OBBBA規模感
OBBBAの可決から1か月強。法文自体膨大で減税規模は歴史に残る規模なんだけど、1986年や2017年の税制改正と比べて、それほどインパクトの実感がない。そんな認識の原因は、OBBBAのかなりの部分が2017年のTCJAで規定された減税やクロスボーダー課税の2025年末自動失効・税率引き上げを「回避」し「恒久化」を実現したっていう性格にあるんだろう。すなわち、実際に失効や税率引き上げに至ってしまった後に救世主のようにOBBBAが登場して減税等を復活・恒久化したとしたら「これ凄いね!」って感じられただろうけど、そんな体験しないまま現状が維持されたんで実感が伴わない。
制度的にも、例えば法人と株主間の取引を規定するSub C(M&Aやストラクチャリング含む)に大きなインパクトを与えた1986年税制改正や、クロスボーダー課税のあり方を根本的に書き換えた2017年TCJAと異なり、OBBBA大枠は2017年以降の制度を踏襲しているんで、2018年以降の学習・プラニング効果はそのまま役立つ部分が多く新たに学習しないといけない法律は比較的少ない。
2017年TCJA可決後当時を振り返ってみると、米国MNC、投資銀行、ファンドスポンサー、アドバイザーは制定から2年程度でGILTI、FDII、BEAT、245A、困難になったInversion等の法体系を徹底研究、財務省の時に気の利いた(GILTIのHigh Tax Exclusionとか)そして時に堅苦しい(GILTI FTCのExpense allocationやPortfolio Interest Exemption適用にかかわるCFC認定時のDownward Attribution適用とか)規則やガイダンス等が出る度にプラニングをFine Tuneしながら複雑極まりない新制度を完全にマスターしたもんね。TCJAのクロスボーダー課税は新制度にもかかわらず旧条文を全取り換えするんじゃなくて、当時の既存の条文にOverlayしたんでより複雑かつ時には矛盾がある取り扱いとなることが多かった。OBBBAではM&A時のCFC所得合算タイミング等に関して8年の月日を経てようやく一定の再整理に漕ぎつけている。
そんな過程を経て裏表を知り尽くした制度に対するTweak部分が多いOBBBAは、マスターするための学習期間は自ずと短く、一方でメリット最大限化は複数条文の「組み合わせ」方に掛かるケースが多いんで、即座に定量モデリング的なプラニングに入りつつある感じがする。支払利息の損金算入、広範な即時償却、R&D支出の費用化、輸出促進として実質拡充されたFDDEI、その他のいろんなGoodiesが規定されるけど、条文間の相互干渉が激しく、さらに法人税外の検討、例えば関税とか、も加味するのが最重要課題の今日、各条文のどんな組み合わせが最も適してるかを複数検討の上、戦略意思決定する必要がある。関税や地政学は予測不能なんでモデリングは必然的に複数のシナリオを用意することになり、普段、税務室に限定されがちな税務プラニングは企業全体の課題となる。
OBBBAは何て呼ぶ?
税法に登場するAcronym(アルファベットの略)をどう読むかっていうのは最初いろんな派が乱立し、その後徐々に法曹界、投資銀行、ファンドスポンサーとかの集まり、特にそこに参加する財務省やIRS高官がどんな風に呼ぶかで何となく統一されていくことが多い。2017年TCJA時はGILTIやBEATは最初から「ギルティ」「ビート」だったけど、FDIIは最初の頃はBay City RollersのSaturday Nightみたいに(古過ぎ~。しってる?タータンチェックのScotland出身バンド)「エス・エイ・ティー・ユー・アール・ディ・エイ・ワイ」、じゃなくて「エフ・ディ・アイ・アイ」って表現されることが多かった。「フィデイ」とか「フィダイ」とか言う人もいたけど最終的には「フィディ」に落ち着いていた。2022年のIRAで姿を変えて再導入されたCorporate Alternative Minimum Tax、CAMTも「シィ・エム・ティ・ティ」派、法律事務所は当時CAMTが会計Bookベースなんで結構な人が「ビィ・エム・ティ」ってそもそもCAMTには含まれてないBを使っていた。でも結局最後は「キャムティ」に統一されていった。ただクロスボーダー課税の「FDAP」みたいに未だに「フダップ」派と「エフ・ダップ」派が拮抗し続けてる用語もあるけどね。
OBBBAに関して、まず肝心のOBBBAそのものだけど、Bを3つ連呼して「オー・ビー・ビー・ビー」または「オー・ビー・ビー・ビー・エイ」ってフルスペリングするのはチョッとギコチないし、間違えてOBBBBAとか勢いに乗ってひとつ余分なBを付けちゃったりすることもあり得て、現状では結構なケースで「オー・ビー・スリー」(Bが3つなのでスリー)って言う人が多い。これだと言いやすいね!
GILTIがRetireしてNCTIになるけど結構なケースで「ネクタイ」って言われている。個人的には法案時から「ネクティ」が可愛いいんでこっちを使ってて、実際にネクティって呼んでくれてる(?)人たちも居て今後の動向が楽しみ。ネクティに落ち着きますように。ただ、今のところ8年間慣れ親しんだGILTIが自然に出てきちゃうんで「今日は仮にGILTIって使っときます」みたいなDisclaimerしてGILTIで通してるケースも多い。いつまでDisclaimerし続けられるでしょうか。
せっかく「フィディ」が確立してたFDIIもRetireしてFDDEIになるけど、これは手ごわい。何となく「フダイ」とか「フデイ」的な表現が多いけどどっちもゴロが悪いね。
関税と法人税
関税は相変わらず紆余曲折。何となくUniversalのベースラインは15%辺りで落ち着きつつあるけど、なんか気に入らないことがあると急に「だったらプラス50。更に倍」とかなり兼ねないんで油断大敵。
関税プラニングは当然、法人税にもインパクトがあり得るんで、ここ数か月議論が尽きない関税対策時にTPやBEATを含む法人税の観点とのすり合わせする機会が増大。関連者からの輸入だとTPと表裏一体の関係にあるけど、米国MNCも含めて米国への輸入は関連者間取引が実に多くの比率を占めてるんだなって実感。統計取った訳じゃないし、職業柄関連者間取引ばっかり目に入ってくる傾向があり、実際には中国から個人輸入とかもあるんだろうけど、米国MNC含めて実に多くのクロスボーダー取引が国外関連者からのものなんだなって改めて認識。
グローバルトレードのReorderは数か月の一時的な混乱ではなく長期的に向かい合わないといけないっていう現実が身に染みてきた今、各社根本的な世界戦略の緊急見直し中。関税の影響は業種や各社のOperating Model次第で様々だけど、過去8年FDII・GILTI導入の影響もありIPを米国に移管したり新たなIPを米国に配置したところは、結果として比較的対処が容易な気がする。こんな通商環境になるとは誰も考えてなかっただろうから塞翁が馬だけどね。
IPの米国移管はGILTIとFDIIの導入でそれなりに実行され、その意味でGILTIとFDIIの主目的は達成された感はある。Global 「Intangible」 Low-Taxed Income(GILTI)もForeign Derived 「Intangible」 Income (FDII)も双方ともその名の通り主たるフォーカスは米国外にあるIPの米国帰還だったからだ。ここにきてGILTIとFDIIが各々NCTIとFDDEIに生まれ変わり、「Intangible」っていうフォーカスがなくなったことで両制度はどちらかと言うと輸出やライセンスを含む米国企業海外向けビジネスの助成制度の性格が強くなったと言える。FDDEIは日本企業の米国現地法人にとって適用可能性が格段に上がっているんで税率14%って考えると活用を再検討する価値は十分にある。ってことで次回はFDDEIかな。
Saturday, August 9, 2025
Thursday, July 3, 2025
「Magic」Johnson再び。下院も上院法案を可決。OBBBAは「4th of July」に法制化
う~ん、上院のVanceのCasting Voteに至る共和党リーダーシップ、特に上院WhipのJohn Barrasso (R-WY)による票固めも見事だったけど、上院可決後僅か2日後の7月3日にあれだけ揉めそうな下院で両院Conferenceを経由せず上院バージョンそのままで可決させたMike “Magic” Johnsonそして共和党下院WhipのTom Emmer (R-MN)の手腕は予想を上回った。もちろん両院共に彼らの背後には強力な影響力を誇るトランプが居るからだけど、「2024年11月米国選挙結果と米国税制」で僅か半年前はOne-Trackの大型法案を夏までに通すのは至難の業って思われてたけど、トランプ言う通り「One Bill」で7月4日の独立記念日に署名に漕ぎつけた。今年の7月4日からの一年は米国建国250年目に当たり、明日の署名は普段にも増してホワイトハウスがShow-Upさせるだろうね。史上最年少でWhite House Press Secretaryに抜擢された才女のKaroline Leavittのプレス会見は普段でもレガシーメディアと相当テンションが高いけど、明日は最高潮に達するかもね。One Billはそれだけでなく税制以外にも米国社会に大きな影響を持つ国境警備、国防、エナジー、社会政策、等に広範な影響を与える「Big Bill」でもあり、これだけの規模の法案をこのスピードで可決に導いたのは驚異的だ。「One」「Big」Beautiful Billっていうのはこんな由来だからね。Beautifulかどうかは「Beauty」の性格から見る者の主観次第。
最終的にどんな税制?
紆余曲折あったんで最終的にどんな形に収まったかもう一回7月1日の上院法案を見直す必要があるけど、例の899は入ってないからね。安心した?
個々の規定は今後掘り下げるとしてBullet的に法人税周りを超ハイレベルに触れておくと次の通り。
クロスボーダー課税
まずTCJAで一変したクロスボーダー課税は若干のTweakがあるけど大枠ストラクチャーは現状維持。TCJAではGILTIとFDIIが対で導入されたけど(前からしつこく言ってるけどOECDがやったみたいにこの2つを分離して取り扱ってはいけない。TCJAの趣旨が理解されていない証拠)、GILTI控除は50%が40%に引き下げられ(控除なんで低い方が不利)、GILTIバスケットのFTC制限が80%から90%に緩和されたんでGILTI理論税率は14%に(従来は13.125%でOBBBAの改正がなければ16.4%になるところでした)。
FDII控除は37.5%から33.35%に引き下げ。結果FDIIの理論税率は14%(こちらも従来は13.125%でOBBBAの改正がなければ16.4%になるところでした)。全部GILTIと一緒じゃんって思った人がいたらその通り。この2つは対で導入されてるんで当然ミラーイメージ。米国外向けビジネス(IP保有含む)の課税関係を米国からやっても国外からやっても変わらない状態として、収益の上がるIP保有や国外事業を低税率CFCから行うっていうBase Erosion的な行動規範を変えさせるためのもの。さらにBEAT導入で米国内事業のBase Erosionにも対応していた。GILTIがGlobal BlendingなのはFDIIは米国で一本の計算だからミラーイメージ的に当然。Race to the bottomに一矢報いる等の観点はない。「Global BlendingだからきちんとしたGlobalミニマム税には当たらない」とか「FDIIは弊害税制」とか双方をバラバラにみて「対」で考えないと頓珍漢な扱いになる。
双方共に(対なんで)みなしルーティン所得に当たる償却有形資産の10%(QBAI)が撤廃された。結果としてGILTIはCFCのTested Income全体を合算することになる。GILTIはGlobal Intangible Low-Taxed Incomeだったけど、みなしルーティン所得が撤廃されてしまったんで「Intangible Income」への課税とは言えなくなって単に「Net CFC tested income」と改名。FDIIも同様にIntangibleっていう要素がなくなったんで「Foreign-derived deduction eligible income」に改名。GILTIの方はGILTYに聞こえるんで(元々それが理由で洒落で命名したはず)Connotationが悪く改名したいって思ってた議員が居たそうだ。
次にBEATだけど、14%だのBase Erosion %が2%引き下げとか18.9%のHigh-Tax Exceptionとか全部お蔵入りになって単にBEATミニマム税率が10.5%にセコめの引き上げ。OBBBAがなかったら使用できなくなってたR&Dクレジット、Low Income Housingやエネジークレジットの80%も温存。GILTIやFDIIに倣って名称変更してBEATの代わりに「Slow Jam」になった。っていうのは冗談で内容全然変わんないんでBEATはBEAT。
Downward Attribution不適用復活
Out-of-Underプラニングに網を掛ける狭義な目的でTCJAで規定されたCFC判断時のDownward Attribution適用。実際には超Overbroadで広範に予期せぬ影響とかがあったけど、ようやく元通りCFC判断時にDownward Attributionの不適用が8年ぶりに復活した。あれから8年か~。お疲れさまでしたって感じ。その代わり元々の立法趣旨を反映した「Foreign Controlled United States Shareholder」規定が新規に導入された。
取り合えずはクロスボーダー課税の大物はこんな感じでした。次回は米国内事業に関するハイライト。
最終的にどんな税制?
紆余曲折あったんで最終的にどんな形に収まったかもう一回7月1日の上院法案を見直す必要があるけど、例の899は入ってないからね。安心した?
個々の規定は今後掘り下げるとしてBullet的に法人税周りを超ハイレベルに触れておくと次の通り。
クロスボーダー課税
まずTCJAで一変したクロスボーダー課税は若干のTweakがあるけど大枠ストラクチャーは現状維持。TCJAではGILTIとFDIIが対で導入されたけど(前からしつこく言ってるけどOECDがやったみたいにこの2つを分離して取り扱ってはいけない。TCJAの趣旨が理解されていない証拠)、GILTI控除は50%が40%に引き下げられ(控除なんで低い方が不利)、GILTIバスケットのFTC制限が80%から90%に緩和されたんでGILTI理論税率は14%に(従来は13.125%でOBBBAの改正がなければ16.4%になるところでした)。
FDII控除は37.5%から33.35%に引き下げ。結果FDIIの理論税率は14%(こちらも従来は13.125%でOBBBAの改正がなければ16.4%になるところでした)。全部GILTIと一緒じゃんって思った人がいたらその通り。この2つは対で導入されてるんで当然ミラーイメージ。米国外向けビジネス(IP保有含む)の課税関係を米国からやっても国外からやっても変わらない状態として、収益の上がるIP保有や国外事業を低税率CFCから行うっていうBase Erosion的な行動規範を変えさせるためのもの。さらにBEAT導入で米国内事業のBase Erosionにも対応していた。GILTIがGlobal BlendingなのはFDIIは米国で一本の計算だからミラーイメージ的に当然。Race to the bottomに一矢報いる等の観点はない。「Global BlendingだからきちんとしたGlobalミニマム税には当たらない」とか「FDIIは弊害税制」とか双方をバラバラにみて「対」で考えないと頓珍漢な扱いになる。
双方共に(対なんで)みなしルーティン所得に当たる償却有形資産の10%(QBAI)が撤廃された。結果としてGILTIはCFCのTested Income全体を合算することになる。GILTIはGlobal Intangible Low-Taxed Incomeだったけど、みなしルーティン所得が撤廃されてしまったんで「Intangible Income」への課税とは言えなくなって単に「Net CFC tested income」と改名。FDIIも同様にIntangibleっていう要素がなくなったんで「Foreign-derived deduction eligible income」に改名。GILTIの方はGILTYに聞こえるんで(元々それが理由で洒落で命名したはず)Connotationが悪く改名したいって思ってた議員が居たそうだ。
次にBEATだけど、14%だのBase Erosion %が2%引き下げとか18.9%のHigh-Tax Exceptionとか全部お蔵入りになって単にBEATミニマム税率が10.5%にセコめの引き上げ。OBBBAがなかったら使用できなくなってたR&Dクレジット、Low Income Housingやエネジークレジットの80%も温存。GILTIやFDIIに倣って名称変更してBEATの代わりに「Slow Jam」になった。っていうのは冗談で内容全然変わんないんでBEATはBEAT。
Downward Attribution不適用復活
Out-of-Underプラニングに網を掛ける狭義な目的でTCJAで規定されたCFC判断時のDownward Attribution適用。実際には超Overbroadで広範に予期せぬ影響とかがあったけど、ようやく元通りCFC判断時にDownward Attributionの不適用が8年ぶりに復活した。あれから8年か~。お疲れさまでしたって感じ。その代わり元々の立法趣旨を反映した「Foreign Controlled United States Shareholder」規定が新規に導入された。
取り合えずはクロスボーダー課税の大物はこんな感じでした。次回は米国内事業に関するハイライト。
Sunday, June 29, 2025
上院法案改訂バージョン公開・上院Procedural Vote可決・G7 声明
上院Procedural Vote通過
土曜日にFinance Committeeの税法部分を含むMega-Bill上院アップデートバージョンが公開された。時を同じくしてG-7が米国にはピラー2を適用しないっていう旨の声明を出した。そして先ほど上院のProcedural Voteは51対49で通過している。このProcedural Voteっていうのは未だ交渉が続く中でのテスト投票みたいな位置づけに過ぎないけど、トランプを含む共和党リーダーシップによる党内調整の成果が上がっていることを示す。共和党上院議員の反対は2名。ここ数日のRon Johnsonとトランプの交渉結果Johnsonは賛成票を投じたけど、Thom Tillis(R-NC)とRand Paul(R-KY)が反対。大物のMedicaid問題は未だに交渉中で最終投票まで予断を許さない状況。夜を徹した審議の後、月曜日に決議って言うのが最速。トランプはThom TillisにカンカンでPrimary Challengeの気配。
上院法案改訂版では899勇退
Bessent長官の要請を受けて土曜日に公開された上院法案アップデートバージョンからは899は消えている。1月20日の大統領令、同時899下院法案提出、Mega-Billの一部として元々別法案だったSuper-BEATを合体させて登場、上院法案でも温存、米国内ではWall Streetタイプ以外からはサポートが多く米国Chamber of Commerceって日頃硬派だけど米国の主権、米国企業を域外課税から守るっていう政権・議会の気概・決意を高く評価、等の経緯でいよいよ可決前夜となり899の攻撃力が最高潮に達していた。覆いかぶさるように英国、EU、カナダ等の企業側からのプレッシャーも大きくなり耐え切れずOECDはピラー2は米国企業には適用なしに同意、G-7も同様の旨の声明を出す。イエレン長官の時は議会とコーディネーションゼロだったけど、今回の流れは行政府と議会が一枚岩で対処し、米国的には「国家主権侵害」っていう神学的に(?)許容できないGlobal Tax Deal、特にUTPR、の米国企業への適用を覆した。899は可決以前に大効果を発揮してデビュー前に勇退。
チョッと不思議なG-7声明
G-7の声明は米国財務省が主張していたSide-by-Sideアプローチを是認するっていうことだけど「US Parented Group」にピラー2適用がないって書いてあるんで、インバウンド企業の米国所得に対してはその親会社国でIIR適用があり得るんだろうか。財務省のアプローチは米国が課税する所得にピラー2は触ってはいけないっていうスタンスだったはず?
とは言え本丸は米国企業だろうから、少なくともそこにはSide-by-Sideでピラー2の適用ナシっていう点は合意済み事項。声明に記載されているその判断に至る理由は米国財務省の主張通り。すなわち意訳・要約すると「米国の制度とピラー2を分析検討した結果、米国の制度はピラー2と同格に強固で、Inclusive FrameworkによるBEPS対策のここまでの進展を守るためSide-by-Side(米国は米国ってことでピラー2には干渉されないアプローチ)がベストだという共通認識に至った…」云々って感じかな。もしそれが分析なんだったら今までの話しはなんだったの~って感じはする。
米国の制度はいつから何をもってピラー2と同格に?
米国のBase Erosion対策って1932年の元祖Anti-Deferralのsection 367(興味あったら昔のKiller B特集読んでみてね)、1962年のSub F(元祖CFC合算課税)、2017年のGILTI・BEATとか常に主権国家としてまた自国市民に説明責任がある議員たちの立法っていう範囲で先端を行ってるんでこの分析結果自体に驚きはないけど、でもこれらの「同格に強固な」米国の制度はピラー2議論開始時点で既に存在してた。この点に関して「上院法案をもってして同格に至った(?) 」とも取れる興味深い文言が合意声明に含まれてるけど、GILTIやFDIIからQBAI(みなしルーティン所得)の適用が消えた点やGILTIバスケットのFTC枠計算時に金利を配賦しなくても良くなる、みたいな調整で急に同格になったんだろうか。増してや未だ法案の状態で数週間前までは同格に強固じゃなかったけど上院法案で立派に成長したっていうニュアンスだとしたらこれもチョッと不思議だ。この部分は法案が可決したらもう少し考えてみたい。
結局のところピラー2の目的は?
そこで感じざるを得ないのは、以前から何回かポスティングで触れたと思うけど、元々ピラー2って目的が必ずしも明確じゃなくて、そのため強固なPrinciple・規律に裏付けされたルールじゃないっていう点がルールが結構派手に二転三転する根本的な問題っていう点。ピラー2で何を守ろうとしてるのかが分からないんでそのベストな手段を定義するのが難しい。今回簡単に米国不適用に至った終焉もそれを象徴してる。何年か前のポスティングだったと思うけど、この手の国際合意系の話しは結局のところ大国のパワープレー(中国に至っては言葉ではサポートを繰り返しながら実質無視に近かった?)っていう点に触れたけど、最後までそんな実態がFull Displayだったね。ただPragmaticな解決としては逆にこれしかないだろうから合意判断はポリティカルには合理的だし高い評価に値する。
さらに考えてしまうのはPEやALPの守護神だったOECDがUTPRがExtraterritorialじゃないとか条約に準拠しているとか本当に信じてたとは想像し難く、いくらBEPS 2.0でTaxing Rightsを再配分するつもりだったとしても親会社の所得を形式的に子会社の手で課税するって言うだけで急に所得のBenefical Ownerが子会社になる訳ではないし、そんな所得移転が可能だったら実態基準(Substance over form)とかの概念を自ら否定してることになる。これらはクロスボーダー課税にDeepに精通してなくても簡単に理解できる矛盾で、OECDはクロスボーダー課税のExpertだろうから実はいざとなったら法的にディフェンスは難しいっていう認識が根底にあったとしてもおかしくない。そうなるとUTPRは国際課税制度の強固な概念に裏付けされた規則ではなく、国際合意として「赤信号みんなで渡れば…」(一時流行ったね、これ)みたいなアプローチになってた感じもあったよね。
チョッと意地悪な見方でピラー2の「目的」変遷をおさらいすると、EU憲章の関係でEU内で強固なCFC課税導入が難しく、アイルランドとかハンガリーみたいな低税率国が存在していたEUがOECDと「Global Tax Deal」をマスカレードして自己都合でミニマム税導入を希望(これはもちろん公にそう言って登場してきた訳じゃないんで推測の域は出ない)。当初、米国があんまり相手にしなくて一旦暗礁に乗り上げてたところに2021年にバイデン政権が発足して、米国法人税28%に引き上げを実行するに当り他国との競争が不利にならないようイエレン長官がOECDに「21%!」のピラー2ミニマム税を提案。これも単純な自己都合。交渉は息を吹き替えすけど、米国では結局議会の同意を得られず頓挫…。迷惑~。
国際合意に付き物のこんな感じのパワープレーで事は進んでいき、知らない間にUndertaxed Payment Rule(元祖Undertaxed Payment Ruleだったら米国でも未だ議論の余地はあっただろう)が同じ頭文字だけど別物のUTPRにすり替わってたり不透明なルール策定があったりしたけど、その間、対外的なキャッチフレーズ的にピラー2の目的は「Race to the bottom終止符(Tax competition禁止)」(結局別の形のCompetitonが出現)とか、「Level Playing Field(最後まで誰と誰のFieldの話し?っていうのが不明確)」とか、これらと似てるOverarchingなテーマ「Fair Share」(Fairnessは見る者で尺度が異なるんで基準が良く分からず単に美徳にアピール?)とかもあった。
主目的っていう観点から考えるとピラー2は「BEPS」っていうフレームワークでの話しだから当然Base ErosionやProfit Shiftingを取り締まるのが主たる目的なはず。でも不思議と、特に後年、ピラー2のこの視点・目的はあんまり強調されなくなってたって言うかルールが対応困難なほど複雑化していく中で機械的な話しが主になり「木を見て森が見えなくなっていった」気がする。「クレジットは還付可能だったら云々とか、現金譲渡はOKだけど20年繰越はNGとか…」。Base Erosion取り締まるんだったら「真犯人」の米国を取り締まらないと話しにならないと思うけど、土曜日のG7声明では「米国独自のシステムは十分にピラー2に同格」で「Side-by-SideでBEPSの目的達成」っていうこと。え~米国に適用なしのグローバルのBase Erosion対策???。っていうことはこの目的は結局のところ当初から2次的だったのかもね。
まあEU的にはEU内で導入できたからそれはそれでその部分の目的達成っていうことなんだろうか。米国企業は今回の合意で凄いアドバンテージを得たんで他国は不利になるんではとか、大げさな話しでは「米国企業にInversionするのがいい(苦笑)」みたいな話し(プラニング?)が早くもチラホラ聞かれるけど、米国のBase Erosion対策が同格だったら心配ないのでは?
OECD合意やG7声明は誰に適用?
G7声明等で更に不思議に思ったのは7か国に関しては当事者でCongress制度の米国以外のメンバーはParliamentary制度だろうからそこで合意すれば法的にそうなるって決まってるのかもしれないけど、Inclusive Frameworkとかどうしちゃったんだろうか。140(だっけ?)国のコンセンサスを得てできた制度だとしたら、この声明を寝耳に水的に聞いた多くの国はどうしたらいいんだろうか。EUだけ見ても27か国のほとんどはG7じゃないんで899なくなったんで企業はうれしいとしても、G7 以外の各国政府は急に「米国は対象じゃないことにしたんでよろしく」って言われてチョッと釈然としないものもあるのでは?
釈然としない位だったらいいかもしれないけど、本当に全員従うんだろうか。「やっぱり27か国の意見調整ができなかったんで米国にも適用せざるを得ない」みたいな話しって可能性ないのかな。その頃は米国に899はない。となると伝家の宝刀891?いきなりその日から付加税ダブルで配当源泉60%(一旦条約は無視と仮定)とかなると「これだったら899が恋しい~」とか言っても後の祭り。でも、このタイミングで899撤回して、それで合意実行しない国が出てきたらそれらの国が合意時にコンセンサスを表明していようがしてなかろうが今度こそ容赦ない感じはあるよね。891は891で条約との関係とかテクニカルには難しいチャレンジが多いけどね。
DSTは?
米国が主権国家として一番許せなかった敵はUTPRだから、合意が実行される前提だと899の導入目的は達成かもしれないけど、ピラー2との比較でターゲットとしてはジュニアなDST対処はどうなっちゃうんだろうか。数日前の報道ではDSTも撤回合意があり得るような報道もあったけど、間が悪いことに899撤回と同時にカナダはDST敢行発表。トランプはカンカンでBessent長官は301(出た~!)で通商対抗も辞さないって。891の話しは未だ聞いてないけど通商だけなのかな。まあDSTってチョッと関税チックだからそれでいいのかもね。
New-New-BEAT
Super-BEATがなくなってNew-BEATだけで安心って思ってたらまたしても逆転劇でNew-New-BEAT登場(Micheal LewisのNew-New Thing思い出すね。シリコンバレーのJim Clarkの話し(Netscape!))。上院法案読んでてビックリだったけど、BEAT税率は14から下がって10.5%なのはいいとして、後はマイナーなテクニカル修正ばかり。え~「High-Tax Exception」が見当たらない。何コレ~。ってことでまた変わるかもしれないから週末は更なる法案修正に注目しましょう。
土曜日にFinance Committeeの税法部分を含むMega-Bill上院アップデートバージョンが公開された。時を同じくしてG-7が米国にはピラー2を適用しないっていう旨の声明を出した。そして先ほど上院のProcedural Voteは51対49で通過している。このProcedural Voteっていうのは未だ交渉が続く中でのテスト投票みたいな位置づけに過ぎないけど、トランプを含む共和党リーダーシップによる党内調整の成果が上がっていることを示す。共和党上院議員の反対は2名。ここ数日のRon Johnsonとトランプの交渉結果Johnsonは賛成票を投じたけど、Thom Tillis(R-NC)とRand Paul(R-KY)が反対。大物のMedicaid問題は未だに交渉中で最終投票まで予断を許さない状況。夜を徹した審議の後、月曜日に決議って言うのが最速。トランプはThom TillisにカンカンでPrimary Challengeの気配。
上院法案改訂版では899勇退
Bessent長官の要請を受けて土曜日に公開された上院法案アップデートバージョンからは899は消えている。1月20日の大統領令、同時899下院法案提出、Mega-Billの一部として元々別法案だったSuper-BEATを合体させて登場、上院法案でも温存、米国内ではWall Streetタイプ以外からはサポートが多く米国Chamber of Commerceって日頃硬派だけど米国の主権、米国企業を域外課税から守るっていう政権・議会の気概・決意を高く評価、等の経緯でいよいよ可決前夜となり899の攻撃力が最高潮に達していた。覆いかぶさるように英国、EU、カナダ等の企業側からのプレッシャーも大きくなり耐え切れずOECDはピラー2は米国企業には適用なしに同意、G-7も同様の旨の声明を出す。イエレン長官の時は議会とコーディネーションゼロだったけど、今回の流れは行政府と議会が一枚岩で対処し、米国的には「国家主権侵害」っていう神学的に(?)許容できないGlobal Tax Deal、特にUTPR、の米国企業への適用を覆した。899は可決以前に大効果を発揮してデビュー前に勇退。
チョッと不思議なG-7声明
G-7の声明は米国財務省が主張していたSide-by-Sideアプローチを是認するっていうことだけど「US Parented Group」にピラー2適用がないって書いてあるんで、インバウンド企業の米国所得に対してはその親会社国でIIR適用があり得るんだろうか。財務省のアプローチは米国が課税する所得にピラー2は触ってはいけないっていうスタンスだったはず?
とは言え本丸は米国企業だろうから、少なくともそこにはSide-by-Sideでピラー2の適用ナシっていう点は合意済み事項。声明に記載されているその判断に至る理由は米国財務省の主張通り。すなわち意訳・要約すると「米国の制度とピラー2を分析検討した結果、米国の制度はピラー2と同格に強固で、Inclusive FrameworkによるBEPS対策のここまでの進展を守るためSide-by-Side(米国は米国ってことでピラー2には干渉されないアプローチ)がベストだという共通認識に至った…」云々って感じかな。もしそれが分析なんだったら今までの話しはなんだったの~って感じはする。
米国の制度はいつから何をもってピラー2と同格に?
米国のBase Erosion対策って1932年の元祖Anti-Deferralのsection 367(興味あったら昔のKiller B特集読んでみてね)、1962年のSub F(元祖CFC合算課税)、2017年のGILTI・BEATとか常に主権国家としてまた自国市民に説明責任がある議員たちの立法っていう範囲で先端を行ってるんでこの分析結果自体に驚きはないけど、でもこれらの「同格に強固な」米国の制度はピラー2議論開始時点で既に存在してた。この点に関して「上院法案をもってして同格に至った(?) 」とも取れる興味深い文言が合意声明に含まれてるけど、GILTIやFDIIからQBAI(みなしルーティン所得)の適用が消えた点やGILTIバスケットのFTC枠計算時に金利を配賦しなくても良くなる、みたいな調整で急に同格になったんだろうか。増してや未だ法案の状態で数週間前までは同格に強固じゃなかったけど上院法案で立派に成長したっていうニュアンスだとしたらこれもチョッと不思議だ。この部分は法案が可決したらもう少し考えてみたい。
結局のところピラー2の目的は?
そこで感じざるを得ないのは、以前から何回かポスティングで触れたと思うけど、元々ピラー2って目的が必ずしも明確じゃなくて、そのため強固なPrinciple・規律に裏付けされたルールじゃないっていう点がルールが結構派手に二転三転する根本的な問題っていう点。ピラー2で何を守ろうとしてるのかが分からないんでそのベストな手段を定義するのが難しい。今回簡単に米国不適用に至った終焉もそれを象徴してる。何年か前のポスティングだったと思うけど、この手の国際合意系の話しは結局のところ大国のパワープレー(中国に至っては言葉ではサポートを繰り返しながら実質無視に近かった?)っていう点に触れたけど、最後までそんな実態がFull Displayだったね。ただPragmaticな解決としては逆にこれしかないだろうから合意判断はポリティカルには合理的だし高い評価に値する。
さらに考えてしまうのはPEやALPの守護神だったOECDがUTPRがExtraterritorialじゃないとか条約に準拠しているとか本当に信じてたとは想像し難く、いくらBEPS 2.0でTaxing Rightsを再配分するつもりだったとしても親会社の所得を形式的に子会社の手で課税するって言うだけで急に所得のBenefical Ownerが子会社になる訳ではないし、そんな所得移転が可能だったら実態基準(Substance over form)とかの概念を自ら否定してることになる。これらはクロスボーダー課税にDeepに精通してなくても簡単に理解できる矛盾で、OECDはクロスボーダー課税のExpertだろうから実はいざとなったら法的にディフェンスは難しいっていう認識が根底にあったとしてもおかしくない。そうなるとUTPRは国際課税制度の強固な概念に裏付けされた規則ではなく、国際合意として「赤信号みんなで渡れば…」(一時流行ったね、これ)みたいなアプローチになってた感じもあったよね。
チョッと意地悪な見方でピラー2の「目的」変遷をおさらいすると、EU憲章の関係でEU内で強固なCFC課税導入が難しく、アイルランドとかハンガリーみたいな低税率国が存在していたEUがOECDと「Global Tax Deal」をマスカレードして自己都合でミニマム税導入を希望(これはもちろん公にそう言って登場してきた訳じゃないんで推測の域は出ない)。当初、米国があんまり相手にしなくて一旦暗礁に乗り上げてたところに2021年にバイデン政権が発足して、米国法人税28%に引き上げを実行するに当り他国との競争が不利にならないようイエレン長官がOECDに「21%!」のピラー2ミニマム税を提案。これも単純な自己都合。交渉は息を吹き替えすけど、米国では結局議会の同意を得られず頓挫…。迷惑~。
国際合意に付き物のこんな感じのパワープレーで事は進んでいき、知らない間にUndertaxed Payment Rule(元祖Undertaxed Payment Ruleだったら米国でも未だ議論の余地はあっただろう)が同じ頭文字だけど別物のUTPRにすり替わってたり不透明なルール策定があったりしたけど、その間、対外的なキャッチフレーズ的にピラー2の目的は「Race to the bottom終止符(Tax competition禁止)」(結局別の形のCompetitonが出現)とか、「Level Playing Field(最後まで誰と誰のFieldの話し?っていうのが不明確)」とか、これらと似てるOverarchingなテーマ「Fair Share」(Fairnessは見る者で尺度が異なるんで基準が良く分からず単に美徳にアピール?)とかもあった。
主目的っていう観点から考えるとピラー2は「BEPS」っていうフレームワークでの話しだから当然Base ErosionやProfit Shiftingを取り締まるのが主たる目的なはず。でも不思議と、特に後年、ピラー2のこの視点・目的はあんまり強調されなくなってたって言うかルールが対応困難なほど複雑化していく中で機械的な話しが主になり「木を見て森が見えなくなっていった」気がする。「クレジットは還付可能だったら云々とか、現金譲渡はOKだけど20年繰越はNGとか…」。Base Erosion取り締まるんだったら「真犯人」の米国を取り締まらないと話しにならないと思うけど、土曜日のG7声明では「米国独自のシステムは十分にピラー2に同格」で「Side-by-SideでBEPSの目的達成」っていうこと。え~米国に適用なしのグローバルのBase Erosion対策???。っていうことはこの目的は結局のところ当初から2次的だったのかもね。
まあEU的にはEU内で導入できたからそれはそれでその部分の目的達成っていうことなんだろうか。米国企業は今回の合意で凄いアドバンテージを得たんで他国は不利になるんではとか、大げさな話しでは「米国企業にInversionするのがいい(苦笑)」みたいな話し(プラニング?)が早くもチラホラ聞かれるけど、米国のBase Erosion対策が同格だったら心配ないのでは?
OECD合意やG7声明は誰に適用?
G7声明等で更に不思議に思ったのは7か国に関しては当事者でCongress制度の米国以外のメンバーはParliamentary制度だろうからそこで合意すれば法的にそうなるって決まってるのかもしれないけど、Inclusive Frameworkとかどうしちゃったんだろうか。140(だっけ?)国のコンセンサスを得てできた制度だとしたら、この声明を寝耳に水的に聞いた多くの国はどうしたらいいんだろうか。EUだけ見ても27か国のほとんどはG7じゃないんで899なくなったんで企業はうれしいとしても、G7 以外の各国政府は急に「米国は対象じゃないことにしたんでよろしく」って言われてチョッと釈然としないものもあるのでは?
釈然としない位だったらいいかもしれないけど、本当に全員従うんだろうか。「やっぱり27か国の意見調整ができなかったんで米国にも適用せざるを得ない」みたいな話しって可能性ないのかな。その頃は米国に899はない。となると伝家の宝刀891?いきなりその日から付加税ダブルで配当源泉60%(一旦条約は無視と仮定)とかなると「これだったら899が恋しい~」とか言っても後の祭り。でも、このタイミングで899撤回して、それで合意実行しない国が出てきたらそれらの国が合意時にコンセンサスを表明していようがしてなかろうが今度こそ容赦ない感じはあるよね。891は891で条約との関係とかテクニカルには難しいチャレンジが多いけどね。
DSTは?
米国が主権国家として一番許せなかった敵はUTPRだから、合意が実行される前提だと899の導入目的は達成かもしれないけど、ピラー2との比較でターゲットとしてはジュニアなDST対処はどうなっちゃうんだろうか。数日前の報道ではDSTも撤回合意があり得るような報道もあったけど、間が悪いことに899撤回と同時にカナダはDST敢行発表。トランプはカンカンでBessent長官は301(出た~!)で通商対抗も辞さないって。891の話しは未だ聞いてないけど通商だけなのかな。まあDSTってチョッと関税チックだからそれでいいのかもね。
New-New-BEAT
Super-BEATがなくなってNew-BEATだけで安心って思ってたらまたしても逆転劇でNew-New-BEAT登場(Micheal LewisのNew-New Thing思い出すね。シリコンバレーのJim Clarkの話し(Netscape!))。上院法案読んでてビックリだったけど、BEAT税率は14から下がって10.5%なのはいいとして、後はマイナーなテクニカル修正ばかり。え~「High-Tax Exception」が見当たらない。何コレ~。ってことでまた変わるかもしれないから週末は更なる法案修正に注目しましょう。
Thursday, June 26, 2025
「OECDピラー2は米国に不適用」最終合意・目標達成で899はお役御免?
昨日、財務省幹部がOECDおよび主要各国が米国の主張を聞き入れてGlobal Tax Deal米国不適用に合意するだろうっていう報道に関して触れたところだけど、さっき財務長官のScott BessentがX(昔のTwitter)で正式の合意に至ったコメントを公表した。昨日のポスティングで言うところの「Bombshell」進展。
Xのコメントによると「OECDのピラー2は米国企業には適用されない最終合意に至った。今後数週間から数か月掛けてOEDC-G20 IFと協力して当合意を実施することになる。このような歴史的な合意を実現した各国との協働・コラボに感謝する」とのこと。Michael FaulkenderやRebecca Bauchの主張から想像するに米国企業だけでなく、米国が課税対象とする所得にはピラー2の適用はあってはならないっていうのが米国のポジションだったし、Scott BessentのポストでもUTPRではなくピラー2全体が米国には適用がないと明言してるんで、UTPRばかりでなく外国法人の米国子会社にIIRの適用も認められない(通常のCFC課税はOK)ってことだろう。QDMTTは各国の勝手って考えられるけど、OECDが先導しているQDMTTが米国GILTIより優先っていうのは今後は米国と各国の交渉になる可能性がある。
更にScott Bessentは別ポストで「数か月におよぶ他国との協議の結果、米国の権利を守るためのG7共同声明を発表する。トランプ大統領が1月20日に就任と同時に発令した2つのExecutive OrdersはOECDのGlobal Tax Dealから米国の国家主権を守るよう財務省に指示したことが起点となり当合意の道を開いた。大統領のリーダーシップにより米国市民に吉報が届いた」としている。
Section 899法案は?
Section 899法案に関しては「当展開により審議中のMega-Billからsection 899を撤回するよう下院・上院に提言した。G7との当合意はグローバル経済に確実性・安定性を提供し、米国の成長・投資等を更に強化する。このような合意を可能にした(強要した?)section 899の審議にかかわる下院Ways and MeansのJason Smith委員長および上院Finance CommitteeのMike Crapo委員長の多大な努力に敬意を表したい」ということ。
現時点で下院・上院の反応はないけど、上院はByrd Bath最終フェーズでProcedural Voteが差し迫る中、Byrd審判のParliamentarianに言われていろいろな修正を入れているんでもしかしたら899撤回、または内容がソフトタッチに文言修正される可能性はある。今のところScott BessentからDSTにかかわるコメントはないけど、プレスではこっちも合意間近っていう報道もあったんで何かあるかもね。
ただ、上院法案で付加税%がUTPRだけに適用されていた点からも分かる通り、国家主権的に一番許せないと感じられていたのはUTPRだから大概において目的達成ではあるだろう。DSTの取り扱いが不明確な場合や今後も変な税法が出てこないとも限らないんでsection 891が90年間Codeに居座ってるようにsection 899も法律として残る可能性はあるけど、適用がなければそれはそれで自由にどうぞって感じだね。OECDもモデル条約やBEPS 1.0くらいまではよかったかもしれないけど、ピラー2とかどう考えてもExtraterritorialでチョッとやり過ぎだったんじゃないかな。
っていうことで取り合えずNew-BEATは触れたし、Super-BEATは深堀する前にMootな感じ。これで今晩は少し睡眠とってその後地道に上院・両院のMega-Bill動向大枠にフォーカスします!
Xのコメントによると「OECDのピラー2は米国企業には適用されない最終合意に至った。今後数週間から数か月掛けてOEDC-G20 IFと協力して当合意を実施することになる。このような歴史的な合意を実現した各国との協働・コラボに感謝する」とのこと。Michael FaulkenderやRebecca Bauchの主張から想像するに米国企業だけでなく、米国が課税対象とする所得にはピラー2の適用はあってはならないっていうのが米国のポジションだったし、Scott BessentのポストでもUTPRではなくピラー2全体が米国には適用がないと明言してるんで、UTPRばかりでなく外国法人の米国子会社にIIRの適用も認められない(通常のCFC課税はOK)ってことだろう。QDMTTは各国の勝手って考えられるけど、OECDが先導しているQDMTTが米国GILTIより優先っていうのは今後は米国と各国の交渉になる可能性がある。
更にScott Bessentは別ポストで「数か月におよぶ他国との協議の結果、米国の権利を守るためのG7共同声明を発表する。トランプ大統領が1月20日に就任と同時に発令した2つのExecutive OrdersはOECDのGlobal Tax Dealから米国の国家主権を守るよう財務省に指示したことが起点となり当合意の道を開いた。大統領のリーダーシップにより米国市民に吉報が届いた」としている。
Section 899法案は?
Section 899法案に関しては「当展開により審議中のMega-Billからsection 899を撤回するよう下院・上院に提言した。G7との当合意はグローバル経済に確実性・安定性を提供し、米国の成長・投資等を更に強化する。このような合意を可能にした(強要した?)section 899の審議にかかわる下院Ways and MeansのJason Smith委員長および上院Finance CommitteeのMike Crapo委員長の多大な努力に敬意を表したい」ということ。
現時点で下院・上院の反応はないけど、上院はByrd Bath最終フェーズでProcedural Voteが差し迫る中、Byrd審判のParliamentarianに言われていろいろな修正を入れているんでもしかしたら899撤回、または内容がソフトタッチに文言修正される可能性はある。今のところScott BessentからDSTにかかわるコメントはないけど、プレスではこっちも合意間近っていう報道もあったんで何かあるかもね。
ただ、上院法案で付加税%がUTPRだけに適用されていた点からも分かる通り、国家主権的に一番許せないと感じられていたのはUTPRだから大概において目的達成ではあるだろう。DSTの取り扱いが不明確な場合や今後も変な税法が出てこないとも限らないんでsection 891が90年間Codeに居座ってるようにsection 899も法律として残る可能性はあるけど、適用がなければそれはそれで自由にどうぞって感じだね。OECDもモデル条約やBEPS 1.0くらいまではよかったかもしれないけど、ピラー2とかどう考えてもExtraterritorialでチョッとやり過ぎだったんじゃないかな。
っていうことで取り合えずNew-BEATは触れたし、Super-BEATは深堀する前にMootな感じ。これで今晩は少し睡眠とってその後地道に上院・両院のMega-Bill動向大枠にフォーカスします!
Wednesday, June 25, 2025
OECD米国の要請聞き入れ準備?
前回のポスティングで触れたBBBを積んだB2 Bomberが太平洋方面に発射したっていうのはオトリで実は本当のB2はその名の通りStealthに逆方向の東に向かっていた。往復30時間空で給油しながらイラン山奥に爆弾落として見つからずに返還。イラン山奥の核施設攻撃ってTom CruseのTop Gun 2の話しそのもの。Top Gun 2の撮影は米国軍が特別に相当な期間に亘り指導や協力したって話しで、ジェット(映画ではB-2 Bomberじゃなかったよね)に撮影用のEquipment積んだり相当Realっていうことだったけど、まさかストーリーそのものがRealになるとは…。しかも映画と異なり敢行されたのは新月に近い闇の中だったっていうことだから凄まじい作戦。まさにOperation Midnight Hammer。作戦完了までリークがゼロだったのも驚き。
NYCではSocialistの候補が民主党Primaryで市長候補に選ばれた。対戦相手の元NY州知事Cuomoに対するRebukeになるけど、要は一般市民のCuomoのようなPolitical Classに対する不満・不信感の表れって感じがする。NYC民主党市長候補は超Leftでトランプ政権とは真逆だけど、Establishmentに対する不信感っていう部分はなんか似てるよね。まだGeneral Electionで決まった訳じゃないけど、既にフロリダやテキサスに引っ越す企業や人がまたしても増えるのではって言われている。
で、話しは本題に入るけど、899の可決が濃厚になりUKやEuroのビジネス界が「テクニカルな話しは何でもいいから899の適用がないような制度に変えること」っていう要請が強まってる点は前々回触れた。企業だけでなく米国財務省からも強い要請があり、またDe-fundリスクの影響もあってなのか分からないけど、OECDは米国の言う通りにするっていう流れになっているって財務副長官Michael Faulkenderのインタビューでコメントしたという報道。内容は分からないけど財務省の要請は米国の所得にUTPRどころかピラー2の適用はしないことっていうものだったからOECDがそれを正式にルール化するっていうことなんだろうか。そして各国が追従?また欧州各国はDSTも撤回するっていう噂も同時に報道されている。近日中にBombshell(?)発表があるかもね。その場合899が仮に可決されても適用対象がない状況になるかも。さらに言えばOECDやDST国が撤回を確約する場合には899自体不要論も出てくるかも。まあ899あっても適用なければ実害はないし、将来変な税制が出てこないとも限らないんで法律として持っておくのは米国的にはダウンサイドはないしWall Streetタイプの懸念も当面ない。Mega-Bill上院審議前夜に凄い展開。財務省も負けずにStealthだね。
NYCではSocialistの候補が民主党Primaryで市長候補に選ばれた。対戦相手の元NY州知事Cuomoに対するRebukeになるけど、要は一般市民のCuomoのようなPolitical Classに対する不満・不信感の表れって感じがする。NYC民主党市長候補は超Leftでトランプ政権とは真逆だけど、Establishmentに対する不信感っていう部分はなんか似てるよね。まだGeneral Electionで決まった訳じゃないけど、既にフロリダやテキサスに引っ越す企業や人がまたしても増えるのではって言われている。
で、話しは本題に入るけど、899の可決が濃厚になりUKやEuroのビジネス界が「テクニカルな話しは何でもいいから899の適用がないような制度に変えること」っていう要請が強まってる点は前々回触れた。企業だけでなく米国財務省からも強い要請があり、またDe-fundリスクの影響もあってなのか分からないけど、OECDは米国の言う通りにするっていう流れになっているって財務副長官Michael Faulkenderのインタビューでコメントしたという報道。内容は分からないけど財務省の要請は米国の所得にUTPRどころかピラー2の適用はしないことっていうものだったからOECDがそれを正式にルール化するっていうことなんだろうか。そして各国が追従?また欧州各国はDSTも撤回するっていう噂も同時に報道されている。近日中にBombshell(?)発表があるかもね。その場合899が仮に可決されても適用対象がない状況になるかも。さらに言えばOECDやDST国が撤回を確約する場合には899自体不要論も出てくるかも。まあ899あっても適用なければ実害はないし、将来変な税制が出てこないとも限らないんで法律として持っておくのは米国的にはダウンサイドはないしWall Streetタイプの懸念も当面ない。Mega-Bill上院審議前夜に凄い展開。財務省も負けずにStealthだね。
Saturday, June 21, 2025
上院法案「New」BEATと「Super」 BEAT (2)/891も再浮上
Mega-Billは広範囲な分野を全て取り込んだ1‐Track法案 としては1月当初に予想されてたよりも相当早いスピードでここまで漕ぎつきた。このスピード達成の背景・チャレンジ、下院と上院のインセンティブの差異その他、選挙結果が判明した去年の11月直後に「2024年11月米国選挙結果と米国税制 (3) 「予算調整法2回どう使い分ける?(2)」およびその前の2回のポスティングで詳細に触れてるんで議会動向を理解するためぜひ復習(?)しておいて欲しい。
ちなみにもう一つのBBBは世界中のBloggerとかが米国の軍資材の移動を刻々と追って多くのレポートがあるけど、BBBを搭載しているB2 BomberがMissouriの基地から太平洋経由で移動を開始するっていう話し。実際にFardowを攻撃するかどうかは未定とのこと。B2 Bomberってレーダーに感知されないエイみたいな形した「Stealth」爆撃機のはずでどこに居るか分かっちゃいけないはずなんだけどどうやって分かるんだろうね。ちなみにMissouriに格納されているのはStealthなんで空調が良く効いた大きなハンガーに待機してる必要があるからなんだって。
う~ん、あんまりエスカレートさせたり米国が関与すると中国やロシアとかも黙ってないだろうし、バイデン政権下で不法に米国に入ってきた1,000万人の中にはイランの反米グループが含まれてても分かんないって話しで米国、特にNYC、はテロに巻き込まれるリスク大っていうことで地下鉄に乗るのを控える人とかが出てきて身近な生活にも影響が出てきてる。夏の間はSouth DakotaのBlack Hillsにでも疎開してStarlinkでInternet Connectionして過ごす?
Section 891も再浮上
一点上院法案のsection 899を語る際に下院法案との比較で特筆に値いする点にsection 891の再浮上がある。Section 891に関しては1月20日政権発足と同時に発令された大統領令で触れられてたんで2月の「「Global Tax Deal」対抗・報復措置」で簡単に内容を説明してるからそちらもぜひ参照して欲しい。
この期に及んでsection 891の議論が息を吹き返してるのは上院法案section 899にsection 891とのコーディネーション規定が盛り込まれてるのがひとつの理由。この部分は後日、独自のポスティングでカバーしたいけど、メッセージとしては既に(90年も…)法律として存在するsection 891は仮にsection 899がなくても独立して、しかも議会が何もしないでも大統領の裁量でトリガーする用意があるってことだろう。Section 891はそれはそれで適用には条約との関係を含むテクニカルな問題・チャレンジはあるとしてもBack-Stop的には怖い。
「上院はsection 899の適用1年延長とか付加税CAPを15%にしたりしてくれて優しいね」的なSweet Dreamsを見てる外国企業がいるとしたらその観測は甘い。下院法案の付加税・Super-BEATの使用にお墨付きを与えた上で適用を現実的に調整し、更にsection 891の適用も辞さないっていう構成はむしろ冷徹(?)で怖い気がする。Sweat dreams are made of this(Eurythmics!)だね。人類の本能的なDesireやHappiness。最近の世の中みてると昔のPop Songsの歌詞って結構言い当ててるのが多いなっていう発見が多い。多分最近の曲もいい歌詞あるんだろうけど、残念ながら聴く量が少ないんで個人的な馴染みが少なく理解が追い付いてないです。昔の歌詞がいい当ててるって、つまり人は変わんないね~ってことだよね。
Global Tax Dealで各国の選挙とか民意と直接関係なく世界中の税制をUniversalにRule、そして逆らう国の所得は親会社の所得でも子会社レベルで懲罰課税(UTPR!)っていうのはTears for Fearsの「Everybody Wants to Rule the World」の域かもね(大げさ?)。でもこれからの世の中、特に各国市民個人のチョイスや自由を真剣に考える場合、たかが(されど?)タックスくらいの世界で終わればいいけど、権力っていうのはそのNatureから必ず(英語で言うところの)1インチ許すと1マイル譲歩することになるんで、次々とドミノ式に権力が拡大される(これは歴史が証明している人間のサガと言え、個人レベルで自己中心的かどうかっていう話しを超えた単純な現実?)。そうなると主権国家単位の選挙とか民意は余り意味がなくなり、グローバルリーダークラスがトップダウンでグローバルレベルでポリシーやルールを決めることになる。この流れは特に2016年以降Brexitやトランプ1.0を受けて顕著になったコンセンサスベースの統治アプローチで、従来の民主主義(基本的に一般Peopleの民意ベース、いわばPopulism?)と異なるもの。どっちが長期的に世界のためにいいかは個人的には分からないしグローバルリーダーには各分野のExpertが多いだろうから各々のアプローチにプロ・コンがあると思うけど、この点がまさしく2024年の米国選挙のファンダメンタルな争点で、少なくとも2024年の段階では一般PeopleはPopulism的にMAGAをサポートした結果になっている。
なぜこの点を繰り返し書くかって言うと、米国のこのマクロ背景が分からないと、米国が(政権発足初日に)Global Tax Dealに強硬な反対表明、VPバンスによる2月のMunich Security Conferenceにおける演説、イロンマスクが巨額の私財を投じたX(元ツイッター)買収、とかの一連の流れが直観的にコネクトしないんじゃないかなって思われる点。特に米国外からレガシーメディアを通じて米国を見てるとあんまり伝ってないかなって思うことが多い。ポリサイは僕の専門外なんで読者のみなさんには他のソースで多様な視点を取り入れて各々で考えて欲しいけど、米国の生活を通じた肌感覚ベースの観測。今後の動向を観測したり米国に891や899系のアプローチする際、少なくとも米国の反発はピラー2のテクニカルな問題以上っていう点は理解しておく必要がある。
Section 891に関しては、昨日、Council on Foreign RelationsっていうイベントでMichael Faulkender財務副長官が「(審議中の)899ばかりでなく891の適用可能性」も示唆した上「891を使うか899を使うかはさておき、米国税法(今回の税制改正以前のSub F、GILTI、BEAT等)のBase Erosion対策はピラー2と同様な強固水準にある(したがってこれ以上、米国所得にピラー2を適用は不要)っていう認識をOECDが持つ必要がある点は明確に伝えている」と発言したと報道されている。敢えてSection 891に言及しているのはタイミングがタイミングだけに上院法案と行政府のコーディネート的に興味深いよね。
上院法案New-BEAT
で、Section 899上院バージョンの付加税・Super-BEATっていう2つの対抗策のうち、一旦付加税はまあまあカバーしたつもり。とは言えsection 899とFIRPTA源泉とかはかなり複雑だから一旦落ち着いたら(いつ?)更なる詳細に触れるね。これは元々FIRPTA(Substantiveな課税規定)およびFIRPTA源泉規則(徴収メカニズム)が込み入ってるところに、更に複雑なsection 899をOverlay(「上塗り」とでも訳す?)するデザインなので仕方がない。
Overlayって言えばsection 899のもう一方の対抗策に当たるSuper-BEATも通常BEATのOverlayだけど、下院法案時点では通常BEATは2025年までの現状BEATと同じだったんでOverlayによる差異を話せばそれで済んだところ、上院法案では通常BEATもNew-BEATに生まれ変わったんでまずはそちらを良く理解しないと「Super」の話しに至らない。ってことでNew-BEATの話しをし始めたのが前回。BEATミニマム税率アップ、クレジット使用温存、そして概念的にはMake Senseするけど導入された点は歳入Scoeringの観点からチョッとビックリのHigh-Tax Exceptionに触れた。
支払利息の資産計上
上院法案では通常のBEAT適用時の「Base Erosion Payment」の定義をアップデートしてる。BEATミニマム税を語る際の「Base Erosion Payment」の正確な位置づけが分かんないと定義の重要性が伝わり難いんでBEATミニマム税のベーシックを復習しておく。
上院法案New-BEATにしても従来の元祖BEATにしても基本的な構成は同じ。すなわちBEAT用に計算されるBEAT課税所得にBEAT税率(今は10%)を掛けてR&Dクレジット、一定要件下でLow-income housingおよびエネジークレジットの80%をマイナスした税額が暫定BEAT税額(FTCでマイナスすることはできない。これはBEAT導入当時租税条約違反ではと指摘されていたデザイン)。これと通常法人税(FTCを含む全てのクレジット後)を比較して暫定BEAT税額が高ければ超過額がミニマム税になるという仕組み。
BEAT課税所得は通常の「課税所得」に「Base Erosion Tax Benefit」および「(通常法人税計算時に繰越NOLを使用している場合は)使用したNOLに占める(NOLを生み出した課税年度の)Base Erosion %相当額」双方を加算した金額。この定義の一つの副産物はスターティングポイントが通常の課税所得なんでゼロ未満(すなわちマイナス)にはなり得ないって点。例えば単年課税所得が100で(80%制限前の)繰越NOLが1,000ある場合、BEAT課税所得を算定する際の加算はゼロからステートする。マイナス900ではない。一方、過年度からの繰越NOLを適用する前の段階で単年課税所得がマイナス900の場合、スターティングポイントはマイナス900だ。この点はBEAT導入当初は異なる解釈もあり得たけど、AMTと異なりパラレルに所得を別計算するのではなくBEATはあくまで加算計算ってことで最終規則でもその旨が確認され今では当たり前の計算として定着してる(当時の議論懐かしいね)。したがって、過去NOLでその後プラスに転じた課税年度はBEAT抵触の確率が上がる。
Base Erosion Tax BenefitはBase Erosion Paymentのうち該当課税年度でDeductionに計上されている(またはReinsuranceやInversion企業のCOGSとかに関してはReductionに計上されている)金額でBase Erosion Paymentに基づく償却を含む。Base Erosion %は該当課税年度のBase Erosion Tax Benefit/Deduction総額(プラスReductionがBase Erosion Tax Benefitになっている場合はその金額もプラス)」。
Base Erosion Paymentは外国関連者への支出のうちDeductionになる性格のもの、償却資産(有形・無形を問わず)取得対価、Reinsurance(これはDeductionではなくReductionなので追加規定が必要)、そしてInversion企業のCOGS等(COGSもReductionなのでReinsurance同様追加規定が必要)。
これを見て分かる通りBase Erosion Tax BenefitとBase Erosion PaymentはかなりCloseな概念。Base Erosion Paymentは支出がBEAT課税所得の加算項目かどうかの性格付け、Base Erosion Tax Benefitはその上でどの課税年度に加算するかっていう「タイミング」Issueって考えると分かり易い。またBase Erosion PaymentおよびBase Erosion Tax Benefitには各々例外その他の追加規定がある。
で、上院法案のNew-BEATだけど、Base Erosion Paymentの定義に支払利息にかかわる新たな規則を追加している。具体的には米国外関連者に対する支払利息が資産計上されていても(Deductionしているケース同様に)Base Erosion Paymentにするというもの。ただし当新規規定有無にかかわらず従来からBase Erosion Paymentに該当する支出および資産計上が税法上強制されるsection 263(g)(Straddle取引にかかわる支払利息資産計上規定)および section 263A(f)(一定要件を満たす長期工事資産建設ファイナンスにかかわる支払利息資産計上規定)は例外。ボトムライン的には税法に強制される訳ではなく納税者の選択で支払利息を資産計上してもDeductionしたケース同様にBase Erosion Paymentになるっていうこと。Base Erosion Tax BenefitやBase Erosion %の定義もこのBase Erosion Paymentにかかわる定義改訂とシンクロされている。Inversion企業やReinsuranceを除き原則Base Erosion PaymentやBase Erosion Tax Benefitが「Deduction項目」に限定されるっていう点は後述のSuper-BEATにも大きく関係する概念になる。
BEAT適用対象法人
New-BEATでは適用対象法人の判断法も厳格化している。従来は1)RIC、REIT、S-Corp以外のCorporation(米国内外問わず)、2)過去3年間平均Gross Receiptが$500M以上、そして3)Base Erosion %が3%以上(銀行および証券ディーラーは2%以上)っていうものだった。このうち3のBase Erosion %を全員一律で2%に引き下げている。え~せっかく苦心して2.99%にしてたのに~!って嘆きたくなるかもしれないけどSuper-BEATはもっと怖い。
っていうことでNew-BEATだけでカメさんのスピードみたいだったけど次回からはNew-BEATを受けての上院法案section 899のSuper-BEAT。
ちなみにもう一つのBBBは世界中のBloggerとかが米国の軍資材の移動を刻々と追って多くのレポートがあるけど、BBBを搭載しているB2 BomberがMissouriの基地から太平洋経由で移動を開始するっていう話し。実際にFardowを攻撃するかどうかは未定とのこと。B2 Bomberってレーダーに感知されないエイみたいな形した「Stealth」爆撃機のはずでどこに居るか分かっちゃいけないはずなんだけどどうやって分かるんだろうね。ちなみにMissouriに格納されているのはStealthなんで空調が良く効いた大きなハンガーに待機してる必要があるからなんだって。
う~ん、あんまりエスカレートさせたり米国が関与すると中国やロシアとかも黙ってないだろうし、バイデン政権下で不法に米国に入ってきた1,000万人の中にはイランの反米グループが含まれてても分かんないって話しで米国、特にNYC、はテロに巻き込まれるリスク大っていうことで地下鉄に乗るのを控える人とかが出てきて身近な生活にも影響が出てきてる。夏の間はSouth DakotaのBlack Hillsにでも疎開してStarlinkでInternet Connectionして過ごす?
Section 891も再浮上
一点上院法案のsection 899を語る際に下院法案との比較で特筆に値いする点にsection 891の再浮上がある。Section 891に関しては1月20日政権発足と同時に発令された大統領令で触れられてたんで2月の「「Global Tax Deal」対抗・報復措置」で簡単に内容を説明してるからそちらもぜひ参照して欲しい。
この期に及んでsection 891の議論が息を吹き返してるのは上院法案section 899にsection 891とのコーディネーション規定が盛り込まれてるのがひとつの理由。この部分は後日、独自のポスティングでカバーしたいけど、メッセージとしては既に(90年も…)法律として存在するsection 891は仮にsection 899がなくても独立して、しかも議会が何もしないでも大統領の裁量でトリガーする用意があるってことだろう。Section 891はそれはそれで適用には条約との関係を含むテクニカルな問題・チャレンジはあるとしてもBack-Stop的には怖い。
「上院はsection 899の適用1年延長とか付加税CAPを15%にしたりしてくれて優しいね」的なSweet Dreamsを見てる外国企業がいるとしたらその観測は甘い。下院法案の付加税・Super-BEATの使用にお墨付きを与えた上で適用を現実的に調整し、更にsection 891の適用も辞さないっていう構成はむしろ冷徹(?)で怖い気がする。Sweat dreams are made of this(Eurythmics!)だね。人類の本能的なDesireやHappiness。最近の世の中みてると昔のPop Songsの歌詞って結構言い当ててるのが多いなっていう発見が多い。多分最近の曲もいい歌詞あるんだろうけど、残念ながら聴く量が少ないんで個人的な馴染みが少なく理解が追い付いてないです。昔の歌詞がいい当ててるって、つまり人は変わんないね~ってことだよね。
Global Tax Dealで各国の選挙とか民意と直接関係なく世界中の税制をUniversalにRule、そして逆らう国の所得は親会社の所得でも子会社レベルで懲罰課税(UTPR!)っていうのはTears for Fearsの「Everybody Wants to Rule the World」の域かもね(大げさ?)。でもこれからの世の中、特に各国市民個人のチョイスや自由を真剣に考える場合、たかが(されど?)タックスくらいの世界で終わればいいけど、権力っていうのはそのNatureから必ず(英語で言うところの)1インチ許すと1マイル譲歩することになるんで、次々とドミノ式に権力が拡大される(これは歴史が証明している人間のサガと言え、個人レベルで自己中心的かどうかっていう話しを超えた単純な現実?)。そうなると主権国家単位の選挙とか民意は余り意味がなくなり、グローバルリーダークラスがトップダウンでグローバルレベルでポリシーやルールを決めることになる。この流れは特に2016年以降Brexitやトランプ1.0を受けて顕著になったコンセンサスベースの統治アプローチで、従来の民主主義(基本的に一般Peopleの民意ベース、いわばPopulism?)と異なるもの。どっちが長期的に世界のためにいいかは個人的には分からないしグローバルリーダーには各分野のExpertが多いだろうから各々のアプローチにプロ・コンがあると思うけど、この点がまさしく2024年の米国選挙のファンダメンタルな争点で、少なくとも2024年の段階では一般PeopleはPopulism的にMAGAをサポートした結果になっている。
なぜこの点を繰り返し書くかって言うと、米国のこのマクロ背景が分からないと、米国が(政権発足初日に)Global Tax Dealに強硬な反対表明、VPバンスによる2月のMunich Security Conferenceにおける演説、イロンマスクが巨額の私財を投じたX(元ツイッター)買収、とかの一連の流れが直観的にコネクトしないんじゃないかなって思われる点。特に米国外からレガシーメディアを通じて米国を見てるとあんまり伝ってないかなって思うことが多い。ポリサイは僕の専門外なんで読者のみなさんには他のソースで多様な視点を取り入れて各々で考えて欲しいけど、米国の生活を通じた肌感覚ベースの観測。今後の動向を観測したり米国に891や899系のアプローチする際、少なくとも米国の反発はピラー2のテクニカルな問題以上っていう点は理解しておく必要がある。
Section 891に関しては、昨日、Council on Foreign RelationsっていうイベントでMichael Faulkender財務副長官が「(審議中の)899ばかりでなく891の適用可能性」も示唆した上「891を使うか899を使うかはさておき、米国税法(今回の税制改正以前のSub F、GILTI、BEAT等)のBase Erosion対策はピラー2と同様な強固水準にある(したがってこれ以上、米国所得にピラー2を適用は不要)っていう認識をOECDが持つ必要がある点は明確に伝えている」と発言したと報道されている。敢えてSection 891に言及しているのはタイミングがタイミングだけに上院法案と行政府のコーディネート的に興味深いよね。
上院法案New-BEAT
で、Section 899上院バージョンの付加税・Super-BEATっていう2つの対抗策のうち、一旦付加税はまあまあカバーしたつもり。とは言えsection 899とFIRPTA源泉とかはかなり複雑だから一旦落ち着いたら(いつ?)更なる詳細に触れるね。これは元々FIRPTA(Substantiveな課税規定)およびFIRPTA源泉規則(徴収メカニズム)が込み入ってるところに、更に複雑なsection 899をOverlay(「上塗り」とでも訳す?)するデザインなので仕方がない。
Overlayって言えばsection 899のもう一方の対抗策に当たるSuper-BEATも通常BEATのOverlayだけど、下院法案時点では通常BEATは2025年までの現状BEATと同じだったんでOverlayによる差異を話せばそれで済んだところ、上院法案では通常BEATもNew-BEATに生まれ変わったんでまずはそちらを良く理解しないと「Super」の話しに至らない。ってことでNew-BEATの話しをし始めたのが前回。BEATミニマム税率アップ、クレジット使用温存、そして概念的にはMake Senseするけど導入された点は歳入Scoeringの観点からチョッとビックリのHigh-Tax Exceptionに触れた。
支払利息の資産計上
上院法案では通常のBEAT適用時の「Base Erosion Payment」の定義をアップデートしてる。BEATミニマム税を語る際の「Base Erosion Payment」の正確な位置づけが分かんないと定義の重要性が伝わり難いんでBEATミニマム税のベーシックを復習しておく。
上院法案New-BEATにしても従来の元祖BEATにしても基本的な構成は同じ。すなわちBEAT用に計算されるBEAT課税所得にBEAT税率(今は10%)を掛けてR&Dクレジット、一定要件下でLow-income housingおよびエネジークレジットの80%をマイナスした税額が暫定BEAT税額(FTCでマイナスすることはできない。これはBEAT導入当時租税条約違反ではと指摘されていたデザイン)。これと通常法人税(FTCを含む全てのクレジット後)を比較して暫定BEAT税額が高ければ超過額がミニマム税になるという仕組み。
BEAT課税所得は通常の「課税所得」に「Base Erosion Tax Benefit」および「(通常法人税計算時に繰越NOLを使用している場合は)使用したNOLに占める(NOLを生み出した課税年度の)Base Erosion %相当額」双方を加算した金額。この定義の一つの副産物はスターティングポイントが通常の課税所得なんでゼロ未満(すなわちマイナス)にはなり得ないって点。例えば単年課税所得が100で(80%制限前の)繰越NOLが1,000ある場合、BEAT課税所得を算定する際の加算はゼロからステートする。マイナス900ではない。一方、過年度からの繰越NOLを適用する前の段階で単年課税所得がマイナス900の場合、スターティングポイントはマイナス900だ。この点はBEAT導入当初は異なる解釈もあり得たけど、AMTと異なりパラレルに所得を別計算するのではなくBEATはあくまで加算計算ってことで最終規則でもその旨が確認され今では当たり前の計算として定着してる(当時の議論懐かしいね)。したがって、過去NOLでその後プラスに転じた課税年度はBEAT抵触の確率が上がる。
Base Erosion Tax BenefitはBase Erosion Paymentのうち該当課税年度でDeductionに計上されている(またはReinsuranceやInversion企業のCOGSとかに関してはReductionに計上されている)金額でBase Erosion Paymentに基づく償却を含む。Base Erosion %は該当課税年度のBase Erosion Tax Benefit/Deduction総額(プラスReductionがBase Erosion Tax Benefitになっている場合はその金額もプラス)」。
Base Erosion Paymentは外国関連者への支出のうちDeductionになる性格のもの、償却資産(有形・無形を問わず)取得対価、Reinsurance(これはDeductionではなくReductionなので追加規定が必要)、そしてInversion企業のCOGS等(COGSもReductionなのでReinsurance同様追加規定が必要)。
これを見て分かる通りBase Erosion Tax BenefitとBase Erosion PaymentはかなりCloseな概念。Base Erosion Paymentは支出がBEAT課税所得の加算項目かどうかの性格付け、Base Erosion Tax Benefitはその上でどの課税年度に加算するかっていう「タイミング」Issueって考えると分かり易い。またBase Erosion PaymentおよびBase Erosion Tax Benefitには各々例外その他の追加規定がある。
で、上院法案のNew-BEATだけど、Base Erosion Paymentの定義に支払利息にかかわる新たな規則を追加している。具体的には米国外関連者に対する支払利息が資産計上されていても(Deductionしているケース同様に)Base Erosion Paymentにするというもの。ただし当新規規定有無にかかわらず従来からBase Erosion Paymentに該当する支出および資産計上が税法上強制されるsection 263(g)(Straddle取引にかかわる支払利息資産計上規定)および section 263A(f)(一定要件を満たす長期工事資産建設ファイナンスにかかわる支払利息資産計上規定)は例外。ボトムライン的には税法に強制される訳ではなく納税者の選択で支払利息を資産計上してもDeductionしたケース同様にBase Erosion Paymentになるっていうこと。Base Erosion Tax BenefitやBase Erosion %の定義もこのBase Erosion Paymentにかかわる定義改訂とシンクロされている。Inversion企業やReinsuranceを除き原則Base Erosion PaymentやBase Erosion Tax Benefitが「Deduction項目」に限定されるっていう点は後述のSuper-BEATにも大きく関係する概念になる。
BEAT適用対象法人
New-BEATでは適用対象法人の判断法も厳格化している。従来は1)RIC、REIT、S-Corp以外のCorporation(米国内外問わず)、2)過去3年間平均Gross Receiptが$500M以上、そして3)Base Erosion %が3%以上(銀行および証券ディーラーは2%以上)っていうものだった。このうち3のBase Erosion %を全員一律で2%に引き下げている。え~せっかく苦心して2.99%にしてたのに~!って嘆きたくなるかもしれないけどSuper-BEATはもっと怖い。
っていうことでNew-BEATだけでカメさんのスピードみたいだったけど次回からはNew-BEATを受けての上院法案section 899のSuper-BEAT。
Friday, June 20, 2025
上院法案「New」BEATとsection 899「Super」 BEAT
前回のポスティングではMega-Bill上院法案が公開された直後の米国BBB動向、そして時間切れになる前に激しさを増すロビー活動に触れた。今日はいよいよsection 899の付加税と並ぶもうひとつの対抗策にあたる「Super-BEAT」に触れたいけど、実は上院法案は「Super」じゃない「元祖」通常BEATそのものに結構な改訂を加えてるんで、まずはBrand-Newの通常BEATの話しをしないとSuperに至らない。ということでNew BEATから入るけどその前にMega-Bill動向。
上院Byrd Rule審判「Byrd Bath」
John Thuneは来週にも手続き的なProcedure Voteを敢行し、その直後に本会議投票に漕ぎつけるっていう超Aggressiveなタイムラインを今でも目指してるみたいだけど、その際に避けて通ることができないのが上院ParliamentarianのElizabeth MacDonoughによるByrd Rule審判。Mega-Billに盛り込まれている規定が予算調整法、すなわち60票の代わりに過半数で通すことが許されるScopeかっていう審判を受けないといけない。具体的には大概において野党側の民主党が「これはScope外」で訴えて与党の共和党は「Scope内」で防衛し、Parliamentarianが審判を下すような手続き。法案をByrd Ruleで洗うみたいなんでポリティクスの世界では「Byrd Bath」って言う。鳥が行水してるみたいで可愛いけど実際は闘争的な手続きだ。
Mega-BillはFinance Committee管轄以外のCommitteeの法案も多く含むんで、Byrd Bathはそれら全てが対象になる。既に金融系CommitteeのCFPB(Consumer Financial Protection Bureau)の予算ゼロ化、また監査法人を監督するSEC傘下のPCAOB撤廃、がByrd Ruleに抵触するって判断されたよう。Byrd Ruleに抵触するってことは予算調整法の一部として可決できないってことだけど、60票の賛成があればByrd Ruleを克服することができる。
共和党が一番怖いのはBudget Windowのコストを「Current Policy Baseline」を使って判断することがNGとなること。Current Policy Baselineっていうのは今適用しているTCJAの規則を延長しても追加コストにはならないはずっていう主張に基づくコスト計算。これが認められないとTCJAが2026年以降失効した状態との比較でコストを計算することになり多額のコストを認識しないといけなくなる。もちろん実際の歳入・歳出はCurrent Policy Baselineだろうが通常のBaseline だろうが同じだけど予算調整法の見せ方のギミックとしては重要なポイントだ。この点は余りに重要なんで以前から水面下で交渉を重ねてきてると考えるのが自然だけど最終結果は不明。
Section 899は一旦お墨付きを得てるけど、Byrd Bathで再度審査の対象となる可能性はあるね。
米国外ロビー活動
米国外の納税者によるsection 899のロビー活動はScott Bessent長官が「自分の国の政府に差別的課税を取り下げるよう働きかけるのが筋」って主張してる点は前回のポスティングで触れたけど、カナダ(DSTだけがPer Se Unfair Foreign Taxなんで被害は相対的に軽い)に続き、EUの企業団体はEUに「テクニカルな議論はどうでもいいからsection 899の適用がないよう税法を変えること」っていうプレッシャーを強化しているという報道。
また英国ではFTSE100社が自国の財務省に「何でもいいからsection 899が英国企業に適用されないよう対応すること」っていう要請をしたという話しも報道されている。英国企業は「米国撤退は単純にオプションではない」とした上で何もせずにsection 899適用開始になると米国オペレーションに過激なリストラクチャリング(米国企業にインバージョン??)、を敢行しないといけなくなるし、目先の対応としてはグループ内DebtファイナンスをEquityに変えて配当を控える程度に限られる...とのこと。また「せっかくBrexitしてEUじゃないんだからそのメリットを活かして主権を発揮して独自に対応を率先して検討・策定するよう」働きかけたという話しだ。
New BEATは税率引き上げ
New BEATミニマム税率はナンと14%。これはSuper-BEATじゃなくて通常BEATの話し。銀行と証券ディーラーは従来1%プラスだったけどこの1%付加は撤廃されて全員一律14%になった。
クレジットは温存
BEATミニマム税計算時に2026年から認められなくなる予定だったR&Dクレジット、80%制限下でLow-income housingおよびエネジークレジットによるBEAT暫定税(通常の法人税と比べる前のBEAT税額)マイナスがそのまま温存されてる。この部分は便宜的に、財務省規則に規定されてる方向でBEAT暫定税を計算する際にクレジットを使えるって表現しておくけど、条文は逆でBEAT暫定税と比較する法人税にこれらのクレジットを加算するような表現になってる。方程式の左側でプラスしてる額を式の右側に移動させるとマイナスになるっていう超基礎的な算数なんで同じことなんだけど条文は直観的に分かり難いかもね。いずれにしてもこれが認められなくなるとR&Dクレジットで通常の法人税は低くなってもBEATミニマム税計算する際のBEAT暫定税はマイナスできないんでBEATミニマム税が生じ易くなるところだった。
High-Tax Exception
外国関連者に対する支出が、受け手側で米国法人税最高税率の90%を超える(「greater」)税率で課税されてるって納税者が証明できる場合、支出はBase Erosion Paymentには当たらないっていうSub FやGILTIみたいな「High-Tax Exception」が新規に規定された。現状法人税率は21%だからその90%は18.9%になる。支出の受け手側の税率計算はFTCの制限枠計算時に本来Passiveバスケットに属する投資所得が米国の適用最高税率より高い税率で国外で課税されている場合、強制的にGeneralバスケットにReclassさせられる所謂「High-Tax Kickout」の計算法に準じて行うとしている。
Base Erosion Paymentってグループ内の高税率国から低税率国に金利、サービスFee、ロイヤリティとかを支払ってグループ全体ではゼロサムでもグローバル全体の税金が下がるっていうかなり初歩的な算数を利用する支出だから受け手側で米国と同等の税率で税金が課される場合、本来のBase Erosion Paymentにはならない。日本みたいな高税率国への支出は、受け手側で18.9%超の税金を支払うことが多いだろうからとても有益な免除規定だ。ただひとつ残念っていうか致命的なのは現時点のsection 899法案ではUTPRやDSTを持つ国に適用される強化版Super-BEAT目的でHigh-Tax Exceptionは認められないこと…。これはSuper-BEATの話しなんでその際に後述。
通常のNew BEATに戻るけど、Base Erosion Paymentとかグループ内の話しだから「だったら…」って一旦20%法人税の国に支出して、そこから低税率の国に再支出みたいな迂回ルートプラニングが横行しがち。源泉税に対する条約適用なんかも同様のプラニングがあってその昔はLotus 1-2-3(懐かしい?それとも知らない?)駆使してAからBに金利払う際に「A->X->Y->D->B」ってすると条約や該当国の国内法で源泉税が最小限になるね!とか計算してたけど、そんな話は今は昔でTreaty Shoppingを取り締まるためLOB(「Leveraged BuyoutのLBO」じゃなくて「Limitation on Benefits」だからね)を持つ条約がほとんどになりConduit Financing Arrangement対抗規則が出たりでそんなに簡単にはいかなくなった。それと同じでBEATのHigh-Tax ExceptionにもConduit使用対抗規則が盛り込まれてる。
New BEAT法案では、財務省が定める範囲で形式的に特定の外国関連者(高税率国の関連者1)に対して行われる支出が、関連者1による別の外国関連者(低税率国の関連者2)への支出をFundingしてて、受け手の関連者2が18.9%未満(「Lower」)の税率で課税されてる場合、形式的には関連者1に対する支出でも税務上は関連者2に対する支出と取り扱うとしている。BEAT Funding規定の誕生!「Funding規定」って名前聞いただけで気分が悪くなる読者もいるんではって思うけど、Fundingと名の付くものはBEATとは別のBase Erosion対抗策1.385‐3のPer Seルールとか、国外関連者による自社株買いを米国法人が間接的にファイナンスしてるってみなす自社株買いFunding規定とか、どれも頭が痛くなる規則ばかり。Fundingリストに更にひとつ仲間が加わったね。
ちなみに付加税の下院法案の「On or after」と「After」の使い分けがおかしかったように、BEAT High-Tax Exceptionも「Greater」と「Lower」の使い方がチョッと不思議。High-Tax Exception自体は「Greater」なんで18.9%ピッタリだと不適格。一方、Anti-Conduitは「Lower」なんで18.9%だとOK。直接18.9%の国に支払うとギリギリHigh-Tax Exceptionにならず残念っていう結果になるけど、Funding規定で高税率国経由で18.9%の国に払うとAnti-Conduitの対象にならないように見える。ピッタリ18.9%になるケースは稀だろうから実務的なインパクトはないに等しいかもしれないけど概念的にチョッと釈然としないよね。最終バージョンではAnti-Conduitは「Equal or lower」とかにアップデートされるのかな。Exception側の「Greater」はSub FのForeign Base Company Incomeに対するHigh-Tax Exceptionもそうなんでこっちは変わらないだろう。ただ、Anti-Conduitは条文の文言的に財務省規則が出るまでは効果を持たない規則だ。
で次回は唐突なNew BEATの金利資産計上対策から。
上院Byrd Rule審判「Byrd Bath」
John Thuneは来週にも手続き的なProcedure Voteを敢行し、その直後に本会議投票に漕ぎつけるっていう超Aggressiveなタイムラインを今でも目指してるみたいだけど、その際に避けて通ることができないのが上院ParliamentarianのElizabeth MacDonoughによるByrd Rule審判。Mega-Billに盛り込まれている規定が予算調整法、すなわち60票の代わりに過半数で通すことが許されるScopeかっていう審判を受けないといけない。具体的には大概において野党側の民主党が「これはScope外」で訴えて与党の共和党は「Scope内」で防衛し、Parliamentarianが審判を下すような手続き。法案をByrd Ruleで洗うみたいなんでポリティクスの世界では「Byrd Bath」って言う。鳥が行水してるみたいで可愛いけど実際は闘争的な手続きだ。
Mega-BillはFinance Committee管轄以外のCommitteeの法案も多く含むんで、Byrd Bathはそれら全てが対象になる。既に金融系CommitteeのCFPB(Consumer Financial Protection Bureau)の予算ゼロ化、また監査法人を監督するSEC傘下のPCAOB撤廃、がByrd Ruleに抵触するって判断されたよう。Byrd Ruleに抵触するってことは予算調整法の一部として可決できないってことだけど、60票の賛成があればByrd Ruleを克服することができる。
共和党が一番怖いのはBudget Windowのコストを「Current Policy Baseline」を使って判断することがNGとなること。Current Policy Baselineっていうのは今適用しているTCJAの規則を延長しても追加コストにはならないはずっていう主張に基づくコスト計算。これが認められないとTCJAが2026年以降失効した状態との比較でコストを計算することになり多額のコストを認識しないといけなくなる。もちろん実際の歳入・歳出はCurrent Policy Baselineだろうが通常のBaseline だろうが同じだけど予算調整法の見せ方のギミックとしては重要なポイントだ。この点は余りに重要なんで以前から水面下で交渉を重ねてきてると考えるのが自然だけど最終結果は不明。
Section 899は一旦お墨付きを得てるけど、Byrd Bathで再度審査の対象となる可能性はあるね。
米国外ロビー活動
米国外の納税者によるsection 899のロビー活動はScott Bessent長官が「自分の国の政府に差別的課税を取り下げるよう働きかけるのが筋」って主張してる点は前回のポスティングで触れたけど、カナダ(DSTだけがPer Se Unfair Foreign Taxなんで被害は相対的に軽い)に続き、EUの企業団体はEUに「テクニカルな議論はどうでもいいからsection 899の適用がないよう税法を変えること」っていうプレッシャーを強化しているという報道。
また英国ではFTSE100社が自国の財務省に「何でもいいからsection 899が英国企業に適用されないよう対応すること」っていう要請をしたという話しも報道されている。英国企業は「米国撤退は単純にオプションではない」とした上で何もせずにsection 899適用開始になると米国オペレーションに過激なリストラクチャリング(米国企業にインバージョン??)、を敢行しないといけなくなるし、目先の対応としてはグループ内DebtファイナンスをEquityに変えて配当を控える程度に限られる...とのこと。また「せっかくBrexitしてEUじゃないんだからそのメリットを活かして主権を発揮して独自に対応を率先して検討・策定するよう」働きかけたという話しだ。
New BEATは税率引き上げ
New BEATミニマム税率はナンと14%。これはSuper-BEATじゃなくて通常BEATの話し。銀行と証券ディーラーは従来1%プラスだったけどこの1%付加は撤廃されて全員一律14%になった。
クレジットは温存
BEATミニマム税計算時に2026年から認められなくなる予定だったR&Dクレジット、80%制限下でLow-income housingおよびエネジークレジットによるBEAT暫定税(通常の法人税と比べる前のBEAT税額)マイナスがそのまま温存されてる。この部分は便宜的に、財務省規則に規定されてる方向でBEAT暫定税を計算する際にクレジットを使えるって表現しておくけど、条文は逆でBEAT暫定税と比較する法人税にこれらのクレジットを加算するような表現になってる。方程式の左側でプラスしてる額を式の右側に移動させるとマイナスになるっていう超基礎的な算数なんで同じことなんだけど条文は直観的に分かり難いかもね。いずれにしてもこれが認められなくなるとR&Dクレジットで通常の法人税は低くなってもBEATミニマム税計算する際のBEAT暫定税はマイナスできないんでBEATミニマム税が生じ易くなるところだった。
High-Tax Exception
外国関連者に対する支出が、受け手側で米国法人税最高税率の90%を超える(「greater」)税率で課税されてるって納税者が証明できる場合、支出はBase Erosion Paymentには当たらないっていうSub FやGILTIみたいな「High-Tax Exception」が新規に規定された。現状法人税率は21%だからその90%は18.9%になる。支出の受け手側の税率計算はFTCの制限枠計算時に本来Passiveバスケットに属する投資所得が米国の適用最高税率より高い税率で国外で課税されている場合、強制的にGeneralバスケットにReclassさせられる所謂「High-Tax Kickout」の計算法に準じて行うとしている。
Base Erosion Paymentってグループ内の高税率国から低税率国に金利、サービスFee、ロイヤリティとかを支払ってグループ全体ではゼロサムでもグローバル全体の税金が下がるっていうかなり初歩的な算数を利用する支出だから受け手側で米国と同等の税率で税金が課される場合、本来のBase Erosion Paymentにはならない。日本みたいな高税率国への支出は、受け手側で18.9%超の税金を支払うことが多いだろうからとても有益な免除規定だ。ただひとつ残念っていうか致命的なのは現時点のsection 899法案ではUTPRやDSTを持つ国に適用される強化版Super-BEAT目的でHigh-Tax Exceptionは認められないこと…。これはSuper-BEATの話しなんでその際に後述。
通常のNew BEATに戻るけど、Base Erosion Paymentとかグループ内の話しだから「だったら…」って一旦20%法人税の国に支出して、そこから低税率の国に再支出みたいな迂回ルートプラニングが横行しがち。源泉税に対する条約適用なんかも同様のプラニングがあってその昔はLotus 1-2-3(懐かしい?それとも知らない?)駆使してAからBに金利払う際に「A->X->Y->D->B」ってすると条約や該当国の国内法で源泉税が最小限になるね!とか計算してたけど、そんな話は今は昔でTreaty Shoppingを取り締まるためLOB(「Leveraged BuyoutのLBO」じゃなくて「Limitation on Benefits」だからね)を持つ条約がほとんどになりConduit Financing Arrangement対抗規則が出たりでそんなに簡単にはいかなくなった。それと同じでBEATのHigh-Tax ExceptionにもConduit使用対抗規則が盛り込まれてる。
New BEAT法案では、財務省が定める範囲で形式的に特定の外国関連者(高税率国の関連者1)に対して行われる支出が、関連者1による別の外国関連者(低税率国の関連者2)への支出をFundingしてて、受け手の関連者2が18.9%未満(「Lower」)の税率で課税されてる場合、形式的には関連者1に対する支出でも税務上は関連者2に対する支出と取り扱うとしている。BEAT Funding規定の誕生!「Funding規定」って名前聞いただけで気分が悪くなる読者もいるんではって思うけど、Fundingと名の付くものはBEATとは別のBase Erosion対抗策1.385‐3のPer Seルールとか、国外関連者による自社株買いを米国法人が間接的にファイナンスしてるってみなす自社株買いFunding規定とか、どれも頭が痛くなる規則ばかり。Fundingリストに更にひとつ仲間が加わったね。
ちなみに付加税の下院法案の「On or after」と「After」の使い分けがおかしかったように、BEAT High-Tax Exceptionも「Greater」と「Lower」の使い方がチョッと不思議。High-Tax Exception自体は「Greater」なんで18.9%ピッタリだと不適格。一方、Anti-Conduitは「Lower」なんで18.9%だとOK。直接18.9%の国に支払うとギリギリHigh-Tax Exceptionにならず残念っていう結果になるけど、Funding規定で高税率国経由で18.9%の国に払うとAnti-Conduitの対象にならないように見える。ピッタリ18.9%になるケースは稀だろうから実務的なインパクトはないに等しいかもしれないけど概念的にチョッと釈然としないよね。最終バージョンではAnti-Conduitは「Equal or lower」とかにアップデートされるのかな。Exception側の「Greater」はSub FのForeign Base Company Incomeに対するHigh-Tax Exceptionもそうなんでこっちは変わらないだろう。ただ、Anti-Conduitは条文の文言的に財務省規則が出るまでは効果を持たない規則だ。
で次回は唐突なNew BEATの金利資産計上対策から。
Wednesday, June 18, 2025
Mega-Bill上院法案「Morning After」
上院法案公表から一夜明けたMorning After。再度法案に目を通したけどsection 899は公表直後に書いた昨日のポスティングで合ってると思う。Super-BEATはBEATそのものが大きく変わってるんでNew BEATの話しも一緒にしないとSuper-BEATの理解が進まないんで次回にでも。
で、Big Beautiful Bil(「BBB」)上院法案公開から一夜明けてDCサークルはBBB三昧。
BBB
っていうのは本当なんだけど、実は話題のBBBは「Bunker-Buster Bomb」のこと。イスラエルがイランの対空ディフェンス能力を除去して制空権を確保していて自由に飛んでいけるっていう信じられない展開で地上に露出している戦略施設は既に破壊したらしいんだけど、イランの核施設の一つが山奥の地下深くにあるのが分かっていてそれを破壊できるのは米国が持つBBBのみらしい(全くの専門外なんで全部聞いた話し)。でもトランプ・MAGAは米国外のConflictには関与しないっていうのが原則ポリシー。そこがネオコンやDCのEstablishmentと違うところ。
ただトランプ派内でも意見が割れるところで、America FirstポリシーはAmerica Onlyではなく、米国を敵視している国の核施設を破壊できる千載一遇のチャンスなんだから国防はAmerica Firstポリシーに合致するっていう派がいたり。BBBを打ち込むにはUS Air ForceのB-2 Bomberがこっそり飛んで行く必要があってB-2 BomberはMissouriのベースに居るらしいんで片道15時間(JFKから東京出張行くのとあんまり変わんないね!)給油を繰り返しながら誰にも探知されずに飛んでいくのだそう。MAGAとしては国外のConflictに関与しないのが原則だけどBBBだけ打ち込みに行くんだったらいい?って思う派もあるんだけど、その後の混乱に引きずり込まれるのは必至っていう話しもありイラクやアフガンの二の舞だけは避けないとっていうところでここは我慢どころっていう派もいたり喧々囂々。どうなるでしょうか。
Last Minuteロビー活動
で、それに比べるとSALTが...とかの戦いは平和な話しって感謝を禁じ得ない(?)Mega-BillのBBB。まあ大概において下院法案を踏襲して両院一致バージョンの早期可決を考慮したんだろうな、っていう内容とは言えやはりSALT、Medicaid、エネジークレジット等は未だに調整中。SALTくらいでって思うけど、NYの17th District(日本人の駐在の方にもお馴染みのWestchesterを含むDistrict)の共和党下院議員Mike LawlerとかはSALT枠を拡大しないと中間選挙で戦えないっていう話し。共和党絡みの票読みしてる人の話しだとこれは冗談ではなく本当らしい。下院の議席数は僅差だから共和党下院としては一議席でも重要。ってことで事が込み入る。
Section 899に関しては上院法案に趣旨はそのまま入ったことから上院でも899の重要性が認識された証拠になったけど、まだまだ転覆させようって激しいロビー活動が続いてるらしい。Wall Street派に加えて今度は不動産業界登場。海外からの投資に冷却効果があるんでMinority出資は免除して欲しいみたいな書簡をJohn ThuneとMike Crapoに送り付けたりしてる。以前のREIT特集で触れたけど不動産業界の究極の夢はFIRPTAの完全撤廃!さすがにそれは「Good luck」って感じだけど163(j)にしても上場REITにしても、古くはUP-REITがSub KのAnti-Abuse Regulationsでお墨付きをもらったり何かと不動産業界は厚遇特別扱い。今ではお馴染みのUP-CはこのUP-REITに対するAnti-Abuse除外お墨付きがなければストラクチャーとして蔓延しなかったかもって考えると不動産業界のおかげで一般事業のパススルー上場時のパワフルなストラクチャーオプションが増えて感謝。不動産業界がパワフルなのは、例えばWall Streetとかだったら特定の州の議院しか聞く耳を持たないかもしれないけど、不動産は全州にあるんでロビー活動時にLeverageが効くらしい。不動産業界とは別に外国の投資銀行とかもロビー活動してるらしいけどScott Bessent長官曰く「ロビー活動の矛先が間違っている。自分の国の政府に不公平税制を撤回するようロビーするべき」とのこと。不動産パワーで更なる緩和措置があるでしょうか。
来週上院投票?
ただ、section 899に限らず公表された上院法案は一週間ほど更なる変遷を経てJohn Thune曰く来週水曜日か木曜日に最初の投票、その後、最終投票をその直後の週末にしたいということ。ということで決して最終版ではないけどタイトなタイムライン。上院可決してその後に下院とConferenceで調整したりしてると時間が掛かるんで、上院の調整と同時にPre-Conferenceですり合わせして一気に通すっていうもくろみらしい。上院だけでもマジックナンバーの4人造反が居るかどうか不明。Rand Paul、MedicaidのJosh HawleyやSusan Collins…。どうなるでしょうか。
次回はNew BEATとSuper-BEATについて。
で、Big Beautiful Bil(「BBB」)上院法案公開から一夜明けてDCサークルはBBB三昧。
BBB
っていうのは本当なんだけど、実は話題のBBBは「Bunker-Buster Bomb」のこと。イスラエルがイランの対空ディフェンス能力を除去して制空権を確保していて自由に飛んでいけるっていう信じられない展開で地上に露出している戦略施設は既に破壊したらしいんだけど、イランの核施設の一つが山奥の地下深くにあるのが分かっていてそれを破壊できるのは米国が持つBBBのみらしい(全くの専門外なんで全部聞いた話し)。でもトランプ・MAGAは米国外のConflictには関与しないっていうのが原則ポリシー。そこがネオコンやDCのEstablishmentと違うところ。
ただトランプ派内でも意見が割れるところで、America FirstポリシーはAmerica Onlyではなく、米国を敵視している国の核施設を破壊できる千載一遇のチャンスなんだから国防はAmerica Firstポリシーに合致するっていう派がいたり。BBBを打ち込むにはUS Air ForceのB-2 Bomberがこっそり飛んで行く必要があってB-2 BomberはMissouriのベースに居るらしいんで片道15時間(JFKから東京出張行くのとあんまり変わんないね!)給油を繰り返しながら誰にも探知されずに飛んでいくのだそう。MAGAとしては国外のConflictに関与しないのが原則だけどBBBだけ打ち込みに行くんだったらいい?って思う派もあるんだけど、その後の混乱に引きずり込まれるのは必至っていう話しもありイラクやアフガンの二の舞だけは避けないとっていうところでここは我慢どころっていう派もいたり喧々囂々。どうなるでしょうか。
Last Minuteロビー活動
で、それに比べるとSALTが...とかの戦いは平和な話しって感謝を禁じ得ない(?)Mega-BillのBBB。まあ大概において下院法案を踏襲して両院一致バージョンの早期可決を考慮したんだろうな、っていう内容とは言えやはりSALT、Medicaid、エネジークレジット等は未だに調整中。SALTくらいでって思うけど、NYの17th District(日本人の駐在の方にもお馴染みのWestchesterを含むDistrict)の共和党下院議員Mike LawlerとかはSALT枠を拡大しないと中間選挙で戦えないっていう話し。共和党絡みの票読みしてる人の話しだとこれは冗談ではなく本当らしい。下院の議席数は僅差だから共和党下院としては一議席でも重要。ってことで事が込み入る。
Section 899に関しては上院法案に趣旨はそのまま入ったことから上院でも899の重要性が認識された証拠になったけど、まだまだ転覆させようって激しいロビー活動が続いてるらしい。Wall Street派に加えて今度は不動産業界登場。海外からの投資に冷却効果があるんでMinority出資は免除して欲しいみたいな書簡をJohn ThuneとMike Crapoに送り付けたりしてる。以前のREIT特集で触れたけど不動産業界の究極の夢はFIRPTAの完全撤廃!さすがにそれは「Good luck」って感じだけど163(j)にしても上場REITにしても、古くはUP-REITがSub KのAnti-Abuse Regulationsでお墨付きをもらったり何かと不動産業界は厚遇特別扱い。今ではお馴染みのUP-CはこのUP-REITに対するAnti-Abuse除外お墨付きがなければストラクチャーとして蔓延しなかったかもって考えると不動産業界のおかげで一般事業のパススルー上場時のパワフルなストラクチャーオプションが増えて感謝。不動産業界がパワフルなのは、例えばWall Streetとかだったら特定の州の議院しか聞く耳を持たないかもしれないけど、不動産は全州にあるんでロビー活動時にLeverageが効くらしい。不動産業界とは別に外国の投資銀行とかもロビー活動してるらしいけどScott Bessent長官曰く「ロビー活動の矛先が間違っている。自分の国の政府に不公平税制を撤回するようロビーするべき」とのこと。不動産パワーで更なる緩和措置があるでしょうか。
来週上院投票?
ただ、section 899に限らず公表された上院法案は一週間ほど更なる変遷を経てJohn Thune曰く来週水曜日か木曜日に最初の投票、その後、最終投票をその直後の週末にしたいということ。ということで決して最終版ではないけどタイトなタイムライン。上院可決してその後に下院とConferenceで調整したりしてると時間が掛かるんで、上院の調整と同時にPre-Conferenceですり合わせして一気に通すっていうもくろみらしい。上院だけでもマジックナンバーの4人造反が居るかどうか不明。Rand Paul、MedicaidのJosh HawleyやSusan Collins…。どうなるでしょうか。
次回はNew BEATとSuper-BEATについて。
Monday, June 16, 2025
税制改正上院バージョン公開「899の運命は?」
前回のポスティングを「次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね」って締めくくったけど、本当にその通りになりました!米国時間の金曜日に結局出なかったんで月曜日は怪しいなと思って移動中にもかかわらず朝から目を光らせたんだけど、ちょうどJFKに着いた直後Air Train降りるタイミングで公表を知った。
Air Train降りてApple Pay使えるようになったからマシだけどチョッとアナログな感じの改札出てE Trainに向かう途中のエスカレーター降りたところで一旦Tim Hortens(覚えてる?パートナーシップ使って米国株主が367に抵触しない形でカナダにInversionした話し)でコーヒー買って超ザっと目を通してから地下鉄に乗ったけど、大概において思ってた通り。ビジネス界が望んでいた163(j)/174/168(k)は下院と異なり恒久化、チップ・残業代・自動車ローン金利等のトランプ選挙公約はそのまま盛り込まれてた。
チョッと驚いたけどある意味やっぱり・・・だったのはSALT控除。現状の$10Kを下院法案では$40Kに引き上げてたけど、$30Kくらいにされちゃうのかなって思って恐る恐る読んだらナンと$10Kのまま。え~、下院にはCAやNYのDistrict議員がいるけど、上院は各州2名でCAやNYの高税率州の共和党上院議員はいないから仕方ないのかもしれないけど挑戦的。上院にしてみれば何で規律のない歳出を繰り返す州の税収を部分的に連邦が負担する必要があるのかってことで特に州個人所得税ナシのフロリダ州のRick Scottみたいに「(SALT控除は)ゼロがいいんじゃないかな」っていう世界になる。ただ、法文とは別に公表されている解説で「SALTは議論を呼ぶ検討なので取り合えず$10Kにしておくけど最終ではない」って一応コメントされてるんで調整が付いてないってことだね。
で、何と言っても読者のみなさんの関心がここ数週間急激にアップしているOpportunity Zone...、じゃなくてsection 899はどうなったでしょうか。
Section 899上院法案バージョン
こちらもほぼ想定の範囲内だったけど基本的な制度設計は同じ。一読して気づいた「お~こうきたか」みたいな点をいくつか。落ち着いたらもう少しジックリ読んで詳細解説してみたいけど今日は取り急ぎハイライト。それにしても規則内容は同様なんだけど法文の構成・順序が全く変わってるんで面食らう。下院法案の癖が抜けるまではチョッと調子でない。
Offending Foreign Country
下院法案ではUnfair Foreign Tax制度を導入してる国を「Discriminatory Foreign Country」って定義してたけど、上院法案ではこれが「Offending Foreign Country」に。DiscriminatoryとOffendingってConnotation的にどっちがマシなんだろうか。普段Offendingって言うと人を不快にさせる、またはルール違反っていう双方のニュアンスで使うけど、確かにそういわれてみるとUTPRやDSTでアメリカを不快にさせて、アメリカの視点からは国際法違反って考えるとうまくひとつの単語で複数のニュアンスを詰め込んだ表現かもね。
Unfair Foreign Tax
1月21日下院法案Mark IIに少し戻った感じでExtraterritorial TaxとDiscriminatory Taxの各々がまず定義されてるけど、Extraterritorial Taxに関しては定義後半に「UTPR」は含まれる、「DST」に関してはDiscriminatory Taxの定義そのものの1つとして明記されてるんで結局それらの制度を持ってたらそれでNG。あれDPTは?って思ったけど一読した限りではPer Se Unfair Foreign Taxから脱落したみたいだ。でも世界中の税制調べた訳じゃないけど、DPTって英国とオーストラリアだろうからUTPRやDST持ってたらDPTが救われても意味ないね。
「Extraterritorial tax」と「Discriminatory Tax」で異なる対処?
おそらく設計的に一番アレって思うのは下院法案では「Extraterritorial tax」でも「Discriminatory Tax」でもどっちか採択してたら対処は同じだったけど、上院バージョンは「Discriminatory Tax」だけの問題国に関しては付加税を活用した対処はなくApplicable Personに直接間接に50%超(議決権または価値ベース)所有される米国法人にSuper-BEATが適用されるだけの対処に見える。法文読む限りそうなんだけど100%自信ないんで明日もう少しスッキリした頭で読んでみたい。一方「Extraterritorial Tax」を持つ国は従来通り付加税とSuper-BEATの双方で対抗されるように見える。この差はExtraterritorial Taxは持ってないけどDiscriminatory Taxはあるっていう国にのみ関係ある話し。もっと意訳するとUTPR持ってる国はDSTがあろうとなかろうと下院法案通り双方の対処法対象で、DSTはあるけどUTPRはありませんって国はSuper-BEATのみってことになる。
Applicable Date
適用にもう少し時間を設けて問題国が自国の制度を変える猶予期間を確保するのがベターっていう話しが出てて、この点は潜在的な下院法案からの変更点になり得るっていう点は前回のポスティングで予想したけど、その通りになった。Applicable Date(国毎・暦年ベース)やApplicable PersonがFiscal Yearのケースの適用開始年度を決める際の例の3つの日のうちの一つ「899可決から90日後」っていうのがナンと4倍に延長され「899可決から一年後」ってなった。これで仮に既にUnfair Foreign Taxを持ってる国に関しては2027年1月1日がApplicable Dateになるね。
「On or After」 v 「After」
以前のポスティング「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた通り下院法案ではFiscal YearベースのApplicable Personに対する付加税およびSuper-BEAT適用初年度は例の3つの日(下院では899可決から90日、問題国のUnfair Foreign Tax可決から180日、Unfair Foreign Tax適用開始日)の一番遅い日の「後(After)」に開始するFiscal Yearってなってた。付加税%を決める際のApplicable Date決定目的では「on or after」だったんで4月1日にUnfair Foreign Taxが適用開始で(仮にその日が3つのうち一番遅い日とする)3月決算の場合は一年後の4月1日に開始するFiscal Yearが最初の適用年度になるはずだった。さすがにApplicable Dateと規則がパラレルじゃないのはおかしいって思ってかどのFiscal Yearから適用かの判断時も「On or after」に変更されている。ただ、上述の通り、3つの日のひとつ「899可決から90日後」が「一年後」に変更されてるんで、この日が(例えば2026年7月5日)が一番遅い日になることが多く、その場合は4月1日問題は生じない。
付加税%は15%打ち止め
下院法案では付加税のCAPを付加税が足された後の税率を参照して規定していた。具体的には結果として計算される%は法定税率プラス20%がCAPとされてた。今回は付加税%そのものが15%で打ち止めになるって規定されている。下院法案と同じく条約適用の納税者には条約レートがスターティングとなる。したがって源泉税が条約でゼロ%の場合は15%で終わるけど条約ないと45%だ。
「Portfolio Interest Exemption」
米国債やボンドの金利源泉税が高くなって米国への投資に悪影響っていう懸念に対応するためか、下院Budget CommitteeのFootnoteにPortfolio Interest Exemptionは付加税の対象じゃないって記載されてたけど、Budget CommitteeのFootnoteは法律ではないんで法文上の明確化が望まれて、もしかしたらこれも上院でアップデートされるかもっていう点は前回のポスティングで触れたけど、その通り法文で対象外って明確になった。これでボンドは一安心。また199Aのパススルー所得控除の対象としても追加されてたDirect CreditのBDCが受け取る利子がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たしている場合、それを原資に支払う配当も同様に対象外となった。
っていうことで若干のTweakの上、上院でも温存っていう予想通りの結果だけど15%打ち止め、可決から1年、とか随所に緩和措置がみられたね。取り急ぎでした。
Air Train降りてApple Pay使えるようになったからマシだけどチョッとアナログな感じの改札出てE Trainに向かう途中のエスカレーター降りたところで一旦Tim Hortens(覚えてる?パートナーシップ使って米国株主が367に抵触しない形でカナダにInversionした話し)でコーヒー買って超ザっと目を通してから地下鉄に乗ったけど、大概において思ってた通り。ビジネス界が望んでいた163(j)/174/168(k)は下院と異なり恒久化、チップ・残業代・自動車ローン金利等のトランプ選挙公約はそのまま盛り込まれてた。
チョッと驚いたけどある意味やっぱり・・・だったのはSALT控除。現状の$10Kを下院法案では$40Kに引き上げてたけど、$30Kくらいにされちゃうのかなって思って恐る恐る読んだらナンと$10Kのまま。え~、下院にはCAやNYのDistrict議員がいるけど、上院は各州2名でCAやNYの高税率州の共和党上院議員はいないから仕方ないのかもしれないけど挑戦的。上院にしてみれば何で規律のない歳出を繰り返す州の税収を部分的に連邦が負担する必要があるのかってことで特に州個人所得税ナシのフロリダ州のRick Scottみたいに「(SALT控除は)ゼロがいいんじゃないかな」っていう世界になる。ただ、法文とは別に公表されている解説で「SALTは議論を呼ぶ検討なので取り合えず$10Kにしておくけど最終ではない」って一応コメントされてるんで調整が付いてないってことだね。
で、何と言っても読者のみなさんの関心がここ数週間急激にアップしているOpportunity Zone...、じゃなくてsection 899はどうなったでしょうか。
Section 899上院法案バージョン
こちらもほぼ想定の範囲内だったけど基本的な制度設計は同じ。一読して気づいた「お~こうきたか」みたいな点をいくつか。落ち着いたらもう少しジックリ読んで詳細解説してみたいけど今日は取り急ぎハイライト。それにしても規則内容は同様なんだけど法文の構成・順序が全く変わってるんで面食らう。下院法案の癖が抜けるまではチョッと調子でない。
Offending Foreign Country
下院法案ではUnfair Foreign Tax制度を導入してる国を「Discriminatory Foreign Country」って定義してたけど、上院法案ではこれが「Offending Foreign Country」に。DiscriminatoryとOffendingってConnotation的にどっちがマシなんだろうか。普段Offendingって言うと人を不快にさせる、またはルール違反っていう双方のニュアンスで使うけど、確かにそういわれてみるとUTPRやDSTでアメリカを不快にさせて、アメリカの視点からは国際法違反って考えるとうまくひとつの単語で複数のニュアンスを詰め込んだ表現かもね。
Unfair Foreign Tax
1月21日下院法案Mark IIに少し戻った感じでExtraterritorial TaxとDiscriminatory Taxの各々がまず定義されてるけど、Extraterritorial Taxに関しては定義後半に「UTPR」は含まれる、「DST」に関してはDiscriminatory Taxの定義そのものの1つとして明記されてるんで結局それらの制度を持ってたらそれでNG。あれDPTは?って思ったけど一読した限りではPer Se Unfair Foreign Taxから脱落したみたいだ。でも世界中の税制調べた訳じゃないけど、DPTって英国とオーストラリアだろうからUTPRやDST持ってたらDPTが救われても意味ないね。
「Extraterritorial tax」と「Discriminatory Tax」で異なる対処?
おそらく設計的に一番アレって思うのは下院法案では「Extraterritorial tax」でも「Discriminatory Tax」でもどっちか採択してたら対処は同じだったけど、上院バージョンは「Discriminatory Tax」だけの問題国に関しては付加税を活用した対処はなくApplicable Personに直接間接に50%超(議決権または価値ベース)所有される米国法人にSuper-BEATが適用されるだけの対処に見える。法文読む限りそうなんだけど100%自信ないんで明日もう少しスッキリした頭で読んでみたい。一方「Extraterritorial Tax」を持つ国は従来通り付加税とSuper-BEATの双方で対抗されるように見える。この差はExtraterritorial Taxは持ってないけどDiscriminatory Taxはあるっていう国にのみ関係ある話し。もっと意訳するとUTPR持ってる国はDSTがあろうとなかろうと下院法案通り双方の対処法対象で、DSTはあるけどUTPRはありませんって国はSuper-BEATのみってことになる。
Applicable Date
適用にもう少し時間を設けて問題国が自国の制度を変える猶予期間を確保するのがベターっていう話しが出てて、この点は潜在的な下院法案からの変更点になり得るっていう点は前回のポスティングで予想したけど、その通りになった。Applicable Date(国毎・暦年ベース)やApplicable PersonがFiscal Yearのケースの適用開始年度を決める際の例の3つの日のうちの一つ「899可決から90日後」っていうのがナンと4倍に延長され「899可決から一年後」ってなった。これで仮に既にUnfair Foreign Taxを持ってる国に関しては2027年1月1日がApplicable Dateになるね。
「On or After」 v 「After」
以前のポスティング「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた通り下院法案ではFiscal YearベースのApplicable Personに対する付加税およびSuper-BEAT適用初年度は例の3つの日(下院では899可決から90日、問題国のUnfair Foreign Tax可決から180日、Unfair Foreign Tax適用開始日)の一番遅い日の「後(After)」に開始するFiscal Yearってなってた。付加税%を決める際のApplicable Date決定目的では「on or after」だったんで4月1日にUnfair Foreign Taxが適用開始で(仮にその日が3つのうち一番遅い日とする)3月決算の場合は一年後の4月1日に開始するFiscal Yearが最初の適用年度になるはずだった。さすがにApplicable Dateと規則がパラレルじゃないのはおかしいって思ってかどのFiscal Yearから適用かの判断時も「On or after」に変更されている。ただ、上述の通り、3つの日のひとつ「899可決から90日後」が「一年後」に変更されてるんで、この日が(例えば2026年7月5日)が一番遅い日になることが多く、その場合は4月1日問題は生じない。
付加税%は15%打ち止め
下院法案では付加税のCAPを付加税が足された後の税率を参照して規定していた。具体的には結果として計算される%は法定税率プラス20%がCAPとされてた。今回は付加税%そのものが15%で打ち止めになるって規定されている。下院法案と同じく条約適用の納税者には条約レートがスターティングとなる。したがって源泉税が条約でゼロ%の場合は15%で終わるけど条約ないと45%だ。
「Portfolio Interest Exemption」
米国債やボンドの金利源泉税が高くなって米国への投資に悪影響っていう懸念に対応するためか、下院Budget CommitteeのFootnoteにPortfolio Interest Exemptionは付加税の対象じゃないって記載されてたけど、Budget CommitteeのFootnoteは法律ではないんで法文上の明確化が望まれて、もしかしたらこれも上院でアップデートされるかもっていう点は前回のポスティングで触れたけど、その通り法文で対象外って明確になった。これでボンドは一安心。また199Aのパススルー所得控除の対象としても追加されてたDirect CreditのBDCが受け取る利子がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たしている場合、それを原資に支払う配当も同様に対象外となった。
っていうことで若干のTweakの上、上院でも温存っていう予想通りの結果だけど15%打ち止め、可決から1年、とか随所に緩和措置がみられたね。取り急ぎでした。
Saturday, June 14, 2025
Section 899下院法案バージョン (4)
Mega-Bill上院バージョン
Mega-Billのタックス部分を上院で担当するFinance Committeeが税制改正上院バージョンドラフトを今日(米国金曜日)にも公表するかもって噂されてたんでソワソワ・ワクワク (?)してたんだけど未だ出てないんで、結局来週になるのかもね。13日の金曜日は縁起悪いって考えた?なんてことはないと思うけど、DCの常識的に、この手のドラフトをあんまり前もって白日の下に晒すと、様々な利権を持つ者が精査してLast minuteのロビー活動に繋がるんで、来週奇襲攻撃的に公開するっていう戦術に出てるのかもね。
Medicaidは別の管轄なんで置いておいて税制面で、上院バージョンが公開される際の関心は下院・上院間で温度差が浮き彫りになってる項目にどんな風に対処するかっていう点。すなわちSALT控除枠が$40Kのままか、チップ・残業代非課税がSurviveするか、163(j)/174/168(k)の時限救済を恒久化できるか、エネジークレジットの撤廃タイミングを緩和するか、が主たる関心事になる。これは上院がポリシーとしてどう考えるかっていう角度からの興味もなくはないけど、以前も増れた通り下院バージョンからの乖離が大きくなると両院一致バージョンを早期に可決するゴールに影響があるっていうポリティクスの問題が大きい。
これら争点となっている政策は各々Mega-Billの財政コスト面でプレッシャーが高くなるんでこれらを取り込むとDeficit Hawk派と最後の線で保ってるバランス調整が更に複雑になる。コップのウォッカがこぼれ落ちる寸前までコインを沈め合ってる感じ。そんなかけひきも近頃はもどかしくなっていっそ倒しちゃうようなことがないようにね。メレンゲはホイップし過ぎたらしぼむんでちょうど良い頃合いに止めないとね。う~ん、Voyager良く聴いたな~。この前一瞬触れたRubber SoulからPepperじゃないけど、Pearl Pierce、Reincarnation、Voyager、No Sideって続くあの4枚は個人的にはMark II (?)のGolden Ageで今聴いても素晴らしい。それよりもっと前の子供の頃に聴いてた、ひこうき雲やMisllim、そしてその後のCOBALT HOUR(卒業写真!)、14番目の月(中央フリーウェイ!)なんかのMark Iもいいよね!
で、上院サイドのDeficit Hawk派はトランプが説得に回り徐々にRand Paul以外は歩み寄りの気配があるっていう報道(Rand Paulは結局ホワイトハウスのピクニックに招待してもらえたそう!)。え~Ron Johnsonも歩み寄り~?って思うかもしれないけど、Mega-Billとは別ルートで大統領府と赤字削減プランを協議するっていう約束になったっていう報道もある。ただSALTの控除枠に関して$30Kか$40Kかとか喧喧囂囂の駆け引きが続く中、上院Deficit Hawk派の一人のRick Scott (R-FL)がどれ位の控除枠だったら受け入れ可能かって質問された際に「ゼロがいいんじゃないかな」とコメントしたそうだ。けんもほろろだね。
Section 899の行方は?
これらが主たる大物ポイントだけど、最近頻繁に「section 899は上院でも可決しますか?」っていう質問を受けるようになった。テクニカルに正しい回答は「僕は占い師じゃないんで分かりません。トランプもJohn Thuneも定かじゃないと思います」ってものだけど、Bootleg的な回答は「section 899は若干のTweakはあり得てもそのまま可決される可能性大」って考えるのが合理的。最終法案に盛り込まれる確率は個人的には95%超レベルって考えている。ポリティクスに絶対はないんでその範囲では最高得点に属する。
その理由はいくつかあるけど、まず上院以外の2府、下院と行政府(大統領・財務省)は120%法案指示で一枚岩になってる点。1月20日の政権発足と同時に公表された「Global Tax Deal大統領令」と翌日の下院section 899 Take 2のコーディネートぶりは当時のポスティング「「Global Tax Deal」大統領令」で触れてるんでそっちも読んで欲しい。昨日から議会で財務長官のBessentが質疑応答してたけど、その中でsection 899に関しては「Revenge Tax」とか俗称が付いてるけど誤解を招くとした上で他国の暴走を止め米国議業が他国企業とフェアに競争するため必要と100%ディフェンドしていた。反対意見は主に問題国の納税者からのものとも発言してた。上院と下院で意見が割れる大物争点が他にある中、加えてsection 899を喧嘩に加えるインセンティブが上院にあるとは考え難い。
次に、以前も触れたけど、section 899の主たる米国内の反対はWall Streetからに限定されてるって思われる点。国債を含む米国資産への国外からの投資意欲に悪影響があるっていう理由。この点も投資銀行のアナリストによっては「影響はほぼない(Budget Committeeが後からFootnoteでPortfolio Interest Exemptionに影響はなくsection 899付加税の対象ではないってコメント付けたんで特に)」「影響あるとしたら既に織り込み済み」っていう見方をする者も居る。いずれにして審議過程で目立ったマーケットインパクトは見られない。
一方で一般企業はOECDのGlobal Tax Dealにコンプライアンスしたり、米国で合法的に税金払ってるのに、OECDの計算で(例、R&Dクレジット取って)たまたまLow-Taxedになったっていう理由で米国の利益に子会社所在国で課税されることに何の得もないんで、政権によるプッシュバックの評価は高い。噂によるとカナダや欧州の企業も、これで少しでもコンプライアンス負荷が軽減されて欲しいって実は「こっそり」応援してるところも少なくないっていう話しも聞いた(苦笑)。
ビジネス界からのプッシュバックがWall Streetからに限定されてる点と関連するけど、議員は何よりも次の選挙に備えて地元の有権者にいいところを見せないといけない。有権者の視点からから「みなさんのために高い州税の控除枠を拡大しました」とか「みなさんが欲しい太陽光発電の助成金(クレジット)廃止を2年遅らせました」とか「コメ不足をこうして解消します(ゴメン、これは日本か)」は分かり易い。一方で「OECDが世界に働きかけて導入を図っている不公平税制を取り入れている外国の企業に対する懲罰課税を撤廃しました」って言っても「OECD?石油の輸出国の団体だっけ?」とか「撤廃して自分たち(選挙区の一般People)になんか好影響あんの?」「何で外国企業のために時間使ってんの?」みたいな世界だろうから、そこに限られたPolitical Capitalを費やす議員が多いとは思えない。
また、Mega-Billの一つの大きな争点はBudget Windowの今後10年の財政赤字に対するインパクト。昨日のFinance CommitteeのヒアリングでBessent財務長官はCBOのScoreは関税による歳入を無視してる点、Dynamic scoreじゃない点も加味して「Budget Window内で財政は均衡する」っていう見解をシェアしていた。で、ただでさえ歳出減が徹底できず、歳入源は限られている中、$116Bっていう比較的大きな歳入がScoreされてる規則を敢えて撤廃するようなことは考え難い。
Section 899上院バージョン?
大概において上院での可決が見込まれるとして、じゃあ下院法案バージョンの法文に何らかの変更が加えられる可能性はどうだろうか。こちらも「Heaven Knows」(Donna Summer!)の世界だけど、付加税やSuper-BEATにかかわるSubstantiveな変更はないんじゃないかな~。もしかしたらThom Tillis (R-NC)がDiscriminatory Foreign CountryがUTPRを取り下げたりする時間的な猶予をもう少し与えた方がいいとか言ったそうなんで、例えばApplicable Date(常に暦年で国単位でひとつの日。覚えてる?)やFiscal Year納税者の適用開始年度判断時に使用する日にちのひとつ「section 899の可決90日後」っていうのを「180日」に変えたり(可決日次第だけどおそらく180日にすれば暦年ベースのApplicable Dateは早くて2026年の代わりに2027年1月1日になる)っていう感じのマイナーチェンジは考え得る。またWall Streetの懸念を一部払拭した「Portfolio interest exemption」適格の利子所得はsection 899の付加税対象外っていうBudget CommitteeのFootnoteコメントは法文からは明らかじゃないんで、法文自体をテクニカルアップデートして明確化を図るとかもあり得るかもね。
Recission Bill下院可決
数回前のポスティング「ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向」で触れたOECDに対する拠出金撤回を含むって報道されている法案(Recission Bill)は昨日下院で可決された。法案そのものには対象国際機関の個々の名称は記載されてないけど下院の資料にOECDやUNの名前が出てたんで内務省管轄のCIO accountからの拠出取り消しに含まれてるって推測される。次は上院だけど、面白いことにRecission Billは通常の上院60票ではなくReconciliationパッケージ同様に50票超の単純多数決で可決される。この辺の話しは専門外なんで理解している範囲での話しだけど、Recission Billを規定している「the Impoundment Control Act of 1974」では予算撤回を迅速に可能にするためRecission Billは「privileged」っていう位置づけにあるからっていうこと。ただ、共和党上院議員にも歳出減に躊躇しがちな議員は結構いるんで単純多数欠だからって可決が保証されてる訳じゃない。タイミング的にも上院の優先順位は当然Mega-Bill可決の方が高いんでJohn ThuneによるとRecission Billの審議はMega-Bill可決後の7月にずれ込むっていうことだ。
う~ん、$9B(Billion)のRecission Billの可決が定かじゃないってというこの厳しい現実。これじゃ米国の債務$36T(こちらはTrillion)はいつまでたっても解消できないよね。
Section 899 下院法案「Specified rate of tax」
Super-BEAT以外の元祖Section 899部分の下院法案の規則は3つの定義される用語で構成される。すなわち「Applicable Person」に関して各「Specified rate of tax」に「Applicable number of percentage points」を足すっていうもの。「Applicable Person」に関しては前回「Section 899下院法案バージョン (3)」で触れたし、「Applicable number of percentage points」は付加税%って勝手に命名して「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた。
で、最後に残るのが「Specified rate of tax」だけど、tax rateって表現されているものの要は付加税を足す対象となる税金タイプのことって考えると分かり易い。ただ、税金タイプに%を足すっていうのは表現としてパラレルじゃないんで、付加税%を足す対象として「定義される特定の税率」っていう意味でこんな規定になってる。付加税対象の税金タイプは下院法案(Track 3)になる前の1月21日のTrack 2に当たるH.R.591とほぼ同じなんで当時のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」を読んでみて欲しい。
マイナーだけど変更点としては下院法案では1月21日のH.R.591の付加税の対象税金タイプに「section 4948」(Private foundationに対するExcise tax)が加えられている。さらに前回触れた通り下院法案にはForeign Governmentに対する特別恩典はないってここ部分に追記がある。さらにH.R.591では条約レートは無視するって明記されてたけど、既に何回か触れた通り下院法案では条約を適用したレートがスターティングポイントになる。
また法文そのものじゃないけど、下院が上院に法案を送付した際に下院Budget Committeeが解説を加えてて、その中のsection 899の付加税に関してFootnoteがある。Footnoteによると付加税は特定税率(Specified tax rate)を上方修正する「だけ」の仕組みなので、そもそもSpecified taxの適用が明文的に免除されているケースには付加税の適用はないとしている。その例としてProfits interest exemptionが名指しされている。さらに条約で減免されているケースは結果として0%になってるとしても法的に課税が免除されている状況とは異なるとして区別している。
ということで次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね。
Mega-Billのタックス部分を上院で担当するFinance Committeeが税制改正上院バージョンドラフトを今日(米国金曜日)にも公表するかもって噂されてたんでソワソワ・ワクワク (?)してたんだけど未だ出てないんで、結局来週になるのかもね。13日の金曜日は縁起悪いって考えた?なんてことはないと思うけど、DCの常識的に、この手のドラフトをあんまり前もって白日の下に晒すと、様々な利権を持つ者が精査してLast minuteのロビー活動に繋がるんで、来週奇襲攻撃的に公開するっていう戦術に出てるのかもね。
Medicaidは別の管轄なんで置いておいて税制面で、上院バージョンが公開される際の関心は下院・上院間で温度差が浮き彫りになってる項目にどんな風に対処するかっていう点。すなわちSALT控除枠が$40Kのままか、チップ・残業代非課税がSurviveするか、163(j)/174/168(k)の時限救済を恒久化できるか、エネジークレジットの撤廃タイミングを緩和するか、が主たる関心事になる。これは上院がポリシーとしてどう考えるかっていう角度からの興味もなくはないけど、以前も増れた通り下院バージョンからの乖離が大きくなると両院一致バージョンを早期に可決するゴールに影響があるっていうポリティクスの問題が大きい。
これら争点となっている政策は各々Mega-Billの財政コスト面でプレッシャーが高くなるんでこれらを取り込むとDeficit Hawk派と最後の線で保ってるバランス調整が更に複雑になる。コップのウォッカがこぼれ落ちる寸前までコインを沈め合ってる感じ。そんなかけひきも近頃はもどかしくなっていっそ倒しちゃうようなことがないようにね。メレンゲはホイップし過ぎたらしぼむんでちょうど良い頃合いに止めないとね。う~ん、Voyager良く聴いたな~。この前一瞬触れたRubber SoulからPepperじゃないけど、Pearl Pierce、Reincarnation、Voyager、No Sideって続くあの4枚は個人的にはMark II (?)のGolden Ageで今聴いても素晴らしい。それよりもっと前の子供の頃に聴いてた、ひこうき雲やMisllim、そしてその後のCOBALT HOUR(卒業写真!)、14番目の月(中央フリーウェイ!)なんかのMark Iもいいよね!
で、上院サイドのDeficit Hawk派はトランプが説得に回り徐々にRand Paul以外は歩み寄りの気配があるっていう報道(Rand Paulは結局ホワイトハウスのピクニックに招待してもらえたそう!)。え~Ron Johnsonも歩み寄り~?って思うかもしれないけど、Mega-Billとは別ルートで大統領府と赤字削減プランを協議するっていう約束になったっていう報道もある。ただSALTの控除枠に関して$30Kか$40Kかとか喧喧囂囂の駆け引きが続く中、上院Deficit Hawk派の一人のRick Scott (R-FL)がどれ位の控除枠だったら受け入れ可能かって質問された際に「ゼロがいいんじゃないかな」とコメントしたそうだ。けんもほろろだね。
Section 899の行方は?
これらが主たる大物ポイントだけど、最近頻繁に「section 899は上院でも可決しますか?」っていう質問を受けるようになった。テクニカルに正しい回答は「僕は占い師じゃないんで分かりません。トランプもJohn Thuneも定かじゃないと思います」ってものだけど、Bootleg的な回答は「section 899は若干のTweakはあり得てもそのまま可決される可能性大」って考えるのが合理的。最終法案に盛り込まれる確率は個人的には95%超レベルって考えている。ポリティクスに絶対はないんでその範囲では最高得点に属する。
その理由はいくつかあるけど、まず上院以外の2府、下院と行政府(大統領・財務省)は120%法案指示で一枚岩になってる点。1月20日の政権発足と同時に公表された「Global Tax Deal大統領令」と翌日の下院section 899 Take 2のコーディネートぶりは当時のポスティング「「Global Tax Deal」大統領令」で触れてるんでそっちも読んで欲しい。昨日から議会で財務長官のBessentが質疑応答してたけど、その中でsection 899に関しては「Revenge Tax」とか俗称が付いてるけど誤解を招くとした上で他国の暴走を止め米国議業が他国企業とフェアに競争するため必要と100%ディフェンドしていた。反対意見は主に問題国の納税者からのものとも発言してた。上院と下院で意見が割れる大物争点が他にある中、加えてsection 899を喧嘩に加えるインセンティブが上院にあるとは考え難い。
次に、以前も触れたけど、section 899の主たる米国内の反対はWall Streetからに限定されてるって思われる点。国債を含む米国資産への国外からの投資意欲に悪影響があるっていう理由。この点も投資銀行のアナリストによっては「影響はほぼない(Budget Committeeが後からFootnoteでPortfolio Interest Exemptionに影響はなくsection 899付加税の対象ではないってコメント付けたんで特に)」「影響あるとしたら既に織り込み済み」っていう見方をする者も居る。いずれにして審議過程で目立ったマーケットインパクトは見られない。
一方で一般企業はOECDのGlobal Tax Dealにコンプライアンスしたり、米国で合法的に税金払ってるのに、OECDの計算で(例、R&Dクレジット取って)たまたまLow-Taxedになったっていう理由で米国の利益に子会社所在国で課税されることに何の得もないんで、政権によるプッシュバックの評価は高い。噂によるとカナダや欧州の企業も、これで少しでもコンプライアンス負荷が軽減されて欲しいって実は「こっそり」応援してるところも少なくないっていう話しも聞いた(苦笑)。
ビジネス界からのプッシュバックがWall Streetからに限定されてる点と関連するけど、議員は何よりも次の選挙に備えて地元の有権者にいいところを見せないといけない。有権者の視点からから「みなさんのために高い州税の控除枠を拡大しました」とか「みなさんが欲しい太陽光発電の助成金(クレジット)廃止を2年遅らせました」とか「コメ不足をこうして解消します(ゴメン、これは日本か)」は分かり易い。一方で「OECDが世界に働きかけて導入を図っている不公平税制を取り入れている外国の企業に対する懲罰課税を撤廃しました」って言っても「OECD?石油の輸出国の団体だっけ?」とか「撤廃して自分たち(選挙区の一般People)になんか好影響あんの?」「何で外国企業のために時間使ってんの?」みたいな世界だろうから、そこに限られたPolitical Capitalを費やす議員が多いとは思えない。
また、Mega-Billの一つの大きな争点はBudget Windowの今後10年の財政赤字に対するインパクト。昨日のFinance CommitteeのヒアリングでBessent財務長官はCBOのScoreは関税による歳入を無視してる点、Dynamic scoreじゃない点も加味して「Budget Window内で財政は均衡する」っていう見解をシェアしていた。で、ただでさえ歳出減が徹底できず、歳入源は限られている中、$116Bっていう比較的大きな歳入がScoreされてる規則を敢えて撤廃するようなことは考え難い。
Section 899上院バージョン?
大概において上院での可決が見込まれるとして、じゃあ下院法案バージョンの法文に何らかの変更が加えられる可能性はどうだろうか。こちらも「Heaven Knows」(Donna Summer!)の世界だけど、付加税やSuper-BEATにかかわるSubstantiveな変更はないんじゃないかな~。もしかしたらThom Tillis (R-NC)がDiscriminatory Foreign CountryがUTPRを取り下げたりする時間的な猶予をもう少し与えた方がいいとか言ったそうなんで、例えばApplicable Date(常に暦年で国単位でひとつの日。覚えてる?)やFiscal Year納税者の適用開始年度判断時に使用する日にちのひとつ「section 899の可決90日後」っていうのを「180日」に変えたり(可決日次第だけどおそらく180日にすれば暦年ベースのApplicable Dateは早くて2026年の代わりに2027年1月1日になる)っていう感じのマイナーチェンジは考え得る。またWall Streetの懸念を一部払拭した「Portfolio interest exemption」適格の利子所得はsection 899の付加税対象外っていうBudget CommitteeのFootnoteコメントは法文からは明らかじゃないんで、法文自体をテクニカルアップデートして明確化を図るとかもあり得るかもね。
Recission Bill下院可決
数回前のポスティング「ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向」で触れたOECDに対する拠出金撤回を含むって報道されている法案(Recission Bill)は昨日下院で可決された。法案そのものには対象国際機関の個々の名称は記載されてないけど下院の資料にOECDやUNの名前が出てたんで内務省管轄のCIO accountからの拠出取り消しに含まれてるって推測される。次は上院だけど、面白いことにRecission Billは通常の上院60票ではなくReconciliationパッケージ同様に50票超の単純多数決で可決される。この辺の話しは専門外なんで理解している範囲での話しだけど、Recission Billを規定している「the Impoundment Control Act of 1974」では予算撤回を迅速に可能にするためRecission Billは「privileged」っていう位置づけにあるからっていうこと。ただ、共和党上院議員にも歳出減に躊躇しがちな議員は結構いるんで単純多数欠だからって可決が保証されてる訳じゃない。タイミング的にも上院の優先順位は当然Mega-Bill可決の方が高いんでJohn ThuneによるとRecission Billの審議はMega-Bill可決後の7月にずれ込むっていうことだ。
う~ん、$9B(Billion)のRecission Billの可決が定かじゃないってというこの厳しい現実。これじゃ米国の債務$36T(こちらはTrillion)はいつまでたっても解消できないよね。
Section 899 下院法案「Specified rate of tax」
Super-BEAT以外の元祖Section 899部分の下院法案の規則は3つの定義される用語で構成される。すなわち「Applicable Person」に関して各「Specified rate of tax」に「Applicable number of percentage points」を足すっていうもの。「Applicable Person」に関しては前回「Section 899下院法案バージョン (3)」で触れたし、「Applicable number of percentage points」は付加税%って勝手に命名して「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた。
で、最後に残るのが「Specified rate of tax」だけど、tax rateって表現されているものの要は付加税を足す対象となる税金タイプのことって考えると分かり易い。ただ、税金タイプに%を足すっていうのは表現としてパラレルじゃないんで、付加税%を足す対象として「定義される特定の税率」っていう意味でこんな規定になってる。付加税対象の税金タイプは下院法案(Track 3)になる前の1月21日のTrack 2に当たるH.R.591とほぼ同じなんで当時のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」を読んでみて欲しい。
マイナーだけど変更点としては下院法案では1月21日のH.R.591の付加税の対象税金タイプに「section 4948」(Private foundationに対するExcise tax)が加えられている。さらに前回触れた通り下院法案にはForeign Governmentに対する特別恩典はないってここ部分に追記がある。さらにH.R.591では条約レートは無視するって明記されてたけど、既に何回か触れた通り下院法案では条約を適用したレートがスターティングポイントになる。
また法文そのものじゃないけど、下院が上院に法案を送付した際に下院Budget Committeeが解説を加えてて、その中のsection 899の付加税に関してFootnoteがある。Footnoteによると付加税は特定税率(Specified tax rate)を上方修正する「だけ」の仕組みなので、そもそもSpecified taxの適用が明文的に免除されているケースには付加税の適用はないとしている。その例としてProfits interest exemptionが名指しされている。さらに条約で減免されているケースは結果として0%になってるとしても法的に課税が免除されている状況とは異なるとして区別している。
ということで次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね。
Sunday, June 8, 2025
Section 899下院法案バージョン (3)
Mega-Billの中の税法部分の上院バージョンが公表される前にsection 899下院法案バージョンの詳細に戻っておかないとねってことでシリーズ3。下院法案バージョンに関しては国別暦年ベースの付加税適用開始タイミングおよび付加%、そしてDiscriminatory Foreign Countryの納税者がFiscal Year課税年度を採択してるケースの各納税者に対する適用タイミングおよび混合税率の考え方に触れた。今日はsection 899の適用対象者が誰かっていう点に触れたい。
Applicable Person
Super-BEAT以外のsection 899の基本的なアプローチは「Applicable Person」に関して規定されるタイプの税率に付加税を足すっていうもの。源泉税は徴収メカニズムなんで源泉徴収が義務付けられる支払者の位置づけは関係なくて所得を受け取る者が「Applicable Person」かどうかが重要。支払いを受け取る者がApplicable Personの場合に源泉税を徴収・納付する者が付加%を足して源泉する。いずれにしても誰がApplicable Personになるかの判断が重要。
Applicable Personは条文にて下に列挙する者と定義されている。当然だけどいずれもDiscriminatory Foreign Country、すなわちUTPRやDST等のUnfair Foreign Taxesを持つ国に関係する者。ここでは便宜上Discriminatory Foreign Countryを「問題国」って表現しておく。
Foreign Government
まず問題国の「Foreign Government」。法人や個人を超えて堂々のトップバッター。この順序自体に特に深い意味はないのかもしれないけど(そしてもちろん法的なSignificanceはゼロだけど)、なんとなく問題国の法人や個人は自分たちではどうにも対処のしようがない世界で付加税とかの迷惑を被ることになるけど、Foreign GovernmentはUnfair Foreign Taxesを導入している国と一心同体(?)ってことなのかな~とか考えちゃうけどね。この順番チョッと不自然だもんね。
で、ここでいうForeign Governmentは米国税法のsection 892に基づき本来であれば通常の外国法人よりもアップグレードされた特別な特典を受けることができる者。Sovereign Governmentの「Integral Part」およびSovereign Governmentが持つ一定要件を満たす「Controlled Entity」の双方を意味する。俗に言うSWFは通常Controlled EntityとしてForeign Governmentと位置付けられる。米国内外のCommercial Activityがフローすると大変なことになるんで(SWFそのものもだけど、アドバイザーも…)通常のECI以上の超慎重な対応となる。ファンドが通常の外国人LPとは別に892用のFeederを用意したりするのはこのためでCommercial ActivityをフローさせないっていうのはExistential的な検討になる。
Foreign GovernmentがApplicable Personっていうのは定義としての規則なんだけど、Foreign Governmentに関してはApplicable Personなんで付加税適用っていうインパクトはもちろんだけど、加えてわざわざ付加税適用を規定している箇所に「Foreign GovernmentがApplicable Personになる場合section 892(a)に規定されるForeign Governmentの特典はない」って特記がある。SWFのポスティングじゃないんで細かい話しはしないけど、通常の外国法人との比較でForeign Governmentの恩典って主に50%「以上」の持分を持たず、また実質支配下においたりしてない限り米国法人からの配当が条約にかかわりなくゼロ%になる点、また持分が50%未満のUSRPI株式を譲渡してもFIRPTA課税の対象とならないっていう点。もちろんForeign Governmentが同時にQFPFでもあるケースも珍しくないんで、そんなケースではQFPFに認められる別のFIRPTA恩典もプラスで享受することができる。
で、問題国のForeign GovernmentにForeign Governmentの特典がないと一体全体どうなっちゃうの?って言うと、特典がないからと言って全ての所得に自動的に課税されるっていう訳ではなく、要は通常の外国法人と同じシステムで課税されるっていう取り扱いになる。ただ、問題国の法人は後述の通りApplicable Personとして付加税の対象になるんで、通常の外国法人として条約を加味した後にsection 899のインパクトを図ることになる。
個人
次は個人(Individual)に関してだけど、こちらは問題国の税務上の居住者で米国市民や米国居住者でない者。1月21日の原案では「市民(Citizen)」だったけど下院法案バージョンでは「居住者(Resident)」に変更されている。ということは例えば日本の例だと、日本の法令で非居住者になると日本に関してはApplicable Personじゃなくなるってことになる。だけど、問題国は個人が市民権を持っている国に限定されないんで、例えば英国の居住者になったりするとそれはそれで英国が理由でApplicable Personになっちゃうよね。なんで英国を例にしたかは分かるね。英国はUTPR、DST、DPTの3冠王だからね!3冠王でも付加税が3倍になることはないんでその点は安心(?)。逆に言えばひとつでも持ってるとNGだからね。
また、米国に引っ越す場合、例えば暦年の後半に日本を出て日本の法令で非居住者になっても(これは日本の法令で専門外なんで例)米国の国内法では翌年の1月1日からしか居住者にならないことが多い(出国以前過去3年間にどれだけ米国に足を踏み入れてたか次第)。それでも日本の居住者じゃなければ、米国で非居住者でも他のどの国の居住者にもならないだろうからその間は「Nowhere Man」としてNowhere Landに住んでることになるんんでApplicable Personには当たらないことになるはず。う~ん、これこそHe's a real nowhere man…。子供の頃Rubber Soul良く聴いたな~。Rubber SoulからRevolver、そしてPepperまでの進化は直前のHelpとの比較で凄まじい。才能が開花するってああいうことだね!で、Applicable Personの話しに戻るけど(安心した?)課税年度毎で計算する税金に関して同じ課税年度(暦年)内にApplicable Personとそうでない期間が混在する場合の取り扱いは今一つ明確じゃない気がする。また、前回のByrd Ruleの絡みもあるんで居住関係は条約も加味して判断していいって考えるのが自然だと思うんで4条のTie-Breakerとか適用してたらその前提でApplicable Personかどうかを判断することになるんだろう。市民っていう定義じゃなくなったんで、米国駐在期間は原則Applicable Personにはならないことになる。また個人に関してはFIRPTA以外のECIには付加税の適用はないって明確になったんでその点でも相当Scopeが狭まる。個人は良かったね。
法人
次に問題国の法人。正確には問題国の居住者と取り扱われる法人。ただし、米国所有外国法人(a United States-owned foreign corporation)は除外。この米国所有外国法人は外国税額控除の制限枠を規定している条文に定義があり、米国人(米国居住者、市民、米国法人、米国パートナーシップ、米国信託、米国遺産)に直接・間接に50%以上の議決権または価値を所有される外国法人を言う。この判断時には株式を取得するオプション(そのオプションを取得するオプションも含む)はオプションでオプション所有者が対象株式を所有しているかのように取り扱う。
例えば、米国法人の英国子会社(英国居住法人扱いと仮定)は問題国の法人なんで本来であればApplicable Personだけど、米国所有外国法人なんでApplicable Personにはならないことになる。英国って国単位では問題国(Discriminatory Foreign Country)だとしても。
さらに問題国の居住法人でなくても、50%超の議決権または価値を直接・間接にApplicable Personが所有している外国法人もApplicable Personに当たる。ただし、この目的では上場企業は免除。注意が必要なのは上場企業に適用される例外はあくまでその法人の居住地は問題国じゃないケースのみ。すなわちそんなケースでは上場企業の持分が他国のApplicable Personに50%超所有されててもApplicable Personにならないってことだろう。上場企業の居住国そのものが問題国の場合、上場企業だからってApplicable Personにならないっていう例外はない。
上場企業以外の法人がUnfair Foreign Taxesを導入していない優等生国(?)の居住法人の場合、それでもApplicable Personになるかどうかの判断には法人の持分を正確に特定する必要がある。容易に特定できるケースも少なくないかもしれないけど、場合によっては特定が難しいケースもあるだろう。ケイマンファンド経由とかで所有されているようなケースだと法人はBeneficial Ownerが分からない可能性大。どうするんでしょうか。USRPIみたいに反証できなければApplicable Personみたいな規則が出るのかな。
Private Foundation
どれだけ読者の皆さんに影響があるか分かんないけど、問題国で創設(Created)される、または組成(Organized)されるPrivate Foundation。付加税の規則ではPrivate Foundationに課せられるExcise Taxは付加税対象タイプって明記されてる。
信託
信託は米国内外を問わず受益権(「Beneficiary Interest」)の50%超(「Majority」)をApplicable Personに所有されているケース。
外国パートナーシップ・支店等
外国パートナーシップ、支店、その他の主体に関しては財務省が定める範囲でApplicable Personになる。条文の文言的にこれらの主体・支店は財務省規則(またはNotice等のSub-Guidance)が公表されるまではApplicable Personには当たらないことになる。パートナーシップはなぜ法人や信託みたいにCapital InterestまたはProfits Interestの50%超をApplicable Personに所有されているケースとかしないんだろうって思うかもしれいけど、おそらく持分の認定を704ベースとかで判断するのは難しいし、パススルーなんでパートナー自身がApplicable Personだったらいずれにしても他の定義でカバーされるっていうことで、仮に外国パートナーシップ自体がApplicable Personかどうか不明でも、パートナーがApplicable Personだったら外国パートナーシップからAllocationされる米国課税対象所得にはパートナーが直接受け取ったかのようにsection 899の適用があるっていうことに見える。
財務省による免除権限
実はApplicable Personの定義に、全てのタイプのApplicable Personに関して「Except as otherwise provided by the Secretary」っていう例外が規定されている。ここで言うSecretaryは財務長官のこと。つまり上に列挙した者でも財務長官権限で「Applicable Personではない」っていう指定が可能なことになる。例外規定なんで法文解釈の「いろは」的に狭義に解釈し、例外が公表されるまでは例外はないってことだけど、これはランダムにこの人はOKというような例外じゃなくて、問題国がUnfair Foreign Taxesを撤廃する手続き中とかの状況に認められるタイプの緩和措置っていうのが趣旨だろう。
ということで次回は下院法案バージョンの付加税対象タイプの税金に関して。上院の動向次第でテーマ変わるかもしれないけどね。
Applicable Person
Super-BEAT以外のsection 899の基本的なアプローチは「Applicable Person」に関して規定されるタイプの税率に付加税を足すっていうもの。源泉税は徴収メカニズムなんで源泉徴収が義務付けられる支払者の位置づけは関係なくて所得を受け取る者が「Applicable Person」かどうかが重要。支払いを受け取る者がApplicable Personの場合に源泉税を徴収・納付する者が付加%を足して源泉する。いずれにしても誰がApplicable Personになるかの判断が重要。
Applicable Personは条文にて下に列挙する者と定義されている。当然だけどいずれもDiscriminatory Foreign Country、すなわちUTPRやDST等のUnfair Foreign Taxesを持つ国に関係する者。ここでは便宜上Discriminatory Foreign Countryを「問題国」って表現しておく。
Foreign Government
まず問題国の「Foreign Government」。法人や個人を超えて堂々のトップバッター。この順序自体に特に深い意味はないのかもしれないけど(そしてもちろん法的なSignificanceはゼロだけど)、なんとなく問題国の法人や個人は自分たちではどうにも対処のしようがない世界で付加税とかの迷惑を被ることになるけど、Foreign GovernmentはUnfair Foreign Taxesを導入している国と一心同体(?)ってことなのかな~とか考えちゃうけどね。この順番チョッと不自然だもんね。
で、ここでいうForeign Governmentは米国税法のsection 892に基づき本来であれば通常の外国法人よりもアップグレードされた特別な特典を受けることができる者。Sovereign Governmentの「Integral Part」およびSovereign Governmentが持つ一定要件を満たす「Controlled Entity」の双方を意味する。俗に言うSWFは通常Controlled EntityとしてForeign Governmentと位置付けられる。米国内外のCommercial Activityがフローすると大変なことになるんで(SWFそのものもだけど、アドバイザーも…)通常のECI以上の超慎重な対応となる。ファンドが通常の外国人LPとは別に892用のFeederを用意したりするのはこのためでCommercial ActivityをフローさせないっていうのはExistential的な検討になる。
Foreign GovernmentがApplicable Personっていうのは定義としての規則なんだけど、Foreign Governmentに関してはApplicable Personなんで付加税適用っていうインパクトはもちろんだけど、加えてわざわざ付加税適用を規定している箇所に「Foreign GovernmentがApplicable Personになる場合section 892(a)に規定されるForeign Governmentの特典はない」って特記がある。SWFのポスティングじゃないんで細かい話しはしないけど、通常の外国法人との比較でForeign Governmentの恩典って主に50%「以上」の持分を持たず、また実質支配下においたりしてない限り米国法人からの配当が条約にかかわりなくゼロ%になる点、また持分が50%未満のUSRPI株式を譲渡してもFIRPTA課税の対象とならないっていう点。もちろんForeign Governmentが同時にQFPFでもあるケースも珍しくないんで、そんなケースではQFPFに認められる別のFIRPTA恩典もプラスで享受することができる。
で、問題国のForeign GovernmentにForeign Governmentの特典がないと一体全体どうなっちゃうの?って言うと、特典がないからと言って全ての所得に自動的に課税されるっていう訳ではなく、要は通常の外国法人と同じシステムで課税されるっていう取り扱いになる。ただ、問題国の法人は後述の通りApplicable Personとして付加税の対象になるんで、通常の外国法人として条約を加味した後にsection 899のインパクトを図ることになる。
個人
次は個人(Individual)に関してだけど、こちらは問題国の税務上の居住者で米国市民や米国居住者でない者。1月21日の原案では「市民(Citizen)」だったけど下院法案バージョンでは「居住者(Resident)」に変更されている。ということは例えば日本の例だと、日本の法令で非居住者になると日本に関してはApplicable Personじゃなくなるってことになる。だけど、問題国は個人が市民権を持っている国に限定されないんで、例えば英国の居住者になったりするとそれはそれで英国が理由でApplicable Personになっちゃうよね。なんで英国を例にしたかは分かるね。英国はUTPR、DST、DPTの3冠王だからね!3冠王でも付加税が3倍になることはないんでその点は安心(?)。逆に言えばひとつでも持ってるとNGだからね。
また、米国に引っ越す場合、例えば暦年の後半に日本を出て日本の法令で非居住者になっても(これは日本の法令で専門外なんで例)米国の国内法では翌年の1月1日からしか居住者にならないことが多い(出国以前過去3年間にどれだけ米国に足を踏み入れてたか次第)。それでも日本の居住者じゃなければ、米国で非居住者でも他のどの国の居住者にもならないだろうからその間は「Nowhere Man」としてNowhere Landに住んでることになるんんでApplicable Personには当たらないことになるはず。う~ん、これこそHe's a real nowhere man…。子供の頃Rubber Soul良く聴いたな~。Rubber SoulからRevolver、そしてPepperまでの進化は直前のHelpとの比較で凄まじい。才能が開花するってああいうことだね!で、Applicable Personの話しに戻るけど(安心した?)課税年度毎で計算する税金に関して同じ課税年度(暦年)内にApplicable Personとそうでない期間が混在する場合の取り扱いは今一つ明確じゃない気がする。また、前回のByrd Ruleの絡みもあるんで居住関係は条約も加味して判断していいって考えるのが自然だと思うんで4条のTie-Breakerとか適用してたらその前提でApplicable Personかどうかを判断することになるんだろう。市民っていう定義じゃなくなったんで、米国駐在期間は原則Applicable Personにはならないことになる。また個人に関してはFIRPTA以外のECIには付加税の適用はないって明確になったんでその点でも相当Scopeが狭まる。個人は良かったね。
法人
次に問題国の法人。正確には問題国の居住者と取り扱われる法人。ただし、米国所有外国法人(a United States-owned foreign corporation)は除外。この米国所有外国法人は外国税額控除の制限枠を規定している条文に定義があり、米国人(米国居住者、市民、米国法人、米国パートナーシップ、米国信託、米国遺産)に直接・間接に50%以上の議決権または価値を所有される外国法人を言う。この判断時には株式を取得するオプション(そのオプションを取得するオプションも含む)はオプションでオプション所有者が対象株式を所有しているかのように取り扱う。
例えば、米国法人の英国子会社(英国居住法人扱いと仮定)は問題国の法人なんで本来であればApplicable Personだけど、米国所有外国法人なんでApplicable Personにはならないことになる。英国って国単位では問題国(Discriminatory Foreign Country)だとしても。
さらに問題国の居住法人でなくても、50%超の議決権または価値を直接・間接にApplicable Personが所有している外国法人もApplicable Personに当たる。ただし、この目的では上場企業は免除。注意が必要なのは上場企業に適用される例外はあくまでその法人の居住地は問題国じゃないケースのみ。すなわちそんなケースでは上場企業の持分が他国のApplicable Personに50%超所有されててもApplicable Personにならないってことだろう。上場企業の居住国そのものが問題国の場合、上場企業だからってApplicable Personにならないっていう例外はない。
上場企業以外の法人がUnfair Foreign Taxesを導入していない優等生国(?)の居住法人の場合、それでもApplicable Personになるかどうかの判断には法人の持分を正確に特定する必要がある。容易に特定できるケースも少なくないかもしれないけど、場合によっては特定が難しいケースもあるだろう。ケイマンファンド経由とかで所有されているようなケースだと法人はBeneficial Ownerが分からない可能性大。どうするんでしょうか。USRPIみたいに反証できなければApplicable Personみたいな規則が出るのかな。
Private Foundation
どれだけ読者の皆さんに影響があるか分かんないけど、問題国で創設(Created)される、または組成(Organized)されるPrivate Foundation。付加税の規則ではPrivate Foundationに課せられるExcise Taxは付加税対象タイプって明記されてる。
信託
信託は米国内外を問わず受益権(「Beneficiary Interest」)の50%超(「Majority」)をApplicable Personに所有されているケース。
外国パートナーシップ・支店等
外国パートナーシップ、支店、その他の主体に関しては財務省が定める範囲でApplicable Personになる。条文の文言的にこれらの主体・支店は財務省規則(またはNotice等のSub-Guidance)が公表されるまではApplicable Personには当たらないことになる。パートナーシップはなぜ法人や信託みたいにCapital InterestまたはProfits Interestの50%超をApplicable Personに所有されているケースとかしないんだろうって思うかもしれいけど、おそらく持分の認定を704ベースとかで判断するのは難しいし、パススルーなんでパートナー自身がApplicable Personだったらいずれにしても他の定義でカバーされるっていうことで、仮に外国パートナーシップ自体がApplicable Personかどうか不明でも、パートナーがApplicable Personだったら外国パートナーシップからAllocationされる米国課税対象所得にはパートナーが直接受け取ったかのようにsection 899の適用があるっていうことに見える。
財務省による免除権限
実はApplicable Personの定義に、全てのタイプのApplicable Personに関して「Except as otherwise provided by the Secretary」っていう例外が規定されている。ここで言うSecretaryは財務長官のこと。つまり上に列挙した者でも財務長官権限で「Applicable Personではない」っていう指定が可能なことになる。例外規定なんで法文解釈の「いろは」的に狭義に解釈し、例外が公表されるまでは例外はないってことだけど、これはランダムにこの人はOKというような例外じゃなくて、問題国がUnfair Foreign Taxesを撤廃する手続き中とかの状況に認められるタイプの緩和措置っていうのが趣旨だろう。
ということで次回は下院法案バージョンの付加税対象タイプの税金に関して。上院の動向次第でテーマ変わるかもしれないけどね。
Saturday, June 7, 2025
Section 899最大の難関「Byrd Rule」Parliamentarianから合格通知
う~ん、section 899、Super-BEAT、OECD De-funding等の対抗策は2024年の選挙で共和党がTrifactaになったら現実的って2023年当時から警鐘を鳴らし続けたけど、世間では全然Catch-Onしなくて(苦笑)、今になってメインストリームメディアとかが「section 899が…」とか条文番号にまで言及して大騒ぎしてるんでなんだかな~って感じ。米国ではsection 899は「Revenge Tax」っていう俗称が一般化してる始末。
Section 899は予算調整法(Byrd Rule)の範囲内?
Mega-Billを上院共和党が可決できるかどうか以前にsection 899やMega-Billに盛り込まれている規則の一部にはテクニカルなチャレンジがある。予算調整法って言う特別な手続きで上院を可決させることができる内容の規定かどうかっていう点を取り締まるByrd Ruleだ。Byrd Ruleは上院60票の代わりに単純多数決の50票超(議員投票で50の場合はVPのバンスがCasting Vote)での可決が許されるための条件を規定してるルール。上院可決時のルールなんで、元々多数決で法案を通す下院には直接関係ない世界。ただ下院としても上院で予算調整法スコープ外でキックアウトされるような法案を可決しても時間の無駄なんで当然そうならないよう配慮する。
Section 899に関しては主に2つの論点があり得て、1つ目は条約をオーバーライドしてしまうことで税法の範疇よりも外交ポリシー達成を主たる目的としてるんで予算調整法では制定できないんではっていう点、もう1つは予算調整法は法律が歳入・歳出に影響する必要があり、また10年間のBudget Windowを超えて赤字を計上してはいけないっていう点。以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンではこの辺りを十分に加味して、1月に提出されたバージョンと異なり付加%は条約レートからスタートさせるっていう配慮を見せ、歳入・歳出面に関しては長期間に亘る財務長官の交渉規定を撤廃、財務省の検討を待たずにUTPR、DST、DPTをUnfair Foreign Taxesと明記し歳入のScoreを容易にしている。それを受けてJoint Committee of Taxationは10年間のBudget Windowで$161Bの歳入があるってScoreしてる。ただ2034年には$8B程度のマイナスに転じるってJCTは言ってるんで、そのままマイナスが続くとBudget Windowを超える期間の赤字がBudget Window内の黒字$161Bを超えてしまってByrd Rule違反ではっていうリスクもある。ただ、161対8だからその後20年掛けて2055年にはネットで赤字転落…っていうようなほぼ意味のない数字を基にNGになるリスクは少ない。Budget Windowで$161Bプラスっていうのは他の規定との比較においてもかなり立派な歳入源。
Byrd Rule違反かどうか誰が判断?
法案のどの規定がByrd Rule違反で予算調整法内で可決不可かっていう判断は上院のParliamentarianって呼ばれる人物が行う。Parliamentarianは一人だけだから凄い権力で、Elizabeth MacDonoughが2012年から10年以上君臨している。このParliamentarianの判断はなかなか油断大敵で例えばInflation Reduction Act審議時点でもPrivate Insurance MarketのPrescription Drug Priceがインフレ率よりも高騰する点を規制する条項は「歳入インパクトは単に付随的で、主にポリシー設定が目的」っていう理由でキックアウトされている。Section 899も上述の通り外交ポリシー設定が主目的って位置付けられると同じようなうきめにあうリスクが存在する。週末を迎える段階では現時点でParliamentarianからsection 899に関してネガティブな話しは伝わっている形跡はなく、何か問題があるんだったら何らかの前触れがあるだろうから下院が可決したバージョンは工夫されてるんでセーフでは?っていうのが大概の見方だった。
そして結果は?
週末のプレスによるとParliamentarianは少なくとも条項そのものをキックアウトするような理由はないって判断したようでこのまま上院の審議対象OKっていう合格通知が届いたようだ。細部で修正が求められる可能性は残るものの手続き的に致命傷を負うことなく進むことになった。
大領領および財務省は完全にバックアップしているんでWall Street系の懸念がどの程度上院に響くかがキー。Wall Streetって言えば、メディアのWSJは「Revenge Tax」は理に適ってて解決策はいとも簡単、すなわち外国が米国を差別しているUTPRやDSTを撤回すればいいだけでシンプルだから可決すればいいとバッサリ。
上院Finance Committeeのマークアップの初版が早ければ週末または週明けには公開されるっていう噂があるんでsection 899ばかりじゃなくエネジークレジットの撤廃タイミングやSALTの対処も目が離せないね。
Section 899は予算調整法(Byrd Rule)の範囲内?
Mega-Billを上院共和党が可決できるかどうか以前にsection 899やMega-Billに盛り込まれている規則の一部にはテクニカルなチャレンジがある。予算調整法って言う特別な手続きで上院を可決させることができる内容の規定かどうかっていう点を取り締まるByrd Ruleだ。Byrd Ruleは上院60票の代わりに単純多数決の50票超(議員投票で50の場合はVPのバンスがCasting Vote)での可決が許されるための条件を規定してるルール。上院可決時のルールなんで、元々多数決で法案を通す下院には直接関係ない世界。ただ下院としても上院で予算調整法スコープ外でキックアウトされるような法案を可決しても時間の無駄なんで当然そうならないよう配慮する。
Section 899に関しては主に2つの論点があり得て、1つ目は条約をオーバーライドしてしまうことで税法の範疇よりも外交ポリシー達成を主たる目的としてるんで予算調整法では制定できないんではっていう点、もう1つは予算調整法は法律が歳入・歳出に影響する必要があり、また10年間のBudget Windowを超えて赤字を計上してはいけないっていう点。以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンではこの辺りを十分に加味して、1月に提出されたバージョンと異なり付加%は条約レートからスタートさせるっていう配慮を見せ、歳入・歳出面に関しては長期間に亘る財務長官の交渉規定を撤廃、財務省の検討を待たずにUTPR、DST、DPTをUnfair Foreign Taxesと明記し歳入のScoreを容易にしている。それを受けてJoint Committee of Taxationは10年間のBudget Windowで$161Bの歳入があるってScoreしてる。ただ2034年には$8B程度のマイナスに転じるってJCTは言ってるんで、そのままマイナスが続くとBudget Windowを超える期間の赤字がBudget Window内の黒字$161Bを超えてしまってByrd Rule違反ではっていうリスクもある。ただ、161対8だからその後20年掛けて2055年にはネットで赤字転落…っていうようなほぼ意味のない数字を基にNGになるリスクは少ない。Budget Windowで$161Bプラスっていうのは他の規定との比較においてもかなり立派な歳入源。
Byrd Rule違反かどうか誰が判断?
法案のどの規定がByrd Rule違反で予算調整法内で可決不可かっていう判断は上院のParliamentarianって呼ばれる人物が行う。Parliamentarianは一人だけだから凄い権力で、Elizabeth MacDonoughが2012年から10年以上君臨している。このParliamentarianの判断はなかなか油断大敵で例えばInflation Reduction Act審議時点でもPrivate Insurance MarketのPrescription Drug Priceがインフレ率よりも高騰する点を規制する条項は「歳入インパクトは単に付随的で、主にポリシー設定が目的」っていう理由でキックアウトされている。Section 899も上述の通り外交ポリシー設定が主目的って位置付けられると同じようなうきめにあうリスクが存在する。週末を迎える段階では現時点でParliamentarianからsection 899に関してネガティブな話しは伝わっている形跡はなく、何か問題があるんだったら何らかの前触れがあるだろうから下院が可決したバージョンは工夫されてるんでセーフでは?っていうのが大概の見方だった。
そして結果は?
週末のプレスによるとParliamentarianは少なくとも条項そのものをキックアウトするような理由はないって判断したようでこのまま上院の審議対象OKっていう合格通知が届いたようだ。細部で修正が求められる可能性は残るものの手続き的に致命傷を負うことなく進むことになった。
大領領および財務省は完全にバックアップしているんでWall Street系の懸念がどの程度上院に響くかがキー。Wall Streetって言えば、メディアのWSJは「Revenge Tax」は理に適ってて解決策はいとも簡単、すなわち外国が米国を差別しているUTPRやDSTを撤回すればいいだけでシンプルだから可決すればいいとバッサリ。
上院Finance Committeeのマークアップの初版が早ければ週末または週明けには公開されるっていう噂があるんでsection 899ばかりじゃなくエネジークレジットの撤廃タイミングやSALTの対処も目が離せないね。
Wednesday, June 4, 2025
ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向
いよいよ上院が休会から戻ってきたんで今週からMega-Bill上院審議開始。既にArmed Services等の物議を醸しにくいCommitteeは自分担当部分のMega-Bill上院版を完成させつつあるっていう話し。
Rescission Bill
一旦予算化された歳出を議会が法律で撤回する手続きをRescissionって言うけど、DOGEが見つけた無駄使いとかで既に予算化されている支出を取り消すためのRescission Bill法案が大統領府から議会に提出されるってホワイトハウスが数日前から言ってた。Rescission Billは予算化(Appropriation)した議会からでも予算を使う立場にある行政府(Executive Branch)の長である大統領からでもどちらも提出できる。で、それが現実に提出されたんだけど、法案では他の多くの撤回に混ざって予算化されていたUN等の国際機関に対する計$437M全額撤回されている。UNとかと並びOECDへの拠出も全額De-Fundが提案されている。ちなみにダボスで有名なWorld Economic Forum(WEF)は近年いろんなスキャンダルが報道されてたり会長が辞任に追い込まれたりって報道されてるけど、このWEFに対する資金供与取り消しも入ってる。WEFってMAGA系や一般PeopleからはOut-of-touchなグローバルエリートの象徴みたいに言われることが多いんで米国が資金拠出を予算化してたことの方が不思議に見えたけど、考えてみれば選挙前に拠出が決まってたのを取り消すっていうことなんだね。政権変わったんで既に拠出は終わってるって勘違いしてた。
OECDのDe-Fundingの動きは数年前からあって何回かポスティングしたことがあるんでそれ自体驚きはない。OECDの予算の結構なポーション(20%程度?)を米国が負担してるって聞いてるんで、にもかかわらず世界を巻き込んでピラー2とかで米国の国家主権を侵害して不快っていう話しも以前からの共和党のスタンス。ただ、共和党Trifectaの状態になってるんで、昨年の予算段階では民主党多数の上院を通らなかった環境と異なり、今回は資金拠出停止が現実になる可能性がある点、以前とは迫力が異なる。
Mega-Bill上院審議
Medicaid、エネジークレジット、SALT控除とか具体的な争点は多岐に亘るけど、いくつか大枠のダイナミクスがあるとするとまず下院リーダーシップ。上院の話ししてんじゃないの?って思うかもしれないけど上院が審議のたたき台となる下院法案はMagic Johnsonの「綱渡り状態の離れ業」で際どく可決に漕ぎつけたもの。したがって下院Mega-Bill法案の内容をあまり大きく変えると、その後の両院一致法案とする際の下院審議がまたしてもドラマチックに困難になるリスク大。このリスクはRealなんで「上院による修正は最低限に…。Delicate balanceを崩さずに」っていうのが下院リーダーシップの願い。この願いはいくらMike JohnsonがMagic Johnsonと言われてももちろん実は生身の人間で本当の魔法使いじゃないんで下院リーダーシップにとってはかなり切実なもの。にもかかわらず本来一番法案を通したいトランプがTruth Socialで「上院は好きにするだろう」みないなコメントをしたりして下院リーダーシップは冷や冷やものだろう。Truth Socialのあのコメントは普通のポリティシャンだったら絶対に敢えて書かないだろう。まあそこがトランプなんだろうね。
もうひとつは(今度こそ上院の)Deficit Hawk派。Rand Paul (R-KY)とRon Johnson (R-WI)の2人は一貫して財政赤字反対だから今のMega-Bill法案では賛成票には数え難い。せめてコロナ前の歳出レベルに戻すべきっていうのが彼らの主張。危機がある毎に政府が大きくなって危機が終わっても小さくならないから累積赤字がここまでの状態になってるんでこの主張はもっともに聞こえるけど普通の議員は歳出減には常に腰が引けるんでなかなか歳出を減らすことはできない。
PaulやJohnsonに比べるともう少し弾力的に対応する余地があるような気もするけど、Mike Lee (R-UT)やRick Scott (R-FL)もいる。ただもっと手ごわいのは実はMitch McConnell (R-KY)、Lisa Murkowski (R-AK)、そしてSusan Collins (R-ME)っていう話しもある。MurkowskiやCollinsはDeficit Hawk派とは真逆の理由で賛成できないんだろうけど、第一期トランプ政権時からトランプとは何かと意見が割れることが多かったんで票読み的にはなるほどねって感がある。McConnellは旧Establishmentの共和党の代表みたいな存在なんでMAGAとはそりが合わない。ただMega-Billのタックス部分の多くはMcConnellの関与も多かったTCJAの延長なんだけどね。McConnellの奥さんはトランプ1.0で交通省長官を務めたElaine Chaoだけど、去年だっけ、彼女のSisterがテキサスに所有する大きなランチに友人を招待して飲んだ後、Tesla運転して別邸に帰ろうとした際、自分のランチ敷地内にあるLake(池?)に暗闇の中落ちて水没してしまった事件はビックリだった。その後もMcConnellは転んで怪我したりして何かとついてない感じ。昔の影響力や政治力を知っているだけに…。
で、下院同様、上院も53対47っていう負けずに僅差だから最後はJDバンスがTie-Breakするとしても造反は3人まで。この線を死守できるかどうか水面下で交渉が始まってるって推測される。これらのDeficit Hawk派が更なる歳出減を要求すると、上院での審議が込み入るばかりでなく、仮に上院で何らかのコンセンサスが得られたとしても今度は修正された法案の下院側の受け入れでひと悶着ってなる。
Cut v Saving
ちなみにDCでのやり取りを見てると、税法そのものは共和党Finance Committeeメンバーが既に大概の方向性を決めてて下院法案と大枠歩調を合わせるっていうような話しがある一方、他の部分、特にMedicaid等のプログラムに関しては更なる歳出減(Cut)がないとDeficit Hawk派は賛成に至らず、1票ほどショートするのではってような憶測が多い。ちなみにこれらのプログラムの歳出カットを語る際、共和党リーダーシップは「Cut」ではなく「Saving」って形容するトレンドがある。そんなの同じじゃんって思うかもしれないけど、プログラム創設の趣旨的に本来恩典があるべき市民のベネフィットは削ることなく、無駄使い、不正や濫用を最小限にするっていうアプローチを強調するため、一般市民のから徴収した税金の無駄使いをSaveするっていう意味。
他にも連邦政府に通常の市民感覚、Common Senseではチョッと想像し難い(ただ、外交とかのIntricateなポリティクスは一般Peopleには理解し難いんでどこまでの支出が米国の利益でどこからが私欲や無駄使いなのかは各自のイデオロギーによるところが大きいよね)巨額の不要な支出、不正、濫用が明らかになってるけど、それらをどこまで法律でFixする規律があるかどうかがキーだろう。OECD資金拠出取り消しのRescission Billは既に予算化されている拠出の撤回だけど、Mega-Billみたいに今後の支出を左右する法案に関して、共和党議員の多くが厳しい票を投じる勇気がない場合、DC系のニュースサークルでチラッと聞いたのは、一旦議会が予算を決めた後、行政府・ホワイトハウスが施行時により低いコストで目的を達成したら差額は議会のRescission可決を経ることなく節約した額を大統領権限で歳出減とすることができるっていう趣旨の文言をMega-Billに盛り込むっていう新案。これだと弱気の共和党議員はハードな票を入れなくてもいい一方、トランプ政権はこの手の歳出減に何の躊躇もないのでガンガンSaveしてくれるのでは、っていう期待で下院法案に大きな変更を加えない状態でConferenceに持ち込むっていうアイディアのようだ。ただ、こんな手法じゃないと膨張し切った歳出もカットできないのは議会的に情けないっていうかArticle 1の義務を市民に負ってる意識が十分じゃない気もするけどね。無駄使いをSaveしたら市民の評価は高いって思うんだけど、その審判を仰ぐ気概もないのかもね。
Section 899は?
下院Section 899法案に対する反対派はいわゆるWall Streetタイプからが多く、米国へのCapital Flowに悪影響があるから好ましくないっていう理由。国の借金が多額な中、さらに外国人が国債を含む米国資産購入を控えるんじゃないかって結構慌て気味。それを受けてビジネス系のニュースサイクルも「ただでさえTreasury Bondが不調なのに…」っていうような論調もあるけど、この4年借金が一気に倍近くになっても余り騒いでなかったのに今更って感じも。Secton 899がなければいつまで借り続けることができるって考えてたんだろうね。Section 899あってもなくても時間の問題って感じはあったんだけど。以前のポスティングで触れたドルのReserve CurrencyとResource Curseの問題だ。
Capital Flowに関してはひとつ救いの手が差し伸べられてる。下院から上院に送付された法案Textに添付されていた下院Budget Committeeには面白いFootnoteが付いてて、そこにはPortfolio Interestに代表される米国内法で非課税と規定される投資所得に関しては5%付加税の対象にはならないって明記してる。この点は条文からは明確じゃない(1月の899案のポスティングで触れたよね)。一方で条約で免税になっているものは本来課税なのでこれとは異なり付加税の対象だそう。え~じゃあBondの金利とか大丈夫じゃんって、これでWall Streetも一安心?Ways and Meansも今日新たなプレスリリースで899に対するパニック反応に対抗するコメントを公表している。
肝心の上院では下院Section 899法案に対して今のところ特に目立った拒絶反応は聞かれない。John Thuneも上院は上院の考えがある的な発言はしているものの899に特化したコメントはない。もっと争点となる大物があるし、Deficit Hawk派との交渉も考えると敢えて$161Bの歳入源ってScoreされてる貴重な規則を廃止するだろうか。ただ、Joint Committeeは10年間のBudget Windowでは$161Bの歳入プラス効果だけど、後半2年(2034年とか)だけに限定してみるとは投資減によるマイナス効果で逆にいくらか歳入が減るって予測してる。ただ、この手のScoreは当たらないし、ましてや2034年に「まだこれだけの国がUTPRを維持してるか…」とか当然不明だからかなりいい加減というかEducated Guessの域を出ない。
ということで現状アップデートでした。
Rescission Bill
一旦予算化された歳出を議会が法律で撤回する手続きをRescissionって言うけど、DOGEが見つけた無駄使いとかで既に予算化されている支出を取り消すためのRescission Bill法案が大統領府から議会に提出されるってホワイトハウスが数日前から言ってた。Rescission Billは予算化(Appropriation)した議会からでも予算を使う立場にある行政府(Executive Branch)の長である大統領からでもどちらも提出できる。で、それが現実に提出されたんだけど、法案では他の多くの撤回に混ざって予算化されていたUN等の国際機関に対する計$437M全額撤回されている。UNとかと並びOECDへの拠出も全額De-Fundが提案されている。ちなみにダボスで有名なWorld Economic Forum(WEF)は近年いろんなスキャンダルが報道されてたり会長が辞任に追い込まれたりって報道されてるけど、このWEFに対する資金供与取り消しも入ってる。WEFってMAGA系や一般PeopleからはOut-of-touchなグローバルエリートの象徴みたいに言われることが多いんで米国が資金拠出を予算化してたことの方が不思議に見えたけど、考えてみれば選挙前に拠出が決まってたのを取り消すっていうことなんだね。政権変わったんで既に拠出は終わってるって勘違いしてた。
OECDのDe-Fundingの動きは数年前からあって何回かポスティングしたことがあるんでそれ自体驚きはない。OECDの予算の結構なポーション(20%程度?)を米国が負担してるって聞いてるんで、にもかかわらず世界を巻き込んでピラー2とかで米国の国家主権を侵害して不快っていう話しも以前からの共和党のスタンス。ただ、共和党Trifectaの状態になってるんで、昨年の予算段階では民主党多数の上院を通らなかった環境と異なり、今回は資金拠出停止が現実になる可能性がある点、以前とは迫力が異なる。
Mega-Bill上院審議
Medicaid、エネジークレジット、SALT控除とか具体的な争点は多岐に亘るけど、いくつか大枠のダイナミクスがあるとするとまず下院リーダーシップ。上院の話ししてんじゃないの?って思うかもしれないけど上院が審議のたたき台となる下院法案はMagic Johnsonの「綱渡り状態の離れ業」で際どく可決に漕ぎつけたもの。したがって下院Mega-Bill法案の内容をあまり大きく変えると、その後の両院一致法案とする際の下院審議がまたしてもドラマチックに困難になるリスク大。このリスクはRealなんで「上院による修正は最低限に…。Delicate balanceを崩さずに」っていうのが下院リーダーシップの願い。この願いはいくらMike JohnsonがMagic Johnsonと言われてももちろん実は生身の人間で本当の魔法使いじゃないんで下院リーダーシップにとってはかなり切実なもの。にもかかわらず本来一番法案を通したいトランプがTruth Socialで「上院は好きにするだろう」みないなコメントをしたりして下院リーダーシップは冷や冷やものだろう。Truth Socialのあのコメントは普通のポリティシャンだったら絶対に敢えて書かないだろう。まあそこがトランプなんだろうね。
もうひとつは(今度こそ上院の)Deficit Hawk派。Rand Paul (R-KY)とRon Johnson (R-WI)の2人は一貫して財政赤字反対だから今のMega-Bill法案では賛成票には数え難い。せめてコロナ前の歳出レベルに戻すべきっていうのが彼らの主張。危機がある毎に政府が大きくなって危機が終わっても小さくならないから累積赤字がここまでの状態になってるんでこの主張はもっともに聞こえるけど普通の議員は歳出減には常に腰が引けるんでなかなか歳出を減らすことはできない。
PaulやJohnsonに比べるともう少し弾力的に対応する余地があるような気もするけど、Mike Lee (R-UT)やRick Scott (R-FL)もいる。ただもっと手ごわいのは実はMitch McConnell (R-KY)、Lisa Murkowski (R-AK)、そしてSusan Collins (R-ME)っていう話しもある。MurkowskiやCollinsはDeficit Hawk派とは真逆の理由で賛成できないんだろうけど、第一期トランプ政権時からトランプとは何かと意見が割れることが多かったんで票読み的にはなるほどねって感がある。McConnellは旧Establishmentの共和党の代表みたいな存在なんでMAGAとはそりが合わない。ただMega-Billのタックス部分の多くはMcConnellの関与も多かったTCJAの延長なんだけどね。McConnellの奥さんはトランプ1.0で交通省長官を務めたElaine Chaoだけど、去年だっけ、彼女のSisterがテキサスに所有する大きなランチに友人を招待して飲んだ後、Tesla運転して別邸に帰ろうとした際、自分のランチ敷地内にあるLake(池?)に暗闇の中落ちて水没してしまった事件はビックリだった。その後もMcConnellは転んで怪我したりして何かとついてない感じ。昔の影響力や政治力を知っているだけに…。
で、下院同様、上院も53対47っていう負けずに僅差だから最後はJDバンスがTie-Breakするとしても造反は3人まで。この線を死守できるかどうか水面下で交渉が始まってるって推測される。これらのDeficit Hawk派が更なる歳出減を要求すると、上院での審議が込み入るばかりでなく、仮に上院で何らかのコンセンサスが得られたとしても今度は修正された法案の下院側の受け入れでひと悶着ってなる。
Cut v Saving
ちなみにDCでのやり取りを見てると、税法そのものは共和党Finance Committeeメンバーが既に大概の方向性を決めてて下院法案と大枠歩調を合わせるっていうような話しがある一方、他の部分、特にMedicaid等のプログラムに関しては更なる歳出減(Cut)がないとDeficit Hawk派は賛成に至らず、1票ほどショートするのではってような憶測が多い。ちなみにこれらのプログラムの歳出カットを語る際、共和党リーダーシップは「Cut」ではなく「Saving」って形容するトレンドがある。そんなの同じじゃんって思うかもしれないけど、プログラム創設の趣旨的に本来恩典があるべき市民のベネフィットは削ることなく、無駄使い、不正や濫用を最小限にするっていうアプローチを強調するため、一般市民のから徴収した税金の無駄使いをSaveするっていう意味。
他にも連邦政府に通常の市民感覚、Common Senseではチョッと想像し難い(ただ、外交とかのIntricateなポリティクスは一般Peopleには理解し難いんでどこまでの支出が米国の利益でどこからが私欲や無駄使いなのかは各自のイデオロギーによるところが大きいよね)巨額の不要な支出、不正、濫用が明らかになってるけど、それらをどこまで法律でFixする規律があるかどうかがキーだろう。OECD資金拠出取り消しのRescission Billは既に予算化されている拠出の撤回だけど、Mega-Billみたいに今後の支出を左右する法案に関して、共和党議員の多くが厳しい票を投じる勇気がない場合、DC系のニュースサークルでチラッと聞いたのは、一旦議会が予算を決めた後、行政府・ホワイトハウスが施行時により低いコストで目的を達成したら差額は議会のRescission可決を経ることなく節約した額を大統領権限で歳出減とすることができるっていう趣旨の文言をMega-Billに盛り込むっていう新案。これだと弱気の共和党議員はハードな票を入れなくてもいい一方、トランプ政権はこの手の歳出減に何の躊躇もないのでガンガンSaveしてくれるのでは、っていう期待で下院法案に大きな変更を加えない状態でConferenceに持ち込むっていうアイディアのようだ。ただ、こんな手法じゃないと膨張し切った歳出もカットできないのは議会的に情けないっていうかArticle 1の義務を市民に負ってる意識が十分じゃない気もするけどね。無駄使いをSaveしたら市民の評価は高いって思うんだけど、その審判を仰ぐ気概もないのかもね。
Section 899は?
下院Section 899法案に対する反対派はいわゆるWall Streetタイプからが多く、米国へのCapital Flowに悪影響があるから好ましくないっていう理由。国の借金が多額な中、さらに外国人が国債を含む米国資産購入を控えるんじゃないかって結構慌て気味。それを受けてビジネス系のニュースサイクルも「ただでさえTreasury Bondが不調なのに…」っていうような論調もあるけど、この4年借金が一気に倍近くになっても余り騒いでなかったのに今更って感じも。Secton 899がなければいつまで借り続けることができるって考えてたんだろうね。Section 899あってもなくても時間の問題って感じはあったんだけど。以前のポスティングで触れたドルのReserve CurrencyとResource Curseの問題だ。
Capital Flowに関してはひとつ救いの手が差し伸べられてる。下院から上院に送付された法案Textに添付されていた下院Budget Committeeには面白いFootnoteが付いてて、そこにはPortfolio Interestに代表される米国内法で非課税と規定される投資所得に関しては5%付加税の対象にはならないって明記してる。この点は条文からは明確じゃない(1月の899案のポスティングで触れたよね)。一方で条約で免税になっているものは本来課税なのでこれとは異なり付加税の対象だそう。え~じゃあBondの金利とか大丈夫じゃんって、これでWall Streetも一安心?Ways and Meansも今日新たなプレスリリースで899に対するパニック反応に対抗するコメントを公表している。
肝心の上院では下院Section 899法案に対して今のところ特に目立った拒絶反応は聞かれない。John Thuneも上院は上院の考えがある的な発言はしているものの899に特化したコメントはない。もっと争点となる大物があるし、Deficit Hawk派との交渉も考えると敢えて$161Bの歳入源ってScoreされてる貴重な規則を廃止するだろうか。ただ、Joint Committeeは10年間のBudget Windowでは$161Bの歳入プラス効果だけど、後半2年(2034年とか)だけに限定してみるとは投資減によるマイナス効果で逆にいくらか歳入が減るって予測してる。ただ、この手のScoreは当たらないし、ましてや2034年に「まだこれだけの国がUTPRを維持してるか…」とか当然不明だからかなりいい加減というかEducated Guessの域を出ない。
ということで現状アップデートでした。
Saturday, May 24, 2025
Section 899下院法案バージョン (2)
3つ前のポスティング「Section 899下院法案バージョン」で下院法案に盛り込まれた改訂Section 899に関して触れたけど、その後あっという間に下院本会議を通過してSection 899はそのまま上院に送り込まれた。
以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンは「UTPR・DST・ DPT」の3つを(制度的に米国法人・市民および米国税法上のCFCに適用がないケースを除き)自動的にUnfair Foreign Taxesと認定し、それらの税法の一つでも採択している国は「Discriminatory Foreign Country」に当たり、そんな国の法人・市民が899対抗規則対象になる。この3つ以外の税制は従来通り、財務長官が域外課税とか差別的課税か判断するんでその公表があって初めてUnfair Foreign Taxになる。
また、従来の法案では実際に対抗措置がトリガーされる前のメカニズムとして財務長官による議会への報告、問題国と一定期間交渉手続き、等の要件が規定されていた(「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (2)」)。これらの手続きは(従来の)899案のフォーカスは必ずしも対抗措置をトリガーすることよりも米国に対する域外課税や差別的課税を取り下げさせる点にあったように見える。下院法案バージョンでは交渉要件は撤廃され、UTPR、DST、DPTを持っている国は財務長官との交渉等のチャンスなくsection 899が可決されると対抗措置の対象になる。この変更は歳入効果の定量化を容易にし、「Scoring」を可能にすることで上院でBudget reconciliationの要件を満たすように工夫されている。結果10年間で$116Bの歳入源になってるけど、この数字は結構大きい。
Section 899下院法案バージョンの対抗措置メカニズム
Section 899下院法案バージョンの「対抗措置メカニズム」そのものは(Super-BEATが加わった以外は)従来の規定とほぼ同じで通常の税率に毎期5%上乗せしますっていう全体像。付加%税率の対象に当たる税金タイプも従来のバージョンのまま。これらは以前のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」で結構細かく触れてるんでここでは省くけどぜひ読んでみて欲しい。
たかが付加%されど…
どんなタイプの税金が付加%の対象になるかって考える際、超ベーシックなレベルで税金は大別して「Substantiveな税金(所得税・法人税)」と「徴収メカニズムに当たる源泉税」の2つがあるっていう点を常に念頭に置いておくと複雑な899メカニズムの理解が進む。前者は問題国の法人・市民に対する税金だけど、後者の源泉税は大概において米国人に課せられる法的義務。両者はミラーイメージなことも多いけど、別の規則に規定される異なる法的義務だからね。この区別に基づく899の複雑性は後述する。
さらにFIRPTAに関するSubstantiveな税金と源泉徴収メカニズムの関係は、最初にFIRPTAが制定された頃はFIRPTA源泉徴収っていう制度は存在しなかったことからも分かる通り、何となくHand-in-handな感じだけど、両者はミラーイメージとなる設計ではない。FIRPTA源泉徴収は源泉税っていうより実質予定納税だし、込み入ったペーパーワークに基づく減額や免除措置があったり元々複雑怪奇なんで、これらに付加%規則をOverlayさせてる899は相当難解。FIRPTAと899の関係は現時点ではOver-the-topな話しになり兼ねないんで899が上院通過したらそのバージョンに基づいて詳しく触れたい。
付加税率とApplicable Date
で、Super-BEAT以外の899対抗措置となる5%から始まる付加%だけど、前述の通り、下院法案バージョンでは財務長官によるリストアップ・相手国との交渉手続き期間等がなくなった関係で付加%が累積していくスターティングポイントは以前よりも早くなる。特定のタイミングで何%付加されるかを判断する際のスターティングポイントは「Applicable Date」っていう概念で管理されるけど、テクニカルにこのApplicable Dateっていう概念は各国単位で付加%が何%なのかっていう判断にのみ影響があり、付加%がどのように899対抗措置として実際に各納税者(源泉税徴収義務者含む)に適用されるかっていうタイミング認定時には登場しない。この部分の条文は良く読まないとかなり難しいよね。この差異は899対抗措置をトリガーするDiscriminatory Foreign Countryっていう認定は個々の企業行動やストラクチャリングではなく各国の法令に基づいて判断される一方、実際に対抗措置で迷惑を被るのはそんな国の納税者っていう制度上の位置づけに起因する。
適用付加%と条約
下院法案バージョンが出る前の1月の899法案では、Discriminatory Foreign Countryの法人・市民に対する法人税・所得税・源泉税に対する付加%上乗せ後の税率は「条約を無視して」決定することになっていた(「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (4)「最新条文はやっぱりさらに強化」」)。この点に関して下院法案バージョンでは緩和があり、付加%は条約適格の納税者に関しては条約レートにプラスするって規定されている。これは条約相手国を慮っての緩和措置と言うよりは、批准手続きを含む条約を取り巻く法的管轄権は上院にあるんで、899法案の上院審議を援護射撃するための配慮っていう背景の方が強かったと思われる。元々、なぜ対抗措置を取ってるかっていうと、基本的にUTPRとかは米国租税条約を無視した課税って米国では考えられてるから下院に相手国を慮ってソフトタッチにする理由はなかったと推測される。
適用付加%
で、付加%がいくらなのかっていう判断法だけど、上述の通り、この判断時にキーとなる概念は「Applicable Date」で対抗措置有無は諸国の税法ベースなんで国単位の判断になる。Applicable Dateは次の3つのタイミングの一番遅い日またはその後に開始する「暦年の1月1日」って規定される。3つのタイミングとは1)Section 899可決(大統領署名)日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの制度上の適用開始日。UTPR・DST・DPTは、米国法人・市民または米国税法上のCFCへの適用が免除されていない限り、自動的にUnfair Foreign Taxになるんで、これらに関しては単純に特定の国がこれをいつ可決し、その国の法令に基づいていつから適用が開始するかを基に判断する。
Applicable Dateは常に暦年の1月1日。適用付加%が5%ずつ増えていくタイミングもApplicable Dateから暦年何年目かを基に累積計算していく。すなわち、3つのタイミングに基づいて決まるApplicable Dateとなる1月1日から始まる暦年一年目は5%、翌年以降は毎1月1日が訪れる度にそこから始まる暦年に5%づつプラスされた数字が適用付加%になる。
で、話しがややこしくなるのは、「国単位」および「暦年単位」で適用される付加%を決めた上で、次に各納税者に適用される付加%の概念が登場してくる点。源泉税以外の所得税・法人税はその計算や課税が特定の日の数字で決まる訳ではなく、常に課税年度単位になることから課税年度が暦年ではないFiscal Yearの納税者の課税年度には(特別な事情でShort Yearになってない限り)必ず2つの暦年が含まれる。こんな状況に適用される付加%は、課税年度に含まれる各暦年の付加%を日数加重平均した混合税率。日数加重平均%を算定する際、納税者が属する問題国に適用される最初のApplicable Date前(すなわち前年12月31日以前)の適用付加%はゼロと考える。例えばApplicable Dateが2026年1月1日となる問題国の納税者が3月課税年度の法人だとすると、その法人に適用される2027年3月期の付加税は約6.26 %になるはず(26年4月~12月が5%で27年1月~3月が10%の日数加重平均による混合税率。計算合ってる?)。Applicable Dateが2027年1月1日の場合、同様に2027年3月期に適用される付加%は約1.23%になるはずだけど、後述の通りこのパターンではまず2027年3月期に付加%が適用されるかどうかの見極めが求められる。
一方、源泉税は課税年度単位の税金ではなく支払い時点の一発勝負なんで、単純に源泉税支払い時点で適用される付加%を参照するって規定されている。例えば上の例で2027年1月1日がApplicable Dateの場合、2026年12月31日以前の源泉税に付加%はなく、2027年1月1日以降は同12月31日まで5%、2028年1月1日から付加は10%…って続いていくんだろう。この目的では受け手の外国法人の課税年度が暦年でもそうでなくても関係ない。
源泉税徴収義務Safe Harbor
源泉税の付加%部分は、財務省がDiscriminatory Foreign Countryのリストを公表するまでは徴収義務が免除される。899が可決した後、比較的直ぐにリストが公表されるんじゃないかって推測され、Applicable Dateまでに公表される場合、Safe Harborは効果がないことになる。さらに私的財団および信託に関してはリスト公表後90日間Safe Harborの延長が認められる。
おそらく所得税・法人税は自らの話しなんで自分がどこに国に属してて899の対象だな、とか判断が容易だけど、場合によっては多くの国に関して源泉税を徴収する義務がある米国人に「この国はDSTがあるな…」とか個々に判断させるのは負荷が高すぎるっていうような理由で規定されるSafe Harborなんだろうか。
付加%の上限Cap
Applicable Date以降の暦年毎に累計で付加される%は付加した結果の累計税率が法定税率プラス20%を上限Capとするって規定されている。例えば源泉税だったら法定税率は30%だからCapは50%で、法人税だったら21%に20%加えて41%。毎期の付加%を加える基となる税率は条約を加味してもいいって規定されてる点は上述の通りだけど、上限Capに関しては条約税率は加味されない。例えば配当に関する源泉税の条約税率が0%の場合、5%を付加した5%源泉税率から始まって、10%、15%って10年かけて50%まで上昇することになる。そんな長期間に亘って899に抵触し続けないことを願うけどね。
で、ここまでは何%付加するかっていう判断の話しで、適用付加%が関係する法人税・所得税および源泉税にかかわる話しとなり、後述のSuper-BEATに付加%っていう概念はないんで、これらの付加%の規則はSuper-BEATには関係がない。
899対抗措置適用対象課税年度
で、次に各納税者のどの課税年度から899対抗策の適用があるかっていう判断法が規定されている。この判断は付加が何%かっている判断とは異なるもの。
課税年度単位の税率っていうのは所得税・法人税の世界の話しなんで、この規則は通常の所得税・法人税およびSuper-BEATに関係する話し。源泉税には付加%の判断同様常に支払日ベースで適用有無が決まる。
納税者の所得税・法人税の話しなんで課税年度単位での計算になることから(もちろん課税年度が暦年のケースは暦年の話し)、一体どの課税年度から所得税・法人税に付加%が適用されたり、Super-BEATでBEAT計算するのかを見極めないといけなくなる。この判断はApplicable Dateの決定に似てるけど暦年や1月1日っていう単位ではない。すなわち判断に使用される日はApplicable Date同様に1)Section 899可決(大統領署名)日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの適用開始日、の3つだけど、この3つの一番遅い日の後(After)に開始する課税年度から所得税・法人税に付加%およびSuper-BEATが適用される。Applicable Dateは「on or after」なんだけどこの目的では単に「After」。超紛らわしいけど、「on or after」と「after」の差異は課税年度初日とUnfair Foreign Tax適用日が同じ日(例、4月1日)の場合、多大なインパクトがある。
判断時に使用される3つの日にちが付加%のApplicable Date判断時に使用される3つの日とダブってて分かり難いかもしれないけど、この考え方でどの課税年度から所得税・法人税に付加%やびSuper-BEATが適用されるかを判断し、その次にだったらその課税年度に適用される付加%を特定するっていう順番でアプローチすると分かり易いと思う。
例えば上の例と同じような設定で、特定の問題国の法人が3月課税年度だとする。899は2025年に可決され、仮にUTPR等のUnfair Foreign Taxの可決および適用が2026年4月1日とする。まず、当法人が法人税に対する付加%およびSuper-BEATに関してどの課税年度から対抗措置の対象になるかっていう点を考えると、上述の通り、1)Section 899可決日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの適用開始日、の3つの一番遅い日より後に開始する課税年度、すなわち2028年3月期(2027年4月~2028年3月)からになるはず。2026年4月1日から始まる2027年3月期は3つの条件の一番遅い日である4月1日より後(after)に開始してないからね。一方、付加%決定目的のApplicable Dateは2027年1月になるんで、2028年3月期の付加%は上述の日数加重平均で決定する。
Substantive税金と源泉税の関係
冒頭に付加%が適用されるタイプの税金は大別してSubstantiveな税金と徴収メカニズムの源泉税の2つに大別されるって書いたけど、暦年以外の課税年度を持つ外国法人はこれらの異なるタイプの税金に対する付加%や適用開始タイミングの差異に基づき複雑な取り扱いに晒される。
例えば付加%目的のApplicable Dateは2027年1月1日、法人税付加%適用初年度は2027年4月~2028年3月課税年度っていう例を続けると、こんな状況で2027年3月に配当が支払われるとすると、それを受け取る外国法人の法人税目的では付加%の適用がないんで30%(または条約低減レート)の法人税(Substantiveな税金)に付加%はなく、条約レートが0%だとすると配当は米国では課税されない(付加%適用初年度は2027年4月から開始だから)。
一方、源泉徴収する側の源泉税に関しては財務省問題国リスト公表済みっていう前提で2027年の付加%は既に5%なんで(Applicable Dateが2027年1月1日なんで)条約レート0%に5%を付加して源泉税を徴収する義務があることなる(この辺りのミスマッチは今後法案が最終化される過程でクリーンアップ、または財務省のガイダンス等で緩和策や新たなSafe Harborが規定される可能性あり)。配当日が2027年3月ではなくチョッとずれて4月になると、受け手の外国法人は4月から開始する課税年度から付加%の適用があり、その課税年度を通じて使用する付加%は日数加重平均ベースなんで、約6.26%になる。一方で源泉税に適用される付加%は2027年を通じて5%。となると3月の配当はOver-withholdingだけど、4月の配当はUnder-withholdingになるように見える。この差異は外国法人がForm 1120FのSection Iを埋めて提出し、差額の還付や追徴処理をするしかない。
とてつもなくややこしい。使った数字はあんまり自信ないから鵜呑みにしないで下さい。ただ考え方は分かってもらえた?次回は適用対象納税者に関して。
以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンは「UTPR・DST・ DPT」の3つを(制度的に米国法人・市民および米国税法上のCFCに適用がないケースを除き)自動的にUnfair Foreign Taxesと認定し、それらの税法の一つでも採択している国は「Discriminatory Foreign Country」に当たり、そんな国の法人・市民が899対抗規則対象になる。この3つ以外の税制は従来通り、財務長官が域外課税とか差別的課税か判断するんでその公表があって初めてUnfair Foreign Taxになる。
また、従来の法案では実際に対抗措置がトリガーされる前のメカニズムとして財務長官による議会への報告、問題国と一定期間交渉手続き、等の要件が規定されていた(「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (2)」)。これらの手続きは(従来の)899案のフォーカスは必ずしも対抗措置をトリガーすることよりも米国に対する域外課税や差別的課税を取り下げさせる点にあったように見える。下院法案バージョンでは交渉要件は撤廃され、UTPR、DST、DPTを持っている国は財務長官との交渉等のチャンスなくsection 899が可決されると対抗措置の対象になる。この変更は歳入効果の定量化を容易にし、「Scoring」を可能にすることで上院でBudget reconciliationの要件を満たすように工夫されている。結果10年間で$116Bの歳入源になってるけど、この数字は結構大きい。
Section 899下院法案バージョンの対抗措置メカニズム
Section 899下院法案バージョンの「対抗措置メカニズム」そのものは(Super-BEATが加わった以外は)従来の規定とほぼ同じで通常の税率に毎期5%上乗せしますっていう全体像。付加%税率の対象に当たる税金タイプも従来のバージョンのまま。これらは以前のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」で結構細かく触れてるんでここでは省くけどぜひ読んでみて欲しい。
たかが付加%されど…
どんなタイプの税金が付加%の対象になるかって考える際、超ベーシックなレベルで税金は大別して「Substantiveな税金(所得税・法人税)」と「徴収メカニズムに当たる源泉税」の2つがあるっていう点を常に念頭に置いておくと複雑な899メカニズムの理解が進む。前者は問題国の法人・市民に対する税金だけど、後者の源泉税は大概において米国人に課せられる法的義務。両者はミラーイメージなことも多いけど、別の規則に規定される異なる法的義務だからね。この区別に基づく899の複雑性は後述する。
さらにFIRPTAに関するSubstantiveな税金と源泉徴収メカニズムの関係は、最初にFIRPTAが制定された頃はFIRPTA源泉徴収っていう制度は存在しなかったことからも分かる通り、何となくHand-in-handな感じだけど、両者はミラーイメージとなる設計ではない。FIRPTA源泉徴収は源泉税っていうより実質予定納税だし、込み入ったペーパーワークに基づく減額や免除措置があったり元々複雑怪奇なんで、これらに付加%規則をOverlayさせてる899は相当難解。FIRPTAと899の関係は現時点ではOver-the-topな話しになり兼ねないんで899が上院通過したらそのバージョンに基づいて詳しく触れたい。
付加税率とApplicable Date
で、Super-BEAT以外の899対抗措置となる5%から始まる付加%だけど、前述の通り、下院法案バージョンでは財務長官によるリストアップ・相手国との交渉手続き期間等がなくなった関係で付加%が累積していくスターティングポイントは以前よりも早くなる。特定のタイミングで何%付加されるかを判断する際のスターティングポイントは「Applicable Date」っていう概念で管理されるけど、テクニカルにこのApplicable Dateっていう概念は各国単位で付加%が何%なのかっていう判断にのみ影響があり、付加%がどのように899対抗措置として実際に各納税者(源泉税徴収義務者含む)に適用されるかっていうタイミング認定時には登場しない。この部分の条文は良く読まないとかなり難しいよね。この差異は899対抗措置をトリガーするDiscriminatory Foreign Countryっていう認定は個々の企業行動やストラクチャリングではなく各国の法令に基づいて判断される一方、実際に対抗措置で迷惑を被るのはそんな国の納税者っていう制度上の位置づけに起因する。
適用付加%と条約
下院法案バージョンが出る前の1月の899法案では、Discriminatory Foreign Countryの法人・市民に対する法人税・所得税・源泉税に対する付加%上乗せ後の税率は「条約を無視して」決定することになっていた(「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (4)「最新条文はやっぱりさらに強化」」)。この点に関して下院法案バージョンでは緩和があり、付加%は条約適格の納税者に関しては条約レートにプラスするって規定されている。これは条約相手国を慮っての緩和措置と言うよりは、批准手続きを含む条約を取り巻く法的管轄権は上院にあるんで、899法案の上院審議を援護射撃するための配慮っていう背景の方が強かったと思われる。元々、なぜ対抗措置を取ってるかっていうと、基本的にUTPRとかは米国租税条約を無視した課税って米国では考えられてるから下院に相手国を慮ってソフトタッチにする理由はなかったと推測される。
適用付加%
で、付加%がいくらなのかっていう判断法だけど、上述の通り、この判断時にキーとなる概念は「Applicable Date」で対抗措置有無は諸国の税法ベースなんで国単位の判断になる。Applicable Dateは次の3つのタイミングの一番遅い日またはその後に開始する「暦年の1月1日」って規定される。3つのタイミングとは1)Section 899可決(大統領署名)日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの制度上の適用開始日。UTPR・DST・DPTは、米国法人・市民または米国税法上のCFCへの適用が免除されていない限り、自動的にUnfair Foreign Taxになるんで、これらに関しては単純に特定の国がこれをいつ可決し、その国の法令に基づいていつから適用が開始するかを基に判断する。
Applicable Dateは常に暦年の1月1日。適用付加%が5%ずつ増えていくタイミングもApplicable Dateから暦年何年目かを基に累積計算していく。すなわち、3つのタイミングに基づいて決まるApplicable Dateとなる1月1日から始まる暦年一年目は5%、翌年以降は毎1月1日が訪れる度にそこから始まる暦年に5%づつプラスされた数字が適用付加%になる。
で、話しがややこしくなるのは、「国単位」および「暦年単位」で適用される付加%を決めた上で、次に各納税者に適用される付加%の概念が登場してくる点。源泉税以外の所得税・法人税はその計算や課税が特定の日の数字で決まる訳ではなく、常に課税年度単位になることから課税年度が暦年ではないFiscal Yearの納税者の課税年度には(特別な事情でShort Yearになってない限り)必ず2つの暦年が含まれる。こんな状況に適用される付加%は、課税年度に含まれる各暦年の付加%を日数加重平均した混合税率。日数加重平均%を算定する際、納税者が属する問題国に適用される最初のApplicable Date前(すなわち前年12月31日以前)の適用付加%はゼロと考える。例えばApplicable Dateが2026年1月1日となる問題国の納税者が3月課税年度の法人だとすると、その法人に適用される2027年3月期の付加税は約6.26 %になるはず(26年4月~12月が5%で27年1月~3月が10%の日数加重平均による混合税率。計算合ってる?)。Applicable Dateが2027年1月1日の場合、同様に2027年3月期に適用される付加%は約1.23%になるはずだけど、後述の通りこのパターンではまず2027年3月期に付加%が適用されるかどうかの見極めが求められる。
一方、源泉税は課税年度単位の税金ではなく支払い時点の一発勝負なんで、単純に源泉税支払い時点で適用される付加%を参照するって規定されている。例えば上の例で2027年1月1日がApplicable Dateの場合、2026年12月31日以前の源泉税に付加%はなく、2027年1月1日以降は同12月31日まで5%、2028年1月1日から付加は10%…って続いていくんだろう。この目的では受け手の外国法人の課税年度が暦年でもそうでなくても関係ない。
源泉税徴収義務Safe Harbor
源泉税の付加%部分は、財務省がDiscriminatory Foreign Countryのリストを公表するまでは徴収義務が免除される。899が可決した後、比較的直ぐにリストが公表されるんじゃないかって推測され、Applicable Dateまでに公表される場合、Safe Harborは効果がないことになる。さらに私的財団および信託に関してはリスト公表後90日間Safe Harborの延長が認められる。
おそらく所得税・法人税は自らの話しなんで自分がどこに国に属してて899の対象だな、とか判断が容易だけど、場合によっては多くの国に関して源泉税を徴収する義務がある米国人に「この国はDSTがあるな…」とか個々に判断させるのは負荷が高すぎるっていうような理由で規定されるSafe Harborなんだろうか。
付加%の上限Cap
Applicable Date以降の暦年毎に累計で付加される%は付加した結果の累計税率が法定税率プラス20%を上限Capとするって規定されている。例えば源泉税だったら法定税率は30%だからCapは50%で、法人税だったら21%に20%加えて41%。毎期の付加%を加える基となる税率は条約を加味してもいいって規定されてる点は上述の通りだけど、上限Capに関しては条約税率は加味されない。例えば配当に関する源泉税の条約税率が0%の場合、5%を付加した5%源泉税率から始まって、10%、15%って10年かけて50%まで上昇することになる。そんな長期間に亘って899に抵触し続けないことを願うけどね。
で、ここまでは何%付加するかっていう判断の話しで、適用付加%が関係する法人税・所得税および源泉税にかかわる話しとなり、後述のSuper-BEATに付加%っていう概念はないんで、これらの付加%の規則はSuper-BEATには関係がない。
899対抗措置適用対象課税年度
で、次に各納税者のどの課税年度から899対抗策の適用があるかっていう判断法が規定されている。この判断は付加が何%かっている判断とは異なるもの。
課税年度単位の税率っていうのは所得税・法人税の世界の話しなんで、この規則は通常の所得税・法人税およびSuper-BEATに関係する話し。源泉税には付加%の判断同様常に支払日ベースで適用有無が決まる。
納税者の所得税・法人税の話しなんで課税年度単位での計算になることから(もちろん課税年度が暦年のケースは暦年の話し)、一体どの課税年度から所得税・法人税に付加%が適用されたり、Super-BEATでBEAT計算するのかを見極めないといけなくなる。この判断はApplicable Dateの決定に似てるけど暦年や1月1日っていう単位ではない。すなわち判断に使用される日はApplicable Date同様に1)Section 899可決(大統領署名)日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの適用開始日、の3つだけど、この3つの一番遅い日の後(After)に開始する課税年度から所得税・法人税に付加%およびSuper-BEATが適用される。Applicable Dateは「on or after」なんだけどこの目的では単に「After」。超紛らわしいけど、「on or after」と「after」の差異は課税年度初日とUnfair Foreign Tax適用日が同じ日(例、4月1日)の場合、多大なインパクトがある。
判断時に使用される3つの日にちが付加%のApplicable Date判断時に使用される3つの日とダブってて分かり難いかもしれないけど、この考え方でどの課税年度から所得税・法人税に付加%やびSuper-BEATが適用されるかを判断し、その次にだったらその課税年度に適用される付加%を特定するっていう順番でアプローチすると分かり易いと思う。
例えば上の例と同じような設定で、特定の問題国の法人が3月課税年度だとする。899は2025年に可決され、仮にUTPR等のUnfair Foreign Taxの可決および適用が2026年4月1日とする。まず、当法人が法人税に対する付加%およびSuper-BEATに関してどの課税年度から対抗措置の対象になるかっていう点を考えると、上述の通り、1)Section 899可決日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの適用開始日、の3つの一番遅い日より後に開始する課税年度、すなわち2028年3月期(2027年4月~2028年3月)からになるはず。2026年4月1日から始まる2027年3月期は3つの条件の一番遅い日である4月1日より後(after)に開始してないからね。一方、付加%決定目的のApplicable Dateは2027年1月になるんで、2028年3月期の付加%は上述の日数加重平均で決定する。
Substantive税金と源泉税の関係
冒頭に付加%が適用されるタイプの税金は大別してSubstantiveな税金と徴収メカニズムの源泉税の2つに大別されるって書いたけど、暦年以外の課税年度を持つ外国法人はこれらの異なるタイプの税金に対する付加%や適用開始タイミングの差異に基づき複雑な取り扱いに晒される。
例えば付加%目的のApplicable Dateは2027年1月1日、法人税付加%適用初年度は2027年4月~2028年3月課税年度っていう例を続けると、こんな状況で2027年3月に配当が支払われるとすると、それを受け取る外国法人の法人税目的では付加%の適用がないんで30%(または条約低減レート)の法人税(Substantiveな税金)に付加%はなく、条約レートが0%だとすると配当は米国では課税されない(付加%適用初年度は2027年4月から開始だから)。
一方、源泉徴収する側の源泉税に関しては財務省問題国リスト公表済みっていう前提で2027年の付加%は既に5%なんで(Applicable Dateが2027年1月1日なんで)条約レート0%に5%を付加して源泉税を徴収する義務があることなる(この辺りのミスマッチは今後法案が最終化される過程でクリーンアップ、または財務省のガイダンス等で緩和策や新たなSafe Harborが規定される可能性あり)。配当日が2027年3月ではなくチョッとずれて4月になると、受け手の外国法人は4月から開始する課税年度から付加%の適用があり、その課税年度を通じて使用する付加%は日数加重平均ベースなんで、約6.26%になる。一方で源泉税に適用される付加%は2027年を通じて5%。となると3月の配当はOver-withholdingだけど、4月の配当はUnder-withholdingになるように見える。この差異は外国法人がForm 1120FのSection Iを埋めて提出し、差額の還付や追徴処理をするしかない。
とてつもなくややこしい。使った数字はあんまり自信ないから鵜呑みにしないで下さい。ただ考え方は分かってもらえた?次回は適用対象納税者に関して。
Thursday, May 22, 2025
Mega-Bill (OBBB Act H.R. 1) 電光石火で下院本会議も通過。次は上院
日曜日の夜にDeficit Hawk派の4人の侍が戦術的な「Present」投票に転じたことでBudget Committeeを乗り越えた直後から、Mike Johnson下院議長の下、下院共和党リーダーシップによる文字通り24時間夜を徹しての党内調整が続いた。主たる意見の食い違いは「歳出減が手緩い」って怒るDeficit Hawk派、「州税の控除枠が低い」っていうNYやCAの高税率州のSALT派、そして中間選挙で「民主党から叩かれるような刺激的な規定は最小限にして欲しい」っていう中庸派、らからのもの。
下院の議席数は共和党220、民主党212、空席3っていう状況なんで共和党は3人までの反対のみOKで、これはほぼ全員一致が求められるっていう厳しい状況。しかも歴史的に党内の異なる派の意見調整が困難な下院共和党の話しだ。
ルービックキューブ化する調整
日曜日夜のBudget Committee時点ではMike JohnsonがDeficit Hawk派に「Medicaid就労義務早期適用」「IRAのエネジークレジット撤廃前倒し」の2点を口約束ベースで説得しその場を凌いだ。Medicaidは就労義務とは言えそれで当然それでカバレッジを失う市民がいるんで中庸派は好まない。エネジークレジットは自分のDistrictで恩典を受けてる企業がある場合、イデオロギー的には好ましくないとか政府のバラマキって分かってても撤廃には腰が引ける。この手の「Entitlement」は一度与えると取り消すのはほぼ不可能。結局政府の歳出は増額一方。オバマケアで元々の趣旨を超えて歳出が増大したMedicaidも同じだ。SALT派の主張は、規律のない歳出を繰り返す高税率州を所得税が低い(またはない)州の市民が補填することになるんで他州の議員には評判悪いし、費用増額はもちろん歳入減に繋がるんでDeficit Hawk派の主張と真っ向から対立する。まるでルービックキューブ。
Magic Johnson
ほぼ調整不可能にも見えたこんな意見の食い違いをMike Johnsonはわずか4日で調整し切って約束通りメモリアルデー前に下院を通過させた。Johnsonは過去にも数々の危機を乗り越えて最近では「Magic」Johnson(笑)なんて言われたりするけど本当に魔法使いみたいな人だ。もともと2023年に(例によって…)下院共和党内の意見収集が付かずKevin McCarthyが下院議長の座を追われるっていうドタバタ劇後にJohnsonは議長就任したけど、その際、個人的には「この人誰?」って思ったくらい存在感が薄かった。ルイジアナの実直で信仰深い人っていう印象は受けたけどね。その後数々の政局を乗り切り、2025年には議長再選。そんなJohnsonは今回も辛抱強く調整を続けた。
振り返ってみると日曜日の夜のBudget Committee後、Deficit Hawk派とSALT派との調整が長引き、火曜日朝には絶妙のタイミングでJokerの切り札トランプカードを切った。トランプは下院共和党議員に「いつまでもごちゃごちゃ言ってる場合じゃない」って強力にプッシュし、その晩というか水曜日早朝の午前1時(!)にはRules Committeeが招集され更に調整が続いていた。その間もDeficit Hawk派は「まだ手緩い」とか、SALT派は「$30,000の枠は$80,000に挙げて所得制限も撤廃がいい」とか強気の発言が続いてたよね。
ただ、これらの主張をMike Johnsonやメディア相手に主張するのは容易でも、実際に主張が聞き入れられなかったからって、税制改正、国境警備、ヘルスケア、国防、エネジー政策すべてが一つに盛り込まれてる(すなわちOne Big Beautiful Bill)一世一代と言っても過言ではない法案に反対票を投じて可決を阻止するのはチョッと時限が異なる話し。そんな風に考えると「エネジークレジット撤廃を前倒しにしました」とか「SALT費用控除枠は$40,000に増額しました」みたいな改訂は「だったら仕方なく賛成しましょう」っていうポーズには助け舟だったかもね。
Rules Committee・本会議
それにしてもRules Committeeは水曜日午前1時に始まったけど、改訂法案のMark-upが終わったのは20時間後の水曜日午後9時。そしてその後、法案を本会議投票にかけるRules可決は木曜日の午前2時40分に至った。Rules可決は結局217対212。共和党で唯一反対票を投じたのはBudget resolutionでも反対票を投じたThomas Massie(R-KY)。217対212っていうRules可決結果で本会議可決もほぼ確実になった。
本会議では結局、Thomas Massieと並びWarren Davidson(R-OH)が民主党全議員と並び反対票を投じ、Andy Harris(R-MD)は「Present」で2名の共和党院は「Absent」で無投票。結果215対214で可決。全てが終わったのは今日、木曜日午前7時だった。その後、Mike Johnson、下院Majority LeaderのSteve Scalise(R-LA)、WhipのTom Emmer(R-MN)が記者会見してたけど、Mike Johnsonとか全く疲れが出てる様子がなくてビックリ。Johnsonっていつ見ても同じなんだよね。お疲れ様でした…って感じでメモリアルデーは取り合えずゆっくりできるんだろうけど、6月には上院が休会から戻ってきて法案にはそれなりの修正が入るだろうから、またしても下院調整。Majic 2.0だね。
ちなみに常に反対のThomas Massieに関してはトランプがPrimary Challengeの可能性を示唆している。
共和党議員2人の無投票って誰?
本会議の投票に参加しなかった2人。結果OKだったから良かったものの議席数が僅差なんで場合によっては運命を分けたかもしれない。Andy Harrisの「Present」投票やBudget Committee時の4人の侍みたいに「何か深淵な戦術だったか…」って思わせてくれる動きでチョッと調べてみたんだけど、実は長時間に亘る徹夜の議論で居眠り(?)だったっていうオチ。一人はAndrew Garbarino(R-NY)。彼の側近は「チョッとだけ席を外した間に投票になってしまった。きちんと昼間に開催しないから…」みたいな説明をしてたけど、Magic Johnsonは「冗談じゃなく、彼は議会の後列で眠ってしまって投票を逃した」ってもっと正確な理由を披露している。もちろんJohnsonとGarbarinoは懇意の仲だからこそ言えること。「吊るしあげる」とも付け加えたそうだ。もう一人はDavid Schweikert(R-AZ)。Schweikertに関してJohnsonは「投票に駆け付けたのが遅すぎて票に加味するにはToo Late」って言っている。2人ともMega-Billのドラフトには尽力してたらしい。致命傷にならなくてよかったね。っていうか可決が確実になったんで2人の票は不要って判断して見切りCloseしたってことだろう。
今後のタイミングは?ちらつくX-Day
ここまで来たら何らかの形で両院通過する可能性大だけど、財務長官のScott Bessentたちが目指す独立記念日(7月4日)はどうだろうね。上院の様子を見てると際どいかもね。ただ実はMega-Billには$4TのDebt Ceiling増額が盛り込まれてて、この増額がないと「Extraordinary Measure」でのやり繰りも8月頃が限界とのこと。所謂「X-Day」。この関係で遅くとも8月初旬にはトランプの署名が終わってる必要がある。ボンドマーケットは不安定だけど、Mega-Bill可決の国家財政インパクトは既にマーケットに織り込まれてるって考えるのが自然だろう。
ここからのスピード感は上院による修正度合次第だけど、下院Ways and Means委員長のJason Smithは「上院での大きな修正は予想されない」って楽観的(希望的?)なコメント。歴史は必ずしもそうじゃないけどね。修正が多いとそれをまた下院で意見調整するんでMagic Johnsonの魔法が必要になる。いくつ魔法持ってても足りないね。
Section 899は?
下院本会議を通過したMega-BillにはそのままSection 899が入っている。InboundのTradeやCapital Flowを気にしたりするSenateがこのまま温存するかどうかは不明だけど、以前のポスティングで触れた通り、Mega-Billに盛り込まれたSection 899は上院もSurviveできるような工夫が施されてる。また$116Bの歳入は個別条文としてはおそらくトップ級なんでPay-For財源の魅力も大きいだろう。
ということでようやく次回は下院法案899の続き。
下院の議席数は共和党220、民主党212、空席3っていう状況なんで共和党は3人までの反対のみOKで、これはほぼ全員一致が求められるっていう厳しい状況。しかも歴史的に党内の異なる派の意見調整が困難な下院共和党の話しだ。
ルービックキューブ化する調整
日曜日夜のBudget Committee時点ではMike JohnsonがDeficit Hawk派に「Medicaid就労義務早期適用」「IRAのエネジークレジット撤廃前倒し」の2点を口約束ベースで説得しその場を凌いだ。Medicaidは就労義務とは言えそれで当然それでカバレッジを失う市民がいるんで中庸派は好まない。エネジークレジットは自分のDistrictで恩典を受けてる企業がある場合、イデオロギー的には好ましくないとか政府のバラマキって分かってても撤廃には腰が引ける。この手の「Entitlement」は一度与えると取り消すのはほぼ不可能。結局政府の歳出は増額一方。オバマケアで元々の趣旨を超えて歳出が増大したMedicaidも同じだ。SALT派の主張は、規律のない歳出を繰り返す高税率州を所得税が低い(またはない)州の市民が補填することになるんで他州の議員には評判悪いし、費用増額はもちろん歳入減に繋がるんでDeficit Hawk派の主張と真っ向から対立する。まるでルービックキューブ。
Magic Johnson
ほぼ調整不可能にも見えたこんな意見の食い違いをMike Johnsonはわずか4日で調整し切って約束通りメモリアルデー前に下院を通過させた。Johnsonは過去にも数々の危機を乗り越えて最近では「Magic」Johnson(笑)なんて言われたりするけど本当に魔法使いみたいな人だ。もともと2023年に(例によって…)下院共和党内の意見収集が付かずKevin McCarthyが下院議長の座を追われるっていうドタバタ劇後にJohnsonは議長就任したけど、その際、個人的には「この人誰?」って思ったくらい存在感が薄かった。ルイジアナの実直で信仰深い人っていう印象は受けたけどね。その後数々の政局を乗り切り、2025年には議長再選。そんなJohnsonは今回も辛抱強く調整を続けた。
振り返ってみると日曜日の夜のBudget Committee後、Deficit Hawk派とSALT派との調整が長引き、火曜日朝には絶妙のタイミングでJokerの切り札トランプカードを切った。トランプは下院共和党議員に「いつまでもごちゃごちゃ言ってる場合じゃない」って強力にプッシュし、その晩というか水曜日早朝の午前1時(!)にはRules Committeeが招集され更に調整が続いていた。その間もDeficit Hawk派は「まだ手緩い」とか、SALT派は「$30,000の枠は$80,000に挙げて所得制限も撤廃がいい」とか強気の発言が続いてたよね。
ただ、これらの主張をMike Johnsonやメディア相手に主張するのは容易でも、実際に主張が聞き入れられなかったからって、税制改正、国境警備、ヘルスケア、国防、エネジー政策すべてが一つに盛り込まれてる(すなわちOne Big Beautiful Bill)一世一代と言っても過言ではない法案に反対票を投じて可決を阻止するのはチョッと時限が異なる話し。そんな風に考えると「エネジークレジット撤廃を前倒しにしました」とか「SALT費用控除枠は$40,000に増額しました」みたいな改訂は「だったら仕方なく賛成しましょう」っていうポーズには助け舟だったかもね。
Rules Committee・本会議
それにしてもRules Committeeは水曜日午前1時に始まったけど、改訂法案のMark-upが終わったのは20時間後の水曜日午後9時。そしてその後、法案を本会議投票にかけるRules可決は木曜日の午前2時40分に至った。Rules可決は結局217対212。共和党で唯一反対票を投じたのはBudget resolutionでも反対票を投じたThomas Massie(R-KY)。217対212っていうRules可決結果で本会議可決もほぼ確実になった。
本会議では結局、Thomas Massieと並びWarren Davidson(R-OH)が民主党全議員と並び反対票を投じ、Andy Harris(R-MD)は「Present」で2名の共和党院は「Absent」で無投票。結果215対214で可決。全てが終わったのは今日、木曜日午前7時だった。その後、Mike Johnson、下院Majority LeaderのSteve Scalise(R-LA)、WhipのTom Emmer(R-MN)が記者会見してたけど、Mike Johnsonとか全く疲れが出てる様子がなくてビックリ。Johnsonっていつ見ても同じなんだよね。お疲れ様でした…って感じでメモリアルデーは取り合えずゆっくりできるんだろうけど、6月には上院が休会から戻ってきて法案にはそれなりの修正が入るだろうから、またしても下院調整。Majic 2.0だね。
ちなみに常に反対のThomas Massieに関してはトランプがPrimary Challengeの可能性を示唆している。
共和党議員2人の無投票って誰?
本会議の投票に参加しなかった2人。結果OKだったから良かったものの議席数が僅差なんで場合によっては運命を分けたかもしれない。Andy Harrisの「Present」投票やBudget Committee時の4人の侍みたいに「何か深淵な戦術だったか…」って思わせてくれる動きでチョッと調べてみたんだけど、実は長時間に亘る徹夜の議論で居眠り(?)だったっていうオチ。一人はAndrew Garbarino(R-NY)。彼の側近は「チョッとだけ席を外した間に投票になってしまった。きちんと昼間に開催しないから…」みたいな説明をしてたけど、Magic Johnsonは「冗談じゃなく、彼は議会の後列で眠ってしまって投票を逃した」ってもっと正確な理由を披露している。もちろんJohnsonとGarbarinoは懇意の仲だからこそ言えること。「吊るしあげる」とも付け加えたそうだ。もう一人はDavid Schweikert(R-AZ)。Schweikertに関してJohnsonは「投票に駆け付けたのが遅すぎて票に加味するにはToo Late」って言っている。2人ともMega-Billのドラフトには尽力してたらしい。致命傷にならなくてよかったね。っていうか可決が確実になったんで2人の票は不要って判断して見切りCloseしたってことだろう。
今後のタイミングは?ちらつくX-Day
ここまで来たら何らかの形で両院通過する可能性大だけど、財務長官のScott Bessentたちが目指す独立記念日(7月4日)はどうだろうね。上院の様子を見てると際どいかもね。ただ実はMega-Billには$4TのDebt Ceiling増額が盛り込まれてて、この増額がないと「Extraordinary Measure」でのやり繰りも8月頃が限界とのこと。所謂「X-Day」。この関係で遅くとも8月初旬にはトランプの署名が終わってる必要がある。ボンドマーケットは不安定だけど、Mega-Bill可決の国家財政インパクトは既にマーケットに織り込まれてるって考えるのが自然だろう。
ここからのスピード感は上院による修正度合次第だけど、下院Ways and Means委員長のJason Smithは「上院での大きな修正は予想されない」って楽観的(希望的?)なコメント。歴史は必ずしもそうじゃないけどね。修正が多いとそれをまた下院で意見調整するんでMagic Johnsonの魔法が必要になる。いくつ魔法持ってても足りないね。
Section 899は?
下院本会議を通過したMega-BillにはそのままSection 899が入っている。InboundのTradeやCapital Flowを気にしたりするSenateがこのまま温存するかどうかは不明だけど、以前のポスティングで触れた通り、Mega-Billに盛り込まれたSection 899は上院もSurviveできるような工夫が施されてる。また$116Bの歳入は個別条文としてはおそらくトップ級なんでPay-For財源の魅力も大きいだろう。
ということでようやく次回は下院法案899の続き。
Tuesday, May 20, 2025
Mega-Bill辛うじてBudget Committee通過。次はRules Committee
OBBBって命名されたMega-Bill下院法案は前回のポスティングで触れた通り、先週金曜日にBudget Committeeをクリアすることができず、再度日曜日の午後10時に再投票が行われた。C-SPANでライブ中継してたんで西海岸に居る時差も手伝って見てたんだけど金曜日に反対票を投じた共和党Budget CommitteeメンバーのDeficit Hawk派4人の侍が次々今度は「No」ではなく「Present」って言う投票(実際には口頭)。PresentはYesにはならないけどNoにも数えられないんで一票差でBudget Committee通過って言うなかなか見せてくれる展開になった。Budget Committeeの審議をわざわざライブで見るなんてこれが最初で最後かもね。
Present投票
この「Present」っていう投票法は法案に賛成でも反対でもない「ニュートラル」っていうか、態度留保みたいな意思表示だけど、投票には参加しているんで「Abstention」と異なり定足数には加味される。金曜日のNoは戦術的だったSmuckerを除く他の議員が金曜日と同じように投票するっていう前提だと、4人の侍はPresentでもBudget Committeeはクリアできる点は当然予知できるんでDeficit Hawk派にとってもCommittee通過は予定通り。
なぜPresentっていう戦術に出たかは、投票直前まで続いたMike Johnson等との交渉で、「Medicaid」の就労義務を2年前倒しで2027年から適用する点、IRAのエネジークレジット(4人の侍言うところのGreen Scam)の撤廃の前倒し、にリーダーシップが口頭で合意したと伝えられる点が理由。それらが本当に法案に盛り込まれるのを見届ける前なんでBudget Committeeは通過させるけど、まだ賛成に回った訳じゃないぞっていう状況。MedicaidにしてもIRAのエネジークレジットにしてもこれ以上触って欲しくないって言う中庸派もいるんでこのまま法案が改訂されて下院全体を通るとは限らず、引き続き夜を徹した党内交渉が続くことになる。
Rules Committee
下院本会議投票の前の最後のステップとなるRules Committeeはナンと水曜日早朝の午前1時に招集が掛かってるっていうことなんで文字通り夜を徹する勢い。そしてナンと4人の侍のコアメンバーの2人と言えるChip Roy (R-TX)と Ralph Norman (R-SC)はRules Committeeのメンバーでもある。ただ、Rules Committeeでは数的に造反が2人までだったら通過させることができるのと、NormanはRules Committeeでは反対票は投じないってMike Johnsonに伝えたっていう話しもあり、Mike Johnson的には一旦はホッとしてんのかな。ただ仮にRules Committeeを通っても本会議が控えてる。共和党下院議長って寿命が縮まるような状況ばかり。今日の午後は共和党上院に下院の状況報告っていうイベントも入っていたとのこと。
トランプ登場
そんな中最後はトランプに登場してもらわないと収拾がつかないっていうことで、どのタイミングでMike Johnsonがトランプカードを切るかっていうタイミングが注目されていた。そしてその時がついに今日訪れ、午前8時半の下院共和党カンファレンスが行われるHC-5にトランプが乗り込んだ。Mike Johnsonや中庸派の期待としてはDeficit Hawk派を制して欲しいっていうものだったはずだけど、間が悪いことに(このタイミングは偶然じゃないっていう説もあるけど)Moody’sが米国債の格付けをトップから一段階引き下げて、ますますDeficit Hawk派の懸念の火に油を注ぐことになった。
で、トランプはDeficit Hawk派、SALT派、中庸派全員に「いつまでもごちゃごちゃ言ってないで今の法案をさっさと可決させるように」ってはっぱを掛けた。Deficit Hawk派には「Medicaidとか触ってる場合じゃない(Don’t fxxx around with Medicaid)」とかSALT派のMike Lawler(R-NY)には更に厳しく「お前の選挙区のことは俺が誰よりも良く知ってるが、SALTが理由で落選するくらいだったらどっちにしても落選する」って全員の前で手厳しいコメントがあったそうだ。さすが大統領。また、いつまでも反対してる者には次の選挙でPrimary Challenge(本選挙前に党の候補を選ぶ手続きで対抗馬をあてられること)っていう罰も待ってるリスクもちらつかせたっていう話しだ。
そんな訳で間もなく午前1時のRules Committee開始だけど、ちょうどNYCに戻ってしまったしC-SPANのライブ見てる場合じゃないね。明日に掛けてどうなるでしょうか。
今日は簡単に速報でした。
Present投票
この「Present」っていう投票法は法案に賛成でも反対でもない「ニュートラル」っていうか、態度留保みたいな意思表示だけど、投票には参加しているんで「Abstention」と異なり定足数には加味される。金曜日のNoは戦術的だったSmuckerを除く他の議員が金曜日と同じように投票するっていう前提だと、4人の侍はPresentでもBudget Committeeはクリアできる点は当然予知できるんでDeficit Hawk派にとってもCommittee通過は予定通り。
なぜPresentっていう戦術に出たかは、投票直前まで続いたMike Johnson等との交渉で、「Medicaid」の就労義務を2年前倒しで2027年から適用する点、IRAのエネジークレジット(4人の侍言うところのGreen Scam)の撤廃の前倒し、にリーダーシップが口頭で合意したと伝えられる点が理由。それらが本当に法案に盛り込まれるのを見届ける前なんでBudget Committeeは通過させるけど、まだ賛成に回った訳じゃないぞっていう状況。MedicaidにしてもIRAのエネジークレジットにしてもこれ以上触って欲しくないって言う中庸派もいるんでこのまま法案が改訂されて下院全体を通るとは限らず、引き続き夜を徹した党内交渉が続くことになる。
Rules Committee
下院本会議投票の前の最後のステップとなるRules Committeeはナンと水曜日早朝の午前1時に招集が掛かってるっていうことなんで文字通り夜を徹する勢い。そしてナンと4人の侍のコアメンバーの2人と言えるChip Roy (R-TX)と Ralph Norman (R-SC)はRules Committeeのメンバーでもある。ただ、Rules Committeeでは数的に造反が2人までだったら通過させることができるのと、NormanはRules Committeeでは反対票は投じないってMike Johnsonに伝えたっていう話しもあり、Mike Johnson的には一旦はホッとしてんのかな。ただ仮にRules Committeeを通っても本会議が控えてる。共和党下院議長って寿命が縮まるような状況ばかり。今日の午後は共和党上院に下院の状況報告っていうイベントも入っていたとのこと。
トランプ登場
そんな中最後はトランプに登場してもらわないと収拾がつかないっていうことで、どのタイミングでMike Johnsonがトランプカードを切るかっていうタイミングが注目されていた。そしてその時がついに今日訪れ、午前8時半の下院共和党カンファレンスが行われるHC-5にトランプが乗り込んだ。Mike Johnsonや中庸派の期待としてはDeficit Hawk派を制して欲しいっていうものだったはずだけど、間が悪いことに(このタイミングは偶然じゃないっていう説もあるけど)Moody’sが米国債の格付けをトップから一段階引き下げて、ますますDeficit Hawk派の懸念の火に油を注ぐことになった。
で、トランプはDeficit Hawk派、SALT派、中庸派全員に「いつまでもごちゃごちゃ言ってないで今の法案をさっさと可決させるように」ってはっぱを掛けた。Deficit Hawk派には「Medicaidとか触ってる場合じゃない(Don’t fxxx around with Medicaid)」とかSALT派のMike Lawler(R-NY)には更に厳しく「お前の選挙区のことは俺が誰よりも良く知ってるが、SALTが理由で落選するくらいだったらどっちにしても落選する」って全員の前で手厳しいコメントがあったそうだ。さすが大統領。また、いつまでも反対してる者には次の選挙でPrimary Challenge(本選挙前に党の候補を選ぶ手続きで対抗馬をあてられること)っていう罰も待ってるリスクもちらつかせたっていう話しだ。
そんな訳で間もなく午前1時のRules Committee開始だけど、ちょうどNYCに戻ってしまったしC-SPANのライブ見てる場合じゃないね。明日に掛けてどうなるでしょうか。
今日は簡単に速報でした。
Saturday, May 17, 2025
Section 899下院法案バージョン
OBBB
下院法案のMega-Billは「One Big Beautiful Bill(OBBB)」って法案に名称が付されたけど、そんなMega-Billは結局、金曜日にBudget Committeeをクリアすることができなくて、再度日曜日の午後10時に再投票予定。Budget Committeeって本来、下院に11存在するCommitteeがMark-upした各法案を文字通りMega-Billに取りまとめる手続き的なステップを踏むところなんで、ここで躓くっていうのはチョッとBlack Eye。この躓きは前回のポスティングで触れたSALT派の不満もさることながら、SALT派と対極の立場にあるDeficit Hawk派の反逆による。Medicaidの就労義務導入やIRAエネジークレジットの段階的撤廃が2029年以降に先送りされてる点を問題視し、歳出減に対する規律のなさを理由に共和党Budget CommitteeメンバーのChip Roy (R-TX)、Josh Brecheen(R-OK)、Ralph Norman(R-SC)、Andrew Clyde(R-GA)の4名が反対に回った。
実は手続き的には更にもう1人のBudget Committee共和党議員Lloyd Smucker (R-PA) も反対票を投じてるんだけど、Smuckerの反対票は法案そのものに対する反対ではなくBudget Committeeとして再考のチャンスを温存するためって発言している。これは、下院規則では再考後の再投票は反対票を投じた議員のみが要求できるため。Smuckerは反対票を投じることでその後の交渉後に再度投票する機会を温存したことになる(結果、日曜日の午後10時の再投票)。
4月のBudget Resolutionの下院投票時からRoyやNormanは歳出減が手緩い点に懸念を表明してたけど、結局その時点では賛成票を投じ、当時反対に回ったのはBudget Committee外の共和党議員Thomas Massie(R-KY)とVictoria Spartz(R-IN)の2名だった。したがって仮にBudget Committeeとその際の手続きになるRules Committeeを通過したとしても3名を超える造反で可決が阻まれる下院全体の投票は例によってドラマチック。仮に何らかの妥協案に合意される場合、Budget Committeeそのものに法案を改訂する権限はないはずだから、その次のステップとなるRules Committeeで下院のフロア投票用の最終法案に反映されることになる。日曜日から週明けはどんな展開になるでしょうか。
Section 899下院法案バージョン
で、下院法案にSection 899(「下院法案Section 899」)が盛り込まれた点は前々回の「下院法案ドラフト公表「P2対抗法案899・Super-BEAT共に入選」」で速報した。
下院法案Section 899は以前から「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案」シリーズで触れてきたJason Smithの「Defending American Jobs and Investment Act」(従来のsection 899法案)をベースにしてるけど、いくつか特筆すべき変更が加えられている。これらの変更はランダムなものではなく、Budget Reconciliationに基づいた可決を視野に入れている、また財務省と密に連携し財務省の交渉スタンス(後述)と整合性を図った結果って考えられる。
UTPR・DST・ DPTは自動的に対抗規則対象
まずSection 899のタイトルだけど従来のsection 899法案の「Enforcement of Remedies Against Extraterritorial Taxes and Discriminatory Taxes」から「Enforcement of Remedies Against Unfair Foreign Taxes」に変更されている。以前触れた通り、条文のタイトルそのものには法的拘束力や意味はない。とは言え、条文を読むと下院法案Section 899ではExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesはそれらを含む総称となる「Unfair Foreign Taxes」に統一されている。下院法案section 899では、Unfair Foreign Taxesを持つ国を「Discriminatory Foreign Country」とし、そんな問題国の市民、法人等に付加税を課す、また問題国の米国子会社にはEstes法案で規定されていたSuper-BEATを適用するとしている。Super-BEATの元々の法案に関しては「ナントUTPR追加対抗法案「The Unfair Tax Prevention Act」も下院再提出」で簡単に触れてるんでそちらもぜひ。
で、ここがパンチラインのひとつだけど、下院法案section 899では「UTPR、DST、DPT」の3つはそれ以上の検討は不要で自動的にUnfair Foreign Taxesに当たるって特定して明言してる。すなわち従来の法案ではExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesを条文で定義し、その定義だったら当然それらにUTPRは含まれるねっていう結論に至ったり、財務長官がExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesを持つ国がどこかとか判断することになってたけど、下院法案Section 899ではUTPR、DST、DPTに関してはそんな手続きや検討は一切不要で、これらの3つの問題措置のいずれかを持っている国はUnfair Foreign Taxesを持っている国になり、その国はDiscriminatory Foreign Countryとなり、section 899発動対象国となる。
さらにUTPR、DST、DPT以外の税制に関しては従来のsection 899法案通り、財務長官がどんな税制がExtraterritorial TaxesやDiscriminatory Taxesに当たるかを特定することができる。Extraterritorial TaxesおよびDiscriminatory Taxesの定義は従来のsection 899法案のままだけど、以前はExtraterritorialの定義はUTPRそのものだね、とか話してたけどUTPRはそんな判断を待たずして自動的にUnfair Foreign Taxesに区分されるんでUTPRに関してこの定義はMoot。Discriminatoryに関しても同様にDSTは自動的にUnfair Foreign Taxesに区分されてるんでMootで、後は他の類似課税が潜在的に問題になる。
IIRとかは?米国財務省の対ピラー2「Side-by-side」ポジション
IIRやQDMTは名指しされてないけど、米国財務省のピラー2に対するポジションは米国は米国で主権国家として自国の税法を米国市民が選挙で選んだ議会が決め、他国は他国でピラー2を入れるんだったらそれは勝手だけど「ピラー2は米国法人および他国の米国子会社には一切影響があってはならない」っていう「Side-by-side」アプローチ。この点から米国子会社に対する他国のIIRは問題税制のひとつになってもおかしくない。またQDMTに関してはOECDが勝手にルールを決めて各国に強制している点は受け入れられないとし、各国が主権国家して独自の法律を入れる点を認めるべきってしてる。これは具体的にはOECDはQDMTがGILTIに優先する、すなわち米国でGILTI対象になっているCFCに関してGILTI税負担をプッシュダウンする前にQDMTを計算することって強制して、各国の国家主権を侵害して米国を不利にしてる点を問題視してるものと思われる。
これらの米国財務省のスタンスは財務省Deputy Assistant Secretary for International Tax AffairsのRebecca Burch(この前までEYのNational Taxに居ました!)が再三明言していて、単なるGILTIのGrandfatherやUTPRのTransition Safe Harborの時限延長のような小手先対応では不十分としている。GILTIがこの先どんな風に変更されようと、13.125%のままだろうが全世界ブレンディングだろうが、米国が先にGILTIを策定し、CFC課税だって1962年から他国に先駆けて適用している等、自国なりにProfit Shiftingを取り締まってるんだから、それ以上、米国法人や米国子会社にピラー2などを適用する必要はないし、そんな動きは認められないっていうもの。GILTIは全世界ブレンディングだけど、FTCの枠計算時の費用配賦・案分法やQBAIに基づく減額はOECDよりも不利な規定って考えられる。これらの点をOECDやEUにもちゃんと理解してもらわないと…っていう認識もあるだろう。Rebecca Burchのこれらのスタンスは、財務省Assistant Secretary for Legislative Affairs任命確認待ちで現時点ではCounselor to the Secretaryに当たるDerek Theurer も同じコメントを出している。
Rebecca Burchは、いずれにしてもUTPRのSafe Harborは2025年までのはずだから、今年中にはピラー2は米国に何の影響もない点が明確にならないといけないとしている。
これらの発言から財務省・下院は一丸となってピラー2の米国企業への適用は一切認めないっていうスタンスが明らかになっている。ちなみに米国では、実は下院法案が歳入源が欲しいにもかかわらずGILTI税率が2026年から16%に引き上げられる現行法を改訂してまで13.125%を保ってるのはピラー2の15%に対する不快感表明っていう噂があるほどだ。
米国多国籍企業からは、自国企業のことを第一に考えてくれている財務省・議会の強固な対ピラー2姿勢を高く評価する声が多い。Microsoft、J&J等のTax Directorがこれらの対応は合理的でありがたいってカンファレンスでコメントしたと報道されている。選挙後、ピラー2に対するプッシュバックをしてくれる点は想定の範囲内だったけど、Derek TheurerやRebecca Burchのポジションは期待を上回るものと受け止められてるように思う。
財務長官リストアップ・相手国との交渉手続き要件撤廃
上述のUnfair Foreign Taxesの定義変更と整合性を持たせるため、従来の899法案で規定されていた「財務省長官による問題国のリストアップ、議会への報告、問題国への告知・交渉」にかかわる規則は撤廃されている。この変更により、UTPR、DST、DPTを持っている国は財務長官との交渉等のチャンスなくsection 899が可決されると対抗措置の対象になる。この変更は財務省の今後の交渉時のレバレッジを確保する目的ばかりでなく、財務長官による交渉を待ってたり、どの税制がExtraterritorialやDiscriminatory Taxかっていう点が明確じゃないと歳入効果が図り難く「Scoring」困難って位置付けられてBudget reconciliationに基づく法案対象外ってキックアウトされるリスクに対応した側面がある。ちなみに下院法案ではsection 899の歳入効果はBudget Windowの10年間で$116Bと推定されている。
で、他にも下院法案section 899は従来のsection 899との比較で条約の低減税率と付加税の関係や外国政府(SWF等)の取り扱いに関してアップデートがあるんでこれらは、下院法案section 899に合体されたSuper-BEATと共に次回。その時点で下院法案の審議状況もね。
下院法案のMega-Billは「One Big Beautiful Bill(OBBB)」って法案に名称が付されたけど、そんなMega-Billは結局、金曜日にBudget Committeeをクリアすることができなくて、再度日曜日の午後10時に再投票予定。Budget Committeeって本来、下院に11存在するCommitteeがMark-upした各法案を文字通りMega-Billに取りまとめる手続き的なステップを踏むところなんで、ここで躓くっていうのはチョッとBlack Eye。この躓きは前回のポスティングで触れたSALT派の不満もさることながら、SALT派と対極の立場にあるDeficit Hawk派の反逆による。Medicaidの就労義務導入やIRAエネジークレジットの段階的撤廃が2029年以降に先送りされてる点を問題視し、歳出減に対する規律のなさを理由に共和党Budget CommitteeメンバーのChip Roy (R-TX)、Josh Brecheen(R-OK)、Ralph Norman(R-SC)、Andrew Clyde(R-GA)の4名が反対に回った。
実は手続き的には更にもう1人のBudget Committee共和党議員Lloyd Smucker (R-PA) も反対票を投じてるんだけど、Smuckerの反対票は法案そのものに対する反対ではなくBudget Committeeとして再考のチャンスを温存するためって発言している。これは、下院規則では再考後の再投票は反対票を投じた議員のみが要求できるため。Smuckerは反対票を投じることでその後の交渉後に再度投票する機会を温存したことになる(結果、日曜日の午後10時の再投票)。
4月のBudget Resolutionの下院投票時からRoyやNormanは歳出減が手緩い点に懸念を表明してたけど、結局その時点では賛成票を投じ、当時反対に回ったのはBudget Committee外の共和党議員Thomas Massie(R-KY)とVictoria Spartz(R-IN)の2名だった。したがって仮にBudget Committeeとその際の手続きになるRules Committeeを通過したとしても3名を超える造反で可決が阻まれる下院全体の投票は例によってドラマチック。仮に何らかの妥協案に合意される場合、Budget Committeeそのものに法案を改訂する権限はないはずだから、その次のステップとなるRules Committeeで下院のフロア投票用の最終法案に反映されることになる。日曜日から週明けはどんな展開になるでしょうか。
Section 899下院法案バージョン
で、下院法案にSection 899(「下院法案Section 899」)が盛り込まれた点は前々回の「下院法案ドラフト公表「P2対抗法案899・Super-BEAT共に入選」」で速報した。
下院法案Section 899は以前から「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案」シリーズで触れてきたJason Smithの「Defending American Jobs and Investment Act」(従来のsection 899法案)をベースにしてるけど、いくつか特筆すべき変更が加えられている。これらの変更はランダムなものではなく、Budget Reconciliationに基づいた可決を視野に入れている、また財務省と密に連携し財務省の交渉スタンス(後述)と整合性を図った結果って考えられる。
UTPR・DST・ DPTは自動的に対抗規則対象
まずSection 899のタイトルだけど従来のsection 899法案の「Enforcement of Remedies Against Extraterritorial Taxes and Discriminatory Taxes」から「Enforcement of Remedies Against Unfair Foreign Taxes」に変更されている。以前触れた通り、条文のタイトルそのものには法的拘束力や意味はない。とは言え、条文を読むと下院法案Section 899ではExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesはそれらを含む総称となる「Unfair Foreign Taxes」に統一されている。下院法案section 899では、Unfair Foreign Taxesを持つ国を「Discriminatory Foreign Country」とし、そんな問題国の市民、法人等に付加税を課す、また問題国の米国子会社にはEstes法案で規定されていたSuper-BEATを適用するとしている。Super-BEATの元々の法案に関しては「ナントUTPR追加対抗法案「The Unfair Tax Prevention Act」も下院再提出」で簡単に触れてるんでそちらもぜひ。
で、ここがパンチラインのひとつだけど、下院法案section 899では「UTPR、DST、DPT」の3つはそれ以上の検討は不要で自動的にUnfair Foreign Taxesに当たるって特定して明言してる。すなわち従来の法案ではExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesを条文で定義し、その定義だったら当然それらにUTPRは含まれるねっていう結論に至ったり、財務長官がExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesを持つ国がどこかとか判断することになってたけど、下院法案Section 899ではUTPR、DST、DPTに関してはそんな手続きや検討は一切不要で、これらの3つの問題措置のいずれかを持っている国はUnfair Foreign Taxesを持っている国になり、その国はDiscriminatory Foreign Countryとなり、section 899発動対象国となる。
さらにUTPR、DST、DPT以外の税制に関しては従来のsection 899法案通り、財務長官がどんな税制がExtraterritorial TaxesやDiscriminatory Taxesに当たるかを特定することができる。Extraterritorial TaxesおよびDiscriminatory Taxesの定義は従来のsection 899法案のままだけど、以前はExtraterritorialの定義はUTPRそのものだね、とか話してたけどUTPRはそんな判断を待たずして自動的にUnfair Foreign Taxesに区分されるんでUTPRに関してこの定義はMoot。Discriminatoryに関しても同様にDSTは自動的にUnfair Foreign Taxesに区分されてるんでMootで、後は他の類似課税が潜在的に問題になる。
IIRとかは?米国財務省の対ピラー2「Side-by-side」ポジション
IIRやQDMTは名指しされてないけど、米国財務省のピラー2に対するポジションは米国は米国で主権国家として自国の税法を米国市民が選挙で選んだ議会が決め、他国は他国でピラー2を入れるんだったらそれは勝手だけど「ピラー2は米国法人および他国の米国子会社には一切影響があってはならない」っていう「Side-by-side」アプローチ。この点から米国子会社に対する他国のIIRは問題税制のひとつになってもおかしくない。またQDMTに関してはOECDが勝手にルールを決めて各国に強制している点は受け入れられないとし、各国が主権国家して独自の法律を入れる点を認めるべきってしてる。これは具体的にはOECDはQDMTがGILTIに優先する、すなわち米国でGILTI対象になっているCFCに関してGILTI税負担をプッシュダウンする前にQDMTを計算することって強制して、各国の国家主権を侵害して米国を不利にしてる点を問題視してるものと思われる。
これらの米国財務省のスタンスは財務省Deputy Assistant Secretary for International Tax AffairsのRebecca Burch(この前までEYのNational Taxに居ました!)が再三明言していて、単なるGILTIのGrandfatherやUTPRのTransition Safe Harborの時限延長のような小手先対応では不十分としている。GILTIがこの先どんな風に変更されようと、13.125%のままだろうが全世界ブレンディングだろうが、米国が先にGILTIを策定し、CFC課税だって1962年から他国に先駆けて適用している等、自国なりにProfit Shiftingを取り締まってるんだから、それ以上、米国法人や米国子会社にピラー2などを適用する必要はないし、そんな動きは認められないっていうもの。GILTIは全世界ブレンディングだけど、FTCの枠計算時の費用配賦・案分法やQBAIに基づく減額はOECDよりも不利な規定って考えられる。これらの点をOECDやEUにもちゃんと理解してもらわないと…っていう認識もあるだろう。Rebecca Burchのこれらのスタンスは、財務省Assistant Secretary for Legislative Affairs任命確認待ちで現時点ではCounselor to the Secretaryに当たるDerek Theurer も同じコメントを出している。
Rebecca Burchは、いずれにしてもUTPRのSafe Harborは2025年までのはずだから、今年中にはピラー2は米国に何の影響もない点が明確にならないといけないとしている。
これらの発言から財務省・下院は一丸となってピラー2の米国企業への適用は一切認めないっていうスタンスが明らかになっている。ちなみに米国では、実は下院法案が歳入源が欲しいにもかかわらずGILTI税率が2026年から16%に引き上げられる現行法を改訂してまで13.125%を保ってるのはピラー2の15%に対する不快感表明っていう噂があるほどだ。
米国多国籍企業からは、自国企業のことを第一に考えてくれている財務省・議会の強固な対ピラー2姿勢を高く評価する声が多い。Microsoft、J&J等のTax Directorがこれらの対応は合理的でありがたいってカンファレンスでコメントしたと報道されている。選挙後、ピラー2に対するプッシュバックをしてくれる点は想定の範囲内だったけど、Derek TheurerやRebecca Burchのポジションは期待を上回るものと受け止められてるように思う。
財務長官リストアップ・相手国との交渉手続き要件撤廃
上述のUnfair Foreign Taxesの定義変更と整合性を持たせるため、従来の899法案で規定されていた「財務省長官による問題国のリストアップ、議会への報告、問題国への告知・交渉」にかかわる規則は撤廃されている。この変更により、UTPR、DST、DPTを持っている国は財務長官との交渉等のチャンスなくsection 899が可決されると対抗措置の対象になる。この変更は財務省の今後の交渉時のレバレッジを確保する目的ばかりでなく、財務長官による交渉を待ってたり、どの税制がExtraterritorialやDiscriminatory Taxかっていう点が明確じゃないと歳入効果が図り難く「Scoring」困難って位置付けられてBudget reconciliationに基づく法案対象外ってキックアウトされるリスクに対応した側面がある。ちなみに下院法案ではsection 899の歳入効果はBudget Windowの10年間で$116Bと推定されている。
で、他にも下院法案section 899は従来のsection 899との比較で条約の低減税率と付加税の関係や外国政府(SWF等)の取り扱いに関してアップデートがあるんでこれらは、下院法案section 899に合体されたSuper-BEATと共に次回。その時点で下院法案の審議状況もね。
Wednesday, May 14, 2025
下院法案アッという間に最終化
5月12日月曜日の夜にWays and Means Committeeが公表した下院税制改正法案389ページは13日午後から14日の朝まで徹夜のMark-upを経て最終化された。1~2週間前の状態に比べると電光石火みたいな進展。後述のSALT関係の確執がなんとかなればNext StepはEnergy and Commerce、Agricultureその他のCommitteeによるMark-upを含む「Mega-Bill」法案が19日にはRules Committeeに回り、直後に下院全体によるフロア採決になる。うまく行けばMike Johnsonが言っていた通りメモリアルデー(5月29日)までに下院可決で後は上院っていうタイムラインが実現することになる。
Mark-upでそれなりの修正があるんではって言われてたけど結果はNo Change。すなわち12日の389ページがそのままWays and Means Committeeによる最終Mark-upバージョンになった。カリフォルニアみたいなNYCで「どうせ修正あるしね」って思って軽く読んでたけどそのまま最終化してしまったんでもっと細かく読まないとね。ちょうど本当に西海岸に寄ってるんでNYCの気候は気にせずに数日フォーカスします。
下院全体採決とハードル
ここに来て下院共和党内で最後の争点になってるのがSALT Cap。以前もチラッと触れたけど、州個人所得税を連邦所得税を計算する際にどれだけ損金算入できるかっていう争点。カリフォルニアとかニューヨークとか規律に欠ける歳出を繰り返す州は当然税金が高いけど、それを連邦所得税で費用化するっていうことは全米の市民が高税率州の税金の2~3割を間接負担していることになる。所得税ゼロで州財政をManageしてるフロリダやテキサス州を含む9州の市民からしてみると無駄使いやBureaucracyの激しい高税率州のコストを強制的に間接負担させられるのは釈然としない。一方で高税率州の有権者に支えられるカリフォルニアやニューヨーク州の共和党議員は地元で突き上げられてるから最大限の費用化を主張する。いつも触れてる通り下院は2年毎の選挙で全議席改訂なんで接戦Districtの議員は必死だ。
TCJAでは州個人所得税(正確には州および市や学校区等の所得税、所得税がない管轄区の州民は代わりに州および郡等のSales Tax、プラス不動産税や資産の価値に基づく動産税を含む)の個別控除を$10,000(MFS申告の場合は$5,000)に制限した。これを昔みたいに制限なしにして欲しいっていうのが高税率州議員たち、いわゆるSALT Caucus(SALT派?)の希望。無制限化は歳入インパクトが大き過ぎるし他州の議員の意見もあるし、下院最終法案では妥協案として2026年からSALT Capを$30,000(MFS申告の場合は$15,000)に恒久引き上げ。ただMAGI(MAGAじゃないからね!)って言われる修正AGI(課税所得総額から特定のAbove-the-line控除を差し引いた額)が$400,000(MFS申告の場合は$200,000)を超過する場合、超過額の20%に関して恩典がフェーズアウト。
下院最終法案のこの引き上げや所得ベースのフェーズアウトはSALT派からすると「侮辱」テリトリーって言われているんでSALT派と下院リーダーシップは引き続き秘密会(Closed door meeting)や15日に予定されてる下院共和党カンファレンスで駆け引きを続ける予定。したがって法案は最終化されたとは言え、SALT部分はまだセンシティブな状態。下院法案のコストは10年のBudget Windowで$3.7~3.8Tって言われてて(逆にあれだけ全て盛り込んで$4T行ってないのが意外?)、Ways and Means以外のCommitteeによる歳出減はMedicaidで躓いてるんで$2T行かないだろうから、Ways and Meansに許容されるコストは$4TでCapされる。となると他の歳入減を見つけない限りSALT Capのこれ以上の緩和の枠はそんなに大きく残ってないよね。
小さな政府が党是の共和党で、しかもこれだけの内容を盛り込んだMega-Billの最後の争点がSALTっていうのもなんだかな~って感じはあるんだけどね。District単位の利益の問題だからしょうがないね。
上院の反応は?
SALT派と和解できて下院を通過した後は上院。既にDeficit HawkのRon Johnson(R-Wis)は歳出減が手ぬるいみたいなコメントを出してるし、逆にいつものスタンス的には意外なJosh Hawley(R-Mo)はMedicaidの就労義務に懸念を持ってたりするんで上院は上院でひと悶着あるだろう。いずれにしても上院は他にも結構な修正を入れるだろうから、修正版が上院で賛同を得られたとしても今度は修正後バージョンが下院の各派に受け入れられ、両院一致の法律にできるかどうかが争点になる。
Section 899
正式に下院法案の一部を構成することになったSection 899。昨日触れた通りUTPR対抗Estes法案のSuper-BEATも含まれる総合的な対抗条文になってる。下院法案で最終化されている899に関しては以前からの899ポスティングのラップアップも兼ねて次のポスティングで。その後は法人関係で関心が高いであろう即時償却や米国内R&D支出等に関して。
Mark-upでそれなりの修正があるんではって言われてたけど結果はNo Change。すなわち12日の389ページがそのままWays and Means Committeeによる最終Mark-upバージョンになった。カリフォルニアみたいなNYCで「どうせ修正あるしね」って思って軽く読んでたけどそのまま最終化してしまったんでもっと細かく読まないとね。ちょうど本当に西海岸に寄ってるんでNYCの気候は気にせずに数日フォーカスします。
下院全体採決とハードル
ここに来て下院共和党内で最後の争点になってるのがSALT Cap。以前もチラッと触れたけど、州個人所得税を連邦所得税を計算する際にどれだけ損金算入できるかっていう争点。カリフォルニアとかニューヨークとか規律に欠ける歳出を繰り返す州は当然税金が高いけど、それを連邦所得税で費用化するっていうことは全米の市民が高税率州の税金の2~3割を間接負担していることになる。所得税ゼロで州財政をManageしてるフロリダやテキサス州を含む9州の市民からしてみると無駄使いやBureaucracyの激しい高税率州のコストを強制的に間接負担させられるのは釈然としない。一方で高税率州の有権者に支えられるカリフォルニアやニューヨーク州の共和党議員は地元で突き上げられてるから最大限の費用化を主張する。いつも触れてる通り下院は2年毎の選挙で全議席改訂なんで接戦Districtの議員は必死だ。
TCJAでは州個人所得税(正確には州および市や学校区等の所得税、所得税がない管轄区の州民は代わりに州および郡等のSales Tax、プラス不動産税や資産の価値に基づく動産税を含む)の個別控除を$10,000(MFS申告の場合は$5,000)に制限した。これを昔みたいに制限なしにして欲しいっていうのが高税率州議員たち、いわゆるSALT Caucus(SALT派?)の希望。無制限化は歳入インパクトが大き過ぎるし他州の議員の意見もあるし、下院最終法案では妥協案として2026年からSALT Capを$30,000(MFS申告の場合は$15,000)に恒久引き上げ。ただMAGI(MAGAじゃないからね!)って言われる修正AGI(課税所得総額から特定のAbove-the-line控除を差し引いた額)が$400,000(MFS申告の場合は$200,000)を超過する場合、超過額の20%に関して恩典がフェーズアウト。
下院最終法案のこの引き上げや所得ベースのフェーズアウトはSALT派からすると「侮辱」テリトリーって言われているんでSALT派と下院リーダーシップは引き続き秘密会(Closed door meeting)や15日に予定されてる下院共和党カンファレンスで駆け引きを続ける予定。したがって法案は最終化されたとは言え、SALT部分はまだセンシティブな状態。下院法案のコストは10年のBudget Windowで$3.7~3.8Tって言われてて(逆にあれだけ全て盛り込んで$4T行ってないのが意外?)、Ways and Means以外のCommitteeによる歳出減はMedicaidで躓いてるんで$2T行かないだろうから、Ways and Meansに許容されるコストは$4TでCapされる。となると他の歳入減を見つけない限りSALT Capのこれ以上の緩和の枠はそんなに大きく残ってないよね。
小さな政府が党是の共和党で、しかもこれだけの内容を盛り込んだMega-Billの最後の争点がSALTっていうのもなんだかな~って感じはあるんだけどね。District単位の利益の問題だからしょうがないね。
上院の反応は?
SALT派と和解できて下院を通過した後は上院。既にDeficit HawkのRon Johnson(R-Wis)は歳出減が手ぬるいみたいなコメントを出してるし、逆にいつものスタンス的には意外なJosh Hawley(R-Mo)はMedicaidの就労義務に懸念を持ってたりするんで上院は上院でひと悶着あるだろう。いずれにしても上院は他にも結構な修正を入れるだろうから、修正版が上院で賛同を得られたとしても今度は修正後バージョンが下院の各派に受け入れられ、両院一致の法律にできるかどうかが争点になる。
Section 899
正式に下院法案の一部を構成することになったSection 899。昨日触れた通りUTPR対抗Estes法案のSuper-BEATも含まれる総合的な対抗条文になってる。下院法案で最終化されている899に関しては以前からの899ポスティングのラップアップも兼ねて次のポスティングで。その後は法人関係で関心が高いであろう即時償却や米国内R&D支出等に関して。
Monday, May 12, 2025
下院法案ドラフト公表「P2対抗法案899・Super-BEAT共に入選」
Wow。金曜日の夜に28ページのSkinny Versionを読み終えてまるでカリフォルニアみたいな天気のNYCをEnjoyしかけた矢先に389ページに上るWays and Means Committeeの本番税制改正ドラフトが公表された。明日(こちらの火曜日)の午後から夜を徹したMark-upに入るそう(その際に変更可能性は十分にあり)。
う~ん、これは…。もちろん今ここで詳細を語るには至ってないけど、しばらく特集してたピラー2(特にUTPR)とDST対抗法案の899とSuper-BEATが合体されて一つのsection 899として堂々ランクイン。内容は今までのポスティングでも触れたものから若干アップデートがあるみたいだけど趣旨は同じ。凄い。上院での運命は分かんないけどね。
他に目につくのは…、IRAのエネジークレジットは撤廃。とは言え相当な猶予期間が設けられてる。こんな長期の猶予期間では手緩いって既にDeficit Hawk派からはクレーム(?)が寄せられている。EVクレジットは原則今年で最後。適格の人は今年買わないとね!モデルYも新しくなったし、モデル2が近々出るって言う噂もあるし。今年中にはFSDがSuperviseナシになるっていうことで完全に自動運転だし。Carbon-wrapのMotor搭載したモデルSのPlaidバージョンとか究極将来のRoadsterとかいいけどクレジットとは無縁の世界だね。
国内R&D支出の損金算入復活。支払利息損金算入制限のEBITDAベース化も復活。
非居住者に対する送金に5%のExcise tax?とか聞いたことない条文がいきなり入っている。チップ、残業の非課税も条件付きとは言え今度こそ盛り込まれてる。SALT Capは$30Kだ。大学のEndowmentとかには厳しい規定が…。自動車ローンの金利が控除対象だったりおとといのSkinny Versionと合わせるとトランプが言ってたことが結構盛り込まれてる。
まだまだこれから読解が必要なんで取り合えずって感じでした。
う~ん、これは…。もちろん今ここで詳細を語るには至ってないけど、しばらく特集してたピラー2(特にUTPR)とDST対抗法案の899とSuper-BEATが合体されて一つのsection 899として堂々ランクイン。内容は今までのポスティングでも触れたものから若干アップデートがあるみたいだけど趣旨は同じ。凄い。上院での運命は分かんないけどね。
他に目につくのは…、IRAのエネジークレジットは撤廃。とは言え相当な猶予期間が設けられてる。こんな長期の猶予期間では手緩いって既にDeficit Hawk派からはクレーム(?)が寄せられている。EVクレジットは原則今年で最後。適格の人は今年買わないとね!モデルYも新しくなったし、モデル2が近々出るって言う噂もあるし。今年中にはFSDがSuperviseナシになるっていうことで完全に自動運転だし。Carbon-wrapのMotor搭載したモデルSのPlaidバージョンとか究極将来のRoadsterとかいいけどクレジットとは無縁の世界だね。
国内R&D支出の損金算入復活。支払利息損金算入制限のEBITDAベース化も復活。
非居住者に対する送金に5%のExcise tax?とか聞いたことない条文がいきなり入っている。チップ、残業の非課税も条件付きとは言え今度こそ盛り込まれてる。SALT Capは$30Kだ。大学のEndowmentとかには厳しい規定が…。自動車ローンの金利が控除対象だったりおとといのSkinny Versionと合わせるとトランプが言ってたことが結構盛り込まれてる。
まだまだこれから読解が必要なんで取り合えずって感じでした。
Saturday, May 10, 2025
「Mega-Bill」の議会審議動向・下院税制改正案「Skinny Version」公表
4月10日に両院でBudget resolutionが可決されてBudget reconciliationに基づく法案審議に弾みが付いて早くもひと月。この一か月間、共和党内の異なる派のPriority差異が浮き彫りに。主に下院内のDeficit Hawk派と中庸派、そして下院と上院間の意見調整が困難を極める結果になっている。ただこれらは最初からみんなが言ってた通りの展開だから、これをどう調整するかが各院リーダーのJohnson、Thune、税制改正法案の各院責任者のSmith、Crapo、そして行政府からは財務長官Bessent、Nattional Economic Councilの Hassett、いわゆるBig-6の腕の見せ所。また議員たちもMAGA共和党は米国市民の信任を得たんだから、相反する利益があるとしても各派・両院妥協するところは妥協して市民の期待に応えて成長志向の経済ポリシーを早期に法制化するっていうBig Pictureを忘れずに一枚岩になれるかどうかが試される最重要なFinal Phaseに入ってる。
以前のポスティングでも触れた通り、2026年の中間選挙を考えると今年の初夏には税制改正が通り、2025年後半から2026年前半に掛けて有権者がその恩典を実感する必要がある。中間選挙で全議席が入れ替わる下院は特にこの点にはセンシティブだ。タイミングに敏感な下院の議長JohnsonはMemorial Day(5月29日)を目標に全て可決って言ってたけど、3分の1の議席しか改選されない上院は夏までには…って下院の視点からすると少し呑気なタイムラインに言及してた。既に5月に入ってるんで財務長官のBessentは独立記念日のJuly 4thまでには達成っていう読み。結果、現時点のコンセンサス・落としどころとしてはJuly 4thってことになってる。それでも結構Aggressiveにいかないと難しい感はあるけど、逆に言えば党内派閥の意見は時間を掛けても変わらないんで結局どこかのタイミングで最大公約数的なJokerを切り札に一気に可決せざるを得ないんで、それが6月でも9月でも努力やPainは同じ気もするけどね。今年のJuly 4thは花火やバーベキューばかりでなく税制改正パッケージの解読Weekになるかな~。楽しみ?共和党だからまだ分かんないね。
Mega-Bill
4月10日のBudget resolutionでは税制、国境警備、国防、エネジー等全て一本のBudget reconciliationで制定する方向で最終化され、これはトランプがBig Beautiful Billって形容してたことから一般にもそう呼ばれていた。最近になってこの名称は長すぎるせいか、「Mega-Bill」って形容されるケースが目立ってきた。もちろん内容が多岐に亘るメガな法律っていう意味。SZA(「シィーザ」って読みます)のKill Billみたいで格好いいね!Kill Billって歌詞はチョッとダークだけど曲はいい。SZAと言えば今日(5月9日)たまたまニューヨークの(正確にはHudson River渡った向こうのNJの)MetLife Stadiumで屋外コンサートがあるけど空模様のかげんがイマイチで心配。ということで僕もこれからBig Beautiful BillはKill Bill、じゃなくてMega-Billって呼ぶことにします。
下院Committee Mark-up
下院では税法ドラフトの使命を帯びているWays and Means Committeeに先立ち、他のCommittee(下院には11のCommitteeがある)が各々割り当てられた計$1.5T~2Tの歳出減をどうやって捻出するかがフォーカス。以前のポスティングで触れた通り、下院向けのBudget Resolutionでは$2Tの歳出減が達成できない場合、未到達額分、Ways and Means Committeeに割り当てられている歳出増(すなわちTCJAの延長を含むネット減税額)が減額される。この仕組みからまずは歳出減をいくら達成できるかが判明しないと法案の税法部分を完成させることができない。
この週(米国の一般的な感覚では一週間は日曜日(7th day of the week)に終わるんで5月11日で終わる週のこと)で大概のCommitteeのMark-up(法案ドラフト)が明確になってきたんで来週(5月12日の週)からWays and Means CommitteeがMega-Billの一部を構成する税法部分のドラフト最終化に着手するっていう予定。で、その後、Memorial Day(5月26日)までに税法を含む下院バージョンのMega-Bill可決を目指すっていうタイムライン。で、それに先立ちWays and Means Committeeは噂通り「Skinny Version」って呼ばれる初期バージョンを5月9日金曜日夜に公開している。絶妙なタイミングの公開でFriday Nightが台無し?
下院税制改正法案Skinny Version
Skinny Versionはその名の通り「初めの一歩」に当たるShort Version。Mega-Bill全体がボックスセットだとすると、Skinny Versionはその中の一曲、しかもRadio Editみたいなサイズ。また物議を醸すWild Card規定は含まれてない。ただ、クロスボーダーに関してGILTI、FDII、BEATの現状維持(TCJAクリフの増税なし)が含まれてたんでWelcome。
面白いのはSubtitleが共通して「Make AmericanナントカAgain」ってMAGAテーマになってること。個人所得税の減税延長は「Make American Workers and Families Thrive Again」、GILTI、FDII、BEAT増税回避は「Make Rural America and Main Street Grow Again」, Medicare(Medicaidではない)の適格を市民やグリーンカード所有者に限定する部分は「Make America Win Again」っていう調子だ。
Skinny Version個人所得税関係
以前にも触れた通り、TCJAクリフの問題は「個人所得税」の減税が2025年を最後に失効してしまう点が最大の関心事だけど、Skinny Versionでは税率引き下げの恒久化やBracketの物価スライド調整とかのベーシック部分は含まれてる。人的控除がゼロって読めるんだけど実質撤廃?
上述の通りMega-Billは中間選挙に向けて一日も早く可決してその恩典を有権者が肌で感じる必要があるけど、Skinny Versionではその点に関する対処が見られる。まず、所得水準に基づくフェーズアウトを含む一定要件下で16歳以下の扶養子女に認められるChild Tax Credit(「CTC」)は従来の$1,000がTCJAで$2,000に増額されてたのを恒久化。しかも「2025年を含む」4年間の時限措置で更に$500上乗せで$2,500に増額(さすがにJD Vanceが選挙活動中に提唱してた$5,000じゃないけどね)。2025年から増額させるのは2025年の源泉徴収や2025年の申告を行う2026年初旬にその恩典が実感できるような配慮だろう。CTCを計上する納税者(既婚の場合は配偶者も)およびCTC適格の子女の全員がSocial Security Number(SSN)を所有していないといけない点も明記されてる。SSNは一般に市民、グリーンカード所有者、就労権のあるビザ所有者に交付される。ITINだけじゃダメってことだね。
また、標準控除(Standard Deduction)に関してもTCJAの増額が恒久化される。Standard DeductionってTCJA前は州税や不動産税が全額(総合的なフェーズアウトはあったけど)個別控除対象だったんでどちらかって言うと低所得者や州所得税のないFloridaやTexas州の納税者が利用することが多かった。TCJA増額前のStandard Deduction額は夫婦合算申告ベースで$12,700だったけど、これが一気に$30,000(2025年ベース)に増額されてた。TCJAは州税や不動産税の$10,000控除制限(後述)を導入したんで、Standard Deduction増額と相まってStandard Deductionを取る納税者が急増していた。Skinny VersionではTCJAの増額Standard Deductionを恒久化すると同時に2025年から4年間さらに$1,000~$2,000の時限増額を規定している。
もう一つ日本では馴染みは薄いだろうけど個人所得税に関して米国で注目されてるのが199Aのパススルー控除が2025年で失効するけどその温存有無。元々2017年のTCJAで法人税率が21%に引き下げられて、個人所得税は下がったとはいえ37%なんで、従来の法人vパススルーのEquationが大きく変わることになった。法人は主体レベルの法人税課税に加え株主が配当に課税されるんで二重課税だけど、2017年以前のように35%取られて残りの65%に23.8%(QDIなんで20%だけどオバマケア付加タックスで3.8%を想定)っていう連邦だけで実効税率50%強っていう状態から法人税率が21%に下がったんで二重課税だけど実効税率は39.8%になった。となるとパススルーで直接個人所得税対象になる37%との比較で、あんまり変わらないし法人が内部で資金を留保して再投資してる間はむしろ法人の方が有利?っていう新たなダイナミクスとなる。法人税率が21%に下がったのにパススルーはそのまま?っていう点の不整合を解消するため、2017年TCJAでは一定要件下でパススルーの所得に対し個人レベルで20%の想定控除が規定された。結果としてパススルー所得に対する実効税率は199A適格だと30%程度になる。ちなみにTCJA可決当時はパススルーモデルが法人モデルに変わるトレンドが生まれるんではっていうような話が聞かれたけど、体験的にパススルーから転換するケースは稀だった。民主党による法人税増税のリスクもあるし、パススルーは他の面でもフレキシブルだからね。Skinny Versionでは199Aを恒久化するばかりでなく、想定控除が20%から22%に引き上げられ、実効税率が1%弱下がってる。
Private CreditのBDCと199A
従来からREITのOrdinary Distributionが199A適格だったけど、Skinny Versionではプラスで税務上RIC区分を選択してるBusiness Development Companies(「BDC」)から受け取る「BDC Interest Dividend」も適格になる。BDCは40年投資法管轄の主体でLeverageやRelated Party取引に関して通常の40年投資法より軽めの規制下(って言っても40年投資法なんでPrivate Vehicleに比べたらかなりのRegulatory負荷)にある特別なタイプの主体。元々Retail投資家でもVenture CapitalやPrivate Equity同様のモデルに投資できるようにって制定された法律だけど、ここ何年もPrivate Creditに利用されるケースが増大してる。Skinny VersionではBDCのネット利子所得に帰する配当を199A適格としている。これは銀行による融資が容易ではない際にヘッジファンドとかのPrivate VehicleによるPrivate Credit提供に加え、BDCによるPrivate Creditの提供が急激に拡大してきた点を反映してMid-Marketへの融資をより活性化するための対策だろう。結構よく考えてるよね。Bessent財務長官は頻繁にメガバンクとそれ以外の銀行に対する異なる規制環境の必要性に言及し、Mid-Marketに対する融資拡大措置を推進しているけど、それのPrivate Credit版と言える。
ちなみにSkinny VersionのBDCのInterest Dividendが199A適格っていう取り扱いに先んじて同じような趣旨で米国外投資家によるPrivate Creditマーケットへの参入を促している法律が既に存在している。BDCって従来はRegulatory負荷が高すぎるんで、外国人LPから資金調達するPrivate CreditのスポンサーはPrivate Vehicleを利用するケースが圧倒的だったけど、単なるCo-InvestmentやSecondaryローンの取得ではなくローンをオリジネーション(多くのPrivate Creditがそう)するケースではファンドのストラクチャー的にどうしてもECIリスクが付きまとう。
Regulatory負荷に関して、大手スポンサーはいずれにしても40年投資法対象のMutual FundやETFをマネージしてるんで、そのノウハウを活かしてRegulatoryのチャレンジを克服し、Private CreditにもBDCをWrapperとして利用するトレンドが加速してきた。Regulatoryのハードルを越えてBDCを活用することができると、法人形態を採択して一定要件を満たすと税務上のRIC区分の選択ができて主体レベルで課税がない(細部は異なるけど概念はREITに似てる)。BDC自体はパススルーでもいいんだけど、RICになるには税務上法人区分じゃないといけないんでRICのBDCは外国人投資家の視点からは自ずとブロッカーになる。分配はBefore Taxで、更に2001年の税制改正(Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act of 2001 (「EGTRRA」)でBDCの利子所得がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たす場合、Look-throughみたいにその利子所得に帰するBDCの配当が源泉税免除になっている。上述の通り通常の40年投資法より関連者間取引の規定が若干緩和されてるんでExternally Managedの(つまりファンドスポンサーが組成する)BDCは同じスポンサーがManageするファンドコンプレック内の複数のファンドやWrapperからローンを提供することが可能っていうファンドスポンサーにとっては実に有益なストラクチャーを取ることができる。SECによるExempt Reliefにはこの手の緩和が多く開示されてる。これらの理由でRegulatory負荷を克服できる場合、BDCはPrivate CreditのVehicleとしてはBest of all worldみたいな存在だ。一点注意点は40年投資法Vehicleなんで仮に「Private BDC」(すなわち資金調達をPrivateに行うタイプのBDC)でも財務諸表は上場企業同様に常にSECにファイルしないといけない。この点は真にPrivateのPrivate REITとは異なる。
Skinny Versionに戻るけど、BDCのネット利子を源泉とする配当が199A適格になるとPrivate Credit戦略のPublic BDC(証券取引所で流通または取引所では流通はしてないけど資金調達をPublicにしてる場合)にRetailの投資がし易くなり、Mid-Marketへの融資が活性化されるような仕組み。
SALTは?
ちなみに個人所得税に関して大きな争点になっている州税の連邦課税所得計算時の損金算入制限緩和(SALT問題。SALTはお塩じゃなくてState and Local Taxです)は行先不明なんで未だ盛り込まれてない。Skinny Versionだから無難なところから始めの一歩だね…。
BEAT・クロスボーダー
Skinny Versionに先立ち、上院ではGILTI、FDII、BEATの原則現状維持に加えてCFC Look-through規定の恒久化、GILTIバスケットのFTC計算時の米国側の費用配賦ルール改訂(FTCが取りやすくなる)、等を盛り込んだ詳細法案がつい先日別途提出されたけど、Skinny VersionでもGILTIおよびFDIIの税率(理論税率13.125%)が恒久化されている。
で、クロスボーダーの規定の運命の中でも日本企業にとって関心が高いのはBEAT。特に関税対策の必要性が高まる今日この頃、製品対価からIP価値をDe-bundleしたりするとロイヤルティがBEAT対象になるの?とか、BEAT対象になるリスクがある場合の定量的なインパクト、とかの検討をすることになるんでその重要性は自ずと高まる傾向にある。BEATは税制改正で手当てされないと2026年以降かなり厳しいものになるからね。具体的にはBEATミニマム税計算時の税率が10%から12.5%(銀行と証券ディーラーは11%から13.5%)に引き上げられるのに加え、こっちの方のダメージが大きいことが多いと思うけど、BEAT暫定税額と通常法人税の比較をする際に、通常法人税はR&Dクレジットを含む全てのクレジットをマイナスした後の数字を使うようになる。現状は一定の制限下、R&D、Low Income Housing、エネジークレジットはマイナスする前の数字を比較対象にできるんで通常法人税額が高く見え、BEATミニマム税が低くなる。Skinny Versionは税率、クレジットの適用の双方に関して現状を恒久化。
GILTIやFDIIの税率は恒久化が何となく想定されてたけど、BEATはAmerica First Policy的にどうなのかなってチョッと疑問だったこともあり、BEATがGILTIやFDIIと並列に手当てされてるのはGood News。まあ、実際にはInbound規定のはずだったBEATの適用はFTCを多く計上せざるを得ない米国企業への悪影響も大きかったからかもね。ただ、Pillar 2のUTPR導入国の企業は先日チラッと触れたSuper BEAT条項の動向に注意。
Skinny Versionはあくまで今後の本格的審議の出発点なんでどんな変更が加えられるか分かんないし、その後の上院のMark-upで下院案は大きく変わることも多いんであくまで参考程度っていう点は忘れないように。さらに来週のE&Cの本格的なMark-upでエンタイトルメント系の歳出にどれだけメスを入れることができるか、その数字に基づきWays and Means Committeeがどの程度、TCJA外の減税規定や米国製造施設投資に対するSuper-Bonus償却を盛り込むことができるか、等まだまだ予断は許さない。
次回こそ899法案Wrap-upしないとね。
以前のポスティングでも触れた通り、2026年の中間選挙を考えると今年の初夏には税制改正が通り、2025年後半から2026年前半に掛けて有権者がその恩典を実感する必要がある。中間選挙で全議席が入れ替わる下院は特にこの点にはセンシティブだ。タイミングに敏感な下院の議長JohnsonはMemorial Day(5月29日)を目標に全て可決って言ってたけど、3分の1の議席しか改選されない上院は夏までには…って下院の視点からすると少し呑気なタイムラインに言及してた。既に5月に入ってるんで財務長官のBessentは独立記念日のJuly 4thまでには達成っていう読み。結果、現時点のコンセンサス・落としどころとしてはJuly 4thってことになってる。それでも結構Aggressiveにいかないと難しい感はあるけど、逆に言えば党内派閥の意見は時間を掛けても変わらないんで結局どこかのタイミングで最大公約数的なJokerを切り札に一気に可決せざるを得ないんで、それが6月でも9月でも努力やPainは同じ気もするけどね。今年のJuly 4thは花火やバーベキューばかりでなく税制改正パッケージの解読Weekになるかな~。楽しみ?共和党だからまだ分かんないね。
Mega-Bill
4月10日のBudget resolutionでは税制、国境警備、国防、エネジー等全て一本のBudget reconciliationで制定する方向で最終化され、これはトランプがBig Beautiful Billって形容してたことから一般にもそう呼ばれていた。最近になってこの名称は長すぎるせいか、「Mega-Bill」って形容されるケースが目立ってきた。もちろん内容が多岐に亘るメガな法律っていう意味。SZA(「シィーザ」って読みます)のKill Billみたいで格好いいね!Kill Billって歌詞はチョッとダークだけど曲はいい。SZAと言えば今日(5月9日)たまたまニューヨークの(正確にはHudson River渡った向こうのNJの)MetLife Stadiumで屋外コンサートがあるけど空模様のかげんがイマイチで心配。ということで僕もこれからBig Beautiful BillはKill Bill、じゃなくてMega-Billって呼ぶことにします。
下院Committee Mark-up
下院では税法ドラフトの使命を帯びているWays and Means Committeeに先立ち、他のCommittee(下院には11のCommitteeがある)が各々割り当てられた計$1.5T~2Tの歳出減をどうやって捻出するかがフォーカス。以前のポスティングで触れた通り、下院向けのBudget Resolutionでは$2Tの歳出減が達成できない場合、未到達額分、Ways and Means Committeeに割り当てられている歳出増(すなわちTCJAの延長を含むネット減税額)が減額される。この仕組みからまずは歳出減をいくら達成できるかが判明しないと法案の税法部分を完成させることができない。
この週(米国の一般的な感覚では一週間は日曜日(7th day of the week)に終わるんで5月11日で終わる週のこと)で大概のCommitteeのMark-up(法案ドラフト)が明確になってきたんで来週(5月12日の週)からWays and Means CommitteeがMega-Billの一部を構成する税法部分のドラフト最終化に着手するっていう予定。で、その後、Memorial Day(5月26日)までに税法を含む下院バージョンのMega-Bill可決を目指すっていうタイムライン。で、それに先立ちWays and Means Committeeは噂通り「Skinny Version」って呼ばれる初期バージョンを5月9日金曜日夜に公開している。絶妙なタイミングの公開でFriday Nightが台無し?
下院税制改正法案Skinny Version
Skinny Versionはその名の通り「初めの一歩」に当たるShort Version。Mega-Bill全体がボックスセットだとすると、Skinny Versionはその中の一曲、しかもRadio Editみたいなサイズ。また物議を醸すWild Card規定は含まれてない。ただ、クロスボーダーに関してGILTI、FDII、BEATの現状維持(TCJAクリフの増税なし)が含まれてたんでWelcome。
面白いのはSubtitleが共通して「Make AmericanナントカAgain」ってMAGAテーマになってること。個人所得税の減税延長は「Make American Workers and Families Thrive Again」、GILTI、FDII、BEAT増税回避は「Make Rural America and Main Street Grow Again」, Medicare(Medicaidではない)の適格を市民やグリーンカード所有者に限定する部分は「Make America Win Again」っていう調子だ。
Skinny Version個人所得税関係
以前にも触れた通り、TCJAクリフの問題は「個人所得税」の減税が2025年を最後に失効してしまう点が最大の関心事だけど、Skinny Versionでは税率引き下げの恒久化やBracketの物価スライド調整とかのベーシック部分は含まれてる。人的控除がゼロって読めるんだけど実質撤廃?
上述の通りMega-Billは中間選挙に向けて一日も早く可決してその恩典を有権者が肌で感じる必要があるけど、Skinny Versionではその点に関する対処が見られる。まず、所得水準に基づくフェーズアウトを含む一定要件下で16歳以下の扶養子女に認められるChild Tax Credit(「CTC」)は従来の$1,000がTCJAで$2,000に増額されてたのを恒久化。しかも「2025年を含む」4年間の時限措置で更に$500上乗せで$2,500に増額(さすがにJD Vanceが選挙活動中に提唱してた$5,000じゃないけどね)。2025年から増額させるのは2025年の源泉徴収や2025年の申告を行う2026年初旬にその恩典が実感できるような配慮だろう。CTCを計上する納税者(既婚の場合は配偶者も)およびCTC適格の子女の全員がSocial Security Number(SSN)を所有していないといけない点も明記されてる。SSNは一般に市民、グリーンカード所有者、就労権のあるビザ所有者に交付される。ITINだけじゃダメってことだね。
また、標準控除(Standard Deduction)に関してもTCJAの増額が恒久化される。Standard DeductionってTCJA前は州税や不動産税が全額(総合的なフェーズアウトはあったけど)個別控除対象だったんでどちらかって言うと低所得者や州所得税のないFloridaやTexas州の納税者が利用することが多かった。TCJA増額前のStandard Deduction額は夫婦合算申告ベースで$12,700だったけど、これが一気に$30,000(2025年ベース)に増額されてた。TCJAは州税や不動産税の$10,000控除制限(後述)を導入したんで、Standard Deduction増額と相まってStandard Deductionを取る納税者が急増していた。Skinny VersionではTCJAの増額Standard Deductionを恒久化すると同時に2025年から4年間さらに$1,000~$2,000の時限増額を規定している。
もう一つ日本では馴染みは薄いだろうけど個人所得税に関して米国で注目されてるのが199Aのパススルー控除が2025年で失効するけどその温存有無。元々2017年のTCJAで法人税率が21%に引き下げられて、個人所得税は下がったとはいえ37%なんで、従来の法人vパススルーのEquationが大きく変わることになった。法人は主体レベルの法人税課税に加え株主が配当に課税されるんで二重課税だけど、2017年以前のように35%取られて残りの65%に23.8%(QDIなんで20%だけどオバマケア付加タックスで3.8%を想定)っていう連邦だけで実効税率50%強っていう状態から法人税率が21%に下がったんで二重課税だけど実効税率は39.8%になった。となるとパススルーで直接個人所得税対象になる37%との比較で、あんまり変わらないし法人が内部で資金を留保して再投資してる間はむしろ法人の方が有利?っていう新たなダイナミクスとなる。法人税率が21%に下がったのにパススルーはそのまま?っていう点の不整合を解消するため、2017年TCJAでは一定要件下でパススルーの所得に対し個人レベルで20%の想定控除が規定された。結果としてパススルー所得に対する実効税率は199A適格だと30%程度になる。ちなみにTCJA可決当時はパススルーモデルが法人モデルに変わるトレンドが生まれるんではっていうような話が聞かれたけど、体験的にパススルーから転換するケースは稀だった。民主党による法人税増税のリスクもあるし、パススルーは他の面でもフレキシブルだからね。Skinny Versionでは199Aを恒久化するばかりでなく、想定控除が20%から22%に引き上げられ、実効税率が1%弱下がってる。
Private CreditのBDCと199A
従来からREITのOrdinary Distributionが199A適格だったけど、Skinny Versionではプラスで税務上RIC区分を選択してるBusiness Development Companies(「BDC」)から受け取る「BDC Interest Dividend」も適格になる。BDCは40年投資法管轄の主体でLeverageやRelated Party取引に関して通常の40年投資法より軽めの規制下(って言っても40年投資法なんでPrivate Vehicleに比べたらかなりのRegulatory負荷)にある特別なタイプの主体。元々Retail投資家でもVenture CapitalやPrivate Equity同様のモデルに投資できるようにって制定された法律だけど、ここ何年もPrivate Creditに利用されるケースが増大してる。Skinny VersionではBDCのネット利子所得に帰する配当を199A適格としている。これは銀行による融資が容易ではない際にヘッジファンドとかのPrivate VehicleによるPrivate Credit提供に加え、BDCによるPrivate Creditの提供が急激に拡大してきた点を反映してMid-Marketへの融資をより活性化するための対策だろう。結構よく考えてるよね。Bessent財務長官は頻繁にメガバンクとそれ以外の銀行に対する異なる規制環境の必要性に言及し、Mid-Marketに対する融資拡大措置を推進しているけど、それのPrivate Credit版と言える。
ちなみにSkinny VersionのBDCのInterest Dividendが199A適格っていう取り扱いに先んじて同じような趣旨で米国外投資家によるPrivate Creditマーケットへの参入を促している法律が既に存在している。BDCって従来はRegulatory負荷が高すぎるんで、外国人LPから資金調達するPrivate CreditのスポンサーはPrivate Vehicleを利用するケースが圧倒的だったけど、単なるCo-InvestmentやSecondaryローンの取得ではなくローンをオリジネーション(多くのPrivate Creditがそう)するケースではファンドのストラクチャー的にどうしてもECIリスクが付きまとう。
Regulatory負荷に関して、大手スポンサーはいずれにしても40年投資法対象のMutual FundやETFをマネージしてるんで、そのノウハウを活かしてRegulatoryのチャレンジを克服し、Private CreditにもBDCをWrapperとして利用するトレンドが加速してきた。Regulatoryのハードルを越えてBDCを活用することができると、法人形態を採択して一定要件を満たすと税務上のRIC区分の選択ができて主体レベルで課税がない(細部は異なるけど概念はREITに似てる)。BDC自体はパススルーでもいいんだけど、RICになるには税務上法人区分じゃないといけないんでRICのBDCは外国人投資家の視点からは自ずとブロッカーになる。分配はBefore Taxで、更に2001年の税制改正(Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act of 2001 (「EGTRRA」)でBDCの利子所得がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たす場合、Look-throughみたいにその利子所得に帰するBDCの配当が源泉税免除になっている。上述の通り通常の40年投資法より関連者間取引の規定が若干緩和されてるんでExternally Managedの(つまりファンドスポンサーが組成する)BDCは同じスポンサーがManageするファンドコンプレック内の複数のファンドやWrapperからローンを提供することが可能っていうファンドスポンサーにとっては実に有益なストラクチャーを取ることができる。SECによるExempt Reliefにはこの手の緩和が多く開示されてる。これらの理由でRegulatory負荷を克服できる場合、BDCはPrivate CreditのVehicleとしてはBest of all worldみたいな存在だ。一点注意点は40年投資法Vehicleなんで仮に「Private BDC」(すなわち資金調達をPrivateに行うタイプのBDC)でも財務諸表は上場企業同様に常にSECにファイルしないといけない。この点は真にPrivateのPrivate REITとは異なる。
Skinny Versionに戻るけど、BDCのネット利子を源泉とする配当が199A適格になるとPrivate Credit戦略のPublic BDC(証券取引所で流通または取引所では流通はしてないけど資金調達をPublicにしてる場合)にRetailの投資がし易くなり、Mid-Marketへの融資が活性化されるような仕組み。
SALTは?
ちなみに個人所得税に関して大きな争点になっている州税の連邦課税所得計算時の損金算入制限緩和(SALT問題。SALTはお塩じゃなくてState and Local Taxです)は行先不明なんで未だ盛り込まれてない。Skinny Versionだから無難なところから始めの一歩だね…。
BEAT・クロスボーダー
Skinny Versionに先立ち、上院ではGILTI、FDII、BEATの原則現状維持に加えてCFC Look-through規定の恒久化、GILTIバスケットのFTC計算時の米国側の費用配賦ルール改訂(FTCが取りやすくなる)、等を盛り込んだ詳細法案がつい先日別途提出されたけど、Skinny VersionでもGILTIおよびFDIIの税率(理論税率13.125%)が恒久化されている。
で、クロスボーダーの規定の運命の中でも日本企業にとって関心が高いのはBEAT。特に関税対策の必要性が高まる今日この頃、製品対価からIP価値をDe-bundleしたりするとロイヤルティがBEAT対象になるの?とか、BEAT対象になるリスクがある場合の定量的なインパクト、とかの検討をすることになるんでその重要性は自ずと高まる傾向にある。BEATは税制改正で手当てされないと2026年以降かなり厳しいものになるからね。具体的にはBEATミニマム税計算時の税率が10%から12.5%(銀行と証券ディーラーは11%から13.5%)に引き上げられるのに加え、こっちの方のダメージが大きいことが多いと思うけど、BEAT暫定税額と通常法人税の比較をする際に、通常法人税はR&Dクレジットを含む全てのクレジットをマイナスした後の数字を使うようになる。現状は一定の制限下、R&D、Low Income Housing、エネジークレジットはマイナスする前の数字を比較対象にできるんで通常法人税額が高く見え、BEATミニマム税が低くなる。Skinny Versionは税率、クレジットの適用の双方に関して現状を恒久化。
GILTIやFDIIの税率は恒久化が何となく想定されてたけど、BEATはAmerica First Policy的にどうなのかなってチョッと疑問だったこともあり、BEATがGILTIやFDIIと並列に手当てされてるのはGood News。まあ、実際にはInbound規定のはずだったBEATの適用はFTCを多く計上せざるを得ない米国企業への悪影響も大きかったからかもね。ただ、Pillar 2のUTPR導入国の企業は先日チラッと触れたSuper BEAT条項の動向に注意。
Skinny Versionはあくまで今後の本格的審議の出発点なんでどんな変更が加えられるか分かんないし、その後の上院のMark-upで下院案は大きく変わることも多いんであくまで参考程度っていう点は忘れないように。さらに来週のE&Cの本格的なMark-upでエンタイトルメント系の歳出にどれだけメスを入れることができるか、その数字に基づきWays and Means Committeeがどの程度、TCJA外の減税規定や米国製造施設投資に対するSuper-Bonus償却を盛り込むことができるか、等まだまだ予断は許さない。
次回こそ899法案Wrap-upしないとね。
Saturday, April 26, 2025
両院合意のConcurrent Budget Resolution
トランプ政権発足から未だ100日弱しか経過してないけど、おそらく史上まれにみる激しい政権発足100日になるだろう。メキシコとの国境はほぼ完全に封鎖されバイデン時代に一千万強の移民が流入してたのが噓のよう。その他カルチャー系の問題やエネジー政策その他公約をほぼ全て強硬に実行中。これらの政策はトランプに投票した有権者は評価してるだろうけど経済政策はどうだろうか。
規制緩和
経済的にはまず規制緩和。特に金融やクリプトに関しては規制緩和路線が明確だし、税法に関してもバイデン時代末期に滑り込みで規則策定され、行政府の権限逸脱という反論が多かったパートナーシップを使用したBasis Shifting対抗規則の撤廃が発表された。パートナーシップのBasis Shiftingって言うと洗練された、または阿漕なプラニングに聞こえるかもしれないけど、結構な部分は法的に強制される資産簿価に対して普通にやらされてる調整の適用。例えばsection 732とか734、確かに思わぬEconomicsになることがある分配時の743とかをターゲットにし、通常領域の簿価調整も含めて広範に「Transaction of Interest(「TOI」)」に指定し報告義務が課せられてた。TOI(トイって言います)は玩具じゃないからね。Basis Shift規則は対象取引、報告対象期間双方の面でOverbroadで面食らってたパートナーシップは多く、撤廃はWelcome。743とか条文に基づく取り扱いの変更は行政府じゃなく、議会が法律で策定するべき。特にLoper Bright後の世界では。実際に上院ではBasis Shiftに関係する法案が提出されたりしてる。思いつく範囲でも見直して欲しい規則は結構ある。スピンオフ、特にSecuritiesのDebt for Debtの取り扱い、自社株買いのFunding Rule規則案、DC REIT判断時のC CorpのLook-throughとか。1.385‐3のFunding規定もそろそろ何とかならないかなって思い続けて既に10年近い月日がたったね。
規制緩和でイマイチ予想を下回ってるのはLina Khanが去った後のFTC(公正取引委員会)。Andrew Ferguson傘下で一気にLiberationされるかと思ってたけど、Capital OneとDiscoveryとか金融系はスムースにSailingしているのに対し、Big TechやPharmaには引き続き厳し目。Big Techはバイデン政権傘下で言論統制や世論操作させられてた危険な存在っていう見方がトランプ政権に根強く残っている点はひとつの理由だろう。
関税で税制改正の早期可決がMustに
で、公約だった関税が現実になり、しかも関税はオンだったりオフだったり。不確実性が高いのはビジネスにとってプラニングができず一番困るだろうから一層のことUniversalに10%なんだったらそう決めてMove Onした方が分かり易かった気がするんだけどね。また、以前に何回か触れた今のままではいずれ米国は過去の大国同様に滅び行くって言う危惧に対処するためのGlobal Reorderだけど、これが狙い通りにプラス効果をもたらし、米国市民、特に製造業が多い中西部の有権者がそのメリットをいつ「体感」できるのかはもちろん不明。そんな状況で経済に不確実性が増してるんで、少なくとも短期的なショック緩和策として規制緩和に加えて国内経済「成長志向」の税制改正の早急な可決がますますMustになったっていう点は前回チラッと触れた。
税制改正の具体的な大枠はTCJAの恒久化(上院)または時限延長(下院)、そしてトランプが選挙活動中から言ってるチップ、残業代、公的年金受給非課税、米国内製造に帰する所得に対する15%減税とかのパッケージのできるだけ多くを盛り込むっていうもの。これだけでも超大型法案だけど、それに国境警備、国防、エネジー関係を盛り込むOne Packeageなんで規模は巨大で、それだけに党内調整には多くのチャレンジがある。
TCJAの延長に関しては、TCJAそのものが2017年に同じトランプ大統領下の共和党Trifectaで可決された税制だから、2025年も同じくトランプ下で共和党Trifectaっていう点からTCJAを延長したり恒久化するっていう動きはごく自然に見える。でもチョッと落ち着いて考えてみると2017年の共和党と2025年の共和党では異なるベースの党で別の党みたいだから、2017年の税法をそのまま延長しようっていうこと自体、何となく不思議な部分はあるんだけど、まあTCJA自体が元からAmerica First Policy的なトランプ1.0のSignature法案で、結果多くの所得層に恩典があったことを考えると自然な流れって整理しておくべきなんだろうね。
S. CON. RES. 7/H.Con.Res.14 Concurrent Resolution
そんな中、上院は以前に可決していた2-TrackのBudget Resolutionの代わりに下院同様に税制改正、国境警備、軍事やエネルギーの全てをOne Packageで対処する「Big Beautiful Bill」、または「Too Big to Fail」って呼ぶ人もいるけど、に変更してBudget Resolutionを可決。その後、下院が新上院バージョンをギリギリ可決させてようやく正式に両院(Concurrent)のBudget Resolutionが誕生した。
Budget Resolutionを含むReconciliationのプロセスはthe Congressional Budget Act of 1974に基づくもので、Reconciliationルール枠内の法案を審議すると上院でFillibusterっていう議事進行妨害の除去に必要な60議席ではなく、単純多数決の50議席超で予算案を可決できるっていう制度。その際、法案に盛り込まれる内容は歳入・歳出に関係ないといけないとか、Reconciliationの手続き自体超複雑で僕の専門分野とは言えないけど、ベーシックなところで理解してる範囲でプロセスに触れておくと、まず両院各々が2025年の予算の大枠(具体的な法案内容ではなく)をBudget Resolutionとして可決し、最終的には一つのBudget Resolutionとする必要がある。
具体的には2025年の予算に関して上院が4月5日に以前の2‐Trackバージョンではなく、一括法案を想定したBudget Resolution(これがS.Con.Res.7)を可決。下院は既に一括法案を想定して先の3月20日に独自のBudget Resolution(H.Res.258・H.Con.Res.14)を可決してたけど、4月10日に下院は上院のS.Con.Res.7に元々の下院のポリシーを加味して採択。このプロセスを経て上院のS.Con.Res.7が両院合意の最終Budget Resolutionになった。元々下院のDeficit Hawksの意向を反映するために$1.5~$2Tの歳出カットが反映されてたけど、これらの歳出カットはそのまま下院向けには残る形で最終化されている。
上院・下院で異なるInstructions
このようにBudget ResolutionがConcurrentで両院一致バージョンになったものの、面白いことに上院バージョンに元々の下院バージョンを合体させてることから上院と下院で各委員会に与えられた予算指示内容は異なるっていう複雑な構成に仕上がっている。上院と下院には各々委員会があって、個々の委員会が管轄権を持つ分野はミラーイメージじゃないけど、トータルでは結局同じ分野を取り扱うことになる。下院はEnergy & Commerceっていう委員会があると思えば上院はEnergyっていうのがあり、下院のFinancial Services委員会もどきが上院Banking委員会だったりするけど、特定分野に関して両院でどこかの委員会が予算を作成する立場にあって最終的な法律は同一じゃないといけない。税制に関してはもちろんだけど下院はWays and Means Committeeだし、上院だったらFinance Committeeだ。
歳出カット
ConcurrentのBudget Resolutionに反映されている予算指示で、上院と下院で大きく異なるのは歳出カット規模。下院ではWays and Means以外の各委員会に合計で$1.5Tの最低歳出カットが指示され、Ways and Meansには$4.5Tまでの歳入減、すなわちTCJA延長他の税制改正による減税の財源が手当てされている。歳出カットは$1.5Tが最低ラインで$2Tに届かない場合、不足額はWays and Meansの$4.5Tを減額する。逆にもし歳出カットが$2Tを超える場合には、Ways and Meansの$4.5Tを増額することができる。
一方の上院側にはこの手の歳出カットの指示はない。正確に言うと全委員会合計でナンと「$4B」(この「B」は「T」のタイポではなく本当に「B」)という実質ゼロと言ってもいいような無意味な歳出カットを指示してる。これは共和党はMedicaidをカットするつもりって民主党・メディアが市民の恐怖を煽ってるんでその対策なんだろうか。Medicaidを正当に受給しているケースはカットはしないってトランプ政権は再三にわたり強調してるけど、Medicaidの不正受給や濫用による歳出は巨額だっていう話しだからトランプ政権が着手してる政府によるWaste、Abuse、Fraud支出をなくす努力をして歳出を管理するのは当然で不正の排除はMedicaid恩典カットには当たらないはず。この辺りのメッセージングはレガシーメディアが不安を煽ってるんで一般には伝わり難いところ。
米国の仕組みって日本と違い過ぎて分かり難いと思うけど、医療保険に関して国の皆保険制度はない。Privateの保険に加入しないとなかなか病院にも行けない。医療保険にかかわる連邦政府の関与は主に2つで一つは65歳以上の高齢者および身体障碍者に対するMedicareで、もう一つは低所得者に対するMedicaid。Medicaidの方は制度導入1965年当時の趣旨は生活保護を受けてる低所得層に対する医療費援助で、州が運営し連邦がかなりのポーションのコストを負担するっていうもの。1965年から制度は拡大し、特にオバマケアで連邦の負担は増額の一途。また不正の温床のようで、DOGEが実態調査する以前にも会計検査院(GAO)がMedicaidの不正は$100B規模って指摘してるから凄い。$100Bって一年のコストだからBudget Windowの10年に置き換えると$1Tだ。
Medicaidってチョッと不思議に思うかもしれないけど、下院ではEnergy & Commerce委員会の管轄化。当委員会は憲法批准直後に憲法のInterstate Commerce条項にかかわる法的管轄権を持ったことから、連邦が司る医療プログラムは必然的にInterstateとなることが理由で当委員会が管轄権を持つ。で、上述の通りConcurrentにも反映されてる下院のBudget Resolutionは計$1.5Tの歳出カットを指示してるんだけど、そのうち半分以上の$880BがこのEnergy & Commerceに割り当てられている。もちろんこれは偶然ではなくMedicaidの正当な給付ではなく、不正をカットすることで相当な歳出カットが可能だろうっていうのが背景。
一方、上述の通り上院でMedicaidを管轄しているFinance委員会には歳出カットの指示が出てない。この点から上院がどれだけ真剣に下院委員会が可決する歳出カットを法案に取り込むかがBudget Reconciliation法案可決に向けての大きな関心になっている。下院のDeficit Hawk派が上院のBudget Resolutionに賛成票を投じたのは、上院による「歳出カットはResolutionに盛り込んではないものの、下院の$1.5Tカットには賛成で同様の努力を惜しまない」っていう口約束が理由なんで火種を先送り(英語で言うところの「Kicking the can down the road」)した感は否めず、下院法案が目標のMemorial Day(5月26日)に完成したとしても、その後の上院法案や両院共通の法案とする際の交渉がどんな風に展開するか目が離せないね。
規制緩和
経済的にはまず規制緩和。特に金融やクリプトに関しては規制緩和路線が明確だし、税法に関してもバイデン時代末期に滑り込みで規則策定され、行政府の権限逸脱という反論が多かったパートナーシップを使用したBasis Shifting対抗規則の撤廃が発表された。パートナーシップのBasis Shiftingって言うと洗練された、または阿漕なプラニングに聞こえるかもしれないけど、結構な部分は法的に強制される資産簿価に対して普通にやらされてる調整の適用。例えばsection 732とか734、確かに思わぬEconomicsになることがある分配時の743とかをターゲットにし、通常領域の簿価調整も含めて広範に「Transaction of Interest(「TOI」)」に指定し報告義務が課せられてた。TOI(トイって言います)は玩具じゃないからね。Basis Shift規則は対象取引、報告対象期間双方の面でOverbroadで面食らってたパートナーシップは多く、撤廃はWelcome。743とか条文に基づく取り扱いの変更は行政府じゃなく、議会が法律で策定するべき。特にLoper Bright後の世界では。実際に上院ではBasis Shiftに関係する法案が提出されたりしてる。思いつく範囲でも見直して欲しい規則は結構ある。スピンオフ、特にSecuritiesのDebt for Debtの取り扱い、自社株買いのFunding Rule規則案、DC REIT判断時のC CorpのLook-throughとか。1.385‐3のFunding規定もそろそろ何とかならないかなって思い続けて既に10年近い月日がたったね。
規制緩和でイマイチ予想を下回ってるのはLina Khanが去った後のFTC(公正取引委員会)。Andrew Ferguson傘下で一気にLiberationされるかと思ってたけど、Capital OneとDiscoveryとか金融系はスムースにSailingしているのに対し、Big TechやPharmaには引き続き厳し目。Big Techはバイデン政権傘下で言論統制や世論操作させられてた危険な存在っていう見方がトランプ政権に根強く残っている点はひとつの理由だろう。
関税で税制改正の早期可決がMustに
で、公約だった関税が現実になり、しかも関税はオンだったりオフだったり。不確実性が高いのはビジネスにとってプラニングができず一番困るだろうから一層のことUniversalに10%なんだったらそう決めてMove Onした方が分かり易かった気がするんだけどね。また、以前に何回か触れた今のままではいずれ米国は過去の大国同様に滅び行くって言う危惧に対処するためのGlobal Reorderだけど、これが狙い通りにプラス効果をもたらし、米国市民、特に製造業が多い中西部の有権者がそのメリットをいつ「体感」できるのかはもちろん不明。そんな状況で経済に不確実性が増してるんで、少なくとも短期的なショック緩和策として規制緩和に加えて国内経済「成長志向」の税制改正の早急な可決がますますMustになったっていう点は前回チラッと触れた。
税制改正の具体的な大枠はTCJAの恒久化(上院)または時限延長(下院)、そしてトランプが選挙活動中から言ってるチップ、残業代、公的年金受給非課税、米国内製造に帰する所得に対する15%減税とかのパッケージのできるだけ多くを盛り込むっていうもの。これだけでも超大型法案だけど、それに国境警備、国防、エネジー関係を盛り込むOne Packeageなんで規模は巨大で、それだけに党内調整には多くのチャレンジがある。
TCJAの延長に関しては、TCJAそのものが2017年に同じトランプ大統領下の共和党Trifectaで可決された税制だから、2025年も同じくトランプ下で共和党Trifectaっていう点からTCJAを延長したり恒久化するっていう動きはごく自然に見える。でもチョッと落ち着いて考えてみると2017年の共和党と2025年の共和党では異なるベースの党で別の党みたいだから、2017年の税法をそのまま延長しようっていうこと自体、何となく不思議な部分はあるんだけど、まあTCJA自体が元からAmerica First Policy的なトランプ1.0のSignature法案で、結果多くの所得層に恩典があったことを考えると自然な流れって整理しておくべきなんだろうね。
S. CON. RES. 7/H.Con.Res.14 Concurrent Resolution
そんな中、上院は以前に可決していた2-TrackのBudget Resolutionの代わりに下院同様に税制改正、国境警備、軍事やエネルギーの全てをOne Packageで対処する「Big Beautiful Bill」、または「Too Big to Fail」って呼ぶ人もいるけど、に変更してBudget Resolutionを可決。その後、下院が新上院バージョンをギリギリ可決させてようやく正式に両院(Concurrent)のBudget Resolutionが誕生した。
Budget Resolutionを含むReconciliationのプロセスはthe Congressional Budget Act of 1974に基づくもので、Reconciliationルール枠内の法案を審議すると上院でFillibusterっていう議事進行妨害の除去に必要な60議席ではなく、単純多数決の50議席超で予算案を可決できるっていう制度。その際、法案に盛り込まれる内容は歳入・歳出に関係ないといけないとか、Reconciliationの手続き自体超複雑で僕の専門分野とは言えないけど、ベーシックなところで理解してる範囲でプロセスに触れておくと、まず両院各々が2025年の予算の大枠(具体的な法案内容ではなく)をBudget Resolutionとして可決し、最終的には一つのBudget Resolutionとする必要がある。
具体的には2025年の予算に関して上院が4月5日に以前の2‐Trackバージョンではなく、一括法案を想定したBudget Resolution(これがS.Con.Res.7)を可決。下院は既に一括法案を想定して先の3月20日に独自のBudget Resolution(H.Res.258・H.Con.Res.14)を可決してたけど、4月10日に下院は上院のS.Con.Res.7に元々の下院のポリシーを加味して採択。このプロセスを経て上院のS.Con.Res.7が両院合意の最終Budget Resolutionになった。元々下院のDeficit Hawksの意向を反映するために$1.5~$2Tの歳出カットが反映されてたけど、これらの歳出カットはそのまま下院向けには残る形で最終化されている。
上院・下院で異なるInstructions
このようにBudget ResolutionがConcurrentで両院一致バージョンになったものの、面白いことに上院バージョンに元々の下院バージョンを合体させてることから上院と下院で各委員会に与えられた予算指示内容は異なるっていう複雑な構成に仕上がっている。上院と下院には各々委員会があって、個々の委員会が管轄権を持つ分野はミラーイメージじゃないけど、トータルでは結局同じ分野を取り扱うことになる。下院はEnergy & Commerceっていう委員会があると思えば上院はEnergyっていうのがあり、下院のFinancial Services委員会もどきが上院Banking委員会だったりするけど、特定分野に関して両院でどこかの委員会が予算を作成する立場にあって最終的な法律は同一じゃないといけない。税制に関してはもちろんだけど下院はWays and Means Committeeだし、上院だったらFinance Committeeだ。
歳出カット
ConcurrentのBudget Resolutionに反映されている予算指示で、上院と下院で大きく異なるのは歳出カット規模。下院ではWays and Means以外の各委員会に合計で$1.5Tの最低歳出カットが指示され、Ways and Meansには$4.5Tまでの歳入減、すなわちTCJA延長他の税制改正による減税の財源が手当てされている。歳出カットは$1.5Tが最低ラインで$2Tに届かない場合、不足額はWays and Meansの$4.5Tを減額する。逆にもし歳出カットが$2Tを超える場合には、Ways and Meansの$4.5Tを増額することができる。
一方の上院側にはこの手の歳出カットの指示はない。正確に言うと全委員会合計でナンと「$4B」(この「B」は「T」のタイポではなく本当に「B」)という実質ゼロと言ってもいいような無意味な歳出カットを指示してる。これは共和党はMedicaidをカットするつもりって民主党・メディアが市民の恐怖を煽ってるんでその対策なんだろうか。Medicaidを正当に受給しているケースはカットはしないってトランプ政権は再三にわたり強調してるけど、Medicaidの不正受給や濫用による歳出は巨額だっていう話しだからトランプ政権が着手してる政府によるWaste、Abuse、Fraud支出をなくす努力をして歳出を管理するのは当然で不正の排除はMedicaid恩典カットには当たらないはず。この辺りのメッセージングはレガシーメディアが不安を煽ってるんで一般には伝わり難いところ。
米国の仕組みって日本と違い過ぎて分かり難いと思うけど、医療保険に関して国の皆保険制度はない。Privateの保険に加入しないとなかなか病院にも行けない。医療保険にかかわる連邦政府の関与は主に2つで一つは65歳以上の高齢者および身体障碍者に対するMedicareで、もう一つは低所得者に対するMedicaid。Medicaidの方は制度導入1965年当時の趣旨は生活保護を受けてる低所得層に対する医療費援助で、州が運営し連邦がかなりのポーションのコストを負担するっていうもの。1965年から制度は拡大し、特にオバマケアで連邦の負担は増額の一途。また不正の温床のようで、DOGEが実態調査する以前にも会計検査院(GAO)がMedicaidの不正は$100B規模って指摘してるから凄い。$100Bって一年のコストだからBudget Windowの10年に置き換えると$1Tだ。
Medicaidってチョッと不思議に思うかもしれないけど、下院ではEnergy & Commerce委員会の管轄化。当委員会は憲法批准直後に憲法のInterstate Commerce条項にかかわる法的管轄権を持ったことから、連邦が司る医療プログラムは必然的にInterstateとなることが理由で当委員会が管轄権を持つ。で、上述の通りConcurrentにも反映されてる下院のBudget Resolutionは計$1.5Tの歳出カットを指示してるんだけど、そのうち半分以上の$880BがこのEnergy & Commerceに割り当てられている。もちろんこれは偶然ではなくMedicaidの正当な給付ではなく、不正をカットすることで相当な歳出カットが可能だろうっていうのが背景。
一方、上述の通り上院でMedicaidを管轄しているFinance委員会には歳出カットの指示が出てない。この点から上院がどれだけ真剣に下院委員会が可決する歳出カットを法案に取り込むかがBudget Reconciliation法案可決に向けての大きな関心になっている。下院のDeficit Hawk派が上院のBudget Resolutionに賛成票を投じたのは、上院による「歳出カットはResolutionに盛り込んではないものの、下院の$1.5Tカットには賛成で同様の努力を惜しまない」っていう口約束が理由なんで火種を先送り(英語で言うところの「Kicking the can down the road」)した感は否めず、下院法案が目標のMemorial Day(5月26日)に完成したとしても、その後の上院法案や両院共通の法案とする際の交渉がどんな風に展開するか目が離せないね。
Saturday, April 12, 2025
関税「Morning After」と両院一致Budget Resolution可決
Section 899法案の話しに戻りたいけど、世間は当然のことながら関税の話しでもちきりで、米国で言うところの「wall-to-wall」。そんな状況なんで、もう一回、Liberation Dayから一夜(数夜?)明けた「Morning After」特集。
Morning Afterっていうと映画ポセイドンアドベンチャーのサントラを思い出すね(そんな古い映画知らないって?)。原曲はMaureen McGovernの郷愁感ある名曲。ポセイドンアドベンチャーって言えばGene Hackmanだけど、先日のSanta Feでの出来事はビックリでした。
映画ポセイドンアドベンチャーでは「Nonnie」っていうチョッとJoni MitchellみたいなArtisticな女の子がMorning Afterを船内のラウンジみたなところでリハっぽく歌ってるシーンがあるけど(バンドメンバーのLooksが70年台前半丸出し(笑))、あれはリップシンクで声はCarol Lynleyだったということ。Maureen、Nonnie(Renee Armand)、Carolって三つ巴で結構ヤヤコシイね。
Liberation DayとGlobal Tax Deal対抗策
で、あんまり脱線しないうちに本題に戻ると、まずLiberation Dayの声明で気づいた点はReciprocalの対象となる貿易相手国の関税、VAT、非関税障壁の話しに「Global Tax Deal」が含まれてなかったこと。そもそもReciprocalの計算は、貿易相手国のエントリーコストではなく米国との貿易収支の均等に基づくRicardianモデルって言われてるんで、計算方法からも相手国がGlobal Tax Dealを導入しているかどうかは検討要素に入ってないことが分かる。関税の話しなんだけど、通商は専門外で、どうしてもまずは法人税関係に気を取られてしまう悪い癖だね。
Global Tax Dealに関しては以前のポスティング(「Global Tax Deal大統領令」と「America First Trade Policy大統領令」)で触れた通り大統領令は大別して2つ。まず一つ目のGlobal Tax Deal大統領令はピラー2を含む域外・差別的課税を可決したり、可決しようとしている国をリストアップして、行政府として法的に取ることができる対抗策オプションを3月21日までに財務長官が大統領に報告するっていうもの。この報告書は公開されてないけど、歳入委員会のポスティングに、財務長官がタイムリーに報告を終えた点を評価しているコメントが掲載されてたんでBessent長官は期日に報告を終えてるって推測される。報告書そのもののコピーは海賊版でも流出してないんで見ることはできず内容はベールに包まれたままだ。う~ん、魔法の鏡で見てみたい。もしもブルーにしてたら偶然そうに電話する?
この手の局面で行政府として法的に取ることができる対抗策の代表って言えば他でもない関税だから、Liberation Dayの公表にこの点が加味される可能性もあるのかなって思ってたんだけど、実際には特に言及はなかった。別枠で検討中かもね。トランプ政権は「やるぞ」って言ってたことはどれだけ物議を醸しても基本やってきてるんで何らかの対処は取るんだろう。OECD加盟国やIFが近々に協議するとかいう話しは聞くけど具体的には公表されてない感じ。いずれにしても仮に現時点で集まったとしても関税の話しが充満しているんでGlobal Tax Dealどころの話しじゃないしね。
もう一つのAmerica First Trade Policy大統領令でもGlobal Tax Dealに触れてるけど、こちらは他でもないsection 891の対象となり得る国を4月1日を期限に財務長官にリストアップするよう求めているもの。以前から触れている通り、section 891の認定は単に域外課税や差別的課税を制度として持っているっていう以上のものが求められるんでどんなリストになってるかこちらも魔法の鏡の世界だけど、内容はともかくこちらもリストも提出済みって考えていいだろう。ポスティング中のsection 899案はsection 891をModernizeしてるものだから、もしかしたらsection 899の立法動向、例えばScoring可否の観点からBudget Reconciliationに入るのかどうか、を見てそちらでいけそうだったらsection 899に注力するのかもね。Section 891は既に法律にあるんで、America First Trade Policyで問題国のリストアップが完了してるとすりば、直ぐにでも発動可能でバックストップ的に取ってあるのかもしれない。
税制改正動向
関税があったりなかったりして米国経済に不確実性が増している中、少なくとも短期的な関税ショックを中和するため国内経済「成長志向」の税制改正の早急な可決がますますMustになった。そんな中、上院は以前に可決していたBudget Resolutionの代わりに新たな下院のResolutionを改訂した新上院Resolutionを通している。その後、下院が新上院バージョンをギリギリ可決させてようやく正式にBudget Resolutionに基づく立法プロセスがキックオフ。両院Budget Resolutionの内容に関しては、今後予想される動向や関税との関係も含めて次回ポスティングで別特集してみたい。
僕の専門分野は60年台後半から80年台までのギタリストのテクニック分析と米国のIncome Taxなんで、関税の話しは専門外。なんで関税に関するコメントは米国で一般市民と暮らしている中で見えるポリティクスや、投資銀行や法曹界の集まりで聞いた話しをベースにしてるんで、総合的な分析を提供するような大それた意図はないからねって予め断っておく。ただ、日本で米国の話しを聞く限り、米国の一般トレンドの実態が伝わってないことが多いとは感じるんで肌感覚の観測として参考になればなによりです。
トランプと米国関税の歴史
トランプを語る際に、彼の意見に賛成するかどうかは別として、トランプが思ってることややりたいことをそのまま普通に(延々と)語るっていう、政局やオーディエンスを見て話しを変えたり(カマラハリスみたいにアクセントまで変えたり…)するポリティシャンとは別のAuthenticityを一つの特徴として挙げることができる。
この一貫した信念は、通商面で米国が他国にいいように利用されてて米国政府の無策も手伝い、結果として米国が凋落しているんでどこかで方向転換しないといけない、っていうスタンスも同じ。トランプ1.0の2016年どころか今から遡ること40年近く昔の1988年には当時不動産業で一躍有名になっていたヤング(って言っても40歳くらい)のトランプがthe Oprah Winfreyのショーで米国の不均衡な貿易収支を大きな問題としている。凄い若いけど言ってることは基本、Liberation DayのRose Gardenの趣旨と同じだ。トランプの通商ポリシーはRobert LighthizerやPeter Navarroに影響されて形成されたって思われてるかもしれないけど、そうじゃないのが分かる。トランプはOprahのショーでのやり取り以外にも当時から既に大手新聞に公開書簡を送りつけて米国の通商・国防ポリシーに警鐘を鳴らしていた。Oprahのショーのやり取りは最近YouTubeで多く閲覧されてるんで興味あったら見てみると面白い。
トランプの一貫性を見ることができる40年前の出来事。当時の問題国はもちろん日本。米国にあれだけ経済的に恐れられるってなんか懐かしいね。Super 301が連日新聞の一面で報道され、お茶の間に米国通商代表(USTR)っていう機能とかカーラ・ヒルズの姿が定着していたあの頃。
当時、米国と交渉したノウハウ(プラス恐怖?)は日本政府や産業界に継承されてるはずで、以前のポスティングでも触れた通り対米通商交渉に日本は「一日の長」があるって言えるかもね。そのお陰かどうか分かんないけど、Reciprocal関税に対して真っ先にトランプ政権に交渉を提案し、米国側はそれに応じてBessent財務長官とUSTRのGreer自らが交渉に関与するってことで、ここ数日、米国では同盟国の模範(?)みたいに報道されたりしてる。「中国とは違って…」っていう切り口。ただ、国家間の同盟は国家の自己利益に基づくんで相手国による称賛には要注意かもね。イスラエルのNatanyahu大統領は既にトランプ、Bessent、Greerを訪問してイスラエル側の米国製品に対する関税撤廃を提案。
ちなみに日本が当時直面してた米国側の対抗措置は上述の通りSuper 301っていう措置だったけど、Liberation Dayを含む今回のトランプ関税の根拠条文とは異なる。関税も歳入法なんで連邦憲法下では三権分立上、議会に制定の権利がある。1913年に憲法修正(16th Amendment、Mooreの世界だね)があるまで連邦政府は所得税(Income Tax)を課す権利はなかったんで(正確にはそのような税金は州の人口で負担を按分しないといけないっていうことで実質制定不可能だったんで)、それまでの連邦の歳入は主に関税、酒税、タバコ税とかだった。そのままにしておけば連邦政府の肥大化もなかったはずなんだけど、戦費の関係で1913年に憲法が修正され、その後、連邦の歳入に占める関税の比率は急激に低下した。それで議会が興味を失った訳じゃないんだろうけど、議会は複数の法律で徐々に大統領に関税策定権を委譲している。
具体的にはまず1962年の「Trade Expansion Act」。このTrade Expansion Actのsection 232は国家安全保障の視点から「特定品目」を取り締まるもの。品目単位での締め付けが特徴で、トランプの鉄鋼、アルミ、自動車に対する25%っていう関税(Liberation Dayより前に発表されてたもの)がこれだ。最近section 232っていう条文を良く耳にするけど、税法のInternal Revenue Codeでは200番台っていうとSubchapter BのPart VIIからXIまでをカバーしてて大概Deductionできる費用そうでない費用とかCapitalizationの世界だけど幸いにも今日のIRCにsection 232は存在しない。
で次は1974年の「Trade Act」。不公正な通商政策を取り締まるもので有名なのがsection 301。USTRが広範な調査権を持つ。そして1977年の「International Emergency Economic Powers Act」。国家安全保障に対する重大な脅威への対処で「IEEPA」っていう用語はまさにこれ。Liberation Dayに公表された10%のUniversalベースラインTariffも(中国以外には)90日間施行が中断されているReciprocal関税も、双方ともこのIEEPAに基づく。
日本がその昔苦しんだSuper 301っていうのは実はTrade Actのsection 301そのものではなく、 1988年のOmnibus Trade and Competitiveness Actで時限的にsection 301を強化したもの。Superっていうのは強化版っていう意味の俗語じゃないかな。
Section 232と異なりsection 301は「もちろん」IRCにも存在する。Subchapter Cのトップバッターだ。Distributionがいつ配当になるかとかを規定しているDay-to-dayに適用がある条文だけど、302との関係とかJohnsonの考え方とか実はDeep。Johnsonと言えば先日のPTEP財務省規則案でPTEPアカウントはUS Shareholderベース(しかも連結納税グループはグループ単位。これは驚き)だけど、株式簿価(961(a))はJohnsonベースなんで、異なるブロック、例えば後から追加出資とか、のCFC株式を所有するUS ShareholderはPTEPのDistributionがあると思わぬ結果になる。いつかPTEP規則案も話したいけどいつになることでしょうか。
なぜ関税?(Reprise)
インフレや米国企業のサプライチェーンに影響があるにもかかわらず、なぜここまでして関税?っていう点は以前3月9日の「トランプJoint Sessionスピーチ・税制改正・関税」の「なぜ関税?」っていう部分でチラッと米国ドルのReserve Currencyが結果「Resource Curseになり」国家として取り返しがつかないところに来てしまい、相当な無理を覚悟に大きく舵を切らないと米国は滅びるからかなって憶測的に触れたけど、Liberation Day前後の関税を取り巻く政権重鎮、特に辛抱強く背景を語る財務長官Bessent、もう少しAggressiveな商務長官Lutnickらの話しから、まさにそこに理由があるって確信が持てた気がする。
Vance副大統領が2023年に発言していた内容と同様、米国のResource Curse、すなわちドルがReserve Currencyっていうとてつもない特権に胡坐をかいてるうちに既に取り返しがつかないレベルの国家財政悪化に陥り、またその副産物として米国の製造業が空洞化してしまったっていうトレンドをどこかで反転させないと大変なことになる、っていう危機感だ。株価や物価は少なくとも短期的に未知の影響を受けるだろうから短期サイクルで動く米国ポリティクス的に通常の政権では手を付けることはできないし実行する気概はないだろう。また現状のシステムに既得権を持つ者も多いから強力なプッシュバックがある。
そんな環境で通常の政権であれば、長期的に国のためにならないって分かってても大きな混乱を伴いかねない経済政策は取れないんで、どうしてもBusiness as usualで続行となる。賃金が低く労働環境も怪しい国の製品を安いという理由で活用。Global Tradeだ。そして米国は国債を発行し続け、その間、連邦政府はどんどん大きくなり更に巨額の歳出を繰り返す。ドルがReserve Currencyでなくなるまでパーティーが続いていくような状況。財政の極端な悪化と同時に中国との比較で軍事力の低下、技術に関してはコストを掛けて先端を行っても直ぐに中国に盗まれる。物を製造できない国は国ではない(?)状態。こちらもGlobal Tradeだ。結果、ミドルクラスが縮小しアメリカンドリームは消える。このトレンドは米国企業もシステムを利用してきたっていう側面は十分にある。また政府による不干渉を好む従来の共和党プラットフォームとも相いれない。元上院リーダーのMcConnell等が関税に反対しているのはこの点を考えれば納得がいく。
Global Tradeの弊害は米国の視点からは2000年のWTO加盟以来好き勝手してる中国が主たる犯人。最初から中国対応にフォーカスして他国は一律10%とかすれば分かり易かったとは思うんだけどね。ただ、常に中国は別格扱いなんでReciprocal関税90日の中断もなく中国にはそのまま145%。
関税で時間を稼いでる間にトランプ政権が実現したいって強調しているポイントの製造業回帰は実現可能なんだろうか。製造業回帰って言っても単にアセンブリーを米国が取り返すってことじゃなくて、R&Dや技術革新は製造業に従事していないと徐々に衰退していくっていう危惧に基づきFull Fledgeな機能を米国に置くのが目標。Global Trade初期にはR&Dやエンジニアリングのハイマージンな機能は米国に残し、一方で中国の安い労働力を利用して製造するっていうモデルを想定してたかもしれないけど、いつの間にか技術も取られてしまったって言う反省。実際にどれだけ早く製造業を戻すことができるのかのひとつの問題に、長期に亘る空洞化で製造業回帰に求められるスキルがそもそも米国労働市場に存在するのかっていう問題もある。またオートメーションが徹底してる今日の工場では製造業が米国に多額の投資をしたとしても多くのポーションがロボットに費やされる。この点は国家安全保障の観点からは懸念は少ないかもしれないけど、一般市民の雇用の観点からは製造業回帰イコール爆発的な雇用っていう狙った図式にならないリスクもある。
また、国別のReciprocal関税は米国製造業回帰に必要な機械設備も対象になるリスクもあるんで関税除外品目リストは流動的なものだろう。現になかなかポスティングに至らない中、さっきPCや携帯は中国からの輸入でもReciprocal関税免除みたいな報道が流れていた。
関税はオンだったりオフになったりが激しいんで政権が目指す姿との関係がイマイチ分かり難いけど、結局10%は恒久的な財源に近く、一方Reciprocal部分は交渉材料。ただし国家安全保障の観点から中国は別枠扱いっていうのが大枠だろうか。
Global Reorderは時間との戦い
上述の通り、Global Tradeの不味いトレンドはどこかでリバースさせないと事態は悪化の一途なのは分かってるんで「どこかでリバース」させてGlobal Reorderに持ち込もうとしててそれが「今」!Van Halenいうところの「Right Now. Not tomorrow」?
今回の政策が吉とでるか凶とでるか、は前代未聞なんで誰にも分からないだろう。ただ、この20年~30年のトレンドで米国の視点から弊害が累積しているにもかかわらず、チョイスとしては大胆な施策を講じることができず、同じトレンドに乗ったまま徐々に国家として衰退していくか、前代未聞の策で一気にトレンドをリバースするよう試みるか、って2つの分かれ道。通常はポリティカルに前者になる。結果過去の大国は徐々に衰退している。英国、オランダとかが思い浮かぶけどスペインやオットマンもその部類。古くはローマ帝国もあるしね。各々異なる事情はあったにせよ、巨額の国家財政赤字、国家安全保障の低下、社会政策失敗、は共通している。
後者は…、誰もトライしたことがないんでDestination Unknown。個人的にはもちろん何が起こるか分かる術もないけど、マーケットが期待しているって思われるのは現政権の財務長官Scott Bessentのマクロヘッジファンドで為替や国債の動きを熟知している手腕。Bessentなら市場が混乱し、ヘッジファンドがマージンコールに応じるため手持ちの米国債を多額に手放すであろう点や中国所有の米国債をどう取り扱うか、等は複数のシナリオを想定しているはず。学者っぽいエコノミストはあれこれコメントが多いけど、コロナになった頃やその直後のMMTに基づく巨額の歳出に対するコメント等から見る限り、結局のところ先のことは分かってないケースが多かったんで、今回もレガシーメディアとかで報道されるコメントは確証の得られない眉唾かもしれない情報として処理しておくのがベターかもね。Scott Bessentやトランプおよびその取り巻きは、未だかつて見たことがない大国凋落のトレンドをリバースするっていう離れ業を奇想天外なGlobal Re-orderで実現する掛けで出てるってことになる。
問題は短期的混乱を政権が受け入れるとしても、それがどれほどの規模でどれだけ続くかっていう誰にも分からない問題。中間選挙とかの理由で米国ポリティクスは超短期視野に基づくんで2026年前半には一般市民が経済はTake-offしてるねっていう実感を持たないといけない。レガシーメディアはトランプ政権には統計的に90%超ネガティブ報道(民主党には逆)なんで、米国のレガシーメディアが2016年以降一般市民の多くからニュースソースとしては見捨てられつつあるとは言え、Wall-to-wallのネガティブカバレッジは耳に入るんでこれらのキャンペーンも克服しないといけない。トランプ政権はルビコン川を渡ってしまったのかもって考えると歴史に残るHigh Stakeな状況に居るんだね。
今日は余り専門じゃない通商やGlobal Reorderの話しだったんで私的なひとつのObservationとして軽く読んでおいて下さい。米国ってダイナミックなんでもっと書きたいところだったけどきりがないんでこの辺で。次回は両院一致のBudget Resolution。
Morning Afterっていうと映画ポセイドンアドベンチャーのサントラを思い出すね(そんな古い映画知らないって?)。原曲はMaureen McGovernの郷愁感ある名曲。ポセイドンアドベンチャーって言えばGene Hackmanだけど、先日のSanta Feでの出来事はビックリでした。
映画ポセイドンアドベンチャーでは「Nonnie」っていうチョッとJoni MitchellみたいなArtisticな女の子がMorning Afterを船内のラウンジみたなところでリハっぽく歌ってるシーンがあるけど(バンドメンバーのLooksが70年台前半丸出し(笑))、あれはリップシンクで声はCarol Lynleyだったということ。Maureen、Nonnie(Renee Armand)、Carolって三つ巴で結構ヤヤコシイね。
Liberation DayとGlobal Tax Deal対抗策
で、あんまり脱線しないうちに本題に戻ると、まずLiberation Dayの声明で気づいた点はReciprocalの対象となる貿易相手国の関税、VAT、非関税障壁の話しに「Global Tax Deal」が含まれてなかったこと。そもそもReciprocalの計算は、貿易相手国のエントリーコストではなく米国との貿易収支の均等に基づくRicardianモデルって言われてるんで、計算方法からも相手国がGlobal Tax Dealを導入しているかどうかは検討要素に入ってないことが分かる。関税の話しなんだけど、通商は専門外で、どうしてもまずは法人税関係に気を取られてしまう悪い癖だね。
Global Tax Dealに関しては以前のポスティング(「Global Tax Deal大統領令」と「America First Trade Policy大統領令」)で触れた通り大統領令は大別して2つ。まず一つ目のGlobal Tax Deal大統領令はピラー2を含む域外・差別的課税を可決したり、可決しようとしている国をリストアップして、行政府として法的に取ることができる対抗策オプションを3月21日までに財務長官が大統領に報告するっていうもの。この報告書は公開されてないけど、歳入委員会のポスティングに、財務長官がタイムリーに報告を終えた点を評価しているコメントが掲載されてたんでBessent長官は期日に報告を終えてるって推測される。報告書そのもののコピーは海賊版でも流出してないんで見ることはできず内容はベールに包まれたままだ。う~ん、魔法の鏡で見てみたい。もしもブルーにしてたら偶然そうに電話する?
この手の局面で行政府として法的に取ることができる対抗策の代表って言えば他でもない関税だから、Liberation Dayの公表にこの点が加味される可能性もあるのかなって思ってたんだけど、実際には特に言及はなかった。別枠で検討中かもね。トランプ政権は「やるぞ」って言ってたことはどれだけ物議を醸しても基本やってきてるんで何らかの対処は取るんだろう。OECD加盟国やIFが近々に協議するとかいう話しは聞くけど具体的には公表されてない感じ。いずれにしても仮に現時点で集まったとしても関税の話しが充満しているんでGlobal Tax Dealどころの話しじゃないしね。
もう一つのAmerica First Trade Policy大統領令でもGlobal Tax Dealに触れてるけど、こちらは他でもないsection 891の対象となり得る国を4月1日を期限に財務長官にリストアップするよう求めているもの。以前から触れている通り、section 891の認定は単に域外課税や差別的課税を制度として持っているっていう以上のものが求められるんでどんなリストになってるかこちらも魔法の鏡の世界だけど、内容はともかくこちらもリストも提出済みって考えていいだろう。ポスティング中のsection 899案はsection 891をModernizeしてるものだから、もしかしたらsection 899の立法動向、例えばScoring可否の観点からBudget Reconciliationに入るのかどうか、を見てそちらでいけそうだったらsection 899に注力するのかもね。Section 891は既に法律にあるんで、America First Trade Policyで問題国のリストアップが完了してるとすりば、直ぐにでも発動可能でバックストップ的に取ってあるのかもしれない。
税制改正動向
関税があったりなかったりして米国経済に不確実性が増している中、少なくとも短期的な関税ショックを中和するため国内経済「成長志向」の税制改正の早急な可決がますますMustになった。そんな中、上院は以前に可決していたBudget Resolutionの代わりに新たな下院のResolutionを改訂した新上院Resolutionを通している。その後、下院が新上院バージョンをギリギリ可決させてようやく正式にBudget Resolutionに基づく立法プロセスがキックオフ。両院Budget Resolutionの内容に関しては、今後予想される動向や関税との関係も含めて次回ポスティングで別特集してみたい。
僕の専門分野は60年台後半から80年台までのギタリストのテクニック分析と米国のIncome Taxなんで、関税の話しは専門外。なんで関税に関するコメントは米国で一般市民と暮らしている中で見えるポリティクスや、投資銀行や法曹界の集まりで聞いた話しをベースにしてるんで、総合的な分析を提供するような大それた意図はないからねって予め断っておく。ただ、日本で米国の話しを聞く限り、米国の一般トレンドの実態が伝わってないことが多いとは感じるんで肌感覚の観測として参考になればなによりです。
トランプと米国関税の歴史
トランプを語る際に、彼の意見に賛成するかどうかは別として、トランプが思ってることややりたいことをそのまま普通に(延々と)語るっていう、政局やオーディエンスを見て話しを変えたり(カマラハリスみたいにアクセントまで変えたり…)するポリティシャンとは別のAuthenticityを一つの特徴として挙げることができる。
この一貫した信念は、通商面で米国が他国にいいように利用されてて米国政府の無策も手伝い、結果として米国が凋落しているんでどこかで方向転換しないといけない、っていうスタンスも同じ。トランプ1.0の2016年どころか今から遡ること40年近く昔の1988年には当時不動産業で一躍有名になっていたヤング(って言っても40歳くらい)のトランプがthe Oprah Winfreyのショーで米国の不均衡な貿易収支を大きな問題としている。凄い若いけど言ってることは基本、Liberation DayのRose Gardenの趣旨と同じだ。トランプの通商ポリシーはRobert LighthizerやPeter Navarroに影響されて形成されたって思われてるかもしれないけど、そうじゃないのが分かる。トランプはOprahのショーでのやり取り以外にも当時から既に大手新聞に公開書簡を送りつけて米国の通商・国防ポリシーに警鐘を鳴らしていた。Oprahのショーのやり取りは最近YouTubeで多く閲覧されてるんで興味あったら見てみると面白い。
トランプの一貫性を見ることができる40年前の出来事。当時の問題国はもちろん日本。米国にあれだけ経済的に恐れられるってなんか懐かしいね。Super 301が連日新聞の一面で報道され、お茶の間に米国通商代表(USTR)っていう機能とかカーラ・ヒルズの姿が定着していたあの頃。
当時、米国と交渉したノウハウ(プラス恐怖?)は日本政府や産業界に継承されてるはずで、以前のポスティングでも触れた通り対米通商交渉に日本は「一日の長」があるって言えるかもね。そのお陰かどうか分かんないけど、Reciprocal関税に対して真っ先にトランプ政権に交渉を提案し、米国側はそれに応じてBessent財務長官とUSTRのGreer自らが交渉に関与するってことで、ここ数日、米国では同盟国の模範(?)みたいに報道されたりしてる。「中国とは違って…」っていう切り口。ただ、国家間の同盟は国家の自己利益に基づくんで相手国による称賛には要注意かもね。イスラエルのNatanyahu大統領は既にトランプ、Bessent、Greerを訪問してイスラエル側の米国製品に対する関税撤廃を提案。
ちなみに日本が当時直面してた米国側の対抗措置は上述の通りSuper 301っていう措置だったけど、Liberation Dayを含む今回のトランプ関税の根拠条文とは異なる。関税も歳入法なんで連邦憲法下では三権分立上、議会に制定の権利がある。1913年に憲法修正(16th Amendment、Mooreの世界だね)があるまで連邦政府は所得税(Income Tax)を課す権利はなかったんで(正確にはそのような税金は州の人口で負担を按分しないといけないっていうことで実質制定不可能だったんで)、それまでの連邦の歳入は主に関税、酒税、タバコ税とかだった。そのままにしておけば連邦政府の肥大化もなかったはずなんだけど、戦費の関係で1913年に憲法が修正され、その後、連邦の歳入に占める関税の比率は急激に低下した。それで議会が興味を失った訳じゃないんだろうけど、議会は複数の法律で徐々に大統領に関税策定権を委譲している。
具体的にはまず1962年の「Trade Expansion Act」。このTrade Expansion Actのsection 232は国家安全保障の視点から「特定品目」を取り締まるもの。品目単位での締め付けが特徴で、トランプの鉄鋼、アルミ、自動車に対する25%っていう関税(Liberation Dayより前に発表されてたもの)がこれだ。最近section 232っていう条文を良く耳にするけど、税法のInternal Revenue Codeでは200番台っていうとSubchapter BのPart VIIからXIまでをカバーしてて大概Deductionできる費用そうでない費用とかCapitalizationの世界だけど幸いにも今日のIRCにsection 232は存在しない。
で次は1974年の「Trade Act」。不公正な通商政策を取り締まるもので有名なのがsection 301。USTRが広範な調査権を持つ。そして1977年の「International Emergency Economic Powers Act」。国家安全保障に対する重大な脅威への対処で「IEEPA」っていう用語はまさにこれ。Liberation Dayに公表された10%のUniversalベースラインTariffも(中国以外には)90日間施行が中断されているReciprocal関税も、双方ともこのIEEPAに基づく。
日本がその昔苦しんだSuper 301っていうのは実はTrade Actのsection 301そのものではなく、 1988年のOmnibus Trade and Competitiveness Actで時限的にsection 301を強化したもの。Superっていうのは強化版っていう意味の俗語じゃないかな。
Section 232と異なりsection 301は「もちろん」IRCにも存在する。Subchapter Cのトップバッターだ。Distributionがいつ配当になるかとかを規定しているDay-to-dayに適用がある条文だけど、302との関係とかJohnsonの考え方とか実はDeep。Johnsonと言えば先日のPTEP財務省規則案でPTEPアカウントはUS Shareholderベース(しかも連結納税グループはグループ単位。これは驚き)だけど、株式簿価(961(a))はJohnsonベースなんで、異なるブロック、例えば後から追加出資とか、のCFC株式を所有するUS ShareholderはPTEPのDistributionがあると思わぬ結果になる。いつかPTEP規則案も話したいけどいつになることでしょうか。
なぜ関税?(Reprise)
インフレや米国企業のサプライチェーンに影響があるにもかかわらず、なぜここまでして関税?っていう点は以前3月9日の「トランプJoint Sessionスピーチ・税制改正・関税」の「なぜ関税?」っていう部分でチラッと米国ドルのReserve Currencyが結果「Resource Curseになり」国家として取り返しがつかないところに来てしまい、相当な無理を覚悟に大きく舵を切らないと米国は滅びるからかなって憶測的に触れたけど、Liberation Day前後の関税を取り巻く政権重鎮、特に辛抱強く背景を語る財務長官Bessent、もう少しAggressiveな商務長官Lutnickらの話しから、まさにそこに理由があるって確信が持てた気がする。
Vance副大統領が2023年に発言していた内容と同様、米国のResource Curse、すなわちドルがReserve Currencyっていうとてつもない特権に胡坐をかいてるうちに既に取り返しがつかないレベルの国家財政悪化に陥り、またその副産物として米国の製造業が空洞化してしまったっていうトレンドをどこかで反転させないと大変なことになる、っていう危機感だ。株価や物価は少なくとも短期的に未知の影響を受けるだろうから短期サイクルで動く米国ポリティクス的に通常の政権では手を付けることはできないし実行する気概はないだろう。また現状のシステムに既得権を持つ者も多いから強力なプッシュバックがある。
そんな環境で通常の政権であれば、長期的に国のためにならないって分かってても大きな混乱を伴いかねない経済政策は取れないんで、どうしてもBusiness as usualで続行となる。賃金が低く労働環境も怪しい国の製品を安いという理由で活用。Global Tradeだ。そして米国は国債を発行し続け、その間、連邦政府はどんどん大きくなり更に巨額の歳出を繰り返す。ドルがReserve Currencyでなくなるまでパーティーが続いていくような状況。財政の極端な悪化と同時に中国との比較で軍事力の低下、技術に関してはコストを掛けて先端を行っても直ぐに中国に盗まれる。物を製造できない国は国ではない(?)状態。こちらもGlobal Tradeだ。結果、ミドルクラスが縮小しアメリカンドリームは消える。このトレンドは米国企業もシステムを利用してきたっていう側面は十分にある。また政府による不干渉を好む従来の共和党プラットフォームとも相いれない。元上院リーダーのMcConnell等が関税に反対しているのはこの点を考えれば納得がいく。
Global Tradeの弊害は米国の視点からは2000年のWTO加盟以来好き勝手してる中国が主たる犯人。最初から中国対応にフォーカスして他国は一律10%とかすれば分かり易かったとは思うんだけどね。ただ、常に中国は別格扱いなんでReciprocal関税90日の中断もなく中国にはそのまま145%。
関税で時間を稼いでる間にトランプ政権が実現したいって強調しているポイントの製造業回帰は実現可能なんだろうか。製造業回帰って言っても単にアセンブリーを米国が取り返すってことじゃなくて、R&Dや技術革新は製造業に従事していないと徐々に衰退していくっていう危惧に基づきFull Fledgeな機能を米国に置くのが目標。Global Trade初期にはR&Dやエンジニアリングのハイマージンな機能は米国に残し、一方で中国の安い労働力を利用して製造するっていうモデルを想定してたかもしれないけど、いつの間にか技術も取られてしまったって言う反省。実際にどれだけ早く製造業を戻すことができるのかのひとつの問題に、長期に亘る空洞化で製造業回帰に求められるスキルがそもそも米国労働市場に存在するのかっていう問題もある。またオートメーションが徹底してる今日の工場では製造業が米国に多額の投資をしたとしても多くのポーションがロボットに費やされる。この点は国家安全保障の観点からは懸念は少ないかもしれないけど、一般市民の雇用の観点からは製造業回帰イコール爆発的な雇用っていう狙った図式にならないリスクもある。
また、国別のReciprocal関税は米国製造業回帰に必要な機械設備も対象になるリスクもあるんで関税除外品目リストは流動的なものだろう。現になかなかポスティングに至らない中、さっきPCや携帯は中国からの輸入でもReciprocal関税免除みたいな報道が流れていた。
関税はオンだったりオフになったりが激しいんで政権が目指す姿との関係がイマイチ分かり難いけど、結局10%は恒久的な財源に近く、一方Reciprocal部分は交渉材料。ただし国家安全保障の観点から中国は別枠扱いっていうのが大枠だろうか。
Global Reorderは時間との戦い
上述の通り、Global Tradeの不味いトレンドはどこかでリバースさせないと事態は悪化の一途なのは分かってるんで「どこかでリバース」させてGlobal Reorderに持ち込もうとしててそれが「今」!Van Halenいうところの「Right Now. Not tomorrow」?
今回の政策が吉とでるか凶とでるか、は前代未聞なんで誰にも分からないだろう。ただ、この20年~30年のトレンドで米国の視点から弊害が累積しているにもかかわらず、チョイスとしては大胆な施策を講じることができず、同じトレンドに乗ったまま徐々に国家として衰退していくか、前代未聞の策で一気にトレンドをリバースするよう試みるか、って2つの分かれ道。通常はポリティカルに前者になる。結果過去の大国は徐々に衰退している。英国、オランダとかが思い浮かぶけどスペインやオットマンもその部類。古くはローマ帝国もあるしね。各々異なる事情はあったにせよ、巨額の国家財政赤字、国家安全保障の低下、社会政策失敗、は共通している。
後者は…、誰もトライしたことがないんでDestination Unknown。個人的にはもちろん何が起こるか分かる術もないけど、マーケットが期待しているって思われるのは現政権の財務長官Scott Bessentのマクロヘッジファンドで為替や国債の動きを熟知している手腕。Bessentなら市場が混乱し、ヘッジファンドがマージンコールに応じるため手持ちの米国債を多額に手放すであろう点や中国所有の米国債をどう取り扱うか、等は複数のシナリオを想定しているはず。学者っぽいエコノミストはあれこれコメントが多いけど、コロナになった頃やその直後のMMTに基づく巨額の歳出に対するコメント等から見る限り、結局のところ先のことは分かってないケースが多かったんで、今回もレガシーメディアとかで報道されるコメントは確証の得られない眉唾かもしれない情報として処理しておくのがベターかもね。Scott Bessentやトランプおよびその取り巻きは、未だかつて見たことがない大国凋落のトレンドをリバースするっていう離れ業を奇想天外なGlobal Re-orderで実現する掛けで出てるってことになる。
問題は短期的混乱を政権が受け入れるとしても、それがどれほどの規模でどれだけ続くかっていう誰にも分からない問題。中間選挙とかの理由で米国ポリティクスは超短期視野に基づくんで2026年前半には一般市民が経済はTake-offしてるねっていう実感を持たないといけない。レガシーメディアはトランプ政権には統計的に90%超ネガティブ報道(民主党には逆)なんで、米国のレガシーメディアが2016年以降一般市民の多くからニュースソースとしては見捨てられつつあるとは言え、Wall-to-wallのネガティブカバレッジは耳に入るんでこれらのキャンペーンも克服しないといけない。トランプ政権はルビコン川を渡ってしまったのかもって考えると歴史に残るHigh Stakeな状況に居るんだね。
今日は余り専門じゃない通商やGlobal Reorderの話しだったんで私的なひとつのObservationとして軽く読んでおいて下さい。米国ってダイナミックなんでもっと書きたいところだったけどきりがないんでこの辺で。次回は両院一致のBudget Resolution。
Wednesday, April 2, 2025
(号外♯2) 「Liberation Day」の関税大統領令
またしてもsection 899案の進展を妨たげるかのようなニュースがあるんで短いけど特番。今日、4月2日は輸入関税強化に基づき米国製造業が復活するのを記念する「Liberation Day」ってことで午後4時のホワイトハウスの発表を聞いた。発表を聞いたり大統領令を読むまでは、なんだかんだ言って今回もセコ目の関税でお茶を濁す、なんてことはないよねって半信半疑だったんだけど蓋を開けてみたらナンと今度こそ本当に10%のUniversal関税および国別の報復関税が公表された。
大統領令出たばっかりで結構長くてチラッとななめ読みしただけなんだけど、間違い覚悟で速報しておくとまず4月5日から全世界10%一律関税。4月9日からは各国の関税・非関税障壁を加味して国別の報復関税適用開始。日本は24%。ちなみにEUは20%で中国は34%だ。ただし、既に2月10日に公表され、3月12日から25%の関税が適用されている鉄鋼・アルミは25%のまま。自動車も同様に3月26日に公表され、明日の4月3日から25%の関税が適用されるんでそちらの関税が敢行され、Liberation Dayの税率適用はない。また結構な品目が免除されている。目立つところでは製薬は免除みたい。他にも銅、セミコン、木材、重要な鉱物、資源等が免除されているように見える。Harmonized Tariff Schedule of the United States (HTSUS)に基づく免除品目リストは37ページに渡るんで結構長いね。
超取り急ぎ、でした。
大統領令出たばっかりで結構長くてチラッとななめ読みしただけなんだけど、間違い覚悟で速報しておくとまず4月5日から全世界10%一律関税。4月9日からは各国の関税・非関税障壁を加味して国別の報復関税適用開始。日本は24%。ちなみにEUは20%で中国は34%だ。ただし、既に2月10日に公表され、3月12日から25%の関税が適用されている鉄鋼・アルミは25%のまま。自動車も同様に3月26日に公表され、明日の4月3日から25%の関税が適用されるんでそちらの関税が敢行され、Liberation Dayの税率適用はない。また結構な品目が免除されている。目立つところでは製薬は免除みたい。他にも銅、セミコン、木材、重要な鉱物、資源等が免除されているように見える。Harmonized Tariff Schedule of the United States (HTSUS)に基づく免除品目リストは37ページに渡るんで結構長いね。
超取り急ぎ、でした。
Friday, March 28, 2025
(号外)ナントUTPR追加対抗法案「The Unfair Tax Prevention Act」も下院再提出
Section 899法案の話しもそろそろ大詰めで、終わったら税制改正が本格化する前の隙間を縫ってインバウンドPracticeとしては欠かすことができないYA Globalの話しでもとか思ってワクワクしてたら、ナントSection 899法案(「the Defending American Jobs and Investment Act」)に加えて、さらなるGlobal Tax Deal対抗法案「The Unfair Tax Prevention Act」が下院に再提出された。この法案はどうなっちゃうんだろうって注意はしてたけど急な再提出でビックリ。
このthe Unfair Tax Prevention Actは先の899法案同様に2023年7月に一度H.R.4695 (118th)として提出されて、提出当時はその厳しい内容に驚きだったけど、それが昨日3月27日に下院に今度はH.R. 2423 (119th)として再提出された。法案のスポンサーは以前も今回も下院歳入委員の一人Ron Estes(R-KA)だけど、下院歳入委員会共和党議員全員が賛同している。ちょうど899法案が元々提出されたのも2023年5月だから2か月空けて時間差攻撃するフォーメーションなのかな。
2023年バージョンと同様の内容って想定されるけど、899法案がsection 899を新設するのに対し、the Unfair Tax Prevention ActはBEATをSuper-chargeする規定。したがって新たなSectionが生まれるんじゃなくて、既存のBEAT、すなわちsection 59Aに追加Subsectionが加えられる形で規定される。そのSuper-chargeぶりがなかなか激しい。従来のBEATをChargePointやblinkとかの「Destination Charger」だとするとthe Unfair Tax Prevention Actは純正のTesla Supercharger級。
899法案のポスティングが終わったら、続いてこのSuper-chargeのBEATに関しては詳細に触れたいけど、チラッと頭出ししておくとUTPRを含むExtraterritorial Taxを導入している国の主体に支配される主体は「Foreign-Owned Extraterritorial Tax Regime Entities(「FETR Entities」)って認定される。国際紛争時の制裁対象国やバッテリー製造時の鉱物輸入時に指定される懸念国(FCOC)、またはテロリスト団体みたいな勢い。で、このFETR EntitiesにはBase Erosion Benefitが3%かどうかとか売上高が$500MかにかかわらずBEATを適用し、従来のBEAT法で免除されてる支払い、例えばSCM適格のサービスFeeその他もBase Erosion Benefitと取り扱うっていうもの。ここからが凄いけど、ナント禁じ手のCOGSの50%もBase Erosion Benefit扱い。COGSの否認は憲法的に問題があり得る点は「バイデン政権「グリーンブック」で増税案詳細公表(4) COGSとSHIELD」で以前触れたけど(SHIELDとか存在自体忘れてました)、実は現状のBEATもInversionした法人にはCOGSもBase Erosion Benefitとするっていう懲罰規定がある。って考えると半分で済んで御の字なのかな?
再提出に共催している下院歳入委員メンバーには委員長でsection 899法案のスポンサーのJason Smithも当然入ってることから、section 899と相互排他的な関係にあるのではなく、補完関係にあり両方一気に立法化を目指すっていうアプローチに見える。Section 891や899と大きく異なるのはUTPRを導入した国に所有される「米国法人」がFETR EntitiesとしてSuper-charge BEATの対象になる点。ついに本丸に攻め入られた感じだ。金利、ロイヤルティ、配当の源泉税が50%で、仕入れに25%関税かかってその上仕入れ半分がBEAT目的で損金不算入じゃ商売にならないよね。
という訳でProvocativeな展開だったんで取り急ぎ号外でポスティングしておきます。
このthe Unfair Tax Prevention Actは先の899法案同様に2023年7月に一度H.R.4695 (118th)として提出されて、提出当時はその厳しい内容に驚きだったけど、それが昨日3月27日に下院に今度はH.R. 2423 (119th)として再提出された。法案のスポンサーは以前も今回も下院歳入委員の一人Ron Estes(R-KA)だけど、下院歳入委員会共和党議員全員が賛同している。ちょうど899法案が元々提出されたのも2023年5月だから2か月空けて時間差攻撃するフォーメーションなのかな。
2023年バージョンと同様の内容って想定されるけど、899法案がsection 899を新設するのに対し、the Unfair Tax Prevention ActはBEATをSuper-chargeする規定。したがって新たなSectionが生まれるんじゃなくて、既存のBEAT、すなわちsection 59Aに追加Subsectionが加えられる形で規定される。そのSuper-chargeぶりがなかなか激しい。従来のBEATをChargePointやblinkとかの「Destination Charger」だとするとthe Unfair Tax Prevention Actは純正のTesla Supercharger級。
899法案のポスティングが終わったら、続いてこのSuper-chargeのBEATに関しては詳細に触れたいけど、チラッと頭出ししておくとUTPRを含むExtraterritorial Taxを導入している国の主体に支配される主体は「Foreign-Owned Extraterritorial Tax Regime Entities(「FETR Entities」)って認定される。国際紛争時の制裁対象国やバッテリー製造時の鉱物輸入時に指定される懸念国(FCOC)、またはテロリスト団体みたいな勢い。で、このFETR EntitiesにはBase Erosion Benefitが3%かどうかとか売上高が$500MかにかかわらずBEATを適用し、従来のBEAT法で免除されてる支払い、例えばSCM適格のサービスFeeその他もBase Erosion Benefitと取り扱うっていうもの。ここからが凄いけど、ナント禁じ手のCOGSの50%もBase Erosion Benefit扱い。COGSの否認は憲法的に問題があり得る点は「バイデン政権「グリーンブック」で増税案詳細公表(4) COGSとSHIELD」で以前触れたけど(SHIELDとか存在自体忘れてました)、実は現状のBEATもInversionした法人にはCOGSもBase Erosion Benefitとするっていう懲罰規定がある。って考えると半分で済んで御の字なのかな?
再提出に共催している下院歳入委員メンバーには委員長でsection 899法案のスポンサーのJason Smithも当然入ってることから、section 899と相互排他的な関係にあるのではなく、補完関係にあり両方一気に立法化を目指すっていうアプローチに見える。Section 891や899と大きく異なるのはUTPRを導入した国に所有される「米国法人」がFETR EntitiesとしてSuper-charge BEATの対象になる点。ついに本丸に攻め入られた感じだ。金利、ロイヤルティ、配当の源泉税が50%で、仕入れに25%関税かかってその上仕入れ半分がBEAT目的で損金不算入じゃ商売にならないよね。
という訳でProvocativeな展開だったんで取り急ぎ号外でポスティングしておきます。
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