Thursday, November 4, 2021

バイデン増税案大幅縮小「法人税率据え置き」(3) 代わりに税引前利益に15%AMT?

15%AMTの適用を検討する際には、どの財務諸表のどんな数字をみて会計上の利益と考えるのか、っていう点が当然重要になるけど、この検討、主に2つのステップで登場してくる。まず最初は15%AMTの対象法人がどうかっていう判断時。で、次は対象法人となった場合の実際の15%AMT計算時。この2つのステップに適用される会計上の利益は概念的には共通だけど、双方で取り込む対象主体の範囲が大きく異なるんで、別々に考えないといけない。この前書いたかどうか忘れたけど、課税年度や会計年度が異なる場合には、最終的に15%AMTの計算対象となる米国法人の課税年度に数字を調整する必要がある。

前回は使用が認められる適用財務諸表、そしてそれをテスト対象の主体にかかわる部分だけにシンクロさせる点に触れた。また、各主体の財務諸表の利益にどんな調整をして使用するのか、っていう点に関して関連会社の所得に対する取り扱いの考え方を米国の目から見たCFCとそうでない主体に分けて整理してみた。

Disregarded Entity

米国外の人が米国税法の取り扱いを検討する際に、何それ?って思うだろうなっていうポイントは沢山あるけど、Check-the-Box規定に基づく主体区分もその一つだろう。普通に考えると主体があればあるし、なければないけど、米国税法上は必ずしもそうじゃない。Check-the-Boxを含む主体区分を軽く考えている人が居るかもしれないけど、とんでもない話しで、世界中の様々な法的主体、会社法的に存在しないコラボ系のアレンジ、信託とか組合とかを米国税務上、どう位置付けるのかはそれだけで複数のボリュームの本になるようなテーマ。主体区分の分析結果次第で課税関係は180度異なるんで多少コストが掛かってもきちんと検討して、リスクがあるんだったらリスク度合い、最悪起こり得るシナリオ(BBAとかPTPとか含む)とかを納税者が把握しておく必要がある。

で、今回の15%AMTの適用時に、法人がDisregarded Entityを所有している場合、財務諸表も当Disregarded Entityを含む形に調整することと規定されてる。これは当然。

会計上の利益は税引前?

15%AMTに使用する会計上の利益は、税金を計算する数字だから税引前のものと考えるのが大自然なんだけど、ここの規定は分かり難い。法案では、米国連邦法人税、米国税法の視点から税額控除の対象とすることが認められるタイプの属領を含む米国外の法人税(用語としては「Income, war profits, or excess profits taxes」)は直接・間接に財務諸表に取り込まれている範囲で調整することとしている。ここで言うIncome, war云々の法人税は費用控除が認められるネット課税所得に対する法人税、または源泉税が対象になると考えれば大概において間違いない。DST等の横行で財務省が慌てて規則草案を公表し、FTC目的で外国法人税となるための新要件(または既存要件だけど明文化されていなかった?)「Jurisdictional Nexus」という概念を導入しようとしてるけど、規則が最終化する暁にはこの点も加味して何が法人税なのか判断する必要がある。

また、直接・間接という部分は財務諸表で認識される会計のみのコンセプトになる繰延税金費用とかも戻すってことなんだろうか。もう少し詳しく書いてもらわないと良く分からない。後は財務省に一任して500ページとかの規則が出てくるのかな。多分ね。

FTCとの関係

で、この法人税額の調整に関して、「ただしFTCを選択しない課税年度は調整は不要」としている。これは単純に考えれば何の不思議もない。

間接FTC、すなわちGILTIやSub Fを合算する場合のFTC(それ以外の間接FTCは2017年税制改正で撤廃)を計算する「本当の」法人税の世界でも、FTCを取る場合にはSub FやGILTIの基となるTested Incomeは税引き後だけど、それらの所得に帰属すると取り扱われる法人税はグロスアップする。一方、FTCを取らない場合には、グロスアップの必要はなく、結果として法人税はSub FやGILTI計算時に所得控除されていることになる。これを15%AMTにそのまま当てはめると、上のようなルールになるんだろうけど、15%AMTの対象になるかどうか判断しようとしている時点では、実際に15%AMTを計算するかどうかも分かんないし、その先、FTCが有利なのかどうかも分からない。または15%AMTの対象になるかどうかも加味してFTCが有利かどうか決める必要があるということなんだろうか。

実際に事業経営で苦労した経験がない議員さんや職員室で議論を続けるアカデミックな世界ではワークするかもしれないけど、実際にこれらのルールを適用しないといけない法人側のコンプライアンス負荷上昇はNever Ending Story。Never Ending Storyって言えばリマールが歌ってたテーマソング良かったよね。リマールね。元カジャグーグーのボーカル。Duran Duranがプロデュースした「You are too shy shy, Hush hush, Eye-to-eye」ってやつ、ちょっとPet Shop BoysのWest End Girlsみたいで格好良かった。West End Girlsはいきなり「Sometimes you're better off dead...」ってなんとも言えないダークな感じで始まってた。覚えてる?っていうか生まれてた?80年台のロンドンにタイムトリップしたいね。

次回は15%AMT NOLとFTCについて。