Sunday, February 2, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (5)

前回のポスティングでは、Extraordinary Reduction規定の背景Lesson 1に触れたけど、今回はExtraordinary Reduction規定そのものに関して。

この規則の骨子は「CFCの支配株主が認識できるDRDはExtraordinary Reduction額以外の部分に限定する」というもの。相変わらずややこしそうな規定だけど、支配株主とは、関連者の持分も加味して50%超のCFC持分を保有する米国株主で、テリトリアル課税のDRD適用条件を充たす者とされる。面白いことに、関連者規定を加味して自ら50%超の持分要件は充たしてなくても、支配株主と結託したり、協力している仲にあると取り扱われると、そんな株主も支配株主とみなすと規定されている。この実態に基づく支配の考え方は米国の移転価格でよく取り沙汰される論点だね。それにしても、こんな概念で支配株主を定義してる点を見ても、財務省はよっぽどテリトリアル課税の悪用を気にしてるんだね。チョッと気にし過ぎ?

で、Extraordinary Reductionがどんな時に発生するかって言うと、支配株主が所有するCFC持分の10%超のCFC持分を譲渡、または支配株主が所有するCFC持分に10%超の変動が生じた場合。これだけでも複雑~。Section 382の持分変動の規定みたい。これらのテストは、CFC全体の持分ではなく、自分が所有する持分を基に10%を算定するのがポイント。1つ目のテストは、例えば80%の持分を所有する支配株主が8.1%の持分を譲渡すると抵触する。2つ目のテストは、例えば、90%の持分を所有している支配株主が居て、CFCが他の株主に追加株式を発行することで、90%株主の持分が81%未満に低下してしまうようなケースが対象。この2つのテストを読んで、なんでテストが2つ必要なのか分かる人居る?どう考えても2つ目のテストだけで双方の状況をカバーしそうなもんだけど。そこが財務省の凄いところで、最初のテストは、例えばCFCの株主同士で同じ%の持分をスワップして譲渡する場合、誰の持分も低下しないけど、1つ目のテストの譲渡規定には抵触する仕組み。確かにその場合も、双方で譲渡益だのみなし配当だのっていう処理が発生するからなるほどね、って感じ。

で、これらのExtraordinary Reductionをトリガーする取引があった場合、Extraordinary Reductionがなければ支配株主が認識したであろうSub FやTested Incomeで、他の米国株主が認識することのない金額に対応するE&Pを基とする配当額がExtraordinary Reduction額となる。Extraordinary Reduction額としてDRDが否認される配当は、全額21%で課税され、Section 902はもう存在しないからFTCも取れない。

え~、そんなんだったらGILTIより酷いじゃん、って思うかもしれないけどその通り。GILTIだったら50%のGILTI控除があり、米国側がNOLでなければ最悪でも10.5%課税だし、FTCを考えれば場合によってはゼロ近くなることもある。一方、Extraordinary Reduction額としてDRDが否認されるとまるまる21%課税。これは余りに酷いということで、支配株主が自らGILTI課税を選択することが認められる。なんかGILTIが有難く見えてきたりして不思議だけどね。具体的にはExtraordinary Reductionが生じた時点でCFCの課税年度を終了させる選択。以前から言ってるようにCFC課税はCFCのCFCとしての課税年度が終了した時点で発生するものから、課税年度を終了させてしまえば自然とSub FやTested Incomeがフローアップしてくる。支配株主がこの選択をすると、他の株主から見てもCFCの課税年度が終了したように取り扱われることがある。21%課税と0~10.5%課税かの選択だから、選択とは名ばかりで実際にはオプションはなく常に選択をすることになるだろう。だったら、なぜ選択制とか言って格好つけてんのかってというと、多分だけど、法文的にCFC課税年度を強制終了させることはかなり無理があり、これを行政府が策定する規則で強制するのは、さすがに規則策定権限を逸脱してしまう、と考えたのではないだろうか。そこまでして課税年度を終了させてくれたりGILTI課税にしれくれたりして、チョッと優しいお心遣いっぽくもあるけど、単純にDRDを認めてくれたら本当の心遣いだったんだけどね。

ちなみに、Extraordinary Reductionには少額免除制度があり、CFCのSub FとTested Incomeの合計が$50MまたはCFCの課税所得の5%のいずれか低い金額を超えない場合には、Extraordinary Reduction額はゼロとみなされる。

このExtraordinary Reductionは日本企業がCFCを米国傘下から外す際に関係してくる。ついこの前の1月15日に提出した2019年3月期の法人申告書の作成で分かったと思うけど、米国の下にCFCを所有していると、GILTI支払いがあったところ、またGILTI合算でNOLを21%で食ってしまったところ、等の実害を実感したケースもさることながら、Form 8992、特にSchedule A、更に大幅に分厚くなったForm 5471の作成とか、コンプライアンス負荷はとても高い。それでも連邦は規則も大概において分かったし、IRSも良く内容を理解して様式をデザインしているので、GILTIやBEATを含むTCJAのクロスボーダー規定を原因とするコンプライアンス負荷は感覚的に130%アップくらいな感じだろうか。問題は州税。50 州+DCが各々主権国家として別の税法を制定している米国。以前から、どの州がどこまで連邦税法を取り込んでいるかとかバラバラで、実務的にはどこまで探求するべきか、っていう世界に突入してるとも言えるけど、TCJAのクロスボーダー規定を各州がどのように取り込むかに関しても規定がまちまちだったり、良く分かんなかったり。特にユニタリー合算制度との関係とか、州当局も追いついてないことも多い。また膨大な申告書を作成するソフトウェアベンダーも各州の様式や連邦からのデータインポートのタイムリーなアップデートが追い付かず、作成する際にマニュアルオーバーライドしたり、それにより合算計算が無茶苦茶になったりして大変。

日本企業のようなインバンド企業は、生まれながらにInversionしていると同然で米国MNCから見ると夢のようなストラクチャー。すなわち米国傘下からCFCを外すという奥の手があるので、事業上の目的に差支えのない範囲で今のうちに日本親会社の下とかにCFCを付け替えるのがいい。この移管自体にかかわる課税関係は、今回のポスティングのテーマのExtraordinary Reductionを含む複雑な規定を適用して検討する必要がある。ただ、Transition Tax等でCFC側のE&PがPTEPになって、CFC株式の税務簿価が増額している今がチャンス。数年したらCFC株式簿価のトラッキングだけでも訳分からなくなるリスクも高い。BEATはストラクチャー変えてもなくならないから、これだけでも面倒なのに、GILTIはストラクチャー的に合算計算を回避できるので、そのままにしておくってことは、相当のコンプライアンス負荷を覚悟した上での判断ってことになる。コンプライアンス負荷が高いと言うことは、すなわちリスクも高くなるし、会計事務所に支払うFeeも高くなるということ。会計事務所側の、規則の正確な把握も含む作業量増大は凄まじいからね。それでも1月15日の23時59分にはE-Fileが終わるから不思議だけどね(苦笑)。

それにしても、5回に亘ってテリトリアル課税対象所得が絶滅寸前っていうテーマで書いてきたけど、万一、そんな奇特なE&Pを分配することができたとしても、まだゲーム終了ではない。確率としては高くはないけど、GILTIにもSub FにもなってないE&Pを分配して、それがAnti-Hybrid規定に抵触したり、またはテリトリアル課税のDRD適格要件の保有期間を充たしていない配当があったりしたら、テリトリアル課税のDRDは適用されない。それどころかFTCの恩典もないので21%課税で最悪。そんなんだったら、これらも一層のことGILTIになってたら良かったのにね。物事は相対的なので、税負担的には結局GILTIってそんなに悪くないかな、って思わせる局面が多いね。さらにDRDの対象になったからと言っても喜ぶのはまだ早い、DRDの金額が相対的に大きいと、条件次第で配当時に株式簿価を減額させられ、簿価がゼロを割り込むとキャピタルゲインとなる。こちらも21%。またDRDの恩典を受けた後に、CFC株式を譲渡して損失が発生すると、損失計算目的で過去に計上したDRD額に関して株式簿価を減額しないといけない。全て21%で課税される税効果を持つ。散々だね(苦笑)

これらの規定をきちんと適用するには、CFC側のE&Pが何で構成されているのかを常に把握し、分配があったり、譲渡があったりする際には、分配や譲渡益が何なのかを理解しないといけない。実はこの点が規則の理解と並んで大変。テリトリアル課税になって、PureなE&Pも課税されないし、PTEPは課税済みだし、もうPTEPなんて管理しなくていいのでは、って思うかもしてないけど、どんな理由でいつPTEPになったかにより、為替差損益、FTCの取り扱いが異なるからしっかり管理しないといけない。PTEP分配で簿価がゼロを下回るとみなし譲渡益でこちらも21%課税だし。2019年1月のNoticeではPTEPだけでも16種類に区分されていた。皆さんは自社のCFCのE&Pがいくらで、16種類のPTEPのどこに属していて、滅多にないけどPureなE&Pがあったりするかご存知でしょうか?これ知らずして配当とかできないし、申告書の作成もできない。2017年末で一旦E&Pが洗浄されているのを機に今後は毎年トラッキングがMust。なかなか自分達ではできないのでBest ITS Practice Ever!(トランプのTwitterみたい)のEY US国際税務部門にFeeベースで依頼してみる(笑)?

Saturday, February 1, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (4)

前回までのポスティングでは、テリトリアル課税対象となるPureなE&Pがただでさえ少ない中、TCJA下の新国際課税システムに関して財務省やIRSが懐く世界観、すなわちSub FとGILTIが優先的に適用され、残余E&Pがあればテリトリアル課税の対象にしてあげると言うアーキテクチュアー、に基づき、PureなE&Pは財務省規則によりその範囲がますます狭められていく傾向にある点に触れてきた。前回は、その一例として「Extraordinary Disposition」規定による空白期間のE&Pを取り締まる暫定規則を紹介したけど、今回は、空白期間という一過性の話しではなく、恒常的に今後も発生する「Extraordinary Reduction」取引に基づくE&Pを取り締まる暫定規則に触れてみたい。

この話しをするには従来から存在するCFC課税の基本を理解しておかないといけないので、極簡単に背景に触れておく。言うまでなく、この背景そのものも実はとても複雑だけど、ここではLesson 1の「This is a pen」程度に触れておく。

TCJAで導入されたGILTIもそうだけど、従来からもCFCの所得の合算課税は、CFCがCFCであり続ける限り、CFCの課税年度終了時点で、その時点の米国株主に合算課税対象所得がフローアップして課税が発生する。CFCの課税年度を通じて同じ米国株主がそのCFC持分を継続所有していた場合には、この合算方法は普通に当たり前のものだ。一方、期中にCFCの持分譲渡があった場合にどうしてたかっって言うと、譲渡後もCFCであり続けるケースでは、あくまでもCFCの課税年度末に米国株主の位置づけにある者がSub Fを合算することになっていた。GILTIも同様。そうすると、自分が所有していない期間にかかわるSub FやGILTI、すなわち経済的には譲渡人に属するべきSub FやGILTIも、譲受人がまるまる合算しないといけなくなる。で、そんな理不尽な結果を是正していたのがSub F合算額からの「配当除外規定」。この規定は実際の適用はチョッと難しいけど、CFCの課税年度終了時の米国株主がSub Fの合算額を決める際、その課税年度内に他人が受け取った配当のうち、当該年度のSub F相当部分でかつ自分がCFC株式を所有していない期間に対応する金額を除外してよろしいという規定だ。

この制度はTCJA前は概念的に実に良く機能していたと思う。仮に、譲渡が起こる課税年度に実際に配当が存在しない場合も、株式を譲渡する側は、譲渡益に占めるCFCのE&Pのうち譲渡人の持分%および保有期間に対応する金額はみなし配当となるので、配当課税が起こる。そのうち、譲渡発生年度のSub Fに対応する額の譲受人が株式を所有していない期間に帰する部分、面倒な言いまわしになってるけど、要はもし譲渡が課税年度内に一回だけだったら譲渡人が所有していた期間に帰する部分に関して、譲受人によるCFC課税年度末のSub F合算額が減ることになる。元々Sub FっていうのはAnti-Deferralだから、CFCの株式を譲渡した側はE&Pに対して配当課税されることでDeferralは完全に解消され、その分に関して譲受人がSub F合算をする理由も必要もなく、結果として綺麗に各々が課税されるべきE&Pに課税される制度になっていた。

ちなみにこの考え方は、株式譲渡後も外国法人がCFCであり続ける場合にのみ適用が必要なもの。外国人に株式が譲渡され、外国法人がCFCでなくなってしまう場合には、譲渡時点でCFCとしての課税年度が終了するので、譲渡人はその時点で普通にSub F合算をさせられ、譲受人側におけるSub F合算の減額云々の処理は不必要となる。

この実に良く考えられた制度の大前提は、譲渡人が認識する配当が課税されるっていう点。もちろん以前は配当に間接FTCが認められたので実際にFTC後に支払う米国の税金は少ないケースもあっただろうけど、それはSub F合算も同じなので、綺麗にEquationが成り立っていた。ここまで書けば、テリトリアル課税の導入との絡みにピンと来た方も多いだろう。その通り。TCJAでCFCからの配当(みなし配当含む)は100%DRDで非課税となった。となると、譲受人側ではSub FやGILTIの計算基となるTested Incomeの合算額を、譲渡側の配当額に関して減額するにもかかわらず、譲渡側では配当が課税されないというふぞろいの林檎みたいになってしまう(古~)。

CFCのE&Pのうち、PTEPはそもそもみなし配当ではないので、あくまでもPureなE&PがCFCに存在する状態で譲渡が行われる場合の話しだけど、TCJA直後からこの論点は問題となっていて、議会によるTechnical Correctionの可能性も取り沙汰されたりしてたけど、議員さんは国民のために法律を通すために選ばれているはずなんだけど、立法はそっちのけで(苦笑)ポリティカルな事案に忙しいので、当然Technical Correctionが可決したり議論されたりする訳はなく、となると行政側の財務省に策を講じる法的権限が存在するのか注目されていた。

そんな中、不均衡を利用したプラニングが散見され始め、さらに、これは昔からあったけど、譲渡直後にCheck-the-Boxその他の手法でCFCのUS Yearをいきなり終了させてしまい、譲渡以前の期間に対応すると取り扱われる配当額を最大限化してみせたり、法文的にはその通りとは言え、チョッと抜け穴利用が過ぎる観はあった。空白期間の取り扱いと異なり、どちらかと言うと趣旨的にも調子が良すぎる結果となるからだ。

この問題は、Sub Fだけの世界だったらインパクトも限定的に終わったかもしれないけど、GILTIでCFCの所得は基本全て毎期、米国で合算されるために数字的なインパクトが大きい。さらに問題を複雑にしてるのが、TCJAによるCFCや米国株主の認定時のDownward Attribution適用免除規定の撤廃。Downward Attributionの適用が免除されていた従来の認定法では、例えば、日本企業の米国子会社が所有するCFCの株式を日本親会社に譲渡してしまえば、その外国法人はCFCではなくなっていた。ところがDownward Attributionが適用されることになってしまったので、日本の親会社が所有している持分は、米国子会社が所有しているとみなされ、外国法人は引き続きCFCであり続ける。ここで面白いのは、CFCでありながら、本当に直接・間接にCFCを所有している米国株主が存在しないこと。となると、さらに凄い結果となり、CFCの課税年度終了時点でSub FやGILTI合算をする米国株主が存在しないにもかかわらず、外国法人はCFCであり続けるので、譲渡時点でCFCの課税年度は終了せず、だれもSub FやGILTI合算をしないことになる。しかも、譲渡が発生している課税年度のE&Pは譲渡がなければSub FやTested IncomeとしてGILTI合算されたにもかかわらず、みなし配当となる範囲で譲渡人側でテリトリアル課税のDRDで非課税となる。極端な例を挙げると、3月決算のCFCの持分を3月30日に米国から日本に譲渡すると、一年分のSub FやGILTIが消滅してしまうこととなる。4月1日に譲渡したら、3月末でSub FやGILTIはまるまる合算されていたのと著しく対照的。

以前から触れている財務省やIRSの世界観に照らし合わせると、譲渡課税年度のE&Pが一部でもSub FやGILTIを素通りして、テリトリアル課税の対象となるような結果は到底、容認不可能となる。

そこで前回のポスティングで触れたExtraordinary Disposition規定が導入された暫定規則に、今度は「Extraordinary Reduction」という規則が同時に規定された。何でも「Extraordinary」って名付けると怪しい感じになってDRDの対象じゃなくなっちゃうみたいだね。そのうち、CFCにPureなE&Pが存在すること自体ポリシー違反とか言われて、全額「Extraordinary E&P」なのでテリトリアル課税は不適用、になっちゃったりしてね。

難しい話しで長くなってきたのでExtraordinary Reductionに関しては次回。

Saturday, January 25, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (3)

前回のポスティングで、2017年12月末までのE&Pは1986年以前に認識されているE&Pを温存している奇特なケースを除き、全額PTEPに生まれ変わっていること、また2018年1月1日以降に開始するCFCの課税年度からは毎期、DeferralなしでGILTI課税されるために、今後もGILTI課税の範囲でCFCのE&Pは継続してPTEPになる点に触れ、CFC側のE&Pにテリトリアル課税適格となる純粋なE&Pが生じ得ない理由をハイレベルに触れた。ちなみに、PTEPではないE&Pの存在自体が希少な点に加え、分配は米国税法目的ではまずPTEPから行われたとみなされる点も、テリトリアル課税適格のE&Pを分配するチャンスが著しく低くなる理由。つまり、Transition TaxとGILTIで積み上がったPTEP全額を分配し終えて初めて、根雪のように僅かに底辺に残っているかもしれない純粋なE&Pを分配できることになる。しかもGILTIで毎期毎期PTEPが増える訳だから、PTEPでないE&Pは常に底辺に押しやられる感じ。

ところで、このPTEP系の話しは早々にラップアップしないと、ってプレッシャーを感じていたのは、例のSection 163(j)の最終規則が公表されると、どうしてもそこにフォーカスせざるを得ないからだ。Section 163(j)の最終規則そのものは、規則を事前評価する政府機関OIRAの審査を終えたと聞いてるけど、先日の法曹界の集まりにおけるIRS高官の話しによると、最終規則の公表と同時に、前回の規則案では検討されていない新たな切り口の規則を同時に新規則案として公表する予定らしい。で、この新規則案の方が未だOIRAの審査に回っていないようで、これに引っ張られる形で全体のパッケージ公表が遅れそう、とのこと。タイミング的にチョッとひと安心。実はパートナーシップへのIPの現物出資に関するAnti-Abuse的な暫定規則が最終化されたりもしているので、そちらもチョッと触れたかったしね。

最終規則を公表する際に、新しい規則案が同時公表されるっていうパターンは、TCJA絡みの規則策定時の常套手段となりつつある。このトレンドは検討を重ねれば重ねるほど新たな課題が続出してくるTCJAの現状を良く反映している。TCJAは、法文そのものだけ読んだだけでは不明な点が多いし、また法文そのものが立法趣旨と異なるケースも散見され、規則策定は世間が考えるほど容易ではない。この点に関して2017年末から今日まで、財務省やIRSは、Deepな知見、各界との頻繁な意見交換、を駆使してテクニカル面で卓越しているばかりでなく、実務的にバランスが取れた規則を信じられないスピードで公表し続けている。もちろん個々の内容には賛否両論なものも多く含まれるし、個人的にも行政府の権限内なのかな、と思うようなこともあるけど、元々とんでもなく複雑な法律にOverlayする形で規定されているTCJAをあれだけの短時間で消化し、執行可能なルールに落とし込む実力には脱帽。これがどれだけ大変か、っていうのを理解していれば、財務省やIRSの努力や能力の凄まじさを認識せざるを得ないし、またポリシー的にも税金を取る側が策定するルールとしてはバランスが取れた規則が公表され続けていると感じることができるはず。

ところが、先日、ニューヨークタイムスが、規則策定を通じて現政権がTCJAを骨抜きにして大企業がラッキーしているという、ニューヨークタイムスの読者層には受けるかもしれないけど、個人的にはアンフェアに感じられる記事を掲載していた。各界の意見を反映し、法文から逸脱せず(たまに際どいけどね)、執行可能なルールを策定しようとしている財務省やIRSの方たちの苦労や努力を踏みにじるように感じられ、メインストリーム・メディアがこのような記事を記載すると、一般の人は財務省やIRSは政治的な意図で規則を策定しているって勘違いしてしまわないかな、って少し心が痛んでしまった。

で、本題に戻るけど、過去のE&Pが全額洗浄されて、今後はGILTIで毎期CFCの所得がPTEPに生まれ変わるシステム下でも、しぶとくPTEPとならないCFCの所得があるにはある。まず、Obviousな項目として今後、CFCが認識する所得のうち、GILTIの基となるTested Incomeから除外されている所得。Sub FやECIはGILTIの計算基となるTested Incomeから除外はされるけど、Sub F対象所得はDeferralなしで毎期、米国で合算されるのでGILTI同様PTEPになる。ECIに至ってはCFCが米国で申告して課税されているし、そもそも外国源泉じゃないのでテリトリアル課税目的ではDRDの対象ですらなく論外。従来からの国内DRDの適用検討の価値はあるけどね。また下層に位置するCFCからの配当所得をTested Incomeから除外するっていう部分は、下層CFC自体がGILTI課税の対象なので単にダブルカウント防止で、これも役に立たない。となると残るは、従来からのSub Fに規定される「Foreign Base Company Income」や「Insurance所得」のうち「High-Tax Exception」の対象となる所得。プラス「米国外オイル・ガス所得」となり、これらがあればテリトリアル課税適格のE&Pが創出されることになる。そんな所得余り多くなさそう、って思うかもしれないけど、その通り。ちなみにSub F向けのHigh-Tax Exceptionに準じた免除規定がGILTIの「新」規則案で提案されていて今後の動向が楽しみ。これもGILTIの規則最終化時点に同時公表された「新」規則案という形で提案されている。

次に、これらも分かり易い項目として、Tested Incomeだけど米国株主側でGILTIにならない所得が挙げられる。このカテゴリーに属するのはCFCの有形償却資産の10%に当たるみなしルーティン所得に加えて、他のCFCのTested LossのおかげでGILTIになっていない部分。面白いことに他のCFCのマイナスで相殺されるプラスの所得はGILTI規定ではPTEPにはならない。Transition Tax時には他のCFCのマイナス留保所得と相殺されて非課税となった部分もPTEPになるっていう法律だったけど、おそらくTransition Taxがテリトリアル課税を想定していない旧来の法律下で規定されているのに対し、GILTIはもちろんTCJA下での処理となり、マイナスでオフセットされた部分がテリトリアル課税適格のE&Pとなる点を加味してこのような異なる取り扱いとしているのだろうか。複雑。

で、前回チラッと間接的に触れたので勘の鋭い方はアレって思われたかもしれないけど、Transition Taxは2017年12月末(稀に11月2日)時点のE&Pが対象となっている。これはCFCや米国株主の課税年度にかかわらず一律。一方、GILTI適用開始日は、2018年1月1日以降に開始するCFCの課税年度。CFCが12月決算の場合には、2017年12月末までのE&PはTransition Taxで課税され、2018年1月1日以降の所得はGILTIで課税されることなり華麗なTransitionとなる。でも、CFCが暦年以外の所謂「Fiscal Year」のケースでは、Transition Taxの対象となった2017年12月末のE&Pと、所得がGILTI対象となり始める間に空白期間が存在する。その空白期間を狙い、ドラフト外入団という形で巨人ジャイアンツは契約締結を決行する、じゃなくて(これも古いけど、今でも知っている人は多いよね?)、空白期間にCFCが認識する所得はTransition Taxの対象でもなければGILTI対象でもないことになる。例えば、日本企業のように米国でも3月決算が多いケースは、CFC課税年度合致要件があるので多くのケースでCFCも3月決算だけど、Transition Taxの対象となるE&Pは12月で打ち止められている。一方でGILTIは2018年4月開始のCFC課税年度から適用なので、1月~3月の所得はGILTI対象にならない。「見、見、見つけた~!」って感じのピュアなE&P。となるはずだったんだけどね。ちなみにCFCの課税年度は大多数の持分を所有する米国株主の課税年度に合わせる必要がある。Sub Kのパススルーみたいな要件で、双方共パートナーシップやCFCの課税年度末に所得配賦や合算額の算定を行うことから、期ズレを利用した所得認識の繰り延べに網を掛けるための規則。CFCの所在国で課税年度の選定が不自由でも米国目的では合致要件に基づく課税年度を採択しないといけない。例えばCFC所在国の法令では課税年度は1月~12月って決まってても、大多数持分所有の米国株主がFiscal Yearの場合、米国税法目的では合致要件に基づきFiscal Yearの採択が強制される。これが理由で、「US Year」とか「Foreign Year」とか言って区別が必要となることがあり、Poolingが廃止され毎期個別に計算されるTCJA下のFTC算定時などには、外国のどの法人税がUS Yearで発生し、かつProperty Attributableと取り扱われるのか、という重要な検討事項にも影響を持つ。

ちなみにCFCの課税年度の合致要件には例外があり、大多数の持分を所有する米国株主の課税年度より1カ月早い課税年度を選択することが認められる。ほぼ間違いなく暦年課税年度の米国企業傘下のCFCのUS Yearが11月だったりするのはこの例外を利用しているケース。1カ月早いというと、1カ月だけの繰り延べだから大したことないじゃん、って錯覚するかもしれいないけど効果はもう少し大きい。11月に課税年度が終了するCFCの所得を取り込むのは、米国株主のその直後の12月決算だから、前年一か月分の所得は11カ月の課税繰り延べが実現されることになる。さっきのTransition TaxとGILTIの関係を考える上でも、GILTIが2018年12月1日以降から適用となるので、11カ月に亘る空白期間が生じることになる。

ここに神経を尖らせたのが財務省。財務省とかIRSの世界観に基づくと、TCJA後の米国国際課税システム下では「Sub F、GILTI、245A(テリトリアル課税)」が一体となって機能し、外国源泉所得の課税関係を決めるというもの。更に優先順位的には、Sub FとGILTIの洗礼を受けた後にサバイバルしているE&Pのみがテリトリアル課税の恩典にあり付ける、というもの。その見地から行くと、空白期間のE&PがGILTIの洗礼を受けることなく素通りでテリトリアル課税適格となるのは、ポリシー違反ということになる。

え~、でもGILTIを想定して慌ててCFCの課税年度の変更でもしているケースは別として、何も知らずに真面目に生活してたら急に2017年末のE&PはTransition Taxで課税と言われ、2018年1月1日以降に開始する課税年度からはGILTIと言われ、法文に基づいて空白期間が存在してしまっているケースをポリシー違反と言われてもね。議会で勝手に法律作ったくせに、と言いたくなるだろう。だったらTransition TaxをCFC課税年度末に存在するE&Pと規定すればよかったのにね。これを行政府に権限委譲されている規則策定のスコープ内と納得できるかどうかは意見が割れるところだろう。

しかし現実は厳しく、財務省はGILTI規則を最終化した際に、245Aにかかわる暫定規則も同日公表し、空白期間に発生する所得のうち、一定要件を充たすものは実質GILTI課税されたかのようにDRDを50%に限定 するという斬新な対抗策を打ち出した。法的な権限は微妙だけど、少なくとも空白期間に生じた所得全額をGILTI対象とかにしてないのは救い。DRDが50%に限定されるE&Pを生み出す取引は、空白期間に起こった通常レベルを超える資産譲渡で、これを「Extraordinary Disposition」、特別譲渡とでも訳すんだろうか、と言う。何がExtraordinary Dispositionかは少額免除を含む詳細な定義で規定されている。この手の取引は、大概において関連CFCに対して含み益を持つ資産を譲渡し、譲渡側CFCで空白期間に多くのテリトリアル課税対象E&Pを計上すると同時に譲渡先CFCでは高い時価に基づく償却を取ることで、今後のGILTIを減額するように設計される。また、空白期間とは言え、従来からのSub Fはもちろん粛々と存在してるんだけど、これらの資産譲渡はSub Fには抵触しないようにプランされるので実質、米国で合算されることなく過大なE&Pが創出され兼ねないものだった。

3月決算の日本企業米国子会社が大多数持分を所有するCFCは課税年度合致要件で3月決算(または2月も可)なので、基本3カ月の空白期間がある。この間にExtraordinary Dispositionがなければ、無事にこの3カ月間に創出されたE&Pがテリトリアル課税適格となる純粋なE&Pとなる。

で、この厳しい暫定規則は空白期間というGILTI導入時の一過性の期間のみにかかわるものなので、空白期間を無事に乗り切れば、時はいつの日にも親切な友達で、過ぎて行く昨日を物語りに変えてくれるんだけど、TCJA下の新国際課税システムの考え方として、Sub FとGILTIが優先で、その後に残ったものがあればテリトリアル課税を認めると言うアーキテクチュアーというかポリシー、思想が明確に示唆された点の意義というかショックは大きい。さらにこの暫定規則にはもう一つテリトリアル課税対象となる所得を制限する、しかもこちらは空白期間のように一過性のものではないLong-Lastingな規則が規定されている。これも面白いけど、ここからは次回。

Saturday, January 18, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (2)

NYCとか米国北東部の冬を知っている身としては、お正月明けの七草がゆ直後の1月9~10日に立ち寄った東京はとても暖かく感じられたけど、その後、NYCに戻ってビックリ。11~12日の週末は70度(℃だと20度くらい?)に迫る勢いで、1月だというのにCentral Parkで桜のつぼみが春が来たと勘違いして開きそうになっているとWSJで特集されていた。その後も温暖で、コートも持たずに調子にのって出歩いたりしてたんだけど、一週間経った今日、金曜日は氷点下まだ冷え込んでしまい、いつもの冬に戻ってしまった。それでも5~6年前に2年連続で襲った極寒の冬とは比較にならないけど、来週前半まで寒いみたい。明日、土曜日は午後小雪が舞うっていう予報だしね。そんな週末は暖かいミルクティー飲みながらMKの禁断のブリオッシュでもつまみ、もう直ぐ出そうなSection 163(j)の最終規則がどんな内容かアレコレ空想に耽るのが最高(なにそれ?)。実際には諸々のHouse-Keepingマターでバタバタすることになるんだけど気持ち的にはね。

で、前回のポスティングでは、新年の挨拶代わりに、「テリトリアル課税」に移行したはずのTCJA以降の米国国際課税システムにおいて、米国企業がテリトリアル課税の恩典を受けることができるチャンスはほとんどない、であろう点について書き始めた。

この話しの前提となるクロスボーダー課税関係の基礎的なルールだけでも数冊の本になりそうだけど、今回の話しに関係しそうな部分だけ、表面的にチラッと触れる、米国では分配がないにもかかわらずGILTIやSub Fで米国株主が合算課税される場合、CFC側の留保所得が「課税済留保所得」、すなわち「Previously Taxed E&P、略してPTEP」(「ピーテップ」っていう発音)となる。TCJA前はPTIって言ってたんだけど、TCJA直後からPTEPに変わってしまった。基本的に内容は一緒。

このPTIやPTEPの世界は深淵で、2006年に財務省規則案が公表されてるけど結局今日まで最終化されていない。そうこうしているうちにTCJAが可決してしまい、大幅にアップグレードせざるを得ない状況に。2006年当時はあくまでもSub Fの世界の話しで、それだけでもとてつもなく奥が深かったけど、TCJA下のTransition TaxやGILTIで巨額のPTEPが課税システムに創出され、その重要性、複雑性、共に従来とは比較にならないレベルに達している。そんな進展を反映して、IRSはNotice 2019-01を公表し、暫定的なアプローチを示すと共に、2006年の規則案を実質書き直して新たな規則案を策定するとしている。Notice発行当時は2019年の秋から冬に掛けて規則案が公表される、って財務省やIRSの国際課税担当官が法曹界のパネルとかでアグレッシブなタイムラインを披露してくれてたけど、結局2020年になっちゃったね。ただ、他に先行している規則にも少なからず消化不良の部分が残っている中、PTEPみたいな複雑な規則案をこのタイミングで公表されても、実際にはチョッと困るのも事実。

で、CFC側のE&Pのうち、どの部分がPTEPに区分されるっかていうのをトラッキングする必要がある理由だけど、従来は、CFCからの分配はE&Pの範囲で配当所得となりFTCは取れるけど課税対象だったので、既に課税されているE&Pを原資とする分配は二度目の課税が生じないように管理するというのが一番の目的だった。コンセプト的には分かり易いね。テリトリアル課税になった今日でもトラッキングが必要な理由は後述する。で、ここでいう配当は、もちろん会社法上の分配に基づく配当に限らず、米国税務上、配当と取り扱われるCFC株式譲渡時のSection 1248とか、組織再編の際に配当となる部分のBootとか、も含まれる。で、PTEPの分配は配当ではないので、どうなるかって言うと、元々Sub F合算時にはCFC株式の簿価を合算額だけ増額させているので、PTEP分配時は同簿価を減額させて調整していた。

この仕組みは、従来のSub FのようにCFCを個別に見て米国株主の合算額が決まる、すなわち課税所得は単純にCFC側の属性で決定される合算システム下では、株式簿価とCFC側のPTEPが連動することになり分かり易い。一方、Transition TaxやGILTIのように、米国株主側で複数のCFCのプラスやマイナスを相殺したり、他の属性を通算するようなシステムに同じ仕組みを適用するのはとても難しく、分配時に思わぬみなし譲渡益が出たりすることがある。従来の感覚では、PTIは株式簿価があるのでTax-Freeで戻せるいい属性で、逆にPTIでないE&Pは、High-Tax Poolが一緒に付いてないと悪者、っていうイメージだったけど、TCJAで逆にPTEPでも必ずしも非課税ではないので要注意となってしまった。

で、本題のなぜ配当可能原資となる純粋な、すなわちPTEPでないE&Pが存在し得ない、または僅少か、という点に入るけど、旧国際課税システムから新システムへの移行に際して1987年以降のE&PはTransition Taxで課税されている。法的にはTransition Taxは該当E&Pを全額一気にSub Fと取り扱って課税しているので、2017年12月31日以前に開始するCFCの最後の課税年度末に全額発生したことになる。このTransition Taxっていうのは実に良くできていて、TCJAで規定されているにもかかわらず、「旧」法が適用される。CFCの課税年度の関係で米国側で2018年に課税されていてもそれは変わらない。なので全額E&Pを低税率で合算して、税率が低い分減額されるけど外国法人税Poolがフローアップする。PoolingはTCJAで撤廃されているので、過去のPoolingを使用できるのは金輪際これで最後となる。Section 956でPoolingを使おうって企んでたけど、規則案が出てダメになってしまったしね。

Transition Tax課税はSub Fだから、2017年12月末(稀に11月2日)時点のE&Pは全てPTEPになっている。しかも、他のCFCのマイナスと米国株主側でオフセットされて実際には課税されていないE&PまでPTEPにすると言う変わった法律だったので、1987年以降の留保所得は全て本当にTransition Taxで課税されている所謂965(a)PTEP、または他のCFCのマイナスで課税はされていない965(b)PTEPとなっている。ということは2017年12月時点で手つかずのE&Pは、1986年以前のものだけ。そんな古いE&P誰が持ってるの、って感じだけど、もしあればこれが1つめのテリトリアル課税対象となり得るE&P。実際にはまず存在しないだろう。実際には課税されていないのにPTEPになっている965(b)の存在は税法上異質で、いろいろな追加検討を誘発しているけど、この話しは以前にもした記憶があるので、興味ある方は昔のポスティングを覗いてみて欲しい。

そんな状態で一旦E&PとTax Poolが全額洗浄された後、今度はGILTIで毎期CFCの所得は米国で合算される。GILTIは米国株主側で加工する米国の属性だっていう点はさっき強調したけど、仮にCFCの所得がGILTIで課税されている状態だと、今後、毎期E&PはPTEPになる。チョッと面白いことに、GILTIにしても、Transition Taxにしても通常の法人税より低税率で課税されるんだけど、株式簿価はそのまま全額増額するし、E&Pも全額PTEPになる。

となると、今後もPTEPとならないCFCの所得、すなわちテリトリアル課税適格のE&Pは未来永劫生まれない、っていう厳しい現実だけど、例外が少しだけある。ここからは次回。

Saturday, January 11, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得

西海岸、ボストン、東京と新年早々飛び回らざるを得ないはめとなり、チョッと(大分?)遅くなってしまったけど、新年明けましておめでとうございます。2020年。日本はいよいよオリンピック。米国は選挙の年だけど、米国議会はImpeachmentとIranの2つの「I」で相変わらず混沌とした状態のまま一年をキックオフしている。今は2つの「I」かもしれないけど、今から大統領選挙の11月までには、Fake Newsも含めて毎日いろんなことがありそうだから、どんな凄い事件や争点が勃発してくるのでしょうか。

で、広範な政局の話は尽きなさ過ぎるのでさておき、国際課税に関しても2020年と年の数は変わっても引き続き考えることは山積み。2017年の税制改正(「TCJA」)絡みでは、支払利息の損金算入制限を規定しているSection 163(j)やAnti-HybridのSection 267にかかわる最終規則が近々に公開されるはずだし。Section 163(j)に関しては規則案でMNCを落胆させたCFCへの適用を一転して見送ってくれるのではないか、という期待が高い。GILTIの規則案で、米国パートナーシップの取り扱いを、概念的には立派だけど実務的な対応が困難だったハイブリッドから最終規則ではPureなAggregateに簡素化してくれてウェルカムだったように、今回もSection 163(j)のCFC適用見送りの逆転ホームランがあるのではと楽観する向きがある。財務省やIRS重鎮の最近のコメントから可能性は結構あるかもね。

それにしても2年前にTCJAが可決された当時は、皆どちらかと言うと無邪気に、米国もようやくテリトリアル課税の仲間入りを果たし、ただ、その際に過度のBase Erosion が懸念されるので、その取り締まり目的でBEATやGILTIでバックストップしているという印象を受けたものだ。可決後間もなく、実はそれはとんでもない誤解で、むしろ逆に、TCJA後の米国国際課税システムは、GILTIによりDeferralなしのグローバル・パススルーというか、グローバル疑似連結納税という恐ろしい制度が基本で、肝心のテリトリアル課税が適用される海外のEarnings(「E&P」)は限りなくゼロに近いブルーという現実にハッとしてグッと来なくて、GoodではなくBadとなった(古~)。一方でFDIIも同時に導入され、海外向けの事業所得や、IPをライセンスして受け取るロイヤルティを米国で受け取っても、理論的にはGILTI後のCFC合算課税と結局同じという税環境を演出し、米国と外国間でいわゆる「Level Playing Field」を達成している。GILTI側のみに注目する傾向にあるグローバル・タックス・コミュニティは、GILTIとFDIIが対でワークする点、またFDIIは米国を有利にしている訳ではないという点、2つを中々直感的に理解できていない気がする。このようなパラダイムシフトこそ、TCJA後の米国における国際課税システムのNew Normとなる。

ということで、今回のポスティングでは、テリトリアル課税の対象が縮小一途な点に触れて新年の挨拶(?)としたい。

米国のテリトリアル課税は、配当をいきなり非課税とするのではなく、実質同じだけど、配当は一旦全額所得として認識した後、一定要件下で100%配当所得控除(「DRD」)を認めることで達成される仕組みになっている。具体的には、米国法人が10%以上の持分を所有する外国法人、Specified 10-percent Owned Foreign Corporation、から海外源泉のE&Pを原資とする「配当」を受け取る際、12カ月の保有期間を充たせば当配当全額がDRD対象となる。DRDにはGILTIやFDII控除と異なり課税所得制限はない。12カ月の保有期間は配当権利落ち日の前でも後でも充足可能。配当後に12カ月株式を保有していれば要件を充足できるっていうのはチョッと面白いけど、場合によっては申告時点で、まだ要件の充足が確定していない状況もあり得る。また、この12カ月保有期間は、ただ保有しているだけではなく「10%株主」の立場で保有している必要がある。12カ月保有要件だけでも、Section 1248 との関係とか相当面白いポスティングになるんで書きたいことはやまやま。でも実務的には大概においてこの条件で悩むことはないかな。

例外は米国パートナーシップが外国法人の株式を保有しているケースで、その場合は誰の保有期間を見て、誰が米国株主じゃないといけないのか、とかパートナーシップをAggregateとするかEntityとするか、というお馴染みの難しい判断が求められる。従来のSub Fオンリー時代から、クロスボーダー課税における米国パートナーシップの取り扱いは鬼門だったし、CFCブロッカーみたいなイノベーティブな(?)使用法が編み出されたりしてたけど、それでもTCJA前はなんだかんだ言ってもSub Fという限られた世界の話しだったので、外国と米国パートナーシップというかなり恣意的な形態の差異で取り扱いがここまで異なるっていう法律の趣旨が良く分かんないけど、適用が限定的だからまぁいっか、みたいな世界だった。GILTIやDRDが導入された今日、概念的には同じ検討事項だけどそのStakeが著しくハイになってしまい、これ以上の放置は認められない。そんな待ったなしの状況を背景に、Sub Fにもとうとう米国パートナーシップAggregate規定が提案されているので、その辺の話しはいずれまた。

で、DRDに戻るけど、DRDの対象となる海外源泉配当に関しては、その代償に直接・間接FTCも、源泉税にかかわる外国税金の費用控除も認められない。また、配当支払い側で控除を含む税メリットを享受できるような配当は、Hybrid配当としてDRDもFTCも双方否認される。

そんなに変わった制度じゃないじゃん、って思うかもしれないけど、実はDRDの対象が米国税務上、配当と取り扱われる金額に限定されている点に大きな落とし穴がある。TCJA導入時のTransition Tax、またそれ以降のGILTIの世界では税務上「配当」と取り扱われる金額がCFCから分配されるケースは存在しないからだ。って言うとチョッと大げさかもしれないけど、存在し難いのは確か。しかも、「やった~、配当原資となりそうなE&P見つけたぜ」って偉業を成し遂げたつもりが、最近の財務省の規則で次々と適用が禁止されたりして、今では絶滅寸前。まるで、Endangered Species、すなわち絶滅危惧種に指定された生物種のよう。しかもCE+ENレベル。本当の生物種と異なり、保全活動のしようもないし。

で、なぜそこまで希少なものか、という点は次回。

Tuesday, December 31, 2019

2019年大晦日「ゆく年くる年」

2019年も残すところ数時間。日付変更線の向こう側、日本では既に2020年を迎えているはず。こちらTimes Squareは恒例のBall Dropでもちろん午後からオフィスも立ち入り禁止。立ち入りOKでもこんなややこしい日にあの辺りに行くつもりは毛頭ないけどね。Broadwayには「20」っていう大きな数字のオブジェみたいなのが設置されたりして、Times Squareもカウントダウンの準備万端整いつつある感じ。今年のカウントダウンパフォーマンスの「トリ」はPost Maloneらしい。古くは、って言っても2~3年前だけど「Congratulations」とか、それよりチョッと最近の「Sunflower」とか良いよね。最近良くプレーされる「Circles」もいい曲だし。Circlesって、てっきり「Run Away」っていうタイトルだと信じてて、「最近良く聴くRun Awayって曲いいよね?」と言っても「Run Away?」みたいな反応だったのでサーチしたらタイトルはCirclesだった。最近のMale Vocalってこういう感じの曲が多い気がする。Ed SheeranがKhalidとコラボしてる「Beautiful People」も似た感じの曲調だし。

Ed SheeranのBeautiful Peopleって、内容的にはJohn Lennonがその昔、(少なくとも米国のCapitol Records的には)The BeatlesのMagical Mystery Tourに収録されてた「Baby You’re Rich Man」で徹底的にバカにして軽蔑してるように聞こえる「Beautiful People」と同様の類の人たちを歌ってるような印象。John Lennonの歌詞に関してはいろんな解釈があるようだけどね。Baby You're Rich Manのコーラス部分はMcCartneyが付け加えたって言われてるけど、元々のJohn Lennon部分はタイトルが「One of the Beautiful People」だったそう。他にもJohn Lennonが歌うSexy Sadieとか、And Your Bird Can Singとか、Cynicalな感じの歌詞がJohn Lennonっぽくていいね。Ed SheeranのBeautiful Peopleは、米国の都市の中でもL.A.でしか感じることができない、あの独特の皮相的で表面的なバブリー・カルチャーが良く表現されてる。Rented Hummers…(苦笑)。英国出身のEd Sheeranからしてみるとその浅さにピックリだったのでは。

で、Pop MusicよりもズッとExcitingなクロスボーダー課税のここ一年に目を向けると、2019年12月で米国税制改正TCJAの可決から2年が経過したことになる。う~ん、まだ2年なんだね、TCJAは米国クロスボーダー課税の在り方を根本から変えてしまったので、それ以前の世界を思い出すのに苦労する。個人的には2017年12月22日を境にこの世の中BCとADになっているような感じ(大げさ?)。本当のBCもそうだけど、BCの世界に身を置いている時は自分がBCに居るってもちろん知らない訳だけど、2017年までのクロスボーダー課税制度と格闘してた自分たちも、振り返ってみるとそんな感じ。

普通の人にはおおげさに聞こえるかもしれないけど、ここ2年はWhole New Worldで、実際寝ても覚めて、四六時中TCJA一色だったと言える。他の規定より一足先に2017年課税年度より適用が開始されたSection 965の留保所得一括課税を除くと、GILTI、FDII、BEAT、163(j)、Anti-Hybrid、960下のFTC、諸々のその他のTCJA新規定は、2018年課税年度から適用となった。2019年は、そんな「TCJA Fully Loaded」となる2018年の申告書を実際に作成する最初の年。米国の申告期限は延長が当たり前なので、提出まで結構間が開いていて、基本12月決算となる米国法人は翌年10月15日、3月決算だと、翌年の1月15日となる。したがって、米国法人は暦年2018年12月の申告書を10月に提出したばかりだし、2019年3月期(これは2018年課税年度に当たる)を採択している日本企業米国子会社の申告書はようやくドラフトが完成している(といいけど?)ようなタイミングと言える。実際にはBE%や、GILTIバスケットに配賦する支払利息の金額が未だに定まってなかったりするようなケース満載だろうけどね。

米国法人による申告書作成コンプライアンス業務は従来から負荷が高かったと思うけど、TCJAで更に激しさを増している。一度、実際にTCJA下で申告してみることで、どれだけ大変で、かつどれだけ追加税コストが発生するのか、だいたい当りも付き、また、財務省規則も規則案も含めると徐々に大物は公表されつつあることから、今後はTCJA下のADの世界におけるOptimization的なプランニングのフェーズに入っていくことになる。考えただけでワクワクものだ。もちろん米国だけでなく、欧州等の他国やBEPS系の動きも加味して複合的な検討が必要となる。

で、今日は大晦日なので、TCJAを受けて、周りで米国MNCを担当しているチーム、DCの重鎮、NYやDCの大手弁護士事務所のタックス部門パートナー達、その他の専門家との会話から見て取ることができる、2020年以降に予想されるプラニングのトップ5リストで、一年の締めくくりとしたい。ちなみに、思いつくまま書くので順不同だからね。また、各々の検討は相互に影響があり、個々に検討しても意味がなく、全てを複合かつ総合的に、また定量モデリングしながらベストなストラクチャー等を決定していく必要がある。

【FTC】 GILTIバスケットと支店(QBU)バスケットの2つの新規導入でクロスクレジットがより困難に。しかもGILTIバスケットは繰越・繰戻不可なので二重課税のリスクが増大。Section 902のPooling廃止で毎期、GILTIやSub Fを含む各所得タイプに適切に帰属すると取り扱われる外国法人税のみがFTC対象という厳しいマッチングのNew World。これらの理由も含め、FTCプラニングは今後のますます緻密なモデリングに基づいて行う必要が増してる。GILTI後のクロスボーダー課税の世界ではFTCの最大限化は国際課税プラニングの主役になる。FTCバスケットにExcess CreditとExcess Limitationが混在する場合にはFTCの最大限化のためのクロスボーダーReorganizationも視野に入れたプラニングが開始されるだろう。他のプラニングも同様だけど、各CFCの課税ポジションやプロファイルが毎年同じじゃない部分をどう定量的に加味するかはチャレンジング。

【GILTI】 クロスボーダー課税の既成概念を打ち破ったGILTI。FTC計算時の米国内での費用配賦の関係で米国側の負担が思ったよりも大きいケースが多い。GILTIは、コンプライアンス時にとてつもなく複雑な計算を伴うが、最終規則も出て一応基本的なメカは明らかになったといえる。従来のSub Fだけの世界ではCFCがプラスかマイナスかってい言うのは余り気にならなかったけど、GILTIの世界では、Tested Lossを生み出すCFCはQBAIも使えないし、法人税もフローアップして来ない。GILTI非課税枠を作り出すみなし動産リターンから差し引かれる特定支払利息は、一定額を超えるとTested LossのCFCの額も関係してくるなど、Tested Lossが見込まれるCFCはCTBして他のCFCの支店化するなどのReorganizationの検討がいよいよ実践フェーズに入りそう。ちなみに、規則案として公表されている「High Tax Exception」がどれほど使い勝手いいものに変更されるかは、今後のGILTIプラニングを大きく左右。

【BEAT】 CFCの所得を毎期合算するGILTIの世界で、その悪影響を低減させるのは、Section 250の50%所得控除と同時に何と言ってもFTC。せっかく費用配賦とか工夫して、多額のFTCを計上することができても、BEATミニマムタックスを算定する際に、通常の税額(FTCを引いた後)と比較する修正BEATタックスにFTCは認められない。BEATミニマムタックスを支払うということはFTCが無に帰することだから、何とかBEATの適用対象にならないようなプラニングが重要となる。BEAT規定の公表当時から注目されている、SCM、CSA時の契約関係の見直し、ロイヤルティ等の費用の棚卸資産計上、適格デリバティブ、Debtの外部化、などに加え、規則案として公表されている損金算入の自己否認でBase Erosion %を3%未満とするための策の探求が続くだろう。

【キャピタルストラクチャー】 米国MNCの定石だった全ての借入を米国で行う従来キャピタルストラクチャーは、法人税引き下げ、新Section 163(j) 、Anti-Hybrid、BEAT、等の影響で再検討要になっている。Section 956を使った最後のPoolingを利用したFTCプラニングも規則で不可能になっちゃったし。Section 163(j)の規則は草案の状態にあるけど、最終化の暁にはCFCへの適用法がこのままか、また極限に広いSection 163(j)対象の「利息」の定義に何らかの緩和が見られるか、等、注目度が高い。

【M&A】 Sub CやSub Kの規定はTCJAで余り影響を受けてないけど、TCJAで中古資産でも一定要件下で適格資産には即時償却が認められるようになったことから、ステップアップの検討価値がアップ。以前から、M&Aの税務ってバイヤー側のステップアップとセラー側の二重課税回避、この2点の綱引きに基づく検討がかなり主だったと言えるけど、その傾向に拍車がかかっている。ただ、ステップアップしても償却を取れないと意味がないので、特にGoodwillとかに関してはAnti-Churningとならないよう、ステップアップのさせ方に要注意。ファンド系のM&AでRollover株主が関与する場合は特に慎重にストラクチャーを検討する必要があるし、Rollover株主に帰属する部分も含めてアップフロントに100%含み益を認識するような形態はできれば避けるように。日本企業による米国M&A時にも、ターゲットがS Corporationだったりパススルー扱いされているLLCとかのケースも多いので、この辺りはよく検討する必要あり。でも、みんなが即時償却すると税務簿価が取得時にゼロになるから、次のM&Aでバイヤーにステップアップをデリバーする際のセラー側のコストは当然高くなる傾向にあり、より慎重にモデリングしないとね。

ということで2020年も引き続きよろしくお願いします。

Saturday, December 28, 2019

863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案 (3)

ここ2回のポスティングで、JBL、じゃなくてSection 863の規則案のうちSection 863そのものに関する部分はだいたいカバーしたので、今回はいよいよ規則案が真に意図すると思われる神髄部分に関して。

最初のポスティング「863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案」で触れた通り、所得の源泉地は、米国の納税者にとってはFTCの最大限化、日本企業のような外国法人や非居住者にとっては、所得が米国で課税対象となり得るかどうかを判断する際の最重要検討事項のひとつとなる。租税条約を適用する前の、米国内法に基づく申告課税の対象判断は、外国法人が米国事業(USTOB)に従事しているか(または従事しているとみなされるか)、そしてその場合はUSTOBに関連していると「法的に」取り扱われる所得(ECI)は何か、というステップで検討する。その際、所得の源泉が米国かどうかは大きな分かれ道だ。所得の源泉やECIの概念は16th Amendmentの1913年とは言わないけど、1936年頃の国際課税制度、最低でも1966年くらいまで遡って税法の歴史を紐解かないと理解が進まないとてつもない法体系に基づく。もちろん、真面目にそこまで遡って話し始めると、Larry Carltonどころの話しでなくなり、一生この話題でポスティングし続けるハメになるので、ごく軽く、英語で言うところのTangentiallyにSection 863との絡みが分かる程度、と言っても相当難関だけど、触れてみたい。

という訳で、今日もSection 863の規則案が公表されて以来ハマっているLarry Carltonセットアップして・・・、と。それにしても数十年ぶりに聴くLarry Carlton。Gibson 335ってVersatileなギターだよね。歪みなしでも最高だし、Point It Upみたいに歪ませてもいいし。Larry Carltonだってもちろん他にもいろんなギター使ってるんだろうけど、やっぱりSignature的には335。Room 335とかで使っているアンプはなんなんだろう。その昔ライブで見た当時は、子供の頃Marshallの次に欲しかったMesa/Boogieを使用していたのを覚えてるけど。スタジオでもそうなのかな。335ってFusionや昔のRock’n‘Rollだけでなく、例えばFenderストラトのイメージが定着してるRichie Blackmoreとかも昔、愛用していて、Blackmoreは当然Marshallにプラグインして、ライブで最高の音質やテクニックを披露している。特に昔、海賊版や、たまにFMとかでもエアーされていたUKライブの「Wring That Neck」とか。この曲、なぜか米国では「Hard Road」ってタイトルなんだけど、YouTubeとかで手軽に動画にアクセスできる今と違い、当時は動画どころか、静止画像も見たことなかったから、Blackmoreだから当然ストラトキャスターで結構ギブソンみたいな太めの音を出してるんだな、って信じてたんだけど、その後ビデオを見る機会があったら335なんだよね。なるほどね、って感じだった。

チョッとまた変な話しになりかけてるので、早々に軌道修正するけど、米国源泉のFDAP系の所得、すなわちほぼ全ての通常所得、やキャピタルゲインがECIとなるかどうかは、資産テスト、活動テストを適用して行うことができる。これはPE帰属所得の認定に似ていて、USTOBで使用している資産やUSTOBの活動内容と照らし合わせる「事実関係」に基づく判断。なんで、法的判断とは言え、事実認定に依ることからここのConnectionは納得感がある。この部分こそ、今日我々が知っているECIの「Effectively Connected」を実現している部分だろう。USTOBが存在する場合、資産テストや活動テストの適用できない所得、すなわち棚卸資産を含む動産の譲渡益は米国源泉だと自動的にECIとなる。これは過去の遺物的な存在。さらに、米国不動産持分譲渡に至ってはFIRPTAで、他にUSTOBがあってもなくても、不動産所有自体がUSTOBでもなくても譲渡益は常にECI。

チョッとややこしいのが棚卸資産。余り深掘りすると30回シリーズとかになりそうなので、どれだけ要点絞って話せるかチャレンジングなところだけど、まず、米国人と外国人で所得の源泉地の決め方が異なるっていうのがひとつ目のポイント。ここで言う外国人は米国外法人とTax Homeが米国にない外国人および米国人も含むから要注意。日本企業の切口ってことで、今日は外国人の視点からのみ話しておくけど、外国人が棚卸資産販売からの所得源泉地を決める際、もし販売益が、その外国人が有する米国事務所に帰する所得っていう位置づけになると、通常の所得源泉地の決定法である、所有権移管場所とか、生産活動が関与するものはSection 863とか、は一切無視して米国源泉になる。このルールは正確には棚卸資産ばかりでなく動産一般に適用される。動産って言うのは、不動産ではない資産のことで無形資産を含むけど、償却資産や無形資産には更に特別な規定がある。

で、今度は動産一般ではなく、棚卸資産に限定して、仮に米国事務所に帰する所得でも、同時に米国外の事務所が重要な関与をしていて、かつ棚卸資産が米国内消費ではない場合(なんかFDIIみたいだね)には、米国事務所ルールの適用除外対象となる。この除外規定を適用する際に勘違いしてはいけないのは、あくまでも米国事務所規定が適用されそうになった場合に、同規定から除外するとしているだけで、これをもって自動的に米国外源泉となるとは限らない点。すなわち、米国事務所ルール適用前の、通常ルールに戻るだけの話し。となると、生産に関与していない外国人にとっては所有権移転場所の話しなので、FOBとかCIFとか、たくさんある貿易実務用語、さらにそれらの用語の直後にどこのPortや工場の名前が付くか、とかIncoterms系の知識が求められることになる。

米国事務所に帰する所得のくせに、米国外事務所が同時に重要な関与を持つってどういうこと?って思うかもしれないけど、ここで言う「重要な関与」すなわちMaterial Participationは比率的にMajorityやPredominantよりも低い関与でもその存在が認められるため、このような事実関係があり得るし、実際に租税条約を米国と締結していないシンガポールとか、または締結したつもりだけど米国上院が批准していないチリとかの納税者には頻繁に使用される除外規定となる。

除外規定が適用できない場合、米国事務所に帰する所得が米国源泉となるんだけど、ここからが更にトリッキー。米国事務所を有しているのか、またそこにいくらの所得が帰するのか、の判断は、外国源泉所得を例外的にECIと取り扱うECI側の規定の「考え方(The principles)」を参照して決定するように、と法文に規定されている。で、この考え方の中に、米国事務所に帰すると取り扱う所得は、米国で販売されていたら米国源泉所得となったであろう金額を上限とする、としている部分がある。う~ん難関。そもそも、米国事務所規定は米国源泉所得かどうかを決めるためのものだけど、それを外国源泉の棚卸資産販売益がECIに当たるかどうかの判断をする際のテストの考え方を流用するっていうところからして、どこまでの「考え方」を流用するのか、適用時にかなり解釈の余地が出てくる。The principleを適用するように、という規則は米国税法の条文としてはかなり珍しいと思う。IFRSとかOECDは厭わずに使用するかもしれないけど、基準が明確でないので争点となりがち。でもここではそんな概念の適用を議会が規定してしまっている。

ここまでの議論で既に相当訳分からなくなってきたのでは、と推測するので、この法体系の更なる背景とかを今後数回別にポスティングとかしても、益々混乱させてしまうリスク大で、仕方なく結論めいたフェーズに入るけど、この考え方を文字通り適用し、外国人が米国で販売する棚卸資産からの所得が米国事務所に帰するにもかかわらず、米国外で生産しているケースでは改定後のSection 863では、全額米国外源泉となるのだから、米国事務所を有している以上、米国事務所ルールは適用こそするものの、そこに帰する所得はゼロっていう取り扱いが可能になった、という納税者側の解釈というかプラニングがTCJA可決当時からインバウンド界で囁かれていた。

財務省は今回の規則案で、米国販売だったら米国源泉所得となる額を上限とするという部分は、外国人が有する米国事務所に帰する棚卸資産販売からの所得決定時に流用する「考え方」には含まれない、と断じ、そのような適用はECIそのものの考え方、その他の立法趣旨から「不適切」としている。「不法」と言い切れないところが苦しいところかもね。

ただ、米国外で生産している棚卸資産を外国人が米国で販売し、その際にその外国人の米国事務所が関与している場合には、そこに帰する所得は「販売機能」部分だけに限定するのが適正であるとし、生産部分は除外するという点を財務省規則案で明確にしている。この点の明確化は英断と言え、高い評価に値する。さらに所得の帰属先にかかわる移転価格的な不確実性を排除するため、販売機能に帰属する部分は原則所得の50%とする、とも規定している。え~、タイムトリップして、Section 863が改定される前の按分規定同様の考え方を今から取り入れるんだね。従来、旧Section 863が存在した時点では生産と販売は50%・50%で按分するのが一般的だった点は「863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案 (2)」で触れたけど、当時は同様の按分法をインバウンドの米国事務所帰属の棚卸資産販売に適用するという一般規則はなかった。にもかかわらず、Section 863が改定された途端に、廃止されたばかりのSection 863下の按分方法を取り込む当たり、当ポジションの皮肉さを物語っている、というか異論もあるだろうけど、財務省側の解釈やResult Orientedな部分は十分に理解できる。ある意味、寛容な判断とも言えるけど、下手すると100%外国源泉になってしまうような解釈も可能だっただけに最大限の譲歩なんだろうか。

まだまだ書きたいことは山積みだけど、Playlistも後半に差し掛かかり、曲調がさまよい始めてる観があるので、Section 863の財務省規則案はこの辺にして、Lex沿いのMidtownインド街に本場美味のチキンティッカマサラでも食べに出発することにする(どうでもいいよね)。ちなみにこの規則案、公告後に終了する課税年度から適用が原則だけど、納税者の選択で早期適用も可能だそうだ。