最高裁判決から早くも2週間を経過して、米国は寝てる間に1時間なくなってDay-Light Saving Time(DST)に突入。DST…。首尾よくNYCの気温も先週まで氷点下で雪とかちらついてたのが嘘のように急に夏めいてきた(実はその後また冬みたいに戻ってしまいました。三寒四温?)。マイアミは…関係なく相変わらず夏。
地政学的にはこの間にイラン攻撃とかもあって、今後の通商、サプライチェーン、果ては企業の生存は関税だけにフォーカスするべき問題じゃないっていう部分のポスティングをドラフトしてたところなんでそんな感覚が更にRealになってしまった。
IEEPAに基づいて関税を徴収された輸入者に認められる救済策に関しては段々方向性が明らかになりつつあって、前回のポスティングでチラッと触れた通り、V.O.S. Selectionケースが差し戻され、独占的な法的管轄権を持つとされた「the United States Court of International Trade (CIT)」による最近の判決で今後の還付は個別審理に代わって「U.S. Customs and Boarder Protection (CBP)」経由で請求っていう流れ。これは1990年台後半にHarbor Maintenance Feeが不法とされた際、同様の大混乱を収拾するためにCITがCBPに命じた措置に準じてるんで大概において予想通り。今日はそれらの展開も含めてもう一度だけ最高裁判決に関して。
ちなみにIEEPAに基づく関税は最高裁が「違憲」判断したみたいな報道を見ることがあるけど、前回のポスティングで触れた通り、IEEPAに基づく大統領による関税は条文解釈として不法というのがMajority Opinionで、Major Questions原則を含む憲法議論はDictaに留まっている。「どっちにしても結果は同じだからどうでもいいじゃん」って思うかもしれないけど、今回の最高裁判決にかかわる法解釈っていう視点では、Liberal派の判事3人をMajority Opinionに取り込むため、Opinionを敢えてArtisticかつ意識的に分解し、直接的に「違憲」っていう理由としなかった点、すなわちこれがHoldingではない点、が今回の判決の重要なポイントのひとつだから単なる言い回しの差異では終わらないと思うんだけどね。
Dissenting Opinions
今回の判決は6対3で、Dissenting OpinionsはThomas、Alito、Kavanaughの3人。前々回のポスティングで口頭弁論の様子からThomasとAlitoは連邦政府指示に回るだろうって書いたんでこれはその通りだったけど、3人目がKavanaughになる点は判決を読むまで全く不明だった。憲法厳格主義6人のうちRobertsとBarettはおそらく原告指示かな~って思ってたんで残りのKavanaughとGorsuchの動向を(どちらが勝訴するかではなくMajority Opinionの構成や法解釈の面から)注目してた。正直なところ、過去の判例からどちらかって言うとGorsuchが連邦政府指示に回るかもな~って感じてたところはあったんで逆にGorsuchがMajority、KavanaughがDissentっていうのは驚きではないにしても「そうなんだね」って感じ。
で、Dissenting OpinionはKavanaughが代表で執筆しThomasとAlitoが賛同しているもの、そしてそれとは別にThomasが個人的に例によって辛口に別途執筆しているもの、の2つがある。Kavanaughは連邦のSolicitor Generalが口頭弁論で主張してたようにIEEPAが大統領に付与している権限のひとつ「Regulate… importation」には用語的に当然関税を課す権利がNaturallyに含まれると解釈するべきってうもの。その根拠にMajority Opinionでは重要な判例ではないと片づけられていたニクソン大統領時代のTrading with the Enemy Actのケースに言及している。1976年の別の判例、Federal Energy Administration v. Algonquin SNG, Inc. でも大統領にはImportに対する広範な権限が認められているとしている。さらにIEEPAは大統領に通商停止権を付与している点はIEEPAの条文そのものから明らか。つまりMajority Opinionを信じるならば、例えば中国からの輸入は全面的に禁止っていう大統領令は問題ない一方、中国からの輸入に$1でも関税を課すのは認められないっていう不合理な解釈になるっていうもの。う~ん、確かに意味をなさない気はするけど。
Thomasの個別Dissentingも同様のラインだけど、もっと端的で、憲法のNon-delegationは国際通商には単純に適用はなく、Majority OpinionのIEEPA解釈は歴史的に(Thomasの歴史はいつも建国時に遡る長期をカバーする傾向がある。これは彼が憲法が批准された時点の意図を最重要視するから)何のサポートもないってバッサリ。Mooreの時もSubpart FをConstructive Receiptとか整理してたMajority Opinionに対してConstructive Receiptに課税するような概念は憲法上認められないってこっちもバッサリだったもんね。
同じ条文を読んでも法解釈の巨匠9人でここまで解釈が異なるっていうことから僕たちが毎日格闘しているInternal Revenue Codeの条文の意味、例えば351の「Immediately afterの意味」とかああだこうだって言ってても結局ユニバーサルな解釈を求めている訳ではなく、判例・Rulingその他の法源を総合的に考えてMajority的にどんな風に解釈されてきたかっていうことだよね。
チョッと(大分?)話しそれるけど前回のポスティングでTrading with the Enemyに触れた際にRunning with the Devilのギターソロの話しをしたけど、あのソロはRunning with the DevilじゃなくてYou’re No Goodのソロでした。Running with the DevilはVHデビューアルバム一曲目でYou’re No Goodは2 枚目のアルバムの一曲目で、同じ一曲目なんで混乱してしまいました。どうでもいいって?そうだね。
関税はこれからどうなる?
正確な数字は分からないけど関税の歳入に占めるIEEPAの比率は少なくない。仮に2025年4月以降の関税歳入総額を$260BとしてIEEPA関税を$170Bとすると65%を占めることになる。最高裁判決後、トランプ政権は即時IEEPAに基づく関税は取りやめる一方、他の法源で置き換えるっていう方向を明確にしている。IEEPA以外の法源はthe Trade Act of 1974のsection 301, 201, 122、the Trade Expansion Act of 1962のsection 232, またthe Trade Act of 1930のsection 338っていう結構お馴染みなもの。各々ScopeはNational securityだったりUnfair trade practicesだったり、また期間もまちまちだけど、これらはIEEPAと異なり一定のParameter内で関税を課す権利を大統領に明確に付与してるから、各条文のParameterを逸脱しなければ不法ではない。最高裁判決はIEEPAの解釈だから他の法源には関係ない。もちろん別の理論で訴えを起こす者が現れる可能性は常に残るけどIEEPAとの比較で大統領の権利は強固。
トランプはsection 122で認められる最高関税15%をこちらも議会の追加承認なく認められる150日間課すとしてる。Section 232や301もお馴染みだけど、USTRや商務省による調査結果に基づかないといけない。調査には最低数か月掛かるみたいな報道もあるけど、調査は最高裁判決後に慌てて始めるんじゃなくて、もともと政権発足時の2025年1月20日大統領令America First Trade Policyで調査を命じてたから内部では既に何らかの結果が出てたとしてもおかしくない。って言っていたらさっき調査結果に基づく個別審査開始みたいなニュースが報道されてたんで近々にもう少し様子が分かるだろう。若い読者にはピンとこないかもしれないけど、Section 301は日本もその昔、半導体とかで対処に苦労したよね。
これからの通商は?
でも、仮に関税がいろんな理由で温和っていうかソフトになったとしてもサプライチェーンやグローバル経済が元に戻るかっていうと戻らないよね。関税を理由にグローバル経済が反転してるんじゃなくて、「Rule-Base」のグローバル経済って聞こえはいいけど一部の国に恩典が集中し、また主権国家を超えたグローバリストに富や権力が集中してしまった一方、米国を含む多くの国の製造業を壊滅させて一般庶民の多くは完全に取り残されてしまった。これらからグローバリズムは失敗だったっていう結論は先日のダボスに続き、ミュンヘン安全保障会議で米国が再三EUに明言してた(一年前のミュンヘンはJD バンスが強力だったけど、今年のRubioはソフトタッチ。だけどメッセージとしては同じ)。
また時代の流れとして米国Unipolar体制からMultipolarへの移管期っていう大枠も変わらない。米国の現政権はUnipolar体制に取って代わる新グローバルオーダーとして米国(西半球)、中国、ロシア、インド(そして米国の地政学専門家の中に「日本」も5つ目に数える人もいる)によるMultipolar体制を是認し自ら導入しようと試みてるんで、その一つの対処が関税だとしても、関税そのもの有無で時代の流れそのものは変わらない。各国、各企業、各個人はそんな流れの中で今後を考えていかないといけない。
イランの件にしても僕みたいな一般庶民はTruman Showの中で生活してるんで(新年のポスティング覚えてる?)表面的には不思議極まりない展開にしか見えない。しかもミュンヘンでグローバリズムの終焉を宣言し、Multipolar体制に移管表明した数日後の出来事。2つのイベントで見せた米国の姿勢に整合性すら見いだせず、狐につままれたみたいだ。ただ、千年単位で確執が続く中東の歴史やそこに入り込んでる西洋の利権とか理解していないんで僕には分かる訳ない。「Expert」のコメントも文字通り十人十色(千人千色?)。
新年特集のポスティングで触れたけど、トランプを支持した米国一般庶民は、国境問題、カルチャー問題、米国建国時のスピリットに基づく国家主権の復興(Super-Nation的なグローバル統治ではなく)等に加えて「戦争を起こさない」「他国の政権を転覆させたりNation Buildingに関与しない」っていう公約に魅かれたケースも多い。特に中東の紛争はイラクの苦い経験から拒絶反応が強い。この背景から数か月後の中間選挙(両院)、そして2028年の大統領選挙を考えるとイラン攻撃は一見、政権に何のメリットもないどころか展開次第では命取りになるリスク大。過去3回トランプがネオコンやグローバルプレッシャーに耐えてイラン攻撃をとどまった経緯(3回目はミサイル打ち込みとイランの見た目の反撃のシアター的な展開でごまかした?)から今回も米国軍がイランを取り囲んだ時点でも最後の一線は守るだろうって多くの者が信じてた。にも拘わらず大規模な攻撃に出てしまい驚愕。予想通りMAGA内の意見は割れている。
ただ、こんな初歩的な政治リスクは僕でも容易に分かるんで政権当人たちはもちろん計算済みだろう。ホルムズ海峡封鎖や油価高騰リスクも通商やエネルギー市場にどんなに疎くても容易に想像がつくから、Chris WrightやDoug Burgumを始めCIAとかこの手の話しのプロが想定していないはずはない。世界における米国やドルの信用、ペトロダラーの在り方その他にも悪影響こそあり得てもアップサイドはあんまりないように感じるし、今後のグローバルオーダーの在り方と米国が考えるMultipolar体制への移管に際しては、中国やロシアと共存姿勢を表明していたんで、ここにきてイラン攻撃で中国やロシアを刺激して(裏で何か密約でもない限り)Multipolar体制の共存達成にもマイナスに映る。油価高騰でロシアには好都合だとしても米国への不信感は高まるはずで2度とプーチンも2度とアラスカに来ないかもしれない。これら諸々、ベーシックかつ表面的な観測は僕でもわかるから政権や諜報機関では当然分かってるとすると、こうなるって知ってて、またはこうするために敢行したって考える方が自然かもね。または遂にネオコンやイスラエルとかのプレッシャーに負けたんだろうか。そんな単純な話しじゃなさそうだよね。現政権の地政学的オブジェクティブの大枠として、中国、ロシア、インド(+日本?)と共に自国の利益に基づく国家主権ベースのMultipolar体制の実現を考えると、その実現に抵抗を示す勢力に打撃を与えるっていう計算があるんだろうか程度の憶測しか成り立たない。イラン攻撃がそんな目的をどのように果たす要素を持つのか僕なんかでは全く分かんないけど。
米国とイランの関係は、1979年の革命、イラン・コントラ事件(あのエプスタインが暗躍)、大使館人質救出失敗、とかドラマがあり過ぎてTruman Showで生きてる僕のような庶民は真実を知る術もない。知らぬが仏みたいな世界の可能性も大だし。米国には1979年の革命当時イランから米国に脱出してきた人たちが多くいるけど、そんな一家の友人がロサンゼルスにいるんでチョッと話してみた。彼女たちの視点では「もしかしたらこれで50年近くぶりに孫の顔を家族に見せに帰国できるようになるかもしれない。生きてる間にこんなことが起こるとは信じられない」っていう視点では前向きだったけど、米国で結構な人が攻撃に反対している点に関して、1979年以降のイラン政権の人権無視ぶりを考えて欲しいってがっかりというか混乱していた。
1979年の革命…。あれ自体チョッと不思議な感じだよね。まだ何も知らなかった幼い頃(若い頃っていう方が適切かな?今更サバ読んでもしょうがないしね))1979年にホメイニ師がイランに帰ってきてジェットのタラップを降りるところや、イラン市民が大きな写真を掲げて集まってる写真が一面に掲載された新聞を朝食のシリアル食べながらチラッと見ただけだけど、宗教の精神的指導者っていうイメージにピッタリのルックスだったんでVisual的に強い印象を受けたのを記憶している。その時はもちろんそれ以上何も考えなかったけど、欧米と親しい王政を覆して戻ってくる際、他のイスラム教の国じゃなくてフランスからジェットで帰ってきたんだね。誰が誰の見方なのか中東と欧州の関係に知見がない僕には全く不明だけど相当Deep。
って関税から大きく脱線してるけど、関税どころではない大変動がOvernightで起こり得る世の中に生きてるって点を忘れず、国家、企業、個人で自助努力的に可能な範囲で備えておくのがMustっていう点を再認識する出来事。特にエネルギーや資源はデータセンターやAIとかを無視しても、全ての経済活動に不可欠だから、ホルムズ海峡封鎖のような事態や他の事態も想定してリスク管理が必要。
リスク管理って言うのは容易だけど、人間のサガ的に近年体験したことのないリスクは頭では分かってても対処には手が付き難い。いわゆる平和ボケに似てるけど、例えば石油やLNGが途絶えたりとんでもない価格に高騰したらっていうリスクは体感してないからね。そうなったらカーボン云々とか言って火力発電所等を自らのチョイスで閉鎖したりしてた時代が懐かしくなるだろう。備蓄なんかは付焼刃だろうから根本的な解決にはならない。化石燃料が今日の経済活動や基本的な生活にどれだけ重要かっていうのはトランプ一次政権下でも強調されてたけど二次政権では国内生産、原子力再考、等で以前の中東依存から脱却している。また贅沢な生活やシステムに慣れてるとそれが当たり前になって、それらがなくなるリスクっていうのも想像できなくなる。アマゾンのDeliveryが一日遅れたとか、レストランで給仕が遅く「20分も待たされた…」とかで激怒してた時代も懐かしくなるだろう。エネルギーが途絶えれば食料も途絶え、配給制になるかもしれないし、そのうち配給も途絶えるかもしれない。社会不安に基づく治安の悪化、コロナでそうだったようにリスクを逆手にとって徹底的に個人の自由を奪う州政府も出てくるだろうし、すでに無責任なFiat Money過剰プリンティングで破綻しているグローバル経済に更なる打撃、等々。オンラインで何もかも瞬時に実行できる生活、あらゆる商品が2~3日のスパンで自宅に届けられるシステム、移動したくなったらFSDで勝手に車が運転してくれたり、Appで瞬時に配車されたり、米国のハイテク産業は凄いなってBezos、Musk、Jobsとかに感謝して生きてたんだけど、心の片隅で「なんか変だな」っていうかこんなことが未来永劫持続するんだろうかっていう疑問があったり、この便利さと引き換えに自分のSoulを売ってしまったんだろうか、とかね。そんなことが起こったとしたら暗黒の時代の先にルネッサンスは来るのでしょうか。
判事の役割
最高裁判決の話しに戻るけど、メディアはトランプが任命した判事の2人、GorsuchとBarrettが原告指示に回り「トランプは裏切られた」的な報道をすることがある。これはもちろん的外れというかタブロイド的な見解で、判事は誰に任命されたかにかかわらず憲法解釈のみに忠実でなくてはいけない。
判決後のトランプの発言もよくない。SCOTUSの役割が誤解される傾向に拍車がかけるだけで全くプラスにならない。SCOTUSの判事、GorsuchやBarrettはトランプやメディアが何て言われても、連邦憲法の三権分立における司法府の機能を理解してないなって感じることはあっても気にすることはないだろう。増してや他のケースの審理結果に影響があることもない。
メディアやトランプばかりでない。双方の政党に共通だけど、ポリティシャンも自分たちの気に入らない判決が出ると最高裁は正当な存在ではないとか直ぐに口に出したりする。それも重鎮議院たちが。上院議員Check Schumerとかは上院Majority リーダーだった頃、最高裁に「Pay the price」とか「Won’t know what will hit you」とか暴力を是認するような激しい言動(後に撤回)。若気の至りで若手議員が騒ぐのと異なり、重鎮のおじいちゃん議員だったら品格のある反応で二極化している市民にお手本を示して欲しいところだったけどね。実際にその後、SCOTUS判事に対する殺人未遂的な事件が起きたりしてる。
トランプに冷静な反応を期待する者はいないだろうけど、それにしても例によって衝動的な反応。いつも通り演技じゃなくて本気で言ってるんだろう。「Very disappointing」くらいはそうだとしても、最高裁判事が不忠実とか愛国心に欠けるとか言い出したりしてもう無茶苦茶。特に自分が任命した3人の判事のうち原告を支持したGorsuchとBarrettには飼い犬に手を嚙まれたような勢い。政権の閣僚と異なり最高裁判事はポリティシャンではなく、誰に任命されようと憲法や法のみに忠誠を誓っているっていう根本的な位置づけをもう少し考えて発言しないとSCOTUSの正当性に傷がつく。米国の国家統治を設計した建国の父たちが大きな政府から個人の自由を守るために過去の過ちを見て作り上げた憲法、それに基づく米国の法システムをもっと大事にしないとね。ポリティシャンは国民にそれを理解してもらう役割を果たして欲しいところなんだけど。
日本人にも無関係ではない米国憲法と判事の職務
トランプやメディア言うところの裏切者の一人Barrett(Amy Coney Barrett)がその昔、多分、控訴審の判事になって間もない頃だったと思うけど、Hillsdale大学で「判事の責任」みたいなテーマで行った講演を聴いたことがあるけど素晴らしかった。その後、トランプが彼女を最高裁判事に任命した際はその人選に感動したのを覚えてる。ちなみにこのHillsdale大学、連邦からも州からも助成金めいたお金は一切受け取らず学問や言論の自由を貫いている。ハーバード大学なんかは対称的に(トランプ政権による部分的De-Fundで今は減額したかもしれないけど)年間$700M近くの連邦政府助成金(僕たちの税金が原資)を受け取っている。ハーバード大学がトランプ政権に学問や言論に口出しするなって揉めてたけど、Hillsdale大学は「口を出して欲しくなければお金をもらわなければいい」とアドバスしていた。
Barrettの講演趣旨は判事たるもの世論やポリティシャンのプレッシャー、また自分の好む結果も全て遮断した上で法を適用しないといけないっていうもの。判事なんだから当たり前じゃんって思うかもしれないけど、判事も人間だからね。Learning Resources, Inc.で法的管轄権なしって言われてしまったDC下級裁の判事なんかは法的な分析だけでなくOpinionに私情が滲みでるような記載があったりすることがある。
で、BarrettのHillsdaleでの講演では2つの実例を紹介していた。一つ目は独立戦争時の1770年の ボストン虐殺事件(虐殺・Massacreっていう描写は米国側のもので英国ではKing Street事件として知られている)。当時、英国王室の任命でマサチューセッツ(当時はまだ直轄植民地)にセキュリティ目的で英国軍が駐屯していた。この英国軍、独立を望む市民とは何かとコンフリクトがあったのは想像に難くないけど、チョッとした事件から市民が暴徒化し英国兵が発砲して(本当の人数かどうか知る術のないけど)300~400人の死傷者が出たっていう事件。米国世論やポリティシャンはカンカンで捕らえられた英国兵に公平な裁判の機会が提供されるとは思えず、弁護する者も現れない始末。そんな中、建国の父一人で後にGeorge Washingtonに続く第2代大統領になったJohn Adamsが「世論や政治にかかわらず正当な司法判断の場を提供しないといけない」という信念に基づき自ら弁護人を引き受けている。単に引き受けただけでなく被告の英国兵を全力で法的に弁護して、兵士は死刑を免れたりしている。John Adamsは建国父の一人だからもちろん人一倍米国に愛国心を持つ者。そんな個人の信条とは別に法律にのみ忠実に力の限り被告のために全力を掛けた弁護士の鏡だ。
John Adamsは当時、弁護士としての立場だったけど、判事、それもSCOTUSの判事ともなればこのレベルの不屈の精神・勇気は全ての訴訟で求められるもの。もう一つの例は実際にSCOTUSの判事の話し。BarrettはSCOTUS判事のお手本としてFranklin D. Roosevelt(FDR)に任命されたRobert Jacksonの話しをしていた。このRobert Jackson、法律家ならどれか1つでも任命されることを夢見るであろう3つのPrestigiousな職務、Solicitor General、Attorney General、そしてSCOTUSの判事、の「全て」をFDRから任命され担当している。凄いね。ギタリストだったらCream、Experience、Van Halen全部でギター弾いたみたいな状態?またRobert JacksonとFDRは共にニューヨーク出身ということもあり職務以外でも親交が厚かったと言われている。すなわちRobert JacksonのキャリアはFDRに負うところが少なくないってことだね。
そんなRobert JacksonがSCOTUS判事だった頃、今でもLaw Schoolの憲法クラスで議論される代表的な憲法ケース「Korematsu v. United States 323 U.S. 214 (1944)」がSCOTUSで争われた。KorematsuはIEEPAの条文解釈とは異なり純粋に憲法解釈。第二次世界大戦当時、FDRはExecutive Order 9066を発令し、軍に西海岸の日系「米国市民」を社会から隔離し砂漠の真ん中に仮設したキャンプに収容する権限を与えた。後にSCOTUSの主判事となり当時カリフォルニア州知事だったEarl Warrenは当措置を支持。そんな中Fred Korematsuは自宅から軍に連行されるのを拒み、逮捕そして有罪となり収監されてしまった。Korematsuはそのような仕打ちは憲法のDue Process・Equal Protectionに反するって提訴したけど、第一審の北カリフォルニアの地方裁で負け、9th Circuit控訴審は下級審を支持、結局最高裁まで行った。実はKorematsuケースの1年ほど前には日系人に対する夜間外出禁止令もHirabayashi v. United Statesで合憲とされている。個人に国家反逆の意図が認定されていないにもかかわらず単に先祖が日本から来たっていうだけで収容所キャンプ送りっていうFDRの大統領令はもちろん本来憲法違反。戦時中でも、むしろ戦時中だからこそ、最高裁の冷静かつ勇気ある法判断が期待されたところだったんだけど、結局6対3(今回の関税ケースと同じ…)でKorematsuは敗訴。MajorityはStrict Scrutiny基準を適用の上、戦時中の必要不可欠な措置として認めている。そんな中、反対意見を書いた3人の1人がRobert Jackson。反対意見ではFDR大統領令を「醜い人種差別の深みにはまる罠」としRobert Jacksonはこんな判例を出してしまったら憲法が保障している個人の自由を大きく侵害する悪例になる、と警鐘を鳴らしていた。
Barrettが講演でKorematsuの最高裁判決は「米国の歴史、法適用の汚点」と言ってたけど、そんな中、FDRへの個人的な恩義や世論やメディアプレッシャーに惑わされず法をあるべき姿で適用したRobert Jacksonのような存在は米国法体系の希望であるとしている。
今日でも米国憲法解釈の最悪の判例に位置付けられることが多いKorematsuケースだけど、その後、現在の主判事Robertsがトランプ大統領(第一期)の渡航禁止を認めるOpinionの中でKorematsuはその判決が出た時点ですでに重大な誤りであり、米国憲法解釈に(Stare DecisisやDicta的にも?)一切影響を持たないと明言している。このRobertsのOpinionはそのケースに対する直接のHoldingではないけど、Korematsu判例は実質これにてOverturn(覚えてる?この用語の意味)され未来永劫封印されたと解されている。またそれに先立つ80年台にはKorematsuケースで連邦政府が都合の悪い証拠を隠蔽していたっていう点も指摘されている。以前から触れてる通り、立派な憲法があっても守らなくてもよくなったら終わりだからね。
ちなみに当時カリフォルニア知事だったEarl Warrenはその後、SCOTUSの主判事になってBrown v. Board of Educationで学校の人種ベースのSegregationを違憲としているが、それだったら日系人の収容にも反対して欲しかったね。
で、Barretは最高裁判事に任命された後も、その講演で明かしていた信念に基づき憲法や法のみに忠実なOpinionを出し続け、そして今回のLearning Resources, Inc.でも全く同じ信念でConcurring Opinion(すなわち原告指示)を書いている。ケースによっては法に基づきトランプ政権に好都合な判決に回ることもあれば今回のように逆の結果になることもある。そのためにBarrettはメディアに浮動票的に言われることもあるけど、法に忠実になろうとする結果のOpinionであり、それをもって裏切者やヒロイン扱いされるのは筋違い。本人はHillsdale大学の講演でも世論やメディアプレッシャーは大型訴訟になればなるほど強いから勇気をもって臨むって言ってたんでそんな精神を粛々と守って対応してるんだろう。メディアやポリティシャンの言動で一般市民がSCOTUSや判事の役割を誤解するようなことになって欲しくないし、今後任命される判事も法のみに忠実であって欲しい。
IEEPA関税を納付した輸入者への救済策
で、IEEPAに基づく関税が不法っていう点はLaw of Landとなり明確になったんで次の検討は救済策(Remedy)。RemedyはLaw Schoolだと独立した科目で、TortやContractは基本的に州法なんで、Remedyの考え方・計算法も州毎に異なるんだけど、(Equityではなく)Common Law制度に基づく訴訟のRemedyは金銭。すなわち不法行為がなかったら原告が置かれていたであろう状態に金銭をもって戻すのが原則。Tortだと事実関係次第でPunitiveが加算されることがある。
今回のSCOTUSの判決でLearning Resources, Inc.の2社に関してはそもそも下級審が無効却下なので、この点から当訴訟に特化した直接の恩典はないけど、他方のV.O.S. Selections, Inc.の5社は下級裁CITの第一審および一審を支持した控訴審の判決が確定している。となると、CITが元々どんなRemedyを言い渡してたかが関心事になるけど、SCOTUSのMajority Opinionが還付等に言及していないのと同様、CITも元々の一審ではIEEPAは関税を課す権限を付与していないというだけで、具体的な還付法には触れていない。Personal InjuryとかContractのようなケースの判決だったらRemedyも判決に盛り込まれると思うけど、おそらく関税は行政府的に独自の還付法が存在するんで最終的にはそっちで処理することなるはずっていうことだったんだろうか。
最高裁のOpinionでも仮にも救済策に触れてるのはDissenting OpinionのKavanaughだけで、それも具体的な還付メカニズムを論じるのでなく「Messy」ってBarrettが口頭弁論で口にしていた表現を使って原告指示は実務的に機能し難いというニュアンスのみに言及していた。
冒頭でチラッと触れた通り、まず最高裁判決を受けてIEEPAに基づく関税徴収はCBPが停止している。過去に既に納付されたIEEPA関税に関しては、SCOTUSが不法判決を出す事態に備えて多くの企業、一説によると1,500社強がCITに訴訟を起こしていたとか、IEEPA関税を納付した輸入者の数は300,000に上るとか言われてるけど、最高裁判決でIEEPA関税不法が明確になったのでSubstantiveな争点はこれ以上なくなり、CITは一旦これらのPendingケースは具体的な還付法が明確になるまでStayといって審理をストップ。したがってこれら各々のケースに対してCITがStare Decisisに基づき次々とSummary Judgmentを下す手続きは不要になった。
こんなケースで思い出されるのが1998年の最高裁判決で違憲とされたHarbor Maintenance Fee(HMF)。HMFの詳細は割愛するけど、関税同様にCBPが輸出に対して徴収していたFeeが違憲・不法となり還付が必要になった。当時デロイトのLos Angeles事務所にいたけど、LAとLong Beachに大きなPortがあるんでどうやって還付を受けるかっていう点が話題になってた(なんか変わんないね~)。結局、今回と同じCITの管轄ってことでCITがCBPに(還付の訴訟を起こしていない者にも)還付手続きを提供するよう命じてCITの監督下で還付を請求した者には数年かけて還付された。
今回もほぼ同様にCITは輸入者はCITに訴訟を起こす必要はなく、直接CBPにIEEPAに基づく還付請求をすることとしCBPにそれに応じるよう命じている。仮にCBPに還付を却下された場合のみCITに提訴するよう指示している。
還付受けたらどうする?
じゃあ、仮に多くの手続き的なハードルや待ち時間を経てめでたく還付を受けたらどうなるんだろうか。第三者のサプライヤーに「関税を輸入者側でモロに負担したら米国での商売は成り立たないから悪いけど輸入価格を下げて欲しい」とか交渉した経緯があると何となくギコチない話しになるよね。「還付されるんだったら価格下げた応分をうちにも返して」とか。契約法的に誰にどういう権限・義務があるかっていうのがスターティングポイントだけど、それと同様、または以上に取引先との関係にヒビが入らないように対応っていうのが重要だろう。
関連者間取引の場合は関税を支払った際のアレンジや移転価格ポリシーを基に、サプライチェーンのどの主体に還付を戻すかっていう検討が求められる。関税コストを低減させるため、また関税コスト負担が特定の主体のみを直撃しないよう、どんな風にクロスボーダー仕切値を調整するかっていう作戦を各国の移転価格税制下で練った納税者は少なくないけど今回はそのリバース。IEEPA関税が導入される前の状態に戻せばいいのかっていうと必ずしもそんなに簡単ではない。その調整や還付の分配行為自体、各主体の機能・リスクの説明と整合性が取れて各国の移転価格税制上問題ないように配慮しないといけない。IEEPAではNGとなった関税がSection 301 とか122とかで短期的にでも別の形で関税が復活する可能性もあるんで、慌ててリバースしてもまた後日調整が求められるような面倒もあり得る。いずれにしても移転価格税制の根本は(ピラー1のAmount Aとか葬られたんで)今のところALPだから、関税が導入されたり停止されたり再導入されたりする際に「第三者間だったらどうする?」っていうベーシックから検討しないといけないけど、比較対象性のある取引は少ないだろうから結構頭痛いよね。
関税は米国に入ってくる製品コストの一部を占めるだけに、輸入後のサプライチェーンを通じて最後は消費者に亘る。それらの価格に対するインパクトは随所に隠れてるだろうし、米国には消費税やVATは存在しないけど、最終消費レベルで課税されるSales TaxやUse Tax(双方を合わせてSUTって呼びます。文脈次第でSUTはState Unemployment Taxを意味することもあるんで間違えないようにね。APAを当然「Advance Pricing Agreement」だと思って文献読み始めたら実は「American Payroll Association」のことで愕然とする、みたいな感じにならないように)を持っている州も少なくない。大企業が装置設備とか購入してSUT支払っててサプライヤーが関税の還付を受けたらSUTのベースになった取得価格に占める還付額割合とか定量化できるかもしれないけど、例えば僕がTrader Joe’sで買ったアボカドに対して支払ったSales Taxを還付してもらうなっていうのは非現実的だよね。輸入者自らが最終消費者の場合にはもともとSUT算定時に特別なルールが設けられてる州もある。
法人税法の目的でも、2025年で既にCOGS等の一部として費用計上してる場合、2026年に還付があると、2025年末時点では確定債務だっただろうから修正申告カテゴリーではなく、2026年に別途還付を所得認識(?)することになるはず。2025年の期末在庫にsection 263Aやsection 471で資産計上されている支出の一部を構成してることもあるだろうから、その場合の取り扱いとか結構面倒そう。Sub Cやクロスボーダー課税専門の僕たちの守備範囲外になるんでDCの税務Accounting Methodチームにチャージコード渡して指南してもらうのが安全だね。
M&Aはどうだろうか。メガDealが復活し活況を呈してるM&A市場ではSCOTUS判決結果を含むグローバルリオーダーによる先行不透明さは織り込まれて、っていうか不確実性は覚悟してプランされてる感じなんで判決が大きなインパクトを持つような気はしない。米国のReshoringやRedomicile(F再編、覚えてる?)トレンドにも特に悪影響はないだろう。消費財を取り扱うセグメントに関してはもしかしたら関税が緩和された分、企業価値を見直して欲しいみたいな希望を持つところがあるかもね。
また上場企業は将来の業績「ガイダンス」その他株主に対する適切なコミュニケーションにも気を遣うところ。2025年の決算書や監査報告書が最終化されてない場合、もしかしたら今のドラフトでは「IEEPAの関税で何Billionというインパクトがあり得る」とかFootnote Disclosureしようって考えてたところがあったり、既に取られた関税のインパクトがP/Lに反映されてたりするケースもあるだろうから、SCOTUSの判決をSubsequent Eventとして決算書へのインパクトも検討しないといけない。
なんか長くなったけど国家主権、Multipolar体制、憲法、とか考えだすとキリがないんで、次回からまた専門の米国タックスに戻ります。
Friday, March 13, 2026
Tuesday, February 24, 2026
トランプ関税の最高裁判決
2月20日、24日、25日にSCOTUSの2025~2026年会期で審理しているケースのいくつかの判決を言い渡すってSCOTUSカレンダーで公表されてたんで、もしかしたらこのうちのどこかで「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」の判決も出るかもねって関心を集めてたけど、結局、冒頭の20日に含まれてました。SCOTUSの判決は大概午前10時に公表されるんで、一応20日の10時にスタンバイしてたけど、ほぼ定刻に公表された。
結果は6対3で連邦の条文法IEEPAは大統領に関税を課す権限は付与していないっていうもの。「だったらそれ以上書くこと余りないんじゃないの?」とか「そんな結果を公表するのにSCOTUSは3か月半も費やすの?」って思うかもしてないけどOpinionの背景やそれが意味することを考えると要検討事項は無限に広がるもの。でも僕のポスティングは紙幅の関係からもちろん有限。安心した?
Majority Opinion
前回のポスティングでアレコレ判決を占った際、主判事Robertsは何とか判決を6対3のクリーンな「Majority」Opinionにするための調整に時間を費やしているのかもって書いたけど結果としてその通りの微妙なバランスのMajority Opinionに仕上がっている。この仕上がりに関する個人的な観測は後述するけど、Force of Lawや判事間のコンセンサス表示的に判決がPlurality(Majorityのない4対3対2とかの多数ベース)じゃない形となる点に注力し慎重に時間を掛けて内部調整しドラフトしたであろう過程・努力が計り知れる。実はポスティングでは触れてないけど、1月にDCの経団連ビルでパネルに参加した際、判決は「ズバリ6対3」になるのではって予想したけどその通りになった。
Slip Opinion
会期中に五月雨に公開される判決の文書は「Slip Opinion」って言って速報。って言ってもフルの判決文なんだけど、米国の法律かじったことある読者だったら馴染みがあるはずのBlue BookのCitationで使う「607 U.S. xxx (2026)」(SCOTUSケースの場合)のレポートページ数とかがまだAssignできない等の意味でのCosmetics面で速報に当たる。Slip Opinionでも判決の重みや法的な位置づけは変わらない。
インデックス
今回のポスティングでは複雑な論点を整理しないといけないんでAll over the placeになり過ぎないよう自分のためにも内容を予め目次としてインデックスしておく。まずHoldingそのものを詳解した後、当Holdingに至るSCOTUSによる法的な論点整理、複数の判事がConcurringやDissentingで表明している主張とそれらがHoldingに与える意味、そしてRobertsが執筆しているMajorityおよび部分的にPluralityと考えられる Opinionの「Artistic」な構成に触れてみたい。これらの話しをする際には前回のモーツァルト/Robertsお誕生日特集「トランプ関税の最高裁判決はいつ?」で取り上げた複数の注目ポイントと必要に応じて比較もしてみたい。そしてその後、Holdingが「意味しない」点、またメディアでこれこそAll over the placeな感のある救済策の考え方、判決後の通商動向、等にも触れてみたい。
Opinionは170ページに上るんで相当端折って書かざる得ないし「有限」な紙幅っていう制限内でのポスティングになるけど、ある程度の長編は覚悟してね。SCOTUSによる条文解釈・憲法論だからね。Good Newsがあるとしたら皆さんの興味は異なるだろうから時間掛けて170ページのOpinionを何回も読んだりする必要ないし、大半の読者はもちろん読まないと思うけど、願いとしては(SCOTUSが気の毒なので?)今回のOpinionやHoldingをメディア報道のフィルターを介してのみ受け取らないようにっていう点。
SCOTUSのOpinionはArt
SCOTUSのOpinionのように良くできた文書って音楽と似てる。いいアルバムって最初に聴いて「これいいね」って思った後に何回も聴くとその度に新たな発見があってますます良さが分かる。「このギターソロの構成の前半にこのフレーズがきてるところがさすが」とか「同じリフでも2回目はミュートがより効いててカッコいい」とかアーティストによる細かい点の工夫に感心することになる。映画とかも名作はそうだよね。
SCOTUSのOpinionも同じ。何回も読み直すと最初見落としてた意味深な部分に「ハッとして!Good」(古~)になったりね。SCOTUSが取り上げるケースの多くは憲法解釈でこれは米国の国家統治、さらに言えば国を熟考する際に常に価値のある洞察になる。250年の歴史を通じて今でも市民の生活に多大なる影響を持つ連邦憲法、そしてそこから派生する法体系、三権分立やSCOTUSが司法府として果たす役割を、1778年当時のJames Madisonたち先達が考えたであろう理想の国家像を今日でもReal Timeに感じることができるからね。250 年に亘る時のテストに耐えてきた米国主権を支えるルール。国家主権を超えて各国市民に説明責任がない権威主義的な「Rule Based」グローバルオーダーの「Rule」が重宝されてきた近年のトップダウンモデルの「デモクラシー」との比較にも役立つ。憲法の議論を読むたびに「なぜ欧州から独立して個人の自由が侵害されない新しい国を作ろうとした際、こういう国家統治、憲法にしたんだろう」って温故知新的に考えさせてくれる。
SCOTUSによる条文解釈のケースは、僕らが毎日格闘し続けてるInternal Revenue Codeの条文解釈時の原則や法体系適用の考え方をシャープにしてくれるっていうもっと直接的な関わりがある。
判決「Holding」
まずは基本的かつ最重要な今回のHoldingそのものに関して。この点はメディア報道とかだけ見てるとニュアンスが伝わり難いと思う。
前回のポスティングで触れた通り、最高裁が審理していた「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」は正確には「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」の2社が原告の元祖「Learning Resources, Inc.」ケース(No. 24-1287)と「V.O.S. Selections, Inc.」「Plastic Services and Products, LLC (商号 Genova Pipe)」、「MicroKits, LLC」、「FishUSA Inc.」、そして「Terry Precision Cycling LLC」の5社が原告の「V.O.S. Selections, Inc.」ケース(No. 25-250)をConsolidateしたもの。ただし、元々異なる2つのケースを取り扱ってるっていう点は覚えておいてね。各々に対して異なるHoldingの適用結果が言い渡されてるんで。
で、SCOTUSがOpinionの中で明確にHoldingと定義してるのは「IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していない」という点。また「Learning Resources, Inc.ケースは第一審で判決を出した下級審「DCのDistrict Court(連邦地方裁)」に法的管轄権がないことから無効」、一方「V.O.S. Selections, Inc.ケースはSubstantiveなHoldingに基づき下級審の判決をAffirm(正しいと認める)」っていう具体的な処置も明確にされている。
HoldingのSubstantive部分とStare Decisis原則
これを少しUnpackすると、最初の「IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していない」っていう点が明確にSCOTUSのHoldingとなったことから下級審は今後当Holdingに不整合な判決を出すことは認められない。先例拘束原則(Stare Decisis原則)のVertical、すなわち上から下への適用だ。Holdingが持つこの法的効果はこれから下級審でIEEPAベースの関税は不法って提訴する場合に法的な争点がなく事実関係にも争点がなければ原告はSummary Judgment的に簡単に勝訴できることになる。
このStare Decisis原則、Law Schoolの1年生の頃はIssue PreclusionやCollateral Estoppelとの区別とか勉強するよね。Stare Decisis原則には上述のVerticalとは別にHorizontal、すなわち自分が過去に言い渡したHoldingは、将来同様の事実関係の係争が持ち込まれた場合には原則、過去の判例に従う、っていうのもある。Verticalが絶対なのと比較して、Horizontalは憲法的にどう考えてもおかしい等の強固な理由があれば「Overturn」(HorizontalなStare Decisisを覆すことは「Overrule」じゃなくて「Overturn」っていう用語を使う)することはできる。歴史的にSCOTUSは少なからずOverturn権は行使してる。最近ではChevron原則を撤廃したLoper Brightが記憶に新しい。
Loper Brightの税制に与える影響は今後何年も掛けて進化するだろうけど、既に2017年国外留保所得一括合算(テクニカルにはSubpart F所得)時のSection 78グロスアップと245Aの関係を争ったケースの納税者勝訴(控訴中)はLoper Bright原則があったからこそっていう解釈がある。個人的にはChevron原則の2ステップテストでも最初のステップを克服できないんでLoper Bright原則前でも納税者が勝つべきだと思うけどね。他にも潜在的に財務省規則や行政府のアプローチが条文に合致しているかってChevronよりシビアに問われるんで実務的に大きなインパクトがあり得る。憲法解釈でChevronとLoper Brightとかは学術的な話しに聞こえるかもしれないけど、一般市民や企業の権限・義務に大きな影響がある判例だ。
OpinionのうちHoldingに当たる部分はStare Decisis原則で、その後の同様の事実関係の係争解決時に「Force of law」を持つことから、当然Opinionのうちどの部分をHoldingと位置付けるかがとても重要。Opinionを読んでどうHoldingをフレーミングするかっていうのは弁護士、特に法廷弁護士に欠かせないスキル。自分の主張に不利な判例はHoldingを狭義に解釈し、「我々のケースにはそのHoldingはOn-Pointではない」みたいな主張が可能になることもあるし、逆に有利な判例は文字通り、またはOpinionで論じられている整理を含むよう広義に解釈して「こんな判例があるんで我々のケースにOn-Pointです」って言う主張ができるようになる。この理由で同じ判例を巡って原告と被告が正反対の主張をサポートしたりすることがあるんで面白い。
今回のIEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していないっていうのはHoldingって明記されてるんでどんなに狭義にフレームしてもこの部分は異論の余地なくHoldingだけど、それをサポートする法解釈のどの部分まではHoldingなのかっていう解釈に機械的な境界線はない。今回のMajority Opinionとこのニュアンスの関係はしつこいけど後述する。また、このHoldingは変な用語だけどDeclaratory Judgment的に広範な影響があり得るけど、SCOTUSの判決はあくまで今回の係争の当事者、すなわちLearning Resources, Inc.の2社、V.O.S. Selections, Inc.の5社と連邦政府間の権限・義務を解決するものだ。
Learning Resources, Inc.ケース却下
2つ目のHoldingとなる「Learning Resources, Inc.ケースは一審で判決を出した下級審であるDCのDistrict Courtに法的管轄権がないことから無効」は、前回のポスティングで審理の争点のひとつとして触れたもの。V.O.S. Selections, Inc.ケースを審理した下級審が「the United States Court of International Trade (CIT)」だったのに対し、Learning Resources, Inc.ケースはD.C.のDistrict Court(地方裁)で審理された。その時点で既に被告の連邦政府側は「the Harmonized Tariff Schedule of the United States (HTSUS)」の改訂を起因とする争点なのだから「CITが独占法的管轄権持つので却下するように」と抗弁してたけど、District Courtは「IEEPAは関税を課す権限を付与していないから関税を扱うCITではなくうちの管轄」みたいな独自の理由を展開してJurisdictionを自ら認め控訴審もそのまま追随している。最高裁は関税の還付を求めるケースはIEEPAに基づく関税を課す権限そのものが争点でも関税に変わりないっていう分かり易い整理でバッサリ。
このJurisdiction、提訴時にどのForumを選択できるかにかかわる手続き的な最重要検討事項。Jurisdictionは「Personal」と「Subject-Matter」に大別されるけど(Law Schoolの「Civil Procedure」思い出した?Evidenceと並んで苦手な生徒が多いよね)、今回の争点はSubject-Matterの方。関税の係争っていうSubject-MatterはCITのみにJurisdictionがあり、District Courtには審理する法的な権限がないってうHolding結果。これも立派なHoldingなんで、Stare Decisis的に今後、同様の関税マターはCITでの審理、または審理に代わってU.S Customs and Boarder Protection (CBP)経由の還付請求が求められる。もっと正確に言えばそんな原告はいないと思うけど仮に関税の訴訟がDistrict Courtに持ち込まれた場合、裁判所はJurisdictionなしを理由に却下しないといけない。また、仮に現時点で輸入者のうちDistrict Courtに訴訟を起こしている者がいるとすると、それらは全てDistrict Courtに却下されることになるから、別途CITに訴訟を起こすか、上述のCBPに還付請求を行うような道を追求するしかない。
結果、「Learning Resources, Inc.」ケースの原告2社「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」の訴えは下級審に差し戻され、最高裁の指示に基づき下級審が却下することになる。え~この2社の訴訟はなかったも同然で、他の傍観者と同じ立場に置かれてしまうっていうことなんだね。ChevronやLoper Brightと肩を並べて歴史の1ページを飾る判例に社名が冠されているのに当人のケースは却下っていうチョッと皮肉。とは言え、IEEPAに基づいて大統領は関税を課すことはできないっていうSubstantiveなHoldingはもちろん「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」2社にも適用されるんで、他の輸入者同様、CITに再度訴訟を起こすか、CBP経由で還付の道があるんだったらそっちでトライするかだね。
それにしてもLearning Resources Inc.のLegal AdvisorはなぜCITではなく敢えてJurisdictionに疑義があり得るDistrict Courtを選んだんだろうか。僕が知る術もないけど、D.C.のDistrict Courtは反トランプの判事が多いんで勝ち目十分って読んでForum Shoppingしたのかな。結局、裏目に出てクライアントにどう説明するつもりでしょうか。アドバイザーの立場としてはチョッと同情…。D.C.のDistrict Courtも潔く自分にはJurisdictionはないって却下しておけば最高裁まで行かないで済んだだろうけど、大型案件だけに勇んで「とんでもない権限逸脱」とか糾弾したかったのかもね。ともかく不要にBackfireしてしまった感は否めない。
V.O.S. Selections, Inc.ケース
3つ目の「V.O.S. Selections, Inc.ケースは下級審の判決をAffirm(正しいと認める)」は最初のSubstantiveなHoldingから当然の結果。
Opinion: Holdingの法的整理
Robertsが執筆しているSCOTUSとしてのOpinionはPart I、Part II、Part IIIで構成される。Part Iは更にAとBに分けられ、Part IIにもAとBがありAの下に更に1と2がある。この複雑な構成は6-3のMajority Opinionを形成するためのArt。Part IIIは短い総まとめ。
6人のMajority Opinionその1
まずPart IのAとBではIEEPAの条文内容、連邦政府によるIEEPAを適用した関税、等の背景となる事実関係を整理し、次に下級裁の判決に触れている。これらは特に法的に物議を醸す内容ではなく、Majorityを形成する6人、すなわちRoberts当人、Gorsuch、BarretとLiberal派のKagan、Sotomayor、JacksonがOpinionに名を連ねている。Part IIのAの1も同じ6人が賛同していて、Majority OpinionとなるHoldingの骨子となる法的整理の一部。この部分をまとめるとまず憲法のArticle 1のSection 8では「関税を含む課税権は議会のみにある」とし、憲法起草時から「課税権」は他の権限との比較で、市民の財産から支払われるという特別権限と位置付けられると説明されている。課税権が特別なStatusを持つっていう点はJames Madisonがその昔言ってた通り「課税する権限は「Destroy」する権限」(McCulloch v. Maryland, 316, 431 (1819))であり、市民に選挙で選ばれ、次の選挙で落ちるかもしれないっていう意味でも市民に説明責任が付きまとう議会のみが制定可能としてる。Alexander Hamiltonは課税権は国家が持つ権限でも最も重要(センシティブという意味で)と位置付けている。こんな風に米国の行政府にも権限がないんだから、米国とは一切関係なく現地欧州でも選挙で選ばれていないEUの官僚やましては政府でもないOECDが税法を規定して米国に押し付けるっていうのが米国の国家統治的にどれだけ横暴に映るか理解できてSide-by-Sideが少しわかった気がする?
で、この課税権には過去の判例から関税が含まれることは疑いの余地はないとし、歴史的に課税権が行政府に付与されたことはないとしている。関税に関して明確に言及し一定の歯止めの範囲で大統領に権限を付与している法律は複数あり、それらは明確な権限付与で無制限ではないので正当としても、連邦政府の主張となるIEEPAが大統領に付与している「ImportをRegulateする」っていう文言には関税に何の言及もないまま無制限に関税を課す権限が内包されているっていうのが正当かどうかと問題提起している。
憲法厳格主義3人のみ賛同のOpinion
ここからがチョッと面白くてその後に続くPart IIのAの2は6人ではなく憲法厳格主義のRoberts、Gorsuch、Barrettの3名のみが賛同。この部分では、関税に言及もないIEEPAがあれだけ無制限の関税を課す権限を大統領に与えているっていう条文解釈は無理っていう理由のひとつに憲法解釈原則のひとつと考えられる「Major Questions」原則を挙げている。すなわち課税権のような重要性が高い権限・Questionsは議会による権限付与が明確でない限り権限付与はないというもの。Major Questions原則は得てして不明確な部分が残りがちな条文が曖昧っていう理由で無暗に行政府が自分の解釈で法執行するようなことがないようにという歯止め。したがってIEEPAの条文の「Regulate」にそのような大それた権限が示唆されているっていうのは認められないってことだ。
Major Questions原則に関してはBarretとGorsuchが各々Concurring Opinionを執筆している。GorsuchのConcurring Opinionは後述のLiberal派のMajor Questions原則無視に皮肉を交えて反論している。またトランプ政権が鉄火のごとく怒るのを予知して「別の大統領(つまり将来の民主党)」が将来、同じように議会を無視して広範な権限を行使するようなことに繋がりかねない変な判例は残すべきではないと牽制している。前回のポスティングで触れた「Ambivalence」的なダイナミクスだ。
Liberal派の別Opinion
じゃあ、IEEPAの条文的に関税を課す権限は大統領に付与されてないって部分に同意しているLiberal派の3人、Kagan、Sotomayor、JacksonはなぜMajor Questions原則に触れているPart IIのAの2に限って賛同していないのか。それは3人の別Opinionにある通り、Major Questions原則を持ち出すまでもなく、条文の文言そのものの解釈で片付くとしている。すなわち、関税に言及していない単なるRegulateっていう文言に関税を課す権限が含まれているっていう解釈はなり立たないっていうもの。
Liberal派の3人が今回のケースでMajor Questions原則に賛同していないのは、Major Questions原則は別のケース、West Virginia v. EPAの判決で見られる通り、バイデン政権等の大きな政府派が議会を無視して何でもかんでも大統領権限や行政府の決定で敢行しようとする権限付与問題に大きな足かせとなるから。前回のポスティングで「Ambivalence」って表現した通り、通常、議会が決めるべき法律を行政府や大統領の権限で代行しようとするのはLiberal派が指示する方向で、今回のIEEPAによる関税はたまたまトランプ政権による越権(?)行為なのでLiberal派は何の躊躇もなく不法ってしてるけど、その理由にIEEPAの文言を超えてMajor Questions原則に言及してしまうと他に広範な影響があり得る点に危惧しているからだ。みんないろいろ考えるねって思うかもしれないけどプロ中のプロ達だからね。
ちなみにこの「Liberal」っていう用語、文字だけ見るとまるで個人の自由(Liberty)を尊重するような印象を受けるけど、実際にはそうではなく憲法解釈の観点から言うと、ファウンダーによる起草時の意図に基づいて厳格に憲法解釈する厳格主義との対比で、時代と共に社会は変わるのだから憲法解釈も憲法を文字通り読んだり、起草時の意図に縛られることなく今憲法を書いたらどんなだったかって解釈をする派を言う。憲法に対するこの適用法は結果ベースで憲法をどうにでも解釈し得るのでScaliaが生きてた頃、憲法の意味がなくなるとして徹底的に反感を示していた。ちなみに現判事の一人Barretは1998年期に当時判事だったScaliaのClerkを勤めた経験があり彼女の法律観にはScaliaの影響が見てとれることも少なくない。
政党やメディアでLiberalっていうと民主党だけど、こちらも大きな政府で個人の自由とは真逆。増してや今の民主党はケネディやクリントン時代の政党とは異なる社会主義っぽい思想がメインになってるからますます個人のLibertyからは遠い政策を標榜していることになる。
いずれにしてもMajor Questions原則を論じているPart IIのAの2部分はMajority Opinionを構成していることにならず、Stare Decisis的な観点からこの部分に関しては拘束力が弱まることになる。それがLiberal派3人がこの部分には賛同していない意図となる。前回のポスティングでこの3人は憲法解釈ではなくピュアに条文解釈に基づいて原告指示するであろうって予測したけど、まさにそんな結果になっている。
6人のMajority Opinionその2
次にPart IIのBが来るけど、ここは再度6人が賛同し、Majority Opinionの最終法的整理部分に当たる。
ここではMajority OpinionでHoldingをサポートするためMajor Questions原則に言及することなく純粋な条文解釈を試みている。IEEPAでは大統領にImportを「investigate」、「block during the pendency of an investigation」、「regulate」、「direct and compel」、「nullify」、「void」、「prevent or prohibit」する権限を付与している。議会が9つの動詞を使って具体的に権限を明確化している中、関税という文言は見当たらない。わざわざ9つも動詞を使って具体的に権限を表現している中、関税という文言は不在なのはそのような権限を付与する意図はなかったと理解するのが正しい条文解釈と整理している。法解釈の原則のひとつに「Inclusio Unius est Exclusio Alterius」(Law Schoolで習ったの思い出した?)っていうのがあって、これは丁寧にいろいろ列挙している条文では、列挙されていない項目は含まないっていうのが意図と解されるっていうもので、まさにこの9つの動詞に適用されるタイプの原則だ。
また301とかを含む他の関税を課す権限を付与している条文には必ず明確に関税に触れているっていう点も重要だと整理している。連邦政府の言う「Regulate」に関税を課す権限が含まれるっていう主張だけど、Regulateの「fix, establish, or control」といった通常の用語の意味的にそのような解釈は無理があると同時に、Regulateがそこまで広範な権限を付与しているということになると、他の8つの動詞で明言されている行為の多くも含まれることになり、それらを列挙する意味がそもそもなくなってしまうのでおかしいともされた。また課税はRegulate効果を持つ点はその通りだとした上で、だからと言って逆、すなわちRegulateに課税権が含まれるという主張、は真ということにはならないとしている。
前回のポスティングで触れた「Running with the Devil」のVan Halenのギターソロの冒頭、キュイーンって多分二つの弦を一気にBendingさせた直後にペキペキぺキって謎の音がするけどあれは当時ライブみたところSomebody Get Me a DoctorのBreak後のリフ4回目の技と同じで弦をPulling Offしながら右手の裏をフレット上を軽くミュートしながら動かしてあんな音出すんだよね。じゃなくて「Trading with the Enemy」(TWEA)でニクソン大統領が70年代に課した関税が下級裁で認められたっていう点はそのようなマイナーな判決が判決後にTWEAの更新版として可決されたIEEPAに継承されたとは認められないとしている。これらからIEEPAが関税に言及することなく「Regulate」っていう文言で議会が大統領に無制限に関税を課すという課税権限を付与しているっていう主張は不合理という結論になっている。
Holdingは条文解釈
前回のポスティングで最高裁が解決しようとしている争点はまず「IEEPAで国家緊急時に大統領に付与されている権限に関税を課すという行為が含まれているか」っていう点がありこれは条文解釈って書いた。そして仮にIEEPA による大統領への権限付与に関税を課す権限が含まれている場合、法律のその部分は「立法行為を行政府に権限移譲することを禁じている連邦憲法に違反しているか」という点がありこれは憲法解釈って書いた。結局、最初の条文解釈で終わったことになる。条文解釈時にクロスオーバー的に憲法解釈の原則の範疇と言えるMajor Questions原則が議論されたけど、こちらはMajority Opinionにはランクインしていない。
チョッと長くなってるんで一旦ここでBreakしてDissenting Opinion、救済策、今後の展望、メディア報道、判事の役割とかは別のポスティングで余り時間差なくアップします。
結果は6対3で連邦の条文法IEEPAは大統領に関税を課す権限は付与していないっていうもの。「だったらそれ以上書くこと余りないんじゃないの?」とか「そんな結果を公表するのにSCOTUSは3か月半も費やすの?」って思うかもしてないけどOpinionの背景やそれが意味することを考えると要検討事項は無限に広がるもの。でも僕のポスティングは紙幅の関係からもちろん有限。安心した?
Majority Opinion
前回のポスティングでアレコレ判決を占った際、主判事Robertsは何とか判決を6対3のクリーンな「Majority」Opinionにするための調整に時間を費やしているのかもって書いたけど結果としてその通りの微妙なバランスのMajority Opinionに仕上がっている。この仕上がりに関する個人的な観測は後述するけど、Force of Lawや判事間のコンセンサス表示的に判決がPlurality(Majorityのない4対3対2とかの多数ベース)じゃない形となる点に注力し慎重に時間を掛けて内部調整しドラフトしたであろう過程・努力が計り知れる。実はポスティングでは触れてないけど、1月にDCの経団連ビルでパネルに参加した際、判決は「ズバリ6対3」になるのではって予想したけどその通りになった。
Slip Opinion
会期中に五月雨に公開される判決の文書は「Slip Opinion」って言って速報。って言ってもフルの判決文なんだけど、米国の法律かじったことある読者だったら馴染みがあるはずのBlue BookのCitationで使う「607 U.S. xxx (2026)」(SCOTUSケースの場合)のレポートページ数とかがまだAssignできない等の意味でのCosmetics面で速報に当たる。Slip Opinionでも判決の重みや法的な位置づけは変わらない。
インデックス
今回のポスティングでは複雑な論点を整理しないといけないんでAll over the placeになり過ぎないよう自分のためにも内容を予め目次としてインデックスしておく。まずHoldingそのものを詳解した後、当Holdingに至るSCOTUSによる法的な論点整理、複数の判事がConcurringやDissentingで表明している主張とそれらがHoldingに与える意味、そしてRobertsが執筆しているMajorityおよび部分的にPluralityと考えられる Opinionの「Artistic」な構成に触れてみたい。これらの話しをする際には前回のモーツァルト/Robertsお誕生日特集「トランプ関税の最高裁判決はいつ?」で取り上げた複数の注目ポイントと必要に応じて比較もしてみたい。そしてその後、Holdingが「意味しない」点、またメディアでこれこそAll over the placeな感のある救済策の考え方、判決後の通商動向、等にも触れてみたい。
Opinionは170ページに上るんで相当端折って書かざる得ないし「有限」な紙幅っていう制限内でのポスティングになるけど、ある程度の長編は覚悟してね。SCOTUSによる条文解釈・憲法論だからね。Good Newsがあるとしたら皆さんの興味は異なるだろうから時間掛けて170ページのOpinionを何回も読んだりする必要ないし、大半の読者はもちろん読まないと思うけど、願いとしては(SCOTUSが気の毒なので?)今回のOpinionやHoldingをメディア報道のフィルターを介してのみ受け取らないようにっていう点。
SCOTUSのOpinionはArt
SCOTUSのOpinionのように良くできた文書って音楽と似てる。いいアルバムって最初に聴いて「これいいね」って思った後に何回も聴くとその度に新たな発見があってますます良さが分かる。「このギターソロの構成の前半にこのフレーズがきてるところがさすが」とか「同じリフでも2回目はミュートがより効いててカッコいい」とかアーティストによる細かい点の工夫に感心することになる。映画とかも名作はそうだよね。
SCOTUSのOpinionも同じ。何回も読み直すと最初見落としてた意味深な部分に「ハッとして!Good」(古~)になったりね。SCOTUSが取り上げるケースの多くは憲法解釈でこれは米国の国家統治、さらに言えば国を熟考する際に常に価値のある洞察になる。250年の歴史を通じて今でも市民の生活に多大なる影響を持つ連邦憲法、そしてそこから派生する法体系、三権分立やSCOTUSが司法府として果たす役割を、1778年当時のJames Madisonたち先達が考えたであろう理想の国家像を今日でもReal Timeに感じることができるからね。250 年に亘る時のテストに耐えてきた米国主権を支えるルール。国家主権を超えて各国市民に説明責任がない権威主義的な「Rule Based」グローバルオーダーの「Rule」が重宝されてきた近年のトップダウンモデルの「デモクラシー」との比較にも役立つ。憲法の議論を読むたびに「なぜ欧州から独立して個人の自由が侵害されない新しい国を作ろうとした際、こういう国家統治、憲法にしたんだろう」って温故知新的に考えさせてくれる。
SCOTUSによる条文解釈のケースは、僕らが毎日格闘し続けてるInternal Revenue Codeの条文解釈時の原則や法体系適用の考え方をシャープにしてくれるっていうもっと直接的な関わりがある。
判決「Holding」
まずは基本的かつ最重要な今回のHoldingそのものに関して。この点はメディア報道とかだけ見てるとニュアンスが伝わり難いと思う。
前回のポスティングで触れた通り、最高裁が審理していた「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」は正確には「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」の2社が原告の元祖「Learning Resources, Inc.」ケース(No. 24-1287)と「V.O.S. Selections, Inc.」「Plastic Services and Products, LLC (商号 Genova Pipe)」、「MicroKits, LLC」、「FishUSA Inc.」、そして「Terry Precision Cycling LLC」の5社が原告の「V.O.S. Selections, Inc.」ケース(No. 25-250)をConsolidateしたもの。ただし、元々異なる2つのケースを取り扱ってるっていう点は覚えておいてね。各々に対して異なるHoldingの適用結果が言い渡されてるんで。
で、SCOTUSがOpinionの中で明確にHoldingと定義してるのは「IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していない」という点。また「Learning Resources, Inc.ケースは第一審で判決を出した下級審「DCのDistrict Court(連邦地方裁)」に法的管轄権がないことから無効」、一方「V.O.S. Selections, Inc.ケースはSubstantiveなHoldingに基づき下級審の判決をAffirm(正しいと認める)」っていう具体的な処置も明確にされている。
HoldingのSubstantive部分とStare Decisis原則
これを少しUnpackすると、最初の「IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していない」っていう点が明確にSCOTUSのHoldingとなったことから下級審は今後当Holdingに不整合な判決を出すことは認められない。先例拘束原則(Stare Decisis原則)のVertical、すなわち上から下への適用だ。Holdingが持つこの法的効果はこれから下級審でIEEPAベースの関税は不法って提訴する場合に法的な争点がなく事実関係にも争点がなければ原告はSummary Judgment的に簡単に勝訴できることになる。
このStare Decisis原則、Law Schoolの1年生の頃はIssue PreclusionやCollateral Estoppelとの区別とか勉強するよね。Stare Decisis原則には上述のVerticalとは別にHorizontal、すなわち自分が過去に言い渡したHoldingは、将来同様の事実関係の係争が持ち込まれた場合には原則、過去の判例に従う、っていうのもある。Verticalが絶対なのと比較して、Horizontalは憲法的にどう考えてもおかしい等の強固な理由があれば「Overturn」(HorizontalなStare Decisisを覆すことは「Overrule」じゃなくて「Overturn」っていう用語を使う)することはできる。歴史的にSCOTUSは少なからずOverturn権は行使してる。最近ではChevron原則を撤廃したLoper Brightが記憶に新しい。
Loper Brightの税制に与える影響は今後何年も掛けて進化するだろうけど、既に2017年国外留保所得一括合算(テクニカルにはSubpart F所得)時のSection 78グロスアップと245Aの関係を争ったケースの納税者勝訴(控訴中)はLoper Bright原則があったからこそっていう解釈がある。個人的にはChevron原則の2ステップテストでも最初のステップを克服できないんでLoper Bright原則前でも納税者が勝つべきだと思うけどね。他にも潜在的に財務省規則や行政府のアプローチが条文に合致しているかってChevronよりシビアに問われるんで実務的に大きなインパクトがあり得る。憲法解釈でChevronとLoper Brightとかは学術的な話しに聞こえるかもしれないけど、一般市民や企業の権限・義務に大きな影響がある判例だ。
OpinionのうちHoldingに当たる部分はStare Decisis原則で、その後の同様の事実関係の係争解決時に「Force of law」を持つことから、当然Opinionのうちどの部分をHoldingと位置付けるかがとても重要。Opinionを読んでどうHoldingをフレーミングするかっていうのは弁護士、特に法廷弁護士に欠かせないスキル。自分の主張に不利な判例はHoldingを狭義に解釈し、「我々のケースにはそのHoldingはOn-Pointではない」みたいな主張が可能になることもあるし、逆に有利な判例は文字通り、またはOpinionで論じられている整理を含むよう広義に解釈して「こんな判例があるんで我々のケースにOn-Pointです」って言う主張ができるようになる。この理由で同じ判例を巡って原告と被告が正反対の主張をサポートしたりすることがあるんで面白い。
今回のIEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していないっていうのはHoldingって明記されてるんでどんなに狭義にフレームしてもこの部分は異論の余地なくHoldingだけど、それをサポートする法解釈のどの部分まではHoldingなのかっていう解釈に機械的な境界線はない。今回のMajority Opinionとこのニュアンスの関係はしつこいけど後述する。また、このHoldingは変な用語だけどDeclaratory Judgment的に広範な影響があり得るけど、SCOTUSの判決はあくまで今回の係争の当事者、すなわちLearning Resources, Inc.の2社、V.O.S. Selections, Inc.の5社と連邦政府間の権限・義務を解決するものだ。
Learning Resources, Inc.ケース却下
2つ目のHoldingとなる「Learning Resources, Inc.ケースは一審で判決を出した下級審であるDCのDistrict Courtに法的管轄権がないことから無効」は、前回のポスティングで審理の争点のひとつとして触れたもの。V.O.S. Selections, Inc.ケースを審理した下級審が「the United States Court of International Trade (CIT)」だったのに対し、Learning Resources, Inc.ケースはD.C.のDistrict Court(地方裁)で審理された。その時点で既に被告の連邦政府側は「the Harmonized Tariff Schedule of the United States (HTSUS)」の改訂を起因とする争点なのだから「CITが独占法的管轄権持つので却下するように」と抗弁してたけど、District Courtは「IEEPAは関税を課す権限を付与していないから関税を扱うCITではなくうちの管轄」みたいな独自の理由を展開してJurisdictionを自ら認め控訴審もそのまま追随している。最高裁は関税の還付を求めるケースはIEEPAに基づく関税を課す権限そのものが争点でも関税に変わりないっていう分かり易い整理でバッサリ。
このJurisdiction、提訴時にどのForumを選択できるかにかかわる手続き的な最重要検討事項。Jurisdictionは「Personal」と「Subject-Matter」に大別されるけど(Law Schoolの「Civil Procedure」思い出した?Evidenceと並んで苦手な生徒が多いよね)、今回の争点はSubject-Matterの方。関税の係争っていうSubject-MatterはCITのみにJurisdictionがあり、District Courtには審理する法的な権限がないってうHolding結果。これも立派なHoldingなんで、Stare Decisis的に今後、同様の関税マターはCITでの審理、または審理に代わってU.S Customs and Boarder Protection (CBP)経由の還付請求が求められる。もっと正確に言えばそんな原告はいないと思うけど仮に関税の訴訟がDistrict Courtに持ち込まれた場合、裁判所はJurisdictionなしを理由に却下しないといけない。また、仮に現時点で輸入者のうちDistrict Courtに訴訟を起こしている者がいるとすると、それらは全てDistrict Courtに却下されることになるから、別途CITに訴訟を起こすか、上述のCBPに還付請求を行うような道を追求するしかない。
結果、「Learning Resources, Inc.」ケースの原告2社「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」の訴えは下級審に差し戻され、最高裁の指示に基づき下級審が却下することになる。え~この2社の訴訟はなかったも同然で、他の傍観者と同じ立場に置かれてしまうっていうことなんだね。ChevronやLoper Brightと肩を並べて歴史の1ページを飾る判例に社名が冠されているのに当人のケースは却下っていうチョッと皮肉。とは言え、IEEPAに基づいて大統領は関税を課すことはできないっていうSubstantiveなHoldingはもちろん「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」2社にも適用されるんで、他の輸入者同様、CITに再度訴訟を起こすか、CBP経由で還付の道があるんだったらそっちでトライするかだね。
それにしてもLearning Resources Inc.のLegal AdvisorはなぜCITではなく敢えてJurisdictionに疑義があり得るDistrict Courtを選んだんだろうか。僕が知る術もないけど、D.C.のDistrict Courtは反トランプの判事が多いんで勝ち目十分って読んでForum Shoppingしたのかな。結局、裏目に出てクライアントにどう説明するつもりでしょうか。アドバイザーの立場としてはチョッと同情…。D.C.のDistrict Courtも潔く自分にはJurisdictionはないって却下しておけば最高裁まで行かないで済んだだろうけど、大型案件だけに勇んで「とんでもない権限逸脱」とか糾弾したかったのかもね。ともかく不要にBackfireしてしまった感は否めない。
V.O.S. Selections, Inc.ケース
3つ目の「V.O.S. Selections, Inc.ケースは下級審の判決をAffirm(正しいと認める)」は最初のSubstantiveなHoldingから当然の結果。
Opinion: Holdingの法的整理
Robertsが執筆しているSCOTUSとしてのOpinionはPart I、Part II、Part IIIで構成される。Part Iは更にAとBに分けられ、Part IIにもAとBがありAの下に更に1と2がある。この複雑な構成は6-3のMajority Opinionを形成するためのArt。Part IIIは短い総まとめ。
6人のMajority Opinionその1
まずPart IのAとBではIEEPAの条文内容、連邦政府によるIEEPAを適用した関税、等の背景となる事実関係を整理し、次に下級裁の判決に触れている。これらは特に法的に物議を醸す内容ではなく、Majorityを形成する6人、すなわちRoberts当人、Gorsuch、BarretとLiberal派のKagan、Sotomayor、JacksonがOpinionに名を連ねている。Part IIのAの1も同じ6人が賛同していて、Majority OpinionとなるHoldingの骨子となる法的整理の一部。この部分をまとめるとまず憲法のArticle 1のSection 8では「関税を含む課税権は議会のみにある」とし、憲法起草時から「課税権」は他の権限との比較で、市民の財産から支払われるという特別権限と位置付けられると説明されている。課税権が特別なStatusを持つっていう点はJames Madisonがその昔言ってた通り「課税する権限は「Destroy」する権限」(McCulloch v. Maryland, 316, 431 (1819))であり、市民に選挙で選ばれ、次の選挙で落ちるかもしれないっていう意味でも市民に説明責任が付きまとう議会のみが制定可能としてる。Alexander Hamiltonは課税権は国家が持つ権限でも最も重要(センシティブという意味で)と位置付けている。こんな風に米国の行政府にも権限がないんだから、米国とは一切関係なく現地欧州でも選挙で選ばれていないEUの官僚やましては政府でもないOECDが税法を規定して米国に押し付けるっていうのが米国の国家統治的にどれだけ横暴に映るか理解できてSide-by-Sideが少しわかった気がする?
で、この課税権には過去の判例から関税が含まれることは疑いの余地はないとし、歴史的に課税権が行政府に付与されたことはないとしている。関税に関して明確に言及し一定の歯止めの範囲で大統領に権限を付与している法律は複数あり、それらは明確な権限付与で無制限ではないので正当としても、連邦政府の主張となるIEEPAが大統領に付与している「ImportをRegulateする」っていう文言には関税に何の言及もないまま無制限に関税を課す権限が内包されているっていうのが正当かどうかと問題提起している。
憲法厳格主義3人のみ賛同のOpinion
ここからがチョッと面白くてその後に続くPart IIのAの2は6人ではなく憲法厳格主義のRoberts、Gorsuch、Barrettの3名のみが賛同。この部分では、関税に言及もないIEEPAがあれだけ無制限の関税を課す権限を大統領に与えているっていう条文解釈は無理っていう理由のひとつに憲法解釈原則のひとつと考えられる「Major Questions」原則を挙げている。すなわち課税権のような重要性が高い権限・Questionsは議会による権限付与が明確でない限り権限付与はないというもの。Major Questions原則は得てして不明確な部分が残りがちな条文が曖昧っていう理由で無暗に行政府が自分の解釈で法執行するようなことがないようにという歯止め。したがってIEEPAの条文の「Regulate」にそのような大それた権限が示唆されているっていうのは認められないってことだ。
Major Questions原則に関してはBarretとGorsuchが各々Concurring Opinionを執筆している。GorsuchのConcurring Opinionは後述のLiberal派のMajor Questions原則無視に皮肉を交えて反論している。またトランプ政権が鉄火のごとく怒るのを予知して「別の大統領(つまり将来の民主党)」が将来、同じように議会を無視して広範な権限を行使するようなことに繋がりかねない変な判例は残すべきではないと牽制している。前回のポスティングで触れた「Ambivalence」的なダイナミクスだ。
Liberal派の別Opinion
じゃあ、IEEPAの条文的に関税を課す権限は大統領に付与されてないって部分に同意しているLiberal派の3人、Kagan、Sotomayor、JacksonはなぜMajor Questions原則に触れているPart IIのAの2に限って賛同していないのか。それは3人の別Opinionにある通り、Major Questions原則を持ち出すまでもなく、条文の文言そのものの解釈で片付くとしている。すなわち、関税に言及していない単なるRegulateっていう文言に関税を課す権限が含まれているっていう解釈はなり立たないっていうもの。
Liberal派の3人が今回のケースでMajor Questions原則に賛同していないのは、Major Questions原則は別のケース、West Virginia v. EPAの判決で見られる通り、バイデン政権等の大きな政府派が議会を無視して何でもかんでも大統領権限や行政府の決定で敢行しようとする権限付与問題に大きな足かせとなるから。前回のポスティングで「Ambivalence」って表現した通り、通常、議会が決めるべき法律を行政府や大統領の権限で代行しようとするのはLiberal派が指示する方向で、今回のIEEPAによる関税はたまたまトランプ政権による越権(?)行為なのでLiberal派は何の躊躇もなく不法ってしてるけど、その理由にIEEPAの文言を超えてMajor Questions原則に言及してしまうと他に広範な影響があり得る点に危惧しているからだ。みんないろいろ考えるねって思うかもしれないけどプロ中のプロ達だからね。
ちなみにこの「Liberal」っていう用語、文字だけ見るとまるで個人の自由(Liberty)を尊重するような印象を受けるけど、実際にはそうではなく憲法解釈の観点から言うと、ファウンダーによる起草時の意図に基づいて厳格に憲法解釈する厳格主義との対比で、時代と共に社会は変わるのだから憲法解釈も憲法を文字通り読んだり、起草時の意図に縛られることなく今憲法を書いたらどんなだったかって解釈をする派を言う。憲法に対するこの適用法は結果ベースで憲法をどうにでも解釈し得るのでScaliaが生きてた頃、憲法の意味がなくなるとして徹底的に反感を示していた。ちなみに現判事の一人Barretは1998年期に当時判事だったScaliaのClerkを勤めた経験があり彼女の法律観にはScaliaの影響が見てとれることも少なくない。
政党やメディアでLiberalっていうと民主党だけど、こちらも大きな政府で個人の自由とは真逆。増してや今の民主党はケネディやクリントン時代の政党とは異なる社会主義っぽい思想がメインになってるからますます個人のLibertyからは遠い政策を標榜していることになる。
いずれにしてもMajor Questions原則を論じているPart IIのAの2部分はMajority Opinionを構成していることにならず、Stare Decisis的な観点からこの部分に関しては拘束力が弱まることになる。それがLiberal派3人がこの部分には賛同していない意図となる。前回のポスティングでこの3人は憲法解釈ではなくピュアに条文解釈に基づいて原告指示するであろうって予測したけど、まさにそんな結果になっている。
6人のMajority Opinionその2
次にPart IIのBが来るけど、ここは再度6人が賛同し、Majority Opinionの最終法的整理部分に当たる。
ここではMajority OpinionでHoldingをサポートするためMajor Questions原則に言及することなく純粋な条文解釈を試みている。IEEPAでは大統領にImportを「investigate」、「block during the pendency of an investigation」、「regulate」、「direct and compel」、「nullify」、「void」、「prevent or prohibit」する権限を付与している。議会が9つの動詞を使って具体的に権限を明確化している中、関税という文言は見当たらない。わざわざ9つも動詞を使って具体的に権限を表現している中、関税という文言は不在なのはそのような権限を付与する意図はなかったと理解するのが正しい条文解釈と整理している。法解釈の原則のひとつに「Inclusio Unius est Exclusio Alterius」(Law Schoolで習ったの思い出した?)っていうのがあって、これは丁寧にいろいろ列挙している条文では、列挙されていない項目は含まないっていうのが意図と解されるっていうもので、まさにこの9つの動詞に適用されるタイプの原則だ。
また301とかを含む他の関税を課す権限を付与している条文には必ず明確に関税に触れているっていう点も重要だと整理している。連邦政府の言う「Regulate」に関税を課す権限が含まれるっていう主張だけど、Regulateの「fix, establish, or control」といった通常の用語の意味的にそのような解釈は無理があると同時に、Regulateがそこまで広範な権限を付与しているということになると、他の8つの動詞で明言されている行為の多くも含まれることになり、それらを列挙する意味がそもそもなくなってしまうのでおかしいともされた。また課税はRegulate効果を持つ点はその通りだとした上で、だからと言って逆、すなわちRegulateに課税権が含まれるという主張、は真ということにはならないとしている。
前回のポスティングで触れた「Running with the Devil」のVan Halenのギターソロの冒頭、キュイーンって多分二つの弦を一気にBendingさせた直後にペキペキぺキって謎の音がするけどあれは当時ライブみたところSomebody Get Me a DoctorのBreak後のリフ4回目の技と同じで弦をPulling Offしながら右手の裏をフレット上を軽くミュートしながら動かしてあんな音出すんだよね。じゃなくて「Trading with the Enemy」(TWEA)でニクソン大統領が70年代に課した関税が下級裁で認められたっていう点はそのようなマイナーな判決が判決後にTWEAの更新版として可決されたIEEPAに継承されたとは認められないとしている。これらからIEEPAが関税に言及することなく「Regulate」っていう文言で議会が大統領に無制限に関税を課すという課税権限を付与しているっていう主張は不合理という結論になっている。
Holdingは条文解釈
前回のポスティングで最高裁が解決しようとしている争点はまず「IEEPAで国家緊急時に大統領に付与されている権限に関税を課すという行為が含まれているか」っていう点がありこれは条文解釈って書いた。そして仮にIEEPA による大統領への権限付与に関税を課す権限が含まれている場合、法律のその部分は「立法行為を行政府に権限移譲することを禁じている連邦憲法に違反しているか」という点がありこれは憲法解釈って書いた。結局、最初の条文解釈で終わったことになる。条文解釈時にクロスオーバー的に憲法解釈の原則の範疇と言えるMajor Questions原則が議論されたけど、こちらはMajority Opinionにはランクインしていない。
チョッと長くなってるんで一旦ここでBreakしてDissenting Opinion、救済策、今後の展望、メディア報道、判事の役割とかは別のポスティングで余り時間差なくアップします。
Saturday, February 7, 2026
米国RedomicileとFIRPTA (2)
前回はRoberts主判事の誕生日を祝してIEEPAに基づく関税が条文解釈的、また憲法解釈的に不法かどうかっていう点に関する特別企画でした。主に11月の口頭弁論を聴いた印象を中心に。楽しんで頂けましたでしょうか。Inbound Fより馴染みがあっていいって?それはそうだよね。でも今回はRedomicile実行をInbound Fで実行する際のFIRPTA課税適用緩和に戻ります。関税はSCOTUSの判決が出たら個人的な口頭弁論からの印象と実際の判決の比較、Majority Opinionの構築から伺えるRobertsのバランシングアクト等に少なくとも一回は触れてみたいと思います。「また逢う日まで…」だね(何ソレ?)。
F型再編
適格組織再編のうちEとかFは複数の法人がくっ付いたりしない単独再編。そのうちF型再編は「単なる」法人身分、形式、組成州・国の変更、に適用される。これらの変更が法形式的にどんなステップを経て行われても結果としてこれらの変更を実現するためならF型再編になる。F型再編とは言え適格組織再編規則だから、組織再編に共通の原則フレームワークは同じ。すなわち組織再編に適格とならない場合には、資産移管や株式交換が時価課税取引となり課税が生じるケースで各タイプの組織再編に求められる条件を満たすとそれらが非課税になるっていうもの。非課税となる代償に当事者が受け取る資産・株式の簿価は従来の額を継承する。したがって税務用語で「Tax-Free Reorganization」って言うけど、正確には「Tax-Deferral」。未来永劫フリーなランチはなかなかない。
F型再編も、F型再編でなければ課税があり得る取引が対象って考えられるんで(でなければF型再編要らないし…)、転換、合併、資産移管を伴わずに同一のCorporate Solutionが維持されて単に社名を変えたりするだけの行為はF型再編にはならないって個人的には考えている。意外にもこの点に必ずしもコンセンサスはないようだけど、社名変えて法人内の含み益が課税されるって考えられないんで、F型再編は身分や組成地の変更を転換や合併法を適用して実行する取引に適用があるはずだ。その際、どんな実行法でも単に法人身分、形式、組成州・国の変更のためであれば潜在的にF型再編の候補になる。このことからF型再編を規定している財務省規則でも「譲渡法人」と「結果として誕生する法人(ここでは単に「新生法人」って言っておきます)」の2つの存在を前提としてルールが策定されている。ただ、ターゲット法人と取得側法人が独立して存在するっていうよりはF型再編の譲渡法人と新生法人はF型再編を整理する目的で語られるだけで、新生法人は譲渡法人と同一の法人が継続してるっていうのが税務上の取り扱いって言える。もちろん新生法人にF型再編前に譲渡法人資産以外の資産があったり独自の活動があってはいけないし、F型再編後に譲渡法人が存続し続けたりすることもできない。
で、例によってF型再編にも複数の要件が財務省規則に規定されてるけど、中でも重要で今回のNotice 2025-45にも関係するのが株主同一要件。すなわち、譲渡法人と新生法人の株主がF型再編の直前・直後で同一でないといけない。じゃないと「単なる」身分や組成地変更にならないからね。ただ、他のタイプの適格再編は「Step Transaction」等の法体系を適用して同じプラン下で行われるステップで適格要件をUnwindしたりする場合には要件を満たしていることにはならないけど、F型再編は特別でF型再編前後で他関連取引がプランされていてもF型再編を実行している取引のみにフォーカスして適格性を判断することができる。複雑かつ広範な取引プランの中でもF型再編は、前後の取引から隔離されて守られてるんで業界用語で「バブルの中のF(F in a bubble)」って言われる。Message in a Bottleみたいでクールだね。ポリスは1枚目と2枚目の頃はNew Waveっていうかチョッとパンクっぽさを装ってたけど、2枚目が出た直後(それはそれは昔です)にバルセロナの闘牛場で見たライブではMessage in a Bottleの「I’ll send an SOS to the world」って超8ビートになるところで闘牛場が壊れるんじゃないかっていうくらいの盛り上がりだったのを覚えてる。ちなみにその時のOpening Actは同じUKバンドの「Dr. Feelgood」でした。
で、結構なケースでF型再編はそれ以外の要素を含むより広範な取引の一環で行われる。したがって全体像を見ると「単なる」身分・組成地変更とは言えないケースも多い。例えばどこかの州会社法で組成された法人が上場する際に会社法の観点からデラウェア州やテキサス州法人に転換されることは珍しくない。組成地変更そのものはF型再編だけど、同じプラン下で新生法人が新規に株式を交付したり、既存の株式を償還したりすることもある。そんな時「バブルの中のF」原則はとても有益。F再編自体も複数のステップを経ることがあるけど、それらのステップはバブル内の取引だから、その中では株主同一要件を含むF型再編要件は継続して満たしてなくてはいけない。
Inbound F
このF型再編を利用して外国法人が米国法人にRedomicileすることができる。例えば、外国法人(F型再編の譲渡法人)が米国に自分の身代わりになる米国法人(F型再編の新生法人)を設立(その際に資本金は実質ない状態)、当米国法人に合併(または合併同様に全資産を移管し負債を継承しれもらう)することで外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換し外国法人は米国法人に変わる。または、同様に外国法人が米国に自分の身代わりになる米国法人を設立した後、米国法人がTransitoryのMerger Subを組成し、当Merger Subが外国法人にReverse Subsidiary Merge(その段階で外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換、外国法人は米国法人の100%子会社)、そして最後に外国法人はEntity Classification選択でDRE(税務上は清算)になるとする。このケースも蓋を開けてみると外国法人は組成地が米国法人に変更されている。Inbound Fだ。
Inbound FとFIRPTA
「でも、Inbound FにどうFIRPTA関係あんの?」って思うかもしれないけど、実は大あり。上で触れたInbound Fの最初の例を見ると、まず外国法人が資産を米国法人に移管するステップは税務上、資産は負債継承と米国法人の株式を対価に行われたって取り扱われる。この移管は組織再編適格の場合は原則非課税。ただし、移管対象資産にUSRPIがあると対価として受け取る米国法人株式もUSRPIじゃないとこの部分は課税取引になる。ここが前々回のポスティングで触れた「非課税取引とFIRPTA」部分の取り扱い。次に外国法人は資産移管対価として受け取った米国法人株式を自社の株主に清算分配したと取り扱われる。この分配も組織再編適格の場合は原則非課税だけど、適格組織再編の一環で行われる外国法人の分配に適用される規則に基づき、外国法人が株式を受け取った時点で米国法人がUSRPHCの場合(すなわち株式はUSRPI)、分配は課税取引となり前々回の「外国法人による分配とFIRPTA」の取り扱いが適用される(その際に触れたNotice 89-85およびNotice 2006-46の適用を含む)。
2025‐45のFIRPTA課税緩和策
で、これらのルールは不要にInbound Fを実行困難にしているとし、今回のテーマのNotice 2025-45では特定要件下で上述の課税ルールを緩和している。具体的な緩和に関しては次回。
F型再編
適格組織再編のうちEとかFは複数の法人がくっ付いたりしない単独再編。そのうちF型再編は「単なる」法人身分、形式、組成州・国の変更、に適用される。これらの変更が法形式的にどんなステップを経て行われても結果としてこれらの変更を実現するためならF型再編になる。F型再編とは言え適格組織再編規則だから、組織再編に共通の原則フレームワークは同じ。すなわち組織再編に適格とならない場合には、資産移管や株式交換が時価課税取引となり課税が生じるケースで各タイプの組織再編に求められる条件を満たすとそれらが非課税になるっていうもの。非課税となる代償に当事者が受け取る資産・株式の簿価は従来の額を継承する。したがって税務用語で「Tax-Free Reorganization」って言うけど、正確には「Tax-Deferral」。未来永劫フリーなランチはなかなかない。
F型再編も、F型再編でなければ課税があり得る取引が対象って考えられるんで(でなければF型再編要らないし…)、転換、合併、資産移管を伴わずに同一のCorporate Solutionが維持されて単に社名を変えたりするだけの行為はF型再編にはならないって個人的には考えている。意外にもこの点に必ずしもコンセンサスはないようだけど、社名変えて法人内の含み益が課税されるって考えられないんで、F型再編は身分や組成地の変更を転換や合併法を適用して実行する取引に適用があるはずだ。その際、どんな実行法でも単に法人身分、形式、組成州・国の変更のためであれば潜在的にF型再編の候補になる。このことからF型再編を規定している財務省規則でも「譲渡法人」と「結果として誕生する法人(ここでは単に「新生法人」って言っておきます)」の2つの存在を前提としてルールが策定されている。ただ、ターゲット法人と取得側法人が独立して存在するっていうよりはF型再編の譲渡法人と新生法人はF型再編を整理する目的で語られるだけで、新生法人は譲渡法人と同一の法人が継続してるっていうのが税務上の取り扱いって言える。もちろん新生法人にF型再編前に譲渡法人資産以外の資産があったり独自の活動があってはいけないし、F型再編後に譲渡法人が存続し続けたりすることもできない。
で、例によってF型再編にも複数の要件が財務省規則に規定されてるけど、中でも重要で今回のNotice 2025-45にも関係するのが株主同一要件。すなわち、譲渡法人と新生法人の株主がF型再編の直前・直後で同一でないといけない。じゃないと「単なる」身分や組成地変更にならないからね。ただ、他のタイプの適格再編は「Step Transaction」等の法体系を適用して同じプラン下で行われるステップで適格要件をUnwindしたりする場合には要件を満たしていることにはならないけど、F型再編は特別でF型再編前後で他関連取引がプランされていてもF型再編を実行している取引のみにフォーカスして適格性を判断することができる。複雑かつ広範な取引プランの中でもF型再編は、前後の取引から隔離されて守られてるんで業界用語で「バブルの中のF(F in a bubble)」って言われる。Message in a Bottleみたいでクールだね。ポリスは1枚目と2枚目の頃はNew Waveっていうかチョッとパンクっぽさを装ってたけど、2枚目が出た直後(それはそれは昔です)にバルセロナの闘牛場で見たライブではMessage in a Bottleの「I’ll send an SOS to the world」って超8ビートになるところで闘牛場が壊れるんじゃないかっていうくらいの盛り上がりだったのを覚えてる。ちなみにその時のOpening Actは同じUKバンドの「Dr. Feelgood」でした。
で、結構なケースでF型再編はそれ以外の要素を含むより広範な取引の一環で行われる。したがって全体像を見ると「単なる」身分・組成地変更とは言えないケースも多い。例えばどこかの州会社法で組成された法人が上場する際に会社法の観点からデラウェア州やテキサス州法人に転換されることは珍しくない。組成地変更そのものはF型再編だけど、同じプラン下で新生法人が新規に株式を交付したり、既存の株式を償還したりすることもある。そんな時「バブルの中のF」原則はとても有益。F再編自体も複数のステップを経ることがあるけど、それらのステップはバブル内の取引だから、その中では株主同一要件を含むF型再編要件は継続して満たしてなくてはいけない。
Inbound F
このF型再編を利用して外国法人が米国法人にRedomicileすることができる。例えば、外国法人(F型再編の譲渡法人)が米国に自分の身代わりになる米国法人(F型再編の新生法人)を設立(その際に資本金は実質ない状態)、当米国法人に合併(または合併同様に全資産を移管し負債を継承しれもらう)することで外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換し外国法人は米国法人に変わる。または、同様に外国法人が米国に自分の身代わりになる米国法人を設立した後、米国法人がTransitoryのMerger Subを組成し、当Merger Subが外国法人にReverse Subsidiary Merge(その段階で外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換、外国法人は米国法人の100%子会社)、そして最後に外国法人はEntity Classification選択でDRE(税務上は清算)になるとする。このケースも蓋を開けてみると外国法人は組成地が米国法人に変更されている。Inbound Fだ。
Inbound FとFIRPTA
「でも、Inbound FにどうFIRPTA関係あんの?」って思うかもしれないけど、実は大あり。上で触れたInbound Fの最初の例を見ると、まず外国法人が資産を米国法人に移管するステップは税務上、資産は負債継承と米国法人の株式を対価に行われたって取り扱われる。この移管は組織再編適格の場合は原則非課税。ただし、移管対象資産にUSRPIがあると対価として受け取る米国法人株式もUSRPIじゃないとこの部分は課税取引になる。ここが前々回のポスティングで触れた「非課税取引とFIRPTA」部分の取り扱い。次に外国法人は資産移管対価として受け取った米国法人株式を自社の株主に清算分配したと取り扱われる。この分配も組織再編適格の場合は原則非課税だけど、適格組織再編の一環で行われる外国法人の分配に適用される規則に基づき、外国法人が株式を受け取った時点で米国法人がUSRPHCの場合(すなわち株式はUSRPI)、分配は課税取引となり前々回の「外国法人による分配とFIRPTA」の取り扱いが適用される(その際に触れたNotice 89-85およびNotice 2006-46の適用を含む)。
2025‐45のFIRPTA課税緩和策
で、これらのルールは不要にInbound Fを実行困難にしているとし、今回のテーマのNotice 2025-45では特定要件下で上述の課税ルールを緩和している。具体的な緩和に関しては次回。
Sunday, February 1, 2026
トランプ関税の最高裁判決はいつ?
今日は連邦最高裁(SCOTUS)の主判事John Robertsの誕生日なんで敬意を表して(Inbound Fから脱線して)最高裁の話し!って勢いよく書き始めたのが1月27日だったんだけど、書き終わらなくてポスティングの今日には既に誕生日過ぎちゃいました。1月27日はモーツァルトの誕生日でもあるよね!フィガロの結婚聴いてフルーツタルトで時を超えて誕生日を祝いました。Robertsは1955年生まれだけど口頭弁論聞くと相変わらず頭脳明晰で議事進行も迫力満点で凄いね。トランプは1946年だから更に先輩だけど、彼らどんな遺伝子持って生まれたんだろうね。う~ん、Robertsは連邦憲法良く知ってるよね(SCOTUSの主判事だらか当たり前だね)。
で、この一か月ほど「最高裁はいつトランプ関税に関する判決を公表するの?」とか「私も還付もらえる?」系の質問が後を絶たなかった。メディアではなぜか1月9日とか、1月14日に判決が出る、とか根拠のない怪情報が出回ったりしてたんで余計に混乱するよね。
「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」
この関税のケース、正確には「LEARNING RESOURCES, INC., ET AL., Petitioners, v. DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Respondents. 」と「DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Petitioners, v. V.O.S. SELECTIONS, INC., ET AL., Respondents」の2つのケース(No. 24-1287とNo. 25-250)を共同訴訟化(Consolidated)したものだけど一般には簡単に「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」って呼ばれる。昨年11月5日の口頭弁論もRobertsが今日の弁論は「Learning Resources v. Trump, and the consolidated case」に関してっていうオープニングで始まってた。「Et al」っていうのは「その他」っていうことで他にも当事者が居る際に用いられる。「LEARNING RESOURCES, INC.」は、もともとDC Circuit控訴院の判決を不服として連邦政府側がSCOTUSに上告しているもので、もう一つの「V.O.S. SELECTIONS, INC」はFederal Circuit控訴院の判決に上告しているもの。双方ともに一審、控訴審共に原告が勝利している。法的な争点は双方同じ(後述のSubject-Matter Jurisdictionの件を除く)。
登場人物
2つのケースがConsolidateされてたり、被告数が多いんで当事者が多くて登場人物がチョッとConfusingだけど、最初のケースの原告で上告を受けて立ってるのは「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」。この2社、教材等のサプライヤーで関税で仕入コストが大きく上がり取り返しのつかない経済的な被害を受けたということ。Common Lawの裁判は被害を受けたものが金銭的な存在賠償を求めて起こすのが原則だから、被害を受けない(Standingがない)と訴訟を持ち込むことはできない。もう一方の「V.O.S. SELECTIONS, INC」ケースの方の原告は「V.O.S. Selections, Inc.」「Plastic Services and Products, LLC (商号 Genova Pipe)」、「MicroKits, LLC」、「FishUSA Inc.」、そして「Terry Precision Cycling LLC」の5社。V.O.S.はニューヨークのワイン輸入者。さらにややこしいことに上告を受けて立つ者、すなわち裁判の対象となっている関税は不法と主張する側、にはオレゴン、アリゾナ、コロラド、コネチカット、デラウェア、イリノイ、メイン、ミネソタ、ネバダ、ニューメキシコ、ニューヨーク、バモントの12州が含まれてる。
元々の被告で上告しているのは主権としての「the United States of America」、トランプ大統領、Department of Homeland Security (DHS)、 Kristi Noem (DHS長官)、Customs and Border Protection (CBP)、Rodney S. Scott (CBP長官)、USTR、Jamieson Greer通商代表、Howard W. Lutnick (商務長官)、加えて訴訟の被告には 財務省、Scott Bessent (財務長官)、商務省も含まれていた。
訴訟の争点
最初の争点は「The International Emergency Economic Powers Act (IEEPA)で国家緊急時に大統領に付与されている権限に関税を課すという行為が含まれているか」っていう点。これは議会が立法したIEEPAっていう法律に含まれる条文解釈(Statute Interpretation)の問題と言え、僕たちが日常、Internal Revenue Codeの条文が意図している意味が何かって格闘しているの同じ検討になる。ちなみにIEEPAは「アイーパ」っていいます。次に仮にIEEPA による大統領への権限付与に関税を課す権利が含まれている場合、法律のその部分は「立法行為を行政府に権限移譲することを禁じている連邦憲法に違反しているか」という点。憲法解釈の争点で主に「Non-delegation条項」(これはその名の通り)やCommon Lawの「Major Questions原則」(Majorな立法Questionは明言がない限り権限移譲されないっていう趣旨の憲法論)の視点での検討になる。最後の争点は法的管轄権にかかわるテクニカルなもので「Learning Resources, Inc.」の一審だった地方裁に法的管轄権(Subject-Matter Jurisdiction)があったかどうか、すなわちそもそも審議をする権限を持っていたかっていう点。この最後の点はこの手の連邦政府を相手取っての訴訟はCourt of International Tradeに持ち込まないとダメで通常の地方裁には管轄権がないという連邦政府側の議論で、一般にはそれは正しいって理解されているけど争点になっているのはIEEPAでそもそも関税を課す権利がないという話しになると地方裁にも管轄があるのではないかっていようなポイント。この点は口頭弁論ではハイライトされてなかった印象があるんでこれ以上は触れない。
訴訟の「争点ではない」ポイント
最高裁は司法府だから、関税を課すという政策が賢明なものか、とか効果があるかというような点には口を出さない。これらは憲法で認められる範囲で立法府の議会や行政府・大統領が決定すること。最高裁に判断が求められているのはあくまでも純粋に法的なもので、最高裁の審議は関税という政策を支持する、またはしないという視点ではない。これは他の最高裁のメジャーな判例も同じで例えば、死刑、拳銃等の武器保持権、Abortionとかメディア報道はとかく「最高裁が死刑容認…」とか「Abortion禁止…」みたいにフレームされることが多いけど、そうではなくこれらの権利が憲法的にどのように解釈され、是非があるのであれば誰が(Abortionに関しては主権を持つ市民が州の選挙・立法を通じて決めるべき)という判断をしていることになる。
また最高裁で審議の対象となってるのはIEEPAに基づく大統領権限だけで、他の法律に基づく関税、例えば232とか301とかに基づく関税には一切影響はない。仮に別の訴訟でも起これば別だけど、232や301はIEEPAと異なり関税を課す権利を大統領に明確に付与しており、また一定の限定的な範囲での権利と考えられることから今回、IEEPAに関して審議されている争点は余りないと言える。
口頭弁論
去年の11月5日10時04分に始まった口頭弁論はスケジュールされた1時間20分(原告・被告各々40分)をもちろん大幅に超過して3時間近くを要した。9人の判事による多くの質問が双方に寄せられた。長いやり取りを詳細に説明するのは紙面の関係で不可能だけど、口頭弁論聞き終わった個人的なImpressionは次のような感じ。
最初の争点であるIEEPAの大統領に対する権限付与に関税が含まれるかっていう点は条文の文言の「regulate… importation」のRegulateに関税を課すという行為が含まれるかっていう点。連邦政府の弁護士(司法省のSolicitor GeneralであるJOHN SAUERが代表)は簡単に言ってしまえば輸入に対する「Regulate」の主たるツールは関税なのだから、この権利は含まれてないという解釈は不合理と言うもの。これに対して原告側の主張は関税を課す権利を与えている他の法律は明確に関税に触れており、関税に言及がないIEEPAでは関税を課す権利は付与されていないと解釈すべきというもの。IEEPAで認められる輸入の「Regulate」はQuota、Embargo、輸入Licenseなどという主張。IEEPAではこれらの権利を付与していると同時に最後に「or otherwise 」と記載されてて、条文解釈的にこのOtherwiseが意味する権限の範囲も議論されていた。またIEEPAを理由に関税を課した例はないという点も指摘していた。それに対して連邦政府はIEEPAの前身である1917年の「Trading with the Enemy Act (TWEA)」(法名がなまなましいね。Running with the Devilみたい)はIEEPA同様に「Regulate」っていう用語を使用してたけど、TWEAに基づき1971年にニクソン大統領が平時に課した関税をCCPA(Federal Circuitの前身みたいな裁判所)が権限の範囲内とした例を持ち出して防御していた。ちなみにこのニクソンのケースの原告は「Yoshida International Inc.」っていうジッパーを日本から輸入していた日本企業だ。1975年のケース。1971年と言えば前回触れたBretton Woodsが崩壊した頃で、この関税も米国のMonetaryシステムを外国の侵略から守るみたいな理由付けだったらしい。なんかいつも変わんないね。
原告のCollateral議論、すなわち仮にIEEPAで関税を課す権利が大統領に付与されているという条文解釈判断になる場合、その付与自体が憲法のNon-delegation条項違反という点もDeepに議論されていた。この憲法解釈にかかわる主たる争点となるのは上述の通り「Non-delegation」と「Major Question原則」だけど、これら2つはほぼ並行して議論されてたんでこの二つの個別な適用は正確には区分し難かった、連邦政府の言い分はNon-delegationは外交政策分野には適用はないというもの。一方、原告側は関税は課税権(Taxing Rights)であり、行政府に権限移譲は認められない立法府の権限の最たるものというもの。IEEPAに基づく関税が課税かどうかっていう点のやり取りは結構面白くて、連邦政府は「IEEPAを基に課している関税の目的は他国の通商や薬物にかかわる行動を制御」するもので「歳入はあくまで付随効果…」という苦しい抗弁。トランプは日ごろから関税でTrillion Dollarの歳入があるって豪語しているし、実際に関税で財政赤字(Deficit)は減っている。
判事の反応
リベラル派のSotomayer、Kagan、Jacksonは原告指示だろう。おそらくNon-delegationの複雑な連邦憲法違反という理由よりも条文解釈的にIEEPAのRegulateには関税は含まれてないっていうOpinionを書くんじゃないだろうか。他の憲法厳格主義派の6人だけど仮にThomasとAlitoが連邦政府の主張を支持とすると、他の4人のOpinionがどうなるかで決まる。この6人はLoper Bright(Chevron原則撤廃)やWest Virginia v. EPA(Major Questions原則を強固に)等でも表れている通り通常から行政府が大きくなるのを嫌う。口頭弁論でも連邦政府側のポジションに余り同調を示している様子はうかがえず残り4人のうち3人がIEEPAに基づく関税を支持するとはチョッと考え難かった。
この部分のダイナミクスは学術的な議論を超えて興味深く、トランプ政権はDOGE、De-Regulation等の政策で分かる通り、建国時の理想からかけ離れて肥大化したDCの官僚システム・行政府を小さくする派、また6人の憲法厳格主義派の判事も憲法の根幹にあたる三権分立を再確立しようとする傾向が強いから、この関税のケースは政権の立場がいつもと逆なんだよね。Alitoが原告側の弁護士Katyalに憲法解釈にかかわる質問をする際、「君(Katyal)からNon-delegationの主張を聴くことになるとはね…」(すなわち、オバマ政権のSolicitor Generalの一人だったKatyal系の弁護士は、通常、行政府に権限がDelegationされているという側の主張をすることが多かったと思われるため)と軽い(だけど深淵な)Jokeを飛ばして会場を沸かせていた。とっさのKatyalの反応も機知に富んでて「お互い、Non-delegation条項の意味を書き換えた憲法解釈の権威として歴史に名を残すようなことは考えたくないですね」(相当な意訳)と返していて、憲法議論の頂点に立つ者によるこのやり取りは口頭弁論の醍醐味そのものだった。
この辺のAmbivalenceのせいか、他のケースでは口頭弁論聴いて「ほぼ間違いなくこんな判決になるだろう」って図り知り易いこともあるけど、その手の確証度合いに比べると「多分こうなるのかな…」っていう程度の感触だった。また判決結果そのもの以上に、どんな風にOpinionを構築するんだろうかっていう好奇心が高まる。最終的な判断は当然、判決を読むまで分かんないけどOpinionを読むのが待ち遠しい。
救済法・Remedy
仮にIEEPAに基づく関税が認められない場合、次に原告にどんな救済が認められるかっていう点が見もの。ちなみに今回、最高裁で審議されてるこのケースはClass Actionじゃないから訴訟という手続きの性格から原則、原告2+5社(口頭弁論では原告は5社って言及されてた)に対する損害賠償の話し。最高裁が何らかの救済を認める場合、自動的に他の輸入者に同様の救済があるということでは必ずしもない。既に地方裁やCITにIEEPAに基づく関税が不法と言う訴訟を持ち込んでいる他の原告は、地方裁等は最高裁の判決に準じた判決を出す義務があるので最高裁で不法という判決となる場合には他のLower Courtsの訴訟に関してもSummary Judgment的に原告が勝利し、同様の救済があることになるだと思う。ただし、口頭弁論でも少し触れられてたけど原告以外の輸入者に関しては全く異なる法源に基づく込み入った手続きになり実務的に還付作業は困難ではないかって議論されていた。
主判事のRobertsは憲法厳格主義であると同時にPragmaticなところがあり、オバマケアを違憲とすると医療保険市場が大混乱すると予想されたので5対4のCasting Vote的にオバマケアは「Taxing Rights」だから議会による立法は憲法違反ではないという詭弁(?)でオバマケアを違憲判決から救った実績がある。今回も同様にIEEPAに基づく関税は不法というSubstantiveな判断に至った上で、救済策としては何らかの実務的に対応可能な方法を提示するんじゃないだろうか。もちろんそうなるかどうかは分かんないし、どんな対応策があり得るか検討もつかないけど、例えば議会の立法に委ねる、または不法という位置づけを判決後のProspectiveな適用にするっていう可能性もあるかもね。
判決はいつ?
最高裁の手続きとして、口頭弁論が終わるとケースは「Submit」済みStatusとなり、その後、いつSCOTUSが判決を言い渡すかは2025~26年の会期が終了するのが6月だからそれまでには言い渡されるはずっていう点を除いて誰にも分からない。明日かもしれないし5月かもしれない。ただひとつ言えるのは9人の判事でどんな風にMajority Opinionを構築するかっていうすり合わせに時間を要しているに違いないっていう点。このプロセスは結論そのもの(Holding)に合意する以上にデリケートで、Holdingには同調しても理由や何をDictaとして挿入するかに関して意見が割れることは多く、Robertsとしては少なくとも6人の判事がMajority Opinionに参加できるようなドラフティングを模索しているかも。税金関係の最高裁判決で話題だったMooreはMajority Opinionを読むとOpinionを構成する判事形成のためのバランシングアクトが素晴らしい。今回は特に救済策をどんなものにするかに頭を悩ませてる可能性はあるよね。
で、この一か月ほど「最高裁はいつトランプ関税に関する判決を公表するの?」とか「私も還付もらえる?」系の質問が後を絶たなかった。メディアではなぜか1月9日とか、1月14日に判決が出る、とか根拠のない怪情報が出回ったりしてたんで余計に混乱するよね。
「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」
この関税のケース、正確には「LEARNING RESOURCES, INC., ET AL., Petitioners, v. DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Respondents. 」と「DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Petitioners, v. V.O.S. SELECTIONS, INC., ET AL., Respondents」の2つのケース(No. 24-1287とNo. 25-250)を共同訴訟化(Consolidated)したものだけど一般には簡単に「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」って呼ばれる。昨年11月5日の口頭弁論もRobertsが今日の弁論は「Learning Resources v. Trump, and the consolidated case」に関してっていうオープニングで始まってた。「Et al」っていうのは「その他」っていうことで他にも当事者が居る際に用いられる。「LEARNING RESOURCES, INC.」は、もともとDC Circuit控訴院の判決を不服として連邦政府側がSCOTUSに上告しているもので、もう一つの「V.O.S. SELECTIONS, INC」はFederal Circuit控訴院の判決に上告しているもの。双方ともに一審、控訴審共に原告が勝利している。法的な争点は双方同じ(後述のSubject-Matter Jurisdictionの件を除く)。
登場人物
2つのケースがConsolidateされてたり、被告数が多いんで当事者が多くて登場人物がチョッとConfusingだけど、最初のケースの原告で上告を受けて立ってるのは「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」。この2社、教材等のサプライヤーで関税で仕入コストが大きく上がり取り返しのつかない経済的な被害を受けたということ。Common Lawの裁判は被害を受けたものが金銭的な存在賠償を求めて起こすのが原則だから、被害を受けない(Standingがない)と訴訟を持ち込むことはできない。もう一方の「V.O.S. SELECTIONS, INC」ケースの方の原告は「V.O.S. Selections, Inc.」「Plastic Services and Products, LLC (商号 Genova Pipe)」、「MicroKits, LLC」、「FishUSA Inc.」、そして「Terry Precision Cycling LLC」の5社。V.O.S.はニューヨークのワイン輸入者。さらにややこしいことに上告を受けて立つ者、すなわち裁判の対象となっている関税は不法と主張する側、にはオレゴン、アリゾナ、コロラド、コネチカット、デラウェア、イリノイ、メイン、ミネソタ、ネバダ、ニューメキシコ、ニューヨーク、バモントの12州が含まれてる。
元々の被告で上告しているのは主権としての「the United States of America」、トランプ大統領、Department of Homeland Security (DHS)、 Kristi Noem (DHS長官)、Customs and Border Protection (CBP)、Rodney S. Scott (CBP長官)、USTR、Jamieson Greer通商代表、Howard W. Lutnick (商務長官)、加えて訴訟の被告には 財務省、Scott Bessent (財務長官)、商務省も含まれていた。
訴訟の争点
最初の争点は「The International Emergency Economic Powers Act (IEEPA)で国家緊急時に大統領に付与されている権限に関税を課すという行為が含まれているか」っていう点。これは議会が立法したIEEPAっていう法律に含まれる条文解釈(Statute Interpretation)の問題と言え、僕たちが日常、Internal Revenue Codeの条文が意図している意味が何かって格闘しているの同じ検討になる。ちなみにIEEPAは「アイーパ」っていいます。次に仮にIEEPA による大統領への権限付与に関税を課す権利が含まれている場合、法律のその部分は「立法行為を行政府に権限移譲することを禁じている連邦憲法に違反しているか」という点。憲法解釈の争点で主に「Non-delegation条項」(これはその名の通り)やCommon Lawの「Major Questions原則」(Majorな立法Questionは明言がない限り権限移譲されないっていう趣旨の憲法論)の視点での検討になる。最後の争点は法的管轄権にかかわるテクニカルなもので「Learning Resources, Inc.」の一審だった地方裁に法的管轄権(Subject-Matter Jurisdiction)があったかどうか、すなわちそもそも審議をする権限を持っていたかっていう点。この最後の点はこの手の連邦政府を相手取っての訴訟はCourt of International Tradeに持ち込まないとダメで通常の地方裁には管轄権がないという連邦政府側の議論で、一般にはそれは正しいって理解されているけど争点になっているのはIEEPAでそもそも関税を課す権利がないという話しになると地方裁にも管轄があるのではないかっていようなポイント。この点は口頭弁論ではハイライトされてなかった印象があるんでこれ以上は触れない。
訴訟の「争点ではない」ポイント
最高裁は司法府だから、関税を課すという政策が賢明なものか、とか効果があるかというような点には口を出さない。これらは憲法で認められる範囲で立法府の議会や行政府・大統領が決定すること。最高裁に判断が求められているのはあくまでも純粋に法的なもので、最高裁の審議は関税という政策を支持する、またはしないという視点ではない。これは他の最高裁のメジャーな判例も同じで例えば、死刑、拳銃等の武器保持権、Abortionとかメディア報道はとかく「最高裁が死刑容認…」とか「Abortion禁止…」みたいにフレームされることが多いけど、そうではなくこれらの権利が憲法的にどのように解釈され、是非があるのであれば誰が(Abortionに関しては主権を持つ市民が州の選挙・立法を通じて決めるべき)という判断をしていることになる。
また最高裁で審議の対象となってるのはIEEPAに基づく大統領権限だけで、他の法律に基づく関税、例えば232とか301とかに基づく関税には一切影響はない。仮に別の訴訟でも起これば別だけど、232や301はIEEPAと異なり関税を課す権利を大統領に明確に付与しており、また一定の限定的な範囲での権利と考えられることから今回、IEEPAに関して審議されている争点は余りないと言える。
口頭弁論
去年の11月5日10時04分に始まった口頭弁論はスケジュールされた1時間20分(原告・被告各々40分)をもちろん大幅に超過して3時間近くを要した。9人の判事による多くの質問が双方に寄せられた。長いやり取りを詳細に説明するのは紙面の関係で不可能だけど、口頭弁論聞き終わった個人的なImpressionは次のような感じ。
最初の争点であるIEEPAの大統領に対する権限付与に関税が含まれるかっていう点は条文の文言の「regulate… importation」のRegulateに関税を課すという行為が含まれるかっていう点。連邦政府の弁護士(司法省のSolicitor GeneralであるJOHN SAUERが代表)は簡単に言ってしまえば輸入に対する「Regulate」の主たるツールは関税なのだから、この権利は含まれてないという解釈は不合理と言うもの。これに対して原告側の主張は関税を課す権利を与えている他の法律は明確に関税に触れており、関税に言及がないIEEPAでは関税を課す権利は付与されていないと解釈すべきというもの。IEEPAで認められる輸入の「Regulate」はQuota、Embargo、輸入Licenseなどという主張。IEEPAではこれらの権利を付与していると同時に最後に「or otherwise 」と記載されてて、条文解釈的にこのOtherwiseが意味する権限の範囲も議論されていた。またIEEPAを理由に関税を課した例はないという点も指摘していた。それに対して連邦政府はIEEPAの前身である1917年の「Trading with the Enemy Act (TWEA)」(法名がなまなましいね。Running with the Devilみたい)はIEEPA同様に「Regulate」っていう用語を使用してたけど、TWEAに基づき1971年にニクソン大統領が平時に課した関税をCCPA(Federal Circuitの前身みたいな裁判所)が権限の範囲内とした例を持ち出して防御していた。ちなみにこのニクソンのケースの原告は「Yoshida International Inc.」っていうジッパーを日本から輸入していた日本企業だ。1975年のケース。1971年と言えば前回触れたBretton Woodsが崩壊した頃で、この関税も米国のMonetaryシステムを外国の侵略から守るみたいな理由付けだったらしい。なんかいつも変わんないね。
原告のCollateral議論、すなわち仮にIEEPAで関税を課す権利が大統領に付与されているという条文解釈判断になる場合、その付与自体が憲法のNon-delegation条項違反という点もDeepに議論されていた。この憲法解釈にかかわる主たる争点となるのは上述の通り「Non-delegation」と「Major Question原則」だけど、これら2つはほぼ並行して議論されてたんでこの二つの個別な適用は正確には区分し難かった、連邦政府の言い分はNon-delegationは外交政策分野には適用はないというもの。一方、原告側は関税は課税権(Taxing Rights)であり、行政府に権限移譲は認められない立法府の権限の最たるものというもの。IEEPAに基づく関税が課税かどうかっていう点のやり取りは結構面白くて、連邦政府は「IEEPAを基に課している関税の目的は他国の通商や薬物にかかわる行動を制御」するもので「歳入はあくまで付随効果…」という苦しい抗弁。トランプは日ごろから関税でTrillion Dollarの歳入があるって豪語しているし、実際に関税で財政赤字(Deficit)は減っている。
判事の反応
リベラル派のSotomayer、Kagan、Jacksonは原告指示だろう。おそらくNon-delegationの複雑な連邦憲法違反という理由よりも条文解釈的にIEEPAのRegulateには関税は含まれてないっていうOpinionを書くんじゃないだろうか。他の憲法厳格主義派の6人だけど仮にThomasとAlitoが連邦政府の主張を支持とすると、他の4人のOpinionがどうなるかで決まる。この6人はLoper Bright(Chevron原則撤廃)やWest Virginia v. EPA(Major Questions原則を強固に)等でも表れている通り通常から行政府が大きくなるのを嫌う。口頭弁論でも連邦政府側のポジションに余り同調を示している様子はうかがえず残り4人のうち3人がIEEPAに基づく関税を支持するとはチョッと考え難かった。
この部分のダイナミクスは学術的な議論を超えて興味深く、トランプ政権はDOGE、De-Regulation等の政策で分かる通り、建国時の理想からかけ離れて肥大化したDCの官僚システム・行政府を小さくする派、また6人の憲法厳格主義派の判事も憲法の根幹にあたる三権分立を再確立しようとする傾向が強いから、この関税のケースは政権の立場がいつもと逆なんだよね。Alitoが原告側の弁護士Katyalに憲法解釈にかかわる質問をする際、「君(Katyal)からNon-delegationの主張を聴くことになるとはね…」(すなわち、オバマ政権のSolicitor Generalの一人だったKatyal系の弁護士は、通常、行政府に権限がDelegationされているという側の主張をすることが多かったと思われるため)と軽い(だけど深淵な)Jokeを飛ばして会場を沸かせていた。とっさのKatyalの反応も機知に富んでて「お互い、Non-delegation条項の意味を書き換えた憲法解釈の権威として歴史に名を残すようなことは考えたくないですね」(相当な意訳)と返していて、憲法議論の頂点に立つ者によるこのやり取りは口頭弁論の醍醐味そのものだった。
この辺のAmbivalenceのせいか、他のケースでは口頭弁論聴いて「ほぼ間違いなくこんな判決になるだろう」って図り知り易いこともあるけど、その手の確証度合いに比べると「多分こうなるのかな…」っていう程度の感触だった。また判決結果そのもの以上に、どんな風にOpinionを構築するんだろうかっていう好奇心が高まる。最終的な判断は当然、判決を読むまで分かんないけどOpinionを読むのが待ち遠しい。
救済法・Remedy
仮にIEEPAに基づく関税が認められない場合、次に原告にどんな救済が認められるかっていう点が見もの。ちなみに今回、最高裁で審議されてるこのケースはClass Actionじゃないから訴訟という手続きの性格から原則、原告2+5社(口頭弁論では原告は5社って言及されてた)に対する損害賠償の話し。最高裁が何らかの救済を認める場合、自動的に他の輸入者に同様の救済があるということでは必ずしもない。既に地方裁やCITにIEEPAに基づく関税が不法と言う訴訟を持ち込んでいる他の原告は、地方裁等は最高裁の判決に準じた判決を出す義務があるので最高裁で不法という判決となる場合には他のLower Courtsの訴訟に関してもSummary Judgment的に原告が勝利し、同様の救済があることになるだと思う。ただし、口頭弁論でも少し触れられてたけど原告以外の輸入者に関しては全く異なる法源に基づく込み入った手続きになり実務的に還付作業は困難ではないかって議論されていた。
主判事のRobertsは憲法厳格主義であると同時にPragmaticなところがあり、オバマケアを違憲とすると医療保険市場が大混乱すると予想されたので5対4のCasting Vote的にオバマケアは「Taxing Rights」だから議会による立法は憲法違反ではないという詭弁(?)でオバマケアを違憲判決から救った実績がある。今回も同様にIEEPAに基づく関税は不法というSubstantiveな判断に至った上で、救済策としては何らかの実務的に対応可能な方法を提示するんじゃないだろうか。もちろんそうなるかどうかは分かんないし、どんな対応策があり得るか検討もつかないけど、例えば議会の立法に委ねる、または不法という位置づけを判決後のProspectiveな適用にするっていう可能性もあるかもね。
判決はいつ?
最高裁の手続きとして、口頭弁論が終わるとケースは「Submit」済みStatusとなり、その後、いつSCOTUSが判決を言い渡すかは2025~26年の会期が終了するのが6月だからそれまでには言い渡されるはずっていう点を除いて誰にも分からない。明日かもしれないし5月かもしれない。ただひとつ言えるのは9人の判事でどんな風にMajority Opinionを構築するかっていうすり合わせに時間を要しているに違いないっていう点。このプロセスは結論そのもの(Holding)に合意する以上にデリケートで、Holdingには同調しても理由や何をDictaとして挿入するかに関して意見が割れることは多く、Robertsとしては少なくとも6人の判事がMajority Opinionに参加できるようなドラフティングを模索しているかも。税金関係の最高裁判決で話題だったMooreはMajority Opinionを読むとOpinionを構成する判事形成のためのバランシングアクトが素晴らしい。今回は特に救済策をどんなものにするかに頭を悩ませてる可能性はあるよね。
Saturday, January 24, 2026
米国RedomicileとFIRPTA
前回のポスティングは年末年始スペシャルだったんで専門外のGeopoliticsや米ドルの運命で調子でなかったけど、今日からまた米国税務。って思ったらトランプがダボスに行くって知ってチョッとビックリ。しかもダボス行きのAir Force Oneの電気系統がおかしくなって(オフィシャルには「Minor Electrical Issue」)離陸後に引き返すっていうハプニングも。僕らが普段から利用してるコマーシャルエアーだったら整備その他でキャンセル・遅延は珍しくないけどAir Force Oneの整備は鉄壁なはずだからこの話し額面通りに受け取っていいのかどうかチョッと怪しいよね。しかも離陸した後のUターンだからね。
トランプがダボスに行くのは既に半死のグローバリズムに総本山でとどめの一撃を加えに行くつもりだっただろうから(実際にそうなったけど…)、最高度の要人セキュリティで臨んでるんだろうけど去年2度の暗殺未遂に見るように常に危ない状況。そんな状況でのAir Force One引き返し事件は怪し過ぎ。石橋を叩いて渡る的な対応だった可能性もあるけどどこか釈然としない。もしかして最初の747型Air Force Oneはオトリで本当のトランプは最初から代替で急遽登用されバックアップAir Force Oneの一機に当たるC-32(空軍特別仕様のボーイング757)に居たとかね。考え過ぎじゃんって?かもね。まあ、一般市民の僕には知る術もない。ちなみにこの手の話しに詳しい人によると正確にはAir Force Oneっていうのは特定の機体の名称じゃなくて、大統領が搭乗しているAir Force機体のコールサインで、必ずしもいつもの747に限定されて使用される訳じゃないそうだ。C-32も国内移動で小さな空港に着陸する際に日頃から使用されることはあるとのこと。
う~ん、何があったんでしょうか。あくまで架空の世界で何らかの理由で大統領が交代するような事態になったらヤングMAGAの副大統領JDバンスがステップインするんで方向的に余り変わりはないっていうのは良く語られるところで、米国ではJDバンスはトランプの生命保険って言う人もいるほどだ。
で、ダボスでのトランプのスピーチは大方の予想よりソフトタッチだった感がある以外に大きな驚きはなかったけど(グリーンランドに関しては例によってTACOぶりが否めなかったけどこれも想定通りなのかな?)、欧州委員会首脳のアルセラの公演は面白いというかチョッと不思議だった。トランプにボロクソ言われたんで何らの形で米国の過去に触れなければって思ったのか、文脈的にチョッと唐突な感じでアルセラ曰く「1971年のニクソンショックでBretton Woods体制が終わり、その地殻変動によりグローバリズムが実現した」とし「そして今、また(今度はグローバリズムが終わる)次の時代の変革に際し過去の教訓から学び欧州は強くなくてはいけない…。独自の通貨も云々」とか。
あんまり深く聞いてなかったけどFiat Currency化して久しい米政府の無責任なMonetary政策や米ドル運営に釘を刺してたってことなのかな。Euroclearにあるロシア中央銀行の米ドル資産没収をちらつかせて米ドル基軸通貨Statusにみんなで引導を渡しておいて面白いね(SWIFTもEuroclearもせっかくDCとかNYCじゃなくてベルギーに設立したのにね)。ニクソンショックでBretton Woodsが終わった点はそうだし、また今日のような地殻変動時に各国が(Survivalモードの?)戦略策定待ったナシっていうのもそうだろうけど、今日直面しているグローバルリオーダーとニクソンショックをパラレルに描写している点、またニクソンショックでグローバリズムに至ったっていう演説内容は誰がスクリプトしたにしてもDeepな考察に基づくんだろう。そう解されてるんだね。ニクソンショックで米ドルが正式に金本位性じゃなくなって、既にFiat化してた欧州通貨等の他国通貨に仲間入りし、その後はFiat通貨の歴史の必然とでもいうべき身の丈に合わない量の紙幣を刷り続け今日の米ドルに至るけど、それがグローバリズム導入の助けっていう因果関係部分が個人的にはピンと来なかったんでもう少し勉強します。国家間や市民と国家の間の信用や信頼が揺らぐ中、何の資産にもバックアップされないFiatは各国がLegal Tender(この紙切れを使って税金を納めることができる)って約束しているんでその価値が認められる。米ドル紙幣には一枚一枚丁寧に「This note is legal tender for all debts, public and private」って印字してあるよね。そこが人生ゲーム(古い?)の100,000ドル紙幣とは違うところ。昔、僕たちの世代の人生ゲームだと白い100,000ドル紙幣が溜まるとうれしかった。薄いピンク色(だっけ?もしかして薄い黄色?)の1,000ドルは結婚祝いとかの時は便利だったけどね。
こんなFiat通貨の米ドルを基軸にSWIFT、Euroclear、西の金融機関が支配する現状のMonetaryシステムはGeopoliticsや通商と密接な関係にあるんで切り離して考えることはできないけど、このシステムもここに来て変革間近なのかもね。米国的には独立250周年近辺に何か大きな発表や動きがあるのかな。それが金の再起用(とは言ってもPhysicalな金の量は足りないよね)なのかGENIUS Actに基づくStable Coinの活用なのか分かんないけど2026年のVolatilityは激しそう。NYCのJFK空港にあるCOMEXでは前代未聞のGoldの現物デリバリーがあるって専門の方が言ってた。誰がStand for delieveryかは分からないけど財務省のExchange Stabilization Fund (ESF) だとしてもおかしくないってことらしい。
Volatilityが高くなるとAlpha Returnを求める資産家やヘッジファンドの暗躍・活躍の時代がまたしても到来。そんな時代の財務長官が「あの」Scott Bessentっていうのも全てシナリオ通りなんでしょうか。イロンマスクがダボスで「(テクノロジー的に)人類は今までかつてない時代に生きてる」ってポジティブなトーンだったけど、あらゆる意味でかつてない時代に生きてるのかな。ローマ帝国の崩壊時の世界ってどんなだっただろうね。当時はグローバリズムとかもちろん存在しなかったから例えばヤマト政権はローマ帝国が崩壊しつつあること自体知らなかっただろうけど、今日の変動は瞬時にグローバル動向に影響を与えるんで世界的なインパクトはもちろん比較にならない。これってグローバリズムの弊害のひとつ?かもね。とは言っても鎖国にはもどれないよね。余談だけど、イロンマスクをダボスでホストしてたブラックロックのラリーフィンクが「テクノロジーで不老不死になれるか」って熱心に聞いてて「右腕と左腕が同じように老化する点に注目すれば人間のどこかに老化をトリガーする指令があるだろうからその辺を把握すれば可能性あり」(記憶に基づく相当な意訳です)ってマスクが言ってた。フィンクは「それはうれしい」って無邪気に喜んでて面白かった。フィンクや秦の始皇帝は同じように考えるんだね。いつの時代も変わんないね。マスクは「死にもメリットはある」とか返してた。そんなやり取りは、ふと宮崎監督のスタジオジブリ映画のセリフ数々の重みを再認識させてくれた。日本はDeepだ。
そして税法
税務以外の専門外の話しは前回で終わったんじゃないのって思った?反省してここで本当に終わりにします(次に何か起こるまでは)。凄い時代に生きてるってことなんでつい…。で、税法の世界も昨年後半触れた通りOB3関係やDe-Regulation・規制緩和系でトピックは多い。そんな中まずはDe-Regulation系から攻めることにして、前回、前々回で自社株買い1%懲罰課税のFunding規則撤廃とDC REITの定義緩和措置をカバーした。今日はInbound FとFIRPTAについて。
Notice 2025-45
チョッと前になるけど、財務省は2025年8月19日にNoticeで、米国外法人が米国法人に生まれ変わるDomestication・Redomicile取引をFIRPTA面から援護する規則を公表した。Redomicile実行ストラクチャリングはひとつじゃないけど、Noticeでは米国外の上場企業がF型インバウンド資産移管組織再編(Inbound F)を利用する際のFIRPTA適用緩和を規定している。今後、当Noticeの内容にて規則草案を公表するとのこと。具体的には一定要件を満たすInbound Fを「対象Inbound F」とし、Inbound Fのステップに内包されるUSRPI(米国法人株式を含む米国不動産持分)移管に対するFIRPTA課税適用を緩和している。当規則はNotice公表日の2025年8月19日以降の分配、資産移管、資産交換に適用可能。
分配や非課税取引とFIRPTA
FIRPTA課税のベーシックに関しては2023年の「FIRPTAアップデート」で結構詳しく触れてるんでそちらを見て欲しい。FIRPTA課税はいろんな取引に適用があり得るけど、今回のNoticeが触れているInbound Fに関係が深いのは外国法人による分配資産に米国法人株式等のUSRPIが含まれるケース、また組織再編を含む非課税資産移管に対するFIRPTA課税になる。この辺りの取り扱いは条文だけでなく、暫定規則(Temporary Regulations)や過去のNoticeに基づくんで元々かなり複雑。規則は暫定なんだ…って不思議に思うかもしれないけど、結構な数の財務省規則が暫定Statusのまま生き残っている。
暫定のまま規則が長期にわたり放置される傾向があったんで、1988年11月21日以降に公表された暫定規則は3年後に自動的に法的効果を持たなくなるっている所謂Sunset規定が条文化されてる。Sunset規定ができてから財務省・IRSは通常、暫定規則と同時に同じ内容の規則草案(NPRM)を公表する。暫定規則は存在している間、最終規則と同じ法的効果がある一方、規則草案には法的効果はない。ただ、暫定規則がSunsetしてしまっても一応、法的効果はないけど規則草案はそのまま生きてるんで、その後、草案を最終化することができる。FIRPTA課税の複数の規則(-5T、-6T、-7T、-9T)は長らく暫定のままだけど、強制Subsetで3年間制限が導入される前のものなんで今日でも暫定のまま法的効果を持っている。分配の規則は1988年5月4日に公表されているんで滑り込みセーフでSubset前だ。その後、一部修正やNoticeでのオーバーライドはあるけど、Subset目的ではあくまでオリジナル公表日をみるんで40年近くもSurviveしてる。
外国法人による分配とFIRPTA
清算分配、Redemption(この用語を聞くと嫌でも自社株買いExcise Taxを思いだすね!(苦笑))を含む外国法人による資産分配は含み益を持つ資産でも多くのケースで米国では非課税。含み益を持つ資産の分配は清算分配以外の局面ではみなし資産譲渡として課税が原則だけど、外国法人の話しなんでECIでない限り(ECIじゃないケースがほとんど)課税対象じゃないし、子会社清算だと潜在的にsection 332取引になってsection 337の適用もあり得る。これらの取り扱いはFIRPTA課税で原則オーバーライドされ、分配資産にUSRPIが含まれる場合、USRPIの含み益は米国で課税対象になる。
外国法人の分配に対するこのFIRPTA課税には例外がある。USRPI分配を受け取る者がその後のUSRPI譲渡に米国で課税される、そして分配で受け取るUSRPIに関して受け手が認識する簿価が分配する側の外国法人が認識していた簿価を上回らない場合には分配にはFIRPTA課税は不適用となる。通常分配資産に関して受け手が認識する資産簿価は時価だから、含み益を持つUSRPI分配に関して2つ目の要件は満たさず、通常分配にこの例外規定の適用は難しい。この例外は条文そのものに規定されてるんで「Statutory Exception」っていうけど、条文では財務省に更なる例外規則の策定権を認めていて、財務省は暫定規則で清算分配およびスピンオフに対して例外を規定してる。組織再編に関してはC、D、F型組織再編の一環で外国法人が別の法人に株式対価で資産移管し、受け取り対価の株式がUSRPIの場合、直後に譲渡法人が自分の株主に対価で受け取ったUSRPI(存続法人の株式)を精算分配する際には原則、含み益にFIRPTA課税があるとしている。ただしこの分配も上述のStatutory Exception条件を満たす場合には分配そのものに課税はない。この組織再編の(みなしを含む)清算分配で受け取る資産(適格組織再編の話しなんで多くのケースで存続法人の株式)の簿価は、原則、株主が消滅法人株式に対して認識していた簿価になるんでStatutory Exception適用のチャンスは上がる。組織再編時の分配に対するこのFIRPTA課税はチョッと直観的に分かり難いかもしれないんでベーシックな点を乱暴なほど簡素化して触れておくと、資産移管型の組織再編は資産を移管をする法人が、存続する移管先法人から移管対価として移管先法人株式(プラスあればBoot)を受け取り、直後に受け取った対価(およびあれば手元に残ってる資産)を自分の株主に清算分配(みなし清算分配含む)する。今はその清算分配にかかわる話しをしてる。
1989年に公表されたNotice 89-85では、組織再編の一環で行われる清算分配に対するStatutory Exceptionの代わりに別の例外を規定している。すなわち、清算分配をする外国法人の株主が1980年以降に当外国法人の持分を課税取引で譲渡し、仮にその時点で当外国法人が米国法人でその持分がUSRPIだったとしたらそれらの株主が支払ったであろう税額を外国法人が支払えば、分配そのものにはFIRPTA課税はないとしている。ただし、この例外の適用条件として組織再編で消滅法人の株主が実際に分配(株主の視点からは消滅法人株式と交換)で受け取る存続米国法人株式の将来譲渡時に米国で(FIRPTA課税を含む)課税の対象になること、また分配法人が分配の課税年度に申告・報告義務に準拠することって規定されている。ただしNotice 89-57っていう別のNoticeは申告・報告義務を一定条件下で緩和している。なぜ1980年以降かって言うとFIRPTA課税っていう法律ができたのが1980年だから。この規則に関してUnpackしないといけない検討は多い。
更にややこしいことに1989年のNoticeから20年弱経過したこともあり、2006年には別のNotice(2006-46)が公表され、89-85に規定される例外を修正している。修正では上述のNotice 89-85で加味しないといけない株主による外国法人株式譲渡を1980年以降ではなく組織再編前の10年間に限定している。ただし再編前に存続米国法人(または関連者)が外国法人を支配(価値または議決権50%以上ベース)している場合には支配開始日から遡ること10年から再編日までの期間となる。
非課税取引とFIRPTA
非課税取引(nonrecognition transaction)は主に組織再編または適格現物出資に基づく資産交換でFIRPTAがなければ非課税(簿価のステップアップがないから正確にはDeferralだけど用語として「Tax-Free」って言われます)になる取引のことだけど、USRPIの移管・交換に関して通常通り非課税と認められるのは交換対象となる資産もUSRPIの場合。交換する資産は当然USRPIの想定。でないとFIRPTA課税の対象じゃないから組織再編や適格現物出資を含む通常のルールで課税関係が決まる。
Inbound F
次はいよいよInbound Fだけど、ダボスで脱線してしまってチョッと長くなってきたんで今日はこの辺で。今日・明日は相当冷え込むんで(摂氏だとマイナス15度!)明日またCoffee片手に頑張ります。
トランプがダボスに行くのは既に半死のグローバリズムに総本山でとどめの一撃を加えに行くつもりだっただろうから(実際にそうなったけど…)、最高度の要人セキュリティで臨んでるんだろうけど去年2度の暗殺未遂に見るように常に危ない状況。そんな状況でのAir Force One引き返し事件は怪し過ぎ。石橋を叩いて渡る的な対応だった可能性もあるけどどこか釈然としない。もしかして最初の747型Air Force Oneはオトリで本当のトランプは最初から代替で急遽登用されバックアップAir Force Oneの一機に当たるC-32(空軍特別仕様のボーイング757)に居たとかね。考え過ぎじゃんって?かもね。まあ、一般市民の僕には知る術もない。ちなみにこの手の話しに詳しい人によると正確にはAir Force Oneっていうのは特定の機体の名称じゃなくて、大統領が搭乗しているAir Force機体のコールサインで、必ずしもいつもの747に限定されて使用される訳じゃないそうだ。C-32も国内移動で小さな空港に着陸する際に日頃から使用されることはあるとのこと。
う~ん、何があったんでしょうか。あくまで架空の世界で何らかの理由で大統領が交代するような事態になったらヤングMAGAの副大統領JDバンスがステップインするんで方向的に余り変わりはないっていうのは良く語られるところで、米国ではJDバンスはトランプの生命保険って言う人もいるほどだ。
で、ダボスでのトランプのスピーチは大方の予想よりソフトタッチだった感がある以外に大きな驚きはなかったけど(グリーンランドに関しては例によってTACOぶりが否めなかったけどこれも想定通りなのかな?)、欧州委員会首脳のアルセラの公演は面白いというかチョッと不思議だった。トランプにボロクソ言われたんで何らの形で米国の過去に触れなければって思ったのか、文脈的にチョッと唐突な感じでアルセラ曰く「1971年のニクソンショックでBretton Woods体制が終わり、その地殻変動によりグローバリズムが実現した」とし「そして今、また(今度はグローバリズムが終わる)次の時代の変革に際し過去の教訓から学び欧州は強くなくてはいけない…。独自の通貨も云々」とか。
あんまり深く聞いてなかったけどFiat Currency化して久しい米政府の無責任なMonetary政策や米ドル運営に釘を刺してたってことなのかな。Euroclearにあるロシア中央銀行の米ドル資産没収をちらつかせて米ドル基軸通貨Statusにみんなで引導を渡しておいて面白いね(SWIFTもEuroclearもせっかくDCとかNYCじゃなくてベルギーに設立したのにね)。ニクソンショックでBretton Woodsが終わった点はそうだし、また今日のような地殻変動時に各国が(Survivalモードの?)戦略策定待ったナシっていうのもそうだろうけど、今日直面しているグローバルリオーダーとニクソンショックをパラレルに描写している点、またニクソンショックでグローバリズムに至ったっていう演説内容は誰がスクリプトしたにしてもDeepな考察に基づくんだろう。そう解されてるんだね。ニクソンショックで米ドルが正式に金本位性じゃなくなって、既にFiat化してた欧州通貨等の他国通貨に仲間入りし、その後はFiat通貨の歴史の必然とでもいうべき身の丈に合わない量の紙幣を刷り続け今日の米ドルに至るけど、それがグローバリズム導入の助けっていう因果関係部分が個人的にはピンと来なかったんでもう少し勉強します。国家間や市民と国家の間の信用や信頼が揺らぐ中、何の資産にもバックアップされないFiatは各国がLegal Tender(この紙切れを使って税金を納めることができる)って約束しているんでその価値が認められる。米ドル紙幣には一枚一枚丁寧に「This note is legal tender for all debts, public and private」って印字してあるよね。そこが人生ゲーム(古い?)の100,000ドル紙幣とは違うところ。昔、僕たちの世代の人生ゲームだと白い100,000ドル紙幣が溜まるとうれしかった。薄いピンク色(だっけ?もしかして薄い黄色?)の1,000ドルは結婚祝いとかの時は便利だったけどね。
こんなFiat通貨の米ドルを基軸にSWIFT、Euroclear、西の金融機関が支配する現状のMonetaryシステムはGeopoliticsや通商と密接な関係にあるんで切り離して考えることはできないけど、このシステムもここに来て変革間近なのかもね。米国的には独立250周年近辺に何か大きな発表や動きがあるのかな。それが金の再起用(とは言ってもPhysicalな金の量は足りないよね)なのかGENIUS Actに基づくStable Coinの活用なのか分かんないけど2026年のVolatilityは激しそう。NYCのJFK空港にあるCOMEXでは前代未聞のGoldの現物デリバリーがあるって専門の方が言ってた。誰がStand for delieveryかは分からないけど財務省のExchange Stabilization Fund (ESF) だとしてもおかしくないってことらしい。
Volatilityが高くなるとAlpha Returnを求める資産家やヘッジファンドの暗躍・活躍の時代がまたしても到来。そんな時代の財務長官が「あの」Scott Bessentっていうのも全てシナリオ通りなんでしょうか。イロンマスクがダボスで「(テクノロジー的に)人類は今までかつてない時代に生きてる」ってポジティブなトーンだったけど、あらゆる意味でかつてない時代に生きてるのかな。ローマ帝国の崩壊時の世界ってどんなだっただろうね。当時はグローバリズムとかもちろん存在しなかったから例えばヤマト政権はローマ帝国が崩壊しつつあること自体知らなかっただろうけど、今日の変動は瞬時にグローバル動向に影響を与えるんで世界的なインパクトはもちろん比較にならない。これってグローバリズムの弊害のひとつ?かもね。とは言っても鎖国にはもどれないよね。余談だけど、イロンマスクをダボスでホストしてたブラックロックのラリーフィンクが「テクノロジーで不老不死になれるか」って熱心に聞いてて「右腕と左腕が同じように老化する点に注目すれば人間のどこかに老化をトリガーする指令があるだろうからその辺を把握すれば可能性あり」(記憶に基づく相当な意訳です)ってマスクが言ってた。フィンクは「それはうれしい」って無邪気に喜んでて面白かった。フィンクや秦の始皇帝は同じように考えるんだね。いつの時代も変わんないね。マスクは「死にもメリットはある」とか返してた。そんなやり取りは、ふと宮崎監督のスタジオジブリ映画のセリフ数々の重みを再認識させてくれた。日本はDeepだ。
そして税法
税務以外の専門外の話しは前回で終わったんじゃないのって思った?反省してここで本当に終わりにします(次に何か起こるまでは)。凄い時代に生きてるってことなんでつい…。で、税法の世界も昨年後半触れた通りOB3関係やDe-Regulation・規制緩和系でトピックは多い。そんな中まずはDe-Regulation系から攻めることにして、前回、前々回で自社株買い1%懲罰課税のFunding規則撤廃とDC REITの定義緩和措置をカバーした。今日はInbound FとFIRPTAについて。
Notice 2025-45
チョッと前になるけど、財務省は2025年8月19日にNoticeで、米国外法人が米国法人に生まれ変わるDomestication・Redomicile取引をFIRPTA面から援護する規則を公表した。Redomicile実行ストラクチャリングはひとつじゃないけど、Noticeでは米国外の上場企業がF型インバウンド資産移管組織再編(Inbound F)を利用する際のFIRPTA適用緩和を規定している。今後、当Noticeの内容にて規則草案を公表するとのこと。具体的には一定要件を満たすInbound Fを「対象Inbound F」とし、Inbound Fのステップに内包されるUSRPI(米国法人株式を含む米国不動産持分)移管に対するFIRPTA課税適用を緩和している。当規則はNotice公表日の2025年8月19日以降の分配、資産移管、資産交換に適用可能。
分配や非課税取引とFIRPTA
FIRPTA課税のベーシックに関しては2023年の「FIRPTAアップデート」で結構詳しく触れてるんでそちらを見て欲しい。FIRPTA課税はいろんな取引に適用があり得るけど、今回のNoticeが触れているInbound Fに関係が深いのは外国法人による分配資産に米国法人株式等のUSRPIが含まれるケース、また組織再編を含む非課税資産移管に対するFIRPTA課税になる。この辺りの取り扱いは条文だけでなく、暫定規則(Temporary Regulations)や過去のNoticeに基づくんで元々かなり複雑。規則は暫定なんだ…って不思議に思うかもしれないけど、結構な数の財務省規則が暫定Statusのまま生き残っている。
暫定のまま規則が長期にわたり放置される傾向があったんで、1988年11月21日以降に公表された暫定規則は3年後に自動的に法的効果を持たなくなるっている所謂Sunset規定が条文化されてる。Sunset規定ができてから財務省・IRSは通常、暫定規則と同時に同じ内容の規則草案(NPRM)を公表する。暫定規則は存在している間、最終規則と同じ法的効果がある一方、規則草案には法的効果はない。ただ、暫定規則がSunsetしてしまっても一応、法的効果はないけど規則草案はそのまま生きてるんで、その後、草案を最終化することができる。FIRPTA課税の複数の規則(-5T、-6T、-7T、-9T)は長らく暫定のままだけど、強制Subsetで3年間制限が導入される前のものなんで今日でも暫定のまま法的効果を持っている。分配の規則は1988年5月4日に公表されているんで滑り込みセーフでSubset前だ。その後、一部修正やNoticeでのオーバーライドはあるけど、Subset目的ではあくまでオリジナル公表日をみるんで40年近くもSurviveしてる。
外国法人による分配とFIRPTA
清算分配、Redemption(この用語を聞くと嫌でも自社株買いExcise Taxを思いだすね!(苦笑))を含む外国法人による資産分配は含み益を持つ資産でも多くのケースで米国では非課税。含み益を持つ資産の分配は清算分配以外の局面ではみなし資産譲渡として課税が原則だけど、外国法人の話しなんでECIでない限り(ECIじゃないケースがほとんど)課税対象じゃないし、子会社清算だと潜在的にsection 332取引になってsection 337の適用もあり得る。これらの取り扱いはFIRPTA課税で原則オーバーライドされ、分配資産にUSRPIが含まれる場合、USRPIの含み益は米国で課税対象になる。
外国法人の分配に対するこのFIRPTA課税には例外がある。USRPI分配を受け取る者がその後のUSRPI譲渡に米国で課税される、そして分配で受け取るUSRPIに関して受け手が認識する簿価が分配する側の外国法人が認識していた簿価を上回らない場合には分配にはFIRPTA課税は不適用となる。通常分配資産に関して受け手が認識する資産簿価は時価だから、含み益を持つUSRPI分配に関して2つ目の要件は満たさず、通常分配にこの例外規定の適用は難しい。この例外は条文そのものに規定されてるんで「Statutory Exception」っていうけど、条文では財務省に更なる例外規則の策定権を認めていて、財務省は暫定規則で清算分配およびスピンオフに対して例外を規定してる。組織再編に関してはC、D、F型組織再編の一環で外国法人が別の法人に株式対価で資産移管し、受け取り対価の株式がUSRPIの場合、直後に譲渡法人が自分の株主に対価で受け取ったUSRPI(存続法人の株式)を精算分配する際には原則、含み益にFIRPTA課税があるとしている。ただしこの分配も上述のStatutory Exception条件を満たす場合には分配そのものに課税はない。この組織再編の(みなしを含む)清算分配で受け取る資産(適格組織再編の話しなんで多くのケースで存続法人の株式)の簿価は、原則、株主が消滅法人株式に対して認識していた簿価になるんでStatutory Exception適用のチャンスは上がる。組織再編時の分配に対するこのFIRPTA課税はチョッと直観的に分かり難いかもしれないんでベーシックな点を乱暴なほど簡素化して触れておくと、資産移管型の組織再編は資産を移管をする法人が、存続する移管先法人から移管対価として移管先法人株式(プラスあればBoot)を受け取り、直後に受け取った対価(およびあれば手元に残ってる資産)を自分の株主に清算分配(みなし清算分配含む)する。今はその清算分配にかかわる話しをしてる。
1989年に公表されたNotice 89-85では、組織再編の一環で行われる清算分配に対するStatutory Exceptionの代わりに別の例外を規定している。すなわち、清算分配をする外国法人の株主が1980年以降に当外国法人の持分を課税取引で譲渡し、仮にその時点で当外国法人が米国法人でその持分がUSRPIだったとしたらそれらの株主が支払ったであろう税額を外国法人が支払えば、分配そのものにはFIRPTA課税はないとしている。ただし、この例外の適用条件として組織再編で消滅法人の株主が実際に分配(株主の視点からは消滅法人株式と交換)で受け取る存続米国法人株式の将来譲渡時に米国で(FIRPTA課税を含む)課税の対象になること、また分配法人が分配の課税年度に申告・報告義務に準拠することって規定されている。ただしNotice 89-57っていう別のNoticeは申告・報告義務を一定条件下で緩和している。なぜ1980年以降かって言うとFIRPTA課税っていう法律ができたのが1980年だから。この規則に関してUnpackしないといけない検討は多い。
更にややこしいことに1989年のNoticeから20年弱経過したこともあり、2006年には別のNotice(2006-46)が公表され、89-85に規定される例外を修正している。修正では上述のNotice 89-85で加味しないといけない株主による外国法人株式譲渡を1980年以降ではなく組織再編前の10年間に限定している。ただし再編前に存続米国法人(または関連者)が外国法人を支配(価値または議決権50%以上ベース)している場合には支配開始日から遡ること10年から再編日までの期間となる。
非課税取引とFIRPTA
非課税取引(nonrecognition transaction)は主に組織再編または適格現物出資に基づく資産交換でFIRPTAがなければ非課税(簿価のステップアップがないから正確にはDeferralだけど用語として「Tax-Free」って言われます)になる取引のことだけど、USRPIの移管・交換に関して通常通り非課税と認められるのは交換対象となる資産もUSRPIの場合。交換する資産は当然USRPIの想定。でないとFIRPTA課税の対象じゃないから組織再編や適格現物出資を含む通常のルールで課税関係が決まる。
Inbound F
次はいよいよInbound Fだけど、ダボスで脱線してしまってチョッと長くなってきたんで今日はこの辺で。今日・明日は相当冷え込むんで(摂氏だとマイナス15度!)明日またCoffee片手に頑張ります。
Thursday, January 8, 2026
2026年明けましておめでとうございます!今年はどんな年?
2026年明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします。
このポスティング、ゆく年くる年のつもりで書き始めたんだけど、既に新年を迎えたんで「新春」ポスティングになりました。皆さんはどんな「New Year Resolution」を立てたでしょうか。初夢は富士山や鷹や茄子だった?それともBitcoin、AI、世界の平和とかだったかもね。
例年のことだけど2025年も始まったな~と思ったらアッと言う間に過ぎてしまった。とは言えトランプ政権が誕生してから未だ1年未満なんだよね。この1年の米国リセット、またその影響を受けてグローバルのリセットはコペルニクス的転回。それでも地球はまだ太陽の周り回ってるはずだけど。
米国税務(広義には米国の法体系)オタクの僕にとってGeopolitics、マクロ経済、特にMonetary Policy等は専門外だけど(したがって専門家の視点からはおかしいこと言ってることも多いかも)、それでも時代の大きな変遷は感じざるを得ない。Fiat Currencyの過多なプリンティング、Bitcoin派とGold派の戦い、AIや自動運転(これ凄く便利)を含むテクノロジーの進化、税務その他の法制度をとりまく様々な環境の変化は、法制度の理解に不可欠なことが多い。
今回は新春特集なのを良いことにオタクな米国税務テクニカルな話しは次回以降に泣く泣く譲り、2025年を振り返り2026年に備える、みたいなテーマとします。いつもそうだけどあくまで私見で無知さを露呈するかもしれないけど米国で感じる姿をのべつ幕無しに書いておくね
僕たちが現実って思ってることの多くは演出?
米国を語る際のひとつの副題として、肌感覚的に日本の一般市民には米国って言う国がほぼ理解されていない点っていう点がある。戦後80年経過していて堅固な同盟関係を築いている日米間でなぜ?って思うことは多いけど、考えてみると米国に住んでる僕たちでも米国っていう国を理解するのは難しいし知らぬが仏みたいな部分も多いから増してや対岸の火事とまでは行かなくても他国の米国の事情が日本で理解されていないのは当然かもね。
これって従来はニュースソースがレガシーメディアの報道に限られていた点は一因だろうけど、米国レガシーメディアは主に民主党側なので、例えば、オバマやバイデン政権は良く分かんないけど何となく善で、トランプ政権は逆に悪っていう銭形平次とかウルトラマン的な感覚の世論の形成に尽力する傾向がある。
その昔、Jim Carrey(彼のLiar Liarは面白かったね)主演の「トルーマン・ショー」って1998年の映画があって、トルーマンっていう主人公の人生は全て舞台装置上の演出でそれを知らないのは本人だけ、みたいなストーリーで当時話題だったんでLAの映画館で封切と同時に見たけど、その頃は単なるエンターテインメントとして見てた。でも、あのストーリーって結構怖くて、結局のところ僕たちが生きてる世界や現実っていうのはメディアを含むDeep Stateに完全に支配されている演出に過ぎず、大多数の一般市民は本当の現実を知らずに生涯を送っているっていう実態を大げさに描いてるとすると実に深淵。
1998年はGoogleが設立された年で、まだまだアナログの世界だったけど、全てがデジタルに移行し、トルーマンショー当時とは比較にならない監視社会に移行した今日、当時は単なる映画の非現実的なあらすじにしか見えなかった話しが、実は僕もトルーマンか…っていうような再認識をせざるを得ない。知らぬが仏でそれはそれで実害なければいいのかもしれないけどね。最後の一線は政府、企業、個人の道徳観だね。う~ん大丈夫かな。個人にしても企業にしてもメディアで報道されていることは演出の可能性ありっていう点を理解してリスク管理していくしかない。インターネット普及で1998年とは比較にならない量の代替ニュースソースがあるんで異なる視点を吸収できるチャンスは多いけど、どれが正しいってこともないんで難しいよね。
America Firstトランプ2.0の即実行で2025年はパラダイムシフト
180度転換とも言える米国の政策リセットは、大別してオープンボーダーの撤回・国境警備強化、バイデン政権下で1千万人以上と言われる不法移民流入に対する強制送還措置、エネジー・Climate関係、金融・税制・独禁法・その他の広範な分野における規制緩和(De-Regulation)、Re-shoringを目指す通商政策、カルチャー系(いわゆるWokeへのプッシュバック)などなど。これらは全て選挙前からの公約に基づくもので全て速攻で実行された。その意味で有権者への公約は守ったことになる。
このExecutionのスピードは2016年のトランプ1.0の失敗と対照的。すなわち2016年政権発足当時はDCの抵抗を過小評価していたかまたはそもそも部外者なんでDCのパワーストラクチャーを理解していなかったんだろうけど、当時は内部で足を引っ張られ、「匿名情報源」の真偽不明の諸々メディア報道、今では作り事だったって分かっているロシア疑惑、とかで政策どころじゃなかった感じだもんね。このトランプ1.0の教訓を活かし、2.0は相当用意周到だったけど、感覚的に2024年11月の選挙後に準備開始したんでは到底間に合わないレベル。となると、おそらく2020年の選挙結果を見て2024年はちゃんとやれば当選するっていう確信があり、4年間かけて相当な準備をしたとしか考えられないね。取り巻きもSusie Wilesとか実力者かつ忠臣で揃えてるし。Wilesが先日Vanity Fairにインタビュー許したのは意外だったけどね。
2024年の選挙結果予想とかもそうだけど、米国のレガシーメディアはトランプに対しては2016年から一貫して極端にネガティブ。ニュースを伝えるっていうよりもトランプを引きずりおろすっていうのが目的になってしまったんで、これらの表面的なニュースから情報を得ていると本当のトレンドは分かり難い。
メディアや民主党のメッセージはその時その時で流行フレーズ(Buzz Word)、例えば選挙中は「ファシスト」「ヒトラー」, Elon MuskがDOGEに居た頃は「President Musk」、政権発足後の諸々に政策実行時には「Chaos」、とか、を決めて徹底的に連呼して世論に浸透させる。それらだけ聞いてると大変な混乱が生じてるようなイメージを持つかもしれない。トランプっていう人物に予見可能性が低いのは確かだけど、上述の政策そのものは選挙運動中から一貫して提唱しているもので、それらが賢明なものか、または賛成できるかどうかは別として、2025年は尋常じゃないスピードと決意で着々とそれらをExecutionした一年って言える。
国外不干渉は?
ひとつ公約違反(?)があるとすると、米国外の戦争や他国の内政干渉、Nation Buildingしたりしないっていう原則。Nation BuildingのUSAIDは即廃止されたけど(もちろんだからってBlobがなくなったって思うナイーブな人はいないし、これらがゼロになると米国の国力や経済力にマイナス面もあるんだろう)、イランにミサイル打ち込んだり、ウクライナに関してもEUとかNATOが一向に戦争を終わらせる気配を見せないなか、議会のプレッシャーもあってか最後通牒を発することができず、なんだかんだ米国も中途半端な関与を続けてる。数日前はベネズエラのMaduroを米国の罪状に基づき逮捕の上、Brooklynに連れてくるっていう驚愕の出来事もあった。Maduroのような立場にある者は当然、どの国でも要塞のようなところで強力な警備で守られてるはずだけど、そんな他国のリーダーを国外から攻撃して数時間で(米国側の)犠牲者ゼロでNYCに連れて帰ってくるっていう諜報能力やオペレーション遂行能力にはビックリ。米国と馬の合わない他国のリーダーも戦々恐々だろう。ただ、MAGAの重要な信条のひとつ、米国外不干渉の原則からは逸脱してるよね。イランとかベネズエラは単発攻撃なんで湾岸戦争とかベトナム戦争とは比較可能性はないけど、だからってMAGAのサポートは得られるんでしょうか。
Donro主義
ベネズエラに関しては過去の米国石油会社の資産没収や米国への薬物流入、等の特別な背景があるかもしれないけど、そう言えば先日公表された米国の「National Security Strategy」でも従来の外交政策を一変、米国の国家主権を最重要視して、グローバルではなく「西半球」(Western Hemisphere)の反米勢力やそこからの不法移民や犯罪の排除にフォーカスするとしてる。西半球を米国のSphere of Influenceとしてフォーカスする外交はMonro 主義だけど、その復活がうたわれていた。Donald Trumpにもじって早速Donro主義っていう新用語が生まれてる。
そんな原則の下、西半球以外の地域への関与は徐々に控えると同時に、米国が自分の裏庭だと思っている西半球に属するベネズエラが反米勢力に支配されたり、中国やロシアの影響が強くなったり石油がそれらの国に渡るのは許せないっていうことなんだろうか。Maduroは米国に逮捕される直前、中国の代表と会っていたそうだから反米他国とは親密な関係にあったんだろう。National Security Strategyではロシアとは安定的な関係を築くとしたり、中国にもソフトタッチな一方、欧州やNATOには冷淡。EUとは言論統制の問題、また国家主権や選挙に基づかないグローバリストによるSuper Stateの統治形態、等の観点からMAGAの米国とは馬が合わない。
グリーンランドと火星
西半球って言えばグリーンランドが含まれててこれも意味深。ベネズエラの例から見るに、その気になれば数時間で占拠可能なのかもしれないけど、現時点では対価を支払って取得するとかって未だ言ってるけどね。グリーンランドに関しては米国の国家安全保障や資源の観点からの重要性が指摘されるけど、米国の自律神経的に新たなフロンティアを求める血が騒いでるっていう側面はないのかな。
以前のポスティングでも書いた記憶があるけど、今の米国って、個人のLibertyを重要視するリベタリアン派には独立時や憲法起草当時の精神・理想から掛け離れた国になってしまったって感じてる者が少なくないだろう。MAGAってグローバリストに取り残された一般市民を代表する面もあるけど、Tech Rightとかのリベタリアン的な側面もあるよね。Tech Rightやリベタリアンの人は未開の地で一から米国が目指した真の個人の自由を再度追及したい、みたいなドリームがあるんじゃないかな、って感じる。Techの重鎮やCypherpunkの人って結構な人がイデオロギー的に真逆の大きな政府・官僚主導のCaliforniaにも住んでる気がするんでチョッと不思議だけど、根はリベタリアンな人が多いように感じる。火星に文明を築きたいっていうドリームも、もう地球はトルーマンショーで自由はないから新天地を目指したいみたいな理想を追求してるのかもね。でもTechが原因でますますトルーマンショーになっているんでなんか矛盾があるけど。グリーンランドはその一歩?
Bitcoin
Cypherpunkと言えばBitcoin。取引の多くが現金ではなくカード等の電子決済に移行した中、インターネット普及初期から取引を中央銀行や銀行に頼らずに純粋にPrivateに行う仕組みを現実化したいっていう者が現れてた。シルクロードみたいなアングラマーケットを目指したっていうよりも単純にお金の動きを把握されたりする点を嫌うPrivacy面、トランプ政権が問題視している過去のDe-bankとかでも明らかなように急に自分のお金が使えなくなったりするリスクを恐れたりする制度そのものに対する不信感、に基づく動きだと理解してるけど、E-Goldとかの流れからBitcoinはそれを達成しようとするもの。
でも今のところBitcoinは商業の媒体・通貨っていう機能よりも、どこまで価値が維持できるのか不安なFiat CurrencyやDebasement対策で長期的な富の温存的な存在になってるけど、価値が安定したら通貨としての機能も持つようになるかもね。後述の米ドルの問題と直結してる。米国法制面で2025年に可決・署名済みのGENIUS Actや今議会で議論されているCrypto Market Structure法案、などトランプ政権下ではCryptoに関してより活発な議論が行われているんでこちらも2026年は注目に値する。
基軸通貨USドルとペニー(セント)硬貨廃止
ニクソンショックで金本位性を一方的に撤回してドルがFiat Currencyになって際限なくドルをプリントすることができるようになったけど、それ以前、1913年にFederal Reserveが通貨を国単位で管理するようになってからのドルの価値は実に96%下がっている。逆に言えばインフレが3,000%っていうこと。1913年は連邦憲法改正で連邦政府がIncome Taxを徴収することが初めて認められた年。この辺りから建国時の理想は崩れていくね。大国のサガだ。
戦争その他のクライシス毎に出費を重ね結果、到底返済不能な$38Tの国家負債。過剰なドル供給でにっちもさっちもいかなくる姿はローマ時代の銀貨(denarius)に含まれる銀の量がどんどん低下していったのと同じ。帝国初期には98%ってほぼ純銀硬貨だったものが、90%、80%、50%、20%、ついに300年AD頃には2%からゼロ%って銀貨とは名ばかりになってしまった。銀貨の価値が低減する訳だから、当然銀貨で表示される物品の価格は上がる。6,000%を超えるインフレになりリーダーの信用な地に落ちた。はは、6,000%のローマ帝国の話しは大昔で今は違うって思うかもしれないけど、米国は1913年から100年掛けて3,000%。どっちがマシだろうか。
ちなみに米国のPennyは製造コストが1セントより高いっていうことで製造停止になったけど、これもPenny自体の価値(すなわちPennyの購買力)が大きく低下してしまったっていうことでDenariusの運命、そしてローマ帝国の運命を連想させる象徴的な2025年の出来事。
返済できないって分かってる負債に対処するため歴史的に必ず起こるのがDebasement。すなわち意図的に自国通貨の価値を下げて返済を容易にするっていう作戦。これはイコール、高いインフレなんで賃金上昇が表面インフレ率を上回らない限り一般市民には受け入れ難い。利下げその他の動きでこのテンションをどうするかのかじ取りは難しそう。ドルがBebaseって言ってもドルの為替レートは悪くなってないじゃんって思うかもしれないけど、それは他のFiat Currencyとの比較での話し。どの通貨、EUも円もFiat Currencyで同じような状況にあるんで相対的な話しなんだと思う。
米国が巨額の債務でも大丈夫だったのはドルが基軸通貨だっていう理由が大きい。所謂Exorbitant Privilegeだ。Overnightでドル以外の通貨が基軸通貨になるとは思えないけど、Debasementとは別の観点で基軸通貨を持つ国としてどうなのかな、って思えたのはロシアに対する制裁でバイデン政権がEUと一緒に$300Bのロシア中央銀行が持つドル資産を凍結してしまった事件。主にEuroclearにある資産の話しだけど、その後、EUでは凍結だけではなく実質没収(国際法上許されないってことで結局腰が引けた?)みたいな話しも出てたって理解してる。これは相当な冷却効果で、過去にも凍結は限定的にあったけど、核保有軍事大国ロシアの資産も凍結されたり没収の話しに至るっていうことは、特に反米のレッテルを張られやすい国の中央銀行として米国債やドル資産はリスキーって当然考えてドル離脱が加速するだろう。BRICsでは一部金でバックアップされたバスケット通貨構想もある。国家ですら凍結対象となるとCypherpunkが恐れる個人の資産凍結などはいとも簡単。Bitcoinがレスキューできるでしょうか。
なぜリセット?
米国や世界のリセットだけど、トランプが出てきて急にリセットしてるっていうよりも、ここ何年も掛けて蓄積されてきた支配階級のグローバリストと米国一般市民間の「Disconnect」が作因というかAgentで、その反発がトランプやMAGAとして具現化されてるってことだろう。そんなタイミングで媒体としてトランプって言う変人が存在したのは時の悪戯。トランプの好き嫌いは両極端なんで意見が割れるところだけど、100件近い刑事訴訟、その他民事訴訟、徹底したメディア中傷、その他の困難を克服して再選っていう精神力は普通ではない。
米国外の一般市民と生活を共にしてないんで肌感覚はゼロだけど、もし同様のDisconnectや不満、失望を感じている一般市民が米国外でも多いとすると、戦後80年のグローバル秩序は大きな曲がり角差し掛かってるだろう。支配階級のグローバリストは各国の一般市民の意思で成り立つ国家主権ベースではなく、権威主義的にトップダウンで世界レベルで事を進めようとするから、自国の選挙で地道に議員を選んだりしても結局何も変わんないねっていう無力感の蓄積も激しい。
僕たちは戦後のグローバル秩序しか体験したことないし、それがあたも未来永劫続くような錯覚に陥ってるかもしれないけど、歴史を見ると必ず訪れる大きなリセット。たまたまそんな時代に生きてるってことなんだろうね。
タックスの世界でもOECDのグローバルタックスなんかはその例で、自国の選挙や主権国家レベルの統治とは直接関係なく、各国市民に説明責任のない欧州の専門家が税法を書き、その規則から逸脱すると村八分にすることで各国に適用を半強制するもので、各国市民の意思が反映されているように見えない。15%のミニマム税を課すっていう政策が世界の発展にプラスかどうかって視点は置いておいて、その意思決定プロセスに対する議論が(米国外では)思ったよりも少ない点は意外だった。なんかトルーマンショーみたい。
この従来の民主主義とは異なる新しい姿のコンセンサス民主主義、すなわち支配階級にあるグローバリストが超国家的なポリシーを一般市民からは手の届かないところで合意し、各国にトップダウンでその実行を求めるタイプの民主主義(それが民主主義って言えればだけど…)で、Brexitやトランプ1.0以降に加速した感じがする。ただ「Rule-based」の秩序っていうのは、Ruleを策定する側に説明責任がないとRuleされる側の納得感が低下するっていう致命的な欠点があるけどね。
トップダウンの新しい民主主義の許容レベルは各国の国民性や国家統治のあり方、国際舞台での発言力等の違いにより凹凸があるだろう。議会制度(Congress制度、Parliament制ではないという意味)で、国民性的にもなんだかんだ言って個人のLibertyを重要視するリベタリアンが比較的多い米国では衝突必至のCollision Course。グローバルタックスでも結局衝突。G7が12月末までに合意することに合意していた(?)Side-by-sideはどうしちゃったんでしょうかって思ってたらギリギリセーフでルールが公表されたね。これを受けて米国財務長官のScott Bessentは「the historic victory in preserving US sovereignty」って反応してた。この反応からもグローバリタックスの問題はテクニカルなタックス面に加えて一般市民・有権者への説明責任を伴う主権国家ベースのRule作り、と新民主主義との確執だったことが計り知れる。まあ、Side-by-sideルール公開があんまり遅くなると議会では例の(苦笑)section 899の復活も噂されてたもんね。
グローバルタックスは法人税の世界なんで戦争や個人のLibertyの観点から比較的Benignな世界かもしれないけど、根本的なテンションは同じ。グローバリストがやり過ぎると一般市民から信頼が低下し、コロナ禍のDraconianな対処で多くの米国市民が専門家、メディア、官僚機構に失望してすっかり信頼をなくしたように、国際合意や国際機関への信用も低下してしまって結局これらの制度のいい面も台無しになり兼ねない。
2026年 (and beyond)
2025年のリセット・トレンドは反転不可で2026年も加速し、人類の歴史的に100年単位で訪れる大きなリセットの流れに身を置くことになるんだろうね。この大きな流れは良くも悪くも逆らうことはできず、国、企業、個人単位でリスク管理して対処するしかないね。関税や通商問題を考える際にも、リセット渦中でのひとつの現象として広範なトレンドっている文脈で対処していく必要がある。
この世は無常で盛者必衰。138億年っていう長~い歴史の中で僕たちが知ってる文明はたかが2~3千年、今のグローバル秩序に至ってはたった80年っていうスパンの話しなんで、一瞬の出来事に過ぎず当然未来永劫続くものじゃない。
テクノロジーやAIとかで「自分たちはローマやオランダ時代の人とは違う」っていう錯覚に陥るかもしれないけど、人間の根本的な行動パターンはたかが2000年とかでは変わらない。テクノロジーの進化で変わることがあるとすると変化のスピードが加速することだろうけど、根本的なストラクチャーは前述のローマ帝国のDebasementを見ても結局あんまり変わんないんじゃないだろうか。
リセット時には新たな勝者や敗者が現れるけど、日本としてはかじ取りを間違わずに自国の伝統、美学、そして世界でもまれに見る質の高い民度・文化を大切に温存していって欲しい。Some kind of happiness is measured out in milesだけど、HappinessのMeasureは他にもあるんで資源やお金は限りがあるっていう前提で国としてどんなHappinessを目指すのかな。
ということで慣れない話しだったけど次回からはまたタックス三昧しましょう。
このポスティング、ゆく年くる年のつもりで書き始めたんだけど、既に新年を迎えたんで「新春」ポスティングになりました。皆さんはどんな「New Year Resolution」を立てたでしょうか。初夢は富士山や鷹や茄子だった?それともBitcoin、AI、世界の平和とかだったかもね。
例年のことだけど2025年も始まったな~と思ったらアッと言う間に過ぎてしまった。とは言えトランプ政権が誕生してから未だ1年未満なんだよね。この1年の米国リセット、またその影響を受けてグローバルのリセットはコペルニクス的転回。それでも地球はまだ太陽の周り回ってるはずだけど。
米国税務(広義には米国の法体系)オタクの僕にとってGeopolitics、マクロ経済、特にMonetary Policy等は専門外だけど(したがって専門家の視点からはおかしいこと言ってることも多いかも)、それでも時代の大きな変遷は感じざるを得ない。Fiat Currencyの過多なプリンティング、Bitcoin派とGold派の戦い、AIや自動運転(これ凄く便利)を含むテクノロジーの進化、税務その他の法制度をとりまく様々な環境の変化は、法制度の理解に不可欠なことが多い。
今回は新春特集なのを良いことにオタクな米国税務テクニカルな話しは次回以降に泣く泣く譲り、2025年を振り返り2026年に備える、みたいなテーマとします。いつもそうだけどあくまで私見で無知さを露呈するかもしれないけど米国で感じる姿をのべつ幕無しに書いておくね
僕たちが現実って思ってることの多くは演出?
米国を語る際のひとつの副題として、肌感覚的に日本の一般市民には米国って言う国がほぼ理解されていない点っていう点がある。戦後80年経過していて堅固な同盟関係を築いている日米間でなぜ?って思うことは多いけど、考えてみると米国に住んでる僕たちでも米国っていう国を理解するのは難しいし知らぬが仏みたいな部分も多いから増してや対岸の火事とまでは行かなくても他国の米国の事情が日本で理解されていないのは当然かもね。
これって従来はニュースソースがレガシーメディアの報道に限られていた点は一因だろうけど、米国レガシーメディアは主に民主党側なので、例えば、オバマやバイデン政権は良く分かんないけど何となく善で、トランプ政権は逆に悪っていう銭形平次とかウルトラマン的な感覚の世論の形成に尽力する傾向がある。
その昔、Jim Carrey(彼のLiar Liarは面白かったね)主演の「トルーマン・ショー」って1998年の映画があって、トルーマンっていう主人公の人生は全て舞台装置上の演出でそれを知らないのは本人だけ、みたいなストーリーで当時話題だったんでLAの映画館で封切と同時に見たけど、その頃は単なるエンターテインメントとして見てた。でも、あのストーリーって結構怖くて、結局のところ僕たちが生きてる世界や現実っていうのはメディアを含むDeep Stateに完全に支配されている演出に過ぎず、大多数の一般市民は本当の現実を知らずに生涯を送っているっていう実態を大げさに描いてるとすると実に深淵。
1998年はGoogleが設立された年で、まだまだアナログの世界だったけど、全てがデジタルに移行し、トルーマンショー当時とは比較にならない監視社会に移行した今日、当時は単なる映画の非現実的なあらすじにしか見えなかった話しが、実は僕もトルーマンか…っていうような再認識をせざるを得ない。知らぬが仏でそれはそれで実害なければいいのかもしれないけどね。最後の一線は政府、企業、個人の道徳観だね。う~ん大丈夫かな。個人にしても企業にしてもメディアで報道されていることは演出の可能性ありっていう点を理解してリスク管理していくしかない。インターネット普及で1998年とは比較にならない量の代替ニュースソースがあるんで異なる視点を吸収できるチャンスは多いけど、どれが正しいってこともないんで難しいよね。
America Firstトランプ2.0の即実行で2025年はパラダイムシフト
180度転換とも言える米国の政策リセットは、大別してオープンボーダーの撤回・国境警備強化、バイデン政権下で1千万人以上と言われる不法移民流入に対する強制送還措置、エネジー・Climate関係、金融・税制・独禁法・その他の広範な分野における規制緩和(De-Regulation)、Re-shoringを目指す通商政策、カルチャー系(いわゆるWokeへのプッシュバック)などなど。これらは全て選挙前からの公約に基づくもので全て速攻で実行された。その意味で有権者への公約は守ったことになる。
このExecutionのスピードは2016年のトランプ1.0の失敗と対照的。すなわち2016年政権発足当時はDCの抵抗を過小評価していたかまたはそもそも部外者なんでDCのパワーストラクチャーを理解していなかったんだろうけど、当時は内部で足を引っ張られ、「匿名情報源」の真偽不明の諸々メディア報道、今では作り事だったって分かっているロシア疑惑、とかで政策どころじゃなかった感じだもんね。このトランプ1.0の教訓を活かし、2.0は相当用意周到だったけど、感覚的に2024年11月の選挙後に準備開始したんでは到底間に合わないレベル。となると、おそらく2020年の選挙結果を見て2024年はちゃんとやれば当選するっていう確信があり、4年間かけて相当な準備をしたとしか考えられないね。取り巻きもSusie Wilesとか実力者かつ忠臣で揃えてるし。Wilesが先日Vanity Fairにインタビュー許したのは意外だったけどね。
2024年の選挙結果予想とかもそうだけど、米国のレガシーメディアはトランプに対しては2016年から一貫して極端にネガティブ。ニュースを伝えるっていうよりもトランプを引きずりおろすっていうのが目的になってしまったんで、これらの表面的なニュースから情報を得ていると本当のトレンドは分かり難い。
メディアや民主党のメッセージはその時その時で流行フレーズ(Buzz Word)、例えば選挙中は「ファシスト」「ヒトラー」, Elon MuskがDOGEに居た頃は「President Musk」、政権発足後の諸々に政策実行時には「Chaos」、とか、を決めて徹底的に連呼して世論に浸透させる。それらだけ聞いてると大変な混乱が生じてるようなイメージを持つかもしれない。トランプっていう人物に予見可能性が低いのは確かだけど、上述の政策そのものは選挙運動中から一貫して提唱しているもので、それらが賢明なものか、または賛成できるかどうかは別として、2025年は尋常じゃないスピードと決意で着々とそれらをExecutionした一年って言える。
国外不干渉は?
ひとつ公約違反(?)があるとすると、米国外の戦争や他国の内政干渉、Nation Buildingしたりしないっていう原則。Nation BuildingのUSAIDは即廃止されたけど(もちろんだからってBlobがなくなったって思うナイーブな人はいないし、これらがゼロになると米国の国力や経済力にマイナス面もあるんだろう)、イランにミサイル打ち込んだり、ウクライナに関してもEUとかNATOが一向に戦争を終わらせる気配を見せないなか、議会のプレッシャーもあってか最後通牒を発することができず、なんだかんだ米国も中途半端な関与を続けてる。数日前はベネズエラのMaduroを米国の罪状に基づき逮捕の上、Brooklynに連れてくるっていう驚愕の出来事もあった。Maduroのような立場にある者は当然、どの国でも要塞のようなところで強力な警備で守られてるはずだけど、そんな他国のリーダーを国外から攻撃して数時間で(米国側の)犠牲者ゼロでNYCに連れて帰ってくるっていう諜報能力やオペレーション遂行能力にはビックリ。米国と馬の合わない他国のリーダーも戦々恐々だろう。ただ、MAGAの重要な信条のひとつ、米国外不干渉の原則からは逸脱してるよね。イランとかベネズエラは単発攻撃なんで湾岸戦争とかベトナム戦争とは比較可能性はないけど、だからってMAGAのサポートは得られるんでしょうか。
Donro主義
ベネズエラに関しては過去の米国石油会社の資産没収や米国への薬物流入、等の特別な背景があるかもしれないけど、そう言えば先日公表された米国の「National Security Strategy」でも従来の外交政策を一変、米国の国家主権を最重要視して、グローバルではなく「西半球」(Western Hemisphere)の反米勢力やそこからの不法移民や犯罪の排除にフォーカスするとしてる。西半球を米国のSphere of Influenceとしてフォーカスする外交はMonro 主義だけど、その復活がうたわれていた。Donald Trumpにもじって早速Donro主義っていう新用語が生まれてる。
そんな原則の下、西半球以外の地域への関与は徐々に控えると同時に、米国が自分の裏庭だと思っている西半球に属するベネズエラが反米勢力に支配されたり、中国やロシアの影響が強くなったり石油がそれらの国に渡るのは許せないっていうことなんだろうか。Maduroは米国に逮捕される直前、中国の代表と会っていたそうだから反米他国とは親密な関係にあったんだろう。National Security Strategyではロシアとは安定的な関係を築くとしたり、中国にもソフトタッチな一方、欧州やNATOには冷淡。EUとは言論統制の問題、また国家主権や選挙に基づかないグローバリストによるSuper Stateの統治形態、等の観点からMAGAの米国とは馬が合わない。
グリーンランドと火星
西半球って言えばグリーンランドが含まれててこれも意味深。ベネズエラの例から見るに、その気になれば数時間で占拠可能なのかもしれないけど、現時点では対価を支払って取得するとかって未だ言ってるけどね。グリーンランドに関しては米国の国家安全保障や資源の観点からの重要性が指摘されるけど、米国の自律神経的に新たなフロンティアを求める血が騒いでるっていう側面はないのかな。
以前のポスティングでも書いた記憶があるけど、今の米国って、個人のLibertyを重要視するリベタリアン派には独立時や憲法起草当時の精神・理想から掛け離れた国になってしまったって感じてる者が少なくないだろう。MAGAってグローバリストに取り残された一般市民を代表する面もあるけど、Tech Rightとかのリベタリアン的な側面もあるよね。Tech Rightやリベタリアンの人は未開の地で一から米国が目指した真の個人の自由を再度追及したい、みたいなドリームがあるんじゃないかな、って感じる。Techの重鎮やCypherpunkの人って結構な人がイデオロギー的に真逆の大きな政府・官僚主導のCaliforniaにも住んでる気がするんでチョッと不思議だけど、根はリベタリアンな人が多いように感じる。火星に文明を築きたいっていうドリームも、もう地球はトルーマンショーで自由はないから新天地を目指したいみたいな理想を追求してるのかもね。でもTechが原因でますますトルーマンショーになっているんでなんか矛盾があるけど。グリーンランドはその一歩?
Bitcoin
Cypherpunkと言えばBitcoin。取引の多くが現金ではなくカード等の電子決済に移行した中、インターネット普及初期から取引を中央銀行や銀行に頼らずに純粋にPrivateに行う仕組みを現実化したいっていう者が現れてた。シルクロードみたいなアングラマーケットを目指したっていうよりも単純にお金の動きを把握されたりする点を嫌うPrivacy面、トランプ政権が問題視している過去のDe-bankとかでも明らかなように急に自分のお金が使えなくなったりするリスクを恐れたりする制度そのものに対する不信感、に基づく動きだと理解してるけど、E-Goldとかの流れからBitcoinはそれを達成しようとするもの。
でも今のところBitcoinは商業の媒体・通貨っていう機能よりも、どこまで価値が維持できるのか不安なFiat CurrencyやDebasement対策で長期的な富の温存的な存在になってるけど、価値が安定したら通貨としての機能も持つようになるかもね。後述の米ドルの問題と直結してる。米国法制面で2025年に可決・署名済みのGENIUS Actや今議会で議論されているCrypto Market Structure法案、などトランプ政権下ではCryptoに関してより活発な議論が行われているんでこちらも2026年は注目に値する。
基軸通貨USドルとペニー(セント)硬貨廃止
ニクソンショックで金本位性を一方的に撤回してドルがFiat Currencyになって際限なくドルをプリントすることができるようになったけど、それ以前、1913年にFederal Reserveが通貨を国単位で管理するようになってからのドルの価値は実に96%下がっている。逆に言えばインフレが3,000%っていうこと。1913年は連邦憲法改正で連邦政府がIncome Taxを徴収することが初めて認められた年。この辺りから建国時の理想は崩れていくね。大国のサガだ。
戦争その他のクライシス毎に出費を重ね結果、到底返済不能な$38Tの国家負債。過剰なドル供給でにっちもさっちもいかなくる姿はローマ時代の銀貨(denarius)に含まれる銀の量がどんどん低下していったのと同じ。帝国初期には98%ってほぼ純銀硬貨だったものが、90%、80%、50%、20%、ついに300年AD頃には2%からゼロ%って銀貨とは名ばかりになってしまった。銀貨の価値が低減する訳だから、当然銀貨で表示される物品の価格は上がる。6,000%を超えるインフレになりリーダーの信用な地に落ちた。はは、6,000%のローマ帝国の話しは大昔で今は違うって思うかもしれないけど、米国は1913年から100年掛けて3,000%。どっちがマシだろうか。
ちなみに米国のPennyは製造コストが1セントより高いっていうことで製造停止になったけど、これもPenny自体の価値(すなわちPennyの購買力)が大きく低下してしまったっていうことでDenariusの運命、そしてローマ帝国の運命を連想させる象徴的な2025年の出来事。
返済できないって分かってる負債に対処するため歴史的に必ず起こるのがDebasement。すなわち意図的に自国通貨の価値を下げて返済を容易にするっていう作戦。これはイコール、高いインフレなんで賃金上昇が表面インフレ率を上回らない限り一般市民には受け入れ難い。利下げその他の動きでこのテンションをどうするかのかじ取りは難しそう。ドルがBebaseって言ってもドルの為替レートは悪くなってないじゃんって思うかもしれないけど、それは他のFiat Currencyとの比較での話し。どの通貨、EUも円もFiat Currencyで同じような状況にあるんで相対的な話しなんだと思う。
米国が巨額の債務でも大丈夫だったのはドルが基軸通貨だっていう理由が大きい。所謂Exorbitant Privilegeだ。Overnightでドル以外の通貨が基軸通貨になるとは思えないけど、Debasementとは別の観点で基軸通貨を持つ国としてどうなのかな、って思えたのはロシアに対する制裁でバイデン政権がEUと一緒に$300Bのロシア中央銀行が持つドル資産を凍結してしまった事件。主にEuroclearにある資産の話しだけど、その後、EUでは凍結だけではなく実質没収(国際法上許されないってことで結局腰が引けた?)みたいな話しも出てたって理解してる。これは相当な冷却効果で、過去にも凍結は限定的にあったけど、核保有軍事大国ロシアの資産も凍結されたり没収の話しに至るっていうことは、特に反米のレッテルを張られやすい国の中央銀行として米国債やドル資産はリスキーって当然考えてドル離脱が加速するだろう。BRICsでは一部金でバックアップされたバスケット通貨構想もある。国家ですら凍結対象となるとCypherpunkが恐れる個人の資産凍結などはいとも簡単。Bitcoinがレスキューできるでしょうか。
なぜリセット?
米国や世界のリセットだけど、トランプが出てきて急にリセットしてるっていうよりも、ここ何年も掛けて蓄積されてきた支配階級のグローバリストと米国一般市民間の「Disconnect」が作因というかAgentで、その反発がトランプやMAGAとして具現化されてるってことだろう。そんなタイミングで媒体としてトランプって言う変人が存在したのは時の悪戯。トランプの好き嫌いは両極端なんで意見が割れるところだけど、100件近い刑事訴訟、その他民事訴訟、徹底したメディア中傷、その他の困難を克服して再選っていう精神力は普通ではない。
米国外の一般市民と生活を共にしてないんで肌感覚はゼロだけど、もし同様のDisconnectや不満、失望を感じている一般市民が米国外でも多いとすると、戦後80年のグローバル秩序は大きな曲がり角差し掛かってるだろう。支配階級のグローバリストは各国の一般市民の意思で成り立つ国家主権ベースではなく、権威主義的にトップダウンで世界レベルで事を進めようとするから、自国の選挙で地道に議員を選んだりしても結局何も変わんないねっていう無力感の蓄積も激しい。
僕たちは戦後のグローバル秩序しか体験したことないし、それがあたも未来永劫続くような錯覚に陥ってるかもしれないけど、歴史を見ると必ず訪れる大きなリセット。たまたまそんな時代に生きてるってことなんだろうね。
タックスの世界でもOECDのグローバルタックスなんかはその例で、自国の選挙や主権国家レベルの統治とは直接関係なく、各国市民に説明責任のない欧州の専門家が税法を書き、その規則から逸脱すると村八分にすることで各国に適用を半強制するもので、各国市民の意思が反映されているように見えない。15%のミニマム税を課すっていう政策が世界の発展にプラスかどうかって視点は置いておいて、その意思決定プロセスに対する議論が(米国外では)思ったよりも少ない点は意外だった。なんかトルーマンショーみたい。
この従来の民主主義とは異なる新しい姿のコンセンサス民主主義、すなわち支配階級にあるグローバリストが超国家的なポリシーを一般市民からは手の届かないところで合意し、各国にトップダウンでその実行を求めるタイプの民主主義(それが民主主義って言えればだけど…)で、Brexitやトランプ1.0以降に加速した感じがする。ただ「Rule-based」の秩序っていうのは、Ruleを策定する側に説明責任がないとRuleされる側の納得感が低下するっていう致命的な欠点があるけどね。
トップダウンの新しい民主主義の許容レベルは各国の国民性や国家統治のあり方、国際舞台での発言力等の違いにより凹凸があるだろう。議会制度(Congress制度、Parliament制ではないという意味)で、国民性的にもなんだかんだ言って個人のLibertyを重要視するリベタリアンが比較的多い米国では衝突必至のCollision Course。グローバルタックスでも結局衝突。G7が12月末までに合意することに合意していた(?)Side-by-sideはどうしちゃったんでしょうかって思ってたらギリギリセーフでルールが公表されたね。これを受けて米国財務長官のScott Bessentは「the historic victory in preserving US sovereignty」って反応してた。この反応からもグローバリタックスの問題はテクニカルなタックス面に加えて一般市民・有権者への説明責任を伴う主権国家ベースのRule作り、と新民主主義との確執だったことが計り知れる。まあ、Side-by-sideルール公開があんまり遅くなると議会では例の(苦笑)section 899の復活も噂されてたもんね。
グローバルタックスは法人税の世界なんで戦争や個人のLibertyの観点から比較的Benignな世界かもしれないけど、根本的なテンションは同じ。グローバリストがやり過ぎると一般市民から信頼が低下し、コロナ禍のDraconianな対処で多くの米国市民が専門家、メディア、官僚機構に失望してすっかり信頼をなくしたように、国際合意や国際機関への信用も低下してしまって結局これらの制度のいい面も台無しになり兼ねない。
2026年 (and beyond)
2025年のリセット・トレンドは反転不可で2026年も加速し、人類の歴史的に100年単位で訪れる大きなリセットの流れに身を置くことになるんだろうね。この大きな流れは良くも悪くも逆らうことはできず、国、企業、個人単位でリスク管理して対処するしかないね。関税や通商問題を考える際にも、リセット渦中でのひとつの現象として広範なトレンドっている文脈で対処していく必要がある。
この世は無常で盛者必衰。138億年っていう長~い歴史の中で僕たちが知ってる文明はたかが2~3千年、今のグローバル秩序に至ってはたった80年っていうスパンの話しなんで、一瞬の出来事に過ぎず当然未来永劫続くものじゃない。
テクノロジーやAIとかで「自分たちはローマやオランダ時代の人とは違う」っていう錯覚に陥るかもしれないけど、人間の根本的な行動パターンはたかが2000年とかでは変わらない。テクノロジーの進化で変わることがあるとすると変化のスピードが加速することだろうけど、根本的なストラクチャーは前述のローマ帝国のDebasementを見ても結局あんまり変わんないんじゃないだろうか。
リセット時には新たな勝者や敗者が現れるけど、日本としてはかじ取りを間違わずに自国の伝統、美学、そして世界でもまれに見る質の高い民度・文化を大切に温存していって欲しい。Some kind of happiness is measured out in milesだけど、HappinessのMeasureは他にもあるんで資源やお金は限りがあるっていう前提で国としてどんなHappinessを目指すのかな。
ということで慣れない話しだったけど次回からはまたタックス三昧しましょう。
Monday, December 29, 2025
DC REIT判断時のCorporation look-throughルール短命で削除
ゆく年くる年の前にチョッと時間あるんで今回はREIT関係の2025年新規則草案に関して。
FIRPTA/REIT
REITの持分は大概において(必ずしもそうじゃないんで要注意だけど)FIRPTA課税対象のUSRPIに当たるんで、外国人による持分譲渡損益は原則ECIとして申告課税対象になる。REIT持分が公認取引所で流通されてる場合には、10%超(REITやRIC以外は5%超)の持分を所有していない限りUSRPIには当たらないとかいくつか例外があるけど、REITに関しては他のUSRPIとの比較で有利な「Domestically Controlled(DC)」例外がある。すなわちDC REIT持分はUSRPIに当たらないと規定され、外国人が譲渡しても申告課税の対象にならない。この例外、正確にはUSRPHCに区分されるRICも含む「Qualified Investment Entity(QIE)」に適用があるけど、FIRPTAの話しなんで簡便的にREITって言っておく。QIEなんて言うと一般読者にしてみると「何それ?」ってなるしね。
DC REITを含むFIRPTAやREITの詳細は2022年規則草案が公表された頃に連載した「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案)」で触れてるんでそちらを参照して欲しい。
2022年DC REIT規則草案「CorporationのLook-through」
2022年も終わろうとしていた12月29日、複数の駆け込み規則のひとつとしてDC REITをカバーした規則草案(2022年規則草案)が公表された。さすがにもう新しい規則とか出ないだろうって油断してマイアミビーチでキューバンコーヒー三昧してたんで面食らったのを覚えてる。
DC REIT持分がUSRPIでないとすると、当然、どんなREITがDC REITに位置付けられるかが重要。以前も触れたけど、DC REITって言うけど、実際の判断時にはDomestically Controlledかどうかよりも「ForeignにControlされてない」っていう認定が重要。原則ルール的には過去5年間継続して外国人が直接・間接に50%未満の持分しか持っていないREITがDC REITになる。
外国人にどれだけの持分%を直接・間接に所有されているかを判断する際、2022年規則草案では「Look-throughアプローチ」を正式に定義して採択。当アプローチ下では、直接にしても間接にしても「Non-look-through主体」のみがREIT持分を所有していると取り扱われる。逆に「Look-through主体」に所有されている持分はLook-through主体の所有者が間接所有していると取り扱う。ここまでは「なるほど、それはそうだよね」って感じ。米国税務上パススルー課税に区分されるパートナーシップとかをLook-throughするのは自然な話しだ。
で、米国税務上法人課税に区分される主体、ここでは簡単にCorporationって言っておくけど、は一般的にはNon-look-throughって規定されてるんだけど、2022年規則草案では公認取引市場で流通していない(非上場って言っておくね)米国Corporationの持分25%以上を外国人が所有している場合は、そんなCorporationはLook-through主体と取り扱うと規定した。米国Corporationだから、REIT持分譲渡益を含むWorldwide所得全額に課税されるんだけど、REITがDCがどうかの判断目的ではパススルーかのように一定要件下でLook-throughしますっていうもの。CorporationをLook-throughするって一体全体どっからそんなルールが来るの?って驚愕をもって受け止められた。
2024年最終規則
2024年4月24日、規則策定権や規則の内容そのものに対する反論・疑問、また非上場でも必ずしもUpper Tierの持分所有者の特定が容易ではないっていうルール適用時の実務的な障害、その他の理由に基づく撤回要求が多く寄せられたにもかかわらず、財務省はそれらの見解には全て「Disagree」ということで、米国CorporationのLook-through主体ルールが最終化された。ただし、2022年規則草案ではLook-throughがトリガーされる外国人が所有%が25%以上だったけど、最終規則ではこれを50%以上に緩和し移行措置も規定した。このトリガー持分の引き上げをもってCorporationのLook-throughルールのScopeは「Significantly narrow」になったって財務省は胸を張ったけど、基本的なCorporationのLook-throughルールは同じ。前回のExcise TaxのFunding規定からPer Seルールを除去することで「Substantial modification」って言ってたのと似ている。納税者としては釈然としないところだったけど、後は法廷で司法府の判断を仰ぐのみ。法廷に持ち込むにはStandingが必要なので誰かがCorporationのLook-throughルールに基づき課税されるのを待つ必要があった。2024年最終規則に関しては当時「FIRPTAアップデート(DC REITのC CorporationのLook-throughルール最終化)」で詳細を説明してるんで参照して欲しい。
2025年新規則草案CorporationのLook-throughルール削除
CorporationのLook-throughルールはどれだけおかしなルールでも最終化されてしまったんで法廷で無効化されるまでは万事休すって思われてたけど、2025年にDe-Regulations志向の新政権が誕生し、他の多くの眉唾な規則と並び、改訂が期待されていた。そんな期待に応え、2025年10月21日に新たな規則草案が公表された。
最終規則公表後も引き続き納税者からCorporationのLook-throughルール撤回を求めるコメントが寄せられ続けた。適用時の実務的な困難さ、条文と不整合、米国Corporationはフルに課税主体、等のコメント全てに財務省は合意し、米国Corporationはその持分構成にかかわらず全てNon-Look-through主体とした。この新ルールの正式適用開始日は規則が最終化された日以降だけど、2024年4月25日、すなわちCorporationのLook-throughルールが最終化された日、以降の取引、さらに2024年4月25日より前に効果を持つEntity Classificationを4月25日以降に選択したケース、に新ルールの適用を認めている。
Excise TaxのFunding規定を含む他の規則もそうだけど、規則が条文とかけ離れたアクティビスト的な方向に行っていたのを普通のレベルに戻してくれてて納税者としては納得感が高い。もちろん納税者としてLook-throughしない方がありがたい。ただ、ポリシーとしてDC REIT判断時にCorporationをLook-throughするべきかどうかは立場次第で賛否両論いろいろあるだろから、もしそうしたいのであれば、憲法の観点からもExecutive Branchの行政府ではなく、立法府の議会がきちんと議論して法律を変えて実行するべきっていう観点での納得感だね。
FIRPTA/REIT
REITの持分は大概において(必ずしもそうじゃないんで要注意だけど)FIRPTA課税対象のUSRPIに当たるんで、外国人による持分譲渡損益は原則ECIとして申告課税対象になる。REIT持分が公認取引所で流通されてる場合には、10%超(REITやRIC以外は5%超)の持分を所有していない限りUSRPIには当たらないとかいくつか例外があるけど、REITに関しては他のUSRPIとの比較で有利な「Domestically Controlled(DC)」例外がある。すなわちDC REIT持分はUSRPIに当たらないと規定され、外国人が譲渡しても申告課税の対象にならない。この例外、正確にはUSRPHCに区分されるRICも含む「Qualified Investment Entity(QIE)」に適用があるけど、FIRPTAの話しなんで簡便的にREITって言っておく。QIEなんて言うと一般読者にしてみると「何それ?」ってなるしね。
DC REITを含むFIRPTAやREITの詳細は2022年規則草案が公表された頃に連載した「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案)」で触れてるんでそちらを参照して欲しい。
2022年DC REIT規則草案「CorporationのLook-through」
2022年も終わろうとしていた12月29日、複数の駆け込み規則のひとつとしてDC REITをカバーした規則草案(2022年規則草案)が公表された。さすがにもう新しい規則とか出ないだろうって油断してマイアミビーチでキューバンコーヒー三昧してたんで面食らったのを覚えてる。
DC REIT持分がUSRPIでないとすると、当然、どんなREITがDC REITに位置付けられるかが重要。以前も触れたけど、DC REITって言うけど、実際の判断時にはDomestically Controlledかどうかよりも「ForeignにControlされてない」っていう認定が重要。原則ルール的には過去5年間継続して外国人が直接・間接に50%未満の持分しか持っていないREITがDC REITになる。
外国人にどれだけの持分%を直接・間接に所有されているかを判断する際、2022年規則草案では「Look-throughアプローチ」を正式に定義して採択。当アプローチ下では、直接にしても間接にしても「Non-look-through主体」のみがREIT持分を所有していると取り扱われる。逆に「Look-through主体」に所有されている持分はLook-through主体の所有者が間接所有していると取り扱う。ここまでは「なるほど、それはそうだよね」って感じ。米国税務上パススルー課税に区分されるパートナーシップとかをLook-throughするのは自然な話しだ。
で、米国税務上法人課税に区分される主体、ここでは簡単にCorporationって言っておくけど、は一般的にはNon-look-throughって規定されてるんだけど、2022年規則草案では公認取引市場で流通していない(非上場って言っておくね)米国Corporationの持分25%以上を外国人が所有している場合は、そんなCorporationはLook-through主体と取り扱うと規定した。米国Corporationだから、REIT持分譲渡益を含むWorldwide所得全額に課税されるんだけど、REITがDCがどうかの判断目的ではパススルーかのように一定要件下でLook-throughしますっていうもの。CorporationをLook-throughするって一体全体どっからそんなルールが来るの?って驚愕をもって受け止められた。
2024年最終規則
2024年4月24日、規則策定権や規則の内容そのものに対する反論・疑問、また非上場でも必ずしもUpper Tierの持分所有者の特定が容易ではないっていうルール適用時の実務的な障害、その他の理由に基づく撤回要求が多く寄せられたにもかかわらず、財務省はそれらの見解には全て「Disagree」ということで、米国CorporationのLook-through主体ルールが最終化された。ただし、2022年規則草案ではLook-throughがトリガーされる外国人が所有%が25%以上だったけど、最終規則ではこれを50%以上に緩和し移行措置も規定した。このトリガー持分の引き上げをもってCorporationのLook-throughルールのScopeは「Significantly narrow」になったって財務省は胸を張ったけど、基本的なCorporationのLook-throughルールは同じ。前回のExcise TaxのFunding規定からPer Seルールを除去することで「Substantial modification」って言ってたのと似ている。納税者としては釈然としないところだったけど、後は法廷で司法府の判断を仰ぐのみ。法廷に持ち込むにはStandingが必要なので誰かがCorporationのLook-throughルールに基づき課税されるのを待つ必要があった。2024年最終規則に関しては当時「FIRPTAアップデート(DC REITのC CorporationのLook-throughルール最終化)」で詳細を説明してるんで参照して欲しい。
2025年新規則草案CorporationのLook-throughルール削除
CorporationのLook-throughルールはどれだけおかしなルールでも最終化されてしまったんで法廷で無効化されるまでは万事休すって思われてたけど、2025年にDe-Regulations志向の新政権が誕生し、他の多くの眉唾な規則と並び、改訂が期待されていた。そんな期待に応え、2025年10月21日に新たな規則草案が公表された。
最終規則公表後も引き続き納税者からCorporationのLook-throughルール撤回を求めるコメントが寄せられ続けた。適用時の実務的な困難さ、条文と不整合、米国Corporationはフルに課税主体、等のコメント全てに財務省は合意し、米国Corporationはその持分構成にかかわらず全てNon-Look-through主体とした。この新ルールの正式適用開始日は規則が最終化された日以降だけど、2024年4月25日、すなわちCorporationのLook-throughルールが最終化された日、以降の取引、さらに2024年4月25日より前に効果を持つEntity Classificationを4月25日以降に選択したケース、に新ルールの適用を認めている。
Excise TaxのFunding規定を含む他の規則もそうだけど、規則が条文とかけ離れたアクティビスト的な方向に行っていたのを普通のレベルに戻してくれてて納税者としては納得感が高い。もちろん納税者としてLook-throughしない方がありがたい。ただ、ポリシーとしてDC REIT判断時にCorporationをLook-throughするべきかどうかは立場次第で賛否両論いろいろあるだろから、もしそうしたいのであれば、憲法の観点からもExecutive Branchの行政府ではなく、立法府の議会がきちんと議論して法律を変えて実行するべきっていう観点での納得感だね。
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