Saturday, September 30, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (11))

前回のポスティングでは、REITがDC REITになるかどうかの判断時にQFPFを米国人、外国人のいずれと取り扱うかっていう点に触れた。規則案では条文に反して(?)米国人ってしてるけど、結果よりもどうやって法的にそんな結論に導けるかっていうのが主たるフォーカスだった。

で、今回はDC REITの判断にかかわる規則案の内容で最もBombshellと言える規定に触れる。楽しみ?

ところで、このDC REITって外国人投資家が米国不動産に投資する際にとってもありがたい存在で、もちろんDC REITになるようにストラクチャリングすることは多いけど、なぜ外国人が50%未満のREIT持分だとFIRPTAをオーバーライドして外国人投資家が非課税で持分譲渡できるのか背景が不明でチョッと不思議な規定。REIT譲渡益の少なくとも半分は米国人が普通に課税されるんで、外国人に帰する残りは非課税でもOKっていうことなんだろうか。でもDC REITをDC REITたらしめる米国人の株主は課税主体じゃないといけないっていう要件は見当たらないんで米国の非課税団体でも立派な米国人株主としてREITをDC REITにできる。となると半分は誰かが税金を支払ってるから、っている理由ではなさそうだね。普通の(REIT以外の)米国法人株式がUSRPIになるケースでは、米国人持分の大小にかかわりなく外国人株主の株式譲渡はFIRPTA課税対象。REITはロビー活動が功を奏してか特別な恩典が多い。USRPIから除外されるRegularly Tradedの5%ルールもREITだけは10%だしね。

間接持分とDC REIT

で、今回争点となるのはDC REITの定義「5年間を通じて外国人が直接・間接に価値ベースで50%未満の株式を所有」の「間接所有」をどのように解釈するか、っていう点。しつこいかもしれないけど、ここで言う外国人は「NRA、外国法人、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産(Estate)」でQFPFは少なくとも規則案に基づくと外国人扱いなのは前回のポスティングの通り。

DC REITは実はNon-FC REIT?

間接所有を考える際に、DC REITの定義を良く読んでみると恐ろしい事実に気づく。DC REITってその名を鵜呑みにすると「Domestically Controlled」だから米国人が支配している、すなわち米国人の持分・支配権が重要に聞こえるけど、条文では「直接・間接に「外国人」が50%未満の価値を所有しているREIT」がDC REITになると定義されている。すなわち米国人が支配しているかではなく、「外国人が支配していない」点がフォーカス、っていうか唯一の検討になるってこと。この定義を律儀に名称に反映するんだったら「Domestically Controlled」の代わりに「Non-Foreign Controlled REIT」、「Non-FC REIT」の方が正確。

米国人、外国人のどっちを引き合いにDC REITを定義するかで、間接持分にかかわるプレッシャーの方向が変わる。条文に基づいて、外国人が直接「または」間接に価値ベースで50%未満を所有してるかどうか判断しないといけなくなるけど、直接と間接を接続しているのは「Or」というDisjunctiveなんで、グラマー的にどっちでもOK。これが外国人にかかるっていうことは「外国人が直接持ってたらそれでアウト」、「米国人が直接持っててもそれを間接的に外国人がもってたらそれもアウト」、ってことになる。この条文のさりげない表現、なんか良くできてるよね。

規則案は話の持って行き方が工夫されている。挑戦的な規則を策定する際に良く見られるアプローチだけど、まず納税者にとって最も好ましくない解釈を提示して、その後でそれを若干緩和してみせるというもの。最初から緩和後の規定を提示されていたら、それに対して納税者が拒絶反応を示すような内容でも、最初にもっと凄い内容を提示されて大ショックの状態に陥り、その後で若干緩和されたバージョンを提示されるとそれがマシなので、いいDealかのように錯覚してしまうけど、そんな流れ。

完全Look-through

まずは最初のショック部分。手始めに、間接持分のひとつの解釈として全ての主体を個人株主に辿り着くまでLook-throughして、個人株主が外国人(NRA)なのか米国人なのかを見てDC REITかどうかの判断をするという規定が考えられますっていう切り出し。しかも、Look-throughになることが多くて納税者側の納得レベルも高いであろうパートナーシップだけでなく「米国法人を含む全てのタイプの主体をLook-through」するアプローチが考えられると釘を刺している。「え~、C Corporation全てLook-throughってどういうこと~?」ってなる。

ちなみに外国人の定義に外国パートナーシップが含まれるんで、従来は外国パートナーシップをLook-throughするのは相当な勇気が必要で、そんな度胸のあるPractitionerは少なく一般には外国パートナーシップは外国人と取り扱い、それでも他の米国株主を見てDC REITになるようにストラクチャリングしておくのが一般的だったと思う。例えばケイマンフィーダーが米国税務上パートナーシップになってる場合、仮にその上に米国人パートナーが存在しても、ケイマンフィーダーが所有するREIT持分は「外国人」所有として考えざるを得なかった。逆にデラウェア州LPSみたいな米国パートナーシップはパートナーを見るまでもなく米国人なんだよね、っていう解釈にもなるけど、パートナーが全員外国人投資家だったりするとチョッと不安だった。一方で米国のC Corporationが株主に居る場合、特にC Corporationに複数の株主が存在する場合は、必ずしも100%確証度合いはなかったかもしれないけど、米国人株主と取り扱う点に一般Practice的に多くの不安はなかったように思う。

「全ての主体を個人株主までLook-throughって何それ~?」ってなったところで、緩和策の提示。さすがにそれでは可哀想なので、っていうか正確に言うと複数のTierを介した投資や多くの株主が存在するケースでは納税者・IRSの双方にとって管理運営可能性が欠けるのでベストではない、としている。さらに条文解釈上もDC REITの定義は「Foreign Person」(NRA、外国法人、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産(Estate))に基づくので、必ずしも個人株主の外国・米国区分だけに基づく判断が法律の意図とは言えない、としている。「なんだビックリさせるな~」って油断したところで満を持して挑戦的な規則案が登場する。

限定Look-through

チョッと安心した状態で「緩和策」が提示されるんだけど油断大敵。限定Look-throughっていうアプローチにしたとのこと。「限定」っていう表現はフレンドリーに聞こえるし、限定Look-throughに関する話しの持って行き方も工夫されている。まず、納税者としても「それだったら仕方ないね」とか「それはそうだよね!」って思える極端な例で始まる。

たとえばUSRPIしか持たないREITの49%株主がNRA(これは間違いなく外国人扱い)、残り51%株主は米国パートナーシップだとする。49%株主がREIT持分を譲渡する場合、通常だったらFIRPTA課税の対象になるけど、REITは51%を米国人(米国パートナーシップはパススルー課税の場合も税法の定義上は米国人)に所有されていて外国人所有が50%未満なので、DC REITとなりFIRPTA課税対象にならずに非課税っていうポジションがあり得る。っていうか条文を文字通り適用するとそんな結果にならざるを得ない。FIRPTA課税ケースを自主的に課税取引と取り扱うことはできないだろうし。ただ、米国パートナーシップのパートナーが外国法人だったりする場合、従来から「これ本当にDC REIT?」っていう疑問は存在していた。どちらかというと結果がしっくりこないこんな例が冒頭に来るんで「確かにLook-throughしないのはおかしいよね」っていう雰囲気にさせてくれる。そこでいよいよ登場するのが規則案だ。ワクワクする?それともドキドキ?両方だよね。

Look-through所有者とNon-Look-through所有者

で、規則案ではREITがDC REITになるかどうか判断する際、「Non-Look-through所有者」だけをREIT株主として取り扱うとしている。原文ではNon-Look-through Personなんだけど、Non-Look-through人、って火星人みたいで変だし、米国の法律で「Person」っていう表現を使用するときは税法に限らず一般に自然人だけではなく主体も含むんでここでは「所有者」って意訳しておく。Non-Look-through所有者でない者、すなわち「Look-through所有者」がREIT株式を所有している場合、Look-through所有者の持分を所有する者の比率に準じて米国・外国を識別するとしている。当然だけど、Look-through所有者の所有者自身がLook-through所有者の場合、Non-Look-through所有者に辿り着くまで持分を紐解いていく必要がある。

外国人所有の米国法人

誰がNon-Look-through所有者でLook-through所有者なのかは大概において想像通りだったんだけど、一点唐突な規定がある。外国人所有の米国法人(原文「Foreign-Owned Domestic Corporation」)の取り扱いだ。これ結構長くなりそうなんでここから次回。

Friday, September 29, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (10))

さて、前回はQFPFって一体どこの人?ってところで時間切れになった。QFPFはFIRPTA規定目的(for purposes of section 897)では、外国法人にも米国非居住者個人(NRA)にも当たらない、って条文で規定されてるんで、だったら米国法人または米国人に決まってんじゃん、ってことになるよね。米国税法上、米国人と外国人はMutually Exclusive、すなわち互いに排他的な関係にあるんで、両方ってことはないはず。また、必ずどっちかになる必要もある。すなわち米国人でも外国人でもない、って状況はない。前回、宇宙人に触れたけど、落ち着いて(?)考えてみたら税法上は米国人を定義して、それ以外は外国人という構成なんで宇宙人は外国人だろう。もちろん宇宙人が「Person」っていう前提で。

どっちにしてもQFPFがFIRPTA課税の対象じゃないんだったら別にどっちでもいいじゃん、って思うかもしれないけど、それはあわてんぼうのサンタクロースさんだ。特定の人、ここではQFPFっていう主体だけど、が米国人なのか外国人なのかで、FIRPTAの他の規定に大きな影響があり得るからだ。QFPF自体のFIRPTA除外適格有無とは別の話し。ちなみにQFPF神話って既に触れたかどうか自分で忘れちゃったんで、書いておくけど、QFPFはFIRPTAの対象にならないって規定されているだけど、不動産投資が非課税って規定されている訳ではない。それらは通常の税法で決められる。QFPFが外国人でないと取り扱われるのはFIRPTA(Sectio 897)目的のみなんで、他の税法を適用する際は外国の年金基金として取り扱われる。現実にはほぼあり得ないかもしれないけど、QFPFが実際に米国に不動産を直接所有していてアクティブにManageしてたとすると、不動産譲渡益はFIRPTAがなくても別の例外がない限り通常のECIルールで課税されるんで、「私はQFPFです」って言っても「フ~ン、で?」ってなるから注意。

DC REIT

QFPFが米国人なのか外国人なのかで、FIRPTAの他の規定に大きな影響があり得る、って上で書いたけどその最たるものがREITがDomestically Controlled(DC)に当たるかどうかの判断時。う~ん、ようやくDC REITに来たね。感無量。

REIT持分(株式)は大概においてUSRPIだけど(そうじゃないケースがあり得る点は今回のシリーズを通して何回か触れてると思うんで「なんで?」って思う読者が居たら過去のポスティングを読んでみて欲しい)、REITがDC REITだと過去5年にUSRPHCだったことがあるか、とか市場でRegularly Tradedで持分が何%か、とかを考えることなく、DC REITの持分はUSRPIにはならない、って規定されている。USRPIじゃなければ、FIRPTAの適用はないから外国人が認識する持分譲渡益は通常非課税となる。

ここでは一貫してDC REITって表現を使うけど、テクニカルにはREITに加えて後年RICにも同じ取り扱いが追加され、今ではREITとRICをまとめて「Qualified Investment Entity(「QIE」)って言って、DC REITも正式にはDC QIEって言う。だけど、DC QIEとかって未だにスンナリと入ってこない読者(っていうか自分?)も少なくないだろうから、使い慣れてて舌も滑らかなDC REITにしとく。どうせ大概においてREITの話しだし。RICって40年投資法管轄で、BDCとかを含むリテール商品。リテールなんで市場でRegularly TradedだったらFIRPTAの適用は大概ないもんね。僕のDC REITの話しはBDCを含むRICにも同様に適用がある、って覚えておいてくれたらそれで十分。

DC REITがUSRPIじゃないんでFIRPTAの適用はない、っていう点には重要な但し書きがある。すなわち、REITの持分そのものを譲渡した結果の譲渡益はFIRPTA不適用なので大概において外国人にとって非課税だけど、DC REITの分配がDC REIT内のUSRPI譲渡益に帰する部分には免除はない。この点「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (7))」のREIT Net Capital Gain分配神話で結構触れたんでを見てみて欲しい。DC REITの清算分配も同様で免除はないっていうのがIRSのポジション。

じゃあ、どんなREITがDC REITになるかっていうと、「Domestically Controlled」って名の通り、米国人に支配されるREITなんだけど、税法では「5年間を通じて外国人が直接・間接に価値ベースで50%未満の株式を所有しているREIT」って定義されている。この目的の外国人は、FIRPTA対象となるNRAと外国法人に加え、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産(Estate)と定義されている。

これだけ見ると、DC REITの認定に特に論議を呼ぶ感じを受けないかもしれないんだけど、実はそうでもない。例えば、「直接・間接に」っていう部分の何をもって「間接持分」を加味して判断するか、っていうのは必ずしも明確でなかった。唯一、何らかの規則があるとするとREITの分配を所得認識する立場にある者を株式所有者と取り扱うという点くらい。

また、REITの株主の特定も必ずしも容易ではない。例えばREITが上場してたら5%株主でもない限り分からない。この点に関してはREIT株式が市場でRegularly Tradedの場合、5%未満の株主は「REITがその身分を実際に知らない限り」米国人としてみなしてよろしい、っていう面白いルールがある。この手の事実認定で純粋に「Actual」な知識だけを基にしているのは結構珍しい。大概、Actualに加えて「Reason to know」的なエレメントがあるんだけどね。Actual Knowledgeは、わざわざ調べなければ分からないんで、DC REITになりたい場合、私は知りませんって言ってしまえば米国株主になるという不思議な規定。またPrivateのREITでも仮にパートナーシップをLook-throughして間接持分を決めようとすると、ファンドに直接投資しているLPまでは分かってもその上のFeederやFund of Fundとか辿っていくととてつもない数のメンバーがいる可能性もあり捕捉が不可能。市場でRegularly Tradedじゃないのがファンドだから5%未満のルールもないし、反って複雑だ。ちなみに株式が市場でRegularly TradedなREITが別のREITを所有してる場合、所有者の上場REIT自身がDC REITでない場合は、外国人が所有していると取り扱われる。一方、REITを所有する株主のREITが上場REITじゃない場合、株主のPrivate REITを所有する米国人株主の比率に準じて米国人が所有しているって取り扱われる。

たかが、50%未満を外国人がもってるかどうかの判断なんだけど、なんか難しくなってきたね。

DC REITとQFPF

で、ここまで書けばQFPFとDC REITの関係にかかわるテーマは分かったと思うけど、QFPFはNRAでも外国法人でもないんで、普通に考えれば米国人。ってことはREITがDC REITかどうかを判断する際、すなわち5年間を通じて「外国人」が直接・間接に価値ベースで50%未満の株式を所有してたか、ってテストする際、QFPFが所有するREIT株式の価値は「外国人所有」にはならないはず。議会が熟考した上に条文そのものにFIRPTA目的ではQFPFはNRAでも外国法人でもない、って明確に規定されてるんで、一見それ以上の議論にはならないように見える。「QFPFは外国法人だが、Section 897(a)、すなわちFIRPTA課税から免除する」みたいな他の表現を使いたければ、条文をそんな風に策定すればよかった訳だから。実際にもともとPATH Actの規定はそれに近い。それを「わざわざ」2018年のTechnical Corrections Actで現状の文言に変更してるしね。

条文解釈とポリシー

条文っていうのは明確に書いてある部分に関しては、どんなにポリシー的に好ましくなくても真っ向から対立するような解釈は誰にも認められないはず。あなたはAではない、って条文に書いてあって、ポリシー的にいかがなものか、という観点で法の適用時に「この目的ではあなたはAと取り扱います」とか言われ始めると何を信じていいか分からないもんね。連邦憲法上、議会が制定するStatuteは憲法、条約と並び米国の「Supreme」な法律だからね。また三権分立の観点からも議会が制定した法律を行政府が書き換えるのはおかしいはず。

つまり条文っていうのは良くも悪くも明確に書いてある部分に関しては、対立するような解釈や処理は認められないのが原則。仮に立法趣旨的に条文が間違いに近い場合でも。例えば2017年にSection 958(b)(4)っていう「CFCやUS Shareholderの判断時に外国人から米国人の持分をDownwardにAttributionはしません」っていう条文が撤廃されてDownward Attributionがフルに適用されるようになったけど、撤廃の趣旨とか関係ない部分への影響が大きい。趣旨から外れてても条文だけ読むとDownward Attributionはフルに適用されるんで、Technical Correctionが制定されるまでは他のポジションを取るのは厳しい。例えばデラウェア州LPSのPEファンドが外国法人のポートフォリオに投資することになる場合、従来からのパターンだとSubpart Fを避けるためケイマンAIVを利用するけど(ここ数年デラウェア州LPSもSubpart Fの「Inclusion目的」では米国外LPS同様ってルールに変更されてるけど、ケイマンAIVと異なりデラウェア州LPSはパートナーシップレベルで米国株主である点は従来のまま。Section 1248とかの適用の恩典をスポンサーが追求する場合はその方がいいかもしれないけど今日のテーマには関係ないんでそのうち別企画で)、もし外国法人ポートフォリオがTop Coでその傘下に米国子会社と外国子会社があったとする。Section 958(b)(4)が存在した時代は、Top Co傘下の外国子会社がCFCになることはなかったけど、Section 958(b)(4)が撤廃されてフルにDownward Attributionの適用が開始された後は、一転してCFCになる。なぜかって言うと、Top Coが所有する外国子会社の持分はDownward Attributionを介して米国子会社が所有してるとみなされるんで、外国子会社は米国法人に100%所有されてることになり結果CFCとなる。「でも、Top Coは外国法人だし、ファンドもケイマンAIVを使ってるからテクニカルにCFCでも関係ないじゃん」って思う読者がいたらなかなか鋭くてBプラスはもらえる。どうしてAじゃないの?って言うとAIVの上のTop SideにAIVの10%持分を所有する米国人LPがいるとInclusion Shareholderが誕生してしまうからだ。他に米国人の10%LPが居なくて、たった一人10%持ってても、Top Coが傘下に所有する外国子会社はDownward Attributionで既にCFCになってるから、Subpart FやGILTI(正確にはTested Income)を合算しないといけなくなる。「え~、そんな~」って思う結末だけど法律だから仕方がない。この点に気づいたら惜しみなくAがもらえてMagna Cum Laude。「そんなんだったら外国子会社Check-the-BoxしてDRE扱いしたらいいじゃん」って思う人が居たら凄い。AプラスでSumma Cum Laudeで卒業。

行政府の規則策定権

話しを財務省規則に戻すけど、僕が規則策定権云々とか言うまでもなく、もちろん財務省やIRSの法務部は規則策定権の重要性や限界は百も承知だから、付与されてる権利の範囲で規則を制定している、っていう点はSuper-carefulにサポートしようとする。時としてストレッチっぽいサポートも見られるけどね。近年ではsection 385の規則(Debt/Equity Classificationのはずが規則はBase Erosion対抗策)、section 7874(Inversion)系の一部の規則(特にsubstantial business activities要件の厳格化、skinny-down防止、等)、米国パートナーシップをSubpart FやGILTIのInclusion Shareholderでなくした規則、GILTIのHigh-tax exclusionの拡張、などがストレッチっぽい規則として思い浮かぶ。結構多いね。この手のストレッチ規則は、冒頭に、条文に基づきどうして行政府に規則策定権が付与されていると考えているか、っていう点が延々と説明される。その説明が長ければ長いほど、逆に規則策定権は眉唾ものと言える。でなければ多くの紙面をなぜ規則が策定できるのか、っていう入口部分にそこまでのエネルギーを費やす必要はないもんね。

DC REITとQFPF(Reprise)

2019年の規則案ではQFPFのDC REIT判断時の取り扱いに関して明確な言及はなかったんで、一般的には「条文にNRAでも外国法人でもない、って書いてあるから米国人扱いしていいんだよね~?」ってチョッとものおじする感じでアプローチしてた。だって条文に書いてなければ、QFPFの二番目のFは「Foreign」だし、そもそもFIRPTAの話しが出てくる時点でForeignってことなんで、これを「米国人です!」って真っ向から宣言できるかどうか、ってチョッと腰が引ける感じがあった。ただ、逆に「Section 897(DC REIT規定はSection 897の一部)の目的で、外国法人にもNRAにも当たらない」ってSupreme Lawに名言されてたら、それ以外の取り扱いをするのはもっと腰が引けるよね。それとも、外国法人やNRAじゃないけど、外国人(Foreign Person)って考えるのかな~、とかどんどんIllogicalな心配が増える。

そんな状況だったんで、2019年の規則案公表後、「QFPFの取り扱いを明確化して欲しい」っていうコメントが多く寄せられていた。もちろん多くのコメントは単に「明確化」するというよりは、「条文通り米国人扱いするって念のため再確認して欲しい」っていう意味だったんだけどね。特に、QFPFから多額の資金調達をしているOpen-EndedのヘッジファンドやClosed-Ended でもPEに比べてTermが長いHybridファンドとかは確実性を確保するため、QFPFがDC REIT判断時に外国人にならない点を切望していた。

で、今回の規則案。結論から言うとDC REIT判断目的ではQFPFは外国人、すなわちREITがDC REITになり難くなるっていう規定。ポリシー的にこの結果に全く驚きはない。だって外国のペンションファンドを米国人って取り扱って、QFPFではない他人のFIRPTA課税関係に影響を与えるって概念的に変だもんね。問題は条文にはそうは書いてない、って点だよね。

条文解釈部分に関しては苦しいけど、一応、骨子としては「そうなんじゃないかな~」って前から思ってて上述もしてるけど、「条文はQFPFは外国法人やNRAではないって言ってるけど、外国人じゃないとは言ってない」ってこと。これは僕も前から何回も考えてた理論だけど、外国人の定義が「外国法人、NRA、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産(Estate)」だからロジック的になかなかチャレンジングだ。まるで「約束はしたけど守るとは言ってない」的に言い訳にも聞こえる。

ただ、もう少し文脈を考えると必ずしも不可能な解釈ではないかもね。以前のポスティングで触れた通り、FIRPTAの課税っていうのはNRAと外国法人に適用。なんで、QFPFがNRAでも外国法人でもないっていう表現は、「暗に」QFPF自体のFIRPTA課税にかかわる規定だという読み方。その上で、REITがDC REITになるかどうかは「外国人」ベースなので、その目的でQFPFが何者なのかは別の観点から考えてもよろしい、という解釈は不可能ではないかも。残りの正当化はそもそも「QFPFに対する恩典が間接的に他の外国投資家を優遇するような結果はおかしいし、議会はそうは意図していない」ってもの。

まあ、納税者側の希望としては条文をドラフトする際は、落ち着いて、その文言が他の規則や広範な事実関係に与えるであろう影響を十分に考慮した上で、Blunt Instrumentにならないようにお願いします、ってくらいだろうか。

で、DC REITに関して、規則案ではもっと凄いBombshellすなわち衝撃的な驚きが規定されているんで、それに関しては次回。規則案制覇までもう一歩!

Wednesday, September 27, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (9))

最近朝6時半になっても薄暗いし、夕方も暗くなるの早くてめっきり秋っぽいな~って思ったらなんと今日は秋分の日。アメリカで言うところの「the First Day of Fall」だ。格好良く言うと「the Autumnal Equinox」なんだけど、Fitness Clubみたい。

で、夏休み終了直後のこの時期、毎年NYCではUnited Nationsの年次総会(正式な名前は違うかもしれないけど)がUN本部で開催されて、その期間はMidtown EastのTrafficが大混乱。世界中からたくさんの関係者が一堂に会して、世界に山積みの問題を解決に導くべく話し合うはずなんだろうだけ、チョッと無力な感じだよね。Security CouncilにピンクフロイドのRoger Watersがロシアのゲストとして登場して話したり(ピンクフロイドは昔から好きだけどね。The Dark Side of the Moonとか、後、曲としてはShine On You Crazy Diamondとか)、去年は北朝鮮が国連機関の軍縮会議の議長に就任したり、一般Peopleの感覚からすると何それ~、みたいなことが多い。何か解決できるのでしょうか。

多国主義は、各国が世界全体の善や正を追求する崇高な神々しい存在だったら機能するかもしれないけど、どれだけナイーブにそんなフリを信じようとしても実際にはそうじゃないもんね。「Historic」なピラー2のGlobal Minimum Tax見ても、世界の善をマスカレードしながら結局は大国のPowerプレー。タックス程度の話しだったらまだ「大人の世界ちゅうのは汚いの~」で済ませることができるかもしれないけど、一般Peopleの人権とか平和に関してはそうはいかないもんね。League of Nations(国際連盟で米国は不参加)、Kellogg-Briand、Bretton Woods、とかの歴史を見ると多国主義の限界が浮き彫り。ハーバード大学の経済学者でグローバライゼーションに造詣が深いDani Rodrikが「世界基準やグローバルベースの規則っていうのは機能しないばかりでなく非現実的で好ましくない」って書いてたのを思い出す。

その昔200年続いたPax Romana、第二次世界大戦後のPax Americanaとか見ると、軍事力やテクノロジーにバックアップされる強力なリーダー国が自己都合で力をもって平和やCommerceを維持しようとする時代の方が結局もめ事が少なくて結局平和な時代になるように見える。リーダー国は基本、自己の利にならないことはしないから、その間にも当然、各国の観点からは理不尽なことはあるんだけど、世界はユートピアにはなり得ないっていう現実・制約の中、バランスとして何がベターかを考えていかないとね。

UNや軍縮会議が機能してない、って言ってもUNが悪い訳じゃなくて、ストラクチャーとか世界の成り立ち的に如何ともし難いってことだろう。機能しないと言えばアメリカも他人事ではなく、ポリティシャンたちが議論してることは庶民の感覚からどんどんOut-of-touch化していくし、We the peopleのためのGovernmentっていう観点から見ると、建国時のPrincipleとは遠い状態。米国メディアの報道をそのまま伝える傾向にある日本のメインストリームメディア情報を基に、日本から今のアメリカがどう見えてるか分かんないけど、インフレやTribalismの蔓延はローマ帝国崩壊前と通じるものがあるし、言論の自由や三権分立も弱体化し文化大革命って言う人もいるくらい全体主義的な変なトレンド。立派な憲法があっても国としてのGovernanceが脆弱になってしまったらそれで終わり。諸行無常。

歴史を振り返って、ローマとか何で崩壊の過程でトレンドをReverseできなかったんだろう、って単純に不思議に思うよね。塩野七生大先生の大作で歴史を参考に人間のサガを紐解こうとしたり。けど、恐ろしいことに今のアメリカを見てると偉大な国がPrincipleを忘れて滅びるって「なるほど、こんな風だったのかもね~」なんて感じてしまうことがある。う~ん、でも問題はアメリカがFallしたら、他に行く場所がないであろう点。チョッと大げさ?だといいけどね。まあ、まだまだなんだかんだ言って相対的にはいい国なんで、行方を憂いながらよりいい方向に転換させていかないとね。

Pax AmericanaがPax Romanaよりも短期間で終焉してしまったら、次のリーダー国が誰で、その国が自分の利益をどんな風に世界平和にマスカレードさせるか、またはさせないか、でNext GenerationのPeopleの生活は大きな影響を受ける。そんなになったらチョッと怪しいんで、アメリカに頑張ってもらいたい。

外国政府とFIRPTA(Reprise)

って、国連総会の一週間は毎年、Midtown EastのTurtle Bayがまるで年一回のお祭りみたいに盛り上がって混み合うんで、ついついこんな余計なこを考え過ぎちゃうけど、まあ交通規制もこの週末を境に一段落するだろうから、そんな想いを巡らせるのはまた一年後、として目先のタックスの話しに戻る。

で、前回のポスティングでは外国政府に特別に認められているSection 892の恩典とCommercial Activity(CA)の関係に触れた。特にControlled Entityとして外国政府に適格となっている主体は世界のどこかにCAと取り扱われる活動があると、主体レベルでSection 892の恩典が全てなくなってしまうんでセンシティブ、っていう点は読者の皆さんにもお分かり頂けたと思う。そんな中、肝心のCAの定義がはっきりしないんで困ること、特にFIRPTAのUSRPIとのかかわりに関しては悩ましい、っていう話しで終わってた。

Section 892の既存の暫定規則(Temporary)によると、USRPHCはCAに従事していると取り扱うと規定される。USRPHCは50%以上の資産をUSRPIが占める法人で米国内外を問わない(詳しい定義は「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (3))」のUSRPHC神話でで触れているので参照して欲しい)。ということは外国政府が50%以上所有する主体がUSRPHCだとこの主体はCCEになる。

FIRPTAって元々のルールが複雑だけど、多くの例外、例外の例外、みたいなのがあってよりややこしい。その一つがQualified Foreign Pension Funds(QFPF)のFIRPTA課税除外規定。もともと2015 年のPATH Actで導入された恩典で、僕たちも日本のペンションファンドに話しを持ってたりして思ったほどCatch-Onしなくてアレ~?って感じだったけど、現在の規定はその後2018年のTechnical Corrections Actで改正されたバージョンで、QFPF(QFPFの子会社含む)はFIRPTA規定目的(for purposes of section 897)では、外国法人にも米国非居住者個人(NRA)にも当たらない、というフレームワークで恩典が達成されるように設計されている。外国法人やNRAが認識するUSRPI譲渡損益は強制的にECIとみなす、っていうのがFIRPTAだから、外国法人でもNRAでもなければ当然FIRPTAの適用はない。

QFPFが政府職員のためのペンションファンドだったら、Section 892で外国政府になる。そんなペンションファンドがIntegral Partとしてか、またはControlled Entityとしてか、いずれの立場で外国政府と位置付けられるかっていうのはDeepな検討だけど、仮にControlled Entityだとして、投資内容の関係でUSRPHCになると、CCEになってしまう。CCEになるとペンションファンドが認識する所得には一切Section 892の恩典はなくなるんで、米国株式や債券投資からの投資所得が通常の外国法人同様に課税されることになる。ちなみにペンションだけど、米国のSocial Securityとか日本の公的年金のように国民一般が受益者となるペンションは外国政府には当たらない、っていうのがSection 892の考え方。なんで、ここでいう外国政府に当たるペンションファンドっていうのはあくまでも政府の職員を受益者とするペンションファンドってことになる。

Controlled EntityがUSRPHCになってしまってCCEになるっていうのは、QFPFや外国政府による米国不動産投資を容易にするっていうポリシーと逆行するのでは、っていう意見が多かったけど、今回の規則案ではそれらの意見を取り入れる形で、外国政府のペンションファンドがControlled Entityで、これがたまたまUSRPHCになっても、QFPFとしてFIRPTAの対象にはならない、って規定している。また、規則案ではCAに関して、外国政府のControlled Entityが、USRPHCにポートフォリオ投資しているだけな場合、Controlled Entity自体がUSRPHCになっても、CCEとは取り扱わないって規定している。例えば、外国政府のControlled Entityが複数REITの少数持分を所有してる、っていう理由でUSRPHCになってもCCEではないことになる。これで安心してREITに投資できるね。ただ、注意点としては今回の規則案はUSRPHCになることで外国政府のControlled EntityがCCEになるかどうかにかかわる規則を緩和しているに過ぎず、REITを含む投資の収益の取り扱いは従来のまま。例えば、不動産そのものの譲渡益を認識したREITからの分配が課税になる点とかはそのまま。

規則案の修正で面白かったのは、元々Section 892の暫定規則でUSRPHCに言及している部分に「USRPHCまたは米国法人だったらUSRPHCだったであろう外国法人」っていう下りがあるんだけど、USRPHC神話を呼んでくれた読者だったら、そんな表現は不要だしおかしい、って気づいてくれたよね。だって、USRPIとなる株式の定義と異なり、もともとからUSRPHCは米国法人、外国法人を問わないんで、「米国法人だったらUSRPHCになった外国法人」っていう表現はIllogicalだからだ。で、今回の規則案ではこの部分を単にUSRPHCって修正してる。それだけ混乱し易いってことなんだろう。

QFPFはどこの人?

次に規則案が格闘してるのがQFPFの国籍。2018年のTechnical Corrections ActでQFPFはFIRPTA規定目的(for purposes of section 897)では、外国法人にも米国非居住者個人(NRA)にも当たらない、って条文で規定されている点は上述の通り。ってことはFIRPTA目的では米国法人または米国人扱いってことになるよね。だって外国人じゃなければ米国人だし、米国人だったら外国人じゃないし、どっちにもなるとか、宇宙人でもない限りどっちでもない、っていう人や法人は存在しない前提のはずだから。

ところが・・・。なんだよね規則案は。この点はDC REITの話しに直結するんで次回。国連総会で興奮しすぎてごめん。

Thursday, September 21, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (8))

年初からCAMTのNoticeに始まり、クロスボーダー米国不動産投資周りの規則を語り続けてきたけど、って言うか断続的に語ってきたけど、早くも9月中旬。IRAでいきなり導入されて待ったなし本番のCAMTは、議会がほとんどの制度設計を行政府の財務省に丸投げしているんで、さすがの財務省も規則策定キャパを超えてる感が否めない。特にCAMTって、Tax Lawyerの世界では終わらなくてGAAPの理解が求められるんで、より負荷が高い。

同じくIRAで導入された再エネ系投資に対する実質政府助成金と言える多額のクレジットも、Section 38のGeneral Business Creditの一部を構成してる(自家用車部分の30DのClean Vehicleクレジットとかは除いて)っていう意味では税法だけど、技術的要件、賃金要件、懸念国特定、等、環境省、労働省、国家安全保障、にかかわる領域も多く、通常の税法、例えばSub CやSub Kとかクロスボーダー課税等の規則策定とは雰囲気が相当異なる。この点もCAMTのGAAP対応と並び、財務省の苦労が計り知れる。

そんな中、2022年暦年法人の法人税申告期限に当たる10月15日が目の前に迫り、待ったなしのR&D支出の資産計上・償却にかかわるNoticeが先週ようやく公開された。プラスAFSIやFTCにフォーカスしたCAMT第二弾Noticeも公表された。CAMTはそれでもまだまだ不明点多いけどね。再エネクレジットに関してもTransferとかElective Payその他、かなり頑張って2023年を通じて規則案が公開されている。

逆にそのせいで、2018年当時からみんなが待ってて、毎年「今年こそ出します!」って言われ続けて今に至るPTEP規則は2023年も公表に漕ぎつけないみたい。ここで言うPTEPは「Previously Taxed E&P」のことでピーテップっていう。僕たちの世代では長らくPTI(「Previously Taxed Income」)って言ってたものだ。こちらはアルファベット通りピーティーアイ。2017年の税制改正後にPTEPって呼ばれ始めて、最初はチョッと変な感じだったんだけど、いつも間にかPTEPになり、PTIっていうのは死語になってしまった。中身は同じ。シリコンバレーのVCやスタートアップ系にアドバイスしている方はテック不況で「Post Termination Exercise Period」絡みのPTEPアドバイスも増えてると思うけど、ここで触れてる規則はそのPTEPに関してじゃないからね。

で、PTEP規則は2部で構成される大作と言われてて、だったらまずは大概において整理がついてるLow Hangingで出せる部分だけでも第一弾公表して欲しいものだ。例えば、3月にIRS内部の法務メモで確認されたPTEPの期中分配とCFC株式簿価減額のタイミングとか、正式に規則案、できればReliance権付きで公表して欲しい。GAAP絡みのCAMT規則とか再エネクレジットの規則よりも、Tax Technical的にFascinatingな分野なんで、こっちを心待ちにしてるクロスボーダーやSub C系のPractitionerは多いと思うんだけどね。もちろん僕もその一人。さらに言えばSub KのPractitionerも、USパートナーシップ経由でCFC投資があって、USパートナーがInclusion株主になってSub FやGILTIを所得認識する場合、パートナーシップ持分に対する簿価は条文で増額するけど、パートナーシップが所有するCFC株式の簿価は上がるのかどうか、なんとなくはっきりしないけど、これどうすんの?、とか楽しみにしてると思うんだけどね~。こっちは第二弾かもね。第一弾が仮に2024年にずれ込むとすると、第二弾は一体いつになるんでしょうか。

他にもKiller B規則とか一旦適用延期になったとは言えその運命が気になる厳しいFTC新規則、二転三転して大混乱の歴史と言える304が302(d)で301になる際のフィクション351に対する367の取り扱い、また今日のテーマに直結してるFIRPTA系の規則案の最終化、とかTechnical面で興味津々だ。

FIRPTA系規則案

さて、もともとなんでECIやFIRPTA、果てはREITとかの話しに至ったか、っていうと全て2022年大晦日直前の12月29日に公表された財務省規則案のせいだ。Good day sunshineのフロリダ・ブルーでときめいてコットン気分の最中に他のNoticeと共に不意を付くタイミングで飛び込んできたんで、つい興奮して語り始めてしまった。コットン気分、って言えば杏里だけど、杏里ってギタリストのLee Ritenourと婚約発表したことがあって、あのキャプテン・フィンガーズと杏里とは意外な組み合わせだよね、ってビックリしたけど結局一緒にはならなかったんだね。Lee Ritenourってもともとカリフォルニアのジャズギタリストだけど、70年代後半~80年代前半のAOR、クロスボーダー、フュージョン、メロウみたいな音の代表的な存在。吉祥寺のカフェバー(笑)みたいなところでGeorge BensonとBack-to-Backでかかってたり、六本木ピットインで渡辺香津美見た後に先輩が運転する車で聴いて帰る、みたいなプレゼンス。懐かし過ぎ。

で、話しを戻してFIRPTA規則案(脱線が短くて安心した?それともガッカリ?そんな訳ないよね)。この規則案、FIRPTAなんで当然section 897をカバーしてるけど、プラスで外国政府に対する特別な恩典を規定しているsection 892も対象としている。

外国政府とFIRPTA

米国税務の世界では国家主権の一部を占める「Integral Part」と国家が支配する主体、「Controlled Entity」の2つが「外国政府」と認められる。どこまでがIntegral PartでどこからControlled Entityか、っていう区分は時として必ずしも明確じゃないことがあるけどね。外国政府と認められるControlled Entityは国家主権と同じ国に設立され国家に100%所有されている主体。

で、外国政府として取り扱われる代表的なプレゼンスがファンドに巨額の資金を投資するSWFだけど、外国政府になると通常の外国企業にはないプラスの恩典がある。通常の外国法人との比較において、この恩典って詰まるところ、配当に対する源泉税が条約とは関係なく0%になる、ってことと、50%未満の持分っていう前提でUSRPIに当たる米国法人株式の譲渡益がFIRPTA課税から免除される、っていう2点に集約される。Section 892にこの2点が明記されている訳じゃないけど、Section 892の恩典と通常のクロスボーダー課税を丁寧に比較するとそんな結論になるってこと。

で、外国政府が享受するこの手の恩典には制限がある。すなわち、「Commercial Activity(CA)」と呼ばれる活動から生じる所得、および「Controlled Commercial Entity(CCE)」が受け取る、またはCCEから受け取る所得、CCE持分の譲渡益、はSection 892の恩典の対象外となる。CAはUSTOBとなる事業活動より広範と言われていて、また活動が米国内外を問わない、という点以外に明確な定義はない。CCEっていうのは国家主権・外国政府に直接・間接に50%以上の持分を所有され、米国内外を問わずCAに従事している主体。主権国外で組成される主体はControlled Entityとして外国政府に区分されることはないけど、CAに従事していると世界のどこにあってもCCEになる。

ちなみに、このCA、たまに外国政府はCommercial Activity Incomeに課税される、っていう説明を聞くことがあるけどそれは間違い。Commercial Activity Income神話だ。そうではなくて、外国政府に特別に認められる恩典、主に株式・債券投資所得・譲渡益は非課税です、っていう恩典だけど、この恩典対象の所得がCAから生じてる、またはCCEが受け取ってたり、CCEのオーナーである外国政府がCCEから受け取っている、またはCCE持分そのものの譲渡益、に当たると恩典の対象にならない、ってこと。外国政府がCAから生じる所得に課税されるっていう規定ではない。じゃあ、CAやCCE絡みで外国政府に認められる恩典がなかったら、どうなっちゃうの?っていうと、別に世の中終わっちゃたり全世界課税になったりする訳ではなく、単に通常の外国法人のように課税されるってこと。つまり、外国政府だったらゼロだったであろう配当源泉税が息を吹き返したり、USRPI扱いされる米国法人株式譲渡益が持分50%未満の場合に非課税になっているのが普通にFIRPTA課税の対象になる、ってこと。Commercial Activity Incomeそのものに課税される規則ではなく、外国政府は少なくとも外国法人より不利になることはない。

CAが外国政府に与える影響は、外国政府がIntegral PartなのかControlled Entityなのかで大きく異なる。Integral Partの場合、配当その他の適格所得がCAから生じている場合、その所得に対してSection 892の恩典がなくなる。ただ、しつこいかもしれないけど、その所得に関して米国内法や租税条約で外国法人に対する課税に戻るだけの話し。一方、Controlled Entityには厳しくて、所得とは直接関係があってもなくてもCAがあると、Controlled Entityが受け取る全ての所得がTaintされて、主体レベルでSection 892の恩典は全てなくなってしまう。これは外国政府に適格なControlled EntityでもCAがあるとCCEになってしまい、結果、CCEが受け取る所得にはSection 892の恩典がないから、ということ。その場合は、普通の外国法人と同じ課税関係になる。

CAは米国内外を問わないから、例えば外国政府100%所有で同じ国に設立されているControlled Entityが米国の上場株式に投資している場合、たまたまこのControlled Entityが投資しているヨーロッパの主体にCAがあり、CAという活動がControlled EntityにAttributeされると(CAから所得があってもなくても)、ヨーロッパ投資とは何の関係もない米国上場株式投資収益にかかわるSection 892の恩典がなくなってしまう。って言っても外国人にとって上場(Regularly Tradedの前提で)株式は5%持分まで譲渡益非課税だし、配当も条約レートで10%にはなるはずなんで、世の中終わってしまう訳ではないから落ち着くように。Controlled Entityではなく国家主権のIntegral Partが同一の状況に置かれる場合、米国上場株式投資収益はヨーロッパのCAから生じている訳ではないので、引き続きSection 892の恩典が認められ、配当に対する源泉税がゼロになる。

また、ヨーロッパのCAに所得があったとしても、ECIでも米国源泉FDAPでもないだろうから、米国の課税はなく、Integral Partの視点からは米国投資でSection 892の恩典が受けられる所得がCAから生じてなければそれで十分。Controlled Entityの視点からは米国投資でSection 892の恩典が見込まれる所得がある場合、全世界でCAに関与してはいけない、っていう厳しいプレッシャーがある。SWFは大概においてControlled Entityとして外国政府適格になってるだろうから、SWFをLPに持つファンドのスポンサーはCAをAttributeさせるような大失態を演じることがないようMad-Sensitiveになる。でないと将来のFund Raiseに大きな問題となるし、SWFに怒られるのは怖いもんね。巨額のチェックを切ってくれるLPなんで、次号のファンドにも投資してもらわないといけないし、Add-Onとかする際にCo-Investmentにも短期Noticeで応じてくれたりするしね。SWFにCAなんかフローアップさせたら即Tax Lawyer辞めてSouth Dakotaで牧師さんになって余生を送るしかないかもね。実はそっちの方が充実したLifeかもしれないけど。

CAはその定義が明確でないんで気持ち悪い存在だけど、中でも不動産ファンド投資系の話しで株式がUSRPIだった際にCAをどう考えるのか、っているのがなんとなく分かっているようで確証レベルがWillとは言い難かった。そこで規則案。チョッとCA系のBuild-upが長かったんでここから次回。

Tuesday, September 5, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (7))

前回は行政府によるRegulatoryが憲法に規定される三権分立の観点から越権行為かどうか、っていうディープな話に続きREITの100人株主要件とかに触れて、今日の予定はClosely Held禁止要件、分配要件をカバーして遂に待望のDC REITに至る、っていう例によってアグレッシブというか楽観的なもの。このアグレッシブな予定って、午後LGAからDallas Forth Worth空港(DFW)に飛んで、定時ベースでDFWでの乗り継ぎ時間が40分で最終目的地に向かう旅程、みたい。LGAから午後の出発便はキャンセルされなければラッキー的な低いExpectationでほぼ間違いなく(?)遅延するし、DFWの乗り継ぎが別のターミナルだったりすると相当厳しい。ってことは最初からダメもと?

で、行政府による過剰な規制が裁判所によりStrike Downされる流れに加え、税法じゃないけど最近の裁判所の判例で、議会が行政府にルール策定権を付与する際に、業界の民間団体が実質ルール策定権を握ってるような状況が違憲行為とされたものがある。それはそうだよね。法律はWe the peopleに選挙で選ばれた議員が議会で策定するもので、行政府どころかその先の民間団体に規則策定の権利が移譲されるのはおかしい。CAMTって、議会から財務省に広範な規則策定権は付与されているものの、課税所得(と言えるのかな?)に当たるAFSIのスターティングポイントはGAAP利益。GAAPって財務省やSECが規定しているのではなく、FASBが策定。FASBは民間団体。って考えると課税所得の定義を民間団体に決めさせてる、っていう見方もあり得て、これは違憲行為では、って疑問を呈する有識者もいる。FASBだったら民間団体とは言えまだ米国の団体だけど、ピラー2みたいにOECDって米国の団体ですらない、もちろんWe the peopleが選挙を通じて選んだ訳でもない団体が実質ルール策定しそこから逸脱するとUTPRで懲罰、みたいなストラクチャーはCAMTにも増して同様の憲法的な問題があり得る、かもね。どんなShow Downとなるんでしょうか。CAMTに関する違憲論はAt the best学術的な議論な気はするけど、AFSIの基となるGAAPの利益っていう金額が、税法上のTaxable Incomeの定義と比較するとソフトというか、会計原則の解釈次第のような部分が多分にあって、GAAP自体の数字の作り方が一定じゃないとと当然AFSIに同様のインパクトがある。

とか、いろいろ考えてる間に7月どころか、8月も終わりLabor Day。Miami Beachは相変わらず夏だけど、今年のNYCはまるでSan Diegoみたいな気候・気温がズ~っと続いてて快適。一週間ほど暑い週があった以外は冷夏だ。それでも7月とかは日も長いしついつい屋外テラスがあるPizzeriaとかで至福の時を過ごしたくなったりしてたけど、8月後半から目に見えて日も短くなり既に秋の気配。またあの寒~い冬が到来か、と考えると自然とMiami Beachで過ごす日々が増えそう。でも数か月も先のことは考えててもしょうがなんで、今はカフェの歩道にせり出したテラスで街行く人々を見ながらDay DreamingでもしてOutdoorを満喫。BlondieじゃないけどDreamingはFree。タックスもかかんないし(笑)。もちろん若い女性じゃないんでdebutanteにはなり得ないし、ステータス的にも歳的にもdebutantにもなんないんで、Blondieの言う通りCup of Teaの代わりにCoffeeでDreaming。そんなDreamにも米国税務やREITが登場する(なにそれ?)っていう展開になる。

同族持分(Closely Held)禁止要件

前回のポスティングでREITには100人の株主が必要、っていう要件に触れた。ファンドがLower TierのREITを100%所有していると信じてた投資家の読者はビックリしたかもしれないけど、そのカラクリは分かってもらえたと思う。

で、100人株主要件にチョッと通じるものがある別の組織的な要件にClosely Held禁止っていうのがある。つまり「REITはClosely Heldではいけない」ってことなんで、何をもってClosely Heldってレッテル貼られるか、の検討が重要。この判断は、米国税法の別の規定となる「Personal Holding Company」の定義を参照して行う、とされる。すなわち、REIT課税年度の下半期に、一度でもREIT株式価値の50%超を直接、間接、みなしで5人以下の個人が所有しているとClosely Heldになる。俗にいう5/50テストだ。株式のみなし所有っていうと米国税務の関与している人だったら、すぐにsection 318を連想すると思うけど、section 318のみなし持分規定は「Sub C、すなわちsection 301から385、の条文」のうち、318の適用があるって明記してある条文目的のみに関係するのが原則。REITはsection 856から859、Sub Cからチョッと遠いSub MのPart IIで規定されているんで、section 318の影響は及ばない。代わりにSub GのPersonal Holding Company判断時に適用されるみなし持分規定を適用する。

で、100人株主の判断時に適用される40年投資法と異なり、Personal Holding Company規則のClosely Held判断時にはパートナーシップとかをLook-throughする。Look-throughする、しない、は常に悩ましいところだけど、Closely Held規定の適用時にLook-throughするっていうのは実はGood News。Look-throughすればより多くの個人の少数持分をカウントすることになるんで、特定の個人5人が株式50%超を所有してる、っていう結論に至り難いことになる。実務的に5/50テストを検証する方法は、みなし持分規定やLook-throughを加味した後、上からトップ5人の個人株主を特定し、持分合計が50%超になるかどうかを見る、っていうもの。トップ5人の持分合計が50%以下だったら5/50テストOKっていうのが一番容易な検証法だ。実際には株主にTrustが居たりすることも珍しくないんで誰を株主として取り扱うべきか、っていう検討だけでも結構な作業になることが多い。

また、株主による株式譲渡等でREITが期せずしてClosely Heldにならないように、多くのREITで「Excess Share」っていう譲渡制限があり、株式譲渡により特定%を超える株式が取得されると、超過部分は自動的にCharityを受益者とするTrustに所有されると取り扱われたり、または単純に超過部分の株式は無効、っていうような制限が定款に規定される。

Closely Heldはかなり面倒な規定だけど、雰囲気程度は分かってもらえたんではないでしょうか。

分配要件

ここまでREITになるための要件のうち、Corporate、100人株主、Closely Held禁止、そしてAssetテストとIncomeテストに触れた。他にも細かい要件がいろいろあるけど、ここでは最後にRICやREITを語る際に避けては通れない分配要件に触れておきたい。

REITはCorporationなんで当然だけどパートナーシップ税制の適用対象ではない。パススルーじゃないんで主体レベルの損失が投資家にAllocationされたりすることはない。その代わりにっていうか、REITにはDividends-Paid Deduction(DPD)、日本で言うところの「ペイスル―」が適用されて、支払配当をREIT側で損金算入することが認められる。結果として、税引後の所得から配当を支払う通常のCorporateと異なり、投資家が受取配当に課税されても二重課税にならない。

DPDで配当すると損金算入できます、って言うと任意に配当できるみたいに聞こえるかもしれないけど、そうではない。REIT適格となるためには毎期、DPD前のTaxable Income(DPD適格の金額)の90%を分配しないといけない。これが分配要件だ。分配要件を満たさないとそもそもREITにならないけど、DPDはREITの優位点なのでこの要件はREIT形態のメリットとなる。90%分配要件の計算の拠り所になるTaxable IncomeからネットCapital Gainは除外される。ということは、REITの分配要件のことだけを考えれば通常所得の10%やNet Capital Gainを留保すること自体に問題はない。だけど、分配しないとペイスルーにならないんでその分だけREITレベルで法人税対象になる。

じゃあ、毎期、Taxable Income全額分配したらいいじゃん、って思うかもしれないけど、事は必ずしも単純ではない。例えば、分配要件はTaxable Incomeベースだけど、多くのケースでその年のNet Cash Flowとは一致しない、っていうか絶対ピッタリは合わないし、乖離が大きいケースも珍しくない。ボーナス償却とかあればCash Flowの方が大きくなるから分配の原資には困らない。そんなケースではTaxable Incomeの90%どころか、Net Capital Gainの分配や、さらにそれらを超えてCurrentやAccumulated E&Pを超える「Return of capital」分配を行うこともできる。Return of capitalは通常のCorporate Taxの301(c)(2)の取り扱いと同じで、株主側の株式簿価を減額させる。キャッシュフローが潤沢な年にどれだけ分配するかは、税務っていうよりCommercial Decision。

逆に借り入れの返済が大きかったり、投資資金が必要な年はキャッシュフローがTaxable Incomeに及ばない。「Excess noncash income」例外規定っていうのがあるけど、結構セコくて余り役に立たないことが多い。仮にExcess noncash income例外で辛うじて90%要件を満たすことができたとしても、REITが留保するTaxable IncomeはDPDを取れないんで、REITレベルで法人税の対象になる。

国内株主側の取り扱いに関しては、Net Capital Gainを分配せずにREITが法人税を支払い、だけど、みなし分配と取り扱い、法人税を株主側でクレジットしたりする手法があったり、10月~12月の第4四半期に分配を宣言して、実際には翌期1月末までに支払って宣言課税年度の分配と取り扱ったりとか、細かいテクニックが数多く存在する。

外国人投資家

日本企業のファンド経由REIT投資みたいに、外国人投資家が受け取る分配の課税関係はこれはこれで複雑。詳細は投資毎にアドバイザーに聞いて欲しいけど、いくつかある重要ポイントのまず第一はUSRPIの譲渡に帰する分配の取り扱い。REIT株式そのものがUSRPIかどうかとは別の次元の話しとして(多くのケースでREIT株式はUSRPIだけど、必ずしもそうじゃない点は以前触れた。よね?)、REITがUSRPIを譲渡した課税年度の分配は、USRPI譲渡益に帰する範囲で、外国人投資家自らがUSRPIを譲渡したかのようにFIRPTA課税の対象になる。ここで要注意なのは、ここでいうUSRPI譲渡に帰する分配は、Net Capital Gain分配とは限らない、っていう点。「REIT Net Capital Gain分配神話」だ。この神話、外国人投資家側の取り扱いだけでも取り扱いは難関極まりないけど、これらの分配に対する源泉徴収時には必ずしもUSRPIではなく通常のNet長期キャピタルゲインを見て判断するんで、両者は金額、タイミング共にマッチングしないケースが多く、何らかのConventionやTie-Breaker的な規則が出て欲しいところ。この部分は深堀りするとかなり面白くて5つくらいのポスティングになるんでそのうちね~(いつになることやら)。

REITの分配要件で触れた通り、REITがNet Capital Gainを分配しないといけないという要件はない。仮にUSRPI譲渡からNet Capital Gainが生じて、Net Capital Gain以外のTaxable Incomeを分配し、REIT自身が分配をNet Capital Gain分配と指定しないとする。それでもUSRPI譲渡がある限り、通常の分配のうちUSRPI譲渡益に帰する金額はFIRPTA課税対象となる。さらに、Short-Term Capital Gainは通常所得なので通常分配に混ざってる可能性があるけど、FIRPTA課税にはUSRPI譲渡がShort-Termだったら免除という規定はないんで、こちらもNet Capital Gain分配に含まれないけどFIRPTA課税対象となる。一方でNet Capital GainにはUSRPI譲渡でない取引も含まれている可能性もある。代表的な例はモーゲージ債権の譲渡、米国外の不動産譲渡など。その場合にはREITからNet Capital Gain分配があってもFIRPTA課税の対象となる分配はない。

USRPI譲渡益に帰さない分配はE&Pの範囲で通常の配当として30%源泉税対象。LOBを満たす条約適格の外国株主は条約低減レートの適用可能性はあるけど、REITの配当は、通常法人の配当と比較して、条約低減レートの恩典は少ない。日米租税条約で言うと、6か月所有期間・50%以上の議決権所有の法人株主に通常認められる0%源泉、また10%以上の議決権を持つ法人株主に認められる5%源泉、の適用はない。そんな中30%からの低減が認められる例外は次の3通り。株主が年金基金のケースを除き全て源泉税は10%に低減。年金基金だけは0%。まず個人および年金基金のREIT持分が10%以下のケース。次に上場REITで株式が「Traded」(単に上場されているだけじゃダメ。例えば償還型はPublic OfferされてSECに登録されててもTradeされていることにはならない)されてて持分が5%以下のケース。最後は、持分10%以下の分散型REITから受け取る配当。

REIT持分譲渡

ここまでどんな法人がREIT適格で、REITがDPDの恩典を受ける分配が外国株主側でどんな風に課税されるか、って話しだったけど、じゃあREIT適格の法人株式の譲渡に対する課税関係は、っていうのが次の話。REIT株式がUSRPIのケースでは、他のUSRPI譲渡と同様、譲渡益はFIRPTA課税でみなしECIとして申告課税になる。ただREIT株式譲渡にはいくつか例外がある。以前触れたDC REIT、QFPF、外国政府、とかだ。う~ん、ようやくメインテーマの挑戦的な財務省規則案の内容に辿り着いた。って言っても規則草案の内容そのものは次回だね。