Monday, October 29, 2007

米国適格再編と新しい事業継続規則(1)

米国財務省は2007年10月25日に米国の適格企業再編を規定するSec.368に係る最終施行規則を発表した。当財務省規則は2004年に規則化の方向が示されていた「再編後の資産・株式譲渡」の適格再編への影響、そして「事業継続規定」に対する修正規則から成っている。

*適格再編の基本的考え方

企業再編に関しては三角合併を中心に過去に何回もポスティングしているが、原則として再編が実質的に企業の売却ではなく「単なる形態変更であり、買収される企業の再編前の株主が再編後も継続的に持分を有する」場合、再編は適格、すなわち「Tax-Free Reorganization(正確にはTax Deferralだが)」と取り扱われる。この原則が具体的に表現されているのが「持分継続」「事業継続」となる。

*旧T株主とT事業の再編後の「距離」

買収対象となる企業T(ターゲットの頭文字)の旧株主が再編後にT事業に対して継続して持つ持分は必ずしも「直接的」なものである必要はない。例えば三角合併においては旧T株主が受け取るのはTが合併する相手(S)の親会社(P)の株式であることから、旧T株主はTの事業が存続しているS法人には直接持分を持たない。このような「Remote」持分でも、持分継続は満たされてると規定されている。また、二社間合併のタイプA再編、資産買収のタイプC再編、等において取得した資産を子会社に「現物出資(Drop-Down)」しても適格要件に影響がないのも「Remote」持分を許容している例である。

*適格グループの定義拡大

再編後にTを取得した側のグループ内でT事業が移転されるようなケースでは、どこまでの移転が事業継続条件を考える上で許容されるか、という検討をする必要がある。一般的に取得したTの事業をPサイドの適格グループ内で移転している限りにおいては問題となることはない。

この適格グループの定義が今回の最終財務省規則により拡大されることとなった。今回の変更以前は、適格グループに属するためには「議決権の80%以上、プラス議決権を持たないクラスの株式数の80%以上(以下Sec.368(c) Controlと言う)」をPに直接所有されるか、またはPにSec.368(c) Controlを所有される法人に同Controlを直接所有される必要があった。今回の最終財務省規則により、Pが少なくともひとつの子会社に対してSec.368(c) Controlを直接持っている限り、他の子会社に対しては複数のグループ企業が「合算」でSec.368(c) Controlを持っているケースにおいても適格グループ法人と認められることになった。

この持分を合算する考え方は「連結納税」に参加できるグループ法人を特定する際に適用される考え方に似ている。連結納税の対象法人を決定する際のControl要件も基準点は80%であるが、連結納税目的では「議決権の80%以上、プラス全株式価値の80%以上」の所有がControlと定義されていることから、適格再編の判断に適用される基準点とは内容が異なる。事業継続条件を考える際に、Tの事業移転先が適格要件に影響を与えないかどうかの判断をこの連結納税グループの考え方に基づいて行うべきというコメントがあったが、今回の最終財務省規則ではそうはならずにControlの定義はあくまでも企業再編のものの使用を継承しつつ、その適用範囲を拡大するという方向に落ち着いている。

*グループ内パススルー主体が持つ法人株式

パススルー主体というのは通常、企業再編の税法下では「再編の当事者(A party to reorganization)」とならないことからいろいろな弊害があることがある。しかし、今回の最終財務省規則においては適格グループ内法人がパススルー主体に対して上のSec.368(c) Controlに準じる持分を持つ場合には、そのパススルーが所有する法人株式もSec.368(c) Controlの有無を判断する目的で合算対象として良いものと規定されている。

最終財務省規則では上の事業継続条件以外の観点から再編後の資産、ストックの譲渡に関しても規定しているがそちらは長くなるので後日のポスティングで触れる。