Saturday, April 22, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案)

前回のポスティングをもってやっとCAMTを一旦卒業することができたんだけど、時は既に4月後半。個人所得税のDue Dateだった4月18日も過ぎて、すっかり日も長くなり「Seasons in the Sun」の気分。NYCも冬が終わって、2日ほど春があった後すぐに夏になってたけど、ここにきて数日また肌寒い。MDRがある南カリフォルニアのCoast沿いは今年は寒くて4月前半なんてNYCより気温が低いくらいだった。朝起きて曇ってんのは午前中のマリーンレアーの典型だけど、11時半になっても雲が無くなんなくて一体いつになったら、って空模様のかげんを伺ってるうちに結局夕方になっちゃたりして、カリフォルニアってお天気が自慢の州なんで困るよね。だったら常夏自由の州フロリダ?って考えるけど、こちらはこちらでたまに日中暑すぎ。NYCから数日Getawayする程度の話しだったら、その日の天候によるんで難しいチョイスだけど涼しいMDRに戻った方がいいかもね、って思う日が何日かあった。NYCとの3時間時差を利用して早朝にFwy 405から5に抜けて(正確には一瞬90にのってそこから405だけど90は2分くらいなんで省略)San DiegoというかLa Jolla(オリジナルTop Gunの教官Charlieの家としてロケで使われた「Top Gun House」の少し南)のCaroline’sまで一気に飛ばしてトーストなしでShort Ribs Hash &Eggs食べながらProposed Regulations読んで、30年前に買ったミリタリーIDタグを首から下げて(笑)ビーチバレーでもして帰ってくるのがベストかもね。

FIRPTA規則案

で、Hash & Eggs読みながら食べるのは、じゃなくて、食べながら読むのはもちろんFIRPTA関係の財務省規則案。この規則案、CAMTのNoticeと同時に昨年末12月29日の昼過ぎに何の前触れもなくいきなり公表された。新春のポスティングで触れた通り、その週は年末だったんで、大きな案件も予想されず、マイアミビーチでSub Cの復習をする予定でリラックスしてたんだけど、いきなりハイテンションなガイダンス複数が禁じ手乱発気味に公表されて予定大狂いとなった。当時のPriority的にどうしてもCAMT、そして自社株買いに対する懲罰課税、の2つにまず目を通さざるを得ず、FIRPTA関係の規則案はついでに一応ななめ読みしておきましょう、って程度でザックリ目を通した。FIRPTAに関してはQualified Foreign Pension Fund(「QFPF」)の条件緩和が期待されてたんで、どうせその程度のScopeだろう、って軽く考えて目を通し始めたんだけど、実際にはBlow by Blowでナニコレ~、っていう内容で驚愕。

Domestically Controlled REIT(「DC REIT」)の規定なんて、今まで日本の投資家がREIT株式譲渡してもFIRPTAに抵触しないで非課税だよね、って当然のように信じられてたストラクチャーが、12月29日の午後3時以降、本当にそうなのかイチからストラクチャーを確認しないといけない羽目に。規則案なんでそれ自体に法的効果はないんだけど、後で触れるLook-Back期間や、規則案に従ってないストラクチャーは現時点の法解釈でもIRSはチャレンジするという趣旨の前文があり、実質過去訴求適用に近いんでビックリ。

いきなり確信に触れて一人で興奮しても、読者の皆さんは「何のこと言ってんの~?」って感じだろうからまずは背景から。

FIRPTA

今回公表されたFIRPTA財務省規則案の理解を進める際、もちろんだけどFIRPTAそのものの、すなわちSection 897、および外国人に対する米国の国際課税システム双方の、少なくとも概略くらいは理解しないと始まらない。FIRPTAはSection 897っていう一つの条文内に規定されるルールだけど、他の多くのSectionも結局はそうだけど、深淵極まりない規定で、当然今回のポスティング程度で語り尽くせる話しではない。規則草案に関係する範囲でハイレベルに触れとくけど、ほんの一部に過ぎない、っていう点強調しておくね。

FIRPTAって日本人的には「キャムティーちゃん」と異なり発音しにくいAcronymだけど、「the Foreign Investment in Real Property Tax Act of 1980」のことで「ファプタ」って言う。AFSIと違ってFIRPTAをBay City Rollersみたいに「エフ・アイ・アール・ピー・ティー・エイ」って言う人はいないから間違ってもそんな風に呼ばないように。「ピー・ティー・エイ?」「What?」ってなって話しが始まらないからね。

FIRPTA対象者

で、FIRPTAはその名の通り1980年に制定された法律で、米国外からの米国不動産投資、その中でも米国不動産持分の譲渡損益の取り扱いにかかわる規定。米国外からの投資って言うのは投資家がNonresident Alien Individual(「NRA」)と外国法人のケースのこと。ここで言うAlienは市民権を持たない、っていう意味で宇宙人ではない。Individualなんで自然人。またグリーンカード所有者や滞在日数テストに抵触する者はResidentなので、それ以外のNonresidentのこと。滞在日数テストは居住者開始、終了日の規定を理解していないプロフェッショナルも垣間見ることがあるんで、米国不動産を譲渡する場合、譲渡がClosingした「その日」の米国居住関係を判断すること。漠然と「その年は居住者でしたか」みたいな質問力に欠ける設定で事実認定しないように。

例えばグリーンカードも市民権のない個人が12月2日に初めて米国に到着してその後、米国に5年とか長期滞在する予定とする。米国連邦所得税「以外」の観点からは、もしかしたら12月2日から米国居住者って判断される局面もあるかもしれないけど、米国連邦所得税目的ではそうはならない。同年12月31日に米国不動産を譲渡する場合、12月31日の居住者Statusは、どう法律を駆使しても単独では米国居住者にはなれずNRAになるんで、物理的に米国に住んでいながらNRAとしてFIRPTA対象者となる。その年の滞在日数が31日間に満たないんで「First Year Election」も適用不可。国内法で非居住者となる個人を条約4条を使って居住者に転換することはできないし。条約のTie-Breakerは双方の国の国内税法で居住者と取り扱われる場合に、条約を適用してどちらか経済的な関係がより強固な一方の国の居住者のみというStatusを選択することができる、っていうもので双方の国で非居住者になっているケースでどちらか一方の国の居住者Statusを選択します、っていう規定ではない。一方、不動産持分譲渡が一日ズレて翌年の1月1日だったら居住者としての譲渡になるんでFIRPTAの適用はない。この状況で12月31日にNRAではなくなりFIRPTA不適用とするために唯一考えられるのは、既婚者のケース。

夫婦合算申告は原則、配偶者双方が暦年を通じて米国居住者・市民でないと選択ができない。例外として、夫婦一方が12月31日で米国市民または居住者(First Year Election等を駆使してもOK)で、他方が12月31日にNRAの場合、双方で選択をすれば合算申告が認められ、同時に双方とも年間を通じて米国居住者扱いとなる。(g)選択だ。ちなみにこの(g)選択は普段M&Aとかやっている者にはsection 338(g)選択にしか聞こえないと思うけど、夫婦合算申告を規定しているsection 6013(g)のこと。駐在員の方は、赴任年にCPAから送付されてくる1040の中に選択のStatementが紛れててサインさせられた記憶がある方も居るのでは(もしかして知らない間にサインしてて記憶もない?)。米国に単身赴任するケースで、赴任年の12月31日に居住者になっていれば(g)選択で留守宅を守っている国外の配偶者と合算申告ができる。でも合算申告選択して、双方年間を通じて居住者扱いされると国外配偶者の所得も米国で全世界所得課税の対象になるんで「なんでそんなことすんの?」って疑問に思われる読者が居たら50点プラス。その心は、夫婦「別」申告(結婚している限り独身者というStatusは認められない)との比較において合算申告は適用税率が結構低いから。したがって算数的に、所得が増えても税率が低いんで結果として支払い所得税が低くなることが多い。もちろん国外配偶者の所得がかなり高い場合には試算してどっちが得か検討要だけど、配偶者が日本の居住者の場合、日本は世界でも高税率国だから米国でFTCを利用する、またはFTCよりは不利なことが多いけど911の所得除外を検討する、等の策を駆使することで、結局は得することが多い。12月2日着の例に戻ると12月2日に渡米した者がたまたま12月31日現在で、米国市民または居住者と結婚してたら合算申告を選択し、年間を通じて居住者とするStatusを希望するのであれば、12月31日の米国不動産持分譲渡はFIRPTA対象にはならない。

NRAと並んでFIRPTAは外国法人にも適用がある。FIRPTA対象者にかかわる若干テクニカル目のコメントだけど、FIRPTAは対象を「Foreign Person」とはしてない。Foreign PersonはNRAと外国法人以外にも、外国で設立されるパートナーシップ、信託、遺産(Estate)等、より広範。クロスボーダー課税を規定する法律により、対象が誰なのか微妙に異なるケースがあるんで細心の注意を払って進むように。パートナーシップは課税はパススルーだけど立派なPersonだからね。特に源泉税の適用時に誰が源泉税納付義務を負うかとかの検討時にはパススルー課税の概念と源泉徴収義務者の関係がきれいにシンクロしないことがあるんで要注意。

で、FIRPTAはNRAと並び外国法人に適用があるけど、パートナーシップには直接的には適用がない。ただ、これはパートナーシップはパススルーだからで、米国・外国にかかわらずパートナーシップにNRAまたは外国法人のパートナーが存在し、パートナーシップが米国不動産持分を譲渡し、譲渡損益がNRAまたは外国法人に配賦(譲渡対価の分配ではなく)される場合、NRAや外国法人は直接不動産持分を譲渡したのと同様の取り扱いになるんで、結局は間接的にFIRPTA対象となる。直接不動産を所有してるケースと比較して、最終税負担は双方で変わらないとしても、予定納税的な源泉徴収の規定が異なり、直接不動産を譲渡するとグロス譲渡対価の15%を買い手が税金前払いとして天引きしてしまうのに対し、パートナーシップが譲渡する場合にはECIに対する源泉規定がキックインしてFIRPTA源泉をオーバーライドするんで前払い予定納税は「ネット」譲渡益の21%で済み、予定納税である源泉徴収が比較的最終税負担に近くなる傾向がある。グロスに対する15%FIRPTA源泉は多くのケースで過多な予定納税となり、還付にも時間が掛かるし不確実。前もってIRSに証明書を交付してもらうことで減額可能だけど、時間がかかるし面倒なので、この点一つとってもデラウェア州LPSとかを介して不動産投資するメリットがあり、個人的には局面次第だけどお勧めすることが多い、また、パートナーシップが米国不動産持分を譲渡する代わりに、NRAや外国法人がパートナーシップ持分を譲渡する際にパートナーシップが米国不動産持分を所有していると、NRAや外国法人のパートナーシップ持分に対応する米国不動産持分を間接譲渡した取り扱いとなりFIRPTA対象となる。これはパートナーシップがパススルーというよりは、パートナーシップはパートナーのAggregateだから、という概念に基づく。

なんか対象者を極簡単に触れるだけで相当長くなってきて、クロスボーダー個人所得税講座の様相を呈してきたんで、対象者はこの辺にして次回はFIRPTAが適用される際の米国課税関係に関して。特に普段から実際にアドバイスしたりする際に感じる誤解、「FIRPTA神話」にフォーカスしてみたい。それではミリタリーIDタグ首にかけてビーチバレー行ってきます!