Sunday, September 8, 2019

日米租税条約議定書発効と源泉税

数回に亘り、批准の動向をポスティングしてきた2013年の日米租税条約の議定書だけど、ついに8月30日に6年越しの米国批准手続きを経て発効した。議定書とかProtocolっていうと名前が堅苦しいけど、要は2003年の日米租税条約の改正のこと。既に簡単な内容とか議定書そのものが発効した後に、各規定が実際に効果を持ち始めるタイミングは前回までのポスティングでカバー済みなので、ここで繰り返えす必要はないけど、発効が際どく8月中だったので、源泉税の軽減は11月1日以降の支払いから有効となる点は一応注目に値する。

例えば、米国の観点からは、支払利息は法的な支払いタイミングが11月1日以降であれば、利息算定の基となる経過期間に10月31日以前の期間が含まれていても源泉税率はゼロ%となる。発生ベースで考える必要はない。源泉税課税が法的に発生するのはあくまで支払いのタイミングだからだ。もちろん、相殺とか元本組み入れは支払い同様と取り扱われる。

源泉税率の軽減って、条約の趣旨が一番分かり易く具現化されてるって感じ。源泉税は支払側が徴収して納付するけど、あくまで受け手の代理人という身分で行っている訳で、実際の納税者は利息等を受け取る外国人。したがって、源泉税はECIやPE帰属所得に対する申告課税と並び「Resident Country」ではない側の国が「Sourcing Country」として外国人に課税権を行使するパターンの典型。条約の特権を受けることができない場合、米国内国法では投資所得は原則30%の源泉税対象となる。

で、租税条約による源泉税率の軽減は、内国法で認められるSourcing Country側の課税を緩和するという、これまた典型的な条約の軽減措置。租税条約っていうのは通常の契約と同様に、締結国が各々のSourcing Countryとしての課税権の一部を軽減・緩和するという「対価」の交換をもって成立する二国間の法的な契約。日本では元々20%、米国では30%の源泉税をお互いにゼロにするので、個々の規定ベースでは対価の価値は必ずしもパラレルではないけどね。契約法をかじったことがある人は分かると思うけど、契約が成立する要件の一つとなる「対価」は、お金を払ったり、サービスを提供したりする行為ばかりでなく、法的な権利を自ら放棄することでも立派に構成させることができる。

外国関連者に源泉税対象となる支払いを行う際、米国税法では米国支払い側の当金額にかかわる損金算入は発生ベースではなく、支払ベースの現金主義で認められるのが原則。これは課税と損金のマッチング概念。受け手となる外国人が米国で課税される、すなわち源泉税が課せられるタイミングと損金算入のタイミングを合わせようとするもの。なので損金算入をトリガーする「支払い」の定義も源泉税をトリガーする取引と規定されている。このようなマッチング規定がないと、関連者に発生する利息とかロイヤルティーを長期に亘り未払いの状態を続けることで、損金側だけ発生ベースで認識し、外国関連者側の米国における所得認識を延々と繰り延べることが可能となってしまう。

課税が支払いベースっていうのを利用して、長期間に亘り所得認識を繰り延べる案を見るたびに、Section 457Aで網が掛けられる前の、ヘッジファンドマネージャーがケイマンとかのオフショアフィーダーから受け取るIncentive Fee(CarryみたいなIncentive Allocationではなく)を10年も繰り延べしていた姿を思い出して苦笑してしまう。ヘッジファンドとかPEのスポンサーたちみたいに、常に自ら限界に挑戦し、かついろんなプロフィールの投資家全ての米国課税関係に応えようとする(でないと次の投資家が集まらないしね)クライアントを持っているとそれはそれは勉強になる。ファンドのスポンサーはどんなにお金持ちでもNY気質で気が短く激しいので失敗は許されないし。でも現実には複雑なストラクチャーになればなるほど、ストラクチャーや申告が100%クリーンと言うのは難しい、というか不可能っていうのが実務家の視点(言い訳?)。それにしてもヘッジファンドは源泉税とかに対する感度も際立ってると言える。

ケイマンフィーダーと言えば、PEの世界ではPEがパススルーに投資する際に毎回組成されるAIVの一部を構成することがあるし、ヘッジファンド投資は流動性が高いのでAIVは不向きとなることから、ヘッジファンドの世界ではファンドをストラクチャーする際にもともと単純にケイマン法人を組成して、「普通の」非課税団体(CalPERS、SERS、NCRS、MainPERSみたいな州の一部となるスーパー非課税団体ではないという意味で普通の)や日本企業を含む外国からの投資家向けにブロッカーとして用意してたけど、ヘッジファンドのオフショアフィーダーがデラウェア州LPSであるマスターファンド、またはブロッカー直下のミニマスターファンド経由で受け取る配当所得が30%源泉税の対象となる問題がある。ケイマン法人だからもちろん条約はないしね。利子所得は条約有無にかかわらず、元々基本的に利益連動や関連者からのものでない限りそもそも内国法で源泉税対象でないから問題ないけど。ヘッジファンドは派手にトレーディングするから、配当所得は少ないかもしれないけど、それでも状況次第では30%源泉税対象となる投資がある程度のポーションを占めると、投資リターンには悪影響。

で、配当に対する30%源泉の問題は、従来、スワップ、しかもデルタワンのスワップで解決するっていうのがヘッジファンド界の常識というか、常套手段だった。というのは想定元本から受け取る所得は配当ではないので、受け手の居住地を基に源泉地を決めるというのが基本的な考え方だからだ。そんな安易な源泉税回避法に業を煮やした議会がSection 871(m)を導入し、デルタワンスワップ策は封じ込められてしまった。 だったらと、今度はケイマン法人ではなくケイマンLPSでせめて条約締結国の投資家には条約に基づく10%とか15%の軽減税率で源泉税が済むように工夫するようなトレンドになっている。投資家のクラス次第だけど。SWFなんかはだったらオフショアフィーダーに鞍替えしてるのかな。マスターファンドでCommercial Activitiesがないと信じてるんだったら引き続きドメスティックフィーダーなのかもね。一方、UBTIが発生したら困まる「普通の」非課税団体から見ると、派手にレバレッジを導入するヘッジファンドがパススルーでは大変。だったらと、彼らのためにCTBしてあげたりして。う~ん、概念的にはシンプルでも、実務的にW-8とか、とてもファンドのバックオフィスがペーパーワークに耐え得ないのでは、って心配になってくる複雑なストラクチャーだ。源泉税コストっていうのは投資の世界ではとても重要。

で、話しが何となく脱線してきたけど、米国税法では、源泉税対象となる支払いの米国支払い側の損金算入は発生ベースではなく、支払ベース、すなわち現金主義で認められるのが原則っていう上の話しの続き。源泉税が条約でゼロ%となる場合、このマッチングは意味がない。支払っても支払ってなくても源泉税がなく、タイミングにかかわらず米国はSourcing Countryとしての課税権を完全に諦めてしまっているので、マッチングする相手がいない。だったら支払い側の損金算入は通常の内国法のAll-Eventテストで判断すればいいのでは?ということになる。

で、ここからはロジックでは説明できないけど、判例その他の沿革があり、現状の財務省規則下では、支払利息に関しては例え条約で源泉税がゼロ%でも外国の関連者に対するものは現金主義でのみ損金算入が認められる。マッチングするものがなくてもね。一方、支払利息以外、典型的な例はロイヤルティーだけど、に関しては条約で源泉税がゼロ%となる場合、マッチングのしようがないので、発生ベースで損金算入となる。したがって日本の親会社に支払うロイヤルティーは条約で源泉税が免除されている限り、2003年以降、発生ベースで損金算入できる一方、2019年11月1日以降に支払う利息の源泉税がゼロ%になるからと言って、発生ベースを適用することはできず、支払利息の損金算入は支払い時点まで待たないと認められない。その場合、Section 163(j)とか他の制限規定がキックインしてくるのも支払い時点だ。支払利息は目の敵にされていて、他の所得と異なり、外国関連者に対するものである限り、米国源泉でなくても支払うまで損金算入が認められない。米国源泉でなければ源泉税の対象でないので、マッチングの必要はなくこれもチョッと不思議。

ちなみに源泉税率が軽減されているけどゼロでないケースは、外国関連者への支払い全額に関して現金主義に基づく損金算入が求められる。BEATとか旧163(j)適用時には、30%が10%に軽減されているようなケースでは支払いを3分の1と3分の2に分岐して取り扱いを決めてたけど、Section 267目的ではそんなことはしない。

ということで、議定書による改正でインパクトが大きいのは関連者間の支払利息に対する源泉税、仲裁規定、不動産持分法人の定義だけど、仲裁は二国間協議との絡みで面白いので次回、チラッと触れてみたい。

Wednesday, July 17, 2019

日米租税条約「議定書」6年越しの批准

昨日、スペインの議定書が上院で批准されたが、今日(2019年7月17日)日本の議定書も圧倒的多数でめでたく批准された。議定書の合意は2013年1月24日だから、実に6年6カ月経ってようやく米国側の批准が完了したことになる。ちなみに日本の国会は2013年6月に批准を早々に終えているので、随分待たされた感じ。議定書に「批准書は、できる限り速やかに交換されるものとする」と両国が宣言しているのがおかしい。

昨日のポスティングでも触れたけど、今後、日米間で批准文書の交換が行われて正式に発効に漕ぎつける。後は形式的な手続きと言えるけど、米国でまず批准文書がドラフトされ、国務省が大統領府間と調整して大統領による署名を行う。署名されたら日米で文書交換され、議定書はめでたく発効となる。

で、実は議定書自体はそれで効力が発生するけど、実際に源泉税に関しては効力発生日から3カ月後を含む月の初日から実際の適用がある。以前に支払利息の支払いをもうチョッと待てばゼロ%というようなことを書いたことがあるけど、正確には仮に7月に批准書が交換されたら、10月1日から源泉税が下がる。源泉税以外の税金に関しては、議定書の効力発生後の1月1日以降に開始する課税年度から適用となる。源泉税に関しては、トランプ大統領が7月中に署名するか、8月にずれ込むか、で発効タイミングが10月1日となるか11月1日となるか、差が出ることになるね。他はいずれにしても2020年1月1日以降に開始する課税年度から、が原則。例外は仲裁手続き、情報交換、租税徴収支援で、これらに関しては批准書交換時から適用となる。

もう忘れてしまった人も多いと思うけど、議定書の目玉は源泉税の更なる軽減、仲裁手続きの導入、租税徴収にかかわる相互援助の拡大。源泉税に関しては支払利息に対する源泉税が撤廃されたのと、配当に対する源泉税率0%の適格要件のうち、「50%超」の持分保有割合要件が「50%以上」に、また「12カ月」の保有期間要件が「6カ月」に緩和されている。

ちょっとオタクっぽいけど、米国不動産持分(USRPI)の定義が、日米租税条約特有の有利な定義から米国内国法の定義に統一されている。外国人が米国の不動産を譲渡すると、譲渡損益はみなし事業所得となり、申告課税の対象となる。その際、この不動産の定義には米国法人株式が含まれる。米国法人株式は、上場企業の5%未満株主のケースを除き、原則、自動的にUSRPIとみなさるけど、米国法人が「過去5年間」に一度も米国不動産保有法人、すなわちUSRPIが資産時価に占める割合が50%超の法人、でなかったことを証明できる場合には、その株式はUSRPIの定義から除外されることになっている。これは米国内国法の定義だけど、従来の条約では、5年テストを適用せず、「株式譲渡時点」において米国不動産保有法人でなければ当該株式はUSRPIとならないと、日本居住者に有利な規定となっていた。今回の改正では残念ながら、この有利な定義は撤廃となり、米国内国法のUSRPIの定義で全てを整理することとなった。ちょっとループホールみたいな恩典だったから仕方がないかもね。

ということで速報でした。

Tuesday, July 16, 2019

スペイン租税条約「議定書」批准・日米は明日

米国時間16日火曜日、上院は本会議で長年眠っていた米国・スペイン租税条約の議定書を圧倒的多数で可決した。ケンタッキー州のとある酒造屋さんがスペインとの議定書を批准して欲しい、と地元の上院議員Mitch McCornellに懇願したことに始る租税条約批准手続きだけに、まずはスペインから取り上げられたのだろう。

Rand Paulは投票前に、情報交換規定が米国市民のプライバシーを侵害するリスクがあるという演説をしたばかりでなく、情報交換規定の条件をタイトにする修正案を提出したようだけど、修正案はあっけなく却下され、議定書は94対2で可決された。Rand Paul以外にも一人反対票を投じた議員が居ることになるけど誰だろうね。最近の上院は全て51対49とか、党ラインできれいに票が割れ、超党的に可決されることはなかっただけに94対2という投票結果は新鮮。スイス、日本、ルクセンブルクの議定書は、明日(17日)DCで審議が開始される。スイスの次に日本の投票となるそうだから早ければ明日中に批准が完了することになる。Stay Tuned。

ちなみに議定書が法的効果を持つのは日米間で批准文書の交換が行われた日となる。米国側の上院批准後の手続きとしては、批准文書がドラフトされ大統領がこれに署名する。大統領による署名手続きは国務省と大統領府間での調整マターとなるので、どれだけ直ぐ実現するかチョッと不明。トランプ大統領がTwitter投稿に忙しかったりすると、一週間から数週間掛かる可能性もある。で、署名されたら日米で文書交換され、議定書がめでたく発効となる。文書交換時には両政府より何らかの発表があるだろう。

Saturday, July 13, 2019

日米租税条約「議定書」いよいよ来週批准?

さすがMitch McCornnellとしかいいようがない。10年近く停滞していた条約の批准プロセスが、McConnellの鶴の一声でいきなり始動し、「Senate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)」で早々に日本、スイス、ルクセンブルグ、スペイン4か国との議定書が可決され、何と、数カ月前までは到底不可能と考えられていた本会議における議場審議および可決投票が来週早々にも敢行されるらしい。この辺りの最近の進展に関しては「日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??」「日米租税条約「議定書」本当に批准間近(2)?」で特集しているのでぜひ参照して欲しい。

条約ブロッカーのRand Paulは、この期に及んでも「簡素手続きに基づく安易な可決は許さない」と最後の抵抗を試みてるようだけど、ここまで来たら超劣勢というか万事休すに近い。本会議で正式手続きさえ踏めば、時間は掛かるけど3分の2の多数決で批准できる訳だからRand Paulが一人で反対票を投じても焼け石に水。いよいよ時間の問題だ。政治家は票をどれだけ集められるかが最終的には勝負だから、一票ではね。票と言えば、条約とは全然関係ないけど、下院のNancy Pelosiと新人議員の力の差異も結局はここに尽きるね。

それにしてもやはり持つべきは影響力を持つ地元議員。ポリティクスはLocalという誰かの名言があるけど本当にその通り。新人議員とかがTweeterで誹謗中傷合戦を演じてユートピア的な話しに終始している間に、McConnellは地元ケンタッキーのスペイン系(?)の酒造のためにここまで尽力していたとは。日本の議定書も棚ぼた的に日の目を見ることになりそうな展開で、ケンタッキーの酒造屋さんに感謝。日本でFTCの枠が十分ないような会社は、週末に米国から利息支払って10%源泉とかにならないように。来週まで待てばゼロ%かもしれないからねって、思ってたけど、良く見たら議定書自体の効力は批准文書交換時だけど、源泉税はその3か月後の1日からだから、10月まで待たないとダメでした。

Saturday, July 6, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (5)

前回はSub FやGILTI課税の適用時の米国パートナーシップの取り扱いを語る際に避けては通れないSection 318の概要だった。で、今回はこの複雑なSection 318のクロスボーダー課税への適用に関して引き続き・・・と思ってたら、「Happy 4th」の独立記念日が訪れた。Thanksgiving、クリスマス~新年と並び、米国企業、そして自分が属する米国Firmの活動が急にストップまたはスローダウンするので、日本以外からのメールが急減していつもより時間ができる。5月の日本10連休の際は日本企業や日本Firmからのメールが一斉にストップして、その際も朝起きてOvernightで溜まったメールが少なくて健やか(?)な時期を過ごすことができたけど、どちらかと言うと米国FirmがCloseしている方が、Firm内のインターナル系の諸々のメールが減るので、よりテクニカルなことに時間を避くことができる感じ。なんで、ブログのポスティングも比較的サクサクとアップデートできたりしている。

独立記念日と言えば花火。East RiverのBrooklyn Bridgeエリアから摩天楼をバックに70,000発打ち上げられたNYCの花火は圧巻。ちなみに隅田川の花火は20,000発だそうだ。ギネスのドバイの50万発には及ばないけど、ManhattanとQueensというビル密集の間でやるので実際の発数よりも迫力。その昔、物心ついたころに、自由が丘の自宅の洗濯干し場(なぜか屋根の上に舞台みたいに洗濯ものを干すエリアがあった)から多摩川の花火を、当時とても貴重だった「アイスキャンディー」を「きくそうやさん」(としか覚えてないんだけど、近所の駄菓子屋)から届けてもらい、見ていた夏を思い出す。あれも今思えば二子橋の辺でやってた花火大会だろう。多摩川の二子橋が、East RiverのBrooklyn Bridgeに変わっただけで、結局夏は川に掛けられた橋の花火大会を満喫しているところがおかしい。しかも気付いたらレモンシャーベット(テクニカルにはレモンジェラート)を食べながら見てたので、かなりのDéjà vu(?)ぶり。だけど、遠い昔とは言え、本当に過去に体験しているのでDéjà vuという表現は間違いだね。NYCって街はチョッと汚くて、古くて他の街みたいに整然としたところがないけど、実は効率的にできていて、アメリカの他の街では感じられない魅力満載。独立記念日の花火のバックに見える街を見ていると、ますますそんな気にさせてくれる。花火大会前のコンサートもLuke Bryan, Brad Paisley, Derek Hough, Jennifer Hudson, Ciara、Khalidと一流どころが揃ってた。

で、花火も終わったので、またクロスボーダー課税と株式保有の話し。外国法人の株式を誰が何%保有してるかって言うと、一瞬簡単な事実認定に聞こえるかもしれないけど、実際にはこれが複雑。外国法人の株主に米国株主が存在するか、外国法人がCFCになるか、米国株主が合算株主となるか、合算株主に帰属するPro-rataのSub FやTested Income等の合算額はいくらか、というクロスボーダー課税の検討各ステップで、株主保有%の正確な把握は避けては通れない確認事項。

前回、保有持分の考え方は「直接」「間接」「みなし」の3通りがある点に触れ、「みなし」保有はSub CのSection 318を借用して決定する点に触れた。ここでさらに、検討を複雑にしているのが、Section 318をクロスボーダー課税目的で借用する際、元祖Section 318を部分的に変更している点だ。ただでさえ複雑なSection 318に追加の部分的変更を加えることで、規則の難易度はアップするけど、これらの微調整は、米国内の組織再編等と必ずしも事情が同じでないクロスボーダー課税への影響を思慮深く反映している。元祖Section 318に対するクロスボーダー課税検討時の変更は次の通り。

まず、家族間のみなし保有規定を適用する際、「非居住者外国人」が保有している株式を、「米国市民・米国居住者」が保有しているとみなすことはない。例えば、日本に住んでいる日本人でグリーンカードを保有していないお父さん・お母さんが保有する株式は、仮に息子や娘が米国籍・グリーンカードを保有していたり、米国にF、J、M、Qビザ以外(これらのビザ保有者は連邦税法上、非居住者扱いとなるケースがほとんど)で居住していても、この例外規定があるお陰で、お父さん・お母さんが保有する株式、例えば、日本の自分の会社がCFCになったりしない。

次に、事業主体が保有する株式は、持分保有比率に応じて事業主体のオーナーが保有していると取り扱うUpward Attribution適用時に、もしオーナーが事業主体の50%超の議決権を有している場合には、元祖Section 318の持分相応ではなく、事業主体が保有している「全」株式をオーナーが保有していると取り扱う。例えば、事業主体が外国法人の100%株式を保有し、この事業主体の持分を80%保有しているオーナーが居るとすると、Sub Cの「通常」のSection 318ではUpward Attributionを事業主体に対する持分に応じて外国法人の株式保有%を決定することができるため、オーナーは外国法人の80%を保有していることになる。ところがクロスボーダー課税を考える際には、オーナーは事業主体の持分を50%超保有していることから、事業主体が保有する外国法人の株式100%をまるまる保有していると取り扱う。

更に、Upward Attributionを適用する際、法人から株主にみなし持分がフローアップしてくる際、Sub Cの「通常」のSection 318では、前回のポスティングで触れた通り、価値ベースで50%以上の持分を保有する株主に対してのみ、法人が保有する株式を、価値ベースの持分に応じて株主が保有しているものと取り扱うが、クロスボーダー課税の適用時には、50%以上ではなく、同じく価値ベースで10%以上の持分を保有する株主は、法人が保有する株式を価値ベースの持分に応じて保有していると取り扱われる。もちろん、上述の2つめの例外があるので、50%超の議決権を保有する場合には、持分ベースではなく、全株式を保有していると取り扱われる。ちなみにこれらのルールを読んで気付いたと思うけど、持分の判断時に議決権を見るのか価値を見るのか、両方を見るのか、の区別が重要。Sub Cの組織再編とか現物出資の際の「Control」要件と連結納税や適格再編の際の「Control」要件も、どのクラスの株式の何を見るのかの部分に差異があり、トリッキーであると同時にプラニングの温床となってるのにチョッと似てる。う~んDeep。

で、実は税制改正前は「3つ目の例外」があった。それはクロスボーダー課税を考える際には、Downward Attributionを適用して、米国人でない者(外国法人、外国パートナーシップを含む)が保有する株式を、米国人(米国法人、米国パートナーシップを含む)が保有しているとは取り扱わない、というものだった。家族関係に基づくみなし保有の例外に似てるけど、税制改正でナンとこの3つ目の貴重な例外が撤廃されてしまった。この改正のせいで、Section 318のDownward Attributionをクロスボーダー課税を考える際に常に適用しないといけなくなり、日本企業のように米国が頂点でないグループとかファンドは急に多くのCFCを保有しているとみなされる結果となっている。この変更の立法趣旨は、濫用に網を掛ける目的とされているけど、両院の法案をバタバタとすり合わせる過程で、法文の微調整を行うことができず、結果として、法文を読む限り、全ての状況でDownward Attributionが適用されることになる。この点にかかわるTechnical Correctionという法文修正案が「ドラフト」されているが、法案として議会にも提出されていないし、仮に提出されたとしても下院は民主党の手に堕ちていることから可決の可能性はないに近い。となると、法文に準じて、常にDownward Attributionを適用してSub FとかGILTIを考えないといけない、というかなりインパクトの高い改正となってしまっている。

さて、ここからが話しの神髄。Sub FやGILTIは「CFC」の所得を「米国株主」が合算するというシステム。そのためにはまず誰が米国株主で、それに基づき外国法人がCFCとなるかの判断が必要。CFCは「外国法人の課税年度内に1日でも米国株主が議決権または価値の50%超を保有する外国法人」と規定されている。プエルトリコ、グアム、アメリカンサモア、北マリアナ諸島で組成されている法人に関しては特殊な規定があるが、ここでは余り関連がないので省く。

CFCの定義を読めば分かると思うけど、外国法人がCFCかどうかの判断時には、外国法人の株主に米国株主が存在するかどうかを判断しないといけない。以前のポスティングで触れたけど、ここで言う「米国株主」っていう用語は法的に定義されていて、単に株式を保有している米国人という意味ではなく、10%以上の議決権または価値を保有する米国人を意味する。実は税制改正前は、米国株主は「議決権」10%以上の米国人となっており、価値は判断に影響がなかったけど、濫用が見られるということで価値ベースの判断も加えられた(CFCの定義は以前から議決権または価値)。直接CFCや米国株主の定義には関係ないけど、税制改正による変更と言えば、改正前は外国法人が課税年度内に少なくとも30日間CFCの状態にないと、その課税年度は米国株主によるSub F合算の必要がなかったけど、この30日ルールも濫用防止目的で撤廃され、改正後は一日でもCFCだと合算が必要となった。

米国株主の定義は、Sub F関係の規定ばかりでなくInternal Revenue Code全てに適用される定義とされているので、税法上「United States shareholder」という用語が出て来たら、それはこの定義を充たす者ということになる。

ここで言う米国人の定義は広範で、米国市民、米国居住者、米国パートナーシップ、米国法人、米国遺産、米国裁判所が信託管理に関して主たる法権を持ち、米国人が信託の意思決定を行使できる信託、となっている。今回のテーマ的にはパートナーシップは課税関係はパススルーだけど、この目的では人格を伴う「Person」となっていて、米国パートナーシップも米国人と取り扱われている点が重要。

米国株主を特定したら、それらの者が合算で50%超の議決権または価値を保有する外国法人がCFCとなる。米国株主およびCFCの判断時には、「直接」「間接」「みなし」全ての持分を加味して決定する必要がある。

前半、花火の話しとかしてしまって長くなってきたので、合算株主は次回。

Wednesday, July 3, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (4)

前回のポスティングでは、GILTI最終規則で採択された米国パートナーシップに対するAggregateアプローチに至る変遷等に関して触れたけど、今回はAggregateアプローチの内容そのものに関して。前回も言ったけど、このAggregateアプローチも、テクニカル面の理解は決して容易ではない。Sub FやGILTIを考える際のステップは、「米国株主の特定」、「CFCの特定」、「合算株主の特定」、「合算額の計算」という複数で構成されるけど、各ステップに適用される外国法人に対する持分保有の考え方をステップバイステップで「Dutifully」に適用する必要がある。米国税務の考え方って直感的に理解し難い部分が多いけど、ここもそのひとつ。

で、最終規則では、上の4つの思考ステップのうち、最初の2ステップとなる米国株主の特定およびその結果に基づくCFCの特定は、従来通りパートナーシップも米国株主となる場合は、そのまま米国株主と取り扱って考えるとしている。米国株主の特定時には、3つの持分を合算する必要がある。まずは「直接」保有規定。直接、本当に事実関係として保有している株式のことで、分かり易いし議論の余地のない絶対的な持分だ。

次が「間接」保有規定。ここの部分がパートナーシップを含む米国主体と外国主体を別扱いしている諸悪の根源と言える部分。外国法人、外国パートナーシップ、外国遺産が保有する株式は、各々持分に応じて株主、パートナー、受益者が保有しているものと取り扱うとしている。これは後述のみなし持分規定ではなく、Look-throughする間接持分規定。この間接持分規定は米国パートナーシップを含む「米国」の主体には適用がない。したがって「間接」の保有持分で課税関係を判断する際には、米国パートナーシップのパートナーに持分が「間接」的にフローアップしてくることはない。一方、間接保有規定の適用対象となる外国パートナーシップに関しては、外国パートナーシップが保有する株式は、各パートナーが持分に応じて保有していると取り扱われる。パートナーが外国主体の場合には、この間接持分の適用を反復適用して、最終的に米国パートナシップを含む米国主体に行きついたところで間接持分の適用は終わりとなる。

3つめの保有規定は米国税法、特にSub Cを取り扱う際に亡霊のように常に付きまとう「みなし」保有にかかわるもの。Constructive OwnershipとかAttributionとか言われ、Section 304を含む多くのシチュエーションに登場し、AttributionがまたAttributionしたりして、かなり「頭の体操」的な規定だ。みなし保有を規定している条文は複数あるけど、Sub FではSub CのSection 318を適用するよう規定されている。ちなみに同じ「Sub」でもSub FはSubpart F、Sub CはSubchaprter CだからCの方が格が上(?)だからね。Subpart FはSubchapter Nの一部。Section 318をきちんと理解するのは大変。サワリだけ紹介しておくと、Section 318は元々組織再編、出資、清算、分配その他、「法人と株主間」取引に対する取り扱いを規定しているSub Cに属する規定、しかもSection 318を適用するとわざわざ言及している条文にのみ適用があるもの。Sub Cは法人税(Corporate)部分だけど(だからCって訳ではなくこれは偶然)、法人税申告書となる1120とか作成する際には余り直接的に関係ない。そっちは普通の(?)税法、Section 61とかの世界が支配的だ。で、Section 318だけど、今回のクロスボーダー課税の例に見られるように、Sub C以外の条文でもその適用を「借用」するケースも多い。

Section 318によるみなし保有は大別すると3パターン。一つ目は家族が保有する株式は、同じ家族内の他の者が保有していると取り扱う「家族みなし保有規定」。配偶者、子供(養子含む)、孫、親が保有している株式は本人が保有しているとみなされるという規定。家族みなし保有の規定を読んでいつも面白いな、と思うのが、孫が保有してくる株式は本人、すなわち孫から見たおじいちゃんやおばあちゃんが保有している、ってみなされるのに、逆は規定されていない。一方通行で、おじいちゃんやおばあちゃんが保有している株式に関して、孫が保有しているとは取り扱われないことになる。おじいちゃんやおばあちゃんが、名義的に孫に株式を持たせることはあっても、孫がおじいちゃんやおばあちゃんに株式を保有してもらうようなプラニングは方向的には懸念は少ないということなのだろうか。確かに比較的考え難いよね。あと兄弟も入ってないね。お兄さんとかお姉さんに株式持ってもらったりしたら、勝手に換金化されちゃうリスクがあるからかな。

2つめのみなし保有は事業主体が保有する株式はそのオーナーが持分比率に応じて保有していると取り扱う「Upward Attribution」。なぜUpwardかと言うと、事業主体からその上のオーナーに持分が上がってくるから。ちなみに組織図によってはオーナーが下に来ているようなデザインを見たことあるけど、直感的に分かり難いし、多分どちらかと言うとマイナーな表示法だろう。そんな組織図は、まるで昔の英国のバランスシートが負債が左で、資産が右に来てるやつを見てるみたいだ。Upward Attributionはパートナーシップ、遺産、信託、法人の4タイプの主体と各々のパートナー、受益者、株主に対して規定されている。パートナーシップに関しては、パートナーシップが保有する株式は各パートナーがパートナーシップに対する持分に応じて保有しているものと取り扱われる。法人に関しては、若干規定が緩和されていて、価値ベースで50%以上の持分を保有する株主に対してのみ、法人が保有する株式を、価値ベースの持分に応じて株主が保有していると取り扱う。この部分の「みなし」保有規定は、先に触れたクロスボーダー課税時の外国主体に適用される「間接」保有規定とダブる。ポイントとしては、クロスボーダー課税で「間接」保有を語る際には、米国パートナーシップからのUpwardのAttributionはなく、同じストラクチャーでも「みなし」保有を語る際には、Upward Attributionがあるという点だ。すなわち、クロスボーダー課税の検討時に、パートナーが外国法人の株式を保有していると取り扱われるかどうか、っていう判断をする際に「間接」持分の話しをしているのか、「みなし」持分の話しをしているのか、で同一の事実関係でも税務上の法的な結果は異なることとなる。「なにそれ?」って思うかもしれないけど、条文法というのはそういうもの。

3つめのみなし保有規定は、逆に事業主体のオーナーが保有する株式は事業主体が保有していると取り扱う「Downward Attribution」。この規定は意外な結果を招き易く、直感的に分かり難いという意味で、3つのみなし保有規定の中で一番トリッキー。Upward Attribution同様に対象はパートナーシップ、遺産、信託、法人だけど、適用はチョッと異なる。まず、パートナーシップに関しては、パートナーが保有する株式は「全て」パートナーシップが保有していると取り扱われる。例えば、パートナーシップ持分を1%保有しているパートナーが、別の法人株式を1億株保有している場合、パートナーシップは1億の1%の100万株ではなく、ナンと1億株まるまる保有していると取り扱われてしまう。PEとかHedgeファンドのストラクチャー図を見ると、いつも誰がどの法人株式を何%保有していると取り扱われるのかな~、というメンタルExerciseの世界への突入を禁じ得ないのはDownward Attributionのせい。2017年(場合によっては2018年)の課税年度の一大仕事となったTansition Tax適用時には、Transition Taxの対象となるかどうかの判断をする際に、この規定の影響が大きいこと、またさらに実務的に株式保有の実態をパートナーシップ側で捕捉できない可能性もあることから、Transition Taxの規則案では5%未満、最終規則では10%未満のパートナーからは、Transition Tax目的ではDownward Attributionに基づくみなし保有を無視していいことになっていた。ただし、これはTransition Taxのみに適用される緩和措置で、他の規定に影響はない。法人に関しても、価値ベースで50%以上保有する株主が保有する(他法人の)株式は、全株に関して法人が保有しているように取り扱われる。例えば、複数の100%子会社を世界中に保有する日本法人2社が50・50でJVを米国に法人形態で設立したとする。この米国JV法人は、日本法人2社が保有する世界中の100%子会社は全て保有していると取り扱われる。以前はそうなってもCFCとなるかどうかとかのクロスボーダー課税検討の際には、Downward AttributionはTurn Offするという思慮深い例外規定があったが、この例外規定が税制改正で撤廃されて物議を醸しだしているのはみんなもご存知の通り。ちなみに、この検討時に米国法人のサイズは一切問われない。例えば、大手企業が趣味で米国に100ドル出資して50%以上の株式を保有するホットドッグスタンドやラーメン屋さんを設立したら、大手企業保有の全世界子会社は全てCFCとなる。合算持分が存在するかどうかは別の話しだけど。

この3つの基幹規定に加え、オプションの取り扱いが規定されていて、株式取得オプション保有者は対象となる株式を保有しているものと取り扱われる。株式取得オプションそのものを取得するオプション保有者に関しても同様。

で、一旦「みなし」保有規定に基づき、保有していると取り扱われると、「実際に」保有していると同様に取り扱われるのが原則。すると、そこから更に「みなし」保有が展開していくことがある。ただ、この点に関しては例外が2つあって、まず家族関係でみなし保有していると取り扱われる株式に関しては、その理由で更に他の家族メンバーにみなし保有を生じさせることはない。でないと先祖代々「ひいおじいさん・おばあさん」「ひいひいおじいさん・おばあさん」とか「曾孫」とかにも影響があったり、義理の両親とかに保有関係がいっちゃったり、と制御不能になってしまう。もうひとつの例外は、Downward Attributionされてきたみなし保有が事業主体から他のオーナーにUpward Attributionすることはない、というもの。これ以外の状況では、連鎖反応的に「反復適用」があり得る。例えば、子供が株式を保有している法人が保有している株式に関して、みなしで子供が保有していると取り扱われる場合、当株式は子供が実際に保有している同様に取り扱われるので(この時点では家族間のみなし保有規定の適用ではない)、親もその株式を保有していると取り扱われる(ここが家族間のみなし保有でここから他の家族メンバーには行かない)。となると、親がパートナーシップに少額でも出資していようもんなら、パートナーシップまで、この株式を保有していることになる。そして当パートナーシップが他のパートナーシップや法人の50%以上の持分を保有していると、それらの事業主体も・・、と「風が吹けば桶屋が儲かる」的にチェーンで繋がっていき、最初にチェーンをトリガーした子供とは一切関係がない者にも影響が及ぶことがある。

実際にTransition Taxの規則に取り上げられていた例だけど、米国パートナーシップに10%個人パートナーと5%の法人パートナーが存在してると仮定する。10%個人パートナーは外国法人の10%持分を保有している。90%の他の株主は全員非関連の外国人とすると、Transition Tax目的では、少なくとも一社10%の米国「法人」株主が存在しないと、Transition Taxの対象となる特定外国法人にならないとされていることから、個人パートナーだけを見れば当外国法人は特定外国法人には当たらないことになる。ところが、5%法人パートナーが米国内に100%子会社を保有しているとするとチョッと意外な展開となる。パートナーからパートナーシップに対するDownward Attributionで、パートナーシップは個人パートナーが保有する外国法人10%と法人が保有する100%米国子会社の双方をまるまる保有していると取り扱われる。この段階で米国子会社は実際にパートナーシップに100%保有されていると取り扱われるため、パートナーシップが保有する株式は全て今度は米国子会社にDownward Attributionしてくる。となると、パートナーシップが保有していると取り扱われる外国法人10%(もともと個人パートナーが実際に保有していた株式)は米国子会社保有となる。すると、この外国法人には少なくとも1社、10%以上の米国法人株主が存在することとなり、Transition Taxの対象となる。結果として個人パートナーは外国法人の1987年以降の留保所得に対してTransition Taxを支払うことになる。これはチョッと酷い、また多分知らぬが仏で終わってしまうのでは、ということで上述のTransition Tax適用時のパートナーシップへのDownward Attributionに限って、5%や10%の例外規定が適用されるに至っている。

と、Section 318の概要だったけど、これを知らないとクロスボーダー課税の米国パートナーシップの話しは全く通じないので簡単に背景を共有した。背景だけでだんだん長くなってきたので、次回はいよいよSection 318のクロスボーダー課税への適用に関して。

Tuesday, July 2, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (3)

前回のポスティングでは、GILTIにかかわる財務省規則が最終化されたのを機に、見直しが行われている米国クロスボーダー課税を考える際の「米国パートナーシップ」の取り扱いに関して触れ始めた。クロスボーダー課税を考える際の米国パートナーシップの位置づけは、テクニカルには過去長い間、燻っていた問題そのものだけど、以前はSub F所得というCFCが国外で認識する所得の極一部のみにかかわる「些細」な問題だったと言え、テクニカル面で複雑な割に、実務的には重要性に欠けていたことから余り時間を掛けて検討したりするインセンティブに欠けていたと言える。もちろん、賢い米国MNCは米国パートナーシップのSub F上の取り扱いが特殊な点に目を付け、CFCの下に米国パートナーシップ組成してSub F所得の「ブロッカー」にしたり、またIRSがそのようなプラニングに網を掛けようとしてNoticeを公表したり、と一部マニアックな世界ではエキサイティングな世界を展開していた。とは言え、マイナーな分野だった事実は否めないだろう。

そんな呑気な状況は、CFCが国外で認識する所得を米国株主側で毎期合算するGILTI課税の税制改正による導入で一変する。GILTIは、Subpart F所得と異なり、米国株主側の属性なので、誰が米国株主としてTested Income等を取り込み、それをどう加工してGILTI計算を行うのか、という従来のSub F所得合算では存在しなかった検討もこの問題の重要性に拍車を掛けていると言える。CFCの所得を毎期全額取り込むという新しい概念のクロスボーダー課税制度が導入されたため、CFCの課税所得をどのように算定するのか、という根本的な問題が他にも浮き彫りになっている。CFCの課税所得は、基本的には米国税法に基づき、CFCをあたかも「米国法人」かのように取り扱って算定、というのが従来のSub F所得時代からのルールだけど、この点も米国パートナーシップの取り扱い同様、従来はそれ程真剣に考えられていた感じはなく、CFCの課税所得を米国で毎期全額合算する制度に移行した今、ガイダンス不足の実態が白日の下に晒されている感じ。実際には米国法人でないCFCをどのように米国法人かのように考えて、米国税法を適用して課税所得の算定をするのか、というベーシックな検討の重要性が飛躍的に高まっている。この点は別の機会に触れるけど、CFCを米国法人のように取り扱って課税所得を計算するのであれば、米国法人にしか認めないと明確に法律で規定されているFDII控除をCFCで取ってみようとか、クリエイティブだけど、「なるほど・・座布団10枚」みたいな常識では考えられないような議論も登場してくる。財務省は「明らかに本当の米国法人にしか適用がない規定は、CFCには適用することは認められない」と常識的には当たり前だけど、法律の適用としてはとても難しいアプローチで、反論し今後ルールを策定をするとしている。

で、米国パートナーシップだけど、財務省のポリシー的な選択肢は元々2つのはずだった。従来のSub F所得同様に、法文を文字通り適用し、米国パートナーシップを合算米国株主としてパートナーシップレベルでGILTI合算させてしまうアプローチが一つ。または、Sub F所得と異なり、GILTIは米国株主レベルで複数のCFCの属性を通算させて計算するという立法趣旨を尊重し、Sub F所得の取り扱いから乖離して、米国パートナーシップを外国パートナーシップ同様にLook-throughしてGILTI合算を考える、というアプローチがもうひとつだ。後者は合算株主を定義している法文を文字通り解釈するとサポートが難しいが、逆にGILTIの立法趣旨はより良く反映しているアプローチと言える。ただ、後者を選択すると、米国パートナーシップが保有するCFCに対して、間接・みなし持分を加味しても10%以上の持分保有に至らない米国人パートナーが、GILTI合算対象から除外されるというチョッとIRSにとっては悔しい結果にもなる。かと言って前者のアプローチ、すなわち米国パートナーシップを合算株主と取り扱う考え方、は米国パートナーシップの利用したストラクチャーを工夫して、プラニングに利用されるのではないか、という懸念もあっただろう。例えば、不都合な属性を米国株主側で他のCFCの属性と通算しないでもいいよう、その部分だけ内部で組成する米国パートナーシップに保有させてみたりとか、Subpart F所得に対するブロッカー・ストラクチャーの例を見ても、米国パートナーシップが悪の温床となる得るリスクは現実のものだ。

このような不整合・不都合をバランス良く解消するため、2018年9月に公表された規則案では、両オプションの双方を組み合わせるという高尚なハイブリッド・アプローチを採択していた。ハイブリッド・アプローチでは、米国パートナーシップの米国パートナーがみなし持分保有を通じてパートナーシップが保有するCFCの10%以上の持分を保有するケース、すなわちパートナーシップばかりでなくパートナー自らも米国株主となっているケースは、米国パートナーシップを合算株主とせずLook-throughと考え、GILTI計算はパートナーシップ・レベルでは行わず、Tested Income、Tested Loss、QBAI、外国法人税等のCFC属性をパートナーに配賦し、米国パートナーが保有するかもしれない他のCFCの属性と通算してGILTI計算をする。その場合、米国パートナーが米国法人だと、50%のGILTI控除が取れたり、GILTIバスケットの外国税額控除が取れる、という追加メリットもある。

それ以外のパートナー、すなわちみなし持分を加味しても10%未満の持分しか保有しないパートナーは自らだけの状況を見ると米国株主には当たらないので、その者に関しては米国パートナーシップ・レベルでGILTI計算を行い、GILTI合算額そのものをパートナーに配賦する、というものだ。オプション2つを併用し、組み合わせているのでハイブリッド。

規則案で提案されたこのハイブリッド・アプローチはポリシー的には、バランスが取れていて確かに一理あるものだった。でも、その適用は複雑で、1065とかK-1とか作成するのは大変だっただろうし、従来からのパートナーシップ税制との絡み、例えば704(b)のキャピタルアカウントの考え方とかへの影響も複雑だった。規則案公表直後から、ハイブリッド・アプローチに対しては喧々囂々の議論があり、財務省にも反対意見が寄せられたことだろう。規則案公表後の業界や法曹界のパネルディスカッションに登場していた財務省やIRSのChief Counsel Officeの方も、この件に関しては、若干ディフェンシブな印象を受けていたので、規則最終化の際に何らかの形で簡素化されるだろう、と考えていた。

という訳で、ハイブリッド・アプローチは、志こそ高いものだったけど、実務対応面での懸念は大きく、最終規則では予想通り撤回され、全てのパートナーに関して、合算株主を決定する際に米国パートナーシップをLook-throughするという「Aggregateアプローチ」で統一されることになった。Aggregateというのは、パートナーシップ税法を語る際に、Entityアプローチと対比的に使われる用語で、パートナーシップはパートナーの集合体(なのでAggregate)と扱い、各パートナーに帰属するパートナーシップ資産、属性はパートナーそのものに属するかのように考えるアプローチを意味する。1954年の税制改正でSub Kが導入されてから、法人課税との比較においてAggregate概念は一貫してパートナーシップ税制のコアな原則だ。Section 752のパートナーシップレベルの負債を、パートナーの投資簿価に加算するような面倒な計算もOutside簿価とInside簿価を可能な限りタンデムにしようとするAggregateアプローチの現れだ。ただ、今回の税制改正では、Sectiton 163(j)の支払利息損金算入制限をパートナーシップレベルで適用したり、特定の状況にはEntityアプローチを適用したりしている。Aggregateアプローチを全体のアーキテクチャーとして構築されているSub KにEntityアプローチを散りばめたりすると、適用時の複雑性が大きく増す。400ページを超えるSection 163(j)の財務省規則案も、CFCと並びパートナーシップへの適用をどのように考えるかで苦労している。

GILTI最終規則で採択されたAggregateアプローチも、テクニカル面の理解は決して容易ではない。というのも、前回のポスティングでも触れた通り、Sub FやGILTIを考えるステップは、米国株主の特定、CFCの特定、合算株主の特定、合算額の計算、という複数のものだけど、各ステップに適用される外国法人に対する持分の考え方が異なっていて、この分野のことを四六時中考えているオタッキーな輩でもない限り、なかなか直感的に理解できるものではないからだ。

ここからは面倒な「みなし保有」規定の話しにならざるを得ないので、次回。

Monday, July 1, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (2)

前回のポスティングでは遂に最終化されたGILTI財務省規則の、HTE規定をメインに触れたけど、これだけ濃厚な規則や規則案が連発されると、全てを消化するのには一日48時間、週に8日(Eight Days a Week – 何か分かるね?)通して規定を読むばかりでなく、内容を良く考え、理解し続ける必要がある。規則や法律の一語一句が全てDeep。余りにDeepなので、規則の理解はEast Riverから朝日が昇ってくる前の早朝4時とかにDeep House聴きながらSpikeしたコーヒーを手に立ち向かうのがベスト。僕がその昔馴染んだ元祖シカゴのHouseはBPMがだいたい125強くらいのスピードでノンストップ系だった。その後House Musicも進化し、ProgressiveとかDeepとかいろいろなサブジャンルに細分化されているけど、BPM120くらいで若干スローなDeepは規則読む際のBGM(ここはBPMじゃないからね)にピッタリ。モーツァルト効果改めDeep House効果で記憶も鮮明(本当?)。TechnicsのDirect Driveターンテーブルを30年以上(40年?)愛用しているので体にBPM感が染みついちゃってる感じ。もし、そんな昔からSubchapter Nの規則とか読み続けてたら、クロスボーダー課税ももっと体に染みついてただろうに残念。でもNever too late。

もう昔と違ってBrooklynのTBAとか行く歳でもないし、HouseとかAcid Jazz系の曲は自宅で静かに聴くのがベスト。この手のジャンルは個人的にはNYC用。西海岸に居る時は、どちらかと言うともう少しJazzyな94.7Waveでエアされているようなタイプとか、下手するとTop 40系の気分。

ちなみにTech-Houseは・・、とかどうでもいい話しに脱線し過ぎる前に約束通り、米国パートナーシップとGILTI、更に米国クロスボーダー課税一般の話しに軌道修正します。

まずは「おさらい」だけど、米国「税務上」パートナーシップと取り扱われる主体に関して。この点は日本企業には未だによく理解されていないように感じることが多い。米国税務上のパートナーシップは広範だ。LLC、LP、LLP、LLLP、とか法的(税法ではなく会社法的)に組成されている主体はもとより、事業または投資目的と認定される信託、さらに事実関係に基づき複数の者がネット利益を協働して追い求めていると認定されるJVやコラボ契約、これらは税務上一派一絡げに「事業主体(Business Entity)」という位置づけとなる。事業主体と認定される主体は、次にパススルー課税または法人課税のいずれか一方の課税関係に区分されるけど、財務省規則に名指しで列挙されている「米国税務上Corporationとしてのみ取り扱いが認められる特定の主体(例、米国の州法で設立されるCorporation、日本だと株式会社)」を除き、区分は納税者側で任意に選択することが認められる。これが前代未聞、クロスボーダー課税のプラニングを一から書き直した1997年のCheck-the-Box規定と言う名のギネス級Inventionだ。それ以前の区分はRulingベースで、まあ実質任意に選択が可能な状態に近かったので、CTBはそれを制度化して面倒な手続きを廃止した「いよっ 財務省!」とでも言うべき画期的なもの。まさかここまでCTBがクロスボーダー課税のプラニングに利用され尽くされるっていうのは1997年当時では想定されていなかったのだろう。

上述した「Corporationにしか区分できな特定の主体」として列挙されていない限り、CTBの選択は米国内外の主体を問わずに適用される。何の選択も行わない場合には、デフォルトの取り扱いが規定されており、米国内の主体であれば通常パススルー、外国の主体はオーナーの有限・無限責任の法的位置づけに基づきデフォルトが変わる。

で、パススルーとなり複数のオーナーが存在する場合には米国税務上、全てパートナーシップとなる。その際、元々会社法上の主体のタイプがLLCでも、LPでも、契約に基づく事実関係に基づくアレンジでも、税務上は全く関係ない。もちろん、パートナーシップと取り扱う上でオーナーの権利関係は実際の法的アレンジに基づくので、所得や負債の配賦計算とかは主体のタイプ、個々の契約により異なるけど、ポイントは一旦事業主体と認定され、パススルー課税扱いになり、複数のオーナーが存在する場合には、全て無差別にパートナーシップ税法、Sub Kの管轄となるという点。

で、税務上のパートナーシップは米国会社法その他の米国法制度に基づき組成されている場合には米国パートナーシップになり、他は外国パートナーシップと区分される。LLCとかLPとか州の会社法に基づいて登記されているような主体はどこのパートナーシップか分かり易いけど、国外の法人が米国外でJV契約とかして、米国も含む複数の国で事業展開するようなアレンジが米国税務上のパートナーシップとなるケースは、米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのか、という区分は必ずしも容易ではない。まあ、グッドニュースがあるとすれば、米国パートナーシップでも、外国パートナーシップでも、レポーティング法とか除くと、最終的な課税関係は原則余り変わらないという点だろうか。すなわち、パートナーシップは課税主体ではないので、そこで認識される所得はオーナーに配賦(パススルー)され、オーナーが自分のタックスポジションと通算して米国の税金を支払う。パートナー自身が米国人(米国法人含む)であれば、米国パートナーシップでも外国パートナーシップでも、またどこから所得を得ていても、配賦される所得は基本全額課税対象。一方、パートナー自身が外国人(外国法人含む)であれば、パートナーシップが認識する所得のパートナーへの配賦額のうちECI部分に関してのみ米国での課税関係が発生する。この取り扱いもパートナーシップそのものが米国パートナーシップなのか外国パートナーシップは関係なく同じ。外国人パートナーが条約居住者で、適用しようとする条約に規定されているLOBを充足し、さらにHybrid規定に基づき条約の特典が与えられるケースでは、ECIではなくパートナーシップから配賦される所得の米国PE帰属部分に関して米国の課税関係が発生する。ECIがあるかないか、PEに帰属する所得があるかないか、はパートナーシップ側の米国事業、施設等を全てパートナーに帰して、米国税務風に言うとAttributeして、検討することになる。

なかなかDeepになってきてるけど、これらの処理だけでも一冊本になるほどDeeper。相変わらず米国タックスにはDeep Houseが良く似合う(?)。

で、このように米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのかっていうのは通常、余り大きなインパクトを持たないことが多いんだけど、米国のアウトバウンド系のクロスボーダー課税に関しては、この違いが大きくものを言うことになる。クロスボーダー課税適用時の、米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのかにより取り扱いの差異はチョッと恣意的だ。ここからはさらにDeeper and deeper。

従来のCFC課税で、Subpart F所得の合算が求められる者は「CFCの米国株主」と規定されている。双方とも税法上、定義されている用語で、米国株主とはまず「Person」で、そのPersonが米国Personであり、外国法人の議決権、価値のいずれかに関して最低10%の持分を保有している者をいう。CFCはこの定義に当てはまる米国株主が合わせて50%超の議決権または価値(この価値の部分は2017年の税制改正で追加された規定)を保有する外国法人のことを言う。なので、EYのNYC事務所のみんなには口酸っぱく言っているけど、まずCFCを決めてその後米国株主を決めるような本末転倒な分析をしないように。米国株主が決まらないと外国法人がCFCかどうかも決まらない。その後、実際にCFCからSubpart FやGILTIを誰が合算するのかは、必ずしも米国株主の定義そのものと同じではなく、米国株主のうち「合算持分」を持つInclusion株主を特定する必要がある。米国税法で言うところのSection 958(a)株主というカテゴリーだ。で誰が合算するか判明したら、次にいくら合算する必要があるかをPro-rata持分という難しいコンセプトを適用する。ここまで来て、ようやく合算に漕ぎつけることができる。

で、問題は従来のCFC課税制度のルール、すなわちGILTIにも流用される予定のルールでは、米国パートナーシップがCFCを保有している場合、パートナーシップは税法上「Person」と定義されることから、パートナーシップが米国パートナーシップの場合、米国Personになり、パートナーシップそのものが10%以上の持分を保有している場合には、「米国株主」と位置付けられ、外国法人がCFCの場合には、パートナーシップそのものがSubpart F所得を認識し、パートナーに合算課税対象額を配賦する仕組みとなっている点だ。一方で外国パートナーシップは基本Look-throughされるので、この点に関してパートナーシップが米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのか、という点に基づく取り扱いが大きく異なる。GITLI合算も、原則Subpart F所得の合算に係わる法的枠組みを踏襲して行うと規定されているので、そのままにしておくと、米国パートナーシップそのものがGILTI合算計算を行うことになってしまう。一方でGILTIはSubpart F所得のようにCFC側の属性がそのままPull-Upされるのではなく、Tested IncomeやTested Loss、QBAI等のCFC側で認識される属性を米国株主側で加工する米国側の属性となので、米国株主が保有する全CFCからの金額を通算してGILTI合算額を確定するという新たな法的フレームワークに基づく新コンセプト。さらにGILTI控除(税率を21%から10.5%とするための合算額の50%の想定控除)やGILTI間接税額控除は法的に米国法人のみに認められるため、パートナーシップが米国株主としてGILTI合算算定を行うと、GILTI控除も外国税額控除も認められず、GILTI合算額がそのまま米国法人パートナーに配賦されるという不都合が起こる。

この点を大胆かつ高尚な提案で解決しようとしたのが2018年9月に公表されていた財務省規則案のハイブリッドアプローチだった。さて、このような高尚なポリシーコールに最終規則ではどのような運命が待ち受けていたか?長くなってきたのでここからは次回。

Wednesday, June 26, 2019

GILTI最終規則遂に公表

前回と前々回のポスティングではFDIIの話しを中断して、ここ10年、米国上院が最終化できなかった条約批准手続きに動きがある、というスクープに触れた。批准の動きは活発なようで、今度こそ長いトンネルの先にようやく光、となるといいけどね。FIRPTA適用時の米国不動産法人の定義が現行の条約では世界一有利なので、再編等で条約を利用するんだったら急がないとね。

税制改正に戻るけど、2017年12月22日に税制改正が可決され、この6月22日で18カ月が経った。2019年6月22日までに最終化される財務省規則は、法律可決日に過去訴求して法的な効力を持たせることができるので、当初から重要な規則はこの日をターゲットに最終化を目指してきた。でも、さすがに規定が複雑過ぎ、かつポリシー的なコールに関しては賛否両論、喧喧囂囂となっている規定も少なくなく、22日までに最終化されるのはTransition Tax以外ではGILTI規則だけだろう、と言われていたけど、本当にGILTIは最終化された。しかもSubpart Fや245Aの取り扱いを規定する新規則案やAnti-Abuse系の暫定規則追加3つのパッケージと共に計4部作。総計505ページの超大作だ。財務省やIRSのChief Counsel Officeは本当に優秀。普段、税務調査で遭遇するIRSのAgentと同じAgencyに属するとは思えない(?)。

6月14日午後4時、金曜日ということもありNYCでは早々に仕事を切り上げマンハッタンからハンプトンに脱出するTrafficで、Midtownトンネルに向かうMidtown East辺りからLong IslandのQueens Midtown Expresswayは既に大渋滞に陥っている頃、またロサンゼルスでは未だ午後1時だというのに、いつも通り何の意味もなく時間にも上下線にも関係なく405が大渋滞になっている頃、何の前触れもなくGILTI最終規則が公表された。DCでは金曜日の午後も後半を迎え、しかもFather’s Dayの直前ということで、「出るとしても月曜日だろう・・」とすっかり油断していた矢先の出来事だった。

このパッケージは凄い。2017年の税制改正はGILTIに始まりGILTIに終わると言っても過言ではないけど、GILTIそのものに留まらず、派生的に影響を受ける100%配当控除や従来からのSub Fへの影響など、を一気にパッケージで複数提示しているところに感動。テリトリアル課税の100%配当控除を規定している245Aの使用にかかわるAnti-Abuseは説明が難しいけど、日本企業にもSituation次第では影響がありそう。FDIIのポスティングを続けないといけないとは知りつつ、今回のポスティングでは「旬」の話題としてGILTIの最終規則に簡単に触れざるを得ない状況。

GILTI最終規則の多くの規則の中でいくつかヘッドライン的なものを挙げるとすると、High-Tax Exception、米国パートナーシップの取り扱い、Tested Lossを他のCFCに使用されたCFCの株式簿価の調整メカニズムの撤回、の3つだろうか。実際に申告書を作成する者には、何十年も遡ってADSに基づく償却を計算しなくてもいいかも、っていう明るいニュース部分が一番ハッピーだったかもね。

まずは、「High-Tax Exception(HTE)」。GILTIにかかわるHTEは最終規則には敢えて規定されていないので、最終規則のポスティングとしては変わったキックオフになるけど、同時公表された新らたな規則「案」で提案されている。HTEはGILTIの法文そのものには規定されていないにも関わらず、既存のSub Fに規定される限定的なHTEを利用した財務省の(かなり)Creativeな理論で規則策定の権限を正当化した上での英断。これは超ビッグディール。三権分立的には行政府の規則策定権限の範囲内かどうか疑義が残るが、納税者に有利な規定なので訴訟に持ち込まれることも考え難いし、おそらくいHill(議会立法府)のメンバーとはすり合わせをした上での策定だろうから、実務的にこの点が問題となるリスクは低い。

以前から触れている通り、GILTI合算のベースとなるTested Incomeは、CFCでどれだけ高税率に晒されていても、原則関係なく合算対象となる。これはGILTIの「Low-Taxed Income」という名称から受ける印象と大きく異なる取り扱いだ。GILTI法に明確に規定されているCFC側の高税率にかかわる唯一の例外は、既存のCFC課税に基づきSub Fになるけど、Sub Fに規定されているHTEで所得がSub Fからキックアウトする選択を納税者が行っている場合、Sub Fから除外されるとは言え、それをもってGILTI目的のTested Incomeにはならない、と言う規定。回りくどいけど、すなわちSub FでないCFCの所得は原則Tested Incomeになるけど、HTEでSub Fではないと選択する所得はTested Incomeからも除外してあげましょう、という規定だ。

GILTIが立法される過程の両院Conference Repotの一部に「CFCが米国外で少なくとも13.125%の法人税を支払っていればFTCを通じてGILTI合算に基づく追加税負担は米国で発生しない」と言い切っている部分がある。FTCがきちんとGILTI合算額マイナスGILTI控除の10.5全額教科書通り取れればそうなんだけど、FTCを勉強した人は初日に習うベーシックとして、FTCの枠は米国株主側で計上される費用を外国源泉所得に配賦して制限枠を減額しないといけないので、現実には、米国株主側の支払利息を代表とする「米国の」費用が控除制限枠を圧縮する。簡単に言うと、外国源泉所得に配賦されてしまう費用は21%で課税される、または費用控除が実質否認されているのと同様の効果をもたらす。なんで米国MNCにとって、費用配賦法を規定しているSection 861は最重要規定のひとつと位置付けられるし、FTC規則パッケージ、Transition TaxやGILTI規則でも大きな話題となる。税制改正ではGILTIと100%配当控除対象となる二つの大きな新カテゴリーが外国源泉所得に加えられたので、FTCおよび費用配賦の計算時にこれらの新カテゴリーをどう処理するかは複雑かつ重要な検討となる。100%配当控除に関しては法律でどのように費用処理を考えると簡単に触れられているが、GILTIに関しては特に新規定は設けられていない。ここは財務省がFTC規則案を公表した際に、結構Creativeに既存のExempt Assetに準じる規定をGILTIバスケットに適用し、GILTIは通常の税率の半分の税率で課税されることから、支払利息のように資産ベースで費用配賦計算を行う場合には、GILTI資産として取り扱われるCFC株式簿価の半分を「非課税資産」として取り扱うとしている。この英断のおかげで、GILTIバスケットへの費用配賦額は低くなるけど、それでも費用配賦が存在する限り、CFCの米国外での税負担がどんなに高くても一切関係なく米国で追加の法人税が発生することになる。

上で触れた、従来から存在するSub FのHTEでは、米国法人税率の90%超の法人税率の対象となっている所得は合算課税の対象外とする、っていうもの。以前は法人税率が35%だったので、その90%は31.5%で、そんな高税率の国はもはや世の中に存在しないに近かったので、あんまり役にたつ除外規定とは言えなかった。税制改正で法人税率が21%に下がり、それに準じて90%も18.9%というそれらしい税率に引き下がったのでHTEがにわかに息を吹き返したような状況になっている。

とは言え、先々週の金曜日までは、これはあくまでSub Fの世界の話しでGILTI目的では、原則CFCが認識するTested Incomeが何%の税率に晒されていても関係ない話しだった。数週間前からDCでは、今回の最終規則でTested Incomeが米国外で18.9%等の一定以上の高税率で課税されている場合、GILTI合算計算から除外するような広範なHTEの導入が噂されていたけど、結局は最終規則そのものには盛り込まれなかった。その意味では米国MNC側の落胆は大きいかも。ただ、HTEを常に選択するのがベストとは限らないので、かりにHTEが規定された後も納税者各々が置かれている個々の状況を基に詳細なモデリングを行って選択のメリット・デメリットを見極める必要がある。

で、なんで最終規則に盛りこまれなかったのに、最終規則のポスティングの冒頭にこの話しをしているかと言うと、上述の通り、最終規則と同時に「新たな」規則案が公表され、そこで従来のSub Fに対するHTEと同様のHTEが提案されているからだ。同様とは言え、Sub FとTested Incomeはその性格が大きく異なるので、実際の適用は結構異なる。また、新規則草案が最終規則となるまでは、規則案で提案されてるHTEは使用してはいけない旨が最終規則、規則案の双方に明記されているので、あくまでも案として提案されている状況。過去訴求はないと明記されているので、規則案が正式に公告された後に開始する課税年度からの適用となり、暦年ベースの場合は早くてCFC課税年度の2020年からの適用となる。これだけ明確に未だ使っちゃダメと書いてあるのに、米国MNCや弁護士事務所は2018年の申告書に適用する法的確証度合いはあるか、とか分析しているところが面白い。もちろんMLTNどころかFiling Positionすら怪しいだろう。

次回はGILTIと米国パートナーシップに関して。

日米租税条約「議定書」本当に批准間近?(2)

前回、「日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??」でDC・NYC界隈でのスクープに触れたけど、具体的に進展があり、つい一カ月前までは遠い夢だと思われていた日米租税条約の議定書の批准も、米国上院の急な動きでにわかに現実味を帯びてきた。

昨日、DCで開催された「Senate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)」で日本、スイス、ルクセンブルグ、スペイン4か国との議定書が発声投票という形で可決された。Rand Paulはスペインの議定書に関して、修正を求めたようだけど却下されたと言われている。

これで残るは上院本会議での可決。前回のポスティングで触れた通り、Rand Paul先生がいる限り全会一致の決議書という手法が不可能なので、実際に議場で審議して発声投票に持ち込む予定らしい。上院は夏は閉会で議員たちもDCにいないから、実際の審議がいつのことになるか分からないけど2019年中には批准が完了する可能性が高い。

ちなみに昨日の上院外交委員会では4カ国の議定書、すなわち既存の条約に対するマイナーな修正、のみを取り扱っている。ハンガリー、チリ、ポーランドとの条約の批准プロセスは開始されていないことになるけど、これはマイナー修正の議定書と異なり、本当の条約改正となる部分は前回のポスティングでも触れている「後法優先」と「2017年の米国税制改正」の絡み、特にBEAT規定に関して、後法の条約が影響しないよう、何らかの修正文言を加えることを検討している理由ではないか、と言われている。さっさの批准しないからそういう面倒なことになるね。米国側の自業自得だけど、アクションを引き延ばしてもロクなことはないという、人生や一般生活にも当てはまるいいレッスン(?)。

Sunday, May 26, 2019

日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??

チョッとスクープみたいな話しがDCやNYCの法曹界で噂になっているのでFDIIの話しの真っ最中だけど、租税条約の批准に関して特番。

米国が他国と締結する条約は、憲法のArticle 2 Section 2の更にSubsection 2(2-2-2で覚えやすいね)に規定されている通り、行政府に締結の権限があり、したがって租税条約は具体的には財務省が当事者他国と交渉・締結する。条約の米国法体系における位置付けは、連邦憲法および連邦法と並ぶ最高の法規と憲法に規定されているので、かなりのステータス。Internal Revenue Codeとかの内国法と同列の立場にあり、条約が内国法を必ずしもオーバライドしないことから、後法優先という日本ではチョッと分かり難い優先順位に基づく判断が必要となる。

更に憲法の2.2.2(もう覚えた?)に規定される通り、条約が正式に効力を持つためには上院の3分の2多数で批准される必要がある。内国法が下院からスタートして法制化されるのに対し、条約に関して下院に物言う権利がないので、下院からしてみると少し悔しい存在。

ちなみに日本語では上院っていうけど、英語ではSenateで、これはもちろん古代ローマのSenetusから来ているけど、なぜか同じSenateでもローマバージョンは「元老院」。米国が名称を借用したくなるような統治制度を2000年前に確立させていた古代ローマは凄い。都市国家から領土を拡大し、帝政となり、その後崩壊していく過程は現在の国家のライフサイクルにも通じるものがありとても勉強になるし興味深い。テクノロジーがどれだけ進歩しても、所詮、人間のサガは今も昔も大差ないということなんだろうか。

米国憲法は、「We the People of the United States…」が「more perfect Union」を形成するために、賢人が過去の歴史・過ちから学び、知力を結集して策定した法律だ。洞察力に富む至上の法律と言えるけど、立派な憲法があっても「法の支配」がなければ、宝の持ち腐れ。独裁国家でも、聞こえのいい憲法を存在させること自体は可能で、それを法的に執行するメカニズムがなければ全く意味がない。法の支配の中でも特に重要なのが「三権分立(Separation of Power)」。立法府(議会)と行政府(Executive Branch)のSeparationはロシア疑惑関連でWilliam Barrとか良く争点となり、最近特に考えさせられることが多いけど、実は司法府、すなわち裁判所の動向も目が離せない。近年、大統領令が出ると訴訟になることが多いけど、本来、裁判所は立法府でも行政府でもない訳だから、大統領が大統領令を出す権限を逸脱していないかどうか、すなわち憲法上、大統領府に対して認められている権限内の行為であるか、という法的な検討にフォーカスするべきで、大統領令の内容そのものが賢いかどうか、という判断を加味する立場にはないはず。なぜかと言えば、賢いかどうかはそれを判断する者の考え方により異なるからで、本来、司法府はそのような視点を盛り込む立場にはないはず。

オバマ政権もトランプ政権も大統領令を乱発気味だけど、最近の司法府は、内容そのものが気に入らないとか、オバマ政策やトランプ政策が嫌い、というイデオロギー的な理由で大統領令を無効とするような判例が多く、しかも地方裁判所が全米有効のInjunctionを言い渡したり、Standingを未だ確立していない、よって訴訟を起こす立場にない、と思われる州が訴えを起こして、それが認められたり、所詮三権分立もそれを担当する判事たちの憲法順守にかかわる見解に左右されることが多く、せっかくの制度も最後はそれを司る人次第、という意味で限界を感じることが多い。この手の話しをし出すと本が一冊書けるので、いずれそのうちに。

で、租税条約だけど、ご存知の通り、上院議員の一人であるRand Paulが情報交換規定が違憲であるというような理想論で、反対し続けていることから、2009年以降10年間にも亘り、米国では租税条約はひとつも批准されていない。塩漬けになっている条約のひとつはもちろん2010年に二国間で合意済みの日米租税条約の議定書だ。なぜ、たった一人の上院議員が3分の2で可決できる条約批准をブロックし続けることができるのかは2016年に「日米租税条約改正は一体いつ発効?」という3回特集を組んでいるので、詳細はぜひそちらを参照して欲しい。要は他に切羽詰まった議題が多く存在する中、また上院議員はいつもDCに居る訳ではない中、各条約を議場で議論して3分の2の多数決で可決させる時間は到底なく、この手の承認は通常、「全員一致」の決議書で行うという点に問題がある。

で、ここに来て急展開があり得る状況になったのは、面白いことにRand Paulと同じケンタッキー上院議員で、上院多数党院内総務、というと堅苦しいけど要は「Majority Leader」のMitch McConnellが条約の批准が10年間滞っている点を問題視し始めたからだ。McConnellはどちらかと言うと無表情かつ冷徹にことを進めるタイプで、Cliff Simsの書物の表現を借りるならば「Viper」ということになるけど、地元ケンタッキー州民の利益のためには努力を惜しまないDCの実力者だ。ケンタッキー農民のためにFarm Billを通したり頑張ってる中、ケンタッキー州のとある酒造会社が「米国とスペインの租税条約の議定書が塩漬けになっていて不利益を被っているが、何とかならないものか」というような話しをMcConnellに持ち込んだらしい。McConnellがその話しを聞くまで条約批准がここまで滞っている状況を理解していたのかどうかは不明だけど、独力で条約批准を10年間も阻止し続けてきた張本人が同じケンタッキー州のもう一方の上院議員(上院議員は下院と異なり州の人口にかかわりなく、各州2名)だったという実態に唖然とした点は想像に難くない。

で、早速Paulに働きかけ、他の上院議員にもここ数週間、根回しを行ってるらしい。ただ、手順としてはSenate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)というところがヒアリングを行い、そこで可決してから本当の上院の審理に回したり、と結構気の長い話。外交委員会はPaulの欠席時に一度可決を成功させてるけど、同じ年内に本院で可決されないと再度委員会に差し戻されるというルールがあり、もう一度、そこから始めないといけない。

条約の批准は当然、既に合意された条約に対して行うものだけど、批准の際に、条項を修正したり条件を付けることが認められる。Paulに賛成させるには、情報交換規定に関して何らかの条件を付けるというような奥の手もあり得るけど、条約だから米国が一方的に新たな条件を盛り込む訳にはいなかい。となると当然、条約締結相手国と再交渉の必要が生じる。しかも2009年当時から合意されてきた条約には、2017年の税制改正なんて全く想定されてない訳だから、そんな条約が後法優先で批准されてしまうことの影響も加味しないといけないだろう。時間が経てば経つほど面倒だね。CPA試験とかさっさと受からないと勉強しないといけない会計原則が増えるばかり、っていう悪循環みたい。う~ん、なんか時間掛かりそう。支払利息の源泉を0%にしたい方は利息の支払いをチョッと待ってみる?または逆に米国法人が米国不動産持分に当たるかどうかの判断が、今の条約が有利だったらさっさと再編とか売却とかしてみる?ここ10年で批准のモーメンタムは最高潮にあると言えるだろうから、価値はあるかもね。

Saturday, May 25, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (4)

早いもので前回FDII絡みのポスティングをしてから一カ月以上の月日が流れてしまった。連日連夜USタックスと格闘し続けても、余りにディープな規定の連発で、全てを良く理解するには全く時間が足りない。もともとこんな複雑な法律を一人で全て理解するのは到底不可能だけど、その際に決めてになるのが、米国のLaw FirmやBig-4、また米国財務省やIRSのChief Counsel Officeの弁護士チームとの情報交換の機会。経験豊かな賢人のコメントは各規定の理解に欠かせない。25年以上税法や判例読み続けても、読む度にその難解さを認識することが多い訳だから、納税者の皆さんが良く理解できないことが多いとしても、それは当り前。自社取引、ストラクチャーにおけるどういうところがSweet Spotsとなり得て、そして法律はとてつもなく複雑なので誰か優秀なアドバイザーが必要で、そして優秀なアドバイザーは高い(?)っていう点を認識していれば十分。 僕がパートナーを務めるEY US Firmは元々米国における国際税務分野では業界No.1だと思うし、他のUS Firmに属してた頃はEYの米国国際税務部門は羨望の的だった。で、自社国際税務チーム内にはDCやNYCに層の厚い多くの有識者が居て、彼らと持つ何気ない会話の中で各規定の理解が一層深まることが多い。財務省やIRSのChief Counsel Officeにも多くのOB/OGが居たり、またその方たちがFirmにブーメランのように戻って来たりするので、裏話し的な情報ももらえて楽しい。

裏話と言えば、「GILTI」とか「BEAT」とかのアクロニム(頭字語)が余りにCatchy(規定内容ではなく名前だけだけどね・・)で出来過ぎているな、っていうのはみんなも感じてると思う。議会のセンスの良さと言うか、洒落が通じる感じが上院議員の重鎮たちのイメージとチョッと違ってて面白い。元々法律をドラフトしている段階で、これらの法文タイトルは略してGILTIやBEATとなるように敢えて命名されてたらしいけど、実はドラフトしている当人たちも未だ本当に税制改正が可決するとは思ってなかったようで、「どうせ廃案だったらよりCatchyな名称で(?)」っていう勢いでドラフトを進めていたところ、本当に数週間と言う前代未聞のスピード可決が実現してしまい、そのままの名称で立派な法律になってしまったという落ちがあるらしい。もちろん規定そのものは、相当前から存在した複数の提案やコンセプトに基づき、可決されることを想定して真剣に考え尽くされてるものだけど、名前はそのままでゴールインしてしまったので、2018年以降の米国税制を語る際の語彙がよりカラフルになった。

ちなみに法文の条文や法律の策定の際には各々の規定に「タイトル」が付いてるけど、条文解釈時にはタイトルは法律の一部ではないことから、その直後に始まる条文そのもののみが法的な効果を持ち、タイトルの内容は加味してはいけない。俗にBase Erostion Anti-Abuse Taxとか呼ばれるので、「僕はAbuseしてないから、BEATの対象になるのはおかしいのでは・・」とか、心情的には分かるんだけど、法的にはBEATミニマムタックス適用有無判断時に納税者側のAbuse意図の有無は一切条件となっていないことから、条文の要件に抵触する場合にはメカニカルにBEATが適用されてしまう。法律が可決して間もない頃、上院財政委員会の弁護士と直接意見交換するという夢のような機会があって、その際にBEATはAMTに代わるミニマムタックスの位置づけなのよ、という趣旨のことを言われ、その当時はこの点に関してなかなかピンとこなかったけど、考えれば考えるほど、そうなんだな~っていう今日この頃でした。

で、FDII。前回のポスティングでは、FDII適格と取り扱われる、すなわち13.125%っていうスーパーアトラクティブな税率の対象となる所得は、敢えてザックリと言ってしまえば、米国法人の課税所得の超過利益のうち外国の顧客(関連者含む)から得ている部分という説明までした。今回は、肝心の、どんな所得が外国の顧客からのものと取り扱われるか、っていうFDIIの神髄とでも言える検討に入りたい。

税制改正後の米国法人税フレームワークだけど、米国法人が認識する所得はPureに国内で終焉している取引と、国外取引に対するものに大別される。国内終焉所得は全て21%で課税され、国外所得は更にルーティン利益と超過利益に区分される。リーティン利益はValuationや経済分析を基に算定するのではなく、有形償却資産の税務簿価の10%と機械的に算定され、所得を認識する法人が所在する国の法人税率に基づいて法人税を支払えばそれで終わり。米国内で認識されるルーティン所得は国外取引にかかわるものでも21%で課税だし、米国外のCFCが認識するもの0%だったり20%だったり30%だったりするかもしれないけど、各々の国で適用法人税を支払えばそれまでとなる。

国外取引から生じる所得のうち、ルーティン利益を上回る部分があれば、それは自動的に超過利益となる。理論的な背景としては、超過利益が存在するということは、結局みなしで何らかのノウハウ、マーケット無形資産(デジタル課税を巡りホットだけど)とか、何らかの無形資産があるはずということだろう。このことから、GILTIの2番目の「I」やFDIIの最初の「I」がIntangibleの頭文字となる。国内終焉取引や国外ルーティン利益が21%課税されるのに対し、国外超過利益には最低13.125%の法人税を世界のどこかで支払ってもらおう、というのがツイン規定であるGILTIとFDIIの考え方。GILTIは米国法人が、米国外に所在するCFC経由で認識する所得に対して、GILTI合算、GILTI控除、FTCという3段階構造メカニズムを通じて「理論的」には、国外で13.125%以上の法人税を支払っていれば、米国での追加法人税はなし、国外の法人税が13.125%に満たない場合には、13.125%を上限として米国で差異(必ずしも13.125%との差異満額ではないが、13.125%が総額の最大値)をミニマム課税として支払って下さい、という規定となる。FTCの枠や控除制限の関係で実際には13.125%で終焉しないケースも多いのは以前のポスティングの通りだけど、フレームワークというか設計コンセプトとしては、13.125%が世界ミニマムタックスだ。

同じ概念を米国法人が認識する国外取引に適用しようとしているのがFDII。FDIIは米国法人自らが認識する米国外派生所得のうち超過利益に13.125%で課税するという仕組み。FDII対象となる取引は通常米国外では課税されないから、GILTIと異なり、合算だの控除だのFTCだのという面倒なステップはなく、単純にFDII適格となれば想定控除を通じて実効税率が13.125%となるようにできている。

ちなみに、米国外派生所得は、英語では「Foreign Derived Income」だけど、これはFTCを算定する際に従来から存在していた「Foreign Source Income」とは全く別のもの。FDII目的では所得の源泉地が米国か米国外か判断する必要は一切なく、派生先、すなわち、顧客が米国外なのかどうかが決め手となる。ロイヤルティを除く大概の国外派生所得は米国源泉所得だろう。

FDII適格所得は、資産の販売とサービス提供に大別される。資産販売は棚卸資産のような有形の資産を販売しているケースばかりでなく、無形資産の販売やロイヤルティの受け取りも含まれる。条文に規定される適格要件が、資産販売とサービス提供取引で微妙に異なる点がややこしい。

資産販売に関しては、「米国人でない顧客(not a United States person)」に販売され、かつ「資産使用場所が米国外」という二つの条件を充たす必要がある。一方、サービス提供に関しては、「米国外に所在する者(any person not located within the United States )」に対して、または「米国外に所在する資産(property not located within the United States)にかかわる」サービスを提供している必要がある。これは言うは易し。第三者に販売した商品がその先、買い手によりどこで使用されているか、なんて売り手側では捕捉できないケースも多い。そこで財務省規則案では資産やサービスのタイプ別にこの法文の要件を具体的にどのように充足するかを詳細に規定している。ペーパーワークは面倒だけど、規定としては熟考されていて評価するべきものだと感じている。

次回から取引タイプ別の判断法と取り揃えておくペーパーワークについて。

Sunday, April 7, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (3)

FDIIの財務省規則案が公表されたのを機に、FDIIについて書き始めてたんだけど、税制改正のインプリメンテーション等でとてつもなく多忙になってしまい、なかなかアップデートできず終いで今に至ってしまった。それにしても税制改正のコンプライアンスに与える負荷は凄まじい。2018年3月期は基本的に留保所得一括課税と即時償却の影響だけを考えればよかったけど、2019年3月期からは部分的に留保所得一括課税も残るケースもある上に、BEAT、GILTI、FDIIが「本当に」申告書に反映されることになるため迫力満点。

早くも一年前となる2018年3月の留保所得一括課税だって、実際に申告書に反映させようと思って規則を適用してみると、Cash v. non-cashの区分、期中の分配、FTCの計算やSection 78グロスアップに対するSection 245Aの適用可否、とか想像を絶する複雑さ。規則とか読んで全て分かったような錯覚を覚えていても、実務に申告書に落とし込んでみると理解が深まるというか、理解しているつもりでも実はアヤフヤにしか分かっていない部分が浮き彫りとなる。

ちなみに留保所得一括課税は「旧」税法の世界で処理されるため、FTCなんかは旧Section 960経由で今は亡きSection 902で処理しないといけない。つまり慣れ親しんだPoolingで分母と分子をどう考えるのか、とかをバスケット毎に詳細検討したり、1986年以降すっかり定着していたFTCの考え方に基づき、「昔こんなエクセル作ったな~」とか、Section 902的にはかなりの郷愁が漂う作業となり、最後の郷愁と言う意味ではビートルズのLet It Beのスタジオセッションを彷彿とさせてくれた。何言ってるか訳わかんないかもしれないけど、それだけ米国で国際税務にかかわってきた者にとって今回の税制改正がゲームチェンジャーだという一面を、FTCのSection 902引退をもって感じることができるということ。もっと訳わかんない?かもね。

Let It Beと言えば、ナンとApple(MACやiPhoneのAppleではなく、元祖ビートルズのApple Corpの方)が、Rooftopコンサートのちょうど50周年に当たる今年の1月30日に、Peter Jacksonの手によりLet It Beセッション(またはGet Backセッション)の未公開映像を編集して新Let It Be製作に着手するというとんでもない吉報を発表した。しかも、80年代に質の悪いビデオが限定的に公開されたきりPublic Domainから姿を消していた元祖Let It Beの方も、再マスターされて「正式」に再公開されるという「今日まで生きててよかった~」レベルの大ニュースも一緒だった。

Appleのプレスリリースによると、1969年1月2日~31日に録画された55時間に上る未公開映像、144時間に上る音源、を基に新たなLet It Beを制作するというもの。凄い!できれば55時間丸ごと55回に分けてでもストリーミングして欲しい。1969年1月2日と言えば、ホワイトアルバムの録音終了から僅か数カ月後に、Twickenham Film Studiosにグループが再集結した日そのものだし、その後、George Harrisonが脱退して(クラプトンを代わりにみたいな凄い話しがあった時期)3人でセッションしていた数日を挟み、和解後にSaville RowのAppleビル(今ではA+Fのお店になっているあのビル)に場所を移しセッションを続け、Rooftopでのランチタイムに予告なく始まった(グループ最後の)Public Apperanceの1月30日までの全てをカバーしていることになる。賢いみんなは、でもプレスリリースでは1月31日までのセッションとなってるけど、って一日の差異を疑問に思ったことだろう(誰も思ってない?)。この空白の一日は、実はオリジナルの映画ではあたかもRooftopコンサート前に行われたかのようにプレゼンされている「Two of Us」「Let It Be」「The Long and Winding Road」3曲の最後のスタジオセッションの日だ。次回、映画Let It Beを見る際には、実はこの部分はRooftopの翌日だったんだ~、って観察すると更に感慨深い鑑賞となるだろう。

1月2日から1月15日までのTwickenham Film Studiosそして1月21日~1月31日までのAppleビルのセッションの様子は数々の海賊版(懐かしい響き!)で流出しているので、内容的には大概想像がつく。Let It Beのアルバムに落ち着いたナンバーに加え、公表は先だけど実際にはその後にレコーディングされたAbbey Roadに収録されている曲、さらには解散後ソロになった後に発表されることになる曲がIncubateされて徐々に形作られている過程だ。

Twickenham Film Studiosって、Abbey RoadやAppleビルと異なり、ロンドン市内ではなくヒースロー空港とロンドンの中間みたいな場所に当たるSt Margaretsっていう実に英国っぽい名前・風貌の街にある。あんなところに新年早々朝から集合しないといけないとは有名アーティストの仕事も楽じゃない。映画見る限り屋内でも相当寒そうだし。実はLet It Beの映画が恋しい余りに(わざわざ)St Margaretsまで訪ねて行ったことがあって、もちろん外からビルディングだけ見てもなんてことはなかったんだけど、そこの空気吸えて、その場に行けただけでも大満足。小さいころ、どんな場所なんだろう・・って夢広がってたイメージとはチョッと違ったりはしたけど。Saville RowやAbbey Road行く人は多くてもTwickenhamまで足を延ばす変わり者は珍しいかもね。

その場に居たと言えば、実は僕はJohn LennonとPaul McCartneyの2人「本物」を、コンサートとかのセッティング以外で、実物を見たことがある。特にJohn Lennonに関してはかなりの自慢話し。1970年代後半、夏休みの一部を軽井沢で過ごしていた時期があり、その時にたまたまJohn LennonとYoko(そして生まれて間もないSean)が旧軽の万平ホテルに滞在しているという噂があったので、毎日(皇太子と美智子様の出会いで有名な)テニスコート付近でわざわざHangoutしていた。そしたら、本当にJohnとYokoが(ナント)自転車に乗って現れ(Seanは確か自転車の前に据え付けられたカゴにチョコンと乗ってた記憶がある)、テニスコートの横で休憩し始めたのだ。写真そのもののJohn Lennonの生の姿を至近距離(2メートルくらい)で拝む結果となり、余りにSurrealな状況に気絶寸前。ビートルズの歌詞以外は英語も今一つな時代だったし、余りのオーラに辺り一面圧倒され半径2メートルくらい円形に自然にスペースができていたりしたこともあり、声を掛けることができなかった。今だったら「一緒にバンドでもやりませんか?」位のジョークは言えただろうに一生の不覚。でも2人が立ち去ろうとしている際に勇気を出して近づこうと思ったら僕の自転車がYokoの自転車に触れてしまい、そしたらYokoが「Sorry」って一言話して(?)くれた。謝る時は「I am sorry」と教わっていたのに、「Sorry」だけでいいんだ~、みたいなとんでもなくイノセントな時代だった。

で、Paul McCartneyの方は、1966年の武道館コンサート以来初、ソロ活動を開始してからも初、しかもVenus and Marsが出てWingsがまあまあ商業的に成功しているっぽかった「Rock Show」での来日時の話し。時は1980年。ウドー音楽事務所から早速手に入れた整理券は順番が遅かったので、代わりに新宿の「プレイガイド」(こんな言葉今でもあるのかな)で4泊徹夜して武道館アリーナ最前線の席のチケットを4日間(確か)予定されていた全コンサート分入手した。いよいよ来日が近づき心臓が止まりそうなくらい楽しみにしてたんだけど、ナント1980年1月に成田に到着したPaul McCartneyは麻薬不法所持で空港で逮捕され、そのまま留置所に。コンサートは全て中止となり、チケットは「額面」で払い戻しとなった。当時一緒にコンサート行く予定だった友人と熟考の末、チケット2枚は記念にとっておいて、残りは当時は珍しかったカラーコピーを新宿紀伊国屋でしてもらい還付、双方共後生大事に宝箱に入れて取っておいた。でも、もちろん今ではどこにいったか不明。で、全くの想定外の展開に夜も寝れない状況だったんだけど、Paul McCartneyが新橋の警視庁に拘留されていて、取り調べが行われている中目黒との間を行ったり来たりしているという噂を聞きつけ、新橋の留置所の前で張っていた。同様の噂を聞きつけたファンが結構な数いて、警視庁の辺りを取り巻いてたんだけど、そしたらナント本当に警察の所有車っぽい黒塗りの車が堂々と新橋の警視庁正面玄関に乗り付け、Paul McCartney本人が車から降りて歩いて階段を上り、建物に入っていったのだ。その瞬間辺りは騒然となり、興奮に包まれた。実はその後、Paul McCartneyとは再会(?)があり、それは時は流れて、2005年。ロサンゼルスの西部、ちょうど2002年頃まで10年近く住んでいたWestwoodの家から徒歩数分の場所にあったBordersっていう本屋さんがまだアマゾンに駆逐される前で健在だったころに、Paul McCartneyの著書「High in the Clouds」刊行記念サイン会みたいなプロモーションを企画した際。またしても本屋の前で張ってたら本当に(というか今回は予定通りに)、Paul McCartneyが、当時何らかの契約関係にあったLexusのSUVに乗って現れた。っていうのが2回目のEncounter。

Section 902の最後の郷愁から話しが飛び過ぎたけど、税制改正と新Let It Beのどっちでより興奮するべきか、という究極の課題を突き付けられたことになる。

で、FDIIだけど、米国法人が認識する当期の単年課税所得のうち、「みなし動産リターン(ルーティン利益)」を差し引いた金額を機械的に「みなし無形資産リターン」とし、そのうち米国外の顧客から発生する取引に帰する部分を13.125%で課税するという仕組み。なので、別に無形資産を有しているとか、価値のある無形資産に基づくリターンを得ているとか、そんな自意識がゼロでも、「みなし」の無形資産リターンが存在する限り、FDII,すなわちForeign Derived 「Intangible Income」の恩典を享受することが可能だ。

FDII計算ステップを簡単にまとめると次の通り。まず、米国法人(連結納税している場合は連結納税グループ)に「みなし無形資産リターン」が存在しないとFDIIの恩典には一切あり着けない点は上述の通りで、まずはここに着眼せざるを得ない。この認定もフォーミュラとしては機械的。すなわち単年課税所得とルーティン利益を比べて、課税所得の方が大きければその部分が超過利益として「みなし無形資産リターン」となる一方、ルーティン利益の方が大きければ、超過利益は存在しないとみなされ、その場でFDIIの検討はお終いとなる。

では、この運命の分かれ道となるみなし無形資産リターンの算定時に使用される、ルーティン利益、すなわち「みなし動産リターン」をどのように算定するかだけど、これは単純に「有形償却資産ネット簿価年間平均額(Qualified Business Asset Investment 「QBAI」)」の 10%。ここでいうネット簿価は米国法人税ベースだけどMACRSではなく、ADSと呼ばれる定額法償却に基づくもの。ADSにはボーナス償却とか、定率法に基づく加速度償却とかが存在しないので、ADSベースの簿価はどちらかというと会計の簿価に近い。各四半期末の簿価を年間平均した金額がQBAIとなり、これに10%掛けた金額がルーティン利益扱いされ、当額と比較して、課税所得の方が大きければ一次試験合格。

ここでは話しを簡単にするため「課税所得」がルーティン利益を超えていれば、と書いてるけど、実はこの算定をする際の課税所得は、申告書上の課税所得全体からいくつかの項目を除外する必要がある。それらは、CFC合算所得(Subpart F所得)、GILTI合算所得、金融サービス所得、CFCからの配当所得(みなし配当含む)、FOGIの逆でDOGI(?)とでも言える米国内オイル・ガス所得、そして米国外支店所得だ。米国外支店に帰属する多くの所得は普通に考えればその大半が米国外のカスタマーからの売上となるはずだけにFDIIの計算から(米国外)支店に帰する所得がカーブアウトされてるのはかなり興味深い。支店に関しては、支店をQBUと定義して、FTCの際に別のバスケット化されたりしているので再注目されているけど、FDII目的では支店に所得が配賦されない方が有難い一方、FTCのことを考えると、Excess Creditの場合には支店により多くの所得を配賦する方が好ましくテンションがある。条約のリソーシングとの関係とか、時間があったら税制改正後の米国法人の海外支店・PEは深掘りしてみたいトピックのひとつだ

みなし無形資産リターンの存在が確認できたら、次はそのうちのどの部分が米国外派生となるかの確定。これも「みなし無形資産リターン」に 「米国外派生%」を掛けた金額なので、フォーミュラとしては機械的に算定され、この金額こそがFDIIだ。米国外派生% は、単純に言えば、上述の除外項目以外の課税所得(適格所得)に占める外国部分の%。外国部分は米国外カスタマーに対する売上(ライセンス含む)およびサービス提供から派生する課税所得。なので米国法人の取引のうち、何がFDII目的で「米国外カスタマー」に対する取引と認められるか、が最重要検討事項となる。この点から次回。

Tuesday, March 12, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (2)

Section 250のFDII財務省規則案が急に公表されたので、またそっちに移り気してしまってるけど、FDIIは、法人税率引き下げ、即時償却、と並んで今回の税制改正で導入された納税者よりの規定のひとつ。それらのグディーズに対し、GILTI、BEAT、163(j)、Anti-Hybridという反納税者規定があり、もうひとつ本来は目玉商品だったはずのテリトリアル課税の恩典は限りなく透明に近いブルー、じゃなくて限りなくゼロに近い、というのが税制改正の全体像と言っていいだろう。日本企業のような米国から見たインバウンドグループは、その気になればCFCを米国傘下から外すことが可能な訳で、税制改正最大の障害であるGILTIからの解放は十分に可能だ。「War is over if you want it」の世界。BEATは残るにしても、他は納税者に有利な規定なので、どのように恩典を最大限化するか検討する必要がある。

FDII適格となる取引に適用される13.125%という法人税率は、単純に税率だけで見るなら(州税も無視して)、香港やシンガポールより低く、アイルランドやリヒテンシュタイン並みだから、これをUnited States of Americasの税率と考えるとかなり迫力がある。それだけに、法律が意図している取引のみが適格となるよう、特に外国人顧客、米国外使用、等にかかわる定義やその証明法を詳細に規定しているのが今回の財務省規則案だ。

まず、Section 250控除の恩典を受けることができる納税者だけど、REIT、RIC、S法人以外の米国法人となる。なんかチョッとBEATと似てるけど、BEATと異なりFDIIは「米国」法人にしか適用がない。FDIIに関してはそれはそれでポリシーマターだからどうってことはないけど、Section 250はFDIIばかりでなく、GILTI控除も規定している。GILTIの「合算」自体はCFCの米国株主であれば法人でなくても適用がある。にもかかわらずSection 250は米国法人以外に適用がないということは米国法人以外の米国株主はフルの税率でGILTI課税されることになる。「と言うことは21%か・・」ではなく、個人は37%が最高税率。CFC保有しているような個人だったら多くの方が37%だろう。しかも個人には間接外国税額控除も認められないので、CFCが所在国で法人税支払った上に米国で37%というとんでもない結果となる。グローバルミニマム税13.125%どころの騒ぎではない。

以前から存在するSection 962と言う、個人が一定の目的で法人かのように取り扱うことを選択する制度を利用するのが唯一の救いとなるけど、Section 962は分配時に不利な取り扱いがあったり完全な解決にはならないだろう。また、Section 962を選択することで外国税額控除は認められそうだったけど、控除項目のGILTI控除はSection 962下でも法律の書き方から難しいのではないか、と疑われていたが、今回の規則案でSection 962を選択する個人の納税者にもSection 250のGILTI控除が認められることになった。ただ、これはSection 250のGILTI控除部分の話しで、個人がSection 962選択をしてもFDII恩典を享受できるということではない。

実際に何がFDII適格の取引・所得になるかという本題に入る前に、規則案では250条控除計算にかかわる諸々の事務的計算法に触れている。とは言え、これが実に難解。下手するとEXCELのIteration機能を駆使した反復計算になりそうで、実際に財務省にはそれが正しいアプローチという声もあったようだけど、最終的には強制的な計算優先順位を設定することでIterationは回避されている。

複雑化する原因は、Section 250控除額は課税所得を上限とすると法律で規定されていて、この目的での課税所得はSection 163(j)やSection 172(NOL)他の控除・制限を全て加味した後のSection 250直前の金額となる一方、Section 163(j)の支払利息損金算入制限を算定する際に使用するATIはSection 250控除後、となっていて、どっちが先か不明な点。それをアーティスティックに解決しているのが今回の規則案。

規則案では、まずSection 163(j)やNOLを無視してFDIIを算定し、GILTIと合わせて課税所得上限は無視して仮の暫定Section 250控除額、すなわち「暫定Section 250控除」を算定するとしている。で、この暫定Section 250控除を加味してSection 163(j)目的の修正課税所得(ATI)を算出し、支払利息損金算入制限額を決定する。その結果、損金算入が認められることになった支払利息を使用して当期課税所得をはじき出し、そこにNOLを充当する。NOLの使用可能額はこのステップで決まり、近年のNOLで80%制限の対象となっている場合にはここで80%上限額を確定させる。さらに上のステップで使用可能となった支払利息およびNOLを使用して最終FDII額を算定。また同時にSection 250控除に対する課税所得上限額もこの段階で算定する。その結果、FDII額およびSection 250控除額が最終となる。Section 250控除額を算定する際に、FDIIとGILTI合算額が課税所得を超過する場合、超過額はGILTI控除とFDII控除に按分され、各々の控除額の対象となる金額を減額させる。なかなか良く考えられたステップだけど、これからの米国法人税コンプライアンスの負荷は果てしなく高い。

さて、いよいよ次回はFDII適格所得の算定法。

Friday, March 8, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案

BEATに戻る!って宣言してから早一カ月。日本からの米国投資も引き続き盛んで、いろんな投資やM&A絡みの話しで24/7米国法人税と格闘しながらもそろそろBEATのポスティングでもと思い立った矢先、お雛祭りの興奮冷めやらぬ3月4日に財務省からGILTI控除とFDII控除の双方規定しているSection 250に係わる財務省規則案が公表された。今回は177ページ。最近は財務省規則が200ページ未満だと「なんだ結構短いじゃん」なんて勘違いするようになってしまった。慣れは恐ろしい。今回の財務省規則は、国外取引がどんな条件でFDIIになるかっていう議論に多くのページが割かれている。なんで、例えばFTCの規則案みたいに超テクニカルな話しではなく、どうやってカスタマーが販売した商品を米国外で使っているか、って証明するとかの話しが多く、反って読むのに苦労した。

Section 250はGILTIとFDII双方の控除を規定してる条文だけど、今回の規則案は基本的にFDIIの話しのみで構成されていると言っても過言ではない。唯一GILTI控除の話しが出てきてるのは、課税所得上限という制限枠の部分だけで後はFDII一色。それもそのはずで、GILTIに関しては既に2018年9月にGILTI課税の中心的な規定となる「GILTI合算」、また11月にはGILTIグローバルミニマム税率を13.125%とするためのキーとなる外国税額控除、に関して既に複雑かつ大量の規則草が公表されている。そんなことから今回規定されるGILTI控除はGILTIの世界ではマイナーな存在なので、規則案もそれに準じているだけの話し。決してGILTI全体が簡単ということではない。

で、Section 250はGILTI合算した金額およびGILTI外国税額控除目的でグロスアップする外国法人税に対する50%の所得控除、そして米国外への販売、ライセンス、役務提供から生じる超過所得であるFDIIに対する37.5%の所得控除を規定する条文。FDIIってForeign-Derived Intangilbe Incomeの略だけど、GILTI同様にIntangilbeの有無はその適用に問われない。GILTIがどう読んでも「ギルティ」以外に発音しようがない一方で、FDIIは当初どんな風に読むのかっていうコンセンサスが出遅れた感じ。フォディーとかって言い出す人もいたけど、いまではサウンドの心地よさから「フィディー」に落ち着いている。で、FDIIに対して37.5%の控除が認められるということは、実際には100の所得があっても62.5しか課税されないから、それに通常の法人税21%を掛けると、実効税率13.125%になるという仕組み。香港とかシンガポールレベルの迫力満点の税率だ。

GILTIはCFCの所得を毎期グローバル連結納税する規定で、FDIIは米国法人が国外から所得を得る際の恩典税率規定。一見、全く異なる2つの規定なだけに、なんでこの2つの控除を敢えて同じSection 250で規定しているんだろう、って不思議に思う人も多いと思う。っていうかそんなに深く考えてない人の方が圧倒的に多いとは思うけど。GILTI合算課税そのものはクロスボーダー系の条文が集まっている辺りのSection 951Aで規定されていて、50%の控除部分のみがFDIIの37.5%と同じ条文に収まっている。これには恐ろしい(?)訳がある。実はFDIIとGILTIは表裏一体の関係にあるからだ。

FDIIは37.5%の控除を認めることで国外販売から派生する米国法人の所得を実効税率13.125%で課税する。GILTIはCFCが国外で認識する所得に50%の控除を認めることで10.5%で課税するけど、CFCが所在国で同じ所得に対して支払う外国法人税は80%まで税額控除が認められる。ということは80%掛けて10.5%になるレベルの外国法人税、すなわち13.125%をCFCが支払っていれば「理論的」には米国側ではそれ以上持ち出しの法人税は発生しないことになる。なぜ「理論的」だけの話しかと言うと、「実際」には米国株主側のGILTI所得に対する費用配賦で、税額控除の枠にリミットが掛かり、10.5がきれいに消えないからで、この問題は以前のポスティングで散々触れている。

すなわち理論的にはGILTIは、CFCが認識する所得にグローバルミニマム税として13.125%の法人税を支払ってればよろしい、という仕組み。これは国外販売等から生じる所得を米国法人に実効税率13.125%で課税するFDIIのミラーイメージだ。OECDとかが「FDIIは不法な輸出助成金でけしからん!」というようなクレームを付けてくる場合には、「米国法人が国外から得る所得もCFCが得る所得もどちらも13.125%をミニマム税としてます」と言ってディフェンスするためだ。

このことから、GILTIとFDIIはセットだと言うことが分かる。昨今の変なノリで、各国がグローバルミニマム税を導入しようとする勢いにのって、まさか日本もGILTI日本版すなわちJILTI(ジルティー!)を導入なんてことはないとは思うけど、でもそれするんだったらシスター規定のFDIIも入れないとおかしい。日本版FDIIのJDII(ジディー!)。

って、チョッと規則案とは関係なくなってきたけど、次回はSection 250規則案の規定そのものについて。

Saturday, February 2, 2019

留保所得一括課税の財務省規則最終化 (4)

グローバルウォーミング・地球温暖化にはいろんな懐疑論もあったりして、悲しいことに米国税務とサブカルチャーの一部にしか知見のない僕個人は、一体何を信じていいのか合理的な推測すらできない。なんで科学的な話しはできないんだけど、体感的は話しとして、比較的温暖だった今年のニューヨークの冬は今週いきなり寒くなった。シカゴとかデトロイトのある中西部では体感温度マイナス50度(摂氏)とか報道され、これは南極より寒いとか騒がれていた。南極ってもちろん行ったことないけど、逆に言えばシカゴとかで体験できる寒さと比較可能なレベルなんだ、っていう変な発見もあった。マンハッタンでもiPhoneの表示だと華氏5度(摂氏でマイナス15度位)って出てたから結構寒い。ここまで寒いとマンハッタン全体、雪も降ってないのに路面とか全体に白っぽくなったりして、寒さで空気が澄んでいる点も合わせて見た目はきれい。夜も光がキラキラしていて外に出なくて済むんだったらいい感じなんだけどね。素人的に言うと、こんなに寒くなるってことは温暖化って表現は余りピンとこない。どっちかっていうと気候変動っていう方が分かり易い。

で、前回は留保所得一括課税の最終規則公表を受けて、CFC株式の簿価と課税済所得の話しを結構延々としてしまった。今日もチョッと似たような話し。なんでこんな話しをいつまでもポスティングしているかというと、簿価とかE&Pっていうのは昔から重要な属性だったけど、留保所得一括課税や今後のGILTIでその重要性が格段に増しているから。また、日本企業の米国子会社を見ていると、一般的にこれらの数値管理は疎かになっているケースが多く、2018年以降は毎期トラッキングしておかないと、CFCからの分配もできない状況になるので警鐘の意味も兼ねて(?)。

簿価関係の話しで一括課税の規則の中に実に興味深い規定がある。CFCの一括課税合算年度の期中にCFCが分配を行った際の取り扱いだ。例えば、米国株主法人からみ株式簿価がゼロのCFCに1987年以降の留保所得が100あり、全額一括課税の対象になるとする。CFCも米国株主法人も12月31日決算とすると、米国株主法人は2017年12月期に当100を課税所得として合算する。これだけの事実関係だと、12月31日時点に100がCFC側で課税済留保所得となり、CFC株式簿価が同額100増額する。もし2018年1月以降にCFCが100を分配すると、課税済留保所得の分配として、配当扱いにはならず(なので新税制下のテリトリアル課税規定である100%配当控除の対象にはならない)、CFC側では課税済留保所得100が減額し、米国株主法人はCFC株式の簿価が100減額して、合算前の簿価ゼロに戻る。。もし、留保所得一括課税以前のCFC簿価がゼロだったとすると、12月31日時点で簿価は100増額し、その後の分配時に100減額してめでたく元のゼロに戻ることとなる。

もし、分配が2017年11月とか、12月31日より以前のタイミング、すなわち留保所得一括課税の合算年度期中に行われているとどういうことが起こるだろうか。期中の分配は一括課税の対象となる留保所得認定には影響がないので、期中の分配がなかったケース同様、米国株主法人は2017年12月期に100合算課税される。ということはこの100の原資となる留保所得は課税済みになるし、CFC株式簿価も100増額するはずなんだけど、実際には分配が先に起こっている。となると、分配された金額100に関して、課税済留保所得を原資にしていたっていう点は12月末の合算確定時点が初めて明らかになる一方、分配時点で他のカテゴリ―の留保所得を分配したと考えるのは変なので、分配時点に遡って課税済留保所得を分配したと取り扱われることになるはず。でも、株主側のCFC株式簿価調整は米国株主法人側で合算されるまで増額しないと考えると、分配時点の株式の簿価は未だゼロだったと考えられる。え~、ってことは分配時点で簿価を100減額しないといけないけど、簿価がゼロなので100のみなし譲渡益課税?っていう恐ろしい事態になりかねない。

この時間差の問題は、実は以前からモヤモヤとしていた問題で、従来のSub F所得が合算され、合算年度の期中に分配があった場合に、分配はSub F所得の範囲で課税済留保所得から行われたと取り扱われる一方、簿価の増額は期末なので、厳密に言うとミスマッチが発生するのでは、って以前から疑われていた。ただ、従来のSub F合算所得は、今回の留保所得一括課税や今後のGILTIに比べて金額が小さいことが多く、仮にそんなミスマッチがあったとしても、分配時点で株式簿価がゼロを割り込んでマイナスになるような事態が発生するリスクは低かった。また、課税済所得という位置づけはSub F合算が発生するCFC側の年度末にならないと確定しないので、実務的には分配・課税済所得の確定・簿価増額そして減額が全て同時に起こったかのように便宜的に処理しているケースも多かっただろう。

で、留保所得一括課税の最終規則では、この点に関して、仮に分配時点で譲渡益を認識するようなケースがあっても、譲渡益は米国株主法人側で合算した金額を上限に減額処理していい、と規定している。すなわち、上の例で言うと、分配時にCFC株式簿価がゼロのままなので現行法を厳格に適用し100のみなし譲渡益が発生したとしても、米国株主法人側で合算している100を上限にこの譲渡益は減額処理することが認められるというものだ。この規定自体はヘルプフルなもので有難いけど、その前提は怖い。すなわち、期中の分配はやはり簿価を増額する前に起こったとされ、その時点の簿価を減額してゼロを割り込むとみなし譲渡益になるという取り扱いを間接的に確認していると読めるからだ。やっぱり今までもそう考えるべきだったのか、とゾクッと来る感じの規定になっている。

で、譲渡益を減額する場合、株式簿価ももちろん対応して減額が必要となる。これらの全ての簿価調整はCFC課税年度の期末時点で一気に発生したかのように取り扱われ、プラス・マイナス調整が混在する場合にはネット金額一本で行うこと、と規定されている。上の簡単な例でも簿価調整関係の動きは複数発生している。100の課税済留保所得が分配された時点で100の簿価減額が求められるが、その時点の簿価はゼロなので、100のみなし譲渡益を認識し簿価はゼロのままを維持する。12月31日時点で合算課税を基に簿価は100増額、そして100のみなし譲渡益課税の減額を行うことによる100のマイナス簿価調整。結局、ネットでゼロ調整が12月末に起こり、かつ分配時のみなし譲渡益も減額されてゼロになるという仕組み。

CFCが複数あり、他のCFCのマイナス留保所得でプラスを相殺しているケースはややこしい。これは以前にも何回も触れているけど、マイナスで相殺された金額も、実際には米国株主側で課税されてないにもかかわらず課税済留保所得に生まれ変わる一方、CFC株式の簿価はその分の増額はない。そんなマイナスで相殺された課税済留保所得を持つCFCが期中に分配を行った場合、みなし譲渡益の減額は、「留保所得一括課税の財務省規則最終化 (2)」で触れた簿価調整を選択をしているケースのみで認められるとしている。そうしないと合算年度の期末以降に分配した場合の取り扱いと整合性が失われてしまうからね。

留保所得一括課税もまだまだ本当はDeepできりがないけど、次回からはBEATに戻る。

Sunday, January 20, 2019

留保所得一括課税の財務省規則最終化 (3)

前回のポスティングでは、「CFC株式税務簿価の調整選択時の金額制限」にかかわる最終規則を詰めた。しつこいけど、これもCFC合算という新しい概念を起因とする歪にかかわる調整規則。この題材では昨日あれだけ書いたから、もういいかな、と思う反面、余りにDeepな世界なので、ついつい考え続けてしまう。NYCは週末雪という予報が出ていたので、外にも行けない環境を逆手に、家でミルクティーでも飲みながら考え続けようかな~、なんてチョッと贅沢な週末を思い描いていたんだけど、「降るぞ」って前評判が高いストームは大概空振りに終わるっていう例に漏れず、今回もマンハッタンではほぼ雪は降らず、代わりに冷たい氷雨が少し降って、それも終わって落ち着いている。まあ、数多い出張の飛行機のダイヤが乱れないのは助かるんだけど、予想してたようなWhite WeekendっぽいCozyな感じにはならず終い。東京の帰りに一瞬寄ったロサンゼルスも先週は雨が多く、新たなクロスボーダー課税を熟考するにはどこも好環境だったのかもね。

で、氷雨だったので雪ほど熟考に至らなかったけど、考え続けた結果を、氷雨レベルで軽くチョッと共有してみたい。みんなに嫌がられるのはもちろん覚悟の上で。

プラスCFCの株式簿価は高いに越したことはないことから、今回の懸念というか検討の主は、マイナスCFCの株式簿価をどう考えるかというニュアンスが強い。ただ、この点に関して財務省規則にはいくつか納税者フレンドリーな規則が入っている。まず、マイナスCFCが複数あり、プラスCFCの留保所得総額を相殺して余りあるケースでは、どのマイナスCFCのマイナス留保所得をいくら使用したかを米国株主側で特定できる仕組みになっている点。近々に売却が予想されるようなCFCの簿価は敢えて減らしたくないだろうし、簿価減額オプションを選択するケースでもそんなCFCにはできるだけ米国株主側で使用してしまったマイナス額を配賦しない、というオプションがあり得る。

次に、時価と簿価と留保所得の関係。各CFCの株式簿価プラスとマイナスを相殺するというのはあくまでも米国株主側における計算のメカニズムの話しなので、各CFCの価値が変わっている訳ではない。これは今後のGILTI課税も同様。ちなみにGILTIにかかわる簿価調整と課税済所得のルールは今回の留保所得一括課税にかかわる規則とは大きく異なるんで面白い。CFC毎に見ると実際には何も起こっていない状況なので、例えば留保所得一括課税の前段階で、一人の米国株主が、100の価値、留保所得も100、米国株主側で株式簿価がゼロのCFC、そしてゼロの価値、留保所得マイナス100、米国株主側の株式簿価が50のCFCを保有しているとする。その時点でプラスCFCの株式を譲渡すると、100のみなし配当扱い譲渡益が発生する。旧法では実際に配当しても100の配当所得となる。一方マイナスCFCを譲渡すると、50の譲渡損が発生する。譲渡損はキャピタルロスなので配当とは相殺できないとか、みなし配当にはFTCが可能とか、細かい点を除くとネットで50のプラスとなる。仮にマイナスCFCからDebt Financeに基づく分配が可能だとすると、留保所得(=E&P)はマイナスなので、配当に当る部分はなく、通常のSub Cの世界で、50の簿価を取り崩し、超過額があればみなし譲渡益になるはず。

留保所得一括課税では、100と100が相殺されるので、米国株主に課税はない。その時点で、プラスCFCの留保所得は全額「課税済み」(全額965(b) PIT)に生まれ変わり、マイナスCFCのマイナス留保所得には100のプラス調整が行われ、ゼロとなる。テクニカルにはプラスCFCのE&P100はそのままだけど、このE&Pは実質消えてしまったに近い。この時点でプラスCFCを譲渡すると、株式価値は基本変わらないので、100の譲渡益が出る。最終規則に基づくとこの100はみなし配当にはならない。マイナスCFCを譲渡すると、50の損失となる。ネットでは50のプラスが認識され、結果として一括課税の以前の状況と似ている。一括課税で米国株主は何も課税されていないことを考えると、前後で経済的な結果が似ているのは何となく正しい気がする。

で、次に選択をしたケース、しかも規則「案」の考え方に遡り、一旦「To-the-extent規定」を無視して簿価調整をしたとする。その結果、プラスCFCの株式簿価は100となり、マイナスCFCの簿価は50しかないから、みなし譲渡益が50発生する。その後、プラスCFCを譲渡すると、譲渡益はゼロ、マイナスCFCを譲渡するとやはり譲渡益はゼロとなり、蓋を開けてみると、やはり最終的に50のプラスが認識されている。

更に最終規則に規定される「To-the-extent規定」を取り込むと、マイナスCFCの簿価割れは禁止なので、50のみ減額となりマイナスCFCの簿価はゼロとなる。一方、プラスCFCの簿価増額も同額を上限とすることから、50となる。その直後に両社の株式を譲渡すると、プラスCFCに関して50の譲渡益、マイナスCFCではゼロの譲渡益となり、やはりネットではプラス50が認識されている。

そう考えると、どのシナリオでも算数的かつ長期的な経済効果は似ているように見える。もちろん実際には、将来的なCFC株式譲渡、どこからどれだけ米国に分配するか、分配の原資があるか、分配時の源泉税、FTCが取れるか、Capital Lossが想定される場合にはCapital Gainがあるか、その他、とても複雑かつ複合的な分析に基づいてどのオプションが各社にとってベストとなるかが決まる。どう考えても、選択した瞬間にみなし譲渡益が発生するようなオプションは選択するべきでないだろう。

財務省側の懸念として考えられるのは、マイナスCFCの100を利用して、プラスCFCの留保所得一括課税をシェルターした訳だから、そのマイナス100の恩典を直接・間接に部分的にでも同じ米国株主が再度、享受するようなことがないように、っていう損失の二重利用だろう。例えば、最初のシナリオで何の選択もしない場合、マイナスCFCの株式のみを譲渡すると、50の損失が出る。もし仮に同時にプラスCFC株式も譲渡すると100の譲渡益が出て、きれいにネット50のプラスとなるけど、そんなことは稀で、50の損失だけを認識してプラスCFCは今後長らく保有し続けるケースも十分に想定される。規則案の選択では、マイナスCFCに関していきなりみなし譲渡益が50認識されてしまい、プラスCFCの株式譲渡を行い、ゼロ譲渡益の恩典を享受するまで、納税者側から見ると辻褄が合わない。最終規則の考え方では、マイナスCFCの簿価をゼロとすることで、マイナスCFC株式譲渡の際の損失恩典は封じ込むことができる。これが最終規則で「To-the-extent規定」を認めた背景・バランス感覚なんだろうか。何もしてないのにみなし譲渡益が出るのはかわいそう、って思ってくれてる反面、損失の時間差も含めた二重利用は許したくない、っていう微妙なバランスをどこで見つけるか、っていうのはこの上なくアーティスティックな検討だ。

上の連結納税していない米国株主が一社で2社のみのCFCを保有しているという非現実的な単純例を見ただけでも、全ての局面で合理的となるパーフェクトルールを策定するのが不可能だということが分かる。現実の世界では100社以上のCFCを保有するケースは珍しくなく、各納税者の事実関係に基づき、変動要素が余りに多い。したがって、超複雑な検討を強いられることは火を見るよりも明らかで、みんなにとってパーフェクトとなるルールを策定するのは不可能。となると、ルールはどれだけ「不完全度合いが少ないか」という尺度に基づき、最終的な落としどころを見つけるしかなくなる。そのような「Close Call」というか、ギリギリの判断を短時間に強いられる中、財務省が公表する規則は実に思慮深い。法曹界・Big 4その他からの強力なインプットがあるとは言え、複雑な税法全体をDeepに理解していないとこんな規則策定できるもんじゃない。米国財務省の実力は凄い、って感心し続ける今日この頃でした。

Saturday, January 19, 2019

留保所得一括課税の財務省規則最終化 (2)

今回も昨日最終化された留保所得一括課税の財務省規則の続き。前回は規則案からの変更点のうち、興味深いものに関していくつか触れた。中でも個人的にはCFC株式譲渡時のみなし配当原資の考え方はかなり面白いと感じると同時に、財務省のルール策定時の「アーティスティック」な側面を垣間見たような気がした。最近の財務省規則には、法文を文字通り読んだ解釈から逸脱するような方向性が散見される。昨日触れた米国内パートナーシップ・ブロッカー対抗策やSection 1248に対する規則もその類。法文から逸脱した規則を策定せざるを得ない背景には、既存の法的インフラを使って斬新なクロスボーダー課税を導入してしまったため、細かい部分で既存の法文では手当て仕切れない部分が続出するという必然がある。

従来のCFC課税であるSubpart F所得は常にCFC毎の計算だったし、常にプラスだったし、毎期の各CFCの単年E&Pが上限だったし、CFCで決定されたSubpart F所得に対して米国株主側で更に数字を加工するようなシステムは法的インフラに想定されていない。Subpart F所得があれば、それは必ず米国株主側で合算されて課税所得となり、Anti-Deferralなので基本的にE&PコンセプトだったSubpart F所得は同額がそのままCFC側で課税済所得となり、また同額が米国株主側のCFC株式簿価に上乗せされるという綺麗なEquationの世界を達成していた。この美しいバランスが留保所得一括課税で完全に崩壊され、そこからGILTIに発展・継承されていく。以前に965(留保所得一括課税)はGILTIのプレリュードって書いたことがあるけど、留保所得一括課税が「Transition Tax」と呼ばれる際の「Transition」は、実は過去のCFC毎の制度を一旦精算し、その後はCFCは大連結させて一社扱い(?)という従来では考えられないWhole New Worldに突入する意味でのTransitionだったんだろうか。Transition Taxそのものが既に新コンセプトのCFC合算ベースなのが凄い。余りにDeepでPurpleでHeavyでMetalなので、この点はこれからも毎日良く考えながら過ごして行かないとね。

で、今日のメインテーマは、前回の予告通り「CFC株式税務簿価の調整選択時の金額制限」。これもCFC合算という新しい概念を起因とする歪にかかわる調整規則となる。

米国株主が複数のCFCを保有していて、それらのCFCの中に留保所得がプラスだったりマイナスだったりする法人が混在している場合、留保所得一括課税の算定時に米国株主側でプラスとマイナスを相殺することができる。それはそれで、グッドニュースと言えるんだけど、CFCそのものは当然単体で存在しているものを、その上層、すなわち米国株主側でCFC間の留保所得を相殺しまうと、CFC毎の属性の調整をどうするか、という従来では存在しないタイプの検討が生じる。

複数のCFCが混在し、どのプラスCFCが誰のマイナスをいくら使用して、またマイナス法人は自分のマイナスをいくら他のCFCに使用されたか、をまず特定しないといけない。この特定法は規則案から改訂されることなく、そのままの方法が踏襲されている。この計算に関しては、以前のポスティング「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(4) 留保所得一括課税」を参照して欲しい。で、そのステップが終わったら、今度は各々のCFCの課税済所得と米国株主から見たCFC株式の簿価を決定しなくてはいけない。

留保所得一括課税を規定しているSection 965は、面白いことに、他のCFCのマイナスで相殺されたプラスCFCのプラス留保所得も課税済所得になると規定している。この所得は実際には米国株主側でマイナスで相殺されている訳だから、課税はされていない。にもかかわらず課税済所得となるという特別な位置づけにあり、規則案が出るまでは「Light PTI」とかいろんな名称で本当に課税された課税済所得と区別していた。規則案では本当に課税されている金額を「Section 965(a) PTI」、マイナスで相殺されて課税されていない課税済所得部分を「Section 965(b) PTI」と命名している。Section 965(b)はマイナス留保所得でプラスを減らしてよろしいと規定している部分なので、この表現はとても分かり易く、今では全国的、もしかしたら全世界的に(a)と(b)でPTIを区別できるようになっている。この辺りの議論は以前、留保所得一括課税にかかわる規則案が公表された直後の夏にいろいろ書いているので「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(5) 留保所得一括課税」等を中心に見てみて欲しい。

で、この実際には課税されてないけど課税済所得と位置付けられる、Section 965(b) PTIに対応して各CFCの株式簿価が米国株主側でどのように動くかと言うと、原則、プラスCFCの株式簿価は増額せず、マイナスCFCの株式簿価は減額しない。ということはプラスCFCの留保所得のうち、他のCFCのマイナスで課税済所得になっている金額を米国に分配すると、その分は株式簿価が増えていないので、分配が簿価を超えるとみなし譲渡益が発生する、という意外な結果となる。「Transition Tax」で全ての留保所得は(低税率で)課税済みに生まれ変わったので満を持して資金を米国に還流しよう、とする際に、源泉税と並んで大きな足かせとなり得る。

このような事態を回避するため、相殺金額にかかわるCFC株式調整、すなわちSection 965(b) PTIに関して、プラス側のCFCの簿価を増額し、マイナス側のCFCの簿価を減額する選択を納税者側のオプションで行うことができる、と規則案では規定していた。この選択は一回限り可能だが、検討時にはマイナスCFCの株式簿価を慎重に特定しないと、選択したはいいけど、選択の瞬間にマイナスCFCの株式簿価を割り込んでしまい、いきなり譲渡益認識、というような最悪の事態となり兼ねない。このみなし譲渡益が怖くてなかなか選択に踏み切れない米国株主は多いだろう。

で、当初、この選択は申告書提出時に行わないといけないという規定だったんだけど、CFC株式簿価とか課税済所得という複雑な検討を伴うため、規則案の後に発表されたNoticeで、期限を延長し、最終規則の公刊記載日から90日後にまでに選択すればよいこととなっていた。また、既に2018年10月15日等に提出した申告書で慌てて選択を行ってしまった米国株主は、期間内に選択を取り消すことも認められる。

規則案では、CFC株式簿価調整の選択を行う場合、相殺金額の「全額」に関してプラス側の簿価増額、マイナス側の簿価減額が規定されていた。CFC株式簿価を減額してマイナスとなるとみなし譲渡益となることから、仮にCFC株式の簿価やプラスとマイナスの配賦額を正確に特定することができたとすると、譲渡益が出るような状況にある米国株主は選択は行わないことになるだろう。選択をしない場合、その時点では何も起こらない。でもプラス留保所得を持つCFCから資金を還流しようとすると、今度はこっちの株式簿価が十分になくて資金を持ち返れないという事態が想定される。留保所得一括課税は8年間に亘る分割払いが可能とは言え、納税原資も必要だし、そもそもお金を持っているのはプラスのCFCの可能性が高い訳だから、これではせっかくの留保所得一時課税で課税済みとなった資金を米国に持ち返ることすら憚れるような状態になる。

最終規則ではこのようなジレンマを解消または軽減するため、CFC株式簿価調整の選択をする場合でも、マイナス側のCFC株式簿価に関して譲渡益が出ない範囲でのみ、株式簿価の調整をする選択を新規に規定している。当選択は、マイナスCFCの株式簿価の「範囲のみ」で行うことから「to-the-extent規定」と新しい名称まで付けてくれている。当たり前だけど、マイナス側の簿価減額を限定する場合、プラス側の簿価増額も同額に限定される。

To-the-extent規定の実際の規則の書き方は例によってややこしく、米国株主はまずプラス側のCFC各社の株式簿価増額希望額を指定することができるとし、その条件として、増額の総額(ここで総額と使用されている意味はおそらく複数クラスの株式が存在する場合を想定?)は当プラスCFCの留保所得を相殺したマイナス額を超えてはいけない(これは趣旨的にも規則案の時からその通り)、さらに次は米国株主側の合算ベースで、プラス調整総額がマイナスCFC株式簿価減額の総額を超えてはいけないと規定している。その上で、次にマイナスCFCの規定に移り、マイナスCFCの株式簿価減額の総額(この総額も個々のCFCベースの話し)は、当マイナスCFCの調整前の簿価を超えてはいけないとしている。しかもマイナスCFC側の規則には簿価を超えてはいけないのは「On a day」、多分On any dayと同じ意味?とわざわざ規定されている。

なお、この選択、グループ企業合致要件があり、基本的に50%超の資本関係にある米国株主は選択するかしないか、統一したポジションを取らないといけない。最終規則ではこの点に関して、プラスをマイナスで全く相殺していない米国株主に関しては選択に参加する必要はないとしている。選択に参加してもしなくても、そんな米国株主にとっては何も変わらないけど、たぶん、自分は関係ないから何にもしなくて問題ないじゃん、と思って何もしない場合に他の50%資本関係にあるグループの選択が期せずして無効になっちゃりするリスクを排除してくれているんだろう。

譲渡益を認識しない範囲で簿価調整を認める場合、もしかしたら調整そのものが選択ではなく強制になるのでは、というようなアプローチもあり得たが、最終的には金額調整もOKで、そもそも簿価調整を行うかどうかも引き続き選択制度となっている。これは納税者フレンドリーな改訂だけど、いずれにしても簿価や相殺金額の配賦を正確に特定しなくてはいけないことに変わりはない。しかも最終規則が出てしまったので、選択期限が切られてしまったことになる。選択は一回キリだから慎重に考えないとね。CFCの数にもよるけどこんなの90日で意思決定できるんだろうか。もちろん規則案が出た頃からシミュレーションとか始めてたら問題ないんだけどね。

Tuesday, January 15, 2019

留保所得一括課税の財務省規則最終化

この超バタバタ(いつも)の中、財務省は去年の8月に公表していた留保所得一括課税にかかわる財務省規則案を最終化し、米国時間今日(1月15日)午後に公表した。規則案は249ページだったけど、最終規則は305ページ。ページ数で競ってる訳じゃないけど、最終規則は50ページ強増強されていることになる。

チョッとオサライだけど、留保所得一括課税って、CFCとかの特定外国法人の2017年12月31日以前に開始する直近の課税年度(「合算課税対象年度」)末を含む米国株主側の課税年度に、外国法人の1987年以降の留保所得を15.5%(現金相当額)または8%(その他)の低税率で課税するという仕組み。この移行措置を経て、米国もめでたくテリトリアル課税に移行すると考えていたところが、まったくのダマシ船で、一括課税された上、さらにグローバル連結に近いGILTIに移行してしまったのは、以前からのポスティングで触れている通り。

税制改正に基づく規則で先陣を切って最終化された訳だけど、留保所得一括課税は多くのケースで2017年課税年度に処理するものであり、会計上のインパクトも含めて他の規則よりも一年早い検討事項となっている。米国企業は既に2018年10月、日本企業の多くは、まさしく今日2019年1月15日に提出した申告書で加味しているはず。なんで申告書作成は例年にも増して大変な作業となったケースが多い。

そのため、税制改正可決直後から、多くのNoticeでガイダンスが公表されており、ここに来て真っ先に最終規則に漕ぎつけている。基本的に規則案の構成・方向を踏襲している部分が大半なので、まあまあ読みやすい。取り急ぎ、目についた点をまとめると次の通り。

米国パートナーシップの上に2社CFCを介したりして、Subpart F所得を非課税にしようなんていう米国パートナーシップブロッカー形態は、以前のNoticeやGILTIの財務省規則案で網が掛けられているけど、ここでも同様な背景で、本来、パススルーでもパートナーシップレベルでCFC等の米国株主と取り扱われるはずが、一定の要件下で米国パートナーシップは外国パートナーシップかのようにLook-throughしてパートナーを米国株主として取り扱う規定がある。これは一括課税の規則案にもしっかり規定があったけど、今回の最終規則では、米国パートナーシップがLook-throughになる場合、その結果間接的に10%の持分を持つパートナーだけに対してばかりでなく、少数持分保有のパートナーを含む全てのパートナーに関してLook-throughが適用される、としている。

そして話題のDownward Attribution系の話し。外国法人が特定外国法人になるのかとか、米国人が米国株主になるのか、という判断をする際、規則案では少額免除規定のような形で、5%未満の持分を保有するパートナーからパートナーシップへのみなし株式保有は免除してくれていた。でないと結構ビックリするような結果となることがある。で、最終規則では更に寛容に、当例外規定の基準を10%未満の持分に拡大してくれている。さらに、こちらは日本企業には余り関係ないかもしれないけど、同じような少額免除を受益人から信託に対するみなし保有規定にも新規に規定してくれている。

次はSection 1248と課税済所得。CFC株式を譲渡した際にCFCのE&Pの範囲で譲渡益がみなし配当取り扱いになりますっていうのは比較的初歩的な米国クロスボーダー課税の規則だったけど、原則、このE&Pには課税済留保所得は含まれない。それはそうで、実際に分配しても課税済所得は配当にはならないからだ、従来のSubpart Fの世界では、合算課税が起こればその分CFC株式簿価が上がり、同額が課税済所得なって、というのが常識だったんだけど、留保所得一括課税にしても、GILTIにしても、米国株主側で複数のCFCの数字を合算してしまうので、従来のようなきれいなフォーミュラが成立しない。で、Section 1248では単純に米国株主が過去に実際に合算課税されてる課税済E&Pをみなし配当原資には加味しない、って規定されてるんだけど、留保所得一括課税では、合算されてないのに課税済所得になっているE&Pが存在し得るので、ここをSection 1248でどう考えるのか、というのは不思議な部分があった。

すなわち、留保所得一括課税時には、米国株主が複数のCFCを保有し、他のCFCのマイナス留保所得でプラスの留保所得を相殺している場合、相殺されたプラスの留保所得も「課税済」と取り扱われるけど、この部分は実際には米国株主側で合算されていないので、みなし配当の原資となり得るの?まさか、っていう話しだ。そんなのSection 1248のアップデートし忘れじゃない?とか、いやいやその部分は配当になり100%所得控除の対象と考える楽観的な解釈もあり得るし、またはそもそも実際に分配しても100%所得控除の対象にはならないんだから、簿価を下げるでしょ、みたいなアプローチもあり得た。最終規則では、チョッと語弊があるけど、Section 1248のアップデート忘れに近いスタンスで、他CFCのマイナス留保所得で相殺された留保所得も、実際に合算課税されたE&P同様にみなし配当原資には加味しないと規定している。法文と不整合だけどなかなか度胸あるね。

次はビックリしたCFC株式税務簿価の調整選択時の金額制限。これは面白すぎるので次回。

Tuesday, January 1, 2019

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(5)

2019年、明けましておめでとうございます!昨日、大晦日は例年より気温が高めっぽいから、43rd Streetとかで12時間待つみんなもチョッと楽かも、とうかつなことを書いてしまったけど、結局午後早めからかなり雨が降り始めてTimes Squareでカウントダウン待ってるみんなは大変だったんじゃないかな。あれだけの人が殺到しているので傘は禁止。ということはポンチョのみが頼り。それでもストリーミングで見る限り、たくさんの人が参加してた。せっかくだから一度はライブでって思うこともなくはないけど、ティーンだったり20歳代の頃なら話しのネタに頑張って参加したかもしれないけど、今となってはコストパフォーマンス的に割が合わない気がする。

ちなみにエンパイアステートビルのライトは今でもクリスマス色って昨日の昼時点で書いたけど、大晦日の夜、年越しのタイミングが近づいてくると7色のRainbowになり、普段でもたまに白い光が下から上に流れるようにライトアップされる時間帯があるけど、それと同じように7色の光が滝が逆流するみたい下から上に流れていて凄い綺麗。ミッドタウンはどこに行ってもエンパイアステートビルとクライスラービルが上から守っててくれるみたいで心強い。Freedom Tower(いまでは名前変わったけど)とかParkと56のコーナーにDrakeホテルを壊して建築された超高層アパートの432 Park Avenue Condominiumsとか、他国にももっと高い摩天楼がいくら建ったとしても、エンパイアステートビルとクライスラービルのエレガンスは唯一無二。

で、新年早々BEATに戻るけど、BEATの対象となる納税者かどうかの判断に関してあれこれとポスティングしている途中で年が変わってしまった。売上基準はだいたいカバーしたんじゃないかと思うので、今日はBase Erosion%に関して少し。お正月特番としては地味だけど、売上基準を優に超える法人にとって、Base Erosion%は最後の砦。これを3%未満とすることができるかは重要な分かれ道。米国企業も含めて周り様子を見ていると、取りあえず2017年課税年度ベースで何%くらいになるか試算し、2018年が経過するにつれて、2018年に予想されるマテリアルな差異を取り込んでFine Tuneして、%を予測、場合によっては調整、というのが一般的な対応のようだ。

税制改正でM&A時のタックスDD項目が大幅に増えたり、今までとは異なる視点が鍵となってくることがあるけど、買収後のBase Erosion%もそんな検討のひとつ。ターゲットとグループ間取引が存在しないケースでは、分母となる控除は増えるので、Base Erosion%的にはグッドニュース。しかも、「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(2)」で触れた通り、Aggregateグループの合算計算は、法人の期末時点でグループ構成を判断するので、期の途中で買収したターゲットの金額もまるまる取り込んでグループ合算Base Erosion%を判断することができるはず。ただ、逆に売上基準も同様に期末時点でAggregateグループに属する法人の売上は、期末直前に買収したような法人でも強制的に過去3年の平均に加味されるので、こちらは売上が大きくなって不利。

Base Erosion%が3%未満かどうかが勝負、ってさっき書いたけど、これはあくまで一般法人の話しで、金融機関を含む連結納税グループには特別に厳しく、3%の代わりに2%が適用される。いつ2%で対象になるかっていう点は異なるグループコンセプトが混在しているので結構分かり難い。法文では「銀行または証券ディーラーが含まれる連結納税グループのメンバー」は2%となっている。ちなみにBEATミニマム税を算定する際に使う税率も年度によって5%、10%、12.5%となるけど、銀行や証券ディーラーを含む連結納税グループのメンバーには6%、11%、13.5%とやはり1%厳しくなっている。法文は、銀行や証券ディーラーが連結納税グループの一メンバーの際に適用があるような文言となっていて単体の話しには触れられていない。また、厳密に言うとここで言う連結納税グループは、連結納税の選択が可能なグループのことを意味し、実際には余りないケースだけど、連結納税可能なグループであれば連結納税を選択していなくても同様の取り扱いとなる。連結納税可能なグループは米国法人親会社を起点に80%以上の議決権および価値に基づく資本関係で結ばれる米国法人グループだ。なので、必ずしも自分が銀行とか証券ディーラーでなくても2%のBase Erosion%が適用されることがある。ちなみに、ここで言う証券ディーラーは1934年証券取引所法(Securities Exchange Act of 1934)の第15条(a)に基づき登録される証券ディーラーを意味する。

さらに財務省規則案では、連結納税グループに属する銀行や証券ディーラーをメンバーに持つAggregateグループにも2%を適用するとしている。Aggregateグループは、連結納税グループより広範なので、この規則は法文だけでは読み取れない追加の厳しい規定となる。

また、財務省規則案にはAggregateグループの売上合算額に占める銀行または証券ディーラーの売上が2%未満の場合には、当該Aggregateグループには銀行または証券ディーラーは含まれないかのように取り扱うという少額免除制度が規定されている。Aggregateグループと連結納税グループは異なるグループ定義なので、ここの部分は解釈が難しいけど、財務省規則案はその直後に、銀行や証券ディーラーを含む連結納税グループにAggregateグループが存在しない場合には(連結納税グループ以外にAggregateグループのメンバーがいない場合と理解するのがいいだろう)、連結納税グループの売上に占める銀行または証券ディーラーの売上が2%未満の場合には、同様の少額免除を適用し、当該連結納税グループには銀行または証券ディーラーは含まれないかのように取り扱うとしている。このことから、Aggregateグループに占める銀行または証券ディーラーの売上が2%未満の場合には、当該Aggregateグループ内に存在する銀行または証券ディーラーを含む連結納税グループの銀行または証券ディーラーの売上が2%以上でも、Aggregateグループベースの少額免除をもって、連結納税グループも3%のBase Erosion%に基づく判断をしてよろしい、ということなんだろう。なんか結構思ったよりも難しいね。

という訳で新年早々のBase Erosion%でした。