Tuesday, September 28, 2021

バイデン増税「下院歳入委員会」法文ドラフト(4)「Downward Attributionの再撤廃 (2)」

前回のポスティングでは株式みなし所有のクロスボーダー課税への影響を語るプレリュードとして、米国内の「通常」のAttributionに触れた。中でもDownward Attributionは直観的に理解し難くて、意外な結果となることがあるんで油断大敵。今日はそんなAttributionがどんな風にクロスボーダー課税に取り込まれているかについて。

2017年の税制改正、TCJAでクロスボーダー課税にかかわるAttributionのルールが変わり、インバージョンなんかしてない日本企業のような本当のインバウンドやPEファンドの米国外ポートフォリオ法人とかに計り知れない影響を及ぼしてから早くも4年近い月日が経つ。TCJAによるクロスボーダー課税Attribution想定の変更は、ターゲットしている取引よりもかなり広範な納税者や取引に影響がある、っていう問題は文字通りTCJA可決翌日には理解されてた。Attributionルールの変更を逆手にとったプランニングも直ぐに出現した。慌ててKevin Bradyが2019年1月にテクニカルコレクションを提案し下院は通過したものの、上院では取り上げられず今に至る。それが同じ内容で歳入委員会の法案に盛り込まれてるんだけど、今更過去遡及してテクニカルコレクションって言っても時間たち過ぎでは?って思うよね。後出しじゃんけんにもほどがある感じ。修正申告とか大量に出そうだし、議会の怠慢なんだから今更過去遡及は許されない気もするけどね。テクニカルコレクションの憲法上の制約に関しては後日。

それにしてもTCJAから4年近いんだね。そうだよね。2021年もいつの間にか既に10月が目の前で残すところ3か月。米国税法やグローバルタックス的にはまだまだいろいろありそうな3か月だけどね。一年前の2020年夏は米国も州ごとに差異はあったとは言え、全体にシャットダウン気味で、WFHなのをいいことに全国津々浦々から仕事してたけど、Interstateは80、90、10とか基本ガラガラだったし、90でWyomingやMontanaからSouth Dakota方面ドライブしている時なんて地平線見渡す限り車いなかったり、今から思うとドライブには前代未聞的に最適な夏だったことになる。ホテルも予約ナシでiPhoneで当日好きなところ予約し放題だったし、Utah、Wyoming、MontanaのNational Parkも例年より格段に空いてた。Montanaと言えば昨日アムトラックが脱線してしまったけどかなりリモートな場所なんで救助とか心配。あの辺りもドライブには最高。昨年の夏は飛行機も空いてた。5月にJFKからLAXに飛んだ際は大きなジェットにほぼ数人。離陸する燃料代も出てないだろう。アメリカン航空の標語で搭乗した後「Thank you for flying American」ってアナウンスがあるけど、2020年5月~6月の頃は「Thank you for STILL flying American!」とかアナウンスしてくれるアテンダントが居た位だ。

今年2021年の夏は飛行機も道も混んでて、経済がバックしたのは嬉しいことなんだけど、MidtownからJFK行くのも平気で昔みたいに1時間以上掛かるし、CA州だって変な時間にMDRからオレンジカウンティなんかにドライブしようもんなら405はどこまで行っても混んでて2時間掛かったりする。ガラガラだった頃は渋滞が懐かしいとか思ったこともあったけど、今となってはガラガラだった去年の夏がチョッと懐かしい。まあ、トータルでは経済が戻った今年の夏の方が断然いいけどね、もちろん。

日本は14日間の自己検疫が10日に短縮されるとか聞いたけど、10日でもビジネスには使えない。夏に欧州行った際には、国によってワクチン接種の証明が要る国、72時間以内にテスト結果がネガティブな証明が要る国、米国からだったら何も要らない国、とか国毎に規則はマチマチだったけど、基本的に「出発前」に各国の厚生省みたいなところのウェブサイトにテスト結果等の必要情報や飛行機の席番号(これ各国にとって重要みたいだった)をアップロードしてQRコードが送られてきたり、何らかのConfirmationが来て、それがないとその国行の飛行機に搭乗できない仕組みになってた。JFKで出発するときにパスポート見せると同時に、登場する便の行先の国のQRコードを見せたりして、アメリカン航空とかのチェックインカウンターがボーディングパスを出す際に全てスクリーンしてた。その手続きが済んでしまえば、着陸後の入国審査は普通のイミグレ審査のみで、飛行機に搭乗できたことをもってコロナに関してそれ以上の不要となっていた。

米国に帰国する際も帰国72時間以内のネガティブ・テスト結果を取得する必要があるけど、欧州の街角のテントとかで簡単にテストやってくれて、20分後にメールで証明書が送付されてくるんで、それをVefiFlyとかにアップロードするとAI(?)が証明書を瞬時にレビューしてくれて問題なければ「Ready to Fly」という緑のチェックマークでお墨付きをもらうことができる。そのAppをカウンターで搭乗前に見せると帰国の便に乗ることができ、米国での入国時にはそれ以上、コロナ関係の手続きはない。パーフェクトではないんだろうけど、何事もリスクをゼロにすることは無理かまたは法外なコストが掛かるんで、これらの仕組みは全体にバランスが良く取れた合理的な仕組みに思えた。

日本もワクチン接種・ネガティブ証明(到着時+その後2日後とかでもいいし)とかを利用し、搭乗時にスクリーンして入国時やその後に時間を使わないでも入れるようにしてくれないといつまでもTeamsやZoomでAll Night Longだよね。

Attributionとクロスボーダー課税

で、Attributionだけど、前回触れた通り、国内の法人課税関係でも302、304に加え306、338、382、とかの適用時に広範な影響がある。

クロスボーダー課税的に考えると、誰が株式の何%を所有してるかって検討は、米国人がCFC課税目的で「米国株主」になるか、そしてそれに基づき外国法人がCFCと位置付けられるか、っていクロスボーダー課税検討時の根本とも言える最重要検討マターに直結した問題となる。CFCじゃなければSub FもGILTIも関係ないし、CFCでも自分が米国株主でなければSub FやGILTIの合算はない。PFICは別世界の検討課題として残るけどね。PFICもそのうちね。一回投資先がPFICになったらPurgingしたり特殊な選択しないと後年大変なことになるからね。

株式持分とCFC課税

で、クロスボーダー課税の局面でAttributionの重要性を理解するには、まずはクロスボーダー課税の検討をする際に株式持分がどのような役割を果たすか、っていう点を理解しないと始まらない。

CFCの課税関係を考える場合、2つのタイプの持分を区別する必要がある。すなわち「直接・間接持分」と「みなし持分」だ。前者は958(a)に規定されるんで、「(a)持分」、後者は958(b)に規定されるんで「(b)持分」とか参照されたりする。

で、(a)持分の直接・間接持分だけど、Sub FやGILTIの課税関係を決定する際、直接自分が本当に所有している株式に加え、外国法人、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産が直接・間接に所有している株式は、株主、パートナー、受益人が外国の主体に対して所有する持分%に準じて間接所有していると取り扱われる。このルールの適用で外国法人、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産が所有していると取り扱われる株式は、あたかも直接所有しているかのように、その上の株主、パートナー、受益人が当ルールを基に間接所有していることになる。米国人に行きつくまで繰り返し。

「間接持分が外国の主体からしか認定されないなんて変じゃん?米国人からの間接持分は・・?」って思った方はIssue Spotting合格。なんでかって言うと、米国主体が外国法人所有してたら、敢えてその上をみないでも、一番下層の米国主体が要件に応じてSub FやGILTIを認識するから、それ以上見る必要がない。外国の主体は米国株主になり得ないので、常にその上の間接持分を見ることになる。ただし、間接持分は米国外からのものに限定されてても、後述のみなし持分は米国の主体経由からもAttributionされるんで間違いのないように。

CFCの属性を取り扱うSub Fの世界ではその制度で問題なかったんだけど、米国株主側でTested IncomeやLossの合算その他の加工処理が求められるGILTIの世界だと、必ずしも合理的でない。パススルーの米国パートナーシップ経由認識するGILTIをどのように処理するか、っていう問題。結局、この点は財務省規則で合算計算目的ではパススルー(Aggregate)と考えることで決着がついた。合わせてSub Fも同様にしようという規則案(案だけど早期適用可)が出ている。GILTIとSub Fで取り扱いが異なるとプランニングの温床になるからね。

みなし所有はいつ登場

直接・間接持分はクロスボーダー課税を規定しているSub F+GILTI関連のほぼ全条文に適用がある一方、みなし持分は特定の規定目的のみに適用がある。この差異はクロスボーダー課税を理解する際の重要ポイントだ。

で、どんな目的でみなし持分を加味するか、っていうと、何と言っても外国法人がCFCかどうかを判断するため。この判断自体2ステップで行う。まずは米国人の誰がクロスボーダー課税目的で「米国株主」になるか、っていうテスト。米国人って言うのは「United States Person」で「Person」っていうのは法律上、個人、信託、遺産、パートナーシップや法人全てを含むから米国人は個人だけって勘違いしないようにね。最初に米国株主を特定するのは、これが分からないと外国法人がCFCかどうかの判断が付き兼ねるからだ。ここで米国株主になっても、必ずしもSub FやGILTIの合算が求められる訳ではないから注意。合算は上の「(a)株主」が直接・間接に所有していると取り扱われる持分%ベース(米国パートナーシップには特例あり)。米国株主とかCFCという法的なStatusを決めるステップと所得合算をごちゃごちゃにしないように。

米国株主は、特定の外国法人に関して、10%以上の議決権または価値を持つ株式を直接・間接・みなし所有している米国人のこと。このテストで米国株主の存在を正確に把握して初めて次に外国法人がCFCかどうかの判断が可能となる。すなわち、「米国株主」が50%超の議決権または価値を持つ株式を直接・間接・みなし所有している外国法人がCFCと取り扱われるからだ。Sub F一般にそうだけど保険会社には特殊なルールあり。

ちなみにTCJAでは今回のポスティングのテーマに当たるDownward Attributionの適用以外にも、CFCにかかわる定義をいくつか厳格化、つまりCFCになり易い規定に変更している。例えば、米国株主の定義はTCJA前は同じ10%基準でも議決権のみを基に判断していた。前々回だっけ、ポートフォリオ利子免除でも無議決の優先株式を利用したプランニングが存在しててそれに網を掛ける改正が提案されてるって触れたけど、米国株主認定時の似たようなプランニングに網を掛けるため。また、TCJA前は30日ルールって言って、外国法人が課税年度のうち連続して30日CFCの位置づけにない場合は、米国株主はSub Fとかの合算から免除されてた。趣旨としては多分、ヨーロッパの法人とか一気に買収するのが難しくて、まずは例えば60%でその後80%とか100%になるような所謂Creeping買収時、特に80%に至って338選択とかするようなケースでその時点で課税年度は一旦終了するけど、50%超の持分を取得した段階から338のみなし取引も含む所得をSub F合算しなくていいように、みたいなものだったのかな、と思うけど、これも悪用されてたんで廃止。

で、Attributionだけど、米国株主やCFCかどうかの判断時には基本的には、前回紹介した4つのAttributionが適用されるけど、いくつか重要な例外がある、または「あった」。なんか長くなってきたんでここからは次回。