Wednesday, September 29, 2021

バイデン増税「下院歳入委員会」法文ドラフト(5)「Downward Attributionの再撤廃 (3)」

前回のポスティングでは、クロスボーダー課税を考える際にどんな目的で株式の直接・間接所有に加え、みなし所有も加味する必要があるか、に触れた。で、今日はクロスボーダー課税での具体的なAttributionに関して。

クロスボーダー課税とAttribution

前回のエンディングで触れたとおり、米国株主やCFCかどうかの判断時には、前々回紹介した国内の法人税扱いに関して規定される4つのAttributionをそのまま適用するのが原則。だけど、クロスボーダー課税用にいくつか重要な例外が規定されている。または一部に関しては規定されていた、と過去形になる。何回もしつこく書いておくけど、間接持分は米国外の法人その他の主体経由でしか認定されないけど、間接持分は米国の主体経由でも普通にAttributionされるから、くれぐれもこの2つの微妙な差をお忘れなく。

家族メンバーAttribution

まず家族メンバーAttributionに関して、非居住者の家族メンバーが所有する株式は米国市民や居住者家族メンバーにAttributionされない。この免除にはチョッとマイナーな例外があって、TCJA以降、米国法人が受け取る国外源泉配当の多くに100%DRDが認められることから存在していること自体不思議と言ってもいいくらいの(だけど撤廃されてないんで反って罠のようにややこしくなった)CFCから米国株主への貸付その他のみなし配当規定の適用除外を検討する際にはAttributionを加味する必要がある。

Upward Attribution

UpwardのAttributionっていうのは下から上に上ってくる方向なんで間接持分に類似しててDownward Attributionとの比較で直観的に分かり易い。前々回触れた通り、Upward Attributionは、パートナーシップ、遺産(Estate)、信託、法人が直接・間接・みなし所有している株式はそのオーナーが所有していると取り扱う規定。法人に関しては、50%以上の価値を直接・間接・みなし所有する株主のみに適用され、法人が直接・間接・みなし所有する株式の価値に基づく持分%に相当する株式がAttributionされるというのが原型。

で、このUpward Attributionをクロスボーダー課税目的で適用する際にはみなし所有の範囲が拡大されるので要注意。まず、法人からその株主に対するAttributionが拡大され、通常は50%以上の価値を所有する株主からAttributionしてくる、っていう規定に代わり「10%」以上の価値を所有する法人株主は法人からのAttributionがある。10%って結構低いよね。

さらに、パートナーシップ、遺産、信託、法人(つまり個人以外)が直接・間接に法人の50%超の議決権を所有する場合には、100%議決権を所有しているとみなされる、っていう変形というよりも新たなUpward Attribution規定が追加される。元々、法人が所有する株式は、50%「以上」の「価値」を持つ株主(個人を含む)に価値持分に準じてAttributionされるというもの。これを議決権に置き換え、また50%超とし、100%議決権のみなし所有としている。この変形はあくまで議決権のAttribution。

で、今の法律はここで不気味に終わっている。

Downward Attribution禁止撤廃

なぜ不気味かというと、2017年のTCJA前はその次にもうひとつ3番目の例外が存在したからだ。撤廃されたことで逆に有名になり、今では誰でも条文番号を知っているSection 958(b)(4) だ。

この(b)(4)は米国外信託、米国外遺産、米国外パートナーシップ、米国外法人から米国人にはDownward Attributionは適用されない、っていう賢明なルールだった。こんな重要な例外を、インバージョン後のCFCの非支配下取引に網を掛ける、っていうかなり狭義な目的を達成するために、単純に撤廃してしまったのだ。

撤廃された翌日には、そんなことをしてしまったら「こんな大変なことになります」って感じの副作用、っていうかほぼ本作用が続出して大パニック。しかも改正の施行日が「2017年12月31日以前に開始する最後のCFC課税年度から適用」となってたんで、CFCの課税年度が暦年のケースだと2017年から、3月決算の場合は、2018年3月期から適用となった。今まで米国株主じゃなかった者が急に米国株主に変身したり、CFCじゃなかった外国法人が急にCFCになってしまったのだ。で、この2017年はCFC留保所得一括課税、すなわちTransition Taxの年。Downward Attribution禁止の撤廃のせいでTransition Taxに抵触したケースも多い。救いだったのはTransition Taxの対象となる留保所得は、外国法人がTransition Taxに対象であるSpecified Foreign Corporation、SFC(キャンパスの名前じゃないから三田會の方は興奮しないように)の期間に留保された所得のみが対象だったんで、9か月分とかセコイ期間を「留保所得一括課税」されたものだ。

他にも禁止撤廃の影響は大だったんだけど、法律なんで一旦条文になってしまうと、真っ向から対立する解釈はできない。財務省が苦労して、行政府に権限があると思われる範囲でマイナーな部分は少しづつ規則で手当をしてきた。

そんな訳で、次回はDownward Attribution禁止撤廃後のクロスボーダー課税乱世(?)について。

Tuesday, September 28, 2021

バイデン増税「下院歳入委員会」法文ドラフト(4)「Downward Attributionの再撤廃 (2)」

前回のポスティングでは株式みなし所有のクロスボーダー課税への影響を語るプレリュードとして、米国内の「通常」のAttributionに触れた。中でもDownward Attributionは直観的に理解し難くて、意外な結果となることがあるんで油断大敵。今日はそんなAttributionがどんな風にクロスボーダー課税に取り込まれているかについて。

2017年の税制改正、TCJAでクロスボーダー課税にかかわるAttributionのルールが変わり、インバージョンなんかしてない日本企業のような本当のインバウンドやPEファンドの米国外ポートフォリオ法人とかに計り知れない影響を及ぼしてから早くも4年近い月日が経つ。TCJAによるクロスボーダー課税Attribution想定の変更は、ターゲットしている取引よりもかなり広範な納税者や取引に影響がある、っていう問題は文字通りTCJA可決翌日には理解されてた。Attributionルールの変更を逆手にとったプランニングも直ぐに出現した。慌ててKevin Bradyが2019年1月にテクニカルコレクションを提案し下院は通過したものの、上院では取り上げられず今に至る。それが同じ内容で歳入委員会の法案に盛り込まれてるんだけど、今更過去遡及してテクニカルコレクションって言っても時間たち過ぎでは?って思うよね。後出しじゃんけんにもほどがある感じ。修正申告とか大量に出そうだし、議会の怠慢なんだから今更過去遡及は許されない気もするけどね。テクニカルコレクションの憲法上の制約に関しては後日。

それにしてもTCJAから4年近いんだね。そうだよね。2021年もいつの間にか既に10月が目の前で残すところ3か月。米国税法やグローバルタックス的にはまだまだいろいろありそうな3か月だけどね。一年前の2020年夏は米国も州ごとに差異はあったとは言え、全体にシャットダウン気味で、WFHなのをいいことに全国津々浦々から仕事してたけど、Interstateは80、90、10とか基本ガラガラだったし、90でWyomingやMontanaからSouth Dakota方面ドライブしている時なんて地平線見渡す限り車いなかったり、今から思うとドライブには前代未聞的に最適な夏だったことになる。ホテルも予約ナシでiPhoneで当日好きなところ予約し放題だったし、Utah、Wyoming、MontanaのNational Parkも例年より格段に空いてた。Montanaと言えば昨日アムトラックが脱線してしまったけどかなりリモートな場所なんで救助とか心配。あの辺りもドライブには最高。昨年の夏は飛行機も空いてた。5月にJFKからLAXに飛んだ際は大きなジェットにほぼ数人。離陸する燃料代も出てないだろう。アメリカン航空の標語で搭乗した後「Thank you for flying American」ってアナウンスがあるけど、2020年5月~6月の頃は「Thank you for STILL flying American!」とかアナウンスしてくれるアテンダントが居た位だ。

今年2021年の夏は飛行機も道も混んでて、経済がバックしたのは嬉しいことなんだけど、MidtownからJFK行くのも平気で昔みたいに1時間以上掛かるし、CA州だって変な時間にMDRからオレンジカウンティなんかにドライブしようもんなら405はどこまで行っても混んでて2時間掛かったりする。ガラガラだった頃は渋滞が懐かしいとか思ったこともあったけど、今となってはガラガラだった去年の夏がチョッと懐かしい。まあ、トータルでは経済が戻った今年の夏の方が断然いいけどね、もちろん。

日本は14日間の自己検疫が10日に短縮されるとか聞いたけど、10日でもビジネスには使えない。夏に欧州行った際には、国によってワクチン接種の証明が要る国、72時間以内にテスト結果がネガティブな証明が要る国、米国からだったら何も要らない国、とか国毎に規則はマチマチだったけど、基本的に「出発前」に各国の厚生省みたいなところのウェブサイトにテスト結果等の必要情報や飛行機の席番号(これ各国にとって重要みたいだった)をアップロードしてQRコードが送られてきたり、何らかのConfirmationが来て、それがないとその国行の飛行機に搭乗できない仕組みになってた。JFKで出発するときにパスポート見せると同時に、登場する便の行先の国のQRコードを見せたりして、アメリカン航空とかのチェックインカウンターがボーディングパスを出す際に全てスクリーンしてた。その手続きが済んでしまえば、着陸後の入国審査は普通のイミグレ審査のみで、飛行機に搭乗できたことをもってコロナに関してそれ以上の不要となっていた。

米国に帰国する際も帰国72時間以内のネガティブ・テスト結果を取得する必要があるけど、欧州の街角のテントとかで簡単にテストやってくれて、20分後にメールで証明書が送付されてくるんで、それをVefiFlyとかにアップロードするとAI(?)が証明書を瞬時にレビューしてくれて問題なければ「Ready to Fly」という緑のチェックマークでお墨付きをもらうことができる。そのAppをカウンターで搭乗前に見せると帰国の便に乗ることができ、米国での入国時にはそれ以上、コロナ関係の手続きはない。パーフェクトではないんだろうけど、何事もリスクをゼロにすることは無理かまたは法外なコストが掛かるんで、これらの仕組みは全体にバランスが良く取れた合理的な仕組みに思えた。

日本もワクチン接種・ネガティブ証明(到着時+その後2日後とかでもいいし)とかを利用し、搭乗時にスクリーンして入国時やその後に時間を使わないでも入れるようにしてくれないといつまでもTeamsやZoomでAll Night Longだよね。

Attributionとクロスボーダー課税

で、Attributionだけど、前回触れた通り、国内の法人課税関係でも302、304に加え306、338、382、とかの適用時に広範な影響がある。

クロスボーダー課税的に考えると、誰が株式の何%を所有してるかって検討は、米国人がCFC課税目的で「米国株主」になるか、そしてそれに基づき外国法人がCFCと位置付けられるか、っていクロスボーダー課税検討時の根本とも言える最重要検討マターに直結した問題となる。CFCじゃなければSub FもGILTIも関係ないし、CFCでも自分が米国株主でなければSub FやGILTIの合算はない。PFICは別世界の検討課題として残るけどね。PFICもそのうちね。一回投資先がPFICになったらPurgingしたり特殊な選択しないと後年大変なことになるからね。

株式持分とCFC課税

で、クロスボーダー課税の局面でAttributionの重要性を理解するには、まずはクロスボーダー課税の検討をする際に株式持分がどのような役割を果たすか、っていう点を理解しないと始まらない。

CFCの課税関係を考える場合、2つのタイプの持分を区別する必要がある。すなわち「直接・間接持分」と「みなし持分」だ。前者は958(a)に規定されるんで、「(a)持分」、後者は958(b)に規定されるんで「(b)持分」とか参照されたりする。

で、(a)持分の直接・間接持分だけど、Sub FやGILTIの課税関係を決定する際、直接自分が本当に所有している株式に加え、外国法人、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産が直接・間接に所有している株式は、株主、パートナー、受益人が外国の主体に対して所有する持分%に準じて間接所有していると取り扱われる。このルールの適用で外国法人、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産が所有していると取り扱われる株式は、あたかも直接所有しているかのように、その上の株主、パートナー、受益人が当ルールを基に間接所有していることになる。米国人に行きつくまで繰り返し。

「間接持分が外国の主体からしか認定されないなんて変じゃん?米国人からの間接持分は・・?」って思った方はIssue Spotting合格。なんでかって言うと、米国主体が外国法人所有してたら、敢えてその上をみないでも、一番下層の米国主体が要件に応じてSub FやGILTIを認識するから、それ以上見る必要がない。外国の主体は米国株主になり得ないので、常にその上の間接持分を見ることになる。ただし、間接持分は米国外からのものに限定されてても、後述のみなし持分は米国の主体経由からもAttributionされるんで間違いのないように。

CFCの属性を取り扱うSub Fの世界ではその制度で問題なかったんだけど、米国株主側でTested IncomeやLossの合算その他の加工処理が求められるGILTIの世界だと、必ずしも合理的でない。パススルーの米国パートナーシップ経由認識するGILTIをどのように処理するか、っていう問題。結局、この点は財務省規則で合算計算目的ではパススルー(Aggregate)と考えることで決着がついた。合わせてSub Fも同様にしようという規則案(案だけど早期適用可)が出ている。GILTIとSub Fで取り扱いが異なるとプランニングの温床になるからね。

みなし所有はいつ登場

直接・間接持分はクロスボーダー課税を規定しているSub F+GILTI関連のほぼ全条文に適用がある一方、みなし持分は特定の規定目的のみに適用がある。この差異はクロスボーダー課税を理解する際の重要ポイントだ。

で、どんな目的でみなし持分を加味するか、っていうと、何と言っても外国法人がCFCかどうかを判断するため。この判断自体2ステップで行う。まずは米国人の誰がクロスボーダー課税目的で「米国株主」になるか、っていうテスト。米国人って言うのは「United States Person」で「Person」っていうのは法律上、個人、信託、遺産、パートナーシップや法人全てを含むから米国人は個人だけって勘違いしないようにね。最初に米国株主を特定するのは、これが分からないと外国法人がCFCかどうかの判断が付き兼ねるからだ。ここで米国株主になっても、必ずしもSub FやGILTIの合算が求められる訳ではないから注意。合算は上の「(a)株主」が直接・間接に所有していると取り扱われる持分%ベース(米国パートナーシップには特例あり)。米国株主とかCFCという法的なStatusを決めるステップと所得合算をごちゃごちゃにしないように。

米国株主は、特定の外国法人に関して、10%以上の議決権または価値を持つ株式を直接・間接・みなし所有している米国人のこと。このテストで米国株主の存在を正確に把握して初めて次に外国法人がCFCかどうかの判断が可能となる。すなわち、「米国株主」が50%超の議決権または価値を持つ株式を直接・間接・みなし所有している外国法人がCFCと取り扱われるからだ。Sub F一般にそうだけど保険会社には特殊なルールあり。

ちなみにTCJAでは今回のポスティングのテーマに当たるDownward Attributionの適用以外にも、CFCにかかわる定義をいくつか厳格化、つまりCFCになり易い規定に変更している。例えば、米国株主の定義はTCJA前は同じ10%基準でも議決権のみを基に判断していた。前々回だっけ、ポートフォリオ利子免除でも無議決の優先株式を利用したプランニングが存在しててそれに網を掛ける改正が提案されてるって触れたけど、米国株主認定時の似たようなプランニングに網を掛けるため。また、TCJA前は30日ルールって言って、外国法人が課税年度のうち連続して30日CFCの位置づけにない場合は、米国株主はSub Fとかの合算から免除されてた。趣旨としては多分、ヨーロッパの法人とか一気に買収するのが難しくて、まずは例えば60%でその後80%とか100%になるような所謂Creeping買収時、特に80%に至って338選択とかするようなケースでその時点で課税年度は一旦終了するけど、50%超の持分を取得した段階から338のみなし取引も含む所得をSub F合算しなくていいように、みたいなものだったのかな、と思うけど、これも悪用されてたんで廃止。

で、Attributionだけど、米国株主やCFCかどうかの判断時には基本的には、前回紹介した4つのAttributionが適用されるけど、いくつか重要な例外がある、または「あった」。なんか長くなってきたんでここからは次回。

Saturday, September 25, 2021

バイデン増税「下院歳入委員会」法文ドラフト(3)「Downward Attributionの再撤廃」

BEATにしようかDownward Attributionにしようか迷ってたけど、いつまで迷っててもしょうがないんでDownward Attributionを先に特集することに決定。

クロスボーダー課税の検討時のAttribution規定を理解するにはまずは国内の通常の局面におけるAttributionの基本を理解する必要がある。

みなし株式持分「Attribution」規定

株式を何%所有してるかで取引の課税関係が大きく異なることは多い。各規定毎に50%超とか80%以上とか異なるけど、さらに議決権の話しなのか価値の話しなのか、双方なのかどっちかなのか、とか複数のクラスがあったり、High Vote/Low Value株式を利用したスピンオフが珍しくない米国では、各規定で何を見るかきちんと把握しないと大変なFiascoになる。

更に、連結納税グループや適格清算みたいに本当にBeneficial Ownerとして所有している株式を見るのか、Sub FのInclusionみたいに直接・間接に所有している株式を見るのか、さらに自分は持ってないけど、自分に関係する者が持っていることをもってまるで自分が持っているかのように考えないといけない「Attribution」まで見るのか、これら全て規定毎に特定しないといけない。

通常の法人課税と「Attribution」規定の目的

分配、出資、清算、組織再編、等は300番台の条文で構成されるSub Cに規定されるけど、このSub C適用時に、みなし持分規定の適用が明文化されている範囲で、納税者は自分が所有していないにも関わらず、自分と関係の深い者が所有してるっていう理由で、それらの持分をあたかも直接所有しているかのように取り扱って課税関係を決める必要がある。これがみなし持分、Attributionだ。みなし持分は部分的に間接持分と重複することがあるけど、その際も所有していると取り扱われる%は必ずしも同額ではないので注意が必要だ。みなし持分のクラシックな適用は、株式が形式的に償還(Redemption)されるケースが税法上は分配扱いになるかどうかっていう検討時。

取引を会社法上の株式償還ってストラクチャーして、「償還なので「Exchange」として株主は簿価との差額を譲渡益としてキャピタルゲインとして認識します」って言うことがあるけど、税法上は償還後に株主の持分%に意味のある低下がみられないと実質分配と取り扱われる。機械的なものも含めていくつか代替テストがあるけど、一番分かり易いケースは100%子会社による親会社の株式一部償還。100株のうち30株「償還」したり、何株もAll-Day-Long償還したところで、結局は100%子会社のまま。実質分配と変わらないってことで、E&Pの範囲で配当所得となる。この手のストラクチャーはいろいろとあって、それに網を掛けるために304とか複雑な規定があるけどね。

で、その検討をする際に「私は持分を低下させました」って言っても例えば、配偶者と合わせると実は引き続き100%だったりするとプラニングの温床というか、悪用されがちなので、関連者が持っている株式は本人が持っているかのようにみなして取り扱うことになる。それ自体、簿価がどう動くのか、とかFamily AttributionのWaiver規定があったりそれはそれは複雑な規定だけど、趣旨は分かるね?

「Attribution」みなし持分認定メカニズム

で、通常のSub Cの世界におけるみなし持分は大別して「家族メンバー」「Upward」「Downward」の3つ。それにオプション規定があるので、3つ+Optionっていうのが正確かも。

家族メンバーAttribution

家族メンバーのAttributionはその名の通り、家族メンバーが直接・間接・(限定的に)みなし所有してる株式は自分が持っているものとみなして課税関係を決めなさいってもの。でも何でもかんでもAttributionしてくるわけではなく、法律で規定された関係にある者からのAttributionとなる。家族間の話しだから、他の2つのAttributionとは異なり、あくまで個人がどれだけの株式を所有してるかって話し。具体的には配偶者、子供、孫、そして両親が所有している株式がAttributionされる。

配偶者は別居していても法的に離別していないとAttributionがあり、法的に養子縁組された子供は実の子同様のAttributionがある。面白いのは孫からはAttributionされるけど、おじいちゃんやおばあちゃんからはAttributionがない点。必ずしも双方向とは限らない訳だ。おじいちゃんやおばあちゃんが孫に株式を持たせるプランニングはあり得ても、孫がおじいちゃんやおばあちゃんに株式を持たせる方向はあんまり想定されないってことなのかな。

Upward Attribution

で、次のUpwardのAttribution。これは下から上に行く方向なんで感覚的に一番分かり易いし、間接持分と重複することが多い。ただし結果として所有していると取り扱われる%は間接とみなしで同じとは限らないので要注意。家族メンバーAttributionと異なり、UpwardやDownward Attributionは個人および法人その他の主体や遺産の株式所有状況に影響がある。

具体的にはUpward Attributionは、その適用に基づき、パートナーシップ、遺産(Estate)、信託、法人が直接・間接・みなし所有している株式はそのオーナーが所有していると取り扱う規定。パートナーシップと遺産に関しては、パートナーや受益人が少数持分でも常に持分%相当がAttributionされる。信託も似てるけど、信託の場合、受益人はアクチュアリー計算に基づく持分%に相当する信託所有の株式がAttributionされる。計算面倒そうだよね。で、非課税の年金信託は適用対象外。また、税法上Grantor Trustと取り扱われる部分の信託資産に関しては、Attributionというより、元々税法上、Grantor等の資産として取り扱われるので、Grantor等が株式を所有していると取り扱われる。これはAttributionっていうよりもGrantor Trustにかかわる一般規定って考えてもいいだろう。

法人に関しては、50%以上の価値を直接・間接・みなし所有する株主に限定して、法人が同じく直接・間接・みなし所有する株式の価値に基づく持分%に相当する株式がAttributionされる。

Downward Attribution

3つ目のDownward Attributionだけど、これはその名の通り、上から降って来るんで感覚的に少し分かり難い。Upward同様に対象はパートナーシップ、遺産、信託、法人。

で、パートナーシップと遺産に関しては、パートナーや受益人のパートナーシップや遺産に対する持分%にかかわりなく、パートナーや受益人が直接・間接・みなし所有する株式は「全数」Attributionされる。似たように、信託の受益人が直接・間接・みなし所有する株式は信託にAttributionされるけど、受益人の信託に対する持分が「Remote Contingent」って認められるとAttributionはない。年金信託は適用対象外。で、受益人の信託にかかわるContingentな持分は、各信託契約に基づき認められる受託人の裁量内で最大限のアクチュアリー計算に基づく持分を計算し、それが5%以下の場合には「Remote」と認められる。信託資産のうち一部でもGrantor Trustに当たる場合、Grantor等、税務上資産のオーナーと取り扱われる者が直接・間接・みなし所有している株式は全数信託が所有していると取り扱われる。

法人に関しては、価値ベースで直接・間接・みなしに50%以上の持分を所有する株主が直接・間接・みなし所有する株式は全数法人にAttributionされる。50%超ではなく「以上」と規定される点、また仮に50%株主からDownward Attributionされる場合も、株主が所有する株式の50%ではなく全数Attributionされる点に注意。

オプションAttribution

株式を取得するオプションを所有している者は、行使したら取得される株式は既に所有していると取り扱われる。またオプションを取得するオプションとか、そのオプションとかも全て株式取得オプションとしてAttribution規定の適用を受ける。オプションAttributionと家族メンバーAttributionの双方で同じ株式がAttributionされるケースは、オプションAttributionの方でAttributionされるって取り扱われる。

Attributionに次ぐAttribution

ここまで読んで「結構広範じゃん・・・」って思うかもしれないけど、Attributionはまだ続く。適用ルールに基づくと、Attributionでみなしで所有しているって取り扱われる株式はDirectに所有していると同様、規定に抵触する限り、他の者に再度Attributionしていく。例外は家族メンバーのAttribution適用時。すなわち、家族メンバーが所有しているって理由で自分が持ってるって取り扱われる株式は、それが更に他の家族メンバーにAttributionされることはない。例えば、孫が実際に所有している株式はAttributionでおじいちゃんやおばあちゃんが所有してることになるけど、だからと言って、その株式がおじいちゃんやおばあちゃん当人のおじいちゃんやおばあちゃん(元々の孫から見ると高曽父母、ひいひいおじいちゃんやおばあちゃん)にはAttributionしない。おじいちゃんやおばあちゃんからその子供に再度Attributionしないけど、ただ、元々実際に株式を所有している孫の両親には別の家族Attributionがあるので、両親はみなし所有がAttributionされる。ただし、この家族メンバーの継続Attribution禁止は、家族メンバーのAttribution内の話しで、例えば、孫が実際に所有する株式をおじいちゃんやおばあちゃんが所有しているとみなしで取り扱われる場合、今度はその所有を基におじいちゃんやおばあちゃんが投資しているパートナーシップとかには再度Attributionしていく。

もう一つの継続Attributionの例外として、Downward Attributionを基にパートナーシップ、遺産、信託、法人が所有しているとみなされる株式は、そこから他の者に再度Attributionされることはない。例えば、マイノリティ持分のパートナーが実際に所有している株式はDownward Attributionで全数パートナーシップが所有しているように取り扱われるけど、その株式が別のパートナーにAttributionされることはない。

ちなみにS Corporationは原則パートナーシップ扱い。すなわち、S Corporationが所有している株式はS Corporationの株主がパートナーかのように持分に準じてAttributionされる。50%ルールの適用はない。ただ、S Corporationそのものの株式を他の者が所有している場合、S Corporationの株式は法人株式として、他の者の所有%が決まる。

国内のAttributionだけでも超込み入ってるけど、次回はクロスボーダー課税への影響に関して。

Thursday, September 23, 2021

バイデン増税「下院歳入委員会」法文ドラフト(2)

前回は下院歳入委員会が公表した増税案法文ドラフトの中から、いきなりオタクなポートフォリオ利子免除の条件をタイトにする法案に触れた。

研究開発費用の資産計上延期

もう一点地味目だけどインパクトがあるのは研究開発費用の資産計上の延期。2017年のTCJAで研究開発費用は2022年1月以降に開始する課税年度から、資産計上して5年償却(国外の研究開発は15年)っていう、本来、優遇されるべきと考えられていた研究開発活動相手に不躾な取り扱いが規定されてビックリだった。とは言え2022年前に議会が撤廃してくれるだろう、って一般的には楽観視されてきたけど、パンデミックや選挙とかでいつの間にか2022年が目の前に来てる。で、下院案では、これを先延ばしして2025年1月以降に開始する課税年度からとしている。またこれで2025年までには議会が撤廃してくれるだろう、って楽観視されるんだろうね。

累進税率復活

肝心の法人税ヘッドラインレートは基本26.5%って、25と28の中間値に着地させて提案されてるけど、課税所得$400Kまでは18%、$5Mまでは21%って4年ぶりに累進税率の復活。累進税率って、Controlled Groupで税率区分を配賦したり面倒なんだよね。コンプライアンス上。で、以前と同じように課税所得が$10Mを超えると低税率区分の恩典はフェイズアウト。国内法人からの配当にかかわるDRDは、DRD後の税率が現状維持されるようDRDレートが調整されるとのこと。米国企業の反応を見てると法人税率はどうでもいいから(?)、GILTIのCbC化や実効税率の引き上げはやめて欲しい、っていう感じだろう。

GILTIとFDII(Preview)

GILTIに関しては詳細を別途書かないといけないって感じだけど、歳入委員会のこのドラフトはバイデン政権の提案とチョッと違って少しマシ。国別計算になる限りマシになりようはないんだけど。具体的にはGILTI計算時に、バイデン政権は撤廃するぞ、って言ってたQBAIリターンを10%から5%に減額するとは言え温存してる。また、GILTIの実効税率がバイデン言うところの21%ではなく16.56%になったり、OECDピラー2に近づけようとする努力が見られる。ピラー2で採択されると噂される15%のグローバルミニマム税に結構近い。GILTIのピラー2化を世界に演出することで、各国を牽制してるように感じられる。

GILTIバスケットのFTC対象CFC法人税が80%から95%に増額されたんで、GILTI制度化のグローバルミニマム税率は実質、17.43%となる(16.56/95%)。

FDIIも控除額が引き下げされる、すなわちFDIIの恩典が減少する、とは言え制度はそのまま温存されて首の皮一枚で生き延びてる。GILTIのルーティン所得計算時の有形資産ルーティンリターンが5%に低減された一方、FDIIは10%のまま。今後の審議でFDII自体いつ廃案って方向になっても不思議はないけどね。GILTIのFTC対象法人税の95%化やQBAIリターンの%差異の関係で、GILTIミニマム税率とFDII実効税率が乖離してしまい、2017年のGILTI・FDIIを対で導入した際のLevel Playing Field化が壊れてしまっている。ということは「FDIIはGILTIの裏返しです」って言う理由でFDIIは輸出助成の悪法ではない、っていう主張がチョッと通り難くなるってことかもね。GILTI増税、特にGILTIのCbC化は米国多国籍企業にとって大問題なんで、別特集しないとね。

バイデン政権のグリーンブックでは、FDIIがあるから有形資産が国外に行ってしまうというような懸念が強調されてるけど、実務経験が乏しい職員室での議論みたいに聞こえ、無形資産が米国に戻って来ている一因だと思われるFDII温存はアメリカのため。実際に一旦国外に出したIPを米国に持ち帰る取引も発生していた。米国から国外にIPをMigrateさせて367(d)でみなしロイヤルティーストリームで譲渡益認識してた状況で、このIPをRe-Domesticationで米国に持ち帰ったりするとテクニカルなチャレンジが多い。みなしロイヤルティーはIPが米国に帰ってきたからって無くならない一方、対応する費用控除は米国に戻ってきたからって急に認められる仕組みにはなっていないんで、制度上の不備としか言いようがないけど、ドライ所得が出ておしまい。それはないでしょ、ってことで連結納税グループ内取引の規定に基づくIRSの裁量に訴えたり、苦労が多い。この点は367(d)のテクニカルな問題として改正、または財務省規則に基づく救済策が望まれる。その場合、Outboundさせた張本人の納税者そのものに戻ってこないといけないのかとか、同じグループだったらOKなのかとか、身元に関係なく米国に戻って来ればいいよってなるのかとか、結構面白そう。

で、具体的には、現在の37.5%のFDII控除が21.875%に引き下げられる。21.875%は元々TCJAでも2026年から自動的にそうなるはずだったので、増税と言ってもどうせそうなるものが4年前倒しになった、って考えれば諦めも付くかもね。ただし、法人税率自体が21%から26.5%に引き上げられるんで、FDIIの実効税率は13.125%から20.7%にアップ。

支払利息

GILTI増税と並んでショックをもって受け止められているのは、支払利息のグローバル・レバレッジに基づく制限。これは日本企業の視点からはなかなか想像できないほど痛い。米国多国籍企業はレバレッジをどこに国にどれだけ導入するか、っていうグループ管理を科学的に徹底してきた。2017年前は全額米国っていうのが常識で、それ以上考える必要はないくらいだったけど、2017年TCJAでモデリングに変動があった。956の意味が低下したりした点も含めて、まだまだ最適なレバレッジ場所を見直し中だった矢先の新規制。OECDアクション4に類似するグローバルEBITDAベースの平準化規制だ。でも、これ導入するんだったらATI(国内EBIT)ベースの既存Section 163(j)を撤廃すればいいのに。両方共存っていうのはやりすぎでは。

で、新規制だけど、連結財務諸表に米国外法人が含まれる多国籍企業に関して、グローバル・グループのレバレッジを基に米国における支払利息の損金算入が制限される。以前から提案され続けてる規定だけど、まず、連結財務諸表グループ全体のネット支払利息をEBITDAベースで米国に配賦。この配賦額を分子とし、米国主体が財務諸表上、計上しているネット支払利息額を分母として制限枠%を算定する。米国に配賦される金額が、実際に米国主体が計上しているネット支払利息を上回る場合には制限はない。

で、米国にレバレッジを集中させている米国企業は、分子が分母を大きく下回ると予想され、制限枠%は大概のケースで100%を大きく割り込むだろう。この制限枠%に110%を掛けた%が最終的な制限%となり、当制限前の申告書で認識される支払利息に最終制限%を掛けた金額が損金算入の上限額となる。この制限は過去3年間(当期含む)でネット支払利息が$12Mを超えるケースにのみ適用。で、損金不算入額は5年間の繰り越し可能。で、現状では繰り越し期限がなかったSection 163(j)にも同じく5年間の繰り越し期限制限が導入される。

M&A時にどこでレバレッジを認識させるかっていうのはディープな検討だけど、956が245Aの関係でなくなったようでなくなってないようでCFCによる保証とか結構今でも頭が痛い。モデリングが更に複雑化するね。

パートナーシップと163(j)

163(j)と言えば、ここからは吉報だけど、2017年の税制改正で導入された新Section 163(j)はパートナーシップそのものに適用されている。パススルー主体そのものに直接制限を加える、っていうことで、とてつもない複雑な適用規則を要してた。11ステップの計算とか。それをパートナーレベルへの適用に変更してくれるそうだ。可決されたらコンプライアンス的にはグッドニュース。5年間と繰り越し期間限定と引き換えだね。

次回はBEATまたはDownward Attribution再撤廃のどちらか。

 

Tuesday, September 14, 2021

バイデン増税「下院歳入委員会」法文ドラフト(1) まずはオタクな規定から

今、アメリカは9・11明けの月曜日13日だけど、同時テロから20年の月日が経ったんだね。「It was 20 years ago today・・・」(分かるね?この歌詞)。

で、そんな中ついさっき下院歳入委員会が、予算調整法に基づく増税審議のたたき台となる法案ドラフトを公表した。週末に内容の一部がDCで出回ってて、身の丈に余る巨額のお金を使うため、「法人税率は26.5%に」とかWSJ等のプレスで報道されてたけど、詳細な内容は結構面白い。グリーンブックや上院財政委員会の提案との比較で、かなり実務的というか、現実的な提案内容、っていう第一印象。大増税って点はもちろん同じ。

ちなみに憲法上、歳入に関して大きな権限を持つ下院の歳入委員会の提案とは言え、最終的な法律は今後の審議を通じてどんな形になるか全く不明だから、「こんな風になることもあり得るんだね~」程度の参考情報として捉えておく必要がある。余り一喜一憂しないようにね。2017年の時もDBCFTのボーダー調整とか(結局廃案)、下院案の輸入使用税とか(BEATに落ち着く)、結局実現しなかった画期的な改定提案にアレコレ神経を費やした苦い経験を忘れないように。

で、今日は余りメインストリームのメディアは取り上げないようなオタクだけど、米国事業や米国投資検討時に重要な提案から。

ポートフォリ利子免税の条件がタイトに

いきなりオタク過ぎる条文から入るけど、日本企業のように米国外投資家にとっては最重要な提案のひとつとなるポートフォリオ利子免税に関して。債券投資のヘッジファンドに投資を検討したことがある読者の方とかなら知ってると思うけど、国外からアメリカにポートフォリオ投資する際に万一ECIになって申告が必要になるのを嫌う外国投資家、またはDebt FinanceのUBTIを嫌う非課税団体(州のペンション以外)はブロッカーのケイマン法人フィーダー経由で投資するようにストラクチャーされている。パラレルファンドだ。

源泉税はケイマンフィーダーの敵

Trading ExceptionとかでUSTOBがないっていう前提で、その際、唯一の米国税金リークになるのが配当に対する源泉税。当然、ケイマンとアメリカには条約がないから放っておくと30%の源泉税だ。ファンドの投資戦略によってこの点は痛かったり、痛くも痒くもなかったりするけど、何年か前までこの点を気にする投資戦略を持つファンドや米国外投資家は、Notional Principal契約を利用することで実質配当相当の金額を米国外源泉所得として受け取ることで非課税として手当してきた。だけど、配当見合いのデリバティブ所得は実質配当と同じなんだから、源泉税対象っていう法律が導入されてあからさまなトータルスワップみたいな迂回策は機能しなくなってしまった。この法律自体、Cascade効果その他、結構奥深いもので有効となるタイミングは一部遅れてるけどね。Security LendingとかREPOとかも含めてエキゾチックな源泉税の話しはいつかディープに特集してみたいもの。それにしても米国のタックスは特集したいExciting(?)なトピックが多すぎて困るね。う~ん、The Beatlesが言うように一週間が8日だったりしたら1日は北欧のホテルにでも行って缶詰になってリサーチするんだけどね。何それ?

で、Notional Principal戦略に網が掛けられて30%の源泉税が痛い場合、日本のような条約国の投資家は条約を適用することを考える。日米租税条約では投資家が受け取る配当は10%源泉だし、他国の多くのケースでも15%だから、30%よりマシ。そんな理由でケイマンフィーダーを日本法令の視点から見てパススルー(FTE)になるケイマンLPSにしたり、Reverse Hybridを利用することになる訳だ。

利子の源泉税は?

で、配当の話しはよく聞くけど、利子所得の源泉はどうなっちゃうの、っていう点だけど、これは条約ではなく米国内法で源泉が免除されるのが一般的。ポートフォリオ利子免除規定だ。いくつか要件があるけど、ヘッジファンド系の債券投資だったらケイマンフィーダーの法人がW-8を債務者に提出する、またはその下にケイマンパススルーのマスターファンドが存在する場合には、そこ経由で適切なW-8を出せば大概において問題ない。

ポートフォリオ利子免除は銀行が銀行業として融資するケース、また、銀行でなくても10%の資本関係にある関係者からの利子所得には適用がない。この10%は現時点では、議決権(パートナーシップの場合はCapitalまたはProfits持分)だけで判断するんで、ケイマンフィーダーが債務者から10%以上の価値を持つEquityを受け取る場合には議決権ナシの優先株式を利用したりしてた。10%を最初から受け取るケースは分かり易いけど、Distressファンドとかがワークアウトを通じてEquityを受け取ったりするケースは要注意。また、ポートフォリオ利子免除はCFCは利用できないけど、Downward Attributionとかの影響で期せずしてケイマンフィーダーがCFCになっちゃったりする大ピンチ。Attributionを通じて自分で自分の株式は持てない、っていう部分をどう解釈するか、っていう点が大きいけどね。

クロスボーダー課税に外国人から米国人にDownward Attributionが適用されるようになったのは2017年の税制改正からだけど、立法趣旨はインバージョン後のPMIで米国CFCを米国傘下から外す阿漕なプラニングに網を掛ける、みたいな狭義なターゲットを念頭に置いてのものだった。だけど実際に可決された条文はDownward Attribution禁止を完全撤廃してしまったんで、そこから派生する影響や新たなプラニング機会の創出効果、は絶大なものだった。直後に元々の趣旨を反映した狭いターゲットとした法文修正案が出てたけど、米国議会は機能不全だから可決されることなく4年が過ぎた。今回の法案ではDownward Attributionにかかわる修正が提案されていて可決されれば無駄な苦労の多くが無くなるんだけどね。

ポートフォリオ利子免除条件厳格化

で、今回の下院歳入委員会の提案には、ポートフォリオ利子免除不適用の10%の判断に議決権だけでなく、価値も加味するっていうもの。これは「Disjunctive」、すなわち「Or」なので、優先株とかの議決権がないEquityでも価値が10%行ったらポートフォリオ利子免除の適用はできない、ってことになる。議会もいろいろ考える、っていうか納税者がやってること良く知ってるよね。感心。

次回はR&Dクレジットや163(J)とパートナーシップに関して。