Sunday, December 23, 2007

「公的ねんきん」 日本vアメリカ(1)

日本では「ねんきん特別便」なるものが国民に送付され、各個人レベルで今まで支払っていた厚生年金保険料または国民年金保険料が正しく記録されているかどうかのチェックができるというニュースが伝えられている。ご存知の通り宙に浮いてしまった年金記録は5,000万を超えると言われておりこれらを最後まで調べ尽くすのは相当な作業となるとは誰が考えても明らかである。また国民年金の未納者が多いことも何年か前から問題になっている。今回のポスティングでは、これらの日本のとても不思議な問題点に関して、米国における公的年金制度の仕組みとの対比という形で触れたみたい。

*「名寄せ」V「番号管理」

以前から日本の年金、金融資産の管理には「名寄せ」という作業が関与しているという話しを聞いていた。随分と原始的な作業だなとは思っていたが、このような方法が継続して使用されているからには基本的にはある程度機能しているのかな、と漠然と想像していた。しかし、やはり現実には記録から氏名が欠落していたり、結婚で姓が変わった等の理由で名寄せが困難なケースが沢山あるというのが今回の一連の年金問題で明らかになっている。それはそうだよね、と納得してしまった。

僕は個人的に日本の年金システムに関してはど素人なのでよく分らないが、なぜ初めから番号で管理していなかったのか不思議だ。昔日本で働いていた時に「年金番号」というものが年金手帳に記載されており、これが個人に独特な番号であると思われることから、少なくとも年金に関しては番号で管理されているのかと思っていた。どうも番号が導入されたのが比較的最近になってからのようだ。

*Social Security Number

米国でこの年金番号に相当するのが「Social Security Number (SSN)」である。1935年にFDR政権下で発足した公的年金システムは、翌1936年に3500万人に手でタイプ打ちされたSSNカードが送付されることにより稼動した。すなわち初めから番号管理だ。SSNは「xxx-xx-xxxx」という9桁の番号であるが、間に「ダッシュ」が二つ入っているので暗記しやすい。なお、一回でも個人に割り当てられた番号はその者の死後何年経っても再使用されることはない。処理がオンラインで行われる前から番号管理となっているところが長年に亘って管理を容易としたポイントであると言える。

導入後しばらくの時間を経て、SSNは基本的に国民背番号となり、所得税の申告、源泉徴収表、金融機関からの投資所得の報告、不動産の売買、免許、クレジットカードの審査、ありとあらゆる局面で使用されるようになった。米国で生まれる子供は出生時に病院が出生証明書と共に「Social Security Administration (SSA)」と呼ばれる省に交付申請が行われ、生まれて2ヶ月もすれば番号が到着する。

米国現地法人に派遣される者等、グリーンカードを取得しない外国人に対しても以前は交付申請さえすればSSNが発行されていた。しかし、SSNを持っていると一般社会の認識として合法的に米国滞在しているように取り扱われることが多いため、無制限に外国人に対して交付を続けることは安全保障上よろしくないということでSSNの発行は近年厳しくなっている。以前は観光客でもSSA事務所に出向けばSSNが発行されていた。ただし、SSNカードに「Not for employment」と記載されていたものであった。しかし、実際には「Not for employment」の状態の者が後で就労権を得ることも珍しくなく、実質どのSSNが就労権を持っている者に対して交付されたかの管理は容易ではなかったであろう。

SSNが公的年金システムの管理目的で導入されていることを考えれば、そもそも退職して受給権が発生する以前の段階では社会保障税を納める必要のない者にSSNは必要ない。したがって、現状では就労ビザを持っている外国人(プラスここ2年程はEビザとLビザの配偶者)にのみSSNが発行される形となっている。

SSNが余りにあらゆる局面でID番号として使用されるようになったことから、近年はID盗難が問題視されている。そこで昔は学校のID、会社での社内研修の記録等も全てがSSNで管理されていたものが、ここに来て学校、会社が独自のID番号を決めて使用するケースが増えてきた。また、IDの確認でSSNをウェブ入力したり、電話で使用する際にはSSNの9桁全てではなく、下4桁を用いるのが常識化している。米国市民で自分のSSNを暗記していない者がいないと思うが、会社、学校その他の団体が各々異なるID番号を発行し始めると、沢山のID番号を覚える必要が生じ、普段の生活では不便に感じることが多い。

次のポスティングでは米国の「ねんきん便」である「Social Security Statement」、日本の厚生年金保険料にあたる「FICA」と国民年金に似ている「SECA」の区別等に関して触れる。