前回まで2回のポスティングでSch. UTP誕生の経緯に触れたが、今回はSch. UTPで実際に誰に対してどのような開示が求められているか、という点に触れたい。
*Sch. UTPの開示義務の適用対象者
Sch. UTPの開示が求められる納税者は、税務上「Corporation」と取り扱われ、法人税申告書(Form 1120、1120F、1120L、1120PC)を提出している事業主体とされる。また、Sch. UTPはFIN 48を基にしているという背景から、「会計監査(Audit)」を受けている法人が対象となる。正確に言うと、監査済みの決算書を作成している法人、または監査済み決算書に含まれる子会社、が対象となる。監査を「レビュー」に変えるとSch.. UTPの開示義務は消えてしまうということだろうか?
現時点ではForm 1065を提出するパススルー主体に開示義務はないが、IRSはパススルー主体への適用も検討中であると言われている。ただし現状でも、パススルー事業主体に投資する法人が不確実税務ポジションをパススルーとしてうけてSch. UTPに開示する場合、その元となるパススルー事業主体の納税者番号を開示することにはなっている。
また、小規模法人は例え監査を受けていても適用が免除される。Sch. UTPの発表当時は総資産が1千万ドル以上の法人が対象という勢いであったが、多くのネガティブコメントを受けて、開示義務は資産規模に準じて5年間掛けて段階的に導入されることとなった。具体的には、今回の導入(2010年の課税年度)からいきなりSch. UTPの提出が義務付けられるのは、資産が1億ドル以上の法人に限定される。課税年度2012年にはこれが5千万ドルに下がり、2014年には1千万ドルとなる。
資産高は、期首または期末のいずれか大きい方の金額で判断する。金額は法人税申告書のSch. Lベースとされていることから、連結納税を行っている場合には連結ベースとなる。連結納税を行うことができないグループ企業の米国法人、すなわちControlled GroupのComponent Memberの資産高はグループ合算する必要はないのだろうか?Sch. UTPは「Affiliated Group(通常は1504連結申告可能グループを指す用語)」への言及はあるが、それ以上突っ込んでない。通常、この手の判断はControlled GroupとかExpanded Affiliated Groupベースで行われることが多いので、Sch. UTPがそれに言い及んでないのはチョッと違和感がある。財務省規則に基づく開示であれば、この辺りの規定はもう少し明確だろうが、何せ法律、財務省規則といういわゆるPrimary Authorityには規定されていない報告義務となるだけに、唯一の拠り所はForm InstructionsとFAQだ。これらの文書は通常は法源としての価値はないに近いが、他に調べる場所がないので仕方がない。外国銀行口座開示の細かい規定をTD.FのInstructionsで見極めるしかない状況のに似ている(TD.Fは結果として不明な点ばかり)。
*開示対象ポジション
Sch. UTPはFIN 48の副産物のような形で生まれているため、基本的はFIN 48に基づいて引当計上されている不確実ポジションが開示対象となる。FIN 48は連邦法人税以外の法人税(州税、米国外の法人税)も対象となっているが、Sch. UTPは連邦法人税に係る部分のみが対象となる。そのうちにCA州とかNY州が真似をして、自分たちの州に関係する引当がある場合には開示するようにといった「Sch. UTP (CA)」のような様式を開発しないとも限らない。恐ろしい世の中になったものだ(?)。
FIN 48下で何の引当もない場合にはSch. UTPを添付する必要はない。すなわち、ブランクのSch. UTPを申告書に添付する必要はない。FIN 48の適用時に会計原則で言うところの「Highly Certain」なポジションということで引当が必要ないポジションはSch. UTP目的でも開示の対象とはならない。Sch. UTPの様式説明(Form Instruction)にでは「Sufficiently Certain」と微妙に異なる表現が使われていて紛らわしいが、両者は同じ意味と考えていい。また、会計監査の際には「重要性(Materiality)」がないポジションに関しては不確実性に係らず、引当は求められないこともあるが、その際もSch. UTPは会計上の処理に準じる、すなわち重要性がないポジションは税務上も開示の必要はない。
Sch. UTPの開示がFIN 48のミラーイメージとなることから、FIN 48の引当有無の判断は今まで以上に重みが増す。元々、税負債を含む様々な引当の必要性有無の検討は、監査人と企業側でテンションが高くなりがちなエリアと言えるが、会計上の引当有無でIRSへの開示の必要性も決まってくるとなるとより一層のテンションが生まれる局面もあるだろう。
FIN 48で引当がない場合にはSch. UTPでも開示はないというのが大原則だが、例外的に訴訟準備の状態にあるという理由で(本来なら引当が求められるポジションで)決算書に引当が計上されていない場合には、Sch. UTP目的では開示が求められる。
ここまででFIN 48で引当が計上されている不確実税務ポジションの開示がSch. UTPで必要となる点の理解ができたと思うが、次回のポスティングでは開示が必要とされるポジションに関して、具体的にどのような情報をどこまで開示する必要があるのかという点に触れてみたい。
Saturday, July 30, 2011
Monday, July 25, 2011
2011年米国タックスの行方(5)- Sch. UTP(続2)
前回のポスティングで触れた通り、FIN 48は会計基準であり、FASBが自主的に制定したもので、IRSがFASBにプレッシャーをかけて作らせた訳ではない。しかし、会計処理上、そのようなオイシイ情報を納税者自らがまとめているとなると、IRSとしてはどうせだったらどんな内容か見てみたいだろう。それでも最初の頃は我慢して「FIN 48のワークペーパーは税務調査で見たりしません」という潔いポリシーを公表したりしていた。しかし、2010年の初頭には我慢は限界に達し、いきなりAnnouncement 2010-9で「Sch. UTP」という新兵器導入の意図を発表することになる。この辺りの経緯に関しては2010年1月29日のポスティング「IRS本性現す」を参照のこと。
ちなみに米国大手企業のFIN 48引当金計上額はスケールが大きい。公になっているもので見ると、GEは87億ドル(面倒なので100円計算するとナント8700億円!)、ファイザー77億ドル、ATT75億ドル、倒産しかかっていたGMでも54億ドル、マイクロソフト54億ドル、金融危機で有名になったAIG48億ドル、とリストは延々と続く。タックス・プラニングにお金を惜しまない米国MNCの面目躍如となる豪快な金額を披露してくれている。もちろんFIN 48は全ての法人税(Income Tax)が対象なので、IRS管轄の米国連邦法人税ばかりでなく、州税、外国法人税全てに係る不確実ポジションが含まれる。したがってパッと見には正確にどこまでがIRSに関係する引当かは分からないが、こんな金額を見せつけられると誰でも「一体全体この中に何が含まれているのか」と興味がわいてくる。税金の徴収担当AgencyであるIRSが知りたいと思うのは当然だ。
Announcement 2010-9が発表された直後は当然、喧々諤々の論争が起こった。従来からの税務調査等に係るリスクマネージメントの考え方を根底から覆すと言っても大袈裟でない内容だからだ。納税者自らが申告書に「こことあそこのポジションが怪しいです!」と宣言するような様式を添付する訳だから税務調査の際にはこれをロードマップに乗り込まれる可能性が高い。
納税者側の反応はもちろん相当ネガティブだった。コメントの中にはIRSにはそもそもそんな情報の開示を指示する法的権限がないというものもあった。三権分立が確立している米国ではIRSと言っても行政権のみ持つAgencyだ。立法権を行使することがあればそれは憲法違反となる。過去にもIRS(正確には財務省)が発行した財務省規則が、税法(Internal Revenue Code)にそのような規則を作成する権利が明確に規定されていないという理由で無効とされたこともある。勝手に今まで存在しなかった情報開示を法律の根拠無く行うことはできないという納税者側の主張も理解できるものだ。また、不確実性のあるポジション開示は、場合によってはPrivilege(弁護士・依頼人間の秘匿特権)に反するという意見もあった。
IRSが納税者側からのコメントを受け付ける期間を設けて反応を伺っている当時の状況下、猛烈な反対を受けてIRSが開示適用を延期または最終的には撤廃するのではないかという楽観的な憶測もあった。しかし、IRSはコメント受付期間を3月末から6月末に延長する一方で、2010年4月には早々とSch. UTPのドラフト様式を公表して既成事実が出来上がっていく。そして9月にはSch. UTPの最終様式が公表され、2010年課税年度からの開示が現実のものになってしまったのである。こんな背景で導入が決まったSch. UTPだが、次回のポスティングでは実際の開示内容その他に触れたい。
ちなみに米国大手企業のFIN 48引当金計上額はスケールが大きい。公になっているもので見ると、GEは87億ドル(面倒なので100円計算するとナント8700億円!)、ファイザー77億ドル、ATT75億ドル、倒産しかかっていたGMでも54億ドル、マイクロソフト54億ドル、金融危機で有名になったAIG48億ドル、とリストは延々と続く。タックス・プラニングにお金を惜しまない米国MNCの面目躍如となる豪快な金額を披露してくれている。もちろんFIN 48は全ての法人税(Income Tax)が対象なので、IRS管轄の米国連邦法人税ばかりでなく、州税、外国法人税全てに係る不確実ポジションが含まれる。したがってパッと見には正確にどこまでがIRSに関係する引当かは分からないが、こんな金額を見せつけられると誰でも「一体全体この中に何が含まれているのか」と興味がわいてくる。税金の徴収担当AgencyであるIRSが知りたいと思うのは当然だ。
Announcement 2010-9が発表された直後は当然、喧々諤々の論争が起こった。従来からの税務調査等に係るリスクマネージメントの考え方を根底から覆すと言っても大袈裟でない内容だからだ。納税者自らが申告書に「こことあそこのポジションが怪しいです!」と宣言するような様式を添付する訳だから税務調査の際にはこれをロードマップに乗り込まれる可能性が高い。
納税者側の反応はもちろん相当ネガティブだった。コメントの中にはIRSにはそもそもそんな情報の開示を指示する法的権限がないというものもあった。三権分立が確立している米国ではIRSと言っても行政権のみ持つAgencyだ。立法権を行使することがあればそれは憲法違反となる。過去にもIRS(正確には財務省)が発行した財務省規則が、税法(Internal Revenue Code)にそのような規則を作成する権利が明確に規定されていないという理由で無効とされたこともある。勝手に今まで存在しなかった情報開示を法律の根拠無く行うことはできないという納税者側の主張も理解できるものだ。また、不確実性のあるポジション開示は、場合によってはPrivilege(弁護士・依頼人間の秘匿特権)に反するという意見もあった。
IRSが納税者側からのコメントを受け付ける期間を設けて反応を伺っている当時の状況下、猛烈な反対を受けてIRSが開示適用を延期または最終的には撤廃するのではないかという楽観的な憶測もあった。しかし、IRSはコメント受付期間を3月末から6月末に延長する一方で、2010年4月には早々とSch. UTPのドラフト様式を公表して既成事実が出来上がっていく。そして9月にはSch. UTPの最終様式が公表され、2010年課税年度からの開示が現実のものになってしまったのである。こんな背景で導入が決まったSch. UTPだが、次回のポスティングでは実際の開示内容その他に触れたい。
2011年米国タックスの行方(4)- Sch. UTP
米国では数限りないアクロニム(アルファベットの頭文字略語)が日々生まれ続けている。公に通じるもの、業界のみで通じるもの、社内のみで通じるもの(例えばデロイトでは通じるけどEYでは誰もしらないもの、もちろんその逆もあり、とか)、親しい友達間での隠語のようなもの、使って格好いいものダサいもの、とアクロニムにも異なるレベルが存在する。デロイトからEYに移ったばかりの頃は有給休暇をつい「PTO(Personal Time Off)」と言ってしまったり、チャージコードのことを何とか(SWPだっけ?もう忘れた)と言って、全然分かってもらえなかったりしたものだ。社内会計システムだってDPSだったりGFISだったりと日々当たり前のように使っている用語が一歩外に出ると全く通じないので面食らったりする。
Sch. UTPに用いられている「UTP」というアクロニムもFIN 48導入以前は認知されていなかったのではないかと思う。UTPというのはFEDEXと並ぶ米国の宅配サービスではなく(それはUPS・・・)、「Uncertain Tax Position」のことで、すなわち税法上取り扱いがはっきりしない(またはほぼ間違っている)グレーな税務ポジションを意味する。今日の業界でUTPを知らない人はいないと思われる一方で、一般の方は知らない人がほとんどだと思うので、このUTP、アクロニム的には「業界レベル」と言える。
Sch. UTPは会計原則のFIN 48と親戚(というかもしかしたら親子?)関係にある。FIN 48というのもこれまたアクロニムだが、FASB Interpretation Numberの略(FASBはご存知の方が多いと思うが、Financial Accounting Standard Board)で、もともと会計上、どのように法人税コストを認識するべきかを規定しているSFAS 109(SFASはStatement of Financial Accounting Standards)の適用に当っての更なるガイダンスのようなものだ。
ちなみにFIN 48とかSFAS 109という用語は実は旧態のもので、会計原則が連邦の法律のように「Coding」されて整理された関係で、正式には各々「ASC 740-10」、「ASC 740」(飛行機ではない)と呼ばれる。しかし、アクロニムの定着には一定の時間を要するため、業界では未だにFIN 48と言った方が断然通じ易いだろう。したがってここでもFIN 48で通すこととする。
FIN 48はご存知の通り数年前に順次導入されており、日本企業の米国子会社にとってはとても迷惑な規定となった。FIN 48そのものに関しては2007年7月から数回に亘りかなり詳細にポスティングしているので「FIN 48」またはそれ以降のポスティングを参照して欲しい。
FIN 48という会計原則は簡単に言ってしまうと、申告書上で取られている税務ポジションがグレーな場合に、50%の確証度を切る金額を会計上引き当てなさい、というものだ。申告書上、控除を取ってしまっているが法的に確実に取れるかどうか分からないので 万一支払いが必要となる場合に備えて「会計上」引当を計上するという原則だ。申告書はもちろんそのままで、だから引当が必要となる。万一、修正申告でもするのであれば、実際にIRS等に税金を支払うことなりTax Payableが発生するので別途FIN 48の引当を計上する必要はない。
この規定、理論的には別におかしいことはないが、実務的に言うと科学的な適用処理は難しい。また、日本的に考えると、そもそも確証度が50%にも満たないポジションが堂々と申告書に載っていていいのか、という素朴な疑問がまずは頭をよぎるかもしれない。この辺りのカラクリは過去のポスティングで何回か触れているので興味がある方はそちらを参照して欲しい。また、この点を理解すると米国企業のタックスプラニングのアプローチがよく分かる。
このFIN 48を土台に編み出されたのが「Sch. UTP」だ。Sch.はScheduleの略で、法人税の申告書に添付する別表のようなものを意味する。次回はSch. UTP誕生の背景に関して少し突っ込んでみたい。
Sch. UTPに用いられている「UTP」というアクロニムもFIN 48導入以前は認知されていなかったのではないかと思う。UTPというのはFEDEXと並ぶ米国の宅配サービスではなく(それはUPS・・・)、「Uncertain Tax Position」のことで、すなわち税法上取り扱いがはっきりしない(またはほぼ間違っている)グレーな税務ポジションを意味する。今日の業界でUTPを知らない人はいないと思われる一方で、一般の方は知らない人がほとんどだと思うので、このUTP、アクロニム的には「業界レベル」と言える。
Sch. UTPは会計原則のFIN 48と親戚(というかもしかしたら親子?)関係にある。FIN 48というのもこれまたアクロニムだが、FASB Interpretation Numberの略(FASBはご存知の方が多いと思うが、Financial Accounting Standard Board)で、もともと会計上、どのように法人税コストを認識するべきかを規定しているSFAS 109(SFASはStatement of Financial Accounting Standards)の適用に当っての更なるガイダンスのようなものだ。
ちなみにFIN 48とかSFAS 109という用語は実は旧態のもので、会計原則が連邦の法律のように「Coding」されて整理された関係で、正式には各々「ASC 740-10」、「ASC 740」(飛行機ではない)と呼ばれる。しかし、アクロニムの定着には一定の時間を要するため、業界では未だにFIN 48と言った方が断然通じ易いだろう。したがってここでもFIN 48で通すこととする。
FIN 48はご存知の通り数年前に順次導入されており、日本企業の米国子会社にとってはとても迷惑な規定となった。FIN 48そのものに関しては2007年7月から数回に亘りかなり詳細にポスティングしているので「FIN 48」またはそれ以降のポスティングを参照して欲しい。
FIN 48という会計原則は簡単に言ってしまうと、申告書上で取られている税務ポジションがグレーな場合に、50%の確証度を切る金額を会計上引き当てなさい、というものだ。申告書上、控除を取ってしまっているが法的に確実に取れるかどうか分からないので 万一支払いが必要となる場合に備えて「会計上」引当を計上するという原則だ。申告書はもちろんそのままで、だから引当が必要となる。万一、修正申告でもするのであれば、実際にIRS等に税金を支払うことなりTax Payableが発生するので別途FIN 48の引当を計上する必要はない。
この規定、理論的には別におかしいことはないが、実務的に言うと科学的な適用処理は難しい。また、日本的に考えると、そもそも確証度が50%にも満たないポジションが堂々と申告書に載っていていいのか、という素朴な疑問がまずは頭をよぎるかもしれない。この辺りのカラクリは過去のポスティングで何回か触れているので興味がある方はそちらを参照して欲しい。また、この点を理解すると米国企業のタックスプラニングのアプローチがよく分かる。
このFIN 48を土台に編み出されたのが「Sch. UTP」だ。Sch.はScheduleの略で、法人税の申告書に添付する別表のようなものを意味する。次回はSch. UTP誕生の背景に関して少し突っ込んでみたい。
2011年米国タックスの行方(3)- Repatiriation(続3)
前回までのポスティングで 米国企業が低税率国に所得を溜め込んだ「埋蔵金」を米国税負担ナシに米国に持ち返る作戦について触れてきた。ひとつのテクニックとしてDeadly DというD型再編を利用したものがあるが、それがなぜSec.367に抵触しないと考えられていたか(少なくとも納税者側の主張では)というところまで来た。
前回は地震の話しが長かったので、今回は直ぐにタックスの話しに入る、はずだったのだが、実は4月のお天気のいい日曜日にロサンゼルスで「震災チャリティーコンサート」が開催された。そのイベントに、たまに集まってジャムってたガレージバンドとして出演することになり、久しぶりに野音でライブという状況となった。バンドはBeatles Tribute(つまりコピーバンド)で、Beatlesの人前ライブとしては結果的に最後となった伝説のApple Corpビル(Sevile Row, London)屋上でのパフォーマンスをコピーして演奏してみた。若い方のために付け加えておくと、ここでいうAppleという会社はBeatlesが設立した会社で、iPhoneとかを製造しているあのAppleとは関係ない。
ライブ動画のリンクはこちら
僕はJohn Lennon役で(ライブでは真ん中)、どことなくスムースじゃない感じのソロ(Get Back)の一方、天才的(僕がではなく、レノンが)にドライブ感のあるリズムギター、の再現に苦労した。本来であればエピフォン・カジノのサンバーストを剥がして木目っぽいナチュラル仕様としたギターを使用するべきだったのだが、今回は赤のストラトで勘弁してもらった。イフェクターなしでいきなりツイン・リバーブにぶち込んだ割にはいい音だったように思う。指のスピードは中学生の頃の10分の1くらいだったけど、エフェクターなしのドライブ感はこの歳になってやっと出せるようになったのかな、と自負している。ブロードウェイ・ミュージカルの「Rain」みたいに衣装も揃えるか、という話しも出たがさすがにそれは遠慮させてもらった。
*Sec.367(a)(5)と簿価調整
前回のポスティングで書いた通り、米国企業がDeadly Dストラクチャーを利用して買収資金を外国から米国に持ち返るのを非課税で実行する際には、Sec.367(a)(5)の簿価調整をどのように考えるかが鍵となる。この簿価調整は基本的に米国から外国法人に移管される資産の持つ含み益を、米国で将来的に課税できるように、資産の代わりに米国法人が持つ外国法人の株式税務簿価を下方修正するためのものだ。
以前のポスティングで触れたDeadly D再編の例示パターンだと、ParentがTargetの資産(時価100、税務簿価ゼロ)を外国子会社に移管している。その対価として外国法人から受け取る現金100を非課税でParentが受け取ることがDeadly Dの醍醐味となる。なぜ非課税化というとこれがD型再編に当たるという主張に基づき、そこでSec.367 が登場してくる。
納税者の主張は、Sec.367に引っかからないようにするために求められる簿価調整を、Parentが元から持っていた外国子会社の株式に対して行うことで満たしているというものだ。以前のポスティングからの例示パターンでいくと、Parentの外国子会社の税務簿価は100なので、Targetが外国子会社に移管した資産の含み益である100に当たる金額の簿価調整をして、Parentの外国子会社の税務簿価はゼロとなる。
この簿価調整が十分条件であれば、確かにDeadly Dは納税者が狙った効果を得ることができる。
IRSはこのような調整は意図されているものとは違うというポジションを取っている。すなわち、簿価調整は米国法人が外国法人に資産を移管した対価として受け取った株式に対して行わなくてはいけないというものだ。上の例ではTargetが外国子会社に資産を移管した対価は現金で、納税者が簿価の減額をしている対象となる株式は取引以前からParentが持っていた株式だ。この点に関しては367(a)(5)の財務省規則が2008年に(確か・・・)発効してIRSのポジションが明確になっている。なお上の取引には更に「Indirect Stock Transfer」というSec.367の中でも特に難解な規定の絡みもあるが、Indirect Stock Transferは(このようにスローなポスティングのペースでは)2年くらいかけてカバーするようなことになり兼ねないので、もう少し時間ができたら(すなわちRetireしたら?)じっくりと書き上げてみたい。
という分けで延々と続いたRepatriationは一旦終了し、次回のポスティングからは次のトピックとして約束してあったSch. UTPに移る。
前回は地震の話しが長かったので、今回は直ぐにタックスの話しに入る、はずだったのだが、実は4月のお天気のいい日曜日にロサンゼルスで「震災チャリティーコンサート」が開催された。そのイベントに、たまに集まってジャムってたガレージバンドとして出演することになり、久しぶりに野音でライブという状況となった。バンドはBeatles Tribute(つまりコピーバンド)で、Beatlesの人前ライブとしては結果的に最後となった伝説のApple Corpビル(Sevile Row, London)屋上でのパフォーマンスをコピーして演奏してみた。若い方のために付け加えておくと、ここでいうAppleという会社はBeatlesが設立した会社で、iPhoneとかを製造しているあのAppleとは関係ない。
ライブ動画のリンクはこちら
僕はJohn Lennon役で(ライブでは真ん中)、どことなくスムースじゃない感じのソロ(Get Back)の一方、天才的(僕がではなく、レノンが)にドライブ感のあるリズムギター、の再現に苦労した。本来であればエピフォン・カジノのサンバーストを剥がして木目っぽいナチュラル仕様としたギターを使用するべきだったのだが、今回は赤のストラトで勘弁してもらった。イフェクターなしでいきなりツイン・リバーブにぶち込んだ割にはいい音だったように思う。指のスピードは中学生の頃の10分の1くらいだったけど、エフェクターなしのドライブ感はこの歳になってやっと出せるようになったのかな、と自負している。ブロードウェイ・ミュージカルの「Rain」みたいに衣装も揃えるか、という話しも出たがさすがにそれは遠慮させてもらった。
*Sec.367(a)(5)と簿価調整
前回のポスティングで書いた通り、米国企業がDeadly Dストラクチャーを利用して買収資金を外国から米国に持ち返るのを非課税で実行する際には、Sec.367(a)(5)の簿価調整をどのように考えるかが鍵となる。この簿価調整は基本的に米国から外国法人に移管される資産の持つ含み益を、米国で将来的に課税できるように、資産の代わりに米国法人が持つ外国法人の株式税務簿価を下方修正するためのものだ。
以前のポスティングで触れたDeadly D再編の例示パターンだと、ParentがTargetの資産(時価100、税務簿価ゼロ)を外国子会社に移管している。その対価として外国法人から受け取る現金100を非課税でParentが受け取ることがDeadly Dの醍醐味となる。なぜ非課税化というとこれがD型再編に当たるという主張に基づき、そこでSec.367 が登場してくる。
納税者の主張は、Sec.367に引っかからないようにするために求められる簿価調整を、Parentが元から持っていた外国子会社の株式に対して行うことで満たしているというものだ。以前のポスティングからの例示パターンでいくと、Parentの外国子会社の税務簿価は100なので、Targetが外国子会社に移管した資産の含み益である100に当たる金額の簿価調整をして、Parentの外国子会社の税務簿価はゼロとなる。
この簿価調整が十分条件であれば、確かにDeadly Dは納税者が狙った効果を得ることができる。
IRSはこのような調整は意図されているものとは違うというポジションを取っている。すなわち、簿価調整は米国法人が外国法人に資産を移管した対価として受け取った株式に対して行わなくてはいけないというものだ。上の例ではTargetが外国子会社に資産を移管した対価は現金で、納税者が簿価の減額をしている対象となる株式は取引以前からParentが持っていた株式だ。この点に関しては367(a)(5)の財務省規則が2008年に(確か・・・)発効してIRSのポジションが明確になっている。なお上の取引には更に「Indirect Stock Transfer」というSec.367の中でも特に難解な規定の絡みもあるが、Indirect Stock Transferは(このようにスローなポスティングのペースでは)2年くらいかけてカバーするようなことになり兼ねないので、もう少し時間ができたら(すなわちRetireしたら?)じっくりと書き上げてみたい。
という分けで延々と続いたRepatriationは一旦終了し、次回のポスティングからは次のトピックとして約束してあったSch. UTPに移る。
Friday, April 8, 2011
2011年米国タックスの行方(3)- Repatiriation(続2)
前回までのポスティングで 米国企業が低税率国に所得を溜め込んでいるばかりでなく、そのダメ押し策としてそれらの海外埋蔵金を米国税負担ナシに米国に持ち返る作戦について触れてきた。中でも「Deadly D」再編と言われる手法の注目度が高い。この手法がなぜ、この手に取引に網を掛ける目的で制定されているSec.367の網の目をくぐっているのかというところから続ける。
と言ったところで日本が世界最大級の地震に見舞われてしまった。被災された方々には心よりお見舞いを申し上げたい。またCNN等に映し出される被災地の映像を見ると心が痛む。米国のニュースでもこの地震は大きく取り上げられ、CNNでは地震から一週間は24時間このニュースのみと言っても過言ではないほどのカバーぶりだった。なぜか天気予報まで一週間程は日本列島のものに変わっていたし、有名なアンカーであるAndersen Cooperに至ってはすぐに仙台に飛び、自分の番組であるAndersen Cooper 360を日本から中継するという気合の入り方だった。一週間チョッと経ったところでリビアで反体制勢力がカダフィ政権の放逐に立ち上がってというニュースに徐々に取って代わられた感じだった。
CNNばかりでなく、NY Times、L.A. Times、Wall Street Journal等も連日一面での報道であった。最初の頃は「日本という国はこのような災害が起こっても略奪、救援物資の取り合いなどが起こらないという信じられないモラルの高い国」というニュアンスの報道がとても多かった。個人的には「そうくるか・・・」というか「そこを褒めるか・・・」という不思議な気持ちだったのだが、逆に言えば他の国では災害が起こると略奪が起こり、救援物資が奪い合いになるということなのだろう。他の国なら国民が大騒ぎして管政権のようなものはすぐに転覆するのだが、日本は大人しいので政権も楽だ、といった皮肉な見方もあった。確かに自然災害で大打撃を被る政権は多いかもしれない。カタリナ・ハリケーン時の連邦政府の対応不手際はブッシュ政権に取っては想定外の痛手だったし。
後半になると報道は原発一色だった。NHK(Japan TV)とCNNとかFoxを交互に見ていたけど、原発に関する報道には結構な温度差が見られた。米国のニュースはどちらかと言うとどんどん悪い想定をして「これはスリーマイル島レベルではなく、チェルノブイリだ」というような発言をする人も出たりしていた。でも、個人的に「なんだかな~」と思うのは、今回の日本の原発事故と異なり、スリーマイルもチェルノブイリも何の天災もなかったのに起きてしまったという点で背景が全く異なることだ。人的なミスや無理な設計で起こった事件と、世界最大級の地震と津波に襲われたケースが同レベルで比較されていることは日本人的にはチョッと悔しい感じがした。もちろん原因は何であり原発事故は怖いことには変わりはないが。日本企業の米国ビジネスの今後の柱の一つと捉えられていた原発だけに今後の米国での反応はかなり気になる。
最初の「日本という国はモラルの高い国」的な報道で連鎖的に思い出されるのが、米国のいろいろな街でタクシーに乗ると「どこから来たのか(もともとどこで生まれ育ったのかという意味)」と聞かれることが多い。「日本だよ」と言うと、「素晴らしい国で一度行ってみたい。みんな勤勉なんだよね?」というような反応が圧倒的だ。個人的なイメージでは、アメリカ人も上の人たちはよく働くので(特に会計事務所とか法律事務所のような専門業界で働いているとイヤでも皆働かされる?)、「いや、日本が特に勤勉ということはないと思います」とか「それは昔の話しです」とでも言ってしまいそうになるが、まあ敢えてタクシーの運転手と議論しても始まらないので「そうね、ありがとう」って言っておく。でもこれって凄いことで200を超える国の中で、そんなイメージを持ってもらっている国はそうは沢山ないはずだ。これは日本の先達が世界で積み上げてきた実績があってこそのイメージ。さらに今回の地震で明らかになったのは、本当にハイテクな部品の多くは未だに「日本製」であることだ。そんな素晴らしい国なのに余り希望が持てないような風潮が長く続いているのは嘆かわしい。震災を機に「がんばれ日本」というような言葉をよく聞くようになったがぜひ本当にがんばって欲しいし、日本MNC(多国籍企業)にはグローバルなタックスプラニングを実行して競争力を維持して欲しい。
*Sec.367
本題のタックスの話しに戻る。Sec.367は複雑な米国税法の中でも一際複雑な条項で、「非課税規定を利用して資産・株式が含み益を持ったまま外国に逃避して米国で課税できなくなるのを防ぐ」という当初の「Exit課税」という目的から進化して「米国法人そのものの外国逃避(=Inversion)」にも目を光らせる門番たるべきという役割をも財務省から仰せつかり、抑制不能な程複雑怪奇な状況にある。
上のDeadly Dの取引例で、Targetが資産を非課税再編のひとつであるD型再編を利用して外国法人に譲渡するステップがあるが、これは単純に考えるとSec.367でオーバーライドされて課税されるように見える。特にSec.367(a)(5)では、適格再編に基づき非課税となるであろう取引でも、国内法人の資産が外国法人に移管される場合(=Sec.361取引)は、Sec.367に盛り込まれている例外規定(=Active Tradeとかを基に非課税にしてくれる規定)に係らず、課税関係を認識するべきと規定しているから尚更そのように見える。上の例で行くとTargetの資産が外国法人に移管されるステップがまさしくこれに当たる。
つまりSec.367(a)(5)をそのまま適用するとDeadly Dは非課税で資金を米国に持ってくることができないように見える。ここで重要となってくるのが、Sec.367(a)(5)規定適用の例外規定だ。例外が多すぎて分かり難いので整理する。
資産の譲渡は課税取引である(=資産の時価と税務簿価の差異が課税所得となる、という一般取り扱いに対する「例外1」が「一定の要件を満たす再編系の非課税の条件を満たすと資産・株式譲渡は課税されない」というものだ。その例外に対する「例外2」が「ただし、譲渡先が外国法人であれば非課税再編であっても資産・株式譲渡益を認識すること(これがSec.367(a)(1)の基本的な考え方)」となる。その例外2に対する更なる「例外3」が「ただし、外国に移管された資産がActive Tradeに使われてるのであれば課税はしない(Sec. 367(a)(3))」というものだ。その例外3に対する「例外4」が「ただし、資産が非課税規定のSec.361下で移管される場合には、Active Tradeであっても課税する(Sec.367(a)(3)をオーバーライドしてSec.367(a)(1)に戻す)」となる。これが「Sec.367(a)(5)」だ。そして更にこの例外4に対する「例外5」が問題の部分だ。例外5によると「資産を譲渡する法人が5人(または5社)以下の米国株主に支配されており、「税務簿価調整」が行われるのであれば、Sec.367(a)(5)の適用はなく、したがって、Active Tradeに基づく免税措置を受けることが可能」となる。米国の税法は複雑怪奇だ。
この例外5で求められる「税務簿価調整」とは何か?このポイントが大きな争点となる。地震関係に紙面を使ったのでこの続きは次回。
と言ったところで日本が世界最大級の地震に見舞われてしまった。被災された方々には心よりお見舞いを申し上げたい。またCNN等に映し出される被災地の映像を見ると心が痛む。米国のニュースでもこの地震は大きく取り上げられ、CNNでは地震から一週間は24時間このニュースのみと言っても過言ではないほどのカバーぶりだった。なぜか天気予報まで一週間程は日本列島のものに変わっていたし、有名なアンカーであるAndersen Cooperに至ってはすぐに仙台に飛び、自分の番組であるAndersen Cooper 360を日本から中継するという気合の入り方だった。一週間チョッと経ったところでリビアで反体制勢力がカダフィ政権の放逐に立ち上がってというニュースに徐々に取って代わられた感じだった。
CNNばかりでなく、NY Times、L.A. Times、Wall Street Journal等も連日一面での報道であった。最初の頃は「日本という国はこのような災害が起こっても略奪、救援物資の取り合いなどが起こらないという信じられないモラルの高い国」というニュアンスの報道がとても多かった。個人的には「そうくるか・・・」というか「そこを褒めるか・・・」という不思議な気持ちだったのだが、逆に言えば他の国では災害が起こると略奪が起こり、救援物資が奪い合いになるということなのだろう。他の国なら国民が大騒ぎして管政権のようなものはすぐに転覆するのだが、日本は大人しいので政権も楽だ、といった皮肉な見方もあった。確かに自然災害で大打撃を被る政権は多いかもしれない。カタリナ・ハリケーン時の連邦政府の対応不手際はブッシュ政権に取っては想定外の痛手だったし。
後半になると報道は原発一色だった。NHK(Japan TV)とCNNとかFoxを交互に見ていたけど、原発に関する報道には結構な温度差が見られた。米国のニュースはどちらかと言うとどんどん悪い想定をして「これはスリーマイル島レベルではなく、チェルノブイリだ」というような発言をする人も出たりしていた。でも、個人的に「なんだかな~」と思うのは、今回の日本の原発事故と異なり、スリーマイルもチェルノブイリも何の天災もなかったのに起きてしまったという点で背景が全く異なることだ。人的なミスや無理な設計で起こった事件と、世界最大級の地震と津波に襲われたケースが同レベルで比較されていることは日本人的にはチョッと悔しい感じがした。もちろん原因は何であり原発事故は怖いことには変わりはないが。日本企業の米国ビジネスの今後の柱の一つと捉えられていた原発だけに今後の米国での反応はかなり気になる。
最初の「日本という国はモラルの高い国」的な報道で連鎖的に思い出されるのが、米国のいろいろな街でタクシーに乗ると「どこから来たのか(もともとどこで生まれ育ったのかという意味)」と聞かれることが多い。「日本だよ」と言うと、「素晴らしい国で一度行ってみたい。みんな勤勉なんだよね?」というような反応が圧倒的だ。個人的なイメージでは、アメリカ人も上の人たちはよく働くので(特に会計事務所とか法律事務所のような専門業界で働いているとイヤでも皆働かされる?)、「いや、日本が特に勤勉ということはないと思います」とか「それは昔の話しです」とでも言ってしまいそうになるが、まあ敢えてタクシーの運転手と議論しても始まらないので「そうね、ありがとう」って言っておく。でもこれって凄いことで200を超える国の中で、そんなイメージを持ってもらっている国はそうは沢山ないはずだ。これは日本の先達が世界で積み上げてきた実績があってこそのイメージ。さらに今回の地震で明らかになったのは、本当にハイテクな部品の多くは未だに「日本製」であることだ。そんな素晴らしい国なのに余り希望が持てないような風潮が長く続いているのは嘆かわしい。震災を機に「がんばれ日本」というような言葉をよく聞くようになったがぜひ本当にがんばって欲しいし、日本MNC(多国籍企業)にはグローバルなタックスプラニングを実行して競争力を維持して欲しい。
*Sec.367
本題のタックスの話しに戻る。Sec.367は複雑な米国税法の中でも一際複雑な条項で、「非課税規定を利用して資産・株式が含み益を持ったまま外国に逃避して米国で課税できなくなるのを防ぐ」という当初の「Exit課税」という目的から進化して「米国法人そのものの外国逃避(=Inversion)」にも目を光らせる門番たるべきという役割をも財務省から仰せつかり、抑制不能な程複雑怪奇な状況にある。
上のDeadly Dの取引例で、Targetが資産を非課税再編のひとつであるD型再編を利用して外国法人に譲渡するステップがあるが、これは単純に考えるとSec.367でオーバーライドされて課税されるように見える。特にSec.367(a)(5)では、適格再編に基づき非課税となるであろう取引でも、国内法人の資産が外国法人に移管される場合(=Sec.361取引)は、Sec.367に盛り込まれている例外規定(=Active Tradeとかを基に非課税にしてくれる規定)に係らず、課税関係を認識するべきと規定しているから尚更そのように見える。上の例で行くとTargetの資産が外国法人に移管されるステップがまさしくこれに当たる。
つまりSec.367(a)(5)をそのまま適用するとDeadly Dは非課税で資金を米国に持ってくることができないように見える。ここで重要となってくるのが、Sec.367(a)(5)規定適用の例外規定だ。例外が多すぎて分かり難いので整理する。
資産の譲渡は課税取引である(=資産の時価と税務簿価の差異が課税所得となる、という一般取り扱いに対する「例外1」が「一定の要件を満たす再編系の非課税の条件を満たすと資産・株式譲渡は課税されない」というものだ。その例外に対する「例外2」が「ただし、譲渡先が外国法人であれば非課税再編であっても資産・株式譲渡益を認識すること(これがSec.367(a)(1)の基本的な考え方)」となる。その例外2に対する更なる「例外3」が「ただし、外国に移管された資産がActive Tradeに使われてるのであれば課税はしない(Sec. 367(a)(3))」というものだ。その例外3に対する「例外4」が「ただし、資産が非課税規定のSec.361下で移管される場合には、Active Tradeであっても課税する(Sec.367(a)(3)をオーバーライドしてSec.367(a)(1)に戻す)」となる。これが「Sec.367(a)(5)」だ。そして更にこの例外4に対する「例外5」が問題の部分だ。例外5によると「資産を譲渡する法人が5人(または5社)以下の米国株主に支配されており、「税務簿価調整」が行われるのであれば、Sec.367(a)(5)の適用はなく、したがって、Active Tradeに基づく免税措置を受けることが可能」となる。米国の税法は複雑怪奇だ。
この例外5で求められる「税務簿価調整」とは何か?このポイントが大きな争点となる。地震関係に紙面を使ったのでこの続きは次回。
Friday, March 4, 2011
2011年米国タックスの行方(2)- Repatiriation(続)
前回のポスティングでは 米国企業が移転価格、IP移転、その他の策を駆使しまくって低税率国に所得を溜め込んだ上で、今度はまたしてもいろいろな策を駆使してその貯金を米国の税負担ナシに米国に持ち返ることに腐心している点に触れた。
中でも一部のメディア報道がきっかけとなり、製薬、ハイテク大手企業が巨額の資金を非課税で米国に持ち返る際に利用している「Deadly D」再編が注目を集めている。ここで言う「注目を集めている」というのは二つの切り口があり、ひとつは一般ストリート的な反応で「そんな悪戯なことはけしからん、早く法的に網を掛けるべき」というものと、もうひとつはシリコンバレー的な反応で「うちも外国にキャッシュを埋蔵しているけど、どうやったら非課税で持って返ることができるのか教えて欲しい」という対極的なものだ。
ちなみにこの「Deadly D」はD型再編規定を利用していることから定着した「アダ名」で、別のプラニングである「Killer B」と比較されることが多い。Killer BはB型再編規定を利用していることは容易に想像されると思うが、蜜蜂の中でも攻撃的な蜂(Killer Bee)に例えることで只者ではない雰囲気をよく表している。
*Deadly D再編
Deadly DはSec.367、Sec.356、Sec.368等のSub Cの規定等を駆使したハイテクなプラニング(IRSに言わせると「抜け穴」)だ。
典型的なDeadly Dのパターンは次のようになる。米国外に子会社(「外国子会社」)を持つ米国企業(Parent)が他の米国企業(Target)を現金で買収する。買収価格は当然Target株式の時価となるので、結果としてParentが持つTarget株式の税務上の簿価は時価とイコールとなる。一方、Targetが法人内に持つ資産の税務上の簿価(いわゆる「Inside Basis」)はゼロに近いと仮定する。買収の対価の多くの部分がGoodwill等の無形資産に対して支払われることから、この仮定は現実的なものだ。ゼロでないにしても、Target株式時価とTargetの持つ資産の税務簿価(自己創出されたGoodwill等に簿価はない)の開きは相当大きいケースがほとんどだろう。
その後、Targetは持っている資産を時価で外国子会社に現金譲渡する。この時価はParentが株式に支払った時価と同様の金額となる。資産を譲渡した後、Targetは清算される一方、外国子会社はTargetから取得した資産を現物出資する形で新たな米国法人(Newco)を組成する。
この流れのうち、Targetの資産が外国子会社に現金で譲渡され、Targetが清算されるステップはD型再編となる。D型再編というのは実に不思議な再編規定で、資産を譲渡する対価が全て現金でも、グループ内取引なので、形式的に少額の株式が発行されたかのようにみなされ適格再編とすることができる。以前のポスティングでも再三登場しているいわゆる「All-Cash D」だ。D再編のこの辺りの「魅力」に関しては昨年9月にポスティングした「D型再編とBoot」を参照して欲しい。
上の取引ではその後にNewcoが組成されるが、そのステップは適格現物出資(Sec.351)となる。
蓋を開けてみると、外国子会社が持っていた現金はParentの手に渡っている。結果としてParentは配当されたら課税されていたであろう資金(「E&P」と言った方が正確かも)を非課税で外国子会社から吸い上げて、買収資金に充てることができたことになる。
ちなみにTargetの資産を個々に外国子会社に譲渡したり、それを更にNewcoに現物出資するのは面倒なので、実際には外国子会社はTarget株式をParentから取得して、同時にTargetをLLCに転換するような手法も考えられるだろう。LLCをパススルーとして支店扱いすると、実質的には外国子会社はTargetの資産を取得したことになる。TargetのLLCへの転換は、外国子会社が組成する新LLCにTargetを州法上合併させることで容易に達成可能だし、いちいち個々の「ハードアセット」の持ち主を変更しなくてもいいのでこの方法の方が手続き的に飛躍的に容易となる。LLCとかCheck-the-Box規定はナンと便利なことか・・・。
*Sec.367
上の取引を見て、即座になぜSec.367の制限に抵触しないのか、と疑問に思われた方がいたら、米国税法上級テストに合格だ。Sec.367は複雑な法人・株主に係る取引を規定したSub Cの中にありながら、クロスボーダー取引に適用される条項であることから、個人的にはITS(国際税務)とM&A関連規定の「ブリッジ」役を果たしている条項という位置づけをしている。ここのカラクリは次のポスティングで。
中でも一部のメディア報道がきっかけとなり、製薬、ハイテク大手企業が巨額の資金を非課税で米国に持ち返る際に利用している「Deadly D」再編が注目を集めている。ここで言う「注目を集めている」というのは二つの切り口があり、ひとつは一般ストリート的な反応で「そんな悪戯なことはけしからん、早く法的に網を掛けるべき」というものと、もうひとつはシリコンバレー的な反応で「うちも外国にキャッシュを埋蔵しているけど、どうやったら非課税で持って返ることができるのか教えて欲しい」という対極的なものだ。
ちなみにこの「Deadly D」はD型再編規定を利用していることから定着した「アダ名」で、別のプラニングである「Killer B」と比較されることが多い。Killer BはB型再編規定を利用していることは容易に想像されると思うが、蜜蜂の中でも攻撃的な蜂(Killer Bee)に例えることで只者ではない雰囲気をよく表している。
*Deadly D再編
Deadly DはSec.367、Sec.356、Sec.368等のSub Cの規定等を駆使したハイテクなプラニング(IRSに言わせると「抜け穴」)だ。
典型的なDeadly Dのパターンは次のようになる。米国外に子会社(「外国子会社」)を持つ米国企業(Parent)が他の米国企業(Target)を現金で買収する。買収価格は当然Target株式の時価となるので、結果としてParentが持つTarget株式の税務上の簿価は時価とイコールとなる。一方、Targetが法人内に持つ資産の税務上の簿価(いわゆる「Inside Basis」)はゼロに近いと仮定する。買収の対価の多くの部分がGoodwill等の無形資産に対して支払われることから、この仮定は現実的なものだ。ゼロでないにしても、Target株式時価とTargetの持つ資産の税務簿価(自己創出されたGoodwill等に簿価はない)の開きは相当大きいケースがほとんどだろう。
その後、Targetは持っている資産を時価で外国子会社に現金譲渡する。この時価はParentが株式に支払った時価と同様の金額となる。資産を譲渡した後、Targetは清算される一方、外国子会社はTargetから取得した資産を現物出資する形で新たな米国法人(Newco)を組成する。
この流れのうち、Targetの資産が外国子会社に現金で譲渡され、Targetが清算されるステップはD型再編となる。D型再編というのは実に不思議な再編規定で、資産を譲渡する対価が全て現金でも、グループ内取引なので、形式的に少額の株式が発行されたかのようにみなされ適格再編とすることができる。以前のポスティングでも再三登場しているいわゆる「All-Cash D」だ。D再編のこの辺りの「魅力」に関しては昨年9月にポスティングした「D型再編とBoot」を参照して欲しい。
上の取引ではその後にNewcoが組成されるが、そのステップは適格現物出資(Sec.351)となる。
蓋を開けてみると、外国子会社が持っていた現金はParentの手に渡っている。結果としてParentは配当されたら課税されていたであろう資金(「E&P」と言った方が正確かも)を非課税で外国子会社から吸い上げて、買収資金に充てることができたことになる。
ちなみにTargetの資産を個々に外国子会社に譲渡したり、それを更にNewcoに現物出資するのは面倒なので、実際には外国子会社はTarget株式をParentから取得して、同時にTargetをLLCに転換するような手法も考えられるだろう。LLCをパススルーとして支店扱いすると、実質的には外国子会社はTargetの資産を取得したことになる。TargetのLLCへの転換は、外国子会社が組成する新LLCにTargetを州法上合併させることで容易に達成可能だし、いちいち個々の「ハードアセット」の持ち主を変更しなくてもいいのでこの方法の方が手続き的に飛躍的に容易となる。LLCとかCheck-the-Box規定はナンと便利なことか・・・。
*Sec.367
上の取引を見て、即座になぜSec.367の制限に抵触しないのか、と疑問に思われた方がいたら、米国税法上級テストに合格だ。Sec.367は複雑な法人・株主に係る取引を規定したSub Cの中にありながら、クロスボーダー取引に適用される条項であることから、個人的にはITS(国際税務)とM&A関連規定の「ブリッジ」役を果たしている条項という位置づけをしている。ここのカラクリは次のポスティングで。
Saturday, February 19, 2011
2011年米国タックスの行方(1)- Repatiriation
年末年始にかけて米国の空模様はかなり荒れ気味だ。ニューヨークのあるNorth Eastでは12月から複数回かなりの雪が降ったり、アトランタのあるSouth Eastでも珍しく雪が降ったりした。ロサンゼルスのある南カリフォルニアでは年末までは珍しく雨が続いてパッとしない天気だったのが1月に入ると一転80度近い暖かい日が続いたりしている。
雪のせいで飛行機のスケジュールは乱れまくり、空港で飛行機に乗ってからフライトがキャンセルになったり、Re-Bookされたフライトがまたキャンセルになったり、別の空港から飛ぶことになったり、とにかく苦労が多い。米国を冬に飛び回る際の宿命と言ってしまえばそれまでだが、今年はダイヤの乱れの頻度がチョッと高いように思う。仕事もタックスで忙しいのは仕方がないと諦めもつくが、IT関係とか専門分野外で振り回せれて何だかな~って感じもある。
で、何が言いたいかというと、そんな酷いスケジュールでバタバタしている間に時間が経ってしまい、ポスティングのアップデートができなかったという言い訳だ。今日はモーツァルトの誕生日で1月も後半になってしまった(これを書いていたのは1月27日だったので)。
そんなタイミングではあるが、2010年を振り返りながら、2011年米国タックスの世界で注目度が高そうなトピックを次の通りいくつかについて触れてみたい。
まずは米国企業が外国子会社に眠らせている埋蔵金100兆円をどう米国に還流させるかという「Repatriation」、そして話題の「Sch. UTP」、恐怖の「Economic Substance」の条文化、財政難に苦しむ州と州法人税、とんでもないアドミン作業が増える「Form 1099」の拡大適用の行方、そんなところが個人的に興味深い分野だ。また日本企業にとって2011年はグローバルタックスプラニング元年になって欲しいという点にも触れたい。
*Repatriation(外国子会社に眠る「100兆円」の米国親会社への資金還流)
米国は未だに全世界課税の国なので、外国子会社から配当を受け取る(またはタックスヘイブン税制に類似するSubpart F規定でみなし配当課税される)と外国で得た所得に米国でも課税されることとなる。配当原資に対して課せられたと取り扱われる外国の法人税は税額控除できるが、米国の税率は世界2位(もちろん日本が堂々1位!- 基礎科学事業と違って1位でなくてはいけない・・・?)なので、米国で追加の税金が発生することが多い。多くの米国多国籍企業がさまざまなプラニングを通じて敢えて低税率国に所得を貯めこんでいるからこの傾向は尚更だ。米国多国籍企業のタックスプラニングのハイライトのひとつはいかに税務的に効率よく(=無駄な税金を支払わないで)外国子会社に眠っている剰余金を米国に還流させるか(=Repatriation)にある。
米国多国籍企業は相当なエネルギー(=時間とお金)を費やして「合法的」に所得を低税率国に移し、その後またしても相当なエネルギーを費やして「合法的に」税金を支払わずに米国に持ち返るというパターンを繰り返す。
以前のポスティングでさんざん触れたE&Pの圧縮を利用した外国法人の見た目の実効税率のターボチャージ化もその対策の一つだし、何層にもまたがる持株会社、CTBの利用、も効率のいい還流を念頭に置いたものであるケースが多い。
*一生に一度の配当非課税
米国での追加税コストが足かせとなり米国多国籍企業が米国に資金を自由に持ち返れないことは、米国経済に悪い影響がある、という主張は絶えない。実際に、そのような悪影響を排除するため、ブッシュ政権下で2004年に発足した「American Job Creation Act」の中の規定で「一生に一度だけの約束で」米国企業が実質非課税に近い形で外国から配当を受け取ることができたことがある。この時とばかりに大手企業が配当という形で米国に多額の資金を還流させている。この暫定規定は、配当された金額を米国の雇用、研究開発等に使うことという条件があった。形式的にはその条件を満たさす形で配当されたのだが(でないと非課税にならないので・・・)、後日実施された議会による調査で実際に雇用、研究開発が増加したという事実は認められなかったという実態が明らかになっている。この点に関しては2009年2月のポスティング「海外からの配当非課税米国版の顛末」を参照。
にも係らずハイテク、製薬業界等の経営者からは「再度、外国からの配当を非課税として欲しい」という意見が絶えない。彼らは移転価格、IP移転、その他の策を駆使しまくって低税率国に所得を溜め込んでいるが、今の税法下ではせっかく貯めたその貯金を多額の米国税負担ナシに米国に持ち返ることができない。
彼らに言わせると「外国からの配当を一時的に再度非課税とすることで、100兆円(!)の資金が米国に戻り、それが米国の雇用、研究開発に充当される」という。本当にそんな効果があるのかは今でも賛否両論だが、2004年の時限措置に基づく資金還流にそのような経済効果があったという証拠は見つかっていない。
それでも直感的には配当非課税にはアピールがある。米国で投資はしたいけれど、資金を米国に持ち込むと多額の税金が掛かるので、代わりに海外で事業を展開せざるを得ない・・・というようなシナリオを避けるためには配当を非課税にするべきだ、というものだ。中学生でも理解できるような分かりやすいロジックではある。特に金融危機でクレジットクランチが続いている今、外部からの資金調達が難しく、手元流動性と投資の実行に以前よりも強い相関関係ができてくる気もして、なるほどと思わせる。
しかし、米国外に眠る巨額のキャッシュの多くはハイテク、製薬業界の「超大企業」に属するものだ。彼らは低金利を利用してほぼ無利子に近い好条件で社債を発行できるような連中だ。それを考えると非課税配当の投資効果には疑問を持つ専門家も多い。
外国から非課税で配当されたキャッシュが、米国の雇用、研究開発等に使用されずに、米国で株主への配当や自社株買いの原資となった場合、最終的には個人株主等の購買略が上がり、経済にいい影響があるという説もある。
さらに別に配当非課税なんかにしなくてもいいという極めつけの主張は、超大企業は現在の税法下でもどうせプラニングを駆使して非課税で資金を還流させているじゃん、というものだ。この点に関しては米国のクオルコム社が同じく米国のアセロスを買収した際に「オフショアファンド」を使用して買収を実行したストラクチャーが大きく報道されて注目された。その名も「Deadly D」という恐ろしい手法だ。
雪のせいで飛行機のスケジュールは乱れまくり、空港で飛行機に乗ってからフライトがキャンセルになったり、Re-Bookされたフライトがまたキャンセルになったり、別の空港から飛ぶことになったり、とにかく苦労が多い。米国を冬に飛び回る際の宿命と言ってしまえばそれまでだが、今年はダイヤの乱れの頻度がチョッと高いように思う。仕事もタックスで忙しいのは仕方がないと諦めもつくが、IT関係とか専門分野外で振り回せれて何だかな~って感じもある。
で、何が言いたいかというと、そんな酷いスケジュールでバタバタしている間に時間が経ってしまい、ポスティングのアップデートができなかったという言い訳だ。今日はモーツァルトの誕生日で1月も後半になってしまった(これを書いていたのは1月27日だったので)。
そんなタイミングではあるが、2010年を振り返りながら、2011年米国タックスの世界で注目度が高そうなトピックを次の通りいくつかについて触れてみたい。
まずは米国企業が外国子会社に眠らせている埋蔵金100兆円をどう米国に還流させるかという「Repatriation」、そして話題の「Sch. UTP」、恐怖の「Economic Substance」の条文化、財政難に苦しむ州と州法人税、とんでもないアドミン作業が増える「Form 1099」の拡大適用の行方、そんなところが個人的に興味深い分野だ。また日本企業にとって2011年はグローバルタックスプラニング元年になって欲しいという点にも触れたい。
*Repatriation(外国子会社に眠る「100兆円」の米国親会社への資金還流)
米国は未だに全世界課税の国なので、外国子会社から配当を受け取る(またはタックスヘイブン税制に類似するSubpart F規定でみなし配当課税される)と外国で得た所得に米国でも課税されることとなる。配当原資に対して課せられたと取り扱われる外国の法人税は税額控除できるが、米国の税率は世界2位(もちろん日本が堂々1位!- 基礎科学事業と違って1位でなくてはいけない・・・?)なので、米国で追加の税金が発生することが多い。多くの米国多国籍企業がさまざまなプラニングを通じて敢えて低税率国に所得を貯めこんでいるからこの傾向は尚更だ。米国多国籍企業のタックスプラニングのハイライトのひとつはいかに税務的に効率よく(=無駄な税金を支払わないで)外国子会社に眠っている剰余金を米国に還流させるか(=Repatriation)にある。
米国多国籍企業は相当なエネルギー(=時間とお金)を費やして「合法的」に所得を低税率国に移し、その後またしても相当なエネルギーを費やして「合法的に」税金を支払わずに米国に持ち返るというパターンを繰り返す。
以前のポスティングでさんざん触れたE&Pの圧縮を利用した外国法人の見た目の実効税率のターボチャージ化もその対策の一つだし、何層にもまたがる持株会社、CTBの利用、も効率のいい還流を念頭に置いたものであるケースが多い。
*一生に一度の配当非課税
米国での追加税コストが足かせとなり米国多国籍企業が米国に資金を自由に持ち返れないことは、米国経済に悪い影響がある、という主張は絶えない。実際に、そのような悪影響を排除するため、ブッシュ政権下で2004年に発足した「American Job Creation Act」の中の規定で「一生に一度だけの約束で」米国企業が実質非課税に近い形で外国から配当を受け取ることができたことがある。この時とばかりに大手企業が配当という形で米国に多額の資金を還流させている。この暫定規定は、配当された金額を米国の雇用、研究開発等に使うことという条件があった。形式的にはその条件を満たさす形で配当されたのだが(でないと非課税にならないので・・・)、後日実施された議会による調査で実際に雇用、研究開発が増加したという事実は認められなかったという実態が明らかになっている。この点に関しては2009年2月のポスティング「海外からの配当非課税米国版の顛末」を参照。
にも係らずハイテク、製薬業界等の経営者からは「再度、外国からの配当を非課税として欲しい」という意見が絶えない。彼らは移転価格、IP移転、その他の策を駆使しまくって低税率国に所得を溜め込んでいるが、今の税法下ではせっかく貯めたその貯金を多額の米国税負担ナシに米国に持ち返ることができない。
彼らに言わせると「外国からの配当を一時的に再度非課税とすることで、100兆円(!)の資金が米国に戻り、それが米国の雇用、研究開発に充当される」という。本当にそんな効果があるのかは今でも賛否両論だが、2004年の時限措置に基づく資金還流にそのような経済効果があったという証拠は見つかっていない。
それでも直感的には配当非課税にはアピールがある。米国で投資はしたいけれど、資金を米国に持ち込むと多額の税金が掛かるので、代わりに海外で事業を展開せざるを得ない・・・というようなシナリオを避けるためには配当を非課税にするべきだ、というものだ。中学生でも理解できるような分かりやすいロジックではある。特に金融危機でクレジットクランチが続いている今、外部からの資金調達が難しく、手元流動性と投資の実行に以前よりも強い相関関係ができてくる気もして、なるほどと思わせる。
しかし、米国外に眠る巨額のキャッシュの多くはハイテク、製薬業界の「超大企業」に属するものだ。彼らは低金利を利用してほぼ無利子に近い好条件で社債を発行できるような連中だ。それを考えると非課税配当の投資効果には疑問を持つ専門家も多い。
外国から非課税で配当されたキャッシュが、米国の雇用、研究開発等に使用されずに、米国で株主への配当や自社株買いの原資となった場合、最終的には個人株主等の購買略が上がり、経済にいい影響があるという説もある。
さらに別に配当非課税なんかにしなくてもいいという極めつけの主張は、超大企業は現在の税法下でもどうせプラニングを駆使して非課税で資金を還流させているじゃん、というものだ。この点に関しては米国のクオルコム社が同じく米国のアセロスを買収した際に「オフショアファンド」を使用して買収を実行したストラクチャーが大きく報道されて注目された。その名も「Deadly D」という恐ろしい手法だ。
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