Tuesday, January 15, 2019

留保所得一括課税の財務省規則最終化

この超バタバタ(いつも)の中、財務省は去年の8月に公表していた留保所得一括課税にかかわる財務省規則案を最終化し、米国時間今日(1月15日)午後に公表した。規則案は249ページだったけど、最終規則は305ページ。ページ数で競ってる訳じゃないけど、最終規則は50ページ強増強されていることになる。

チョッとオサライだけど、留保所得一括課税って、CFCとかの特定外国法人の2017年12月31日以前に開始する直近の課税年度(「合算課税対象年度」)末を含む米国株主側の課税年度に、外国法人の1987年以降の留保所得を15.5%(現金相当額)または8%(その他)の低税率で課税するという仕組み。この移行措置を経て、米国もめでたくテリトリアル課税に移行すると考えていたところが、まったくのダマシ船で、一括課税された上、さらにグローバル連結に近いGILTIに移行してしまったのは、以前からのポスティングで触れている通り。

税制改正に基づく規則で先陣を切って最終化された訳だけど、留保所得一括課税は多くのケースで2017年課税年度に処理するものであり、会計上のインパクトも含めて他の規則よりも一年早い検討事項となっている。米国企業は既に2018年10月、日本企業の多くは、まさしく今日2019年1月15日に提出した申告書で加味しているはず。なんで申告書作成は例年にも増して大変な作業となったケースが多い。

そのため、税制改正可決直後から、多くのNoticeでガイダンスが公表されており、ここに来て真っ先に最終規則に漕ぎつけている。基本的に規則案の構成・方向を踏襲している部分が大半なので、まあまあ読みやすい。取り急ぎ、目についた点をまとめると次の通り。

米国パートナーシップの上に2社CFCを介したりして、Subpart F所得を非課税にしようなんていう米国パートナーシップブロッカー形態は、以前のNoticeやGILTIの財務省規則案で網が掛けられているけど、ここでも同様な背景で、本来、パススルーでもパートナーシップレベルでCFC等の米国株主と取り扱われるはずが、一定の要件下で米国パートナーシップは外国パートナーシップかのようにLook-throughしてパートナーを米国株主として取り扱う規定がある。これは一括課税の規則案にもしっかり規定があったけど、今回の最終規則では、米国パートナーシップがLook-throughになる場合、その結果間接的に10%の持分を持つパートナーだけに対してばかりでなく、少数持分保有のパートナーを含む全てのパートナーに関してLook-throughが適用される、としている。

そして話題のDownward Attribution系の話し。外国法人が特定外国法人になるのかとか、米国人が米国株主になるのか、という判断をする際、規則案では少額免除規定のような形で、5%未満の持分を保有するパートナーからパートナーシップへのみなし株式保有は免除してくれていた。でないと結構ビックリするような結果となることがある。で、最終規則では更に寛容に、当例外規定の基準を10%未満の持分に拡大してくれている。さらに、こちらは日本企業には余り関係ないかもしれないけど、同じような少額免除を受益人から信託に対するみなし保有規定にも新規に規定してくれている。

次はSection 1248と課税済所得。CFC株式を譲渡した際にCFCのE&Pの範囲で譲渡益がみなし配当取り扱いになりますっていうのは比較的初歩的な米国クロスボーダー課税の規則だったけど、原則、このE&Pには課税済留保所得は含まれない。それはそうで、実際に分配しても課税済所得は配当にはならないからだ、従来のSubpart Fの世界では、合算課税が起こればその分CFC株式簿価が上がり、同額が課税済所得なって、というのが常識だったんだけど、留保所得一括課税にしても、GILTIにしても、米国株主側で複数のCFCの数字を合算してしまうので、従来のようなきれいなフォーミュラが成立しない。で、Section 1248では単純に米国株主が過去に実際に合算課税されてる課税済E&Pをみなし配当原資には加味しない、って規定されてるんだけど、留保所得一括課税では、合算されてないのに課税済所得になっているE&Pが存在し得るので、ここをSection 1248でどう考えるのか、というのは不思議な部分があった。

すなわち、留保所得一括課税時には、米国株主が複数のCFCを保有し、他のCFCのマイナス留保所得でプラスの留保所得を相殺している場合、相殺されたプラスの留保所得も「課税済」と取り扱われるけど、この部分は実際には米国株主側で合算されていないので、みなし配当の原資となり得るの?まさか、っていう話しだ。そんなのSection 1248のアップデートし忘れじゃない?とか、いやいやその部分は配当になり100%所得控除の対象と考える楽観的な解釈もあり得るし、またはそもそも実際に分配しても100%所得控除の対象にはならないんだから、簿価を下げるでしょ、みたいなアプローチもあり得た。最終規則では、チョッと語弊があるけど、Section 1248のアップデート忘れに近いスタンスで、他CFCのマイナス留保所得で相殺された留保所得も、実際に合算課税されたE&P同様にみなし配当原資には加味しないと規定している。法文と不整合だけどなかなか度胸あるね。

次はビックリしたCFC株式税務簿価の調整選択時の金額制限。これは面白すぎるので次回。