Sunday, November 5, 2023

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (1)

しばらくFIRPTA課税系の話しだったけど、今回からはSub C/クロスボーダー課税ののKiller B。Sub C系のポスティングは久しぶりなんで皆さんもかなりExcitedなのでは?Sub Cって何って?ウ~ン、それはそうだよね。世の中の大半の皆さんはInternal Revenue Code読んで暮らしてる訳じゃないもんね。連邦の税法(Title 26)のSubtitle A、Chapter 1のSubchapter Cで「Corporate Distributions and Adjustments」という部分のことで、分配ばかりでなく組織再編、清算、出資、スピンオフ等のCorporate Taxを取り巻く法律。Corporate Taxっていうと「じゃあ、法人申告書のForm 1120作成するためには知っとかないとね!」って思う読者が居るかもしれないけど、実はそうではない。1120は多くの部分で個人所得税同様、何がGross Incomeで何がDeductionで、とかいつ支出を資産計上して、とかSub C以外の管轄の部分が多い。Sub CはCorporate間、Corporateと株主間の取引を管轄しているものだ。何はともあれ久しぶりにAll-InでSub Cなんで少なくとも僕にとってはExcitingなトピックだ。

話は迎えに行く、っていうか噂をすれば影がさす、じゃないけどFIRPTA系のポスティングのエピソード8で、Killer Bの規則ず~っと待ってるけど出てきたら面白いのにね~、って言った矢先にナント本当に規則案が公表されたんでビックリ。財務省はCAMTとかStock Repurchaseの規則策定で大忙しのはずなんでまさかと思っていただけに喜びもひとしおだ。

Killer Bってミツバチ?

一般読者はKiller Bって何って思うだろうけど、前々回もチラッと触れた通り、米国企業によるRepatプラニング。大雑把に言うとTriangular Reorganizationを利用して外国法人の留保所得を原資に米国親会社の株式を取得し、実質非課税で留保所得を米国に還流するストラクチャー。Killer BのBはBeeじゃないけど、もちろんKiller Beeにちなんだ名称。Killer Beeと言えば泣く子も黙る凶暴なミツバチだ。で、なんでBかって言うとB型再編が絡んでるから。B型って言うと血液型みたいだけど、もちろんそうじゃなくてSection 368(a)に規定されるTax-Free Reorganizationのことで A、B、だけでなくC以降Gまで7タイプある。代わりにAB型とかO型はないけどね。そのうちの(B)Reorganization、所謂「ビー・リオーグ」にちなんだ俗称だ。

Killer Bと対抗策

タックスプランニングと財務省規則の関係は、余り正しい表現じゃないかもしれないけど、多くのケースで「モグラ叩き」みたいなことが多い。規則が特定のストラクチャーに網を掛けようとするタイプの規定になればなるほどこの傾向は顕著。反対にどちらかっていうとPrincipleベースの規則の場合はモグラたたき的な問題は少ないけど、どうしても規則の適用範囲がよく分からなくなるんで課税関係の予見可能性が低下する。この問題を解消するため、米国のPrincipleベースの規則には多くの「Example」が記載され、実質それらがホワイトリストっていうかエンジェルリストみたいに受け止められ、Safe Harborみたいな機能を果たすようになる。例えば連結納税規則のInter-Company Transactionを規定している「-13」(ダッシュ・サーティン)はどんな取引にも適用可能なようにPrincipleベースの規則だけど(で、かつ天才的に良くできてる規則)、多くのExampleが記載されてるんで具体的な規則適用にかかわる理解を深めることができる。それでも2017年のTCJAでクロスボーダー課税に地殻変動が起きてからは、例えば連結納税子会社間Cross-ChainのCFC株式譲渡、その後一回CFCから配当があって、その後株式の価値が下落して第三者に譲渡、みたいな事実関係としてはシンプルな取引でも、どこでsection 1248の金額が決まりPTEPがどうなって、とか従来のPrincipleでは説明が難しくなることがある。

また規則内のExampleは、その前提条件が非現実的にシンプルかつタイトに設定されてるんで(英語で言うところの「Stylized」されてるんで)、例えば株主は一人で100%所有でひとつのクラスの株式しかなく云々とか、法人内の資産は一つとか、Exampleを見て取引をストラクチャーする際にはExampleの設定と現実の事実関係の差異がExampleの結果に影響を与えないかどうかを慎重に見極める必要がある。

で、Killer Bに対する規則は特定の取引に網を掛けるタイプだから上述の「モグラ叩き」的に規則で取り締まろうとすると形を変えた類似取引が再登場したりしてた。新種の凶暴なミツバチに襲われたら結構怖いね。元々2011年に最終化されたsection 367(b)の財務省規則に、外国法人がTriangular Reorganizationの一環で米国親会社の株式を取得する取引にかかわる取り扱いが規定された。で、この規則を適用してるんだけど、IRSの目から見ると規則を「悪用」して外国法人の資産を非課税で米国親会社に移管している、って受け止められる取引が散見され始めたんで、IRSは2014年に最初のKiller B Noticeを公表し、そのような特定の取引に対抗するために新規則を策定する旨を明らかにしている。2016年にはさらに別のNoticeで、2014年のNotice内容を反映して手を変え品を変え、みたいに登場してきた新種の同様取引にも網を掛けるって公表している。そしてようやく2014年のNoticeから10年近い年月を経て今回財務省規則案の公表に漕ぎつけたって訳だ。

もともとKiller Bっていう取引がUSタックス業界で知られるようになった頃から個人的にそのテクニカル面に魅了されていたんで、2014年や2016年のNoticeは興味深く読んだ。2016年と言えばファイザーのインバージョンを阻止するために超スピードで規則が出たり、コンプライアンス負荷が高いDebtを利用したBase Erosion対抗規則の1.385-3のファンディング規定が出たり、あの頃の勢いだと直ぐにでも規則案が公表されるかと思いきや、結局結構な時間を要したよね。その間に2017年税制改正があったんで、国外からのRepatにかかわる税制が大きく変わった点も影響しているのかもね。

Killer Bを語るには、まずsection 367(b)の話しをさざるを得ない。でさらに言えばSection 367(b)の話しをするには、Section 367全体のフレームワークをザックリとでも語る必要がある。これ結構込み入る予感なんでここからは次回。