前回はRoberts主判事の誕生日を祝してIEEPAに基づく関税が条文解釈的、また憲法解釈的に不法かどうかっていう点に関する特別企画でした。主に11月の口頭弁論を聴いた印象を中心に。楽しんで頂けましたでしょうか。Inbound Fより馴染みがあっていいって?それはそうだよね。でも今回はRedomicile実行をInbound Fで実行する際のFIRPTA課税適用緩和に戻ります。関税はSCOTUSの判決が出たら個人的な口頭弁論からの印象と実際の判決の比較、Majority Opinionの構築から伺えるRobertsのバランシングアクト等に少なくとも一回は触れてみたいと思います。「また逢う日まで…」だね(何ソレ?)。
F型再編
適格組織再編のうちEとかFは複数の法人がくっ付いたりしない単独再編。そのうちF型再編は「単なる」法人身分、形式、組成州・国の変更、に適用される。これらの変更が法形式的にどんなステップを経て行われても結果としてこれらの変更を実現するためならF型再編になる。F型再編とは言え適格組織再編規則だから、組織再編に共通の原則フレームワークは同じ。すなわち組織再編に適格とならない場合には、資産移管や株式交換が時価課税取引となり課税が生じるケースで各タイプの組織再編に求められる条件を満たすとそれらが非課税になるっていうもの。非課税となる代償に当事者が受け取る資産・株式の簿価は従来の額を継承する。したがって税務用語で「Tax-Free Reorganization」って言うけど、正確には「Tax-Deferral」。未来永劫フリーなランチはなかなかない。
F型再編も、F型再編でなければ課税があり得る取引が対象って考えられるんで(でなければF型再編要らないし…)、転換、合併、資産移管を伴わずに同一のCorporate Solutionが維持されて単に社名を変えたりするだけの行為はF型再編にはならないって個人的には考えている。意外にもこの点に必ずしもコンセンサスはないようだけど、社名変えて法人内の含み益が課税されるって考えられないんで、F型再編は身分や組成地の変更を転換や合併法を適用して実行する取引に適用があるはずだ。その際、どんな実行法でも単に法人身分、形式、組成州・国の変更のためであれば潜在的にF型再編の候補になる。このことからF型再編を規定している財務省規則でも「譲渡法人」と「結果として誕生する法人(ここでは単に「新生法人」って言っておきます)」の2つの存在を前提としてルールが策定されている。ただ、ターゲット法人と取得側法人が独立して存在するっていうよりはF型再編の譲渡法人と新生法人はF型再編を整理する目的で語られるだけで、新生法人は譲渡法人と同一の法人が継続してるっていうのが税務上の取り扱いって言える。もちろん新生法人にF型再編前に譲渡法人資産以外の資産があったり独自の活動があってはいけないし、F型再編後に譲渡法人が存続し続けたりすることもできない。
で、例によってF型再編にも複数の要件が財務省規則に規定されてるけど、中でも重要で今回のNotice 2025-45にも関係するのが株主同一要件。すなわち、譲渡法人と新生法人の株主がF型再編の直前・直後で同一でないといけない。じゃないと「単なる」身分や組成地変更にならないからね。ただ、他のタイプの適格再編は「Step Transaction」等の法体系を適用して同じプラン下で行われるステップで適格要件をUnwindしたりする場合には要件を満たしていることにはならないけど、F型再編は特別でF型再編前後で他関連取引がプランされていてもF型再編を実行している取引のみにフォーカスして適格性を判断することができる。複雑かつ広範な取引プランの中でもF型再編は、前後の取引から隔離されて守られてるんで業界用語で「バブルの中のF(F in a bubble)」って言われる。Message in a Bottleみたいでクールだね。ポリスは1枚目と2枚目の頃はNew Waveっていうかチョッとパンクっぽさを装ってたけど、2枚目が出た直後(それはそれは昔です)にバルセロナの闘牛場で見たライブではMessage in a Bottleの「I’ll send an SOS to the world」って超8ビートになるところで闘牛場が壊れるんじゃないかっていうくらいの盛り上がりだったのを覚えてる。ちなみにその時のOpening Actは同じUKバンドの「Dr. Feelgood」でした。
で、結構なケースでF型再編はそれ以外の要素を含むより広範な取引の一環で行われる。したがって全体像を見ると「単なる」身分・組成地変更とは言えないケースも多い。例えばどこかの州会社法で組成された法人が上場する際に会社法の観点からデラウェア州やテキサス州法人に転換されることは珍しくない。組成地変更そのものはF型再編だけど、同じプラン下で新生法人が新規に株式を交付したり、既存の株式を償還したりすることもある。そんな時「バブルの中のF」原則はとても有益。F再編自体も複数のステップを経ることがあるけど、それらのステップはバブル内の取引だから、その中では株主同一要件を含むF型再編要件は継続して満たしてなくてはいけない。
Inbound F
このF型再編を利用して外国法人が米国法人にRedomicileすることができる。例えば、外国法人(F型再編の譲渡法人)が米国に自分の身代わりになる米国法人(F型再編の新生法人)を設立(その際に資本金は実質ない状態)、当米国法人に合併(または合併同様に全資産を移管し負債を継承しれもらう)することで外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換し外国法人は米国法人に変わる。または、同様に外国法人が米国に自分の身代わりになる米国法人を設立した後、米国法人がTransitoryのMerger Subを組成し、当Merger Subが外国法人にReverse Subsidiary Merge(その段階で外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換、外国法人は米国法人の100%子会社)、そして最後に外国法人はEntity Classification選択でDRE(税務上は清算)になるとする。このケースも蓋を開けてみると外国法人は組成地が米国法人に変更されている。Inbound Fだ。
Inbound FとFIRPTA
「でも、Inbound FにどうFIRPTA関係あんの?」って思うかもしれないけど、実は大あり。上で触れたInbound Fの最初の例を見ると、まず外国法人が資産を米国法人に移管するステップは税務上、資産は負債継承と米国法人の株式を対価に行われたって取り扱われる。この移管は組織再編適格の場合は原則非課税。ただし、移管対象資産にUSRPIがあると対価として受け取る米国法人株式もUSRPIじゃないとこの部分は課税取引になる。ここが前々回のポスティングで触れた「非課税取引とFIRPTA」部分の取り扱い。次に外国法人は資産移管対価として受け取った米国法人株式を自社の株主に清算分配したと取り扱われる。この分配も組織再編適格の場合は原則非課税だけど、適格組織再編の一環で行われる外国法人の分配に適用される規則に基づき、外国法人が株式を受け取った時点で米国法人がUSRPHCの場合(すなわち株式はUSRPI)、分配は課税取引となり前々回の「外国法人による分配とFIRPTA」の取り扱いが適用される(その際に触れたNotice 89-85およびNotice 2006-46の適用を含む)。
2025‐45のFIRPTA課税緩和策
で、これらのルールは不要にInbound Fを実行困難にしているとし、今回のテーマのNotice 2025-45では特定要件下で上述の課税ルールを緩和している。具体的な緩和に関しては次回。