Wednesday, November 22, 2023

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (3)

前回はKiller B規則を読むには避けることができないSection 367の理解のうち、Section 367が誇る長い歴史、そして1932年当時のオリジナル立法趣旨を脈々と受け継いでいるSection 367(a)のアウトバウンド規定に触れた。1932年から30年後の1962年にThe Beatlesが、じゃなくて議会がケネディ政権の下CFC課税のSub Fや1248規定を導入し、元祖Anti-DeferralのSection 367の役割は低下するかと思いきや、その後も時代を経て進化する異なるポリシーが次々と加味され、クロスボーダー課税にかかわる広範な規定が満載されたとてつもなく複雑な法体系に変身を遂げた。その一例として1990年代のインバージョン対策、Helen of Troy規則の話しに至ったけど、(a)だけでもまだまだきりがなさそう。Section 367(a)を熟知してたらそれだけで十分に食べていけるだろうからその全容を数回のポスティングで片づけるのは非現実的なんでこの辺にしないとね。さらに今年も12月29日とかにCAMTの膨大な規則案とかが突然公表されてマイアミビーチが台無しになりそうな気配なので、その前にKiller Bくらい片づけないと、ってThanksgivingを目の前にチョッと焦ってきてます。ということで(a)はここで強制終了。

Section 367(d) と(e)

それでは(a)が終わったんで次は(b)だねって思ったでしょ?そうだったら「It's easier than learning your ABC's」で「My little baby sister can do it with ease」になっちゃうんでそうじゃないんですね。これらのフレーズはもちろんLocomotion!Grand Funkのバージョン聴くとここ「Ease」じゃなくて「Easy」ってきこえるんだけどグラマー的にはEaseかな?Grand Funk Railroadとか今の読者にはもう馴染みないよね?伝説の1971年後楽園(東京ドームではない)落雷ライブとか。口パクだったんでは?っていう噂はチョッとBummerだったけど。1975年の全米ツアーを収録したライブアルバム「Caught in the Act」はライブアルバム名盤の一つ。Purpleの大阪や武道館ライブの「Made in Japan」やZeppelinのNYC MSGライブ「The Song Remains the Same」とかに並ぶ。PurpleのMade in Japanは一切オーバーダブがない一発取りでコストが掛からず$3,000程度で済んだって話しらしいけど、その実力は凄い。個人的に技術を見極めることができるのはギター部分なんでBlackmoreのライブパフォーマンスには舌を巻くけど他のメンバーの技術も一聴して卓越してることが分かる。うま過ぎ。ZeppelinのMSGライブは結構後からスタジオで手が加えられたって話し。当時、ミキシングの会社に勤めてる先輩がいて、MSGパフォーマンスの生テープと加工後の2つを比較したことがあるようなこと言ってたけどPlantのボーカルには相当な手直しがあったに違いないって言ってた。真偽はともかく幼かった(?)僕はライブはライブって単純に思ってたんでZeppelinの話しは結構ショックだったのを記憶している。確かにオープニングのRock and RollのボーカルってMSGより以前のライブをBootlegで聴くとスタジオ盤と一緒でちゃんとCでボーカルが始まるけどMSGのやつって短3度低く下げてAで歌い始めるよね。曲のキーがAだからAでも外れてはないけど声が出なくなってたのかな。でもスタジオ盤と違う音程で始まるボーカルって妙に臨場感があってそれはそれでワクワク。ただライブパフォーマンスの実力的にはPurpleには及ばないのは明白。まあ格好いいからそんなことはどうでもいいだろう。日本でPurpleとZeppelin聴いてたその昔し、両バンドはブリティッシュロックの双璧っていうようなイメージを持ってたんだけど、米国で暮らすようになって気づいたのは少なくとも米国でのCommercialレベルの成功は圧倒的にZeppelin。PurpleはSmoke on the Water(個人的にはこの曲がPurpleの代表作って言うのはかなり抵抗あるけど野球場とかで今でもQueenのWe Will Rock Youとかと並ぶ応援歌の定番だから仕方ないか…)は知っててもそれ以上じゃないケースが結構あるんだよね。それだけにMade in JapanはPurpleにとって人生のハイライトだったっていうのが分かるね。ちなみにこれらのライブ名盤は3つとも全て2枚組だったんで、定価が2000円じゃなくて倍の4000円とかで限られたお小遣い内の予算では新譜に手が届かず、Disk Unionとか、もうひとつ名前忘れちゃったけど新宿西口辺りのレコード屋で輸入盤の中古とか探して手に入れたものだ。Purpleの「Made in Japan」は日本版は「Live in Japan」ってタイトルだったけど僕は新宿で輸入盤を購入してたんで「Made in Japan」盤だった(中身は同じ)。あの頃から80年代にかけてMade in Japanの製品がグローバルマーケットを席巻してたんでシャレでつけたタイトルだろうけどね。う~ん、時代の流れは怖い。他国で暮らした読者は感じることがあるだろうけど、日本はチョッと独特で、でも世界でも稀に見る質の高い国で、かつ資源がないとか地政学的に独自のリスク管理が問われるんで、欧州とか米国の短期的なトレンド、歪曲が多いメディア報道に基づく情報、海千山千の外交力に惑わされたり、国外をお手本にした小手先の政策・対応ではなく奇想天外な展開で全く別物になるであろう次の世界を見据えた賢い選択をして欲しいものだ。で、PurpleとZeppelinはブリティッシュだけど、Grand Funk Railroadはもちろんバリバリのアメリカン。「We're an American Band」だからね!古き良き時代のアメリカンRockって、独特の下品さ(悪い意味ではなく)が丸出しでそこがまた格好いいよね。所詮Rockだからね。

で、なんで(a)の次が(b)じゃないかって言うと(b)はKiller B的には主人公なんで、まずはSupporting Castに軽く触れてから満を持して(b)とかその傘下の規則、特にKiller Bをトリガーした2011年の最終規則にImmerse、すなわち没頭する予定だからだ。

僕たちがPracticeしてて(b)を除いて頻繁に戦うことになりがちなのは(a)の次に(d)かな~。(d)は無形資産を351や361の非課税規定に基づき外国法人に移管する際、(a)に規定される通常の含み益課税ルールの代わりにロイヤルティーストリームに置き換えて所得認識すること、っていう規定。移転価格やっている読者の方なら「それってsection 482の2文目のCommensurate with Incomeじゃん (「CWI」、日本語だと所得相応性基準)」って思うはず。概念は同じで非課税規定を使わずに関連者に無形資産を移管する場合は482のCWIを考えて、非課税規定を利用している場合は(d)を考える、って覚えておくと当たらずしも遠からず。ちなみに2017年の税制改正TCJAで無形資産の定義が変わり、従来取り扱いがあやふやだったGoodwillも今では正式に(d)目的の無形資産に含まれる。また、TCJAではSection 482に3つ目の文が足され、IPはAggregationして価値を評価するように、ってDisaggregateして個々のIPを過小評価できなくしている。Secton 482ってたった3文であれだけの税務Practiceに至るってすごいよね。もちろんRegulationsはあるけど、それだって「-1」から「‐9」までだし、規則案だって主にSecuritiesのGlobal Dealingにフォーカスしたものが数点で、Sub CとかSub Kに比べたら規則のボリュームもそれほど多いとは言えない。ALPは基本事実認定なんでルールは少なくて当然かもね。

(d)と並んで(e)も頻繁に登場する。インバウンドPractice的には特に(e)(2)が多いかな。(e)(1)の対象になるスピンオフはコストが掛かるから比較的稀だもんね。(e)(2)は例えば100%日本親会社に所有される米国子会社の清算時に適用があり得る。

Section 367(b)

そしていよいよSection 367(b)。(b)のタイトルはシンプルに「Other Transfers」で、その守備範囲の広さを予感させてくれるもの。昔のポスティングで触れた通り、テクニカルに言うと条文のタイトルに法的効果は一切ないけどね。で、条文本文を読むと(a)でカバーされない資産移管に関しては「section 332, 351, 354, 355, 356, または361」適用時に財務省規則で規定されない限り外国法人は米国税務上も外国法人と取り扱うっていうもの。ただ、厳密には(a)と(b)は相互排除の関係にはなく同時適用もあり得る。条文は基本それくらいのことしか書いてないんで行政府の財務省に規則策定権を丸投げして、(a)以外でも非課税の恩典を制限するルールを規定するようにっていうもので、Section 1502読んでも連結納税のルールが全く分からないのと同様、367(b)だけ読んでも何も分からない。

条文だけ読むと余りに漠然としてるけど、1975年の立法趣旨を読むと外国法人の(当時はSub Fで)課税されていない留保所得がSub Cの非課税規定で米国に還流されるタイプの取引が一番の懸念だったことが分かる。この趣旨に沿った規則を策定しなさいっていう使命を全うするため、90年代から財務省は実に多くの規則を公表してるけど、中でもKiller Bに直結することになったのは2011年に最終化されたsection 1.367(b)-10の「Triangular再編に絡む親会社株式取得」を規定した規則(「2011年最終規則」)。この2011年最終規則は中でも、Triangular再編に絡んで外国法人がE&Pの移管を伴うことなく、現金等の資産を米国に還流するような取引にフォーカスがあったと言える。

2017年TCJAとsection 367(b)

チョッと前まで連載してたFIRPTA系のポスティングで、TCJA以降のsection 367(b)は抜本的に見直しが必要、って書いたと思うけど、これはまさしく上述の1975年立法趣旨に反映されているsection 367(b)がフォーカスして取り締まろうとしていた取引の大半がTCJAで合法的または存在しなくなってしまったからだ。すなわちsection 367(b)は外国法人の留保所得が非課税のまま米国に還流されないよう立法された訳だけど、TCJA導入時に過去の(正確には1987年以降の)留保所得は低税率で一括課税され、導入後はGILTIで毎期合算されることになったんで、そもそもCFCの留保所得が米国で非課税っていうケースが激変してしまった。Sub Fも未だに健在だ。さらに、High Tax Exclusion、Deemed Tangible Income Return (QBAI)のシールド、別のCFCがTested Lossを認識してくれて自分のTested Incomeをオフセット、等の隙間規定で多くの困難を乗り越えて(英語で言うところのJump through the hoopsして)GILTIの対象とならない外国源泉留保所得があれば、それを米国法人株主に分配しても一定要件下で100%の配当所得控除が認められて非課税になるため、その手の留保所得は合法的に非課税で米国に還流可能になり、367(b)のフォーカスは根底から無意味化したことになる。

だったらsection 367(b)自体撤廃したらいいじゃん、って思うかもしれないけど一度出来た規則はなかなかなくならない。100%配当所得控除は法人にしか適用がないし、法人が受け取る配当もHybridだと100%所得控除の適用がないとか、確かにテクニカルにはsection 367(b)が全く不要になった訳ではないのは財務省の言う通り。Killer Bにかかわる2011年最終規則も引き続き重要って宣言している。

Killer Bは2011年最終規則に違反しない形で進化してきた。前々回のKiller Bシリーズ冒頭で触れた通り、財務省はその適用法が気に入らなかったため、2014年と2016年にNoticeを公表し、今回の規則案に至っている。では2011年最終規則ってどんな内容?ってところからは次回。