Monday, May 14, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(1)

前回、脱線しながらもようやくBEATにかかわる長編を終了した。The Go-Go’sの「We Got the BEAT」の世界。The Go-Go’sって元々ロサンゼルスのSunset辺りのクラブで演奏してたかなり「不良」っぽいバンドだったらしいけど、レコードデビューしてBreakした時は大変身して可愛い感じを装っていた。最初のシングルのOur Lips Are Sealedとか結構いい曲で、その昔、来日の際に、サンプラか、渋谷公会堂か、厚生年金ホールか、どれか忘れたけど、武道館じゃなかったのは間違いない場所でライブを見た覚えがある。演奏は当時のAll Girlsバンドとしてはまあまあだったかな。もちろんレコーディングで聴く限り、日本のPink Sapphireの方が断然うまいけど。Pink SapphireのドラムとかチョッとCozy Powellみたいで格好いい。ライブで演奏してるの見たことないから本当の実力は不明。でもメンバーは入れ替わりがあったとは言え平成名物TVの「イカ天」に出てたって話しだから実際うまいんだろう。ボーカルも上手だったしね。Pink Sapphireの曲は、いくつかビートルズと曲名を使っていてシャレっぽいくて良かった。で、The Go-Go’sだけど、東京公演では、わざわざ「Tokyo Boy」とか言うオリジナル曲を披露してくれて盛り上がった。多分どこの街でも街名を入れ替えて歌ってんだろうけど。

先週末のBEAT最終章は、次の題材を「チョッと考えてみる」ってところで終わっていた。実際書き終わった直後、ランチでも食べながらじっくり考えようと決意したんだけど、肝心のランチをどうするかに気を取られてしまった。家で簡単に済ますというオプションもあったけど、先週の週末はNYCのお天気も良く、アパートの下に降りて行って、近所どこかでにフラッと軽く行きたい気分が打ち勝ってしまった。でも、結局は、2nd AveのThe SmithでSicilian Baked Eggsにしようか、アジアヌードル系の店なのにナンとGrass-FedのBeefを置いてる有難いObaoにしようか、それとも単純にMaison Kayserでフレンチオニオンとか軽く食べて帰りに禁断のブリオッシュをTo-Goしようか、とか創造性に欠ける毎週繰り返される相変わらず、かつお馴染みのパターンしか思いつかなかった。で、こんなことを「じっくり」考えすぎてた結果、ブログの次の題材を選択するに至らないまま結局、20分程待ってまで又してもSicilian Baked Eggsとなり、月曜日を迎えた後はバタバタと一週間が過ぎてしまった。

そんなこんなで、また週末を迎えてしまったんだけど、今週末、野暮用でBrooklynに行った帰りにFDR運転しながら、今回の税制改正ではSub CとかSub Kは比較的手つかずなので、やはり地殻変動的なダメージ(?)を被った国際課税のフォーカスしてみよう、とようやく決心がついた。BEATだけであれだけ引っ張ったことを考えると、GILTI、FDII、Subpart F、テリトリアル課税、その他多くの大手術が施されている国際課税なんかに手を付け始めると、一体どれだけ書くことになるのか、想像しただけで気が遠くなるけど、やはり今回の改正の焦点は国際課税なので、それで行こう。

GILTIとか個別の規定の詳細は後に触れるとして、まずは国際税務の大枠からスタートしてみたい。

普通の皆さんは、別に毎日Internal Revenue Codeを読んで生活してる訳じゃないってことはもちろん知ってるけど(そうなんだよね?笑)、それでも国際課税の話しをする際に最初に共有しきたいポイントがある。それは、今回の税制改正は、驚くべきことに「既存の税法に上書きする形で多くの新条項が規定されている」っていう点。元々とてつもなく複雑かつ不明な点が多かった法律の上に、だ。

今となっては懐かしい響きのThe Blueprintでは、一層のこと多くの複雑な規定を廃案にしてしまおう、位の勢いでアプローチされていた訳だけど、、蓋を開けてみたら何のことはない、無くなるどころか、多くが温存され、更にその上に大量かつ更に複雑な新条項を織り込んでしまった。多くの新規定が既存のプラットフォームに乗るようにできてるんだけど、従来とは大きく異なるシステムになっている訳だから、Conformさせるためにあちこちを調整して、それはそれは難しいものが出来上がっている。良くこんな法文を数週間で草案したものだ。細部は行政府の財務省に規則を策定するよう権限移譲している部分も多いが、大枠であれだけのシステムを仮にも一応法律として機能する法文に仕立て上げたCapitol Hillの実力は恐るべきものがある。

大枠の内容に目を移すと、可決に至る過程では「アメリカもいよいよテリトリアル課税になるんでよかったじゃん」、みたいな軽い感じで考えられることが多かった。9月27日のUnified Frameworkでは、確かに何らかのグローバルミニマム税の導入みたいな話しが最後にチラッと出てたけど、どんな代物となるのか想像も付かなかったし、まさかクリントンとかオバマとかの民主党政権が提唱していた「Anti-Deferral」紛いの規定が入るような想定はしていなかった。

実際に税法が可決されて、落ち着いて消化してみると、恐ろしい事実に愕然とする。Webcastとかセミナーとかする度に、折に触れて言っているので「やかまし過ぎ」の可能性もあるけど、一般の方には、その真の恐ろしさが伝わっているのかどうか今でも心配(?)で、ここでもまた書いておく。かつての米国の国際課税は全世界課税とは言え、Subpart Fを除いては基本Deferral制度だった。すなわち、米国外の子会社が得る所得は米国に分配するまで米国では課税されない仕組み。で、極端に低税率の国に所得を貯めこんでいる米国多国籍企業はもちろん、よっぽどたまたまハイタックスのプールでも存在しない限り誰も分配なんかしなかったので、言わば「自作自演のテリトリアル制度」みたいな都合のいい制度になっていたと言える。

で、今回、「正式に」テリトリアル制度に移行する過程で、自作自演テリトリアル制度でもあれだけ低税率国を利用し尽くしてきた事実を目の当たりにし、米国多国籍企業による更なる低税率国へのBase Erosionが懸念されたのは当然。そこでかなり徹底的にBase Erosion対策が規定されることとなる。BEATはその名称からもまさしくその目的だし、Anti-Hybridとか、利息のSection 163(j)なんかもその流れだ。極めつけはGILTI。GILTIはSubpart Fと異なり、CFCが健全に設立国で事業活動に従事していようが、30%とかの税率に晒されていても問答無用に全てのCFCの全所得(に近い)を毎期米国株主側で合算しましょう、という凄い規定だ。この辺りのBase Erosion対策を、OECDのBEPSのようなアプローチではなく、独自に異なる切口にて一発導入してるのも米国らしい。後日GILTIに関して触れる際に詳細を書くけど、GILTIは製造設備等の資産は米国外に有するモデルを奨励しているように見えるし、また外国における法人税率は「理論的」には、13.125%を超え始めると超過%はグローバル実効税率を押し上げ兼ねないので、引き続き外国での税率は低く推移させるプレッシャーというか、インセンティブが存在する。

GILTIを考えると、税制改正で米国がテリトリアル課税制度に移行したというのはかなり語弊がある。確かに従来のDefarral制度は完全に撤廃されたことに間違いはないが、多くの国外所得に関しては、毎期認識させられる形で撤廃されている。すなわちAnti-Deferralに姿を変えてしまったのだ。配当非課税で真のテリトリアル課税の恩典を享受できるのは、CFCの償却対象動産の定額償却ベース簿価の10%ルーティンリターン所得のみ。う~ん、テリトリアル課税の恩典対象は結構地味。

という訳で、怖わさが共有できたところで次回から従来の国際課税とそれに上乗りする形で導入されている多くの新規則に、長期戦覚悟で触れていきたい。

Sunday, May 6, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(9)

前回までいろいろと脱線しながら、8回に亘り税制改正の中でも日本企業の視点から注目度の高いBEATミニマム税規定に関して分析してきた。法文解釈的には、1月時点での感触と5月になった現時点の感触は若干異なるというか、国際税務業界でもその分析がいろいろと進化してきた感じがする。

NOLの使用法も、詳しくは「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(8)」を参照して欲しいけど、どうも通常の法人税の算定で使用した金額のみが加味されて、かつBase Erosion Benefit%は使用年度のもの一発を適用するという感じが濃厚。これに加えて旧アーニングズ・ストリッピング規定下で繰り越されている支払利息が、もともと外国の関連者向けのものだった場合には、Base Erosion Benefitになると、NOLと旧アーニングズ・ストリッピング規定の繰越利息の双方を使用する年度にはBEATミニマム税を支払うケースが多くなりそう。まあ、ものは考えようで、BEATミニマム税を支払っても従来の35%よりも実行税率が低ければ税制改正の恩典はプラスだったとも考えられる。

2026年以降には、BEAT算定の比較対象となる通常法人税はフルに税額控除を引いた後の金額となること、また適用税率的も12.5%(金融機関は13.5%)となることから、要注意だ。

BEATを含む国際課税のメジャーな新規定に関しては夏にも財務省規則またはNoticeのようなガイダンスが公表されると予想されているが、その際にはBEAT適用納税者かどうかの判断に利用される3年平均$500M売上、また同判断およびBEAT修正課税所得算定時にNOLのいくらを加算調整するかを計算するためのBase Erosion Benefit%、の双方を計算する際に適用がある「Aggregation Rule」(合算規定)の考え方が明確になることが期待される。Aggregation Ruleの詳細に関しては以前のポスティングの「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(7)」を参照して欲しいけど、法文では50%超の資本関係にあるグループ法人は「一人の納税者」として扱うとしている。ということは、このグループに含まれる関連者間の売上は自分に対するものなので、$500Mの判定時には加味されないと考えるのが自然なようにも見える。一方、Base Erosion Benefit%は別のところで定義されていて、仮に50%超のグループが一人の納税者でも、グループ内の取引を基にBase Erosion Benefitとなるものはそのまま計算しないといけないだろう。

また今回の税法改正のあちこちで不確実性を生み出しているのが、連結納税をしているグループに対して、特定の規定が個々の法人に対して適用されるのか、連結納税グループ単位で適用されるのか、という疑問。Section 163(j)の支払利息損金算入制限に関しては4月2日のNotice 2018-28で連結納税グループ単位ということが明確化されたけど(これに関しては「支払利息損金算入ガイダンス発表」を参照)、BEAT、GILTI、FDIIなんかもどのように適用があるかで計算結果が大きくことなることがある。BEATは通常の法人税との比較なんだから、通常の法人税が連結納税グループ単位で算定されいることを考えると間違いなく連結納税グループ単位での比較になるはずだろう。そもそも連結納税を選択しているグループに属する個社には個別の課税所得というものは概念的に存在しないと言ってもよく、その証拠に、SRLYとか個別の数字が重要になる局面では財務省規則は徹底して「個別メンバーの所得、譲渡益、控除、損失のみを参照して決定される連結納税グループの課税所得」と実に回りくどい表現をして実質単体の課税所得を指し示している。この点からも、厳密に言うと連結納税グループにはそもそも個社の課税所得という考え方が存在しないことが伺い知れる。

さらに金融機関が連結納税グループの一員となっているグループに関してはBEATミニマム税の適用税率が1%高かったり、Base Erosion Benefitの基準%が1%低かったり不利な状況になっているけど、例えば、連結納税グループの課税年度の部分的な期間、極端な例で言えば3日とか、のみ金融機関がグループに属していたらどうなるのか、とかも不明。

また以前にも触れたけど、$500Mの売上基準に加味される売上は米国法人のものは全額(上述の50%超の資本関係にあるグループ会社間のものを除外はできる可能性あり)、また外国法人に関してはECIの算定に加味される売上のみとなっている。法文を読む限り、ECIと明確に記載されているので、条約のPE規定を用いてECIを米国課税免除としていても、その売上は加味せざるを得ないように見える。そんな数字を管理しているところは稀だろうし、またそもそも米国で申告しないでいいんだから、Base Erosionのチャンスもない訳で、ここはガイダンスでPEのないECIは除外してくれることを願う。

と、いろいろとあるけど、BEATはガイダンスが公表されるまではこの辺りにして、次のトピックに進みたい。題材は山のようにあるので何を選択するかが頭痛の種。チョッと考えてみるとしよう。