Saturday, June 21, 2025

上院法案「New」BEATと「Super」 BEAT (2)/891も再浮上

Mega-Billは広範囲な分野を全て取り込んだ1‐Track法案 としては1月当初に予想されてたよりも相当早いスピードでここまで漕ぎつきた。このスピード達成の背景・チャレンジ、下院と上院のインセンティブの差異その他、選挙結果が判明した去年の11月直後に「2024年11月米国選挙結果と米国税制 (3) 「予算調整法2回どう使い分ける?(2)」およびその前の2回のポスティングで詳細に触れてるんで議会動向を理解するためぜひ復習(?)しておいて欲しい。

ちなみにもう一つのBBBは世界中のBloggerとかが米国の軍資材の移動を刻々と追って多くのレポートがあるけど、BBBを搭載しているB2 BomberがMissouriの基地から太平洋経由で移動を開始するっていう話し。実際にFardowを攻撃するかどうかは未定とのこと。B2 Bomberってレーダーに感知されないエイみたいな形した「Stealth」爆撃機のはずでどこに居るか分かっちゃいけないはずなんだけどどうやって分かるんだろうね。ちなみにMissouriに格納されているのはStealthなんで空調が良く効いた大きなハンガーに待機してる必要があるからなんだって。

う~ん、あんまりエスカレートさせたり米国が関与すると中国やロシアとかも黙ってないだろうし、バイデン政権下で不法に米国に入ってきた1,000万人の中にはイランの反米グループが含まれてても分かんないって話しで米国、特にNYC、はテロに巻き込まれるリスク大っていうことで地下鉄に乗るのを控える人とかが出てきて身近な生活にも影響が出てきてる。夏の間はSouth DakotaのBlack Hillsにでも疎開してStarlinkでInternet Connectionして過ごす?

Section 891も再浮上

一点上院法案のsection 899を語る際に下院法案との比較で特筆に値いする点にsection 891の再浮上がある。Section 891に関しては1月20日政権発足と同時に発令された大統領令で触れられてたんで2月の「「Global Tax Deal」対抗・報復措置」で簡単に内容を説明してるからそちらもぜひ参照して欲しい。

この期に及んでsection 891の議論が息を吹き返してるのは上院法案section 899にsection 891とのコーディネーション規定が盛り込まれてるのがひとつの理由。この部分は後日、独自のポスティングでカバーしたいけど、メッセージとしては既に(90年も…)法律として存在するsection 891は仮にsection 899がなくても独立して、しかも議会が何もしないでも大統領の裁量でトリガーする用意があるってことだろう。Section 891はそれはそれで適用には条約との関係を含むテクニカルな問題・チャレンジはあるとしてもBack-Stop的には怖い。

「上院はsection 899の適用1年延長とか付加税CAPを15%にしたりしてくれて優しいね」的なSweet Dreamsを見てる外国企業がいるとしたらその観測は甘い。下院法案の付加税・Super-BEATの使用にお墨付きを与えた上で適用を現実的に調整し、更にsection 891の適用も辞さないっていう構成はむしろ冷徹(?)で怖い気がする。Sweat dreams are made of this(Eurythmics!)だね。人類の本能的なDesireやHappiness。最近の世の中みてると昔のPop Songsの歌詞って結構言い当ててるのが多いなっていう発見が多い。多分最近の曲もいい歌詞あるんだろうけど、残念ながら聴く量が少ないんで個人的な馴染みが少なく理解が追い付いてないです。昔の歌詞がいい当ててるって、つまり人は変わんないね~ってことだよね。

Global Tax Dealで各国の選挙とか民意と直接関係なく世界中の税制をUniversalにRule、そして逆らう国の所得は親会社の所得でも子会社レベルで懲罰課税(UTPR!)っていうのはTears for Fearsの「Everybody Wants to Rule the World」の域かもね(大げさ?)。でもこれからの世の中、特に各国市民個人のチョイスや自由を真剣に考える場合、たかが(されど?)タックスくらいの世界で終わればいいけど、権力っていうのはそのNatureから必ず(英語で言うところの)1インチ許すと1マイル譲歩することになるんで、次々とドミノ式に権力が拡大される(これは歴史が証明している人間のサガと言え、個人レベルで自己中心的かどうかっていう話しを超えた単純な現実?)。そうなると主権国家単位の選挙とか民意は余り意味がなくなり、グローバルリーダークラスがトップダウンでグローバルレベルでポリシーやルールを決めることになる。この流れは特に2016年以降Brexitやトランプ1.0を受けて顕著になったコンセンサスベースの統治アプローチで、従来の民主主義(基本的に一般Peopleの民意ベース、いわばPopulism?)と異なるもの。どっちが長期的に世界のためにいいかは個人的には分からないしグローバルリーダーには各分野のExpertが多いだろうから各々のアプローチにプロ・コンがあると思うけど、この点がまさしく2024年の米国選挙のファンダメンタルな争点で、少なくとも2024年の段階では一般PeopleはPopulism的にMAGAをサポートした結果になっている。

なぜこの点を繰り返し書くかって言うと、米国のこのマクロ背景が分からないと、米国が(政権発足初日に)Global Tax Dealに強硬な反対表明、VPバンスによる2月のMunich Security Conferenceにおける演説、イロンマスクが巨額の私財を投じたX(元ツイッター)買収、とかの一連の流れが直観的にコネクトしないんじゃないかなって思われる点。特に米国外からレガシーメディアを通じて米国を見てるとあんまり伝ってないかなって思うことが多い。ポリサイは僕の専門外なんで読者のみなさんには他のソースで多様な視点を取り入れて各々で考えて欲しいけど、米国の生活を通じた肌感覚ベースの観測。今後の動向を観測したり米国に891や899系のアプローチする際、少なくとも米国の反発はピラー2のテクニカルな問題以上っていう点は理解しておく必要がある。

Section 891に関しては、昨日、Council on Foreign RelationsっていうイベントでMichael Faulkender財務副長官が「(審議中の)899ばかりでなく891の適用可能性」も示唆した上「891を使うか899を使うかはさておき、米国税法(今回の税制改正以前のSub F、GILTI、BEAT等)のBase Erosion対策はピラー2と同様な強固水準にある(したがってこれ以上、米国所得にピラー2を適用は不要)っていう認識をOECDが持つ必要がある点は明確に伝えている」と発言したと報道されている。敢えてSection 891に言及しているのはタイミングがタイミングだけに上院法案と行政府のコーディネート的に興味深いよね。

上院法案New-BEAT

で、Section 899上院バージョンの付加税・Super-BEATっていう2つの対抗策のうち、一旦付加税はまあまあカバーしたつもり。とは言えsection 899とFIRPTA源泉とかはかなり複雑だから一旦落ち着いたら(いつ?)更なる詳細に触れるね。これは元々FIRPTA(Substantiveな課税規定)およびFIRPTA源泉規則(徴収メカニズム)が込み入ってるところに、更に複雑なsection 899をOverlay(「上塗り」とでも訳す?)するデザインなので仕方がない。

Overlayって言えばsection 899のもう一方の対抗策に当たるSuper-BEATも通常BEATのOverlayだけど、下院法案時点では通常BEATは2025年までの現状BEATと同じだったんでOverlayによる差異を話せばそれで済んだところ、上院法案では通常BEATもNew-BEATに生まれ変わったんでまずはそちらを良く理解しないと「Super」の話しに至らない。ってことでNew-BEATの話しをし始めたのが前回。BEATミニマム税率アップ、クレジット使用温存、そして概念的にはMake Senseするけど導入された点は歳入Scoeringの観点からチョッとビックリのHigh-Tax Exceptionに触れた。

支払利息の資産計上

上院法案では通常のBEAT適用時の「Base Erosion Payment」の定義をアップデートしてる。BEATミニマム税を語る際の「Base Erosion Payment」の正確な位置づけが分かんないと定義の重要性が伝わり難いんでBEATミニマム税のベーシックを復習しておく。

上院法案New-BEATにしても従来の元祖BEATにしても基本的な構成は同じ。すなわちBEAT用に計算されるBEAT課税所得にBEAT税率(今は10%)を掛けてR&Dクレジット、一定要件下でLow-income housingおよびエネジークレジットの80%をマイナスした税額が暫定BEAT税額(FTCでマイナスすることはできない。これはBEAT導入当時租税条約違反ではと指摘されていたデザイン)。これと通常法人税(FTCを含む全てのクレジット後)を比較して暫定BEAT税額が高ければ超過額がミニマム税になるという仕組み。

BEAT課税所得は通常の「課税所得」に「Base Erosion Tax Benefit」および「(通常法人税計算時に繰越NOLを使用している場合は)使用したNOLに占める(NOLを生み出した課税年度の)Base Erosion %相当額」双方を加算した金額。この定義の一つの副産物はスターティングポイントが通常の課税所得なんでゼロ未満(すなわちマイナス)にはなり得ないって点。例えば単年課税所得が100で(80%制限前の)繰越NOLが1,000ある場合、BEAT課税所得を算定する際の加算はゼロからステートする。マイナス900ではない。一方、過年度からの繰越NOLを適用する前の段階で単年課税所得がマイナス900の場合、スターティングポイントはマイナス900だ。この点はBEAT導入当初は異なる解釈もあり得たけど、AMTと異なりパラレルに所得を別計算するのではなくBEATはあくまで加算計算ってことで最終規則でもその旨が確認され今では当たり前の計算として定着してる(当時の議論懐かしいね)。したがって、過去NOLでその後プラスに転じた課税年度はBEAT抵触の確率が上がる。

Base Erosion Tax BenefitはBase Erosion Paymentのうち該当課税年度でDeductionに計上されている(またはReinsuranceやInversion企業のCOGSとかに関してはReductionに計上されている)金額でBase Erosion Paymentに基づく償却を含む。Base Erosion %は該当課税年度のBase Erosion Tax Benefit/Deduction総額(プラスReductionがBase Erosion Tax Benefitになっている場合はその金額もプラス)」。

Base Erosion Paymentは外国関連者への支出のうちDeductionになる性格のもの、償却資産(有形・無形を問わず)取得対価、Reinsurance(これはDeductionではなくReductionなので追加規定が必要)、そしてInversion企業のCOGS等(COGSもReductionなのでReinsurance同様追加規定が必要)。

これを見て分かる通りBase Erosion Tax BenefitとBase Erosion PaymentはかなりCloseな概念。Base Erosion Paymentは支出がBEAT課税所得の加算項目かどうかの性格付け、Base Erosion Tax Benefitはその上でどの課税年度に加算するかっていう「タイミング」Issueって考えると分かり易い。またBase Erosion PaymentおよびBase Erosion Tax Benefitには各々例外その他の追加規定がある。

で、上院法案のNew-BEATだけど、Base Erosion Paymentの定義に支払利息にかかわる新たな規則を追加している。具体的には米国外関連者に対する支払利息が資産計上されていても(Deductionしているケース同様に)Base Erosion Paymentにするというもの。ただし当新規規定有無にかかわらず従来からBase Erosion Paymentに該当する支出および資産計上が税法上強制されるsection 263(g)(Straddle取引にかかわる支払利息資産計上規定)および section 263A(f)(一定要件を満たす長期工事資産建設ファイナンスにかかわる支払利息資産計上規定)は例外。ボトムライン的には税法に強制される訳ではなく納税者の選択で支払利息を資産計上してもDeductionしたケース同様にBase Erosion Paymentになるっていうこと。Base Erosion Tax BenefitやBase Erosion %の定義もこのBase Erosion Paymentにかかわる定義改訂とシンクロされている。Inversion企業やReinsuranceを除き原則Base Erosion PaymentやBase Erosion Tax Benefitが「Deduction項目」に限定されるっていう点は後述のSuper-BEATにも大きく関係する概念になる。

BEAT適用対象法人

New-BEATでは適用対象法人の判断法も厳格化している。従来は1)RIC、REIT、S-Corp以外のCorporation(米国内外問わず)、2)過去3年間平均Gross Receiptが$500M以上、そして3)Base Erosion %が3%以上(銀行および証券ディーラーは2%以上)っていうものだった。このうち3のBase Erosion %を全員一律で2%に引き下げている。え~せっかく苦心して2.99%にしてたのに~!って嘆きたくなるかもしれないけどSuper-BEATはもっと怖い。

っていうことでNew-BEATだけでカメさんのスピードみたいだったけど次回からはNew-BEATを受けての上院法案section 899のSuper-BEAT。