前回のポスティングで、米国法人(または支店)が外国関連法人に支払う特定支出に20%ペナルティー課税が規定されている点、そしてこのペナルティー課税を本気で支払う納税者が居るとは誰も考えていないと思われ、実質、外国法人に「自ら」みなしPE申告課税を選択させる単なるメカニズムでしかない点に触れた。
ちなみに言い忘れる前にみんなが安心するかもしれない条件を一つ。それはこの規定が適用されるのは特定支出が3年平均で年間$100M超のケースのみという「少額?」免除が規定されている点だ。仕入れとかを親会社からしているとこの金額は超えてしまうことが多いだろう。
申告課税選択だけど、法案では、もし外国法人がそう望むのであれば米国法人レベルでの20%課税(しかも損金不算入)の代わりに、特定支出を受け取る側の外国法人が特定支出に関して申告課税を選択することができると規定している。読んだ瞬間から考えていたけど、この選択をしない納税者はいるんだろうか?申告課税とすれば(後で触れる)「みなし経費」を差し引いたネット所得に20%支払うんだからコストなしの特殊な取引のケースを除いて全納税者がみなしPE課税を選択するだろう。
具体的には、外国法人が自らそう選択する場合、当外国法人は米国事業に従事しており更にPEをも有していて特定支出はECIおよびPE帰属所得とみなすと規定されている。単にECIとみなすだけで終わっていないのは、当選択をした上で租税条約のPE条項を使って実質課税なしとするポジションに網を掛けるためだ。日本企業にとっては通常はECIというよりもみなしPE課税となる部分で課税となるので、ここからは便宜上、みなしPE課税と呼んでおく。
で、ここで面白いのは、申告課税する際に通常認められるPEに帰属する所得に対応する、所謂AOA的な費用控除は認めない代わりに法案が規定する「みなし経費」を差し引いてネット所得を算定することになっている点だ。みなし経費の算定は特定支出が属する「プロダクトライン」にかかわる全世界ベースの連結財務諸表の利子・税引前の利益率に基づいて行うとなっている。「え~、会計上の利益?」ってチョッと不思議だけどまさか全世界の計算を米国課税ベースに組み換えする訳にもいかないのでこのようなこになっているんだろう。
でもそう言われても、連結財務諸表には個々のプロダクトラインの利益率なんか載ってないんじゃないかと思うけど、どうやって算定するんだろうか。費用の配賦とかが争点となりそうな気がする。
会計と言えば、この20%ペナルティー課税およびみなしPE課税選択の対象となるのは金利のところで触れたIFRGというグループだけど、このIFRGは連結財務諸表を作成しているグループだと規定されている。だったら連結財務諸表の作成を止めてしまったらIFRGにならないの?、とか不思議。通常はSection 1563のControlled Groupとか(今では風前の灯の)Section 385がExpanded GroupをSection 1504にSection 318のAttributionを加えて定義していたように税法ベースの定義になるのが普通だけど、今回の下院案は会計の連結有無で決めている。ということは通常この手の規定で分かれ道となる80%持分ではなく、会計上の50%超その他の支配権等で結ばれているだけでIFRGになってしまうということになる。なんか変わった規定だ。