クリスマスイブからクリスマスにかけてマンハッタンは最高のお天気で、気温も40度台(℃で言うと10度弱)とNYCにしては暖かく、普段の喧騒が嘘のような静かな街をドライブしたり散歩したり、NYCの魅力を満喫できるホリデーとなった。NYCって道は汚いし、インフラもボロボロ、混んでて天候も良くないので、観光とか出張で来ると何コレ、みたいな印象を受けることがあるかもしれないけど、しばらく住んでると他の都市では感じることができない「No one cares who you are」的なLiberation感覚にはまり、なかなか脱出できない体になってくる。いろんな意味で厳しい環境の街なので、誰もが直ぐに好きになる場所じゃないけど、高層ビルの数、世界各地のレストランの豊富さ、金融センターとしてここを通過するお金の量、その他の物質面だけでは計り知れないLiberateされたスピリット面で、世界でも特殊かつ究極のUrban Cityだと思う。また米国税務のような業界に身を置くには、税務専門のプロフェッショナルだけでなく、M&A弁護士や投資銀行等のInfluencer的な方たちとかと常にライブで情報交換できる点も大きな魅力。DCからも近いので政府系の方たちもしょっちゅうイベントに参加してくれるし。彼らを見てると今日も厳しいマンハッタンだけど、もっと修行しなきゃっていうモードにさせてくれるものだ。
一方のカリフォルニアのMDRはというと、今週はどちらかと言うと寒めで、最低気温がNYCの最高気温と同じ位まで下がったりしてる。裏のBike Pathを抜けてBeachの方に散歩する道も、50度台だとなぜかとても寒く感じる。Midtownで50度台だと暖かすぎる感覚に陥ったりするのでこの差は不思議。こちらはNYCみたいなUrbanなLiberation感覚はないけど、乾いた空気でLazyなRetirementモードにさせてくれる。
そんなLazyなホリデーの予感も、クリスマスイブ直前に公表されたSection 863の財務省規則案で台無し。年の瀬も押し迫ったこの期に及んで、こんなニッチな規則案を公表してくるとは。しかも何回も読み直さないと危なくて、これだけの理解で一生掛かりそうなSection 865との関連に触れてくれていて、863と865のInter-Actionにかかわる議会の立法趣旨、財務省の以前からの解釈、などノンフィクションの歴史が盛沢山で、863条のくせに(?)って油断して読み始めた割にInbound系の課税関係を考える上でとても役立つ思いの外凄い規則案だった。
で、公表を受けて早速、熟読せざるを得ないはめに陥ったけど、この手の面倒な規則を読むのは夜明け前の一時がピッタリ。East Riverの向こうのQueensから日が昇り始める前に、コーヒー(EYのNYC事務所のみんなはどんなコーヒーか分かるね)とSpotifyでBGMもセットしてフォーカスっていうパターンだけど、今日のコーヒーはブラジルかコロンビアかさんざん迷い、かつShuffleプレーも、集中度を増すため歌詞のない早朝向きということで最終的にはJim HallかLarry Carltonに絞りこんだものの、こっちもさんざん迷って、なかなか規則に辿り着かない。
Jim Hallは言うまでの無い大御所。Larry Carltonは今思えばCAのTorrance出身なんだよね。Steely Danとかのイメージが強いので、ノリはニューヨークっぽいけどね。ハリウッドに自ら作ったRoom 335で多くのレコーディングをしていたギタリストだ。まさしくそのスタジオ名を曲名としているRoom 335で始まるアルバムが有名だけど、それまでのCrusaders、Steely Danとかその他のスタジオワークとかに魅せられてた友人も多かった当時、あのアルバム、特にPoint It Upとかは、賛否両論で、喧々囂々だったのを覚えてる。個人的にはめちゃイケてる曲でテクニックも抜群でいいじゃん、って思ってたけど、人によってはロック過ぎるというか、フュージョンっぽさに欠けるというか、アル・ディメオラに対抗するような速弾き過ぎるというか。未だ子供だった当時はいろんな見方があったけど、歳とって落ち着いて聞いてみると、Point It Upや同じくロックっぽいリフで似たようなタイトルのDon’t Give It Upも、目くじら立てる必要もなく、アルバムにはちゃんとNite Crawlerみたいなメローなナンバーも入っていて、他の曲も合わせて総合的に考えるとアルバムとしてバランスが取れている逸作。特にオープニングのRoom 335はピッキング・ハーモニクスの使い方や、チョッと敢えてもたった感じのBending(日本語のChoking)が最高。他にもボーカル入っている曲もいいしね。最高過ぎて聴き入っている間に規則案読むの忘れそうになって、Queens方面の空が赤くなってきてしまった。
で、米国税務をかじったことある人なら、863条って聞いただけで、860番台前半に位置することから、所得の源泉地にかかわる規定だな、っていうことは条文読む前から当然理解できるはず。所得の源泉地決定は米国の納税者にとってはFTCの枠をどれだけ最大限化できるかっていうプラニングのキーだし、日本企業のような外国法人や非居住者にとっては、所得が米国で課税対象となり得るかどうかを判断する際に重要な検討事項となる。インバウンドの課税を検討する際、米国源泉所得にならなければFDAPにはならないので源泉税の対象にはならないし、外国源泉所得がECIになるケースはかなり限定的なので、まずは所得、Gross Incomeベースで源泉地がどこになるかの検討が最重要マターだ。
米国法人にとってTCJA以降のクロスボーダー課税の弊害を最小限とする一つのキーがFTCだから、所得の源泉地決定、その後の費用配賦・按分にかかわる検討は従来にも増して重要となっている。課税関係そのものを規定している条文や考え方は熟知しておく必要があるのは当然だけど、所得の源泉地、資産、特に株式の簿価、E&PやPTEP、とか一見脇役っぽい検討が実は主人公同様に課税関係にインパクトを持つことも多い。
それにしても、年の瀬も押し迫るこのタイミングでこんな規則案を公表するあたり、Section 863の改訂に基づく、外国法人のECIプラニングに早々に網を掛けなくては、という財務省側の意欲が見え見え。Section 863が改訂された当時から、外国法人による棚卸資産の販売益かかわる従来の取り扱いとの整合性の検討、および新規定を適用して、外国法人が米国外で生産している棚卸資産の販売益を、外国法人が米国に事業所を有しているにもかかわらず全額外国源泉として、結果としてECIではなくして米国申告課税の対象とならない、とするようなプラニング検討が密かに盛り上がっていたので、財務省の動きは的を得ているし、その感度は抜群。こんな的を得た対応策をタイムリーに講じることができるのも、法曹界、Big 4、業界の代表等との多くのパネルディスカッション等に財務省が普段から参加しているからならでは。更に規則案では、わざわざご丁寧に外国法人がこの手のプラニングに基づき、米国外で生産する棚卸資産販売益を、米国事務所が重要な関与を持つにもかかわらず100%国外源泉として、結果としてECIではないというポジションを取っている場合には、税務調査でチャレンジする可能性があると明言している。う~ん、なかなかDirect。
Larry Carltonとかで話しがそれたので、規則案の内容そのものは次回。