昨日、スペインの議定書が上院で批准されたが、今日(2019年7月17日)日本の議定書も圧倒的多数でめでたく批准された。議定書の合意は2013年1月24日だから、実に6年6カ月経ってようやく米国側の批准が完了したことになる。ちなみに日本の国会は2013年6月に批准を早々に終えているので、随分待たされた感じ。議定書に「批准書は、できる限り速やかに交換されるものとする」と両国が宣言しているのがおかしい。
昨日のポスティングでも触れたけど、今後、日米間で批准文書の交換が行われて正式に発効に漕ぎつける。後は形式的な手続きと言えるけど、米国でまず批准文書がドラフトされ、国務省が大統領府間と調整して大統領による署名を行う。署名されたら日米で文書交換され、議定書はめでたく発効となる。
で、実は議定書自体はそれで効力が発生するけど、実際に源泉税に関しては効力発生日から3カ月後を含む月の初日から実際の適用がある。以前に支払利息の支払いをもうチョッと待てばゼロ%というようなことを書いたことがあるけど、正確には仮に7月に批准書が交換されたら、10月1日から源泉税が下がる。源泉税以外の税金に関しては、議定書の効力発生後の1月1日以降に開始する課税年度から適用となる。源泉税に関しては、トランプ大統領が7月中に署名するか、8月にずれ込むか、で発効タイミングが10月1日となるか11月1日となるか、差が出ることになるね。他はいずれにしても2020年1月1日以降に開始する課税年度から、が原則。例外は仲裁手続き、情報交換、租税徴収支援で、これらに関しては批准書交換時から適用となる。
もう忘れてしまった人も多いと思うけど、議定書の目玉は源泉税の更なる軽減、仲裁手続きの導入、租税徴収にかかわる相互援助の拡大。源泉税に関しては支払利息に対する源泉税が撤廃されたのと、配当に対する源泉税率0%の適格要件のうち、「50%超」の持分保有割合要件が「50%以上」に、また「12カ月」の保有期間要件が「6カ月」に緩和されている。
ちょっとオタクっぽいけど、米国不動産持分(USRPI)の定義が、日米租税条約特有の有利な定義から米国内国法の定義に統一されている。外国人が米国の不動産を譲渡すると、譲渡損益はみなし事業所得となり、申告課税の対象となる。その際、この不動産の定義には米国法人株式が含まれる。米国法人株式は、上場企業の5%未満株主のケースを除き、原則、自動的にUSRPIとみなさるけど、米国法人が「過去5年間」に一度も米国不動産保有法人、すなわちUSRPIが資産時価に占める割合が50%超の法人、でなかったことを証明できる場合には、その株式はUSRPIの定義から除外されることになっている。これは米国内国法の定義だけど、従来の条約では、5年テストを適用せず、「株式譲渡時点」において米国不動産保有法人でなければ当該株式はUSRPIとならないと、日本居住者に有利な規定となっていた。今回の改正では残念ながら、この有利な定義は撤廃となり、米国内国法のUSRPIの定義で全てを整理することとなった。ちょっとループホールみたいな恩典だったから仕方がないかもね。
ということで速報でした。