Tuesday, September 5, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (7))

前回は行政府によるRegulatoryが憲法に規定される三権分立の観点から越権行為かどうか、っていうディープな話に続きREITの100人株主要件とかに触れて、今日の予定はClosely Held禁止要件、分配要件をカバーして遂に待望のDC REITに至る、っていう例によってアグレッシブというか楽観的なもの。このアグレッシブな予定って、午後LGAからDallas Forth Worth空港(DFW)に飛んで、定時ベースでDFWでの乗り継ぎ時間が40分で最終目的地に向かう旅程、みたい。LGAから午後の出発便はキャンセルされなければラッキー的な低いExpectationでほぼ間違いなく(?)遅延するし、DFWの乗り継ぎが別のターミナルだったりすると相当厳しい。ってことは最初からダメもと?

で、行政府による過剰な規制が裁判所によりStrike Downされる流れに加え、税法じゃないけど最近の裁判所の判例で、議会が行政府にルール策定権を付与する際に、業界の民間団体が実質ルール策定権を握ってるような状況が違憲行為とされたものがある。それはそうだよね。法律はWe the peopleに選挙で選ばれた議員が議会で策定するもので、行政府どころかその先の民間団体に規則策定の権利が移譲されるのはおかしい。CAMTって、議会から財務省に広範な規則策定権は付与されているものの、課税所得(と言えるのかな?)に当たるAFSIのスターティングポイントはGAAP利益。GAAPって財務省やSECが規定しているのではなく、FASBが策定。FASBは民間団体。って考えると課税所得の定義を民間団体に決めさせてる、っていう見方もあり得て、これは違憲行為では、って疑問を呈する有識者もいる。FASBだったら民間団体とは言えまだ米国の団体だけど、ピラー2みたいにOECDって米国の団体ですらない、もちろんWe the peopleが選挙を通じて選んだ訳でもない団体が実質ルール策定しそこから逸脱するとUTPRで懲罰、みたいなストラクチャーはCAMTにも増して同様の憲法的な問題があり得る、かもね。どんなShow Downとなるんでしょうか。CAMTに関する違憲論はAt the best学術的な議論な気はするけど、AFSIの基となるGAAPの利益っていう金額が、税法上のTaxable Incomeの定義と比較するとソフトというか、会計原則の解釈次第のような部分が多分にあって、GAAP自体の数字の作り方が一定じゃないとと当然AFSIに同様のインパクトがある。

とか、いろいろ考えてる間に7月どころか、8月も終わりLabor Day。Miami Beachは相変わらず夏だけど、今年のNYCはまるでSan Diegoみたいな気候・気温がズ~っと続いてて快適。一週間ほど暑い週があった以外は冷夏だ。それでも7月とかは日も長いしついつい屋外テラスがあるPizzeriaとかで至福の時を過ごしたくなったりしてたけど、8月後半から目に見えて日も短くなり既に秋の気配。またあの寒~い冬が到来か、と考えると自然とMiami Beachで過ごす日々が増えそう。でも数か月も先のことは考えててもしょうがなんで、今はカフェの歩道にせり出したテラスで街行く人々を見ながらDay DreamingでもしてOutdoorを満喫。BlondieじゃないけどDreamingはFree。タックスもかかんないし(笑)。もちろん若い女性じゃないんでdebutanteにはなり得ないし、ステータス的にも歳的にもdebutantにもなんないんで、Blondieの言う通りCup of Teaの代わりにCoffeeでDreaming。そんなDreamにも米国税務やREITが登場する(なにそれ?)っていう展開になる。

同族持分(Closely Held)禁止要件

前回のポスティングでREITには100人の株主が必要、っていう要件に触れた。ファンドがLower TierのREITを100%所有していると信じてた投資家の読者はビックリしたかもしれないけど、そのカラクリは分かってもらえたと思う。

で、100人株主要件にチョッと通じるものがある別の組織的な要件にClosely Held禁止っていうのがある。つまり「REITはClosely Heldではいけない」ってことなんで、何をもってClosely Heldってレッテル貼られるか、の検討が重要。この判断は、米国税法の別の規定となる「Personal Holding Company」の定義を参照して行う、とされる。すなわち、REIT課税年度の下半期に、一度でもREIT株式価値の50%超を直接、間接、みなしで5人以下の個人が所有しているとClosely Heldになる。俗にいう5/50テストだ。株式のみなし所有っていうと米国税務の関与している人だったら、すぐにsection 318を連想すると思うけど、section 318のみなし持分規定は「Sub C、すなわちsection 301から385、の条文」のうち、318の適用があるって明記してある条文目的のみに関係するのが原則。REITはsection 856から859、Sub Cからチョッと遠いSub MのPart IIで規定されているんで、section 318の影響は及ばない。代わりにSub GのPersonal Holding Company判断時に適用されるみなし持分規定を適用する。

で、100人株主の判断時に適用される40年投資法と異なり、Personal Holding Company規則のClosely Held判断時にはパートナーシップとかをLook-throughする。Look-throughする、しない、は常に悩ましいところだけど、Closely Held規定の適用時にLook-throughするっていうのは実はGood News。Look-throughすればより多くの個人の少数持分をカウントすることになるんで、特定の個人5人が株式50%超を所有してる、っていう結論に至り難いことになる。実務的に5/50テストを検証する方法は、みなし持分規定やLook-throughを加味した後、上からトップ5人の個人株主を特定し、持分合計が50%超になるかどうかを見る、っていうもの。トップ5人の持分合計が50%以下だったら5/50テストOKっていうのが一番容易な検証法だ。実際には株主にTrustが居たりすることも珍しくないんで誰を株主として取り扱うべきか、っていう検討だけでも結構な作業になることが多い。

また、株主による株式譲渡等でREITが期せずしてClosely Heldにならないように、多くのREITで「Excess Share」っていう譲渡制限があり、株式譲渡により特定%を超える株式が取得されると、超過部分は自動的にCharityを受益者とするTrustに所有されると取り扱われたり、または単純に超過部分の株式は無効、っていうような制限が定款に規定される。

Closely Heldはかなり面倒な規定だけど、雰囲気程度は分かってもらえたんではないでしょうか。

分配要件

ここまでREITになるための要件のうち、Corporate、100人株主、Closely Held禁止、そしてAssetテストとIncomeテストに触れた。他にも細かい要件がいろいろあるけど、ここでは最後にRICやREITを語る際に避けては通れない分配要件に触れておきたい。

REITはCorporationなんで当然だけどパートナーシップ税制の適用対象ではない。パススルーじゃないんで主体レベルの損失が投資家にAllocationされたりすることはない。その代わりにっていうか、REITにはDividends-Paid Deduction(DPD)、日本で言うところの「ペイスル―」が適用されて、支払配当をREIT側で損金算入することが認められる。結果として、税引後の所得から配当を支払う通常のCorporateと異なり、投資家が受取配当に課税されても二重課税にならない。

DPDで配当すると損金算入できます、って言うと任意に配当できるみたいに聞こえるかもしれないけど、そうではない。REIT適格となるためには毎期、DPD前のTaxable Income(DPD適格の金額)の90%を分配しないといけない。これが分配要件だ。分配要件を満たさないとそもそもREITにならないけど、DPDはREITの優位点なのでこの要件はREIT形態のメリットとなる。90%分配要件の計算の拠り所になるTaxable IncomeからネットCapital Gainは除外される。ということは、REITの分配要件のことだけを考えれば通常所得の10%やNet Capital Gainを留保すること自体に問題はない。だけど、分配しないとペイスルーにならないんでその分だけREITレベルで法人税対象になる。

じゃあ、毎期、Taxable Income全額分配したらいいじゃん、って思うかもしれないけど、事は必ずしも単純ではない。例えば、分配要件はTaxable Incomeベースだけど、多くのケースでその年のNet Cash Flowとは一致しない、っていうか絶対ピッタリは合わないし、乖離が大きいケースも珍しくない。ボーナス償却とかあればCash Flowの方が大きくなるから分配の原資には困らない。そんなケースではTaxable Incomeの90%どころか、Net Capital Gainの分配や、さらにそれらを超えてCurrentやAccumulated E&Pを超える「Return of capital」分配を行うこともできる。Return of capitalは通常のCorporate Taxの301(c)(2)の取り扱いと同じで、株主側の株式簿価を減額させる。キャッシュフローが潤沢な年にどれだけ分配するかは、税務っていうよりCommercial Decision。

逆に借り入れの返済が大きかったり、投資資金が必要な年はキャッシュフローがTaxable Incomeに及ばない。「Excess noncash income」例外規定っていうのがあるけど、結構セコくて余り役に立たないことが多い。仮にExcess noncash income例外で辛うじて90%要件を満たすことができたとしても、REITが留保するTaxable IncomeはDPDを取れないんで、REITレベルで法人税の対象になる。

国内株主側の取り扱いに関しては、Net Capital Gainを分配せずにREITが法人税を支払い、だけど、みなし分配と取り扱い、法人税を株主側でクレジットしたりする手法があったり、10月~12月の第4四半期に分配を宣言して、実際には翌期1月末までに支払って宣言課税年度の分配と取り扱ったりとか、細かいテクニックが数多く存在する。

外国人投資家

日本企業のファンド経由REIT投資みたいに、外国人投資家が受け取る分配の課税関係はこれはこれで複雑。詳細は投資毎にアドバイザーに聞いて欲しいけど、いくつかある重要ポイントのまず第一はUSRPIの譲渡に帰する分配の取り扱い。REIT株式そのものがUSRPIかどうかとは別の次元の話しとして(多くのケースでREIT株式はUSRPIだけど、必ずしもそうじゃない点は以前触れた。よね?)、REITがUSRPIを譲渡した課税年度の分配は、USRPI譲渡益に帰する範囲で、外国人投資家自らがUSRPIを譲渡したかのようにFIRPTA課税の対象になる。ここで要注意なのは、ここでいうUSRPI譲渡に帰する分配は、Net Capital Gain分配とは限らない、っていう点。「REIT Net Capital Gain分配神話」だ。この神話、外国人投資家側の取り扱いだけでも取り扱いは難関極まりないけど、これらの分配に対する源泉徴収時には必ずしもUSRPIではなく通常のNet長期キャピタルゲインを見て判断するんで、両者は金額、タイミング共にマッチングしないケースが多く、何らかのConventionやTie-Breaker的な規則が出て欲しいところ。この部分は深堀りするとかなり面白くて5つくらいのポスティングになるんでそのうちね~(いつになることやら)。

REITの分配要件で触れた通り、REITがNet Capital Gainを分配しないといけないという要件はない。仮にUSRPI譲渡からNet Capital Gainが生じて、Net Capital Gain以外のTaxable Incomeを分配し、REIT自身が分配をNet Capital Gain分配と指定しないとする。それでもUSRPI譲渡がある限り、通常の分配のうちUSRPI譲渡益に帰する金額はFIRPTA課税対象となる。さらに、Short-Term Capital Gainは通常所得なので通常分配に混ざってる可能性があるけど、FIRPTA課税にはUSRPI譲渡がShort-Termだったら免除という規定はないんで、こちらもNet Capital Gain分配に含まれないけどFIRPTA課税対象となる。一方でNet Capital GainにはUSRPI譲渡でない取引も含まれている可能性もある。代表的な例はモーゲージ債権の譲渡、米国外の不動産譲渡など。その場合にはREITからNet Capital Gain分配があってもFIRPTA課税の対象となる分配はない。

USRPI譲渡益に帰さない分配はE&Pの範囲で通常の配当として30%源泉税対象。LOBを満たす条約適格の外国株主は条約低減レートの適用可能性はあるけど、REITの配当は、通常法人の配当と比較して、条約低減レートの恩典は少ない。日米租税条約で言うと、6か月所有期間・50%以上の議決権所有の法人株主に通常認められる0%源泉、また10%以上の議決権を持つ法人株主に認められる5%源泉、の適用はない。そんな中30%からの低減が認められる例外は次の3通り。株主が年金基金のケースを除き全て源泉税は10%に低減。年金基金だけは0%。まず個人および年金基金のREIT持分が10%以下のケース。次に上場REITで株式が「Traded」(単に上場されているだけじゃダメ。例えば償還型はPublic OfferされてSECに登録されててもTradeされていることにはならない)されてて持分が5%以下のケース。最後は、持分10%以下の分散型REITから受け取る配当。

REIT持分譲渡

ここまでどんな法人がREIT適格で、REITがDPDの恩典を受ける分配が外国株主側でどんな風に課税されるか、って話しだったけど、じゃあREIT適格の法人株式の譲渡に対する課税関係は、っていうのが次の話。REIT株式がUSRPIのケースでは、他のUSRPI譲渡と同様、譲渡益はFIRPTA課税でみなしECIとして申告課税になる。ただREIT株式譲渡にはいくつか例外がある。以前触れたDC REIT、QFPF、外国政府、とかだ。う~ん、ようやくメインテーマの挑戦的な財務省規則案の内容に辿り着いた。って言っても規則草案の内容そのものは次回だね。