Saturday, September 25, 2021

バイデン増税「下院歳入委員会」法文ドラフト(3)「Downward Attributionの再撤廃」

BEATにしようかDownward Attributionにしようか迷ってたけど、いつまで迷っててもしょうがないんでDownward Attributionを先に特集することに決定。

クロスボーダー課税の検討時のAttribution規定を理解するにはまずは国内の通常の局面におけるAttributionの基本を理解する必要がある。

みなし株式持分「Attribution」規定

株式を何%所有してるかで取引の課税関係が大きく異なることは多い。各規定毎に50%超とか80%以上とか異なるけど、さらに議決権の話しなのか価値の話しなのか、双方なのかどっちかなのか、とか複数のクラスがあったり、High Vote/Low Value株式を利用したスピンオフが珍しくない米国では、各規定で何を見るかきちんと把握しないと大変なFiascoになる。

更に、連結納税グループや適格清算みたいに本当にBeneficial Ownerとして所有している株式を見るのか、Sub FのInclusionみたいに直接・間接に所有している株式を見るのか、さらに自分は持ってないけど、自分に関係する者が持っていることをもってまるで自分が持っているかのように考えないといけない「Attribution」まで見るのか、これら全て規定毎に特定しないといけない。

通常の法人課税と「Attribution」規定の目的

分配、出資、清算、組織再編、等は300番台の条文で構成されるSub Cに規定されるけど、このSub C適用時に、みなし持分規定の適用が明文化されている範囲で、納税者は自分が所有していないにも関わらず、自分と関係の深い者が所有してるっていう理由で、それらの持分をあたかも直接所有しているかのように取り扱って課税関係を決める必要がある。これがみなし持分、Attributionだ。みなし持分は部分的に間接持分と重複することがあるけど、その際も所有していると取り扱われる%は必ずしも同額ではないので注意が必要だ。みなし持分のクラシックな適用は、株式が形式的に償還(Redemption)されるケースが税法上は分配扱いになるかどうかっていう検討時。

取引を会社法上の株式償還ってストラクチャーして、「償還なので「Exchange」として株主は簿価との差額を譲渡益としてキャピタルゲインとして認識します」って言うことがあるけど、税法上は償還後に株主の持分%に意味のある低下がみられないと実質分配と取り扱われる。機械的なものも含めていくつか代替テストがあるけど、一番分かり易いケースは100%子会社による親会社の株式一部償還。100株のうち30株「償還」したり、何株もAll-Day-Long償還したところで、結局は100%子会社のまま。実質分配と変わらないってことで、E&Pの範囲で配当所得となる。この手のストラクチャーはいろいろとあって、それに網を掛けるために304とか複雑な規定があるけどね。

で、その検討をする際に「私は持分を低下させました」って言っても例えば、配偶者と合わせると実は引き続き100%だったりするとプラニングの温床というか、悪用されがちなので、関連者が持っている株式は本人が持っているかのようにみなして取り扱うことになる。それ自体、簿価がどう動くのか、とかFamily AttributionのWaiver規定があったりそれはそれは複雑な規定だけど、趣旨は分かるね?

「Attribution」みなし持分認定メカニズム

で、通常のSub Cの世界におけるみなし持分は大別して「家族メンバー」「Upward」「Downward」の3つ。それにオプション規定があるので、3つ+Optionっていうのが正確かも。

家族メンバーAttribution

家族メンバーのAttributionはその名の通り、家族メンバーが直接・間接・(限定的に)みなし所有してる株式は自分が持っているものとみなして課税関係を決めなさいってもの。でも何でもかんでもAttributionしてくるわけではなく、法律で規定された関係にある者からのAttributionとなる。家族間の話しだから、他の2つのAttributionとは異なり、あくまで個人がどれだけの株式を所有してるかって話し。具体的には配偶者、子供、孫、そして両親が所有している株式がAttributionされる。

配偶者は別居していても法的に離別していないとAttributionがあり、法的に養子縁組された子供は実の子同様のAttributionがある。面白いのは孫からはAttributionされるけど、おじいちゃんやおばあちゃんからはAttributionがない点。必ずしも双方向とは限らない訳だ。おじいちゃんやおばあちゃんが孫に株式を持たせるプランニングはあり得ても、孫がおじいちゃんやおばあちゃんに株式を持たせる方向はあんまり想定されないってことなのかな。

Upward Attribution

で、次のUpwardのAttribution。これは下から上に行く方向なんで感覚的に一番分かり易いし、間接持分と重複することが多い。ただし結果として所有していると取り扱われる%は間接とみなしで同じとは限らないので要注意。家族メンバーAttributionと異なり、UpwardやDownward Attributionは個人および法人その他の主体や遺産の株式所有状況に影響がある。

具体的にはUpward Attributionは、その適用に基づき、パートナーシップ、遺産(Estate)、信託、法人が直接・間接・みなし所有している株式はそのオーナーが所有していると取り扱う規定。パートナーシップと遺産に関しては、パートナーや受益人が少数持分でも常に持分%相当がAttributionされる。信託も似てるけど、信託の場合、受益人はアクチュアリー計算に基づく持分%に相当する信託所有の株式がAttributionされる。計算面倒そうだよね。で、非課税の年金信託は適用対象外。また、税法上Grantor Trustと取り扱われる部分の信託資産に関しては、Attributionというより、元々税法上、Grantor等の資産として取り扱われるので、Grantor等が株式を所有していると取り扱われる。これはAttributionっていうよりもGrantor Trustにかかわる一般規定って考えてもいいだろう。

法人に関しては、50%以上の価値を直接・間接・みなし所有する株主に限定して、法人が同じく直接・間接・みなし所有する株式の価値に基づく持分%に相当する株式がAttributionされる。

Downward Attribution

3つ目のDownward Attributionだけど、これはその名の通り、上から降って来るんで感覚的に少し分かり難い。Upward同様に対象はパートナーシップ、遺産、信託、法人。

で、パートナーシップと遺産に関しては、パートナーや受益人のパートナーシップや遺産に対する持分%にかかわりなく、パートナーや受益人が直接・間接・みなし所有する株式は「全数」Attributionされる。似たように、信託の受益人が直接・間接・みなし所有する株式は信託にAttributionされるけど、受益人の信託に対する持分が「Remote Contingent」って認められるとAttributionはない。年金信託は適用対象外。で、受益人の信託にかかわるContingentな持分は、各信託契約に基づき認められる受託人の裁量内で最大限のアクチュアリー計算に基づく持分を計算し、それが5%以下の場合には「Remote」と認められる。信託資産のうち一部でもGrantor Trustに当たる場合、Grantor等、税務上資産のオーナーと取り扱われる者が直接・間接・みなし所有している株式は全数信託が所有していると取り扱われる。

法人に関しては、価値ベースで直接・間接・みなしに50%以上の持分を所有する株主が直接・間接・みなし所有する株式は全数法人にAttributionされる。50%超ではなく「以上」と規定される点、また仮に50%株主からDownward Attributionされる場合も、株主が所有する株式の50%ではなく全数Attributionされる点に注意。

オプションAttribution

株式を取得するオプションを所有している者は、行使したら取得される株式は既に所有していると取り扱われる。またオプションを取得するオプションとか、そのオプションとかも全て株式取得オプションとしてAttribution規定の適用を受ける。オプションAttributionと家族メンバーAttributionの双方で同じ株式がAttributionされるケースは、オプションAttributionの方でAttributionされるって取り扱われる。

Attributionに次ぐAttribution

ここまで読んで「結構広範じゃん・・・」って思うかもしれないけど、Attributionはまだ続く。適用ルールに基づくと、Attributionでみなしで所有しているって取り扱われる株式はDirectに所有していると同様、規定に抵触する限り、他の者に再度Attributionしていく。例外は家族メンバーのAttribution適用時。すなわち、家族メンバーが所有しているって理由で自分が持ってるって取り扱われる株式は、それが更に他の家族メンバーにAttributionされることはない。例えば、孫が実際に所有している株式はAttributionでおじいちゃんやおばあちゃんが所有してることになるけど、だからと言って、その株式がおじいちゃんやおばあちゃん当人のおじいちゃんやおばあちゃん(元々の孫から見ると高曽父母、ひいひいおじいちゃんやおばあちゃん)にはAttributionしない。おじいちゃんやおばあちゃんからその子供に再度Attributionしないけど、ただ、元々実際に株式を所有している孫の両親には別の家族Attributionがあるので、両親はみなし所有がAttributionされる。ただし、この家族メンバーの継続Attribution禁止は、家族メンバーのAttribution内の話しで、例えば、孫が実際に所有する株式をおじいちゃんやおばあちゃんが所有しているとみなしで取り扱われる場合、今度はその所有を基におじいちゃんやおばあちゃんが投資しているパートナーシップとかには再度Attributionしていく。

もう一つの継続Attributionの例外として、Downward Attributionを基にパートナーシップ、遺産、信託、法人が所有しているとみなされる株式は、そこから他の者に再度Attributionされることはない。例えば、マイノリティ持分のパートナーが実際に所有している株式はDownward Attributionで全数パートナーシップが所有しているように取り扱われるけど、その株式が別のパートナーにAttributionされることはない。

ちなみにS Corporationは原則パートナーシップ扱い。すなわち、S Corporationが所有している株式はS Corporationの株主がパートナーかのように持分に準じてAttributionされる。50%ルールの適用はない。ただ、S Corporationそのものの株式を他の者が所有している場合、S Corporationの株式は法人株式として、他の者の所有%が決まる。

国内のAttributionだけでも超込み入ってるけど、次回はクロスボーダー課税への影響に関して。