Friday, June 19, 2020

BEPS 2.0ピラー1の終焉

Safe Harbor提案の辺りから暗雲が立ち込めていたピラー1に米国が引導を渡した。

6月17日にUSTR(米通商代表部)はピラー1策定の交渉テーブルへの参加打ち切りを正式に表明した。交渉が行き詰まり、また想定外の新型コロナウイルス対策に各国財務省が追われる中、これ以上のデジタル課税のグローバルコンセンサス検討は現時点で不要不急と断じた。もともとどちらかと言うとタカ派のUSTRのライトハイザー代表の下院歳入委員会での発言だ。

6月に入り、ピラー1、およびピラー1で解決しようとしていたDSTを取り巻く環境は一気にあわただしくなっていた。6月2日にはOECDのFiscal Affairsの議長を務めるMartin Kreienbaumドイツ財務長官がBEPS 2.0の交渉はコロナ環境下でもオンタイムで進んでいる点を強調し、7月から10月に延期されたとは言え、ベルリン会議で野心的に広範なピラー1も含め、130か国のコンセンサスを取り付けると自信の程をのぞかせていた。同日、米国ではUSTRがDSTを導入したり、検討している10か国(EU含む)に通商法301条に基づく制裁措置発動の検討している旨を発表。絶妙のタイミングだ。

6月12日にはMnuchin米国財務長官が、フランス、イタリア、スペイン、英国の各財務省にピラー1の交渉は行き詰っているとコンセンサス作りに悲観的な見方を伝え、かと言って独自のDSTを導入しようものなら、報復措置を取ると通告している。

書簡を受け取った4か国が共同返信を検討していた矢先の17日にピラー1からの離脱をUSTRが確認した流れとなる。新型コロナウイルスの影響で、デジタル企業以外の多くの「Consumer Facing」企業が業績不振に見舞われる一方、大手デジタル企業はテレワーク等の影響で一般的に逆に好調なケースが目立つ。コロナ対策で歳出が増加する一方、景気低迷で税収減は必至。米国のデジタル企業の超過利益に課税しよう、という動機は以前にも増して高まり続けている。デジタル企業への課税はイコール米国ハイテク企業への課税となることから、米国としてはそんな動きに嫌気がさしていても不思議はない。

米国は新型コロナウイルス対策で各国忙しいのだからピラー1などに時間を費やしている場合ではないと主張する一方、欧州等は新型コロナウイルスでデジタル企業の優位性が更に高まっている今こそ、ピラー1の完成を急ぐべき、と同じ新型コロナウイルスを理由としているにもかかわらず、180度異なる結論に至っている。

Amount Aという名目で、各国が超過利益をPEの存在なく課税所得として吸い上げる相手は大概において米国ハイテク企業。そんな想定のピラー1に米国が参加しないのでは、ピラー1は終焉したに等しいけど、翌日、アンヘル・グリア OECD事務総長は「継続してフォーカスを失わないように」的なコメントをして今後のウルトラCに僅かな期待を残しているともとれる状況。また、フランス、イタリア、スペイン、英国の財務長官たちは共同声明を出し、米国のピラー1からの離脱は「Collective Failure」であり、欧州に対する「挑発的」な行動だと非難している。

ピラー1と米国は最初からこうなる運命だったと言ってもいい。先は見えてたよね。Consumer FacingだのとSugarcoatはしてたけど、ピラー1は敢えて言ってしまえば、米国の大手デジタル企業の超過利益に多くの国が課税したいがため、そのためのルール作りだから、米国が良く思うはずはない。しかもこの超過利益は本国である米国で課税できていないケースがほとんどだから、他の国に課税されるのはなんだかな~、という認識もあっただろう。米国でIFRS導入論が存在した際、ロードマップとか言って同調するフリをして最後に撤退したのと似てる。今回もSafe Harborとか難題を突き付けて、どこで梯子を外すのかな、と興味深く見てたけど、新型コロナウイルスの混乱を一つの理由にこんな形で実行するんだね。OECDってその昔はOEECという第二次世界大戦後の欧州振興のための存在。税務面でグローバルリーダーシップを発揮できていない国連に代わり、いつの間にか税務のグローバルスタンダード策定機関となり、Inclusive Frameworkをもって、本来、発展途上国の代弁者であるべき国連に完全に取って代わってしまった。米国からしてみると、欧州の回し者というか、代弁者的な存在という懐疑心は払拭できていないだろう。

そんな米国も、例によって、同じBEPS 2.0でもピラー2には寛容で、以前のMnuchin財務長官がOECDに宛てた公開書簡でもサラッと「ピラー2はご自由に」という感じで記載されていた通り、今回もそのスタンスは変わらず、ピラー2には反対しないそうだ。既にGILTIとBEATがあるからかもね。前から言ってる通り、GILTIとピラー2は全く異質だけどね。GILTIはFDIIと対で考えないといけない制度で、その意味でもグローバル通算が基本。もしピラー2が国別とか地域別のブレンディングになっても、FDIIとの対だったり、GILTI控除とかFTCのことを考えるとGILTIがそうなるとはチョッと想像し難い。ただ、GILTIにもHigh Tax Exceptionが18.9%で適用できる規則草案があり、ちょうど今週、最終規則がOIRAの審議を通ったという話しもあり、その観点からは国別の税率は把握して、国毎の実効税率プラニングは重要になる。

ピラー1の設計はテクニカル面で大いに興味があったので、最終回を見る前に途中で終わってしまったドラマのようで、チョッと残念。でもまた手を変え品を変え別者が登場するだろう。

Friday, May 29, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (13) AMT NOLは強制的に「ゼロ」化

NOL Carrybackやその手続き、Carrybackでトリガーされる多くの追加検討事項に関してはCARES Act可決以降、何回かに分けて触れてきた。興味ある方はぜひ過去のポスティング「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 」(2)(4)(5)(6)(8)(9)を読んでみて欲しい。そこで何回も触れている通り、複雑な検討の多くは5年間のCarryback期間にTCJA前後の課税年度双方が含まれることに起因するケースが多い。

そんな複雑な取り扱いの一つにAMTがある。TCJAで、AMTの法人に対する適用は2018年以降撤廃されている一方、Carrybackする先の課税年度が2017年以前の場合、それらの過年度には法人にも未だAMTが適用される。NOLをCarrybackするってことは通常の課税所得を減額するってことだから、その当然の結果として、AMTに抵触したり、元々使用していたAMTクレジットが使えなくなるケースが続出することになる。AMTの算定時にもNOLの使用は認められるけど、計算は複雑で、NOL発生年度の数字を基に「AMTベースのNOL額」に計算し直さないといけないし、Carrybackする先の課税年度のAMT計算時には、NOLの使用可能額はAMT算定の基となる暫定AMT課税所得の90%が上限となる。う~ん、相変わらず面倒。しかも、複雑な計算をしてAMTが発生したり、過去に使用していたAMTクレジットが使えなくなったりする結果、それらがドミノ式にCarryback期間内の後年に繰り越され、使用し切れないクレジットは、CARES Actで加速還付が可能という最終的にはゼロサムゲームとなる。超面倒でなんかまどろこしい。

で、法的には、すなわちInternal Revenue Code的には、面倒だけどこれらのステップを踏まざるを得ない、っていう点は比較的明確で、テクニカルには余り異論の余地はない。2018年以降、AMTっていう制度自体が法人に不適用になっているとは言え、2017年以前にNOLをCarrybackして、過年度のAMTを算定し直す際には、その目的で使用するNOLは、通常のNOLではなく、AMTのルールを適用して算定するAMT NOLでなくてはいけない。Secton 56だね。でも、AMTのルール自体、2018年以降、法人には存在しないんだから、調整額はないのでは、って思うかもしれないし、それも一つの見識ではあると思うけど、たぶん厳密にはそうではない。というのは法人にAMTは課されないけど、AMT算定時に加減算が求められる「調整額」はそのまま法的に2018年以降も存在している。唯一例外はACE調整で、これは撤廃されている。結果として、通常のNOLにACEを除く調整を加えて、AMT NOLの金額を算出し、それをCarrybackして、Carryback期間の古い課税年度から順々にAMTを計算、後年にクレジット、そしてクレジットし切れなければ、2018年と2019年に開始する課税年度で還付、さらに選択をすれば2018年に開始する課税年度に全額還付となる。

っていうのが法律なんだけど、昨日(2020年5月28日)、CARES Act下で禁じ手乱発的になりつつあるIRSのFAQがまた公表され、簡易措置が規定された。IRSが公表した当FAQによると2020年6月1日以降にファックス(覚えてる?デジタル送信!)するForm 1139では、AMT NOLはナンと「ゼロ」と取り扱う、って言い切っている。え~、そんな法律どこにあるの、って感じではあるけど、まあ便利だから文句言う納税者はいないよね。

FAQに基づく構想は、2018年以降の課税年度にはAMT NOLはない、という大胆なもの。法人納税者にしてみると、2018年以降のNOL発生年度に関して、適用のないAMTを想定算定してCarrybackしたり、Carryback対象年度に90%制限を加えて2017年以前のAMTを計算したりする手間が省けるので、ゼロサムゲームってことを考えると、単純に作業が若干簡素化され、ありがたい助け舟なのは確か。AMT NOLをゼロってみなすことから、より多くのケースでCarrybackする先の課税年度でAMTが発生することになり、それらは結局はAMTクレジットとして還付される。FAQって法的効果がない点が気になるけどね。

で、FAQでは、ついでにゼロサムゲームを一枚のForm 1139で完結できるよう、Carrybackを理由にAMTが増えたり、過去に使用していたAMTクレジットが使えなくなって後年に繰り越されたりする処理も同じForm 1139内で処理できる点を再確認している。さらに、クレジットを使えきれなくて、CARES Actで規定される「2018年に開始する課税年度で全額残りを還付申請」する選択を行う際も同じForm 1139上で処理するできる、って規定してくれている。Form 1139に記載するべき選択にかかわる文言も公表してくれている。ただし、同じForm 1139上でクレジットを処理できるのは、クレジットをCarryback期間内に使用する、または2018年に開始する課税年度で残高全額を還付請求するケースのみ、とも言っている。まあ、敢えて選択しない理由も余り見当たらないので、多くの法人納税者がこの処理をすることになるんだろう。超法規的措置って言うと大げさだけど、IRSもなかなかやるよね。

Saturday, May 16, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (12) 「QIP Glitch」(適格内装資産とボーナス償却(2))

チョッと間が開いてしまったけど、前回のポスティングでは、CARES Actに盛り込まれたTCJAのTechnical Correctionのうち、適格内装資産の償却法に関して話し始めた。結果として2018年1月1日以降に事業用途に供された適格内装資産は過去遡及する形で償却方法が変わってしまったことになるけど、そんな調整をどうやってすんの?っていうのが今回のメインテーマ。

過去遡及して償却法を変更する面倒な手続きの話しに行く前に、一点超細かい点だけど、サワリだけ触れておきたい点がある。2018年1月1日以降に事業用途に供される内装でも、2017年9月27日以前に取得されているものは、TCJA以前のボーナス償却規定が適用になるので要注意という点。また2017年9月28日以降に取得され、2017年12月31日までに事業用途に供された内装は、特別に独自のクラスを構成している点も注意。通常、償却の話しは事業用途に供された日が気になるけど、取得日も重要なことがあるんで気を抜かないように。この組み合わせの話しは面倒な割に多分適用件数は低いと思われるので、こんなパターンで取得や事業用途に供されている内装があったら専門家に相談するようにね。

Section 163(j)もそうだけど、適格内装資産にかかわる過去遡及手続きを複雑にしているのが、適格内装資産を含む税務上の償却を取り巻く複数の選択。まず、原則に戻って即時償却なんていうものが存在しなかった時代には、有形資産は大概においてMACRSっていう加速償却を適用して税務上の償却費用を計算するのが普通の姿。MACRSは、前回のポスティングでチラッと触れたConvention制度があったり、多くの動産が200%定率だったり、経済耐用年数とは直接関係ない政策的に規定される法廷償却年数や方法に基づいてCapex、資本的支出の費用化を規定する税法の世界だけに存在する償却法だ。なんで、MACRSの「CR」は「Cost Recovery」ではあるけど、MACRSにDepreciationを表す「D」は入っていない。このことからも、MACRSはいわゆるDepreciationではなく、あくまでも資本的支出の費用化という概念。米国税法の構成的には、Section 167で事業所得を算定する際に償却費用すなわちDepreciationの計上を認め、その上で、金額は有形資産に関しては大概においてSection 168のMACRSを適用して決める、っていうもの。

で、このMACRSが嫌な場合、特別な選択をすることで、その課税年度に事業用途に供されたMACRS対象資産をMACRSではなく、ADSというMACRSより長い償却期間で定額償却する不利な方法を選択することができる。元々ADSっていうのは資産の使用場所が米国外だったり、非課税団体にリースしてたり、加速償却を規定するMACRSの適用が政策的に適切でない状況に適用が義務付けられるものだけど、AMTのSubsetだったACE(覚えてる?)の算定時に使われたり、今でもE&Pの計算時に適用されることから、結構頻繁に登場し侮れない存在。さらに、TCJA後の世界ではFDIIやGILTIのみなし超過利益算定時のみなしルーティングリターンをADSベースの税務簿価に10%を掛けて算定することから、各社、ますますMACRSと共にADSベースの資産管理が求められる。もちろんこれらMACRS、ADS共に会計上の償却とは異なるので、一つの資産でも複数の簿価が存在することになる。で、ADS選択っていう制度は、ADSの適用が義務付けられるケースとは関係なく、通常の課税所得算定時にMACRSを適用できるにもかかわらず、課税年度内に事業用途に供されたMACRSの資産クラス別に自らADSを選択すること。ADSは一度選択すると取り消し不可能。One way streetだ。

で、そんなMACRSに加え、設備投資減税として、歴史的に時限立法でいろんなパターンの即時償却が規定されてきてるけど、TCJAでも100%即時償却が規定されている。で、100%の即時償却が嫌な場合には、課税年度に事業用途に供された資産に関して自ら即時償却を適用しないという選択がある。これも税法に規定される資産クラス毎に選択できる。当選択をすると、普通にMACRSで加速償却することになるけど、これに更に上述のADS選択を組み合わせることも可能。また2017年9月27日を含む課税年度に限定された話しだけど、TCJAの100%即時償却ではなく、それ以前の50%ボーナス償却を選択することもできる。確かこの選択だけは資産クラス毎ではなく、その課税年度に事業用途に供された資産全てに関して選択が必要だったはず。

もうひとつ、即時償却の対象となるフルーツやナッツの実がなる植物が、既に栽培されているケースにも特別な選択があるけど、余りにオタクなのでこの部分は割愛。何がフルーツで何が野菜かってよく議論になるよね。ロビイストが暗躍してフィルムとかナッツとかが即時償却の対象となっているのは面白いけどややこしいね。

で、過去遡及にかかわる手続きだけど、適格内装資産の償却は以前のポスティングで触れた不動産業や農業にかかわる支払利息の損金算入制限、Section 163(j)、の適用除外選択と密接に関係する。したがって、不動産業や農業がSection 163(j)の適用に関して新たな選択をしたり、過去に行った選択を取り消したりする結果として変更される適格内装資産の償却は、Section 163(j)に関して別途公表されている選択手続きの枠の中で処理する必要がある。これらに関しては「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (7) Section 163(j)各種選択手続ガイダンス」を参照して欲しい。また、Section 179等で即時償却規定とは別の形で事業用途に供された課税年度に既に費用化されている適格内装資産に関しては、CARES Actの影響はなく、そのままの取り扱いとなる。Section 179は、個人的な感覚では、どちらかと言うと個人事業主っぽいノリのオタクな規定だった。それがTCJAで即時償却が中古資産にも認められるようになり、資産取得型のM&Aのモデリングに大きな影響を与えてるけど、中古資産でも即時償却の対象となるかどうかの判断時にSection 179が引き合いに出され、急に脚光を浴びた観のある条文。

で、法的に過去遡及をどのように整理するか、っていうアプローチだけど、まず忘れていけないポイントは、CARES ActでTCJAの法文が修正される前の状態では、適格内装資産の償却は法的に39年定額、または納税者のADS選択で40年定額しか認められなかったという点。この点に関して納税者側に何の裁量も存在しなかった。それが、CARES Actによる法文修正で2018年1月1日に遡り、逆に原則、即時償却、納税者が即時償却の不適用を選択すればMACRSの15年定額、さらにその上でADS選択する場合には20年定額しか法的に認められなくなったという点。したがって、当時は法的に仕方なく39年や40年で償却し始めているケースでも、これをそのまま継続するっていうオプションは存在しないことになる。つまり、償却にかかわる処理変更が「強制」されることになる。過去に法的に適用が強制されていた39年や40年の償却は現時点で「法的に容認不可処理法」となり、即時償却等が急に「容認処理法」に生まれ変わる。面倒~。。

法文修正に伴い、容認不可処理法から容認処理法に変更する方法は、二通りあり、修正申告(BBA適用パートナーシップに関してはAARを含む点は以前からのポスティングで触れている通り)をする、またはこれから提出する2019年等の申告書で税務処理変更願い、Form 3115、を出し、修正申告することなく累積影響額を一気に調整する方法、のいずれでも可としている。処理変更の道を選択する場合、通常だと容認不可処理法は2年続けて適用していないと処理法として確立したことにならないけど、今回は特別に1年だけ法文修正前の方法で処理していても処理変更対象にするとしている。最初、財務省のガイダンスを読んだ際、「1-Year QIP」だけ別途規定があり、修正申告と同時に処理変更でもOKと、他の状況と同じ扱いを敢えて別に規定しているのが不思議だったんだけど、2年間適用していないことにかかわる手当なんだろう。いろいろとよく考えてあるね。

次に過去遡及の選択だけど、2017年9月27日を含む課税年度に限定の50%ボーナス償却選択やフルーツとかナッツの償却の話しは割愛して、ADS選択や即時償却の不適用選択にフォーカスしておくと、2020年4月16日以前に提出されている申告書に関して、今から不適用選択を希望する際には、こちらも法文修正後の強制処理法をそのまま適用するケース同様に、修正申告を提出するか、今後提出する申告書にForm 3115、処理法変更願い、を添付するか、いずれの方法で、不適用を選択することが認められる。

逆に過去にこれらの選択をしてたけど、選択を取り消したいケースだけど、即時償却の不適用を選択していたケースは、新規に過去遡及して選択するケース同様、修正申告または処理法変更願いのいずれかの方法で取り消しが認められる。通常のMARCSの代わりにADSの適用を選択してたケースで、やっぱり普通のMACRSに戻りたいケースの選択取り消しは修正申告を通じてのみ可能。これらの選択は、通常だったら一旦選択すると取り消し禁止だけど、今回は例外。う~ん、複雑。申告書作成大変そう。

Saturday, May 2, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (11) 「QIP Glitch」(適格内装資産とボーナス償却)

米国の大概の州で強制されていたロックダウンも一カ月半を超え、その間、多くの米国市民が、自由を奪われるとどんなことになってしまうのか、っていう怖さを垣間見て、日ごろ当たり前のように享受してきた自由やさまざまな経済活動の恩典、の有難さを再認識してることだろう。個人の自由は米国憲法で保障されていて、米国では当たり前の権利のように勘違いしがちだけど、実は日頃から大切にし、感謝し、市民個々の努力で守っていかないといけないPriviledgeだということ。

SBAローンにしても、IRSの給付金手当にしても、最後は人間が規則を決めて司る訳で、$3Tのお金をこれだけ無理やり短期間に拠出し、管理しようとすれば、予期せぬ不具合、Glitch、がいろいろと起こるのは不可避。IRSだって、自分たちもロックダウンしてる最中に、大慌てで給付金を銀行に振り込んだり、小切手を発行したりしている。当然その過程ではいろんなGlitchが発生することになる。既に亡くなっている方の口座に入金されたり、逆に待っててもなかなか来なかったり、金額が予想と違ったり、公的年金受給者が扶養家族をオンラインで登録する時間が短すぎたり、とかいろんな不具合をメディアが報道している。

IRSや財務省は、彼らの手元に存在する情報、既存のシステム(相当古そう・・)を使って最大限の努力に基づき、半狂乱というか我を忘れて給付金を交付しているって言ってもいいような状況じゃないかな。給付金の受給者を正確に特定した後に交付するシステムを構築しないといけないんだったら、交付までに長い時間が掛かる。年間換算でQ2のGDPは下手したら40%ダウン、失業保険申請者はわずか4~5週間で3千万人と言われている現状、何をするにしても完璧な対策はない訳だから、バランスのいい施策をスピーディーに展開するしかない。

どんな策を取っても反対派はいて、今の米国におけるイデオロギー的な二極化を考えると、結局は何をしても約半数の反対意見があると想定され、そんな中での意思決定は、医学、科学、経済、有権者の意見は当然よく聞くとしても、最後はリーダーがそれらを総合的に検討した上で最終決定して、Move Onするしかない。全会一致の決定にはなり得ないので、リーダーとして、なぜそのような施策を取ったのか明確に説明し、異論がある場合には法の支配下で、市民が議論すればいい。ヘルスケアの受け入れ体制がとりあえず確保されたと言われている今、次なる課題は経済活動の再始動に移りつつあるけど、今後の施策にも思わぬリスクやGlitchは必ず存在する、っていう不可避の前提をリーダーが認め、市民も受け入れる必要がある。でないと何もできないので。新型コロナウイルスは、もちろんウイルス自体が恐ろしいのはそうなんだけど、9・11とか過去の危機との比較で、際立って異なる環境下での危機だなと感じるは、広範なインターネットアクセスやソーシャルメディアの存在。こういう環境下で迎える初めての大ピンチという点で、対応がより複雑、場合によっては困難になっている気がする。

で、Glitchといえば、「QIP Glitch」。何がGlitchだったかというと、Qalifiied Improvement Property、すなわち適格内装資産は、TCJA時の意図的には15年の耐用年数資産となり、かつ100%即時償却の対象となるっていう予定だったにもかかわらず、TCJAの法文ストラクチャーの単純ミスで、他の構造物同様、39年の定額償却のみの対象となってしまっていたという点。昔、小学校の頃、算数のテスト対策時に、せっかく本当は分かってるのに、単純ミスで点を落とすのは一番バカバカしい、って教わったのを思い出す。

TCJA可決直後から認識されているエラーだったんだけど、法文は法文。解釈の余地はなく、2018年1月1日以降に事業用途に供された内装は39年で粛々と償却することになり、小学校の算数のテスト対策じゃないけど、本当に一番バカバカしい結果となっていた。この手の法文エラーは、本来、比較的速やかにTechnical Correctionと呼ばれる法文修正法を可決してさっさと手当するのがベストなんだけど、TCJA自体、予算調整法という特別な手続きを経て共和党のみで可決した経緯があることから、通常の可決法で通過させないといけないTechnical Correctionに民主党が一切手を貸さず今日に至っていた。で、2年3カ月経った今、新型コロナウイルスという共通の敵が現れ、ようやくこの部分のTechnical CorrectionをCARES Actに忍ばせることができたという沿革。

Cares ActにはNOL Carrybackとか他にもTCJAに対するTechnical Correctionが含まれてるけど、Technical Correctionというのは法文があたかも元からCorrectionされた文言で制定されていた、という効果を持つ。したがって、適格内装資産は、既に39年で粛々と2年超定額償却してきたものが、実は2年前に即時償却が可能だったという変なポジションとなる。しかも、即時償却の不適用を選択する場合も、法律上39年資産ではない訳だから、39年で償却し続ける訳にはいかず、過去2年の取り扱いは間違いだったということになり、税務処理変更に基づく再計算が求められる。しかも、CARES ActはNOLのCarrybackや、Section 163(j)の計算を過去遡及して変更していて、多くのケースで各変更の適用に納税者による選択権が規定されているので、各規定の選択法の組み合わせは無数(?)っていうと大げさだけど結構あって、納税者側の検討は複雑怪奇となる。

特に、適格内装資産が多額になりがちな不動産業者は、Section 163(j)の支払利息損金算入制限の不適用を選択する際、内装を含む一定の資産に関してMACRSや即時償却を放棄するっていう代償があった。その場合、内装はADSと呼ばれる40年償却となる。普通でも39年だったら別に40年になってもあんまり大差ないから、だったらSection 163(j)の適用がない方がいいじゃん、って思ってたら今となってこの始末。しかもTechnical CorrectionによりADS自体も40年ではなく20年になっている。不動産業者に特化した話は「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (7) Section 163(j)各種選択手続ガイダンス」で若干詳しめに話しいるんで、興味ある方は覗いてみて欲しい。

で、QIP GlitchがCARES Actで修正されたことにより、上述の通り、適格内装資産は通常のMACRS目的では15年資産、ADS目的では20年資産となる。双方とも定額償却。また15年資産となるので、Mid-Month Conventionではなく、Half-Year Conventionとなる。最終四半期に40%超の資産がRear-loadedされる形で事業用途に供されるとQuarter Conventionになるのは通常通り。Conventionは米国で申告書作成したことあれば誰でも知っているルールだし、やったことなければ知らないだろうし、知っててもしょうがない類の話し。さらに通常の耐用年数が15年となることから、即時償却の対象となる。

何が適格内装資産に当たるかって言う肝心の定義だけど、CARES Actによる法文修正前の段階では、「商業用建物内装のうち、建物自体が事業用途に供された後に加えられる造作」とされていた。チョッと日本語ぎこちないかもしれないので誤解ないように原文付け加えておくと「any improvement to an interior portion of a building which is nonresidential real property if such improvement is placed in service after the date such building was first placed in service」。CARES Actはこの定義の「improvement」の直後に「made by the taxpayer」という重要な一言を加えている。すなわち、納税者自らが行うリフォーム等でないと適格にはならなくなってしまった。っていうことは、例えばNYCでオフィスビルを$500Mで購入して、そのコストのうち、$50Mを内装に振り分けても、バイヤーは自分で内装を造作した訳ではないので適格内装資産には当たらないことになる。納税者自ら造作というのは、言うまでもないけど、納税者が実際に腕まくりして梯子に上ってペンキ塗ったり、ダクトをセットアップしないといけないという意味ではなく、実際の作業は業者等に発注するんだろうけど、納税者の支出でリフォームする必要があるってこと。言い換えれば、既に内装が造作されている商業施設を後から取得して、取得コストの一部が内装に帰属するだけでは適格内装資産にはならない、ってこと。

そんな訳で、2018年1月1日以降に事業用途に供された適格内装資産は過去遡及する形で償却方法が変わってしまったので、この調整をどのように行うかっていう面倒な課題が生じる。この点は次回。

Sunday, April 26, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (10) Section 163(j)改定にかかわる選択

少し前に「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (7) Section 163(j)各種選択手続ガイダンス」で、CARES Actで緊急に規定されたSection 163(j)の緩和措置 のうち、不動産事業に認められている免除の新たな選択、取り消し等の手続きに触れた。今日は肝心のSection 163(j)そのものにかかわるCARES Act絡みの3つの選択に関して。

まず、CARES ActによるSection 163(j)の緩和措置をサラッとおさらいしておく。

詳しくは「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (3) Section 163(j)」を参照して欲しいけど、暦年2019年中または暦年2020年中に開始する課税年度のネット支払利息は、修正後課税所得(ATI)の30%の代わりに50%を使用して損金算入額を計算することが認められる。納税者が50%ではなく、引き続き30%の使用を希望する場合には「30%使用選択」が可能。当選択は2019年、2020年に開始する課税年度の各々別々に認められる。

パートナーシップに関して、2019年中に開始するパートナーシップ課税年度には、緩和措置の50%の制限緩和規定は適用がない代わり、パートナーシップからパートナーに配賦された損金不算入支払利息の50%は、パートナー側の暦年2020年中に開始する課税年度の支払利息として取り扱われ、Section 163(j)の制限対象から除外される。残りの50%は通常の規定通り、パートナーシップから配賦されるETIに基づく通常のベンチ待機ルールに基づき損金算入の判断を行う。このパートナー側で2020年に50%を問答無用に使用できるという措置が気にいらない場合には、「パートナー2020年50%損金算入不適用選択」が認められる。2020年中に開始するパートナーシップ課税年度に関しては、法人同様にATIの50%に基づく損金算入制限枠を計算することになるけど、法人同様、2020年に関してはパートナーシップにも「30%使用選択」が規定されている。

また、2020年に開始する課税年度は、当年度のATIの代わりに前年、すなわち2019年中に開始する課税年度、のATIを使用する選択が認められる。

組み合わせがなかなか複雑なので選択の部分だけ再度整理すると、30%使用選択、前年ATI使用選択、そしてパートナー2020年50%損金算入不適用選択、となる。

まず、せっかくCARES Actで、2019年と2020年の支払利息はATIの50%まで損金算入していいです、って言ってくれているにもかかわらず、「うちはATIの30%を適用して損金不算入額を決めます」っていう「30%使用選択」。なぜこんな天邪鬼な選択があり得るかってというと、特定の条文適用時には有利に見える取り扱いも、他の条文との複合的な絡みで総合的に必ずしも有利でないケースがあるから。TCJAは複数条文のインターアクションに基づく検討の重要性に拍車を掛けている。30%でも50%でもどっちにしても制限に抵触しない納税者はムキになってこんな選択をする必要はないので、基本的には30%を選択して本来損金不算入としなくてもいい金額を損金不算入にしたり、50%でも制限に抵触する納税者がより多くの金額を不算入にする際に使う選択となるはず。そんな選択をしたい納税者は2019年または2020年の申告書、またはこれらの課税年度にかかわる修正申告書で、30%ATIを適用することで選択をしたことになる。特定の選択を宣言するStatementは不要。パートナーシップに関しては2019年は30%使用が強制されるので、当選択は2020年のみに関係する。また以前もチラッと触れたけど、パートナーシップもForm 1065を修正することができ、そこで30%使用選択ができるけど、BBAっていうパートナーシップレベル税務調査にかかわる特別な規定に抵触するパートナーシップで、一定の要件下で修正申告ではなく、Administrative Adjustment Requests (AARs)と呼ばれる別手続に基づき、実質修正同様の手続きを済ます必要がある場合には、AARsを通じて実質修正をする。今後、パートナーシップの修正申告に触れる際、基本的に全てこのBBA下のAARsの適用があるって覚えておいて欲しい。毎回いちいち「BBAの場合は・・・」って注意書きしないのでよろしく。

優柔不断というか、後から課税関係が変わってしまって、やっぱり素直に50%で計算しとけばよかったな、って気が変わった場合には修正申告を提出すれば、選択取り消しにかかわるIRSの承認を自動的に受けた形となる。簡単に言えば、時効が成立するまでは気が変わったら修正するばいいということ。また、今のところSection 163(j)の規則草案に基づき、Section 163(j)はCFCにも適用があるけど、CFCに30%使用選択をする場合には、支配米国株主全員で行う必要がある。

次に、2020年に2019年のATIを使用して損金算入額を決める前年ATI使用選択だけど、これも2020年の申告書、または修正申告書で2019年のATIを使用すれば良く、選択を宣言する特別なStatementを添付したりする必要はない。30%使用選択同様、優柔不断というか、後から課税関係が変わってしまって、やっぱり2020年のATIベースにしとけばよかったな、って気が変わった場合には時効成立前に修正申告を提出すれば、2020年ATIベースとすることができる。CFCにかかわる手続きも30%使用選択同様。

最後に、パートナー2020年50%損金算入不適用選択だけど、こちらもパートナーが提出する申告書で、不適用とすれば、すなわち、通常のルール通りにETIに基づく処理をすれば、不適用選択をしたと認められる。上述の2つの選択同様、後から気が変わったら時効成立前に修正をすればいい。

ということで、Section 163(j)にかかわるCARES Act系の選択はこんな感じなんで、次回は話題の適格内装かな。それにしてもGoogle/AppleのContact Tracing使ってでも何でもいいから、そろそろ経済活動開始のタイムラインを具体化してもらわないとね。民主党大統領候補に実質決まっているJoe Biden曰く、次のCARES Act 2.0では「hell of a lot more」の公的資金をつぎ込む!ってことだけど、既に$2.5T使ってしまったのに、これから「hell of a lot more」って言われても、最後は誰かが支払う訳で、次世代にそんな多額の負の遺産を残すべきではないと思うんだけど。そもそも、州知事の権限で経済活動を止め続けて、その代償を連邦政府が公的資金で補填し続けるモデルにはSustainabilityがない。大統領のアップデートとか見てても日によって言うことが全然違うし、州政府も結局、元々はヘルスケアシステムの受け入れに余裕が生じるまでの臨時措置のはずだったロックダウンから抜け出す切り札がないまま無暗にロックダウンを延期したいりしていて、一部ロックダウンを解除したジョージア州知事をみんなで叩いたり、なんか米国政府の無策ぶりを世界に露呈している感じ。個人の自由を保障する立派な憲法があっても、第二次大戦時のKorematsuケースとか、9・11直後の動きとか、有事の際には結局あまり機能しないのかな、って今後いろんなことがある毎にロックダウンとなるような変な前例にならないといいけど、って考えるのは大げさなんだろうか。何年待ってもワクチンができる保証はない中、まさかワクチンできるまでロックダウンしている訳にはいかないし。そんなことしたら2021年のGDPは2019年比較で25%行くかな~。そうなったら米国のGDP、今の日本と同じ。中国も減速するとは言え、グリーンのQRコードを駆使して復活気味なので、そこまでGDP下がりそうにないよね。まあ、過去の歴史振り返っても今回も最後はApocalypse的な話しにはならないと信じてるけどね。

Sunday, April 19, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (9) IRSもWFHで「デジタル送信」その後

最近MidtownのWhole Foodsは品揃えに疑問があったのと、多くの買い物を一気にする際、必ずしも店の真ん前に路駐できないリスクもあって面倒なので、普段だったらなかなか行くことがないRidge Hill店までドライブすることが何回かあった。Shelter-in-Placeで道はガラガラなので、普段だったらインターセクションの設計が悪すぎて恒常的にボトルネックになっているFDRから87に乗り換えるRandall’s Islandのオーバーブリッジ辺りも気味悪いほど空いていて、家からRidge Hillsまで20分程度。着いてしまえば、NYCを一歩外に出れば当たり前の「普通に」大きなWhole Foodsの店舗目の前にIndoorの駐車場もあるし、駐車場のストラクチャー内にマンハッタンにはないSuperchargerもあるし、大量の買い出しにはとても便利。

CaliforniaのMDR近くのPlaya Vista店では早々にSocial Distancingで入場制限してたけど、NYCでも最近は入場制限がだんだん徹底してきてる。入場できる客の人数をどうやって決めてるんだか知らないけど、Per SQFT等で計算していると仮定すると、Midtownの店はCaliforniaのPlaya Vistaとか同じNYでもRidge Hillなんかと比較するとSQFTが少ないので、一回に入れる人数が少なそう。また、いくら人数制限してもMidtownの店はアイルというかLaneが狭いので、「Distancing」すること自体不可能なんだけど、昨日、久しぶりにMidtownの店に行ってみてビックリ。店内のLaneが全て「一方通行」化され、1メートル向こうに並んでるレモン買おうかな、と思っても、グルっと他の野菜が積んであるアイランドを一周しないと辿り着かないとか、Seafoodセクションに入るには一旦、野菜のセクションに戻らないといけない、とか複雑。駒沢公園辺りから西郷山公園経由、旧山手通りの下くぐって南平台の裏道経由で渋谷にドライブしてるみたいだ。知ってれば何てことないけど、知らないと中々辿り着かない、ってこと。

いつもだったら野菜やフルーツセクションを終えて、チーズとかパスタセクション経由、逆行して肉やSeafoodセクションに戻るところ、コロナ後の世界ではその方向は侵入禁止なので、なかなか買えなかったりチョッと面食らうこともあるけど、お陰で、一旦並んで中に入ってしまえば、店舗内で買い物している客の人数は少ないし、一方通行なのでカートがすれ違えないとか言うMidtownの店独特のフラストレーションもないし、なんといってもCashierというかレジで並ばないのがいい。普段だったら色別のLaneで、どの色が早いかな、とか殺気だってみんな並んでたけど、Social Distancingでレジ自体は待たずに終わらせることができる。レジも店員と客の間に銀行の防弾ガラスみたいな、Dividerが設置されたりして、これこのままにしておけば冬のインフルエンザ防止にも役立ちそう。幸いにも今の季節、気候が悪くないので店の前で30分とか待たされても、携帯使って財務省規則とか読んでたら(苦笑)余り苦にならないけど、真冬とかまで続くんだったら結構厳しそう。ディズニーランドのFASTPASSみたいに携帯で「あなたは何時から何時の間に戻ってきて下さい」みたいなLaneができるかもね。FASTPASSってチョッと使い勝手が悪いので、できたらLEGOLANDのReserve ’N’ Rideとか、Universal StudioのExpress Passとか、ローカルだけどKnott’sのFast Lane Passみたいな問答無用的に一番に入れるパスがあるといいけどね。まあ、FASTPASSは他のパスと違って無料だからね。Whole Foodsの対応見ても分かるけど、結構やろうと思えばいろんな手が打てるんだなって感心。ワクチンがいきわたるまでは、こういう地道な努力でリスクを軽減しながら経済活動を少しづつ再始動するしかないだろうね。

やろうと思えばいろんな手が打てると言えば、IRSのForm 1139のファックス受付。普段はペーパー提出しか認められない簡易手続き還付請求がファックスでも認められることになった点は前回の「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (8) IRSもWFHで「デジタル送信」OK」で触れた。ファックスって言うとチョッと原始的に聞こえるけど、IRSとしては法的に確実に処理できるバックエンドの体制を整えないといけないし、様式提出にかかわる証明義務とか、Identity Theftの観点とか、我々が考える以上の周到な準備が必要なんだろう。IRSの各サービスセンターにはペーパー提出された様式やレターが何台ものトレーラーに保管してあるってことだから、ペーパー提出された書類が処理されるまでには相当な時間を要しそう。

で、この金曜日、4月17日から満を持してファックス受付開始されているので、次々とForm 1139が送信されているんだろう。そんなタイミングでIRSは追加のFAQを出している。Cares Act絡みで納税者には有利な規則や手続きが次々と発表されていて財務省の実力を見せつけてるけど、中には法的権限はどこに、って思うことがある。ただ、実務的に言って納税者に有利な規則に関して法的権限が司法の場で問われるケースはないだろう。

IRSが追加で公表しているFAQによると、ファックスでの受付はあくまでもForm 1139と法人以外の納税者が使用するForm 1045に限定されてて、同じ流動性確保のために使用される場合でもForm 1120XとかForm 4466はファックスでの受付はしないと明言している。Form 4466は予定納税が過多だった際、申告書の延長期限前に提出し、支払過多の予定納税額を素早く取り戻すための様式。同様に流動性の話しで登場することがあるForm 1138は、今から提出しようとする申告書では税額があるけど、翌期にNOLが予想され、それをCarrybackすることで、結果として税額が減額できるケースで、支払いをNOLが発生する課税年度の申告書提出時点まで待ってもらう措置。Form 1138は還付請求ではないので慌ててファックスして処理してもらう必要はない。トレーラーに眠らせておいて、IRSサービスセンターが通常オペレーションに戻った暁にゆっくり処理してもらえばいいタイプの様式だ。

Form 1139って言うのは簡易手続きなので、その内容に関して精査されず、様式に記載されている数字が表面的に合っていれば法的に90日以内に還付を受け取ることができる仕組み。IRSは90日以内に還付を行う義務がある。Form 1139が表面的に合っているかどうか、っていう点だけど、数字的にはForm 1139も修正申告に類するので、オリジナル申告書の数字とCarrybackした後の数字を比較表示する必要がある。または既に何らかの理由でCarrybackする先の課税年度に関して修正申告を提出しているケースは、修正後の数字と今回Carrybackした後の数字を比較表示する。オリジナル申告書の数字を使うケースや、修正申告が相当前に提出されているケースでは心配ないかもしれないけど、結構最近修正申告をしたケースでは、そもそも修正申告の方がトレーラーに眠っていて、IRSのシステムに反映されていないリスクがある。その場合には、IRS側でForm 1139上の数字が表面的にも合っているという確認が取れないことなる。ただ、修正申告書を提出している以上、そちらの数字を使用してForm 1139を作成する必要があるので、実務的には面倒なことになり兼ねない。不整合が見つかったり、IRSで質問がある場合には、IRSから電話があるそうなので、君のテレフォンナンバー6700(凄い古~)かJennyの867-5309(チョッと古~)か分かんないけど、とにかく連絡が取れる番号をForm 1139に記載して、電話があったら逃さないように、電話に張り付いとく必要があるね。

また、既存のForm 1139は過年度のAMTクレジットを還付請求するデザインになっていない。そこでFAQでは、AMTクレジットを還付請求する際にはForm 1139にForm 8827の修正を添付し、2018年時点のAMTクレジット残高をCARES Actに基づき還付請求できる手法を編み出している。NOLのCarrybackとAMTクレジットの双方を利用して還付請求する場合も、一枚の1139で双方を手当できるような指示が公開されている。NOLのCarrybackがあると、AMTそのものの金額にも影響があるけど、一応、ここは律義にNOLをCarrybackして、AMTを計算し直し、それを翌期以降にクレジットしていって、2018年課税年度時点で取り返していない金額が残ってれば、Form 1139で還付請求することになる。AMTなんて真面目に計算してもしなくてもどうせ還付できて帳尻合わせることできるんだから適当でいいじゃん、って思うかもしないけど、ここは法的に古い課税年度から順々に律義に計算しないといけないと匂わせる記載がFAQ11に記載されている。Section 199とかFTCとかドミノ効果が多いから何だかんだCarryback計算も大変そうだ。ただ、AMTに関しては、CarrybackするNOLの金額そのものをAMT目的でAMTのNOLに換算し直さないといけないかどうかは明確じゃないけど、TCJA後の2018年~2020年にはもうAMTという制度が存在しないことから、以前AMTIを計算する際に使用していた「Preferences」とか「Adjustments」は2018年以降存在しない。となると、通常のNOLをCarrybackして、Carrybackした先の課税年度のAMTを再計算するばいいって考えられる。ここは異論があるかもしれないけどね。

金曜日には適格内装の100%償却絡みのRevenue Procedureも公表されて益々CARES Actのインプリメンテーションに気合が入ってるけど、次回は、その前に「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (7) Section 163(j)各種選択手続ガイダンス」で話し掛けになってるSection 163(j)のCARES Act絡みの3つの選択に関して。

Monday, April 13, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (8) IRSもWFHで「デジタル送信」受付開始

前々回のポスティング「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (6) NOL Carryback手続等ガイダンス」で、NOLのCarryback手続きに関して財務省が迅速かつ有益なガイダンスを公表してくれた点に触れた。でもせっかガイダンスは出揃ったものの、IRSもWFH状態にある中、実際にどれくらいのスピードで肝心の還付が返ってくるのかは興味深いて、って話しもした。というのも、法人がNOLをCarrybackして簡易手続きで還付請求する際に使用するForm 1139は電子ファイルできなくて、ペーパー提出しか認められないのが通常だからだ。IRSの各サービスセンターもShelter-in-Place措置でCloseされていて、対応してくれるのは「Mission-Critical Operations」のみ。通常の市民生活的には各州が認める「Essential Business」のみオープンだけど、IRSでは「Mission-Critical Operations」のみオープンなんだね。トムクルーズの映画みたいで、普通より言い回しが格好いい。NYCとか他の街でオープンして頑張ってくれているWhole FoodsとかCVSとか「あそこはMission-Critical Operationsだからな・・・」ってこと(?)。

で、Form 1139の提出なんだけど、せっかくCARES Actで流動性を確保させるために規定してくれたNOL Carrybackに基づく還付が、肝心のタイミングでIRSが閉店していて「プロセスは世界が普通に戻るまで待ってて下さい」っていうんでは話しにならない。そこで今日、IRSはウェブサイトで「Temporary Procedures」、すなわち一時的な特別手続きを公表し、NOLのCarrybackおよびAMTクレジットの簡易還付手続きを行うために提出するForm 1139を「Digital Transmission」(デジタル送信)で一時的に受け付けるとした。法人以外が使用するForm 1045も同様で、各々異なる送信先が記載されている。デジタル送信というと、ハイテクな感じだけど、要はファックス。

指定のファックス番号は2020年4月17日より機能し始め、通常オペレーションに戻るまで、ファックスを受信順に処理するそうだ。4月17日より前に勇んでペーパー提出してしまった納税者も、再度ファックスでデジタル送信し直すよう促している。送信は最高100ページが限度で、100ページ超の必要添付書類が存在する場合も、まずは100ページだけ送っておいて、後はIRSが還付手続きを進める過程で必要に応じて納税者に連絡を取るそうだ。デジタル送信されたForm 1139もIRS内部処理は従来のペーパー提出と同じということ。またデジタル送信の対象はあくまでもNOLのCarrybackとAMTクレジットの還付用途に限定され、その他の目的でFormをデジタル送信しても、その時点では処理されず、IRSのサービスセンターが通常のオペレーションに戻った時点で処理をするそうだ。

さらに面白いのは、Transition Taxを計算している課税年度を含む年度へのCarrybackに基づく還付請求時にも一定要件下でForm 1139の使用を認めている点。今までの一般手続きではTransition Taxを計算している課税年度へのCarrybackにはForm 1139の使用は認められなかったのでチョッとビックリ。ただ、現時点ではTransition Taxを全額納付済み、すなわち8年間の分割払いを選択していないケースのみが対象とされている。8年分割払いは無金利バルーン型だから、分割を選択していないケースは珍しいというか、他の超過額と相殺してしまったケースが大半じゃないかな。その意味では実務的には適用可能性が高いわけではないけど、スピリット的にウェルカム。さらに、分割払いでまだ完済していないケースに関して今後追加アップデートを公表するとしているので、可能性としてはより多くの状況でTransition Taxを計算している課税年度を含む年度へのCarryback還付請求をForm 1139を使用して、しかもデジタル送信で、行うことが可能となるのかもしれない。

ちなみに予定納税を最終申告前に加速暫定還付請求するQuick RefundのForm 4466はデジタル送信の対象ではなく、通常の手続きを経ること、としている。また、デジタル送信はあくまでも一時的な措置であり、恒久的な制度ではない、とも念を押している。なんでだろうね?今回の新型コロナウイルス騒ぎで、議会もリモートで審議したり、票を投じたりするシステムを認めるべきだっている議論があるけど、WFHが解けたからって便利なシステムを必ずしも律義に元に戻さないでもいいのに、っていう気もするけど。

Sunday, April 12, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (7) Section 163(j)各種選択手続ガイダンス

NYCが新型コロナウイルス感染で非常事態に陥ってから、エンパイアステートビルディングが毎晩、真っ赤にライトアップされ、NYCのコロナとの闘いをサポートしている点は「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (5) NOLの換金価値」のポスティング冒頭で触れた。早く、前みたいにレインボーとかいろんな色になる日が来ないかな~、と心待ちにしていたんだけど、なんと昨日と今日はきれいな薄いパステルカラー!最悪を脱してFlatten the Curveの兆候が見えてきたからかな、と思ったんだけど、実はイースターを祝っているそうだ。理由はともかく、連夜の真っ赤なエンパイアステートビルディングを見ると何となく心が痛むというか、嫌な気分になっていたんで、少し和むことができて良かった。ビルのライトアップだけで単純(?)。

そういえばKobe Bryantがヘリコプター墜落事故で急逝してしまった晩のエンパイアはLakersカラーのパープルとイエローだったね。Zen MasterというかTriangle OffenceのPhil Jackson率いるLakersをStaples Centerに見に行ってた頃が懐かしい。当時のLakersはO’NealとBryant率いる最強ドリームチーム。他にもFoxとかFisherとかね。実はその昔、O’Nealのガールフレンド(?)と同じコンドに住んでた時期があり、たまに夜に物々しくO’Nealが来訪することがあった。結局、誰に会いに来てるんだか分からなかっただけど。当時、そのコンドには、Victoria’s Secretのカバーを独占していたTyra Banksが住んでたんだけど、Banksとの関係は不明。Tyra Banksは当時スーパーモデルで、プライベートでも超Niceでエレベーターとかで会っても向こうから声を掛けてくれるような人。当然長身なんで、僕がエレベーターに入ると顔の前に胸が来るような印象が残ってるんだけど、たぶんスタイルが抜群なんで、そう見えただけかもね。あんなに持てはやされてたのに、謙虚というか周りに気を遣って、好感持てる人だなって感心してた。彼女のその後の向上心やチャリティー活動とかに、そのしっかりした人生観を垣間見ることができて、やっぱりね、って感じ。

で、負けずに向上心を持ち続けてNYCとかDCの最新情報に目を光らせてないと、米国タックスの世界は地殻変動のTCJA導入直後に、予期せぬCARES Act登場で複雑極まりない「Perfect Storm」になっているので、とても付いていけない。ということで、CARES Actに規定される複雑な取り扱いの具体的な適用手続きに関して矢継ぎ早に公表されるガイダンスのうち、前回はNOLのCarryback手続きに触れたけど、同時に公表されている複数のガイダンスでもう一つ関心が高そうなのが、Section 163(j)周りの諸々の手続き。

CARES ActによるSection 163(j)の変更そのものの詳細に関しては以前のポスティング「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (3) Section 163(j)」を参照して欲しい。ザックリとオサライしておくと、CARES ActによるSection 163(j)の改定は、「2019年、2020年に関してATIの30%ではなく50%を使って支払利息の損金算入制限を決める」、「2019年中に開始するパートナーシップ課税年度には、緩和措置の50%の制限緩和規定は適用しない代わりに、パートナーに配賦された損金不算入支払利息の50%をパートナー側の暦年2020年中に開始する課税年度に制限なく損金算入を認める」、そして「2020年は損金算入枠を算定する際に、前年のATIを使用する選択を認める」という3つが骨子。

で、これらの新規定には各々、納税者側で適用しないという選択が設けられている。更に、元々Section 163(j)は、不動産業および農業には適用しないという選択がある。この選択はCARES Actの話しではなく、TCJAの話し。だけど、2019年と2020年に関してSection 163(j)の適用条件が変わってしまったため、また、適格内装がTCJA法文修正により39年定額償却から即時償却対象にアップグレードされたので、Section 163(j)を適用しない選択を行うべきかどうかの判断時の分析Equationが変わってしまった。なぜ償却が関係してくるかっていうと、Section 163(j)不適用の選択をすると、その代償として、一定の資産クラスに関してMACRSや即時償却などの加速度償却を適用することができず、ADSという特殊な定額償却を使わないといけないからだ。商業用建物であれば、MACRSでも39年の定額なんで、ADSの40年定額と比べて大差ない。なんで、だったらSection 163(j)なんか適用しない方がいいね、って考えた不動産業者はいると思うんだけど、それが急に、内装は即時償却です、ってなると様子が大分異なってくる。さらにSection 163(j)を適用したとしてもATI50%ベースとなれば尚更だ。

これらの背景から、財務省のガイダンスは、不動産業者(農業も同様だけど、日本企業的に適用可能性がより高いと思われる不動産って描写で統一しておくからね)によるSection 163(j)不適用選択の見直し法、CARES Actに規定される3つの選択法、に関して詳細に規定してくれている。

まず、不動産業者によるSection 163(j)の適用・不適用選択だけど、TCJAが導入された2018年以降、(2018年、2019年等の暦年内に開始する課税年度は、説明を簡素にするため2018年、2019年課税年度って呼ぶことにするね)Section 163(j)不適用選択をしていなかった者、または2018年~2020年課税年度に選択を取り消した者、は該当課税年度にかかわる修正申告書を提出することでタイムリーに選択をしたものと取り扱われる。修正申告書は2021年10月15日または時効成立のどちらか早い期日までに提出される必要がある。パートナーシップもForm 1065を修正することができるけど、BBAっていうパートナーシップレベル税務調査にかかわる特別な規定に抵触するパートナーシップは、一定要件下で、修正申告ではなく、Administrative Adjustment Requests (AARs)と呼ばれる別手続きに基づき、実質修正同様の手続きとすることができる。下に話す別の項目に関してパートナーシップの修正申告に触れる際、基本的に全てこのBBA下のAARsの適用があるって覚えておいて欲しい。毎回いちいち「BBAの場合は・・・」って注意書きするの面倒なんでよろしく。

で、今からSection 163(j)不適用の選択をする場合、償却の計算とかが元々の申告と異なってくるけど、修正申告時には当然それらの調整を反映させる必要がある。償却とか、その後の課税年度にも影響があるケースがほとんどだけど、その後の申告書も適宜修正しないといけない。

逆に元々、Section 163(j)不適用を選択していた不動産業者は、選択を取り消すことが認められる。選択を取り消すっていうことは、Section 163(j)を普通の事業同様に適用するってことだから間違いのないように。こちらの手続きも新たに選択する場合と同じ。償却その他の数字を関係する課税年度に関して調整の上、修正申告が必要になる点も同様。

Tyra Banksとかでチョッと長くなってきたので、CARES Act絡みの新規定にかかわる3つの選択は次回。

Friday, April 10, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (6) NOL Carryback手続等ガイダンス

失業保険申請数が僅か3 週間の間に1千7百万人にのぼり、Cares Actに規定された小規模事業者へのSBAによるPPPローンプログラム(税法とか直接関係ないので、一応)に申請が殺到し、大至急追加資金の供給が必要ということで、今週にでもフェーズ3.5/Cares Act 2.0が議会を通過するはず、だった点は「失業保険申請一千万人とGDP30%減の衝撃と「フェーズ3.5/CARES Act 2.0」」で触れたけど、両党の意見が合わず、結局週明けに持ち越し。McConnellは上院で$250Bの決議を断行すると伝えらえている。どれだけの民主党上院議員が反対するのか見もの。

で、議会がフェーズ3.5/Cares Act 2.0の可決に失敗している間に、財務省・IRSはCARES Act絡みの規定適用にかかわる6つの手続き的なガイダンスを早々に公表した。Revenue Procedure 2つ、Notice 3つ、現金給付用の情報入力ウェブサイト、という超豪華セットだ。内容は大別してNOLのCarrybackにかかわる手順、諸々の期限延長、適格内装が過去訴求して即時償却対象となった点を勘案して不動産業者によるSection 163(j)不適用選択の取り消し、現金給付などだけど、取り急ぎ、関心が一番高そうなNOLのCarrybackにかかわる手続き部分に触れておく。これらの新手続きは最後に触れる2018年1月1日以降の課税年度に生じるNOLの取り扱い以外はRevenue Procedureに記載されている。

CARES Actは、2018年~2020年に開始する課税年度に生じるNOLに関して5年間のCarrybackを認めている点は既に何回かにわたり触れた。CARES Actに限らず、NOLのCarrybackは、Carryback先となる課税年度の修正申告書を提出して還付申請を行うのが原則。法人であれば1120Xだ。ただし、CarrybackするNOL発生課税年度終了から1年以内であれば、簡易手続きに基づく還付申請が認められるという緩和措置がある。こちらはForm 1139(法人以外はForm 1045)だ。

Carrybackは法的に拘束力を持つため、Carrybackが規定される課税年度にNOLを認識している場合にはCarrybackをしないといけないのが原則。ただし、納税者自らがNOL発生課税年度の申告書上、Carrybackする権利を正式に放棄する選択をする場合にはその限りではない。当放棄選択をすると、Carrybackの代わりに全額Carryoverとなる。放棄選択は一旦行うと取り消し不能。

CARES Actでは、一部過去に訴求してCarrybackを認めているので、NOL発生課税年度終了から一年以内のみに認められる簡易手続きとか、延長後に遅延なく提出される申告書で行われるはずのCarryback放棄選択とか、可決時点で既に期限が過ぎている措置にどのように対応するのか不明だったけど、今回のRevenue ProcedureおよびNoticeで大概の疑問はクリアになったと言える。

で、まず暦年2018年および2019年に開始する課税年度に生じるNOLのCarryback放棄選択だけど、これは2020年3月28日以降に終了する最初の課税年度(例、2020年3月期)の延長申請を加味して遅延なく提出される法人税(または所得税)申告書に、Carryback放棄する旨を記載したStatementを添付して行う。放棄は暦年2018年または2019年に開始する課税年度、各々別々に選択することが認められるけど、Statementには放棄選択対象となる課税年度を明記する必要がある。

次に、CARES Actには、5年間のCarryback期間に、留保所得一括課税(Transition Tax)対象課税年度が含まれる場合、当課税年度をCarryback対象から除外する選択が規定されている。暦年2018年および2019年に開始する課税年度に生じるNOLをCarrybackする際に、Transition Taxを計算している課税年度をCarryback期間から除外する選択を希望する場合、通常のCarryback放棄と同様に、2020年3月28日以降に終了する最初の課税年度(例、2020年3月期)の申告書にCarryback放棄する旨のStatementを添付する。2020年1月1日以降に開始する課税年度に生じるNOLのCarrybackにかかわる同選択は、NOL発生課税年度の申告書にStatementを添付して行う。Transition Taxを計算している課税年度をCarryback期間から除外する選択にかかわるStatementを添付する「申告書」だけど、Revenue Procedureが発行された2020年4月9日以降に提出される法人税(または所得税)申告書、簡易手続きのForm 1139(法人以外はForm 1045)、Transition Taxを計算している課税年度に当たらないCarryback対象課税年度にかかわる還付申請のための修正申告書、のいずれか一番早くに提出される様式が対象。さらに、同選択のStatementは、Carryback対象課税年度にかかわる還付申請のための修正申告書の各年度にコピーを添付する必要がある。

単にNOL Carryback自体を放棄する選択のStatementと比べて、Transition Taxを計算している課税年度をCarryback対象年度から除外する選択のStatementは、添付するべき申告書のバリエーションが多くて面食らうかもしないけど、これは当然で、NOL Carrybackを放棄するということは、NOLをCarrybackして還付を請求しないということなので、過年度の申告書をNOLを使って修正申告したり、Form 1139とかで簡易手続きに基づく還付申請を行ったりすることはないからだ。一方のTransition Taxを計算している課税年度を除外する方の手続きは、NOLをCarrybackするからこそ生じる検討となるので、Carrybackの際に提出する可能性のある申告書がいろいろとある。それらのうち、最初に出すものにStatementを添付し、またCarryback期間の各年度に関して提出する修正申告書が他にあるのであれば、それにもコピーを付けなさいってこと。まあ、よく考えられてるよね。TCJAのインプリメンテーションで多忙だった財務省やIRSだけど、CARES Actで余計に忙しくなり、かつ彼ら・彼女らだってWFHだから、このスピードであれだけのガイダンスを公表できるっていう実力は凄いね。

また、Revenue Procedureでは、Transition Taxを計算している課税年度をCarryback対象年度から除外する選択を行う場合、Transition Taxを計算している全ての課税年度を一律除外しないといけない点、また除外の結果、Carryback対象となる課税年度は元々の5年間からTransition Taxを計算している課税年度の除外した残りの課税年度になる点、が明確にされている。Transition Taxを計算している課税年度は多くのケースで2017年課税年度単年(3月決算の場合は2018年3月期)だけど、11月とか異なるFiscal YearのCFCが所有外国法人に複数紛れている場合には、プラスもう一年、Transition Taxを計算している課税年度が存在することがある。

逆にTransition Taxを計算している課税年度をCarryback対象年度から除外しない場合、NOLはTransition Taxを計算している課税年度にもCarrybackされることになるけど、その場合は、留保所得の合算額にはNOLを適用しないSection 965(n)選択が強制的に適用される。ただし、元々、NOLが存在したのに、(n)選択をしていない場合は、CARES Actで適用される強制(n)選択はCarrybackされるNOLのみが対象となる。この点はCARES Actの法文だけでは必ずしも明確ではないと言う専門家もいたのでウェルカムな確認。

当然だけど、連結納税グループは一納税者として選択を行い、連結NOLにも通常とおなじ選択ルールが適用される、と規定されている。

2017年12月31日以前に開始し、2018年1月1日以降に終了する課税年度、例えば2018年3月期、に生じるNOLはCARES ActによるTCJA法文修正を通じて、急にCarrybackが認められることになったけど、既に課税年度終了から一年以上経過しているので、通常であれば修正申告書を提出して還付申請するしかない。この点には元々CARES Act自体に緩和措置が規定されてて、CARES Actが可決してから120日目に当たる7月25日が土曜日なので、翌月曜日の7月27日までにForm 1139(法人以外はForm 1045)を提出すれば、簡易手続きに基づく還付申請が認められる。また、当課税年度のNOLに関してCarryback放棄する選択をする場合も、同じく7月27日までに納税者名、住所、納税者番号のみを記載したカラの修正申告書を提出して選択を行う。

最後に、別のNoticeによる追加緩和措置だけど、2018年1月1日以降に開始し2019年6月30日以前に終了している課税年度のNOLをCarrybackする際、既に課税年度終了から一年超の時が経過しているので、通常であればForm 1139やForm 1045で簡易手続きに基づく還付申請はできないところ、期限を6カ月延長を認めてくれるそうだ。3月決算の場合、2019年3月期がこれに当たるけど、2020年9月末までに手続きを行えば、簡易手続きに基づく還付申請が可能。この措置は2918年3月期の法人修正にかかわるNOLの措置と異なり、CARES Actには規定されておらず、行政府の判断・裁量に基づく英断。素早くかつ気の利いたガイダンスに感動。後は還付請求後、どれくらいのスピードで本当に還付されるか、が興味深い。確か、Form 1139は電子ファイルできなかったと記憶しているので(記憶なんでみんなちゃんと調べてね)、その場合はWFH状態でIRSの処理能力には限界があるだろうから、本来90日以内に処理される簡易手続きが、その通りスムースオペレーターになるかはかなり疑問だけど、こんな事態は想定されてないので多少の遅延は覚悟しないとね。

次回は軽く他の規定にかかわるNoticeに関して。

Tuesday, April 7, 2020

失業保険申請一千万人とGDP30%減の衝撃と「フェーズ3.5/CARES Act 2.0」

新型コロナウイルス対策フェーズ3となるCARES Actが可決するかしないかの頃から、更なる大型救済策となる「フェーズ4」策定が模索され始めている点は以前の「新型コロナウイルス対策法フェーズ3下院も通過し今日成立予定。関心は早くもフェーズ4に」で触れた。民主党を中心に大規模なインフラ投資を含む更なる財政出動を規定するような案が浮上していたんだけど、全米が政府の措置でロックダウンされていて誰もろくに外出できない状況で、インフラ投資で雇用創出って言われても、どうやってインフラ作るんだろう、っている基本的なところで何となく的が外れているような気がしてならなかった。そんなことよりもまずは感染や抗体テスト、ワクチンの開発に優先的に資金を投じるとか、病院その他の最前線で市民を守っている方たちに個人用保護具(PPE)とかを充実させるとかして、部分的にでも経済を再始動できるような体制作りに優先的にお金を使った方がいいのでは、って思ってしまう。素人考えなのかもしれないけど、失業保険手当とか企業にローンとかはあくまで急場を凌ぐための応急措置にしかならず、ワクチンができるまで1年超の期間に亘り、経済損失を国が全額補填し切れる訳はないので、ワクチンが開発される前の段階で徐々に最大限の安全を確保できるような投資を考えてもらいたい。

と思っていたら、何となくワシントンもフェーズ4ではなく、フェーズ3.5っぽい感じで急遽CARES Act 2.0を模索する方向に傾きつつあるようだ。というのも、先週の失業保険申請が700万を超え、2週間でなんと1千万人、元FRB議長のJanet Yellenが「第2四半期のGDPは30%減」というコメントをしたり、まさに「開いた口が塞がらない」としかいいようがない数字を記録し、更に感染増が今週と来週でピークを迎え、「パールハーバー」に匹敵する米国史上最悪の2週間になるというような状況を目の前に、事態を少しでも沈静化させる手を打つ必要が生じてしまっているからだ。

下院ではPelosiがCARES Actを拡張する形で、州、地方政府、小規模事業主、失業保険、ヘルスケアの最前線、等への援助、また場合によっては現金給付の第二弾、などを軸に調整中らしいし、上院でも早ければ木曜日にも250億ドル規模の救済法案が提出されるかもしれない。究極の救済策は新型コロナウイルスの感染を最小限に食い止め、一日も早く経済を再始動することだから、そんな対策にも十分な資金が供給されますように。

Saturday, April 4, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (5) NOLの換金価値?

NYCの感染状況が悪化する中、エンパイアステートビルは毎晩、真っ赤にライトアップされ、NYCが非常事態下にある点を嫌でも再確認させられる。定期的に白いビームが出て最前線で市民の安全を守るために命を懸けて戦っている緊急対応要員、First Responder、に敬意を表している。バレンタインデーとかに見る真っ赤なエンパイアステートビルとは異なり、毎晩真っ赤に光り続ける最近のエンパイアを見ていると、一日でも早く普通の色に戻りますように、って願わざるを得ない。Social Distancingが徹底していなかったタイミングの感染者が未だに増え続けているので、今週、来週が山場と大統領府は言っているけど、その後、本当にFlatten the Curveになってくれると皆、希望が見えてくるけどね。

製薬、バイオ、今ではタバコ業界も参加して治療薬、感染テスト、抗体テスト、ワクチン、等を時間との闘いで凄い勢いで研究・開発していると報道されている。ハイテク企業もWFHのネットワークを支えてるし、製薬とかハイテク業界ってBase Erosionとかで悪役になりがちだけど、彼らのイノベーションって元々リスキーなベンチャーなんで、たまたま当たって高い収益を上げられるようになったところだけを見て、Fair Shareを払ってないとか多くの税金を課そうとするのは長期的な政策として正しいんだろうか。BEPS 2.0どころではなくなってきたこのタイミングで、BEPS 2.0の大前提となっているポリシーを見直すいいチャンス。この点は別のポスティングで特集して少し考えてみたい。

で、NOLだけど、その昔、クイズダービーってTV番組があって、問題のいくつかは「3択」と言って、3つの選択肢から正解を選ぶパターンで、はらたいらと並んで3択は竹下恵子の正解率が高かった。で、NOLを3択改め4択の問題に変えてみると、「Cares ActでNOL100の換金価値は?」 「35」, 「21」, 「10.5」, 「ゼロ」、皆さん同じ答えになったでしょうか?巨泉風にいくと「いっぺんに開けます。せ~の」で・・・。

実は4つとも全部正解。それじゃもちろんクイズダービーには出題できないけど、ここが定量モデリングをしないと個々の納税者に何がベストが計り知れない理由。FDII、BEAT、Transition Tax、FTCとかを加味すると回答は無数になるけど、チョッと仮に無視して、GILTIだけの世界で考えるてみると、GILTI合算に影響しない形でTCJA前の課税年度にCarrybackできれば35の価値があり得る。TCJA後でもGILTIを相殺しない形でCarrybackできたり、Carrybackしないでも、将来にCarryoverできて、GILTI以外の所得を減額できれば21の価値があると言える。GILTI合算してる課税年度へのCarryの際の運命の分かれ道は、GILTI控除を規定するSection 250をどの程度減額させられるか、っていうところ。FTCを加味する前の状態でいくと、この度合いでNOLの価値は10.5~21の間で変動するものと考えられる。FTCを取っていない、というか取れていないGILTI合算課税年度にCarrybackして、NOLをGILTI合算の減額に費やしてしまうと、10.5の価値しかなくなる。さらに最悪なのは、トップラインでGILTI合算してGross Incomeは大きくなっていたものの、50%GILTI控除やFTCで元々GILTIに基づく米国法人税が生じていない課税年度にCarrybackするパターン。このパターンは前回のポスティング「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (4) NOLとSection 163(j)規定と実務的な問題」でも触れたパターンになるけど、もともと法人税ゼロだったのにGILTI合算にNOLを無駄に消費するので、換金価値はゼロとなる。前回のポスティングでNOLがGILTIに使われるとGILTIが21%で課税されていることになると書いた点を換言してるだけだけど、NOLの価値っていう視点から考えると、こういう結果となる。

唯一グッドニュースがあるとしたら、GILTIをNOLで消す場合、大概においてNOLは米国内源泉の損失で構成されることが多いと思われ、NOLでGILTIを相殺する度にOverall Domestic Loss (「ODL」)アカウントが創出されることになり、後年、米国源泉の課税所得が生じるタイミングでODLをRecaptureしてGILTIバスケットを増額できることになるはず。ODLのルール的にはそうだよね?そうすると後年ODLをRecaptureする課税年度で、GILTIバスケットのFTC枠が大きくなって、CFCが高税率で法人税を支払っていると、米国源泉所得に対して課税されている米国法人税をFTCで減額することができることになる部分。でもこれはGILTIの基となるTested Incomeが高税率で課税されてないと実効性がない。

このように、NOLをGILTI合算額相手に使用しないといけない点が、NOLのFDIIやBEATに与える影響と並び、NOL使用時の大きな課題となるになるけど、CARES Actではその点にかかわる救済はない。GILTI合算額にNOLを使用しないオプションみたいな制度は無理なのかな。Transition TaxのSection 965にはTCJA時点で既にNOLを使用しないオプションが規定されていて、FTCを活用させてくれてNOLを無駄に使わないでもいい工夫がされてたんだけどね。CARES Actでも同様にTransition TaxとNOL使用は特殊な選択が認められている。同じようなアプローチがGILTIには規定されていない。Transition Taxは902のプールを使う最後のチャンスだったし、面白いことにその部分だけTCJA以前のフレームワークで課税されているので、特殊なのかもね。GILTIはFTCのCarryoverもCarrybackもなくて、毎課税年度、払い切りなんでその辺りのコンセプトが根本的に異なるってことなんだろうか。この期に及んでできないことはないと思うけど。

で、話しは少し変わって、チョッとだけNOLと支払利息の損金算入制限を規定するSection 163(j)の関係にも再度触れとくけど、CARES Act前の感覚から言うと、Section 163(j)に抵触せずに損金算入できたとしても、業績不振の課税年度に関して言えば、結局NOLが増えるだけのケースも多く、その場合、どっちにしても損金不算入額は無期限にCarryoverできるし、Section 163(j)でCarryoverしてる方が、将来、十分なATIさえあれば、80%所得制限がないことから、考え方次第では反ってそっちの方がいいのかも、っていうようなこともあり得た。CARES Actで状況は一変。Section 163(j)の使用枠は拡大されたけど、それでも業績が低迷して支払利息がSection 163(j)に抵触して損金不算入となると、NOLと異なりCarrybackは規定されておらず、そのまま将来にCarryoverするしかない。しかもNOLをTCJAの前の課税年度にCarrybackできれば、35%の換金価値があり得る一方、Carryoverは21%。結果としてできるだけ支払利息を損金算入してNOLを増額するのが得となるケースが多いことになる。ただ、NOLの換金価値自体も個々の事実関係次第な点は上述の通りなので、最終的にはここもモデリングの世界。アーニングス・ストリッピング規定と言われていた「旧」Section 163(j)には余剰枠自体の繰越が認められたけど、TCJAの「新」Section 163(j)には同様のコンセプトが存在しない。BEPSにも同じことが言えるけど、景気がいい時に議論される制度って、予想外の景気低迷時に使い勝手が悪い。この点もまた別の特集でね。

ということで、考えれば考えるほど、Cares Actも実務的な検討が増えてくる今日この頃でした。

Wednesday, April 1, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (4) NOLとSection 163(j)規定と実務的な問題

前回はSection 163(j)、その前はNOLにかかわるCARES Actの規定そのものの第一印象的な説明を試みたけど、その際、それらの恩典に関して納税者側で敢えて適用を選択しないオプションが用意されている点にも触れた。普通に考えると、恩典を自ら不適用にする、っていうオプションがあること自体、不思議に思うかもしれないけど、これが米国税務、特にPost-TCJAの世界の複雑性。ひとつの規定に関して、良かれと思って講じる策が他の複数の規定との絡みで最終的に不利に転じたりすることがあるからだ。そのため、TCJA下のプラニングは、必ず各納税者が置かれている個々の数字を使って複合的なモデリングを使用して行う必要がある。でないと「やった~、FTC最大限化したぜ!」って思っても「アレ、この追加BEAT何?」とか「どうして急に支払利息の損金不算入額が増えちゃったんだろう?」とか、苦労した挙句に結局好ましくない結果に陥ることがある。

一般的には、法人税率が21%に引き下げられたTCJA以降の課税年度に発生するNOLを以前の35%時代にCarrybackできるのは魅力的なのは間違いない。同じ100のNOLでも換金価値が全然異なるからだ。ただ、TCJA下の米国税務では、複数の規定に課税所得ベースの「制限額」が設けられているので、NOLをCarrybackするのはいいんだけど、結果として課税所得がなくなったり、減額したりすると、他の規定適用時の制限枠が減少したり消滅してしまうことがある。GILTIは最高で10.5%、FTCの適用で場合によってはゼロ%に近くなるけど、これは課税所得があっての話し。CarrybackしてGILTI合算額を減額するということは、GILTI合算額100%分NOLを使っちゃうってことだから実効税率的には21%の法人税を支払っているような状況。Carryback前の時点でGILTI控除とFTCでGILTI最終税負担はゼロだったとすると、急に21%で課税されたような状況。しかもCFC所在国での法人税に加えての追加税コストとなる。FDIIも同様で、「TCJAのおかげで外国向けビジネスの実効税率は13.125%で、アイルランド並みだな~」って喜んでたらCarrybackした瞬間に恩典なくなっちゃうしね。GILTIと同じでNOLでFDII適格の課税所得を消してしまうということは21%で課税されたも同然。

BEATだって基本的に通常の法人税との比較なので、当期利益とNOL Carrybackの関係次第では、今までBEATミニマム税の状況ではなかったものが、Carrybackすることで「あれ、なんでBEATミニマム税出てるんだろう?」とか。NOLは失効しない限りタイミング差異だけど、BEATミニマム税は払い切りなのでパーマネントコストだ。

また、Transition Tax合算年度にはCarrybackを適用しないオプションがあるって前々回のポスティングで触れたけど、実は元々のTransition Taxの規定にNOLは留保所得合算額には適用しない、っていうオプションが規定されていた。Section 965(n)選択として知られてるオプションだけど、CARES Actで認められるCarrybackをTransition Tax合算年度にも適用する場合も、強制的にSection 965(n)選択が行われたものとみなす、という規定がある。すなわち、Carryback時にTransition Tax合算年度まるまる対象外とするオプションを行使しない場合でも、Transition Tax合算とは関係ない他の課税所得との相殺は可能でも、留保所得合算額そのものにはCarrybackするNOLを充当できないことになる。CARES Actの強制Section 965(n)選択はCarrybackした金額のみに適用されるのか、それとも、合算年にかかわる従来のNOLも含めて適用されるのかは法文からは必ずしも明確ではない、と指摘する向きもなるみたいだけど、CARES ActでCarryback部分に関する規定だと考えている。いずれにしても、もともとTransition Tax合算額にNOLを充当したくないのは、NOLで減額しないでも、FTCでTransition Taxを減額することができるから。特にSection 902の間接税額控除はTransition Taxで使用するのが最後のチャンスだっただけに、NOLは別目的で温存し、Transition TaxそのものはFTCで消すというのが合理的なケースが多かった。CARES Act下でもそのような処理が可能になっている。Transition Tax合算以前の課税年度にNOLをCarrybackすると、FTCのCarryoverとか変わるだろうから場合によってはTransition Tax負担額が変わるようにも見えるし。Carryback期間の5年の途中でクロスボーダー課税が60年振りに地殻変動しているというPerfect Stormだね。

CarrybackでCash Flow的には一瞬得することもあるかもしれないけど、実効税率や、将来的なCash Flowを考えると不利になることがある。まるで、その昔、日本で会社から通勤費用として定期券代を支給してもらったのに、現金が一瞬増えて気持ちが大きくなり(?)、他の目的に使ってしまい、代わりに毎日切符買って通勤した結局損したみたいな状況(?)

それでもCarrybackの対象となる5年間に十分な課税所得が存在して還付申請できる場合はまだいいか。こんな状況になると流動性の確保が最重要で、実効税率とかに気を取られてるようなLuxuryはもうないかもね。Takeawayポイントは意思決定は、必ず複合的な定量モデルに基づくこと。

Sunday, March 29, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (3) Section 163(j)

前回は「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (2) NOL」で、CARES Actに規定されるNOL使用制限緩和に触れた。80%の制限適用を一時停止し、繰り戻しを限定的に5年間認める、というもので、その骨子は比較的容易に理解できる。だけど、TCJAで元々NOL規定そのものが過渡期の状態にあったにもかかわらず、今回のCARES Actの登場でいきなりTCJAの規定がオーバーライドされてしまったのがCARES Actの規定が複雑な一因。また、元々の法文がイマイチだったので、TCJAの法文修正、すなわちTechnical Correction、を同時に手当している点も難解にしている。

例えば、元々のTCJAで規定されている法律施行日、Effective Date、を法文修正でアップデートしてる部分があるんだけど、TCJAのオリジナル法文では、80%所得制限は「2018年1月1日以降に開始する課税年度に適用」とだけ規定されていた。このオリジナル法文に加え、Technical Correctionでは「2018年1月1日以降の課税年度に発生するNOLが2017年12月31日以前の課税年度に繰り戻される際にも適用」と追記している。でもこれは、2017年12月22日にタイムトリップしたら、そう記載されるべきだったという話しで、CARES Actによる80%所得制限の適用停止により、別の部分でオーバーライドされる。結果として最終的にはCARES Actの新規定がルールになるんだけど、よく読まないと異なる取り扱いが並列して規定されているので不思議な規定に見え兼ねない。

で、NOLの話しはこれくらいにして、今日のテーマのSection 163(j)だけど、これもTCJAで導入された新法で、事業活動にかかわるネット支払利息は、他の税法の条件を充たして損金算入できる場合も「修正後課税所得(ATI)の30%」と「Floor Plan Financing支払利息」の範囲内でのみ損金算入を認めるというもの。ATIはNOL適用前の当期課税所得にネット支払利息、199A(特定要件下で個人パススルーオーナーや個人事業主に認められる20%想定控除)、償却費用控除額を加算し直した金額。償却に関しては2022年1月1日以降に開始する課税年度からは加算対象から除外される。

2021年までは償却費用を加算できるので、枠が大きくてグッドニュースだけど、ATI算定時に加算対象とすることができる償却は順当な解釈的にはCOGSに資産計上されていないSG&Aの償却費用のみ。これは規則草案では明確にそう規定されている点だけど、草案自体には法的効果はない。なので規則がそのまま最終化されるまでは加算しても問題ない、というのは若干短絡的というか、あわてんぼうのサンタクロースだ。なぜかと言うと、この解釈は財務省規則の話しではなく、議会が制定したSection 163(j)の法文そのもので、加算対象と認められる償却費用は「any deduction allowable for depreciation, amortization, or depletion」に限定されているからだ。類似した考え方に、BEATを適用する際、COGSに資産計上するロイヤルティ等の費用は税法上は「Deduction」じゃないから、外国関連者に支払っているとしてもBase Erosion Paymentにはならない、という主張がある。これは今では公式見解となってるけど、Section 163(j)のAITの算定時も、COGSに資産計上される償却費は「Deduction」ではないので、加算対象としてはいけない、という財務省側の法文解釈は財務省が無理な主張をしているのではなく、法文を忠実に適用しているだけの話しで、かなり妥当なもの。Section 163(j)の規則が最終化される際に、財務省が法文をクリエーティブに解釈し直してくれて、この点にかかわる助け舟を出すことができるか興味深い。ただ、現時点で覚えておかないといけないのは、財務省規則草案がそう言ってるから加算できないのではなく、法律そのものの解釈として加算はできないという解釈が正しいのではないか、ということ。異論というか法文に異なる解釈を試みるケースはあり得るとは思うけど、決してSlum Dunkではないからね。

そんなSection 163(j)だけど、CARES Actでは,他の多くの規定同様、事業者の流動性確保目的で支払利息の損金算入制限を一時的に緩和している。法文によると、暦年2019年中または暦年2020年中に開始する課税年度のネット支払利息は、「修正後課税所得(ATI)の30%ではなく50%」および「Floor Plan Financing支払利息」の範囲内で損金算入が認められる。面白いことに納税者が50%を希望しない場合には、自らの選択で30%の適用が可能となる。なぜそんな不利な選択を・・・?と思われるかもしれないけど、TCJAの適用が複雑なのは、一つの制限に有利な取り扱いも他の取り扱いとの関連で総合的に考えないと不利になることもあるっていう点。

さらにSection 163(j)を複雑怪奇な規定としているのは、支払利息損金算入制限をパートナーシップレベルにも適用してる点。パートナーシップはパススルーで、他にも事業主体同様に取り扱われるケースもあるけど、原則はパートナーの集合体っていうのが一般的な位置付け。にもかかわらずSection 163(j)は、支払利息をパートナーにパススルーしてパートナーレベルで損金算入可否を判断するのではなく、パートナーシップレベルでいきなりこの判断をさせる。しかも、一旦パートナーシップで損金算入可否を判断し、損金不算入の支払利息が生じる場合には、当不算入額をパートナーシップが繰り越すのではなく、毎期各パートナーに配賦する。パートナーに配賦された不算入額が、翌年から単純に各パートナーの他の支払利息と同様に取り扱われて各々の制限枠内で使用できれば、それでもまだ簡単なんだけど、実際にはそうではなく不算入額が各パートナーに配賦された後、翌年以降に同パートナーシップ側で余剰枠(ETI)が存在する場合に、そのETIを各パートナーに配賦し、パートナー側ではETIの範囲で過去に配賦された損金不算入額を「リリース」する。リリースされて初めて、パートナーは自ら認識する他の支払利息同様に取り扱うことができる。すなわち、そうなって初めて制限枠と比較したりするゲームに参加できることになる。それまでは静かに「ベンチで待機」してるようなイメージ。

で、CARES Actではパートナーシップに特別というか、クリエーティブな規定を設けていて、暦年2019年中に開始するパートナーシップ課税年度には、緩和措置の50%の制限緩和規定は適用しない。すなわち、従来通りATIの30%を使用して制限枠を算定することになる。30%制限に基づきパートナーシップレベルで損金算入制限が生じる場合は、通常のルール通り、損金不算入額が各パートナーに配賦されるんだけど、配賦された後の取り扱いが変更されている。すなわち、パートナーに配賦された損金不算入支払利息の50%は、パートナー側の暦年2020年中に開始する課税年度の支払利息として取り扱われ、Section 163(j)の制限対象から除外される。なので50%は損金算入できることになる。残りの50%は通常の規定通り、パートナーシップから配賦されるETIに基づく通常のベンチ待機ルールに基づき損金算入の判断を行う。チョッと難しいけど、50%だけでもパートナー側で翌年に問答無用に損金算入できるのはいいね。何らかの理由でこの処理が好ましくない場合には、パートナー側で当処理の不適用を選択することができる。不適用を選択する場合、暦年2019年中に開始するパートナーシップ課税年度に関しても通常のベンチ待機ルールが適用されることになる。また、暦年2020年中に開始するパートナーシップ課税年度に関しては、ATIの50%に基づく損金算入制限枠を計算することになる、と読める。

さらに、暦年2020年中に開始する課税年度は、当年度のATIの代わりに前年、すなわち暦年2019年中に開始する課税年度、のATIを使用する選択が認められる。背景としては、2020年に開始する課税年度は新型コロナウイルスの影響で業績がより落ち込む可能性があり、その場合にはATIが小さいとか、存在しないとかの理由で多くの支払利息が損金算入制限に抵触する。その場合には前年の比較的高いATIを基に損金算入額を計算することが認められる。パートナーシップにも前年ATIの適用を選択することが認められるけど、当選択は各パートナーではなく、パートナーシップレベルで行う。また、暦年2020年中に開始する課税年度が12カ月未満のShort Yearの場合、2019年のATIも同期間に対応するよう按分して使用する。

という訳で今日はCARES ActによるSection 163(j)改定でした。

Saturday, March 28, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (2) NOL

CARES Act成立から一夜明けた。CARES Actが緊急に手当てしようとしている大きな課題の一つに雇用問題があるけど、雇用環境の急激な悪化を物語っているのが米国失業保険の申請者数。歴史上、一番申請数が多かったのは1982年10月に記録された一週間695,000という数字だそうだ。一方、先週の申請者数は3,300,000だったそう。つい数週間前まで史上ベストの雇用環境だったんだから、凄まじく急激に状況が一変していることが分かる。まだ始まったばかりという説もあるし。CARES Actが一矢報いてくれるといいけどね。

前回は「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (1) 2020 Recovery Rebate」で$1,200の現金給付制度に関して触れた。今日はNOLに関して。

NOLにかかわるCARES Actの規定は、事業者の流動性確保の観点から、NOL使用制限を緩和し、また繰り戻しを認めている2点が骨子。またついでにTCJAの法文にエラーがあった部分の修正と、新旧のNOLが混在している際にどのように80%制限を適用するべきか分からなかったので、法文を修正して分かり易くしている。

まず、NOL使用制限緩和だけど、TCJAで2018年1月1日以降に開始する課税年度に生じるNOLは原則、使用年度の課税所得の80%を使用限度額とすることになっていた。CARES Actではこの制限を3年間適用停止している。すなわち、2018年~2020年に開始する課税年度にNOLが繰り越される、または繰り戻される場合には、80%制限は加味せずにNOLを使用することができる。また、2018年1月1日以降に開始する課税年度に生じるNOLが2017年12月31日以前に開始する課税年度に繰り戻される場合も同様に80%制限を考える必要はない。

で、このCARES Actの法律変更で、80%制限がキックインしてくるのは実質、2018年1月1日以降に開始する課税年度に生じるNOLを、2021年1月1日以降に開始する課税年度で使用するタイミングからになったことになるけど、元々TCJAで導入された法文ではどのように80%制限を算定するか分からず、近々に財務省規則が公表されてこの点がクリアになると言われていた。

どのように分からなかったかというと、TCJA以前の旧NOL、すなわち80%制限に抵触しない有利なNOLだけど、とTCJA以降の80%制限抵触新NOLが混在して繰り越しされてきて、それらの双方を使用する課税年度がある際、使用年の課税所得にどうやって80%を適用するべきか、という算数的な問題。TCJA導入直後から、その計算法が不明確という問題が指摘されていて、財務省やIRS内でも法文だけでは適用法が分からない、っていう点は認識していた。考え得るポジションの代表的なものには3パターンあった。最初の2パターンは80%制限枠そのものは、共に課税所得全額に80%を適用して決定するもの。その後、パターン1では、制限に抵触する新NOLのみと制限枠を比較して、使用可能NOLの金額を確定するという考え方。パターン2は制限に抵触しない旧NOLは使用制限そのものには抵触しないので自由に使用できるものの、制限枠が残っているかどうかの判断目的では、旧NOLも制限枠を食い潰していると取り扱う考え方。その場合、旧NOLが制限枠を超過している場合には、制限枠はゼロになってしまう。パターン3は制限が適用されない旧NOLを適用した後に残るネット課税所得に80%を乗じて制限枠を算定する、っていうもの。法文そのもののグラマー的な解釈としてはパターン1が妥当そうだよね、って個人的には考えていた。

で、今回、NOLの規定をアップデートする機会に恵まれたのを利用し、この点を明確にしようとしている。そもそも80%制限は2020年まで適用が停止されたので、2021年1月1日以降に開始する課税年度からの話しになるけど、そのような将来的な課税年度において使用可能となるNOLは、2017年12月31日以前に開始する課税年度に生じるNOL、すなわち旧NOLは全額、2018年1月1日以降に開始する課税年度に生じる新NOLは、使用年度の課税所得を旧NOLで減額した後に超過額があれば、その超過額の80%を上限に使用可能となった。その際に使用する課税所得は、section 199Aに規定されるパススルー事業所得にかかわる20%想定控除、およびsection 250に規定されるGILTI・FDIIは適用せずに計算するのは従来の通り。ということは考えていたパターンの3になるということだね。3つの中では最悪のパターンではなく、NOLミックスと課税所得次第では一番納税者よりの選択となることもあるので、まあまあウェルカムな法文アップデートって言っていいかも。

次にクライシス時にお約束の5年間繰り戻しだけど、2018年1月1日以降2020年12月31日以前に開始する課税年度に生じるNOLに関して5年間の繰り戻しが認められている。例外として、REITが認識するNOLは繰り戻し対象とならないと規定され、また以前REIT選択としていた法人が、後年に認識するNOLをREITだった課税年度に繰り戻しすることも認められない。さらにTransition TaxのNOLに関してはNOLの使用放棄とか選択があったり、それにより国内費用のFTC枠の配賦が難しかったりいろいろとあるので、Transition Tax目的でCFC等の留保所得をSub F合算している課税年度には繰り戻しをしない選択も認められている。でないと再計算大変だもんね。Transition Taxの計算とか、その際のFTC、NOLの使用放棄する際の加算金額のバスケット毎の費用配賦とか超複雑で、もう一回やり直すなんて考えただけで気分悪くなりそう。

次は元々の法文ドラフトエラーの修正に当たるけど、NOLの繰り戻しを撤廃した際に、2018年1月1日以降に「終了」する課税年度に生じるNOLから繰り戻しはなし、と規定されてたけど、これを本来は意図していた2018年1月1日以降に「開始」する課税年度より適用、と修正している。暦年が課税年度の米国企業にとってはどっちでも結果は同じだけど、3月決算が多い日本企業の米国子会社は2018年3月に生じるNOLが、急に繰り戻しできなくなり当時面食らったものだ。TCJA可決当時からここは間違いと指摘されていたけど、Technical Correctionが直ぐに通らずそのまま今に至っていた。この法文修正により影響を受けるNOL、例えば2018年3月期のNOL、はCARES Act成立日となる2020年3月27日から120日以内に繰り戻し、または繰り戻し放棄の選択をすれば、申告期限内に当該処理を実行したものと認められると規定されている。ということは、この期にNOLがあった納税者は7月25日までに修正申告をしなくちゃ、ってことだね。

ちなみにTCJAでNOLの繰越期限は撤廃され未来永劫使えることになったけど、TCJAの法文そのものは旧NOLの取り扱いに触れておらず分かり難いので、法文修正で「2017年12月31日以前に開始する課税年度に生じるNOLは20年の繰越期限があります」って確認を入れている。これらの法文修正は、Technical Correctionという位置づけなので、2017年12月22日に成立したTCJAに当初から規定されていたと同様の効果を持つことになる。

NOL結構複雑だね。次回はSection 163(j)かな。

Friday, March 27, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (1) 2020 Recovery Rebate

今日、2020年3月27日、トランプ大統領の署名をもって成立したCARES Act。新型コロナウイルスの影響で事業継続に支障が出ている雇用主に対する雇用継続援助、解雇されたりレイオフされた従業員に対する失業保険の拡充、貸付を通じた事業主の流動性の確保、深刻な打撃を被っている産業に対する公的支援、医学・ワクチン・医療機器分野に対する集中投資、等、税務以外の複雑な救済策が山盛り規定されている。各産業やそのロビイスト、またどの州が効果的にDCの議員に働きかけて支援を取り付けたか、という角度からの分析はかなり興味深いんだけど、それらは他のメディアや専門家に任せておくとして、今回からCARES Actの税務関連規定を簡単に見てみたい。

NOLや163(j)だけでも結構面白い検討になるんだけど、まずは一般的にCARES Actの目玉規定と言われている「現金支給」に関して。実は2日前にGrassleyが税務規定の概要シートを公開した際に速報した「新型コロナウイルス対策法フェーズ3の税務関連規定Sneak Preview」時点では、測り知れなかった詳細が法文には規定されている。法律だから当然だけどね。Grassleyの概要を読んだ際に、2008年のブッシュ還付小切手と異なり、今回は2020年の個人所得税申告書で、受取額をクレジットしたり調整したりする面倒がなさそうでよかった、みたいなコメントをしたんだけど、そんな楽観は大間違いだったので愕然。やっぱり今回も還付前払いという位置づけになっている。まさしくブッシュ還付小切手再来だ。個人所得税の作成を担当する者、特に非居住者だったり、昨年は未だ米国に赴任してなかったりする納税者の申告書作成担当者は誰がいくらの小切手受け取ったのか、とかトラッキングするの大変なんだよね。1040チームお疲れ様です、って感じ。

で、「2020 Recovery Rebate」と名付けられたこの規定。基本的には2020年所得税に対する税額控除という形で支給というのが法的な骨子。2020年課税年度の税金に対する税額控除だから、申告書を出すのは2021年4月15日。ただし、当税額控除を後述の前払還付という形で受け取る者は、この税額控除を減額するが、当減額はゼロを下限にするということになっている。つまり大概のケースでは近々に入金される前払還付を受け取ることで、2020年の申告時の税額控除はなくなるということになる。また税額控除の減額はゼロを下限とすることから、前払還付または2020年に計上できる税額控除のいずれか高い方の恩典を享受できることになる。例えば2020年に所得がなくても、条件次第では税額控除の恩典を享受することが可能となる。

2020 Recovery Rebateを受け取る権利がある「適格個人」は、米国市民または米国居住者で、他の納税者により扶養家族と取り扱われていない者。米国居住者というのは連邦税法上の定義に基づくので、グリーンカード所有者、または3年間の米国滞在日数の加重合計に基づく物理的テストを充足する者となる。一義的には2020年の税額控除の話しなので、2020年に居住者であれば、2019年以前の居住ステータス如何にかかわりなく受給権が生じるように見える。また2020年には非居住者になってしまっているのでもはや適格個人でなくても、後述の前払還付は2018年や2019年の情報に基づいて交付されるので、その場合には貰い得(?)になる設計のように読める。

さらに、2020年に初めて米国通年居住者になる例は法律の適用に不明な点はないとして、税務上、居住期間と非居住期間が存在するDual Status申告書の場合はどうなるんだろうか。2020 Recovery Rebateの法律上の位置づけは税法のSubchapter AのPart IV、Subpart Cに属することから、2020年に居住期間が存在すれば、Dual Statusでも適格に見える。米国に年の後半に赴任してきて、税務上は年間を通じて非居住者となっている場合には不適格だろうから、そうなるとSection 7701(b)(4)のFirst Year Electionの要件を充足してれば、ElectionするとDual Statusに生まれ変わるから、急に適格となる。さらに配偶者が日本にそのまま滞在しているケースでは、米国に居る当人がFirst Year Electionをした上で、または日数テストで年の後半居住者になるのであれば、Section 6013(g)選択をすることで配偶者分まで受け取れることになる?配偶者にSSNがなくITINの場合にはどうなるんだろう。Grassleyのシートには「就労権を有するSSN所有者」と読める条件が挙げられていたけど、法文はあくまでも米国市民と居住者となっている。

このように、クロスボーダー絡みの所得税に係わる適用は、普通の米国市民と異なり、追加検討が多いけど、$1,200のためにフライング気味に変な選択して、本来であれば米国で非課税の外国源泉所得とかが全世界課税になって、FTCでその障害を取り除けないとか、$1,200以上のダメージを被る本末転倒な話しとならないようにね。

$500の対象となる適格子女は、納税者と年の半分超同居し、生活費の半分超を子女本人が自己負担していない16歳以下の米国市民または米国居住者。

また、この手の規定に付き物と言えるフェーズアウト規定があり、AGIと言われる特定の費用を総所得から差し引いた金額が$75,000(単身)$112,500(Head of Household)、$150,000(夫婦合算)を超える場合には、支給額は超過額の5%相当額が減額される。$1,200を5%で割ると$24,000だから、単身の場合は$99,000、夫婦合算の場合は$174,000のAGIがあると恩典はないという計算となる。

で、2020年の税額控除だと、2020年申告書提出時に対象額分の減税があったような形になるけど、それは来年の今頃の話しなので新型コロナウイルス対策としては意味がなく、そこで当規定の神髄と言える「前払還付」フィーチャーが登場する。誰にいくら前払いするか、っていうのは2019年の所得税確定申告書を参照して決める。法的には、2019年に今回規定される2020 Recovery Rebate規定が存在したとしたら、受け取ることができたであろう税額控除額を2019年のみなし追加納付額と取り扱う。結果として2019年に過去訴求する形で過払いが生じ財務省が速やかに無金利で前払還付として支払う、という複雑な設計。還付が原則だけど、未払税金がある場合には相殺すると規定されているように見える。また、ブッシュの前払小切手と異なり、2018年または2019年の申告書上で納税者が振込用の銀行口座情報を特定している場合には、還付は電子送金で行われるそうだ。大丈夫かな。

さらに、2019年に申告書を提出していない納税者に関しては、代わりに2018年の所得税確定申告を参照してくれるそうだ。2018年も申告書を提出していない納税者に関しては、社会保障ベネフィット支払額報告書(様式SSA-1099)または鉄道従業員退職年金ベネフィット支払額報告書(様式RRB-1099)を参照して同様の処理を行ってくれる。これで、公的年金生活で申告書を出していない方にも速やかに還付が入金されるということになる。 なかなかよく考えてあるけど、結構複雑だ。

また、前払還付を受け取ったにもかかわらず、2020年の申告書で税額控除を減額していないケース、すなわち二重取りのケースは、「単なる計算間違い」という範疇で処理されると規定されており、その場合にはIRSからの最初の通知をもって更正通知同様の扱いとなる。財務省側の記録では支給したことになってるけど、実際には受け取ってないとか、受け取ったけど忘れてしまったとか、申告書作成時の確認作業は結構負荷が高い。

ということで、たかが現金給付、されど現金給付という感じでした。

新型コロナウイルス対策法フェーズ3下院も通過し今日成立予定。関心は早くもフェーズ4に。

下院議長のNancy Pelosiの80歳の誕生日プレゼントになるはずだった「CARES Act」の成立が、Thomas Massieが定足数が足りるのか、とか下院フロアで実際に審議するとか、この期に及んで騒がせてくれたので、多くの議員がキャンセル相次ぐ国内便を乗りついて各州からDCに再度戻ってきたりしてバタバタして遅れていた。結局、最終的にはPelosiの狙い通りVoice Voteにて先程無事に可決された。トランプ大統領は速やかに署名するだろうから、Peolsiが80歳+1日を迎える日に米国市場最大の救済パッケージが成立することになる。McConnellにしてもPelosiにしても、あのエネジーには脱帽する。

税務に係わる大枠の内容は前回のポスティング「新型コロナウイルス対策法フェーズ3の税務関連規定Sneak Preview」で触れているので、次回は、特定の規定に絞って若干詳細を検討してみたい。2兆円つぎ込んでも、あくまでもパッチワークにしか過ぎず、全国的Lock-Downをいつどのような形で解除できるか、に加え早くもフェーズ4の話題で持ち切りだ。国が破産する前に経済活動の一部でも再開できるようになることを願いましょう。

Wednesday, March 25, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3上院ようやく可決

ここ数日ヒヤヒヤさせてくれた新型コロナウイルス対策法フェーズ3だけど、さっきようやく上院で可決したというニュースが届いた。なんと満場一致。100対ゼロではなく、自己検疫している議員もいるから96対ゼロだったそうだ。ここ数年、議会はImpeachだの何だのと、いつも党間の揉め事ばかりだったので、超党的な法律を見るととてもうれしい。ただ、新型コロナウイルスというとんでもない共通の敵が現れないと団結できないんだったら、一層のことImpeachとかサーカス見てる方が平和だったな~、って思ってしまう。エイリアンでも攻めて来たら地球上の争いもなくなるのかな。そう言えば、Let It Beセッションでバンドメンバー間で揉めてたThe BeatlesもBilly Prestonがゲストで登場してからはBehaveしてたもんね(あんまり関係ない?)。後は下院。そしてトランプ大統領。トランプ大統領は余り賛同している感じはないけど、Mnuchin長官が根回ししてるんだろうか。根回しできるような相手じゃないか。まあVetoはないだろうから後は下院のPelosiの腕前に期待ってことだね。

新型コロナウイルス対策法フェーズ3の税務関連規定Sneak Preview(Downward Attribution例外復活ならず)

$2T、すなわちザックリ200兆円相当にのぼる新型コロナウイルス対策フェーズ3が、5日間に亘る喧喧囂囂の議論の末、上院両党および大統領府で基本合意された旨をMitch McConnellがDC時間水曜日早朝に当たる午前1時37分に公表した点は昨晩「200兆円新型コロナウイルス対策法フェーズ3合意」で速報した。$2Tのパッケージは米国の法律としても最高値。McConnellが「戦時中の法案と実質同様の母国への投資」と位置付ける超大型Rescueプランだ。

前回、上院を通過しなかった月曜日のバージョンと異なり(「新型コロナウイルス対策法フェーズ3法案に潜むTCJAテクニカル訂正規定 – Downward Attribution例外復活その他」を参照)、法文そのものがリークされていないのでTechnical Correctionの行方等、分からなかったんだけど、ついさっき上院財政委員会のChuck Grassley(同じChuckでもSchumerじゃないからね)がフェーズ3の税務関連の規定を公表した。

ちなみに月曜日の上院法案の名称が。「Coronavirus Aid、Relief、and Economic Security Act」だったので、略は「CARESA」かな?って書いたけど、そうではなく「CARES」Actとなるそう。なるほどね。米国の法律はアクロニムとして読んでどうなるか考えて命名されることが多いので、CARESAはチョッと車みたいでぴんと来なかったんだけど(それはPorscheのCarreraだね)、Caresだったんだね。よく考えるね。今日、上院を通過するバージョンも同じ名前なのかな。

で、上院はようやくというか、無理やり仕方なく一枚岩になれた感じだけど、これから下院も通過させないといけない。民主党内の異なるイデオロギーに基づく各派をどうやって一致団結させるかはNancy Pelosiの腕の見せ所。今回、上院で調整に手間取った一つの理由に、大統領府代表で交渉を一手に請け負っていた財務長官のMnuchinが、フェーズ2のFamilies First Act可決時に、最終段階で民主党に妥協してSick Leaveの規定を知らぬ間に(?)変更した点を嫌い、上院共和党議員が徹底的に法文内容を検証した点が報道で指摘されている。

上院リーダーのMcConnellにしても下院議長のPelosiにしてもいざとなると政治家としての力量を見せつけてくれる。ちなみに上院Minority LeaderのChuck Schumerは今回のフェーズ3に基づくビジネス支援の対象から、大統領、副代表、議員、閣僚、に支配される主体は除く規定を入れた、と誇らしく語っていたけど、要はトランプ系の会社には何の支援もないということ。

で、Grassleyが公表したシートによると税務関連の規定は大概において予想通り。低所得からミドルクラスまでの就労権を伴うSSNを所有する納税者を対象にした$1,200の「Recovery Rebate」。所得制限は単身、Head of Householdの場合には$75,000、夫婦合算の場合には$150,000で、2018年または2019年の確定申告書ベースで判断するそう。ブッシュ政権の還付前払いではなく、本当のRebateなので、後の税金と相殺とかそういうことではなく手続きは楽。また子女一人当り$500の追加Rebateがあるので、4人家族だと$3,400となるはず、とのことだ。

他にも、雇用の確保、事業主が当面必要とする資金確保、流動性の補填をサポートする規定が続く。失業保険カバレッジの拡大、適格退職金プランからの引き出しやローンにかかわる制限緩和、慈善団体への寄付金控除制限枠の緩和、学費ローンの雇用者による非課税返済、雇用者による人材リテンションにかかわる給与コストの50%の税額控除化、雇用者によるPayroll Taxの支払延期、パススルーや個人事業主の事業損失使用制限の緩和、過年度の支払ったAMTの早期還付、などが含まれる。

で、期待のNOL使用制限緩和だけど、2018年、2019年、2020年に開始する課税年度に生じるNOLは5年間の繰り戻しが認められ、80%所得制限の適用一時停止。またSection 163(j)の支払利息損金算入制限に関しても、予想通りEBITDA x 「30%」の枠が、2019年および2020年課税年度に関して「50%」に引き上げられる。

で、肝心のTechnical Correctionは、と言うと・・・。大ショック。唯一生き残ったのは即時償却の対象となるはずが法文ドラフトエラーで適用から漏れていた適格内装にかかわる修正のみ。Downward Attributionのクロスボーダー課税の適用例外とTransition Taxにかかわる還付制限の緩和はどこにも見当たらない(泣)。McConnellが公表した共和党案にはしっかり入っていたのに。民主党が大企業に甘いって内容勘違いして、交渉過程で削除されてしまったのだろうか。元々、立法趣旨に沿わない形で法文が最終化されてしまった間違いで、それを基にみんな苦労してるんだけどね。理不尽なGILTI合算とかこのまましばらく継続ってことなんだろう。

ということで、とりあえずSneak Previewでした。

Tuesday, March 24, 2020

200兆円新型コロナウイルス対策法フェーズ3合意

議会とMnuchinが代表するトランプ大統領府は$2Tに上るパッケージに合意した様子。先日のポスティング「新型コロナウイルス対策法フェーズ3法案に潜むTCJAテクニカル修正規定 – Downward Attribution例外復活その他」で触れたTechnical Correctionは生き残ったでしょうか?まだ原文見てないので何とも言えないけど、大企業への「Slush Money」と勘違いされて削除されてないといいんだけど。これから両院で投票、トランプ大統領の署名を経て法律化される予定。Technical Correctionの運命やいかに。

Sunday, March 22, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3法案、上院通過困難に

昨日のポスティングで触れたコロナウィルス対策法第三弾の共和党上院法案「Coronavirus Aid、Relief、and Economic Security Act」は両党およびMnuchinの精力的な交渉にもかかわらず上院民主党の支持を取り付けることができず白紙に戻る勢い。争点はいくつかあるらしいけど、代表的なのは例によって「Corporation」、大企業に甘すぎる、というもの。大企業は悪者になりがちだけど、機能不全の米国において、市民へのサポートの多くは大企業の努力によるもの。アマゾンがなかったら多くの人の生活に支障が出るだろうし、アマゾンは雇用環境が急激に劣化する中新規雇用中。ウォルマートだってフル回転だし、Googleもウィルス対策関係のサイトを立ち上げている。VerizonはWFHでみんなのインターネットが途絶えないように2カ月間、アクセスを保障してくれてるってことだし。製薬企業はワクチン、治療薬を開発をフルスピードで進めている。航空会社だって数人しか搭乗しない国内便を律義に飛ばしてくれているし。あれ、燃料代も出ないだろう。こんなに社会に貢献している有能な多くの米国企業。この期におよんで余りいじめ過ぎて、米国大企業をダメにしないようにね、って感じ。米国大企業が弱体化した状態で次の新型ウィルス来たら、これらのこと政府が管理できるとは思えず、感染者数がトラックできないどころか、毎日の生活も成り立たなそう。大変なことになるよね。

で、上院法案が通らないということは、Downward Attributionの撤廃、適格内装の即時償却未適用、もそのまま残るってことなのかな。Downward Attributionの例外復活も大企業へのGoodiesって勘違いされているのかもね。まあ、2年前に撤廃され、Transition TaxやGILTIに多大な影響を与えてきたTCJAの規定だから、今さらなかったことにするっていうのも、その間に再編とかしたケースもあるだろうし、それはそれで論争の的かもしれないけどね。憲法上の問題も出てきそう。

ということで、新しい法案はどんなものになるのでしょうか。それとも現法案の一部を手直ししてProcedural Voteに持ち込むのかな。TCJA Technical Correctionが気になるけど、月曜日の市場が開く前に吉報を届けないとマーケットの更なる暴落も。何とか両党力を合わせて有益な法律が可決されますように。

Saturday, March 21, 2020

新型コロナウイルス対策法フェーズ3法案に潜むTCJAテクニカル修正規定 – Downward Attribution例外復活その他

コロナウィルス対策法の第三弾が近日中に可決される予定だっていう点は前回のポスティング「新型コロナウイルス対策法第二弾可決で米国は次の「ピラー3」突入」で触れたけど、Mitch McConnell率いる上院共和党が第三弾法案を提出した。「Coronavirus Aid、Relief、and Economic Security Act」だ。略して「CARESA」かな?23ページの法案とは言え、コストは2Tドルに近づいていると言うことだから、1ページ当たり100Bドル(10兆円!)という高価な法案だ。

それにしても昨日まで$1Tと言われていたのに、各産業を代表するロビイストたちが暗躍し、より広範なセクターに高額の公的支援をすることになっているかもしれない。また民主党が譲らない失業保険の拡充も大きなコストとなる。州政府が、レストラン、バー、ジム、等の営業を禁止し、市民に外出しないよう促しているんだから、公的支援が必要な産業や失業保険が必要な個人も後を絶たないだろう。NewsomeにしてもCuomoにしても、経済的コストは覚悟の上、苦肉の策として究極のDraconian策を打ち出しているだろうけど、どこかで何とかしないとね。Q2はあきらめるとしてQ3には復活して欲しいものだ。

で、対策法第三弾、税務的には、「Recovery Rebate」と名付けられた適格納税者に対する1,200ドルの現金支給、申告書提出期限の7月15日への変更、慈善団体への寄付金一部のAbove-the-Line控除や控除枠の拡充、予定納税や給与税の支払い遅延、と並び、前回から触れているNOL使用時の80%所得制限の2020課税年度における適用一時停止、Section 163(j)の支払利息損金算入制限のEBITDA x 「30%」の枠を2019年および2020年課税年度に関して「50%」への引き上げ、等、予想された内容のGoodiesが並んでいる。

で、そんな中で法案を見てビックリだったのが、TCJA絡みの複数の規定にかかわる修正法案(Technical Correction)が盛り込まれている点。中でもナンとTCJAで撤廃されていたSection 958(b)(4)、すなわち外国法人がCFCに当たるか、また米国人が外国法人の「米国株主」に当たるかの決定時に外国人から米国人には持分がみなしでDownward Attributeされてこない、という従来の有益な例外規定が復活することになっている点。さらにその上、Section 951Bという条文を新設して、元々達成したかった立法趣旨をより厳密かつ狭義に規定した形でのDownward Attributionの適用を規定しているのだ。Technical Correnctionなので、TCJAの発効時に過去訴求して適用となる。2年半も経っているのに。

TCJAは、ご存知の通り2017年12月に電光石火の早業で可決されたことから、法文そのものが必ずしも立法趣旨を反映していない条文が存在する点が可決当時から指摘されており、可決後早々にTCJA立法立役者の張本人である下院歳入委員会長のBrady自らが修正法案(「Technical Correction」)を草稿していた。修正が必要と認識されている規定の代表的なものが、他でもない、従来存在していた「Downward Attribution例外規定」の全面撤廃にかかわるものだった。

チョッとおさらいしておくと、米国で法人に対する持分を論じる際、大別して、直接持分、間接持分、みなし持分を考えないといけないことが多い。みなし持分というのは実際には自分は所有していないけど、自分と何らかの関係にある者が所有している持分をあたかも自分が所有しているかのように取り扱うというものだ。その意味で間接持分、すなわち自分が所有している事業主体が所有する他の事業主体の持分を間接的に所有しているかのように取り扱う規定、はみなし持分とダブルけど、みなし持分はもっと広範で、特定の家族メンバーの所有している持分がAttributeされてきたりする。中でもチョッと直感的に分かり難いのがDownward Attribution。法人に関しては、50%以上の株主が所有する持分は自分が「全て」所有しているかのように取り扱われる。例えば50%ピッタリ自社Xを所有する株主が他社Yの100%株式を所有している場合、自社Xは他社Yの100%をみなしで所有しているように取り扱われる。パートナーシップに至っては、どんなに少数の持分でもパートナーが所有している株式は全てパートナーシップがみなし所有していることになる。例えば、5%しかパートナーシップXの持分を所有していないパートナーがY社株式100%を所有している場合、パートナーシップXはY社の100%をみなしで所有しているように取り扱われる。遺産や信託に関しても同様に受益者からの広範なDownward Attributionが規定されている。また、みなしで所有していると取り扱われる持分は、一定の例外を除きそこからさらにAttributeされていくのでたちが悪い。

このDownward Attributionそのものは、今も昔もそのまま存在し続けてるんだけど、クロスボーダー課税の検討局面、すなわち外国法人がCFCなのか、とか米国人が外国法人の10%持分を所有する米国株主なのか、とかの判断時には、従来は、外国人が所有している持分を米国人がDownward Attributionを通じてみなし所有しているとは取り扱わない、というとても有益かつ常識的な例外規定が存在していた。Section 958(b)(4)だ。TCJAはインバンド企業のCFCに対するDe-Controlling、例えば米国子会社が所有する100%CFCの51%持分を日本の親会社に譲渡して、外国法人をCFCでなくしてしまうような取引、等を阻止するため、Downward Attribution例外規定をまるまる撤廃していしまい、結果としてDownward Attributionがクロスボーダー課税の全ての局面で取り込まれることになってしまった。Sub Fに加えてGILTIが導入されたり、Transition Taxが規定されたりしたので、その適用はDe-Controlling取引等を取り締まる目的を大きく逸脱してしまったのだ。それに気づいた議会は早速、Technical Correctionドラフトを公表したが、後の祭り。TCJAそのものは予算調整法を利用して共和党だけで可決できたけど、Technical Correctionは通常の法律通り、上院にて単なる多数決ではなく60票の賛成が必要なので、民主党の賛同が不可欠。コロナウィルス感染という共通の敵が現れるまで、弾劾裁判だの何だのと党派の戦いに忙しかったので、とても可決の見込みはたってなかった。

今回、コロナウィルス対策法第三弾の法案で、この部分のTechnical Correctionをチャッカリ取り込んでいるのは賢い。この修正はもちろんコロナウィルス対策とは関連はないに等しいけど、Technical Correctionのみでの可決は不可能に近い政局の中、可決Mustとなるコロナウィルス対策法案に盛り込めば、修正が法制化できるからだ。

で、具体的には「Downward Attribution例外復活」とかなり直接的なタイトルで規定される修正規定は、従来のSection 958(b)(4)をそのまま甦らせている。一語一句そのまま。なつかしい~。夢のようだ。そして、更にSection 951Bという条文を新設している。Section 951っていうのは元々Sub F合算を規定している条文で、Section 951Aはお馴染みGILTI。この「A」とか「B」って意味深に聞こえるかもしれないけど、実は特に大きな意味はなく、951に準じる規定なんだけど、952とか953が既に取られているので、無理やり951と952の間に押し込んでいるだけの話し。

Section 951Bは、基本Downward Attributionは適用しないけど、特定の取引でDownward Attribution例外が濫用されていると思われる局面に限定して、Downward Attributionを適用していると同様の効果をもたらす面白い規定になっているように見え、BradyのTechnical Correctionドラフトに規定されていたSection 951Bと同様に見える。Downward Attributionを適用したとして、外国法人の50%超の持分を所有することになる米国人を「Foreign Controlled United States Shareholder」と定義して、通常の規定、すなわちDownward Attributionは不適用、で判断したらCFCにはならないけど、Foreign Controlled United States Shareholderを米国株主として取り扱うとするとCFCになる外国法人を「Foreign CFC」と定義している。その上で、Foreign CFCやForeign Controlled United States ShareholderにはSub FやGILTIを適用するっていうことみたいなんだけど、従来通り、直接・間接の持分がなければテクニカルにはSub FやGILTIの対象となるケースでも、実際の合算は生じない。

ちなみにSection 958(b)(4)と並び、法文エラーでSection 168(k)即時償却の対象外となっていた適格内装資産への即時償却適用、およびTransition Taxの支払いにかかわる還付制限の緩和もTechnical Correctionとしてしっかり含まれている。どさくさに紛れて結構見せてくれるね。このまま可決するのかな。

Friday, March 20, 2020

4月15日申告書提出期限の7月15日延期を公式発表

昨日のポスティング「新型コロナウイルス対策法第二弾可決で米国は次の「ピラー3」突入」で申告書提出期限が4月15日ではなく7月15日に延期される説に触れた。IRSは支払いの遅延にかかわる金利やペナルティは免除するものの、申告書の提出期限は4月15日って昨日まで言ってたけど、さっきMnuchinが7月15日に延期する方針を公式発表した。詳細はこれからだけど、個人所得税の申告期限となる4月15日って12月決算法人税申告書の申告期限(もちろん通常はそこから延長するんだけど)でもあるので、こちらも対象となる可能性大?3月決算の法人に関しては不明だけど、もともと7月15日なので一応そのままかもね。取り急ぎBreaking Newsでした。

Thursday, March 19, 2020

新型コロナウイルス米国対策法第二弾可決で次は100兆円規模の「ピラー3」

マンハッタンの街角からこれだけ人影が消えるとは・・。Midtownは殺伐としていて、JFKもTSA Preだろうが一般のレーンだろうが列なし。普段はうっとうしいな~としか思えなかったあのごった返した人混みが今となっていは懐かしい。唯一混んでるのはWhole Foodsの冷凍食品売り場くらい?あと、なぜかどこ行っても結構ミルクとかパスタとかが売り切れてるんだよね。パスタは日持ちするしクックするの簡単だし、失敗の可能性も低いから何となく分かるけど、ミルクね。不思議。子供たちがHome Schoolなのでシリアルでも食べまくるのかな。

で、一瞬にしてWork From Home(WFH)とHome Schoolの同時進行っていうのが米国のNew Normになり、そんな中、OECDもWFHらしい。パスカロ氏も「デジタル課税の議論をデジタルでやるのも中々乙なもの」とか言って、今ではコロナウィルスのホットスポットになってしまった欧州からBEPS 2.0の順調な進捗ぶりをアピール。Home OfficeとHome Schoolの同時進行状態の日常は全てインターネット頼みで、デジタルの恩典の大きさを再認識させられる。あんまりみんなでDSTとか言って締め付けてイノベーションが低下しないようにしないとね。

NYC見てても思うけど、ここまで事業活動を制限されては一気に大不況になるのは当然。このままだと近々に米国労働者の半数がレイオフまたは賃金カット、航空会社は全社5月までには倒産、とか信じられないシナリオが報道されてる。Amount A、B、CとALPに関して書いてる途中だったけど、昨日の夜、米国議会でコロナウィルス対策法の「第二弾」が可決したので、チョッと速報しておく。コロナウィルス対策としては、既に10日程前に医薬研究・開発、公共衛生機関支援、小規模事業支援などにフォーカスした第一弾の法案が可決され、数日前にはトランプ大統領が「国家非常事態」を宣言し、当宣言をもって、従業員が負担する一定の費用を雇用者が非課税で補填できる制度のコロナウィルス絡みの費用への適用がトリガーされている。第一弾前後の様子は「新型コロナウイルスの感染拡大で2008年のTARP再来?」を参照して欲しい。

で、今回の第二弾。正式には「The Families First Coronavirus Response Act」と言われる。和訳は何になるんだろうね。コロナウィルス対策家族保護法、とかだろうか。ここではコロナウィルス「対策法第二弾」としておく。トランプ政権は繰り返し「中国ウィルス」とか言ってるけど、さすがに法律の名称は「コロナウィルス」。

で、対策法第二弾の目玉は、一定要件を充たす雇用者に対してコロナウィルスにかかわる有給休暇制度を強制する一方、そのような有給休暇のコストを税額控除として認め、実質、連邦政府がコスト負担する仕組み。有給休暇は最初の2週間がコロナウィルスに感染したまたはテスト待ち、等の状況に規定される治療休暇で通常の給与の100%。または同期間、家族を含む他人の介護を行う場合には2/3支給。その後の10週間は、17歳以下の子女が休校等の理由で家で面倒をみないといけない目的に限り2/3の報酬で家族休暇。この家族休暇は17歳以下の扶養子女が家にいないといけない。ただ、全国的に学校は閉鎖されているので、対象となる年齢の子女がいれば大概において適格可能性がある。本当に家にいるかどうかどうやってチェックするんだろうか。孫とかおばあちゃん、おじいちゃんとか面倒を見ても適格ではないように見える。

例外とか多くてあんまり自信ないけど、最初の2週間の治療休暇は、従業員が50人未満のおよび500人以上の雇用者は免除、と読める。ということは、500人以上の大手企業は有給制度があるところがほとんどだろうけど、コロナウィルス治療目的で有給休暇を与えてもコストを税額控除が認められないのでコスト自前となる。これって逆に言えば、対策法第二弾に規定される治療休暇制度の適用は50人~500人の従業員を持つ雇用者ということになる。ちなみに米国のプライベートセクターの従業員ほぼ半数が500人以上の従業員を有する雇用者に雇用されているらしい。4分の1は50人未満の雇用者の元で勤務しているということだから、適用対象となる従業員は全体の4分の1ってこと?なんか中途半端な感じもあるけど、500人以上の企業を対象外としている点に関してNancy Pelosi曰く「税金で大手企業を援助するようなことはできない」って民主党っぽい理由をあげ、大統領府代表のMnuchin長官も「大手企業は元々この手の恩典は自ら提供しているはずで政府の援助は不必要」とのこと。まあ、Mnuchin長官が以前属していたGSやOneWest Bankはもちろん手厚いベネフィットがあったんだろうから、自らの経験に基づいて言ってるのかもね。

有給コストを税額控除を通じて連邦政府が負担するっていうのは上述の通りだけど、更に有給相当額の支給額は社会保障税(FICA)の雇用者マッチが免除される。税額控除で減額が認められる連邦税は、雇用者が四半期毎に納付するFICAの雇用者マッチ額。フリーランサーって今はもう言わず、最近で言うところのギグワーカーとかの自営業者がコロナウィルス関係で欠勤(?)する場合には、FICAと同じだけど雇用者相当分も自分で払う自営業税(SECA)に対して税額控除を計上することが認められる。自営業ね。どうやって欠勤してるって判断するんだろうか。自分一人で「今日は病欠しますね」って宣言して税額控除もらえるのかな。何となく不思議な規定。公務員にも同様の権利が認められるらしいけど、税額控除はなし。気の毒なことにヘルスケアとか救急対応関係の職種は対策法第二弾の有給休暇の対象ではないらしい。休まれては困るってことなのかもしれないけど、最前線でリスクも高いと思うけどね。

税額控除には上限があり、治療休暇で給与の100%を支給しているケースは1日511ドル。治療休暇だけど、2/3を支給しているケース、また子女介護の家族休暇は一日200ドルまで、ということらしい。法律結構難しいんでHRとかPayroll部とか結構大変そう。ADPとかのプログラムも至急アップデートしないといけないし、みんなWFHで対応できるのかな。これらの措置は2020年末で失効する。

対策法第二弾が可決したので、次は来週早々にも「第三弾」と言われている。OECDはピラー1と2だけど、米国コロナウィルス対策はピラー3が間近ってことだね。OECDもピラー3でFDIIとか全世界に展開してくれるとピラー2とバランスがとれるんだけどね。で、米国対策法ピラー3では、航空会社、ホテル、ボーイングその他悪影響が激しい業界の巨額のBailoutが盛り込まれると予想され、プライスタグは1Tドルと言われている。9/11の直後でもここまで飛行機空いてなかった。Bailoutはいいけど、自己株式のBuybackに使わないように、って民主党は釘をさしてるみたい。共和党的には別にBuybackでも悪くないじゃん、みたいな感覚はありそうだけど。トランプ政権が押している社会保障税減税は賛否両論。また、各納税者に$1,000~1,200の現金支給も検討されている。

1Tドルといえば、100円単純換算で100兆円。2008年のTARPは500Bドルだったからその倍。対策法第二弾の10倍のコスト。トランプ政権としては再選をかけて100兆円いれるんだろうけど、これだけ経済活動をシャットダウンしてしまったら100兆注入しても、200兆注入しても焼け石に水じゃないのかな。なりふり構わない感じだけど、みんなに$1,000配給するより、どうしたら一日も早くみんなが社会復帰できるか考えた方がいい。もう感染を封じ込めるのは無理そうだから、何か代替案を検討しないと「Shelter-in-Place」策の経済的なツケは余りに大きい気がする。今後、未来永劫、基本的な社会システムが変わったり、もう立ち直れないようなレベルのダメージにならないようにって願うけどね。でも政策を策定している当事者たちが、今後どうなるか分かってないのが露呈されているので有効な対策を打てるのかチョッと不安というか疑問。そもそも感染者の数も全然分からないだろうから、致死率のデータとかも実際通常のインフルエンザとどう違うのかも不明。

まあこんな事態は想定外ってことで不意打ちされたように見えるけど、実は連邦政府はコロナウィルス感染のような事態は何年もシミュレーションを繰り返していたそうだ。特に昨年実施された「Crimson Contagion」というコード名のシミュレーションは中国で呼吸器系の新型ウィルスが発生し、シカゴ経由で全米に瞬く間に広がるっていう、コロナウィルスそのものの展開を想定して練習していたそう。その際に多くの体制不備が浮き彫りになっていたにもかかわらず対応策が十分に論じられることはなかったらしい。今となっては後の祭り。

対応策ピラー3絡みで、米国税務面では、TCJAで導入されたばかりのNOLの80%使用制限を適用停止する案が有力らしい。随分と短命だったね。ちなみにNOLが発生する年は単年でマイナスだからBEATになり難いけど、2020年に大きなNOLを計上すると、翌期以降にBEATになり易いんで最悪。まさかTCJAの効果がこんな形で反映されるとは。第二弾が小規模事業主に重荷になるっていう認識もあるので、第三弾では小規模事業主対策の拡充も想定される。個人所得税申告、延長時の支払いを4月15日ではなく7月15日に延期する説もある。IRSは4月15日って今日言ってたけど、行政府のAgencyの言うことだから、議会が申告日変えたらもちろん従わざるを得ない。

ちなみに議員さんにも当然、コロナウィルスに感染の疑いがあったり、感染した人と接触したので自己検疫したりしてるケースが増えてきてるけど、現状の法律では議会の投票はDCで実際に行わないといけない。定数行かずにピラー3可決できないとかなったら面倒だし、命かけてDCに来るのも大変そうだし、これを機にOnline投票が認められるように法改正されるべきだよね。

Sunday, March 15, 2020

OECDピラー1のAmount A、B、CとALP (4)

コロナウィルスの感染拡大で、米国のプライベートセクターが迅速に対応し、米国全体がシャットダウン状態にある点は前々回触れたけど、2008年金融危機への対応でも実証されているように、米国企業は人員削減等のコスト抑制の動きも同様に迅速。雇用環境はつい数週間まで絶好調だったけど、今後、どの程度、米国企業が「Draconian」な対応に出て雇用が悪化するかは、コロナウィルスが米国の実体経済、果ては大統領選挙に与える影響度合いを大きく左右することになる。

う~ん、この10年ごとのサイクル、嫌な感じ。Michael LewisのThe Big Short同様に2008年の金融危機を題材にした「Margin Call」っていうドラマ(映画?)があるけど、その冒頭のシーンで大手投資銀行のリスク管理部長(?)のEric DaleがHRと社内弁護士に急に呼ばれて、退職パッケージの説明を受けて、プライベートセキュリティにエスコートアウトされるシーンがある。あれって米国の大手企業ではリアルな世界なんで、米国エグゼクティブの人員整理の実態を垣間見てみたい方は、覗いてみるといい。ただ、実際にはガラス張りのオフィスであれをやられることはないだろうから、そこは唯一ハリウッドっぽい演出だけどね。ただ、あのような形での通告、そして同時にセキュリティエスコートは常套。Margin Callでもそうだけど、強面のプライベートセキュリティが見守る中、家族の写真とかを箱にしまうシーンは当人だけでなく、その周りにいる従業員に与える精神的ショックも大きい。何年にも亘り、いつHRから電話があるんだろう、電話があったら何カ月Surviveできるかな、みたいなリスクと裏腹の関係にあるキャリア、特にProfessional Service Firmのような環境で結果を出さなくては、って緊迫した毎日でみんな頑張ってるんで、あんなシーンを見ると背筋がゾクッとする。

で、元々ゾクッとしてたけど、物事は相対的なので、今となっては平和な議論に見えてきたOECDのBEPS 2.0。その中でもピラー1、特にそこに規定されるAmount A、B、Cと既存の国際課税システムの基盤として長年君臨しているALPとの関係の検討アレコレを続ける。

前回はAmount Aの主に重複解消法に関して触れけど、これには2つの切り口がある。まずは単純にALPで既にどこかの国で課税所得として認識されている所得の一部が、Amount Aという名で再度課税されることになるので、重複を避けるため、Amount A相当額に関して、どこの国のどの主体に課税所得を献上させるか、という検討。もう1つは、市場国に配賦されるみなし超過利益のAmount Aが、ALPに基づき既に当市場国に課税権がある金額、超過利益の話しなので主にAmount Cに相当する所得、と重複してるかどうかという検討。前者はグループ全体で帳尻を合わせなくては、っていう話しで、後者はそのサブセットと言えるけど、フォーカスは個々の市場国にピラー1の意図通りに市場に報いるレベル相当額の所得が配賦されているか、すなわち、Amount AとCを介して重複してラッキーしていないか、という話し。これらの点に関して、現状のピラー1提案では、重複は必ず避けなくてはいけない、と強調されているものの、具体的な解消策には踏み込んでいない。この検討、特に前者の検討、は現状のALPベースの国際課税システム下で、全ての超過利益を一国、例えば親会社、が独占している場合には分かり易い。

例えば、ピラー1適用の売上条件等を充たす「X」グループという日本の多国籍企業が、単独のセグメントで構成される「消費者向けビジネス」に従事していて、連結グループベースで高い利益率を誇っているとする。Xグループの親会社は日本法人JPで、JPはグループにおけるR&Dの成果、その他のグループ知財の全てを所有し、結果としてALPベースではグループの超過利益全額をJPが独占して認識しているとする。JPは当然、日本で販売にも従事している。USSはJPの米国販売子会社で米国における販売・マーケティング活動に従事している。さらにUSSはカナダに物理的な存在は持ってないけど、カナダの消費者向けに販売・マーケティングを米国から行っているとする。

まず既存の国際課税システムに基づく課税関係を整理してみると、米国にはUSSという物理的な存在があることから、従来より米国には課税権があり、ALPベースで米国をTested Partyと位置付け、CPM検証に基づき、USSの機能・リスクに基づくルーティン販売・マーケティング活動リターン、を米国課税所得として認識することになる。ただし、近年、米国税務当局から米国にMarket Intangibleがあり、それに見合う超過利益の一部を米国で認識するべきではないか、という議論が燻っているとすると、この議論はALPベースでの話しなので、ピラー1導入とは一切関係なく検討していかないといけない。一方、カナダには物理的な存在がないので、GST等のVAT的な外形課税は別として、法人税の観点からはカナダはJPにもUSSにも課税権はない。

で、もしピラー1が大枠現時点で提案されている内容のまま合意・実践されると、日本、米国およびカナダが市場国となるので、各国においてXグループが「Significant and Sustained Engagement」があり、売上高その他のThreshold条件も充たすとすると、3か国に新課税権が認められ、Amount Aにアクセスできる市場国となる。ソーシング国となる日本は市場としての位置づけと同時に、それ以外の位置づけのDual Capacityとなり、他の機能やリスク、例えば、R&D、開発、製造、サービス等が存在する。

グループXの連結財務諸表の税引前利益に基づき、例えば売上の20%超の部分をみなし超過利益と認定する。さらに当超過利益の「Upper Portion」、例えばさらにその20%部分が、市場国に新たな課税権を認める超過利益、すなわちAmount Aとなる。

ちなみに20%っていう数字はあくまで僕が例示目的で使用しているだけで、もちろん未定なのでくれぐれも誤解がないように。特に税引前利益の何%を超過利益とみなすか、っていう部分の最初の20%は諸説あり、OECDインパクト試算では10%の例も設けられていたし、口頭の説明では10かもしれないし、20かもしれないし、30かもしれないし、何も決まってないという点が強調されていた。なぜか日本では当初から10%というのが既定路線のように語られることが多いけど、米国では元々は20%だろうという推測が大概だった。現時点では未だ決まっていないということだけ理解しておけば十分。

ただ、10%を使用する方が、当然、みなし超過利益が大きくなり、結果としてそのUpper Portionで構成されるAmount Aも増えるので、市場国に再配賦される金額が大きくなる。Amount Aはグローバルのトータルで見ると、重複が適切に解消される前提でゼロサムゲームだ。すなわち、トータルでは課税所得は1ドルも増えず、既にどこかで認識されている所得を市場国に配賦し直すだけ。でも、日本以外の多国籍企業の超過利益は、多くのケースで税率の高い親会社所在地ではなく、タックスヘイブンで認識されているはずなので、課税される場所が変わるだけ、すなわちトータルの課税所得はそのままだけど、グローバルで見ると当然、税収は増えると予想されている。OECDのインパクト試算でもそういう結果になっているけど、その際に、タックスヘイブンを「Investment Hub」っていうLegitimateっぽい感じの名称で呼んでくれているのは、玉石混交のInclusive Frameworkならではの配慮なんだろうか。「うちの国、タックスヘイブンで・・」って言われるとチョッと悪者っぽいけど、代わりに「うちの国、実はInvestment Hubで・・・」って言われると「なんか凄いね!」って感じになるもんね。ならない?

で、Amount Aの総額を確定すると、次に新課税権を認められる国間の相対的な売上比率等の「Allocation Key」で各国の新課税所得が算定される。上の例を続けると、日本、米国、カナダの相対的な売上比率で、各国にAmount Aが配賦される。米国はさらにUSSが行っているルーティン販売・マーケティング活動のリターンに当たるAmount Bも課税対象とすることができる。このAmount Bは基本的に現状の国際課税システム、ALPでUSSに配賦されているであろうルーティンリターンと同じコンセプトの金額だけど、ALPでUSSの機能・リスクを基に個別に検証していたリターンの代わりに、グローバルで合意される固定%を基に算定する。結果、現状CPM等で検証しているリターンとの比較でマイナーな差異が生じることが予想される。Amount BやCは新課税権を生み出す訳ではなく、カナダでは、引き続き、Amount BやCが課税所得となることはない。

さらに、もし米国がUSSはルーティン販売・マーケティング活動以上の機能・リスクを持ってたり、Market Intangibleを所有していると認定する場合にはAmount Cも課税対象とすることができる。概念的にはこの金額は今でも既にALPベースで課税対象とできる金額。なのでピラー1有無にかかわらず要注意なんだけど、Amount Cって位置づけになると、係争を最小限とするため、強制仲裁等の強固な係争防止・回避策を適用することが義務付けられるのだろう。日米だったら既に議定書で強制仲裁が規定されてるので、余り何も変わらないけどね。

で、米国やカナダに配賦されるAmount Aだけど、この例では、 JPがALPベースで全ての超過利益を認識しているっていう例示に便利な定型としているので、全額、日本のJPが献上することになる。コンセプト的には米国やカナダが、自国に配賦されるAmount Aに関して、JPを直接課税することになる。日本では、重複を避けるため、ALPベースで認識する課税所得から米国、カナダに再配賦される金額を「献上」するため、非課税処理を認める措置を取らされることとなる。日本に配賦されるAmount Aは自らの超過利益を献上することになるので相殺されてネットでプラスマイナスゼロとなる。

また、米国でAmount Cの認識があると、超過利益の全額をJPが認識という例示の前提が成り立たなくなる。その場合、Amount Aを献上させられるのは、JPだけでなくUSSもなのか、どのように献上額の負担比率を決めるのか、という問題に加え、米国に配賦されるAmount AとAmount Cにどの程度重複があるのか、というとても複雑な検討が必要となる。

この例では、潜在的な米国のAmount Cの議論を除くと、ALPベースの超過利益は日本一国が独占しているので、Amount Aの献上元が分かり易い。日本企業的にはあり得るパターンなのかもしれないけど、多くの多国籍企業のビジネスモデルはこんな定型例とは比較にならないほど複雑なので、Amount Aをどのように献上させるか、どこの市場国でAmount A以外の市場国としての超過利益、すなわちAmount Cと重複しているのか、を整理するのは最終的に多くの部分でフォーミュラを使用することになるとしても、実務は困難を極めるだろう。

また超過利益って言うのはリスクマネーのリターンだから、マイナスになることもある。その場合、Amount Cはマイナスになり得るのか。Amount Aは少なくともセグメントベースでマイナスになっていれば、存在しようがないけど、OECDはAmount Aの認定に繰越欠損金的な概念を導入する予定だと提唱しているので、実際のデザインは難しそう。

ちなみにJPの単体所得計算時には、移転価格やグループ内所得配賦に影響を受けない金額とか市場国とは関係のない金額も加味されている。例えば、単純に日本国内で第三者に販売している取引からの所得とか、金融取引関係の損益とか、Amount Bには関係のない製造やサービスにかかわるルーティン所得、を認識しているけど、これらはピラー1の導入により影響を受けることはないはず。すなわち、日本的にはALPベースで認識している超過利益のうち、どれだけがAmount Aとして米国やカナダに配賦されてしまうか、が主たるネットの影響となるはずだ。

日本が超過利益独占、市場国は3つっていうこんな単純な例でも、検討は山積みなので、実際に多国籍企業がピラー1を適用する際のコンプライアンス負荷の増大は凄まじいように見えるけど、ピラー1では負荷はない、またはあっても「Bare Minimum」、すなわち最低限とするシステムを模索するとしている。「Wonder if you can」だけど「No possession」をImagineするよりは可能かもね(笑)。次回はもう少し現実的な込み入ったケースに関して考えてみたい。

Saturday, March 14, 2020

OECDピラー1のAmount A、B、CとALP (3)

前々回とその前のポスティングで、OECDピラー1で提案されているAmount A、B、Cを解析してきたので、これらの所得が何なのかは大体お分かり頂けたでしょうか。

キーポイントをおさらいしておくと、Amount Aというのは多国籍企業「グループ」の連結財務諸表の税引前利益を基にフォーミュラを掛けて算定する所得となることから、従来の国際課税システムのALPと異なり、機能やリスクベースじゃないし、さらにグループベースの会計上の利益のUpper Portionを取り出すのでグループ内のどの主体に属するという紐付きの関係がない金額。さらにALPベースで既にどこかの国、主体で何らかの形で課税所得として認識されている金額。

Amount Bはルーティン販売・マーケッティング活動に対するリターンで、既存のPEやALPに基づく課税。今までのピュアなALPと異なるのは、個々の活動を基に適正なリターンを算定するのではなく、リターン%を世界中で前以て合意してしまうっていう点。係争防止のため簡素化されたALPだ。Amount Cは市場国における販売・マーケティング活動が、ルーティンの域を超える場合に市場国が認識する超過利益。この金額はその性格から、係争の種になることが分かり切っているので、従来の二国間の係争対応策を強化し強制仲裁を条件としたり、Amount Cにかかわる移転価格更正は一定期間内にのみ容認するような方向を模索中。ただし、強制仲裁の採択に関してはインド等、根強い反対国が存在するので今後の係争防止・解決策の行方は不明。

で、最初のポスティングでも強調したけど、Amount A、B、Cって命名してピラー1が議論しているのは「市場国が市場として課税権を持つことになる所得」だけの話。多国籍企業の全ての活動から生じる所得の話しではない。多国籍企業は、市場国が市場として課税権を持つ所得以外にもいろんなタイプの所得を認識する。例えばルーティン製造活動、ルーティン・サービス活動、従来から認識している市場とは関係ない立場で認識している超過利益、とか。これらの所得は今後もALPベースで各主体、各国に配賦される。

で、物理的な存在の有無にかかわらず市場国に課税権を認め、課税権を得た市場国にフォーミュラで機械的に超過利益を分け与える、というピラー1のフォーカスはAmount Aのみをもって実現される。Amount BやCは原則今までのALPのG線上のアリア、じゃなくて延長線上にある同じ考え方。ピラー1のややこしいところは、ALPでないAmount AとALPベースで配賦されるその他の所得を共存させていること。すなわち従来の国際課税システムのALPで既に100%課税所得がどこかの国で認識されている上に、別途Amount Aが算定される点だ。Amount Aは完全に重複する金額なので、そのままにしておく訳にはいかず、誰かにAmount A相当の課税所得を差し出させる、というか献上させないといけなくなる。ここのデザインは最重要かつ不確実性が高い検討となる。

Amount Aの重複解消法としては、従来の国際課税システム的に考えると、ALPで既に課税されることになる主体にFTCを認めるか、またはそれらの主体のALPベースの課税所得の一部を非課税にする方法が考えられる。Amount Aは多ければ100か国以上の市場国に分配されること、またAmount A総額を献上させられる主体、国も多くのケースで複数となること、を考えると、FTCの計算は複雑過ぎるようにみえる。なので、ここでは重複の解消は、ALPベースで既に超過利益を認識している主体(単数または複数)に総額でAmount Aとなる金額を何らかのフォーミュラで「献上」させる方法を想定しておく。その際、忘れてはならないのは、Amount Aは通常の所得と異なり、主体に紐付きでないし、グループ内の特定の取引相手に認識されている所得ではないので、通常の移転価格調整にかかわる対応的調整のようなメカニズムは適用不可能という点だ。

そこで、Amount Aを多国籍企業グループ内のどの主体、すなわち最終的にはどの国、に献上させるのが合理的か、また、多くのケースで複数の主体に献上させることになるだろうけど、その場合、どのように各主体に負担額を配賦するか、っていう検討が重要となる。Amount Aは概念的には超過利益のUpper Portionなので、グループ内主体のうち、ALPベースで超過利益を認識している主体にAmount Aを献上させることになるんだろうけど、そもそもどのように超過利益を特定するか、っていう検討も必要となる。

さらに、市場国だけに目を向けても、Amount BやCに加えて常にフォーミュラで算定されて分け与えられるAmount Aがプラスで所得になるとは限らない。Amount Bはルーティン販売・マーケッティング活動に対するリターンなので、AとBが重複するってことは考え難い、というかピラー1のデザイン的にあり得ないと言っていい。すなわちALPベースでAmount Bだけを認識している市場国のグループ内主体やPEがAmount Aの一部を献上するかたちで課税所得の一部を非課税とすることはないし、またAmount BがあるからAmount Aの分け前が少なくなることもない。

Amount Cはそんなに簡単ではない。Amount Cは市場国における販売・マーケティング活動が、ルーティンの域を超える場合に市場国が認識する超過利益だから、主体やPEとして物理的な存在がある市場国にAmount Aが配賦され、既にAmount CがALPベースで認識されている場合には、ピラー1内のAmount AとCが既に重複を生み出す可能性がある。Amount CがMarket Intangibleに基づく場合、そこで認識される超過利益が、Amount Aを構成するグループの超過利益の一部に既になっている可能性があると考えられるからだ。現時点でのピラー1デザインでは、Aが他の金額と重複すること、AとC間の重複も認められない、と宣言しているだけで、どのように重複を解消するかに関しては、今後の重要検討事項であるとするに留まっている。

さらにALPベースのAmount Cに関して、またはAmount C以外の超過利益、すなわち市場とは関係のない原因で認識されている超過利益、に関して後年に移転価格調整が入ると、その都度、Amount Aを献上・負担する計算の基となっていたALPベースの主体毎の金額が変動することになる。これらの問題にどう対応するのか、っていう頭の痛い検討も必要となる。まるでTCJA後のSection 905に基づくFTCのRedeterminationみたいな問題だ。なんとかしないと毎年Amount Aの再計算が求められるようなとんでもない結果となり兼ねないね。大変そう。

次回は重複解消法の具体的な参考例等に関してもう少し深掘りしてみたい。

新型コロナウイルスの感染拡大で2008年のTARP再来?

ここ数回、OECDピラー1で提案されているAmount A、B、Cを解析してたんだけど、そんなオタクな話しをしている間も、コロナウイルスの感染拡大は激しく、その影響で株式市場はメルトダウンして、2008年のFinancial Crisisや1987年のブラックマンデーの再来のような最悪の雰囲気になってきた。ちょうど、木曜日にLower ManhattanのFinancial Districtに行く用事があったんだけど、Wall Streetの証券取引所の辺りはメインストリームメディア系のレポーターでごった返していた。DOWの乱高下を震源地からレポートっていう雰囲気を出すためなんだろうか。スタジオからでも十分に報道可能なニュースだと思うんだけど、チョッと不思議。

ピラー1のSafe Harbor化提案で有名なMnuchin財務長官がトランプ大統領のProxyとなり、下院議長のNancy Pelosiとコロナウイルス対策法第二弾の制定を調整中。木曜日と金曜日だけでもこの2人、20回以上の打ち合わせを持っていたと言われていて、Deal MakerとしてのMnuchin株が上がっている。元々、投資銀行の人でイデオロギー的に凝り固まってなく、フレキシブルなので、亀裂の激しい民主党多数の下院と大統領府の関係を調整するには打ってつけの存在。そんな調整の甲斐もあり、下院は抜本的対策法案を可決し、来週明けに上院審議となる。上院多数党院内総務、要は上院のトップ、を務めるMcConnellは法案指示を表明にしているので、週明け早々に両院通過、大統領署名に至るんだろう。可決すれば、10日前に既に法制化されている9千億円規模の第一弾に続く二つ目の救済策となる。

政府の対応が今ひとつスローでは?って感じられる一方、米国Privateセクターに目を向けると、自己管理能力の高さを実感させられる一週間だった。Social Distancingを標語に米国における生活全般が一瞬にしてTransformされた感じ。先週後半には、MLB、NHL、MLS、NCAAがNBAに続き全てのゲームの当面中止することを決定し、ディズニーランド、ブロードウェイ、コンサート、パレード、公園、動物園、博物館、等も全て閉鎖となった。Appleも全店Close。大学で既に始まっていた全ての授業・テストのオンライン対応は、小学校レベルにまで広がり、企業も原則「Work Form Home」がデフォルトになっている。同じWork Form HomeでもFifth Harmonyみたいに「I ain't worried 'bout nothin'」って感じではないけどね。これら一連のアクションは、多くのケースで政府とかに指示されて実行している訳ではなく、あくまで自主的に敢行しているもの。この期に及んで一見当たり前のことをしているだけかもしれないけど、経営者その他、リーダーシップのリスク感度の高さを物語っているように感じた。

後は景気を支えるクッションを政府が迅速に提供する必要がある。ということは2008年のTARPような措置の再来?2008年を思い出すと、税法的には、まずCFCの資金を米国に還流し易くするためSection 956制限の緩和措置が施された。Section 956はCFCが米国に貸付をしたり、ローン保証を差し入れたりすると、米国株主が合算課税させられる税法。Notice 2008-91、覚えてる?僕がちょうどEYに移籍した直後の話しだ。その後もクレジットマーケットが十分に機能しないケースに備えて、2009-10、2010-12、とシリーズでSection 956には緩和策が講じられていた。M&A後にターゲットが持ち込むNOLに関して、年間使用制限枠が設定されるSection 382に関しても、金融機関買収時には緩和が規定されていた。また、一般企業等のNOLの繰り戻しが急に2年から5年に延長されたり、それはそれで結構いろいろあった。今回も何らかの救済措置が規定されるんだろうけど、Section 956にしてもNOLにしてもTCJAでその姿が大きく変わっているから、別の切り口で攻めるしかないね。

そんな中、先週から早くもDaylight Savings(サマータイム)。11月1日の日曜日まで1時間時計が早まるんだけど、このDaylight Savings、僅か1時間の差異だから、シカゴからNYCにトラベルする際の軽い時差同様くらいにしか考えていなかった。Central TimeとNYC間の出張時の1時間くらいの時差だったら、体で感じるほどのインパクトはないんだけど、なぜかDaylight Savingsに突入した数日は例年、体が直ぐに新しい時間に馴染まない気がして不思議だった。そしたらWSJに、専門家が、場所を移動する際の時差は、太陽とか周りの環境が実際に変わるんで体が自動的に自分を調整する一方、周りはそのままなのに人間だけ勝手に1時間ズラすというDaylight Savingsは別次元のインパクトがあり、実は体に掛かる負担が重く、撤廃するか年間を通じてDaylight Savingsにするべき、という提案をしている記事が記載されていた。やっぱり・・・。

ってことで、チョッとコロナウィルスの話しを避けて通れないご時世なので、脇道に逸れたけど、次回からまたOECDピラー1のAmount A、B、CとALPに関して。

Saturday, March 7, 2020

OECDピラー1のAmount A、B、CとALP (2)

前回からAmount A、B、CとALPというテーマにチャレンジし始めたけど、そのオープニング・アクトとして前回のポスティングでは、ピラー1の神髄的な金額となるAmount Aとは何か、にフォーカスしてみた。すなわち、Amount Aというのは多国籍企業「グループ」の連結財務諸表の税引前利益、すなわち会計上の数字、と一定のフォーミュラだけで算定するっていう、従来の国際課税システムでは考えられない方法で認定する課税所得だって点。これは、ALPと異なり、機能やリスクベースじゃないし、グループベースの恣意的な金額なのでグループ内のどの主体に属するという紐付きの関係がない、という刺激的な所得。また、ALPベースで既にどこかの国、主体で何らかの形で課税されている金額を再度、別の計算で複数の国に分け与えてしまう。Amount AはALPベースで認識されている課税所得と「重複」していることになり、無理やりどこかの主体にALPベースの課税所得の一部を献上させないとダブルカウントになる。したがって、そうならないようにどのように誰にAmount A相当の所得を献上させるか、っていうのはピラー1デザインの今後の最重要検討事項となる。

ちなみに、前回も触れたけど、ピラー1は僕が普段24/7で(笑)接している米国税務、特にクロスボーダー系とか組織再編、パススルー分野とは異なるので、ピラー1にかかわる経済分析、移転価格の新しい概念、特にインパクト分析の数式に登場してくるギリシャ文字とか、去年から、初めて解析し始めた分野。なんであくまで現時点の私見として読んでほしい。今後も各国間の議論の中でデザインは変わっていくだろうし。皆様もいろんな立場でピラー1の今後を見守り、日本という国、日本の多国籍企業に与えるインパクトを考えていくことになると思うけど、その際の一助となれば、みないな特別企画だ。詳細なテクニカル面を法的に追求するGILTIとかBEATの話しと比較して、チョッと感じが違う話し。う~ん、BEATとパートナーシップにしとけばよかったかな、「イニミニマニモ・・・」やり直す?って言うのは冗談で、せっかく乗りかかった船だから目的地まで行かないとね。ちょっと「免責」っぽい?

で、ピラー1で一部抜本的な改定が提案されている従来の物理的な存在に基づく課税権という考え方が100年の歴史と言われているのは、その原形が1923年の The League of Nationsによる合意まで遡るからだ。The League of Legendsじゃないからね。The League of Nationsって日本語だと国際連盟。今のUNは国際連合って訳されるけど、昔、社会の歴史のテストで連盟と連合を混同して減点された問題があったのを思い出す。英語だと名前似てないのにね。それ以来、100年間に亘り「物理的な存在、PE、に基づき課税権を認める」というコンセプトは国際課税システムの大原則として不動の地位を確立したんだけど、これは単なるポリシー的に合理的と考えられていたばかりでなく、主体やPEが税金を払わなければ国内の資産を差し押さえるという強制執行が可能という実務的な合理性も持ち合わせている。国内に物理的な存在を持たない相手に強制執行しようとしても自国に資産がなければ差し押さえるものがない。かと言って資産が所在する他国では他国の法律に基づかないと資産に手は付けられないだろうし、条約等の特殊なルートでも使わない限り実行困難。徴収しようとする国には他国の法執行権がないからね。まあ、Amount Aに関しては親会社が所在する国、または何らかの国際決済機構が代表して税金を徴収してくれることになれば、基本的に取りっぱぐれるようなことはないんだろうけど。

で、この100年の歴史をピラー1が少なくとも部分的に変えようとしている背景に関しては前回のポスティングで簡単に触れた。物理的な存在要件が、なぜ国際課税システムとして確立・定着してたかって言うと、上述の差し押さえとかの実務的な側面はあるとは言え、要は各国が相互に契約した約束事だったからだ。普遍の真理で成り立っていた訳ではない。例えば、135 人の人達が広場で手をつないで「私たちは飛べる」っていくら信じても飛べないけど、「ユーザーには価値があって、物理的な存在がなくてもユーザーの所在国でも課税できる」って信じればそうなる。それが135国(だっけ?)で構成されるInclusive Frameworkのコンセンサス作りだ。

で、Amount A、B、Cだけど、よく新聞とか業界の集まりとかで、この業種は消費者向けビジネスに当たるとか、あなたは自動化デジタルサービスに当たりますとか、また売上に基づくカットオフとか、更にスコープに入っても利益率が低いから大丈夫(?)とか、各企業が対象になるのかならないのか議論されることが多い。このスコープ系の話しはあくまで「Amount A」を適用して市場国に超過利益を配賦する必要が生じるかどうかだけの話し。Amount BやCは規模や業種にかかわらず、市場国があれば全員対象となる。もちろんピラー2も特定のカーブアウトがなければ全員対象。ピラー2に至っては消費者向けビジネスである必要もない。

ここでAmount Bに一瞬フォーカスしてみると、Amount Bは「ルーティン販売・マーケティング活動」に対するリターンを意味し、従来通りPEや疑似ALPに基づく課税。従来のピュアなALPと異なるのは、各企業が市場国で展開する販売・マーケティング活動を個々に分析して適正なリターンを確定するのではなく、だいたいルーティン活動は似たり寄ったりで、統計的にもリターン%はほぼ一定の範囲内に収まる話しなので、売上に対するリターン%を前以て世界中で合意・固定してしまう点。Amount Bに関しては、前回のポスティングで、従来のシステムとピラー1を比較する際に、PEやALPに基づく既存システムと仮にほぼ同様としてるけど、実際には従来のリターンとは若干異なってくるだろう。

ルーティンの販売・マーケティング活動に対するリターン%を前以て合意しとくっていうのはとても合理的な話しで、たかが(?)ルーティン販売・マーケティング活動に対するリターンの話しで世界中のあちこちで係争が頻発してるのは、各国税務当局や納税者にとって無駄が多い。すなわち、ルーティン販売・マーケティング活動に対するリターンがピュアなALPに基づく個々の事実関係ベースで、2.0%なのか、2.1%なのか、2.7%なのか、とか結局のところ不変の真理的な回答が存在しないんだから、意味がないというか、しょうもない世界での係争ではないか、という正しい認識。全世界で適正リターンを、例えば2.5%と合意し、この%に関してはその経済的な正当性や個々の事実への適用可能性を問うことは一切認めない、というアプローチだ。ちなみに%は未だ全然決まってなくて2.5%っていうのは単なる例だからね。

したがってAmount Bはデジタル化で新たな課税権が生じたり、超過利益を配賦したりという世界とは関係なく、ピラー1の重要な目的の一つとなる従来からのALP適用時の係争防止規定となる。したがってAmount B自体は「Safe Harbor」ではないはず。米国財務長官のピラー1のSafe Harbor化提案は今後も引き続き火種になるけど、Amount Aに限定される発言ではないか、って個人的には推測している。Safe HarborではAmount Bの意味がないからだ。Safe Harborっていうのは、本来であれば個々の事実認定に基づいて課税関係を決めるはず、例えば、ルーティン販売・マーケティング活動に対するリターンを個々の活動内容に基づいて決めるはず、だけど、その代わりに前以て規定される何らかの「Parameter」、すなわちAmount Bで言えばリターン%、を使用している限り、個々の事実認定は「不問に付す」っていうこと。で、Safe Harborの場合、このParameter、Amount Bで言うと世界中で合意された%、が気に入らなければ「私のルーティン販売・マーケティング活動はとっても限定的なんです」とか言って、固定%より低い%を適用することが認められる。Safe Harbor制度というのは、Parameterを適用しないオプションがあるということで、その場合はSafe Harborで認められる「不問に付す」という恩典を納税者自ら放棄して、個々の事実関係に基づく通常の係争を覚悟の上申告するっていうことになる。

そんな制度ではAmount Bを固定%にする意味がなくなってしまうので、Amount Aはともかく、Amount BはSafe Harborにはならないはず。すなわち固定%を各国が合意する限り、税務当局にも納税者側にもそれ以外の%を適用することは認められるべきではない。税務当局にしても、個々の納税者のルーティン販売・マーケティング活動の内容の蓋を開けて「あなたのルーティン販売活動の内容に基づくと2.5%ではなく、2.6%ですね」とか言ったりすることは許されない。つまり納税者も、各国の税務当局間でも、屁理屈は許されない、ということだ。Amount Bの目的はこれらのマイナーな意味のない係争を魔法の杖一振りで全て防止するという点にあるからだ。

となると、Amount Bに関して少なくともリターンが何%であるべきかっていう係争は存在し得ないことになる。係争の種として残るものがあるとすれば、そもそも何がルーティン販売・マーケティング活動の範囲内かっていう事実認定部分だろう。ここの定義はどこまで明確化しても、最終的には個々の「事実関係」への適用時に不確実性が残ることは必至。「ルーティン」販売・マーケティング活動だよね、って「見れば分かる」的なLRDのようなケースは別として、結局のところ市場国の税務当局が「あなたが我々の国で従事している活動はルーティンの域を超えています」とか言い始めると、せっかくAmount Bを固定リターン%にしている意味が低下する。

市場国における販売・マーケティング活動が、ルーティンの域を超えると認定される場合、ノンルーティン部分に対応する超過利益は、PEや何らかの物理的な存在があるっていう前提で、既存のALPでも市場国が課税できるけど、ピラー1ではそれをそのままAmount Cとしている。Amount Cはピュアな従来からのALPそのもので、ノンルーティンという性格から係争の種。事実関係次第なので固定%化するのは不可能。従来から係争は多いだろうけど、ピラー1でAmount Bのルーティン部分リターンを固定しまうと、ますます多くの係争の種になる。そこでピラー1では、係争防止・解決策として、従来の二国間の係争対応策を強化する形で、強制仲裁を条件にAmount Cを認めるような方向を模索してるように見える。つまり、Amount Cは新しいコンセプトや金額じゃないけど、係争防止・解決面で改善を試みようとしている金額。ちなみに強制仲裁、Mandatory Arbitration、という用語がよく出てくるけど、仲裁結果はMandatoryでなければ仲裁そのものに全く意味がない。また、Mandatoryと言っても、仲裁結果が気にいらない場合にある国が「こんな仲裁結果はただの紙切れ」とか言ったらどうするんだろうか。国内の判決というのは資産没収とか、禁固とかの強制執行権が付きまとうからこそ効果がある訳で、国際的な係争にかかわる仲裁結果の強制は、戦争する訳にはいかないだろうから、その実効性にかかわる不確実性を完全に払拭するのは難しい。

ちなみに、日米租税条約には、昨年批准がようやく完了した改定を通じて、調停が組み込まれているので、Amount C部分に関しては、既にピラー1と同様の位置づけにあると言える。これは前回のポスティングでも触れた通り、米国がMarket Intangibleの存在に基づく超過利益課税を推し進めることは既存の枠組みでも法的に問題ないばかりでなく、仮にピラー1が現状の提案のまま合意されたとしても問題なく追及可能ということを意味する。さらに言えば、ピラー1とは関係なく、Functional Cost Diagnosisとかを整備してAmount C同様の金額を米国で課税する準備を着々と進めてきた中、ピラー1で世界中がAmount Cを認知することになると、コンセプトとしては従来の国際課税システムとAmount Cに関しては変わらないので影響はないはずとは言え、米国によるMarket Intangibleリターン課税がより一層のお墨付きを得たような知覚的な作用がもたらされ兼ねない。う~ん、Market Intangibleの流れを一歩先にIRSは感知して実践に移してるってことだね。さすがAPMA。

Amount A、B、C とかピラー1をこのように考えていくと、ちまたでたまに言われている「ALPの終焉」とか「ALPの衰退」って言うのは、まだチョッと大げさというか、時期尚早な気がする。ALP衰退説の根拠は、Amount AはRPSMっぽいけど、フォーミュラ計算なので名ばかりのRPSMでもちろんALPじゃないし、米国のTCJAの大元と言える「Blue Print」で提唱されていた、今となっては懐かしい響きの「Border Adjustment」ではALP自体不要だし、また、GILTIで超過利益を 有形償却資産税務簿価の10%と決めてしまった、といったもの。でも実際にはピラー1でもALPから派手に逸脱しているのはAmount Aだけ。Amount Bは物理的な存在がなければ課税できず、あくまで事業主体やPE単位のALP同様。リターン%の多少を議論する代わりに、原則、魔法の杖一振りで全世界固定%とするもの。業界により%が微妙に異なったりする可能性には言及されてるけどね。なんで、Amount Bは正確なALPではないけど疑似ALPで、Cは上述の通り完全にALP。また、市場国が市場として課税する所得以外の所得、例えばルーティン製造活動、ルーティン・サービス活動、または従来から認識している市場ではない立場で認識している超過利益、とかはALPベースの検討がそのまま残るし、多国籍企業が各国で認識する所得の大半は今後もALPで決まるんだろう。

Border Adjustmentが米国でもし採択されてたら、完全な消費地課税になると同時に、ALPは本当に終焉してたはず。先日、下院歳入委員会の関係の方と話した際、Border Adjustmentの議論は若干時期尚早だったというか、一般の有権者が付いてこれなかったけど、いずれ導入議論が再燃するだろうと言っていた。確かにピラー1でA、B、C、とかを世界で合意する流れになるんだったら、せっかくの100年に一回しかない(システム安定性の観点からそう願いたい?)大改革なんだから一層のことVAT紛いの法人税Border Adjustment化を世界中で合意してしまえばいいのかもしれない。まあ、ドレミや1、2、3、じゃなくてA、B、C、でこれだけもめるんだから、Border Adjustmentは次の100年後の改革かもね。Justin BieberのBeauty and the Beatじゃないけど「We gonna party like it's 3012・・・」の世界。

ということで、次回はA、B、Cの相互関係や、テーマであるピラー1とALPの関係の話しを続けたい。

Thursday, March 5, 2020

OECDピラー1のAmount A、B、CとALP (1)

ABCって言うのは学校や幼稚園で最初に習うアルファベットだから、もともと誰でも簡単にできることを意味することが多い。若かりしMichel Jacksonを含むJackson一家で結成していたJackson 5(後のJacksons)も「A、B、C、it's easy as 1、2、3 or simple as Do Re Mi」とか歌ってたし、The Loco-motionでも「My little baby sister can do it with me, it's easier than learning your A、B、C」って歌ってるしね。

The Loco-motionと言えばもちろん元祖はLittle Evaだけど、その後著名なところでは 「I should be so lucky」とかで売れたオーストラリアのKylie Minogueとか、アリーナロック元祖Grand Funk Railroadがカバーしている。Kylieのも可愛い感じで良かったけど、やっぱりGrand Funk。ミシガン州のFlintでMark Farnerが結成したハードコアなアメリカンバンドだ。

Grand Funkは日本でも、その昔、後楽園(東京ドームではない)で激しい雷雨の中敢行されたコンサートが伝説化している。余りに激しい雨で、口パク疑惑が語られたこともあったけど、最終的には本当に演奏してたってことで落ち着いたんだと思う(?)。1975年のGrand Funk米国ツアーの様子を収録した2枚組ライブアルバム「Caught in the Act」はDeep Purpleの「Made in Japan」と並ぶライブの名作。ZeppelinのMSGライブ映画のサウンドトラック「The Song Remains the Same」もそうだけど、ライブって2枚組レコードで発売されることが多く、子供の頃は買うのに相当勇気が要った。他にプラモ(笑)とかに配賦するべき予算もあり、Grand FunkのCaught in the Actの新品はお小遣いの範囲で手が出なかったので、結局、当時よく掘り出し物を探しに出入りしてたディスクユニオンで中古を見つけて入手したものだ。

最初からMark Farnerがガンガン盛り上げ、前々曲のSome Kind of Wonderful辺りからクライマックスっぽくなってきて、1枚目B面の最後にとどめを刺す感じでThe Loco-Motionが登場する。今You Tubeとかで見ると、下品というかなんというかチョッと笑っちゃうけど、ハードロックって本来こんなんだよね、っていうのを再認識させてくれるバンド。ボーカル兼ギターのMark Farnerはいつも最初から上半身裸だし後のVan HalenのDave Lee Rothとかに通じる品のない格好良さ(なにそれ?)が楽しめる。Mark Farner、ギターは下手じゃないけど、70年代のハードロックギタリストにありがちな、手持ちフレーズが限られているチョッとAlvin Leeみたいなギタリストだ。Alvin Leeと言えばWoodstockのTen Years Afterは格好よかったね。Woodstockの映画では最後に登場するJimi Hendrixが余りに凄すぎて、Alvin Leeとか、サンタナとか、普通だったら強く印象に残るはずのギタリストのこと忘れちゃったりしてたけどね。

Grand Funkなんて今では知らない人の方が多いと思うので、怖いもの見たい人はFootstompin' Musicで始まるツアーの動画をYouTubeで見てみて欲しい。American Bandとか名曲。もちろんMark Farnerのカウントで始まるThe Loco-Motionもお忘れなく。古き良きアメリカだ。

で、The Loco-Motionを繰り返し見過ぎて「it's easier than learning your A、B、C」っていう歌詞が頭を離れなくなったら、その勢いでOECDのピラー1のAmount A、B、Cにチャレンジ。え~、ピラー1全然1、2、3やドレミじゃないじゃん、って当たり前だよね。100年続いた国際課税システムを少なくとも部分的に斬新なものに変えようって話しだから、The Loco-Motionの「a chug-a chug-a motion」とは次元が違う訳だ。

ピラー1は日本語では第1の柱と訳されるけど、ちょっと個人的にしっくりこないのでここではピラー1ってしておく。このピラー1とかUnified Approachが何なのか、とかいろいろな前置きは書こうと思えば、それだけも長編になっちゃうけど、皆様も散々目にしたり聞いたりしてると思うので、ここでは極簡単に触れておく。100年間続いてきた国際課税の基本的な枠組みが、デジタル経済やグローバル経済の実態に合わなくなってきて抜本的に見直す時期に来ているのではないかっていう問題意識は以前のオリジナルBEPSアクションプラン1の頃から存在はしていた。アクションプラン1ではVATはともかく法人税の世界では具体的なアクションが示唆された訳ではなく、具体的な進展が近々に見込まれる様子ではなかった。

しかし、その間にデジタル経済は更に加速度的に進化し、多くのユーザーが自国に存在するにもかかわらずデジタル企業から各国課税当局が考える「適正なシェア」の法人税を徴収できないことに不満を抱き始めた国々が、一方的にDSTというデジタル課税を導入し始めた。DSTはグロスベースだったりすることも多いし、二重課税排除システムがないので対象となると被害が大きい。DSTはよく「Googleタックス」とか「GAFAタックス」と揶揄されるように、実質DSTを支払うのは米国の大手ハイテク企業なので、米国としてはもちろん容認できず、追加関税で報復とか、このまま放っておくと大混乱必至という状況になってしまった。そんなこんなで、これ以上流暢なことを言っている場合ではなくなり、2019年に猛スピードでOECDの提案があり、つい一カ月チョッと前の2020年1月末に130か国がOECDの提案を基に2020年中にコンセンサス作りで協調していくことを決めたものだ。

100年掛けて進化してきた現状・既存の国際課税システムの基本は、現地法人オフィスとかPEとか、何らかの物理的な存在がある場合に、その国に課税権が認められ、そのオフィスやPEが持つ機能・リスクに基づいて適正と考えられる所得を配賦するっていうもの。これは正確には租税条約ネットワークに基づく国際課税システムで、国内法では異なる規定を持つこともある。そのいい例が他でもない米国で、国内法には基本的にはPEという概念はなく、代わりに米国事業(US Trade or Business)というとてつもなくグレーな概念がある。US Trade or Businessは必ずしも、固定的な施設を米国に所有していなくても認定されるし、そこから生じる、または生じるとみなされる所得はECIとして申告課税の対象となる。米国と条約を締結している日本のようなラッキーな国の居住者は連邦法人税の観点からは、基本PEに基づく課税関係が最終的な取り扱いになるけど、シンガポールとか中南米の国とかで米国と条約を締結していないと(または何年も前に締結したつもりが米国が批准していないと(苦笑))、より厳しく不確実性の高い課税関係を強いられる。したがって今回100年ぶりに見直されている国際課税システムというのは、数多くの二国間の条約に基づいて構築されている複雑かつある意味脆弱なネットワークを基に成り立っている。これを魔法の杖一振りで短期間で新たな共通ルールに変えようという試みなので、参加プレイヤーが多くもちろん一筋縄でいく話しではない。

で、この伝統的な国際課税システムの基本は上述の通り、「事業主体」または「PE」単位で課税所得が決定される点。そして、この課税単位となる各主体・PEの「機能・リスク」的に適正と考えられるレベルの利益が課税所得となる点。この基本2点こそ、米国が1930年代から適用し、1968年、1994年の規則を通じて近代化してきたArm’s-Length Principle(ALP)だ。ALPは今日の国際課税システムに奥深く組み込まれているので、ピラー1が登場するまでALP以外の国際課税システムは、理論的には議論されることはあっても、現実的とは考えられていなかった。

もちろん第三者とだけビジネスしてるケースは、実際に認識される所得がそのままその主体・PEの課税所得になるけど、グローバル経済でビジネスを行っている多国籍企業の世界では、どんなにシンプルな企業でも、グループ内に多くの主体があり、例えばX国とY国でR&Dして、Z国で生産して、それを現地法人の販社、第三者の問屋経由でX、Y、Z国を含む100か国に販売している、っていうような状況が普通なので、各主体がALPに基づきどれだけの所得を認識するべきか、っていう移転価格問題は常に争点の種となる。

で、デジタル経済にこれがなぜ馴染まず、問題視されているかというと、OECD言うところの「Market Jurisdiction」、ここでは日本語で「市場国」ってしとくけど、に現地法人のオフィスやPEというプレゼンスがなくても、またはかなり限定的な機能・リスクしか持ってなくても、デジタル経済の世界では、その国に所在するユーザー、消費者、顧客に自由にアクセスし、活用することができる。また、場合によってはユーザーデータ等に超過利益の源泉となる価値があるにもかかわらず、ユーザーが所在している国には課税権がない、またはあっても最小限のルーティン所得にしか課税できない、というような状況が徐々に増えてきているのでは、という危機感を各国税務当局が強く覚え始めたからだ。自国にユーザーが存在することで、それをもって実際どれだけのグループ超過利益に貢献しているか、っていう事実認定は各企業グループ毎に大きく異なるだろうし、算定は困難。こんな事実認定を実際に追及でもしようものなら、多くの係争の基となるのは必至。なので決め事として何らかのフォーミュラの使用が必然となる。

そこで、ピラー1は、オフィスやPEと言った物理的なプレゼンスのあるなしにかかわらず、一定要件下で市場国に課税権を認め、大企業グループの超過利益をフォーミュラベースの配賦比率で市場国に課税所得として分配しようという大胆な新国際課税システムを提案している。米国州法人税のユニタリー合算計算みたいだ。

ただ、これを既存のALPと「共存」させる形で実現させようとしているためにかなり複雑。この共存をどう考えるかっていうベーシックな点を理解しないとピラー1はよく分からないだろう。OECDのことばを借りると、この共存は「Overlay」となるけど、個人的には「Overlap」という方が実態に近いと感じている。ピラー1では、多国籍企業が認識する所得のうち、市場国が市場として課税できる金額をAmount A、B、Cと3部構成にしている。まず、重要なポイントは、A、B、C、というピラー1が議論している所得は、「市場国が市場として課税できる所得のみ」の話しだっていう点。多国籍企業の全ての活動から生じる所得が全てA、B、C、で構成されている訳ではない。すなわち、A+B+C=100とか単純な数式は成り立たない。ちなみに日本語では所得A、B、C、っていうこともあるようだけど、ここでは原文通りAmount A、B、Cとしておく。

で、後日詳しく触れるけど、Cは既存のALP、Bも計算法こそシンプルにしているものの概念はALP。すなわち、大概において従来の国際課税システム下でも市場国は市場として既にAmount BとCは課税できていることになる。Cに関しては実際に課税しているか否かは別にしても、既に従来の国際課税インフラ、すなわちALPで課税できる仕組みになっている。この点は実は重要で、BとCは、仮にピラー1が瓦解し、合意に達することができなかったとしても、関係なく市場国は同様の金額を課税する権利を有する。米国によるMarket Intangibleに基づく超過利益の一部を自国で課税しようとする動きは既存のALP下での話しだし、Amount Cとはまさにそのような所得をカバーしようとしているものだ。

企業活動は市場国における販売だけではなく、他にも製造活動やR&Dその他の機能・リスクに対応する所得がいろいろとあり得る。Amount BとCが従来の考え方でも市場国が市場として既に課税できているのが原則だとすると、これにグループ内の各事業主体が認識する市場国の市場として課税対象とは関係のない所得を足すと、既存システム下での、多国籍企業グループの所得合計となるはず。すなわち、グループ全体の所得を100とすると、B+C+市場国の市場としての所得とは関係ない所得=100になるはず。あれ、Amount Aはどこ行っちゃったの、って思われたら、そこがピラー1の恐ろしいところ。Amount Aは既存のシステムでは誰かが既にどこかで知らずに認識している所得の一部になるからだ。

このAmount Aこそが物理的存在があってもなくても新たに市場国に課税権が与えられる金額で、ピラー1の神髄的な金額だけど、従来のALPと異なり事業主体・PE単位ではなく「グループ全体」の所得を基に算定するっていう点が最初の最重要ポイント。すなわち、ALPは、関連者グループ間でいろいろと協働したり、グループ内法人・PE間でさまざまな取引をしているものを、最終的には各事業主体・PE単位で認識するべき所得を各主体・PEの機能・リスクを基に経済的に算定する。Amount Aは全く違う。Amount Aはグループ全体の所得の一部を人工的に取り出すので、その定義からどの事業主体にも紐ついていないし、誰のものか分からない所得で構成されることになる。

さらにAmount Aの金額算定法もALPとは異なり、各事業主体やグループの機能・リスク、例えば市場国のMarket Intangibleとか、に基づく経済的な所得認定ではない。単純に連結決算書の税引前所得の一部をフォーミュラで超過利益とし、さらに超過利益の一定%をAmount Aとしてしまう。この2点、すなわち、どの事業主体が生み出しているか分からないグループ全体所得の一部である点、また、機能・リスクベースではないフォーミュラベースで算定される所得だという点、はALPの基本的な概念である「事業主体・PE単位の所得認定」「機能・リスクベースの所得算定」と相いれないものとなる。

更に概念的に相いれないだけでなく、さっきの方程式のようにグループの課税所得は「B+C+市場国の市場としての所得とは関係ない所得=100」で既にどこかの国で課税されている、または少なくともどこかの国の所得になっているので、急に空から降ってくるようなAmount Aというのはグループ内の誰のものでもないばかりか、単純に既に100の中に含まれている所得の一部を再度人為的に、というか無理やり取り出していることになる。すなわち、このまま放っておくとAmount Aというのは各市場国にばらまかれるけど、グループベースで見ると単純にAmount Aの金額だけ二重課税というか、少なくとも課税所得としてはどこかで2回反映されていることになる。しかも、どこで2重になっているか不明なままで。え~、Amount Aは「Reallocation」じゃないの、って思われるかもしれないけど、Reallocationとするには、この重複を何らかの形で処理しないといけない。この重複解消はピラー1のデザインの中でも最重要かつ複雑な検討事項となる。この点は次回以降のポスティングでもう少し詳しく考えてみたい。

ということでAmount Aはほぼ架空の所得で、既にどこかで課税所得になっているはずの金額が再度取り出されている、ってことを冒頭に明確にし、今後の話しに繋げて行きたい。

Wednesday, March 4, 2020

お雛祭りにOECDピラー1のSafe Harbor提案再浮上

さて、前回と前々回は慣れないMeals and Entertainmentにかかわるポスティングでチョッと手間取ったけど、いろんな事例、楽しんで頂けましたでしょうか。で、今回からは満を持して(?)BEATとパートナーシップまたはOECDピラー1のAmount A, B, Cと従来のALPの関係のどっちかの話しに突入するってところで幕を閉じていた。

この2つ、どっちも魅力的な題材で、「どちらにしようかな神様の言う通り」または「イニミニマニモ・・・」ってやってランダムに選ぼうと思ってたんだけど、Mnuchin長官もSafe Harbor案を譲ってないみたいだし、ここはやっぱりピラー1かな、と思いながらイニミニマニモってしてみた。これって実はインチキで、2人とか2つしかチョイスがなくて自分が当たりたいとき、当たりたくないとき、3人、4人だったらどうなるかとか、子供だったら誰から始めたらどこで終わるか知っているので、ほとんどヤラセ。で、計算通り(笑)、OECDになったので、今日からモードを変えてOECDピラー1のAmount A、B、Cの話し。

今日はそのプレリュードって感じで、お雛様の3月3日に下院歳入委員会のヒアリングにおけるMnuchin長官のコメントに関して。

Mnuchin財務長官がピラー1を「Safe Harbor」化するって提案を公開レターという形でOECDに急に送って、世間をビックリさせた件は2019年12月3日のポスティング「DCからのお手紙でOECDデジタル課税・ピラー1に早くも暗雲?」を参照して欲しいけど、その後、この件に関してはとりあえず、ピラー1の在り方がもう少し決まるまで封印しておきましょう、みたいな形で議論先延ばしになっている。そうこうしている間にウヤムヤになって話しがなくなってしまうのではないか、という期待もあるのかもしれない。

ところが、3月3日の下院歳入委員会のヒアリングで米国のポジションとしてはSafe Harbor提案に今後も取り組んでいく点が確認された。ヒアリングでは、まずは例によってトランプ大統領の個人所得税の申告書を財務省が開示しないのは法律違反だとか、そんなことは裁判所じゃないと決められないとか、Joe Biden一家の怪しいビジネスディールの話しとか、いい加減まだやってんの?的な応酬があった後、話しはもっぱら新型肺炎にかかわる連邦政府の対応策に終始したらしい。ちなみにこの点に関しては翌日となる今日4日、$8.3B(約9千億円相当)規模の緊急歳出パッケージが議会を通過しそう。これ、早く収束してくれるといいけどね。おかげでJFKもLAXもガラガラ。混んでないのは助かるけど理由が理由なだけに全然喜べない。

で、そんな中、気骨ある議員さんが、フランス等のデジタルサービス課税(DST)にかかわる懸念およびOECDとの協調体制にかかわる質問をした。Mnuchin財務長官は、各国で議論されているDSTは米国企業を狙い撃ちにしているもので到底容認できないという以前からのポジションを繰り返した。まあ、ちまたではGAFAタックスとか言われてるんだからそうだよね。

で、その直後のMnuchin財務長官のコメントは注目に値するんだけど、「財務省はOECDの全体の(グローバルコンセンサス作りにかかわる)プロセスおよびピラー2はサポートしている」と発言した模様。米国財務省のサポート対象を敢えて「全体のプロセス」と「ピラー2」に特定している辺りはもちろん偶然ではない。ピラー2はどうせ米国はTCJAで既にGILTIあるし、みたいな説明だったらしい。似て非なるものだけどね。

じゃ、ピラー1はどうなっちゃったの?って言うと、「ピラー1はまだ検討中で、米国多国籍企業に確実性を担保するため、Safe Harbor化する提案に取り組んでいる」ということ。先週出たピラー1および2にかかわるOECDのインパクト・経済分析でも、前提条件でピラー1はSafe Harborではないとしているのにね。ただ、この件にかかわらず結構ピラー1もピラー2と並んで難しいので次回から一緒に紐解いていきましょう。ちなみに僕は米国税務、特にクロスボーダー系とか組織再編、パススルーを専門としているので、OECDの提案、それにかかわる経済分析、移転価格の新しい概念とか、皆と同じで、去年あたりから初めて読み始めた分野なのでよろしく。

Friday, February 28, 2020

接待交際費の損金算入制限にかかわる財務省規則案 (2)

前回、M&E費用の損金算入を制限しているSection 274ていうチョッといつもの、例えばGILTIとかとは違う「Everyday People」的な分野の財務省規則案に関して書き始めた。Everyday Peopleマターだけに逆に毎日の事業活動や申告書作成時には常の登場する検討事項と言える。

Section 274は基本的にM&E費用に関するルールだけど、M&E、すなわちMealsとEntertainmentは2つ異なる費目であり、別々の損金算入制限が適用され、基本オーバーラップはしない。ただ、Entertainment費用に込みで、食事代として別に明細が表記されてない場合には全体がEntertainment費用となる点は前回の野球やバスケットボールの例示でお分かり頂けたと思う。

そもそもEntertainmentって何?っていうベーシックな点に未だ触れてなかったのを思い出したけど、Mealsの定義同様にかなり広義。日本語にすると変かもしれないけど、規則草案では、歓待、娯楽、レクリエーションに当たると一般に理解される活動全て、とした上で、例として、バー、劇場、カントリークラブ、ゴルフ場、スポーツクラブ、スポーツイベント、狩り、釣り、バケーションその他の旅行における「もてなし」を挙げている。う~ん、狩りで接待ね。中々洒落てて、一回体験してみたいものだ。州のライセンスを取得し、U.S. Fish and Wildlife Serviceが指定するNational Wildlife Refugeに行って接待なのかな。チョッと動物が可哀そうでは、って思うんだけど、実はエコシステムの維持に貢献しているという話しを聞いたことがある。ステレオタイプ的に空想すると、空飛ぶカモを猟銃で一撃し、すかさずに同行している猟犬が走って行って獲物を見つける、みたいな状況。アーケードのゲームでも命中しないので、実際に遠くを飛んでる獲物を打ち落とすなんて僕には不可能だろう。そもそも銃の操作も分からないし、間違えて暴発でもさせて自分や「Entertainment」の相手に怪我でも負わせてしまったら、費用の損金算入どころじゃないし、契約も破断確実。まあ、Entertainmentを定義する財務省規則の例に狩りが載っていること自体、アメリカの先祖伝来の遺産というか歴史を感じてしまった。NYCというZooに居る限り縁のない世界。

とにかくこれらの活動は、その際中にどれだけビジネスをしても、活動内容がこれらに準じるということをもって常にEntertainmentと取り扱われるとバッサリ規定されている。これらの活動の目的がPRだったり、宣伝広告なので、別の費目で損金算入という議論を排除している。会食と異なり、必ずしも相手がいないとダメということではないようで、家族しか参加していないイベントも、仮に必要経費と認められてもEntertainmentとなる。ただ、納税者の事業は加味してくれるそうで、例えば、音楽評論家がロックコンサートに行く場合、通常コンサートはEntertainmentに当たるけど、その場合にはそれ以外の経費扱いとなる。ファッションメーカーによる春夏とか秋冬のコレクションを披露するファッションショーの費用も同様。一方、自動車メーカーがディーラーのイベントでファッションショーを企画したらそれはEntertainmentになるとしている。なんかM&Eの規則って普段読んでるGILTIとかFTCとかと全然違って例が面白い。また、宿泊費とか自動車関係の費用はその目的が出張等の事業目的であれば、Entertainmentには当たらないが、その他の目的で使用される場合にはEntertainment費用に区分される。

で、MealsはEntertainmentと異なり、50%損金算入っていうのが原則ルールだけど、一番分かり易い50%損金算入のMealsの例は、クライントとのビジネスランチ。また、クライントじゃなくても、例えば、パートナーがマネージャーをランチに誘い、今年の人事評価的なアドバイスとかをする社内ランチも典型的な例だろう。出張中の食費も同様。ただし、配偶者、扶養家族等のMealsに関しては、納税者が軍人だったり、または配偶者や扶養家族も従業員だったりする特殊なケースを除き、損金算入は認められない。

で、Section 274に基づくMealsの50%損金算入制限には例外がいつくかあり、それらの除外規定が適用されると、100%損金算入が認められる。代表的なものをいくつか挙げてみる。

まずは、自社の従業員に供与するMealsで、これらを従業員のみなし給与として取り扱い、きちんんと通常の給与同様にPayroll処理している食事代。例えば、ハイテク企業なんかでよくあるけど、自社のカフェで従業員に無償でオーガニックの食事を朝、昼、晩、提供しているようなケース。この食事代が少額フリンジ免除に当たらない場合、雇用者は食事代を従業員に対するみなし給与として処理することになる一方、50%制限は適用されず、全額が損金算入となる。これは当たり前の話しで、こんな取り扱いをしているということはそもそもMeals費用ではない。単純に従業員に給与を上げて、従業員が自社のカフェでコストを負担して食事しているのと同じ状況。給与なので当然100%損金算入。

ちなみにこの例で、食事代が少額フリンジとして従業員側で所得認識が免除されると、逆に雇用者側では50%損金算入制限の対象となってしまう。似たような例で、結構タイトな条件下でだけど、Mealsが雇用者側の都合で提供されていると認められると、従業員側で所得認識しないでもいいっていう例外があるけど、この例外が適用されるMealsは従業員側での給与所得認識がないことから、雇用者側では50%損金算入制限の対象。このパターンでよく出てくるのはメディカルスタッフとかが夜間待機させられる際に社内で軽食が提供されるようなケース。

また、雇用者が従業員のために企画するレクリエーション系のイベントにかかわるMealsも100%損金対象。レクリエーション系のイベントとして、ホリデーパーティ、サマーピクニックなんかが例に挙げられている。ただし、高額所得者、役員、10%以上の持分を所有する株主・オーナーへの恩典が主と考えられるイベントは従業員のための企画には当たらず、除外規定の適用はない。

典型的なのは、雇用者が12月にホテルのボールルームを借り切り、バフェで食事は食べ放題、ドリンクはオープンバーで、従業員全員を招待してホリデーパーティーを企画するような例。雇用者はMealsを含むパーティーのコストを100%損金算入することができる。

ここでのひとつのキーは従業員全員を招待している点。もしVP以上とか、高額所得者のみを招待してのパーティーだと事情が異なってくる。その場合、通常のルールに戻るので、もしホテルからの請求書に食事代が別途明記されていて、それが市場価格であれば、50%損金算入できる。前回のポスティングで書いたバスケットボールのお寿司とHelapino入りのチーズNachosと似てるね。

ホリデーパーティーとかと異なり、社内カフェやコーヒールームにおいてある無料のスナックとかはレクリエーションにかかわるものにはならないので50%のみ損金算入となる。例えば、会計事務所なんかでありがちだけど、Busy Seasonの土曜日とか、まあ例としては平日でも関係ないんだけど、臨場感を演出するため土曜日のTimes Squareのオフィスを想像してもらいたい。もちろん街はまだ眠っていて7th Avenueも42nd Streetも道行く人はまばら。Broadwayの路駐もしたい放題と勘違いして車停めたりして、Broadwayの日中路駐はTimes Square辺りは日曜だけだったのでチケット貼られて$110払うことになったりとか。で、各階のパントリーに、無料のコーヒー、ソーダ(米国では炭酸飲料のことを総じてソーダと呼ぶ。緑のソーダではないからね)、ボトルの水(たまにはHealthyなものもないとね)、チップス、ドーナッツ、その他スナックが置いてあったとする。これらのコストは雇用者側で50%損金算入。チップスやドーナッツじゃホリデーパーティーにならないもんね。

また、同じ「パーティー」でも個別のケースは50%制限。例えば、クライアントと従業員の双方が参加する夕食の日がたまたま従業員の誕生日だったとする。雇用者が気をきかせて従業員用にキャンドル付きの特別に大きなNYチーズケーキをオーダーし、レストランの従業員が3人で「Happy Birthday」を歌ってくれたとしても、このデザート代も含めて全額通常の会食代として50%制限対象。

また、現実にはあんまり見ないパターンだけど、一般大衆にMealsが供与される場合には、その一部が自社の従業員に供与されてたとしても、100%損金算入対象となる。一般大衆って言っても、新宿駅やPenn Stationでみんなに食事を配る必要はない。例えば、不動産エージェントが誰でもStop byできる物件のオープンハウスを開催し、そこに簡単な軽食を置くとする。軽食はエージェント、エージェントの従業員、潜在的なバイヤー、他の不動産エージェント等が食べるとする。軽食の消費が50%超、潜在的なバイヤーや他のエージェントだったことをサポートできれば全額が100%損金算入対象となる。50%以下の場合には、バイヤーやエージェントに供された部分のみ100%となり、自社消費部分は50%のみ損金算入だ。自動車のディーラーショールームにおいてある軽食とか、子供のサマーキャンプの企画会社が子供と自社従業員のカウンセラー双方に提供する軽食も同じ考え方。

最後にチョッと変な例だけど、レストランとかの飲食店でお客さんから食事代を受け取って提供している食事にかかわるコストはもちろんだけど50%制限対象ではない。さらにレストラン運営の一環で、店内で従業員にシフトの前後やシフトの最中に無償とかディスカウントで供与される食事にかかわるコストも100%損金算入できる。Chipotleとかで、従業員がよく山盛りのGuac付きのBowlとか食べてる姿を見かけるけど、あれだね。

慣れないM&Eの話しでちょっと疲れてきたので、この辺にしておく。ちなみにEntertainmentにしても、Mealsのタイプにしても、これらの項目を後から整理するのは大変なので、費用精算時点で損金算入ルールに基づいて会社側のシステムがこれらの費目をきちんと区分して管理できないと申告書作成時の負荷が高くなる。

次回はBEATとパートナーシップ、OECDピラー1のAmount A, B、Cと従来のALPの関係のどっちにしようかな。う~ん。M&Eでちょっと欲求不満気味なんでどっちも捨て難い。神様の言う通り、または英語で子供たちが言うところの「イニミニマニモ・・・」ってやってランダムに選ぶしかないかも。さてどっちになるでしょうか。

Tuesday, February 25, 2020

接待交際費の損金算入制限にかかわる財務省規則案 (1)

それにしても今年のNYCの冬は暖かくて楽。NYCの公立校が一斉に「Midwinter Recess」でお休みになる頃、例年だと氷点下の毎日が続くんだけど、今年は全然。カリフォルニア並みとは言わないけど、朝のMidtownは連日適度に寒くて気持ちがいい。2月も後半を迎え、朝6時前でもQueensのLIC辺りは朝焼けになってくるし、徐々に日照時間も長くなってきてるのが実感できる。まさしくHere Comes the Sun。しかも3月前半からは早くもDaylight Savings(夏時間)開始だ。Daylight Savingsに突入する日曜日は1時間少なくて一日23時間だから、朝5時に起きたつもりが6時だったりして毎年のことながらショック。ただ、昔と違ってiPhoneとかPCとか勝手に時間変えてくれるんで、時間間違えたりすることはなくなったけど。

で、テリトリアル課税の対象所得がどれだけ少ないか、っていう話しも一応ラップアップでき、その一環で前回はGILTIの高税率免除規定にも触れることができたし、次はBEATとパートナーシップの関係、またはOECDピラー1のAmount A、B、Cと既存ALPのDeepな関係とか、いろいろと面白そうなトピックが山積みなので、何にしようかな、と考えていた矢先の2020年2月21日、TCJAで一部改定されてたSection 274、すなわち接待交際費の損金算入制限規定にかかわる財務省規則案が公表された。接待交際費っていう和訳はチョッとMisleadingで、正確には「Meals and Entertainment」にかかわる規定。Mealsは接待に限らず、社内のパーティーとか事業目的の飲食全てを網羅する。M&Eって略され、Big 4だと、M&Eばかりやってる専門家が結構居るほどこれはこれで奥深いエリアだ。

M&EってMedia and Entertainmentセクターを意味することもあるんで、社内で使われる際も、文脈でどっちのこと言ってるのか判断する必要がある。アルファベットの頭文字の略語、アクロニムが次々誕生するので要注意。例えばUTPって言うと、僕たち米国税務の世界では「Uncertain Tax Position」のことだったけど、最近は気を付けないとOECDピラー2のUndertaxed Paymentのことだったりする。まあアルファベットは26文字で構成されるから、3つのアルファベットの組み合わせでも算数的には1万7千以上あるからまだまだ安心(?)。コマーシャルジェットが離着陸するAirportは世界に1万程度って言われているので、Airportのコードが3文字で足りる訳だね。でも、プライベートジェット専用とかを含むと世界で4万とも言われてる。ということは3文字のコードはない空港もあるってことになるよね。まさか重複して使用はできないだろうし。モンタナに行くつもりがミズーリに行っちゃたり大変なことなるもんね。

って、またどうでもいい話になってきたので、M&Eの話しに戻るけど、Section 274はM&Eを費用扱いしていいですよ、って言ってくれている条文ではない。それは事業にかかわる必要経費を規定しているSection 162とかの世界。したがって必要経費でなければそもそも損金算入は認められない。この区分は主に個人事業主にとっての課題。で、Section 274は200番台、しかも261番以降に位置する点からも分かる通り、仮にSection 162とか他の条文で損金算入できるって規定されている費用項目でも、特別に制限を加えている条文のひとつだ。

で、今回はクロスボーダー課税でも、Sub Cの組織再編でも、Sub Kのパススルーでもなく、柄にもなくM&Eのお話し。余り得意分野じゃないので、適度に「ふ~ん」って感じで読んで頂きたい。即時償却が初めて中古資産にも適用が認められたのを受けて、M&Aばかりやっている連中が急に有形資産の償却を定義しているSection 167とか168とか、更に定義に使用されている179とか従来の守備範囲外に手を出したりしてて面白いけど、M&Eもその類の話しだ。ちなみに即時償却とM&Aの関係は超Deepなので、そのうち触れてみたいけどね。

で、M&EのSection 274ってもちろんTCJA前からあるんだけど、M&EのEに当たるEntertainment費用はTCJAにより原則全額損金不算入になってしまった。以前は結構なケースで費用化できていたのに。一方、MのMealは従来から引き続きTCJA後も原則50%制限。ただ各々の原則ルールには多くの例外が規定されていて、たかがM&Eのくせにとても複雑怪奇になっている。

Entertainment費用は損金不算入だけど、Mealは50%OKっていうのがSection 274の原則っていうのは上述の通りだけど、規則案では、このルールを具体的な異なるSituationにおける適用例を結構突っ込んで規定していて面白い。まず、Mealだけど、50%の損金算入が認められるのは通常のMealで、LavishだったりExtravagantだったり、つまり過度に贅沢な食事は全額損金不算入。何がLavishかはケースバイケースなんだろうけど。例えばインディアナ州のSouth Bendの会食とNYCのMidtownの会食では相当金額的に差異があるんで、Lavish度合いも異なる。

会食費用もMealなんで50%損金算入できるけど、会食と認められるには、カスタマー、クライアント、サプライヤー、従業員、エージェント、パートナー、アドバイザー系の相手が同席してないといけない。でも、まだクライアントじゃない相手を会食に誘ったらどうなっちゃうの、って心配した方がいるようで、そんなSituationを想定して、会食をしてる時点で必ずしもクライアント等である必要はなくて、潜在的にクライアントになる現実的な可能性があればOKだそうだ。

Entertainment費用はダメでMealは50%となると、EntertainmentにMealが一部入ってたらどうなるの、とか現実的によくある状況への適用が気になる。この点に関する基本的なアプローチは、別々にバラして各々のルールを適用っていうことなんだけど、Entertainmentの一環でMealが出てMeal代がEntertainment費用にごちゃごちゃに含まれちゃってて明細みてもどれがMeal代が分からないようなケースは全額Entertainment費用になってしまうので要注意。

例えば、ある納税者がクライアントを誘って野球を見に行ったとする。野球のチケット代はEntertainment費用に当たるので、野球場でどれだけ商談したり、野球そっちのけでビジネスの話しをしてたとしても関係ない。問答無用に全額損金不算入。もちろん、趣味で野球見に行っているだけだったらそもそも私的な支出なので個人事業主だったら最初から費用にはならないし、法人の役員とかだったらみなし給与だろう。で、野球見に行ったら当然、ホットドッグとドリンクを買うことになるけど、納税者が自分は下戸なのでホットドッグとコーク、クライントにはホットドッグとビールを買ったら、それはもちろん野球のチケットに込みじゃないし、別に支払うのでMeal代として50%損金算入となる。

え~、ドリンクってMealなの?って思われた方は中々面白い。規則案ではMealは広く定義され、ドリンクやスナックを含むとされる。更にデリバリーにかかるコストやチップ、更にSales Taxなんかが掛かれば、これらも付随費用としてMeal代に含まれる。ただし、付随費用と言っても限界があり、例えば自社のカフェの運営に必要な人件費やオーバーヘッドはMeal代には当たらない、としている。なかなか常識的。

今度はバスケットボール。この納税者はチョッとハイエンドでStaples CenterとかMSGでSuiteを借り切ってクライントを招待したとする。で、Suiteを借りると当然いろんなMealが付いてくるけど、それはSuite代に込みとする。その場合、Mealが別に請求されないので、全額Entertainment費用と取り扱われ、損金不算入となる。せっかく野菜のスティック食べながらバスケットボールそっちのけでビジネスの話ししてたのにね。

で、このクライアント結構お腹空いたみたいで、Suiteで提供される食事にはあきたらず、外のBoothからまずいお寿司とチーズNachosのHelapino入りをオーダーしたとする。凄い食べ合わせで翌日腹痛になったかどうかは不明だけど、請求書にお寿司代とHelapino入りチーズNachos代が明記されていて、かつその価格が外のBoothで一般の観客に販売されている金額と同じだったら、その部分だけ50%損金算入される。他のSuite代とかはEntertainment費用として全額損金不算入だ。

ということで、次回はもう少しMeal、特にどんな時に100%損金算入できるか、とかに関して。