Friday, January 3, 2025

2025年謹賀新年「119会期米国議会」

2025年明けましておめでとうございます!

米国選挙で明け暮れた2024年がようやく終わり、新政権が発足する2025年。振り返ってみると2023年末のポスティングで「来年2024年11月の選挙で大統領府、両院の構成がどうなるか次第でタックスにかかわらずアメリカばかりでなく世界の近未来が大きく変わる」って書いたけど、結局、共和党のTrifectaとなった。この選挙結果の背景はレガシーメディアを含む多くの専門家がいろいろと分析してるけど、あくまで現地肌感覚で敢えてラフに言うと国境、経済、カルチャー問題に関する民主党プラットフォームが米国の一般市民のCommon Senseからかけ離れて受け入れ難い方向にシフトして、Noが突きつけられたってことじゃないかなって思うけどね。共和党もTrifectaになったとは言え下院は僅差なんで、前回、前々回のポスティングで増れた通り、党内調整でもめた結果思ったような法律をデリバーできないリスクをどう管理するかが課題。

Center of Gravity

そんな中、年末年始は例によってFloridaのマイアミビーチ!コロナ禍で各州政策や統治スタンスの差異が白日の下に晒され、それを機に多くの市民がFederalismにおける州政府のインパクトを直接体感することになった点は先日のポスティングでチラッと触れた。その頃から自ずと個人の自由を尊重してくれる州に滞在する機会が増えたけど、さすがにSouth Dakotaとかは冬寒いんでTexas、Georgia、特に解放感溢れるFloridaの南に頻繁に来るようになった。それを機に自然にFlorida州やマイアミビーチが属するMiami-Dade Countyのポリティクスをフォローし始めることになったんだけど、期せずして4年後の2024年の選挙でFloridaは米国ポリティクスの重心、Center of Gravityになった。もちろんFloridaの中でも真のCenter of GravityはPalm Beachだけど、その南に位置するマイアミでも今年の年末年始はそんなVibeを感じることができた(気のせいの可能性大?)。

で、今回は年末年始に掛けてお天気も良く、心身ともにLiberateされるようJet SkiでBiscayne Bayを一周しながらNew Year Resolutionを整理する機会に恵まれた。Liberateされる前に転落して怪我とかにならないよう30mphを超えないよう慎重にね。

で、1月1日午前0時には例によってSouth Beach等で花火があったけど、今年は(こちらも気のせい?)例年より派手だった気がする。たまたま270度見渡せるところから見たせいかもしれないけど、Bayfront ParkやSouth BeachのOcean Driveとかのいつもの場所からだけじゃなくて、Coconut Glove方面、Collins Parkとか、後は正確な場所どこだったか不明だけどNorth Beach方面、もしかしてSunny IslesまたはHallandale BeachかHollywood Beach?みたいな比較的北の方とかからも上がってて「パノラマ」。

PTEP

で、お陰様ですっかりLiberateされてCuban Coffeeと共にPTEPの規則案の解読に勢いが付いたんだけどアレ難しいよね。っていうかあの規則に準拠する側のMNCは大変だよね。古くからPTEPってCFC側の属性なのかUS株主側の属性なのか、パススルー経由でCFC持ってる米国株主のパススルー投資簿価の増減有無、とかかなり基本的な概念のところで整理し難いものがあったけど、その辺り、学術的には良く整理されている。さすが4年間出る出るって言い続けて政権交代直前滑り込みで草案に漕ぎつけただけのことはある。

昨年は年始からいきなりハードコアのKiller QueenじゃなくてKiller B(Triangular Reorganizationを利用したRepatriationプラン)Regだったけど、今年の前半は税制改正動向と並行してPTEP Reg三昧のポスティングになる可能性大なんで皆さん覚悟しておいて下さい。PTEPはKiller Bより汎用性はあるね。

119会期

米国議会の会期は2年で必ず奇数の暦年1月3日から始まる。連邦憲法の20th Amendmentで強制される日程だ。え~ってことは今日じゃん。2025年(奇数)の1月3日だからね。日本だったら未だお正月三が日だよね。米国はThanksgivingから年末まではHolidayムードで楽しいけど、新年は元旦のみお休みで2日から何事もなかったかのように普通になるから怖い。とは言え今年は2日、3日が木曜、金曜なんで全体に本番は6日からっていう感じはある。だったら日本と同じスタートじゃんってなるね。確かに。だけど米国連邦法人税申告書は延長後の提出期限が期末から10か月後の15日なんで、3月決算の日本企業子会社の連邦法人税申告は1月15日。これが理由でBig 4や企業の税務部に勤務されている方の中には年末年始必ずしもゆっくりできないケースも多い。Remoteでいろんなことができる今日この頃はそんな中でもフレキシビリティは増えててありがたい。

で、1月3日から第119会期の議会が2024年11月の選挙で当選した議員により開始される。この会期番号は1789年に連邦憲法が批准されて最初の議会が招集された時から続いてるから凄いよね。米国の独立は1789年の憲法批准から13年遡る1776年7月4日。なんで、2026年7月4日は「the Semiquincentennial」祭、すなわち独立250周年に当たる。DOGEとかが2026年7月4日までに市民が体感できるような不要な規則削減を含む改革を実現したいって言っているのは250年祭っていうマイルストーンに合わせるSymbolicな理由がある。ちなみに20th Amendmentは1933年でそれまでは3月から新会期だったらしいけど、選挙(前年11月)~新会期(3月)までの所謂「Lame Duck」期間が長すぎて不効率っていうことで現在の1月3日、正確には3日東時間正午が会期開始となった。これ書いてるのが午前10時28分だから後1時間32分!大統領就任は1月20日の正午だ。

1月3日に何が起こるかって言うと、下院議長(正確には「Speaker of the House」)の選出と119会期の議員の宣誓就任。

下院議長選出

下院議長の選出だけど、手続きとしては各党が各々候補者を決めるけど、もちろん多数議席を有する党の候補者が議長になる。不在票は認められず実際に出席している議員の多数決で決まる。従来、下院議長の選出は儀式的な手続きだったんだけど、近年は共和党内で候補者が決まらない、または決まっても多数一致で選任できない、などの問題が多く、それ自体ドラマというか注目を集める手続きになってる。共和党が予算調整法を活用して云々の話しをした際に党内で意見調整できるかっていう話しを散々してるけど、最初のチャレンジだ。下院議長も一致団結して選べないようでは先が思いやられるもんね。

共和党Mike Johnson以外に候補者はいないけど、議席数が僅差かつThomas Massie (R-Ky)が反対を表明してるんで共和党は実質他全員一致してJohnsonに投票しないと多数決で勝てない。Chip Roy(R-Texas)とかがどう出るか見もの。Johnsonは先日のContinuing Resolution(3月14日まで米国政府をFundingする臨時法案)で一部の共和党議員から信用できないと顰蹙を買っている。Johnsonが可決に持ち込もうとしたCRは民主党の意向も組み入れて法案化し、投票前日に1,500ページを超える法案を始めて公表、その中にはCRだけでなく多くの追加の歳出(議員の昇給含む)が盛り込まれていたことからDOGEのMusk等からCRの名を借りた「Give Away」として叱責を受ける結果となった。確かにあれだけの歳出を盛り込んで1,500ページじゃCRも入った立派なOmnimus Billだよね(苦笑)。IRAとかもそうだけど、複雑な法案を投票直前に公表して議会に承認させることから議員が本当にInformed Decisionする時間がない。結局、Musk等の反対意見を反映し本来のCRに不可欠な部分が中心に僅か(?)118ページに大幅簡素化されて可決されている。そんな訳でJohnson不信は根強く残るけど、数日前にトランプが無条件信任を発表してるんで若干勢い付いた感はある。ボトムライン他に候補いないしね。しかも今日選出できないと6日の大統領選挙結果の最終認定も遅れる?どうなることでしょうか。

ということで2025年もよろしくお願いします。次回はPTEPに行く前に1月の政局等に関してもう少しだけ追加でポスティングしてみたい。

Monday, December 23, 2024

2024年11月米国選挙結果と米国税制 (3) 「予算調整法2回どう使い分ける?(2)」

前回、下院・上院案のメリット・デメリットを比較検討する勢いで始めたけど、South DakotaとかFred Korematsuの話しになってしまったんで今日こそ。

下院・上院案のプロコン

下院案の一発巨大パッケージのメリットは前回のポスティングで触れた下院の議席数が僅差にある点の懸念を克服し易いと考えられる点。例えばもし国家財政責任に重点を置くいわゆるDeficit Hawkの共和党下院議員が減税に腰が引けてる場合、同じ法案に国境警備が盛り込まれてないと賛成意欲が削がれるリスクがある。それなんで全てひとつのパッケージ化しておくのが安全と言う理論。前々回触れた通り、下院の議席差異は僅少っていうリスクは十分に加味する必要がある。また同じようなポイントだけど、4月のフロリダ特別選挙まで一議席差が続くとすると、その間に争点が少ないとは言え、第一弾の国境警備法案を可決することができるのか、っていう不安もチラつく。

上院と共にチーム・トランプは下院がこんな懸念を持つこと自体を煙たがってる様子がある。税制改正にはある程度時間が掛かる。米国市民が願っている国境警備に関して第一弾で素早く対処するのは当然という感覚。また税法案のドラフトは複雑で議会と財務省との連携が重要だけどScott Bessentは早期に承認を得られると仮定しても、省内の税務担当も稼働している必要がありこの点でも時間を要する。

さらにチームトランプには第二弾の可決は下院が懸念するほど困難ではないだろう、という読みもある。国防長官候補のHegsethが息を吹き返してることからも共和党議員に対するトランプの影響力は絶大で、増してや選挙公約の減税に反対票を投じるような者は次回のPrimary(予備選)も考えるといないという強気の読みだ。

陸軍・海軍フットボール観戦首脳会談

そんな中、年末恒例の陸軍・海軍フットボール(Army-Navy game)が12月14日メリーランド州ランドーバー で開催された。Army-Navy gameは1890年から続く陸軍士官学校(West Point)と海軍士官学校(Naval Academy)が対決する由緒あるカレッジフットボール。勝者には「Commander-in-Chief's Trophy」が与えられるだけに歴代の大統領(Commander-in-Chief)が観戦することが多い。今年のゲームは現大統領は既に存在感がなくなってるせいかどうか分からないけど、バイデンは姿を見せず(2021年の観戦が最後)、今年は米国内外で既に大統領かのようなプレゼンスになっているトランプが観戦した。トランプと共に登場したのは新政権リーダーWho’s Who。VPのVance、両院リーダーのJohnson、Thune(South Dakota覚えてる?)、そしてどちらかと言うと上院での承認プロセスで精査が厳しそうなHegseth(国防長官)、Gabbard(国家情報長官)、Patel(FBI長官)の3名、DOGEのMusk、Ramaswamy両人、DeSantis(フロリダ州知事)、Chief of StaffのSusie Wilesその他。

で、スイートで観戦しながら予算調整法のアプローチに関してトランプ、下院議長Johnson、上院Majority Leader(2025年から)のThuneの「Big 3」による首脳会談が行われた。JohnsonもThuneも早期に方向性を決めてしまいたい、また最終調整・決断はトランプにしかできない点で意見は一致。報道によると上院ThuneがTwo-Trackを押したのに対して、下院Johnsonはチームトランプが上院案を好んでいることを知っているので必ずしも下院の一発案を押すのではなく、下院歳入委員長のJason Smith を代表とする共和党議員の2回に分けてしまって党内調整が難航する懸念をトランプに十分に伝え、その上で最終決定された戦略には100%従うという出方をしたそうだ。

結局どうする?

結局のところ究極の仲裁人はトランプということで判断はトランプに委ねられたようだけど、チームトランプはDeputy Chief of StaffのStephen Miller等が下院議員と密に連絡を取り調整をしている。その甲斐があってか、下院共和党派閥の中でもDeficit Hawkで硬派のFreedom CaucusがTwo-Trackを公認する旨の書簡を送付するに至っている。ということはほぼTwo-Trackに決まりそうな感じだけど、下院共和党議員にはトランプから直接最終判断を聞きたいという希望があるようだ。一応、方向性が決まれば全員一丸になる用意はできているということらしい。

Two-Trackのもう一つのアキレス腱

税制改正が後半にもつれ込むもう一つのリスクは2026年の中間選挙への影響。ただでさえ大統領が属する党の下院は中間選挙で歴史的に不利な立場にあるけど、税制改正が遅れてその効果を2025年中に有権者が肌で感じることができないと減税が中間選挙の強みっていうかセールスポイントになり難い。2017年のTCJA可決が12月22日までずれ込んだため、2018年の中間選挙は共和党が大きく議席を失ってる。1982年のレーガン政権もそうだ。The Economic Recovery Tax Act of 1981 (ERTA)の可決は1981年8月後半だったけど、1982年の下院で同じく結構な議席を失ってる。トランプ政権が目指す地殻変動的な連邦政府の無駄削減や国境警備強化を4年間継続して徹底するには2026年の中間選挙で下院の多数を死守する必要があり、そのためには2024年早期に税制改正や規制緩和を達成し、有権者がその恩典を肌で感じることができる期間を設けるっていうタイムラインが求められる。大恐慌後の1934年のFDR政権下の下院・上院多数維持みたいな状況が理想だ。

このタイムラインはかなりタイトだ。Two-Trackで2回目により複雑な税制改正を上院が主張するからには、税制改正および規制緩和を2025年の夏、願わくば独立記念日の7月4日までに税制改正を達成するコミットメントがあるかどうかが一つのキー。このコミットメントがあやふやな状況だと下院の言う通り一発で対処してしまう方がいい。このタイムラインを達成するには5月には審議が開始され、6月には両院委員で法案のすり合わせをする必要がある。上述の通り、2つの予算調整法は並行して審議可能だし、また2024年を通して「もしTrifectaになったら」っていうシナリオで予算調整法を想定した税制改正法案の基となる文言を両院で検討していたことから、もしかしたら可能なタイムラインかもしれないけど、それでもかなりタイトなスケジュールだ。

第二弾の早期達成は可能か

だったら下院が言う通り一発で税制改正も含む巨大パッケージにしたらいいじゃん、って思うかもしれないけど、税制改正はより複雑なんで、多数の市民が望む国境警備予算の法案可決が遅れる方のリスクも加味しないといけない。したがって、どうしてもチームトランプの希望としてはまず100日以内に、米国市民の信任を得ている国境警備問題に即対処し、次の巨大法案で税制改正っていうのが落としどころとなる。しつこいかもしれないけど、Two-Trackの場合も、第二弾の税制改正審議は国境警備法案可決を待つ必要はなく、国境警備は下院司法委員会、税制改正は下院歳入委員会が中心にDual Trackで法案をまとめないと時間的に間に合わないだろう。

さらに2025年になったらグラスルーツを総動員して民主党議員にもプレッシャーを掛けて僅差を補うような努力も必要。1986年のレーガン政権による税制改革(今のInternal Revenue Codeは1986年版が元)時には多くの有権者が民主党議員に賛成に回るよう働き掛け、下院を292-136で可決させている。Joint Committeeに行く前の上院バージョンは97対3だったっていうから凄い。もしチップが非課税になる規定が入るような場合、ネバダ州では民主党議員でも反対票は投じ難いだろう。

下院と上院の制度差異

でもそんなことポリティクスに素人の僕が言ってるくらいだったら当然、海千山千の両院議員は百も承知だろうから、そういう風にTwo-Trackで同時審議したらいいじゃん、って思うかもしれないけど、ここが下院と上院の温度差が表面化するところ。2026年の中間選挙では、下院は全議席入れ替わるけど上院は3分の1のみ。すなわち、下院を規定する連邦憲法第I条のsection 2に基づき、下院435全議席は2年が任期。これは下院議員が一般PeopleとOut-of-Touchにならないように、2年毎に定期的にチェックを受けるという連邦憲法の知恵。一方、上院を規定する連邦憲法第I条のsection 3では上院議員の任期は6年。2年毎に行われる選挙では約3分の1づつ入れ替わることになる。Hostile Takeoverの対抗策「Classified Board(3分の1づつ選任することで一気に過半数取られない仕組み)」に似てる。Poison Pillと比較してもClassified Boardはより有効な敵対買収対抗策だ。実際にはHostile Takeoverって今日日の米国ではほとんどないけどね。アクティビストファンドのプレッシャーは敵対買収とは違うからね。

で、上院の6年に亘る時間差選挙だけど、これは急激な民衆の意思変化やそれに伴う議会勢力の短期的変動を避ける目的がある。下院の短期的な民衆の意思の反映と安定性のある上院をかみ合わせた二院制の立法府とすることで民衆の意思は反映しつつも長期的な安定性も確保するっていう制度だ。1788年当時の創立者が継続可能性の高い民主主義にしようとしている思慮深さが反映されている。何と言っても現在機能している憲法としては世界最古だからね。前から頻繁に警鐘を鳴らしてるけど、立派な憲法があっても守らなくなったら終わり。独裁政権や全体主義の国でももしかしたら一見まともな憲法があるかもしれない。

本当の民主主義の国との違いは守るか守らないか。また守らないといけない制度設計になっているかだ。その基本は言論の自由と三権分立にあるだろう。1788年から240年近く連邦憲法が機能し続けているのは、米国における「法の支配」に対する意識が強いっていうのが一つの理由だろう。でも最近は急進派系の議員とかが、自分が気に入らない判決が出たりすると最高裁は不法だ、とか言い出したりするケースがあるけどとても危険なレトリック。一般の人がランダムにそういったことを言うのは仕方がないけど、議員は連邦憲法第VI条に基づき「連邦憲法に忠実であり、憲法を守る」って就任宣言してるんだからその宣誓に忠実に行動しないとおかしい。実際の宣誓文言は連邦法、5 USC section 3331に規定されている。憲法は個人の自由、財産、命を守るためにあるんだから米国も気を付けないとね。

という制度的な背景で中間選挙に対する緊迫度は下院100%とすると上院は30%チョッとっていう感じ。この差が第二弾の税制改正のタイムラインに対する感覚の差になって現れないよう規律を持って対処できるんだったらTwo-TrackでもOKかも。

まとめ

いろいろと書いたんで今日のテーマを簡単にまとめておくと、2回に分けるアプローチに対する下院の懸念はRealなもの。だけどチームトランプがTwo-Trackを好む以上、上院のアプローチに傾きつつある今日この頃。下院と上院で中間選挙に対する温度差があるのは制度上仕方がないけど、Two-Trackとなる場合、第二弾とは言え2025年夏までにはいずれにしても対処しないと2026年中間選挙に弊害が出るので、上院がそれにコミットメントできるかどうかがキーと言える。

Sunday, December 22, 2024

2024年11月米国選挙結果と米国税制 (2)「予算調整法2回どう使い分ける?」

前回はチョッと久しぶりなポスティングだったけど、一瞬Zeppelinで危険な局面があったとは言えVan HalenとかThe Beatles、増してやHendrixなどで大きく脱線することなく乗り切り、11月の米国選挙結果そして今後の米国税制審議動向を探り始めた。今回も急に極寒になったNYCでクリスマスのフロリダ行きを目標にフォーカスして頑張ります。 前回のポスティングでは、共和党がTrifectaを達成したとは言え、同床異夢(?)みたいな状況もあり得て、両院のダイナミクス的に2回の予算調整法の活用法に関して既に意見が割れてるって点をプレリュード的に話し始めた。2回の予算調整法をどう活用するべきか巡る駆け引きは2025年の審議を見守る際のキーポイントのひとつなんで今日はもう少し深掘りしてみたい。

予算調整法アプローチ下院・上院案

2回の予算調整法の活用法に関して浮上している下院案と上院案の異なる2つのアプローチの大枠は前回のポスティングで既に触れた通り。軽くおさらいしておくと、下院案は第一弾、っていうか合体一発メガ弾?で国境警備、エネルギー政策、国防、そしてTCJAクリフ対策やトランプ提案の新税制の全てを盛り込んだクリスマスツリー的な巨大パッケージを可決っていうもの。一方の上院案は第一弾予算調整法では争点が少ない国境警備、場合によってはこれにプラスして国防やエナジー関係を盛り込み、こちらは政権発足後直ぐに可決。その後、より複雑な税制改正を第二弾で可決というもの。上院案の第一弾は「Fully Offset」すなわち他の歳出削減等でネット歳出を伴わない法案を想定している。

下院・上院の重鎮プレーヤー

下院案は議長のMike Johnson、下院Majority LeaderのSteve Scalise、下院歳入委員会のJason Smithらの一派が提言していて、上院案は上院Majority LeaderとなるJohn Thune、上院財政委員会のMike Crapoらによるものっていう点も前回触れた。

上院のJohn Thuneは従来から税制改正には深い関与がある人物。2011年から上院財政委員会のメンバーでTCJAの2017年可決にRyan、Brady、McConnell、Hatchの「Big 4」と同等に尽力した功績を持つ。一貫して増税に反対し個人や事業主の税負担軽減による経済成長を促進する政策を支持してきた。South Dakotaの議員なので農場や牧場事業継承の足かせとなるEstate Taxにも常に反対を表明している。

ちなみにSouth Dakotaと言えば、現知事のKristi NoemがHomeland Security長官に推薦されている。コロナの頃、NYとかCAは州政府・地元の官僚による個人行動の規制が激しかったんで個人の自由が一番尊重されていたSouth Dakotaで夏のひと時を過ごしたりしたけど同じ国でも州政府によって対処が大きく異なり、米国は州が国家主権同様っていうのは頭では以前から理解してたけど、コロナ禍は期せずしてそんな米国の実態を体感する機会になった。South DakotaのNoemはLock-Down系の強制措置は一切取らず、情報提供やその他の対応に限定し、後は州民の自由・責任としていた。他にもArkansas、Iowa、Nebraska、近所のWyomingやNorth DakotaもSouth Dakota程ではないけどオフィシャルなLock-Downオーダーは出てなかったはず。2020年夏のWyomingからSouth Dakotaに向かう途中のハイウェイパトロールの話しは以前「2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (6)」で書いたから見てみてね。これらの州と並びFlorida、Georgia、Texasも比較的緩やかな規制で、コロナ対策と個人や事業主の自由のバランスを取る政策を取っていた。そのため、さすがに冬のSouth Dakotaは寒いんでNYCからはFlorida、CAからはTexasに移住する人やビジネスは多かった。

「クライシス」時に政府やポリティシャンの本性が出るよね。第二次世界大戦時の日系人収用もその一つだね。どう考えても差別で憲法違反だけど最高裁は6対3で容認(「Korematsu v. United States, 323 U.S. 214 (1944)」)。日本人として米国と言う国を考える際に必読の判例(前回から必読が多過ぎ?)。え~読んだことないって?その場合は3名の判事(Murphy、Jackson、Roberts)の反対意見から読むのがいいかも。JacksonやRobertsっていうと今の最高裁にも同姓の判事がいるけど関係なくて1944年当時の判事のことだからね。ちなみにKorematsuで強い反対意見を書いたFrank Murphyは当時の大統領、民主党のFDRに任命されてるけど、日系人収用はそのFDRが大統領令(Executive Order 9066)で決定している。自分を任命してくれた大統領の政策にもかかわらず強烈な反対意見を表明している点、現最高裁判事の一人Amy Coney Barrettが未だTrumpに判事を任命される前にHillsdale Collegeで講演した際、最高裁判事は憲法にのみ忠実でなくてはいけないとし、自分が誰に任命されたとしても判断には一切影響は受けず、ポリティクスに左右されない判事の鏡としてMurphyの名を挙げている。ちなみにKorematsu判決は何の罪もない多くの日系人個人(米国市民)の自由を奪った政策を合憲・合法としたとして一般には米国史に残る誤りと認識されている。

Jason Smithと上院の確執?

で、John ThuneのSouth Dakotaでチョッと脇道に逸れたけど、実は下院歳入委員会のJason Smithと上院の間にはチョッとした不和がある。2025年のTCJAクリフを待たずに、TCJAには前倒しで自動変更された規定がいくつかある。2022年から研究開発支出が費用化の代わりに資産計上の上5年(米国外の活動は15年)償却になったり、支払利息損金算入制限のベースがEBITDAではなくEBITになっている。また100%即時償却も2023年から20%づつ減額される仕組み。これらを変更前の規定に戻すため2024年1月にJason Smithが先導し下院でAmerican Families and Workers Act of 2024(H.R. 7024)が可決され、同法案は上院の手に渡った。法案には他にも、国家主権として認知されていないために租税条約の締結ができない台湾との間に条約以外の形で実質似たような合意をみる規則も盛り込まれていた。ところが上院は法案を審議することなく放置したまま結局可決を見ないままの状態になってしまったっていう経緯。このせいかどうかは分かんないけど上院のTwo-Track案にJason Smithが一番深い懸念を示しているって言われている。

なかなかそれぞれの案のメリット・デメリットの話しに行かなくてごめん。今日は第二次世界大戦とKorematsuの話しで興奮してしまったんでここから次回。

Saturday, December 21, 2024

2024年11月米国選挙結果と米国税制

共和党Trifecta

米国選挙について最後のポスティングしたのが8月末だから、それからあっという間に3か月半の月日が経ってしまった。11月5日の選挙結果は皆さんもご存じの通り、大統領府、議会両院を共和党が制覇し「Trifecta」となった。大統領選に関してはレガシーメディアや世論調査が最後まで大接戦を報じてたけど、蓋を開けてみたら「Not even close」。選挙人ベースでトランプ312対ハリス226、全米得票数ベースでもトランプが多数、スイングステート7州全州、ブルーウォール州全州トランプが勝ち取った。

税制改正の行方

2025年TCJAクリフ対策の具体案やOECDのBEPS 2.0の運命に関しては、選挙でどちらかの党がTrifectaを達成することができるか、また両院や大統領府に関して党がSplitする場合は各府の構図がどうなるか、で大きな影響を受けるって「2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (4)」で触れた。特にどちらかの党がTrifectaを達成すると方向性が明確になるっていうことだったけど、共和党がTrifectaを実現させたので、選挙前よりも容易に今後の動向オプションを占うことができる。

2025年マイルストーン

Trifecta下で起こる税制や通商を取り巻く今後の主たるマイルストーンの第一弾は法的に新政権が発足する2025年1月20日正午。この時点で議会の関与なく大統領権限で実行できるExecutive Orderが複数公表されるだろう。Executive Orderには国境警備強化、学校教育等の社会問題と並び、通商・関税にかかわるものが含まれるって予想される。同日付けでパリ協定からの再度離脱もあり得る。

次のマイルストーンは政権発足後100日のMomentumが高い期間の議会による立法プロセス。上院は60議席に満たないんでFilibusterを回避できず、例によって多数決で法案可決ができる予算調整法を活用することになる。TCJAの多くの規定の延長、場合によってはトランプが選挙活動中に触れていたチップ、公的年金受給、残業代非課税化、国内製造に帰する所得に15%まで更なる法人税引き下げ、JDバンスのCTC拡充、等の税法改正を含む歳入・歳出にかかわる審議が行われる。予算調整法は会計年度一回のWild Cardだけど、国家会計期間が10月から始まるので実は暦年2025年に2回使える。この2回をどんな風に活用するかは見もの(後述)。予算調整法が2回使えることから3つめのマイルストーンは100日の速攻モーメンタム後の第二弾予算調整法審議・可決となる。実は2つの予算調整法は手続き的には並行して審議することができる。したがって第二弾が必ずしも2025年末にずれ込むとは限らない。2026年になると中間選挙が視野に入ってきて大きな法案の審議や可決がタイトになるんで2025年早めに可決させないとただでさえ難しい党内調整がさらに難航するリスクが高まる。

僅少な下院議席差異

下院では共和党が多数を押さえているとは言え、僅少差異なので今後の法案審議時に共和党下院議員が一枚岩になれるかどうかがキー。選挙結果だけ見ると220対215だけど、Defense Secretary候補だったMatt Gaetz(R-Fla)が下院から辞任、キャンパスでのユダヤ人学生差別問題でハーバードやUPennの学長を辞任に追い込んで有名になったElise Stefanik(R-NY)の国連大使就任、Michael Waltz(R-Fla)のNational Security Advisor就任、で3人の欠員となる。既に欠員になってるMatt Gaetzの議席にかかわるフロリダ州特別選挙が実施される4月まではナンと217対215だ。「二議席差か…」って思うかもしてないけど、1人でも寝返ると得票数としては216対216とかになり兼ねず万事休す。法案可決には多数決が必要なことから、ボトムライン全員一致団結が必要になる。

う~ん、下院共和党にできるかな~。共和党下院は党内コンセンサスを取り付けるのが困難っていうのは歴史が証明している。この辺りの熾烈なダイナミクスを描写したノンフィクションに2011年~15年まで下院議長を務めたJohn Boehner(R-OH)の回想録「On the House」っていう本があるけど、米国ポリティクスに興味ある方は必読。ハードロックの天才ドラムに興味ある方はJohn BonhamのMoby Dick必聴(関係ないね…。ここでLed Zeppelinの話しになると長くなるんで我慢しておきます)。Boehnerの後任のPaul Ryan(R-WI)も同じように派閥調整に苦労し、2017年共和党Trifecta下でオバマケア廃案に失敗しその後辞職している。2017年当時との比較で、今回は下院議長のMike JohnsonがトランプにAll-Inなので、トランプと確執が伝えられていたPaul Ryan時代よりはスムーズではないかっていう観測もある。さらに下院共和党派閥にも、2017年は内輪もめで貴重なTrifectaを最大限活用できなかった点の反省、また米国市民の信任を得たトランプ大統領のアジェンダは実行しないといけないっていう使命感は強いだろうからトランプが明確な方向性を打ち出せば「今回こそは・・・」っていう見方もある。でも今週のContinuing Resolution (CR)劇を見も分かる通り、実際にはそんなに単純な話しじゃないんでどうなりますでしょうか。

2回の予算調整法の使い道

暦年2025年に予算調整法が2回使える点は上述の通りだけど、この2回をどんな風に活用するかは見もの。この2回の使い分けは単なるタクティクスを超越した深淵な検討となる。

現時点で大別すると下院案と上院案が異なる形で浮上している。下院筋は第一弾予算調整法に国境警備、エネルギー政策、そしてTCJAクリフ対策やトランプ提案の新税制の全てを盛り込んだクリスマスツリー的な巨大パッケージを希望している。下院議長のMike Johnson、下院Majority LeaderのSteve Scalise、下院歳入委員会のJason Smithらがこの一派。一方の上院は第一弾予算調整法では争点が少ない国境警備、場合によってはプラスで国防やエナジー関係を盛り込み、こちらは初日とはいかなくても政権発足後直ぐに可決させ、より複雑な税制改正は第二弾で満を持す感じで対処したいという意向を持つ。上院Majority LeaderとなるJohn Thune、上院財政委員会のMike Crapoらがそちらの一派だ。トランプを含む大統領府一派はどちらかというと上院案に傾いてるらしい。

また、税制改正に関しては第一弾でTCJAクリフに対処し、第二弾にトランプ選挙活動中に提案していた新税制にフォーカスっていうマイナーなプランCも報道されている。

下院と上院が希望する異なるアプローチ。どっちも一長一短だけど、その真意や最新のダイナミクスに関しては長くなるんで次のポスティングでまとめてみる。

Saturday, August 31, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (6)

前回のポスティングでは法人税率に触れたんで今回はどちらかというと個人所得税関係。法人税が歳入に占める割合が8%程度なのに比べて2023年会計年度ベース(2023年9月期)で個人所得税は$3,713Bで歳入の80%以上を占める。正確にはこの金額所得税に加えて社会保障税(FICA・SECA)が含まれる。個人所得税は歳入への影響が大きいことに加え、有権者を直撃する税金なんで当然市民の関心は高い。

2025年TCJA CliffはGILTI、FDII、BEAT、一括償却とか法人税周りの規定も対象だけど、金額的にもポリティカルにも個人所得税の規定をどうするかがフォーカス。一般有権者には「GILTIレートを16%に引き上げずに13.125%に据え置くことにしました」って言っても「ギルティー?なにそれ?」ってなって琴線に触れることはない。「個人所得税率を39.6%に引き上げずに37%に据え置くことにしました」って言う方が分かり易いし選挙でも受ける。

個人所得税と法人税で歳入の90%を占めるけど、残りの10%は何かっていうと関税、Excise Tax、連邦準備委員会の歳入などで構成される。この数字だけ見てもトランプの思い付きの「所得税を関税に置き換える」っていうアイディアはDOA。でもタイムマシーンで前回触れた憲法の16th Amendmentが批准された1913年当時に戻ると連邦の歳入の90%は酒税(Liquor、Beer、Wine)そしてタバコ税っていうExcise Taxが占めていた。16th Amendmentは最後まで抵抗したWyoming州(さすが!)が世界大戦はもはや不可避っていうプレッシャーで折れて批准が達成された。それでIncome Taxが逆に90%を占めるに至る。Wyoming州って全米で最初にLLC法を導入したり実はデラウェア州よりも先を行く州。今でも個人所得税も法人税もない。冬もう少し温かければいいんだけどね~。

YellowstoneのNorth Gateから北上して一旦Wyomingの州境を超えてMontana州のLivingstonっていう宿場街みたいなところでSteak食べて一休。Livingstonの数ブロックで構成されるDowntownは雰囲気あるよね。たまに貨物列車が通過する音とか、なぜかいつも商店街(?)の向こうにたまたま満月が見えて。で、Interstate 90で一気にBillingsへ。その先の分岐で94に行くか90のまま行くか迷って、でも90にStayして、そのまま法定速度80Mなんで10%くらいの猶予を加味して90M(それでも周りが広すぎてバックしてるとは言わないけど止まってるみたい!)で南下する感じで突き抜けて再度Wyoming州経由South Dakota州まで突き抜けるコースは何回体感してもLiberateされるんで機会があったら皆さんもぜひ。Interstate 90ではどこから出現するのか分からないけど急に後ろにHighway Patrolが居たりするんだよね。The Wyoming Highway Patrolだ。レンタカーでランダムのFlorida、Georgia、Alabamaとかのナンバープレート(レンタカーに多いよね。特にFlorida)だったらいいかもしれないけど、自分のマシーンでNew Yorkプレートだと何か一本釣りされた感じ。

1918年に憲法18th Amendmentが批准されて米国は禁酒法時代になり、その後、憲法21st Amendmentで1933年に禁酒法が撤廃されるまでthe Wyoming Department of Law Enforcementは禁酒法違反を取り締まるのが唯一の使命だったっていうから凄い。1933年に禁酒法が撤廃されると同時にDepartment of Law Enforcementは解体されて、「the lives, property and constitutional rights of all people in Wyoming」を守るっていう使命のWyoming Highway Patrolが誕生して今日に至る。常に憲法に忠実な使命だ。

で、Pulloverされて路肩に停車。そこまではどこの州のInterstateでも同じ。Wyoming Highway Patrolに免許証みせて、「何マイルで飛ばしてたと思う?」って聞かれたら「う~ん、よく見てなかったんですが89マイルくらいでしょうか…?」とか言うと「ははは、ほとんど100マイルだよ。Good Try」ってなる。「ええ~空いてたんでついうっかりしていました。実は今日中にMount Rushmoreに着きたくて焦っていました」(Mount Rushmoreは少なくとも夏は11時までPublicにオープンしている)とかいう展開になり「それは急いだほうがいいね。だけどスピード出し過ぎないように。Good Luck。Interstate 90のトラフィックにのるまで先導してあげましょう」とかで一件落着になる。いつもなるとは限んないんで責任持てないけどね。

米国って禁酒法が終わってまだ90年しか経ってないんだよね。NYCでも「Speakeasy」バーが今では観光ノリで残ってるから、Mount RushmoreからSioux Falls(スーフォールスって読みます)、La Crosse、Madison、Chicago、Youngstown、とか通ってようやくLincoln Tunnel抜けてManhattanに戻ったらWyomingの景色を思い出しながらSpeakeasyでWind-downというかChillしてみてね。この旅程ある程度ゆっくり消化するにはYellowstoneから始まっても最低1週間は必要。西海岸から出発する場合は2週間ほど見ておくと随所で楽しめる。NYCから出発して西まで行って帰る往復だと、道中WFHで仕事しながらだろうから1か月以上必要かもね。でも価値あるからぜひ。

Tax Credits

ハリスの個人所得税関係の提案はWealth Transfer策のRefundableクレジット系が多い。トランプ提案同様、財源を含む具体的な詳細は分からず選挙後の実効性は不明。17歳未満の扶養子女に関して認められる個人所得税の税額控除(Child Tax Credit 「CTC」)を$3,600へ引き上げ、さらに新生児は$6,000というスーパーサイズCTC。CTCは所得制限があったり還付ポーションがあったりそれ自体複雑な規定だけどCTCセッションじゃないんでCTCの金額面にフォーカスする。

もともと$1,000だったCTCは2017年のTCJAで$2,000に増額されている。ところがこの$2,000のCTCも2025年TCJA Cliffのひとつで何もしないと2026年から自動的に$1,000に戻ってしまう。それは大変っていうことで両候補が自分が当選したら$1,000に戻さないどころか増額しますっていう提案をしているというのが背景。実はCTCにはもう一つ特筆すべき展開があって実は今年下院を通過した法案パッケージにCTCの$2,000引き上げが盛り込まれていた。The Tax Relief for American Families and Workers Actだ。この法案、CTCばかりでなくTCJA規定で2025年を待たずに既に自動改訂で憂き目にあっている規定の悪影響緩和が含まれてた。すなわち、R&D支出の資産計上の延期、100%ボーナス償却の復活、支払利息損金算入制限163(j)のベース額EBITをEBITDAに戻す、というビジネス関連のGoodiesだ。さらに条約を締結できない台湾に恩典を与える規定も入っていて盛りだくさんな法案だった。下院では両党、特に中庸派からサポートされて可決された。民主党の急進派はビジネスに甘い、共和党のFreedom Caucus派は就労義務に近い要件を直近過年度の状況を適用して判断できるCTCは勤労意欲にマイナス、という異なるイデオロギーで反対に回っていた。上院では共和党の反対で否決されている。

もともとサンダースよりも急進派の上院議員として知られるハリスがCTC増額を提案するのは自然。VP候補のワルズもミネソタ州がTrifectaになった段階で$1,750っていう全米で最も寛大な前払い・還付CTCを州レベルで可決させている。さらにワルズは州居住者240万人にRebateを交付したり、その財源として高額所得者の控除を減額、事業に対してはGILTIを州税にも導入、高額投資所得に1%のInvestment Tax導入、とカリフォルニア州をも超えるWealth Transfer派として知られているんでハリスの提案と整合性があるポリシー導入の実績を持つ。ちなみに「ミネソタ州でGILTI合致して歳入に大きく寄与するようなMNCとかあるんだっけ?」って不思議に思うかもしれないけど、実はUnited Health Group、Target、Best Buy、3Mなどはミネソタ州が本店所在地だ。ただ、これらのポリシーの影響で個人の高所得者は隣のSouth Dakota、南のTexasやFloridaのような個人所得税のない州に移住したケースが多いというセンサスデータがあるようだ。州税だったら引っ越せば解決するけど連邦で同じことされると市民権返上でもしない限り移住で税負担をManageすることはできない。

一方不思議なのはトランプ陣営。VP候補のJDバンスがOver-the-topの$5,000CTCを提案している。バンスは$2,000のCTCを否決した上院の議員。当人は上院投票の日、選挙活動でDCにいなかったということで投票はしてないらしいけど、この手の歳出に慎重な共和党支持の有権者からしてみると何ソレって感じだろう。寛容なCTCや同様のポリシーを支持するんだったらわざわざトランプに票を投じなくてもハリスに入れたらいい訳だからこれで有権者受けするんだろうか。しかもCTC増額を敢えて先制攻撃したのはバンス。ハリスはお株を取られては大変と、慌てて反撃に応じるがさすがのハリスもAcross-the-boardに$5,000は無理と判断したのか$3,600を提案。$5,000って聞いた後だと「結構セコイね」って感じるかもしれないけど、元々$1,000だからね。今でこそ時限立法で$2,000になっているけど。前回のポスティングで触れたポール・ライアンの「ポリティカルに延長せざるを得ない規定は時限でもいい」っていうコメントは言い当ててるよね。でもバンスが$5,000ってAll-Inだったんで何とかRaiseしないと急進派としては恰好つかないってことで新生児には$6,000を提案している。コストは組み合わせ次第だけと$1.3Tは下らないと言われてて「まるで軍拡戦争」って揶揄されたりしてる。

民主党がTrifectaになったらCTC増額は十分にあり得るけど、共和党がTrifectaになったからと言って$2,000に躊躇してたんだから$5,000のCTCになるとは考え難い。勝敗を左右するSwing Stateで受けたいっていうのは分かるけど党や候補者としてどんな国にしたいかっている大枠ポリシーのフレームワークの中で規律ある提案にしないと信憑性に欠ける。

ハリスは他にもEarned Income Tax Credit(EIC)から扶養子女要件撤廃、初めてマイホームを購入する者に$25,000のクレジット等を提案している。これらの恩典はもちろんだけど所得制限が設けられるんで一定の所得に達するとPhase-outされ最後は恩典ゼロになる。

ということで今日は両候補とCTCでした。

Friday, August 30, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (5)

元民主党でIndependentとして大統領選に出馬していたRobert F Kennedy Jr. (RFK Jr.)が撤退そしてトランプ公認を発表したり、まだまだ紆余曲折が続く大統領選挙。RFK Jr.はその名の通りRobert F Kennedyの息子だからトランプを公認とはね…。

そんな中、税制動向にかかわるコメントもちらほら出てきたんで代表的なものに触れておきたい。ただ前回触れた通りTrifectaにならないと税法は通らないし、またさらに言えば、Trifectaを得たとしても大統領の意向が最終的な法律に反映されるとは限らない。選挙活動中の公約は選挙目的だから実権を握った後のスタンスと同じじゃないし現時点のポリシー提案はディスカウントして聞いておくべき。特に今回の両候補の話しは…。

法人税率

ハリスは選挙運動広報のJames Singerを通じて法人税は28%に引き上げる方針を確認。もともとバイデン政権が28%を目指していたんで想定通り。

法人税率ってヘッドライン的に注目度合いは高いけど、米国の歳入に占める法人税の割合は実は高くない。2023年会計年度ベース(2023年9月期)でトータル歳入は約$4.5Tで、うち法人税は$368Bだから8%程度だ。一方個人所得税が$3,713Bを占める。法人税は21%だから単純計算すると法人税1%当たり$17.5Bの歳入になる。ってことは7%Headlineレートを上げると$122.5Bの増収。10年間で$1.2Tだからハリスが提唱する諸々のGoodiesの一部はファイナンスすることができる。

法人税が歳入に占める割合が低いのは、Corporationっていう形態自体が少ないのが大きな理由。LLCでCorporation同様にLimited Liabilityのシールドが得られ、ケースバイケースだけどClosely Heldの局面で1人のメンバーが持つLLC持分が差し押さえられたりしても、他メンバーの視点からLLC側のProtectionはCorporationより強力なケースもあるし、企業統治もCorporationよりかなりFlexible。LLCっていうのはCorporate Lawで統治が規定されるCorporationと異なり、メンバー間の契約で統治形態を含む権利関係が決まる。LLCは契約のCreatureだ。守秘面でもベールに包まれてるし、なんと言ってもCorporationと違ってパススルー課税の選択が可能。LLCのようなパススルー主体は最終的に所得が個人にフローアップしていくことが多いんで歳入は個人所得税としてカウントされる。もちろんCorporateベンチャーもあるんでそれらはJVメンバーのCorporateに配賦されるけどね。

ちなみにLLCが秘密のベールに包まれてるっていう点だけど、LLCはDelaware州等の州会社法(LLC法)に基づいて組成されるんで、一般市民ばかりでなく連邦政府にも実態が分からない。そこでCorporate Transparecy Act(「CTA」)ってい法律ができ行政府の複数の省庁で構成されるFinCENが規則を策定して、連邦政府にLLCを含む主体の最終的な個人Beneifical Ownerを開示させようとしてる。連邦と州の権限を規定するFederalism(およびAntFederalism)の観点から連邦にそんな権利はなく憲法違反っていう訴訟がアラバマ地方裁で起こり原告が勝利している。当訴訟の原告以外には判決の効果は及ばないけどCTAの行方は不透明。この手の訴訟や議論は他国では考え難いかもしれないけど、米国は元々州の集まりだった状態で各州が憲法を批准してようやく立派な連邦政府ができあがって来たっていう歴史に基づき連邦政府の権限は限定的。税金にしてもその歴史からWealth TaxみたいなDirect Taxは負担額を各州の人口数でApportionしないといけないとか(実質そんな法律は不可能)、1800年代から連邦の課税権には紆余曲折があって、1895年には究極の最高裁判決Pollockで止めを刺され、1913年の16th Amerndmentで連邦にIncome taxを徴収する権利(正確にはApportionなしでIncome taxを課すことができる権利)が認められるに至っている。この辺りの歴史から税制を取り巻く法的環境が他国とはかけ離れてて、国際合意とかで他国がいろいろ決めても連邦憲法的にできることとできないことがある。例えばUTPRなんかは仮に16th AmendmentはパスしてもSubstantive Due Process条項違反で違憲になる可能性があるんじゃないかなって思う。2017年のCFC留保所得一括課税の合憲性が問われたMooreケースも米国ならではの争いだろう。Mooreは超Deepで面白いからそのうちね。個人的には口頭弁論(Oral Argument)まで聞いたくらいのオタクぶりだからね!他にも最高裁の口頭弁論はThrillingなんでLoper Brightとかも聞いたけど憲法論は歴史の勉強にもなる。いろんなケースの口頭弁論聞き過ぎて声で9人のJusticeの誰が話してるか分かるまでになった。SotomayerとKagan、またRobertsとAlitoの区別は注意して聞いてないと分かり難いけどね。声や話し方が似てるっていうのもあるけど、質問内容的にこの組み合わせは似てるからね。

ということでCorporationの話しに戻るけど、上場企業(PTPはQualifying Income条件を満たさないと法的形態はパートナーシップやLLCでも税務上は強制的にCorporate扱い)、VCファンドからラウンド毎にファンディングしてもらうスタートアップ、日本を含むInbound企業の外国親会社に所得がパススルーして欲しくない米国現地法人(少なくともUpper TierのCommon Parent)とか、仕方なくCorporationにならざるを得ないケースを除き、わざわざ二重課税のCorporationを選択して事業を行うケースは少ない。結果としてCorporationの数は相対的に少ない。チョッと前になるけど、法人数と法人税額の日米比較とか2021年バイデン政権発足当時(こんな風に政権終わっちゃうなんて誰も想像しなかった頃。懐かしいね!)のポスティング「財務省によるバイデン「The Made in America Tax Plan」補足説明」で触れてるんで読んでみて欲しい。

軽くオサライすると、法人課税対象のC Corporation数は170万社程度(Tax Foundation調べ)。一方パススルー主体(S Corporation含む)は740万社、DREのオーナーを含む個人事業主2,300万人。一方日本は国税庁のデータによると法人数は約270万(最近のデータでは280万)って米国より100万社多い。日本の個人事業主の数ははっきりしないみたいだけど、フリーランサーが1,000万人程度らしい(ランサーズ調べ)。数は変わってきてるだろうけど方向的に$368Bを170万社で割ると一法人当り$216K。日本の法人税は直近のデータで約147,000億円。為替レートが乱高下するんでいくらでドルに換算するべきか悩むところだけど150円換算すると$98B。280万社で割ると一法人当り$35K。米国の170万社にはMagnificent Sevenみたいな巨大な企業も含まれるんで平均出してもあんまり意味ないけど、歳入に占める法人税の割合を基に「米国企業は他国との比較でFair Shareを払っていない」っていうコメントは会社法その他の環境が違い過ぎて正しくない。

で、トランプの法人税率は?っていうと本人は20%がきりがいい、とか2017年税制改正のブループリントで最初に提案されてた15%に言及したりしているけど、まともな提案には聞こえずTCJAの21%温存が現実的だろう。後日話すけどTCJAの多くの規定、特に個人所得税関係が2025年末で自動的に失効する。TCJAのCliff問題だ。ただ、21%の税率は法改正がない限りPermanent。政策オタクで2017年税制改正を主導した一人ポール・ライアンが「新たな法律で延長できる可能性が高い規定は自動失効になっててもいいけど、ポリティカルに延長が困難であろう規定は自動失効させない」って趣旨の発言をしてたけど、なるほど予算調整法でできたTCJAでも21%はだからPermanentなんだね。

バイデンのIRAも予算調整法でエネジークレジット規定の多くは10年で失効するけど、CAMTはPermanent。ただ、CAMTは未だに規則案も出てないほど非実務的(?)な規定だし、支払ったCAMTは後年クレジットが取れるんであくまで時間差。BookベースはWorkしないから1987年~89年だけの短命に終わった以前のBusiness Untaxed Reported Profits (BURP) みたいに予算調整法云々とは関係なくそのうち廃案になるんじゃないかって思うけどね。BURP(バープ=おくび、あいき、つまり「げっぷ」)っていう略が全てを物語ってる感じ。規則の出来や内容はともかくCAMTは「キャムティー」だから略は可愛いよね。GILTIにしてもBEATにしても略した時に何になるかを考えて命名する近年の規定と違って1980年台後半はそういうどうでもいい観点はなかったのかもね。

トランプはCAMTの廃止には触れていないんで基本的には当面温存されるのかもしれない。ちなみにCAMTは結構な歳入になるってプロジェクションされてはいたけど、前述の通り将来年度にクレジットになるんで歳入増は初期的な現象。単年ベースで最高時に$35B程度って言われてる。だったら一層のこと法人税率1~2%引き上げてCAMT撤廃してくれた方がコンプライアンス負荷面からマシって思う大企業も多いのでは。米国にはないけど他国のピラー2対応とか税務室が充実しているはずの米国企業もさすがにコンプライアンスは限界に達してる感がある。

ということで今日は法人税比べでした。

Saturday, August 10, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (4)

前回と前々回は大統領候補者を取り巻く現状(混乱?)を触れるに留まってしまい、税制動向に話しになかなか至らなかったけど、今回から税制および関連のポリシーに関して。

三権分立と米国議会制度

大統領選の話しをする際、僕が枕詞(?)みたいに必ず冒頭に触れるポイントに米国連邦憲法および議会制度(Congress)がある。Congressは欧州や日本の「Parliamentary」制度とはチョッと異なり、財務省や大統領府(ホワイトハウス)が属する行政府とは独立した立法府で、かつ立法府は各々独立した下院・上院で構成される。税制を含む歳入・歳出マターは下院で起草され審議の上法案が通ると、下院とは独立している上院が審議し、最後は同じ法案を両院を通過しないと法律にならない。立法は行政府とは完全に独立していて大統領でも直接的な関与はない。大統領は両院を通過した法律を署名する・署名しない(拒否権)という権限を持つ。大統領が拒否権を行使した法案は上院の2/3の票があればOverrideできる。

法律は議会のみが制定っていうポイントは、行政府に属する官僚チームは選挙で選ばれてる訳じゃなくて、また終身雇用的に存在することから、一般市民に説明責任がなく必ずしも市民の利益を第一に考えてポリシー策定するとは限らない、大げさに言えば市民の意思に反したポリシーや規則で一般市民の自由が束縛されたり奪われるリスクを考えての憲法上の対応策。共和制ローマやマグナカルタの影響も受ける連邦憲法の三権分立や法の支配を実現するための一つの決め事だ。官僚の人が悪者ってことではなく、歴史の教訓から人間のサガとしてそうなりがちなんで制度的にストラクチャー面から牽制する仕組み。

ただ、行政府のテクノクラート系の人材は専門分野の知識が豊富なんで、専門知識が求められる際には議会が認める範囲で規則策定権が与えられる。税法だと連結納税規則なんかがそうだよね。条文section 1502そのもの読んでも何も分かんないもんね。他にもCAMTとか行政府に丸投げに近い形で規則を策定させるようになる。しつこいけど議会が規則策定権を与えないと行政府は規則は作れない。また議会が条文で与えた範囲のみで規則を策定する必要がある。この範囲をどう判断するかは常にグレーだけどね。Anti-Abuseとかどこまで策定権が与えられてるのか主観的だし。2016年のオバマ政権末期に最終化されたSection 385のFunding規則とか、条文でそんな権限付与されてるかな~?って思うよね。ちなみにSection 385っていうのはそれだけではOperateしてなくてDebt/Equity Classificationの判断基準にかかわる規則策定権を財務省に与えてるのみ。にもかかわらず出てきた規則はDebt/Equity Classificationの判断基準は一切規定せず(この点は未だに判例ベースのCommon Law)、Common LawでDebtと認められた債務をBase Erosionの観点からEquityとみなす、っていう全然異なる趣旨のもの。たまに「米国税法のDebt/Equity Classificationはsection 385で検討」みたいなコメントを見ることがあるけどそれは不正確で、米国税法のDebt/Equity ClassificationはCommon Lawで判断する。債権の性格的にCommon LawでDebtになって(その時点で本来のDebt/Equity Classificationの検討は終了)初めてSection 385のBase Erosion規則、Funding規則の適用となる。すなわち税務上も債権はDebtという性格が認められるけど、借りたお金の使途が気に入らないんで(Base ErosionのためにDebt Push-Downされている)Equity扱いするという順番。Funding規則のハードルを越えるとめでたく(?)次に163(j)その他の多くの支払利息損金算入制限を検討できることになる。またIRAで導入された自社株買い懲罰課税(Excise Tax)の規則案に盛り込まれてる外国親会社が自社株買いしてる場合のFunding規則とかも権限逸脱有力候補だろう。自社株買いの規則は一部最終化されてるけどFunding規則は未だに案の状態。「それはないでしょう」みたいなコメントが殺到し、財務省の方で検討しているんだけど、その間に後述のLoper Bright判例が出てしまったんで冷却効果大で真剣に見直してくれるといいけどね。どちらもたまたま「Funding規則」って名前だけど、Fundingっていう名の付く規則はロクなのがないね!他にもFIRPTA大特集で触れた「QFPFはsection 897目的で外国法人ではない」って条文が名言しているのに規則では外国法人になったり。DC REIT判断時の「C CorporationのLook-throughルール」もかなりArbitrary。って愚痴(?)はこの辺で止めときます。

議会と行政府の関係は、憲法の理想からだんだんぶれてきていて行政府の力が大きくなってきてた。この辺りの一部行き過ぎとも言える規則策定時の行政府裁量拡大に2024年に複数の司法のメスが入っている。1984年の最高裁判決Chevron以降、議会が制定した法律が不明確だったり法律が取り扱いに言及してないケースで、司法判断時に法律の解釈は行政府による解釈を尊重するっていう決まりになっていた。Chevron原則だ。この原則下では実質、行政府が立法してるような結果となるケースも多く、「そんなこと法律のどこに書いてあんの?」とか近年はその傾向に拍車が掛かってた。こんな状態、すなわち行政府が巨大になり自らの世界で存在している状況を米国で「Administrative State」って言ったりする。一般的にはFDRのNew DealでAdministrative State的なポリシーが一定の完成をみたって言われていてその後もUp and Downはあるとは言えあの米国連邦憲法下でも人間というか国家のサガ的に拡大が進んできて、それと同時に連邦政府の歳出も増える一方。Administrative Stateと似たようなポリティカル表現に「Swamp」とかもあるし、更に陰謀めいてくると「Deep Purple」じゃなくて「Deep State」っていうのもある。これらは一般市民とはかけ離れたところで国が運営されている状態だ。オフィシャルな用語じゃないんで意味の範囲はルースだ。ちなみにBEPS 2.0で「なぜ米国は一旦合意しておいて梯子を外すのか」という質問を受けることがあるけど、憲法上、立法には関与がない行政府が他国と約束したところで実行する権限を持っていないんで本当の約束にはなり得ないよね。

で、つい最近Loper Brightっていう最高裁判決でChevron原則が撤廃された。敢えて略して言うと、この判決は連邦憲法成立当時目指されていた三権分立ストラクチャーに忠実に、立法は議会、Executive Branchの行政府は法の施行、法律が不明確だったりSilentだったりする場合は司法府の裁判所が判断、という体制に国家統治を戻したっていうもの。また、ほぼ同じタイミングで最高裁はCorner Postっていう判決も下し、行政府の規則等で損害を受けたケースの時効成立有無に関して、従来の規則最終化からタイミングを計るっていう考え方を、そうではなく行政府の規則で損害を受けた時点を起点にするとしている。多くの訴訟に繋がるかもしれないけど、規則は長年にわたって有効なものが多く、損害を受けるタイミングが規則最終化から3年とか特定の年数以内とは限らないし、また損害を受けないと訴訟を持ち込むためのStandingが生じないからCorner Postの判決は個人的にはそれはそうあるべきなんじゃないかと思うけどね。

Loper BrightとCorner Postの組み合わせ、さらにWest Virginia v EPAの「Major Decisions」原則、JerkesyケースにおけるSEC内部の裁決機関(Tribunal)違憲判決、とかで行政府の規則策定権を含む権限はかなり限定された感がある。このSECに対する判決は、Chevron原則時代の状況を考えると法律を策定・施行・法律違反かどうかの判断、の3つを全て行政府が担当していることになり得る状況にストップを掛けている。監査法人を監督しているPCAOBとかも同じストラクチャーなんで施行に影響があり得るよね。SECと違って直接連邦裁判所に訴訟を持ち込めないって聞いたことがあるんで、内部Tribunalで裁決できなくなると司法省に話しを持ってくのかな?複雑そうだよね。税法にかかわる憲法解釈ではMooreもあるしね(この件は選挙が落ち着いたら書くね)。憲法関係メガ判決連打のRoberts Court凄いよね。

税法を可決する議会も財務省の解釈が必ずしも尊重されなくなると、議会へのプレッシャーは高まる。すなわち、より強固な立法趣旨を残し、かつ条文自体曖昧な部分が少なくなるように努める必要が生じる。となると同じ税務のプロ中のプロIRSのChief Counsel Officeと並んで同じくプロの議会(「the Hill」)のJoint Committee等に属するの人材の活躍の場が増えるし責任重大になるね。IRAみたいに2週間でとりあえず可決、立法趣旨にかかわる記録なし、後は財務省お願いします、みたいなのはNGだね。

細かい制度上の話しはいろいろあるけど、税制は下院・上院を通過しないと成り立たないっていう点、またCongress制度では党議拘束がないので自分が属する党の議員が起草した法案に党議員が賛同するとは限らない、すなわち党内派閥の力関係や駆け引きが重要、っていう点、は税制審議を見守る際に必ず頭に置いておく必要がある。特定の党が両院を押さえていても、その党の議員が提出する法案可決に何の保証もない。多数党と他党の議席数差が僅少な場合には党内調整が困難を極めることも多い。同じ民主党でも今では主力の急進派とトラディショナルなリベラル(リベラルって今日日の民主党を描写する際には変な用語だけどね)では相当フォーカスが違うし、共和党のリベタリアン的なFreedom CaucusとCenter Right的な一派もそう。むしろ、両党の中庸派同士の方がポリシー的には合意できる部分が多いようにも感じることも少なくない。カリフォルニア州のような極端な左翼州、フロリダ州のような保守州(これも変な用語だけどね)以外ではむしろ両党中庸派のポリシーに賛同する一般市民が少なくないっていうのが肌感覚かな。

Trifecta

これらの点から大統領選挙だけにフォーカスして米国の税制を含む法律動向を考えても余り意味がない。シナリオは下院、上院、大統領府、っていう3府がどちらの政党(第三党がない前提で…)になるか、で考える必要がある。「組み合わせ」算数的には8通りあり、微妙なダイナミクスを考える際には8つのシナリオを見てみるのも面白いけど、ここでは「3府一党支配(2党なので2通りの可能性)」とそうでない場合の計3通りに分けて考えてみたい。ちなみに3府を一党が支配する状況を英語で「Trifecta」(トライフェクタ)って言うんで、毎回「一党が3府云々…」で書かなくていいようにここではTrifectaって用語を使用する。Trifectaは州政府の3府(大統領の代わりに州知事)にも同様に適用があって、憲法で一般市民の生活にかかわる多くの法律が州レベルのものなんでDay-to-Dayの生活にはこちらも重要。パームツリーが風に吹かれてて写真で見ると似たようなカリフォルニア州(大きな政府で官僚の力が強く規制が多く高税率)とテキサス州やフロリダ州(個人自由主義で(個人所得税は)無税)とか別の国みたいだもんね。これは米国の良さのひとつ。国家主権のような性格を持ってて各々異なるポリシーを持つ州が国内にあるんで、市民は嫌なら他の州に引っ越すことができる。憲法上、州間の移動は自由で他州市民に差別的な法律を適用することも禁じられてる。企業も同じ。Tesla、Space X、最近ではChevronがカリフォルニア州からテキサス州に脱出したり、Intelはカリフォルニア州からナッシュビルのあるテネシー州に脱出してる。これらは設立州ではなく本店所在地の話し。

またSuper-Trifectaっていう用語もあって、これは単に3府を制してるばかりでなく、Super-Majorityを有している状況。厳格な定義はないかもしれないけど、連邦レベルでは上院で(予算調整法を介した特殊な51票ベース以外の通常の法案可決に必要な)60議席を握っている状況と考えればいい。真っ二つに国民のイデオロギーが分かれがちな今の米国で上院60議席確保はなかなかのチャレンジなんで、ここでいうTrifectaは上院過半数で考えておく。これが具体的に意味するのは、税制改正は予算調整法を介してのみ可能ということ。予算調整法には10年間を超えて赤字になってはいけないとか多くの歯止めがあるんで調整が困難を極めるよね。ちなみにIRAもTCJAも予算調整法を利用して法制化されている。

さらにTrifectaになったからと言ってその党の多数や大統領府が希望する内容の法案を可決できるとは限らない。BBBAはその内容的に共和党の賛成は1票も想定されてなかったんで、民主党は上院で1票も失えない状況だった。長期に亘る党幹部の説得にもかかわらずManchin、Sinema両上院議員が首を縦に振らず結局、Skinny Downバージョン(って言ってもまだ巨額の歳出)になったIRAに落ち着いている。ちなみにManchinもSinemaも民主党を離脱しIndependentになり、今回の選挙には出馬していない。Manchinは一時第三党(No Label)の大統領候補になるんでは、っていう憶測があったけど結局、No Label自体徹底的に潰されてしまった。共和党も2016年にはTrifectaを実現し、「オバマケア廃案」と「減税」に着手したものの、党内調整が難航し「オバマケア廃案」は結局は失敗に終わっている。減税も当初の法人税15%で完全なテリトリアル課税でSub F廃止、または法人税とは言え消費税に近いDBCFTに全面置き換え、等の野心的なアイディアは頓挫し、既存の法人税にオーバーレイする形でTCJAになっている。

トランプ政権下の税制および経済ポリシー

トランプが当選した場合、どんな税制になるかは共和党がTrifectaを実現できるかどうかに掛かっている。民主党が2020年から2年のTrifectaをフルに活用してインフレ覚悟で巨額歳出を伴うIRAを通したのを目の当たりに、共和党幹部的には前回の2020年から2年のTrifecta時にそのメリットを十分に活用できなかった反省があり、「今度こそ」という勢いで新人も少なくない議員に予算調整法の枠で可能なこと、そうでないこと、等のトレーニング中。「Team of Vipers」っていうノンフィクションを読むと2020年時のオバマケア廃案を目指してた時代のホワイトハウス内のダイナミクスが垣間見えて面白い。ただ本や報道は全てそうだけど、著者の視点・イデオロギーに基づく描写っていう点は常に忘れないように。

トランプは規律に基づく強固な信念に基づくポリシーがあるっていうよりも、小さな連邦政府・再度強い米国っていうテーマ内で場当たり的なアイディアが多い。ベガスの集会で急に「チップ(半導体ではなくサービスに対して手渡すTipのこと)は非課税」とかシニア層には「公的年金受給は非課税」とか言い出したり、「法人税は20%っていうのが数字が丸くていいね」とか「15%なんかどうか?」とか、終いには「所得税は撤廃して代わりに関税で歳入を上げる」とか英語で言うところの「All over the place」。

ということで、次回のポスティングではこれらのトランプが「思いついた」アイディアの検証と小さな政府に期待するシンクタンク等の非公認アイディアに触れてみたい。