ここ数回、OECDピラー1で提案されているAmount A、B、Cを解析してたんだけど、そんなオタクな話しをしている間も、コロナウイルスの感染拡大は激しく、その影響で株式市場はメルトダウンして、2008年のFinancial Crisisや1987年のブラックマンデーの再来のような最悪の雰囲気になってきた。ちょうど、木曜日にLower ManhattanのFinancial Districtに行く用事があったんだけど、Wall Streetの証券取引所の辺りはメインストリームメディア系のレポーターでごった返していた。DOWの乱高下を震源地からレポートっていう雰囲気を出すためなんだろうか。スタジオからでも十分に報道可能なニュースだと思うんだけど、チョッと不思議。
ピラー1のSafe Harbor化提案で有名なMnuchin財務長官がトランプ大統領のProxyとなり、下院議長のNancy Pelosiとコロナウイルス対策法第二弾の制定を調整中。木曜日と金曜日だけでもこの2人、20回以上の打ち合わせを持っていたと言われていて、Deal MakerとしてのMnuchin株が上がっている。元々、投資銀行の人でイデオロギー的に凝り固まってなく、フレキシブルなので、亀裂の激しい民主党多数の下院と大統領府の関係を調整するには打ってつけの存在。そんな調整の甲斐もあり、下院は抜本的対策法案を可決し、来週明けに上院審議となる。上院多数党院内総務、要は上院のトップ、を務めるMcConnellは法案指示を表明にしているので、週明け早々に両院通過、大統領署名に至るんだろう。可決すれば、10日前に既に法制化されている9千億円規模の第一弾に続く二つ目の救済策となる。
政府の対応が今ひとつスローでは?って感じられる一方、米国Privateセクターに目を向けると、自己管理能力の高さを実感させられる一週間だった。Social Distancingを標語に米国における生活全般が一瞬にしてTransformされた感じ。先週後半には、MLB、NHL、MLS、NCAAがNBAに続き全てのゲームの当面中止することを決定し、ディズニーランド、ブロードウェイ、コンサート、パレード、公園、動物園、博物館、等も全て閉鎖となった。Appleも全店Close。大学で既に始まっていた全ての授業・テストのオンライン対応は、小学校レベルにまで広がり、企業も原則「Work Form Home」がデフォルトになっている。同じWork Form HomeでもFifth Harmonyみたいに「I ain't worried 'bout nothin'」って感じではないけどね。これら一連のアクションは、多くのケースで政府とかに指示されて実行している訳ではなく、あくまで自主的に敢行しているもの。この期に及んで一見当たり前のことをしているだけかもしれないけど、経営者その他、リーダーシップのリスク感度の高さを物語っているように感じた。
後は景気を支えるクッションを政府が迅速に提供する必要がある。ということは2008年のTARPような措置の再来?2008年を思い出すと、税法的には、まずCFCの資金を米国に還流し易くするためSection 956制限の緩和措置が施された。Section 956はCFCが米国に貸付をしたり、ローン保証を差し入れたりすると、米国株主が合算課税させられる税法。Notice 2008-91、覚えてる?僕がちょうどEYに移籍した直後の話しだ。その後もクレジットマーケットが十分に機能しないケースに備えて、2009-10、2010-12、とシリーズでSection 956には緩和策が講じられていた。M&A後にターゲットが持ち込むNOLに関して、年間使用制限枠が設定されるSection 382に関しても、金融機関買収時には緩和が規定されていた。また、一般企業等のNOLの繰り戻しが急に2年から5年に延長されたり、それはそれで結構いろいろあった。今回も何らかの救済措置が規定されるんだろうけど、Section 956にしてもNOLにしてもTCJAでその姿が大きく変わっているから、別の切り口で攻めるしかないね。
そんな中、先週から早くもDaylight Savings(サマータイム)。11月1日の日曜日まで1時間時計が早まるんだけど、このDaylight Savings、僅か1時間の差異だから、シカゴからNYCにトラベルする際の軽い時差同様くらいにしか考えていなかった。Central TimeとNYC間の出張時の1時間くらいの時差だったら、体で感じるほどのインパクトはないんだけど、なぜかDaylight Savingsに突入した数日は例年、体が直ぐに新しい時間に馴染まない気がして不思議だった。そしたらWSJに、専門家が、場所を移動する際の時差は、太陽とか周りの環境が実際に変わるんで体が自動的に自分を調整する一方、周りはそのままなのに人間だけ勝手に1時間ズラすというDaylight Savingsは別次元のインパクトがあり、実は体に掛かる負担が重く、撤廃するか年間を通じてDaylight Savingsにするべき、という提案をしている記事が記載されていた。やっぱり・・・。
ってことで、チョッとコロナウィルスの話しを避けて通れないご時世なので、脇道に逸れたけど、次回からまたOECDピラー1のAmount A、B、CとALPに関して。
Saturday, March 14, 2020
Saturday, March 7, 2020
OECDピラー1のAmount A、B、CとALP (2)
前回からAmount A、B、CとALPというテーマにチャレンジし始めたけど、そのオープニング・アクトとして前回のポスティングでは、ピラー1の神髄的な金額となるAmount Aとは何か、にフォーカスしてみた。すなわち、Amount Aというのは多国籍企業「グループ」の連結財務諸表の税引前利益、すなわち会計上の数字、と一定のフォーミュラだけで算定するっていう、従来の国際課税システムでは考えられない方法で認定する課税所得だって点。これは、ALPと異なり、機能やリスクベースじゃないし、グループベースの恣意的な金額なのでグループ内のどの主体に属するという紐付きの関係がない、という刺激的な所得。また、ALPベースで既にどこかの国、主体で何らかの形で課税されている金額を再度、別の計算で複数の国に分け与えてしまう。Amount AはALPベースで認識されている課税所得と「重複」していることになり、無理やりどこかの主体にALPベースの課税所得の一部を献上させないとダブルカウントになる。したがって、そうならないようにどのように誰にAmount A相当の所得を献上させるか、っていうのはピラー1デザインの今後の最重要検討事項となる。
ちなみに、前回も触れたけど、ピラー1は僕が普段24/7で(笑)接している米国税務、特にクロスボーダー系とか組織再編、パススルー分野とは異なるので、ピラー1にかかわる経済分析、移転価格の新しい概念、特にインパクト分析の数式に登場してくるギリシャ文字とか、去年から、初めて解析し始めた分野。なんであくまで現時点の私見として読んでほしい。今後も各国間の議論の中でデザインは変わっていくだろうし。皆様もいろんな立場でピラー1の今後を見守り、日本という国、日本の多国籍企業に与えるインパクトを考えていくことになると思うけど、その際の一助となれば、みないな特別企画だ。詳細なテクニカル面を法的に追求するGILTIとかBEATの話しと比較して、チョッと感じが違う話し。う~ん、BEATとパートナーシップにしとけばよかったかな、「イニミニマニモ・・・」やり直す?って言うのは冗談で、せっかく乗りかかった船だから目的地まで行かないとね。ちょっと「免責」っぽい?
で、ピラー1で一部抜本的な改定が提案されている従来の物理的な存在に基づく課税権という考え方が100年の歴史と言われているのは、その原形が1923年の The League of Nationsによる合意まで遡るからだ。The League of Legendsじゃないからね。The League of Nationsって日本語だと国際連盟。今のUNは国際連合って訳されるけど、昔、社会の歴史のテストで連盟と連合を混同して減点された問題があったのを思い出す。英語だと名前似てないのにね。それ以来、100年間に亘り「物理的な存在、PE、に基づき課税権を認める」というコンセプトは国際課税システムの大原則として不動の地位を確立したんだけど、これは単なるポリシー的に合理的と考えられていたばかりでなく、主体やPEが税金を払わなければ国内の資産を差し押さえるという強制執行が可能という実務的な合理性も持ち合わせている。国内に物理的な存在を持たない相手に強制執行しようとしても自国に資産がなければ差し押さえるものがない。かと言って資産が所在する他国では他国の法律に基づかないと資産に手は付けられないだろうし、条約等の特殊なルートでも使わない限り実行困難。徴収しようとする国には他国の法執行権がないからね。まあ、Amount Aに関しては親会社が所在する国、または何らかの国際決済機構が代表して税金を徴収してくれることになれば、基本的に取りっぱぐれるようなことはないんだろうけど。
で、この100年の歴史をピラー1が少なくとも部分的に変えようとしている背景に関しては前回のポスティングで簡単に触れた。物理的な存在要件が、なぜ国際課税システムとして確立・定着してたかって言うと、上述の差し押さえとかの実務的な側面はあるとは言え、要は各国が相互に契約した約束事だったからだ。普遍の真理で成り立っていた訳ではない。例えば、135 人の人達が広場で手をつないで「私たちは飛べる」っていくら信じても飛べないけど、「ユーザーには価値があって、物理的な存在がなくてもユーザーの所在国でも課税できる」って信じればそうなる。それが135国(だっけ?)で構成されるInclusive Frameworkのコンセンサス作りだ。
で、Amount A、B、Cだけど、よく新聞とか業界の集まりとかで、この業種は消費者向けビジネスに当たるとか、あなたは自動化デジタルサービスに当たりますとか、また売上に基づくカットオフとか、更にスコープに入っても利益率が低いから大丈夫(?)とか、各企業が対象になるのかならないのか議論されることが多い。このスコープ系の話しはあくまで「Amount A」を適用して市場国に超過利益を配賦する必要が生じるかどうかだけの話し。Amount BやCは規模や業種にかかわらず、市場国があれば全員対象となる。もちろんピラー2も特定のカーブアウトがなければ全員対象。ピラー2に至っては消費者向けビジネスである必要もない。
ここでAmount Bに一瞬フォーカスしてみると、Amount Bは「ルーティン販売・マーケティング活動」に対するリターンを意味し、従来通りPEや疑似ALPに基づく課税。従来のピュアなALPと異なるのは、各企業が市場国で展開する販売・マーケティング活動を個々に分析して適正なリターンを確定するのではなく、だいたいルーティン活動は似たり寄ったりで、統計的にもリターン%はほぼ一定の範囲内に収まる話しなので、売上に対するリターン%を前以て世界中で合意・固定してしまう点。Amount Bに関しては、前回のポスティングで、従来のシステムとピラー1を比較する際に、PEやALPに基づく既存システムと仮にほぼ同様としてるけど、実際には従来のリターンとは若干異なってくるだろう。
ルーティンの販売・マーケティング活動に対するリターン%を前以て合意しとくっていうのはとても合理的な話しで、たかが(?)ルーティン販売・マーケティング活動に対するリターンの話しで世界中のあちこちで係争が頻発してるのは、各国税務当局や納税者にとって無駄が多い。すなわち、ルーティン販売・マーケティング活動に対するリターンがピュアなALPに基づく個々の事実関係ベースで、2.0%なのか、2.1%なのか、2.7%なのか、とか結局のところ不変の真理的な回答が存在しないんだから、意味がないというか、しょうもない世界での係争ではないか、という正しい認識。全世界で適正リターンを、例えば2.5%と合意し、この%に関してはその経済的な正当性や個々の事実への適用可能性を問うことは一切認めない、というアプローチだ。ちなみに%は未だ全然決まってなくて2.5%っていうのは単なる例だからね。
したがってAmount Bはデジタル化で新たな課税権が生じたり、超過利益を配賦したりという世界とは関係なく、ピラー1の重要な目的の一つとなる従来からのALP適用時の係争防止規定となる。したがってAmount B自体は「Safe Harbor」ではないはず。米国財務長官のピラー1のSafe Harbor化提案は今後も引き続き火種になるけど、Amount Aに限定される発言ではないか、って個人的には推測している。Safe HarborではAmount Bの意味がないからだ。Safe Harborっていうのは、本来であれば個々の事実認定に基づいて課税関係を決めるはず、例えば、ルーティン販売・マーケティング活動に対するリターンを個々の活動内容に基づいて決めるはず、だけど、その代わりに前以て規定される何らかの「Parameter」、すなわちAmount Bで言えばリターン%、を使用している限り、個々の事実認定は「不問に付す」っていうこと。で、Safe Harborの場合、このParameter、Amount Bで言うと世界中で合意された%、が気に入らなければ「私のルーティン販売・マーケティング活動はとっても限定的なんです」とか言って、固定%より低い%を適用することが認められる。Safe Harbor制度というのは、Parameterを適用しないオプションがあるということで、その場合はSafe Harborで認められる「不問に付す」という恩典を納税者自ら放棄して、個々の事実関係に基づく通常の係争を覚悟の上申告するっていうことになる。
そんな制度ではAmount Bを固定%にする意味がなくなってしまうので、Amount Aはともかく、Amount BはSafe Harborにはならないはず。すなわち固定%を各国が合意する限り、税務当局にも納税者側にもそれ以外の%を適用することは認められるべきではない。税務当局にしても、個々の納税者のルーティン販売・マーケティング活動の内容の蓋を開けて「あなたのルーティン販売活動の内容に基づくと2.5%ではなく、2.6%ですね」とか言ったりすることは許されない。つまり納税者も、各国の税務当局間でも、屁理屈は許されない、ということだ。Amount Bの目的はこれらのマイナーな意味のない係争を魔法の杖一振りで全て防止するという点にあるからだ。
となると、Amount Bに関して少なくともリターンが何%であるべきかっていう係争は存在し得ないことになる。係争の種として残るものがあるとすれば、そもそも何がルーティン販売・マーケティング活動の範囲内かっていう事実認定部分だろう。ここの定義はどこまで明確化しても、最終的には個々の「事実関係」への適用時に不確実性が残ることは必至。「ルーティン」販売・マーケティング活動だよね、って「見れば分かる」的なLRDのようなケースは別として、結局のところ市場国の税務当局が「あなたが我々の国で従事している活動はルーティンの域を超えています」とか言い始めると、せっかくAmount Bを固定リターン%にしている意味が低下する。
市場国における販売・マーケティング活動が、ルーティンの域を超えると認定される場合、ノンルーティン部分に対応する超過利益は、PEや何らかの物理的な存在があるっていう前提で、既存のALPでも市場国が課税できるけど、ピラー1ではそれをそのままAmount Cとしている。Amount Cはピュアな従来からのALPそのもので、ノンルーティンという性格から係争の種。事実関係次第なので固定%化するのは不可能。従来から係争は多いだろうけど、ピラー1でAmount Bのルーティン部分リターンを固定しまうと、ますます多くの係争の種になる。そこでピラー1では、係争防止・解決策として、従来の二国間の係争対応策を強化する形で、強制仲裁を条件にAmount Cを認めるような方向を模索してるように見える。つまり、Amount Cは新しいコンセプトや金額じゃないけど、係争防止・解決面で改善を試みようとしている金額。ちなみに強制仲裁、Mandatory Arbitration、という用語がよく出てくるけど、仲裁結果はMandatoryでなければ仲裁そのものに全く意味がない。また、Mandatoryと言っても、仲裁結果が気にいらない場合にある国が「こんな仲裁結果はただの紙切れ」とか言ったらどうするんだろうか。国内の判決というのは資産没収とか、禁固とかの強制執行権が付きまとうからこそ効果がある訳で、国際的な係争にかかわる仲裁結果の強制は、戦争する訳にはいかないだろうから、その実効性にかかわる不確実性を完全に払拭するのは難しい。
ちなみに、日米租税条約には、昨年批准がようやく完了した改定を通じて、調停が組み込まれているので、Amount C部分に関しては、既にピラー1と同様の位置づけにあると言える。これは前回のポスティングでも触れた通り、米国がMarket Intangibleの存在に基づく超過利益課税を推し進めることは既存の枠組みでも法的に問題ないばかりでなく、仮にピラー1が現状の提案のまま合意されたとしても問題なく追及可能ということを意味する。さらに言えば、ピラー1とは関係なく、Functional Cost Diagnosisとかを整備してAmount C同様の金額を米国で課税する準備を着々と進めてきた中、ピラー1で世界中がAmount Cを認知することになると、コンセプトとしては従来の国際課税システムとAmount Cに関しては変わらないので影響はないはずとは言え、米国によるMarket Intangibleリターン課税がより一層のお墨付きを得たような知覚的な作用がもたらされ兼ねない。う~ん、Market Intangibleの流れを一歩先にIRSは感知して実践に移してるってことだね。さすがAPMA。
Amount A、B、C とかピラー1をこのように考えていくと、ちまたでたまに言われている「ALPの終焉」とか「ALPの衰退」って言うのは、まだチョッと大げさというか、時期尚早な気がする。ALP衰退説の根拠は、Amount AはRPSMっぽいけど、フォーミュラ計算なので名ばかりのRPSMでもちろんALPじゃないし、米国のTCJAの大元と言える「Blue Print」で提唱されていた、今となっては懐かしい響きの「Border Adjustment」ではALP自体不要だし、また、GILTIで超過利益を 有形償却資産税務簿価の10%と決めてしまった、といったもの。でも実際にはピラー1でもALPから派手に逸脱しているのはAmount Aだけ。Amount Bは物理的な存在がなければ課税できず、あくまで事業主体やPE単位のALP同様。リターン%の多少を議論する代わりに、原則、魔法の杖一振りで全世界固定%とするもの。業界により%が微妙に異なったりする可能性には言及されてるけどね。なんで、Amount Bは正確なALPではないけど疑似ALPで、Cは上述の通り完全にALP。また、市場国が市場として課税する所得以外の所得、例えばルーティン製造活動、ルーティン・サービス活動、または従来から認識している市場ではない立場で認識している超過利益、とかはALPベースの検討がそのまま残るし、多国籍企業が各国で認識する所得の大半は今後もALPで決まるんだろう。
Border Adjustmentが米国でもし採択されてたら、完全な消費地課税になると同時に、ALPは本当に終焉してたはず。先日、下院歳入委員会の関係の方と話した際、Border Adjustmentの議論は若干時期尚早だったというか、一般の有権者が付いてこれなかったけど、いずれ導入議論が再燃するだろうと言っていた。確かにピラー1でA、B、C、とかを世界で合意する流れになるんだったら、せっかくの100年に一回しかない(システム安定性の観点からそう願いたい?)大改革なんだから一層のことVAT紛いの法人税Border Adjustment化を世界中で合意してしまえばいいのかもしれない。まあ、ドレミや1、2、3、じゃなくてA、B、C、でこれだけもめるんだから、Border Adjustmentは次の100年後の改革かもね。Justin BieberのBeauty and the Beatじゃないけど「We gonna party like it's 3012・・・」の世界。
ということで、次回はA、B、Cの相互関係や、テーマであるピラー1とALPの関係の話しを続けたい。
ちなみに、前回も触れたけど、ピラー1は僕が普段24/7で(笑)接している米国税務、特にクロスボーダー系とか組織再編、パススルー分野とは異なるので、ピラー1にかかわる経済分析、移転価格の新しい概念、特にインパクト分析の数式に登場してくるギリシャ文字とか、去年から、初めて解析し始めた分野。なんであくまで現時点の私見として読んでほしい。今後も各国間の議論の中でデザインは変わっていくだろうし。皆様もいろんな立場でピラー1の今後を見守り、日本という国、日本の多国籍企業に与えるインパクトを考えていくことになると思うけど、その際の一助となれば、みないな特別企画だ。詳細なテクニカル面を法的に追求するGILTIとかBEATの話しと比較して、チョッと感じが違う話し。う~ん、BEATとパートナーシップにしとけばよかったかな、「イニミニマニモ・・・」やり直す?って言うのは冗談で、せっかく乗りかかった船だから目的地まで行かないとね。ちょっと「免責」っぽい?
で、ピラー1で一部抜本的な改定が提案されている従来の物理的な存在に基づく課税権という考え方が100年の歴史と言われているのは、その原形が1923年の The League of Nationsによる合意まで遡るからだ。The League of Legendsじゃないからね。The League of Nationsって日本語だと国際連盟。今のUNは国際連合って訳されるけど、昔、社会の歴史のテストで連盟と連合を混同して減点された問題があったのを思い出す。英語だと名前似てないのにね。それ以来、100年間に亘り「物理的な存在、PE、に基づき課税権を認める」というコンセプトは国際課税システムの大原則として不動の地位を確立したんだけど、これは単なるポリシー的に合理的と考えられていたばかりでなく、主体やPEが税金を払わなければ国内の資産を差し押さえるという強制執行が可能という実務的な合理性も持ち合わせている。国内に物理的な存在を持たない相手に強制執行しようとしても自国に資産がなければ差し押さえるものがない。かと言って資産が所在する他国では他国の法律に基づかないと資産に手は付けられないだろうし、条約等の特殊なルートでも使わない限り実行困難。徴収しようとする国には他国の法執行権がないからね。まあ、Amount Aに関しては親会社が所在する国、または何らかの国際決済機構が代表して税金を徴収してくれることになれば、基本的に取りっぱぐれるようなことはないんだろうけど。
で、この100年の歴史をピラー1が少なくとも部分的に変えようとしている背景に関しては前回のポスティングで簡単に触れた。物理的な存在要件が、なぜ国際課税システムとして確立・定着してたかって言うと、上述の差し押さえとかの実務的な側面はあるとは言え、要は各国が相互に契約した約束事だったからだ。普遍の真理で成り立っていた訳ではない。例えば、135 人の人達が広場で手をつないで「私たちは飛べる」っていくら信じても飛べないけど、「ユーザーには価値があって、物理的な存在がなくてもユーザーの所在国でも課税できる」って信じればそうなる。それが135国(だっけ?)で構成されるInclusive Frameworkのコンセンサス作りだ。
で、Amount A、B、Cだけど、よく新聞とか業界の集まりとかで、この業種は消費者向けビジネスに当たるとか、あなたは自動化デジタルサービスに当たりますとか、また売上に基づくカットオフとか、更にスコープに入っても利益率が低いから大丈夫(?)とか、各企業が対象になるのかならないのか議論されることが多い。このスコープ系の話しはあくまで「Amount A」を適用して市場国に超過利益を配賦する必要が生じるかどうかだけの話し。Amount BやCは規模や業種にかかわらず、市場国があれば全員対象となる。もちろんピラー2も特定のカーブアウトがなければ全員対象。ピラー2に至っては消費者向けビジネスである必要もない。
ここでAmount Bに一瞬フォーカスしてみると、Amount Bは「ルーティン販売・マーケティング活動」に対するリターンを意味し、従来通りPEや疑似ALPに基づく課税。従来のピュアなALPと異なるのは、各企業が市場国で展開する販売・マーケティング活動を個々に分析して適正なリターンを確定するのではなく、だいたいルーティン活動は似たり寄ったりで、統計的にもリターン%はほぼ一定の範囲内に収まる話しなので、売上に対するリターン%を前以て世界中で合意・固定してしまう点。Amount Bに関しては、前回のポスティングで、従来のシステムとピラー1を比較する際に、PEやALPに基づく既存システムと仮にほぼ同様としてるけど、実際には従来のリターンとは若干異なってくるだろう。
ルーティンの販売・マーケティング活動に対するリターン%を前以て合意しとくっていうのはとても合理的な話しで、たかが(?)ルーティン販売・マーケティング活動に対するリターンの話しで世界中のあちこちで係争が頻発してるのは、各国税務当局や納税者にとって無駄が多い。すなわち、ルーティン販売・マーケティング活動に対するリターンがピュアなALPに基づく個々の事実関係ベースで、2.0%なのか、2.1%なのか、2.7%なのか、とか結局のところ不変の真理的な回答が存在しないんだから、意味がないというか、しょうもない世界での係争ではないか、という正しい認識。全世界で適正リターンを、例えば2.5%と合意し、この%に関してはその経済的な正当性や個々の事実への適用可能性を問うことは一切認めない、というアプローチだ。ちなみに%は未だ全然決まってなくて2.5%っていうのは単なる例だからね。
したがってAmount Bはデジタル化で新たな課税権が生じたり、超過利益を配賦したりという世界とは関係なく、ピラー1の重要な目的の一つとなる従来からのALP適用時の係争防止規定となる。したがってAmount B自体は「Safe Harbor」ではないはず。米国財務長官のピラー1のSafe Harbor化提案は今後も引き続き火種になるけど、Amount Aに限定される発言ではないか、って個人的には推測している。Safe HarborではAmount Bの意味がないからだ。Safe Harborっていうのは、本来であれば個々の事実認定に基づいて課税関係を決めるはず、例えば、ルーティン販売・マーケティング活動に対するリターンを個々の活動内容に基づいて決めるはず、だけど、その代わりに前以て規定される何らかの「Parameter」、すなわちAmount Bで言えばリターン%、を使用している限り、個々の事実認定は「不問に付す」っていうこと。で、Safe Harborの場合、このParameter、Amount Bで言うと世界中で合意された%、が気に入らなければ「私のルーティン販売・マーケティング活動はとっても限定的なんです」とか言って、固定%より低い%を適用することが認められる。Safe Harbor制度というのは、Parameterを適用しないオプションがあるということで、その場合はSafe Harborで認められる「不問に付す」という恩典を納税者自ら放棄して、個々の事実関係に基づく通常の係争を覚悟の上申告するっていうことになる。
そんな制度ではAmount Bを固定%にする意味がなくなってしまうので、Amount Aはともかく、Amount BはSafe Harborにはならないはず。すなわち固定%を各国が合意する限り、税務当局にも納税者側にもそれ以外の%を適用することは認められるべきではない。税務当局にしても、個々の納税者のルーティン販売・マーケティング活動の内容の蓋を開けて「あなたのルーティン販売活動の内容に基づくと2.5%ではなく、2.6%ですね」とか言ったりすることは許されない。つまり納税者も、各国の税務当局間でも、屁理屈は許されない、ということだ。Amount Bの目的はこれらのマイナーな意味のない係争を魔法の杖一振りで全て防止するという点にあるからだ。
となると、Amount Bに関して少なくともリターンが何%であるべきかっていう係争は存在し得ないことになる。係争の種として残るものがあるとすれば、そもそも何がルーティン販売・マーケティング活動の範囲内かっていう事実認定部分だろう。ここの定義はどこまで明確化しても、最終的には個々の「事実関係」への適用時に不確実性が残ることは必至。「ルーティン」販売・マーケティング活動だよね、って「見れば分かる」的なLRDのようなケースは別として、結局のところ市場国の税務当局が「あなたが我々の国で従事している活動はルーティンの域を超えています」とか言い始めると、せっかくAmount Bを固定リターン%にしている意味が低下する。
市場国における販売・マーケティング活動が、ルーティンの域を超えると認定される場合、ノンルーティン部分に対応する超過利益は、PEや何らかの物理的な存在があるっていう前提で、既存のALPでも市場国が課税できるけど、ピラー1ではそれをそのままAmount Cとしている。Amount Cはピュアな従来からのALPそのもので、ノンルーティンという性格から係争の種。事実関係次第なので固定%化するのは不可能。従来から係争は多いだろうけど、ピラー1でAmount Bのルーティン部分リターンを固定しまうと、ますます多くの係争の種になる。そこでピラー1では、係争防止・解決策として、従来の二国間の係争対応策を強化する形で、強制仲裁を条件にAmount Cを認めるような方向を模索してるように見える。つまり、Amount Cは新しいコンセプトや金額じゃないけど、係争防止・解決面で改善を試みようとしている金額。ちなみに強制仲裁、Mandatory Arbitration、という用語がよく出てくるけど、仲裁結果はMandatoryでなければ仲裁そのものに全く意味がない。また、Mandatoryと言っても、仲裁結果が気にいらない場合にある国が「こんな仲裁結果はただの紙切れ」とか言ったらどうするんだろうか。国内の判決というのは資産没収とか、禁固とかの強制執行権が付きまとうからこそ効果がある訳で、国際的な係争にかかわる仲裁結果の強制は、戦争する訳にはいかないだろうから、その実効性にかかわる不確実性を完全に払拭するのは難しい。
ちなみに、日米租税条約には、昨年批准がようやく完了した改定を通じて、調停が組み込まれているので、Amount C部分に関しては、既にピラー1と同様の位置づけにあると言える。これは前回のポスティングでも触れた通り、米国がMarket Intangibleの存在に基づく超過利益課税を推し進めることは既存の枠組みでも法的に問題ないばかりでなく、仮にピラー1が現状の提案のまま合意されたとしても問題なく追及可能ということを意味する。さらに言えば、ピラー1とは関係なく、Functional Cost Diagnosisとかを整備してAmount C同様の金額を米国で課税する準備を着々と進めてきた中、ピラー1で世界中がAmount Cを認知することになると、コンセプトとしては従来の国際課税システムとAmount Cに関しては変わらないので影響はないはずとは言え、米国によるMarket Intangibleリターン課税がより一層のお墨付きを得たような知覚的な作用がもたらされ兼ねない。う~ん、Market Intangibleの流れを一歩先にIRSは感知して実践に移してるってことだね。さすがAPMA。
Amount A、B、C とかピラー1をこのように考えていくと、ちまたでたまに言われている「ALPの終焉」とか「ALPの衰退」って言うのは、まだチョッと大げさというか、時期尚早な気がする。ALP衰退説の根拠は、Amount AはRPSMっぽいけど、フォーミュラ計算なので名ばかりのRPSMでもちろんALPじゃないし、米国のTCJAの大元と言える「Blue Print」で提唱されていた、今となっては懐かしい響きの「Border Adjustment」ではALP自体不要だし、また、GILTIで超過利益を 有形償却資産税務簿価の10%と決めてしまった、といったもの。でも実際にはピラー1でもALPから派手に逸脱しているのはAmount Aだけ。Amount Bは物理的な存在がなければ課税できず、あくまで事業主体やPE単位のALP同様。リターン%の多少を議論する代わりに、原則、魔法の杖一振りで全世界固定%とするもの。業界により%が微妙に異なったりする可能性には言及されてるけどね。なんで、Amount Bは正確なALPではないけど疑似ALPで、Cは上述の通り完全にALP。また、市場国が市場として課税する所得以外の所得、例えばルーティン製造活動、ルーティン・サービス活動、または従来から認識している市場ではない立場で認識している超過利益、とかはALPベースの検討がそのまま残るし、多国籍企業が各国で認識する所得の大半は今後もALPで決まるんだろう。
Border Adjustmentが米国でもし採択されてたら、完全な消費地課税になると同時に、ALPは本当に終焉してたはず。先日、下院歳入委員会の関係の方と話した際、Border Adjustmentの議論は若干時期尚早だったというか、一般の有権者が付いてこれなかったけど、いずれ導入議論が再燃するだろうと言っていた。確かにピラー1でA、B、C、とかを世界で合意する流れになるんだったら、せっかくの100年に一回しかない(システム安定性の観点からそう願いたい?)大改革なんだから一層のことVAT紛いの法人税Border Adjustment化を世界中で合意してしまえばいいのかもしれない。まあ、ドレミや1、2、3、じゃなくてA、B、C、でこれだけもめるんだから、Border Adjustmentは次の100年後の改革かもね。Justin BieberのBeauty and the Beatじゃないけど「We gonna party like it's 3012・・・」の世界。
ということで、次回はA、B、Cの相互関係や、テーマであるピラー1とALPの関係の話しを続けたい。
Thursday, March 5, 2020
OECDピラー1のAmount A、B、CとALP (1)
ABCって言うのは学校や幼稚園で最初に習うアルファベットだから、もともと誰でも簡単にできることを意味することが多い。若かりしMichel Jacksonを含むJackson一家で結成していたJackson 5(後のJacksons)も「A、B、C、it's easy as 1、2、3 or simple as Do Re Mi」とか歌ってたし、The Loco-motionでも「My little baby sister can do it with me, it's easier than learning your A、B、C」って歌ってるしね。
The Loco-motionと言えばもちろん元祖はLittle Evaだけど、その後著名なところでは 「I should be so lucky」とかで売れたオーストラリアのKylie Minogueとか、アリーナロック元祖Grand Funk Railroadがカバーしている。Kylieのも可愛い感じで良かったけど、やっぱりGrand Funk。ミシガン州のFlintでMark Farnerが結成したハードコアなアメリカンバンドだ。
Grand Funkは日本でも、その昔、後楽園(東京ドームではない)で激しい雷雨の中敢行されたコンサートが伝説化している。余りに激しい雨で、口パク疑惑が語られたこともあったけど、最終的には本当に演奏してたってことで落ち着いたんだと思う(?)。1975年のGrand Funk米国ツアーの様子を収録した2枚組ライブアルバム「Caught in the Act」はDeep Purpleの「Made in Japan」と並ぶライブの名作。ZeppelinのMSGライブ映画のサウンドトラック「The Song Remains the Same」もそうだけど、ライブって2枚組レコードで発売されることが多く、子供の頃は買うのに相当勇気が要った。他にプラモ(笑)とかに配賦するべき予算もあり、Grand FunkのCaught in the Actの新品はお小遣いの範囲で手が出なかったので、結局、当時よく掘り出し物を探しに出入りしてたディスクユニオンで中古を見つけて入手したものだ。
最初からMark Farnerがガンガン盛り上げ、前々曲のSome Kind of Wonderful辺りからクライマックスっぽくなってきて、1枚目B面の最後にとどめを刺す感じでThe Loco-Motionが登場する。今You Tubeとかで見ると、下品というかなんというかチョッと笑っちゃうけど、ハードロックって本来こんなんだよね、っていうのを再認識させてくれるバンド。ボーカル兼ギターのMark Farnerはいつも最初から上半身裸だし後のVan HalenのDave Lee Rothとかに通じる品のない格好良さ(なにそれ?)が楽しめる。Mark Farner、ギターは下手じゃないけど、70年代のハードロックギタリストにありがちな、手持ちフレーズが限られているチョッとAlvin Leeみたいなギタリストだ。Alvin Leeと言えばWoodstockのTen Years Afterは格好よかったね。Woodstockの映画では最後に登場するJimi Hendrixが余りに凄すぎて、Alvin Leeとか、サンタナとか、普通だったら強く印象に残るはずのギタリストのこと忘れちゃったりしてたけどね。
Grand Funkなんて今では知らない人の方が多いと思うので、怖いもの見たい人はFootstompin' Musicで始まるツアーの動画をYouTubeで見てみて欲しい。American Bandとか名曲。もちろんMark Farnerのカウントで始まるThe Loco-Motionもお忘れなく。古き良きアメリカだ。
で、The Loco-Motionを繰り返し見過ぎて「it's easier than learning your A、B、C」っていう歌詞が頭を離れなくなったら、その勢いでOECDのピラー1のAmount A、B、Cにチャレンジ。え~、ピラー1全然1、2、3やドレミじゃないじゃん、って当たり前だよね。100年続いた国際課税システムを少なくとも部分的に斬新なものに変えようって話しだから、The Loco-Motionの「a chug-a chug-a motion」とは次元が違う訳だ。
ピラー1は日本語では第1の柱と訳されるけど、ちょっと個人的にしっくりこないのでここではピラー1ってしておく。このピラー1とかUnified Approachが何なのか、とかいろいろな前置きは書こうと思えば、それだけも長編になっちゃうけど、皆様も散々目にしたり聞いたりしてると思うので、ここでは極簡単に触れておく。100年間続いてきた国際課税の基本的な枠組みが、デジタル経済やグローバル経済の実態に合わなくなってきて抜本的に見直す時期に来ているのではないかっていう問題意識は以前のオリジナルBEPSアクションプラン1の頃から存在はしていた。アクションプラン1ではVATはともかく法人税の世界では具体的なアクションが示唆された訳ではなく、具体的な進展が近々に見込まれる様子ではなかった。
しかし、その間にデジタル経済は更に加速度的に進化し、多くのユーザーが自国に存在するにもかかわらずデジタル企業から各国課税当局が考える「適正なシェア」の法人税を徴収できないことに不満を抱き始めた国々が、一方的にDSTというデジタル課税を導入し始めた。DSTはグロスベースだったりすることも多いし、二重課税排除システムがないので対象となると被害が大きい。DSTはよく「Googleタックス」とか「GAFAタックス」と揶揄されるように、実質DSTを支払うのは米国の大手ハイテク企業なので、米国としてはもちろん容認できず、追加関税で報復とか、このまま放っておくと大混乱必至という状況になってしまった。そんなこんなで、これ以上流暢なことを言っている場合ではなくなり、2019年に猛スピードでOECDの提案があり、つい一カ月チョッと前の2020年1月末に130か国がOECDの提案を基に2020年中にコンセンサス作りで協調していくことを決めたものだ。
100年掛けて進化してきた現状・既存の国際課税システムの基本は、現地法人オフィスとかPEとか、何らかの物理的な存在がある場合に、その国に課税権が認められ、そのオフィスやPEが持つ機能・リスクに基づいて適正と考えられる所得を配賦するっていうもの。これは正確には租税条約ネットワークに基づく国際課税システムで、国内法では異なる規定を持つこともある。そのいい例が他でもない米国で、国内法には基本的にはPEという概念はなく、代わりに米国事業(US Trade or Business)というとてつもなくグレーな概念がある。US Trade or Businessは必ずしも、固定的な施設を米国に所有していなくても認定されるし、そこから生じる、または生じるとみなされる所得はECIとして申告課税の対象となる。米国と条約を締結している日本のようなラッキーな国の居住者は連邦法人税の観点からは、基本PEに基づく課税関係が最終的な取り扱いになるけど、シンガポールとか中南米の国とかで米国と条約を締結していないと(または何年も前に締結したつもりが米国が批准していないと(苦笑))、より厳しく不確実性の高い課税関係を強いられる。したがって今回100年ぶりに見直されている国際課税システムというのは、数多くの二国間の条約に基づいて構築されている複雑かつある意味脆弱なネットワークを基に成り立っている。これを魔法の杖一振りで短期間で新たな共通ルールに変えようという試みなので、参加プレイヤーが多くもちろん一筋縄でいく話しではない。
で、この伝統的な国際課税システムの基本は上述の通り、「事業主体」または「PE」単位で課税所得が決定される点。そして、この課税単位となる各主体・PEの「機能・リスク」的に適正と考えられるレベルの利益が課税所得となる点。この基本2点こそ、米国が1930年代から適用し、1968年、1994年の規則を通じて近代化してきたArm’s-Length Principle(ALP)だ。ALPは今日の国際課税システムに奥深く組み込まれているので、ピラー1が登場するまでALP以外の国際課税システムは、理論的には議論されることはあっても、現実的とは考えられていなかった。
もちろん第三者とだけビジネスしてるケースは、実際に認識される所得がそのままその主体・PEの課税所得になるけど、グローバル経済でビジネスを行っている多国籍企業の世界では、どんなにシンプルな企業でも、グループ内に多くの主体があり、例えばX国とY国でR&Dして、Z国で生産して、それを現地法人の販社、第三者の問屋経由でX、Y、Z国を含む100か国に販売している、っていうような状況が普通なので、各主体がALPに基づきどれだけの所得を認識するべきか、っていう移転価格問題は常に争点の種となる。
で、デジタル経済にこれがなぜ馴染まず、問題視されているかというと、OECD言うところの「Market Jurisdiction」、ここでは日本語で「市場国」ってしとくけど、に現地法人のオフィスやPEというプレゼンスがなくても、またはかなり限定的な機能・リスクしか持ってなくても、デジタル経済の世界では、その国に所在するユーザー、消費者、顧客に自由にアクセスし、活用することができる。また、場合によってはユーザーデータ等に超過利益の源泉となる価値があるにもかかわらず、ユーザーが所在している国には課税権がない、またはあっても最小限のルーティン所得にしか課税できない、というような状況が徐々に増えてきているのでは、という危機感を各国税務当局が強く覚え始めたからだ。自国にユーザーが存在することで、それをもって実際どれだけのグループ超過利益に貢献しているか、っていう事実認定は各企業グループ毎に大きく異なるだろうし、算定は困難。こんな事実認定を実際に追及でもしようものなら、多くの係争の基となるのは必至。なので決め事として何らかのフォーミュラの使用が必然となる。
そこで、ピラー1は、オフィスやPEと言った物理的なプレゼンスのあるなしにかかわらず、一定要件下で市場国に課税権を認め、大企業グループの超過利益をフォーミュラベースの配賦比率で市場国に課税所得として分配しようという大胆な新国際課税システムを提案している。米国州法人税のユニタリー合算計算みたいだ。
ただ、これを既存のALPと「共存」させる形で実現させようとしているためにかなり複雑。この共存をどう考えるかっていうベーシックな点を理解しないとピラー1はよく分からないだろう。OECDのことばを借りると、この共存は「Overlay」となるけど、個人的には「Overlap」という方が実態に近いと感じている。ピラー1では、多国籍企業が認識する所得のうち、市場国が市場として課税できる金額をAmount A、B、Cと3部構成にしている。まず、重要なポイントは、A、B、C、というピラー1が議論している所得は、「市場国が市場として課税できる所得のみ」の話しだっていう点。多国籍企業の全ての活動から生じる所得が全てA、B、C、で構成されている訳ではない。すなわち、A+B+C=100とか単純な数式は成り立たない。ちなみに日本語では所得A、B、C、っていうこともあるようだけど、ここでは原文通りAmount A、B、Cとしておく。
で、後日詳しく触れるけど、Cは既存のALP、Bも計算法こそシンプルにしているものの概念はALP。すなわち、大概において従来の国際課税システム下でも市場国は市場として既にAmount BとCは課税できていることになる。Cに関しては実際に課税しているか否かは別にしても、既に従来の国際課税インフラ、すなわちALPで課税できる仕組みになっている。この点は実は重要で、BとCは、仮にピラー1が瓦解し、合意に達することができなかったとしても、関係なく市場国は同様の金額を課税する権利を有する。米国によるMarket Intangibleに基づく超過利益の一部を自国で課税しようとする動きは既存のALP下での話しだし、Amount Cとはまさにそのような所得をカバーしようとしているものだ。
企業活動は市場国における販売だけではなく、他にも製造活動やR&Dその他の機能・リスクに対応する所得がいろいろとあり得る。Amount BとCが従来の考え方でも市場国が市場として既に課税できているのが原則だとすると、これにグループ内の各事業主体が認識する市場国の市場として課税対象とは関係のない所得を足すと、既存システム下での、多国籍企業グループの所得合計となるはず。すなわち、グループ全体の所得を100とすると、B+C+市場国の市場としての所得とは関係ない所得=100になるはず。あれ、Amount Aはどこ行っちゃったの、って思われたら、そこがピラー1の恐ろしいところ。Amount Aは既存のシステムでは誰かが既にどこかで知らずに認識している所得の一部になるからだ。
このAmount Aこそが物理的存在があってもなくても新たに市場国に課税権が与えられる金額で、ピラー1の神髄的な金額だけど、従来のALPと異なり事業主体・PE単位ではなく「グループ全体」の所得を基に算定するっていう点が最初の最重要ポイント。すなわち、ALPは、関連者グループ間でいろいろと協働したり、グループ内法人・PE間でさまざまな取引をしているものを、最終的には各事業主体・PE単位で認識するべき所得を各主体・PEの機能・リスクを基に経済的に算定する。Amount Aは全く違う。Amount Aはグループ全体の所得の一部を人工的に取り出すので、その定義からどの事業主体にも紐ついていないし、誰のものか分からない所得で構成されることになる。
さらにAmount Aの金額算定法もALPとは異なり、各事業主体やグループの機能・リスク、例えば市場国のMarket Intangibleとか、に基づく経済的な所得認定ではない。単純に連結決算書の税引前所得の一部をフォーミュラで超過利益とし、さらに超過利益の一定%をAmount Aとしてしまう。この2点、すなわち、どの事業主体が生み出しているか分からないグループ全体所得の一部である点、また、機能・リスクベースではないフォーミュラベースで算定される所得だという点、はALPの基本的な概念である「事業主体・PE単位の所得認定」「機能・リスクベースの所得算定」と相いれないものとなる。
更に概念的に相いれないだけでなく、さっきの方程式のようにグループの課税所得は「B+C+市場国の市場としての所得とは関係ない所得=100」で既にどこかの国で課税されている、または少なくともどこかの国の所得になっているので、急に空から降ってくるようなAmount Aというのはグループ内の誰のものでもないばかりか、単純に既に100の中に含まれている所得の一部を再度人為的に、というか無理やり取り出していることになる。すなわち、このまま放っておくとAmount Aというのは各市場国にばらまかれるけど、グループベースで見ると単純にAmount Aの金額だけ二重課税というか、少なくとも課税所得としてはどこかで2回反映されていることになる。しかも、どこで2重になっているか不明なままで。え~、Amount Aは「Reallocation」じゃないの、って思われるかもしれないけど、Reallocationとするには、この重複を何らかの形で処理しないといけない。この重複解消はピラー1のデザインの中でも最重要かつ複雑な検討事項となる。この点は次回以降のポスティングでもう少し詳しく考えてみたい。
ということでAmount Aはほぼ架空の所得で、既にどこかで課税所得になっているはずの金額が再度取り出されている、ってことを冒頭に明確にし、今後の話しに繋げて行きたい。
The Loco-motionと言えばもちろん元祖はLittle Evaだけど、その後著名なところでは 「I should be so lucky」とかで売れたオーストラリアのKylie Minogueとか、アリーナロック元祖Grand Funk Railroadがカバーしている。Kylieのも可愛い感じで良かったけど、やっぱりGrand Funk。ミシガン州のFlintでMark Farnerが結成したハードコアなアメリカンバンドだ。
Grand Funkは日本でも、その昔、後楽園(東京ドームではない)で激しい雷雨の中敢行されたコンサートが伝説化している。余りに激しい雨で、口パク疑惑が語られたこともあったけど、最終的には本当に演奏してたってことで落ち着いたんだと思う(?)。1975年のGrand Funk米国ツアーの様子を収録した2枚組ライブアルバム「Caught in the Act」はDeep Purpleの「Made in Japan」と並ぶライブの名作。ZeppelinのMSGライブ映画のサウンドトラック「The Song Remains the Same」もそうだけど、ライブって2枚組レコードで発売されることが多く、子供の頃は買うのに相当勇気が要った。他にプラモ(笑)とかに配賦するべき予算もあり、Grand FunkのCaught in the Actの新品はお小遣いの範囲で手が出なかったので、結局、当時よく掘り出し物を探しに出入りしてたディスクユニオンで中古を見つけて入手したものだ。
最初からMark Farnerがガンガン盛り上げ、前々曲のSome Kind of Wonderful辺りからクライマックスっぽくなってきて、1枚目B面の最後にとどめを刺す感じでThe Loco-Motionが登場する。今You Tubeとかで見ると、下品というかなんというかチョッと笑っちゃうけど、ハードロックって本来こんなんだよね、っていうのを再認識させてくれるバンド。ボーカル兼ギターのMark Farnerはいつも最初から上半身裸だし後のVan HalenのDave Lee Rothとかに通じる品のない格好良さ(なにそれ?)が楽しめる。Mark Farner、ギターは下手じゃないけど、70年代のハードロックギタリストにありがちな、手持ちフレーズが限られているチョッとAlvin Leeみたいなギタリストだ。Alvin Leeと言えばWoodstockのTen Years Afterは格好よかったね。Woodstockの映画では最後に登場するJimi Hendrixが余りに凄すぎて、Alvin Leeとか、サンタナとか、普通だったら強く印象に残るはずのギタリストのこと忘れちゃったりしてたけどね。
Grand Funkなんて今では知らない人の方が多いと思うので、怖いもの見たい人はFootstompin' Musicで始まるツアーの動画をYouTubeで見てみて欲しい。American Bandとか名曲。もちろんMark Farnerのカウントで始まるThe Loco-Motionもお忘れなく。古き良きアメリカだ。
で、The Loco-Motionを繰り返し見過ぎて「it's easier than learning your A、B、C」っていう歌詞が頭を離れなくなったら、その勢いでOECDのピラー1のAmount A、B、Cにチャレンジ。え~、ピラー1全然1、2、3やドレミじゃないじゃん、って当たり前だよね。100年続いた国際課税システムを少なくとも部分的に斬新なものに変えようって話しだから、The Loco-Motionの「a chug-a chug-a motion」とは次元が違う訳だ。
ピラー1は日本語では第1の柱と訳されるけど、ちょっと個人的にしっくりこないのでここではピラー1ってしておく。このピラー1とかUnified Approachが何なのか、とかいろいろな前置きは書こうと思えば、それだけも長編になっちゃうけど、皆様も散々目にしたり聞いたりしてると思うので、ここでは極簡単に触れておく。100年間続いてきた国際課税の基本的な枠組みが、デジタル経済やグローバル経済の実態に合わなくなってきて抜本的に見直す時期に来ているのではないかっていう問題意識は以前のオリジナルBEPSアクションプラン1の頃から存在はしていた。アクションプラン1ではVATはともかく法人税の世界では具体的なアクションが示唆された訳ではなく、具体的な進展が近々に見込まれる様子ではなかった。
しかし、その間にデジタル経済は更に加速度的に進化し、多くのユーザーが自国に存在するにもかかわらずデジタル企業から各国課税当局が考える「適正なシェア」の法人税を徴収できないことに不満を抱き始めた国々が、一方的にDSTというデジタル課税を導入し始めた。DSTはグロスベースだったりすることも多いし、二重課税排除システムがないので対象となると被害が大きい。DSTはよく「Googleタックス」とか「GAFAタックス」と揶揄されるように、実質DSTを支払うのは米国の大手ハイテク企業なので、米国としてはもちろん容認できず、追加関税で報復とか、このまま放っておくと大混乱必至という状況になってしまった。そんなこんなで、これ以上流暢なことを言っている場合ではなくなり、2019年に猛スピードでOECDの提案があり、つい一カ月チョッと前の2020年1月末に130か国がOECDの提案を基に2020年中にコンセンサス作りで協調していくことを決めたものだ。
100年掛けて進化してきた現状・既存の国際課税システムの基本は、現地法人オフィスとかPEとか、何らかの物理的な存在がある場合に、その国に課税権が認められ、そのオフィスやPEが持つ機能・リスクに基づいて適正と考えられる所得を配賦するっていうもの。これは正確には租税条約ネットワークに基づく国際課税システムで、国内法では異なる規定を持つこともある。そのいい例が他でもない米国で、国内法には基本的にはPEという概念はなく、代わりに米国事業(US Trade or Business)というとてつもなくグレーな概念がある。US Trade or Businessは必ずしも、固定的な施設を米国に所有していなくても認定されるし、そこから生じる、または生じるとみなされる所得はECIとして申告課税の対象となる。米国と条約を締結している日本のようなラッキーな国の居住者は連邦法人税の観点からは、基本PEに基づく課税関係が最終的な取り扱いになるけど、シンガポールとか中南米の国とかで米国と条約を締結していないと(または何年も前に締結したつもりが米国が批准していないと(苦笑))、より厳しく不確実性の高い課税関係を強いられる。したがって今回100年ぶりに見直されている国際課税システムというのは、数多くの二国間の条約に基づいて構築されている複雑かつある意味脆弱なネットワークを基に成り立っている。これを魔法の杖一振りで短期間で新たな共通ルールに変えようという試みなので、参加プレイヤーが多くもちろん一筋縄でいく話しではない。
で、この伝統的な国際課税システムの基本は上述の通り、「事業主体」または「PE」単位で課税所得が決定される点。そして、この課税単位となる各主体・PEの「機能・リスク」的に適正と考えられるレベルの利益が課税所得となる点。この基本2点こそ、米国が1930年代から適用し、1968年、1994年の規則を通じて近代化してきたArm’s-Length Principle(ALP)だ。ALPは今日の国際課税システムに奥深く組み込まれているので、ピラー1が登場するまでALP以外の国際課税システムは、理論的には議論されることはあっても、現実的とは考えられていなかった。
もちろん第三者とだけビジネスしてるケースは、実際に認識される所得がそのままその主体・PEの課税所得になるけど、グローバル経済でビジネスを行っている多国籍企業の世界では、どんなにシンプルな企業でも、グループ内に多くの主体があり、例えばX国とY国でR&Dして、Z国で生産して、それを現地法人の販社、第三者の問屋経由でX、Y、Z国を含む100か国に販売している、っていうような状況が普通なので、各主体がALPに基づきどれだけの所得を認識するべきか、っていう移転価格問題は常に争点の種となる。
で、デジタル経済にこれがなぜ馴染まず、問題視されているかというと、OECD言うところの「Market Jurisdiction」、ここでは日本語で「市場国」ってしとくけど、に現地法人のオフィスやPEというプレゼンスがなくても、またはかなり限定的な機能・リスクしか持ってなくても、デジタル経済の世界では、その国に所在するユーザー、消費者、顧客に自由にアクセスし、活用することができる。また、場合によってはユーザーデータ等に超過利益の源泉となる価値があるにもかかわらず、ユーザーが所在している国には課税権がない、またはあっても最小限のルーティン所得にしか課税できない、というような状況が徐々に増えてきているのでは、という危機感を各国税務当局が強く覚え始めたからだ。自国にユーザーが存在することで、それをもって実際どれだけのグループ超過利益に貢献しているか、っていう事実認定は各企業グループ毎に大きく異なるだろうし、算定は困難。こんな事実認定を実際に追及でもしようものなら、多くの係争の基となるのは必至。なので決め事として何らかのフォーミュラの使用が必然となる。
そこで、ピラー1は、オフィスやPEと言った物理的なプレゼンスのあるなしにかかわらず、一定要件下で市場国に課税権を認め、大企業グループの超過利益をフォーミュラベースの配賦比率で市場国に課税所得として分配しようという大胆な新国際課税システムを提案している。米国州法人税のユニタリー合算計算みたいだ。
ただ、これを既存のALPと「共存」させる形で実現させようとしているためにかなり複雑。この共存をどう考えるかっていうベーシックな点を理解しないとピラー1はよく分からないだろう。OECDのことばを借りると、この共存は「Overlay」となるけど、個人的には「Overlap」という方が実態に近いと感じている。ピラー1では、多国籍企業が認識する所得のうち、市場国が市場として課税できる金額をAmount A、B、Cと3部構成にしている。まず、重要なポイントは、A、B、C、というピラー1が議論している所得は、「市場国が市場として課税できる所得のみ」の話しだっていう点。多国籍企業の全ての活動から生じる所得が全てA、B、C、で構成されている訳ではない。すなわち、A+B+C=100とか単純な数式は成り立たない。ちなみに日本語では所得A、B、C、っていうこともあるようだけど、ここでは原文通りAmount A、B、Cとしておく。
で、後日詳しく触れるけど、Cは既存のALP、Bも計算法こそシンプルにしているものの概念はALP。すなわち、大概において従来の国際課税システム下でも市場国は市場として既にAmount BとCは課税できていることになる。Cに関しては実際に課税しているか否かは別にしても、既に従来の国際課税インフラ、すなわちALPで課税できる仕組みになっている。この点は実は重要で、BとCは、仮にピラー1が瓦解し、合意に達することができなかったとしても、関係なく市場国は同様の金額を課税する権利を有する。米国によるMarket Intangibleに基づく超過利益の一部を自国で課税しようとする動きは既存のALP下での話しだし、Amount Cとはまさにそのような所得をカバーしようとしているものだ。
企業活動は市場国における販売だけではなく、他にも製造活動やR&Dその他の機能・リスクに対応する所得がいろいろとあり得る。Amount BとCが従来の考え方でも市場国が市場として既に課税できているのが原則だとすると、これにグループ内の各事業主体が認識する市場国の市場として課税対象とは関係のない所得を足すと、既存システム下での、多国籍企業グループの所得合計となるはず。すなわち、グループ全体の所得を100とすると、B+C+市場国の市場としての所得とは関係ない所得=100になるはず。あれ、Amount Aはどこ行っちゃったの、って思われたら、そこがピラー1の恐ろしいところ。Amount Aは既存のシステムでは誰かが既にどこかで知らずに認識している所得の一部になるからだ。
このAmount Aこそが物理的存在があってもなくても新たに市場国に課税権が与えられる金額で、ピラー1の神髄的な金額だけど、従来のALPと異なり事業主体・PE単位ではなく「グループ全体」の所得を基に算定するっていう点が最初の最重要ポイント。すなわち、ALPは、関連者グループ間でいろいろと協働したり、グループ内法人・PE間でさまざまな取引をしているものを、最終的には各事業主体・PE単位で認識するべき所得を各主体・PEの機能・リスクを基に経済的に算定する。Amount Aは全く違う。Amount Aはグループ全体の所得の一部を人工的に取り出すので、その定義からどの事業主体にも紐ついていないし、誰のものか分からない所得で構成されることになる。
さらにAmount Aの金額算定法もALPとは異なり、各事業主体やグループの機能・リスク、例えば市場国のMarket Intangibleとか、に基づく経済的な所得認定ではない。単純に連結決算書の税引前所得の一部をフォーミュラで超過利益とし、さらに超過利益の一定%をAmount Aとしてしまう。この2点、すなわち、どの事業主体が生み出しているか分からないグループ全体所得の一部である点、また、機能・リスクベースではないフォーミュラベースで算定される所得だという点、はALPの基本的な概念である「事業主体・PE単位の所得認定」「機能・リスクベースの所得算定」と相いれないものとなる。
更に概念的に相いれないだけでなく、さっきの方程式のようにグループの課税所得は「B+C+市場国の市場としての所得とは関係ない所得=100」で既にどこかの国で課税されている、または少なくともどこかの国の所得になっているので、急に空から降ってくるようなAmount Aというのはグループ内の誰のものでもないばかりか、単純に既に100の中に含まれている所得の一部を再度人為的に、というか無理やり取り出していることになる。すなわち、このまま放っておくとAmount Aというのは各市場国にばらまかれるけど、グループベースで見ると単純にAmount Aの金額だけ二重課税というか、少なくとも課税所得としてはどこかで2回反映されていることになる。しかも、どこで2重になっているか不明なままで。え~、Amount Aは「Reallocation」じゃないの、って思われるかもしれないけど、Reallocationとするには、この重複を何らかの形で処理しないといけない。この重複解消はピラー1のデザインの中でも最重要かつ複雑な検討事項となる。この点は次回以降のポスティングでもう少し詳しく考えてみたい。
ということでAmount Aはほぼ架空の所得で、既にどこかで課税所得になっているはずの金額が再度取り出されている、ってことを冒頭に明確にし、今後の話しに繋げて行きたい。
Wednesday, March 4, 2020
お雛祭りにOECDピラー1のSafe Harbor提案再浮上
さて、前回と前々回は慣れないMeals and Entertainmentにかかわるポスティングでチョッと手間取ったけど、いろんな事例、楽しんで頂けましたでしょうか。で、今回からは満を持して(?)BEATとパートナーシップまたはOECDピラー1のAmount A, B, Cと従来のALPの関係のどっちかの話しに突入するってところで幕を閉じていた。
この2つ、どっちも魅力的な題材で、「どちらにしようかな神様の言う通り」または「イニミニマニモ・・・」ってやってランダムに選ぼうと思ってたんだけど、Mnuchin長官もSafe Harbor案を譲ってないみたいだし、ここはやっぱりピラー1かな、と思いながらイニミニマニモってしてみた。これって実はインチキで、2人とか2つしかチョイスがなくて自分が当たりたいとき、当たりたくないとき、3人、4人だったらどうなるかとか、子供だったら誰から始めたらどこで終わるか知っているので、ほとんどヤラセ。で、計算通り(笑)、OECDになったので、今日からモードを変えてOECDピラー1のAmount A、B、Cの話し。
今日はそのプレリュードって感じで、お雛様の3月3日に下院歳入委員会のヒアリングにおけるMnuchin長官のコメントに関して。
Mnuchin財務長官がピラー1を「Safe Harbor」化するって提案を公開レターという形でOECDに急に送って、世間をビックリさせた件は2019年12月3日のポスティング「DCからのお手紙でOECDデジタル課税・ピラー1に早くも暗雲?」を参照して欲しいけど、その後、この件に関してはとりあえず、ピラー1の在り方がもう少し決まるまで封印しておきましょう、みたいな形で議論先延ばしになっている。そうこうしている間にウヤムヤになって話しがなくなってしまうのではないか、という期待もあるのかもしれない。
ところが、3月3日の下院歳入委員会のヒアリングで米国のポジションとしてはSafe Harbor提案に今後も取り組んでいく点が確認された。ヒアリングでは、まずは例によってトランプ大統領の個人所得税の申告書を財務省が開示しないのは法律違反だとか、そんなことは裁判所じゃないと決められないとか、Joe Biden一家の怪しいビジネスディールの話しとか、いい加減まだやってんの?的な応酬があった後、話しはもっぱら新型肺炎にかかわる連邦政府の対応策に終始したらしい。ちなみにこの点に関しては翌日となる今日4日、$8.3B(約9千億円相当)規模の緊急歳出パッケージが議会を通過しそう。これ、早く収束してくれるといいけどね。おかげでJFKもLAXもガラガラ。混んでないのは助かるけど理由が理由なだけに全然喜べない。
で、そんな中、気骨ある議員さんが、フランス等のデジタルサービス課税(DST)にかかわる懸念およびOECDとの協調体制にかかわる質問をした。Mnuchin財務長官は、各国で議論されているDSTは米国企業を狙い撃ちにしているもので到底容認できないという以前からのポジションを繰り返した。まあ、ちまたではGAFAタックスとか言われてるんだからそうだよね。
で、その直後のMnuchin財務長官のコメントは注目に値するんだけど、「財務省はOECDの全体の(グローバルコンセンサス作りにかかわる)プロセスおよびピラー2はサポートしている」と発言した模様。米国財務省のサポート対象を敢えて「全体のプロセス」と「ピラー2」に特定している辺りはもちろん偶然ではない。ピラー2はどうせ米国はTCJAで既にGILTIあるし、みたいな説明だったらしい。似て非なるものだけどね。
じゃ、ピラー1はどうなっちゃったの?って言うと、「ピラー1はまだ検討中で、米国多国籍企業に確実性を担保するため、Safe Harbor化する提案に取り組んでいる」ということ。先週出たピラー1および2にかかわるOECDのインパクト・経済分析でも、前提条件でピラー1はSafe Harborではないとしているのにね。ただ、この件にかかわらず結構ピラー1もピラー2と並んで難しいので次回から一緒に紐解いていきましょう。ちなみに僕は米国税務、特にクロスボーダー系とか組織再編、パススルーを専門としているので、OECDの提案、それにかかわる経済分析、移転価格の新しい概念とか、皆と同じで、去年あたりから初めて読み始めた分野なのでよろしく。
この2つ、どっちも魅力的な題材で、「どちらにしようかな神様の言う通り」または「イニミニマニモ・・・」ってやってランダムに選ぼうと思ってたんだけど、Mnuchin長官もSafe Harbor案を譲ってないみたいだし、ここはやっぱりピラー1かな、と思いながらイニミニマニモってしてみた。これって実はインチキで、2人とか2つしかチョイスがなくて自分が当たりたいとき、当たりたくないとき、3人、4人だったらどうなるかとか、子供だったら誰から始めたらどこで終わるか知っているので、ほとんどヤラセ。で、計算通り(笑)、OECDになったので、今日からモードを変えてOECDピラー1のAmount A、B、Cの話し。
今日はそのプレリュードって感じで、お雛様の3月3日に下院歳入委員会のヒアリングにおけるMnuchin長官のコメントに関して。
Mnuchin財務長官がピラー1を「Safe Harbor」化するって提案を公開レターという形でOECDに急に送って、世間をビックリさせた件は2019年12月3日のポスティング「DCからのお手紙でOECDデジタル課税・ピラー1に早くも暗雲?」を参照して欲しいけど、その後、この件に関してはとりあえず、ピラー1の在り方がもう少し決まるまで封印しておきましょう、みたいな形で議論先延ばしになっている。そうこうしている間にウヤムヤになって話しがなくなってしまうのではないか、という期待もあるのかもしれない。
ところが、3月3日の下院歳入委員会のヒアリングで米国のポジションとしてはSafe Harbor提案に今後も取り組んでいく点が確認された。ヒアリングでは、まずは例によってトランプ大統領の個人所得税の申告書を財務省が開示しないのは法律違反だとか、そんなことは裁判所じゃないと決められないとか、Joe Biden一家の怪しいビジネスディールの話しとか、いい加減まだやってんの?的な応酬があった後、話しはもっぱら新型肺炎にかかわる連邦政府の対応策に終始したらしい。ちなみにこの点に関しては翌日となる今日4日、$8.3B(約9千億円相当)規模の緊急歳出パッケージが議会を通過しそう。これ、早く収束してくれるといいけどね。おかげでJFKもLAXもガラガラ。混んでないのは助かるけど理由が理由なだけに全然喜べない。
で、そんな中、気骨ある議員さんが、フランス等のデジタルサービス課税(DST)にかかわる懸念およびOECDとの協調体制にかかわる質問をした。Mnuchin財務長官は、各国で議論されているDSTは米国企業を狙い撃ちにしているもので到底容認できないという以前からのポジションを繰り返した。まあ、ちまたではGAFAタックスとか言われてるんだからそうだよね。
で、その直後のMnuchin財務長官のコメントは注目に値するんだけど、「財務省はOECDの全体の(グローバルコンセンサス作りにかかわる)プロセスおよびピラー2はサポートしている」と発言した模様。米国財務省のサポート対象を敢えて「全体のプロセス」と「ピラー2」に特定している辺りはもちろん偶然ではない。ピラー2はどうせ米国はTCJAで既にGILTIあるし、みたいな説明だったらしい。似て非なるものだけどね。
じゃ、ピラー1はどうなっちゃったの?って言うと、「ピラー1はまだ検討中で、米国多国籍企業に確実性を担保するため、Safe Harbor化する提案に取り組んでいる」ということ。先週出たピラー1および2にかかわるOECDのインパクト・経済分析でも、前提条件でピラー1はSafe Harborではないとしているのにね。ただ、この件にかかわらず結構ピラー1もピラー2と並んで難しいので次回から一緒に紐解いていきましょう。ちなみに僕は米国税務、特にクロスボーダー系とか組織再編、パススルーを専門としているので、OECDの提案、それにかかわる経済分析、移転価格の新しい概念とか、皆と同じで、去年あたりから初めて読み始めた分野なのでよろしく。
Friday, February 28, 2020
接待交際費の損金算入制限にかかわる財務省規則案 (2)
前回、M&E費用の損金算入を制限しているSection 274ていうチョッといつもの、例えばGILTIとかとは違う「Everyday People」的な分野の財務省規則案に関して書き始めた。Everyday Peopleマターだけに逆に毎日の事業活動や申告書作成時には常の登場する検討事項と言える。
Section 274は基本的にM&E費用に関するルールだけど、M&E、すなわちMealsとEntertainmentは2つ異なる費目であり、別々の損金算入制限が適用され、基本オーバーラップはしない。ただ、Entertainment費用に込みで、食事代として別に明細が表記されてない場合には全体がEntertainment費用となる点は前回の野球やバスケットボールの例示でお分かり頂けたと思う。
そもそもEntertainmentって何?っていうベーシックな点に未だ触れてなかったのを思い出したけど、Mealsの定義同様にかなり広義。日本語にすると変かもしれないけど、規則草案では、歓待、娯楽、レクリエーションに当たると一般に理解される活動全て、とした上で、例として、バー、劇場、カントリークラブ、ゴルフ場、スポーツクラブ、スポーツイベント、狩り、釣り、バケーションその他の旅行における「もてなし」を挙げている。う~ん、狩りで接待ね。中々洒落てて、一回体験してみたいものだ。州のライセンスを取得し、U.S. Fish and Wildlife Serviceが指定するNational Wildlife Refugeに行って接待なのかな。チョッと動物が可哀そうでは、って思うんだけど、実はエコシステムの維持に貢献しているという話しを聞いたことがある。ステレオタイプ的に空想すると、空飛ぶカモを猟銃で一撃し、すかさずに同行している猟犬が走って行って獲物を見つける、みたいな状況。アーケードのゲームでも命中しないので、実際に遠くを飛んでる獲物を打ち落とすなんて僕には不可能だろう。そもそも銃の操作も分からないし、間違えて暴発でもさせて自分や「Entertainment」の相手に怪我でも負わせてしまったら、費用の損金算入どころじゃないし、契約も破断確実。まあ、Entertainmentを定義する財務省規則の例に狩りが載っていること自体、アメリカの先祖伝来の遺産というか歴史を感じてしまった。NYCというZooに居る限り縁のない世界。
とにかくこれらの活動は、その際中にどれだけビジネスをしても、活動内容がこれらに準じるということをもって常にEntertainmentと取り扱われるとバッサリ規定されている。これらの活動の目的がPRだったり、宣伝広告なので、別の費目で損金算入という議論を排除している。会食と異なり、必ずしも相手がいないとダメということではないようで、家族しか参加していないイベントも、仮に必要経費と認められてもEntertainmentとなる。ただ、納税者の事業は加味してくれるそうで、例えば、音楽評論家がロックコンサートに行く場合、通常コンサートはEntertainmentに当たるけど、その場合にはそれ以外の経費扱いとなる。ファッションメーカーによる春夏とか秋冬のコレクションを披露するファッションショーの費用も同様。一方、自動車メーカーがディーラーのイベントでファッションショーを企画したらそれはEntertainmentになるとしている。なんかM&Eの規則って普段読んでるGILTIとかFTCとかと全然違って例が面白い。また、宿泊費とか自動車関係の費用はその目的が出張等の事業目的であれば、Entertainmentには当たらないが、その他の目的で使用される場合にはEntertainment費用に区分される。
で、MealsはEntertainmentと異なり、50%損金算入っていうのが原則ルールだけど、一番分かり易い50%損金算入のMealsの例は、クライントとのビジネスランチ。また、クライントじゃなくても、例えば、パートナーがマネージャーをランチに誘い、今年の人事評価的なアドバイスとかをする社内ランチも典型的な例だろう。出張中の食費も同様。ただし、配偶者、扶養家族等のMealsに関しては、納税者が軍人だったり、または配偶者や扶養家族も従業員だったりする特殊なケースを除き、損金算入は認められない。
で、Section 274に基づくMealsの50%損金算入制限には例外がいつくかあり、それらの除外規定が適用されると、100%損金算入が認められる。代表的なものをいくつか挙げてみる。
まずは、自社の従業員に供与するMealsで、これらを従業員のみなし給与として取り扱い、きちんんと通常の給与同様にPayroll処理している食事代。例えば、ハイテク企業なんかでよくあるけど、自社のカフェで従業員に無償でオーガニックの食事を朝、昼、晩、提供しているようなケース。この食事代が少額フリンジ免除に当たらない場合、雇用者は食事代を従業員に対するみなし給与として処理することになる一方、50%制限は適用されず、全額が損金算入となる。これは当たり前の話しで、こんな取り扱いをしているということはそもそもMeals費用ではない。単純に従業員に給与を上げて、従業員が自社のカフェでコストを負担して食事しているのと同じ状況。給与なので当然100%損金算入。
ちなみにこの例で、食事代が少額フリンジとして従業員側で所得認識が免除されると、逆に雇用者側では50%損金算入制限の対象となってしまう。似たような例で、結構タイトな条件下でだけど、Mealsが雇用者側の都合で提供されていると認められると、従業員側で所得認識しないでもいいっていう例外があるけど、この例外が適用されるMealsは従業員側での給与所得認識がないことから、雇用者側では50%損金算入制限の対象。このパターンでよく出てくるのはメディカルスタッフとかが夜間待機させられる際に社内で軽食が提供されるようなケース。
また、雇用者が従業員のために企画するレクリエーション系のイベントにかかわるMealsも100%損金対象。レクリエーション系のイベントとして、ホリデーパーティ、サマーピクニックなんかが例に挙げられている。ただし、高額所得者、役員、10%以上の持分を所有する株主・オーナーへの恩典が主と考えられるイベントは従業員のための企画には当たらず、除外規定の適用はない。
典型的なのは、雇用者が12月にホテルのボールルームを借り切り、バフェで食事は食べ放題、ドリンクはオープンバーで、従業員全員を招待してホリデーパーティーを企画するような例。雇用者はMealsを含むパーティーのコストを100%損金算入することができる。
ここでのひとつのキーは従業員全員を招待している点。もしVP以上とか、高額所得者のみを招待してのパーティーだと事情が異なってくる。その場合、通常のルールに戻るので、もしホテルからの請求書に食事代が別途明記されていて、それが市場価格であれば、50%損金算入できる。前回のポスティングで書いたバスケットボールのお寿司とHelapino入りのチーズNachosと似てるね。
ホリデーパーティーとかと異なり、社内カフェやコーヒールームにおいてある無料のスナックとかはレクリエーションにかかわるものにはならないので50%のみ損金算入となる。例えば、会計事務所なんかでありがちだけど、Busy Seasonの土曜日とか、まあ例としては平日でも関係ないんだけど、臨場感を演出するため土曜日のTimes Squareのオフィスを想像してもらいたい。もちろん街はまだ眠っていて7th Avenueも42nd Streetも道行く人はまばら。Broadwayの路駐もしたい放題と勘違いして車停めたりして、Broadwayの日中路駐はTimes Square辺りは日曜だけだったのでチケット貼られて$110払うことになったりとか。で、各階のパントリーに、無料のコーヒー、ソーダ(米国では炭酸飲料のことを総じてソーダと呼ぶ。緑のソーダではないからね)、ボトルの水(たまにはHealthyなものもないとね)、チップス、ドーナッツ、その他スナックが置いてあったとする。これらのコストは雇用者側で50%損金算入。チップスやドーナッツじゃホリデーパーティーにならないもんね。
また、同じ「パーティー」でも個別のケースは50%制限。例えば、クライアントと従業員の双方が参加する夕食の日がたまたま従業員の誕生日だったとする。雇用者が気をきかせて従業員用にキャンドル付きの特別に大きなNYチーズケーキをオーダーし、レストランの従業員が3人で「Happy Birthday」を歌ってくれたとしても、このデザート代も含めて全額通常の会食代として50%制限対象。
また、現実にはあんまり見ないパターンだけど、一般大衆にMealsが供与される場合には、その一部が自社の従業員に供与されてたとしても、100%損金算入対象となる。一般大衆って言っても、新宿駅やPenn Stationでみんなに食事を配る必要はない。例えば、不動産エージェントが誰でもStop byできる物件のオープンハウスを開催し、そこに簡単な軽食を置くとする。軽食はエージェント、エージェントの従業員、潜在的なバイヤー、他の不動産エージェント等が食べるとする。軽食の消費が50%超、潜在的なバイヤーや他のエージェントだったことをサポートできれば全額が100%損金算入対象となる。50%以下の場合には、バイヤーやエージェントに供された部分のみ100%となり、自社消費部分は50%のみ損金算入だ。自動車のディーラーショールームにおいてある軽食とか、子供のサマーキャンプの企画会社が子供と自社従業員のカウンセラー双方に提供する軽食も同じ考え方。
最後にチョッと変な例だけど、レストランとかの飲食店でお客さんから食事代を受け取って提供している食事にかかわるコストはもちろんだけど50%制限対象ではない。さらにレストラン運営の一環で、店内で従業員にシフトの前後やシフトの最中に無償とかディスカウントで供与される食事にかかわるコストも100%損金算入できる。Chipotleとかで、従業員がよく山盛りのGuac付きのBowlとか食べてる姿を見かけるけど、あれだね。
慣れないM&Eの話しでちょっと疲れてきたので、この辺にしておく。ちなみにEntertainmentにしても、Mealsのタイプにしても、これらの項目を後から整理するのは大変なので、費用精算時点で損金算入ルールに基づいて会社側のシステムがこれらの費目をきちんと区分して管理できないと申告書作成時の負荷が高くなる。
次回はBEATとパートナーシップ、OECDピラー1のAmount A, B、Cと従来のALPの関係のどっちにしようかな。う~ん。M&Eでちょっと欲求不満気味なんでどっちも捨て難い。神様の言う通り、または英語で子供たちが言うところの「イニミニマニモ・・・」ってやってランダムに選ぶしかないかも。さてどっちになるでしょうか。
Section 274は基本的にM&E費用に関するルールだけど、M&E、すなわちMealsとEntertainmentは2つ異なる費目であり、別々の損金算入制限が適用され、基本オーバーラップはしない。ただ、Entertainment費用に込みで、食事代として別に明細が表記されてない場合には全体がEntertainment費用となる点は前回の野球やバスケットボールの例示でお分かり頂けたと思う。
そもそもEntertainmentって何?っていうベーシックな点に未だ触れてなかったのを思い出したけど、Mealsの定義同様にかなり広義。日本語にすると変かもしれないけど、規則草案では、歓待、娯楽、レクリエーションに当たると一般に理解される活動全て、とした上で、例として、バー、劇場、カントリークラブ、ゴルフ場、スポーツクラブ、スポーツイベント、狩り、釣り、バケーションその他の旅行における「もてなし」を挙げている。う~ん、狩りで接待ね。中々洒落てて、一回体験してみたいものだ。州のライセンスを取得し、U.S. Fish and Wildlife Serviceが指定するNational Wildlife Refugeに行って接待なのかな。チョッと動物が可哀そうでは、って思うんだけど、実はエコシステムの維持に貢献しているという話しを聞いたことがある。ステレオタイプ的に空想すると、空飛ぶカモを猟銃で一撃し、すかさずに同行している猟犬が走って行って獲物を見つける、みたいな状況。アーケードのゲームでも命中しないので、実際に遠くを飛んでる獲物を打ち落とすなんて僕には不可能だろう。そもそも銃の操作も分からないし、間違えて暴発でもさせて自分や「Entertainment」の相手に怪我でも負わせてしまったら、費用の損金算入どころじゃないし、契約も破断確実。まあ、Entertainmentを定義する財務省規則の例に狩りが載っていること自体、アメリカの先祖伝来の遺産というか歴史を感じてしまった。NYCというZooに居る限り縁のない世界。
とにかくこれらの活動は、その際中にどれだけビジネスをしても、活動内容がこれらに準じるということをもって常にEntertainmentと取り扱われるとバッサリ規定されている。これらの活動の目的がPRだったり、宣伝広告なので、別の費目で損金算入という議論を排除している。会食と異なり、必ずしも相手がいないとダメということではないようで、家族しか参加していないイベントも、仮に必要経費と認められてもEntertainmentとなる。ただ、納税者の事業は加味してくれるそうで、例えば、音楽評論家がロックコンサートに行く場合、通常コンサートはEntertainmentに当たるけど、その場合にはそれ以外の経費扱いとなる。ファッションメーカーによる春夏とか秋冬のコレクションを披露するファッションショーの費用も同様。一方、自動車メーカーがディーラーのイベントでファッションショーを企画したらそれはEntertainmentになるとしている。なんかM&Eの規則って普段読んでるGILTIとかFTCとかと全然違って例が面白い。また、宿泊費とか自動車関係の費用はその目的が出張等の事業目的であれば、Entertainmentには当たらないが、その他の目的で使用される場合にはEntertainment費用に区分される。
で、MealsはEntertainmentと異なり、50%損金算入っていうのが原則ルールだけど、一番分かり易い50%損金算入のMealsの例は、クライントとのビジネスランチ。また、クライントじゃなくても、例えば、パートナーがマネージャーをランチに誘い、今年の人事評価的なアドバイスとかをする社内ランチも典型的な例だろう。出張中の食費も同様。ただし、配偶者、扶養家族等のMealsに関しては、納税者が軍人だったり、または配偶者や扶養家族も従業員だったりする特殊なケースを除き、損金算入は認められない。
で、Section 274に基づくMealsの50%損金算入制限には例外がいつくかあり、それらの除外規定が適用されると、100%損金算入が認められる。代表的なものをいくつか挙げてみる。
まずは、自社の従業員に供与するMealsで、これらを従業員のみなし給与として取り扱い、きちんんと通常の給与同様にPayroll処理している食事代。例えば、ハイテク企業なんかでよくあるけど、自社のカフェで従業員に無償でオーガニックの食事を朝、昼、晩、提供しているようなケース。この食事代が少額フリンジ免除に当たらない場合、雇用者は食事代を従業員に対するみなし給与として処理することになる一方、50%制限は適用されず、全額が損金算入となる。これは当たり前の話しで、こんな取り扱いをしているということはそもそもMeals費用ではない。単純に従業員に給与を上げて、従業員が自社のカフェでコストを負担して食事しているのと同じ状況。給与なので当然100%損金算入。
ちなみにこの例で、食事代が少額フリンジとして従業員側で所得認識が免除されると、逆に雇用者側では50%損金算入制限の対象となってしまう。似たような例で、結構タイトな条件下でだけど、Mealsが雇用者側の都合で提供されていると認められると、従業員側で所得認識しないでもいいっていう例外があるけど、この例外が適用されるMealsは従業員側での給与所得認識がないことから、雇用者側では50%損金算入制限の対象。このパターンでよく出てくるのはメディカルスタッフとかが夜間待機させられる際に社内で軽食が提供されるようなケース。
また、雇用者が従業員のために企画するレクリエーション系のイベントにかかわるMealsも100%損金対象。レクリエーション系のイベントとして、ホリデーパーティ、サマーピクニックなんかが例に挙げられている。ただし、高額所得者、役員、10%以上の持分を所有する株主・オーナーへの恩典が主と考えられるイベントは従業員のための企画には当たらず、除外規定の適用はない。
典型的なのは、雇用者が12月にホテルのボールルームを借り切り、バフェで食事は食べ放題、ドリンクはオープンバーで、従業員全員を招待してホリデーパーティーを企画するような例。雇用者はMealsを含むパーティーのコストを100%損金算入することができる。
ここでのひとつのキーは従業員全員を招待している点。もしVP以上とか、高額所得者のみを招待してのパーティーだと事情が異なってくる。その場合、通常のルールに戻るので、もしホテルからの請求書に食事代が別途明記されていて、それが市場価格であれば、50%損金算入できる。前回のポスティングで書いたバスケットボールのお寿司とHelapino入りのチーズNachosと似てるね。
ホリデーパーティーとかと異なり、社内カフェやコーヒールームにおいてある無料のスナックとかはレクリエーションにかかわるものにはならないので50%のみ損金算入となる。例えば、会計事務所なんかでありがちだけど、Busy Seasonの土曜日とか、まあ例としては平日でも関係ないんだけど、臨場感を演出するため土曜日のTimes Squareのオフィスを想像してもらいたい。もちろん街はまだ眠っていて7th Avenueも42nd Streetも道行く人はまばら。Broadwayの路駐もしたい放題と勘違いして車停めたりして、Broadwayの日中路駐はTimes Square辺りは日曜だけだったのでチケット貼られて$110払うことになったりとか。で、各階のパントリーに、無料のコーヒー、ソーダ(米国では炭酸飲料のことを総じてソーダと呼ぶ。緑のソーダではないからね)、ボトルの水(たまにはHealthyなものもないとね)、チップス、ドーナッツ、その他スナックが置いてあったとする。これらのコストは雇用者側で50%損金算入。チップスやドーナッツじゃホリデーパーティーにならないもんね。
また、同じ「パーティー」でも個別のケースは50%制限。例えば、クライアントと従業員の双方が参加する夕食の日がたまたま従業員の誕生日だったとする。雇用者が気をきかせて従業員用にキャンドル付きの特別に大きなNYチーズケーキをオーダーし、レストランの従業員が3人で「Happy Birthday」を歌ってくれたとしても、このデザート代も含めて全額通常の会食代として50%制限対象。
また、現実にはあんまり見ないパターンだけど、一般大衆にMealsが供与される場合には、その一部が自社の従業員に供与されてたとしても、100%損金算入対象となる。一般大衆って言っても、新宿駅やPenn Stationでみんなに食事を配る必要はない。例えば、不動産エージェントが誰でもStop byできる物件のオープンハウスを開催し、そこに簡単な軽食を置くとする。軽食はエージェント、エージェントの従業員、潜在的なバイヤー、他の不動産エージェント等が食べるとする。軽食の消費が50%超、潜在的なバイヤーや他のエージェントだったことをサポートできれば全額が100%損金算入対象となる。50%以下の場合には、バイヤーやエージェントに供された部分のみ100%となり、自社消費部分は50%のみ損金算入だ。自動車のディーラーショールームにおいてある軽食とか、子供のサマーキャンプの企画会社が子供と自社従業員のカウンセラー双方に提供する軽食も同じ考え方。
最後にチョッと変な例だけど、レストランとかの飲食店でお客さんから食事代を受け取って提供している食事にかかわるコストはもちろんだけど50%制限対象ではない。さらにレストラン運営の一環で、店内で従業員にシフトの前後やシフトの最中に無償とかディスカウントで供与される食事にかかわるコストも100%損金算入できる。Chipotleとかで、従業員がよく山盛りのGuac付きのBowlとか食べてる姿を見かけるけど、あれだね。
慣れないM&Eの話しでちょっと疲れてきたので、この辺にしておく。ちなみにEntertainmentにしても、Mealsのタイプにしても、これらの項目を後から整理するのは大変なので、費用精算時点で損金算入ルールに基づいて会社側のシステムがこれらの費目をきちんと区分して管理できないと申告書作成時の負荷が高くなる。
次回はBEATとパートナーシップ、OECDピラー1のAmount A, B、Cと従来のALPの関係のどっちにしようかな。う~ん。M&Eでちょっと欲求不満気味なんでどっちも捨て難い。神様の言う通り、または英語で子供たちが言うところの「イニミニマニモ・・・」ってやってランダムに選ぶしかないかも。さてどっちになるでしょうか。
Tuesday, February 25, 2020
接待交際費の損金算入制限にかかわる財務省規則案 (1)
それにしても今年のNYCの冬は暖かくて楽。NYCの公立校が一斉に「Midwinter Recess」でお休みになる頃、例年だと氷点下の毎日が続くんだけど、今年は全然。カリフォルニア並みとは言わないけど、朝のMidtownは連日適度に寒くて気持ちがいい。2月も後半を迎え、朝6時前でもQueensのLIC辺りは朝焼けになってくるし、徐々に日照時間も長くなってきてるのが実感できる。まさしくHere Comes the Sun。しかも3月前半からは早くもDaylight Savings(夏時間)開始だ。Daylight Savingsに突入する日曜日は1時間少なくて一日23時間だから、朝5時に起きたつもりが6時だったりして毎年のことながらショック。ただ、昔と違ってiPhoneとかPCとか勝手に時間変えてくれるんで、時間間違えたりすることはなくなったけど。
で、テリトリアル課税の対象所得がどれだけ少ないか、っていう話しも一応ラップアップでき、その一環で前回はGILTIの高税率免除規定にも触れることができたし、次はBEATとパートナーシップの関係、またはOECDピラー1のAmount A、B、Cと既存ALPのDeepな関係とか、いろいろと面白そうなトピックが山積みなので、何にしようかな、と考えていた矢先の2020年2月21日、TCJAで一部改定されてたSection 274、すなわち接待交際費の損金算入制限規定にかかわる財務省規則案が公表された。接待交際費っていう和訳はチョッとMisleadingで、正確には「Meals and Entertainment」にかかわる規定。Mealsは接待に限らず、社内のパーティーとか事業目的の飲食全てを網羅する。M&Eって略され、Big 4だと、M&Eばかりやってる専門家が結構居るほどこれはこれで奥深いエリアだ。
M&EってMedia and Entertainmentセクターを意味することもあるんで、社内で使われる際も、文脈でどっちのこと言ってるのか判断する必要がある。アルファベットの頭文字の略語、アクロニムが次々誕生するので要注意。例えばUTPって言うと、僕たち米国税務の世界では「Uncertain Tax Position」のことだったけど、最近は気を付けないとOECDピラー2のUndertaxed Paymentのことだったりする。まあアルファベットは26文字で構成されるから、3つのアルファベットの組み合わせでも算数的には1万7千以上あるからまだまだ安心(?)。コマーシャルジェットが離着陸するAirportは世界に1万程度って言われているので、Airportのコードが3文字で足りる訳だね。でも、プライベートジェット専用とかを含むと世界で4万とも言われてる。ということは3文字のコードはない空港もあるってことになるよね。まさか重複して使用はできないだろうし。モンタナに行くつもりがミズーリに行っちゃたり大変なことなるもんね。
って、またどうでもいい話になってきたので、M&Eの話しに戻るけど、Section 274はM&Eを費用扱いしていいですよ、って言ってくれている条文ではない。それは事業にかかわる必要経費を規定しているSection 162とかの世界。したがって必要経費でなければそもそも損金算入は認められない。この区分は主に個人事業主にとっての課題。で、Section 274は200番台、しかも261番以降に位置する点からも分かる通り、仮にSection 162とか他の条文で損金算入できるって規定されている費用項目でも、特別に制限を加えている条文のひとつだ。
で、今回はクロスボーダー課税でも、Sub Cの組織再編でも、Sub Kのパススルーでもなく、柄にもなくM&Eのお話し。余り得意分野じゃないので、適度に「ふ~ん」って感じで読んで頂きたい。即時償却が初めて中古資産にも適用が認められたのを受けて、M&Aばかりやっている連中が急に有形資産の償却を定義しているSection 167とか168とか、更に定義に使用されている179とか従来の守備範囲外に手を出したりしてて面白いけど、M&Eもその類の話しだ。ちなみに即時償却とM&Aの関係は超Deepなので、そのうち触れてみたいけどね。
で、M&EのSection 274ってもちろんTCJA前からあるんだけど、M&EのEに当たるEntertainment費用はTCJAにより原則全額損金不算入になってしまった。以前は結構なケースで費用化できていたのに。一方、MのMealは従来から引き続きTCJA後も原則50%制限。ただ各々の原則ルールには多くの例外が規定されていて、たかがM&Eのくせにとても複雑怪奇になっている。
Entertainment費用は損金不算入だけど、Mealは50%OKっていうのがSection 274の原則っていうのは上述の通りだけど、規則案では、このルールを具体的な異なるSituationにおける適用例を結構突っ込んで規定していて面白い。まず、Mealだけど、50%の損金算入が認められるのは通常のMealで、LavishだったりExtravagantだったり、つまり過度に贅沢な食事は全額損金不算入。何がLavishかはケースバイケースなんだろうけど。例えばインディアナ州のSouth Bendの会食とNYCのMidtownの会食では相当金額的に差異があるんで、Lavish度合いも異なる。
会食費用もMealなんで50%損金算入できるけど、会食と認められるには、カスタマー、クライアント、サプライヤー、従業員、エージェント、パートナー、アドバイザー系の相手が同席してないといけない。でも、まだクライアントじゃない相手を会食に誘ったらどうなっちゃうの、って心配した方がいるようで、そんなSituationを想定して、会食をしてる時点で必ずしもクライアント等である必要はなくて、潜在的にクライアントになる現実的な可能性があればOKだそうだ。
Entertainment費用はダメでMealは50%となると、EntertainmentにMealが一部入ってたらどうなるの、とか現実的によくある状況への適用が気になる。この点に関する基本的なアプローチは、別々にバラして各々のルールを適用っていうことなんだけど、Entertainmentの一環でMealが出てMeal代がEntertainment費用にごちゃごちゃに含まれちゃってて明細みてもどれがMeal代が分からないようなケースは全額Entertainment費用になってしまうので要注意。
例えば、ある納税者がクライアントを誘って野球を見に行ったとする。野球のチケット代はEntertainment費用に当たるので、野球場でどれだけ商談したり、野球そっちのけでビジネスの話しをしてたとしても関係ない。問答無用に全額損金不算入。もちろん、趣味で野球見に行っているだけだったらそもそも私的な支出なので個人事業主だったら最初から費用にはならないし、法人の役員とかだったらみなし給与だろう。で、野球見に行ったら当然、ホットドッグとドリンクを買うことになるけど、納税者が自分は下戸なのでホットドッグとコーク、クライントにはホットドッグとビールを買ったら、それはもちろん野球のチケットに込みじゃないし、別に支払うのでMeal代として50%損金算入となる。
え~、ドリンクってMealなの?って思われた方は中々面白い。規則案ではMealは広く定義され、ドリンクやスナックを含むとされる。更にデリバリーにかかるコストやチップ、更にSales Taxなんかが掛かれば、これらも付随費用としてMeal代に含まれる。ただし、付随費用と言っても限界があり、例えば自社のカフェの運営に必要な人件費やオーバーヘッドはMeal代には当たらない、としている。なかなか常識的。
今度はバスケットボール。この納税者はチョッとハイエンドでStaples CenterとかMSGでSuiteを借り切ってクライントを招待したとする。で、Suiteを借りると当然いろんなMealが付いてくるけど、それはSuite代に込みとする。その場合、Mealが別に請求されないので、全額Entertainment費用と取り扱われ、損金不算入となる。せっかく野菜のスティック食べながらバスケットボールそっちのけでビジネスの話ししてたのにね。
で、このクライアント結構お腹空いたみたいで、Suiteで提供される食事にはあきたらず、外のBoothからまずいお寿司とチーズNachosのHelapino入りをオーダーしたとする。凄い食べ合わせで翌日腹痛になったかどうかは不明だけど、請求書にお寿司代とHelapino入りチーズNachos代が明記されていて、かつその価格が外のBoothで一般の観客に販売されている金額と同じだったら、その部分だけ50%損金算入される。他のSuite代とかはEntertainment費用として全額損金不算入だ。
ということで、次回はもう少しMeal、特にどんな時に100%損金算入できるか、とかに関して。
で、テリトリアル課税の対象所得がどれだけ少ないか、っていう話しも一応ラップアップでき、その一環で前回はGILTIの高税率免除規定にも触れることができたし、次はBEATとパートナーシップの関係、またはOECDピラー1のAmount A、B、Cと既存ALPのDeepな関係とか、いろいろと面白そうなトピックが山積みなので、何にしようかな、と考えていた矢先の2020年2月21日、TCJAで一部改定されてたSection 274、すなわち接待交際費の損金算入制限規定にかかわる財務省規則案が公表された。接待交際費っていう和訳はチョッとMisleadingで、正確には「Meals and Entertainment」にかかわる規定。Mealsは接待に限らず、社内のパーティーとか事業目的の飲食全てを網羅する。M&Eって略され、Big 4だと、M&Eばかりやってる専門家が結構居るほどこれはこれで奥深いエリアだ。
M&EってMedia and Entertainmentセクターを意味することもあるんで、社内で使われる際も、文脈でどっちのこと言ってるのか判断する必要がある。アルファベットの頭文字の略語、アクロニムが次々誕生するので要注意。例えばUTPって言うと、僕たち米国税務の世界では「Uncertain Tax Position」のことだったけど、最近は気を付けないとOECDピラー2のUndertaxed Paymentのことだったりする。まあアルファベットは26文字で構成されるから、3つのアルファベットの組み合わせでも算数的には1万7千以上あるからまだまだ安心(?)。コマーシャルジェットが離着陸するAirportは世界に1万程度って言われているので、Airportのコードが3文字で足りる訳だね。でも、プライベートジェット専用とかを含むと世界で4万とも言われてる。ということは3文字のコードはない空港もあるってことになるよね。まさか重複して使用はできないだろうし。モンタナに行くつもりがミズーリに行っちゃたり大変なことなるもんね。
って、またどうでもいい話になってきたので、M&Eの話しに戻るけど、Section 274はM&Eを費用扱いしていいですよ、って言ってくれている条文ではない。それは事業にかかわる必要経費を規定しているSection 162とかの世界。したがって必要経費でなければそもそも損金算入は認められない。この区分は主に個人事業主にとっての課題。で、Section 274は200番台、しかも261番以降に位置する点からも分かる通り、仮にSection 162とか他の条文で損金算入できるって規定されている費用項目でも、特別に制限を加えている条文のひとつだ。
で、今回はクロスボーダー課税でも、Sub Cの組織再編でも、Sub Kのパススルーでもなく、柄にもなくM&Eのお話し。余り得意分野じゃないので、適度に「ふ~ん」って感じで読んで頂きたい。即時償却が初めて中古資産にも適用が認められたのを受けて、M&Aばかりやっている連中が急に有形資産の償却を定義しているSection 167とか168とか、更に定義に使用されている179とか従来の守備範囲外に手を出したりしてて面白いけど、M&Eもその類の話しだ。ちなみに即時償却とM&Aの関係は超Deepなので、そのうち触れてみたいけどね。
で、M&EのSection 274ってもちろんTCJA前からあるんだけど、M&EのEに当たるEntertainment費用はTCJAにより原則全額損金不算入になってしまった。以前は結構なケースで費用化できていたのに。一方、MのMealは従来から引き続きTCJA後も原則50%制限。ただ各々の原則ルールには多くの例外が規定されていて、たかがM&Eのくせにとても複雑怪奇になっている。
Entertainment費用は損金不算入だけど、Mealは50%OKっていうのがSection 274の原則っていうのは上述の通りだけど、規則案では、このルールを具体的な異なるSituationにおける適用例を結構突っ込んで規定していて面白い。まず、Mealだけど、50%の損金算入が認められるのは通常のMealで、LavishだったりExtravagantだったり、つまり過度に贅沢な食事は全額損金不算入。何がLavishかはケースバイケースなんだろうけど。例えばインディアナ州のSouth Bendの会食とNYCのMidtownの会食では相当金額的に差異があるんで、Lavish度合いも異なる。
会食費用もMealなんで50%損金算入できるけど、会食と認められるには、カスタマー、クライアント、サプライヤー、従業員、エージェント、パートナー、アドバイザー系の相手が同席してないといけない。でも、まだクライアントじゃない相手を会食に誘ったらどうなっちゃうの、って心配した方がいるようで、そんなSituationを想定して、会食をしてる時点で必ずしもクライアント等である必要はなくて、潜在的にクライアントになる現実的な可能性があればOKだそうだ。
Entertainment費用はダメでMealは50%となると、EntertainmentにMealが一部入ってたらどうなるの、とか現実的によくある状況への適用が気になる。この点に関する基本的なアプローチは、別々にバラして各々のルールを適用っていうことなんだけど、Entertainmentの一環でMealが出てMeal代がEntertainment費用にごちゃごちゃに含まれちゃってて明細みてもどれがMeal代が分からないようなケースは全額Entertainment費用になってしまうので要注意。
例えば、ある納税者がクライアントを誘って野球を見に行ったとする。野球のチケット代はEntertainment費用に当たるので、野球場でどれだけ商談したり、野球そっちのけでビジネスの話しをしてたとしても関係ない。問答無用に全額損金不算入。もちろん、趣味で野球見に行っているだけだったらそもそも私的な支出なので個人事業主だったら最初から費用にはならないし、法人の役員とかだったらみなし給与だろう。で、野球見に行ったら当然、ホットドッグとドリンクを買うことになるけど、納税者が自分は下戸なのでホットドッグとコーク、クライントにはホットドッグとビールを買ったら、それはもちろん野球のチケットに込みじゃないし、別に支払うのでMeal代として50%損金算入となる。
え~、ドリンクってMealなの?って思われた方は中々面白い。規則案ではMealは広く定義され、ドリンクやスナックを含むとされる。更にデリバリーにかかるコストやチップ、更にSales Taxなんかが掛かれば、これらも付随費用としてMeal代に含まれる。ただし、付随費用と言っても限界があり、例えば自社のカフェの運営に必要な人件費やオーバーヘッドはMeal代には当たらない、としている。なかなか常識的。
今度はバスケットボール。この納税者はチョッとハイエンドでStaples CenterとかMSGでSuiteを借り切ってクライントを招待したとする。で、Suiteを借りると当然いろんなMealが付いてくるけど、それはSuite代に込みとする。その場合、Mealが別に請求されないので、全額Entertainment費用と取り扱われ、損金不算入となる。せっかく野菜のスティック食べながらバスケットボールそっちのけでビジネスの話ししてたのにね。
で、このクライアント結構お腹空いたみたいで、Suiteで提供される食事にはあきたらず、外のBoothからまずいお寿司とチーズNachosのHelapino入りをオーダーしたとする。凄い食べ合わせで翌日腹痛になったかどうかは不明だけど、請求書にお寿司代とHelapino入りチーズNachos代が明記されていて、かつその価格が外のBoothで一般の観客に販売されている金額と同じだったら、その部分だけ50%損金算入される。他のSuite代とかはEntertainment費用として全額損金不算入だ。
ということで、次回はもう少しMeal、特にどんな時に100%損金算入できるか、とかに関して。
Saturday, February 8, 2020
GILTI高税率免除規定
前回までテリトリアル課税の対象となる所得が絶滅寸前って話しを数回に亘りポスティングしてきたけど、その主たる原因は心無いハンターの乱獲、じゃなくてTransition TaxやGILTIを規定したTCJA、またSub FとGILTIが優先的に適用されるという財務省の新たな国際課税システムの世界観にある点に触れた。毎期、CFCの所得は原則全額GILTIとして米国株主側で合算されPTEPに生まれ変わっていく。そんな根本的な仕組みに一矢を報いるかもしれない規定が財務省規則案として公表されている。待望のGILTI高税率免除規定だ。
GILTIと言えば、今話題のOECDのBEPS 2.0 のIncome Inclusion Ruleのモデルだけど実際には似て非なるもの。OECDは2020年1月末にBEPS 2.0 の途中経過を公表し、「Fast Pace」で順調に推移しているフリ(?)をアピールしてて、ピラー1に関しては、「え~自動車業界はConsumer Facingだって名指しで指定されている一方、うちの業界は入ってないけど包括的なリストって訳じゃないから油断は大敵ってことか・・・」とか既に目を通された方も多いと思うけど、Annex 2にはピラー2の現状が記載されていた。で、そのコメントを読んでも、あそこまで焦ったタイミングの導入を正当化する「Policy Objective」が未だに明確でないように感じた。一方、Income Inclusion Ruleのお手本(?)となる米国GILTIはFDIIと共に機能し、米国MNCが米国外事業を行う際、これを米国から行っても海外のCFC経由で行っても米国法人税負担は同じという、ニュートラルな課税関係を提供し、米国MNCの行動パターンを変えさせる、という明確な目的に基づいて設計されている。FDIIっていう制度はGILTIとセットで理解する必要があり、FDIIだけ見て有害税制と言ってしまっては米国の制度設計面からは片手落ちだし、万一FDIIだけ消滅してGILTIだけ存続しようものなら、GILTI導入のPolicy的な意味合いも半減する。全然関係ないけど、システムロスなのに片側検証して所得を認定するような変な感じ?
ちなみに、OECDの作成する文書ってヨーロッパチックで、スペルも米語とは異なるし、用語も米語では馴染まないものが多く、個人的には一読して頭に入り辛い。科学の実験学習のようなフローチャートがついてたりしてたのはビジュアルで助かったけどね。
最終的にピラー2のIncome Inclusion Ruleの末路は現時点では不明だけど、OECDで提案されているミニマムタックス課税は、CFC側で所得がミニマム税率で課税されていないと判断されると、ミニマム税率との差額に当たる部分を本国株主側で支払わせる「Top-Up」方式となっている。一方、米国のGILTIはそうではなく、CFCがどんなに高い税率で課税されていても、みなしルーティンリターンを除き一旦全額米国で合算させられる。合算後に50%の控除があり、それで実効税率が21%の半分の10.5%に下がる仕組み。NOLがあったりして、50%控除が取れないと悲惨。更にCFCが毎期支払う法人税のうち、Tested Incomeに適切に対応すると取り扱われる金額の80%を間接税額控除として使うことができる。教科書的にはCFCが米国外でTested Incomeに対して13.125%の法人税を納めていれば、その80%は10.5%だから、米国で持ち出しの法人税は発生しないことになるし、実際にGILTIの立法趣旨にはそのように明記されている。でも現実には、FTCの制限枠算定時に米国株主側の費用の一部をGILTIバスケットに配賦することになるので、10.5まるまるGILTIバスケットのネット外国源泉所得として残ることは稀。結果としてGILTIバスケットに配賦された米国株主側の費用額の21%が米国における追加課税額となる。
この思わぬ(?)結果はGILTIが可決した直後から問題視されていて、財務省の規則策定権限を利用して、FTCの枠算定時にGILTIバスケットには費用を配賦しないでいいようにして欲しいとか、CFC側で13.125%以上で課税されている所得項目はTested Incomeから免除して欲しいとか、多くの「参考になる(苦笑)」コメントが納税者から財務省に寄せられていた。GILTI規則案では、これらのコメントは日の目を見ず、GILTIの法文に明確に規定されるかなり狭義な高税率免除しか認められていなかった。すなわち、Foreign Base Company Income(「FBCI」)またはInsurance IncomeとしてSub Fなんだけど、Sub Fに従来から規定される高税率免除規定でSub F合算から免除されている所得に限り、Tested Incomeからも免除してあげましょう、という規定だ。これはGILTIの高税率免除規定というよりは、Tested IncomeからSub Fが免除されている措置の延長と位置付ける方が実態に近い。
で、GILTI規則はそのまま最終化されてしまったけど、最終化の際に財務省は「新」規則案を公表し、ナンとGILTIに特化したフルの高税率免除規定案を提示した。元々の旧規則案から180度異なる展開と言え、納税者にとってはうれしい驚きとなった。免除を取り巻く規定がどちらかと言うと堅苦しいので、最終化の際にはもう少し弾力的な規定にして欲しいというコメントもあるけど、余り贅沢を言ってはいけない(?)。
GILTI法文からは読み取れないそんな広範なGILTI高税率免除規定をどうしたら行政府が規則として策定できるか、という法的権限は結構際どい。その証拠に、最初の旧規則案を策定した時点では財務省自ら法的に難しい、という解釈をしていたはず。それがここに来て一転しているのは、立法趣旨に基づくポリシー的なコールとしか言いようがない。ただ、ポリシーだけでは財務省は規則を策定できないから、例えストレッチしまくるにしても、何らかの法的な理論を構築しないといけない。で、いざとなると抜群の伸縮性を誇るストレッチマテリアルに変身してくれるのが手品師の財務省。Sub FのFBCIやInsurance Incomeに従来から適用可能だった高税率免除規定の法文を解剖し、その一部の表現に「全ての所得項目」に高税率免除規定が適用可能とも無理すれば読めなくもない部分があり、それを最大限利用し新らたな解釈を捻出している。なかなかクリエイティブ!議会が法文を変えることは今の政局では難しいだろうから、立法趣旨を反映させるため、End Result Orientedな苦肉の策と言える。納税者にとっては悪い話しではないので、規則策定権を問題視する者もいないだろし。
で、未だ最終化された訳ではないので余り詳細に検討してもしょうがないけど、GILTI高税率免除規定案の内容を簡単に紹介しておくと次の通り。
まず高税率免除がキックインされる税率だけど、18.9%。これは法人税率21%の90%を基準に高税率を規定しているため。TCJA以前は法人税率自体が35%だったので、その90%というと31.5%というとんでもない高税率で、そんな税率の国は今どき地球上には存在しないに近く、ほぼ役に立たない免除規定だった。それが法人税が21%に引き下げられ、その90%が18.9%になったことでSub F適用時には息を吹き返した感じだった。それがそのままGILTIにも拡大される可能性が出てきたと言うもの。立法趣旨的に13.125%を期待する向きもあったかもしれないけど、GILTI高税率免除規定はSub FのFBCIやInsurance Incomeに適用される高税率免除規定の法文を流用しているに過ぎないので、18.9%以外はあり得ないだろう。
次に実際に選択を行う者だけど、これはCFCの支配株主。まるで前回までのテリトリアル課税の対象所得のポスティングで触れたExtraordinary Reduction規定の課税年度をCloseする選択みたいだけど、これは従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fからの免除と同じ規定。支配株主による選択は選択対象となるCFCの米国株主全員に強制適用となる。
選択は対象となる課税年度に適用されるばかりでなく、納税者が取り消すまでその後の課税年度に自動適用され続ける。選択の取り消しは可能だけど、一度取り消すと、その後60カ月に亘り、IRSの特別な許可を受けない限り再選択が認められない。ただし、CFCの支配株主に変更があった場合は新たな支配株主による選択有無の判断が認められる。従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fからの高税率免除は、課税年度毎に自由に選択ができるので、60カ月の待機要件はGILTIに対する特別要件。GILTI、特にGILTIバスケットのFTCの状況は毎年異なるので、この5年の縛りは厳しく、緩和リスエストが多く財務省に寄せられているだろう。
で、選択対象は基本個々のCFC単位だけど、従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fの免除と異なり、共通の支配株主および関連者が直接・間接に50%超の議決権を有する2社以上のCFCを共有支配CFCグループとし、当グループ内CFCには、GILTI高税率免除規定の選択有無を一貫して適用しないといけない。また、選択はCFC単位で行った上で、高税率かどうかの判断は所得項目毎の判断となる。となると、どんな括りで所得項目を特定するかが最重要検討事項になるけど、GILTI規則案では、ここはQBU単位と言っているよう。QBUっていうのはQualified Business Unitのことで、元々機能通貨の適用単位にかかわる規則で登場するコンセプトなんだけど、TCJAでFTCに支店バスケット追加されたり、FDIIも支店所得は対象外だけど、支店という概念をきちんと整理している規定が他にないので、TCJAの世界ではQBUが機能通貨以外の目的で支店の定義として流用されることが多い。
で、GILTI高税率免除規定の適用時に、高税率かどうかっていうのはQBU単位での判断となることから、CFC自体、そしてDRE、本当の支店、等に属する所得は各々税率何%で外国で課税されているのかの判断が必要となる。選択はCFC単位だけど、一旦選択した後、DREとかQBU毎に税率を判断し、低税率の部分には免除が適用されないことになる。米国MNCはCheck-the-BoxでDREを多用しているからここの検討は複雑だろうね。
まあ、これから最終化される過程で細かい規定には変更が加えられることもあるだろうから、詳細は最終化されてから深掘りしてみたい。でも、このままの流れでGILTI高税率免除規定が最終化されて、その適用でCFCの所得がGILTIから免除されると、前回までのポスティングで触れてきたテリトリアル課税の対象所得の候補が一人増えることになる。絶滅するかと思ってたら、急に新種の生物が空から降って来た感じ。
ちなみにGILTI高税率免除規定は財務省規則案が最終化される以前に早期適用することは認められない。でも財務省による高税率免除の法的な正当性を読む限り、規則案ではなく法文に基づいて直ぐにでもGILTI高税率免除を適用するポジションもあり得るように感じられ、ついフライングしたくなるけどね。
GILTIと言えば、今話題のOECDのBEPS 2.0 のIncome Inclusion Ruleのモデルだけど実際には似て非なるもの。OECDは2020年1月末にBEPS 2.0 の途中経過を公表し、「Fast Pace」で順調に推移しているフリ(?)をアピールしてて、ピラー1に関しては、「え~自動車業界はConsumer Facingだって名指しで指定されている一方、うちの業界は入ってないけど包括的なリストって訳じゃないから油断は大敵ってことか・・・」とか既に目を通された方も多いと思うけど、Annex 2にはピラー2の現状が記載されていた。で、そのコメントを読んでも、あそこまで焦ったタイミングの導入を正当化する「Policy Objective」が未だに明確でないように感じた。一方、Income Inclusion Ruleのお手本(?)となる米国GILTIはFDIIと共に機能し、米国MNCが米国外事業を行う際、これを米国から行っても海外のCFC経由で行っても米国法人税負担は同じという、ニュートラルな課税関係を提供し、米国MNCの行動パターンを変えさせる、という明確な目的に基づいて設計されている。FDIIっていう制度はGILTIとセットで理解する必要があり、FDIIだけ見て有害税制と言ってしまっては米国の制度設計面からは片手落ちだし、万一FDIIだけ消滅してGILTIだけ存続しようものなら、GILTI導入のPolicy的な意味合いも半減する。全然関係ないけど、システムロスなのに片側検証して所得を認定するような変な感じ?
ちなみに、OECDの作成する文書ってヨーロッパチックで、スペルも米語とは異なるし、用語も米語では馴染まないものが多く、個人的には一読して頭に入り辛い。科学の実験学習のようなフローチャートがついてたりしてたのはビジュアルで助かったけどね。
最終的にピラー2のIncome Inclusion Ruleの末路は現時点では不明だけど、OECDで提案されているミニマムタックス課税は、CFC側で所得がミニマム税率で課税されていないと判断されると、ミニマム税率との差額に当たる部分を本国株主側で支払わせる「Top-Up」方式となっている。一方、米国のGILTIはそうではなく、CFCがどんなに高い税率で課税されていても、みなしルーティンリターンを除き一旦全額米国で合算させられる。合算後に50%の控除があり、それで実効税率が21%の半分の10.5%に下がる仕組み。NOLがあったりして、50%控除が取れないと悲惨。更にCFCが毎期支払う法人税のうち、Tested Incomeに適切に対応すると取り扱われる金額の80%を間接税額控除として使うことができる。教科書的にはCFCが米国外でTested Incomeに対して13.125%の法人税を納めていれば、その80%は10.5%だから、米国で持ち出しの法人税は発生しないことになるし、実際にGILTIの立法趣旨にはそのように明記されている。でも現実には、FTCの制限枠算定時に米国株主側の費用の一部をGILTIバスケットに配賦することになるので、10.5まるまるGILTIバスケットのネット外国源泉所得として残ることは稀。結果としてGILTIバスケットに配賦された米国株主側の費用額の21%が米国における追加課税額となる。
この思わぬ(?)結果はGILTIが可決した直後から問題視されていて、財務省の規則策定権限を利用して、FTCの枠算定時にGILTIバスケットには費用を配賦しないでいいようにして欲しいとか、CFC側で13.125%以上で課税されている所得項目はTested Incomeから免除して欲しいとか、多くの「参考になる(苦笑)」コメントが納税者から財務省に寄せられていた。GILTI規則案では、これらのコメントは日の目を見ず、GILTIの法文に明確に規定されるかなり狭義な高税率免除しか認められていなかった。すなわち、Foreign Base Company Income(「FBCI」)またはInsurance IncomeとしてSub Fなんだけど、Sub Fに従来から規定される高税率免除規定でSub F合算から免除されている所得に限り、Tested Incomeからも免除してあげましょう、という規定だ。これはGILTIの高税率免除規定というよりは、Tested IncomeからSub Fが免除されている措置の延長と位置付ける方が実態に近い。
で、GILTI規則はそのまま最終化されてしまったけど、最終化の際に財務省は「新」規則案を公表し、ナンとGILTIに特化したフルの高税率免除規定案を提示した。元々の旧規則案から180度異なる展開と言え、納税者にとってはうれしい驚きとなった。免除を取り巻く規定がどちらかと言うと堅苦しいので、最終化の際にはもう少し弾力的な規定にして欲しいというコメントもあるけど、余り贅沢を言ってはいけない(?)。
GILTI法文からは読み取れないそんな広範なGILTI高税率免除規定をどうしたら行政府が規則として策定できるか、という法的権限は結構際どい。その証拠に、最初の旧規則案を策定した時点では財務省自ら法的に難しい、という解釈をしていたはず。それがここに来て一転しているのは、立法趣旨に基づくポリシー的なコールとしか言いようがない。ただ、ポリシーだけでは財務省は規則を策定できないから、例えストレッチしまくるにしても、何らかの法的な理論を構築しないといけない。で、いざとなると抜群の伸縮性を誇るストレッチマテリアルに変身してくれるのが手品師の財務省。Sub FのFBCIやInsurance Incomeに従来から適用可能だった高税率免除規定の法文を解剖し、その一部の表現に「全ての所得項目」に高税率免除規定が適用可能とも無理すれば読めなくもない部分があり、それを最大限利用し新らたな解釈を捻出している。なかなかクリエイティブ!議会が法文を変えることは今の政局では難しいだろうから、立法趣旨を反映させるため、End Result Orientedな苦肉の策と言える。納税者にとっては悪い話しではないので、規則策定権を問題視する者もいないだろし。
で、未だ最終化された訳ではないので余り詳細に検討してもしょうがないけど、GILTI高税率免除規定案の内容を簡単に紹介しておくと次の通り。
まず高税率免除がキックインされる税率だけど、18.9%。これは法人税率21%の90%を基準に高税率を規定しているため。TCJA以前は法人税率自体が35%だったので、その90%というと31.5%というとんでもない高税率で、そんな税率の国は今どき地球上には存在しないに近く、ほぼ役に立たない免除規定だった。それが法人税が21%に引き下げられ、その90%が18.9%になったことでSub F適用時には息を吹き返した感じだった。それがそのままGILTIにも拡大される可能性が出てきたと言うもの。立法趣旨的に13.125%を期待する向きもあったかもしれないけど、GILTI高税率免除規定はSub FのFBCIやInsurance Incomeに適用される高税率免除規定の法文を流用しているに過ぎないので、18.9%以外はあり得ないだろう。
次に実際に選択を行う者だけど、これはCFCの支配株主。まるで前回までのテリトリアル課税の対象所得のポスティングで触れたExtraordinary Reduction規定の課税年度をCloseする選択みたいだけど、これは従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fからの免除と同じ規定。支配株主による選択は選択対象となるCFCの米国株主全員に強制適用となる。
選択は対象となる課税年度に適用されるばかりでなく、納税者が取り消すまでその後の課税年度に自動適用され続ける。選択の取り消しは可能だけど、一度取り消すと、その後60カ月に亘り、IRSの特別な許可を受けない限り再選択が認められない。ただし、CFCの支配株主に変更があった場合は新たな支配株主による選択有無の判断が認められる。従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fからの高税率免除は、課税年度毎に自由に選択ができるので、60カ月の待機要件はGILTIに対する特別要件。GILTI、特にGILTIバスケットのFTCの状況は毎年異なるので、この5年の縛りは厳しく、緩和リスエストが多く財務省に寄せられているだろう。
で、選択対象は基本個々のCFC単位だけど、従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fの免除と異なり、共通の支配株主および関連者が直接・間接に50%超の議決権を有する2社以上のCFCを共有支配CFCグループとし、当グループ内CFCには、GILTI高税率免除規定の選択有無を一貫して適用しないといけない。また、選択はCFC単位で行った上で、高税率かどうかの判断は所得項目毎の判断となる。となると、どんな括りで所得項目を特定するかが最重要検討事項になるけど、GILTI規則案では、ここはQBU単位と言っているよう。QBUっていうのはQualified Business Unitのことで、元々機能通貨の適用単位にかかわる規則で登場するコンセプトなんだけど、TCJAでFTCに支店バスケット追加されたり、FDIIも支店所得は対象外だけど、支店という概念をきちんと整理している規定が他にないので、TCJAの世界ではQBUが機能通貨以外の目的で支店の定義として流用されることが多い。
で、GILTI高税率免除規定の適用時に、高税率かどうかっていうのはQBU単位での判断となることから、CFC自体、そしてDRE、本当の支店、等に属する所得は各々税率何%で外国で課税されているのかの判断が必要となる。選択はCFC単位だけど、一旦選択した後、DREとかQBU毎に税率を判断し、低税率の部分には免除が適用されないことになる。米国MNCはCheck-the-BoxでDREを多用しているからここの検討は複雑だろうね。
まあ、これから最終化される過程で細かい規定には変更が加えられることもあるだろうから、詳細は最終化されてから深掘りしてみたい。でも、このままの流れでGILTI高税率免除規定が最終化されて、その適用でCFCの所得がGILTIから免除されると、前回までのポスティングで触れてきたテリトリアル課税の対象所得の候補が一人増えることになる。絶滅するかと思ってたら、急に新種の生物が空から降って来た感じ。
ちなみにGILTI高税率免除規定は財務省規則案が最終化される以前に早期適用することは認められない。でも財務省による高税率免除の法的な正当性を読む限り、規則案ではなく法文に基づいて直ぐにでもGILTI高税率免除を適用するポジションもあり得るように感じられ、ついフライングしたくなるけどね。
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