Saturday, February 8, 2020

GILTI高税率免除規定

前回までテリトリアル課税の対象となる所得が絶滅寸前って話しを数回に亘りポスティングしてきたけど、その主たる原因は心無いハンターの乱獲、じゃなくてTransition TaxやGILTIを規定したTCJA、またSub FとGILTIが優先的に適用されるという財務省の新たな国際課税システムの世界観にある点に触れた。毎期、CFCの所得は原則全額GILTIとして米国株主側で合算されPTEPに生まれ変わっていく。そんな根本的な仕組みに一矢を報いるかもしれない規定が財務省規則案として公表されている。待望のGILTI高税率免除規定だ。

GILTIと言えば、今話題のOECDのBEPS 2.0 のIncome Inclusion Ruleのモデルだけど実際には似て非なるもの。OECDは2020年1月末にBEPS 2.0 の途中経過を公表し、「Fast Pace」で順調に推移しているフリ(?)をアピールしてて、ピラー1に関しては、「え~自動車業界はConsumer Facingだって名指しで指定されている一方、うちの業界は入ってないけど包括的なリストって訳じゃないから油断は大敵ってことか・・・」とか既に目を通された方も多いと思うけど、Annex 2にはピラー2の現状が記載されていた。で、そのコメントを読んでも、あそこまで焦ったタイミングの導入を正当化する「Policy Objective」が未だに明確でないように感じた。一方、Income Inclusion Ruleのお手本(?)となる米国GILTIはFDIIと共に機能し、米国MNCが米国外事業を行う際、これを米国から行っても海外のCFC経由で行っても米国法人税負担は同じという、ニュートラルな課税関係を提供し、米国MNCの行動パターンを変えさせる、という明確な目的に基づいて設計されている。FDIIっていう制度はGILTIとセットで理解する必要があり、FDIIだけ見て有害税制と言ってしまっては米国の制度設計面からは片手落ちだし、万一FDIIだけ消滅してGILTIだけ存続しようものなら、GILTI導入のPolicy的な意味合いも半減する。全然関係ないけど、システムロスなのに片側検証して所得を認定するような変な感じ?

ちなみに、OECDの作成する文書ってヨーロッパチックで、スペルも米語とは異なるし、用語も米語では馴染まないものが多く、個人的には一読して頭に入り辛い。科学の実験学習のようなフローチャートがついてたりしてたのはビジュアルで助かったけどね。

最終的にピラー2のIncome Inclusion Ruleの末路は現時点では不明だけど、OECDで提案されているミニマムタックス課税は、CFC側で所得がミニマム税率で課税されていないと判断されると、ミニマム税率との差額に当たる部分を本国株主側で支払わせる「Top-Up」方式となっている。一方、米国のGILTIはそうではなく、CFCがどんなに高い税率で課税されていても、みなしルーティンリターンを除き一旦全額米国で合算させられる。合算後に50%の控除があり、それで実効税率が21%の半分の10.5%に下がる仕組み。NOLがあったりして、50%控除が取れないと悲惨。更にCFCが毎期支払う法人税のうち、Tested Incomeに適切に対応すると取り扱われる金額の80%を間接税額控除として使うことができる。教科書的にはCFCが米国外でTested Incomeに対して13.125%の法人税を納めていれば、その80%は10.5%だから、米国で持ち出しの法人税は発生しないことになるし、実際にGILTIの立法趣旨にはそのように明記されている。でも現実には、FTCの制限枠算定時に米国株主側の費用の一部をGILTIバスケットに配賦することになるので、10.5まるまるGILTIバスケットのネット外国源泉所得として残ることは稀。結果としてGILTIバスケットに配賦された米国株主側の費用額の21%が米国における追加課税額となる。

この思わぬ(?)結果はGILTIが可決した直後から問題視されていて、財務省の規則策定権限を利用して、FTCの枠算定時にGILTIバスケットには費用を配賦しないでいいようにして欲しいとか、CFC側で13.125%以上で課税されている所得項目はTested Incomeから免除して欲しいとか、多くの「参考になる(苦笑)」コメントが納税者から財務省に寄せられていた。GILTI規則案では、これらのコメントは日の目を見ず、GILTIの法文に明確に規定されるかなり狭義な高税率免除しか認められていなかった。すなわち、Foreign Base Company Income(「FBCI」)またはInsurance IncomeとしてSub Fなんだけど、Sub Fに従来から規定される高税率免除規定でSub F合算から免除されている所得に限り、Tested Incomeからも免除してあげましょう、という規定だ。これはGILTIの高税率免除規定というよりは、Tested IncomeからSub Fが免除されている措置の延長と位置付ける方が実態に近い。

で、GILTI規則はそのまま最終化されてしまったけど、最終化の際に財務省は「新」規則案を公表し、ナンとGILTIに特化したフルの高税率免除規定案を提示した。元々の旧規則案から180度異なる展開と言え、納税者にとってはうれしい驚きとなった。免除を取り巻く規定がどちらかと言うと堅苦しいので、最終化の際にはもう少し弾力的な規定にして欲しいというコメントもあるけど、余り贅沢を言ってはいけない(?)。

GILTI法文からは読み取れないそんな広範なGILTI高税率免除規定をどうしたら行政府が規則として策定できるか、という法的権限は結構際どい。その証拠に、最初の旧規則案を策定した時点では財務省自ら法的に難しい、という解釈をしていたはず。それがここに来て一転しているのは、立法趣旨に基づくポリシー的なコールとしか言いようがない。ただ、ポリシーだけでは財務省は規則を策定できないから、例えストレッチしまくるにしても、何らかの法的な理論を構築しないといけない。で、いざとなると抜群の伸縮性を誇るストレッチマテリアルに変身してくれるのが手品師の財務省。Sub FのFBCIやInsurance Incomeに従来から適用可能だった高税率免除規定の法文を解剖し、その一部の表現に「全ての所得項目」に高税率免除規定が適用可能とも無理すれば読めなくもない部分があり、それを最大限利用し新らたな解釈を捻出している。なかなかクリエイティブ!議会が法文を変えることは今の政局では難しいだろうから、立法趣旨を反映させるため、End Result Orientedな苦肉の策と言える。納税者にとっては悪い話しではないので、規則策定権を問題視する者もいないだろし。

で、未だ最終化された訳ではないので余り詳細に検討してもしょうがないけど、GILTI高税率免除規定案の内容を簡単に紹介しておくと次の通り。

まず高税率免除がキックインされる税率だけど、18.9%。これは法人税率21%の90%を基準に高税率を規定しているため。TCJA以前は法人税率自体が35%だったので、その90%というと31.5%というとんでもない高税率で、そんな税率の国は今どき地球上には存在しないに近く、ほぼ役に立たない免除規定だった。それが法人税が21%に引き下げられ、その90%が18.9%になったことでSub F適用時には息を吹き返した感じだった。それがそのままGILTIにも拡大される可能性が出てきたと言うもの。立法趣旨的に13.125%を期待する向きもあったかもしれないけど、GILTI高税率免除規定はSub FのFBCIやInsurance Incomeに適用される高税率免除規定の法文を流用しているに過ぎないので、18.9%以外はあり得ないだろう。

次に実際に選択を行う者だけど、これはCFCの支配株主。まるで前回までのテリトリアル課税の対象所得のポスティングで触れたExtraordinary Reduction規定の課税年度をCloseする選択みたいだけど、これは従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fからの免除と同じ規定。支配株主による選択は選択対象となるCFCの米国株主全員に強制適用となる。

選択は対象となる課税年度に適用されるばかりでなく、納税者が取り消すまでその後の課税年度に自動適用され続ける。選択の取り消しは可能だけど、一度取り消すと、その後60カ月に亘り、IRSの特別な許可を受けない限り再選択が認められない。ただし、CFCの支配株主に変更があった場合は新たな支配株主による選択有無の判断が認められる。従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fからの高税率免除は、課税年度毎に自由に選択ができるので、60カ月の待機要件はGILTIに対する特別要件。GILTI、特にGILTIバスケットのFTCの状況は毎年異なるので、この5年の縛りは厳しく、緩和リスエストが多く財務省に寄せられているだろう。

で、選択対象は基本個々のCFC単位だけど、従来のFBCIやInsurance IncomeにかかわるSub Fの免除と異なり、共通の支配株主および関連者が直接・間接に50%超の議決権を有する2社以上のCFCを共有支配CFCグループとし、当グループ内CFCには、GILTI高税率免除規定の選択有無を一貫して適用しないといけない。また、選択はCFC単位で行った上で、高税率かどうかの判断は所得項目毎の判断となる。となると、どんな括りで所得項目を特定するかが最重要検討事項になるけど、GILTI規則案では、ここはQBU単位と言っているよう。QBUっていうのはQualified Business Unitのことで、元々機能通貨の適用単位にかかわる規則で登場するコンセプトなんだけど、TCJAでFTCに支店バスケット追加されたり、FDIIも支店所得は対象外だけど、支店という概念をきちんと整理している規定が他にないので、TCJAの世界ではQBUが機能通貨以外の目的で支店の定義として流用されることが多い。

で、GILTI高税率免除規定の適用時に、高税率かどうかっていうのはQBU単位での判断となることから、CFC自体、そしてDRE、本当の支店、等に属する所得は各々税率何%で外国で課税されているのかの判断が必要となる。選択はCFC単位だけど、一旦選択した後、DREとかQBU毎に税率を判断し、低税率の部分には免除が適用されないことになる。米国MNCはCheck-the-BoxでDREを多用しているからここの検討は複雑だろうね。

まあ、これから最終化される過程で細かい規定には変更が加えられることもあるだろうから、詳細は最終化されてから深掘りしてみたい。でも、このままの流れでGILTI高税率免除規定が最終化されて、その適用でCFCの所得がGILTIから免除されると、前回までのポスティングで触れてきたテリトリアル課税の対象所得の候補が一人増えることになる。絶滅するかと思ってたら、急に新種の生物が空から降って来た感じ。

ちなみにGILTI高税率免除規定は財務省規則案が最終化される以前に早期適用することは認められない。でも財務省による高税率免除の法的な正当性を読む限り、規則案ではなく法文に基づいて直ぐにでもGILTI高税率免除を適用するポジションもあり得るように感じられ、ついフライングしたくなるけどね。

Sunday, February 2, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (5)

前回のポスティングでは、Extraordinary Reduction規定の背景Lesson 1に触れたけど、今回はExtraordinary Reduction規定そのものに関して。

この規則の骨子は「CFCの支配株主が認識できるDRDはExtraordinary Reduction額以外の部分に限定する」というもの。相変わらずややこしそうな規定だけど、支配株主とは、関連者の持分も加味して50%超のCFC持分を保有する米国株主で、テリトリアル課税のDRD適用条件を充たす者とされる。面白いことに、関連者規定を加味して自ら50%超の持分要件は充たしてなくても、支配株主と結託したり、協力している仲にあると取り扱われると、そんな株主も支配株主とみなすと規定されている。この実態に基づく支配の考え方は米国の移転価格でよく取り沙汰される論点だね。それにしても、こんな概念で支配株主を定義してる点を見ても、財務省はよっぽどテリトリアル課税の悪用を気にしてるんだね。チョッと気にし過ぎ?

で、Extraordinary Reductionがどんな時に発生するかって言うと、支配株主が所有するCFC持分の10%超のCFC持分を譲渡、または支配株主が所有するCFC持分に10%超の変動が生じた場合。これだけでも複雑~。Section 382の持分変動の規定みたい。これらのテストは、CFC全体の持分ではなく、自分が所有する持分を基に10%を算定するのがポイント。1つ目のテストは、例えば80%の持分を所有する支配株主が8.1%の持分を譲渡すると抵触する。2つ目のテストは、例えば、90%の持分を所有している支配株主が居て、CFCが他の株主に追加株式を発行することで、90%株主の持分が81%未満に低下してしまうようなケースが対象。この2つのテストを読んで、なんでテストが2つ必要なのか分かる人居る?どう考えても2つ目のテストだけで双方の状況をカバーしそうなもんだけど。そこが財務省の凄いところで、最初のテストは、例えばCFCの株主同士で同じ%の持分をスワップして譲渡する場合、誰の持分も低下しないけど、1つ目のテストの譲渡規定には抵触する仕組み。確かにその場合も、双方で譲渡益だのみなし配当だのっていう処理が発生するからなるほどね、って感じ。

で、これらのExtraordinary Reductionをトリガーする取引があった場合、Extraordinary Reductionがなければ支配株主が認識したであろうSub FやTested Incomeで、他の米国株主が認識することのない金額に対応するE&Pを基とする配当額がExtraordinary Reduction額となる。Extraordinary Reduction額としてDRDが否認される配当は、全額21%で課税され、Section 902はもう存在しないからFTCも取れない。

え~、そんなんだったらGILTIより酷いじゃん、って思うかもしれないけどその通り。GILTIだったら50%のGILTI控除があり、米国側がNOLでなければ最悪でも10.5%課税だし、FTCを考えれば場合によってはゼロ近くなることもある。一方、Extraordinary Reduction額としてDRDが否認されるとまるまる21%課税。これは余りに酷いということで、支配株主が自らGILTI課税を選択することが認められる。なんかGILTIが有難く見えてきたりして不思議だけどね。具体的にはExtraordinary Reductionが生じた時点でCFCの課税年度を終了させる選択。以前から言ってるようにCFC課税はCFCのCFCとしての課税年度が終了した時点で発生するものから、課税年度を終了させてしまえば自然とSub FやTested Incomeがフローアップしてくる。支配株主がこの選択をすると、他の株主から見てもCFCの課税年度が終了したように取り扱われることがある。21%課税と0~10.5%課税かの選択だから、選択とは名ばかりで実際にはオプションはなく常に選択をすることになるだろう。だったら、なぜ選択制とか言って格好つけてんのかってというと、多分だけど、法文的にCFC課税年度を強制終了させることはかなり無理があり、これを行政府が策定する規則で強制するのは、さすがに規則策定権限を逸脱してしまう、と考えたのではないだろうか。そこまでして課税年度を終了させてくれたりGILTI課税にしれくれたりして、チョッと優しいお心遣いっぽくもあるけど、単純にDRDを認めてくれたら本当の心遣いだったんだけどね。

ちなみに、Extraordinary Reductionには少額免除制度があり、CFCのSub FとTested Incomeの合計が$50MまたはCFCの課税所得の5%のいずれか低い金額を超えない場合には、Extraordinary Reduction額はゼロとみなされる。

このExtraordinary Reductionは日本企業がCFCを米国傘下から外す際に関係してくる。ついこの前の1月15日に提出した2019年3月期の法人申告書の作成で分かったと思うけど、米国の下にCFCを所有していると、GILTI支払いがあったところ、またGILTI合算でNOLを21%で食ってしまったところ、等の実害を実感したケースもさることながら、Form 8992、特にSchedule A、更に大幅に分厚くなったForm 5471の作成とか、コンプライアンス負荷はとても高い。それでも連邦は規則も大概において分かったし、IRSも良く内容を理解して様式をデザインしているので、GILTIやBEATを含むTCJAのクロスボーダー規定を原因とするコンプライアンス負荷は感覚的に130%アップくらいな感じだろうか。問題は州税。50 州+DCが各々主権国家として別の税法を制定している米国。以前から、どの州がどこまで連邦税法を取り込んでいるかとかバラバラで、実務的にはどこまで探求するべきか、っていう世界に突入してるとも言えるけど、TCJAのクロスボーダー規定を各州がどのように取り込むかに関しても規定がまちまちだったり、良く分かんなかったり。特にユニタリー合算制度との関係とか、州当局も追いついてないことも多い。また膨大な申告書を作成するソフトウェアベンダーも各州の様式や連邦からのデータインポートのタイムリーなアップデートが追い付かず、作成する際にマニュアルオーバーライドしたり、それにより合算計算が無茶苦茶になったりして大変。

日本企業のようなインバンド企業は、生まれながらにInversionしていると同然で米国MNCから見ると夢のようなストラクチャー。すなわち米国傘下からCFCを外すという奥の手があるので、事業上の目的に差支えのない範囲で今のうちに日本親会社の下とかにCFCを付け替えるのがいい。この移管自体にかかわる課税関係は、今回のポスティングのテーマのExtraordinary Reductionを含む複雑な規定を適用して検討する必要がある。ただ、Transition Tax等でCFC側のE&PがPTEPになって、CFC株式の税務簿価が増額している今がチャンス。数年したらCFC株式簿価のトラッキングだけでも訳分からなくなるリスクも高い。BEATはストラクチャー変えてもなくならないから、これだけでも面倒なのに、GILTIはストラクチャー的に合算計算を回避できるので、そのままにしておくってことは、相当のコンプライアンス負荷を覚悟した上での判断ってことになる。コンプライアンス負荷が高いと言うことは、すなわちリスクも高くなるし、会計事務所に支払うFeeも高くなるということ。会計事務所側の、規則の正確な把握も含む作業量増大は凄まじいからね。それでも1月15日の23時59分にはE-Fileが終わるから不思議だけどね(苦笑)。

それにしても、5回に亘ってテリトリアル課税対象所得が絶滅寸前っていうテーマで書いてきたけど、万一、そんな奇特なE&Pを分配することができたとしても、まだゲーム終了ではない。確率としては高くはないけど、GILTIにもSub FにもなってないE&Pを分配して、それがAnti-Hybrid規定に抵触したり、またはテリトリアル課税のDRD適格要件の保有期間を充たしていない配当があったりしたら、テリトリアル課税のDRDは適用されない。それどころかFTCの恩典もないので21%課税で最悪。そんなんだったら、これらも一層のことGILTIになってたら良かったのにね。物事は相対的なので、税負担的には結局GILTIってそんなに悪くないかな、って思わせる局面が多いね。さらにDRDの対象になったからと言っても喜ぶのはまだ早い、DRDの金額が相対的に大きいと、条件次第で配当時に株式簿価を減額させられ、簿価がゼロを割り込むとキャピタルゲインとなる。こちらも21%。またDRDの恩典を受けた後に、CFC株式を譲渡して損失が発生すると、損失計算目的で過去に計上したDRD額に関して株式簿価を減額しないといけない。全て21%で課税される税効果を持つ。散々だね(苦笑)

これらの規定をきちんと適用するには、CFC側のE&Pが何で構成されているのかを常に把握し、分配があったり、譲渡があったりする際には、分配や譲渡益が何なのかを理解しないといけない。実はこの点が規則の理解と並んで大変。テリトリアル課税になって、PureなE&Pも課税されないし、PTEPは課税済みだし、もうPTEPなんて管理しなくていいのでは、って思うかもしてないけど、どんな理由でいつPTEPになったかにより、為替差損益、FTCの取り扱いが異なるからしっかり管理しないといけない。PTEP分配で簿価がゼロを下回るとみなし譲渡益でこちらも21%課税だし。2019年1月のNoticeではPTEPだけでも16種類に区分されていた。皆さんは自社のCFCのE&Pがいくらで、16種類のPTEPのどこに属していて、滅多にないけどPureなE&Pがあったりするかご存知でしょうか?これ知らずして配当とかできないし、申告書の作成もできない。2017年末で一旦E&Pが洗浄されているのを機に今後は毎年トラッキングがMust。なかなか自分達ではできないのでBest ITS Practice Ever!(トランプのTwitterみたい)のEY US国際税務部門にFeeベースで依頼してみる(笑)?

Saturday, February 1, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (4)

前回までのポスティングでは、テリトリアル課税対象となるPureなE&Pがただでさえ少ない中、TCJA下の新国際課税システムに関して財務省やIRSが懐く世界観、すなわちSub FとGILTIが優先的に適用され、残余E&Pがあればテリトリアル課税の対象にしてあげると言うアーキテクチュアー、に基づき、PureなE&Pは財務省規則によりその範囲がますます狭められていく傾向にある点に触れてきた。前回は、その一例として「Extraordinary Disposition」規定による空白期間のE&Pを取り締まる暫定規則を紹介したけど、今回は、空白期間という一過性の話しではなく、恒常的に今後も発生する「Extraordinary Reduction」取引に基づくE&Pを取り締まる暫定規則に触れてみたい。

この話しをするには従来から存在するCFC課税の基本を理解しておかないといけないので、極簡単に背景に触れておく。言うまでなく、この背景そのものも実はとても複雑だけど、ここではLesson 1の「This is a pen」程度に触れておく。

TCJAで導入されたGILTIもそうだけど、従来からもCFCの所得の合算課税は、CFCがCFCであり続ける限り、CFCの課税年度終了時点で、その時点の米国株主に合算課税対象所得がフローアップして課税が発生する。CFCの課税年度を通じて同じ米国株主がそのCFC持分を継続所有していた場合には、この合算方法は普通に当たり前のものだ。一方、期中にCFCの持分譲渡があった場合にどうしてたかっって言うと、譲渡後もCFCであり続けるケースでは、あくまでもCFCの課税年度末に米国株主の位置づけにある者がSub Fを合算することになっていた。GILTIも同様。そうすると、自分が所有していない期間にかかわるSub FやGILTI、すなわち経済的には譲渡人に属するべきSub FやGILTIも、譲受人がまるまる合算しないといけなくなる。で、そんな理不尽な結果を是正していたのがSub F合算額からの「配当除外規定」。この規定は実際の適用はチョッと難しいけど、CFCの課税年度終了時の米国株主がSub Fの合算額を決める際、その課税年度内に他人が受け取った配当のうち、当該年度のSub F相当部分でかつ自分がCFC株式を所有していない期間に対応する金額を除外してよろしいという規定だ。

この制度はTCJA前は概念的に実に良く機能していたと思う。仮に、譲渡が起こる課税年度に実際に配当が存在しない場合も、株式を譲渡する側は、譲渡益に占めるCFCのE&Pのうち譲渡人の持分%および保有期間に対応する金額はみなし配当となるので、配当課税が起こる。そのうち、譲渡発生年度のSub Fに対応する額の譲受人が株式を所有していない期間に帰する部分、面倒な言いまわしになってるけど、要はもし譲渡が課税年度内に一回だけだったら譲渡人が所有していた期間に帰する部分に関して、譲受人によるCFC課税年度末のSub F合算額が減ることになる。元々Sub FっていうのはAnti-Deferralだから、CFCの株式を譲渡した側はE&Pに対して配当課税されることでDeferralは完全に解消され、その分に関して譲受人がSub F合算をする理由も必要もなく、結果として綺麗に各々が課税されるべきE&Pに課税される制度になっていた。

ちなみにこの考え方は、株式譲渡後も外国法人がCFCであり続ける場合にのみ適用が必要なもの。外国人に株式が譲渡され、外国法人がCFCでなくなってしまう場合には、譲渡時点でCFCとしての課税年度が終了するので、譲渡人はその時点で普通にSub F合算をさせられ、譲受人側におけるSub F合算の減額云々の処理は不必要となる。

この実に良く考えられた制度の大前提は、譲渡人が認識する配当が課税されるっていう点。もちろん以前は配当に間接FTCが認められたので実際にFTC後に支払う米国の税金は少ないケースもあっただろうけど、それはSub F合算も同じなので、綺麗にEquationが成り立っていた。ここまで書けば、テリトリアル課税の導入との絡みにピンと来た方も多いだろう。その通り。TCJAでCFCからの配当(みなし配当含む)は100%DRDで非課税となった。となると、譲受人側ではSub FやGILTIの計算基となるTested Incomeの合算額を、譲渡側の配当額に関して減額するにもかかわらず、譲渡側では配当が課税されないというふぞろいの林檎みたいになってしまう(古~)。

CFCのE&Pのうち、PTEPはそもそもみなし配当ではないので、あくまでもPureなE&PがCFCに存在する状態で譲渡が行われる場合の話しだけど、TCJA直後からこの論点は問題となっていて、議会によるTechnical Correctionの可能性も取り沙汰されたりしてたけど、議員さんは国民のために法律を通すために選ばれているはずなんだけど、立法はそっちのけで(苦笑)ポリティカルな事案に忙しいので、当然Technical Correctionが可決したり議論されたりする訳はなく、となると行政側の財務省に策を講じる法的権限が存在するのか注目されていた。

そんな中、不均衡を利用したプラニングが散見され始め、さらに、これは昔からあったけど、譲渡直後にCheck-the-Boxその他の手法でCFCのUS Yearをいきなり終了させてしまい、譲渡以前の期間に対応すると取り扱われる配当額を最大限化してみせたり、法文的にはその通りとは言え、チョッと抜け穴利用が過ぎる観はあった。空白期間の取り扱いと異なり、どちらかと言うと趣旨的にも調子が良すぎる結果となるからだ。

この問題は、Sub Fだけの世界だったらインパクトも限定的に終わったかもしれないけど、GILTIでCFCの所得は基本全て毎期、米国で合算されるために数字的なインパクトが大きい。さらに問題を複雑にしてるのが、TCJAによるCFCや米国株主の認定時のDownward Attribution適用免除規定の撤廃。Downward Attributionの適用が免除されていた従来の認定法では、例えば、日本企業の米国子会社が所有するCFCの株式を日本親会社に譲渡してしまえば、その外国法人はCFCではなくなっていた。ところがDownward Attributionが適用されることになってしまったので、日本の親会社が所有している持分は、米国子会社が所有しているとみなされ、外国法人は引き続きCFCであり続ける。ここで面白いのは、CFCでありながら、本当に直接・間接にCFCを所有している米国株主が存在しないこと。となると、さらに凄い結果となり、CFCの課税年度終了時点でSub FやGILTI合算をする米国株主が存在しないにもかかわらず、外国法人はCFCであり続けるので、譲渡時点でCFCの課税年度は終了せず、だれもSub FやGILTI合算をしないことになる。しかも、譲渡が発生している課税年度のE&Pは譲渡がなければSub FやTested IncomeとしてGILTI合算されたにもかかわらず、みなし配当となる範囲で譲渡人側でテリトリアル課税のDRDで非課税となる。極端な例を挙げると、3月決算のCFCの持分を3月30日に米国から日本に譲渡すると、一年分のSub FやGILTIが消滅してしまうこととなる。4月1日に譲渡したら、3月末でSub FやGILTIはまるまる合算されていたのと著しく対照的。

以前から触れている財務省やIRSの世界観に照らし合わせると、譲渡課税年度のE&Pが一部でもSub FやGILTIを素通りして、テリトリアル課税の対象となるような結果は到底、容認不可能となる。

そこで前回のポスティングで触れたExtraordinary Disposition規定が導入された暫定規則に、今度は「Extraordinary Reduction」という規則が同時に規定された。何でも「Extraordinary」って名付けると怪しい感じになってDRDの対象じゃなくなっちゃうみたいだね。そのうち、CFCにPureなE&Pが存在すること自体ポリシー違反とか言われて、全額「Extraordinary E&P」なのでテリトリアル課税は不適用、になっちゃったりしてね。

難しい話しで長くなってきたのでExtraordinary Reductionに関しては次回。

Saturday, January 25, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (3)

前回のポスティングで、2017年12月末までのE&Pは1986年以前に認識されているE&Pを温存している奇特なケースを除き、全額PTEPに生まれ変わっていること、また2018年1月1日以降に開始するCFCの課税年度からは毎期、DeferralなしでGILTI課税されるために、今後もGILTI課税の範囲でCFCのE&Pは継続してPTEPになる点に触れ、CFC側のE&Pにテリトリアル課税適格となる純粋なE&Pが生じ得ない理由をハイレベルに触れた。ちなみに、PTEPではないE&Pの存在自体が希少な点に加え、分配は米国税法目的ではまずPTEPから行われたとみなされる点も、テリトリアル課税適格のE&Pを分配するチャンスが著しく低くなる理由。つまり、Transition TaxとGILTIで積み上がったPTEP全額を分配し終えて初めて、根雪のように僅かに底辺に残っているかもしれない純粋なE&Pを分配できることになる。しかもGILTIで毎期毎期PTEPが増える訳だから、PTEPでないE&Pは常に底辺に押しやられる感じ。

ところで、このPTEP系の話しは早々にラップアップしないと、ってプレッシャーを感じていたのは、例のSection 163(j)の最終規則が公表されると、どうしてもそこにフォーカスせざるを得ないからだ。Section 163(j)の最終規則そのものは、規則を事前評価する政府機関OIRAの審査を終えたと聞いてるけど、先日の法曹界の集まりにおけるIRS高官の話しによると、最終規則の公表と同時に、前回の規則案では検討されていない新たな切り口の規則を同時に新規則案として公表する予定らしい。で、この新規則案の方が未だOIRAの審査に回っていないようで、これに引っ張られる形で全体のパッケージ公表が遅れそう、とのこと。タイミング的にチョッとひと安心。実はパートナーシップへのIPの現物出資に関するAnti-Abuse的な暫定規則が最終化されたりもしているので、そちらもチョッと触れたかったしね。

最終規則を公表する際に、新しい規則案が同時公表されるっていうパターンは、TCJA絡みの規則策定時の常套手段となりつつある。このトレンドは検討を重ねれば重ねるほど新たな課題が続出してくるTCJAの現状を良く反映している。TCJAは、法文そのものだけ読んだだけでは不明な点が多いし、また法文そのものが立法趣旨と異なるケースも散見され、規則策定は世間が考えるほど容易ではない。この点に関して2017年末から今日まで、財務省やIRSは、Deepな知見、各界との頻繁な意見交換、を駆使してテクニカル面で卓越しているばかりでなく、実務的にバランスが取れた規則を信じられないスピードで公表し続けている。もちろん個々の内容には賛否両論なものも多く含まれるし、個人的にも行政府の権限内なのかな、と思うようなこともあるけど、元々とんでもなく複雑な法律にOverlayする形で規定されているTCJAをあれだけの短時間で消化し、執行可能なルールに落とし込む実力には脱帽。これがどれだけ大変か、っていうのを理解していれば、財務省やIRSの努力や能力の凄まじさを認識せざるを得ないし、またポリシー的にも税金を取る側が策定するルールとしてはバランスが取れた規則が公表され続けていると感じることができるはず。

ところが、先日、ニューヨークタイムスが、規則策定を通じて現政権がTCJAを骨抜きにして大企業がラッキーしているという、ニューヨークタイムスの読者層には受けるかもしれないけど、個人的にはアンフェアに感じられる記事を掲載していた。各界の意見を反映し、法文から逸脱せず(たまに際どいけどね)、執行可能なルールを策定しようとしている財務省やIRSの方たちの苦労や努力を踏みにじるように感じられ、メインストリーム・メディアがこのような記事を記載すると、一般の人は財務省やIRSは政治的な意図で規則を策定しているって勘違いしてしまわないかな、って少し心が痛んでしまった。

で、本題に戻るけど、過去のE&Pが全額洗浄されて、今後はGILTIで毎期CFCの所得がPTEPに生まれ変わるシステム下でも、しぶとくPTEPとならないCFCの所得があるにはある。まず、Obviousな項目として今後、CFCが認識する所得のうち、GILTIの基となるTested Incomeから除外されている所得。Sub FやECIはGILTIの計算基となるTested Incomeから除外はされるけど、Sub F対象所得はDeferralなしで毎期、米国で合算されるのでGILTI同様PTEPになる。ECIに至ってはCFCが米国で申告して課税されているし、そもそも外国源泉じゃないのでテリトリアル課税目的ではDRDの対象ですらなく論外。従来からの国内DRDの適用検討の価値はあるけどね。また下層に位置するCFCからの配当所得をTested Incomeから除外するっていう部分は、下層CFC自体がGILTI課税の対象なので単にダブルカウント防止で、これも役に立たない。となると残るは、従来からのSub Fに規定される「Foreign Base Company Income」や「Insurance所得」のうち「High-Tax Exception」の対象となる所得。プラス「米国外オイル・ガス所得」となり、これらがあればテリトリアル課税適格のE&Pが創出されることになる。そんな所得余り多くなさそう、って思うかもしれないけど、その通り。ちなみにSub F向けのHigh-Tax Exceptionに準じた免除規定がGILTIの「新」規則案で提案されていて今後の動向が楽しみ。これもGILTIの規則最終化時点に同時公表された「新」規則案という形で提案されている。

次に、これらも分かり易い項目として、Tested Incomeだけど米国株主側でGILTIにならない所得が挙げられる。このカテゴリーに属するのはCFCの有形償却資産の10%に当たるみなしルーティン所得に加えて、他のCFCのTested LossのおかげでGILTIになっていない部分。面白いことに他のCFCのマイナスで相殺されるプラスの所得はGILTI規定ではPTEPにはならない。Transition Tax時には他のCFCのマイナス留保所得と相殺されて非課税となった部分もPTEPになるっていう法律だったけど、おそらくTransition Taxがテリトリアル課税を想定していない旧来の法律下で規定されているのに対し、GILTIはもちろんTCJA下での処理となり、マイナスでオフセットされた部分がテリトリアル課税適格のE&Pとなる点を加味してこのような異なる取り扱いとしているのだろうか。複雑。

で、前回チラッと間接的に触れたので勘の鋭い方はアレって思われたかもしれないけど、Transition Taxは2017年12月末(稀に11月2日)時点のE&Pが対象となっている。これはCFCや米国株主の課税年度にかかわらず一律。一方、GILTI適用開始日は、2018年1月1日以降に開始するCFCの課税年度。CFCが12月決算の場合には、2017年12月末までのE&PはTransition Taxで課税され、2018年1月1日以降の所得はGILTIで課税されることなり華麗なTransitionとなる。でも、CFCが暦年以外の所謂「Fiscal Year」のケースでは、Transition Taxの対象となった2017年12月末のE&Pと、所得がGILTI対象となり始める間に空白期間が存在する。その空白期間を狙い、ドラフト外入団という形で巨人ジャイアンツは契約締結を決行する、じゃなくて(これも古いけど、今でも知っている人は多いよね?)、空白期間にCFCが認識する所得はTransition Taxの対象でもなければGILTI対象でもないことになる。例えば、日本企業のように米国でも3月決算が多いケースは、CFC課税年度合致要件があるので多くのケースでCFCも3月決算だけど、Transition Taxの対象となるE&Pは12月で打ち止められている。一方でGILTIは2018年4月開始のCFC課税年度から適用なので、1月~3月の所得はGILTI対象にならない。「見、見、見つけた~!」って感じのピュアなE&P。となるはずだったんだけどね。ちなみにCFCの課税年度は大多数の持分を所有する米国株主の課税年度に合わせる必要がある。Sub Kのパススルーみたいな要件で、双方共パートナーシップやCFCの課税年度末に所得配賦や合算額の算定を行うことから、期ズレを利用した所得認識の繰り延べに網を掛けるための規則。CFCの所在国で課税年度の選定が不自由でも米国目的では合致要件に基づく課税年度を採択しないといけない。例えばCFC所在国の法令では課税年度は1月~12月って決まってても、大多数持分所有の米国株主がFiscal Yearの場合、米国税法目的では合致要件に基づきFiscal Yearの採択が強制される。これが理由で、「US Year」とか「Foreign Year」とか言って区別が必要となることがあり、Poolingが廃止され毎期個別に計算されるTCJA下のFTC算定時などには、外国のどの法人税がUS Yearで発生し、かつProperty Attributableと取り扱われるのか、という重要な検討事項にも影響を持つ。

ちなみにCFCの課税年度の合致要件には例外があり、大多数の持分を所有する米国株主の課税年度より1カ月早い課税年度を選択することが認められる。ほぼ間違いなく暦年課税年度の米国企業傘下のCFCのUS Yearが11月だったりするのはこの例外を利用しているケース。1カ月早いというと、1カ月だけの繰り延べだから大したことないじゃん、って錯覚するかもしれいないけど効果はもう少し大きい。11月に課税年度が終了するCFCの所得を取り込むのは、米国株主のその直後の12月決算だから、前年一か月分の所得は11カ月の課税繰り延べが実現されることになる。さっきのTransition TaxとGILTIの関係を考える上でも、GILTIが2018年12月1日以降から適用となるので、11カ月に亘る空白期間が生じることになる。

ここに神経を尖らせたのが財務省。財務省とかIRSの世界観に基づくと、TCJA後の米国国際課税システム下では「Sub F、GILTI、245A(テリトリアル課税)」が一体となって機能し、外国源泉所得の課税関係を決めるというもの。更に優先順位的には、Sub FとGILTIの洗礼を受けた後にサバイバルしているE&Pのみがテリトリアル課税の恩典にあり付ける、というもの。その見地から行くと、空白期間のE&PがGILTIの洗礼を受けることなく素通りでテリトリアル課税適格となるのは、ポリシー違反ということになる。

え~、でもGILTIを想定して慌ててCFCの課税年度の変更でもしているケースは別として、何も知らずに真面目に生活してたら急に2017年末のE&PはTransition Taxで課税と言われ、2018年1月1日以降に開始する課税年度からはGILTIと言われ、法文に基づいて空白期間が存在してしまっているケースをポリシー違反と言われてもね。議会で勝手に法律作ったくせに、と言いたくなるだろう。だったらTransition TaxをCFC課税年度末に存在するE&Pと規定すればよかったのにね。これを行政府に権限委譲されている規則策定のスコープ内と納得できるかどうかは意見が割れるところだろう。

しかし現実は厳しく、財務省はGILTI規則を最終化した際に、245Aにかかわる暫定規則も同日公表し、空白期間に発生する所得のうち、一定要件を充たすものは実質GILTI課税されたかのようにDRDを50%に限定 するという斬新な対抗策を打ち出した。法的な権限は微妙だけど、少なくとも空白期間に生じた所得全額をGILTI対象とかにしてないのは救い。DRDが50%に限定されるE&Pを生み出す取引は、空白期間に起こった通常レベルを超える資産譲渡で、これを「Extraordinary Disposition」、特別譲渡とでも訳すんだろうか、と言う。何がExtraordinary Dispositionかは少額免除を含む詳細な定義で規定されている。この手の取引は、大概において関連CFCに対して含み益を持つ資産を譲渡し、譲渡側CFCで空白期間に多くのテリトリアル課税対象E&Pを計上すると同時に譲渡先CFCでは高い時価に基づく償却を取ることで、今後のGILTIを減額するように設計される。また、空白期間とは言え、従来からのSub Fはもちろん粛々と存在してるんだけど、これらの資産譲渡はSub Fには抵触しないようにプランされるので実質、米国で合算されることなく過大なE&Pが創出され兼ねないものだった。

3月決算の日本企業米国子会社が大多数持分を所有するCFCは課税年度合致要件で3月決算(または2月も可)なので、基本3カ月の空白期間がある。この間にExtraordinary Dispositionがなければ、無事にこの3カ月間に創出されたE&Pがテリトリアル課税適格となる純粋なE&Pとなる。

で、この厳しい暫定規則は空白期間というGILTI導入時の一過性の期間のみにかかわるものなので、空白期間を無事に乗り切れば、時はいつの日にも親切な友達で、過ぎて行く昨日を物語りに変えてくれるんだけど、TCJA下の新国際課税システムの考え方として、Sub FとGILTIが優先で、その後に残ったものがあればテリトリアル課税を認めると言うアーキテクチュアーというかポリシー、思想が明確に示唆された点の意義というかショックは大きい。さらにこの暫定規則にはもう一つテリトリアル課税対象となる所得を制限する、しかもこちらは空白期間のように一過性のものではないLong-Lastingな規則が規定されている。これも面白いけど、ここからは次回。

Saturday, January 18, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得 (2)

NYCとか米国北東部の冬を知っている身としては、お正月明けの七草がゆ直後の1月9~10日に立ち寄った東京はとても暖かく感じられたけど、その後、NYCに戻ってビックリ。11~12日の週末は70度(℃だと20度くらい?)に迫る勢いで、1月だというのにCentral Parkで桜のつぼみが春が来たと勘違いして開きそうになっているとWSJで特集されていた。その後も温暖で、コートも持たずに調子にのって出歩いたりしてたんだけど、一週間経った今日、金曜日は氷点下まだ冷え込んでしまい、いつもの冬に戻ってしまった。それでも5~6年前に2年連続で襲った極寒の冬とは比較にならないけど、来週前半まで寒いみたい。明日、土曜日は午後小雪が舞うっていう予報だしね。そんな週末は暖かいミルクティー飲みながらMKの禁断のブリオッシュでもつまみ、もう直ぐ出そうなSection 163(j)の最終規則がどんな内容かアレコレ空想に耽るのが最高(なにそれ?)。実際には諸々のHouse-Keepingマターでバタバタすることになるんだけど気持ち的にはね。

で、前回のポスティングでは、新年の挨拶代わりに、「テリトリアル課税」に移行したはずのTCJA以降の米国国際課税システムにおいて、米国企業がテリトリアル課税の恩典を受けることができるチャンスはほとんどない、であろう点について書き始めた。

この話しの前提となるクロスボーダー課税関係の基礎的なルールだけでも数冊の本になりそうだけど、今回の話しに関係しそうな部分だけ、表面的にチラッと触れる、米国では分配がないにもかかわらずGILTIやSub Fで米国株主が合算課税される場合、CFC側の留保所得が「課税済留保所得」、すなわち「Previously Taxed E&P、略してPTEP」(「ピーテップ」っていう発音)となる。TCJA前はPTIって言ってたんだけど、TCJA直後からPTEPに変わってしまった。基本的に内容は一緒。

このPTIやPTEPの世界は深淵で、2006年に財務省規則案が公表されてるけど結局今日まで最終化されていない。そうこうしているうちにTCJAが可決してしまい、大幅にアップグレードせざるを得ない状況に。2006年当時はあくまでもSub Fの世界の話しで、それだけでもとてつもなく奥が深かったけど、TCJA下のTransition TaxやGILTIで巨額のPTEPが課税システムに創出され、その重要性、複雑性、共に従来とは比較にならないレベルに達している。そんな進展を反映して、IRSはNotice 2019-01を公表し、暫定的なアプローチを示すと共に、2006年の規則案を実質書き直して新たな規則案を策定するとしている。Notice発行当時は2019年の秋から冬に掛けて規則案が公表される、って財務省やIRSの国際課税担当官が法曹界のパネルとかでアグレッシブなタイムラインを披露してくれてたけど、結局2020年になっちゃったね。ただ、他に先行している規則にも少なからず消化不良の部分が残っている中、PTEPみたいな複雑な規則案をこのタイミングで公表されても、実際にはチョッと困るのも事実。

で、CFC側のE&Pのうち、どの部分がPTEPに区分されるっかていうのをトラッキングする必要がある理由だけど、従来は、CFCからの分配はE&Pの範囲で配当所得となりFTCは取れるけど課税対象だったので、既に課税されているE&Pを原資とする分配は二度目の課税が生じないように管理するというのが一番の目的だった。コンセプト的には分かり易いね。テリトリアル課税になった今日でもトラッキングが必要な理由は後述する。で、ここでいう配当は、もちろん会社法上の分配に基づく配当に限らず、米国税務上、配当と取り扱われるCFC株式譲渡時のSection 1248とか、組織再編の際に配当となる部分のBootとか、も含まれる。で、PTEPの分配は配当ではないので、どうなるかって言うと、元々Sub F合算時にはCFC株式の簿価を合算額だけ増額させているので、PTEP分配時は同簿価を減額させて調整していた。

この仕組みは、従来のSub FのようにCFCを個別に見て米国株主の合算額が決まる、すなわち課税所得は単純にCFC側の属性で決定される合算システム下では、株式簿価とCFC側のPTEPが連動することになり分かり易い。一方、Transition TaxやGILTIのように、米国株主側で複数のCFCのプラスやマイナスを相殺したり、他の属性を通算するようなシステムに同じ仕組みを適用するのはとても難しく、分配時に思わぬみなし譲渡益が出たりすることがある。従来の感覚では、PTIは株式簿価があるのでTax-Freeで戻せるいい属性で、逆にPTIでないE&Pは、High-Tax Poolが一緒に付いてないと悪者、っていうイメージだったけど、TCJAで逆にPTEPでも必ずしも非課税ではないので要注意となってしまった。

で、本題のなぜ配当可能原資となる純粋な、すなわちPTEPでないE&Pが存在し得ない、または僅少か、という点に入るけど、旧国際課税システムから新システムへの移行に際して1987年以降のE&PはTransition Taxで課税されている。法的にはTransition Taxは該当E&Pを全額一気にSub Fと取り扱って課税しているので、2017年12月31日以前に開始するCFCの最後の課税年度末に全額発生したことになる。このTransition Taxっていうのは実に良くできていて、TCJAで規定されているにもかかわらず、「旧」法が適用される。CFCの課税年度の関係で米国側で2018年に課税されていてもそれは変わらない。なので全額E&Pを低税率で合算して、税率が低い分減額されるけど外国法人税Poolがフローアップする。PoolingはTCJAで撤廃されているので、過去のPoolingを使用できるのは金輪際これで最後となる。Section 956でPoolingを使おうって企んでたけど、規則案が出てダメになってしまったしね。

Transition Tax課税はSub Fだから、2017年12月末(稀に11月2日)時点のE&Pは全てPTEPになっている。しかも、他のCFCのマイナスと米国株主側でオフセットされて実際には課税されていないE&PまでPTEPにすると言う変わった法律だったので、1987年以降の留保所得は全て本当にTransition Taxで課税されている所謂965(a)PTEP、または他のCFCのマイナスで課税はされていない965(b)PTEPとなっている。ということは2017年12月時点で手つかずのE&Pは、1986年以前のものだけ。そんな古いE&P誰が持ってるの、って感じだけど、もしあればこれが1つめのテリトリアル課税対象となり得るE&P。実際にはまず存在しないだろう。実際には課税されていないのにPTEPになっている965(b)の存在は税法上異質で、いろいろな追加検討を誘発しているけど、この話しは以前にもした記憶があるので、興味ある方は昔のポスティングを覗いてみて欲しい。

そんな状態で一旦E&PとTax Poolが全額洗浄された後、今度はGILTIで毎期CFCの所得は米国で合算される。GILTIは米国株主側で加工する米国の属性だっていう点はさっき強調したけど、仮にCFCの所得がGILTIで課税されている状態だと、今後、毎期E&PはPTEPになる。チョッと面白いことに、GILTIにしても、Transition Taxにしても通常の法人税より低税率で課税されるんだけど、株式簿価はそのまま全額増額するし、E&Pも全額PTEPになる。

となると、今後もPTEPとならないCFCの所得、すなわちテリトリアル課税適格のE&Pは未来永劫生まれない、っていう厳しい現実だけど、例外が少しだけある。ここからは次回。

Saturday, January 11, 2020

絶滅種に指定されそうなテリトリアル課税対象所得

西海岸、ボストン、東京と新年早々飛び回らざるを得ないはめとなり、チョッと(大分?)遅くなってしまったけど、新年明けましておめでとうございます。2020年。日本はいよいよオリンピック。米国は選挙の年だけど、米国議会はImpeachmentとIranの2つの「I」で相変わらず混沌とした状態のまま一年をキックオフしている。今は2つの「I」かもしれないけど、今から大統領選挙の11月までには、Fake Newsも含めて毎日いろんなことがありそうだから、どんな凄い事件や争点が勃発してくるのでしょうか。

で、広範な政局の話は尽きなさ過ぎるのでさておき、国際課税に関しても2020年と年の数は変わっても引き続き考えることは山積み。2017年の税制改正(「TCJA」)絡みでは、支払利息の損金算入制限を規定しているSection 163(j)やAnti-HybridのSection 267にかかわる最終規則が近々に公開されるはずだし。Section 163(j)に関しては規則案でMNCを落胆させたCFCへの適用を一転して見送ってくれるのではないか、という期待が高い。GILTIの規則案で、米国パートナーシップの取り扱いを、概念的には立派だけど実務的な対応が困難だったハイブリッドから最終規則ではPureなAggregateに簡素化してくれてウェルカムだったように、今回もSection 163(j)のCFC適用見送りの逆転ホームランがあるのではと楽観する向きがある。財務省やIRS重鎮の最近のコメントから可能性は結構あるかもね。

それにしても2年前にTCJAが可決された当時は、皆どちらかと言うと無邪気に、米国もようやくテリトリアル課税の仲間入りを果たし、ただ、その際に過度のBase Erosion が懸念されるので、その取り締まり目的でBEATやGILTIでバックストップしているという印象を受けたものだ。可決後間もなく、実はそれはとんでもない誤解で、むしろ逆に、TCJA後の米国国際課税システムは、GILTIによりDeferralなしのグローバル・パススルーというか、グローバル疑似連結納税という恐ろしい制度が基本で、肝心のテリトリアル課税が適用される海外のEarnings(「E&P」)は限りなくゼロに近いブルーという現実にハッとしてグッと来なくて、GoodではなくBadとなった(古~)。一方でFDIIも同時に導入され、海外向けの事業所得や、IPをライセンスして受け取るロイヤルティを米国で受け取っても、理論的にはGILTI後のCFC合算課税と結局同じという税環境を演出し、米国と外国間でいわゆる「Level Playing Field」を達成している。GILTI側のみに注目する傾向にあるグローバル・タックス・コミュニティは、GILTIとFDIIが対でワークする点、またFDIIは米国を有利にしている訳ではないという点、2つを中々直感的に理解できていない気がする。このようなパラダイムシフトこそ、TCJA後の米国における国際課税システムのNew Normとなる。

ということで、今回のポスティングでは、テリトリアル課税の対象が縮小一途な点に触れて新年の挨拶(?)としたい。

米国のテリトリアル課税は、配当をいきなり非課税とするのではなく、実質同じだけど、配当は一旦全額所得として認識した後、一定要件下で100%配当所得控除(「DRD」)を認めることで達成される仕組みになっている。具体的には、米国法人が10%以上の持分を所有する外国法人、Specified 10-percent Owned Foreign Corporation、から海外源泉のE&Pを原資とする「配当」を受け取る際、12カ月の保有期間を充たせば当配当全額がDRD対象となる。DRDにはGILTIやFDII控除と異なり課税所得制限はない。12カ月の保有期間は配当権利落ち日の前でも後でも充足可能。配当後に12カ月株式を保有していれば要件を充足できるっていうのはチョッと面白いけど、場合によっては申告時点で、まだ要件の充足が確定していない状況もあり得る。また、この12カ月保有期間は、ただ保有しているだけではなく「10%株主」の立場で保有している必要がある。12カ月保有要件だけでも、Section 1248 との関係とか相当面白いポスティングになるんで書きたいことはやまやま。でも実務的には大概においてこの条件で悩むことはないかな。

例外は米国パートナーシップが外国法人の株式を保有しているケースで、その場合は誰の保有期間を見て、誰が米国株主じゃないといけないのか、とかパートナーシップをAggregateとするかEntityとするか、というお馴染みの難しい判断が求められる。従来のSub Fオンリー時代から、クロスボーダー課税における米国パートナーシップの取り扱いは鬼門だったし、CFCブロッカーみたいなイノベーティブな(?)使用法が編み出されたりしてたけど、それでもTCJA前はなんだかんだ言ってもSub Fという限られた世界の話しだったので、外国と米国パートナーシップというかなり恣意的な形態の差異で取り扱いがここまで異なるっていう法律の趣旨が良く分かんないけど、適用が限定的だからまぁいっか、みたいな世界だった。GILTIやDRDが導入された今日、概念的には同じ検討事項だけどそのStakeが著しくハイになってしまい、これ以上の放置は認められない。そんな待ったなしの状況を背景に、Sub Fにもとうとう米国パートナーシップAggregate規定が提案されているので、その辺の話しはいずれまた。

で、DRDに戻るけど、DRDの対象となる海外源泉配当に関しては、その代償に直接・間接FTCも、源泉税にかかわる外国税金の費用控除も認められない。また、配当支払い側で控除を含む税メリットを享受できるような配当は、Hybrid配当としてDRDもFTCも双方否認される。

そんなに変わった制度じゃないじゃん、って思うかもしれないけど、実はDRDの対象が米国税務上、配当と取り扱われる金額に限定されている点に大きな落とし穴がある。TCJA導入時のTransition Tax、またそれ以降のGILTIの世界では税務上「配当」と取り扱われる金額がCFCから分配されるケースは存在しないからだ。って言うとチョッと大げさかもしれないけど、存在し難いのは確か。しかも、「やった~、配当原資となりそうなE&P見つけたぜ」って偉業を成し遂げたつもりが、最近の財務省の規則で次々と適用が禁止されたりして、今では絶滅寸前。まるで、Endangered Species、すなわち絶滅危惧種に指定された生物種のよう。しかもCE+ENレベル。本当の生物種と異なり、保全活動のしようもないし。

で、なぜそこまで希少なものか、という点は次回。