Tuesday, September 25, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(3) – GILTI (3)

前回、GILTI合算課税の概念的な部分に触れたけど、じゃあ、それを実際にどんなストラクチャーで実現しようとしているのか、っていうのが今日からの話し。

しつこくて、皆さん(特にEY NYCのタックスチームのみんな(苦笑))耳にタコができちゃんじゃないかと心配だけど、GILTIは米国株主の属性だ。だけど、その算定をする過程でCFC側の複数の数字を利用する。何がCFCレベルで、何が米国株主レベルの算定なのか、っていう点をよ~く考えてアプローチしないと何の話しをしてるんだか分からなくなるし、また、従来のクロスボーダー課税システム下で規定されている項目との整合性とか不整合性が分からなくなる。ここは新しいコンセプトなんで面食らう感じはあるけど、絶対に押さえておかないといけないポイントだ。財務省も同じように感じているようで、GILTI規則案は、算定式を構成する各項目に関して、いちいち「これはCFC側の計算です」とか「これは米国株主側の計算となります」としつこく解説している。さすが従来のクロスボーダー課税を知り尽くしている財務省、IRSの重鎮弁護士チームの執筆だけのことはあり、説明は分かり易い。

まず、GILTI合算課税の対象となる納税者は「CFC」の「米国株主」となる。双方とも税法上で規定されている用語で、ここは従来からのCFC課税であるSubpart F所得合算の定義をそのまま適用することになる。すなわち、米国株主とは米国人(パートナーシップとかTrustを含む)で、外国法人の10%以上の持分を保有する者だ。税制改正以前は、10%保有かどうかの判断は、議決権のみを基に行ってたけど、税制改正後は議決権に加え、価値ベースに基づく判断も必要となった。また、米国株主かどうかの判断時に、以前は適用が敢えてTurn Offされていた「Downward Attribution」もTurn Onされ、加味されることとなった。このDownward Attributionは、外国に居る50%以上の株主が保有する他法人の株式はあたかも自分が全て保有していると取り扱うという厳しい規定だ。これらのことから、米国株主の数、そして間接的にCFCの数、は以前よりも大きく増えることになる。米国株主とかCFCの新定義は、GILTI目的だけではなく、従来のSubpart F所得の今後の合算時にも同様に適用される。

GILTIは米国株主側で算定される「一つ」の所得だけど、その計算は各CFCで始まる。

具体的には、2018年1月1日以降に開始するCFCの事業年度から、各CFCがCFCレベルで「Tested Income(Loss)」という米国税法ベースの金額を算定する。これは各CFCで米国税法ベースの課税所得を算定し、そこから当所得に適切に対応する外国法人税をマイナスした税引後所得を意味する。え~、ってことは200社CFCがあったら、200の米国申告書を作成するようなもの。かなりのコンプライアンス負荷だ。で、このTested Income(Loss)はCFCレベルの算定だけど、これを米国株主が保有する全CFCのTested IncomeとLossの持分相当(Pro-Rata Share)を通算し、ひとつの「Net Tested Income」という金額を算定する。Tested Income(Loss)がCFCの属性なのと対照的に、Net Tested Income(Loss)は米国株主側の属性となる。

このNet Tested Incomeからルーティン所得となる「ネットみなし有形資産リターン(Net Deemed Tangible Income Return = Net DTIR」を差し引いた金額がGILTIだ。このみなし有形資産リターンを差し引いた残りの金額は、事実関係としてどのような所得であってもみなしで無形資産所得と認定される。GILTIという用語の2番目の「I」が無形資産となる理由だ。

で、このNet DTIRという金額は米国株主側の属性だけど、これもその算定は各CFCレベルのQBAIと略される有形償却資産のネット簿価から始まる。これをNet Tested Incomeの算定時にそうしたように、米国株主が保有する全CFCのQBAIのPro-Rata Shareを通算し、それに10%を掛ける。これが米国株主が保有する全CFCのみなしルーティン所得となる。Net DTIRはここからCFC側の支払利息のうち、Tested Income(Loss)の算定時に取り込まれている金額を差し引いて確定する。Net DTIRはGILTIからシェルターされる金額なので、大きい方が納税者としては有利。なので、支払利息で減額させられるのは不利な結果となる。減額に使用される支払利息の例外に、同じ米国株主が保有する他のCFCがTested Income算定時に受取利息として認識している部分があり、この部分は減額は含まないとされる。この部分の計算法に関しては、規則案で簡便法が規定されたので、詳細は後日。

ちなみにQBAIは、プラスのTested Incomeを計上しているCFCが保有する有形償却資産のネット簿価を米国株主側で合算し10%を乗じた金額から特定支払利息を差し引いた金額となる。ここで注意が必要なのは、プラスのTested Incomeを持つCFCの有形償却資産のネット簿価のみが加味される点。一方で、マイナス要因となる支払利息は全てのCFCからのPro-Rata Shareを取り込まなくてはいけない。う~ん、算式としてはチョッと不公平(?)。

で、Net Tested IncomeからNet DTIRを差し引いた金額がGILTIとなり、米国株主はこの金額を課税所得として自分の申告時に取り込むことが求められる。GILTIは一旦全額合算された後、GILTI50%相当額の所得控除が認められる。いきなり50%を合算するのではなく、合算は100%した上で控除を計上する。この想定控除は、GILTIを通常の法人税率21%の半分、10.5%で課税するためのものだけど、課税所得制限があり、常に控除が取れるとは限らない。控除が取れなかったり、制限されてしまうと、CFCの所得はGILTI合算する範囲で、二重課税となり、現地の法人税に加えて、実質、米国で最高21%の税コストが発生することとなる。そんなことになると、現地での税率次第では、今時珍しい50%近い実効税率になったりして恐ろしい。

仮に控除が取れると、概念的にはGILTIには10.5%の米国法人税が課せられることになる。そこから「Tested Incomeに適切に対応していると認められる(「Properly attributable」)外国法人税に、GILTI合算%を掛け、さらにそこに80%を掛けた金額がようやく制限枠前の外国税額控除の対象となる。Properly attributableって概念的には聞こえはいいけど、実際どうやって計算すんの?って感じ。従来の間接税額控除は「Tax Pool」と言って、留保所得も外国法人税も全て累積(=Pool)させておいて、配当があったり、合算課税があったりすると、留保所得に占める課税額の%を機械的にTax Poolから取り崩して控除対象としていた。僕たちはこの方法に慣れている、というかTax Poolの計算しか知らないので、急にPoolingシステムが撤廃されて「Properly attributable」とか言われても面食らうばかり。米国から見たCFCの所得認識は、外国現地の税法と額もタイミングも異なるだろうし、場合によっては課税年度も異なることもある。Poolingはその手の「ミスマッチ」を自然解消させてくれる効果を持ってた素晴らしい仕組みだった。でも「Properly attributable」ではそうは行かない。GILTIバスケットの外国税額控除は法人税が超過となるExcess Creditの場合、繰り戻しも繰り越しも認められないことから、このダメージは潜在的に大きい。頭をTax Poolから切り替えるのに時間が掛かりそうだ。2018年中に公表が予想される外国税額控除に特化した財務省規則案パッケージが待ち遠しい。外国税額控除パッケージはもしかしたら多くの規則案パッケージでも最重要ガイダンスと言ってもいい。

外国法人税のうちGILTIにかかわる部分の80%が税額控除の対象となることから、理論的には、GILTIが合算課税されても「CFCが国外で13.125%(10.5%÷80%)の法人税を支払っていれば、米国では追加法人税が発生しないので安心して下さい」というようにも聞こえるが、それは外国税額控除を大学のクラス初日にモデルケースで学習するようなもの。実際には外国税額控除の算定時には、米国株主側の費用、支払利息、R&D、株主によるスチュワードシップ費用、その他をGILTIバスケットに配賦する必要があるはずで、どんなにCFCが高税率で外国法人税を支払ってても、米国株主側の制限枠の関係で、外国税額控除が10.5全額完全に取り切れず、米国で何らかの追加法人税を負担することになるケースがほとんどだろう。

で、ここからは各項目の算定にかかわる考え方を規則案の規定を中心にもう少し掘り下げて行きたい。

Sunday, September 23, 2018

過少資本税制最終規則「文書化要件」ようやく撤廃

オバマ政権末期の2016年10月21日に駆け込みセーフ的に最終化されて大きな議論を呼んだ「Debt/Equity Classification」(俗にいう「過少資本税制」)の財務省最終規則。

トランプ政権発足の暁には、TPP脱退と同じ勢いで即撤廃かと期待していたんだけど、意外にしぶとくて、ようやく2017年10月になって、税制改正を待って対処するようなNoticeが発行されていた。その際のコメントから、BEAT、163(j)、Anti-Hybrid、GILTIと、これでもかという位Base Erosion対策が充実した今、満を持して全章撤廃か、と思いきや、先週の金曜日(2018年9月21日)、財務省は新たな規則案を公表し、最終規則の一部となる「文書化要件」を撤廃するに留まった。

関連者間ローンに関して、文書化の存在が問われるのは当然といえば当然なんだけど、最終規則の文書化要件は、通常の関連者間ローンばかりでなく、チョッとした未払金とか場合によっては買掛金とかが対象になり得たり、グループ内キャッシュプーリングのような反復して取引が行われるものにも厳しい要件が突きつけられていて実務的な対応が困難と言うか、納税者側の負荷が高いものとなっていた。

また、文書化するべき内容も、返済可能性にかかわる詳細なサポートとか、債務不履行時に契約通りに法的措置を実行している実績記録など、必ずしも従来の関連者間ローンでは網羅されていないであろう条項にも突っ込んで要求していた。また、恐ろしいことに、最終規則の要件に準じる文書化が整備されていない場合には、どんなに安全かつ返済間違いないローンでも、文書化がないというその事実のみをもって借入を自動的に資本とみなすという「反証不可」の事実認定が規定されていて、チョッといくらなんでも行き過ぎでは、と思われていた。規則発表時には、2018年1月1日以降の関連者間ローンに適用とされてたけど、その後、それが2019年1月1日に延期され、今回とうとう廃案となっている。

今後、財務省は新たな文書化要件を規則化するかもしれない、というようなことが規則案の前文に記載されているけど、その際には、納税者の負荷を考えてよりシンプルなものにしてくれるそうだ。

ただ、油断大敵なのは、上で触れたような最終規則下での厳し過ぎる文書化要件は撤廃されたけど、判例ベースの過少資本税制下で従来から必要とされている文書化要件はそのまま存在する。なんで、普通の関連者間ローンは今まで通り、文書化はMustと考えておいた方が無難。特に過剰なレバレッジを利かせるようなケースでは、返済可能性もCash Flowのモデリングその他の文書化でサポートしておかないと判例ベースで資本とみなされるリスクは充分に存在し続ける。

ちなみに、文書化要件と並び、最終規則には、実はもっと複雑で恐ろしい「Funding規定」っていうのがある。これは一定額以上の配当、グループ内株式譲渡、資産取得型適格組織再編、という取引が関連者からの借り入れ前後3年、計6年以内に存在すると、借入を税務上、資本同様と取り扱うというもの。これは今でも現存しており、さらに適用開始は2016年だったので、既に法的な効果を有している。こっちは撤廃されてないことから、こちらのコンプライアンスは皆さん大丈夫でしょうか。

Saturday, September 15, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(3) – GILTI (2)

さて、GILTI財務省規則案の公表から一夜明けて、落ち着いて考えてみたけど、やっぱり、そんなに大きな驚きはない規則内容っていう印象は変わらなかった。どうしても腑に落ちないのは米国パートナーシップが持つCFCの扱い。ポリシー的な議論はとても良く分かるけど、規則案で提案されている解決策は法文解釈上、無理がある気がしてならない。ここは引き続き考えてみるけど、この部分の困難さも、前から言ってる弊害のひとつで、つまり、元々CFCレベルの属性となるSubpart F所得合算課税のインフラを流用して、米国株主側の属性として規定されているGILTI課税を実行しようとして無理というか、矛盾が生じているひとつの代表例だろう。他にも、この不整合を理由に余計な規則を決めないといけない点は多くみられる。留保所得の一括課税システムにも同様の問題が存在する。なので、留保所得の仕組みを良く理解することが、今後の米国のクロスボーダー課税の理解の一助となる。

GILTI合算課税のメカニズムの全容は、GILTI合算、50%控除、外国税額控除、と「3本立て」で構成されるけど、今回のGILT規則案は最初の「GILTI合算」という基本的にメカニカルな部分のみにフォーカスしているので、比較的、挑発的(?)なものになり難かったんだろう。「3本立て」って言うと、その昔、まだ小学生から中学生になる頃、ビートルスの映画を見に行くと間違いなく「A Hard Day’s Night」、「Help」、「Let it Be」の3本立てだった。要はロードショー落ちしていたってことなんだろうけど、新宿武蔵野館とか有楽町のスバル座とかでたま~に思い出したように上映されてたものだ。もちろん未だYouTubeとかない時代だったし、「動いてる」外国のアーティストの演奏姿を見るには、ライブに行くか、記録映画みたいなのを見るか、ファンクラブ(!)主催のフィルムフェスティバルっていう今ではないかもしれない企画に行くか、位のチョイスしかなかった。

ビートルズのフィルム、特に本当のライブを収録しているLet it Beとか見た時は感動したし、勉強(?)にもなった。耳でコピーしていると分からない微妙なコードの押さえ方とか。ピアノのような鍵盤楽器と異なり、ギターは同じ音程のAでも、押さえるフレットのチョイスが3つくらいある。そのうち、どこを押さえているのかは、各アーティストの癖(これは絶対にある)、その音の伸びとか、Distortionの掛かり具合、さらにビブラートの掛かり方で解放弦かフレット押さえているか、次のコードに移る時にどれだけ難なく指を動かせるか、等を総合的に判断して耳で推測するけど、必ずしも当らない。目で見れば直ぐに分かることなんだけどね。Led ZeppelinのマディソンスクエアガーデンでのNYCライブ映画「The Song Remains the Same」を見た時にJimmy Pageがリフを構築する際に、どれだけうまく解放弦を利用しているのかを知って、かなりショックを受けたこともある。Heartbreakerのリフも、プラス、ソロの部分も解放弦が多用されていて、チョーキングの代わりにギターのヘッドの弦を巻く部分にピックを差し込んで、音を上げたり、一度目で見ると、簡単に本人と同じ感じの音が出せるようになる。

ビートルズも、特にJohn Lennonのコードの押さえ方って、何となく独特で、Dとか、フレット2を人差し指でバシっと全部押さえて、2弦は3フレット、4弦は4フレット、5弦は5フレットでやってることが多いし、またAは、普通に2弦、3弦、4弦は2フレットを押さえるんだけと、プラスで1弦の5フレットを小指で押さえるんだよね。更にそのまま、2弦と4弦の3フレットと4フレット(1弦の5フレットは押さえたまま)を乗せるとDになり(5弦の解放弦まで音を出すとD on A)何ともビートルズっぽい響きとなる。ロンドンのSeville Rowのビル(あそこは最近はA+Fのお店になってるけど、何回言ってもビートルズの香りがするビル)のRooftopのI’ve Got a Feelingなんて、その2つの押さえ方でほぼ曲ができちゃってるしね。Gも基本の1弦3フレット、5弦2フレット、6弦3フレットに加え、大概のケースで2弦の3フレットも押さえている。

Jimi Hendrixも最初に「動いてる」の見たのは、新宿の厚生年金ホールでBiography的な記録映画を3日限定で(しかも日によって中野サンプラだったり場所が違って)公開した時。学校を「早引き」して新宿でチケットを買ってドキドキしてた頃だ。こちらも、レコード(CDとかMP3ではない)で聴いて想像してたのと全然違って、文字通り腰が抜けそうに感動したのを覚えてる。OpeningのモントレーポップフェスティバルのRock Me Baby。今ではYouTubeで毎日見れるけど、いつ見ても格好いい。このRock Me Baby、曲とかリフは同じだけど、歌詞だけ変えてLover Manっていう別名でライブで演奏しているバージョンもある。でも、やっぱりデビュー当時の未だクリーンな感じの時期のライブとなるモントレーのRock Me Babyの方が断然切れ味がいい。最初のリフのところで唸ってる部分は親指を駆使してたのか~、とか目で見ないと計り知れない発見があった(ギター弾かない人のために言っとくけど、普通親指で弦を押さえたりしない)。ちなみにLover Manは Hendrix in the Westっていうライブアルバムに入ってる。このアルバムは中学の頃、Red Houseとか含めて「まるごと」ギターでコピーしたアルバム。なんで、音のすみずみまで頭に叩き込まれているけど、近年、同じアルバムをiTuneでダウンロードしてみてビックリ。何と、Voodoo ChileとLittle WingのライブTakeが昔のビニール版(すなわちレコード)と異なるTakeになってた。どっちの曲も間違いなく、レコードに収録されていた過去のバージョンの方が出来がいい。で、気になったのでいろいろ調べたところ、昔レコードに入ってたバージョンは著作権絡みの問題が発生して、公にできないバージョンとなったそう。ということは、MDRの倉庫に眠っている僕の12インチのプラスティックは超貴重品ってことか。でも、今頃カビが生えてもう音出ないかもね。

と、またしても別の話しで盛り上がり過ぎないように、この辺でGILTIに戻るけど、つまり、今回の規則案は、3本立ての映画見に行ったつもりが、「A Hard Day's Night」だけ見て、「Help」と「Let it Be」は各々、秋と冬に後日上映と言われているような感じ。

規則案では、冒頭にGILTIの基本的なストラクチャー的な規定をしているけど、仕組みの話に入る前に、まずはGILTIの概念について個人的にお説教(?)させて頂きたく。

1962年のケネディー政権時から米国にも長く存在するSubpart F所得合算規定とか、他国の所謂CFC課税とかは既にそれなりも歴史もあり、各国のアプローチも多かれ少なかれ似てて、国際税務に関与している者にとってはその既成概念から脱するのは難しく、GILTIも一瞬、それらと同類に見えるかもしれない。でもGILTIの背景や趣旨は全然異なる。CFC課税っていうのは、簡単に外国に移転できるタイプの特定の所得をターゲットにして、本当は米国とか本国の株主が直接認識するべきだから、不当に外国に流出しているので合算してしまうというもの。配当課税が普通だった以前は基本Anti-Deferralの機能を果たしてたけど、多くの国がテリトリアル課税になってからはAnti-Deferralではなく、本来は本国で最初から課税されるべき所得っていう趣旨に変わって行ってたと言える。

GILTIはそうではない。GILTI導入の背景は、米国外のCFCが相対的に大きな利益を上げ過ぎている、それも価値のある無形資産の利用を含む比較的、付加価値の高い活動が合法的に海外に配置されてしまっていることで海外の利益が最大限化されているという懸念に基づくものと言える。なので、Anti-Deferralとか、本来は米国の所得なので米国でその分は課税というアプローチではなく、外国で認識するべき所得というのは、そうなんだけど、それはそうと認めた上、それに対しても米国でミニマム税を課そうというもの。すなわち、所得のタイプを問わず単純に米国課税ネットを全世界に拡大している法律だ。

GILTIの正式名称は「Global Intangible Low-Taxed Income」だけど、敢えて日本語に訳すと、「米国外軽課税無形資産所得」とでもなるだろうか。ただ、GILTIという名称はかなりMisleading。CFCが高税率で課税されていても、無形資産を見ためは保有していなくても、機械的な算定式に基づきGILTI合算課が発生する。

ここからはGILTIの仕組みに移るので次回。

Thursday, September 13, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(3) – GILTI 財務省規則案ついに公表

先週からいつ公表されてもおかしくないと言われていたGILTIの規則案だけど、今日(2018年9 月13 日)、ようやく公表された。今回は157ページっていうことで比較的リーズナブル。昔だったら規則が100ページ超えてるとビックリしたけど、385とか965で感覚が麻痺しているのかも。あと、「前文(Preamble)」がやたら長いのも最近の傾向。前文って法的な位置づけが微妙だけど、規則の背景を知るには便利。

規則案の内容そのものの詳細は、今後何回か分けて追って行くとして、まず第一印象として、今回はGiLTIそのものの計算法を規定したに留まっているので、余り大きな驚きはなかった。あくまでも今のところ、だけど。議論を呼びそうなSection 78のグロスアップがどのバスケットに行くかとかの外国税額控除関係は別パッケージということだし、Section 163(j)に基づく支払利息損金算入制限の適用がCFCレベルでのTested Income算定時に適用されるのか、とかもSection 163(j)のパッケージを待たないといけない。

今回のGILTI規則案で面白かったのは、米国内パートナーシップがCFCを持っている場合の取り扱いとか、QBAI算定する際の有形償却資産の保有期間が12カ月に至らないと無視されてしまうとか、後、GILTIからシェルターされているみなしルーティング所得、Net Deemed Tangible Income Returnの算定時にマイナスが求められる支払利息の米国株主側での確定法、とかかな。

ということで、次回からGILTIの詳細。

Sunday, September 9, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(10) 留保所得一括課税

前回のポスティングでは、キラー通りとキラークイーンの話を中心に、じゃなくて、留保所得一括課税にかかわる外国税額控除を計算する際に対象となる外国法人税の金額に触れた。僕たちが長年、慣れ親しんできた「Tax Pool」という概念は今後は消滅するけど、留保所得一括課税は消滅直前の話しとなることから、1987年以降の外国法人税全額(Tax Pool)を出発点に、そこから留保所得のうち低税率適用を理由に課税対象となっていない部分、すなわちApplicable %を減額した外国法人税が対象税額となる。

で、若干順序は前後する感じもするけど、前回のポスティング「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(9) 留保所得一括課税」で、どの外国法人税を留保所得にかかわる外国法人税という位置づけとするのか、という肝心の点が法文および立法趣旨を見ても必ずしも明確なかった点に触れた。規則案では、この点に関して、まず、留保所得一括課税はSubpart F所得として合算課税されているので、従来のSubpart F規定に基づくみなし分配間接税額控除対象規定に基づき、課税対象留保所得に対応すると取り扱われるTax Pool、すなわち1987年以降の外国法人税Poolは対象としている。当然と言えばそれまでなんだけど、実際の配当に対する間接税額控除が税制改正により撤廃となる中、留保所得一括課税は廃案直前の課税年度に発生するため、ここは依然、旧法の規定で考えるという頭の体操が必要。「みなし」配当にかかわる間接税額控除規定は今後も残り、重要性を増すけど、実際の配当にかかわる間接税額控除撤廃の関係で、条文が再整理されてて、同じ内容の規定でも条文番号が異なったりしているので、留保所得一括課税の外国税額控除の規定は、旧法の条文番号を参照しないと正しく理解できないという実務的な面倒さが発生している。

Tax Pool系の外国法人税にかかわる確認事項として、規則案は、他の特定外国法人のマイナスで減額されたプラス留保所得に対応するTax Poolは外国税額控除の対象ではない、と明記している。また、Subpart F目的では別の一人の納税者扱いとなる米国パススルーが認識する外国法人税も、各パートナーに配賦されてパートナーが自己の外国法人税ポジションと合算して処理できるとしている。

更に、留保所得一括課税に基づき課税済みとなった所得を分配する際に徴収される外国の源泉税も留保所得にかかわる外国法人税と位置付けている。ここで言う課税済所得は、「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(5) 留保所得一括課税」で触れた通り、他の特定外国法人のマイナスで減額された部分も含まれる。

源泉税にかかわるこの規定の意味するところは、特定外国法人側で留保所得一括課税に基づいて課税済所得となっている金額の分配に課される源泉税は、米国で外国税額控除の対象にはなるけど、元々、米国株主側で低税率で課税された所得を原資とするものなので、留保所得課税時に適用されたApplicable %分、減額して取り込まないといけないということ。

となると、今後は同じ課税済所得でも、どんな理由で課税済みになったのかっていうトラッキングが重要となる。Subpart F、GILTIに基づいて課税済所得になってるんだったら、分配時に別の考え方が適用されるし。更に、今後蓄積されるCFC側の「QBAI x 10%(マイナス特定の支払利息)」(GILTI合算上、Tested Incomeがプラスの場合)を原資とすると考えられる留保所得部分はGILTIからシェルターされる所得なので、そこの部分だけは課税済所得とならず、分配時には米国側で100%控除が取れる代わりに、外国税額控除も所得控除も一切認められない。この通常の配当(そんなものが存在すればだけど)との比較において、留保所得課税で課税済所得の分配に対して、限定的とは言え源泉税が外国税額控除の対象となるのは、ならないよりはベターとは言える。これら諸々のことから、CFC側の留保所得の内訳を常に整理しておかないと分配時の課税処理自体が不可能という従来では考えられない大惨事が想定される。まさにWhole New Word!

また、同じ課税済所得でもその発生理由でその後の取り扱いが異なるってことは、納税者側でトラッキングが必要となるだけでなく、分配の際に課税済所得のどの部分が分配されたとみなすのかっていう、課税済所得「内」に眠るサブセットカテゴリーの分配優先順位を規定してもらわないといけなくなる。これはおそらく、冬までに公表されるであろう課税済所得の規則案パッケージでカバーされるんだろう。ちなみに、以前にも触れたけど、課税済所得に関しては、従来のSubpart Fとの関係で、以前から規則案が公表されてて、現時点でも最終化されることなくそのままになっている。税制改正で課税済所得の在り方が根本から変わってしまったのだから、規則を大幅に見直す必要に迫られており、既存の規則案は大幅に加筆修正される形で、再プロポーズとなるだろう。

さらに、留保所得一括課税の対象となった所得を原資とする将来の分配は、外国税額控除システムが一新された後に起こるケースも多いので、そこの現行の扱いとの整合性も新しい条文下で手当しないといけない。さすがに財務省も疲れたのか、この部分は今後の規則策定パッケージで対応するとして、現時点では「Reserved」とのみ規定されている。

留保所得にかかわる外国法人税として考えられる、もう一つの追加のカテゴリーとして、特定外国法人が別の特定外国法人を保有する場合、下層に位置する特定外国法人が上層の特定外国法人に分配を行う際に課される源泉税がある。上層の特定外国法人が下層から受け取った分配を原資に、米国株主に分配する際、米国株主側では、当源泉税を留保所得に対応する外国法人税と取り扱うこととなる。これは、課税済所得が最終的に米国株主に分配されてくる際、過去にみなし分配に対応する外国法人税として加味されていない外国法人税となることからこうなる。この部分も、他のカテゴリー同様にApplicable %にかかわる減額後の金額を外国税額控除の対象となると規定されている。

実際に外国税額控除の計算をする際には、課税所得となる留保所得はみなし配当扱いし、従来からの間接税額控除規定を適用する。留保所得が個別の特別バスケットに属する訳ではないので、Look-throughを含む従来からの規定でバスケットを決め、後は米国株主側の費用配賦も従来通り適用した上で計算をすることになる。費用配賦時には、留保所得は低税率で課税されたとは言え、特定外国法人の株式の一部が非課税所得を生み出す資産と取り扱われることもない点、確認されている。

ということで何とか留保所得一括課税の外国税額控除に関して、大枠、最後に漕ぎつけることができた。今後、外国税額控除にかかわる別の規則案パッケージが秋に公表される際には、またその時点で明らかとされる考え方に触れてみたい。留保所得一括課税にかかわる規則案には、他にもNOLを使用しない選択法、一括課税にかかわる税金の8年間の分割払い、連結納税グループの扱い、等、限りなく細かい規定が記載されているが、興味深い主たるテクニカル面はカバーしたので、次回からはGILTIに関して、GILTI財務省規則案が出たタイミングで。

Friday, September 7, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(9) 留保所得一括課税

さて、今回は留保所得一括課税と外国税額控除。外国税額控除を整理して、さっさと留保所得一括課税は終らせておかないと、GILTIの規則案が今にも出そう。出たらそちらに移らないといけないので。なんと言ってもGILTIは今回の税制改正によるクロスボーダー課税地殻変動のキラー的な存在なので注目度が一段と高い。。キラーと言うとその昔、隠れ家的なお店を求めてフラフラしてたキラー通りを思い出す。外苑西というか、表参道の先と言うか、チョッと裏道っぽい感じがよかった。最終バーゲンとかで盛り上がってたベルコモンズとか今どんなになってんだろう。なぜあんなにいい感じの道をキラー通りと言うのかは当時から諸説あったけど、単純に青山墓地があるからっていうのが最もそれらしい。コシノジュンコ(みんな知ってるかな?)が命名したとか言われてるけど。

キラー通りと並んで、南青山と高樹町を結ぶ骨董通りもメインストリートっぽくない感じが良かった。骨董通りと言えば、中華料理の「ふーみん」って未だ健在みたいでビックリ。記憶が確かじゃないけど、ふーみんって遠い昔は代官山とかあの辺りにあったはず。その昔、旧山手通りを挟んで西郷山公園の反対側にあった安藤忠雄のコンクリート打ちっ放しビルで働いてたことがあるんだけど(バブル~)、その頃良く行った覚えがある。他の中華料理屋と記憶がごちゃごちゃになってる可能性もあるけど、その後、今の小原流会館の地下に引っ越したはず。それも80年台後半かな。ねぎワンタンとか、中華サラダとか逸品だった。

だんだん当時の記憶がフラッシュバックしてきて勢い付いてきたけど、外苑西の辺にあった「あんり」っていう総菜っぽい和食屋とかも良かった。バブル真っ盛りで沢山いいお店があった。渋谷公会堂辺りの裏のビルの3階にひっそりとした感じで佇んでいた「カフェバー」のBack Pageとか隠れ家っぽくて気に入ってて良く行ったし。もうチョッとメジャーだけど広尾日赤病院前のセントパトリックとか。あの頃は未だ広尾ガーデンヒルズもなくて、日赤病院が広大な土地を所有していたはず。う~ん、あの頃の店は格好良かったけど、幼くてレベルが低かったから全部格好いい店に見えてたのかも。仮に今見たら、どう映るんだろうか。格好よく感じるのかタイムマシンで旅して確認してみたい。

キラーで脱線してるけど、脱線ついでに、キラークイーンの話し。この前、夜中に急にQueenのBrighton Rockのブライアンメイのギターが聴きたくなって、Sheer Heart Attack聴きながら寝たんだけど(普通の人はあの曲では寝れない?)、アルバムの構成上、Brighton Rockの次に来る曲がキラークイーン。ブライアンメイってJimi Hendrixが好きだってよく言ってたけど、確かに通じるものはあるとしても、Hendrixのように動物的本能がDriveしているギターとはむしろ正反対に、きちんと計算されたギター。それにしてもブライアンメイの音の歪(Distortionの掛かり方)は美しい。彼はロンドンで物理学か何かの博士号を取得してたはずで、ちょうど同じ頃、More Than a Feelingで有名なボストンのTom ScholzがMIT出身だったので、ついに米英のロック界にも学歴社会到来とかジョークで言われていた。でも、実際、ピアノとかギターとか弾いてる人は分かると思うけど、音楽はコード進行とかスケールとか算数。バッハとかバロックは特に。Hendrixが算数できたかどうかしらないけどね。

で、キラークイーンの歌詞は、さすがJames Bondが暗躍する英国産のRockならではの奥深さがあって改めて感動。聴いたことない若い方はYouTubeでスタジオバージョンを聴いてみて欲しい。歌詞の意味は諸説あるけど、超ハイエンドなロンドンのコールガールのことっていうのが、まあ普通に聞いたらそうなるだろうけどっていう解釈。でも、ケネディーとかソ連(ロシアではない)のフルシチョフとかがいきなり出てくるし、Man from Chinaとか芸者Minahとか、国際政治の裏側を匂わせる内容で、実はジャッキーケネディーのこと?みたいな解釈もあるらしい。それにしてもゴージャスな歌詞。まさにExtraordinarily Nice。今ではLVMHの共同所有者でもある「Moet et Chandon(Moet & Chandonではない)」をPretty Cabinetに入れてとか。キャビア、シガレットにパリのパフューム。でも車には全く興味なし、っていう部分があるけど、僕みたいにテスラXが・・とか直ぐに考えてしまう庶民と違って反ってリッチな感じ。

マリーアントワネットみないに「だったらケーキを食べさせたら?」って優雅に話したり。この一句は、知ってる人も多いと思うけど、フランス革命前に、フランスの農民がパンがなくて苦しんでいます、という状況を聞いて、オーストリア王家からフランスのルイ16世の御妃として嫁いでいたマリーアントワネットが「だったらケーキを食べたらいいんじゃない?」と言ったというもの。庶民とはかけ離れた感覚を露呈しているとしてパリの庶民から酷評されたという問題の発言。でも実際にはマリーアントワネットの発言ではなく、彼女を貶めるために面白可笑しく噂を敢えて広めていた一派がいたということは後世はっきりしてるし、マリーアントワネットはどちらかというと恵まれない子供のためにチャリティーを企画したり、実は心優しい人だったと言う説もある。Fake Newsは昔からだったよう。で、キラークイーンでは、Gunpower, Gelatin、Dynamite、Laser Beam、とその後も派手な形容が続くけど、その昔聴いてた頃は、他の3つは分かるとしてもGelatin(ゼラチン?)がなぜ出てくるのか理解できなかった。まさかデザート?ってこともないだろうし。今、大人になって考えてみれば、毒殺に使うカプセルのことだねって40年振りに納得。昔の曲聞いて当時理解できなかった歌詞が理解できたりすると成長を実感できてうれしい。

で、もっと成長が実感できてうれしいのは、留保所得一括課税のような公表当時は謎に満ちた複雑な規定に関して、徐々に紐解きながら少しずつ理解が進んでいく時。人によっては、留保所得一括課税は2017年に歴史上一回起こるだけだからそこにエネルギーを費やすんだったら、他の条文に時間使った方がいいのでは、みたいな感覚を持ってるみたいだけど、とんでもない話し。課税済所得とか株式税務簿価とか今後何年も影響がある。しかも、これをSubpart Fとしている点は今後の国際課税制度を概念的に理解する際に不可欠なブリッジとなる。

とてつもなく前置きが長くなって、キラークイーンの話しでサボっている間にGILTIの規則案が公表されそうだけど、そろそろ留保所得一括課税下の外国税額控除。元々、留保所得一括課税を規定している法文そのもので、留保所得にかかわる外国法人税のうち、留保所得に対して所得控除が認められている部分に対応する部分の金額は外国税額控除および所得控除の対象としない点が明記されている。ここで言う留保所得にかかわる外国法人税というのがどこまでのものを意味しているかは、法文および立法趣旨を見ても明らかでなかったが、ここをどう規則案がアプローチしているかは後述する。

留保所得に対して所得控除が認められている部分の減額に関してだけど、この所得控除に関しては前回のポスティングとなる「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(8) 留保所得一括課税」で極簡単に触れているが、実効税率を15.5%や8%とするための想定所得控除額のこと。留保所得の課税部分を減額してあげているのだから、対応する外国法人税額も同様に減額しなさい、という趣旨で当然と言えば当然。ただ、ここでとても面白く、かつ最初は意味不明に見えても実は「なるほど」となるのは、所得控除%と「Applicable %」と言われる外国法人税減額%が必ずしも一致するとは限らないこと。

所得控除の%は実際に米国株主側の合算年度の適用法人税率を基に逆算する。一方、Applicable %はキャッシュポジション部分(税率15.5%部分)は「0.557」、それ以外の部分(税率8%部分)は「0.771」で固定されている。例えば、日本企業の多くが3月決算なので、大概のケースで合算年度となる2018年3月期の法人税率は混合税率で31.55%となる。仮に控除前の課税対象留保所得額がキャッシュポジションに満たない場合、留保所得全体が15.5%で課税されることとなるが、その場合、31.55%掛けて15.5%となるには、留保所得額に「0.507」掛けた金額を所得控除する必要がある((1 - 0.507) x 0.3155 = 0.155)。ここは単純なMathだけど、普通に考えれば、外国法人税も同じ%、すなわち0.507をApplicable %として減額しそうなもの。でも、Applicable %は米国納税者の合算年度に実際に適用される法人税率とはかかわりなく、常に(キャッシュポジションに関しては)0.557と規定されている。元々、上院で法案が議論されている過程では、所得控除%も固定だっただけに、2017年12月22日、最初に法文を読んだ際には、所得控除%はいろいろな適用税率があり得ることに気づいて慌てて修正した一方、さすがの上院財政委員会も外国法人税にまでは深夜の修正で頭が回らなかったか、と早合点してしまった。後から考えると、頭が回ってなかったのは自分の方で、というのは、どのような米国株主も適用法人税率にかかわらず、所得控除を考慮した後の段階では、全員15.5%(キャッシュポジションを超える部分は8%)で課税と統一されているので、その後の計算となる外国税額控除にかかわる外国法人税減額を所得控除前の異なる税率に合わせては反って変。う~ん。やっぱりさすが上院財政委員会。結果として、Applicable %は固定となる。で、どこで固定しているかというと、ここは仮に全員35%だったらという前提でバッサリと処理している。

ちなみにキャッシュポジションの方がApplicable %が低いのは、一瞬アレって思うかもしれないけど、キャッシュポジションの範囲で留保所得は15.5%とより高い税率で課税されるので、その分、所得控除は低いこととなる。それに準じて外国法人税の減額率であるApplicable %も低くなる。

で、全員に同じApplicable %がキャッシュポジションおよび他のポジションに適用されるんだけど、実際には、各米国株主はキャッシュポジションと他のポジションの比率が異なるので、その意味では各々、最終的に使用するApplicable %は異なる。また、Applicable %は合算年度毎に決定される必要があるため、もし特定外国法人の課税年度の関係で、一人の米国株主でも2017年度と2018年度とか、2年に亘り留保所得の合算があるようなケースでは、当然、各々の年度で留保所得に占めるキャッシュポジションとその他の比率が異なることから、Applicable %も異なることとなる。さらに、米国株主がパススルー主体の場合、パススルー主体レベルでApplicable %が決定されるので、その部分の外国法人税は、パートナー側でもパススルー主体レベルで決定されるApplicable %で減額された外国法人税を使用することとなる。

かなり長くなってきたので、今日はこの辺で、次回のポスティングで外国税額控除をラップアップ‘できるといいね。キラークイーンの話しにならなければ大丈夫かな。

Sunday, September 2, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(8) 留保所得一括課税

前回は株式簿価調整の話しで(1人で?)盛り上がったけど、簿価はこれ位にしておいて、今回は留保所得一括課税にかかわる外国税額控除に触れてみたい。なんと言っても、今回の税制改正でクロスボーダー課税を根本から変えてしまった主役と位置付けることができるGILTIの計算方法にかかわる財務省規則案の公表が間近に迫っていると思われ、そろそろ留保所得一括課税の話しは一旦ラップアップしないといけないタイミングが近づいてるしね。

留保所得一括課税に関して、前回までのポスティングで、特定外国法人が持つプラスやマイナスの留保所得を米国株主がどのように合算し、その結果、特定外国法人側でどの留保所得が課税済みとなり、それに対応して米国株主側で各特定外国法人に対する株式簿価をどのように調整することになるか、っていう点をカバーしてきた。 一括課税の対象となる留保所得額を米国株主側で確定した後、次に特定外国法人のキャッシュポジションを算定し、その部分が15.5%で課税され、課税対象留保所得の金額がキャッシュポジションを超えるようであれば、超過部分は8%で課税されるよう、米国株主の合算年度の法人税率から逆算する形で、所得控除を取る。この部分に関して、税務省規則案が多くのページを割いているのは、キャッシュポジションの認定法だ。ここは細かいけど、テクニカルな話しとしては若干面白みに欠けるので、飛ばしてしまうと、所得控除を差し引いた金額は、米国株主の他の課税所得と合算されて申告課税の対象となる。欠損金がある場合には、課税対象の留保所得(所得控除済みの金額)と自由に相殺が可能だ。欠損金が繰り越されてきているケースでも、合算年度に損失が出ているケースでも、米国株主は一括課税対象の留保所得に欠損金を敢えて適用しない、という選択が与えられる。なんでそんな選択するの?、って思うかもしれないけど、これは外国税額控除の恩典を最大限化するため。特に過年度からの超過クレジットがある場合、すなわち使用し切れていない外国法人税を繰り越しているケースでは、NOLを温存できてかつ税額控除も利用できたりすると、恩典が大きい。会計上、繰越外国税額控除の繰延税金資産に評価性の引当がされているようなケースでは、財務諸表上もラッキーなインパクトが発生することになる。

この欠損金の使用、未使用は個々の納税者が置かれている税務ポジションを定量化して、何がベターが判断するしかないので、この話しはチョッと置いといて、課税所得が出たら、次に通常の税率を掛けて、税額控除前の税金を計算する。そして、後は外国税額控除を差し引いて最終税負担となる。 外国税額控除一般だけど、今回の税制改正で米国が、一応「見た目」はテリトリアル課税に移行したため、制度移行と同時に、従来規定されていた分配時の間接税額控除制度(Section 902)は廃止された。また100%の配当控除の対象となる分配に関しては、源泉税にかかわる直接外国税額控除も、また所得控除も禁止されている。

ただ、「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(1)」を含む以前のポスティングで何回も触れている通り、税制改正後の米国クロスボーダー課税は、今まで国際課税の常軌や一般概念を超えた新しいものだ。留保所得一括課税でCFCの留保所得はほぼ全額、課税済所得となっているし、今後はGILTIで毎年毎年、課税済所得が更に積み上がっていくことが想定される。その後に残る僅かな部分、CFCの償却対象動産の簿価10%のルーティン所得、に帰属する留保所得のみがテリトリアル課税の対象だ。分配優先順位的には、分配はまず課税済所得から取り崩されていくので、果たしてテリトリアル課税の恩典を受けるような配当原資に、分配が辿り着く日が来るのかどうかも不明、というか各社の税務ポジション次第。

また不思議なことに「みなし配当」課税の位置づけだったSection 956(一括課税の965と番号が似てるんで混乱しないようにね)が温存されているので、その分もテリトリアル課税からカーブアウトされてしまうことになる。Section 956は、通常の配当が非課税となる代わりに外国税額控除の適用がなくなったことを考えると、Section 956を逆手に利用した外国税額控除プラニングも考えられるだろう。う~ん複雑。

で、今日の話しの外国税額控除だけど、従来、間接税額控除の主役だったSection 902下の配当にかかわる間接税額控除は、外国法人の2018年1月1日以降に開始する課税年度から廃止となる。これは、ちょうど留保所得課税の対象年度の「翌年度」となる。その後は間接税額控除が全くないかというと、全然そうではなくて、従来はSubpart F所得の合算時に適用されていた、すなわち実際に分配がないにも関わらず、米国株主側でCFCの所得を合算した際の、間接税額控除制度はアップグレードされた形で残っている。なぜ、アップグレードかと言うと、この制度は今後、更に重要性を増すことになるからだ。従来のSubpart F所得に加え、GILTIで、Subpart F所得同様に分配以前に米国株主側で合算させられる所得が飛躍的に増えるからだ。GILTI課税を規定している条文、Section 951Aは税法上のSubpart F規定内に属するけど、GILTIそのものはSubpart F所得ではない。ただ、Subpart F所得に適用されるインフラ、プラットフォームを「流用」して計算法を規定するよう、敢えて条文自体に明記されているし、外国税額控除制度もGILTI導入に対応する形で改正されているので、多くの点でGILTIの処理は既存のSubpart F所得の扱いを踏襲することになる。一方でコンセプト的に異なる部分も多く、ここのすり合わせが規則策定側の主たる検討事項となってるだろう。

GILTIと間接税額控除に関しては、Labor Day明けにも公表が見込まれるGILTI財務省規則案には詳細は盛り込まれないとIRS高官が言っていたので、別のワーキンググループが担当する外国税額控除にフォーカスした独自の財務省規則案パッケージで具体的な運用法が規定されることになるはず。米国ではLabor Dayを迎えると、直ぐにHalloweenが来て、Thanksgivingが来て、クリスマスとなり、大晦日で、新年、と一年がアッと言う間に終わるんだけど、今年の秋から冬は規則案の進展に目が離せない。

またしてもGILTIの話しで興奮(脱線?)してきた感じだけど、今日はそうではなく、留保所得一括課税に対する外国税額控除の話し。

上述の通り、留保所得一括課税が行われる年度は、従来からの配当に対する間接税額控除規定が未だ生きている最終年度となる。したがって留保所得一括課税の財務省規則案は、この2つの規定の相関関係にも言及しているが、ここもまた複雑。

ちょっと、オープニングに時間を使い過ぎて、ビートルズの武道館ライブみたいに、前座の方が本番より長い、なってことにならないよう注意します。で、次回は実際に規則案に規定される留保所得一括課税と外国税額控除、また従来から存在する配当に対する間接税額控除との関係にフォーカスしたい、というかしないとGILTIの規則案が出ちゃうしね。