Saturday, April 27, 2024

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (最終回)

前回のポスティングでは「Ever changing mood」のKiller B変遷の新規則案の前座としては最後になる2016年Noticeに触れて今日は大トリ。 前々回(だっけ?)Van Halenのギターの話しをしたけど、そんな話しをしたんで急にいろいろと記憶がフラッシュバックしてて、あの後、ポスティングでも触れた「Unchained」とかBlastさせたりしてた。あの曲、Manhattanだとチョッと気分でないんでもちろんフロリダブルーのときめきで。

デビュー直後の絶頂期1979年に武道館で見たVan Halen。あのコンサートは要所要所今でも目に焼き付いてるけど、2016年Noticeが規則草案の前座だったように、P-MODEL(確か。子供バンドじゃなかったよね。チョッと記憶があいまい)っていう日本のバンドが前座で登場したはず。ジャンルが違うんで観客は結構「?」って感じだったけど、ようやく暗くなってDave Lee Rothが結構うまい日本語で「コンニチワ~」「マタキマシタ~」「Mighty Van Halen~」(笑)とかなんとか絶叫して登場。武道館は天井が爆発して落ちそうなくらいの大興奮に包まれた。もちろんEddie Van HalenがPicking HarmonicsプラスTremolo Armで「キュイ~ン」(分かるね?あの音)とか大音量のGuitarをランダムに弾いてて最初の30秒でオーディエンス全員完全に行っちゃってたね。

Electric Guitar弾いてた人は分かると思うけど、例えMarshallフルボリュームでやってもあの「キュイ~ン」って感じはEddie Van Halenにしか出せないんだよね。で、武道館のコンサートではその直後、いきなりOpeningの「Light Up the Sky」だったはず。まだUnchainedって曲は当時出てなかったからね。う~ん。あんな格好いいOpeningは後にも先にも見たことない。Van Halenより少し前に見たCozy Powellが入ったばかりのRainbowの「Kill the King」のOpeningも良かったけど、個人的にはVan HalenのLight Up the Skyが上を行ってた。Light Up the SkyのOpeningのリフ、EとB(もちろんTuningが半音下がってるんで絶対音感的にはEフラットとBフラット)で半音ずつ上がってくやつ。ベースが逆に下降してくんだけど、あれをあのリズムで正確に弾くって結構難しい。Guitarが半音上昇し切った後に本番のリフだけど、何気なく聴いてると単純に格好いいけど例によってテクニカルにはトリッキーな技が満載だ。Guitar Solo直前に急にペンタトニックっぽくなるBridgeでフランジャーじゃなくてPhase Shifter使ってるよね。Phase Shifterとか使いすぎると嫌味だけど、Eddie Van Halenは十分かつ必要な使い方してて流石。EVH 90とかEddie Van Halenの名前が付いたんで後から知ったんだけど、あれはMXRのPhase 90ペダルだったんだね。Unchainedで触れたフランジャーもMXR製でもちろんこちらもEVH 117 Flanger。Light Up the SkyのBridgeも当時動画とかなかったからレコード(プラスチックのやつね)からコピーしようと思ったんだけど聞こえてる以上に難しいんだよね。4回同じBridge繰り返すんだけど毎回チョッとだけ違う音がはいってたり基本8フラットから12フラットみたいな上の方で弾いてるんだけど、途中効果的に開放弦が使われる。しかも「お~開放弦混ぜたね!」とか全く分かんないんだよね、弾いてみるまで。でその直後のSoloはレコードよりさらにスピード感満載でカッコよすぎだった。

Light Up the Skyで完全にPass Out寸前になったところで2曲目は間髪入れずにナント「Somebody Get Me a Doctor」!!。Helter Skelter じゃないけど一回Pass Outして帰ってきてまたPass Out寸前。めちゃカッコいいリフで始まって、ああやって弾くんだ~みたいな程度にチョッと冷静に見れるようにはなってきてた。あの曲のソロってめちゃくちゃカッコよくてコピーしないと分かんないんだけど超難しいんだよね。特に途中でハーモニクスになる辺りのリズム超複雑でライブで見たらフラットの上下に動く手の速さとその正確さに愕然。で、Soloが終わってまたリフに戻るんだけど、レコード通り、4回目のリフの次に「どうやってこんな音出してんの~?」っていう「ペキペキペキペキ…」って下降してく部分があって(知っている人はすぐ分かるだろうけど、知らない人には何それ?ってなるよね)、ライブでもその通りにそれを再現してた。あれって左手で開放弦と多分2フレットと5フレットとかをZeppelinのHeartbreakerのソロみたいにPull Offしながら、右手は手の甲でミュートしてハーモニクス効果を出しながら下降させてあんな音出すんだよね。Eddie Van Halenが登場してくるまで存在しなかったRight Hand奏法はその頃にはすっかり知れ渡ってたけど、あのハーモニクスを使ったPull Offも今まで聞いたことがなかった。しかもカッコいいよね、あの音。同じSecond Album(伝説の爆撃機(笑))の1曲目の「You’re No Good」のSoloの前半でも同じ音が聞こえてて個人的にGuitar音色七不思議の一つだったんだけど、弾き方が分かって大収穫だった。今だったらYouTubeみれば直ぐに分かって夢がないんだろうけどね。

う~ん、あんなライブをこの目で見れて体感できたっていうのはラッキーで光栄で一生の思い出だけど、実際起こってる時ってそれがどれだけ貴重なMomentかって意識がないんだよね。今考えたらあんなにカジュアルに武道館行って、Van Halen見て、また飯田橋まで歩いて半チャンラーメン食べて国鉄(JRじゃないです)で家に帰る、って何ていう贅沢。タイムマシーンで戻って最初の2曲でいいからもう一回体験し直したい。歴史の凄い出来事ってそうなんだろうね。後から考えたらあの時凄かったね、とか。または実はあんな時がHappyだったんだな、とかね。そんな後から考えてHappyなMomentって必ずしもMiamiのBeachで横になってたりしてリラックスしてる時じゃないから不思議だよね。人によってもちろん違うんだろうけど、みんなにもあるんじゃないかな、そう言う感じ。例えば、前夜めちゃ忙しくて寝るの超遅くなって、でも翌日早朝に起きて家族のBreakfastとかLunch Boxとか用意してバタバタしながらコールに出て、ついでに犬の散歩、下のジムに慌てて寄るけどTreadmillは時間がなくていつもの半分しかできなかった~とか。そんななのにプロジェクト遅れ気味で怒られるとか。やってるときは「なんとかして~ヘルプ!」みたいなそんなMomentが実は後から考えると至福(?)のMomentだったりね。ということで皆さんもMinute by Minute(Doobie!)大切にして下さい。

で、最終回をいいことに冒頭から思い切り脱線してしまったけどKiller Bに戻りるね。じゃないと最終回じゃなくなるリスクがあるんで。

2016年Noticeによる規則改定案

2014年Notice以降に進化したKiller Bは以前にも増してテクニカルなものなんで、それに網を掛けようとしている2016年Noticeまたそれを基に実際に規則案化された2023年規則案の規定も必然的に高度にテクニカルなものになる。

まず、Priority規定で出し抜かれた点への対抗策アップデート。前回触れた通り、2014年Notice以降のKiller B+ではUSSが所有するT株式をFSがFP株式とTriangular Reorganizationで交換し、その際にGRA規定下、超少額のsection 367(a)所得を敢えて認識する。一方Killer B規則を見るとFSによる外国法人FPに対するみなし分配に源泉税はないし、FPを所有するUSPはLook-through例外規定でSub Fの認識がない。となるとKiller B規則の所得はゼロなんでSection 367(a)に軍配が上がる。さらにその後のFPのUSPへの統合時にFPのE&Pを全額USPの課税所得とするっていうsection 367(b)の規定もPriority規定でKiller B規則が適用されなければFPはFSから配当を受け取ってないんでFPにはE&Pはないってことで課税所得がない。またしても不適切にも程があるってことでPriority規定はターゲットTが米国法人の時だけ適用するって変更するとしている。ということはTが外国法人のケースはPriority規定にかかわらずKiller B規則が適用されるってことになる。上の例で言うとFSがFP株式取得対価としてFPに移管する現金やNoteはKiller B規則でみなし分配になり、FSのE&Pの範囲で配当所得となり、FPのE&Pが増える。Look-throughでSub Fから逃れたとしても、そんな状態でFPがUSPに統合されるとSection 367(b)に基づきUSPはFPのE&Pを所得として認識することになる。この所得認識によりUSPが受け取るFP資産の簿価継承は辻褄が合うことになる。この点は「Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (12) 」も読んでみてね。

一方、上の例ではUSSがT株式をFP株式と交換する取引がIndirect stock transferになるんで原則section 367(a)に抵触するはずだけど、2016年NoticeではKiller B規則に抵触するTriangular Reorganizationで米国株主が外国法人株式を外国法人に移管したと取り扱われる場合にはsection 367(a)の適用は停止するとしている。ただし、section 367(a)が適用されない代わりに、Tの株主はTのE&Pをみなし配当所得認識することになる。通常のsection 1248に準じてPTEPや米国源泉E&Pは対象外。で、こちらも通常のsection 367(b)のルール通り、みなし配当所得額に関する株式簿価の増額が認められ、簿価増額後に株式譲渡益の計算をする。Section 1248に似てるけど、チョッと違っててこのみなし配当や譲渡益認識は米国人株主やsection 1248株主でなくても適用がある。

これらのルールをKiller B+の上の例に適用するとTのE&PはT株式を移管するUSS等の手で課税され、FSのE&PはFP経由でUSPの手で課税されることになる。TにE&P以上の含み益があると超過分は譲渡益課税。Killer Bと最初に出会った頃はこんなじゃなかったのにこの頃はチョッと冷たいね、じゃなくて厳しいね。

Excess Asset Basis(「EAB」)

外国法人の資産が米国に適格清算や組織再編で移管されてくる際にE&P課税する主たる動機は、米国のタックスシステムに初めて登場する資産簿価に資本金、負債、課税済みのE&Pの総計でサポートされていない部分があると、そんな超過額は資産簿価のタダ乗りになるっていう点は以前に触れたし、上のFPの資産がUSPに移管されるKiller B+の例でも触れた。資本金も負債返済も税引き後の現金を利用しているって考えると米国で非課税の状態にある外国法人のE&Pさえ課税すれば、米国に移管される資産の簿価は適切に購入されていることになる。

Killer B+を見てこの点がとても気になったみたいで2016年のNoticeでは外国法人の資産が米国に適格清算や組織再編で移管されてくる際にE&P課税するルールを強化し、EABが存在する場合、一定要件下でEABを「Specified earnings」と指定しE&PにプラスでEABにも課税するとしている。このEABルールは必ずしもKiller B取引の後に実行される資産移管、すなわちKiller B+の「プラス」部分の取引、かどうかにかかわらずTraditionalなInbound資産移管全てが対象となるらしい。EABルール自体複雑だけど、上述の超過額が不適切っていう理論に基づいてて、EABは外国法人の「内部資産簿価」が「外国法人株式簿価合計額(ここは本来資本金になるはずだけどその代わりに簿価を適用)」、「外国法人の負債」、そして「E&P(PTEPや米国源泉E&Pは除外)」の合計を超える額。財務省も納税者に負けずに資産簿価に神経をとがらせてるね。

で、どんな金額がSpecified earningsになるかっていうと、いろいろ実際には細かいんだけどエッセンス的には、「米国に資産移管する外国法人が所有する外国子会社のE&P(PTEPや米国源泉は除く)」、「EAB」、米国に資産移管する外国法人株式の含み益」のうち一番小さい金額になる。

2023年Killer B規則案

前座P-MODELの演奏が終わり一回武道館が明るくなってワクワクして待ってたら会場が暗くなって凄い歓声の中、Dave Lee Rothの「コンニチワ~。マタキマシタ~」とEddie Van Halenの「キュイ~ン」でオオトリVan Halenが登場したように、ここで2023年Killer B規則案に至る。本当に「マタキマシタ~」って言うのがピッタリ。

2023年Killer B規則案は基本的に2016年Noticeを踏襲している。2016年Noticeに寄せられたコメントに基づき、EABルールは原則、Inboundの資産移管の前にSがTriangular Reorganizationに使用する対価となるP株式・債権をPから現金で取得しているにもかかわらずKiller B規則が適用されていないケースへの適用に限定。2016年NoticeはSpecified earnings算定時に「米国に資産移管する外国法人が所有する外国子会社のE&P」がEABと比較する対象の一つだったけど、その際にPTEPは除外されてた。2016年Notice後に留保所得一括課税(section 965)およびGILTIの導入でPTEPが爆発的に増額したため、この点に関して微調整があり、米国に資産移管する外国法人が子会社からPTEPを含む全E&Pを分配したと仮定し、この分配の課税関係を加味して計算をするっていう方法に変更されてる。

他にも細かいポイントはいくつかあるけどメジャーなのはこんなところかな。まだ規則案なんで最終化の際に更なる微調整があるかもしれないしね。ってことで長らくKiller Bにお付き合い頂きありがとうございました。次の物語は何にしようかな、って思ってたら昨年触れたDC REITの規則案がいきなり最終化された。他にもSWFっていうか外国政府系の話しも最終化されてるんで速報でひとまずそれをカバーして、その後にNew themeにしましょう。

Saturday, April 13, 2024

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (12)

前回のポスティングではKiller B規則の2014年Noticeをカバーした。去年の10月に公表されたKiller B新規則案にトリガーされて書き始めたKiller Bシリーズ。2006年Notice、2007年Notice、2008年暫定規則、2011年最終規則、2014年Noticeまでカバーしてついに今日は新規則案の前座としては最後になる2016年Notice。トリ寸前だ。Killer BシリーズもますますFinal Phaseになってて寂しいよね。この感じって読み始めたら止められないタイプの面白い物語読んでる間、完全にその世界に入りこんでて物語が終わると今まで登場人物と一緒に暮らしてたのに誰も居なくなっちゃったみたいなのと同じ。世界広しといえども、Killer Bの話しが終わって寂しくなる人は中々いないって?そうだよね。まあ、次の物語読み始めると次の世界が展開されるように、ポスティングも次のテーマに移ったら直ぐ今度はそっちにハマるからいいね。Killer Bの次はどんなテーマになるでしょうか。

2016年Notice

難攻不落でSection 367(b)の西を守ってたはずのKiller B最終規則城は米国MNCの城攻めに合って屈してしまい、2014年Noticeで補強されて今度こそって感じだったんだけど、相手は何といっても上杉謙信の上を行く米国MNC。またしても2014年Noticeの裏を書くストラクチャリングで圧倒され更なる改修工事が必要になった。そこで登場するのが2016年Noticeだ。2014年Notice後に散見されるようになった取引は単なる2014年Notice準拠のKiller Bってだけではなく、Killer Bの後にもうワンステップ追加された「Killer B+」とでも言うべきRepat戦略。

「Killer B+」

2014年Notice後に蔓延し始めたストラクチャリングの代表的なものは次の通り。米国企業USPが米国外100%子会社FPを所有し、FPはさらに100%子会社FSを所有しててFPにはE&PはないけどFSには潤沢なE&Pがあるとする。早速Killer Bチックな設定だね。米国外の埋蔵金E&Pを米国で課税されることなく還流させるための手法として進化してきたストラクチャリングがKiller Bだからね。2017年のTCJAで全ては変わってしまったけど、2016年Noticeなんでこの時点ではまさかクロスボーダー課税がGILTIとか245Aとか今の姿になるなど露知らずっていう時代だ。

ちなみに外国法人の(当時はSub Fで)課税されていない留保所得が課税されることなく米国に還流される取引を監視するっていうのがKiller B規則を含むsection 367(b)全体の立法趣旨・テーマっていう点は「Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (3)」等で触れてるけど、その一環でCFCの事業資産が非課税組織再編や非課税清算を介して米国親会社に非課税で還流されてくる取引も当然section 367(b)の監視下にある取引。この手の取引では、CFCを非課税組織再編や非課税清算で米国株主に統合すると、CFCのE&Pは一度も課税されないにもかかわらず、そのE&PでファイナンスされたCFCの資産簿価がそのまま米国親会社にフローアップしてくる。そこで米国へのInbound資産移管に網を掛けるため、section 367(b)の規則の一つにInbound取引時には米国親会社がCFCを所有していた期間に生じた自己持分相当のE&Pを全額課税するっていうのがある。ここでは「Inbound資産移管E&P課税」って呼んでおく。

でも非課税清算等で受け取る資産はステップアップしないんだからいいじゃん、って思うかもしれないけどピュアな国内取引と異なり、CFCの資産簿価がCFCのE&Pにサポートされている限りにおいてその部分の簿価は米国で課税されていない所得を原資とした簿価。チョッと分かり難いかもしれないけど、B/S的に資産簿価は米国親会社による出資、CFCの負債、またはCFCが稼得した所得(イコールE&Pと仮定)のいずれかでサポートされているんでE&Pに課税できてれば全ての簿価はそのまま使ってOKってことになる。資産の簿価っていう属性は将来のNOLと同じっていう点は「Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (10)」で触れた。NOLは資産簿価の化石って考えると双方の価値が理解し易い。NOLとの比較において簿価の有無や大小に比較的無頓着なケースを見ることがあるけど、これらの属性の価値は基本的に同じだ。結晶化(?)してるかどうかの違いだけ。米国MNCは資産簿価の大小、また株式、有形資産、無形資産その他、どんなタイプの資産に簿価が付くかに細心の注意を払う。結果ここで話しているKiller B+みたいな発想に至ることになる。

で、ポスト2014年NoticeのKiller B+の例を続けるけど、Killer B規則の考え方を適用するとFSによるFP株式取得はFSによるFPへの分配になって、FSのE&Pの範囲で配当になる。FPにはE&PはないけどFSには潤沢なE&Pがあるっていう設定だから覚えといてね。でもFSは外国法人なんで配当に対する米国源泉税は通常関係ない。また配当を受け取るFPは米国外法人なんでそれが間違ってECIなんてケースは100年に1回あるかないかくらい珍しいだろうから、FPには直接米国法人税が課されることはない。FPはCFCなんでFPが受け取る配当が元祖CFC合算課税のSub F所得になるとUSPはその時点で自己所得に合算しないといけない。Sub Fには複数の例外があってこの手のケースで一番適用可能性が高いのは配当原資がFS側でSub FでもECIでもない事業所得の場合、グループ全体で考えると配当の性格はPassiveなポートフォリオ投資のリターンではないんでSub Fの趣旨的にSub Fで網を掛ける必要はない。Look-through規定だ。CFC課税の「Look-through」って複数あってConfusingだけど、ここでいうLook-throughは関連者から受け取る配当の原資が阿漕な所得でなければOKっていうsection 954(c)(6)に基づくSub F免除だ。まだTriangular Reorganizationにも至ってないけど既に複雑になってきてるね。Killer B+だからね。

Triangular Reorganization

で、USPの米国外100%子会社USSがFPやFSとは別の持分チェーンで米国外100%子会社FTを所有してるとする。FTをFP/FSと同じ持分チェーンに取り込んでインティグレーションするっていう事業目的でTriangular Reorganizationを通じてFSはFT株式をUSSから取得する。取引ステップはKiller Bそのもので、FSは最初のステップでFPから現金対価(Noteかもしれないけどここでは現金で統一しておく)で取得したFP株式を対価にFTの100%株主であるUSSからFT株式を取得する。B型再編になり絵に描いたようなKiller Bだ。Killer BのBはB型再編って覚えてるね?でもKiller BはB型再編で実行される必要はなくて、AやCのTriangular Reorganizationバージョンでも全く同じことができる点はKiller Bシリーズをフォローしてくれてる読者の皆さんなら既にご存じの通り。

Inbound資産移管

で、Triangular Reorganizationの後、Killer B取引とは別プランでUSPはFPを吸収する。手法は大概においてUpstream Mergerなんだろうけど100%子会社のUpstream Mergerは税務上はLiquidationになる。80%以上の議決権・価値を所有する子会社のLiquidationは原則適格Liquidationで非課税だ。このInbound資産移管によりFPが所有する資産はUSPに移管されるけど、移管されるFPの資産にはKiller B取引下でFSがFP株式の取得対価としてFPに移管した現金が含まれる。ということは蓋を開けてみるとE&Pを潤沢に持つFSの現金がFP株式取得、FPの適格清算でUSPに還流している。

でも、Inbound資産移管は上で触れたsection 367(b)のInbound資産移管E&P課税でFPが課税されるんじゃないの~って思うよね。適格清算でも未だに米国で課税されていないE&PはInbound資産移管時に課税対象っていうのがルールだからね。さてどうなるでしょうか。

2014年Notice下のKiller B規則適用

上の取引例に2014年Notice時点で存在するKiller B規則を適用してみると次のような取り扱いになる。まずTriangular Reorganization部分だけど、これは今までのKiller Bのポスティングで触れてきた通りの取り扱い。USSがFT株式の対価としてFP株式を受け取る取引は2014年のPriority規定で触れた「Indirect stock transfer」に当たる。すなわちUSSはsection 367(a)目的でFT株式をFPに移管したと取り扱われる。移管対象となる株式がFT株式って言う米国外法人の株式なんで、通常はGain Recognition Agreement(GRA)をIRSと締結することで株式移管時点の課税を避けることができる。GRA自体ディープな話しだけどここでは敢えて超乱暴にまとめとくと、本来section 367(a)で課税される株式移管時に一旦IRSとGRAを締結し、移管から5年以内に移管された株式の移管先からの更なる譲渡、または移管対価で受け取った株式の譲渡等のトリガー取引がなければsection 367(a)課税から免除されるっていう有難い制度。トリガー取引で過去遡及して課税される場合、元々の株式移管の課税年度の申告書を修正して追加払いの法人税には金利も課せられる。

Section 367(a)に抵触する外国法人株式の移管でGRA締結可能なケースは通常であればGRAを締結する。じゃないと即、課税所得になっちゃうからね。したがってアドバイザーとしてはGRA締結に落ち度はないか、全ての移管株式をカバーしているよねとか、その後5年に不要に譲渡益をトリガーさせないための内部管理とかがフォーカスとなる。ところがKiller B+取引ではUSSもGRAを締結するにはするんだけど、その際にFT株式の全株式に関してGRAを締結しないで敢えて超少数のFT株式をGRA対象外とする。この部分は当プランニングのキーとなる部分。FT株式の僅かな部分にGRAを選択しないっていうことは当たり前だけど、その部分のFT株式含み益はsection 367(a)で課税所得になる。少額の課税所得を敢えて認識っていうエキセントリックな怪しい行動でPriority規定を巧みに使うための技なんじゃないの~って予感させてくれる。で、本当にその通りなんです。Killer B+では、この超少額のsection 367(a)所得をKiller B規則の所得と比較してFP株式取得にKiller B規則を適用するかどうか判断する。

Killer B+とPriority規定

じゃあ、section 367(a)下の僅かな所得の比較対象になるKiller B規則下の所得が何かっていうとここも面白い。ここで登場するのが2014年Noticeだ。Killer B規則ではFSによるFP株式取得対価の支払いをみなし分配と取り扱って課税関係を決める。その際、section 367(a) にも抵触する取引ステップがあると、Priority規定に基づきKiller B規則とsection 367(a)でどちらがより高い所得を生み出すかに基づきどちらの規則で課税関係が決まる。この比較算式に使用される所得額に関してはさんざん紆余曲折があり、Priority規定のIRSの視点からの悪用を封じ込めるため、2014年NoticeではPriority規定適用検討時にsection 367(a)所得と比較するべきKiller B規則下の所得は「源泉税対象となる配当」および「実際にPに課税される範囲のみなしキャピタルゲイン」、そして「PがCFCの場合でPが認識する配当やみなしキャピタルゲインがSub FとしてPの米国株主に合算される額」に限定した。

上述の通り、Killer B規則で分配と取り扱われるFP株式取得対価の支払いは、FSのE&Pの範囲で配当扱いになる。でもFSは米国外法人なんで配当に対する米国源泉税は通常関係ない。配当を受け取るFPも米国外法人なんでFPが受け取る配当や分配がみなしキャピタルゲインとなっても直接FPに米国法人税の適用はない。FPが受け取る配当やみなしキャピタルゲインが元祖CFC合算課税のSub F所得になるとUSPはその時点で自己所得に合算しないといけないけど、section 954(c)(6)のLook-throughでSub Fからも免除される。となると2014年Noticeが規定するPriority規定適用時のKiller B規則所得はゼロになる。一方のsection 367(a)を見ると僅かな所得があるんでこちらが勝つことになってKiller B規則の適用はナシとなる。USSは僅かな所得に法人税を支払う。

そして最後のステップ、すなわちKiller B+をKiller B+たらしめる最終ステップのUSPによるFP吸収合併(または類似取引)だ。このステップは上述の「Inbound資産移管E&P課税」で課税されるんで結局苦労してsection 367(a)で僅かな所得認識を演出してPriority規定でKiller B規則から逃れてもこれで万事休すじゃんって思った読者は上杉謙信。米国MNCは上杉謙信よりも強力な攻略でKiller Bを落城させる。

城攻めのカラクリは次の通り。まずFPにはそもそもE&Pはない。これはKiller B+実行時にFPを新設したりしてそのようなストラクチャーにしてるからでこのポスティングでもKiller B+取引の説明冒頭に前提条件としている。そしてPriority規定でKiller B規定が適用されないんでFSによるFP株式の取得対価は分配にも配当にもなってない。したがってFSにE&PがあってもFP株式取得を通じてFPのE&Pが増えることはない。となるとストラクチャー的にはInbound資産移管E&P課税の適用対象取引でも、肝心のE&PがないんでUSPに課税される金額は存在しないってことになる。

う~ん米国MNCっていうかMNCにアドバイスしてるBig 4の国際税務チームやメジャーなLaw Firmは凄いね。僕もEYの国際税務Nationalチームだっからこの辺の変遷は生で見てきたけどIRSの解釈は異なる部分はあるとしても当たり前だけど全て法的なApplicationは正しいからね。ということはBig 4とかは虎千代の教育係の天室光育だったってことか~(?)。2014年Noticeで網を掛けようとした取引は、Priority規定を適用してsection 367(a)をTurn-offするケースだったけど、Killer B+では少額のsection 367(a)でKiller B規則をTurn-offしてる。

他にも似たようなバリエーションとして、USPがFPとUSSを所有してて、USSがFTを所有してるっていう同じストラクチャーでFPにはE&Pはなく今度は上の例のFSではなくFTが潤沢なE&Pを持ってるとする。FPはプレーンバニラの優先株式(section 351(g)非適格優先株式)を対価としてUSP株式を取得、USP株式を対価にUSSからFT株式をTriangularのB型再編で取得する。で、後日FPは自社優先株式のUSSから償還する。このバリエーションのキーはFPの自社株式は2011年最終規則で「Property」にはならないんで(Sub CのPart I、すなわちsection 301~318の目的でも、特に304で自社株式はPropertyにならないのと同じ)、Killer B規則の適用範囲外となる。さらにUSPによるFPへのUSP株式移管の対価は非適格優先株式となることから、適格現物出資にはならずsection 1001の課税交換となり、USPが所有するFP株式の簿価は時価になる。Section 351の適格現物出資になってしまうと「例の」ゼロ簿価っていう不思議の国のアリスに出てくるウサギの穴に入り込んじゃうもんね。ゼロ簿価に関しては「Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (6)」を参照のこと。FPによる自社株式の償還はFPにE&Pがないんで配当にならず、またUSPが持つ簿価が時価になってるんでみなしキャピタルゲインもないっていうポジション。経済的にはFTのE&Pを拠り所に償還してるって考えるとE&PのRepatになる。こちらもお見事。

壮絶な知恵比べで2000年台前半から2016年まで進化し続けたKiller Bと財務省規則。2016年Noticeが出た翌年2017年12月22日にクロスボーダー課税を根本的に変えたTCJAが可決される。TCJAでKiller Bを含むsection 367(b)の存在意義が大きく低下した点、およびそれでもsection 367(b)の一連の規則は引き続き必要という財務省見解に関しては特集前半の「Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (3)」で触れた。次回はKiller Bシリーズ最終回として2016年Noticeの対抗策、それに準じて2023年に公表された規則案に触れてみたい。