Tuesday, June 19, 2007

東京の国際金融センター化と日本のタックス・カルチャー

*東京の国際金融センターとしての未来

今日のNikkei Netに「金融拠点づくり、都市再生に着手・政府方針」という記事が記載されていた。政府の都市再生本部というところが「国際競争力を高め、我が国をニューヨークやロンドンにならぶ国際金融センターにすることは重要な課題だ」と指摘している。まさしくその通りであり、海外で働く日本人の一人としてぜひそうなって欲しいと願っている。物作りでは世界超一流の日本も、金融拠点としての未来は米国、英国、香港等に遠く及ばない。

日本の国際金融センターへの道程と日本のタックス・システムに関して思うところがあり、またちょうど米国ではブラックストーンのような実にダイナミックな動きがあることを鑑み、今回のポスティングは米国タックスの技術的な側面とは直接関連がないタイトルであるが「日本(東京)の国際金融センター化」について簡単に触れておくこととした。

*国際金融センターとなるために必要なものは

発表によると、「ビジネス生活環境などの都市インフラの改善も必要」ということで、外国人が日本に滞在し易い環境を作り、都市再生に取り組むということだ。また、容積率の特例、税制優遇、金融機関や大学など関連施設の集積、などを通じて東京の日本橋や赤坂、六本木などが国際金融センターとして発展するように努力するという。

国際金融センター化にはこれらハード面の充実も考慮する必要はあるが、数ある金融センターの中から海外投資家に敢えて日本を選択させるにはそれだけではもちろん十分ではない。日本が本当の国際金融センターに生まれ変わるには「日本でビジネス・投資をした場合にはどのような課税が行われるのか」という法的な予見可能性を高めるのが急務だ。

6月13日のポスティングで、武富士関連の日本での追徴課税が「事後立法」に基づくこと、日本の課税が「租税法律主義」とはほど遠いこと、が升永英俊弁護士により指摘されている点に触れた。この懸念は武富士のケースに限られたことではなく、海外から日本を見る際には常につきまとう問題点である。租税法律主義が確立されていないのではないかという懸念があれば(たとえそれが単なる認識だけであったとしても)、リスクに敏感な資本を日本に呼び寄せる際の大きな障害となる。

*激化する国際金融センター化競争

ちょうど、都市再生本部が日本の国際金融センター化に係る発表を行う数日前に香港政府が同じような発表をしていた。すなわち「香港をニューヨークやロンドンにならぶ国際金融センターにする」ということだ。ニューヨーク、ロンドンの魅力は金融市場としての長い歴史に基づくノウハウと並んで、税法、商法の弾力性、その運用の透明性、公正さにある。香港には低税率、秘匿性、英国植民地時代に蓄積された金融ノウハウ、中国市場へのアクセス等の魅力があふれている。その意味で独自の存在感を打ち出し易い。

ニューヨーク、ロンドン、香港ばかりではない。ドバイ、スイス、カリブ海諸島等も各々個性的な魅力を兼ね備えている。日本が国際金融センターとして機能する際に他の拠点と差別化を計る魅力は何か。他の金融センターに打ち勝つ、またはせめて同等に戦うハードルは極めて高い。目先の税収を優先して理不尽な税法運用をしている場合ではない。