Sunday, March 7, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(6) GILTI増税と財務省規制強化

前回のポスティングでは、GILTIって名前のワンちゃんがバイデン農場に拾われたら、GIに名前が変わってしまった、っていう童謡を歌いながらGILTI増税案を紐解いてみた。う~ん、GIってウルトラマンメビウスみたい。あれはGIGか。キャプテンスカーレットのSIGのパクリだけどね。僕が昔見てたウルトラマンセブンのMATの方が隊の名前としてはGUYSより断然いかしてる。何と言ってもMATって「Monster Attack Team」の略だったからね(笑)。ポインター号に乗ったMAT隊員。いい時代だった感じが炸裂しています。

今回はチラッとだけど、立法府の議会ではなくバイデン政権下の行政府の規制環境について。

約一年前、すなわちトランプ政権下で財務省はGILTI高税率除外の規則を公表している。GILTIはその立法過程で、13.125%のグローバルミニマム税を設定するという趣旨が明記されている。そのメカニズムとして、CFCが現地で支払う法人税の80%をFTCとして認めるので13.125%の法人税を支払っていれば、10.5%のFTCが認められ、米国株主側でGILTI合算してもネットで追加の米国法人税はないはず、という点も明記されている。

TCJAが可決して間のない頃から、仮に10.5のGILTIバスケット所得があっても、FTCはバスケットのネット課税所得を基に制限枠を決めるので、バスケットに配賦・按分される米国株主側の費用、特に支払利息、により10.5の枠はないケースが大半という問題が指摘されていた。すなわち、このままだと、米国外で13.125%超、例えば30%とか、の法人税をCFCが支払っていても、米国で一部GILTI課税が生じることになる。この問題を解消するため、企業側はGILTIバスケットには特別に費用配賦をしないような規定を設けて欲しいとか、13.125%の法人税を国外で支払っているケースはTested Incomeをピックアップしないでもいいようにして欲しいとか、若干茶番めいたとまでは言わないまでも、行政府には権限がないであろうと思われる財務省規則による救済策を期待していた。

法的に行政府では如何ともし難いのでは、と考えられていたんだけど、驚いたことに財務省がサーカスのような理論に基づきウルトラCでGILTIに対する高税率除外規則を策定したのだ。しかし、さすがに13.125%にはならず、従来のSub Fに規定されていた高税率免除を流用するに留まっていた。これだけでも凄い逆転劇なんだけど、Sub Fに規定される高税率免除は、法人税率の90%基準なので、現行だと18.9%。以前の35%時代にはこれが31.5%だから、ほぼ適用可能性はないに近かった。18.9%で息を吹き返した感もあるけど、米国多国籍企業的にはまだ高いという感覚は否めないだろう。バイデン農場、じゃなくてバイデン政権の法人税率28%が実現すると、高税率免除は25.2%と役に立たない域に戻ることになる。高税率除外に関しては財務省規則が発表された当時のちょうど一年ほど前に「GILTI高税率免除規定」で詳細をポスティングしているんで、内容そのものはこちらを参照して欲しい。

GILTI高税率除外規則は、Sub FのFBCIやInsurance Incomeに従来から適用可能だった高税率免除規定の法文を解剖し、その一部の表現に「全ての所得項目」に高税率免除規定が適用可能とも無理すれば読めなくもない部分があり、それを最大限利用し新らたな解釈を捻出しているものだけど、かなり際どい。

財務省の中でもこんな規則を策定していいのか、とか法的な権限に関して賛否両論あったらしいけど、バイデン政権下の財務省では、行政措置でGILTIを不当に弱体化しているという論調が強まるかもしれない。その矛先は、みなしルーティン所得の計算をする際に差し引く、CFCの特定支払利息を簡便法に基づいて全利息のネット算定を認めている点にも向いている。別の規定だけど、163(j)で支払利息の損金算入枠を算定する際に使う調整後課税所得に、2021年まで棚卸資産に資産計上される償却費用の加算を認めるかどうかっていう点も財務省は納税者寄りの規則を出してるしね。

これらの規則が即取り消されるというような切羽詰まった状況ではないけど、この手の問題を指摘する者はどちらかというと学界で活躍されてきた方が多いように見え、全利息のネット算定など、逆にあれがないと実務面の対応はとてつもなく重荷となるので、ビジネス経験のある一派との議論を通じてバランスよく方向性が固まっていくことを願う。

オバマ政権とトランプ政権の比較でも分かる通り、行政府による規制環境は政権により大きく異なるから、今後の規制強化に関しては法改正と並び要注目。

課税強化の話しばかりで食欲減退してないといいけど、次回は追い打ちをかけるようにBEAT強化案について。

Friday, March 5, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(5) GILTI増税(続)ワンちゃんの名前は「GI」に?

前回はバイデン政権によるGILTI課税強化の話しをするための舞台作りとして、元祖GILTIの概要に触れた。2分間のSingle Radio Editのつもりだったんだけど、結局いつも通り興奮して20分続くExtended Underground Versionに。GILTIはそれを取り巻くFTC、株式簿価調整、PTEP等の規定を含むと、僕も3年間考え続けて未だに不明点があるくらいだから20分でもご勘弁くださいませ。

ってことで今日はいよいよバイデン政権のGILTI増税案。

米国に「農場主がワンちゃんを飼ってて、その名はBINGO~」(「There was a farmer had a dog and Bingo was his name-o. B-I-N-G-O」文法面白いけど歌だからね)っていう童謡がある。こっちの生活が長かったり、こちらで子育てした方だったら大概知ってるんじゃないかな。この歌、基本的に同じ歌詞で1番~6番まであるんだけど、犬の名前をみんなで「ビー」「アイ」「エヌ」「ジー」「オー」ってスペルアウトして歌う部分が、回を重ねる毎に一文字づつ消えて、その部分は手拍子に代わる。

何言ってるか分かんないかもしれないけど、一番はBINGOのスペルを全てみんなで元気よく「ビー」「アイ」「エヌ」「ジー」「オー」って歌うんだけど、2番は「ビー」の部分は何も歌わずに手拍子になる。つまり「手拍子」「アイ」「エヌ」「ジー」「オー」って歌う。3番はさらに「アイ」も歌わず、「手拍子」「手拍子」「エヌ」「ジー」「オー」、4番は「手拍子」「手拍子」「手拍子」「ジー」「オー」、5番は「オー」だけが残って「手拍子」「手拍子」「手拍子」「手拍子」「オー」、6番に至ってアルファベットは全て消え、全部手拍子になるって仕組み。結構楽しいんだけど、僕の説明だけじゃ楽しさ伝わんないと思うからYouTubeとかで実際に聴いてみて欲しい。どうでもいいって…?確かに。

でもバイデン政権のGILTI増税案はまさに童謡BINGOの世界なのでした。果たしてそのこころは?それは最後にね。

バイデン政権のGILTI観はTCJA立法趣旨とは大分違う。CFCの国外所得を米国で毎期課税するのは当然と考える。そんな捉え方に基づくと、GILTIの税率は低すぎるし、みなしルーティン所得のカーブアウトも米多国籍企業が享受する不当な恩典、というような結果に辿り着く。したがってこれらの不当な「恩典」は是正しないといけないということ。こんなGILTI観の背景には、米国多国籍企業が未だに大掛かりなBase Erosionに従事してるっていう前提があるんだろうけど、現時点で入手可能なデータの多くは2017年以前のものなので、TCJA、特にBEAT、GILTI、FDII、Hybrid、等が導入されている新クロスボーダー課税制度下でどのように多国籍企業の行動パターンが変わったのかを統計的に図ることはできないはず。

バイデン政権のGILTIアプローチ下では、まず、CFC有形償却資産簿価の10%というみなしルーティン所得を撤廃しようという流れとなる。この除外がなくなるってことは、すなわち毎期、CFCの所得を全額合算するということ。GILTIは「Intangible」から生じている超過利益に対するミニマム税と位置付けられている現状では、有形償却資産簿価に基づいてメカニカルに決定されるルーティン所得以外を無形資産所得って決めてしまった点が凄く斬新って前回のポスティングに書いたけど、この除外を撤廃するということは有形償却資産から生じるルーティン所得もGILTI対象にするということになってしまう。もうIntangibleとか関係ないね。

さらにGILTI税率の21%への引き上げ。現行が10.5%だから倍だ。もし通常の法人税率が21%のままと考えると、前回のポスティングで触れた50%のGILTI控除を完全撤廃するということになる。ただ、バイデン政権は選挙活動の頃から法人税率そのものを28%に引き上げる、って言ってるので、もしヘッドラインレートが28%になるんだったらGILTI控除を50%ではなく、25%に下げるっていうことになる。すなわち、100のGILTI合算から25を引いた75に28%掛けて21という仕組み。仮にGILTI制度が現状のままでも法人税率が上がると自然にGILTI税率も上昇する。仮に法人税率が28%になるとすると、GILTI制度の変更が一切なくてもGILTI税率は自然と14%になってしまう。新しいタイプやクラスの税金って、一旦法律になってしまうと、その後どんな風に進化していくか分からないから恐ろしいね。という訳でミニマム税っていうか普通の課税っぽい帯域に突入。GILTIのLow-Taxedっていう部分も意味がなくなってしまう。

そしてダメ押しのように、FTC計算時のGILTIバスケット制限枠を国別に算定させるという「Country Basket制」導入案。現行のGILTIバスケットのFTCは、繰り越しや繰り戻しがないという厳しい制限はあるものの、少なくともグローバルブレンディングベース。GILTIバスケットのFTC計算はそれだけでも面倒だけど、簡単に言うとポジティブなTested Incomeを計上しているCFCが外国で支払う法人税のうち、Tested Incomeに帰すると取り扱われる金額を米国株主側で合算し、それにGILTI合算率を掛けて更にそれに80%掛けた金額。GILTI合算率は、分母が「米国株主側でGILTI用に取り込むTested Income(Lossは加味しない)総額」で、分子は「GILTI合算額」すなわちTested IncomeとTested Lossを相殺して更にみなしルーティン所得となる有形償却資産簿価の10%をマイナスした金額として算定する。もちろん、こんな風に苦労してクレジット可能な外国法人税を算定した後、実際にFTCになるのは米国株主側の各種費用をGILTIバスケットに配賦・按分して計算されるバスケット制限枠の範囲内だ。

で、これを国別に計算しようという提案。その目的はもちろん高税率国と低税率国間のクロスクレジットを認めないってことなんだけど、もしGILTI税率が21%になったら、普通の国の税率より高いケースが多いので、結局は結構な外国の法人税がFTC対象になるかもね。しかも、FTCは外国法人税のTested Income帰属額の80%が対象だから、仮に算数が教科書のようにきれいにワークしたとしても、26.25%がグローバルミニマム税という見方もできる。そんな高税率の国、日本以外には少ないのでは。

う~ん、これではGILTIがオリジナルの制度とは異なる目的のものになってしまう。もともとGILTIっていうのは、米国がテリトリアル課税に移行するにあたり、そのまま移行してしまうと、少し大げさにいうとCFCの所得は国外でゼロ%、米国市場から生じる所得も合法的にCFCに移転されてしまうので結局ゼロ%、それを米国に還流してもゼロ%、という全世界実効税率ゼロ%となり兼ねないため、BEATやHybrid規定と並び、CFC国外所得に毎期13%程度のミニマム税は世界のどこかで払ってもらわないと、っていうBase Erosion対策の一環だったはず。加えて、FDIIを同時に規定することで、米国外向け事業を米国親会社が直接行っても、CFC経由で行っても、毎期繰り延べなしに13.125%のミニマム税の対象となるというFDIIとの対のシステムだったはずだ。経済がデジタル化する中、高い収益はIP等の無形資産が生み出し、従来のクロスボーダー・プラニングでも低税率国に容易にMigrateできたのは無形資産、という認識があるんで、有形資産から生じるルーティン所得見合い部分は対象外ってしていたものだ。

バイデン政権はピラー1のSafe-Harbor化要求を撤回するなど、かなりOECDのBEPS 2.0に歩み寄りがみられるけど、想定されているピラー2の税率はせいぜい10%とか12%程度って噂されているし、現状のGILTIの有形償却資産リターンに準じる「カーブアウト」も規定されている。そんな中、お手本のはずだったGILTIが激しくピラー2から乖離してしまうと、本当にグローバルでピラー2と共存できるのかな、っていう疑問も出てくるし、米国がそんなGILTIでピラー2準拠とみなされるんだったら「うちの国も21%でカーブアウトはありませんよ~」とかっていう他国が出てきたらどうするんでしょうか。

ということで、「アメリカにはワンちゃんが居て、その名はGILTI~。ジー、アイ、エル、ティー、アイ!」ってみんなで歌ってたけど、そこにバイデン政権が登場して2番、3番、4番を作ってだんだんアルファベットなくなっちゃった感じ。まずIntangibleの2つ目のアイが手拍子に代わり、もはや21%ではLow-Taxedというのもおこがましいので、エルもティーも手拍子に代わり、「ジー」「手拍子」「手拍子」「手拍子」「アイ」って、なってしまいました。「バイデン政権が来てワンちゃん改名~。その名はGI(Global Income)。ジー・アイ!」。逆にGとIはなくなってもよかったんだけど、それだけ残っちゃったね。一層のこと、6番までできて全部手拍子で廃止されたらよかったのに?

Sunday, February 21, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(4) GILTI増税 (1)

2月に入ってNYCは急に冬っぽい気候になり、数日おきにチョッとした積雪。例年だったら今朝地下鉄動いてるかな~、とか考えてる頃かも。コロナ以前からNYCの雪とか、午前8時のカリフォルニア・フリーウェイとか、オフィスに移動する時間が無駄と思われる日はLocation Freeでサクサクやってたんで、実はあんまり関係ないか。あんまり道路が凍結したりするとWhole Foods行けないかも、程度の比較的どうでもいい悩みだ。テキサス州とかの南部にも寒波、と言ってもNYC的に見ると普通の冬の気候なんだけどテキサス州だからね、が来て風力発電の風車が凍結したりして電力不足に。お陰でダラスからウェブキャストに参加するはずのメンバーが、当日インターネット使えず、電話で参加したりするハプニングがあった。

カリフォルニア州の夏の計画停電もそうだけど、再生可能エネルギーへの転換は災害時や需要ピーク時に市民に十分な電力を供給できる体制を維持しながらバランスよくアプローチしてもらわないとね。世界一の産油国になってる米国の中でもテキサス州は原油生産量で他州にかなり水をあけている存在なだけに、そこで電力不足っていうのは皮肉。21世紀の文明国で計画停電っていうのもなんだかな~って感じでした。

お天気が良くても、ミッドタウンは相変わらず平日でも閑散としてて、この閑散ぶりもついに一年近く続いてることになるけど、街のレストランも閉鎖命令が出たり解禁されたりしてオーナーは一喜一憂。バレンタインデー直前にNYCの屋内飲食が25%キャパで再開。カリフォルニア州も罷免投票を恐れた知事が2週間ほど前から屋外に限定して飲食OKとなった。カリフォルニア州では焼き鳥屋さんや焼き肉屋さん(どこのお店のことかだいたい分かるね?)が「ソフト・オープニング(?)」していて数日満喫することができたし、NYCのミッドタウンも冬なんで屋内じゃないと話しにならないけど、今週、ようやく例のイタリアンに2か月ぶりに立ち寄ることができた。レストランって好景気下でも成功率が低いはずだから何か月も閉鎖させられたり、Plaxiglass、ヒーター、高性能換気システムとかに投資させられた上、急にまた閉鎖とか、再開しても25%キャパとか、そんな環境で生き残るのは大変だろう。僕たちが属する法律、タックス、会計とかのサービス業なんて言うのは今のところWFHでも対応できる部分が多いからいいけど、レストランやネールサロンとか、In-Personのサービスが一日も早く正常に戻り、そこで働く人たちの職が安定しますように。

で、バイデンのGILTI増税案だけど、まずそれを語るにはGILTI制度の概要を知らないと、ってことでGILTIのおさらい。って言っても真面目にGILTIの話しをすると3か月とかの長編シリーズになり兼ねないし、ついつい興奮してしまいそうだから、はやる気持ちを抑えつつ、ここでは2分のスペシャルバージョン。ちなみにもっと知りたいという奇特な方は、2018年から何回も触れてるトピックなので過去のポスティングを参照して欲しい。

GILTIは、CFCが毎期得る所得を、分配のあるなしにかかわらず、米国株主が合算して米国で税金を支払うっていう制度で、設計としては1962年から存在する米国の元祖CFC所得合算制度Sub Fに通じる存在。制度のインフラは同様なんだけど、Sub Fがモビリティが高い所得とか議会や財務省がCFCの活用法やロケーション選定に関してチョッと阿漕過ぎる、って認定するタイプの活動から生じる所得を対象としているのに対し、GILTIはその辺は一切構わず、原則CFCの所得のうち、Sub Fでピックアップできない残り全額を米国株主に毎期合算させる制度。落ち着いて考えてみるとかなり過激な制度なんだけど、3年も付き合って今ではすっかり慣れて当たり前になってるのが怖い。しかも後述するバイデン増税案ポリシーは、GILTIがあるのは当たり前で、通常の法人税との比較でまだまだ手緩い、というものだから2017年以前のクロスボーダー課税制度と比較するとWhole New Worldだ。マジック・カーペットで昔に戻れればいいのにね。

また、制度設計的にもSub Fと大きく違うのは、Sub Fは一旦CFCで数字が確定されるとそれ以上米国株主側で加工されないCFCレベルの属性なのに対し、GILTIっていう金額はテクニカルにはCFCには存在せず、CFCの数字を米国株主が加工してはじき出す米国株主側の属性、っていう点。分配がないのに米国で課税が生じることから、再度課税がないようにGILTI合算時およびその後の課税済み所得の分配時には複雑な株式簿価調整メカニズムがあるけど、CFC側と米国株主側で必ずしも数字がミラーイメージではないGILTIにSub Fと同じインフラで対応しようとするとあちこちで無理が生じることになる。連結納税グループの子会社がCFCを所有してるケースも多いけど、その際に子会社側のCFCに対する株式簿価調整と連結納税グループ内の株式簿価調整、さらに100%DRDとの関係とかかなり複雑で、ULRで封印したはずだった「ミラーの息子 (Son of Mirror)」取引(懐かしい?)が息を吹き返したりして、1936年から50年続いた後に1986年に全面撤廃されたGeneral Utilities原則、連結納税規則や337、ライドエードケースとかに凝ってたオタクの身としてはついつい興奮せざるを得ない状況になっている。2分バージョンじゃなくなりつつあるって?ゴメン。ベーシックに戻らないとね。

で、CFCの課税年度終了時点でCFCを所有する米国株主が、CFCの所得・損失、Tested IncomeまたはTested Lossっていうけど、を自分の持分取り込んで合算するのがGILTI計算の第一ステップ。優先株とかあるとこの計算自体複雑だけど、今日は2分バージョンだから割愛。合算ネット額が米国株主にとってのNet Tested Incomeになる。自分が所有するCFCのTested LossとTested Incomeを相殺できるんで「Net」になる。Tested Incomeを計上しているCFCから見ると、他のCFCのTested Lossで自分の所得が米国でGILTI対象じゃなくなったりして、E&Pの管理が面倒。これが理由で以前のPTI規則案が一旦取り消され、新たなPTEP規則が発行されるはず。既にNoticeが出ていて大枠のガイダンスはあるけど、バスケット毎に毎年16種類とか管理が大変だ。PTEP規則は興味津々なんでず~っと待ってるけど、CARES Actとかで財務省も忙しかっただろうから、まだ出てない。そろそろでしょうか。2分バージョンだったね。自らを戒めるのが大変だ(苦笑)。

Net Tested Incomeがマイナスだったらそれで終わり。その場合、Net Tested Incomeはゼロと取り扱われる。つまり、Net Tested Lossで米国株主の他の所得を圧縮することは認められない。CFC間では通算OKだけど、その結果マイナスが出た場合にマイナスを米国に持ち込めないんで、GILTIってグローバル連結納税みたいだけど、あくまでCFC課税だね、っていうが分かる。もし、連結納税制度で、損失の法人はその年、連結納税グループに属してないと取り扱う、なんて規則があったら何それ~って思うだろうし、なんか釈然としないよね。しかも、Net Tested Lossは繰り越しや繰り戻しがないんで、それっきり。CFC間の通算がOKな点ではSub Fより寛大だけど(Sub Fにも超限定的にQualified Deficit規定とかあるけど)、Tested IncomeにはCurrent E&Pの上限もないし、全体にGILTIの方が厳しい。

で、めでたく(?)Net Tested Incomeがポジティブで、その名の通りNet Tested Incomeとなる場合、次にそのうちいくらが「Intangible Return」、すなわち超過利益部分かっていう認定をする。なんと言ってもGILTIの二つ目の「I」は「Intangible」の「I」だからね。ちなみに最後の「I」はIncomeです。これを「Y」ってして、GILTY課税になってBeyond a reasonable doubtの世界に入らないように。

このIntangible Returnを個々の事実関係を基に計算するようなシステムにしてしまうと、当然実務的に適用が不可能になる。そこで、GILTIはみなしルーティン所得に当たる「Net Deemed Tangible Income Return」を機械的に計算し、Net Tested Incomeのうちみなしの有形資産リターンを超える金額は全額「Intangible」に基づくもの、という事実認定を規定している。GILTI制度に斬新な部分はいくつかあるけど、Intangible Returnをこのようにバッサリ定義した点もそのひとつ。すなわちそこでゴチャゴチャと屁理屈を捏ねることを認めず、原則ほぼ所得全額をIntangible Returnとしてしまった点だ。大胆。で、何がみなし有形資産リターンかというと、所得を認識しているCFCが所有する有形償却資産の税務簿価(ADSベース)年平均残高を米国株主側で合算しそれに10%を掛け、そこからCFCが認識する特定の支払利息を差し引いた金額。Tested Incomeを計上していないCFCの有形償却資産は加味されない。このみなしルーティン所得をNet Tested Incomeから差し引いた金額がGILTIだ。しつこいけど、米国株主側で初めて算定可能な金額で、各CFCは計算の基になる金額は各種提供するものの、CFC毎にGILTIという金額は存在しない。Sub Fとの大きな違いだ。Net Tested Incomeがみなしルーティン所得より小さい場合は、それで終わり。GILTI合算額はゼロになる。

こんな風に計算されたGILTI合算額は100%まるまる米国株主のGross Incomeとなる。で、そこから50%の所得控除が認められるんで、通常の法人税率半分、現状だと21%の半分に当たる10.5%が実効税率でGILTI課税が生じるのが基本の姿。実際には基本通りにいかないことが多くて苦労が絶えないけど。正確にはGILTI合算額に、FTC計算の基となるTested Incomeに紐づくと取り扱われるCFCの外国法人税をグロスアップするんで、所得控除もグロスアップ後の金額に50%掛けて算定する。Tested Incomeは外国法人税に関して税引き後の金額だから、FTCを計上する場合には一旦税引前に戻すための作業だ。ちなみにFTCに使用できるCFCの外国法人税は、Tested Incomeに紐づく金額の80%だけど、グロスアップは100%っていうのも罠っぽい。Tested LossのCFCが支払う法人税を加味することは認められない。Tested Lossだから外国でも法人税なんか支払わないじゃん、って考えるのはあわてんぼうのサンタクロースだ。Tested IncomeとかTested Lossは、米国税法基準で算定するので現地の課税所得とは大きく異なるケースが多い。なんで米国の目から見ると「Loss」でも、現地では課税所得が発生している、または逆のケースも十分にあり得る。

10.5%とするための50%所得控除だけど、課税所得がないと取れない仕組みになってて、またFDII控除と共存しているので、損失の課税年度やNOL繰り越しや繰り戻しを適用している年度は所得控除が認められない、または部分的に減額処理の対象となったりする。50%控除が取れないとGILTI合算額は100%課税されていると同じことだから、GILTI合算額に対する実効税率は21%となる。CFCが国外でどれだけ高税率で法人税を支払っていてもだ。この点は、行政府の大英断でHigh Tax Exclusionという法文からはとても読み取れない規則が策定されているので、それで助けられた納税者は多いだろう。

このように教科書通りきれいにいけば100のGILTI合算額に対して10.5の法人税が米国で課せられることになるけど、そこからFTCを引くことができる。上でもチラッと触れたけど、Tested Incomeに紐づく外国法人税を特定し、その80%が潜在的にFTC対象となる。FTCの制限枠の算定は、課税所得総額に基づく制限枠に加え、GILTIバスケットを含む4つのバスケット、条約に基づくRe-Sourcing条項を利用している場合はそれが5つめのバスケットになるけど、毎に制限枠を計算する。その際に、米国株主側で発生している費用を各バスケットに配賦・按分することになる。この配賦・按分計算自体迷路のようで、費用の配賦・按分って一間地味に思うかもしれないけど、クロスボーダータックスプランニングの肝と言っても大げさでない部分だ。一般管理販売費をCFC株式やSub F、Tested Incomeに配賦・按分するケースは、Stewardship費用を除くと余りないって言えるけど、支払利息やR&D経費は特殊な計算を伴うので要注意。特に支払利息はお金に色なしということで、原則、資産の税務簿価で按分するので、GILTIを生み出すCFC株式にも按分される。国内外の調和を図るため、資産簿価計算時の償却費用は国内資産に対してもこの目的のみでADS使用可能。派手に加速度償却とかしてると、国内資産の簿価だけ急激に下がってFTCに限ってみると費用按分が不利になるからね。この費用配賦・按分は想定外のGILTI課税に繋がる。1ドルでもGILTIバスケットに費用が配賦・按分されると、10.5という枠が削られていくんで、外国源泉所得に費用を配賦・按分するとその金額に21%で課税されるっていう言い方もできる。この点も上で触れたHigh Tax Exclusionが公表される前は大きな問題となっていた。

って、ことで2分バージョンのはずが、20分バージョンくらいになってしまった感じはあるけど、僕なんか3年間GILTIのことを考え続けて未だに不明点があるくらいだから20分でもご勘弁を。今日はお天気いいんで、閑散としたミッドタウンか、結構混んでるSOHOに繰り出して気分を晴らそうかな。次回はバイデンのGILTI強化案。

Sunday, February 7, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(3) 財務諸表利益15%ミニマム税

前回は、今日にでも実現してしまうのでは、と戦々恐々としている法人関係者も多い法人税率引き上げの実現性およびそのタイミングに触れた。少しは安心してくれましたでしょうか。法人に対する増税としては、ヘッドライン税率の引き上げに加え、GILTI税率の21%化(現10.5%)と財務諸表税引前利益に対する15%ミニマム税の新規導入が提案されている。いずれの提案もまだまだスケッチーで、包括的かつ理路整然としたものとして公表されている訳ではないんで、最終的にどうなるかは未知の世界。

15%ミニマム税導入ポリシー

で、今日は財務諸表税引前利益に対する15%ミニマム税に触れてみるけど、趣旨的には会計上、利益が出ているにもかかわらず米国で法人税を支払っていない、または支払っていても相対的に少額と考えられるケースに網を掛けるというもの。2017年の税制改正TCJAで法人に関しては撤廃済みの代替ミニマム税(AMT)を思い出させてくれる。AMTも趣旨はほぼ同じで、経済的には儲かっているにもかかわらず税制に規定される諸々の恩典、例えば加速度償却とか、を利用して課税所得が圧縮されている課税年度は、少なくともミニマム税くらい支払いなさい、というものだった。税法には、設備投資減税に代表されるように、納税者の行動パターンを刺激したり、エネルギーや不動産など特定のセクターを優遇するような多くの恣意的なポリシーが満載されている。これらのGoodiesが一旦与えられ、それに反応して一定の商業活動に至り、合法的に恩典を受けようとしたら結局AMTで税金を支払う羽目に陥ったりする。刺激策適用時に「節度」を求めるような効果を持つけど、恩典計算時とその効果打消し時に二度、不要に複雑な計算やプラニングが必要となることから、税法複雑化の大きな原因となる。

2017年のTCJAの大本になった共和党のブループリントでは、これらのGoodiesは基本全て撤廃し、フラット20%税率とし、さらにキャッシュフローベースで消費地課税とするので実質VAT同様のボーダー調整を行うという挑戦的かつ斬新なものだった。結局その後のポリティシャンによる審議を経て、TCJAにはブループリントの跡形も残っていないけど、ブループリント通りだったら、15%ミニマム税やAMT等の複雑な規定で網を掛けるまでもなく最初からポリシー的なGoodiesが最小限だから自ずと経済実態に準じた所得に課税が生じることになる。また、ボーダー調整を通じて、クロスボーダー・プラニングの余地も激変するはずだったからSubpart F(CFC課税)も移転価格税制も無用の長物と化すという目から鱗みたいな提案だった。この手の法人税がマジョリティとなると当然、ピラー1とか2の議論の多くも不要。僕たちの仕事の内容は大きく変わってしまったと思うけどね。結局、TCJAでは法人AMTが撤廃された代わりに、BEATミニマム税が導入されて落ち着いた。AMTとBEATは全く異なる目的を持ってるけど、TCJA可決当時、上院財政委員会のスタッフと話した際に、BEATはAMTの代わりと言われ、そういう風に考えるんだ~、って感心したのを思い出す。15%ミニマム税が導入されるとBEATはそのままなんで、反ってミニマム税のタイプが増えてしまう。

15%ミニマム税適用対象法人

ということで、今回の15%ミニマム税はどちらかと言うとAMT同様の旧態依然とした小手先っぽいポリシーって感は否めないけど、現状の税法下ではしょうがないかもね。で、この15%ミニマム税の適用対象になるのは税引き前利益が$100M(1ドル100円換算で100億円)ある法人。会計上の利益を指標としたり、一定サイズ以上の法人をターゲットとしている点、OECD・ピラー2のIIRを連想させる。適用対象法人になると、税引前利益に15%掛けて、実際に支払う法人税と比較して、15%の方が高ければ超過額をミニマム税として納付する。単年で$100Mを算定するのではなく、BEATの適用判断時みたいに過去3年平均みたいな規定になる可能性もある。

どの財務諸表を参照?

米国を頂点とする米国MNCのケースは、グローバル連結財務諸表を基にするんだろうけど、日本企業のようなインバウンド企業に対する適用は不明。おそらくTangible Property Regulations (「TPR」)(なんか平和な時代を思い出すね)のSafe Harbor適用時に参照する財務諸表を「Applicable Financial Statements(「AFS」)とか定義してたけど、今回もこれらの規則を参照する、または別の定義を規定することになるんだろう。会計の利益って適用する会計原則で結構違うしね。さらに外国法人がPEやUSTOBを通じて認識するECI等の申告課税所得への対応も不明。金融機関とか支店でもサイズが大きくなることがある。

財務諸表の税引前利益は、連結ベースだから当然米国外の所得も含まれてて、自然にワールドワイド課税になっちゃうんで外国税額控除(FTC)を認めるとしている。FTCね。会計の利益を参照する以上、通常の4つのバスケット・ベースの制限枠計算はできないだろうから別計算することになるんだろうけど、まさかいくらなんでも国別バスケットとかにはなりませんように。ひとつの枠でグローバルブレンディングするのが実務的。

FTCの対象となる外国法人税は税効果会計を適用する会計上の税金費用ではなく、各期実際に生じるCurrent Taxが対象となるはず。そうなるとピラー2じゃないけど、結構なタイミング差異が想定される。GILTIバスケットと異なり、FTC余剰枠やExcess Creditの繰り戻しや繰り越しが認められ、タイミング差異の弊害を最小限とすることになるんだろう。

ちなみに15%ミニマム税は元々、普通に算定される連邦法人税の超過部分だから、その意味では連邦法人税そのものもクレジット的な位置づけだよね。AMT時代にはNOLの繰り越しがAMT目的の所得の90%に制限されていたり、FTCにも同様の制限があった時代があり、単年で所得がある程度出てると、AMTの支払いが強要されるような計算式になっていた。その意味ではNOLもクレジットもGoodies扱い。これは米国の税法大枠の考え方に準拠していて、米国税法かじった者なら誰でも一度は読んだことがある最高裁判例INDOPCO等で言及されてる通り、「そもそも控除という概念自体、立法府による「特別な計らい」なのだから、その恩典享受の要件を充足している点の立証責任は納税者にある」ので、キャンディーにあり付けるかどうかは議会のお取り計らい次第というのが制度設計の原則。15%ミニマム税もFTCで全額海外源泉所得のミニマム税をゼロにすることができないような90%制限が規定されるんだろうか。GILTIや複雑怪奇なFTCのバスケット毎の枠計算やそのための各種費用配賦・按分で既にコンプライアンス対応が限界に近いけど、更に大変そうだ。

不足所得額繰り越し

税引前利益の15%が通常の法人税に満たない場合、議会の特別なお取り計らいで(苦笑)差額を将来の追加枠として繰り越すことが認められる。ピラー1下のAmount Aで「Profits Shortfalls」の繰り越しが認められるのに類似している。また、一旦支払った15%ミニマム税は、その後、通常の法人税が15%を超える課税年度に、税額控除が取れたりする予定。

15%ミニマム税の実効性

ちなみにどれだけの米国MNCが15%ミニマム税の対象となり得るんだろうか。パブリック情報だけではFTCとか算定できないので、ザックリとしか分からないけど、元財務相エコノミストでタックスプレスに多くの記事を投稿しているマーティン・サリバンの試算によると、大手100社の3社に1社は15%ミニマム税の対象になり得るそうだ。その場合、追加税収は$20B程度としている。 面白いことに、この試算だと15%ミニマム税を一番多く支払うはめになるのはウォーレン・バフェットのバークシャー。何とバークシャーだけで$3.6Bのミニマム税。オバマ時代にバフェットが富裕層への増税を提唱し、彼の名にちなんでバフェット・タックスって呼ばれてたんで、ご本人の会社は自ら進んで多額の税金を支払っているのでは、って思うのはナイーブで、以前のM&A課税のポスティングで何回か触れた通り、バークシャーは合法的にイノベーティブな手法で課税を繰り延べるのが得意。それがこの試算結果に如実に出てしまったのかもね。バークシャーは単なる投資家の位置づけだったけど、バークシャーが関与したバーガーキングのInversionはSection 367に抵触しないようなSub Kを駆使した凄いストラクチャーだったしね。ネブラスカ州を本拠地としてるのも格好いいね(なにそれ?)。オマハってあの辺だと断然都会だけど、チョッと北にドライブするとSioux Falls。自由な雰囲気みなぎるサウスダコタ州だ。西にドライブすればデンバーにつく前に美しい宿場街North Platteがあったりしていいよね。NYとかCAとかに行ったことある人は、次はぜひあちらに旅行することをお勧めします。

この$20Bの追加税収って金額を大局的な視点から眺めてみると、米国の税収のうち法人税はザックリと$300B程度だから$20Bは結構な比重。ただ、税収に占める法人税の割合は10%未満ともともと低く、個人所得税や給与税が税収の大半を占め、この2つで計$2.3T程度で90%近い。コロナ対策で本当にバイデン案が通ると、CARES Actその他の以前の施策との合計で$10Tの負担になり兼ねず、税収との比較で将来への負の遺産が拡大することになる。ちなみにTesla Inc.のマーケットキャップは現時点で約$800B。$1Tに向かって驀進中だけど、既にP/E Ratioは2,000程度。GameStop株とは事情が異なるけど、一時Short SaleしてたファンドとかはShort Squeezeで大変だったろうね。$1Tのマーケットキャップって凄いね。$20とかと違ってゼロが多すぎて計算間違ってるかもしれないけど100円換算で100兆円?日本の国家予算みたい。

3社に1社が対象というのは、法人税そのものに変更がない場合の話しで、法人税率が25%とかに引き上げられたり、GILTI負担が高くなったりすると比較対象そのものが変動するので、15%ミニマム税の活躍の場は劇的に少なくなる。15%ミニマム税にしてもバイデンの法人税ポリシーは今ひとつチグハグな感が否めない。製造活動を米国回帰させる「Made in America」ポリシー実現には、米国の税制や米国MNCがグローバルで競争力を持つというのが大前提と考えると、法人税率引き上げや15%ミニマム税は方向が逆って気もするけど。

ということでまだまだこれからだけど、次回はGILTI増税に関して。

Sunday, January 31, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(2) 法人税率引き上げ

前回は、遅ればせながら新年早々の企画と言うこともあり、政権誕生に至る米国の混沌としたポリティクスにチョッとだけ触れた。これらの出来事はタックスと一見関係ないように見えても、今後どの程度両党歩み寄りという微塵の可能性があり得るか、とか直接・間接に今後の立法プロセスに影響を持つことになる。

法人税率28%はいつから?

1月20日以降、一番多く質問されるのが「どのタイミングで連邦法人税率が28%に引き上げられる予定ですか?」というもの。法人税率28%は、GILTIの21%化や連結財務諸表の税引前利益に対する15%ミニマム税と並び、バイデン政権の選挙公約であり、タイミングに関しては、相手によって態度の豹変が激しいCNNによる手のひらを返してフレンドリー(苦笑)なインタビューで選挙前にバイデンが「私が大統領になった暁には初日に法人税を引き上げてみせます!」って宣言したことで、トランプが初日に公約のTPP脱退や壁作りを実行したように、こちらも1月に実行されるのでは、という勘違いが生じていた。

1月や2月に税率が引き上げられると、3月決算でDTAやDTLの評価も含めて新税率を取り込まないといけなくなるので、DTLがあったりするとそれだけで決算に悪影響が出る。ただ、米国の三権分立や立法プロセスを少しでもしっていれば、税率を引き上げる権限は大統領ではなく議会にあるので、実行不可能な点は直ぐに分かり、単なるレトリックだったに過ぎない。就任後、大統領令を乱発しているバイデンだけど、さすがに税率に関しては行政府に権限がないことは間違いなく、大統領府だけでは予算教書に盛り込むくらいが関の山で独自には打つ手はない。

今後の立法・審議プロセスに見る勢力図

11月3日の選挙で、下院では民主党が議席を大きく失い、改選前、30議席以上あった差が10議席に縮小している。現状の下院総議席数は435だから、民主党から5人の造反が出ると過半数が確保できなくなる。両党内とも異なるイデオロギーが混在しており、民主党内にも過激なポリシーで議席を失ったのでは、と懸念する中庸議員とそうでない派が同調できるかどうかがキー。ただ、最近の傾向としては、下院では政策内容そのものよりも、誰が法案を出したか、すなわち民主党案なのか共和党案なのか、っていう点だけで結果が決まり兼ねないので、民主党案の税率引き上げには仕方なく全員同調となる可能性もある。両党とも政策毎にきちんと審議してくれている感がないこの点は、多額の所得税を負担している一般市民の視点からのフラストレーションのひとつ。

上院は更に複雑。上院は各州2議席で、DCはその名からも分かる通り、州ではなく連邦領土なので、計100議席。ジョージア州の上院決戦で民主党が意外にも2議席確保したので、50対50でタイ。ただし、キャスティング投票権を副大統領が持つことから実質、民主党が多数党になる。上院はFilibusterという手続き上の制約から、60議席の賛同がないと法律を通すことができない。その例外は予算調整法と言われるもので、これだと過半数で立法が可能となる。だったら、予算調整法で全部やっちゃえばいいじゃん、って思うかもしてないけど、年に一回きりのジョーカーみたいな存在なのと、予算に関係する法案でないといけなかったり、歳入と歳出の均衡、等他にも尾ひれがつくプロセス。2017年のTCJAは予算調整法内で可決されている。今回も60票確保は不可能に近いと言え、予算調整法を利用して50票で可決させるしかないのではないだろう。

予算調整法を適用して多数決でOKだとしても、50対50で全体が100議席しかないので、議員一人一人の動向が法案の運命を大きく左右することになる。僕が注目しているのは、中庸な共和党議員、中でもメイン州のSusan Collins、アラスカ州のLisa Murkowski、のお馴染みワイルドカードに加え、独自の路線を歩むユタ州のMitt Romneyの動向。絶滅寸前だけど、民主党にも未だ少数の中庸上院議員がいて、Independentって感もあるウェストバージニア州のJoe Manchin、バージニア州のMark Warner (グランドファンクみたい)などがどう動くかで、50票確保の可否が決まりそう。

タイミング

予算調整法を適用することになるとタイミング感は次の通り。米国国家会計年度は10月に始まって9月に終わることから、この会計期間毎に諸々の手続きを経てひとつの法案の可決を試みる。現在、2020年10月~9月期予算調整法内の法案審議枠は未使用の状態にあるので、早速、この枠を利用することができる。ただ、Yellen財務長官や財務省租税副次官補に任命されたばかりのMark Mazurの上院承認プロセスのヒアリングの発言等を総合すると、増税の前にまずはCARES Act顔負けの$2T(Bでははない)規模の超大型コロナ対策を可決したいそうだ。結局廃案となった(というか最初から可決するつもりはなかった?)昨秋のHEROES Actの二の舞的な感じで、民主党が夢見る巨額のGoodiesが満載なんだろう。Yellen長官は元FRB議長で経済学者としてトップだけど、「今は金利が低いので借りまくって財政出動するのが賢い」って言っていた。コロナ対策で既にGDPの40%を費やした上の$2Tなんだけど、意外に軽く使っちゃえるんだね。米国のGDPって$21Tなんだけど、太っ腹というかプロの考えることは凄いね。イヨッ、新財務長官!って感じでしょうか。

となると、2021年9月期の会計年度の予算調整法枠を適用してコロナ関係の歳出法案可決を試みることになる。次の予算調整法は2021年10月~2022年9月期にかかわるものだけど、こちらの枠内で税法改正っていう流れが順当。2017年も共和党が同じアプローチで、2017年9月期の枠はオバマケア廃案に適用し、続く2018年9月期の枠を利用し、2017年12月22日にTCJAを成立させている。ちなみに、ご存じの通り、オバマケア廃案は共和党内の調整ができず失敗。傷心Paul Ryanはその後気を取り直して税制改正に活躍したけど、結局は議員を辞めてしまった。

バイデンによる税制改正は、TCJAのように抜本的なものではないので、審議に費やす時間は少なくても済むかもしれないけど、TCJAが10月からの予算調整法枠を利用して直後の12月22日に可決しているのは、奇跡的な電光石火スピード。今回は必ずもあそこまで早いタイミングになるかどうかは不明だけど、2022年になると早くも中間選挙が視野に入るし、法案は政権設立直後に可決しないとどんどん難易度が高くなるので、2022年前半に何か起こるっていうのが相場だろうか。日本企業的には、DTAやDTLを考えると2022年3月31日までに可決するかどうかで決算動向に影響が出てくるけど、何かあるとしたらその前の可能性が高い。

法人税率は本当に28%?

個人的には28%はないと思ってる。州税足すと33%とか世界一の高税率という不名誉に返り咲くし、民主党がいくら法人嫌いだって言っても、結局のところ有権者の多くは法人が雇用主だったり、法人を持っていたり、更に401(k)とか株式に投資していることも多いだろうから、必ずしも一般市民に受けるとは限らない。28%にしたことで公約達成をアピールできる反面、政府、特に両コーストの執政官Dracon、じゃなくてNewsomeやCuomo州知事による過酷なロックダウン政策でビジネスが閉鎖に追い込まれたりしている有権者の視点からはネガティブに映るリスクもある。中間選挙でのメッセージ的に、両党歩み寄りがない形の一方的な税率引き上げには民主党中庸議員にも抵抗感が残っていると思われることから、法人税率引き上げがあるとしてもせいぜい25%が限界じゃないだろうか。

次回は法人税率引き上げ以外のトピックに移るね。

Sunday, January 24, 2021

明けましておめでとうございます!バイデン政権下のタックスポリシー

大変遅くなりましたが明けましておめでとうございます!2021年のタックス・ワールドもいろいろとありそうだけど、今年もよろしくお願いします。

2020年はCARES ActでTCJAにひとひねり

2020年後半はアメリカ大統領選挙の顛末フォローや、2020年内に公表されたクロスボーダー課税がらみの財務省規則、等のキャッチアップに明け暮れてしまい、気づいたらもう1月も後半。アマデウス・モーツァルトの誕生日が目の前だ。WFHも既に一年近くなり、曜日とか過ぎていく時の感覚とか麻痺してることもあり油断してるとすぐに月日が経ってるんでビックリ。米国タックス的には、TCJAの地殻変動インパクトが続く中、2020年はさらにCARES Actっていう「ひとひねり」があったんで、これら全てを正確に適用しないといけない日本企業米国現地法人2020年3月期の申告書作成負荷は高く、いかに至難なるかはコンプライアンスに費やす所要時間が物語る。これって愚痴、それとも言い訳(?)。

大統領選挙

数日前に究極のDCインサイダーかつ生涯ポリティシャンのバイデン政権始動。アメリカ大統領選挙はいろいろあったけど、ようやく無事にバイデン政権が始動している。選挙に関しては当初いろんな報道が交錯してたけど、チョッと変わった人物が登場してきてますます「聞きしごとまこと奇し」状態となりついつい深堀りしてしまった。古文や漢文、苦手教科だったんで、用語の使い方変だったらゴメン。要はミステリアスになった、ってこと。果たしてその人物とは誰か?

その人物の話しをするには時計の針を20年ほど戻す必要がある。今は昔、2001年10月にエンロン・スキャンダルが飛び火して、Big 5会計事務所の中でも最高のReputationを誇っていたアンダーセンが倒産してしまい、その後のBig 4体制に移行して今に至っている点は業界に身を置いてなくても覚えてる方も多いだろう。アンダーセンは司法省に「起訴された段階」で上場企業の監査業務を提供できなくなり、他の訴訟もあり即倒産してしまったんだけど、その後、一審、控訴審では起訴処分に準じて有罪判決が下されたものの、4年後の2005年、最高裁判所が9対ゼロで無罪を確定している。法的になぜ無罪だったのかは「ARTHUR ANDERSEN LLP V. UNITED STATES 544 U.S. 696 (2005)」で、当時の主席判事Rehnquist(ストライプのローブ姿が懐かしいね)が端的な判決文を書いてくれているんで、興味がある方は読んでみるといい。

エンロン、アンダーセン、そしてその後のSOXは今でもBig 4会計事務所のオペレーションに大きな影響・爪痕を残しているし、その影響でデロイトを除く3社は利益相反の観点から連邦政府の指示でコンサルティング部門を手放している。デロイトもコンサルティング部門をBraxtonってリブランディングして手放すって2002年には公表したんだけど、いろいろな理由で唯一セパレーションに失敗し、それが逆に後年功を奏し、コンサルティング部門のプレゼンスでFirmが大きくなっていくことになる。万事塞翁が馬だね。

ちなみに米国の最高裁は自らの裁量によって上訴を受理するか否か決めることができるシステムになっていて、最高裁に上訴されてくる年間ザックリ5000件のうち、100件未満のケースしか受理しない。アンダーセンのケースが受理されたのは、それだけでも珍しい展開。受理された段階で、下院の判断を追随することはないだろうって大体想像できたけど、蓋を開けてみると9対ゼロの判決だったのでチョッとビックリ。最高裁の判決って大概5対4では?、ってイメージが定着してる感があるけど、実際には今日のようなハイパーポリティカルな環境下でも半分近いケースが9対ゼロらしい。いずれにしても、9対ゼロっていうことは米国司法界の最高の知見が全員一致でシロ判断したことになる。そんな最終結果ではあるんだけど、2001年にアンダーセンが消滅してしまったことや、80,000人以上が一夜にして職を失ってしまったことに変わりはない。

このアンダーセンやその後の複数の起訴、特にエンロン絡みの事件に関して、その裏事情をを実名、しかもトップ中のトップの重鎮たち、入りですっぱ抜いた本が出版されてて、僕も会計事務所に勤務し、また米国で法律に従事する立場から、興味深く読んだことがある。こんな刊行を敢行(駄洒落?)して、正義感溢れるのは分かるけど、随分と怖いもの知らずの凄い弁護士がいるんだな、程度の感想を持ったのを覚えてる。

大統領選挙の話ししてたのに、なんでエンロンやアンダーセンの昔話してんの、って思ったかもしれないけど、選挙結果の無効を主張して各州に訴えを起こした弁護士の一人が他でもない彼女だったから。え~、またこんな物議をかもすというか無謀なことして、今度こそ命は大丈夫?って思ったけど、ご本人的には何か信念あってのことなんだろうか。で、結局、最高裁判所を含む裁判所は、こんな物議をかもすこと必至の判断を委ねられてはたまんないと考えたのだろうか、実際の審理に至らぬ前に、Standing(当事者適格)やLaw School出てから実際には聞いたことがなかったLatches(出訴遅滞)とかのいわゆる法的なTechnicalityを駆使して門前払いしている。

バイデン政権の政策

で、とりあえずそんな経緯はあったとはいえ、20日に正式誕生したバイデン政権。バイデン政権の米国税務、グローバルコンセンサスや通商に対する立ち位置はどんなものだろうか。米国のポリティクスはDeepなので話し出すときりがなくて新年早々脱線気味だったけど、次回はもう少しタックスポリシーにフォーカスしてみるからよろしく!

Sunday, October 18, 2020

ピラー1・2ブループリント完成と目から鱗のUnited Nationsデジタル課税提案

ここ数週間、ネット上で「海賊版」コピーが流出していたBEPS 2.0のピラー1・2のブループリント最終版が10月8~9日のIF会議を経て正式公開された。公式バージョンも海賊版と同じで、相変わらず未解決な問題点が残っていると同時に、とてつもなく複雑な規定に仕上がった印象を受けた。次回から何回かに分けて解析しないとね。

それにしてもインターネットがあると海賊版(Bootleg)が直ぐに出回る恐ろしい世の中。ぜひ見てみたいものに瞬時にアクセスできる、っていう立場で考えると便利だけど、秘匿性の高いマターや守秘義務があるマテリアルを取り扱う者にとっては厄介。なんでもすぐにリークされ、白日の下に晒されることになるからね。

インターネットが普及してきた1990年台後半、こんなワールドワイドのネットワークがあれば、メインストリーム・メディアを迂回することができて、もう少しニュートラルな情報収集ができるようになるのかな、と考えてたことがあった。従来からのメインストリーム・メディアはジャーナリズムとは言え、基本ビジネスだから、各ネットワークや新聞がターゲットとしている視聴者プラットフォームに受けるように情報を加工(歪曲?)してあることないことをセンセーショナルに伝えるのが彼らの本業に近い。なんで、大手新聞とかで報道される記事は基本、加工済みのナラティブ、またはチョッと大げさに言えば創作に近い、くらいに考えて読んでおくのが無難。みんなも、自分が専門にしている分野の記事を新聞で読むことがあったら、偏ったViewがそれらしく記載されてるんで驚いた経験とかあるんじゃないかな。僕も、米国税務の記事とか読むと、例えば、GILTIのGILTI控除はループホールで大企業へのGoodiesみたいな記事が記載されてたりして、それはないでしょ、って思ったりするんだけど。最高裁の判決の報道の仕方も同様。

アメリカは憲法の修正条項1条(「First Amendment」)で、言論の自由が保障されている、って言われている。でもFirst Amendmentは連邦や州政府が法律を通じて宗教や言論を制限したり検閲したりすることを禁じる条項で、個人や大衆の行動に直接制限を与えるものではない。憲法で保障される権利とはいえ、無制限じゃないんで、当然判例に基づく制限やスコープ内での話しだけど、今日のアメリカで政府がFirst Amendmentを無視して変な法律を通したり、検閲を敢行するようなリスクは想定し難い。

一方、政府ではなく、一般市民の間の自主検閲というか、法律とは関係ないPeer Pressureはより強いし、自分の思想に反する言動は徹底的に糾弾・中傷する機会はインターネットの普及で逆に増えている。そんなこんなで、自由闊達に異なるViewにかかわる意見交換する環境は逆に以前より後退している感がある。

インフラとしてのインターネット、すなわちオプティカルケーブルやラウターそのものは、当然だけど、コンテンツを選んだりしない。だけど、結局一般人はサーチエンジン、Youtube、ツイッターとか大手ハイテク企業のサービスを介して情報収集・提供することになる。インターネットでは一見、どんな情報でも入手可能なように感じるけど、検索機能のアルゴリズム設定とか、特定ユーザーのビデオコンテンツをブロックしたりする裁量は、実質大手ハイテク企業が握っている。ということはハイテク企業の価値観に基づく情報・言論統制が敷かれていると同様の状況。ハイテク企業を取り巻くいろんな議論は、僕たちが気にしているデジタル・サービス課税よりも言論の自由にかかわる部分の方が国や世界への長期的なインパクトが大きい。結局、我々情報を読解する側の情報評価・識別能力がますます問われてしまう、ということだろうか。

デジタル・サービス課税(DST)

で、何の話しだったかっていうとOECDのピラー1・2のブループリント。正式に公表されたバージョンを見たら、先に海賊版で見たものと同じだったっていうことから、海賊版やインターネットの話しになったんでした。OECDのピラー1合意が緊急課題となっているのは、複数の国が「Unilateral」、すなわち一方的にデジタル取引にDSTを規定しているからだけど、このDST、大概のケースで「グロス」ベースなんで企業がネット所得を認識しているかどうかに関係なく課税が生じる。また「Unilateral」っていう用語に内包される含意は、条約の適用対象となる租税ではない、すなわちCovered Taxではないっていうことで、条約に基づく二重課税排除メカニズムが効かない。企業側から見るとネットで儲かってるかどうかにかかわらず課税されて二重課税の排除もないと単純な追加コスト。想定していたビジネスモデルに問題を引き起こす可能性がある。

でも、DSTって結局誰が負担することになるかっていう点は興味深い。結局DSTを課す国のベンダーに転嫁される可能性が高い。アマゾンの「Seller Central Website」によると英国の2%DSTやフランス、イタリーの3%DSTはSeller Feeに上乗せチャージされると規定されている。

で、制度が各国間で整合性がなく、利益があってもなくても課税が生じ、また二重課税排除メカニズムがない、っていうDSTの弊害を新たな国際法人税課税ルールを策定して解消しようというのがピラー1だ。これらの複雑な問題に対処すると同時に、多くの参加各国の思惑をできるだけ反映させようとしている間に、とてつもなく複雑な規定に仕上がってしまった感がある。OECDやG20の国ならともかく、発展途上国はピラー1や2に対応したり、執行したりできるんだろうか。

目から鱗のUN案

この前のポスティングで触れ始めたUnited Nationsのデジタル課税。その登場のタイミングが絶妙過ぎてグローバル・ポリティクスの真髄というか、大人の世界(?)を垣間見た気がした。これらの点は前回のポスティング「「デジタル課税」絶妙のタイミングでUnited Nations登場」を参照して欲しい。

United Nations案を見て驚愕するのがそのシンプリシティ。その気になれば即日実践可能な暫定措置を提案しているように見える。特にUnited Nationsが利益を代表している発展途上国にとっては、立派な規則でも実践可能か、また容易に税収に結びつくかどうか、っていう点が重要。

その意味でUnited Nationsのアプローチは世界のシステムをOvernightで変えようというような無謀な(?)なインセンティブは感じられず、いつかは5条のPEの定義にデジタルサービスを加える方向とはしながらも、当面はDSTを公認し、条約の一部に加えることで不確実性や二重課税の問題に対処しようとしている。条約が適用される租税となるので二重課税排除が可能となる。

なかなか賢いアプローチで、ピラー1にかかわる大量の検討を読んだ後だったので、目から鱗の提案だった。各国のDST対象はバラバラで多岐にわたるけど、共通ターゲットとして絞り込んでいくと要はオンライン広告が主になる。この時点で、伝統的な事業に対するデジタル課税は緊急課題ではない、っていう認識に至っているようだ。

8月5日に実際に公開されたUnited Nationsデジタル課税案はUnited Nationsモデル条約の12A条「Fee for Technical Services」の直下に、12B条「Income from Automated Digital Services」を新設している。12A条自体、ロイヤルティをカバーする12条のサブセットだけど、ロイヤルティには当たらない「Technical Services」にかかわる対価は、所得源泉地で源泉税を課してもいいという制度。PEがなくても源泉地課税を認めている点、ピラー1のAmount Aに通じる。この概念をそのまま自動化デジタルサービス(ADS)にかかわる支払い全般に適用することでスマートにDST対応しようとしている。

ADSにかかわる新設12B条そのものを語る前に、Technical Services Feeに対する源泉地課税を規定している12A条の先見性にチラッと触れておきたい。12A条は2017年にUnited Nationsのモデル条約に加えられている。12A条の追加の背景として、サービス収入はその受け手が支払い国にPEを持たない限り、受け手の居住地課税のみとなる点を指摘し、コミュニケーションテクノロジーの進化により、他国にPEを構築せずにハイエンドなサービスを提供することができるビジネスモデルには従来のPEに基づく課税は馴染まないとしている。まさしくOECDのオリジナルBEPSアクションプラン1やピラー1の論点だ。

Technical ServicesのFeeを無理やりロイヤルティと位置付けることができれば、従来の条約でも、条約レートに基づく源泉地課税が可能となる。ただ、現存のロイヤルティの定義ではTechnical Servicesに対する支払いをロイヤルティとして源泉地課税するのは無理なケースが多い。そこで12A条を規定して、ロイヤルティ同様にTechnical Servicesに対するFeeに源泉地課税を認めるというものだ。条約だから二国間で12Aを採択するかどうか交渉することができるし、また源泉税率を12条のロイヤルティと同じに設定することで、支払いをロイヤルティ部分とTechnical Services部分に区分けする必要もなくなる。条約内でグロスベースの源泉税を規定することで、利子や通常のロイヤルティに対する源泉税同様、外国税額控除を通じて二重課税を排除・軽減することが可能となる。

この背景で、さらに今回の12B条追加となる。12Aの延長・明確化措置としてTechnical Servicesにかかわる規定をADS Fee全般に適用している。12B条の設計は12A条のTechnical Servicesにかかわるものに類似していて、条約締結国が合意する%の源泉税を通じて源泉地課税が認められる。条約適用租税となることから外国税額控除を通じて二重課税の排除・軽減が可能な点も12A条と同様。

原則、支払いを行う主体が存在する国がADSの源泉地とみなされる。源泉地にPEが存在しない、または存在してもADSのFeeがPEに帰属しない、ケースが12B条が解決しようとしている問題となるので、源泉地にPEがありADS Feeが当PEに帰属する場合には、12B条の適用はなく、従来通り5条・7条でPE帰属事業所得として課税される。

12B条の規定が、12A条のTechnical Servicesにかかわる源泉税規定と大きく異なるのが、ネット申告課税の選択が設けられている点。United Nations言うところの「Qualified Profits」が申告課税対象になるんだけど、この算定法は注目に値する。すなわち、Qualified Profitsというのは、ADS Feeに多国籍企業グループの利益を乗じて、それにさらに30%を乗じた金額となる。ADSにかかわる信頼できるセグメント情報が存在する場合には、グループ全体の利益率の代わりにADSセグメントの利益率を適用することが認められる。いずれにしても、グループ利益率x30%が、ADS Fee源泉地に配賦される超過利益ということになる。OECDが苦労しているAmount Aの「Quantum」に相当する金額だ。簡単に30%とバッサリ決めてくれている。元々何の理論的な裏付けもないんだから、逆に30%とか決めてしまうのが正解かもね。ピラー1との比較で行くと、ピラー1は多国籍企業グループの利益が一定の利益率を超過する部分だけを参照し、さらにそこの上澄み何%かをAmount Aを通じた配賦対象利益としている。12B条ではこのような若干まどろっこしい感のあるステップは踏まずに、単純に利益の30%をグロスのADS Feeに乗じて配賦対象利益としている。良くも悪くも30%っていう数字は超過利益認定の試金石になってしまったね。

さすが発展途上国の声を代表してきたUnited Nationsの提案だけあって、シンプルだし、かつ市場国からしていると即源泉地課税できるっていうメリットがある。ということで、舞台も整ったのので次回はピラー1ブループリント。