2013年1月のポスティング「日米租税条約8年ぶりに改正」で触れたように日米租税条約は両国が議定書にサインをして改正が合意されて久しい。ところが、この議定書、2013年1月24日にサインこそされたものの、米国側の批准手続きが完了しておらず、ナンと未だに効力がない。2013年1月と言えば3年以上も前の話しなので、尋常ではない。言い方は悪いかもしれないけど、日本的に考えれば両国がサインして合意した条約改定の批准など、単なる手続き、すなわちラバースランプ的な感覚があり、その意味で、とっくに改正が発効していると勘違いされている方がいても不思議はない。または逆に議定書の存在自体が忘れ去れているイメージもある。
改正のうち特に、「支払利息の源泉税ゼロ%化」と「移転価格の更正に対する両国間のArbitration(仲裁規定)」の導入は待ち望んでいた納税者も多いだろう。租税条約改正という一見無害というか地味と言うかの合意に対する米国の批准手続きがここまで滞っているのはなぜだろうか?実は、これは米国には恐るべし「租税条約キラー」の上院議員が一人存在することに帰する。その話しを理解するため、というかその前に、まず米国の条約の位置づけを簡単におさらいしてみたい。
今更だけど、米国はFederalism(連邦制)に基づく統治形態を敷いているので、連邦政府と州政府の双方が主権国家的な存在となっている。となると双方の政府で制定される法律の相対的な力関係を規定しておかないと運営不可能となる。そこで、米国の連邦憲法には「Supremacy Clause」、 最高法規条項とでも訳されるのだろうか、が規定されており、連邦に法律を規定する権限がある場合、連邦法は州法より優先とされる。いわゆる「Preemption」のことだけど、ここでいう「連邦法」には憲法に基づいて制定される連邦法と並び「条約」が含まれている。
Federalismを理解する上で重要なポイントは、連邦政府は憲法で定められた限定的なパワーのみを持つ一方、州は通常の国同様に一般福祉を含む全ての権限を持っている点だろう。したがって州は、Freedom of SpeechとかEqual ProtectionとかのBill of Rightsに抵触しない限り、好きな法律を制定することができる一方、連邦は憲法で認められる分野、例えば移民分野とか州間の通商であるInterstate Commerceとか、憲法で名言されている分野でのみ法律を制定することができる。一旦、連邦が法律制定の権限を持つと認められると、連邦法と矛盾する州法は無効となる。米国憲法を200年以上も前にドラフトした賢者達は歴史の過ちから、連邦政府を限定的なパワーを持つ機関とすることで、連邦政府が巨大となったり、官僚的に成り過ぎて機能不全となる可能性を恐れ、予め釘を刺していたことになる。
この、連邦政府の権限がどこまで及ぶのかという点は米国のポリティクスを理解する際の最重要ポイントのひとつで、一般に共和党は小さく、民主党は大きく、という方向となる。州、市民等が「そんなことは連邦に言われる筋合いはない」すなわち「憲法で規定される連邦政府の権限を逸脱している」とする訴訟が持ち込まれることは数多い。クラシックな例としては大統領選挙の際に必ず候補者がリトマス試験的に指示するかどうか質問される「Roe v. Wade」がある。その質問の趣旨は、必ずしも中絶そのものを良しとするかどうかということではなく(そのように報道されることがほとんどだし、実際そのようなイデオロギー的な側面も強いけど)、テクニカルな面では、州が自州の住民の意思として決定することを、連邦政府がどこまでどのような憲法で与えられた権限をもって抑制、制御する権利があるのかという憲法解釈となる。
オバマケアにかかわる最高裁判所での判断もまさにその点だ。、憲法上、一般社会福祉的な法律を制定する権限は連邦政府にはなく、ここは典型的な州政府の領域であるにもかかわらず、このような法律を制定してしまったことに対するチャレンジだ。すなわち、国民みんなが医療保険に加入する方がいいかどうか、という判断と言うよりは、そんなことは巨大な連邦政府にあれこれ言われる筋合いはなく、法制化するのであれば庶民に近い州政府が決めればいいことではないかということだ。すなわち、こんな分野に連邦政府が手を出していいのかどうか、という疑問・検討となる。この点は2012年1月にポスティングした「オバマケアは税法だった?」を参照して欲しい。最高裁判所は苦し紛れにオバマケアは「税法でした」と位置づけ、となると連邦政府はもちろん連邦税を規定する権限を今日では持っているので、オバマケアも合憲となった。Casting Voteを握った最高裁判所主席判事のRobertsは保守派のRehnquistの後継ぎとしてブッシュ(ジュニア)政権が任命した保守派と見られていただけに、共和党は判決に大きなショックを受けたのは間違いない。憲法を原文通り厳格に解釈し続けた知の巨匠Scaliaも今年亡くなってしまったし。Rehnquist率いる最高裁判所時代には「Lopez」というLandmarkケースで連邦政府が何でもかんでもCommerce Clauseに託けて法律を制定する姿勢に一矢報いている。最近話題になっているTransgenderの人が男女どちらのバスルームを使用するか、という点に連邦政府が口を出し、既に11州が越権行為として訴訟を起こしているニュースは皆さんも耳にしているんではないでしょうか。この問題は連邦の権限に加え、連邦内の三権分立の問題、すなわち行政機関となるオバマ政権が議会を通さずにこのような規則を発行していいものかどうかという点も議論となる。
と、憲法論で余り興奮し過ぎないうちに(と言うかもう十分に興奮し過ぎたので?)、条約に話しを戻すと、連邦法として条文法と条約が併記されていることは、いくつかの必然的な結果をもたらす。条約の締結は、三権分立の行政に属する大統領に権限が与えられており、プラスで立法機関の一部である上院の批准が必要とされている。通常の法律は上院と下院の双方を通過しないといけいないことから、そのような法律と同列のパワーを持つ条約が上院のみの批准でOkというのは、下院から見ると自分たちを手を通らないにもかかわらず、条文と同じパワーを持つ法律が制定されてしまうことを意味する。当然、下院からすると面白いことではない。
さらに、条文と条約の双方が「Supreme Law of the Land」として同等のパワーを持って君臨しているとすると、2つの法律の規定が相反する場合にどちらに軍配が上がるか、という単純な問題が発生する。普通に考えたら、外国と約束して、税法的には内国法よりも有利にするのが条約なので、条約が勝つと思う人が多いのではないだろうか。実際に税法の話しをしているとそのように考えている人に出会うことがある。税法(Internal Revenue Code)と租税条約が並列にある点はわざわざSection 7852(d)にもその旨が規定されている。では、引き分けで終るのか、というとそうではなく米国では「Later in Time(後法優先)」すなわち後に出来た方が優先というのが基本的な考え方だ。
この条約、二国間で合意されると上院の批准が必要となる。さて、どうしてこの批准が3年経っても完了しないかは次回。
Sunday, May 29, 2016
Sunday, May 22, 2016
Inversion/インバージョン(23)「Inversion・過少資本税制と米国税法のこれから」
1月に久しぶりにポスティングを再開するに辺り、「何を書こうかな~」と考えたあげくに気楽に選んでしまった「Inversion」。いつの間にか今回で23回に亘る長編になってしまった。
このInversion、「Inversion (3)」で触れた1983年のMcDermott社による初期型のVersion 1.0から始まり企業と税法・財務省規則との「いたちごっこ」というか「相乗効果」というかで、今ではVersion 5.0にまで進化し、海外にあるそれ相当の大企業を相手に複雑な組織再編を通じて実行され、それとセットで米国の課税ベースを圧縮するさまざまな手法が織り込まれるにまで至った。税法的な大きなターニングポイントとしては90年代のSection 367、2004年ブッシュ政権時のSection 7874、そして2016年の暫定規則があげられる。特に最後通牒的に2016年4月に発行された財務省規則によるInversion規制は現在のSection 7874内で可能な範囲ぎりぎり、または見方によっては権限逸脱に近い部分もある形で極限までInversionを制限している。SigningされてClosingを待つばかりであったPfizerによるAllergenとの統合を利用したInversionが規則発行2日後に断念されてしまったことでShowdownを迎えている状況だろう。
PfizerのInversionは2014年、2015年に発行された2つのNoticeの条件はクリアしており、その後に発表される財務省規則はNoticeの内容に準じると想定されていただけに、規則がNoticeを超える制限を挿入し、PfizerのInversionに特化した形で、すなわち、PfizerのDealが成り立たないように規定している点、財務省は「なり振り構わず」Inversion規制していると言える。特定の法人を狙い撃ちするような規則は認められないため、財務省は「どの法人、Dealを念頭に置いた規則ではない」と当然主張するが、まるで憲法違反の「Bill of Attainder」を連想させるあからさまなPfizerのDeal潰しと受け取られている。
Pfizerとは異なり、そもそもNoticeが発行された時点でその壁を超えられなかったDealもある。例えばAbbVieによるShire買収を利用した英国へのInversionがその一例だ。このDeal、$54B規模だったからかなりのメガDealだった。しかし、2014年のNoticeが直接の理由となり、AbbVieは$1.6BのBreakup Feeを支払ってDealはオフとなった。AbbVieもPfizerがInversionを断念した際に言っていたように、2014年Noticeは彼らのDealを念頭に規定されたのではないかという疑念を持っていたと言われる程、タイミング、その内容が絶妙だった。
Dealがオフになると(Dealが成立したケースでもだけど)株主訴訟はある意味付きものだ。当然、AbbVieのケースでも株主訴訟となり、Dealの公式発表を基にShire株式を取得した株主が「統合発表時にInversionによる税メリットの重要性を過小評価しているかのような公式見解をAbbVieおよびShire側の会長が出しており、これらはMisleadingでありSECのルールに反する」という訴えを起こしている。結果はAbbVie側の棄却申し立てが認められたようだが、原告側の申し立て内容は面白い。
すなわち、Inversionの規制が厳しくなるだけでDealがダメになったということは、会社側が散々言っていた「法人税減は1つのメリットに過ぎず、他の事業目的は余りある」という趣旨の統合発表時の見解はウソだったのか?という株主側の疑問提起だ。実際問題として、発表時にはInversionして税金が低くなることだけを目的とは言えないだろうし、Reputation的にもそこはDownplayする企業が多いのは事実だ。ただ、前回のポスティングでも触れた通り、どのInversionも事業目的が並存しなければ検討されないのもまた事実だろう。ただ、再編後のシナリオに与える税コストの占める位置は大きく、グローバルで必死で競争している米国MNCにとって、その税メリットがなくなってしまうとDeal Economicsに大きな影響があるのも事実。AbbVieに対する訴訟はそのような難しいバランスがチャレンジされたもので、結果的に棄却となったとは言え、Inversionを計画する際の会社側の公式見解のいい回しにも今後は更に気を使わないといけないといういいレッスンだろう。
Inversionに対する税法は不思議なもので、最初から持株会社が外国に設立されていると、何の問題もないが、一旦米国に設立されたものを外国に持っていくのはダメ、という発想に基づく。でも考え方によっては最初からそのように組成する自由があるんだったら、途中でやっても、適切なExitチャージを払えば同じことではないかと思うがどうなんでしょうか?Inversionが無理または難しいと分かれば、今後のスタートアップは間違いなく単純に最初から賢く外国に親会社を設立して米国は一子会社っていうセットアップとしてしまえば済む話しであるとしたら、途中からそうしますっていうと非国民で許されないというのも不思議。根本的な解決策はInversionをし難くするのではなく、Inversionしないでも米国でComfortableに親会社を運営できるような税制とするしかないだろう。税率を下げて、全世界課税を改めて日本が2009年にしたみたいにテリトリアル課税に移行させるしかない。
財務長官が議会に対してInversion規制の強化を訴え、現状のSection 7874の基準である継続持分80%を50%に引き下げようなどという動きを聞くと何の解決にもならないどころか、米国企業の競争力を低下させるだけではないのかな、と心配だ。
米国税法の見地からは、日本企業のMNCは生まれながらにしてInversionしているので、米国企業がInversionしたらこうしたいなと夢に見ているメリットは自然と享受できるし、Inversionした法人に対する様々な足かせも適用されることがない。ただ、BEPSレポートのところでも触れたが、日本企業のMNCが米国でこのようなメリットを少しでも利用している形跡はほとんどない。
米国税法の抜本的改正も掛け声ばかりで遅々として進まない中、今後、米国MNCがどのように、2016年の暫定規則を乗り越えてInversionを進化させて行くかかなり興味深い。という訳で、5ヶ月・23回に亘りいろいろと書いてきたInversion。何か進展があるまで取りあえずこの辺にしておこう。次回からはまた思いついたトピックで。特にInversionのシスター規則、過少資本税制の規則案に関してはこの夏に掛けて進展あり次第取り上げて行きたい。
このInversion、「Inversion (3)」で触れた1983年のMcDermott社による初期型のVersion 1.0から始まり企業と税法・財務省規則との「いたちごっこ」というか「相乗効果」というかで、今ではVersion 5.0にまで進化し、海外にあるそれ相当の大企業を相手に複雑な組織再編を通じて実行され、それとセットで米国の課税ベースを圧縮するさまざまな手法が織り込まれるにまで至った。税法的な大きなターニングポイントとしては90年代のSection 367、2004年ブッシュ政権時のSection 7874、そして2016年の暫定規則があげられる。特に最後通牒的に2016年4月に発行された財務省規則によるInversion規制は現在のSection 7874内で可能な範囲ぎりぎり、または見方によっては権限逸脱に近い部分もある形で極限までInversionを制限している。SigningされてClosingを待つばかりであったPfizerによるAllergenとの統合を利用したInversionが規則発行2日後に断念されてしまったことでShowdownを迎えている状況だろう。
PfizerのInversionは2014年、2015年に発行された2つのNoticeの条件はクリアしており、その後に発表される財務省規則はNoticeの内容に準じると想定されていただけに、規則がNoticeを超える制限を挿入し、PfizerのInversionに特化した形で、すなわち、PfizerのDealが成り立たないように規定している点、財務省は「なり振り構わず」Inversion規制していると言える。特定の法人を狙い撃ちするような規則は認められないため、財務省は「どの法人、Dealを念頭に置いた規則ではない」と当然主張するが、まるで憲法違反の「Bill of Attainder」を連想させるあからさまなPfizerのDeal潰しと受け取られている。
Pfizerとは異なり、そもそもNoticeが発行された時点でその壁を超えられなかったDealもある。例えばAbbVieによるShire買収を利用した英国へのInversionがその一例だ。このDeal、$54B規模だったからかなりのメガDealだった。しかし、2014年のNoticeが直接の理由となり、AbbVieは$1.6BのBreakup Feeを支払ってDealはオフとなった。AbbVieもPfizerがInversionを断念した際に言っていたように、2014年Noticeは彼らのDealを念頭に規定されたのではないかという疑念を持っていたと言われる程、タイミング、その内容が絶妙だった。
Dealがオフになると(Dealが成立したケースでもだけど)株主訴訟はある意味付きものだ。当然、AbbVieのケースでも株主訴訟となり、Dealの公式発表を基にShire株式を取得した株主が「統合発表時にInversionによる税メリットの重要性を過小評価しているかのような公式見解をAbbVieおよびShire側の会長が出しており、これらはMisleadingでありSECのルールに反する」という訴えを起こしている。結果はAbbVie側の棄却申し立てが認められたようだが、原告側の申し立て内容は面白い。
すなわち、Inversionの規制が厳しくなるだけでDealがダメになったということは、会社側が散々言っていた「法人税減は1つのメリットに過ぎず、他の事業目的は余りある」という趣旨の統合発表時の見解はウソだったのか?という株主側の疑問提起だ。実際問題として、発表時にはInversionして税金が低くなることだけを目的とは言えないだろうし、Reputation的にもそこはDownplayする企業が多いのは事実だ。ただ、前回のポスティングでも触れた通り、どのInversionも事業目的が並存しなければ検討されないのもまた事実だろう。ただ、再編後のシナリオに与える税コストの占める位置は大きく、グローバルで必死で競争している米国MNCにとって、その税メリットがなくなってしまうとDeal Economicsに大きな影響があるのも事実。AbbVieに対する訴訟はそのような難しいバランスがチャレンジされたもので、結果的に棄却となったとは言え、Inversionを計画する際の会社側の公式見解のいい回しにも今後は更に気を使わないといけないといういいレッスンだろう。
Inversionに対する税法は不思議なもので、最初から持株会社が外国に設立されていると、何の問題もないが、一旦米国に設立されたものを外国に持っていくのはダメ、という発想に基づく。でも考え方によっては最初からそのように組成する自由があるんだったら、途中でやっても、適切なExitチャージを払えば同じことではないかと思うがどうなんでしょうか?Inversionが無理または難しいと分かれば、今後のスタートアップは間違いなく単純に最初から賢く外国に親会社を設立して米国は一子会社っていうセットアップとしてしまえば済む話しであるとしたら、途中からそうしますっていうと非国民で許されないというのも不思議。根本的な解決策はInversionをし難くするのではなく、Inversionしないでも米国でComfortableに親会社を運営できるような税制とするしかないだろう。税率を下げて、全世界課税を改めて日本が2009年にしたみたいにテリトリアル課税に移行させるしかない。
財務長官が議会に対してInversion規制の強化を訴え、現状のSection 7874の基準である継続持分80%を50%に引き下げようなどという動きを聞くと何の解決にもならないどころか、米国企業の競争力を低下させるだけではないのかな、と心配だ。
米国税法の見地からは、日本企業のMNCは生まれながらにしてInversionしているので、米国企業がInversionしたらこうしたいなと夢に見ているメリットは自然と享受できるし、Inversionした法人に対する様々な足かせも適用されることがない。ただ、BEPSレポートのところでも触れたが、日本企業のMNCが米国でこのようなメリットを少しでも利用している形跡はほとんどない。
米国税法の抜本的改正も掛け声ばかりで遅々として進まない中、今後、米国MNCがどのように、2016年の暫定規則を乗り越えてInversionを進化させて行くかかなり興味深い。という訳で、5ヶ月・23回に亘りいろいろと書いてきたInversion。何か進展があるまで取りあえずこの辺にしておこう。次回からはまた思いついたトピックで。特にInversionのシスター規則、過少資本税制の規則案に関してはこの夏に掛けて進展あり次第取り上げて行きたい。
Sunday, May 15, 2016
Inversion/インバージョン(22)「Inversion規則とBurger King」
今日は比較的最近のInversion取引のストラクチャーのひとつ、ファストフードチェーンBurger Kingによるカナダのコーヒー(+ドーナツ)チェーンTim Hortonsの買収。
Burger Kingは東京、Los Angeles, NYCのどこにもあって(香港にもあったかも)、もちろん看板とか良く見るけど、長~い間行った記憶がない。その昔、ハワイに遊びに行ったりした頃に偶然行ったかもしれないけど。Tim Hortonsに至ってはカナダでは相当有名で、NYCにも、しかもMidtownの行動・徒歩圏内にも店舗はあるみたいだけど、全く行ったことがないどころか、Inversionのニュースになるまで名前すら知らなかった。
Burger KingのInversionは、Burger Kingのお得意先のひとつが米国陸軍だったり、またBuffet Taxの俗称で知られる富裕層の増税を提唱して正義の見方っぽかったWarren BuffetのBerkshireが関与していたり、等の理由で多くのメディア批判に晒されていた。米国税務的な観点では2014年の財務省によるNoticeが出た直後のInversionだったので、「未だInversionは健在・・」という力強いメッセージという意味で意義深かった。
このInversion、基本的な流れはBurger KingがカナダのTim Hortonsを買収する際にカナダを頂点とするMNCグループに生まれ変わるという近年のVersion 5.0の典型と言えるが、パススルー主体を介在させたりかなり複雑な取引だったようだ。ウォールストリートジャーナルによるとInversion後、4年間で$300M近い節税となるというし、他のシンクタンックの試算ではメリットはそれどころではなく$1Bを超えるという報道もあった。だったら、合法的であればWarren Buffetだって誰だって十分に実行する価値のあるDealと言えるだろう。ただ、一方で、他のInversion同様、会社側が主張するように十分な事業目的が存在するから実行している訳で、メディアで揶揄されるようにタックスのみの目的ではないのはその通りだろう。これは全てのInversionに共通で、製薬業界にInversionが多いのも、彼らが他業界よりGreedyとか言う問題ではなく、厳しい国際競争、米国外に存在する大きなマーケット、行政・保険会社からのコストカットの強いプレッシャー、等、企業側から見て構造的に不利な状況では事業運営すらままならないという死活問題が背景にある。
企業側はグローバル競争で勝ち残るのに必死だし、海外マーケットの比重が高く、他国の競争相手がより有利な税務環境で戦っていたら、Inversionを成功させるのはオプションではなくMustとなるだろう。米国議会、財務省、大統領、揃ってInversionする企業、経営者を非国民みたいに言うけれど、企業側から見れば、そんなに言うんだったら早く使い勝手のいいもっとマシな法人税法にアップデートして下さい、という立場となる。議会に至ってはCTB規定の海外2nd Tier主体への適用とかに網を掛ける法改正の機会がありながら何も行動せず、そのくせAppleの社長とか呼び出して、尋問したりと余りに無責任(?)。「Inversionはいけません」でも「国際競争力を殺ぐ最悪かつ常軌を逸する難解な税法は当面ポリティカルに改訂はないので、しっかり準拠して下さいね」という2つが並行して国のメッセージだとすれば、米国MNCは国際競争で苦戦を強いられるしか選択肢がないこととなる。
で、Burger Kingだけど、Tim Hortons買収後は、カナダに新規に設立されるNew Red Canada Partnershipという事業体の子会社となる。このパートナーシップがBurger Kingをお馴染みのReverse Sub Merger手法で株式取得し、カナダには英国法の流れでMerger法がない(?)らしいことから、英連邦ではやはりお馴染みのAmalgamation(Armageddonと間違えないようにね)でTim Hortonsを子会社化する。ここで、なんでパートナーシップ?って不思議に思った方は問題意識がきちんとあり、Issue Spottingで黄色帯(白帯のひとつ上・・)合格だ。Version 5.0の典型的なInversionでは統合後の持株会社は米国外の上場株式会社となるのが通常だからだ。さらに複雑なのは、このパートナーシップの上にカナダ法人の上場持株会社が介在している点だ。しかも、パートナーシップ持分が、Upper Tierの持株会社と同じ配当、議決権も持ち、こちらも上場されている。すなわち、Lower Tierのパートナーシップ、Upper Tierの持株会社の双方が上場企業の形を取っていて、またパートナーシップ持分は1年後に持株会社の株式に転換可能となっている。
随分と複雑はストラクチャーだけど、誰がどの持分を受け取ったかっていう点を良く見てみると何となく謎が解けるような気もしてくる。取引の詳細、実際のところはベールに包まれているのであくまでも推測だけど。Burger Kingは3G Capitalって言うFund(ブラジル系?)が70%所有していて、残りの30%は一般上場株主だ。再編に際して3Gはカナダのパートナーシップ持分のみを受け取り、上場株主はパートナーシップ持分と持株会社の株式のどちらかを受け取っているようだ。投資の神様Warren BuffetのBerkshireはこのDealには現金$3Bをポンと出資しているが、Berkshireはパートナーシップ持分は受け取らず、持株会社の優先株式およびワラント債を受け取っている。Tim Hortonsの旧株主は持株会社の株式を受け取っている。なぜ米国のFund3Gと米国一般株主の一部のみがパートナーシップ持分を受け取ったんだろうか。想像できるのはSection 367の株主レベルの課税を3Gが嫌がり、パートナーシップへの出資とすればSection 351ではなく、Section 721となるのでSection 367に抵触しないということかも。で、かつ同じDeal Economicsとするためにパートナーシップそのものが実質、持株会社株式と同様の権利、流動性を持つような形態を編み出したような感じ。う~ん、Creative。こう言うのって後からストラクチャー見てああだ、こうだと分析するのは容易だけど、実際に考え付いて実行するのは大変な才能。ウォール街、弁護士事務所、Big-4のアドバイザー達は皆本当に頭がいい。国としてはその頭の良さをもっと何か本当にCreateする分野に使わせるような戦略が必要かも。
という訳で今日はBurger Kingでした。先週末と違い、天気もいいので意を決してWhopperバーガーでも食べに行こうかな、とも思ったけど、どうせCarb取るんだったらMidtownのイタリアンの方がいいかも。
Burger Kingは東京、Los Angeles, NYCのどこにもあって(香港にもあったかも)、もちろん看板とか良く見るけど、長~い間行った記憶がない。その昔、ハワイに遊びに行ったりした頃に偶然行ったかもしれないけど。Tim Hortonsに至ってはカナダでは相当有名で、NYCにも、しかもMidtownの行動・徒歩圏内にも店舗はあるみたいだけど、全く行ったことがないどころか、Inversionのニュースになるまで名前すら知らなかった。
Burger KingのInversionは、Burger Kingのお得意先のひとつが米国陸軍だったり、またBuffet Taxの俗称で知られる富裕層の増税を提唱して正義の見方っぽかったWarren BuffetのBerkshireが関与していたり、等の理由で多くのメディア批判に晒されていた。米国税務的な観点では2014年の財務省によるNoticeが出た直後のInversionだったので、「未だInversionは健在・・」という力強いメッセージという意味で意義深かった。
このInversion、基本的な流れはBurger KingがカナダのTim Hortonsを買収する際にカナダを頂点とするMNCグループに生まれ変わるという近年のVersion 5.0の典型と言えるが、パススルー主体を介在させたりかなり複雑な取引だったようだ。ウォールストリートジャーナルによるとInversion後、4年間で$300M近い節税となるというし、他のシンクタンックの試算ではメリットはそれどころではなく$1Bを超えるという報道もあった。だったら、合法的であればWarren Buffetだって誰だって十分に実行する価値のあるDealと言えるだろう。ただ、一方で、他のInversion同様、会社側が主張するように十分な事業目的が存在するから実行している訳で、メディアで揶揄されるようにタックスのみの目的ではないのはその通りだろう。これは全てのInversionに共通で、製薬業界にInversionが多いのも、彼らが他業界よりGreedyとか言う問題ではなく、厳しい国際競争、米国外に存在する大きなマーケット、行政・保険会社からのコストカットの強いプレッシャー、等、企業側から見て構造的に不利な状況では事業運営すらままならないという死活問題が背景にある。
企業側はグローバル競争で勝ち残るのに必死だし、海外マーケットの比重が高く、他国の競争相手がより有利な税務環境で戦っていたら、Inversionを成功させるのはオプションではなくMustとなるだろう。米国議会、財務省、大統領、揃ってInversionする企業、経営者を非国民みたいに言うけれど、企業側から見れば、そんなに言うんだったら早く使い勝手のいいもっとマシな法人税法にアップデートして下さい、という立場となる。議会に至ってはCTB規定の海外2nd Tier主体への適用とかに網を掛ける法改正の機会がありながら何も行動せず、そのくせAppleの社長とか呼び出して、尋問したりと余りに無責任(?)。「Inversionはいけません」でも「国際競争力を殺ぐ最悪かつ常軌を逸する難解な税法は当面ポリティカルに改訂はないので、しっかり準拠して下さいね」という2つが並行して国のメッセージだとすれば、米国MNCは国際競争で苦戦を強いられるしか選択肢がないこととなる。
で、Burger Kingだけど、Tim Hortons買収後は、カナダに新規に設立されるNew Red Canada Partnershipという事業体の子会社となる。このパートナーシップがBurger Kingをお馴染みのReverse Sub Merger手法で株式取得し、カナダには英国法の流れでMerger法がない(?)らしいことから、英連邦ではやはりお馴染みのAmalgamation(Armageddonと間違えないようにね)でTim Hortonsを子会社化する。ここで、なんでパートナーシップ?って不思議に思った方は問題意識がきちんとあり、Issue Spottingで黄色帯(白帯のひとつ上・・)合格だ。Version 5.0の典型的なInversionでは統合後の持株会社は米国外の上場株式会社となるのが通常だからだ。さらに複雑なのは、このパートナーシップの上にカナダ法人の上場持株会社が介在している点だ。しかも、パートナーシップ持分が、Upper Tierの持株会社と同じ配当、議決権も持ち、こちらも上場されている。すなわち、Lower Tierのパートナーシップ、Upper Tierの持株会社の双方が上場企業の形を取っていて、またパートナーシップ持分は1年後に持株会社の株式に転換可能となっている。
随分と複雑はストラクチャーだけど、誰がどの持分を受け取ったかっていう点を良く見てみると何となく謎が解けるような気もしてくる。取引の詳細、実際のところはベールに包まれているのであくまでも推測だけど。Burger Kingは3G Capitalって言うFund(ブラジル系?)が70%所有していて、残りの30%は一般上場株主だ。再編に際して3Gはカナダのパートナーシップ持分のみを受け取り、上場株主はパートナーシップ持分と持株会社の株式のどちらかを受け取っているようだ。投資の神様Warren BuffetのBerkshireはこのDealには現金$3Bをポンと出資しているが、Berkshireはパートナーシップ持分は受け取らず、持株会社の優先株式およびワラント債を受け取っている。Tim Hortonsの旧株主は持株会社の株式を受け取っている。なぜ米国のFund3Gと米国一般株主の一部のみがパートナーシップ持分を受け取ったんだろうか。想像できるのはSection 367の株主レベルの課税を3Gが嫌がり、パートナーシップへの出資とすればSection 351ではなく、Section 721となるのでSection 367に抵触しないということかも。で、かつ同じDeal Economicsとするためにパートナーシップそのものが実質、持株会社株式と同様の権利、流動性を持つような形態を編み出したような感じ。う~ん、Creative。こう言うのって後からストラクチャー見てああだ、こうだと分析するのは容易だけど、実際に考え付いて実行するのは大変な才能。ウォール街、弁護士事務所、Big-4のアドバイザー達は皆本当に頭がいい。国としてはその頭の良さをもっと何か本当にCreateする分野に使わせるような戦略が必要かも。
という訳で今日はBurger Kingでした。先週末と違い、天気もいいので意を決してWhopperバーガーでも食べに行こうかな、とも思ったけど、どうせCarb取るんだったらMidtownのイタリアンの方がいいかも。
Sunday, May 1, 2016
Inversion/インバージョン(21)「Inversion規則とアーニングス・ストリッピング対策」
4月4日に財務省は気合いが入りまくったInversion規則を発表したが、それから数週間経った現在、もっぱらの関心はInversionそのものを難しくした暫定規則の部分よりも、アーニングス・ストリッピングに網を掛ける目的で併設された過少資本税制にかかわる規則案に集まっている。
それもそのはずで、Inversion規則の一環で発表しておきながら、アーニングス・ストリッピング規則案の適用はInversionした事業主体に限定されず、日本企業の米国事業を含む「全納税者」に適用となっているからだ。しかも、規則案の内容が従来の過少資本税制のあり方を大きく逸脱しているというか、手段を選ばずというか、かなり乱暴で、かつ借入が資本とみなされる際の二次的な影響についてDeepに検証した上で公表しているのかどうか疑問もあり、財務の基本であるCash Poolingが実質不可能になる懸念があるなど、適用に実務上の困難が多過ぎ、話題に事欠かないからだ。当然、大きな反響(反発?)を巻き起こしている。
余りの反響に、当初「Inversion関係の一連の規則は早々に、夏にも最終化する」と宣言して勢い付いていた財務省も、ここに来て若干トーンダウンの観は否めない。そんな現実を受けて、先日財務省はSection 7874と385の規則を各々別に最終化することも辞さないと発言し、せめて「Section 7874部分の暫定規則のみ早期に最終化」という流れが現実的なところとなりつつある。Section 385のアーニングス・ストリッピング部分は今年中に最終化できるかどうかも不明な状況だと言えるだろう。多くのコメントがLaw Firm、Accounting Firm、Business Communities、Academic界から寄せられるだろうし、最終化するにしてもそれ相当の手直しまたは適用範囲、定義の明確化が必要に見える(というか手直ししてもらわないと困る?)。でも今年は大統領選挙。ということは規則を早く最終化しないと大統領、そしてそれと付随的に財務省幹部も新チームに変わってしまうことから、規則自体の運命が不明となる。この夏、目が離せない話題の一つだ。
そんな不透明な環境の中、Inversionを済ませているMNC、または最初から外国に所有されているMNCは今から規則最終化までのこの貴重な期間を「もしかしたらEarnings Stripping最後のチャンス」と位置づけ、早速想定されるシナリオに基づきプラニングを開始している。もちろん日本企業以外の話しだ。2004年に日米租税条約が改定され配当に対する源泉税がゼロとなり、さらに2009年には日本で海外子会社からの配当が実質非課税になった時点で規則案がターゲットとしている「Leveraged Dividend」等の実行の機は熟していたが、実行された形跡は余り無く、現時点で駆け込み的に実行する気配もない。規則がこのまま最終化されると1956年のKraftケース以降、外国MNCが米国投資の際に当然のように再三利用してきたLeveraged Dividendが米国から消滅してしまうかもしれず、またしても何もする前に一つの時代が終ってしまうかも。他国のMNCを見ていると、例えば、今、大きな関連会社ローンを米国が借りておけば、Funding規定の36ヶ月の縛りが解ける日が早く来る、というロジカルだが中々思いつかない発想があったりして、相変わらず法律事務所、大手会計事務所、ウォール街等のアドバイザーたちの復活力の早さには舌を巻く。
Leveraged Dividendは外国の親会社に所有されているMNCの米国法人が利用するケースが一般的と思われがちだが、実は米国MNCにも有用だ。例えば、米国親会社がCFC1を持ち、その下に更にCFC2を持っているとする。CFC2にはE&Pがあるが、CFC1にE&PがないタイミングでCFC 1から米国親会社にLeveraged Dividendを実行する(米国親会社のCFC1に対する税務簿価の範囲内で)。E&Pがないので米国では配当課税がない。その後、CFC2がCFC1に分配するとCFC1にE&Pが発生するが、CFC1はそれを原資に米国親会社からの「借入」を返済する形を取ることができる。すなわち、米国側ではCFC1のE&Pに基づく配当所得を認識することなく、現金を米国に還流することが可能となる。
アーニングス・ストリッピング規則案内容に関しては前回まで複数回触れているので、重複する部分は避けるが、日本企業的には「文書化」の部分は早速対応策の検討が必要だろう。ここの部分は規則案の前文にも書いてある通り、従来からも用意しておくべきものなので、「Reminder」的な意味もあるが、文書化が強制されるためにより真面目な対応が必要となる。規則案が最終化される際に変更が加えられるとしても文書化のところはそのまま残ると考えられ、そもそも財務省としては現時点でも用意されているべきものとの認識であることを考えると、規則の施行日以前でも対応は早い方がいい。規則案で勢い付いたIRS調査官がフライング気味に関連者間ローンにかかわる文書化を要求してくるような状況も現行法下でも十分に想定可能だ。
この文書化、余り役に立たない小額免除的な例外が規定されており、一定規模、条件のグループにのみ適用とされる。すなわち文書化の対象となるのは、Expanded Groupの中の最低一社(日本親会社を含む)でも上場されている場合、財務諸表に報告される総資産額が$100 millionを超える場合、または総収入が$50 millionを超える場合、となる。
以前にも触れたが、従来の過少資本税制の考え方は、個々のケースで多くの判断材料を総合的に検討して、債券・金融持分が税務上、株式と位置づける方が適切なのかどうかを決定するというものだった。判断材料としては、当事者によるレッテル、満期日の有無、返済原資、債権者に付与される法的な権利、他の債権者との返済優先順位、借入資本比率、第三者からの調達能力、等いろいろとあるが、何一つをもって決定打になるという性格の分析ではなく、個々のケースに照らし合わせる典型的なFacts and Circumstancesテストというものだった。この中でも鍵となるのは、借り入れ時点での返済能力有無の判断で、ここの部分の文書化は今後ますます徹底が必要となる。規則案でもこの部分は基本的に従来通りだが、この観点からローンであると認められても、その使途次第では株式になってしまう。規則案の凄いところはこの文書化を関連者間ローンが借入と認められる「必要条件」と位置づけている点だ(もちろん十分条件ではない)。すなわち、実際にローンの性格を十分に備えていても(例えばDebt/Equity Raitoが1/9のようなケース)でも文書化がないと株式になってしまう。文書化がされている場合には、最初のハードルは超えられるが、その内容が正当かどうかはIRSが調査時に検討するので、移転価格同様、文書化されていても必ず認められるというものではない。
返済能力の有無に基づく過少資本の判断(およびそれをサポートするための文書化)そのものは、判例を含む既存の法律の考え方から乖離はない。今回の規則案では、それだけでは飽き足らず、経済的な実態として借入と認められても、更に以前のポスティング「Inversion (20)」で触れた邪な用途の(または前後6年間の反証不可能な推定規定に基づき用途が事実認定される)場合には、借入が株式になってしまうという凄い結果が待っている。当初はローンだと考えていた債券・金融持分がある日、株式と取り扱われるようなケースがあり得るが、その場合には、ローンは株式とその時点の簿価で交換されたと扱われる。
この規定は過少資本ではなく、どちらかと言うと租税回避行為に対抗する「Anti-Avoidance」となり、Section 385でそこまでの権限を財務省に与えているかどうかという点はかなり際どい。特に前後6年間の反証不可の推定規定は厳しいし、多くの貸し借りが存在する局面での実務的な適用は負荷が重い。この推定規定の例外として、たな卸し資産の取得にかかわる買掛金、通常の経費支払いにかかわる未払金、が設けられているが、例外としては範囲が狭い。
上述の例外は6年間の反証にかかわる部分だが、借入を使途に基づき株式とする規定そのものにもいくつか重要な例外が規定されている。まず、当期の配当原資(Current E&P)からの配当はLeveraged Dividendでも問題ないとされる。ということは毎年Current E&Pの範囲でLeveraged Dividendを行なえば「地道(?)」にEarnings Strippingが可能となる。また、さらにCurrent E&Pを超えても、用途制限に引っかかる関連者ローンの総額が$50 millionを超えない場合も、使途に基づいてローンが株式となることはない(文書化は、文書化の例外に当てはまらない限り別途必要)。この$50 millionの例外規定適用時の注意事項としては、一旦総額が$50 millionを超えると、その$50 millionを含む全額が使途に基づく株式認定の対象となるという点だ。また関連会社の株式取得に関しては、実際に出資を行い、その後3年間一定の持分を継続している場合には、邪な使途とはならないとされる。それはそうだろう。でないと本当にグループ子会社等に出資する毎に、グループ間ローンが株式に変わってしまうというとんでもない結果となってしまうからだ。
このように発行数週間で、問題続出のSection 385規則案。税法全体、実務的な適用、影響を熟考して発行された感じがしない。もしかしたら財務省も全ての影響を考えるのは不可能なので、取りあえず規則案を出し、業界からの反応を見て「こういう予期せぬ問題もあったか・・」みたいな対応を考えていたのだろうか。その意味ではベータバージョンだったのかも。会社法その他の目的ではローンであり続けるものを税務上全ての目的で株式とする、という扱いは例外的なケースでは仕方がないかもしれないけど、規則案に基づいてメカニカルに適用されると債権者なのか株主なのか混乱が生じる。配当がDRDの対象となるかどうかとか(RR 94-28 の世界)。
という訳で余りにインパクトの大きなInversion規則ではないInversion規則案の話しでした。Section 385は今後も進展がある都度触れていきたい。次回は本道のInversionに戻り、そろそろInversionはWrap-Upかな、という感じ。今日のNYCはMaroon 5じゃないけど「Sunday Morning Rain is Falling」で、しっとり濃い目の紅茶にミルクを入れて一口、みたいないい感じの春の一日の始まりでした。BackgroundはWorkshyで。
それもそのはずで、Inversion規則の一環で発表しておきながら、アーニングス・ストリッピング規則案の適用はInversionした事業主体に限定されず、日本企業の米国事業を含む「全納税者」に適用となっているからだ。しかも、規則案の内容が従来の過少資本税制のあり方を大きく逸脱しているというか、手段を選ばずというか、かなり乱暴で、かつ借入が資本とみなされる際の二次的な影響についてDeepに検証した上で公表しているのかどうか疑問もあり、財務の基本であるCash Poolingが実質不可能になる懸念があるなど、適用に実務上の困難が多過ぎ、話題に事欠かないからだ。当然、大きな反響(反発?)を巻き起こしている。
余りの反響に、当初「Inversion関係の一連の規則は早々に、夏にも最終化する」と宣言して勢い付いていた財務省も、ここに来て若干トーンダウンの観は否めない。そんな現実を受けて、先日財務省はSection 7874と385の規則を各々別に最終化することも辞さないと発言し、せめて「Section 7874部分の暫定規則のみ早期に最終化」という流れが現実的なところとなりつつある。Section 385のアーニングス・ストリッピング部分は今年中に最終化できるかどうかも不明な状況だと言えるだろう。多くのコメントがLaw Firm、Accounting Firm、Business Communities、Academic界から寄せられるだろうし、最終化するにしてもそれ相当の手直しまたは適用範囲、定義の明確化が必要に見える(というか手直ししてもらわないと困る?)。でも今年は大統領選挙。ということは規則を早く最終化しないと大統領、そしてそれと付随的に財務省幹部も新チームに変わってしまうことから、規則自体の運命が不明となる。この夏、目が離せない話題の一つだ。
そんな不透明な環境の中、Inversionを済ませているMNC、または最初から外国に所有されているMNCは今から規則最終化までのこの貴重な期間を「もしかしたらEarnings Stripping最後のチャンス」と位置づけ、早速想定されるシナリオに基づきプラニングを開始している。もちろん日本企業以外の話しだ。2004年に日米租税条約が改定され配当に対する源泉税がゼロとなり、さらに2009年には日本で海外子会社からの配当が実質非課税になった時点で規則案がターゲットとしている「Leveraged Dividend」等の実行の機は熟していたが、実行された形跡は余り無く、現時点で駆け込み的に実行する気配もない。規則がこのまま最終化されると1956年のKraftケース以降、外国MNCが米国投資の際に当然のように再三利用してきたLeveraged Dividendが米国から消滅してしまうかもしれず、またしても何もする前に一つの時代が終ってしまうかも。他国のMNCを見ていると、例えば、今、大きな関連会社ローンを米国が借りておけば、Funding規定の36ヶ月の縛りが解ける日が早く来る、というロジカルだが中々思いつかない発想があったりして、相変わらず法律事務所、大手会計事務所、ウォール街等のアドバイザーたちの復活力の早さには舌を巻く。
Leveraged Dividendは外国の親会社に所有されているMNCの米国法人が利用するケースが一般的と思われがちだが、実は米国MNCにも有用だ。例えば、米国親会社がCFC1を持ち、その下に更にCFC2を持っているとする。CFC2にはE&Pがあるが、CFC1にE&PがないタイミングでCFC 1から米国親会社にLeveraged Dividendを実行する(米国親会社のCFC1に対する税務簿価の範囲内で)。E&Pがないので米国では配当課税がない。その後、CFC2がCFC1に分配するとCFC1にE&Pが発生するが、CFC1はそれを原資に米国親会社からの「借入」を返済する形を取ることができる。すなわち、米国側ではCFC1のE&Pに基づく配当所得を認識することなく、現金を米国に還流することが可能となる。
アーニングス・ストリッピング規則案内容に関しては前回まで複数回触れているので、重複する部分は避けるが、日本企業的には「文書化」の部分は早速対応策の検討が必要だろう。ここの部分は規則案の前文にも書いてある通り、従来からも用意しておくべきものなので、「Reminder」的な意味もあるが、文書化が強制されるためにより真面目な対応が必要となる。規則案が最終化される際に変更が加えられるとしても文書化のところはそのまま残ると考えられ、そもそも財務省としては現時点でも用意されているべきものとの認識であることを考えると、規則の施行日以前でも対応は早い方がいい。規則案で勢い付いたIRS調査官がフライング気味に関連者間ローンにかかわる文書化を要求してくるような状況も現行法下でも十分に想定可能だ。
この文書化、余り役に立たない小額免除的な例外が規定されており、一定規模、条件のグループにのみ適用とされる。すなわち文書化の対象となるのは、Expanded Groupの中の最低一社(日本親会社を含む)でも上場されている場合、財務諸表に報告される総資産額が$100 millionを超える場合、または総収入が$50 millionを超える場合、となる。
以前にも触れたが、従来の過少資本税制の考え方は、個々のケースで多くの判断材料を総合的に検討して、債券・金融持分が税務上、株式と位置づける方が適切なのかどうかを決定するというものだった。判断材料としては、当事者によるレッテル、満期日の有無、返済原資、債権者に付与される法的な権利、他の債権者との返済優先順位、借入資本比率、第三者からの調達能力、等いろいろとあるが、何一つをもって決定打になるという性格の分析ではなく、個々のケースに照らし合わせる典型的なFacts and Circumstancesテストというものだった。この中でも鍵となるのは、借り入れ時点での返済能力有無の判断で、ここの部分の文書化は今後ますます徹底が必要となる。規則案でもこの部分は基本的に従来通りだが、この観点からローンであると認められても、その使途次第では株式になってしまう。規則案の凄いところはこの文書化を関連者間ローンが借入と認められる「必要条件」と位置づけている点だ(もちろん十分条件ではない)。すなわち、実際にローンの性格を十分に備えていても(例えばDebt/Equity Raitoが1/9のようなケース)でも文書化がないと株式になってしまう。文書化がされている場合には、最初のハードルは超えられるが、その内容が正当かどうかはIRSが調査時に検討するので、移転価格同様、文書化されていても必ず認められるというものではない。
返済能力の有無に基づく過少資本の判断(およびそれをサポートするための文書化)そのものは、判例を含む既存の法律の考え方から乖離はない。今回の規則案では、それだけでは飽き足らず、経済的な実態として借入と認められても、更に以前のポスティング「Inversion (20)」で触れた邪な用途の(または前後6年間の反証不可能な推定規定に基づき用途が事実認定される)場合には、借入が株式になってしまうという凄い結果が待っている。当初はローンだと考えていた債券・金融持分がある日、株式と取り扱われるようなケースがあり得るが、その場合には、ローンは株式とその時点の簿価で交換されたと扱われる。
この規定は過少資本ではなく、どちらかと言うと租税回避行為に対抗する「Anti-Avoidance」となり、Section 385でそこまでの権限を財務省に与えているかどうかという点はかなり際どい。特に前後6年間の反証不可の推定規定は厳しいし、多くの貸し借りが存在する局面での実務的な適用は負荷が重い。この推定規定の例外として、たな卸し資産の取得にかかわる買掛金、通常の経費支払いにかかわる未払金、が設けられているが、例外としては範囲が狭い。
上述の例外は6年間の反証にかかわる部分だが、借入を使途に基づき株式とする規定そのものにもいくつか重要な例外が規定されている。まず、当期の配当原資(Current E&P)からの配当はLeveraged Dividendでも問題ないとされる。ということは毎年Current E&Pの範囲でLeveraged Dividendを行なえば「地道(?)」にEarnings Strippingが可能となる。また、さらにCurrent E&Pを超えても、用途制限に引っかかる関連者ローンの総額が$50 millionを超えない場合も、使途に基づいてローンが株式となることはない(文書化は、文書化の例外に当てはまらない限り別途必要)。この$50 millionの例外規定適用時の注意事項としては、一旦総額が$50 millionを超えると、その$50 millionを含む全額が使途に基づく株式認定の対象となるという点だ。また関連会社の株式取得に関しては、実際に出資を行い、その後3年間一定の持分を継続している場合には、邪な使途とはならないとされる。それはそうだろう。でないと本当にグループ子会社等に出資する毎に、グループ間ローンが株式に変わってしまうというとんでもない結果となってしまうからだ。
このように発行数週間で、問題続出のSection 385規則案。税法全体、実務的な適用、影響を熟考して発行された感じがしない。もしかしたら財務省も全ての影響を考えるのは不可能なので、取りあえず規則案を出し、業界からの反応を見て「こういう予期せぬ問題もあったか・・」みたいな対応を考えていたのだろうか。その意味ではベータバージョンだったのかも。会社法その他の目的ではローンであり続けるものを税務上全ての目的で株式とする、という扱いは例外的なケースでは仕方がないかもしれないけど、規則案に基づいてメカニカルに適用されると債権者なのか株主なのか混乱が生じる。配当がDRDの対象となるかどうかとか(RR 94-28 の世界)。
という訳で余りにインパクトの大きなInversion規則ではないInversion規則案の話しでした。Section 385は今後も進展がある都度触れていきたい。次回は本道のInversionに戻り、そろそろInversionはWrap-Upかな、という感じ。今日のNYCはMaroon 5じゃないけど「Sunday Morning Rain is Falling」で、しっとり濃い目の紅茶にミルクを入れて一口、みたいないい感じの春の一日の始まりでした。BackgroundはWorkshyで。
Sunday, April 10, 2016
Inversion/インバージョン(20)「Inversion規則とアーニングス・ストリッピング対策」
財務省が抜き打ち的に発行したInversion規則。その中に含まれたSection 385の規則案は、長らくDefunct状態で眠っていたSection 385の叩き起こす十分なパワーを持っている。
従来の過少資本に対する米国のアプローチおよびその対策は「第三者だったら貸してくれたか?」という分析を数量的にサポートしておくことが最重要課題だった。すなわち、将来のネットキャッシュインフローを基に元利払いができるのか、キャッシュフローのタイミングにミスマッチはないか、万一不測の事態に陥った際に十分なEquityクッションがあるか、代替のファイナンスソースはあるか、等の分析サポートを文書化しておくことが大切だった。一旦、借り入れ能力ありと判断される場合には、借入金の使途目的は過少資本税制の関知するところではなかった。
今回の規則案では、この考え方を根本から覆し、仮に借入能力がある場合でも、その使途が財務省が考えるところの邪(よこしま)というか不純な動機に基づくものは、ローンではなく株式にしてしまうというかなり乱暴なもの。これは過少資本税制というよりもEarnings Strippingに対する牽制だ。もちろん、借入能力がない場合にはアーニングス・ストリッピング以前の問題として、本来の過少資本税制の考え方で株式扱いとなるが、それは従来からもそうだ(現在でもまずはSection 385でローンとなって初めてSection 163を検討する必要が生じる)。その意味では規則案はSection 385のスコープを逸脱しているようにも見え、そのせいか、行政機関である財務省が三権分立に基づき(すなわちSection 385で財務省に与えられている権限に基づき)、なぜこのような規則案を制定できるかという点を規則案の前文で冗長と思えるほど延々と説明している。Section 7874ポーションもそうだけど、前文でなぜ財務省にこのような権限があるかという説明が長ければ長い程、その権限は怪しいと見るのが常識だ。
前回の「Inversion(19)」で触れたが、Section 385の条文そのもので財務省が与えられている権限(Section 385の最初のパートと2番目のパート)を読んでみると、使途目的に基づく規制はスコープに入っていないように見える。ということは三権分立に反する違憲行為?でも、もし仮に憲法違反だとしても、この扱いで実際に被害にあい(でないと訴訟当事者適格(Standing)がない)、それをDistrict Court(またはTax Court)、Circuit Court、場合によっては最高裁まで持ち込むのは10年以上のプロセスとなり、現時点では財務省規則に従わざるを得ない。
で、財務省は次の3つの使途を動機不純と考えた。基本的に資本取引っぽい取引3つだけど、1)関連親会社に配当をローン・手形で行うようなLeveraged Dividend、2)Section 304となる関連会社間の株式譲渡の対価をローン・手形で支払うこと、3)グループ内再編を資産譲渡の形で実行する際に対価をローン・手形で支払うこと、だ。これらの取引は財務省が考えるに、バランスシートの資本を借入にすり替えるために濫用されており、ローンではなく株式と扱うと宣言されている。Leveraged Dividendはかなり一般的なEarnings Stripping法で、従来は問題なく認められていた取引なのでここに来て完全な方向転換と言える。日米租税条約がそうであるように近年、親子間の配当に対する源泉税がゼロ%と規定されるケースがあるが、これは個人的にはLeveraged Dividendを自由にやって下さい、というお墨付きメッセージが込められているのかと勘違いしていたが(そんな訳ないか・・?)、やっぱり決してそんな訳ではなかったようだ。
さらに、実際にローン・手形を対価としてこれらの取引を実行するのと同様の懸念が、実際には現金等の資産を対価に使っているが、それを関連者間ローンでファイナンスしてい場合にも存在するとしている(それはその通り)。これがいわゆる「Funding Rule」と規定されているものだ。すなわち、関連者間ローンの主たる目的が上の3つの取引と認定される場合にはそのローンは株式扱いとなる。ローンと動機不純な取引に紐付きの関係があるかどうかの判断は個々のケースの事実関係に基づくと一義的には規定されているが、この主観的判断に加えて「動機不純取引実行の前後各々36ヶ月以内に起こった関連者間ローンは全て問題となる取引目的であった」とする推定規定を設けている。通常の推定規定(Presumption)は納税者側で事実関係を基に反証できる(Rebuttable)タイプが多いが、今回の推定はナンと「Irrebuttable(=反証不可)」、すなわちStrict Liability的な厳しいものとなっている。前後各々36ヶ月って言えば足掛け6年(!)だ。そんな長い期間に亘りTaintされるとなるとこの関係を切り離すのは容易なことではない。いくらお金に色はないとは言え・・。極めて些細な例外規定として、グループ内の通常業務内の買掛金とか未払金は関連者間ローンには含まないとされる。ただし、キャッシュプール等の財務サービスはその範疇ではないので、それらのシステムに基づくローンはFunding Ruleの対象となる。
結構とんでもないルールな感じ。もしかすると何の悪気もない日本企業もただ配当しただけで関連者間ローンが株式に変わってしまうようなリスクがあるようにも見える。それは酷い。こんなルールは今まで散々Leveraged Dividendとか濫用しまくってたMNCだけを対象にして欲しい。でもこれが悲しいかなグローバルスタンダード。外国では当たり前のことを日本流に異なる切り口で良かれと思ってやっていると、恩典を享受していないのにペナルティーだけは受けるような理不尽な結果となり得る。OECDのBEPSもまさにそのパターン。という訳で次回ももう少し新規則、特にアーニングス・ストリッピングの規則案に関して。
従来の過少資本に対する米国のアプローチおよびその対策は「第三者だったら貸してくれたか?」という分析を数量的にサポートしておくことが最重要課題だった。すなわち、将来のネットキャッシュインフローを基に元利払いができるのか、キャッシュフローのタイミングにミスマッチはないか、万一不測の事態に陥った際に十分なEquityクッションがあるか、代替のファイナンスソースはあるか、等の分析サポートを文書化しておくことが大切だった。一旦、借り入れ能力ありと判断される場合には、借入金の使途目的は過少資本税制の関知するところではなかった。
今回の規則案では、この考え方を根本から覆し、仮に借入能力がある場合でも、その使途が財務省が考えるところの邪(よこしま)というか不純な動機に基づくものは、ローンではなく株式にしてしまうというかなり乱暴なもの。これは過少資本税制というよりもEarnings Strippingに対する牽制だ。もちろん、借入能力がない場合にはアーニングス・ストリッピング以前の問題として、本来の過少資本税制の考え方で株式扱いとなるが、それは従来からもそうだ(現在でもまずはSection 385でローンとなって初めてSection 163を検討する必要が生じる)。その意味では規則案はSection 385のスコープを逸脱しているようにも見え、そのせいか、行政機関である財務省が三権分立に基づき(すなわちSection 385で財務省に与えられている権限に基づき)、なぜこのような規則案を制定できるかという点を規則案の前文で冗長と思えるほど延々と説明している。Section 7874ポーションもそうだけど、前文でなぜ財務省にこのような権限があるかという説明が長ければ長い程、その権限は怪しいと見るのが常識だ。
前回の「Inversion(19)」で触れたが、Section 385の条文そのもので財務省が与えられている権限(Section 385の最初のパートと2番目のパート)を読んでみると、使途目的に基づく規制はスコープに入っていないように見える。ということは三権分立に反する違憲行為?でも、もし仮に憲法違反だとしても、この扱いで実際に被害にあい(でないと訴訟当事者適格(Standing)がない)、それをDistrict Court(またはTax Court)、Circuit Court、場合によっては最高裁まで持ち込むのは10年以上のプロセスとなり、現時点では財務省規則に従わざるを得ない。
で、財務省は次の3つの使途を動機不純と考えた。基本的に資本取引っぽい取引3つだけど、1)関連親会社に配当をローン・手形で行うようなLeveraged Dividend、2)Section 304となる関連会社間の株式譲渡の対価をローン・手形で支払うこと、3)グループ内再編を資産譲渡の形で実行する際に対価をローン・手形で支払うこと、だ。これらの取引は財務省が考えるに、バランスシートの資本を借入にすり替えるために濫用されており、ローンではなく株式と扱うと宣言されている。Leveraged Dividendはかなり一般的なEarnings Stripping法で、従来は問題なく認められていた取引なのでここに来て完全な方向転換と言える。日米租税条約がそうであるように近年、親子間の配当に対する源泉税がゼロ%と規定されるケースがあるが、これは個人的にはLeveraged Dividendを自由にやって下さい、というお墨付きメッセージが込められているのかと勘違いしていたが(そんな訳ないか・・?)、やっぱり決してそんな訳ではなかったようだ。
さらに、実際にローン・手形を対価としてこれらの取引を実行するのと同様の懸念が、実際には現金等の資産を対価に使っているが、それを関連者間ローンでファイナンスしてい場合にも存在するとしている(それはその通り)。これがいわゆる「Funding Rule」と規定されているものだ。すなわち、関連者間ローンの主たる目的が上の3つの取引と認定される場合にはそのローンは株式扱いとなる。ローンと動機不純な取引に紐付きの関係があるかどうかの判断は個々のケースの事実関係に基づくと一義的には規定されているが、この主観的判断に加えて「動機不純取引実行の前後各々36ヶ月以内に起こった関連者間ローンは全て問題となる取引目的であった」とする推定規定を設けている。通常の推定規定(Presumption)は納税者側で事実関係を基に反証できる(Rebuttable)タイプが多いが、今回の推定はナンと「Irrebuttable(=反証不可)」、すなわちStrict Liability的な厳しいものとなっている。前後各々36ヶ月って言えば足掛け6年(!)だ。そんな長い期間に亘りTaintされるとなるとこの関係を切り離すのは容易なことではない。いくらお金に色はないとは言え・・。極めて些細な例外規定として、グループ内の通常業務内の買掛金とか未払金は関連者間ローンには含まないとされる。ただし、キャッシュプール等の財務サービスはその範疇ではないので、それらのシステムに基づくローンはFunding Ruleの対象となる。
結構とんでもないルールな感じ。もしかすると何の悪気もない日本企業もただ配当しただけで関連者間ローンが株式に変わってしまうようなリスクがあるようにも見える。それは酷い。こんなルールは今まで散々Leveraged Dividendとか濫用しまくってたMNCだけを対象にして欲しい。でもこれが悲しいかなグローバルスタンダード。外国では当たり前のことを日本流に異なる切り口で良かれと思ってやっていると、恩典を享受していないのにペナルティーだけは受けるような理不尽な結果となり得る。OECDのBEPSもまさにそのパターン。という訳で次回ももう少し新規則、特にアーニングス・ストリッピングの規則案に関して。
Saturday, April 9, 2016
Inversion/インバージョン(19)「Inversion規則とアーニングス・ストリッピング対策」
Inversion(19)「Inversion規則とアーニングス・ストリッピング対策」
財務省が抜き打ち的に発行したInversion規則。Inversionのストラクチャーをアタックしている部分も強烈な内容だったけど、Earnings Strippingに対するProposed規則(規則案)も多くの納税者を不意打ちしている。
前回も触れたが、この規則案は過少資本税制を取り締まるSection 385下で規定されている点も興味深い。規則案は一定の条件に抵触する関連者間ローンは税務上は「株式(Stock)」として扱うと規定している。これはSection 385の趣旨そのもの。また、歴史的に一本のローンを部分的に株式にみなしたりすることは少なかったが、規則案ではわざわざひとつのローンでも部分的に株式とみなす権限をIRSに与えている。この「部分」調整は1989年にSection 385自体にもその旨が追加されているが、本格的にIRSとしてそのコンセプトを税務調査時に適用してくることになる。さらに、関連者間ローンに関しては返済能力等を分析した同時文書化が義務付けられる。この文書化はある程度の規模の関連者間ローン(特にクロスボーダーのもの)に関しては従来からいずれにしてもリスクマネージメントの一環で必ず用意しておくべき「Debt Capacity Report」で、今まではいろんな口実で文書化を避けていた納税者も、いよいよ必要な作業となる。
税法の条文Section 385自体は3つのパートから成るが、全体の目的は一定の条件下でローン(Indebtednessというのが正式用語なのでローンより広義な気がするが、日本語でIndebtednessと言ってもピンと来ないような気もするので敢えてローンという用語で統一しておく)を株式と扱うというものだ。これはすなわち過少資本税制だ。関連者の保証ナシでArm’s-Length条件で金融機関等、第三者からローンを借り入れている場合にIRSがそれを株式とみなすことはあり得ないので、Section 385は基本的に関連者間ローン(または関連者保証のローン)に対する条項と考えていい。
Section 385の最初のパートはどのような条件下でローンを株式とみなすかという基準に関して財務省に規則を策定する権利を与え、2番目のパートはその規則には判断基準となる複数のファクター(例、D/E Ratioとか)を明記することとしている。したがってSection 385は条文そのものにローンを株式とみなす基準が規定されている訳ではなく、あくまでもそれらの策定を財務省に権限委譲しているもので、規則がないと機能しない形となっている。で、もちろん財務省は規則をその昔に発行したんだけど、広範な局面でローンと株式を区別する客観的な基準を策定するのは不可能に近く、散々なコメントに基づき結局は廃案となってしまった。その後、長い間Section 385下で規則が草案されることはなく、今日までSection 385は機能不全のまま存在していたことになる。1992年には3番目のパートとなる「納税者の債券発行時の位置づけ(ローンか株式か)を納税者側で後日変えることはできない」というもので、自分で株式だと言っておいて申告書上ローン扱いするような二枚舌を禁止するのだ。もちろんだけどIRS側は納税者の発行時の位置づけには束縛されないと規定されている。実際にはRepo取引を利用してクロスボーダーでEarnings Strippingするのは(日本以外のMNCでは)かなり一般的なので、この規定の正確な意味するところは表面的な文言よりも複雑だ。
通常、過少資本とかアーニングス・ストリッピングは「クロスボーダーの関連者間ローン」が問題視されるし、使う方としては鍵となる。高税率の米国からEarnings Strippingするのが納税者側の意図であるから、もちろん利息の受け手は米国外の低税率国(米国から見たら世界中他の国全てがそう)にある関連者ということになる。にもかかわらず規則案の前文には米国内の関連者間ローンにも同様の規定を適用すると言っている。ただ、現実には米国内でアーニングス・ストリッピングしてもゼロサム・ゲームだし、受け手にNOLでも溜まってない限り連邦上、問題とされることはないと言っていい。厳密に言えば、ユニタリー合算申告制度を採っていない州では州間の関連者間ローンとか、他の移転価格は潜在的に問題となるが、州税務当局側にそれらの調査を担当するノウハウが十分にあるとは思えないのが現状だ。一点、規則案には安全ガイドラインとして、連結納税グループ内のローンは今回の規則対象外とされている。それは当然だろう。連結納税グループ内では利息も相殺されて存在しない状況だから、アーニングス・ストリッピングは不可能でSection 385の出る幕は無い。
クロスボーダーの関連者間ローンを使ってのアーニングス・ストリッピングも必ずしも簡単なプラニングではなく、源泉税が租税条約で免除または低減されている相手国を選ばないといけないし、もっと欲を言えば相手国で課税されないケースを探すとか、いろいろと考えることがある。ちなみに過少資本税制と従来のアーニングス・ストリッピング規定(Section 163(j))は根本的にアプローチが異なり、過少資本に抵触するとローンが株式となってしまうので、支払利息は配当扱いとなり、損金算入のチャンスは永遠に失われる。一方、Section 163(j)下では、支払利息はその性格を否定されることなく、現金ベースのEBITAの50%を超える支払利息額は過度の損金としてその年度は否認されるが、利息のという性格のまま永遠に繰り越され、翌年以降にEBITAベースで吸収できるタイミングで損金算入される。
今回の規則案は基本的に「関連者」間ローンにのみ適用される。したがってどのローンが関連者間のものと扱われるかの判断は最重要検討事項だ。上述の通り、純粋な第三者からのローンに関しては、借りることができたという事実をもってローンの性格を証明しているようなもので、濫用の懸念は無い。
規則案では「Expanded Group」間のローンを関連者間ローンとすると規定している。税法には関連者の定義は複数あり、どのSectionの話しなのかよく見極めないと勘違いしてしまう局面がある。すなわち、Section 267、368(c)、482、1504、1563等、状況により関連者やControlの基準が微妙に異なる。Section 365規則案で言うところの「Expanded Group」はSpinversionのところで触れたEAGにも似てるけど、基本的には連結納税グループの定義を借りている。その上で、連結納税グループには入れない外国法人、Tax-Exempt、パススルーも定義に加え、みなし持分を加味して持分決定、さらに通常の連結納税グループの持分条件は80%の価値+議決権となるところを、価値「または」議決権と変更している。
このExpanded Group内でのローンが規則案が規定する一定条件に抵触すると株式扱いとなる。その条件は次回。
財務省が抜き打ち的に発行したInversion規則。Inversionのストラクチャーをアタックしている部分も強烈な内容だったけど、Earnings Strippingに対するProposed規則(規則案)も多くの納税者を不意打ちしている。
前回も触れたが、この規則案は過少資本税制を取り締まるSection 385下で規定されている点も興味深い。規則案は一定の条件に抵触する関連者間ローンは税務上は「株式(Stock)」として扱うと規定している。これはSection 385の趣旨そのもの。また、歴史的に一本のローンを部分的に株式にみなしたりすることは少なかったが、規則案ではわざわざひとつのローンでも部分的に株式とみなす権限をIRSに与えている。この「部分」調整は1989年にSection 385自体にもその旨が追加されているが、本格的にIRSとしてそのコンセプトを税務調査時に適用してくることになる。さらに、関連者間ローンに関しては返済能力等を分析した同時文書化が義務付けられる。この文書化はある程度の規模の関連者間ローン(特にクロスボーダーのもの)に関しては従来からいずれにしてもリスクマネージメントの一環で必ず用意しておくべき「Debt Capacity Report」で、今まではいろんな口実で文書化を避けていた納税者も、いよいよ必要な作業となる。
税法の条文Section 385自体は3つのパートから成るが、全体の目的は一定の条件下でローン(Indebtednessというのが正式用語なのでローンより広義な気がするが、日本語でIndebtednessと言ってもピンと来ないような気もするので敢えてローンという用語で統一しておく)を株式と扱うというものだ。これはすなわち過少資本税制だ。関連者の保証ナシでArm’s-Length条件で金融機関等、第三者からローンを借り入れている場合にIRSがそれを株式とみなすことはあり得ないので、Section 385は基本的に関連者間ローン(または関連者保証のローン)に対する条項と考えていい。
Section 385の最初のパートはどのような条件下でローンを株式とみなすかという基準に関して財務省に規則を策定する権利を与え、2番目のパートはその規則には判断基準となる複数のファクター(例、D/E Ratioとか)を明記することとしている。したがってSection 385は条文そのものにローンを株式とみなす基準が規定されている訳ではなく、あくまでもそれらの策定を財務省に権限委譲しているもので、規則がないと機能しない形となっている。で、もちろん財務省は規則をその昔に発行したんだけど、広範な局面でローンと株式を区別する客観的な基準を策定するのは不可能に近く、散々なコメントに基づき結局は廃案となってしまった。その後、長い間Section 385下で規則が草案されることはなく、今日までSection 385は機能不全のまま存在していたことになる。1992年には3番目のパートとなる「納税者の債券発行時の位置づけ(ローンか株式か)を納税者側で後日変えることはできない」というもので、自分で株式だと言っておいて申告書上ローン扱いするような二枚舌を禁止するのだ。もちろんだけどIRS側は納税者の発行時の位置づけには束縛されないと規定されている。実際にはRepo取引を利用してクロスボーダーでEarnings Strippingするのは(日本以外のMNCでは)かなり一般的なので、この規定の正確な意味するところは表面的な文言よりも複雑だ。
通常、過少資本とかアーニングス・ストリッピングは「クロスボーダーの関連者間ローン」が問題視されるし、使う方としては鍵となる。高税率の米国からEarnings Strippingするのが納税者側の意図であるから、もちろん利息の受け手は米国外の低税率国(米国から見たら世界中他の国全てがそう)にある関連者ということになる。にもかかわらず規則案の前文には米国内の関連者間ローンにも同様の規定を適用すると言っている。ただ、現実には米国内でアーニングス・ストリッピングしてもゼロサム・ゲームだし、受け手にNOLでも溜まってない限り連邦上、問題とされることはないと言っていい。厳密に言えば、ユニタリー合算申告制度を採っていない州では州間の関連者間ローンとか、他の移転価格は潜在的に問題となるが、州税務当局側にそれらの調査を担当するノウハウが十分にあるとは思えないのが現状だ。一点、規則案には安全ガイドラインとして、連結納税グループ内のローンは今回の規則対象外とされている。それは当然だろう。連結納税グループ内では利息も相殺されて存在しない状況だから、アーニングス・ストリッピングは不可能でSection 385の出る幕は無い。
クロスボーダーの関連者間ローンを使ってのアーニングス・ストリッピングも必ずしも簡単なプラニングではなく、源泉税が租税条約で免除または低減されている相手国を選ばないといけないし、もっと欲を言えば相手国で課税されないケースを探すとか、いろいろと考えることがある。ちなみに過少資本税制と従来のアーニングス・ストリッピング規定(Section 163(j))は根本的にアプローチが異なり、過少資本に抵触するとローンが株式となってしまうので、支払利息は配当扱いとなり、損金算入のチャンスは永遠に失われる。一方、Section 163(j)下では、支払利息はその性格を否定されることなく、現金ベースのEBITAの50%を超える支払利息額は過度の損金としてその年度は否認されるが、利息のという性格のまま永遠に繰り越され、翌年以降にEBITAベースで吸収できるタイミングで損金算入される。
今回の規則案は基本的に「関連者」間ローンにのみ適用される。したがってどのローンが関連者間のものと扱われるかの判断は最重要検討事項だ。上述の通り、純粋な第三者からのローンに関しては、借りることができたという事実をもってローンの性格を証明しているようなもので、濫用の懸念は無い。
規則案では「Expanded Group」間のローンを関連者間ローンとすると規定している。税法には関連者の定義は複数あり、どのSectionの話しなのかよく見極めないと勘違いしてしまう局面がある。すなわち、Section 267、368(c)、482、1504、1563等、状況により関連者やControlの基準が微妙に異なる。Section 365規則案で言うところの「Expanded Group」はSpinversionのところで触れたEAGにも似てるけど、基本的には連結納税グループの定義を借りている。その上で、連結納税グループには入れない外国法人、Tax-Exempt、パススルーも定義に加え、みなし持分を加味して持分決定、さらに通常の連結納税グループの持分条件は80%の価値+議決権となるところを、価値「または」議決権と変更している。
このExpanded Group内でのローンが規則案が規定する一定条件に抵触すると株式扱いとなる。その条件は次回。
Inversion/インバージョン(18)「Inversion規則とアーニングス・ストリッピング対策」
いくらルールを厳しくしても止むところを知らないInversionに対し、議会および財務省、特に近年は財務省がムキになって次々と規制を厳しくしてきた。1990年代から続く「イタチゴッコ」のような歴史は前回までのポスティングを読んでもらえればよく分かると思う。軽い気持ちで書き始めたInversion。当初は5~6回書けば終わるかな、と考えていたが、ナンと18回目に至り、まだ全然終わっていない。塩野七生のローマ人の物語には及ばないが(引き合いに出すこと自体が僭越)、あきっぽい僕としては珍しく長い。Inversionは一義的には税法の問題ではあるけど、今日の米国が直面する広範な問題を具現しているようなところがあるし、テクニカルにも超ディープなものがあるのでもう少し続ける。塩野先生と言えば、ローマ帝国もルビコン川を渡ったシーザーからアウグストス、そしてその後の歴代の皇帝と姿を変えて行き、もちろん最後は崩壊してしまったけど、その歴史から個人的には政府は小さい方がいいな、といつも感じてしまう。米国も賢者が過去の歴史、失敗から学び、素晴らしい憲法を制定してここまで来たけど、「Founding Fathers」が見たら嘆かわしく思うであろう今日の政局・・。
と話しが長くなる前にInversionに戻ろう。Inversionにかかわる財務省と米国MNCの関係を見ていると、ひとつ思い出す寓話がある。「北風と太陽」だ。知らない人はいないと思うけど、北風と太陽が旅人のコートを脱がせるという力比べをするアレだ。北風という財務省が規制を思いっきり厳しく吹きつけると米国MNCという旅人はInversionというコートをしっかりと押さえ続ける。一方、もし太陽という米国税法の抜本的改正が実現すれば、旅人は自らInversionを止めて脱ぎ捨てる。太陽が出るのは早くても選挙後に新政権となってからだからしばらくは北風の冬が続く。
Earnings StrippingはBEPSのBase Erosionと同義語であり、MNCが高税率国で稼いだ所得を利息、ロイヤリティー、サービスチャージ、その他の手法で合法的に低税率国にシフトすることを意味する。米国MNCは徹底的にEarnings Strippingしているが、実は米国を頂点とするMNCは国外関連会社から借入をするとみなし配当となるため、グループファイナンスを利用したEarnings Strippingができないという致命的な(?)欠点がある。そこでInversionして、外国オペレーションからの所得を米国税法から切り離すと同時に、米国オペレーションの課税所得までもストリップしてしまおうと考える。このことからストラクチャー的なInversion(すなわち組織再編を通じて米国を頂点とするMNCが外国を頂点とするMNCに転換させること)とInversionした後のEarnings Strippingは切っても切れない縁にあり、そのことからSection 7874とセットアップでEarnings Strippingに網を掛けるというのは当然の流れとなる。
日本MNCは生まれながらにInversionされているストラクチャーを持つ。1980年代から90年代に掛けて日本製品が米国市場を席巻したころ、日本企業はマーケットシェアが高いにもかかわらず課税所得は低いことに財務省は目を付けた。移転価格、Earnings Strippingを駆使して高税率国の米国から低税率国にある関連会社に所得を巧みに移転しているのだろう、と推測した訳だ。それは当然過ぎる発想で、米国企業(というか日本以外の国のMNC)であれば間違いなくそうするからだ。そこで1989年にはSection 163(j)(Earnings Stripping規定)、1993年には1968年以降改定されていなかった移転価格税制のSection 482の最終規則が公表された。実態としては日本MNCの課税所得が低めに推移していたのはマーケットシャア重視の戦略から薄利多売的な側面があり、システマティックに米国の課税所得を移転していた実態はないし、実際にその事実は2008年の財務省のスタディーで明らかにされた。米国企業とか他の国のInbound企業は日本企業がもっと真剣に合法的な範囲でEarnings Strippingを検討しないのが不思議でしょうがない。米国MNCがここまで苦労して実行したり断念したりしているInversionストラクチャーを生まれながらに備えているわけだし、日本は税率は高く予見可能性が低いとは言え2009年からテリトリアル課税になっている。
というバックグランドで、今回のInversion規則には「Proposed」という形でEarnings Stripping規定が追加された。Earnings Strippingを直接規定している条文はSection 163(j)だけど、163(j)に基づいた財務省規則はProposedのまま20年以上も最終化されていないし、最終化される気配もない。したがって法的にはSection 163(j)には財務省規則がないのと同じ状態だ。Section 163(j)のProposed規則に規定される連結納税グループ外の主体を合算して計算させる部分は条文のスコープを逸脱していると考えられること(すなわち三権分立に違反)、またそのOperativeなルール(みなし持分を加味する部分)を文字通り解釈するとグループの構成が非現実的なものになることがあること、からグループ算定の部分は特に踏襲する必要なしと考える向きも多い。
一方、今回のEarnings Stripping規則はSection 163(j)ではなく、過少資本税制を規制している条文Section 385の下で発表されている。このSection 385は過去にも財務省規則が発表されたことがあるが、散々酷評されたあげく白紙撤回されてしまったという過去を持つ。前回のポスティングでも触れたが、今回のSection 385の規則はInversion規則の一環に盛り込まれたにもかかわらず、適用対象はInversion企業に限定されていない。この点はかなりの驚きをもって迎えられている。Inversion規定そのものは日本MNCには直接関係ない部分も多いが、このEarnings Stripping規定は直接関係があることになる。
ということで、次回はこの規定の具体的な内容に関して見てみよう。
と話しが長くなる前にInversionに戻ろう。Inversionにかかわる財務省と米国MNCの関係を見ていると、ひとつ思い出す寓話がある。「北風と太陽」だ。知らない人はいないと思うけど、北風と太陽が旅人のコートを脱がせるという力比べをするアレだ。北風という財務省が規制を思いっきり厳しく吹きつけると米国MNCという旅人はInversionというコートをしっかりと押さえ続ける。一方、もし太陽という米国税法の抜本的改正が実現すれば、旅人は自らInversionを止めて脱ぎ捨てる。太陽が出るのは早くても選挙後に新政権となってからだからしばらくは北風の冬が続く。
Earnings StrippingはBEPSのBase Erosionと同義語であり、MNCが高税率国で稼いだ所得を利息、ロイヤリティー、サービスチャージ、その他の手法で合法的に低税率国にシフトすることを意味する。米国MNCは徹底的にEarnings Strippingしているが、実は米国を頂点とするMNCは国外関連会社から借入をするとみなし配当となるため、グループファイナンスを利用したEarnings Strippingができないという致命的な(?)欠点がある。そこでInversionして、外国オペレーションからの所得を米国税法から切り離すと同時に、米国オペレーションの課税所得までもストリップしてしまおうと考える。このことからストラクチャー的なInversion(すなわち組織再編を通じて米国を頂点とするMNCが外国を頂点とするMNCに転換させること)とInversionした後のEarnings Strippingは切っても切れない縁にあり、そのことからSection 7874とセットアップでEarnings Strippingに網を掛けるというのは当然の流れとなる。
日本MNCは生まれながらにInversionされているストラクチャーを持つ。1980年代から90年代に掛けて日本製品が米国市場を席巻したころ、日本企業はマーケットシェアが高いにもかかわらず課税所得は低いことに財務省は目を付けた。移転価格、Earnings Strippingを駆使して高税率国の米国から低税率国にある関連会社に所得を巧みに移転しているのだろう、と推測した訳だ。それは当然過ぎる発想で、米国企業(というか日本以外の国のMNC)であれば間違いなくそうするからだ。そこで1989年にはSection 163(j)(Earnings Stripping規定)、1993年には1968年以降改定されていなかった移転価格税制のSection 482の最終規則が公表された。実態としては日本MNCの課税所得が低めに推移していたのはマーケットシャア重視の戦略から薄利多売的な側面があり、システマティックに米国の課税所得を移転していた実態はないし、実際にその事実は2008年の財務省のスタディーで明らかにされた。米国企業とか他の国のInbound企業は日本企業がもっと真剣に合法的な範囲でEarnings Strippingを検討しないのが不思議でしょうがない。米国MNCがここまで苦労して実行したり断念したりしているInversionストラクチャーを生まれながらに備えているわけだし、日本は税率は高く予見可能性が低いとは言え2009年からテリトリアル課税になっている。
というバックグランドで、今回のInversion規則には「Proposed」という形でEarnings Stripping規定が追加された。Earnings Strippingを直接規定している条文はSection 163(j)だけど、163(j)に基づいた財務省規則はProposedのまま20年以上も最終化されていないし、最終化される気配もない。したがって法的にはSection 163(j)には財務省規則がないのと同じ状態だ。Section 163(j)のProposed規則に規定される連結納税グループ外の主体を合算して計算させる部分は条文のスコープを逸脱していると考えられること(すなわち三権分立に違反)、またそのOperativeなルール(みなし持分を加味する部分)を文字通り解釈するとグループの構成が非現実的なものになることがあること、からグループ算定の部分は特に踏襲する必要なしと考える向きも多い。
一方、今回のEarnings Stripping規則はSection 163(j)ではなく、過少資本税制を規制している条文Section 385の下で発表されている。このSection 385は過去にも財務省規則が発表されたことがあるが、散々酷評されたあげく白紙撤回されてしまったという過去を持つ。前回のポスティングでも触れたが、今回のSection 385の規則はInversion規則の一環に盛り込まれたにもかかわらず、適用対象はInversion企業に限定されていない。この点はかなりの驚きをもって迎えられている。Inversion規定そのものは日本MNCには直接関係ない部分も多いが、このEarnings Stripping規定は直接関係があることになる。
ということで、次回はこの規定の具体的な内容に関して見てみよう。
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