Sunday, June 4, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (6))

前回は期せずして抜き打ちで公表されたFIRPTA関係のIRSのLegal Memoに結構な紙面を割いた。上場株式に適用される5%(REITは10%)持分のFIRPTA課税例外規定の適用時に、マスターファンド等のパートナーシップが上場株式を所有する際、どのレベルで5%を判断するのか、っていう不確実性をクラリして欲しい、って言う希望は長年に亘りヘッジファンドとかがIRSに要請してた。念願叶って(?)Legal Memoっていう法源としては微妙な位置づけのクラリらしきものが公表されたことになるけど、もちろんヘッジファンドスポンサーにしてみたら単にクラリして欲しかったんじゃなくて、Look-throughしてブロッカーのケイマンフィーダーとかパートナーレベルの判断していいですよ、っていう点をクラリして欲しかった、ってことなんで同じクラリでもチョッと英語で言うところのMixed Feelingかもね。

FIRPTA自由化急ブレーキ

モビリティの高い世界のお金を米国不動産に投資してもらうため、ここ何年も自由化のトレンドが続いてたFIRPTAだけど、ここに来て急に締め付け方向に振れてる感はあるよね。後述する本題のDC REITの件にも関係する興味深いトレンド。不動産業界的にはFIRPTA自由化ではなくFIRPTA全面廃案が長年の悲願。REITに複数の特別な恩典が付与されている点からも計り知れる通り、不動産業界は議会には結構な影響力を持ってるんでPATH Actとかで立法的には連勝だったけど、行政府によるRegulatory対応でTKO、とまではいかないまでも軽いジャブを打たれてる感じ。

行政府のRegulatory規定の合法性

Regulatoryでどこまで法律を補完、場合によっては一部実質Overrideできるか、っていう争点は税法に限らず、全ての法律に関して常に存在する。民主党政権になると党是的に当然DCの省庁による規制強化台頭が激しい。バイデン政権も例外ではなく、というかおそらく史上最もアクティブにSEC、FTC、EPAその他、時には法の限界を試すような規制強化策を乱発している。結果として当然、訴訟が増えるし、最近は最高裁判所がRegulatory規制の違憲・違法行為としてStrike Downするケースが増えてる。

そんな判決を読む際の最重要ポイントは、最高裁判所は決して行政府のRegulatory行為の内容がポリシーとして好ましいかどうか、という判断している訳ではないという点。その手のポリシーマターはPeopleに選挙で選ばれた立法府、議会の責任。じゃあ、最高裁判所は何してんの?、って言うと憲法に規定される三権分立、議会が可決した行政府への権限付与、等に照らし合わせて行政府によるRegulatory規制が越権行為かどうか、っていう点の「Check of Balance」を司る役割。

最高裁判所の判決が出るたびに、多くのメディアが判決の対象となるポリシーに対して最高裁判所が賛成・反対を表明したと位置付けて大騒ぎになったり、最高裁判所の役割を無視したほぼ中傷に近い報道を繰り返すんで、判決の意味や意図が歪曲される傾向にあるんで注意。もちろん自分が好むポリシーを推し進めてるRegulatory規制が違憲、となったら嬉しくはないだろうけど、米国が法的支配の国、民主主義の国であり続けるには、三権分立は言論の自由と並んで守らないといけない最重要な憲法の規定だ。Regulatory規制に関してChevron原則っていう行政府に多くの裁量を認めている1984年の最高裁判所判例があるけど、時に行き過ぎるRegulatory規制に反応する形でChevron原則はここ数年徐々に浸食されてきてる感がある。近々に全面Overturnされる可能性もあるという噂だし。三権分立の今後の動向からは目を離せない状況だ。

IRSのLegal Memoやこの手の三権分立の話しはLed Zeppelinの話しじゃないんで個人的には本題からの脱線じゃないよね、って納得してるんだけど、とは言えそろそろDC REITに漕ぎつけたいのは事実。何と言ってももうMemorial Day Weekendも終わってしまったし。NYCはMemorial Dayの前から異例に過ごしやすい日々が続いてて、そのままMemorial Day前後のBreakもNYCでも良かったんだけど、またしてもマイアミビーチにGetawayする予定を入れてたんで、後ろ髪を引かれる感じ(?)でLGAから繰り出した。着いたら当然もっと熱くてよかったけどね。Vibrantなマイアミでキューバサンドイッチやキューバコーヒーを片手にタックスの勉強も捗ったし。Memorial DayってことでSouth BeachでAir Showやってて、その昔福生の米軍基地がカーニバルという基地をオープンするイベントに行ったりした頃を思い出したりしてたけど、マイアミのAir ShowはFighter JetsだけでなくStealthとかも飛んでて迫力満点だった。ただ、最初の一時間くらいは良かったんだけど、その後はBeachでリラックスするにはジェットの凄い音が鳴り響き過ぎだった感じ。まあしょうがないね。

REITはブロッカー

で、REITの話しに戻るけど、REITは米国税務上Corporation扱いされる主体じゃないといけない、っていう条件だけに触れてたと思う。この点は当たり前なんだけど重要。以前にも触れた通りCorporationなんで、それ自体がブロッカーになり得る。ただ、REIT自体が米国不動産持分を譲渡する場合、その年度のREIT分配は譲渡益に帰する部分がFIRPTA課税の対象になる。じゃあ、申告しないといけないから本当のブロッカーじゃないじゃん、って思うかもしれないけど、SWFとか大手のLPだったらExitは「REITによる米国不動産持分の譲渡じゃなくて、REITの持分譲渡で実行するように」ってSide LetterとかでREITやファンドに確約させたりすることは珍しくない。でもREIT持分の譲渡自体、FIRPTA課税の対象じゃん、って直ぐに反応できた方には座布団5枚。そんな弊害をオーバーカムできるのがDC REITの存在で、今回の特集と深い関係がある。DC REITは後述するから待っててね。でもそんな交渉レバレッジがない場合は確かにREITに直刀、またはよくあるストラクチャーだけどREITを所有するファンドにに直刀すると課税年度によっては申告義務が生じるんで、Upper Tierに自分のブロッカーを組成するか、またはファンドが用意してくれるフィーダーとかAIVがあれば、そこ経由での投資になる。とにかくLP側で申告義務が生じないようにストラクチャーするのがベター。

で、REITの他の要件は複雑で、各々の要件にDeepな検討がつきまとうんで他の要件は代表的なものを限定的にザックリ触れておく。REIT適格かどうかは組成時に必ずLegal Opinionを取るようにね。REIT持分を後年譲渡したり、M&Aに関与する場合、買い手から必ずREITのStatusにかかわるLegal LetterやRepの提出が求められるんで、その時点で「あれ、あの要件ミスしてるじゃん」とかならないように。

IncomeテストとAssetテスト

REITは不動産関係の投資Vehicleなんで、その活動は言うまでもなく不動産関連でないといけない。これを検証するのがIncomeテストとAssetテスト。Incomeテストは大別して2つあって、まず賃貸等の不動産所得に加えて配当や金利等のPassiveな所得がGross Income全体の95%を占めないといけない、っていう95%テスト。2つ目は不動産関係の所得、これにはモーゲージ債権からの利子所得も含まれるけど、がGross Incomeの75%を占めてること、っていう75%テストだ。

でAssetサイドに関しては、毎四半期末で全資産時価に占める不動産、現預金、国債が75%以上っていうテスト。この75%テストには、TRS(REITが直接従事できない取引を行う課税主体、例えばREITに所有されるアパートの管理サービス業務)の持分が時価ベースで20%超を占めてはいけないとか複数の追加要件がある。その中に一人のIssuerが交付するSecuritiesが全体の5%を超えてはいけない、っていう5%テストがある。ここでいうSecuritiesの定義はTitle 26の税法ではなくTitle 15の「Investment Company Act of 1940」 を参照するように規定されている。40年投資法だ。40年投資法に関しては泣く子も黙る(?)複雑な検討を強いられることが多い。UP-Cのパススルー主体Opcoの経営権をPubcoに与え、PubcoがHigh Vote株式で旧Opcoのオーナーに実質間接的に経営権を与えたりする複雑なストラクチャーも証券法専門の友人の話しだと40年投資法と関係があるらしい。AssetテストのSubsetの5%テストの対象となる40年投資法のSecuritiesの定義は極めて広範。

ザックリとか言ってて、なんで複数の追加要件のうちこの5%テストだけやたら深堀りしてんの?って釈然としない読者もいると思うけど、最近の金利急上昇でこのテストに抵触リスクが増えてるからだ。金利と5%テストとどう関係あんの?って、まるで風が吹いて桶屋が儲かるみたいな話しに聞こえるかもしれないけど、そこには深い訳がある。不動産投資に当然レバレッジはつきもの。で借り入れコストのリスク管理としてデリバティブとかでヘッジするのは以前から当然なんだけど、金利急上昇でヘッジサイドの価値が急上昇しているケースが多い。借り入れサイドと相殺が認められれば結局全体としては得したことにはならないんだけど、AssetテストはあくまでもAssetサイドだけで行う。そうするとDerivativeに結構な価値が出てしまい、しかもCounter-Partyが一社だったりするケースも多い。これってSecurities?って投資法専門家に照会すると「Securitiesです」っていう見解が返ってくる。え~、ヘッジ目的のDerivativeの価値が高くなって5%テストにFailしてAssetテストに抵触?っていう状況が散見される。ヘッジに関してはIncomeテストにも潜在的に同じような問題があり得るけど、こちらは一定要件下でヘッジされる取引との相殺が認められる条文が足されているんでOK。Assetテストに関してはなぜか同様の規定がないんだよね。思い当たる方は必ずアドバイザーと相談するようにね。きっとクリエーティブに解決を図ってくれるだろう。

株主100人要件

前回触れた通り、REITはリスク分散・プロのマネージメントに基づく不動産投資を広く一般にオファーしよう、っていうのが趣旨。SWFとかHNW個人のファミリーオフィスとかだったら独自でできるからね。だけどREITの優位性、特にブロッカーだけど分配控除で二重課税にならない、っていう特殊なフィーチャー、しかもRIC(BDC含む)みたいに40年投資法(また出たね)登録主体じゃないといけないっていう要件もないんで所謂Private REITもOK、とか弾力的なんで、不動産ファンド投資時のストラクチャリングに組み入れられるようになって久しい。

とは言え元々のREIT制度の導入背景から、REITには最低100人の株主が居ること、っていう要件がある。え~、米国のファンド経由でREIT投資してて、てっきりファンドがREITを100%所有してると思ってたけどファンドの他に99人も株主がいたの~、ってことはREITから受け取る分配はまさか1/100~???、ってビックリする読者もいるかもしれない。そうなんだよね。ビックリだよね。

だけど実はこの100人株主要件はチョッと骨抜きで、各株主の持分大小にかかわる制限もなければ、Common StockでなくPreferred Stockだけ所有してても株主としてカウントされる。ただ、当然だけど株主は株式の「Beneficial Owner」じゃなくてはいけない。Beneficial Ownerっていう概念は条約適用時にも頻繁に出てくるけど、Beneficial Ownerが誰かっていう判断は米国税務の原則に基づいて行われる。ハイブリッド主体にかかわる条約の恩典有無、特に源泉税低減条項の適用時には米国税務原則のBeneficial Ownerがオーバーライドされることがあるけど、これは超例外。この部分は決め事で、Beneficial Ownerのオーバーライドって考えるか、条約の文言の誰が所得を「Derive」してるか、っていう部分を条約居住者側の法令で判断する、って考えるか、言い回し的っていうか、学術的には双方の見方があり得る。REIT株主100人規定は条約とか関係ないんで、誰がBeneficial Ownerは米国税務の原則で判断され、結果としてNominee、Custodian、Conduit、等の名義人は無視される。パートナーシップとかはパススルーだけど名義人じゃなくて立派なBeneficial Ownerだからね。

で、面白いのは株主をどこで判断するか、っていう点。REIT税法の構成的にREITを定義しているSection 856で定義されていない用語は40年投資法(また登場)で判断するように、って規定されてて株主の定義もSection 856にはないんで40年投資法に基づくことになる。40年投資法や33年や34年の証券法ってザックリと大枠は理解しているものの、もちろん僕たちが専門に取り扱う法律じゃないんで、腰が引けるんだけど40年投資法の株主の単位となる「者」は単純に個人と団体と定義されてて、団体にはCorporationばかりでなく、パートナーシップ、信託、ファンドその他が広範に含まれるとされる。実際、40年投資法のこの定義に基づきIRSも100人株主の判断時には信託は一人と数えて受益者の数でカウントしないというルーリングをその昔出したりしてる。え~、じゃあファンド(=デラウェア州LPS)に100人LPが居ても株主は一人なの~?ってことになる。Look-throughしないということ。前回のIRSのLegal Memo、Portfolio Exemption、これから話すDC REIT、いろんな局面でいつパススルー主体をLook-throughして、いつしないのか、っていう点は複雑。パートナーシップ税制下、パートナーシップをいつAggregateと取り扱い、いつEntityとみるか、っていう概念的な基本構造に見られるテンションの一環だ。

で、ファンドが投資したり組成するPrivate REITは、実はファンドがCommon Stockの100%を持つことが多い。え~、じゃ100人どころか1人だからREITじゃないじゃん、って思うかもしれないけど、そこは心配無用。金額の大小は問われないし優先株でもいいんで、少額の優先株式を99人に交付して、Common Stock株主のファンドと足して100人になる。優先株式の金額がいくらならいいか、っていう点は法律に安全ガイドラインとかないんで、さすがに1ドルとか憚れて、マーケット標準は$1,000じゃないかな。しかもスポンサーが個別に99人探してくる、っていうよりも「REIT preferred investor service provider」っていう業者が居て、そこが99人ピッタリでは心もとないんで、大概125人とかの適格株主を提供してくれる。優先株だから固定配当で、マーケット標準は12%のリターン。何事も分業が確立されてて効率よくできてるよね。

同族持分(Closely Held)禁止要件

100人株主要件とチョッと似てるけど、別の要件にClosely Heldを禁止する要件もある。チョッと長くなってきたんで、ここからは次回。