棚卸資産への資産計上を経由して控除されるCOGSは含まない。Base Erosion Tax BenefitとはBase Erosion Paymentのうち、対象課税年度にDeductionとして計上されている金額。Base Erosion Paymentとは外国関連者に対する支出。棚卸資産経由のCOGSがDeductionとならないことから、外国関連者に対する支出に基づく費用でも、税法上、棚卸資産に資産計上が求められる金額は、Base Erosion PaymentにもTax Benefitにもならない点は重要。

こんな概要なんだけど、バイデン政権は現状のBEAT制度の2点を問題視している。まずは適用対象法人の決定に適用されるBase Erosion3%基準。3%行くか行かないかで取り扱いが大きく異なるので、2.999%になるよう、Deductionを自己否認することを認める財務省規則が出たりしている。売上$500M要件は多国籍企業にとって回避はできないので、3%基準が重要だけど、この3%要件を撤廃してしまうという案。となると、過去3年の平均売上が$500M以上だど、それだけをもって常にBEAT適用対象法人になることになる。

さらにBase Erosion PaymentやBase Erosion Tax Benefitに棚卸資産に資産計上される支出が含まれない点も問題視している。すなわち、現状ではInversion企業を除き、棚卸資産に資産計上される支出、例えば製造ロイヤルティー、は外国関連者に支払っていてもBase Erosion Paymentには当たらないが、これを改定しようというものだ。

Base Erosion%要件やCOGSとDeductionの関係は2つとも法文に規定されるものなので、バイデン政権得意の大統領令や、または財務省規則ではオーバーライドできない。したがって、議会による税制改正が必要となる。Base Erosion%を3%未満とするために費用を自己否認する規定は、財務省規則ベースだけど、この規則もある意味、税法上、それが可能なため、悪用されないように自己否認法をタイトに規定している側面が強く、その運命は不明。

BEATの運命はいかに。どうなることでしょうか。次回はCbCRの公開義務やバイデン政権とOECDの歩み寄り等に関して。

Sunday, March 7, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(6) GILTI増税と財務省規制強化

前回のポスティングでは、GILTIって名前のワンちゃんがバイデン農場に拾われたら、GIに名前が変わってしまった、っていう童謡を歌いながらGILTI増税案を紐解いてみた。う~ん、GIってウルトラマンメビウスみたい。あれはGIGか。キャプテンスカーレットのSIGのパクリだけどね。僕が昔見てたウルトラマンセブンのMATの方が隊の名前としてはGUYSより断然いかしてる。何と言ってもMATって「Monster Attack Team」の略だったからね(笑)。ポインター号に乗ったMAT隊員。いい時代だった感じが炸裂しています。

今回はチラッとだけど、立法府の議会ではなくバイデン政権下の行政府の規制環境について。

約一年前、すなわちトランプ政権下で財務省はGILTI高税率除外の規則を公表している。GILTIはその立法過程で、13.125%のグローバルミニマム税を設定するという趣旨が明記されている。そのメカニズムとして、CFCが現地で支払う法人税の80%をFTCとして認めるので13.125%の法人税を支払っていれば、10.5%のFTCが認められ、米国株主側でGILTI合算してもネットで追加の米国法人税はないはず、という点も明記されている。

TCJAが可決して間のない頃から、仮に10.5のGILTIバスケット所得があっても、FTCはバスケットのネット課税所得を基に制限枠を決めるので、バスケットに配賦・按分される米国株主側の費用、特に支払利息、により10.5の枠はないケースが大半という問題が指摘されていた。すなわち、このままだと、米国外で13.125%超、例えば30%とか、の法人税をCFCが支払っていても、米国で一部GILTI課税が生じることになる。この問題を解消するため、企業側はGILTIバスケットには特別に費用配賦をしないような規定を設けて欲しいとか、13.125%の法人税を国外で支払っているケースはTested Incomeをピックアップしないでもいいようにして欲しいとか、若干茶番めいたとまでは言わないまでも、行政府には権限がないであろうと思われる財務省規則による救済策を期待していた。

法的に行政府では如何ともし難いのでは、と考えられていたんだけど、驚いたことに財務省がサーカスのような理論に基づきウルトラCでGILTIに対する高税率除外規則を策定したのだ。しかし、さすがに13.125%にはならず、従来のSub Fに規定されていた高税率免除を流用するに留まっていた。これだけでも凄い逆転劇なんだけど、Sub Fに規定される高税率免除は、法人税率の90%基準なので、現行だと18.9%。以前の35%時代にはこれが31.5%だから、ほぼ適用可能性はないに近かった。18.9%で息を吹き返した感もあるけど、米国多国籍企業的にはまだ高いという感覚は否めないだろう。バイデン農場、じゃなくてバイデン政権の法人税率28%が実現すると、高税率免除は25.2%と役に立たない域に戻ることになる。高税率除外に関しては財務省規則が発表された当時のちょうど一年ほど前に「GILTI高税率免除規定」で詳細をポスティングしているんで、内容そのものはこちらを参照して欲しい。

GILTI高税率除外規則は、Sub FのFBCIやInsurance Incomeに従来から適用可能だった高税率免除規定の法文を解剖し、その一部の表現に「全ての所得項目」に高税率免除規定が適用可能とも無理すれば読めなくもない部分があり、それを最大限利用し新らたな解釈を捻出しているものだけど、かなり際どい。

財務省の中でもこんな規則を策定していいのか、とか法的な権限に関して賛否両論あったらしいけど、バイデン政権下の財務省では、行政措置でGILTIを不当に弱体化しているという論調が強まるかもしれない。その矛先は、みなしルーティン所得の計算をする際に差し引く、CFCの特定支払利息を簡便法に基づいて全利息のネット算定を認めている点にも向いている。別の規定だけど、163(j)で支払利息の損金算入枠を算定する際に使う調整後課税所得に、2021年まで棚卸資産に資産計上される償却費用の加算を認めるかどうかっていう点も財務省は納税者寄りの規則を出してるしね。

これらの規則が即取り消されるというような切羽詰まった状況ではないけど、この手の問題を指摘する者はどちらかというと学界で活躍されてきた方が多いように見え、全利息のネット算定など、逆にあれがないと実務面の対応はとてつもなく重荷となるので、ビジネス経験のある一派との議論を通じてバランスよく方向性が固まっていくことを願う。

オバマ政権とトランプ政権の比較でも分かる通り、行政府による規制環境は政権により大きく異なるから、今後の規制強化に関しては法改正と並び要注目。

課税強化の話しばかりで食欲減退してないといいけど、次回は追い打ちをかけるようにBEAT強化案について。