Thursday, June 28, 2007

LLCの統治形態とスピンオフ

*LLCの統治形態

LLCの企業統治としては「Member-Managed」と「Manager-Managed」の二つがあり、その選択はLLCのメンバー次第だ。株式会社に適用される「株主/Director/Officer」という統治形態と比べるとかなり弾力性がある。「Member-Managed」はその名の通り、各メンバーがLLCの経営に関与し、またLLCのAgentとしての機能・責任を持つことを意味する。法的にはGPのジェネラル・パートナーと同じような位置づけとなるが、LLCメンバーなのでLLCの債務に対しては当然「有限責任」である。LPのリミテッド・パートナーが経営に参加すると「有限責任」を剥奪されるのとは対照的にLLCメンバーの有限責任は経営参加してもそのままとなる。また株式会社でも同族企業のようなケースでは「株主=Director=Officer」といったケースは見られるが、法的にはたまたま同一人物が兼任しているという位置づけである。LLCのメンバーはメンバーという法的機能のままで経営参加することができる。

一方「Manager-Managed」のLLCでは、メンバーの一部(または全員)が経営に参加しない。Managerはメンバーから選任されてもいいし、外部からでも、その混合でもいい。「Manager-Managed」のLLCで経営に参加しないメンバーは法的にはLPのリミテッド・パートナーと同じような位置づけとなり、単なる投資家として機能することになる。

*統治形態の選択の影響

いずれの統治形態を取るかに関してはLLC設立時にメンバーが決定し、登記書類にてその選択を開示する。LLC Operating Agreementにも明確にしておくのが望ましい。何もしない場合の「Default」規定は「Member-Managed」であるケースがほとんどだ。日本企業・日本人個人がLLCを設立する際に、余り深い検討なくこの選択を行われているケースも見受けられるが、どちらを選択するかによりいろいろな影響がある。

例えば、「Member-Managed」とするか「Manager-Managed」とするかで関与する者の「Agency法」「Fiduciary義務」等に基づく法的パワーが異なってくるし、また「Manager-Managed」の場合にはLLCの持分が証券法の「証券(Securities)」に該当する可能性が高まる(その場合にはExemptionを探す必要があったり、Minority Protectionを気にする必要がある)等の影響がある。また、税務上の取り扱いにもいろいろな影響がある。簡単に思いつく範囲でも、「Manager-Managed」のLLCで経営に参加していないメンバーは自営業税(SE Tax)の対象になり難いというメリット(LLCが儲かっているという前提で)があるが、一方で「Passive Activity Loss」規定に抵触する可能性があるというデメリットもある。

*Rev.Rul.2007-42

LLCの統治形態とスピンオフの要件に関して先日「Rev Rul 2007-42」が発表された。Rulingの前提となる事実関係および規定は次の通りである。「株式会社D(D社)」は「LLC」の1/3の持分、子会社Cの100%の株式を持つ。C社は5年以上長年に亘りActiveな事業に従事している。一方D社は自分自身では何もしていないがLLCが5年以上Activeな事業に従事していたとされる。ここでいうActiveな事業とは「受動的な投資ではない」という意味で「積極的に仕事をしている」とか「能動的な」とか訳されることもあるが分かり難いので敢えてそのまま「Active」という用語を使うとする。D社は適格スピンオフにて子会社Cの株式をD社の株主に分配することを予定している。

適格スピンオフとなるためには、他の要件(ここでは満たされていると仮定)と同時に「事業継続」要件を満たす必要がある。ここでいう事業継続とは「スピンオフの直後にD社、C社が過去5年間に亘って行っていたActiveな事業をそのまま継続すること」を意味する。C社に関しては歴史的に事業を営んでいるので問題はないが、D社は自分自身何もしていない。D社のようなケースでは持分を保有する子会社その他の事業主体が行うActive事業を自分自身のものと取り扱う「Deemed activity」の規定の適用ができるかどうかの検討が必要となる。D社はスピンオフの後、LLC持分のみを持つこととなる。したがって、焦点となるのは「LLCが行っていたActive事業」をD社のActive事業と位置づけることができるかどうかである。

IRSは過去に類似するケースでRuling等を出している。GPに20%の持分を持つジェネラル・パートナー(すなわちパートナーシップの経営に関与している)はGPのActive事業に関して自ら従事しているものと同様の取り扱いを受けることができるとされている(Rev.Rul.92-17)。また、同様にLLCに20%の持分を持つ「Member-Managed」LLCのメンバーに関してもLLCのActive事業に関して自ら従事しているものと同様の取り扱いを受けることができるとされる(Rev.Rul.2002-49)。これら二つのケースはいずれもパートナー、メンバーがGP、LLCの経営に関与している例である。

一方、企業再編に係る事業継続を規定した施行規則では持分1/3(すなわち33.33%)のリミテッド・パートナー(すなわちパートナーシップの経営に関与していない投資家の状態にある者)でもパートナーシップのActive事業に関して自ら従事しているものと同様の取り扱いを受けることができるとされている(Sec.1.368-1(d)(4)(iii)(B))。

今回のRev.Rul.2007-42の検討対象となっている例は「Manager-Managed」のLLC(D社はLLCの経営に参加していない)で持分が1/3のケースである。これは上の企業再編の施行規則に規定されているLPのケースに類似しており、予想通り「LLCのActive事業に関して自ら従事しているものと同様の取り扱いを受ける」ことができるという結果が出ている。一方、もしD社のLLCに対する持分が20%だとしたらLLCのActive事業をD社自らのものと取り扱うことは認められないとされている。

これらのRuling・規定を総合すると「Member-Managed」LLCの場合には、20%という低い持分でもLLCの活動を基にスピンオフの事業継続要件を満たすことができるが、「Manager-Managed」LLCで経営に参加していないメンバーに関しては20%ではダメで、1/3ならOKということになる。20%~33%の持分に関して直接言及はないが、1/3が最低限必要であると考えるのが妥当であろう。