Saturday, April 1, 2023

新春IRSガイダンス特集「M&AとCAMT適用対象法人」

前回のポスティングでようやくSafe Harborの話しが終ったんで、今回は惜しみなくZeppelinで攻めたい、じゃなくてNoticeに規定されているCAMT適用法人の判断とM&Aの関係に話しを進めたい。M&AっていうかCorporate Transactionって言った方が正確だけど、とりあえずM&Aって用語にCorporate Transactionを代表してもらう。

SVB銀行破綻

それにしてもCAMTの適用初年度だっていうのに米国経済はかなり不透明で間が悪い。メインストリームメディアは大多数が民主党だから、悪いニュースはバイデン政権擁護のためSugarcoatする傾向にあるけど、少なくともCorporate TransactionやIPOの激減ぶりは激しい。もともと2021年、まだ低金利だった時代、借りるだけ借りてお金を使いまくるのが賢い(イエレン長官)と言って不要にお金をバラまいて超インフレになり、インフレは一過性(イエレン長官)と言っておいて実はそうじゃなくて金利が急激に上がり、あちこちで大変なことに。

ついに数週間前には2008年以降最大のSilicon Valley Bank(SVB)銀行破綻が発生するに至ってしまった。SVB破綻はその電光石火のようなスピードが特徴。資産$200B以上の銀行がわずか2~3日で破綻してしまうとはね。Social Media時代の取付騒ぎは別レベルだ。急激に金利が上昇したのでSBVが所有していた長期債権は大きな含み損を抱えるようになったらしい。またSVBはVCやスタートアップのカスタマーが多く、市場環境の悪化に伴うダウンラウンドその他の問題でEquity資金調達できないスタートアップにVenture Debtと呼ばれる特殊なファイナンスも提供してたみたいだけど、2022年夏以降スタートアップは結構苦労してたからSVBのビジネス本業も前より厳しかったかもね。

で、このSVB、3月8日に$2.25Bの新規資金調達を発表すると同時に低金利時代に取得して含み損を抱えていた国債$20B以上を税効果後の損失を$1.8B出して売却。BSを強化するはずが、この動きにマーケットがビビッて翌日9日午前中には何と$42Bの預金引き出しが起こり取付騒ぎに。特にVCがビビり、投資先のスタートアップに即預金を引き揚げるように指示したという噂もある。取付前の預金残高は$75B程度だったって話しだから、いきなり半日で$42B引き揚げられたら銀行のビジネスモデル的にSVBでなくても耐え難いだろう。SBVはオンライン上の支払い停止の上支店閉鎖。10日にはFDIC(連邦預金保険公社)がReceiver(日本語だと管財人?)となる。FDICの預金保険は原則上限が$250K。大概のリテールカスタマーなら$250KでOKでも、SBVの主たるカスタマーはリテールではなくVCやスタートアップだったんで、90%超の預金が保険ではカバーしきれないって報道されてた。確かに会社の預金口座残高が$250Kじゃ逆に心配だよね。でも他にも口座があるでしょ?、って思うかもしれないけど、Venture Debtで資金調達してたポートフォリオのスタートアップは、借り入れの一環で「Exclusive Banking Relationship」みたいな条項にサインしている可能性大で、結果として預金がSVBに一極集中してしまってたケースも多いのかも。

ドタバタと僅か2日で破綻してしまう過程では、「来週、月曜日の給料どうやって払えばいいの~」とか預金者は大混乱。ランダムに弁護士事務所にコールが殺到したとのこと。この手のクライシスでファイナンスやファンド専門弁護士が24時間体制になるのは分かるけど、意外に労働法の弁護士も同じように24時間ディマンドだったらしい。預金おろしたり、口座振替たり、って普段できて当たり前のことができなくなると、日頃想定もしてない事態に追い込まれる。また予行練習しないといけないシナリオが増えたね。

で、翌11日にはFDICがSBV資産をオークション開始。12日にはNYCの不動産にフォーカスしていたSignature Bankにも取付騒ぎが飛び火して即FDIC傘下に。このまま放っておくとさらに他に波及して中堅銀行がドミノ式に破綻するリスクが高まったことから、FDICは米国金融危機に対応するための禁じ手(?)「Systemic Risk Exception (SRE)」を発動し、預金保険の上限にかかわらず「預金全額保証」を発表。「他銀行の預金も必要であれば同様に全額保証するから大丈夫」(イエレン長官)と火消しに躍起になった。今回は信じていいのかしら。健全と思われていた銀行が僅か2~3日であっという間に潰れるってSocial Mediaがなければ起こり得なかっただろう。

実は今回の銀行破綻にはひとつ「え~、うそでしょ~」みたいなオチがある。2008年の金融危機を受けて、二度と同じようなことにならないよう2010年に議会が金融機関に対する規制を大幅に強化した「Dodd-Frank」法っていう連邦法を可決している。アメリカで金融業界に少しでも接点のある人だったら、そのDoraconianな内容や、対応負荷の高さは身に染みてるだろうけど、ナンとその法案を提出し法律にも名前を冠してるBarney Frank(マサチューセッツ民主党議員)は、議員退任後2015年に今回破綻したSignature Bankの取締役に就任して報酬を受け取ってた。あれだけ銀行は厳しく規制して破綻しないように、って強硬な法案を提出した本人が経営する銀行が破綻とはね。政治家やDCの「エリート」って厳しい規制を通したり、クライシスを演出し、その救世主として登場してMonetizeするのが常套。Al Goreが気候変動リスクを煽りながら、裏でその手の投資の受け皿になるファンドを組成し大金持ちになったり。せっかく主義・主張はいいことでも、政治家と庶民感覚のOut-of-touchぶりは激しくなる一方で、一般市民としては「何だかな~」と思い続けざるを得ない。

で、そんな中CAMT。

適格非課税取引とAFSI

M&A等の取引が税務上、適格再編になる等の理由で譲渡益等が非課税となる特定非課税取引に関して、会計上、譲渡損益が認識されている場合、これらの譲渡損益は会計上もなかったものとしてAFSIの数字とする。ここで言う特定非課税取引とは、section 332, 337, 351, 354, 355, 357, 361, 368, 721, 731, 1032で規定される取引およびその組み合わせと規定されている。これらのSectionは適格清算、出資、スピンオフ、組織再編、負債承継、パートナーシップ出資・分配、株主発行で、Usual Suspectたちだからなんの驚きもない。

一つのプラン下で複数の取引ステップが存在する場合、ここでいう非課税取引に当たるかどうの判断は個々の取引各々を見て個別に判断すると規定されている。例えば一つの法人内に存在する一部の事業をスピンする場合、まず事業を子会社に移管し、その子会社株式を分配することになる。その場合の子会社への資産移管は分割型D型再編と整理され、その後の株式分配はスピンで株式分配する側では適格分配361、受け取る株主側ではスピンの355で非課税になる。ちなみに最初から子会社があって、スピンの第一ステップとして事業を子会社に出資する必要がない場合には当然、分割型D型再編というステップは存在せず、また株式を分配する側も361ではなく355で非課税になる。

最初のD型再編を伴うパターンでは現物出資というステップとその後の分配というステップは個々に非課税取引に当たるかどうかの判断をする。とは言え、税務上、各ステップが非課税になるかどうかの判断は、往々にして同じプラン下で実行される複数のステップを組み合わせて判断させられる。その場合は、個々の取引が非課税かどうかの判断目的で、プラン全体像を加味しなさい、って規定されてる。なんか凄い回りくどい感じがするけどね。まあ要は、税務上非課税になるかどうかは当たり前だけど税法で判断するんで、税務上Step Transaction原則等の適用がある場合には、それらを適用してちゃんと個々の取引が非課税になってないとダメということ。それはそうだよね。上の例で最初のステップが分割型D型再編に当たるかどうかはその後の分配が355適格スピンになるかどうか次第なんで、当然セットで考えないといけないけど、その結果D型再編になるんだったら、そのステップだけにフォーカスし直して非課税取引と取り扱うというようなことなんだろう。簡単に「取引が税務上非課税な場合…」っていう定義とあんまり変わらない気がするけどね。なぜ個々のステップ毎に判断って最初に宣言する必要があるんだろうか。

で、会計上譲渡損益が認識されているにもかかわらず、特定非課税取引ということで、AFSIの算定上、会計上の譲渡損益を消去する場合、資産を取得した側の会計上の簿価も非課税取引ということで譲渡側の会計簿価を引き継いでいるように調整しないといけない。会計上の簿価が実際の帳簿と異なるってことはその後の償却や譲渡時の数字も継続的に異なるってことだから、複数年にわたりAFSI目的で数字の調整が求められる。こんな調整今まで存在しないから新たなコンプライアンス負担。しかも長年にわたり影響がある場合、仮に取引が生じた年度にCAMT対象法人にならなくても、継続してAFSI3年平均を求めないといけないので、各社常に数字をトラッキングしておかないといけなくなる。簿価調整しないと譲渡益はAFSI上、繰り延べじゃなくて永久に非課税になってしまうので当然あるべき処理なんだけど余りの面倒さは否めない。

で、当然と言えば当然なんだけど、買収型の組織再編は売り手と買い手の双方の財務諸表およびAFSIに影響がある。例えば、米国連結納税グループが、別の連結納税グループに属する非関連のターゲット法人を買い手の株式を対価とする合併で買収したとする。税務上A型再編で非課税取引になる一方、GAAPでは売り手側のグループ財務諸表上、譲渡益が認識されるとする。売り手グループのAFSIは譲渡益を除外する一方、買い手グループのAFSIは、財務諸表上のターゲット法人資産の簿価が時価になってるんで、それを売り手側の簿価承継に戻さないといけない。

ということで今回はSocial Media時代の銀行取付騒ぎでチョッと長くなったんでここからは次回。前代未聞のスピード銀行破綻だったんで触れざるを得ませんでした。少なくともBlack Dogじゃなかったからね。