う~ん、上院のVanceのCasting Voteに至る共和党リーダーシップ、特に上院WhipのJohn Barrasso (R-WY)による票固めも見事だったけど、上院可決後僅か2日後の7月3日にあれだけ揉めそうな下院で両院Conferenceを経由せず上院バージョンそのまま可決させたMike “Magic” Johnsonそして共和党下院WhipのTom Emmer (R-MN)の手腕は予想を上回った。もちろん両院共に彼らの背後には強力な影響力を誇るトランプが居るからだけど、「2024年11月米国選挙結果と米国税制」で僅か半年前はOne-Trackの大型法案を夏までに通すのは至難の業って思われてたけど、トランプ言う通り「One Bill」で7月4日の独立記念日に署名に漕ぎつけた。今年の7月4日からの一年は米国建国250年目に当たり、明日の署名は普段にも増してホワイトハウスがShow-Upさせることだろう。史上最年少でWhite House Press Secretaryに抜擢された才女のKaroline Leavittのプレス会見は普段でも相当テンションが高いけど、明日は最高潮に達するかもね。One Billはそれだけでなく税制以外にも米国社会に大きな影響を持つ国境警備、国防、エナジー、社会政策、等に広範な影響を与える「Big Bill」でもあり、これだけの規模の法案をこのスピードで可決に導いたのは驚異的だ。
最終的にどんな税制?
紆余曲折あったんで最終的にどんな形に収まったかもう一回7月1日の上院法案を見直す必要があるけど、例の899は入ってないからね。安心した?
個々の規定は今後掘り下げるとしてBullet的に法人税周りを超ハイレベルに触れておくと次の通り。
クロスボーダー課税
まずTCJAで一変したクロスボーダー課税は若干のTweakがあるけど大枠ストラクチャーは現状維持。TCJAではGILTIとFDIIが対で導入されたけど(前からしつこく言ってるけどOECDがやったみたいにこの2つを分離して取り扱ってはいけない。TCJAの趣旨が理解されていない証拠)、GILTI控除は50%が40%に引き下げられ(控除なんで低い方が不利)、GILTIバスケットのFTC制限が80%から90%に緩和されたんでGILTI理論税率は14%に(従来は13.125%でOBBBAの改正がなければ16.4%になるところでした。
FDII控除は37.5%から33.35%に引き下げ。結果FDIIの理論税率は14%。OBBBAの改正がなければ16.4%になるところでした。全部GILTIと一緒じゃんって思った人がいたらその通り。この2つは対で導入されてるんで当然ミラーイメージ。米国外向けビジネス(IP保有含む)を米国でも国外でも変わらない状態として、米国企業の全てを低税率CFCから行うっていうBase Erosion的な行動規範を変えさせるためのもの。Global BlendingなのはFDIIは米国で一本の計算だからミラーイメージ的に当然。「Global BlendingだからきちんとしたGlobalミニマム税には当たらない」とか「FDIIは弊害税制」とか双方をバラバラにみて「対」で考えないから頓珍漢な扱いになる。
双方共に(対なんで)みなしルーティン所得に当たる償却有形資産の10%(QBAI)が撤廃された。結果としてGILTIはCFCのTested Income全体を合算することになる。GILTIはGlobal Intangible Low-Taxed Incomeだったけど、みなしルーティン所得が撤廃されてしまったんで「Intangible Income」への課税とは言えなくなって単に「Net CFC tested income」と改名。FDIIも同様にIntangibleっていう要素がなくなったんで「Foreign-derived deduction eligible income」に改名。GILTIの方はGILTYに聞こえるんで(元々それが理由で洒落で命名したはず)Connotationが悪く改名したいって思ってた議員が居たそうだ。
次にBEATだけど、14%だのBase Erosion %が2%引き下げとか18.9%のHigh-Tax Exceptionとか全部お蔵入りになって単にBEATミニマム税率が10.5%にセコめの引き上げ。OBBBAがなかったら使用できなくなってたR&Dクレジット、Low Income Housingやエネジークレジットの80%も温存。GILTIやFDIIに倣って名称変更してBEATの代わりに「Slow Jam」になった。っていうのは冗談で内容全然変わんないんでBEATはBEAT。
Downward Attribution不適用復活
Out-of-Underプラニングに網を掛ける狭義な目的でTCJAで規定されたCFC判断時のDownward Attribution適用。実際には超Overbroadで広範に予期せぬ影響とかがあったけど、ようやく元通りCFC判断時にDownward Attributionの不適用8年ぶりに復活した。あれから8年か~。お疲れさまでしたって感じ。元々の立法趣旨を反映した「Foreign Controlled United States Shareholder」規定が新規に導入された。
取り合えずはクロスボーダー課税の大物はこんな感じでした。次回は米国内事業に関するハイライト。
Thursday, July 3, 2025
Sunday, June 29, 2025
上院法案改訂バージョン公開・上院Procedural Vote可決・G7 声明
上院Procedural Vote通過
土曜日にFinance Committeeの税法部分を含むMega-Bill上院アップデートバージョンが公開された。時を同じくしてG-7が米国にはピラー2を適用しないっていう旨の声明を出した。そして先ほど上院のProcedural Voteは51対49で通過している。このProcedural Voteっていうのは未だ交渉が続く中でのテスト投票みたいな位置づけに過ぎないけど、トランプを含む共和党リーダーシップによる党内調整の成果が上がっていることを示す。共和党上院議員の反対は2名。ここ数日のRon Johnsonとトランプの交渉結果Johnsonは賛成票を投じたけど、Thom Tillis(R-NC)とRand Paul(R-KY)が反対。大物のMedicaid問題は未だに交渉中で最終投票まで予断を許さない状況。夜を徹した審議の後、月曜日に決議って言うのが最速。トランプはThom TillisにカンカンでPrimary Challengeの気配。
上院法案改訂版では899勇退
Bessent長官の要請を受けて土曜日に公開された上院法案アップデートバージョンからは899は消えている。1月20日の大統領令、同時899下院法案提出、Mega-Billの一部として元々別法案だったSuper-BEATを合体させて登場、上院法案でも温存、米国内ではWall Streetタイプ以外からはサポートが多く米国Chamber of Commerceって日頃硬派だけど米国の主権、米国企業を域外課税から守るっていう政権・議会の気概・決意を高く評価、等の経緯でいよいよ可決前夜となり899の攻撃力が最高潮に達していた。覆いかぶさるように英国、EU、カナダ等の企業側からのプレッシャーも大きくなり耐え切れずOECDはピラー2は米国企業には適用なしに同意、G-7も同様の旨の声明を出す。イエレン長官の時は議会とコーディネーションゼロだったけど、今回の流れは行政府と議会が一枚岩で対処し、米国的には「国家主権侵害」っていう神学的に(?)許容できないGlobal Tax Deal、特にUTPR、の米国企業への適用を覆した。899は可決以前に大効果を発揮してデビュー前に勇退。
チョッと不思議なG-7声明
G-7の声明は米国財務省が主張していたSide-by-Sideアプローチを是認するっていうことだけど「US Parented Group」にピラー2適用がないって書いてあるんで、インバウンド企業の米国所得に対してはその親会社国でIIR適用があり得るんだろうか。財務省のアプローチは米国が課税する所得にピラー2は触ってはいけないっていうスタンスだったはず?
とは言え本丸は米国企業だろうから、少なくともそこにはSide-by-Sideでピラー2の適用ナシっていう点は合意済み事項。声明に記載されているその判断に至る理由は米国財務省の主張通り。すなわち意訳・要約すると「米国の制度とピラー2を分析検討した結果、米国の制度はピラー2と同格に強固で、Inclusive FrameworkによるBEPS対策のここまでの進展を守るためSide-by-Side(米国は米国ってことでピラー2には干渉されないアプローチ)がベストだという共通認識に至った…」云々って感じかな。もしそれが分析なんだったら今までの話しはなんだったの~って感じはする。
米国の制度はいつから何をもってピラー2と同格に?
米国のBase Erosion対策って1932年の元祖Anti-Deferralのsection 367(興味あったら昔のKiller B特集読んでみてね)、1962年のSub F(元祖CFC合算課税)、2017年のGILTI・BEATとか常に主権国家としてまた自国市民に説明責任がある議員たちの立法っていう範囲で先端を行ってるんでこの分析結果自体に驚きはないけど、でもこれらの「同格に強固な」米国の制度はピラー2議論開始時点で既に存在してた。この点に関して「上院法案をもってして同格に至った(?) 」とも取れる興味深い文言が合意声明に含まれてるけど、GILTIやFDIIからQBAI(みなしルーティン所得)の適用が消えた点やGILTIバスケットのFTC枠計算時に金利を配賦しなくても良くなる、みたいな調整で急に同格になったんだろうか。増してや未だ法案の状態で数週間前までは同格に強固じゃなかったけど上院法案で立派に成長したっていうニュアンスだとしたらこれもチョッと不思議だ。この部分は法案が可決したらもう少し考えてみたい。
結局のところピラー2の目的は?
そこで感じざるを得ないのは、以前から何回かポスティングで触れたと思うけど、元々ピラー2って目的が必ずしも明確じゃなくて、そのため強固なPrinciple・規律に裏付けされたルールじゃないっていう点がルールが結構派手に二転三転する根本的な問題っていう点。ピラー2で何を守ろうとしてるのかが分からないんでそのベストな手段を定義するのが難しい。今回簡単に米国不適用に至った終焉もそれを象徴してる。何年か前のポスティングだったと思うけど、この手の国際合意系の話しは結局のところ大国のパワープレー(中国に至っては言葉ではサポートを繰り返しながら実質無視に近かった?)っていう点に触れたけど、最後までそんな実態がFull Displayだったね。ただPragmaticな解決としては逆にこれしかないだろうから合意判断はポリティカルには合理的だし高い評価に値する。
さらに考えてしまうのはPEやALPの守護神だったOECDがUTPRがExtraterritorialじゃないとか条約に準拠しているとか本当に信じてたとは想像し難く、いくらBEPS 2.0でTaxing Rightsを再配分するつもりだったとしても親会社の所得を形式的に子会社の手で課税するって言うだけで急に所得のBenefical Ownerが子会社になる訳ではないし、そんな所得移転が可能だったら実態基準(Substance over form)とかの概念を自ら否定してることになる。これらはクロスボーダー課税にDeepに精通してなくても簡単に理解できる矛盾で、OECDはクロスボーダー課税のExpertだろうから実はいざとなったら法的にディフェンスは難しいっていう認識が根底にあったとしてもおかしくない。そうなるとUTPRは国際課税制度の強固な概念に裏付けされた規則ではなく、国際合意として「赤信号みんなで渡れば…」(一時流行ったね、これ)みたいなアプローチになってた感じもあったよね。
チョッと意地悪な見方でピラー2の「目的」変遷をおさらいすると、EU憲章の関係でEU内で強固なCFC課税導入が難しく、アイルランドとかハンガリーみたいな低税率国が存在していたEUがOECDと「Global Tax Deal」をマスカレードして自己都合でミニマム税導入を希望(これはもちろん公にそう言って登場してきた訳じゃないんで推測の域は出ない)。当初、米国があんまり相手にしなくて一旦暗礁に乗り上げてたところに2021年にバイデン政権が発足して、米国法人税28%に引き上げを実行するに当り他国との競争が不利にならないようイエレン長官がOECDに「21%!」のピラー2ミニマム税を提案。これも単純な自己都合。交渉は息を吹き替えすけど、米国では結局議会の同意を得られず頓挫…。迷惑~。
国際合意に付き物のこんな感じのパワープレーで事は進んでいき、知らない間にUndertaxed Payment Rule(元祖Undertaxed Payment Ruleだったら米国でも未だ議論の余地はあっただろう)が同じ頭文字だけど別物のUTPRにすり替わってたり不透明なルール策定があったりしたけど、その間、対外的なキャッチフレーズ的にピラー2の目的は「Race to the bottom終止符(Tax competition禁止)」(結局別の形のCompetitonが出現)とか、「Level Playing Field(最後まで誰と誰のFieldの話し?っていうのが不明確)」とか、これらと似てるOverarchingなテーマ「Fair Share」(Fairnessは見る者で尺度が異なるんで基準が良く分からず単に美徳にアピール?)とかもあった。
主目的っていう観点から考えるとピラー2は「BEPS」っていうフレームワークでの話しだから当然Base ErosionやProfit Shiftingを取り締まるのが主たる目的なはず。でも不思議と、特に後年、ピラー2のこの視点・目的はあんまり強調されなくなってたって言うかルールが対応困難なほど複雑化していく中で機械的な話しが主になり「木を見て森が見えなくなっていった」気がする。「クレジットは還付可能だったら云々とか、現金譲渡はOKだけど20年繰越はNGとか…」。Base Erosion取り締まるんだったら「真犯人」の米国を取り締まらないと話しにならないと思うけど、土曜日のG7声明では「米国独自のシステムは十分にピラー2に同格」で「Side-by-SideでBEPSの目的達成」っていうこと。え~米国に適用なしのグローバルのBase Erosion対策???。っていうことはこの目的は結局のところ当初から2次的だったのかもね。
まあEU的にはEU内で導入できたからそれはそれでその部分の目的達成っていうことなんだろうか。米国企業は今回の合意で凄いアドバンテージを得たんで他国は不利になるんではとか、大げさな話しでは「米国企業にInversionするのがいい(苦笑)」みたいな話し(プラニング?)が早くもチラホラ聞かれるけど、米国のBase Erosion対策が同格だったら心配ないのでは?
OECD合意やG7声明は誰に適用?
G7声明等で更に不思議に思ったのは7か国に関しては当事者でCongress制度の米国以外のメンバーはParliamentary制度だろうからそこで合意すれば法的にそうなるって決まってるのかもしれないけど、Inclusive Frameworkとかどうしちゃったんだろうか。140(だっけ?)国のコンセンサスを得てできた制度だとしたら、この声明を寝耳に水的に聞いた多くの国はどうしたらいいんだろうか。EUだけ見ても27か国のほとんどはG7じゃないんで899なくなったんで企業はうれしいとしても、G7 以外の各国政府は急に「米国は対象じゃないことにしたんでよろしく」って言われてチョッと釈然としないものもあるのでは?
釈然としない位だったらいいかもしれないけど、本当に全員従うんだろうか。「やっぱり27か国の意見調整ができなかったんで米国にも適用せざるを得ない」みたいな話しって可能性ないのかな。その頃は米国に899はない。となると伝家の宝刀891?いきなりその日から付加税20%で「これだったら899が恋しい~」とか言っても後の祭り。でも、このタイミングで899撤回して、それで合意実行しない国が出てきたらそれらの国が合意時にコンセンサスを表明していようがしてなかろうが今度こそ容赦ない感じはあるよね。891は891で条約との関係とかテクニカルには難しいチャレンジが多いけどね。
DSTは?
米国が主権国家として一番許せなかった敵はUTPRだから、合意が実行される前提だと899の導入目的は達成かもしれないけど、ピラー2との比較でターゲットとしてはジュニアなDST対処はどうなっちゃうんだろうか。数日前の報道ではDSTも撤回合意があり得るような報道もあったけど、間が悪いことに899撤回と同時にカナダはDST敢行発表。トランプはカンカンでBessent長官は301(出た~!)で通商対抗も辞さないって。891の話しは未だ聞いてないけど通商だけなのかな。まあDSTってチョッと関税チックだからそれでいいのかもね。
New-New-BEAT
Super-BEATがなくなってNew-BEATだけで安心って思ってたらまたしても逆転劇でNew-New-BEAT登場(Micheal LewisのNew-New Thing思い出すね。シリコンバレーのJim Clarkの話し(Netscape!))。上院法案読んでてビックリだったけど、BEAT税率は14から下がって10.5%なのはいいとして、後はマイナーなテクニカル修正ばかり。え~「High-Tax Exception」が見当たらない。何コレ~。ってことでまた変わるかもしれないから週末は更なる法案修正に注目しましょう。
土曜日にFinance Committeeの税法部分を含むMega-Bill上院アップデートバージョンが公開された。時を同じくしてG-7が米国にはピラー2を適用しないっていう旨の声明を出した。そして先ほど上院のProcedural Voteは51対49で通過している。このProcedural Voteっていうのは未だ交渉が続く中でのテスト投票みたいな位置づけに過ぎないけど、トランプを含む共和党リーダーシップによる党内調整の成果が上がっていることを示す。共和党上院議員の反対は2名。ここ数日のRon Johnsonとトランプの交渉結果Johnsonは賛成票を投じたけど、Thom Tillis(R-NC)とRand Paul(R-KY)が反対。大物のMedicaid問題は未だに交渉中で最終投票まで予断を許さない状況。夜を徹した審議の後、月曜日に決議って言うのが最速。トランプはThom TillisにカンカンでPrimary Challengeの気配。
上院法案改訂版では899勇退
Bessent長官の要請を受けて土曜日に公開された上院法案アップデートバージョンからは899は消えている。1月20日の大統領令、同時899下院法案提出、Mega-Billの一部として元々別法案だったSuper-BEATを合体させて登場、上院法案でも温存、米国内ではWall Streetタイプ以外からはサポートが多く米国Chamber of Commerceって日頃硬派だけど米国の主権、米国企業を域外課税から守るっていう政権・議会の気概・決意を高く評価、等の経緯でいよいよ可決前夜となり899の攻撃力が最高潮に達していた。覆いかぶさるように英国、EU、カナダ等の企業側からのプレッシャーも大きくなり耐え切れずOECDはピラー2は米国企業には適用なしに同意、G-7も同様の旨の声明を出す。イエレン長官の時は議会とコーディネーションゼロだったけど、今回の流れは行政府と議会が一枚岩で対処し、米国的には「国家主権侵害」っていう神学的に(?)許容できないGlobal Tax Deal、特にUTPR、の米国企業への適用を覆した。899は可決以前に大効果を発揮してデビュー前に勇退。
チョッと不思議なG-7声明
G-7の声明は米国財務省が主張していたSide-by-Sideアプローチを是認するっていうことだけど「US Parented Group」にピラー2適用がないって書いてあるんで、インバウンド企業の米国所得に対してはその親会社国でIIR適用があり得るんだろうか。財務省のアプローチは米国が課税する所得にピラー2は触ってはいけないっていうスタンスだったはず?
とは言え本丸は米国企業だろうから、少なくともそこにはSide-by-Sideでピラー2の適用ナシっていう点は合意済み事項。声明に記載されているその判断に至る理由は米国財務省の主張通り。すなわち意訳・要約すると「米国の制度とピラー2を分析検討した結果、米国の制度はピラー2と同格に強固で、Inclusive FrameworkによるBEPS対策のここまでの進展を守るためSide-by-Side(米国は米国ってことでピラー2には干渉されないアプローチ)がベストだという共通認識に至った…」云々って感じかな。もしそれが分析なんだったら今までの話しはなんだったの~って感じはする。
米国の制度はいつから何をもってピラー2と同格に?
米国のBase Erosion対策って1932年の元祖Anti-Deferralのsection 367(興味あったら昔のKiller B特集読んでみてね)、1962年のSub F(元祖CFC合算課税)、2017年のGILTI・BEATとか常に主権国家としてまた自国市民に説明責任がある議員たちの立法っていう範囲で先端を行ってるんでこの分析結果自体に驚きはないけど、でもこれらの「同格に強固な」米国の制度はピラー2議論開始時点で既に存在してた。この点に関して「上院法案をもってして同格に至った(?) 」とも取れる興味深い文言が合意声明に含まれてるけど、GILTIやFDIIからQBAI(みなしルーティン所得)の適用が消えた点やGILTIバスケットのFTC枠計算時に金利を配賦しなくても良くなる、みたいな調整で急に同格になったんだろうか。増してや未だ法案の状態で数週間前までは同格に強固じゃなかったけど上院法案で立派に成長したっていうニュアンスだとしたらこれもチョッと不思議だ。この部分は法案が可決したらもう少し考えてみたい。
結局のところピラー2の目的は?
そこで感じざるを得ないのは、以前から何回かポスティングで触れたと思うけど、元々ピラー2って目的が必ずしも明確じゃなくて、そのため強固なPrinciple・規律に裏付けされたルールじゃないっていう点がルールが結構派手に二転三転する根本的な問題っていう点。ピラー2で何を守ろうとしてるのかが分からないんでそのベストな手段を定義するのが難しい。今回簡単に米国不適用に至った終焉もそれを象徴してる。何年か前のポスティングだったと思うけど、この手の国際合意系の話しは結局のところ大国のパワープレー(中国に至っては言葉ではサポートを繰り返しながら実質無視に近かった?)っていう点に触れたけど、最後までそんな実態がFull Displayだったね。ただPragmaticな解決としては逆にこれしかないだろうから合意判断はポリティカルには合理的だし高い評価に値する。
さらに考えてしまうのはPEやALPの守護神だったOECDがUTPRがExtraterritorialじゃないとか条約に準拠しているとか本当に信じてたとは想像し難く、いくらBEPS 2.0でTaxing Rightsを再配分するつもりだったとしても親会社の所得を形式的に子会社の手で課税するって言うだけで急に所得のBenefical Ownerが子会社になる訳ではないし、そんな所得移転が可能だったら実態基準(Substance over form)とかの概念を自ら否定してることになる。これらはクロスボーダー課税にDeepに精通してなくても簡単に理解できる矛盾で、OECDはクロスボーダー課税のExpertだろうから実はいざとなったら法的にディフェンスは難しいっていう認識が根底にあったとしてもおかしくない。そうなるとUTPRは国際課税制度の強固な概念に裏付けされた規則ではなく、国際合意として「赤信号みんなで渡れば…」(一時流行ったね、これ)みたいなアプローチになってた感じもあったよね。
チョッと意地悪な見方でピラー2の「目的」変遷をおさらいすると、EU憲章の関係でEU内で強固なCFC課税導入が難しく、アイルランドとかハンガリーみたいな低税率国が存在していたEUがOECDと「Global Tax Deal」をマスカレードして自己都合でミニマム税導入を希望(これはもちろん公にそう言って登場してきた訳じゃないんで推測の域は出ない)。当初、米国があんまり相手にしなくて一旦暗礁に乗り上げてたところに2021年にバイデン政権が発足して、米国法人税28%に引き上げを実行するに当り他国との競争が不利にならないようイエレン長官がOECDに「21%!」のピラー2ミニマム税を提案。これも単純な自己都合。交渉は息を吹き替えすけど、米国では結局議会の同意を得られず頓挫…。迷惑~。
国際合意に付き物のこんな感じのパワープレーで事は進んでいき、知らない間にUndertaxed Payment Rule(元祖Undertaxed Payment Ruleだったら米国でも未だ議論の余地はあっただろう)が同じ頭文字だけど別物のUTPRにすり替わってたり不透明なルール策定があったりしたけど、その間、対外的なキャッチフレーズ的にピラー2の目的は「Race to the bottom終止符(Tax competition禁止)」(結局別の形のCompetitonが出現)とか、「Level Playing Field(最後まで誰と誰のFieldの話し?っていうのが不明確)」とか、これらと似てるOverarchingなテーマ「Fair Share」(Fairnessは見る者で尺度が異なるんで基準が良く分からず単に美徳にアピール?)とかもあった。
主目的っていう観点から考えるとピラー2は「BEPS」っていうフレームワークでの話しだから当然Base ErosionやProfit Shiftingを取り締まるのが主たる目的なはず。でも不思議と、特に後年、ピラー2のこの視点・目的はあんまり強調されなくなってたって言うかルールが対応困難なほど複雑化していく中で機械的な話しが主になり「木を見て森が見えなくなっていった」気がする。「クレジットは還付可能だったら云々とか、現金譲渡はOKだけど20年繰越はNGとか…」。Base Erosion取り締まるんだったら「真犯人」の米国を取り締まらないと話しにならないと思うけど、土曜日のG7声明では「米国独自のシステムは十分にピラー2に同格」で「Side-by-SideでBEPSの目的達成」っていうこと。え~米国に適用なしのグローバルのBase Erosion対策???。っていうことはこの目的は結局のところ当初から2次的だったのかもね。
まあEU的にはEU内で導入できたからそれはそれでその部分の目的達成っていうことなんだろうか。米国企業は今回の合意で凄いアドバンテージを得たんで他国は不利になるんではとか、大げさな話しでは「米国企業にInversionするのがいい(苦笑)」みたいな話し(プラニング?)が早くもチラホラ聞かれるけど、米国のBase Erosion対策が同格だったら心配ないのでは?
OECD合意やG7声明は誰に適用?
G7声明等で更に不思議に思ったのは7か国に関しては当事者でCongress制度の米国以外のメンバーはParliamentary制度だろうからそこで合意すれば法的にそうなるって決まってるのかもしれないけど、Inclusive Frameworkとかどうしちゃったんだろうか。140(だっけ?)国のコンセンサスを得てできた制度だとしたら、この声明を寝耳に水的に聞いた多くの国はどうしたらいいんだろうか。EUだけ見ても27か国のほとんどはG7じゃないんで899なくなったんで企業はうれしいとしても、G7 以外の各国政府は急に「米国は対象じゃないことにしたんでよろしく」って言われてチョッと釈然としないものもあるのでは?
釈然としない位だったらいいかもしれないけど、本当に全員従うんだろうか。「やっぱり27か国の意見調整ができなかったんで米国にも適用せざるを得ない」みたいな話しって可能性ないのかな。その頃は米国に899はない。となると伝家の宝刀891?いきなりその日から付加税20%で「これだったら899が恋しい~」とか言っても後の祭り。でも、このタイミングで899撤回して、それで合意実行しない国が出てきたらそれらの国が合意時にコンセンサスを表明していようがしてなかろうが今度こそ容赦ない感じはあるよね。891は891で条約との関係とかテクニカルには難しいチャレンジが多いけどね。
DSTは?
米国が主権国家として一番許せなかった敵はUTPRだから、合意が実行される前提だと899の導入目的は達成かもしれないけど、ピラー2との比較でターゲットとしてはジュニアなDST対処はどうなっちゃうんだろうか。数日前の報道ではDSTも撤回合意があり得るような報道もあったけど、間が悪いことに899撤回と同時にカナダはDST敢行発表。トランプはカンカンでBessent長官は301(出た~!)で通商対抗も辞さないって。891の話しは未だ聞いてないけど通商だけなのかな。まあDSTってチョッと関税チックだからそれでいいのかもね。
New-New-BEAT
Super-BEATがなくなってNew-BEATだけで安心って思ってたらまたしても逆転劇でNew-New-BEAT登場(Micheal LewisのNew-New Thing思い出すね。シリコンバレーのJim Clarkの話し(Netscape!))。上院法案読んでてビックリだったけど、BEAT税率は14から下がって10.5%なのはいいとして、後はマイナーなテクニカル修正ばかり。え~「High-Tax Exception」が見当たらない。何コレ~。ってことでまた変わるかもしれないから週末は更なる法案修正に注目しましょう。
Thursday, June 26, 2025
「OECDピラー2は米国に不適用」最終合意・目標達成で899はお役御免?
昨日、財務省幹部がOECDおよび主要各国が米国の主張を聞き入れてGlobal Tax Deal米国不適用に合意するだろうっていう報道に関して触れたところだけど、さっき財務長官のScott BessentがX(昔のTwitter)で正式の合意に至ったコメントを公表した。昨日のポスティングで言うところの「Bombshell」進展。
Xのコメントによると「OECDのピラー2は米国企業には適用されない最終合意に至った。今後数週間から数か月掛けてOEDC-G20 IFと協力して当合意を実施することになる。このような歴史的な合意を実現した各国との協働・コラボに感謝する」とのこと。Michael FaulkenderやRebecca Bauchの主張から想像するに米国企業だけでなく、米国が課税対象とする所得にはピラー2の適用はあってはならないっていうのが米国のポジションだったし、Scott BessentのポストでもUTPRではなくピラー2全体が米国には適用がないと明言してるんで、UTPRばかりでなく外国法人の米国子会社にIIRの適用も認められない(通常のCFC課税はOK)ってことだろう。QDMTTは各国の勝手って考えられるけど、OECDが先導しているQDMTTが米国GILTIより優先っていうのは今後は米国と各国の交渉になる可能性がある。
更にScott Bessentは別ポストで「数か月におよぶ他国との協議の結果、米国の権利を守るためのG7共同声明を発表する。トランプ大統領が1月20日に就任と同時に発令した2つのExecutive OrdersはOECDのGlobal Tax Dealから米国の国家主権を守るよう財務省に指示したことが起点となり当合意の道を開いた。大統領のリーダーシップにより米国市民に吉報が届いた」としている。
Section 899法案は?
Section 899法案に関しては「当展開により審議中のMega-Billからsection 899を撤回するよう下院・上院に提言した。G7との当合意はグローバル経済に確実性・安定性を提供し、米国の成長・投資等を更に強化する。このような合意を可能にした(強要した?)section 899の審議にかかわる下院Ways and MeansのJason Smith委員長および上院Finance CommitteeのMike Crapo委員長の多大な努力に敬意を表したい」ということ。
現時点で下院・上院の反応はないけど、上院はByrd Bath最終フェーズでProcedural Voteが差し迫る中、Byrd審判のParliamentarianに言われていろいろな修正を入れているんでもしかしたら899撤回、または内容がソフトタッチに文言修正される可能性はある。今のところScott BessentからDSTにかかわるコメントはないけど、プレスではこっちも合意間近っていう報道もあったんで何かあるかもね。
ただ、上院法案で付加税%がUTPRだけに適用されていた点からも分かる通り、国家主権的に一番許せないと感じられていたのはUTPRだから大概において目的達成ではあるだろう。DSTの取り扱いが不明確な場合や今後も変な税法が出てこないとも限らないんでsection 891が90年間Codeに居座ってるようにsection 899も法律として残る可能性はあるけど、適用がなければそれはそれで自由にどうぞって感じだね。OECDもモデル条約やBEPS 1.0くらいまではよかったかもしれないけど、ピラー2とかどう考えてもExtraterritorialでチョッとやり過ぎだったんじゃないかな。
っていうことで取り合えずNew-BEATは触れたし、Super-BEATは深堀する前にMootな感じ。これで今晩は少し睡眠とってその後地道に上院・両院のMega-Bill動向大枠にフォーカスします!
Xのコメントによると「OECDのピラー2は米国企業には適用されない最終合意に至った。今後数週間から数か月掛けてOEDC-G20 IFと協力して当合意を実施することになる。このような歴史的な合意を実現した各国との協働・コラボに感謝する」とのこと。Michael FaulkenderやRebecca Bauchの主張から想像するに米国企業だけでなく、米国が課税対象とする所得にはピラー2の適用はあってはならないっていうのが米国のポジションだったし、Scott BessentのポストでもUTPRではなくピラー2全体が米国には適用がないと明言してるんで、UTPRばかりでなく外国法人の米国子会社にIIRの適用も認められない(通常のCFC課税はOK)ってことだろう。QDMTTは各国の勝手って考えられるけど、OECDが先導しているQDMTTが米国GILTIより優先っていうのは今後は米国と各国の交渉になる可能性がある。
更にScott Bessentは別ポストで「数か月におよぶ他国との協議の結果、米国の権利を守るためのG7共同声明を発表する。トランプ大統領が1月20日に就任と同時に発令した2つのExecutive OrdersはOECDのGlobal Tax Dealから米国の国家主権を守るよう財務省に指示したことが起点となり当合意の道を開いた。大統領のリーダーシップにより米国市民に吉報が届いた」としている。
Section 899法案は?
Section 899法案に関しては「当展開により審議中のMega-Billからsection 899を撤回するよう下院・上院に提言した。G7との当合意はグローバル経済に確実性・安定性を提供し、米国の成長・投資等を更に強化する。このような合意を可能にした(強要した?)section 899の審議にかかわる下院Ways and MeansのJason Smith委員長および上院Finance CommitteeのMike Crapo委員長の多大な努力に敬意を表したい」ということ。
現時点で下院・上院の反応はないけど、上院はByrd Bath最終フェーズでProcedural Voteが差し迫る中、Byrd審判のParliamentarianに言われていろいろな修正を入れているんでもしかしたら899撤回、または内容がソフトタッチに文言修正される可能性はある。今のところScott BessentからDSTにかかわるコメントはないけど、プレスではこっちも合意間近っていう報道もあったんで何かあるかもね。
ただ、上院法案で付加税%がUTPRだけに適用されていた点からも分かる通り、国家主権的に一番許せないと感じられていたのはUTPRだから大概において目的達成ではあるだろう。DSTの取り扱いが不明確な場合や今後も変な税法が出てこないとも限らないんでsection 891が90年間Codeに居座ってるようにsection 899も法律として残る可能性はあるけど、適用がなければそれはそれで自由にどうぞって感じだね。OECDもモデル条約やBEPS 1.0くらいまではよかったかもしれないけど、ピラー2とかどう考えてもExtraterritorialでチョッとやり過ぎだったんじゃないかな。
っていうことで取り合えずNew-BEATは触れたし、Super-BEATは深堀する前にMootな感じ。これで今晩は少し睡眠とってその後地道に上院・両院のMega-Bill動向大枠にフォーカスします!
Wednesday, June 25, 2025
OECD米国の要請聞き入れ準備?
前回のポスティングで触れたBBBを積んだB2 Bomberが太平洋方面に発射したっていうのはオトリで実は本当のB2はその名の通りStealthに逆方向の東に向かっていた。往復30時間空で給油しながらイラン山奥に爆弾落として見つからずに返還。イラン山奥の核施設攻撃ってTom CruseのTop Gun 2の話しそのもの。Top Gun 2の撮影は米国軍が特別に相当な期間に亘り指導や協力したって話しで、ジェット(映画ではB-2 Bomberじゃなかったよね)に撮影用のEquipment積んだり相当Realっていうことだったけど、まさかストーリーそのものがRealになるとは…。しかも映画と異なり敢行されたのは新月に近い闇の中だったっていうことだから凄まじい作戦。まさにOperation Midnight Hammer。作戦完了までリークがゼロだったのも驚き。
NYCではSocialistの候補が民主党Primaryで市長候補に選ばれた。対戦相手の元NY州知事Cuomoに対するRebukeになるけど、要は一般市民のCuomoのようなPolitical Classに対する不満・不信感の表れって感じがする。NYC民主党市長候補は超Leftでトランプ政権とは真逆だけど、Establishmentに対する不信感っていう部分はなんか似てるよね。まだGeneral Electionで決まった訳じゃないけど、既にフロリダやテキサスに引っ越す企業や人がまたしても増えるのではって言われている。
で、話しは本題に入るけど、899の可決が濃厚になりUKやEuroのビジネス界が「テクニカルな話しは何でもいいから899の適用がないような制度に変えること」っていう要請が強まってる点は前々回触れた。企業だけでなく米国財務省からも強い要請があり、またDe-fundリスクの影響もあってなのか分からないけど、OECDは米国の言う通りにするっていう流れになっているって財務副長官Michael Faulkenderのインタビューでコメントしたという報道。内容は分からないけど財務省の要請は米国の所得にUTPRどころかピラー2の適用はしないことっていうものだったからOECDがそれを正式にルール化するっていうことなんだろうか。そして各国が追従?また欧州各国はDSTも撤回するっていう噂も同時に報道されている。近日中にBombshell(?)発表があるかもね。その場合899が仮に可決されても適用対象がない状況になるかも。さらに言えばOECDやDST国が撤回を確約する場合には899自体不要論も出てくるかも。まあ899あっても適用なければ実害はないし、将来変な税制が出てこないとも限らないんで法律として持っておくのは米国的にはダウンサイドはないしWall Streetタイプの懸念も当面ない。Mega-Bill上院審議前夜に凄い展開。財務省も負けずにStealthだね。
NYCではSocialistの候補が民主党Primaryで市長候補に選ばれた。対戦相手の元NY州知事Cuomoに対するRebukeになるけど、要は一般市民のCuomoのようなPolitical Classに対する不満・不信感の表れって感じがする。NYC民主党市長候補は超Leftでトランプ政権とは真逆だけど、Establishmentに対する不信感っていう部分はなんか似てるよね。まだGeneral Electionで決まった訳じゃないけど、既にフロリダやテキサスに引っ越す企業や人がまたしても増えるのではって言われている。
で、話しは本題に入るけど、899の可決が濃厚になりUKやEuroのビジネス界が「テクニカルな話しは何でもいいから899の適用がないような制度に変えること」っていう要請が強まってる点は前々回触れた。企業だけでなく米国財務省からも強い要請があり、またDe-fundリスクの影響もあってなのか分からないけど、OECDは米国の言う通りにするっていう流れになっているって財務副長官Michael Faulkenderのインタビューでコメントしたという報道。内容は分からないけど財務省の要請は米国の所得にUTPRどころかピラー2の適用はしないことっていうものだったからOECDがそれを正式にルール化するっていうことなんだろうか。そして各国が追従?また欧州各国はDSTも撤回するっていう噂も同時に報道されている。近日中にBombshell(?)発表があるかもね。その場合899が仮に可決されても適用対象がない状況になるかも。さらに言えばOECDやDST国が撤回を確約する場合には899自体不要論も出てくるかも。まあ899あっても適用なければ実害はないし、将来変な税制が出てこないとも限らないんで法律として持っておくのは米国的にはダウンサイドはないしWall Streetタイプの懸念も当面ない。Mega-Bill上院審議前夜に凄い展開。財務省も負けずにStealthだね。
Saturday, June 21, 2025
上院法案「New」BEATと「Super」 BEAT (2)/891も再浮上
Mega-Billは広範囲な分野を全て取り込んだ1‐Track法案 としては1月当初に予想されてたよりも相当早いスピードでここまで漕ぎつきた。このスピード達成の背景・チャレンジ、下院と上院のインセンティブの差異その他、選挙結果が判明した去年の11月直後に「2024年11月米国選挙結果と米国税制 (3) 「予算調整法2回どう使い分ける?(2)」およびその前の2回のポスティングで詳細に触れてるんで議会動向を理解するためぜひ復習(?)しておいて欲しい。
ちなみにもう一つのBBBは世界中のBloggerとかが米国の軍資材の移動を刻々と追って多くのレポートがあるけど、BBBを搭載しているB2 BomberがMissouriの基地から太平洋経由で移動を開始するっていう話し。実際にFardowを攻撃するかどうかは未定とのこと。B2 Bomberってレーダーに感知されないエイみたいな形した「Stealth」爆撃機のはずでどこに居るか分かっちゃいけないはずなんだけどどうやって分かるんだろうね。ちなみにMissouriに格納されているのはStealthなんで空調が良く効いた大きなハンガーに待機してる必要があるからなんだって。
う~ん、あんまりエスカレートさせたり米国が関与すると中国やロシアとかも黙ってないだろうし、バイデン政権下で不法に米国に入ってきた1,000万人の中にはイランの反米グループが含まれてても分かんないって話しで米国、特にNYC、はテロに巻き込まれるリスク大っていうことで地下鉄に乗るのを控える人とかが出てきて身近な生活にも影響が出てきてる。夏の間はSouth DakotaのBlack Hillsにでも疎開してStarlinkでInternet Connectionして過ごす?
Section 891も再浮上
一点上院法案のsection 899を語る際に下院法案との比較で特筆に値いする点にsection 891の再浮上がある。Section 891に関しては1月20日政権発足と同時に発令された大統領令で触れられてたんで2月の「「Global Tax Deal」対抗・報復措置」で簡単に内容を説明してるからそちらもぜひ参照して欲しい。
この期に及んでsection 891の議論が息を吹き返してるのは上院法案section 899にsection 891とのコーディネーション規定が盛り込まれてるのがひとつの理由。この部分は後日、独自のポスティングでカバーしたいけど、メッセージとしては既に(90年も…)法律として存在するsection 891は仮にsection 899がなくても独立して、しかも議会が何もしないでも大統領の裁量でトリガーする用意があるってことだろう。Section 891はそれはそれで適用には条約との関係を含むテクニカルな問題・チャレンジはあるとしてもBack-Stop的には怖い。
「上院はsection 899の適用1年延長とか付加税CAPを15%にしたりしてくれて優しいね」的なSweet Dreamsを見てる外国企業がいるとしたらその観測は甘い。下院法案の付加税・Super-BEATの使用にお墨付きを与えた上で適用を現実的に調整し、更にsection 891の適用も辞さないっていう構成はむしろ冷徹(?)で怖い気がする。Sweat dreams are made of this(Eurythmics!)だね。人類の本能的なDesireやHappiness。最近の世の中みてると昔のPop Songsの歌詞って結構言い当ててるのが多いなっていう発見が多い。多分最近の曲もいい歌詞あるんだろうけど、残念ながら聴く量が少ないんで個人的な馴染みが少なく理解が追い付いてないです。昔の歌詞がいい当ててるって、つまり人は変わんないね~ってことだよね。
Global Tax Dealで各国の選挙とか民意と直接関係なく世界中の税制をUniversalにRule、そして逆らう国の所得は親会社の所得でも子会社レベルで懲罰課税(UTPR!)っていうのはTears for Fearsの「Everybody Wants to Rule the World」の域かもね(大げさ?)。でもこれからの世の中、特に各国市民個人のチョイスや自由を真剣に考える場合、たかが(されど?)タックスくらいの世界で終わればいいけど、権力っていうのはそのNatureから必ず(英語で言うところの)1インチ許すと1マイル譲歩することになるんで、次々とドミノ式に権力が拡大される(これは歴史が証明している人間のサガと言え、個人レベルで自己中心的かどうかっていう話しを超えた単純な現実?)。そうなると主権国家単位の選挙とか民意は余り意味がなくなり、グローバルリーダークラスがトップダウンでグローバルレベルでポリシーやルールを決めることになる。この流れは特に2016年以降Brexitやトランプ1.0を受けて顕著になったコンセンサスベースの統治アプローチで、従来の民主主義(基本的に一般Peopleの民意ベース、いわばPopulism?)と異なるもの。どっちが長期的に世界のためにいいかは個人的には分からないしグローバルリーダーには各分野のExpertが多いだろうから各々のアプローチにプロ・コンがあると思うけど、この点がまさしく2024年の米国選挙のファンダメンタルな争点で、少なくとも2024年の段階では一般PeopleはPopulism的にMAGAをサポートした結果になっている。
なぜこの点を繰り返し書くかって言うと、米国のこのマクロ背景が分からないと、米国が(政権発足初日に)Global Tax Dealに強硬な反対表明、VPバンスによる2月のMunich Security Conferenceにおける演説、イロンマスクが巨額の私財を投じたX(元ツイッター)買収、とかの一連の流れが直観的にコネクトしないんじゃないかなって思われる点。特に米国外からレガシーメディアを通じて米国を見てるとあんまり伝ってないかなって思うことが多い。ポリサイは僕の専門外なんで読者のみなさんには他のソースで多様な視点を取り入れて各々で考えて欲しいけど、米国の生活を通じた肌感覚ベースの観測。今後の動向を観測したり米国に891や899系のアプローチする際、少なくとも米国の反発はピラー2のテクニカルな問題以上っていう点は理解しておく必要がある。
Section 891に関しては、昨日、Council on Foreign RelationsっていうイベントでMichael Faulkender財務副長官が「(審議中の)899ばかりでなく891の適用可能性」も示唆した上「891を使うか899を使うかはさておき、米国税法(今回の税制改正以前のSub F、GILTI、BEAT等)のBase Erosion対策はピラー2と同様な強固水準にある(したがってこれ以上、米国所得にピラー2を適用は不要)っていう認識をOECDが持つ必要がある点は明確に伝えている」と発言したと報道されている。敢えてSection 891に言及しているのはタイミングがタイミングだけに上院法案と行政府のコーディネート的に興味深いよね。
上院法案New-BEAT
で、Section 899上院バージョンの付加税・Super-BEATっていう2つの対抗策のうち、一旦付加税はまあまあカバーしたつもり。とは言えsection 899とFIRPTA源泉とかはかなり複雑だから一旦落ち着いたら(いつ?)更なる詳細に触れるね。これは元々FIRPTA(Substantiveな課税規定)およびFIRPTA源泉規則(徴収メカニズム)が込み入ってるところに、更に複雑なsection 899をOverlay(「上塗り」とでも訳す?)するデザインなので仕方がない。
Overlayって言えばsection 899のもう一方の対抗策に当たるSuper-BEATも通常BEATのOverlayだけど、下院法案時点では通常BEATは2025年までの現状BEATと同じだったんでOverlayによる差異を話せばそれで済んだところ、上院法案では通常BEATもNew-BEATに生まれ変わったんでまずはそちらを良く理解しないと「Super」の話しに至らない。ってことでNew-BEATの話しをし始めたのが前回。BEATミニマム税率アップ、クレジット使用温存、そして概念的にはMake Senseするけど導入された点は歳入Scoeringの観点からチョッとビックリのHigh-Tax Exceptionに触れた。
支払利息の資産計上
上院法案では通常のBEAT適用時の「Base Erosion Payment」の定義をアップデートしてる。BEATミニマム税を語る際の「Base Erosion Payment」の正確な位置づけが分かんないと定義の重要性が伝わり難いんでBEATミニマム税のベーシックを復習しておく。
上院法案New-BEATにしても従来の元祖BEATにしても基本的な構成は同じ。すなわちBEAT用に計算されるBEAT課税所得にBEAT税率(今は10%)を掛けてR&Dクレジット、一定要件下でLow-income housingおよびエネジークレジットの80%をマイナスした税額が暫定BEAT税額(FTCでマイナスすることはできない。これはBEAT導入当時租税条約違反ではと指摘されていたデザイン)。これと通常法人税(FTCを含む全てのクレジット後)を比較して暫定BEAT税額が高ければ超過額がミニマム税になるという仕組み。
BEAT課税所得は通常の「課税所得」に「Base Erosion Tax Benefit」および「(通常法人税計算時に繰越NOLを使用している場合は)使用したNOLに占める(NOLを生み出した課税年度の)Base Erosion %相当額」双方を加算した金額。この定義の一つの副産物はスターティングポイントが通常の課税所得なんでゼロ未満(すなわちマイナス)にはなり得ないって点。例えば単年課税所得が100で(80%制限前の)繰越NOLが1,000ある場合、BEAT課税所得を算定する際の加算はゼロからステートする。マイナス900ではない。一方、過年度からの繰越NOLを適用する前の段階で単年課税所得がマイナス900の場合、スターティングポイントはマイナス900だ。この点はBEAT導入当初は異なる解釈もあり得たけど、AMTと異なりパラレルに所得を別計算するのではなくBEATはあくまで加算計算ってことで最終規則でもその旨が確認され今では当たり前の計算として定着してる(当時の議論懐かしいね)。したがって、過去NOLでその後プラスに転じた課税年度はBEAT抵触の確率が上がる。
Base Erosion Tax BenefitはBase Erosion Paymentのうち該当課税年度でDeductionに計上されている(またはReinsuranceやInversion企業のCOGSとかに関してはReductionに計上されている)金額でBase Erosion Paymentに基づく償却を含む。Base Erosion %は該当課税年度のBase Erosion Tax Benefit/Deduction総額(プラスReductionがBase Erosion Tax Benefitになっている場合はその金額もプラス)」。
Base Erosion Paymentは外国関連者への支出のうちDeductionになる性格のもの、償却資産(有形・無形を問わず)取得対価、Reinsurance(これはDeductionではなくReductionなので追加規定が必要)、そしてInversion企業のCOGS等(COGSもReductionなのでReinsurance同様追加規定が必要)。
これを見て分かる通りBase Erosion Tax BenefitとBase Erosion PaymentはかなりCloseな概念。Base Erosion Paymentは支出がBEAT課税所得の加算項目かどうかの性格付け、Base Erosion Tax Benefitはその上でどの課税年度に加算するかっていう「タイミング」Issueって考えると分かり易い。またBase Erosion PaymentおよびBase Erosion Tax Benefitには各々例外その他の追加規定がある。
で、上院法案のNew-BEATだけど、Base Erosion Paymentの定義に支払利息にかかわる新たな規則を追加している。具体的には米国外関連者に対する支払利息が資産計上されていても(Deductionしているケース同様に)Base Erosion Paymentにするというもの。ただし当新規規定有無にかかわらず従来からBase Erosion Paymentに該当する支出および資産計上が税法上強制されるsection 263(g)(Straddle取引にかかわる支払利息資産計上規定)および section 263A(f)(一定要件を満たす長期工事資産建設ファイナンスにかかわる支払利息資産計上規定)は例外。ボトムライン的には税法に強制される訳ではなく納税者の選択で支払利息を資産計上してもDeductionしたケース同様にBase Erosion Paymentになるっていうこと。Base Erosion Tax BenefitやBase Erosion %の定義もこのBase Erosion Paymentにかかわる定義改訂とシンクロされている。Inversion企業やReinsuranceを除き原則Base Erosion PaymentやBase Erosion Tax Benefitが「Deduction項目」に限定されるっていう点は後述のSuper-BEATにも大きく関係する概念になる。
BEAT適用対象法人
New-BEATでは適用対象法人の判断法も厳格化している。従来は1)RIC、REIT、S-Corp以外のCorporation(米国内外問わず)、2)過去3年間平均Gross Receiptが$500M以上、そして3)Base Erosion %が3%以上(銀行および証券ディーラーは2%以上)っていうものだった。このうち3のBase Erosion %を全員一律で2%に引き下げている。え~せっかく苦心して2.99%にしてたのに~!って嘆きたくなるかもしれないけどSuper-BEATはもっと怖い。
っていうことでNew-BEATだけでカメさんのスピードみたいだったけど次回からはNew-BEATを受けての上院法案section 899のSuper-BEAT。
ちなみにもう一つのBBBは世界中のBloggerとかが米国の軍資材の移動を刻々と追って多くのレポートがあるけど、BBBを搭載しているB2 BomberがMissouriの基地から太平洋経由で移動を開始するっていう話し。実際にFardowを攻撃するかどうかは未定とのこと。B2 Bomberってレーダーに感知されないエイみたいな形した「Stealth」爆撃機のはずでどこに居るか分かっちゃいけないはずなんだけどどうやって分かるんだろうね。ちなみにMissouriに格納されているのはStealthなんで空調が良く効いた大きなハンガーに待機してる必要があるからなんだって。
う~ん、あんまりエスカレートさせたり米国が関与すると中国やロシアとかも黙ってないだろうし、バイデン政権下で不法に米国に入ってきた1,000万人の中にはイランの反米グループが含まれてても分かんないって話しで米国、特にNYC、はテロに巻き込まれるリスク大っていうことで地下鉄に乗るのを控える人とかが出てきて身近な生活にも影響が出てきてる。夏の間はSouth DakotaのBlack Hillsにでも疎開してStarlinkでInternet Connectionして過ごす?
Section 891も再浮上
一点上院法案のsection 899を語る際に下院法案との比較で特筆に値いする点にsection 891の再浮上がある。Section 891に関しては1月20日政権発足と同時に発令された大統領令で触れられてたんで2月の「「Global Tax Deal」対抗・報復措置」で簡単に内容を説明してるからそちらもぜひ参照して欲しい。
この期に及んでsection 891の議論が息を吹き返してるのは上院法案section 899にsection 891とのコーディネーション規定が盛り込まれてるのがひとつの理由。この部分は後日、独自のポスティングでカバーしたいけど、メッセージとしては既に(90年も…)法律として存在するsection 891は仮にsection 899がなくても独立して、しかも議会が何もしないでも大統領の裁量でトリガーする用意があるってことだろう。Section 891はそれはそれで適用には条約との関係を含むテクニカルな問題・チャレンジはあるとしてもBack-Stop的には怖い。
「上院はsection 899の適用1年延長とか付加税CAPを15%にしたりしてくれて優しいね」的なSweet Dreamsを見てる外国企業がいるとしたらその観測は甘い。下院法案の付加税・Super-BEATの使用にお墨付きを与えた上で適用を現実的に調整し、更にsection 891の適用も辞さないっていう構成はむしろ冷徹(?)で怖い気がする。Sweat dreams are made of this(Eurythmics!)だね。人類の本能的なDesireやHappiness。最近の世の中みてると昔のPop Songsの歌詞って結構言い当ててるのが多いなっていう発見が多い。多分最近の曲もいい歌詞あるんだろうけど、残念ながら聴く量が少ないんで個人的な馴染みが少なく理解が追い付いてないです。昔の歌詞がいい当ててるって、つまり人は変わんないね~ってことだよね。
Global Tax Dealで各国の選挙とか民意と直接関係なく世界中の税制をUniversalにRule、そして逆らう国の所得は親会社の所得でも子会社レベルで懲罰課税(UTPR!)っていうのはTears for Fearsの「Everybody Wants to Rule the World」の域かもね(大げさ?)。でもこれからの世の中、特に各国市民個人のチョイスや自由を真剣に考える場合、たかが(されど?)タックスくらいの世界で終わればいいけど、権力っていうのはそのNatureから必ず(英語で言うところの)1インチ許すと1マイル譲歩することになるんで、次々とドミノ式に権力が拡大される(これは歴史が証明している人間のサガと言え、個人レベルで自己中心的かどうかっていう話しを超えた単純な現実?)。そうなると主権国家単位の選挙とか民意は余り意味がなくなり、グローバルリーダークラスがトップダウンでグローバルレベルでポリシーやルールを決めることになる。この流れは特に2016年以降Brexitやトランプ1.0を受けて顕著になったコンセンサスベースの統治アプローチで、従来の民主主義(基本的に一般Peopleの民意ベース、いわばPopulism?)と異なるもの。どっちが長期的に世界のためにいいかは個人的には分からないしグローバルリーダーには各分野のExpertが多いだろうから各々のアプローチにプロ・コンがあると思うけど、この点がまさしく2024年の米国選挙のファンダメンタルな争点で、少なくとも2024年の段階では一般PeopleはPopulism的にMAGAをサポートした結果になっている。
なぜこの点を繰り返し書くかって言うと、米国のこのマクロ背景が分からないと、米国が(政権発足初日に)Global Tax Dealに強硬な反対表明、VPバンスによる2月のMunich Security Conferenceにおける演説、イロンマスクが巨額の私財を投じたX(元ツイッター)買収、とかの一連の流れが直観的にコネクトしないんじゃないかなって思われる点。特に米国外からレガシーメディアを通じて米国を見てるとあんまり伝ってないかなって思うことが多い。ポリサイは僕の専門外なんで読者のみなさんには他のソースで多様な視点を取り入れて各々で考えて欲しいけど、米国の生活を通じた肌感覚ベースの観測。今後の動向を観測したり米国に891や899系のアプローチする際、少なくとも米国の反発はピラー2のテクニカルな問題以上っていう点は理解しておく必要がある。
Section 891に関しては、昨日、Council on Foreign RelationsっていうイベントでMichael Faulkender財務副長官が「(審議中の)899ばかりでなく891の適用可能性」も示唆した上「891を使うか899を使うかはさておき、米国税法(今回の税制改正以前のSub F、GILTI、BEAT等)のBase Erosion対策はピラー2と同様な強固水準にある(したがってこれ以上、米国所得にピラー2を適用は不要)っていう認識をOECDが持つ必要がある点は明確に伝えている」と発言したと報道されている。敢えてSection 891に言及しているのはタイミングがタイミングだけに上院法案と行政府のコーディネート的に興味深いよね。
上院法案New-BEAT
で、Section 899上院バージョンの付加税・Super-BEATっていう2つの対抗策のうち、一旦付加税はまあまあカバーしたつもり。とは言えsection 899とFIRPTA源泉とかはかなり複雑だから一旦落ち着いたら(いつ?)更なる詳細に触れるね。これは元々FIRPTA(Substantiveな課税規定)およびFIRPTA源泉規則(徴収メカニズム)が込み入ってるところに、更に複雑なsection 899をOverlay(「上塗り」とでも訳す?)するデザインなので仕方がない。
Overlayって言えばsection 899のもう一方の対抗策に当たるSuper-BEATも通常BEATのOverlayだけど、下院法案時点では通常BEATは2025年までの現状BEATと同じだったんでOverlayによる差異を話せばそれで済んだところ、上院法案では通常BEATもNew-BEATに生まれ変わったんでまずはそちらを良く理解しないと「Super」の話しに至らない。ってことでNew-BEATの話しをし始めたのが前回。BEATミニマム税率アップ、クレジット使用温存、そして概念的にはMake Senseするけど導入された点は歳入Scoeringの観点からチョッとビックリのHigh-Tax Exceptionに触れた。
支払利息の資産計上
上院法案では通常のBEAT適用時の「Base Erosion Payment」の定義をアップデートしてる。BEATミニマム税を語る際の「Base Erosion Payment」の正確な位置づけが分かんないと定義の重要性が伝わり難いんでBEATミニマム税のベーシックを復習しておく。
上院法案New-BEATにしても従来の元祖BEATにしても基本的な構成は同じ。すなわちBEAT用に計算されるBEAT課税所得にBEAT税率(今は10%)を掛けてR&Dクレジット、一定要件下でLow-income housingおよびエネジークレジットの80%をマイナスした税額が暫定BEAT税額(FTCでマイナスすることはできない。これはBEAT導入当時租税条約違反ではと指摘されていたデザイン)。これと通常法人税(FTCを含む全てのクレジット後)を比較して暫定BEAT税額が高ければ超過額がミニマム税になるという仕組み。
BEAT課税所得は通常の「課税所得」に「Base Erosion Tax Benefit」および「(通常法人税計算時に繰越NOLを使用している場合は)使用したNOLに占める(NOLを生み出した課税年度の)Base Erosion %相当額」双方を加算した金額。この定義の一つの副産物はスターティングポイントが通常の課税所得なんでゼロ未満(すなわちマイナス)にはなり得ないって点。例えば単年課税所得が100で(80%制限前の)繰越NOLが1,000ある場合、BEAT課税所得を算定する際の加算はゼロからステートする。マイナス900ではない。一方、過年度からの繰越NOLを適用する前の段階で単年課税所得がマイナス900の場合、スターティングポイントはマイナス900だ。この点はBEAT導入当初は異なる解釈もあり得たけど、AMTと異なりパラレルに所得を別計算するのではなくBEATはあくまで加算計算ってことで最終規則でもその旨が確認され今では当たり前の計算として定着してる(当時の議論懐かしいね)。したがって、過去NOLでその後プラスに転じた課税年度はBEAT抵触の確率が上がる。
Base Erosion Tax BenefitはBase Erosion Paymentのうち該当課税年度でDeductionに計上されている(またはReinsuranceやInversion企業のCOGSとかに関してはReductionに計上されている)金額でBase Erosion Paymentに基づく償却を含む。Base Erosion %は該当課税年度のBase Erosion Tax Benefit/Deduction総額(プラスReductionがBase Erosion Tax Benefitになっている場合はその金額もプラス)」。
Base Erosion Paymentは外国関連者への支出のうちDeductionになる性格のもの、償却資産(有形・無形を問わず)取得対価、Reinsurance(これはDeductionではなくReductionなので追加規定が必要)、そしてInversion企業のCOGS等(COGSもReductionなのでReinsurance同様追加規定が必要)。
これを見て分かる通りBase Erosion Tax BenefitとBase Erosion PaymentはかなりCloseな概念。Base Erosion Paymentは支出がBEAT課税所得の加算項目かどうかの性格付け、Base Erosion Tax Benefitはその上でどの課税年度に加算するかっていう「タイミング」Issueって考えると分かり易い。またBase Erosion PaymentおよびBase Erosion Tax Benefitには各々例外その他の追加規定がある。
で、上院法案のNew-BEATだけど、Base Erosion Paymentの定義に支払利息にかかわる新たな規則を追加している。具体的には米国外関連者に対する支払利息が資産計上されていても(Deductionしているケース同様に)Base Erosion Paymentにするというもの。ただし当新規規定有無にかかわらず従来からBase Erosion Paymentに該当する支出および資産計上が税法上強制されるsection 263(g)(Straddle取引にかかわる支払利息資産計上規定)および section 263A(f)(一定要件を満たす長期工事資産建設ファイナンスにかかわる支払利息資産計上規定)は例外。ボトムライン的には税法に強制される訳ではなく納税者の選択で支払利息を資産計上してもDeductionしたケース同様にBase Erosion Paymentになるっていうこと。Base Erosion Tax BenefitやBase Erosion %の定義もこのBase Erosion Paymentにかかわる定義改訂とシンクロされている。Inversion企業やReinsuranceを除き原則Base Erosion PaymentやBase Erosion Tax Benefitが「Deduction項目」に限定されるっていう点は後述のSuper-BEATにも大きく関係する概念になる。
BEAT適用対象法人
New-BEATでは適用対象法人の判断法も厳格化している。従来は1)RIC、REIT、S-Corp以外のCorporation(米国内外問わず)、2)過去3年間平均Gross Receiptが$500M以上、そして3)Base Erosion %が3%以上(銀行および証券ディーラーは2%以上)っていうものだった。このうち3のBase Erosion %を全員一律で2%に引き下げている。え~せっかく苦心して2.99%にしてたのに~!って嘆きたくなるかもしれないけどSuper-BEATはもっと怖い。
っていうことでNew-BEATだけでカメさんのスピードみたいだったけど次回からはNew-BEATを受けての上院法案section 899のSuper-BEAT。
Friday, June 20, 2025
上院法案「New」BEATとsection 899「Super」 BEAT
前回のポスティングではMega-Bill上院法案が公開された直後の米国BBB動向、そして時間切れになる前に激しさを増すロビー活動に触れた。今日はいよいよsection 899の付加税と並ぶもうひとつの対抗策にあたる「Super-BEAT」に触れたいけど、実は上院法案は「Super」じゃない「元祖」通常BEATそのものに結構な改訂を加えてるんで、まずはBrand-Newの通常BEATの話しをしないとSuperに至らない。ということでNew BEATから入るけどその前にMega-Bill動向。
上院Byrd Rule審判「Byrd Bath」
John Thuneは来週にも手続き的なProcedure Voteを敢行し、その直後に本会議投票に漕ぎつけるっていう超Aggressiveなタイムラインを今でも目指してるみたいだけど、その際に避けて通ることができないのが上院ParliamentarianのElizabeth MacDonoughによるByrd Rule審判。Mega-Billに盛り込まれている規定が予算調整法、すなわち60票の代わりに過半数で通すことが許されるScopeかっていう審判を受けないといけない。具体的には大概において野党側の民主党が「これはScope外」で訴えて与党の共和党は「Scope内」で防衛し、Parliamentarianが審判を下すような手続き。法案をByrd Ruleで洗うみたいなんでポリティクスの世界では「Byrd Bath」って言う。鳥が行水してるみたいで可愛いけど実際は闘争的な手続きだ。
Mega-BillはFinance Committee管轄以外のCommitteeの法案も多く含むんで、Byrd Bathはそれら全てが対象になる。既に金融系CommitteeのCFPB(Consumer Financial Protection Bureau)の予算ゼロ化、また監査法人を監督するSEC傘下のPCAOB撤廃、がByrd Ruleに抵触するって判断されたよう。Byrd Ruleに抵触するってことは予算調整法の一部として可決できないってことだけど、60票の賛成があればByrd Ruleを克服することができる。
共和党が一番怖いのはBudget Windowのコストを「Current Policy Baseline」を使って判断することがNGとなること。Current Policy Baselineっていうのは今適用しているTCJAの規則を延長しても追加コストにはならないはずっていう主張に基づくコスト計算。これが認められないとTCJAが2026年以降失効した状態との比較でコストを計算することになり多額のコストを認識しないといけなくなる。もちろん実際の歳入・歳出はCurrent Policy Baselineだろうが通常のBaseline だろうが同じだけど予算調整法の見せ方のギミックとしては重要なポイントだ。この点は余りに重要なんで以前から水面下で交渉を重ねてきてると考えるのが自然だけど最終結果は不明。
Section 899は一旦お墨付きを得てるけど、Byrd Bathで再度審査の対象となる可能性はあるね。
米国外ロビー活動
米国外の納税者によるsection 899のロビー活動はScott Bessent長官が「自分の国の政府に差別的課税を取り下げるよう働きかけるのが筋」って主張してる点は前回のポスティングで触れたけど、カナダ(DSTだけがPer Se Unfair Foreign Taxなんで被害は相対的に軽い)に続き、EUの企業団体はEUに「テクニカルな議論はどうでもいいからsection 899の適用がないよう税法を変えること」っていうプレッシャーを強化しているという報道。
また英国ではFTSE100社が自国の財務省に「何でもいいからsection 899が英国企業に適用されないよう対応すること」っていう要請をしたという話しも報道されている。英国企業は「米国撤退は単純にオプションではない」とした上で何もせずにsection 899適用開始になると米国オペレーションに過激なリストラクチャリング(米国企業にインバージョン??)、を敢行しないといけなくなるし、目先の対応としてはグループ内DebtファイナンスをEquityに変えて配当を控える程度に限られる...とのこと。また「せっかくBrexitしてEUじゃないんだからそのメリットを活かして主権を発揮して独自に対応を率先して検討・策定するよう」働きかけたという話しだ。
New BEATは税率引き上げ
New BEATミニマム税率はナンと14%。これはSuper-BEATじゃなくて通常BEATの話し。銀行と証券ディーラーは従来1%プラスだったけどこの1%付加は撤廃されて全員一律14%になった。
クレジットは温存
BEATミニマム税計算時に2026年から認められなくなる予定だったR&Dクレジット、80%制限下でLow-income housingおよびエネジークレジットによるBEAT暫定税(通常の法人税と比べる前のBEAT税額)マイナスがそのまま温存されてる。この部分は便宜的に、財務省規則に規定されてる方向でBEAT暫定税を計算する際にクレジットを使えるって表現しておくけど、条文は逆でBEAT暫定税と比較する法人税にこれらのクレジットを加算するような表現になってる。方程式の左側でプラスしてる額を式の右側に移動させるとマイナスになるっていう超基礎的な算数なんで同じことなんだけど条文は直観的に分かり難いかもね。いずれにしてもこれが認められなくなるとR&Dクレジットで通常の法人税は低くなってもBEATミニマム税計算する際のBEAT暫定税はマイナスできないんでBEATミニマム税が生じ易くなるところだった。
High-Tax Exception
外国関連者に対する支出が、受け手側で米国法人税最高税率の90%を超える(「greater」)税率で課税されてるって納税者が証明できる場合、支出はBase Erosion Paymentには当たらないっていうSub FやGILTIみたいな「High-Tax Exception」が新規に規定された。現状法人税率は21%だからその90%は18.9%になる。支出の受け手側の税率計算はFTCの制限枠計算時に本来Passiveバスケットに属する投資所得が米国の適用最高税率より高い税率で国外で課税されている場合、強制的にGeneralバスケットにReclassさせられる所謂「High-Tax Kickout」の計算法に準じて行うとしている。
Base Erosion Paymentってグループ内の高税率国から低税率国に金利、サービスFee、ロイヤリティとかを支払ってグループ全体ではゼロサムでもグローバル全体の税金が下がるっていうかなり初歩的な算数を利用する支出だから受け手側で米国と同等の税率で税金が課される場合、本来のBase Erosion Paymentにはならない。日本みたいな高税率国への支出は、受け手側で18.9%超の税金を支払うことが多いだろうからとても有益な免除規定だ。ただひとつ残念っていうか致命的なのは現時点のsection 899法案ではUTPRやDSTを持つ国に適用される強化版Super-BEAT目的でHigh-Tax Exceptionは認められないこと…。これはSuper-BEATの話しなんでその際に後述。
通常のNew BEATに戻るけど、Base Erosion Paymentとかグループ内の話しだから「だったら…」って一旦20%法人税の国に支出して、そこから低税率の国に再支出みたいな迂回ルートプラニングが横行しがち。源泉税に対する条約適用なんかも同様のプラニングがあってその昔はLotus 1-2-3(懐かしい?それとも知らない?)駆使してAからBに金利払う際に「A->X->Y->D->B」ってすると条約や該当国の国内法で源泉税が最小限になるね!とか計算してたけど、そんな話は今は昔でTreaty Shoppingを取り締まるためLOB(「Leveraged BuyoutのLBO」じゃなくて「Limitation on Benefits」だからね)を持つ条約がほとんどになりConduit Financing Arrangement対抗規則が出たりでそんなに簡単にはいかなくなった。それと同じでBEATのHigh-Tax ExceptionにもConduit使用対抗規則が盛り込まれてる。
New BEAT法案では、財務省が定める範囲で形式的に特定の外国関連者(高税率国の関連者1)に対して行われる支出が、関連者1による別の外国関連者(低税率国の関連者2)への支出をFundingしてて、受け手の関連者2が18.9%未満(「Lower」)の税率で課税されてる場合、形式的には関連者1に対する支出でも税務上は関連者2に対する支出と取り扱うとしている。BEAT Funding規定の誕生!「Funding規定」って名前聞いただけで気分が悪くなる読者もいるんではって思うけど、Fundingと名の付くものはBEATとは別のBase Erosion対抗策1.385‐3のPer Seルールとか、国外関連者による自社株買いを米国法人が間接的にファイナンスしてるってみなす自社株買いFunding規定とか、どれも頭が痛くなる規則ばかり。Fundingリストに更にひとつ仲間が加わったね。
ちなみに付加税の下院法案の「On or after」と「After」の使い分けがおかしかったように、BEAT High-Tax Exceptionも「Greater」と「Lower」の使い方がチョッと不思議。High-Tax Exception自体は「Greater」なんで18.9%ピッタリだと不適格。一方、Anti-Conduitは「Lower」なんで18.9%だとOK。直接18.9%の国に支払うとギリギリHigh-Tax Exceptionにならず残念っていう結果になるけど、Funding規定で高税率国経由で18.9%の国に払うとAnti-Conduitの対象にならないように見える。ピッタリ18.9%になるケースは稀だろうから実務的なインパクトはないに等しいかもしれないけど概念的にチョッと釈然としないよね。最終バージョンではAnti-Conduitは「Equal or lower」とかにアップデートされるのかな。Exception側の「Greater」はSub FのForeign Base Company Incomeに対するHigh-Tax Exceptionもそうなんでこっちは変わらないだろう。ただ、Anti-Conduitは条文の文言的に財務省規則が出るまでは効果を持たない規則だ。
で次回は唐突なNew BEATの金利資産計上対策から。
上院Byrd Rule審判「Byrd Bath」
John Thuneは来週にも手続き的なProcedure Voteを敢行し、その直後に本会議投票に漕ぎつけるっていう超Aggressiveなタイムラインを今でも目指してるみたいだけど、その際に避けて通ることができないのが上院ParliamentarianのElizabeth MacDonoughによるByrd Rule審判。Mega-Billに盛り込まれている規定が予算調整法、すなわち60票の代わりに過半数で通すことが許されるScopeかっていう審判を受けないといけない。具体的には大概において野党側の民主党が「これはScope外」で訴えて与党の共和党は「Scope内」で防衛し、Parliamentarianが審判を下すような手続き。法案をByrd Ruleで洗うみたいなんでポリティクスの世界では「Byrd Bath」って言う。鳥が行水してるみたいで可愛いけど実際は闘争的な手続きだ。
Mega-BillはFinance Committee管轄以外のCommitteeの法案も多く含むんで、Byrd Bathはそれら全てが対象になる。既に金融系CommitteeのCFPB(Consumer Financial Protection Bureau)の予算ゼロ化、また監査法人を監督するSEC傘下のPCAOB撤廃、がByrd Ruleに抵触するって判断されたよう。Byrd Ruleに抵触するってことは予算調整法の一部として可決できないってことだけど、60票の賛成があればByrd Ruleを克服することができる。
共和党が一番怖いのはBudget Windowのコストを「Current Policy Baseline」を使って判断することがNGとなること。Current Policy Baselineっていうのは今適用しているTCJAの規則を延長しても追加コストにはならないはずっていう主張に基づくコスト計算。これが認められないとTCJAが2026年以降失効した状態との比較でコストを計算することになり多額のコストを認識しないといけなくなる。もちろん実際の歳入・歳出はCurrent Policy Baselineだろうが通常のBaseline だろうが同じだけど予算調整法の見せ方のギミックとしては重要なポイントだ。この点は余りに重要なんで以前から水面下で交渉を重ねてきてると考えるのが自然だけど最終結果は不明。
Section 899は一旦お墨付きを得てるけど、Byrd Bathで再度審査の対象となる可能性はあるね。
米国外ロビー活動
米国外の納税者によるsection 899のロビー活動はScott Bessent長官が「自分の国の政府に差別的課税を取り下げるよう働きかけるのが筋」って主張してる点は前回のポスティングで触れたけど、カナダ(DSTだけがPer Se Unfair Foreign Taxなんで被害は相対的に軽い)に続き、EUの企業団体はEUに「テクニカルな議論はどうでもいいからsection 899の適用がないよう税法を変えること」っていうプレッシャーを強化しているという報道。
また英国ではFTSE100社が自国の財務省に「何でもいいからsection 899が英国企業に適用されないよう対応すること」っていう要請をしたという話しも報道されている。英国企業は「米国撤退は単純にオプションではない」とした上で何もせずにsection 899適用開始になると米国オペレーションに過激なリストラクチャリング(米国企業にインバージョン??)、を敢行しないといけなくなるし、目先の対応としてはグループ内DebtファイナンスをEquityに変えて配当を控える程度に限られる...とのこと。また「せっかくBrexitしてEUじゃないんだからそのメリットを活かして主権を発揮して独自に対応を率先して検討・策定するよう」働きかけたという話しだ。
New BEATは税率引き上げ
New BEATミニマム税率はナンと14%。これはSuper-BEATじゃなくて通常BEATの話し。銀行と証券ディーラーは従来1%プラスだったけどこの1%付加は撤廃されて全員一律14%になった。
クレジットは温存
BEATミニマム税計算時に2026年から認められなくなる予定だったR&Dクレジット、80%制限下でLow-income housingおよびエネジークレジットによるBEAT暫定税(通常の法人税と比べる前のBEAT税額)マイナスがそのまま温存されてる。この部分は便宜的に、財務省規則に規定されてる方向でBEAT暫定税を計算する際にクレジットを使えるって表現しておくけど、条文は逆でBEAT暫定税と比較する法人税にこれらのクレジットを加算するような表現になってる。方程式の左側でプラスしてる額を式の右側に移動させるとマイナスになるっていう超基礎的な算数なんで同じことなんだけど条文は直観的に分かり難いかもね。いずれにしてもこれが認められなくなるとR&Dクレジットで通常の法人税は低くなってもBEATミニマム税計算する際のBEAT暫定税はマイナスできないんでBEATミニマム税が生じ易くなるところだった。
High-Tax Exception
外国関連者に対する支出が、受け手側で米国法人税最高税率の90%を超える(「greater」)税率で課税されてるって納税者が証明できる場合、支出はBase Erosion Paymentには当たらないっていうSub FやGILTIみたいな「High-Tax Exception」が新規に規定された。現状法人税率は21%だからその90%は18.9%になる。支出の受け手側の税率計算はFTCの制限枠計算時に本来Passiveバスケットに属する投資所得が米国の適用最高税率より高い税率で国外で課税されている場合、強制的にGeneralバスケットにReclassさせられる所謂「High-Tax Kickout」の計算法に準じて行うとしている。
Base Erosion Paymentってグループ内の高税率国から低税率国に金利、サービスFee、ロイヤリティとかを支払ってグループ全体ではゼロサムでもグローバル全体の税金が下がるっていうかなり初歩的な算数を利用する支出だから受け手側で米国と同等の税率で税金が課される場合、本来のBase Erosion Paymentにはならない。日本みたいな高税率国への支出は、受け手側で18.9%超の税金を支払うことが多いだろうからとても有益な免除規定だ。ただひとつ残念っていうか致命的なのは現時点のsection 899法案ではUTPRやDSTを持つ国に適用される強化版Super-BEAT目的でHigh-Tax Exceptionは認められないこと…。これはSuper-BEATの話しなんでその際に後述。
通常のNew BEATに戻るけど、Base Erosion Paymentとかグループ内の話しだから「だったら…」って一旦20%法人税の国に支出して、そこから低税率の国に再支出みたいな迂回ルートプラニングが横行しがち。源泉税に対する条約適用なんかも同様のプラニングがあってその昔はLotus 1-2-3(懐かしい?それとも知らない?)駆使してAからBに金利払う際に「A->X->Y->D->B」ってすると条約や該当国の国内法で源泉税が最小限になるね!とか計算してたけど、そんな話は今は昔でTreaty Shoppingを取り締まるためLOB(「Leveraged BuyoutのLBO」じゃなくて「Limitation on Benefits」だからね)を持つ条約がほとんどになりConduit Financing Arrangement対抗規則が出たりでそんなに簡単にはいかなくなった。それと同じでBEATのHigh-Tax ExceptionにもConduit使用対抗規則が盛り込まれてる。
New BEAT法案では、財務省が定める範囲で形式的に特定の外国関連者(高税率国の関連者1)に対して行われる支出が、関連者1による別の外国関連者(低税率国の関連者2)への支出をFundingしてて、受け手の関連者2が18.9%未満(「Lower」)の税率で課税されてる場合、形式的には関連者1に対する支出でも税務上は関連者2に対する支出と取り扱うとしている。BEAT Funding規定の誕生!「Funding規定」って名前聞いただけで気分が悪くなる読者もいるんではって思うけど、Fundingと名の付くものはBEATとは別のBase Erosion対抗策1.385‐3のPer Seルールとか、国外関連者による自社株買いを米国法人が間接的にファイナンスしてるってみなす自社株買いFunding規定とか、どれも頭が痛くなる規則ばかり。Fundingリストに更にひとつ仲間が加わったね。
ちなみに付加税の下院法案の「On or after」と「After」の使い分けがおかしかったように、BEAT High-Tax Exceptionも「Greater」と「Lower」の使い方がチョッと不思議。High-Tax Exception自体は「Greater」なんで18.9%ピッタリだと不適格。一方、Anti-Conduitは「Lower」なんで18.9%だとOK。直接18.9%の国に支払うとギリギリHigh-Tax Exceptionにならず残念っていう結果になるけど、Funding規定で高税率国経由で18.9%の国に払うとAnti-Conduitの対象にならないように見える。ピッタリ18.9%になるケースは稀だろうから実務的なインパクトはないに等しいかもしれないけど概念的にチョッと釈然としないよね。最終バージョンではAnti-Conduitは「Equal or lower」とかにアップデートされるのかな。Exception側の「Greater」はSub FのForeign Base Company Incomeに対するHigh-Tax Exceptionもそうなんでこっちは変わらないだろう。ただ、Anti-Conduitは条文の文言的に財務省規則が出るまでは効果を持たない規則だ。
で次回は唐突なNew BEATの金利資産計上対策から。
Wednesday, June 18, 2025
Mega-Bill上院法案「Morning After」
上院法案公表から一夜明けたMorning After。再度法案に目を通したけどsection 899は公表直後に書いた昨日のポスティングで合ってると思う。Super-BEATはBEATそのものが大きく変わってるんでNew BEATの話しも一緒にしないとSuper-BEATの理解が進まないんで次回にでも。
で、Big Beautiful Bil(「BBB」)上院法案公開から一夜明けてDCサークルはBBB三昧。
BBB
っていうのは本当なんだけど、実は話題のBBBは「Bunker-Buster Bomb」のこと。イスラエルがイランの対空ディフェンス能力を除去して制空権を確保していて自由に飛んでいけるっていう信じられない展開で地上に露出している戦略施設は既に破壊したらしいんだけど、イランの核施設の一つが山奥の地下深くにあるのが分かっていてそれを破壊できるのは米国が持つBBBのみらしい(全くの専門外なんで全部聞いた話し)。でもトランプ・MAGAは米国外のConflictには関与しないっていうのが原則ポリシー。そこがネオコンやDCのEstablishmentと違うところ。
ただトランプ派内でも意見が割れるところで、America FirstポリシーはAmerica Onlyではなく、米国を敵視している国の核施設を破壊できる千載一遇のチャンスなんだから国防はAmerica Firstポリシーに合致するっていう派がいたり。BBBを打ち込むにはUS Air ForceのB-2 Bomberがこっそり飛んで行く必要があってB-2 BomberはMissouriのベースに居るらしいんで片道15時間(JFKから東京出張行くのとあんまり変わんないね!)給油を繰り返しながら誰にも探知されずに飛んでいくのだそう。MAGAとしては国外のConflictに関与しないのが原則だけどBBBだけ打ち込みに行くんだったらいい?って思う派もあるんだけど、その後の混乱に引きずり込まれるのは必至っていう話しもありイラクやアフガンの二の舞だけは避けないとっていうところでここは我慢どころっていう派もいたり喧々囂々。どうなるでしょうか。
Last Minuteロビー活動
で、それに比べるとSALTが...とかの戦いは平和な話しって感謝を禁じ得ない(?)Mega-BillのBBB。まあ大概において下院法案を踏襲して両院一致バージョンの早期可決を考慮したんだろうな、っていう内容とは言えやはりSALT、Medicaid、エネジークレジット等は未だに調整中。SALTくらいでって思うけど、NYの17th District(日本人の駐在の方にもお馴染みのWestchesterを含むDistrict)の共和党下院議員Mike LawlerとかはSALT枠を拡大しないと中間選挙で戦えないっていう話し。共和党絡みの票読みしてる人の話しだとこれは冗談ではなく本当らしい。下院の議席数は僅差だから共和党下院としては一議席でも重要。ってことで事が込み入る。
Section 899に関しては上院法案に趣旨はそのまま入ったことから上院でも899の重要性が認識された証拠になったけど、まだまだ転覆させようって激しいロビー活動が続いてるらしい。Wall Street派に加えて今度は不動産業界登場。海外からの投資に冷却効果があるんでMinority出資は免除して欲しいみたいな書簡をJohn ThuneとMike Crapoに送り付けたりしてる。以前のREIT特集で触れたけど不動産業界の究極の夢はFIRPTAの完全撤廃!さすがにそれは「Good luck」って感じだけど163(j)にしても上場REITにしても、古くはUP-REITがSub KのAnti-Abuse Regulationsでお墨付きをもらったり何かと不動産業界は厚遇特別扱い。今ではお馴染みのUP-CはこのUP-REITに対するAnti-Abuse除外お墨付きがなければストラクチャーとして蔓延しなかったかもって考えると不動産業界のおかげで一般事業のパススルー上場時のパワフルなストラクチャーオプションが増えて感謝。不動産業界がパワフルなのは、例えばWall Streetとかだったら特定の州の議院しか聞く耳を持たないかもしれないけど、不動産は全州にあるんでロビー活動時にLeverageが効くらしい。不動産業界とは別に外国の投資銀行とかもロビー活動してるらしいけどScott Bessent長官曰く「ロビー活動の矛先が間違っている。自分の国の政府に不公平税制を撤回するようロビーするべき」とのこと。不動産パワーで更なる緩和措置があるでしょうか。
来週上院投票?
ただ、section 899に限らず公表された上院法案は一週間ほど更なる変遷を経てJohn Thune曰く来週水曜日か木曜日に最初の投票、その後、最終投票をその直後の週末にしたいということ。ということで決して最終版ではないけどタイトなタイムライン。上院可決してその後に下院とConferenceで調整したりしてると時間が掛かるんで、上院の調整と同時にPre-Conferenceですり合わせして一気に通すっていうもくろみらしい。上院だけでもマジックナンバーの4人造反が居るかどうか不明。Rand Paul、MedicaidのJosh HawleyやSusan Collins…。どうなるでしょうか。
次回はNew BEATとSuper-BEATについて。
で、Big Beautiful Bil(「BBB」)上院法案公開から一夜明けてDCサークルはBBB三昧。
BBB
っていうのは本当なんだけど、実は話題のBBBは「Bunker-Buster Bomb」のこと。イスラエルがイランの対空ディフェンス能力を除去して制空権を確保していて自由に飛んでいけるっていう信じられない展開で地上に露出している戦略施設は既に破壊したらしいんだけど、イランの核施設の一つが山奥の地下深くにあるのが分かっていてそれを破壊できるのは米国が持つBBBのみらしい(全くの専門外なんで全部聞いた話し)。でもトランプ・MAGAは米国外のConflictには関与しないっていうのが原則ポリシー。そこがネオコンやDCのEstablishmentと違うところ。
ただトランプ派内でも意見が割れるところで、America FirstポリシーはAmerica Onlyではなく、米国を敵視している国の核施設を破壊できる千載一遇のチャンスなんだから国防はAmerica Firstポリシーに合致するっていう派がいたり。BBBを打ち込むにはUS Air ForceのB-2 Bomberがこっそり飛んで行く必要があってB-2 BomberはMissouriのベースに居るらしいんで片道15時間(JFKから東京出張行くのとあんまり変わんないね!)給油を繰り返しながら誰にも探知されずに飛んでいくのだそう。MAGAとしては国外のConflictに関与しないのが原則だけどBBBだけ打ち込みに行くんだったらいい?って思う派もあるんだけど、その後の混乱に引きずり込まれるのは必至っていう話しもありイラクやアフガンの二の舞だけは避けないとっていうところでここは我慢どころっていう派もいたり喧々囂々。どうなるでしょうか。
Last Minuteロビー活動
で、それに比べるとSALTが...とかの戦いは平和な話しって感謝を禁じ得ない(?)Mega-BillのBBB。まあ大概において下院法案を踏襲して両院一致バージョンの早期可決を考慮したんだろうな、っていう内容とは言えやはりSALT、Medicaid、エネジークレジット等は未だに調整中。SALTくらいでって思うけど、NYの17th District(日本人の駐在の方にもお馴染みのWestchesterを含むDistrict)の共和党下院議員Mike LawlerとかはSALT枠を拡大しないと中間選挙で戦えないっていう話し。共和党絡みの票読みしてる人の話しだとこれは冗談ではなく本当らしい。下院の議席数は僅差だから共和党下院としては一議席でも重要。ってことで事が込み入る。
Section 899に関しては上院法案に趣旨はそのまま入ったことから上院でも899の重要性が認識された証拠になったけど、まだまだ転覆させようって激しいロビー活動が続いてるらしい。Wall Street派に加えて今度は不動産業界登場。海外からの投資に冷却効果があるんでMinority出資は免除して欲しいみたいな書簡をJohn ThuneとMike Crapoに送り付けたりしてる。以前のREIT特集で触れたけど不動産業界の究極の夢はFIRPTAの完全撤廃!さすがにそれは「Good luck」って感じだけど163(j)にしても上場REITにしても、古くはUP-REITがSub KのAnti-Abuse Regulationsでお墨付きをもらったり何かと不動産業界は厚遇特別扱い。今ではお馴染みのUP-CはこのUP-REITに対するAnti-Abuse除外お墨付きがなければストラクチャーとして蔓延しなかったかもって考えると不動産業界のおかげで一般事業のパススルー上場時のパワフルなストラクチャーオプションが増えて感謝。不動産業界がパワフルなのは、例えばWall Streetとかだったら特定の州の議院しか聞く耳を持たないかもしれないけど、不動産は全州にあるんでロビー活動時にLeverageが効くらしい。不動産業界とは別に外国の投資銀行とかもロビー活動してるらしいけどScott Bessent長官曰く「ロビー活動の矛先が間違っている。自分の国の政府に不公平税制を撤回するようロビーするべき」とのこと。不動産パワーで更なる緩和措置があるでしょうか。
来週上院投票?
ただ、section 899に限らず公表された上院法案は一週間ほど更なる変遷を経てJohn Thune曰く来週水曜日か木曜日に最初の投票、その後、最終投票をその直後の週末にしたいということ。ということで決して最終版ではないけどタイトなタイムライン。上院可決してその後に下院とConferenceで調整したりしてると時間が掛かるんで、上院の調整と同時にPre-Conferenceですり合わせして一気に通すっていうもくろみらしい。上院だけでもマジックナンバーの4人造反が居るかどうか不明。Rand Paul、MedicaidのJosh HawleyやSusan Collins…。どうなるでしょうか。
次回はNew BEATとSuper-BEATについて。
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