グローバルウォーミング・地球温暖化にはいろんな懐疑論もあったりして、悲しいことに米国税務とサブカルチャーの一部にしか知見のない僕個人は、一体何を信じていいのか合理的な推測すらできない。なんで科学的な話しはできないんだけど、体感的は話しとして、比較的温暖だった今年のニューヨークの冬は今週いきなり寒くなった。シカゴとかデトロイトのある中西部では体感温度マイナス50度(摂氏)とか報道され、これは南極より寒いとか騒がれていた。南極ってもちろん行ったことないけど、逆に言えばシカゴとかで体験できる寒さと比較可能なレベルなんだ、っていう変な発見もあった。マンハッタンでもiPhoneの表示だと華氏5度(摂氏でマイナス15度位)って出てたから結構寒い。ここまで寒いとマンハッタン全体、雪も降ってないのに路面とか全体に白っぽくなったりして、寒さで空気が澄んでいる点も合わせて見た目はきれい。夜も光がキラキラしていて外に出なくて済むんだったらいい感じなんだけどね。素人的に言うと、こんなに寒くなるってことは温暖化って表現は余りピンとこない。どっちかっていうと気候変動っていう方が分かり易い。
で、前回は留保所得一括課税の最終規則公表を受けて、CFC株式の簿価と課税済所得の話しを結構延々としてしまった。今日もチョッと似たような話し。なんでこんな話しをいつまでもポスティングしているかというと、簿価とかE&Pっていうのは昔から重要な属性だったけど、留保所得一括課税や今後のGILTIでその重要性が格段に増しているから。また、日本企業の米国子会社を見ていると、一般的にこれらの数値管理は疎かになっているケースが多く、2018年以降は毎期トラッキングしておかないと、CFCからの分配もできない状況になるので警鐘の意味も兼ねて(?)。
簿価関係の話しで一括課税の規則の中に実に興味深い規定がある。CFCの一括課税合算年度の期中にCFCが分配を行った際の取り扱いだ。例えば、米国株主法人からみ株式簿価がゼロのCFCに1987年以降の留保所得が100あり、全額一括課税の対象になるとする。CFCも米国株主法人も12月31日決算とすると、米国株主法人は2017年12月期に当100を課税所得として合算する。これだけの事実関係だと、12月31日時点に100がCFC側で課税済留保所得となり、CFC株式簿価が同額100増額する。もし2018年1月以降にCFCが100を分配すると、課税済留保所得の分配として、配当扱いにはならず(なので新税制下のテリトリアル課税規定である100%配当控除の対象にはならない)、CFC側では課税済留保所得100が減額し、米国株主法人はCFC株式の簿価が100減額して、合算前の簿価ゼロに戻る。。もし、留保所得一括課税以前のCFC簿価がゼロだったとすると、12月31日時点で簿価は100増額し、その後の分配時に100減額してめでたく元のゼロに戻ることとなる。
もし、分配が2017年11月とか、12月31日より以前のタイミング、すなわち留保所得一括課税の合算年度期中に行われているとどういうことが起こるだろうか。期中の分配は一括課税の対象となる留保所得認定には影響がないので、期中の分配がなかったケース同様、米国株主法人は2017年12月期に100合算課税される。ということはこの100の原資となる留保所得は課税済みになるし、CFC株式簿価も100増額するはずなんだけど、実際には分配が先に起こっている。となると、分配された金額100に関して、課税済留保所得を原資にしていたっていう点は12月末の合算確定時点が初めて明らかになる一方、分配時点で他のカテゴリ―の留保所得を分配したと考えるのは変なので、分配時点に遡って課税済留保所得を分配したと取り扱われることになるはず。でも、株主側のCFC株式簿価調整は米国株主法人側で合算されるまで増額しないと考えると、分配時点の株式の簿価は未だゼロだったと考えられる。え~、ってことは分配時点で簿価を100減額しないといけないけど、簿価がゼロなので100のみなし譲渡益課税?っていう恐ろしい事態になりかねない。
この時間差の問題は、実は以前からモヤモヤとしていた問題で、従来のSub F所得が合算され、合算年度の期中に分配があった場合に、分配はSub F所得の範囲で課税済留保所得から行われたと取り扱われる一方、簿価の増額は期末なので、厳密に言うとミスマッチが発生するのでは、って以前から疑われていた。ただ、従来のSub F合算所得は、今回の留保所得一括課税や今後のGILTIに比べて金額が小さいことが多く、仮にそんなミスマッチがあったとしても、分配時点で株式簿価がゼロを割り込んでマイナスになるような事態が発生するリスクは低かった。また、課税済所得という位置づけはSub F合算が発生するCFC側の年度末にならないと確定しないので、実務的には分配・課税済所得の確定・簿価増額そして減額が全て同時に起こったかのように便宜的に処理しているケースも多かっただろう。
で、留保所得一括課税の最終規則では、この点に関して、仮に分配時点で譲渡益を認識するようなケースがあっても、譲渡益は米国株主法人側で合算した金額を上限に減額処理していい、と規定している。すなわち、上の例で言うと、分配時にCFC株式簿価がゼロのままなので現行法を厳格に適用し100のみなし譲渡益が発生したとしても、米国株主法人側で合算している100を上限にこの譲渡益は減額処理することが認められるというものだ。この規定自体はヘルプフルなもので有難いけど、その前提は怖い。すなわち、期中の分配はやはり簿価を増額する前に起こったとされ、その時点の簿価を減額してゼロを割り込むとみなし譲渡益になるという取り扱いを間接的に確認していると読めるからだ。やっぱり今までもそう考えるべきだったのか、とゾクッと来る感じの規定になっている。
で、譲渡益を減額する場合、株式簿価ももちろん対応して減額が必要となる。これらの全ての簿価調整はCFC課税年度の期末時点で一気に発生したかのように取り扱われ、プラス・マイナス調整が混在する場合にはネット金額一本で行うこと、と規定されている。上の簡単な例でも簿価調整関係の動きは複数発生している。100の課税済留保所得が分配された時点で100の簿価減額が求められるが、その時点の簿価はゼロなので、100のみなし譲渡益を認識し簿価はゼロのままを維持する。12月31日時点で合算課税を基に簿価は100増額、そして100のみなし譲渡益課税の減額を行うことによる100のマイナス簿価調整。結局、ネットでゼロ調整が12月末に起こり、かつ分配時のみなし譲渡益も減額されてゼロになるという仕組み。
CFCが複数あり、他のCFCのマイナス留保所得でプラスを相殺しているケースはややこしい。これは以前にも何回も触れているけど、マイナスで相殺された金額も、実際には米国株主側で課税されてないにもかかわらず課税済留保所得に生まれ変わる一方、CFC株式の簿価はその分の増額はない。そんなマイナスで相殺された課税済留保所得を持つCFCが期中に分配を行った場合、みなし譲渡益の減額は、「留保所得一括課税の財務省規則最終化 (2)」で触れた簿価調整を選択をしているケースのみで認められるとしている。そうしないと合算年度の期末以降に分配した場合の取り扱いと整合性が失われてしまうからね。
留保所得一括課税もまだまだ本当はDeepできりがないけど、次回からはBEATに戻る。