Friday, February 28, 2020

接待交際費の損金算入制限にかかわる財務省規則案 (2)

前回、M&E費用の損金算入を制限しているSection 274ていうチョッといつもの、例えばGILTIとかとは違う「Everyday People」的な分野の財務省規則案に関して書き始めた。Everyday Peopleマターだけに逆に毎日の事業活動や申告書作成時には常の登場する検討事項と言える。

Section 274は基本的にM&E費用に関するルールだけど、M&E、すなわちMealsとEntertainmentは2つ異なる費目であり、別々の損金算入制限が適用され、基本オーバーラップはしない。ただ、Entertainment費用に込みで、食事代として別に明細が表記されてない場合には全体がEntertainment費用となる点は前回の野球やバスケットボールの例示でお分かり頂けたと思う。

そもそもEntertainmentって何?っていうベーシックな点に未だ触れてなかったのを思い出したけど、Mealsの定義同様にかなり広義。日本語にすると変かもしれないけど、規則草案では、歓待、娯楽、レクリエーションに当たると一般に理解される活動全て、とした上で、例として、バー、劇場、カントリークラブ、ゴルフ場、スポーツクラブ、スポーツイベント、狩り、釣り、バケーションその他の旅行における「もてなし」を挙げている。う~ん、狩りで接待ね。中々洒落てて、一回体験してみたいものだ。州のライセンスを取得し、U.S. Fish and Wildlife Serviceが指定するNational Wildlife Refugeに行って接待なのかな。チョッと動物が可哀そうでは、って思うんだけど、実はエコシステムの維持に貢献しているという話しを聞いたことがある。ステレオタイプ的に空想すると、空飛ぶカモを猟銃で一撃し、すかさずに同行している猟犬が走って行って獲物を見つける、みたいな状況。アーケードのゲームでも命中しないので、実際に遠くを飛んでる獲物を打ち落とすなんて僕には不可能だろう。そもそも銃の操作も分からないし、間違えて暴発でもさせて自分や「Entertainment」の相手に怪我でも負わせてしまったら、費用の損金算入どころじゃないし、契約も破断確実。まあ、Entertainmentを定義する財務省規則の例に狩りが載っていること自体、アメリカの先祖伝来の遺産というか歴史を感じてしまった。NYCというZooに居る限り縁のない世界。

とにかくこれらの活動は、その際中にどれだけビジネスをしても、活動内容がこれらに準じるということをもって常にEntertainmentと取り扱われるとバッサリ規定されている。これらの活動の目的がPRだったり、宣伝広告なので、別の費目で損金算入という議論を排除している。会食と異なり、必ずしも相手がいないとダメということではないようで、家族しか参加していないイベントも、仮に必要経費と認められてもEntertainmentとなる。ただ、納税者の事業は加味してくれるそうで、例えば、音楽評論家がロックコンサートに行く場合、通常コンサートはEntertainmentに当たるけど、その場合にはそれ以外の経費扱いとなる。ファッションメーカーによる春夏とか秋冬のコレクションを披露するファッションショーの費用も同様。一方、自動車メーカーがディーラーのイベントでファッションショーを企画したらそれはEntertainmentになるとしている。なんかM&Eの規則って普段読んでるGILTIとかFTCとかと全然違って例が面白い。また、宿泊費とか自動車関係の費用はその目的が出張等の事業目的であれば、Entertainmentには当たらないが、その他の目的で使用される場合にはEntertainment費用に区分される。

で、MealsはEntertainmentと異なり、50%損金算入っていうのが原則ルールだけど、一番分かり易い50%損金算入のMealsの例は、クライントとのビジネスランチ。また、クライントじゃなくても、例えば、パートナーがマネージャーをランチに誘い、今年の人事評価的なアドバイスとかをする社内ランチも典型的な例だろう。出張中の食費も同様。ただし、配偶者、扶養家族等のMealsに関しては、納税者が軍人だったり、または配偶者や扶養家族も従業員だったりする特殊なケースを除き、損金算入は認められない。

で、Section 274に基づくMealsの50%損金算入制限には例外がいつくかあり、それらの除外規定が適用されると、100%損金算入が認められる。代表的なものをいくつか挙げてみる。

まずは、自社の従業員に供与するMealsで、これらを従業員のみなし給与として取り扱い、きちんんと通常の給与同様にPayroll処理している食事代。例えば、ハイテク企業なんかでよくあるけど、自社のカフェで従業員に無償でオーガニックの食事を朝、昼、晩、提供しているようなケース。この食事代が少額フリンジ免除に当たらない場合、雇用者は食事代を従業員に対するみなし給与として処理することになる一方、50%制限は適用されず、全額が損金算入となる。これは当たり前の話しで、こんな取り扱いをしているということはそもそもMeals費用ではない。単純に従業員に給与を上げて、従業員が自社のカフェでコストを負担して食事しているのと同じ状況。給与なので当然100%損金算入。

ちなみにこの例で、食事代が少額フリンジとして従業員側で所得認識が免除されると、逆に雇用者側では50%損金算入制限の対象となってしまう。似たような例で、結構タイトな条件下でだけど、Mealsが雇用者側の都合で提供されていると認められると、従業員側で所得認識しないでもいいっていう例外があるけど、この例外が適用されるMealsは従業員側での給与所得認識がないことから、雇用者側では50%損金算入制限の対象。このパターンでよく出てくるのはメディカルスタッフとかが夜間待機させられる際に社内で軽食が提供されるようなケース。

また、雇用者が従業員のために企画するレクリエーション系のイベントにかかわるMealsも100%損金対象。レクリエーション系のイベントとして、ホリデーパーティ、サマーピクニックなんかが例に挙げられている。ただし、高額所得者、役員、10%以上の持分を所有する株主・オーナーへの恩典が主と考えられるイベントは従業員のための企画には当たらず、除外規定の適用はない。

典型的なのは、雇用者が12月にホテルのボールルームを借り切り、バフェで食事は食べ放題、ドリンクはオープンバーで、従業員全員を招待してホリデーパーティーを企画するような例。雇用者はMealsを含むパーティーのコストを100%損金算入することができる。

ここでのひとつのキーは従業員全員を招待している点。もしVP以上とか、高額所得者のみを招待してのパーティーだと事情が異なってくる。その場合、通常のルールに戻るので、もしホテルからの請求書に食事代が別途明記されていて、それが市場価格であれば、50%損金算入できる。前回のポスティングで書いたバスケットボールのお寿司とHelapino入りのチーズNachosと似てるね。

ホリデーパーティーとかと異なり、社内カフェやコーヒールームにおいてある無料のスナックとかはレクリエーションにかかわるものにはならないので50%のみ損金算入となる。例えば、会計事務所なんかでありがちだけど、Busy Seasonの土曜日とか、まあ例としては平日でも関係ないんだけど、臨場感を演出するため土曜日のTimes Squareのオフィスを想像してもらいたい。もちろん街はまだ眠っていて7th Avenueも42nd Streetも道行く人はまばら。Broadwayの路駐もしたい放題と勘違いして車停めたりして、Broadwayの日中路駐はTimes Square辺りは日曜だけだったのでチケット貼られて$110払うことになったりとか。で、各階のパントリーに、無料のコーヒー、ソーダ(米国では炭酸飲料のことを総じてソーダと呼ぶ。緑のソーダではないからね)、ボトルの水(たまにはHealthyなものもないとね)、チップス、ドーナッツ、その他スナックが置いてあったとする。これらのコストは雇用者側で50%損金算入。チップスやドーナッツじゃホリデーパーティーにならないもんね。

また、同じ「パーティー」でも個別のケースは50%制限。例えば、クライアントと従業員の双方が参加する夕食の日がたまたま従業員の誕生日だったとする。雇用者が気をきかせて従業員用にキャンドル付きの特別に大きなNYチーズケーキをオーダーし、レストランの従業員が3人で「Happy Birthday」を歌ってくれたとしても、このデザート代も含めて全額通常の会食代として50%制限対象。

また、現実にはあんまり見ないパターンだけど、一般大衆にMealsが供与される場合には、その一部が自社の従業員に供与されてたとしても、100%損金算入対象となる。一般大衆って言っても、新宿駅やPenn Stationでみんなに食事を配る必要はない。例えば、不動産エージェントが誰でもStop byできる物件のオープンハウスを開催し、そこに簡単な軽食を置くとする。軽食はエージェント、エージェントの従業員、潜在的なバイヤー、他の不動産エージェント等が食べるとする。軽食の消費が50%超、潜在的なバイヤーや他のエージェントだったことをサポートできれば全額が100%損金算入対象となる。50%以下の場合には、バイヤーやエージェントに供された部分のみ100%となり、自社消費部分は50%のみ損金算入だ。自動車のディーラーショールームにおいてある軽食とか、子供のサマーキャンプの企画会社が子供と自社従業員のカウンセラー双方に提供する軽食も同じ考え方。

最後にチョッと変な例だけど、レストランとかの飲食店でお客さんから食事代を受け取って提供している食事にかかわるコストはもちろんだけど50%制限対象ではない。さらにレストラン運営の一環で、店内で従業員にシフトの前後やシフトの最中に無償とかディスカウントで供与される食事にかかわるコストも100%損金算入できる。Chipotleとかで、従業員がよく山盛りのGuac付きのBowlとか食べてる姿を見かけるけど、あれだね。

慣れないM&Eの話しでちょっと疲れてきたので、この辺にしておく。ちなみにEntertainmentにしても、Mealsのタイプにしても、これらの項目を後から整理するのは大変なので、費用精算時点で損金算入ルールに基づいて会社側のシステムがこれらの費目をきちんと区分して管理できないと申告書作成時の負荷が高くなる。

次回はBEATとパートナーシップ、OECDピラー1のAmount A, B、Cと従来のALPの関係のどっちにしようかな。う~ん。M&Eでちょっと欲求不満気味なんでどっちも捨て難い。神様の言う通り、または英語で子供たちが言うところの「イニミニマニモ・・・」ってやってランダムに選ぶしかないかも。さてどっちになるでしょうか。

Tuesday, February 25, 2020

接待交際費の損金算入制限にかかわる財務省規則案 (1)

それにしても今年のNYCの冬は暖かくて楽。NYCの公立校が一斉に「Midwinter Recess」でお休みになる頃、例年だと氷点下の毎日が続くんだけど、今年は全然。カリフォルニア並みとは言わないけど、朝のMidtownは連日適度に寒くて気持ちがいい。2月も後半を迎え、朝6時前でもQueensのLIC辺りは朝焼けになってくるし、徐々に日照時間も長くなってきてるのが実感できる。まさしくHere Comes the Sun。しかも3月前半からは早くもDaylight Savings(夏時間)開始だ。Daylight Savingsに突入する日曜日は1時間少なくて一日23時間だから、朝5時に起きたつもりが6時だったりして毎年のことながらショック。ただ、昔と違ってiPhoneとかPCとか勝手に時間変えてくれるんで、時間間違えたりすることはなくなったけど。

で、テリトリアル課税の対象所得がどれだけ少ないか、っていう話しも一応ラップアップでき、その一環で前回はGILTIの高税率免除規定にも触れることができたし、次はBEATとパートナーシップの関係、またはOECDピラー1のAmount A、B、Cと既存ALPのDeepな関係とか、いろいろと面白そうなトピックが山積みなので、何にしようかな、と考えていた矢先の2020年2月21日、TCJAで一部改定されてたSection 274、すなわち接待交際費の損金算入制限規定にかかわる財務省規則案が公表された。接待交際費っていう和訳はチョッとMisleadingで、正確には「Meals and Entertainment」にかかわる規定。Mealsは接待に限らず、社内のパーティーとか事業目的の飲食全てを網羅する。M&Eって略され、Big 4だと、M&Eばかりやってる専門家が結構居るほどこれはこれで奥深いエリアだ。

M&EってMedia and Entertainmentセクターを意味することもあるんで、社内で使われる際も、文脈でどっちのこと言ってるのか判断する必要がある。アルファベットの頭文字の略語、アクロニムが次々誕生するので要注意。例えばUTPって言うと、僕たち米国税務の世界では「Uncertain Tax Position」のことだったけど、最近は気を付けないとOECDピラー2のUndertaxed Paymentのことだったりする。まあアルファベットは26文字で構成されるから、3つのアルファベットの組み合わせでも算数的には1万7千以上あるからまだまだ安心(?)。コマーシャルジェットが離着陸するAirportは世界に1万程度って言われているので、Airportのコードが3文字で足りる訳だね。でも、プライベートジェット専用とかを含むと世界で4万とも言われてる。ということは3文字のコードはない空港もあるってことになるよね。まさか重複して使用はできないだろうし。モンタナに行くつもりがミズーリに行っちゃたり大変なことなるもんね。

って、またどうでもいい話になってきたので、M&Eの話しに戻るけど、Section 274はM&Eを費用扱いしていいですよ、って言ってくれている条文ではない。それは事業にかかわる必要経費を規定しているSection 162とかの世界。したがって必要経費でなければそもそも損金算入は認められない。この区分は主に個人事業主にとっての課題。で、Section 274は200番台、しかも261番以降に位置する点からも分かる通り、仮にSection 162とか他の条文で損金算入できるって規定されている費用項目でも、特別に制限を加えている条文のひとつだ。

で、今回はクロスボーダー課税でも、Sub Cの組織再編でも、Sub Kのパススルーでもなく、柄にもなくM&Eのお話し。余り得意分野じゃないので、適度に「ふ~ん」って感じで読んで頂きたい。即時償却が初めて中古資産にも適用が認められたのを受けて、M&Aばかりやっている連中が急に有形資産の償却を定義しているSection 167とか168とか、更に定義に使用されている179とか従来の守備範囲外に手を出したりしてて面白いけど、M&Eもその類の話しだ。ちなみに即時償却とM&Aの関係は超Deepなので、そのうち触れてみたいけどね。

で、M&EのSection 274ってもちろんTCJA前からあるんだけど、M&EのEに当たるEntertainment費用はTCJAにより原則全額損金不算入になってしまった。以前は結構なケースで費用化できていたのに。一方、MのMealは従来から引き続きTCJA後も原則50%制限。ただ各々の原則ルールには多くの例外が規定されていて、たかがM&Eのくせにとても複雑怪奇になっている。

Entertainment費用は損金不算入だけど、Mealは50%OKっていうのがSection 274の原則っていうのは上述の通りだけど、規則案では、このルールを具体的な異なるSituationにおける適用例を結構突っ込んで規定していて面白い。まず、Mealだけど、50%の損金算入が認められるのは通常のMealで、LavishだったりExtravagantだったり、つまり過度に贅沢な食事は全額損金不算入。何がLavishかはケースバイケースなんだろうけど。例えばインディアナ州のSouth Bendの会食とNYCのMidtownの会食では相当金額的に差異があるんで、Lavish度合いも異なる。

会食費用もMealなんで50%損金算入できるけど、会食と認められるには、カスタマー、クライアント、サプライヤー、従業員、エージェント、パートナー、アドバイザー系の相手が同席してないといけない。でも、まだクライアントじゃない相手を会食に誘ったらどうなっちゃうの、って心配した方がいるようで、そんなSituationを想定して、会食をしてる時点で必ずしもクライアント等である必要はなくて、潜在的にクライアントになる現実的な可能性があればOKだそうだ。

Entertainment費用はダメでMealは50%となると、EntertainmentにMealが一部入ってたらどうなるの、とか現実的によくある状況への適用が気になる。この点に関する基本的なアプローチは、別々にバラして各々のルールを適用っていうことなんだけど、Entertainmentの一環でMealが出てMeal代がEntertainment費用にごちゃごちゃに含まれちゃってて明細みてもどれがMeal代が分からないようなケースは全額Entertainment費用になってしまうので要注意。

例えば、ある納税者がクライアントを誘って野球を見に行ったとする。野球のチケット代はEntertainment費用に当たるので、野球場でどれだけ商談したり、野球そっちのけでビジネスの話しをしてたとしても関係ない。問答無用に全額損金不算入。もちろん、趣味で野球見に行っているだけだったらそもそも私的な支出なので個人事業主だったら最初から費用にはならないし、法人の役員とかだったらみなし給与だろう。で、野球見に行ったら当然、ホットドッグとドリンクを買うことになるけど、納税者が自分は下戸なのでホットドッグとコーク、クライントにはホットドッグとビールを買ったら、それはもちろん野球のチケットに込みじゃないし、別に支払うのでMeal代として50%損金算入となる。

え~、ドリンクってMealなの?って思われた方は中々面白い。規則案ではMealは広く定義され、ドリンクやスナックを含むとされる。更にデリバリーにかかるコストやチップ、更にSales Taxなんかが掛かれば、これらも付随費用としてMeal代に含まれる。ただし、付随費用と言っても限界があり、例えば自社のカフェの運営に必要な人件費やオーバーヘッドはMeal代には当たらない、としている。なかなか常識的。

今度はバスケットボール。この納税者はチョッとハイエンドでStaples CenterとかMSGでSuiteを借り切ってクライントを招待したとする。で、Suiteを借りると当然いろんなMealが付いてくるけど、それはSuite代に込みとする。その場合、Mealが別に請求されないので、全額Entertainment費用と取り扱われ、損金不算入となる。せっかく野菜のスティック食べながらバスケットボールそっちのけでビジネスの話ししてたのにね。

で、このクライアント結構お腹空いたみたいで、Suiteで提供される食事にはあきたらず、外のBoothからまずいお寿司とチーズNachosのHelapino入りをオーダーしたとする。凄い食べ合わせで翌日腹痛になったかどうかは不明だけど、請求書にお寿司代とHelapino入りチーズNachos代が明記されていて、かつその価格が外のBoothで一般の観客に販売されている金額と同じだったら、その部分だけ50%損金算入される。他のSuite代とかはEntertainment費用として全額損金不算入だ。

ということで、次回はもう少しMeal、特にどんな時に100%損金算入できるか、とかに関して。

Saturday, February 8, 2020

GILTI高税率免除規定

前回までテリトリアル課税の対象となる所得が絶滅寸前って話しを数回に亘りポスティングしてきたけど、その主たる原因は心無いハンターの乱獲、じゃなくてTransition TaxやGILTIを規定したTCJA、またSub FとGILTIが優先的に適用されるという財務省の新たな国際課税システムの世界観にある点に触れた。毎期、CFCの所得は原則全額GILTIとして米国株主側で合算されPTEPに生まれ変わっていく。そんな根本的な仕組みに一矢を報いるかもしれない規定が財務省規則案として公表されている。待望のGILTI高税率免除規定だ。

GILTIと言えば、今話題のOECDのBEPS 2.0 のIncome Inclusion Ruleのモデルだけど実際には似て非なるもの。OECDは2020年1月末にBEPS 2.0 の途中経過を公表し、「Fast Pace」で順調に推移しているフリ(?)をアピールしてて、ピラー1に関しては、「え~自動車業界はConsumer Facingだって名指しで指定されている一方、うちの業界は入ってないけど包括的なリストって訳じゃないから油断は大敵ってことか・・・」とか既に目を通された方も多いと思うけど、Annex 2にはピラー2の現状が記載されていた。で、そのコメントを読んでも、あそこまで焦ったタイミングの導入を正当化する「Policy Objective」が未だに明確でないように感じた。一方、Income Inclusion Ruleのお手本(?)となる米国GILTIはFDIIと共に機能し、米国MNCが米国外事業を行う際、これを米国から行っても海外のCFC経由で行っても米国法人税負担は同じという、ニュートラルな課税関係を提供し、米国MNCの行動パターンを変えさせる、という明確な目的に基づいて設計されている。FDIIっていう制度はGILTIとセットで理解する必要があり、FDIIだけ見て有害税制と言ってしまっては米国の制度設計面からは片手落ちだし、万一FDIIだけ消滅してGILTIだけ存続しようものなら、GILTI導入のPolicy的な意味合いも半減する。全然関係ないけど、システムロスなのに片側検証して所得を認定するような変な感じ?

ちなみに、OECDの作成する文書ってヨーロッパチックで、スペルも米語とは異なるし、用語も米語では馴染まないものが多く、個人的には一読して頭に入り辛い。科学の実験学習のようなフローチャートがついてたりしてたのはビジュアルで助かったけどね。

最終的にピラー2のIncome Inclusion Ruleの末路は現時点では不明だけど、OECDで提案されているミニマムタックス課税は、CFC側で所得がミニマム税率で課税されていないと判断されると、ミニマム税率との差額に当たる部分を本国株主側で支払わせる「Top-Up」方式となっている。一方、米国のGILTIはそうではなく、CFCがどんなに高い税率で課税されていても、みなしルーティンリターンを除き一旦全額米国で合算させられる。合算後に50%の控除があり、それで実効税率が21%の半分の10.5%に下がる仕組み。NOLがあったりして、50%控除が取れないと悲惨。更にCFCが毎期支払う法人税のうち、Tested Incomeに適切に対応すると取り扱われる金額の80%を間接税額控除として使うことができる。教科書的にはCFCが米国外でTested Incomeに対して13.125%の法人税を納めていれば、その80%は10.5%だから、米国で持ち出しの法人税は発生しないことになるし、実際にGILTIの立法趣旨にはそのように明記されている。でも現実には、FTCの制限枠算定時に米国株主側の費用の一部をGILTIバスケットに配賦することになるので、10.5まるまるGILTIバスケットのネット外国源泉所得として残ることは稀。結果としてGILTIバスケットに配賦された米国株主側の費用額の21%が米国における追加課税額となる。

この思わぬ(?)結果はGILTIが可決した直後から問題視されていて、財務省の規則策定権限を利用して、FTCの枠算定時にGILTIバスケットには費用を配賦しないでいいようにして欲しいとか、CFC側で13.125%以上で課税されている所得項目はTested Incomeから免除して欲しいとか、多くの「参考になる(苦笑)」コメントが納税者から財務省に寄せられていた。GILTI規則案では、これらのコメントは日の目を見ず、GILTIの法文に明確に規定されるかなり狭義な高税率免除しか認められていなかった。すなわち、Foreign Base Company Income(「FBCI」)またはInsurance IncomeとしてSub Fなんだけど、Sub Fに従来から規定される高税率免除規定でSub F合算から免除されている所得に限り、Tested Incomeからも免除してあげましょう、という規定だ。これはGILTIの高税率免除規定というよりは、Tested IncomeからSub Fが免除されている措置の延長と位置付ける方が実態に近い。

で、GILTI規則はそのまま最終化されてしまったけど、最終化の際に財務省は「新」規則案を公表し、ナンとGILTIに特化したフルの高税率免除規定案を提示した。元々の旧規則案から180度異なる展開と言え、納税者にとってはうれしい驚きとなった。免除を取り巻く規定がどちらかと言うと堅苦しいので、最終化の際にはもう少し弾力的な規定にして欲しいというコメントもあるけど、余り贅沢を言ってはいけない(?)。

GILTI法文からは読み取れないそんな広範なGILTI高税率免除規定をどうしたら行政府が規則として策定できるか、という法的権限は結構際どい。その証拠に、最初の旧規則案を策定した時点では財務省自ら法的に難しい、という解釈をしていたはず。それがここに来て一転しているのは、立法趣旨に基づくポリシー的なコールとしか言いようがない。ただ、ポリシーだけでは財務省は規則を策定できないから、例えストレッチしまくるにしても、何らかの法的な理論を構築しないといけない。で、いざとなると抜群の伸縮性を誇るストレッチマテリアルに変身してくれるのが手品師の財務省。Sub FのFBCIやInsurance Incomeに従来から適用可能だった高税率免除規定の法文を解剖し、その一部の表現に「全ての所得項目」に高税率免除規定が適用可能とも無理すれば読めなくもない部分があり、それを最大限利用し新らたな解釈を捻出している。なかなかクリエイティブ!議会が法文を変えることは今の政局では難しいだろうから、立法趣旨を反映させるため、End Result Orientedな苦肉の策と言える。納税者にとっては悪い話しではないので、規則策定権を問題視する者もいないだろし。

で、未だ最終化された訳ではないので余り詳細に検討してもしょうがないけど、GILTI高税率免除規定案の内容を簡単に紹介しておくと次の通り。

まず高税率免除がキックインされる税率だけど、18.9%。これは法人税率21%の90%を基準に高税率を規定しているため。TCJA以前は法人税率自体が35%だったので、その90%というと31.5%というとんでもない高税率で、そんな税率の国は今どき地球上には存在しないに近く、ほぼ役に立たない免除規定だった。それが法人税が21%に引き下げられ、その90%が18.9%になったことでSub F適用時には息を吹き返した感じだった。それがそのままGILTIにも拡大される可能性が出てきたと言うもの。立法趣旨的に13.125%を期待する向きもあったかもしれないけど、GILTI高税率免除規定はSub FのFBCIやInsurance Incomeに適用される高税率免除規定の法文を流用しているに過ぎないので、18.9%以外はあり得ないだろう。

次に実際に選択を行う者だけど、これはCFCの支配株主。まるで前回までのテリトリアル課税の対象所得のポスティングで触れたExtraordinary Reduction規定の課税年度をCloseする選択みたいだけど、これは従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fからの免除と同じ規定。支配株主による選択は選択対象となるCFCの米国株主全員に強制適用となる。

選択は対象となる課税年度に適用されるばかりでなく、納税者が取り消すまでその後の課税年度に自動適用され続ける。選択の取り消しは可能だけど、一度取り消すと、その後60カ月に亘り、IRSの特別な許可を受けない限り再選択が認められない。ただし、CFCの支配株主に変更があった場合は新たな支配株主による選択有無の判断が認められる。従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fからの高税率免除は、課税年度毎に自由に選択ができるので、60カ月の待機要件はGILTIに対する特別要件。GILTI、特にGILTIバスケットのFTCの状況は毎年異なるので、この5年の縛りは厳しく、緩和リスエストが多く財務省に寄せられているだろう。

で、選択対象は基本個々のCFC単位だけど、従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fの免除と異なり、共通の支配株主および関連者が直接・間接に50%超の議決権を有する2社以上のCFCを共有支配CFCグループとし、当グループ内CFCには、GILTI高税率免除規定の選択有無を一貫して適用しないといけない。また、選択はCFC単位で行った上で、高税率かどうかの判断は所得項目毎の判断となる。となると、どんな括りで所得項目を特定するかが最重要検討事項になるけど、GILTI規則案では、ここはQBU単位と言っているよう。QBUっていうのはQualified Business Unitのことで、元々機能通貨の適用単位にかかわる規則で登場するコンセプトなんだけど、TCJAでFTCに支店バスケット追加されたり、FDIIも支店所得は対象外だけど、支店という概念をきちんと整理している規定が他にないので、TCJAの世界ではQBUが機能通貨以外の目的で支店の定義として流用されることが多い。

で、GILTI高税率免除規定の適用時に、高税率かどうかっていうのはQBU単位での判断となることから、CFC自体、そしてDRE、本当の支店、等に属する所得は各々税率何%で外国で課税されているのかの判断が必要となる。選択はCFC単位だけど、一旦選択した後、DREとかQBU毎に税率を判断し、低税率の部分には免除が適用されないことになる。米国MNCはCheck-the-BoxでDREを多用しているからここの検討は複雑だろうね。

まあ、これから最終化される過程で細かい規定には変更が加えられることもあるだろうから、詳細は最終化されてから深掘りしてみたい。でも、このままの流れでGILTI高税率免除規定が最終化されて、その適用でCFCの所得がGILTIから免除されると、前回までのポスティングで触れてきたテリトリアル課税の対象所得の候補が一人増えることになる。絶滅するかと思ってたら、急に新種の生物が空から降って来た感じ。

ちなみにGILTI高税率免除規定は財務省規則案が最終化される以前に早期適用することは認められない。でも財務省による高税率免除の法的な正当性を読む限り、規則案ではなく法文に基づいて直ぐにでもGILTI高税率免除を適用するポジションもあり得るように感じられ、ついフライングしたくなるけどね。

Sunday, February 2, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (5)

前回のポスティングでは、Extraordinary Reduction規定の背景Lesson 1に触れたけど、今回はExtraordinary Reduction規定そのものに関して。

この規則の骨子は「CFCの支配株主が認識できるDRDはExtraordinary Reduction額以外の部分に限定する」というもの。相変わらずややこしそうな規定だけど、支配株主とは、関連者の持分も加味して50%超のCFC持分を保有する米国株主で、テリトリアル課税のDRD適用条件を充たす者とされる。面白いことに、関連者規定を加味して自ら50%超の持分要件は充たしてなくても、支配株主と結託したり、協力している仲にあると取り扱われると、そんな株主も支配株主とみなすと規定されている。この実態に基づく支配の考え方は米国の移転価格でよく取り沙汰される論点だね。それにしても、こんな概念で支配株主を定義してる点を見ても、財務省はよっぽどテリトリアル課税の悪用を気にしてるんだね。チョッと気にし過ぎ?

で、Extraordinary Reductionがどんな時に発生するかって言うと、支配株主が所有するCFC持分の10%超のCFC持分を譲渡、または支配株主が所有するCFC持分に10%超の変動が生じた場合。これだけでも複雑~。Section 382の持分変動の規定みたい。これらのテストは、CFC全体の持分ではなく、自分が所有する持分を基に10%を算定するのがポイント。1つ目のテストは、例えば80%の持分を所有する支配株主が8.1%の持分を譲渡すると抵触する。2つ目のテストは、例えば、90%の持分を所有している支配株主が居て、CFCが他の株主に追加株式を発行することで、90%株主の持分が81%未満に低下してしまうようなケースが対象。この2つのテストを読んで、なんでテストが2つ必要なのか分かる人居る?どう考えても2つ目のテストだけで双方の状況をカバーしそうなもんだけど。そこが財務省の凄いところで、最初のテストは、例えばCFCの株主同士で同じ%の持分をスワップして譲渡する場合、誰の持分も低下しないけど、1つ目のテストの譲渡規定には抵触する仕組み。確かにその場合も、双方で譲渡益だのみなし配当だのっていう処理が発生するからなるほどね、って感じ。

で、これらのExtraordinary Reductionをトリガーする取引があった場合、Extraordinary Reductionがなければ支配株主が認識したであろうSub FやTested Incomeで、他の米国株主が認識することのない金額に対応するE&Pを基とする配当額がExtraordinary Reduction額となる。Extraordinary Reduction額としてDRDが否認される配当は、全額21%で課税され、Section 902はもう存在しないからFTCも取れない。

え~、そんなんだったらGILTIより酷いじゃん、って思うかもしれないけどその通り。GILTIだったら50%のGILTI控除があり、米国側がNOLでなければ最悪でも10.5%課税だし、FTCを考えれば場合によってはゼロ近くなることもある。一方、Extraordinary Reduction額としてDRDが否認されるとまるまる21%課税。これは余りに酷いということで、支配株主が自らGILTI課税を選択することが認められる。なんかGILTIが有難く見えてきたりして不思議だけどね。具体的にはExtraordinary Reductionが生じた時点でCFCの課税年度を終了させる選択。以前から言ってるようにCFC課税はCFCのCFCとしての課税年度が終了した時点で発生するものから、課税年度を終了させてしまえば自然とSub FやTested Incomeがフローアップしてくる。支配株主がこの選択をすると、他の株主から見てもCFCの課税年度が終了したように取り扱われることがある。21%課税と0~10.5%課税かの選択だから、選択とは名ばかりで実際にはオプションはなく常に選択をすることになるだろう。だったら、なぜ選択制とか言って格好つけてんのかってというと、多分だけど、法文的にCFC課税年度を強制終了させることはかなり無理があり、これを行政府が策定する規則で強制するのは、さすがに規則策定権限を逸脱してしまう、と考えたのではないだろうか。そこまでして課税年度を終了させてくれたりGILTI課税にしれくれたりして、チョッと優しいお心遣いっぽくもあるけど、単純にDRDを認めてくれたら本当の心遣いだったんだけどね。

ちなみに、Extraordinary Reductionには少額免除制度があり、CFCのSub FとTested Incomeの合計が$50MまたはCFCの課税所得の5%のいずれか低い金額を超えない場合には、Extraordinary Reduction額はゼロとみなされる。

このExtraordinary Reductionは日本企業がCFCを米国傘下から外す際に関係してくる。ついこの前の1月15日に提出した2019年3月期の法人申告書の作成で分かったと思うけど、米国の下にCFCを所有していると、GILTI支払いがあったところ、またGILTI合算でNOLを21%で食ってしまったところ、等の実害を実感したケースもさることながら、Form 8992、特にSchedule A、更に大幅に分厚くなったForm 5471の作成とか、コンプライアンス負荷はとても高い。それでも連邦は規則も大概において分かったし、IRSも良く内容を理解して様式をデザインしているので、GILTIやBEATを含むTCJAのクロスボーダー規定を原因とするコンプライアンス負荷は感覚的に130%アップくらいな感じだろうか。問題は州税。50 州+DCが各々主権国家として別の税法を制定している米国。以前から、どの州がどこまで連邦税法を取り込んでいるかとかバラバラで、実務的にはどこまで探求するべきか、っていう世界に突入してるとも言えるけど、TCJAのクロスボーダー規定を各州がどのように取り込むかに関しても規定がまちまちだったり、良く分かんなかったり。特にユニタリー合算制度との関係とか、州当局も追いついてないことも多い。また膨大な申告書を作成するソフトウェアベンダーも各州の様式や連邦からのデータインポートのタイムリーなアップデートが追い付かず、作成する際にマニュアルオーバーライドしたり、それにより合算計算が無茶苦茶になったりして大変。

日本企業のようなインバンド企業は、生まれながらにInversionしていると同然で米国MNCから見ると夢のようなストラクチャー。すなわち米国傘下からCFCを外すという奥の手があるので、事業上の目的に差支えのない範囲で今のうちに日本親会社の下とかにCFCを付け替えるのがいい。この移管自体にかかわる課税関係は、今回のポスティングのテーマのExtraordinary Reductionを含む複雑な規定を適用して検討する必要がある。ただ、Transition Tax等でCFC側のE&PがPTEPになって、CFC株式の税務簿価が増額している今がチャンス。数年したらCFC株式簿価のトラッキングだけでも訳分からなくなるリスクも高い。BEATはストラクチャー変えてもなくならないから、これだけでも面倒なのに、GILTIはストラクチャー的に合算計算を回避できるので、そのままにしておくってことは、相当のコンプライアンス負荷を覚悟した上での判断ってことになる。コンプライアンス負荷が高いと言うことは、すなわちリスクも高くなるし、会計事務所に支払うFeeも高くなるということ。会計事務所側の、規則の正確な把握も含む作業量増大は凄まじいからね。それでも1月15日の23時59分にはE-Fileが終わるから不思議だけどね(苦笑)。

それにしても、5回に亘ってテリトリアル課税対象所得が絶滅寸前っていうテーマで書いてきたけど、万一、そんな奇特なE&Pを分配することができたとしても、まだゲーム終了ではない。確率としては高くはないけど、GILTIにもSub FにもなってないE&Pを分配して、それがAnti-Hybrid規定に抵触したり、またはテリトリアル課税のDRD適格要件の保有期間を充たしていない配当があったりしたら、テリトリアル課税のDRDは適用されない。それどころかFTCの恩典もないので21%課税で最悪。そんなんだったら、これらも一層のことGILTIになってたら良かったのにね。物事は相対的なので、税負担的には結局GILTIってそんなに悪くないかな、って思わせる局面が多いね。さらにDRDの対象になったからと言っても喜ぶのはまだ早い、DRDの金額が相対的に大きいと、条件次第で配当時に株式簿価を減額させられ、簿価がゼロを割り込むとキャピタルゲインとなる。こちらも21%。またDRDの恩典を受けた後に、CFC株式を譲渡して損失が発生すると、損失計算目的で過去に計上したDRD額に関して株式簿価を減額しないといけない。全て21%で課税される税効果を持つ。散々だね(苦笑)

これらの規定をきちんと適用するには、CFC側のE&Pが何で構成されているのかを常に把握し、分配があったり、譲渡があったりする際には、分配や譲渡益が何なのかを理解しないといけない。実はこの点が規則の理解と並んで大変。テリトリアル課税になって、PureなE&Pも課税されないし、PTEPは課税済みだし、もうPTEPなんて管理しなくていいのでは、って思うかもしてないけど、どんな理由でいつPTEPになったかにより、為替差損益、FTCの取り扱いが異なるからしっかり管理しないといけない。PTEP分配で簿価がゼロを下回るとみなし譲渡益でこちらも21%課税だし。2019年1月のNoticeではPTEPだけでも16種類に区分されていた。皆さんは自社のCFCのE&Pがいくらで、16種類のPTEPのどこに属していて、滅多にないけどPureなE&Pがあったりするかご存知でしょうか?これ知らずして配当とかできないし、申告書の作成もできない。2017年末で一旦E&Pが洗浄されているのを機に今後は毎年トラッキングがMust。なかなか自分達ではできないのでBest ITS Practice Ever!(トランプのTwitterみたい)のEY US国際税務部門にFeeベースで依頼してみる(笑)?

Saturday, February 1, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (4)

前回までのポスティングでは、テリトリアル課税対象となるPureなE&Pがただでさえ少ない中、TCJA下の新国際課税システムに関して財務省やIRSが懐く世界観、すなわちSub FとGILTIが優先的に適用され、残余E&Pがあればテリトリアル課税の対象にしてあげると言うアーキテクチュアー、に基づき、PureなE&Pは財務省規則によりその範囲がますます狭められていく傾向にある点に触れてきた。前回は、その一例として「Extraordinary Disposition」規定による空白期間のE&Pを取り締まる暫定規則を紹介したけど、今回は、空白期間という一過性の話しではなく、恒常的に今後も発生する「Extraordinary Reduction」取引に基づくE&Pを取り締まる暫定規則に触れてみたい。

この話しをするには従来から存在するCFC課税の基本を理解しておかないといけないので、極簡単に背景に触れておく。言うまでなく、この背景そのものも実はとても複雑だけど、ここではLesson 1の「This is a pen」程度に触れておく。

TCJAで導入されたGILTIもそうだけど、従来からもCFCの所得の合算課税は、CFCがCFCであり続ける限り、CFCの課税年度終了時点で、その時点の米国株主に合算課税対象所得がフローアップして課税が発生する。CFCの課税年度を通じて同じ米国株主がそのCFC持分を継続所有していた場合には、この合算方法は普通に当たり前のものだ。一方、期中にCFCの持分譲渡があった場合にどうしてたかっって言うと、譲渡後もCFCであり続けるケースでは、あくまでもCFCの課税年度末に米国株主の位置づけにある者がSub Fを合算することになっていた。GILTIも同様。そうすると、自分が所有していない期間にかかわるSub FやGILTI、すなわち経済的には譲渡人に属するべきSub FやGILTIも、譲受人がまるまる合算しないといけなくなる。で、そんな理不尽な結果を是正していたのがSub F合算額からの「配当除外規定」。この規定は実際の適用はチョッと難しいけど、CFCの課税年度終了時の米国株主がSub Fの合算額を決める際、その課税年度内に他人が受け取った配当のうち、当該年度のSub F相当部分でかつ自分がCFC株式を所有していない期間に対応する金額を除外してよろしいという規定だ。

この制度はTCJA前は概念的に実に良く機能していたと思う。仮に、譲渡が起こる課税年度に実際に配当が存在しない場合も、株式を譲渡する側は、譲渡益に占めるCFCのE&Pのうち譲渡人の持分%および保有期間に対応する金額はみなし配当となるので、配当課税が起こる。そのうち、譲渡発生年度のSub Fに対応する額の譲受人が株式を所有していない期間に帰する部分、面倒な言いまわしになってるけど、要はもし譲渡が課税年度内に一回だけだったら譲渡人が所有していた期間に帰する部分に関して、譲受人によるCFC課税年度末のSub F合算額が減ることになる。元々Sub FっていうのはAnti-Deferralだから、CFCの株式を譲渡した側はE&Pに対して配当課税されることでDeferralは完全に解消され、その分に関して譲受人がSub F合算をする理由も必要もなく、結果として綺麗に各々が課税されるべきE&Pに課税される制度になっていた。

ちなみにこの考え方は、株式譲渡後も外国法人がCFCであり続ける場合にのみ適用が必要なもの。外国人に株式が譲渡され、外国法人がCFCでなくなってしまう場合には、譲渡時点でCFCとしての課税年度が終了するので、譲渡人はその時点で普通にSub F合算をさせられ、譲受人側におけるSub F合算の減額云々の処理は不必要となる。

この実に良く考えられた制度の大前提は、譲渡人が認識する配当が課税されるっていう点。もちろん以前は配当に間接FTCが認められたので実際にFTC後に支払う米国の税金は少ないケースもあっただろうけど、それはSub F合算も同じなので、綺麗にEquationが成り立っていた。ここまで書けば、テリトリアル課税の導入との絡みにピンと来た方も多いだろう。その通り。TCJAでCFCからの配当(みなし配当含む)は100%DRDで非課税となった。となると、譲受人側ではSub FやGILTIの計算基となるTested Incomeの合算額を、譲渡側の配当額に関して減額するにもかかわらず、譲渡側では配当が課税されないというふぞろいの林檎みたいになってしまう(古~)。

CFCのE&Pのうち、PTEPはそもそもみなし配当ではないので、あくまでもPureなE&PがCFCに存在する状態で譲渡が行われる場合の話しだけど、TCJA直後からこの論点は問題となっていて、議会によるTechnical Correctionの可能性も取り沙汰されたりしてたけど、議員さんは国民のために法律を通すために選ばれているはずなんだけど、立法はそっちのけで(苦笑)ポリティカルな事案に忙しいので、当然Technical Correctionが可決したり議論されたりする訳はなく、となると行政側の財務省に策を講じる法的権限が存在するのか注目されていた。

そんな中、不均衡を利用したプラニングが散見され始め、さらに、これは昔からあったけど、譲渡直後にCheck-the-Boxその他の手法でCFCのUS Yearをいきなり終了させてしまい、譲渡以前の期間に対応すると取り扱われる配当額を最大限化してみせたり、法文的にはその通りとは言え、チョッと抜け穴利用が過ぎる観はあった。空白期間の取り扱いと異なり、どちらかと言うと趣旨的にも調子が良すぎる結果となるからだ。

この問題は、Sub Fだけの世界だったらインパクトも限定的に終わったかもしれないけど、GILTIでCFCの所得は基本全て毎期、米国で合算されるために数字的なインパクトが大きい。さらに問題を複雑にしてるのが、TCJAによるCFCや米国株主の認定時のDownward Attribution適用免除規定の撤廃。Downward Attributionの適用が免除されていた従来の認定法では、例えば、日本企業の米国子会社が所有するCFCの株式を日本親会社に譲渡してしまえば、その外国法人はCFCではなくなっていた。ところがDownward Attributionが適用されることになってしまったので、日本の親会社が所有している持分は、米国子会社が所有しているとみなされ、外国法人は引き続きCFCであり続ける。ここで面白いのは、CFCでありながら、本当に直接・間接にCFCを所有している米国株主が存在しないこと。となると、さらに凄い結果となり、CFCの課税年度終了時点でSub FやGILTI合算をする米国株主が存在しないにもかかわらず、外国法人はCFCであり続けるので、譲渡時点でCFCの課税年度は終了せず、だれもSub FやGILTI合算をしないことになる。しかも、譲渡が発生している課税年度のE&Pは譲渡がなければSub FやTested IncomeとしてGILTI合算されたにもかかわらず、みなし配当となる範囲で譲渡人側でテリトリアル課税のDRDで非課税となる。極端な例を挙げると、3月決算のCFCの持分を3月30日に米国から日本に譲渡すると、一年分のSub FやGILTIが消滅してしまうこととなる。4月1日に譲渡したら、3月末でSub FやGILTIはまるまる合算されていたのと著しく対照的。

以前から触れている財務省やIRSの世界観に照らし合わせると、譲渡課税年度のE&Pが一部でもSub FやGILTIを素通りして、テリトリアル課税の対象となるような結果は到底、容認不可能となる。

そこで前回のポスティングで触れたExtraordinary Disposition規定が導入された暫定規則に、今度は「Extraordinary Reduction」という規則が同時に規定された。何でも「Extraordinary」って名付けると怪しい感じになってDRDの対象じゃなくなっちゃうみたいだね。そのうち、CFCにPureなE&Pが存在すること自体ポリシー違反とか言われて、全額「Extraordinary E&P」なのでテリトリアル課税は不適用、になっちゃったりしてね。

難しい話しで長くなってきたのでExtraordinary Reductionに関しては次回。