Wednesday, September 27, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (9))

最近朝6時半になっても薄暗いし、夕方も暗くなるの早くてめっきり秋っぽいな~って思ったらなんと今日は秋分の日。アメリカで言うところの「the First Day of Fall」だ。格好良く言うと「the Autumnal Equinox」なんだけど、Fitness Clubみたい。

で、夏休み終了直後のこの時期、毎年NYCではUnited Nationsの年次総会(正式な名前は違うかもしれないけど)がUN本部で開催されて、その期間はMidtown EastのTrafficが大混乱。世界中からたくさんの関係者が一堂に会して、世界に山積みの問題を解決に導くべく話し合うはずなんだろうだけ、チョッと無力な感じだよね。Security CouncilにピンクフロイドのRoger Watersがロシアのゲストとして登場して話したり(ピンクフロイドは昔から好きだけどね。The Dark Side of the Moonとか、後、曲としてはShine On You Crazy Diamondとか)、去年は北朝鮮が国連機関の軍縮会議の議長に就任したり、一般Peopleの感覚からすると何それ~、みたいなことが多い。何か解決できるのでしょうか。

多国主義は、各国が世界全体の善や正を追求する崇高な神々しい存在だったら機能するかもしれないけど、どれだけナイーブにそんなフリを信じようとしても実際にはそうじゃないもんね。「Historic」なピラー2のGlobal Minimum Tax見ても、世界の善をマスカレードしながら結局は大国のPowerプレー。タックス程度の話しだったらまだ「大人の世界ちゅうのは汚いの~」で済ませることができるかもしれないけど、一般Peopleの人権とか平和に関してはそうはいかないもんね。League of Nations(国際連盟で米国は不参加)、Kellogg-Briand、Bretton Woods、とかの歴史を見ると多国主義の限界が浮き彫り。ハーバード大学の経済学者でグローバライゼーションに造詣が深いDani Rodrikが「世界基準やグローバルベースの規則っていうのは機能しないばかりでなく非現実的で好ましくない」って書いてたのを思い出す。

その昔200年続いたPax Romana、第二次世界大戦後のPax Americanaとか見ると、軍事力やテクノロジーにバックアップされる強力なリーダー国が自己都合で力をもって平和やCommerceを維持しようとする時代の方が結局もめ事が少なくて結局平和な時代になるように見える。リーダー国は基本、自己の利にならないことはしないから、その間にも当然、各国の観点からは理不尽なことはあるんだけど、世界はユートピアにはなり得ないっていう現実・制約の中、バランスとして何がベターかを考えていかないとね。

UNや軍縮会議が機能してない、って言ってもUNが悪い訳じゃなくて、ストラクチャーとか世界の成り立ち的に如何ともし難いってことだろう。機能しないと言えばアメリカも他人事ではなく、ポリティシャンたちが議論してることは庶民の感覚からどんどんOut-of-touch化していくし、We the peopleのためのGovernmentっていう観点から見ると、建国時のPrincipleとは遠い状態。米国メディアの報道をそのまま伝える傾向にある日本のメインストリームメディア情報を基に、日本から今のアメリカがどう見えてるか分かんないけど、インフレやTribalismの蔓延はローマ帝国崩壊前と通じるものがあるし、言論の自由や三権分立も弱体化し文化大革命って言う人もいるくらい全体主義的な変なトレンド。立派な憲法があっても国としてのGovernanceが脆弱になってしまったらそれで終わり。諸行無常。

歴史を振り返って、ローマとか何で崩壊の過程でトレンドをReverseできなかったんだろう、って単純に不思議に思うよね。塩野七生大先生の大作で歴史を参考に人間のサガを紐解こうとしたり。けど、恐ろしいことに今のアメリカを見てると偉大な国がPrincipleを忘れて滅びるって「なるほど、こんな風だったのかもね~」なんて感じてしまうことがある。う~ん、でも問題はアメリカがFallしたら、他に行く場所がないであろう点。チョッと大げさ?だといいけどね。まあ、まだまだなんだかんだ言って相対的にはいい国なんで、行方を憂いながらよりいい方向に転換させていかないとね。

Pax AmericanaがPax Romanaよりも短期間で終焉してしまったら、次のリーダー国が誰で、その国が自分の利益をどんな風に世界平和にマスカレードさせるか、またはさせないか、でNext GenerationのPeopleの生活は大きな影響を受ける。そんなになったらチョッと怪しいんで、アメリカに頑張ってもらいたい。

外国政府とFIRPTA(Reprise)

って、国連総会の一週間は毎年、Midtown EastのTurtle Bayがまるで年一回のお祭りみたいに盛り上がって混み合うんで、ついついこんな余計なこを考え過ぎちゃうけど、まあ交通規制もこの週末を境に一段落するだろうから、そんな想いを巡らせるのはまた一年後、として目先のタックスの話しに戻る。

で、前回のポスティングでは外国政府に特別に認められているSection 892の恩典とCommercial Activity(CA)の関係に触れた。特にControlled Entityとして外国政府に適格となっている主体は世界のどこかにCAと取り扱われる活動があると、主体レベルでSection 892の恩典が全てなくなってしまうんでセンシティブ、っていう点は読者の皆さんにもお分かり頂けたと思う。そんな中、肝心のCAの定義がはっきりしないんで困ること、特にFIRPTAのUSRPIとのかかわりに関しては悩ましい、っていう話しで終わってた。

Section 892の既存の暫定規則(Temporary)によると、USRPHCはCAに従事していると取り扱うと規定される。USRPHCは50%以上の資産をUSRPIが占める法人で米国内外を問わない(詳しい定義は「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (3))」のUSRPHC神話でで触れているので参照して欲しい)。ということは外国政府が50%以上所有する主体がUSRPHCだとこの主体はCCEになる。

FIRPTAって元々のルールが複雑だけど、多くの例外、例外の例外、みたいなのがあってよりややこしい。その一つがQualified Foreign Pension Funds(QFPF)のFIRPTA課税除外規定。もともと2015 年のPATH Actで導入された恩典で、僕たちも日本のペンションファンドに話しを持ってたりして思ったほどCatch-Onしなくてアレ~?って感じだったけど、現在の規定はその後2018年のTechnical Corrections Actで改正されたバージョンで、QFPF(QFPFの子会社含む)はFIRPTA規定目的(for purposes of section 897)では、外国法人にも米国非居住者個人(NRA)にも当たらない、というフレームワークで恩典が達成されるように設計されている。外国法人やNRAが認識するUSRPI譲渡損益は強制的にECIとみなす、っていうのがFIRPTAだから、外国法人でもNRAでもなければ当然FIRPTAの適用はない。

QFPFが政府職員のためのペンションファンドだったら、Section 892で外国政府になる。そんなペンションファンドがIntegral Partとしてか、またはControlled Entityとしてか、いずれの立場で外国政府と位置付けられるかっていうのはDeepな検討だけど、仮にControlled Entityだとして、投資内容の関係でUSRPHCになると、CCEになってしまう。CCEになるとペンションファンドが認識する所得には一切Section 892の恩典はなくなるんで、米国株式や債券投資からの投資所得が通常の外国法人同様に課税されることになる。ちなみにペンションだけど、米国のSocial Securityとか日本の公的年金のように国民一般が受益者となるペンションは外国政府には当たらない、っていうのがSection 892の考え方。なんで、ここでいう外国政府に当たるペンションファンドっていうのはあくまでも政府の職員を受益者とするペンションファンドってことになる。

Controlled EntityがUSRPHCになってしまってCCEになるっていうのは、QFPFや外国政府による米国不動産投資を容易にするっていうポリシーと逆行するのでは、っていう意見が多かったけど、今回の規則案ではそれらの意見を取り入れる形で、外国政府のペンションファンドがControlled Entityで、これがたまたまUSRPHCになっても、QFPFとしてFIRPTAの対象にはならない、って規定している。また、規則案ではCAに関して、外国政府のControlled Entityが、USRPHCにポートフォリオ投資しているだけな場合、Controlled Entity自体がUSRPHCになっても、CCEとは取り扱わないって規定している。例えば、外国政府のControlled Entityが複数REITの少数持分を所有してる、っていう理由でUSRPHCになってもCCEではないことになる。これで安心してREITに投資できるね。ただ、注意点としては今回の規則案はUSRPHCになることで外国政府のControlled EntityがCCEになるかどうかにかかわる規則を緩和しているに過ぎず、REITを含む投資の収益の取り扱いは従来のまま。例えば、不動産そのものの譲渡益を認識したREITからの分配が課税になる点とかはそのまま。

規則案の修正で面白かったのは、元々Section 892の暫定規則でUSRPHCに言及している部分に「USRPHCまたは米国法人だったらUSRPHCだったであろう外国法人」っていう下りがあるんだけど、USRPHC神話を呼んでくれた読者だったら、そんな表現は不要だしおかしい、って気づいてくれたよね。だって、USRPIとなる株式の定義と異なり、もともとからUSRPHCは米国法人、外国法人を問わないんで、「米国法人だったらUSRPHCになった外国法人」っていう表現はIllogicalだからだ。で、今回の規則案ではこの部分を単にUSRPHCって修正してる。それだけ混乱し易いってことなんだろう。

QFPFはどこの人?

次に規則案が格闘してるのがQFPFの国籍。2018年のTechnical Corrections ActでQFPFはFIRPTA規定目的(for purposes of section 897)では、外国法人にも米国非居住者個人(NRA)にも当たらない、って条文で規定されている点は上述の通り。ってことはFIRPTA目的では米国法人または米国人扱いってことになるよね。だって外国人じゃなければ米国人だし、米国人だったら外国人じゃないし、どっちにもなるとか、宇宙人でもない限りどっちでもない、っていう人や法人は存在しない前提のはずだから。

ところが・・・。なんだよね規則案は。この点はDC REITの話しに直結するんで次回。国連総会で興奮しすぎてごめん。