Saturday, January 5, 2008

FTCのバスケット削減に伴う新財務省規則(2)

2007年12月30日のポスティングではFTCを計算する際に「バスケット」が果たす重要な機能に関して触れた。また、2007年からバスケットが従来の8から2に減るという点についても簡単に触れた。

*生き残った2つのバスケット

2007年から別々のFTC制限枠算定が求められるのは「Passive Income」と「General Limitation」の2つのバスケットに集約されることとなる。二つとも以前から存在するバスケットである。Passive Incomeバスケットに属する所得は相変わらず「Foreign Personal Holding Company Income」を言及して定義されており、大きな変更はない。基本的に配当、利子、賃貸、ロイヤリティー等の投資所得およびそれらを生み出す資産からのネットキャピタルゲインがPassive Incomeとなる。他のバスケットが全て撤廃された関係でPassive以外の所得が全てGeneral Limitationに区分される。

この簡素化は、おそらく前回のポスティングで触れた「Cross Credit」は、基本的にPassive Incomeの利用による手法が最も手軽であり、少なくともPassive Incomeと他の所得を分けておけば多くのケースでバスケット制の目的を達成することができると判断されたためであろう。手間と効果を考えればこの判断は的を得ている。

また、Passive Incomeの定義が従来と変わらないことから、今までPassive以外のバスケットに区分されていた所得がそのままGeneral Limitationにいくのではないかと思われるかもしれないがそうとも限らない。他のバスケットの多くが特別な性格を持つ投資所得であったため、以前は別バスケットに属した所得が今後はPassive Incomeバスケットに含まれることもある。例えば、5%以上の源泉税が課せられる利子所得は以前は「High Withholing Tax Interest」という別のバスケットであったが、利子所得であることから今後はPassive Incomeに区分されるであろう。旧DISCからの配当等も同様である。

*バスケット削減と削減前からの繰り越し

新規則では2007年より適用される2バスケット制への「移行」に係る取り扱いが規定されている。特に過年度には8のバスケットがあり、未使用の外国税金は各々のバスケットに紐付きで繰り越しされている。すなわち、特定のバスケット内で制限枠の関係でクレジットが取れなかった外国税金はそのバスケット内で繰り越されており、将来の課税年度においてそのバスケットに所得があり余剰の制限枠がある場合にのみその将来の年度においてクレジットが認められるというシステムだ。

2007年に過去からの繰り越しがある場合、もし過去においても2つのバスケットしかなかったら各々の税金がどちらのバスケットに属していたかに基づき、適切なバスケットが選択される。当然予想される考え方だ。例えば、過去からHigh Withholding Tax Interestバスケットに属する外国税金が繰り越しされている場合には2007年にはこの税金をPassive Incomeバスケットの税金として取り扱うこととなる。

ただし、このような再考が面倒なケースに備えて「Safe Harbor」規定が用意されている。Safe Harbor規定では、過去Passive Incomeバスケットに属していた税金はそのままPassiveに、それ以外の税金に関してはそのままGeneral Limitationに自動的に繰り越ししてもよいとされる。

また、性格としてはPassive Incomeに属する所得でも、その所得が外国で高い税率(米国の最高累進税率、現状では法人も個人も35%、を越える税率)には、これをGeneral Limitationに強制的に鞍替えさせられる「High Tax Kickout」という規定があるが、過去にKickoutに抵触した外国税金に関しては、新しい法律にも同様のKickoutが規定されていることからGeneral Limitationに繰り越されることとなる。

*バスケット削減と削減前への繰り戻し

繰り戻しに係る規定は繰り越し規定のミラーイメージである。すなわち、2007年またはそれ以降に発生した外国税金を2006年またはそれ以前に繰り戻そうとする場合には、以前の規定では8つのバスケットのどこに属するかを決定し、そのバスケットにのみ繰り戻しが認められる。

*間接税額控除への影響

前回のポスティングで触れた通り、法人は自ら直接支払う外国税金に加えて間接税額控除が認められる。すなわち、10%以上の持分を持つ外国法人から配当を受ける際には、配当原資となる外国所得に対して支払われたと取り扱われる外国の法人税に関してもFTCが認められる。この取り扱いはCFCの留保金に関して「みなし配当」を認識させられる場合にも同様に適用される。

間接税額控除もバスケットに基づく制限枠がある。新規則によると配当またはみなし配当が2006年またはそれ以前の剰余金を原資として支払われた場合でも、2つのバスケット制を適用することになる。外国法人の剰余金および過去の外国税金は過去のバスケット区分に係らず、2007年段階では2つのバスケットに整理し直されることとなる。この作業に関しても上述の繰り越しに係るものと同様の(しかし若干複雑な)Safe Harbor規定が設けられている。