Wednesday, June 4, 2025

ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向

いよいよ上院が休会から戻ってきたんで今週からMega-Bill上院審議開始。既にArmed Services等の物議を醸しにくいCommitteeは自分担当部分のMega-Bill上院版を完成させつつあるっていう話し。

Rescission Bill

一旦予算化された歳出を議会が法律で撤回する手続きをRescissionって言うけど、DOGEが見つけた無駄使いとかで既に予算化されている支出を取り消すためのRescission Bill法案が大統領府から議会に提出されるってホワイトハウスが数日前から言ってた。Rescission Billは予算化(Appropriation)した議会からでも予算を使う立場にある行政府(Executive Branch)の長である大統領からでもどちらも提出できる。で、それが現実に提出されたんだけど、法案では他の多くの撤回に混ざって予算化されていたUN等の国際機関に対する計$437M全額撤回されている。UNとかと並びOECDへの拠出も全額De-Fundが提案されている。ちなみにダボスで有名なWorld Economic Forum(WEF)は近年いろんなスキャンダルが報道されてたり会長が辞任に追い込まれたりって報道されてるけど、このWEFに対する資金供与取り消しも入ってる。WEFってMAGA系や一般PeopleからはOut-of-touchなグローバルエリートの象徴みたいに言われることが多いんで米国が資金拠出を予算化してたことの方が不思議に見えたけど、考えてみれば選挙前に拠出が決まってたのを取り消すっていうことなんだね。政権変わったんで既に拠出は終わってるって勘違いしてた。

OECDのDe-Fundingの動きは数年前からあって何回かポスティングしたことがあるんでそれ自体驚きはない。OECDの予算の結構なポーション(20%程度?)を米国が負担してるって聞いてるんで、にもかかわらず世界を巻き込んでピラー2とかで米国の国家主権を侵害して不快っていう話しも以前からの共和党のスタンス。ただ、共和党Trifectaの状態になってるんで、昨年の予算段階では民主党多数の上院を通らなかった環境と異なり、今回は資金拠出停止が現実になる可能性がある点、以前とは迫力が異なる。

Mega-Bill上院審議

Medicaid、エネジークレジット、SALT控除とか具体的な争点は多岐に亘るけど、いくつか大枠のダイナミクスがあるとするとまず下院リーダーシップ。上院の話ししてんじゃないの?って思うかもしれないけど上院が審議のたたき台となる下院法案はMagic Johnsonの「綱渡り状態の離れ業」で際どく可決に漕ぎつけたもの。したがって下院Mega-Bill法案の内容をあまり大きく変えると、その後の両院一致法案とする際の下院審議がまたしてもドラマチックに困難になるリスク大。このリスクはRealなんで「上院による修正は最低限に…。Delicate balanceを崩さずに」っていうのが下院リーダーシップの願い。この願いはいくらMike JohnsonがMagic Johnsonと言われてももちろん実は生身の人間で本当の魔法使いじゃないんで下院リーダーシップにとってはかなり切実なもの。にもかかわらず本来一番法案を通したいトランプがTruth Socialで「上院は好きにするだろう」みないなコメントをしたりして下院リーダーシップは冷や冷やものだろう。Truth Socialのあのコメントは普通のポリティシャンだったら絶対に敢えて書かないだろう。まあそこがトランプなんだろうね。

もうひとつは(今度こそ上院の)Deficit Hawk派。Rand Paul (R-KY)とRon Johnson (R-WI)の2人は一貫して財政赤字反対だから今のMega-Bill法案では賛成票には数え難い。せめてコロナ前の歳出レベルに戻すべきっていうのが彼らの主張。危機がある毎に政府が大きくなって危機が終わっても小さくならないから累積赤字がここまでの状態になってるんでこの主張はもっともに聞こえるけど普通の議員は歳出減には常に腰が引けるんでなかなか歳出を減らすことはできない。

PaulやJohnsonに比べるともう少し弾力的に対応する余地があるような気もするけど、Mike Lee (R-UT)やRick Scott (R-FL)もいる。ただもっと手ごわいのは実はMitch McConnell (R-KY)、Lisa Murkowski (R-AK)、そしてSusan Collins (R-ME)っていう話しもある。MurkowskiやCollinsはDeficit Hawk派とは真逆の理由で賛成できないんだろうけど、第一期トランプ政権時からトランプとは何かと意見が割れることが多かったんで票読み的にはなるほどねって感がある。McConnellは旧Establishmentの共和党の代表みたいな存在なんでMAGAとはそりが合わない。ただMega-Billのタックス部分の多くはMcConnellの関与も多かったTCJAの延長なんだけどね。McConnellの奥さんはトランプ1.0で交通省長官を務めたElaine Chaoだけど、去年だっけ、彼女のSisterがテキサスに所有する大きなランチに友人を招待して飲んだ後、Tesla運転して別邸に帰ろうとした際、自分のランチ敷地内にあるLake(池?)に暗闇の中落ちて水没してしまった事件はビックリだった。その後もMcConnellは転んで怪我したりして何かとついてない感じ。昔の影響力や政治力を知っているだけに…。

で、下院同様、上院も53対47っていう負けずに僅差だから最後はJDバンスがTie-Breakするとしても造反は3人まで。この線を死守できるかどうか水面下で交渉が始まってるって推測される。これらのDeficit Hawk派が更なる歳出減を要求すると、上院での審議が込み入るばかりでなく、仮に上院で何らかのコンセンサスが得られたとしても今度は修正された法案の下院側の受け入れでひと悶着ってなる。

Cut v Saving

ちなみにDCでのやり取りを見てると、税法そのものは共和党Finance Committeeメンバーが既に大概の方向性を決めてて下院法案と大枠歩調を合わせるっていうような話しがある一方、他の部分、特にMedicaid等のプログラムに関しては更なる歳出減(Cut)がないとDeficit Hawk派は賛成に至らず、1票ほどショートするのではってような憶測が多い。ちなみにこれらのプログラムの歳出カットを語る際、共和党リーダーシップは「Cut」ではなく「Saving」って形容するトレンドがある。そんなの同じじゃんって思うかもしれないけど、プログラム創設の趣旨的に本来恩典があるべき市民のベネフィットは削ることなく、無駄使い、不正や濫用を最小限にするっていうアプローチを強調するため、一般市民のから徴収した税金の無駄使いをSaveするっていう意味。

他にも連邦政府に通常の市民感覚、Common Senseではチョッと想像し難い(ただ、外交とかのIntricateなポリティクスは一般Peopleには理解し難いんでどこまでの支出が米国の利益でどこからが私欲や無駄使いなのかは各自のイデオロギーによるところが大きいよね)巨額の不要な支出、不正、濫用が明らかになってるけど、それらをどこまで法律でFixする規律があるかどうかがキーだろう。OECD資金拠出取り消しのRescission Billは既に予算化されている拠出の撤回だけど、Mega-Billみたいに今後の支出を左右する法案に関して、共和党議員の多くが厳しい票を投じる勇気がない場合、DC系のニュースサークルでチラッと聞いたのは、一旦議会が予算を決めた後、行政府・ホワイトハウスが施行時により低いコストで目的を達成したら差額は議会のRescission可決を経ることなく節約した額を大統領権限で歳出減とすることができるっていう趣旨の文言をMega-Billに盛り込むっていう新案。これだと弱気の共和党議員はハードな票を入れなくてもいい一方、トランプ政権はこの手の歳出減に何の躊躇もないのでガンガンSaveしてくれるのでは、っていう期待で下院法案に大きな変更を加えない状態でConferenceに持ち込むっていうアイディアのようだ。ただ、こんな手法じゃないと膨張し切った歳出もカットできないのは議会的に情けないっていうかArticle 1の義務を市民に負ってる意識が十分じゃない気もするけどね。無駄使いをSaveしたら市民の評価は高いって思うんだけど、その審判を仰ぐ気概もないのかもね。

Section 899は?

下院Section 899法案に対する反対派はいわゆるWall Streetタイプからが多く、米国へのCapital Flowに悪影響があるから好ましくないっていう理由。国の借金が多額な中、さらに外国人が国債を含む米国資産購入を控えるんじゃないかって結構慌て気味。それを受けてビジネス系のニュースサイクルも「ただでさえTreasury Bondが不調なのに…」っていうような論調もあるけど、この4年借金が一気に倍近くになっても余り騒いでなかったのに今更って感じも。Secton 899がなければいつまで借り続けることができるって考えてたんだろうね。Section 899あってもなくても時間の問題って感じはあったんだけど。以前のポスティングで触れたドルのReserve CurrencyとResource Curseの問題だ。

Capital Flowに関してはひとつ救いの手が差し伸べられてる。下院から上院に送付された法案Textに添付されていた下院Budget Committeeには面白いFootnoteが付いてて、そこにはPortfolio Interestに代表される米国内法で非課税と規定される投資所得に関しては5%付加税の対象にはならないって明記してる。この点は条文からは明確じゃない(1月の899案のポスティングで触れたよね)。一方で条約で免税になっているものは本来課税なのでこれとは異なり付加税の対象だそう。え~じゃあBondの金利とか大丈夫じゃんって、これでWall Streetも一安心?Ways and Meansも今日新たなプレスリリースで899に対するパニック反応に対抗するコメントを公表している。

肝心の上院では下院Section 899法案に対して今のところ特に目立った拒絶反応は聞かれない。John Thuneも上院は上院の考えがある的な発言はしているものの899に特化したコメントはない。もっと争点となる大物があるし、Deficit Hawk派との交渉も考えると敢えて$161Bの歳入源ってScoreされてる貴重な規則を廃止するだろうか。ただ、Joint Committeeは10年間のBudget Windowでは$161Bの歳入プラス効果だけど、後半2年(2034年とか)だけに限定してみるとは投資減によるマイナス効果で逆にいくらか歳入が減るって予測してる。ただ、この手のScoreは当たらないし、ましてや2034年に「まだこれだけの国がUTPRを維持してるか…」とか当然不明だからかなりいい加減というかEducated Guessの域を出ない。

ということで現状アップデートでした。