Tuesday, September 23, 2008

久しぶりにSec.367(a)(5) - その2

前々回のポスティングでSec.367(a)(5)の暫定規則に関して書き始めた。この規則を手にする興奮はブログ紙面では語り尽くすことができず残念ではあるが、今回も当規則の話を続ける。

Sec.367の目的

前々回のポスティングでSec.367(a)の規定内容はザックリと説明したが、その目的は含み益を持つ資産が非課税規定を利用して米国から国外逃亡してしまうのを防ぐためのものだ。資産が一旦米国外の法人に移転してしまうと、その後資産が売却された時点でゲインに米国で課税することができないケースが多いため、このような出国税が設けられている。

これがもともとのSec.367(a)の趣旨であるはずだが、Sec.367は企業そのものの国外逃亡(=Inversion取引)に網を掛けるためにも利用されており、そのせいで規定は超複雑となっている。ダイムラーとクライスラーが世紀の大合併(その後世紀の大失敗となるが・・・)を演じた際に、クライスラーの株主に非課税措置が認められたのは、クライスラー株主が合併後の事業主体の50%以下の持分を受け取ることとなった(すなわちダイムラーの価値の方が高かった)からという理由があるが、これもSec.367(a)のInversionに対する規定を根拠とする。

一方でSec.367(a)の兄弟規定であるSec.367(b)は、基本的に外国法人のE&Pが(配当またはSec.1248のようなみなし配当という形で)米国で課税されるチャンスがなくなりそうな際に適用される。米国法人の外国子会社の非課税清算(InboundのSec.332)とか、CFCがCFCでなくなるような取引が対象となる。

暫定規則

今回の暫定規則はSec.367(a)(5)を主眼とするものであるが、前々回のポスティングでも触れた通り、Sec.367(b)、Sec.1248にも影響を与える。Sec.367(a)(5)下では、米国法人が非課税再編を通じて資産を外国法人に移管する際には、Sec.367(a)で規定されている例外規定を満たしたとしても、ゲインに課税される。

Sec.367(a)(5)の例外

例外規定の例外であるSec.367(a)(5)にも例外がある。すなわち、Sec.367(a)(5)の対象となる取引である非課税再編を通じての米国法人による外国法人への資産移管(A型再編、C型再編、買収型D型再編)に対しても一定の条件が満たされればゲインには課税しないという例外規定が設けられている。

この例外規定の適用は、非課税再編による資産の移管後も、米国法人レベルで後日含み益相当額に対する課税が可能な場合に一定条件を満たすと認められる。どのような条件を満たすと米国での法人レベル課税を温存できるかに関しては次のポスティングで触れる。

Ernst & Youngに移籍しました!

ここ一ヶ月ほどポスティングの数がめっきり減っていたため「体調でも悪いんでしょうか?」というようなメールをいくつか頂いた。からだの方は頗る元気なのだが、実は会計事務所を「デロイト」から「アーンスト&ヤング(EY)」に移籍したため、極めてバタバタとした毎日を送ることとなり、しばらく落ち着いて物書きをする時間がなかったというのが単純な理由だ。

移籍の話しをすると大概の方は「おめでとう!」と言ってくれる。でもたまに「パートナーにまでなってなんで転職するんですか?」というような質問をされることもある。スタッフでもパートナーでもやりたい仕事があればその夢を追うのが当然だと思っていたので、この手の質問には正直面食らった。

正式にEYでスタートするまでは敢えてブログで公開するのは避けてきたが、無事に先週からスタートすることができたので皆様に報告させて頂く。これからはEYの国際税務パートナーとして更に技術的な修行を続け、業界でもトップクラスのクオリティーを誇るEY国際税務部の名に恥じないプロを目指し、また日本企業の米国オペレーションの成功に少しでも寄与できればと思う。

という訳でブログの方も引き続よろしくお願いします!

Thursday, September 4, 2008

久しぶりにSec. 367(a)(5)

前回のポスティングから随分と日数がたってしまった。この間、夏休みその他でバタバタしていたというのもあるが、実は個人的に面白い話しがありそちらに時間を取られ、ブログを書いている場合ではなかったことが大きい。この辺りの真相に関しては1~2週間以内に別途触れたいと思う。

サボっている間にタックスの世界でも相変わらずいろいろとあった。個人的に一番インパクトが強かったのはSec.367(a)(5)の財務省規則が遂に発表されたことであろう。この規則は今年こそ出ると予想されていたものではあったが実際に手にする感動は一入(ひとしお)だ。

*待望のSec.367(a)(5)財務省規則(暫定)

復活第一弾がいきなりSec.367(a)(5)というのも何となくオタク過ぎて気が引けるが、この条項の規則は長らく待たれていたものだ。規則そのものはかなり多岐に亘り、Sec.67(a)(5)ばかりでなく、Inboundを専門とする者にも「Must」なSec.367(b)、Sec.1248等にも影響がある規定が連発されている。

*Sec.367(a)

Sec.367(a)(5)の理解には当然Sec.367(a)一般の理解が必要だ。Sec.367(a)は、非課税再編(Sec.368のTax-Free Reorgばかりでなく、出資に係るSec.351、清算のSec.332を含む)に基づき米国人が米国外法人に含み益を持つ資産を移転する際には、非課税再編の恩典を与えずにゲインを認識させるという規定だ。

したがって、Sec.367を考えなければ「非課税再編」の条件を満たしてる場合にのみSec.367(a)は関連してくる。非課税再編の条件を満たさない取引はもともと課税取引となることから、Sec.367(a)の適用は意味がない。なお、非課税再編に基づく資産移転がSec.367に抵触する場合にはゲインは認識されるが、含み損を持つ資産を移転しても損失は認められない。

Sec.367(a)は「ゲインの課税関係を決める目的では、外国法人(Foreign Corporation)は法人(Corporation)とは取り扱わない」というロジックを用いて非課税措置を不適用とする。言うまでもないが、Sec.368、Sec.351、Sec.332のいずれの規定も再編対象となる事業主体が法人でないと適用がない。したがって、法人ではない事業主体に対する資産の移転は通常の課税取引となってしまう。

Sec.367はとても長い財務省規則がありかなり複雑だ。したがって、全貌をここに記すことは不可能だが、「International Tax」と「Subchapter C」の橋渡しとなる極めて重要な規定となる。

*Sec.367(a)の例外規定

上述の「ゲインを認識する必要がある」という一般規定には例外がある。まず「再編対象となる外国法人の株式または債券」が移転の対象となる場合には一定の手続きを経ることにより、Sec.367(a)下で課税されることはない。また、移転される資産が外国でアクティブな事業に供される場合もSec.367(a)下で課税されることはない。

*例外規定の例外規定

税法にありがちなことであるが、上の例外規定(すなわちSec.367(a)の適用がないケース)にはさらに例外規定がある。そのひとつが今回の財務省規則のメインテーマとなるSec. 367(a)(5)だ。Sec.367(a)(5)がSec.367(a)規定の「例外の例外」であるというのは重要なポイントだ。

ちなみに、この「例外の例外」を更に正確に記すと実はSec.367(a)(5)は資産の移転に対する通常の税法上の取り扱いに対する「例外の例外の例外の例外」ということになる。すなわち、本来は課税対象である資産移転に対して非課税取引を容認している非課税再編規定(例外#1=非課税)に対する例外であるSec.367(例外#2=課税)に例外を設けて(例外#3=非課税)いるが、更にその例外がSec.367(a)(5)(例外#4課税)となるからだ。

Sec.367(a)(5)に関しては次回以降に詳しく。