Tuesday, July 5, 2022

失速BBBAの法案に見る米国税制の方向(+個人アップデート)

お久しぶりです!すっかりアップデートを怠ってしまいました。2020年のQ3辺りから米国のキャピタルマーケットが活況を呈すると同時に、深刻な人手不足となり、パンデミックでスローダウンするのでは、っていう2020年3月頃の懸念とは正反対にタックス絡みのアドバイザリー業務は絶えることなく、多忙な毎日となった。とは言え、前も話した通り、The Beatlesだって米国ツアーから戻り直ぐにAbby Roadに戻って毎日レコーディングしてたんだから、どんなに多忙でもProduceし続けないとね。

僕の個人的アップデート

で、税制とは関係ないけど、チョッとした個人的な展開があるんで興味ないかもしれないけど触れておく。EYの米国Firmのパートナーシップ合意書にはパートナー(Principalも含む)だけに適用される強制定年規定がある。実は昨年、それに抵触。まだ28歳のつもりだったんだけど誰か数え間違えてんのかな(笑)。ところが「あなたはもっと働くべき」ということで、パートナーシップの統治を担当しているアメリカズ・ボードから特別に1年の延長措置を言い渡されていた。EY米国Firmの会計年度は7月~6月の52・53Weekベースなんだけど、1年の延長措置の後、今年の7月1日に終了する会計年度をもって強制退任。マイアミビーチでJoe’sのStone CrabやLittle Habanaのキューバサンドイッチ摘まみながらタックスの研究に勤しむか、チョッとアグレッシブに背伸びして米国財務省IRSの法務部に当たるChief Counsel Officeに入れてもらって、ルーリングや規則をドラフトする人を目指すか、または全てを忘れてあこがれのBlack Hills近くのRapid Cityで暮らすか、とかいろいろとDreamingしながらワクワクしてた。ブロンディじゃないけどDreamingってFreeだからね。

ところが、「Maxはまだ働きが足りない」ということで、EYの米国パートナーシップからWithdrawする翌日の7月2日付で、EY APACで米国タックスのテクニカルアドバイスを提供する US Tax Deskって組織に再雇用されることになった。「Maxのオタクな話しはもう聞かなくてもいいな」って思っていた方には残念でした。APACの中でも、僕の場合は当然、主たるアドバイスは日本企業に対するものなんで、テクニカルな雇用地は東京。でも米国以外では暮らせない体となってしまった僕なので、引き続きNYCに住んで「通勤」することになった。2008年EY移籍後5年間、Los AngelesからNYCに通勤していて「よくやるわ」って呆れられてたことあるけど、今度はNYCから日本通勤となるので、日米の皆様、今後とも変わらぬお引き立てをよろしくお願いします。ブログも書き始めて14年。途中、途絶えた時期もあったけどね。時が経つのは早い。過ぎていく昨日は物語になってくし、明日はまだブランクなキャンバスだけど、あるのは今日だけ。ってことで今後はますますテクニカル面に時間を使えるので楽しみ。オタクさが増幅するので皆さん覚悟しておいて下さい。

失速BBBA法案の中身

政権誕生後、メキシコとの国境のオープンボーダー化、アフガン撤退失敗、お金バラまき過ぎて激しいインフレ、燃料費の高騰、ロシア問題、等のクライシスに次々見舞われ、また、最高裁判所が三権分立やFederalism等の連邦憲法の原文に忠実な判決を繰り返し、バイデン行政府が議会や憲法無視して好き勝手できなくなったり、といろいろとあってバイデン増税案BBBAは暗礁に乗り上げたままだ。中間選挙前のこの夏に超限定的な形で予算調整法を利用してプチ税制改正が無理やり可決される可能性は残っているものの、多くのアンビシャスな法案が近々に取り上げられることはないだろう。

中間選挙を控えた立法議会のダイナミクス的にBBBAがその原型を留めることはもうないし、バイデン政権誕生当時、グリーンブックとかで法人を敵視して増税提案していた左翼系エリートの多くの方も既に政権を去り、さっさと元の大学教授とかに戻ってしまった。政権でのStintで箔がついて報酬とか上がってそうだよね。

で、今の時点では暗礁に乗り上げたとは言え、またいつの日か両院と大統領府を左翼政権が支配することはあるだろうし、BBBAの法案の中には党派を超えて立法される規定もあるかもしれないので、法案の内容を吟味しておく必要がある。

レバレッジド・スピン

個人的に興味があった法案のひとつにLeveraged Spinに対する規制強化がある。米国の会社分割、スピンは、分割する事業をまず子会社化し、その子会社(税務用語で「Controlled」といいます)の株式を親会社(同じく「Distributing」っていいます)が株主に分配して達成される。最初に事業を子会社に現物出資する取引は分割型のD再編。必ずしもスピンのために子会社を新設する必要はなく、既存の子会社の株式を分配してもOK。もちろんいずれにしてもスピンの要件を満たす必要がある。ちなみに、既存株主に均等にControlledの株式を分配するのがスピンオフで、Distributingの株式を所有し続ける株主とControlledの株式とDistributingの株式を交換する株主の双方が存在するのがスプリットオフ。更に事業を2つのControlledに出資してDistributing自体は消滅してしまうのがスプリットアップ。スプリットアップは元々Distributingが所有していた属性が消滅したりする変なストラクチャーなので、敢えて消滅させたいプラニングは別として、大概のケースがスピンオフかスプリットオフになる。

で、スピンの要件、特にActive Trade or BusinessとかBusiness Purposeの兄弟のDevice禁止規定とかはそれだけで相当Deepで、かつIRSのRulingポリシーや規則草案とかかなり興味深い検討なんだけど、BBBAがフォーカスしていたのはスピン時のDistributingの債務の取り扱い。これは見ようによってはDistributingが非課税で事業を換金したように見えるので、センシティブな面もあるけど、別の見方をすれば会社分割後のキャピタル・ストラクチャーを最適化するには当然、両社に債務を再分配する必要があるので、Leveraged Spinはそんなに阿漕なものではないと思うんだけどね。

個人のアップデートがあったので、レバレッジとスピンの面白い関係は次回。