Tuesday, December 31, 2019

2019年大晦日「ゆく年くる年」

2019年も残すところ数時間。日付変更線の向こう側、日本では既に2020年を迎えているはず。こちらTimes Squareは恒例のBall Dropでもちろん午後からオフィスも立ち入り禁止。立ち入りOKでもこんなややこしい日にあの辺りに行くつもりは毛頭ないけどね。Broadwayには「20」っていう大きな数字のオブジェみたいなのが設置されたりして、Times Squareもカウントダウンの準備万端整いつつある感じ。今年のカウントダウンパフォーマンスの「トリ」はPost Maloneらしい。古くは、って言っても2~3年前だけど「Congratulations」とか、それよりチョッと最近の「Sunflower」とか良いよね。最近良くプレーされる「Circles」もいい曲だし。Circlesって、てっきり「Run Away」っていうタイトルだと信じてて、「最近良く聴くRun Awayって曲いいよね?」と言っても「Run Away?」みたいな反応だったのでサーチしたらタイトルはCirclesだった。最近のMale Vocalってこういう感じの曲が多い気がする。Ed SheeranがKhalidとコラボしてる「Beautiful People」も似た感じの曲調だし。

Ed SheeranのBeautiful Peopleって、内容的にはJohn Lennonがその昔、(少なくとも米国のCapitol Records的には)The BeatlesのMagical Mystery Tourに収録されてた「Baby You’re Rich Man」で徹底的にバカにして軽蔑してるように聞こえる「Beautiful People」と同様の類の人たちを歌ってるような印象。John Lennonの歌詞に関してはいろんな解釈があるようだけどね。Baby You're Rich Manのコーラス部分はMcCartneyが付け加えたって言われてるけど、元々のJohn Lennon部分はタイトルが「One of the Beautiful People」だったそう。他にもJohn Lennonが歌うSexy Sadieとか、And Your Bird Can Singとか、Cynicalな感じの歌詞がJohn Lennonっぽくていいね。Ed SheeranのBeautiful Peopleは、米国の都市の中でもL.A.でしか感じることができない、あの独特の皮相的で表面的なバブリー・カルチャーが良く表現されてる。Rented Hummers…(苦笑)。英国出身のEd Sheeranからしてみるとその浅さにピックリだったのでは。

で、Pop MusicよりもズッとExcitingなクロスボーダー課税のここ一年に目を向けると、2019年12月で米国税制改正TCJAの可決から2年が経過したことになる。う~ん、まだ2年なんだね、TCJAは米国クロスボーダー課税の在り方を根本から変えてしまったので、それ以前の世界を思い出すのに苦労する。個人的には2017年12月22日を境にこの世の中BCとADになっているような感じ(大げさ?)。本当のBCもそうだけど、BCの世界に身を置いている時は自分がBCに居るってもちろん知らない訳だけど、2017年までのクロスボーダー課税制度と格闘してた自分たちも、振り返ってみるとそんな感じ。

普通の人にはおおげさに聞こえるかもしれないけど、ここ2年はWhole New Worldで、実際寝ても覚めて、四六時中TCJA一色だったと言える。他の規定より一足先に2017年課税年度より適用が開始されたSection 965の留保所得一括課税を除くと、GILTI、FDII、BEAT、163(j)、Anti-Hybrid、960下のFTC、諸々のその他のTCJA新規定は、2018年課税年度から適用となった。2019年は、そんな「TCJA Fully Loaded」となる2018年の申告書を実際に作成する最初の年。米国の申告期限は延長が当たり前なので、提出まで結構間が開いていて、基本12月決算となる米国法人は翌年10月15日、3月決算だと、翌年の1月15日となる。したがって、米国法人は暦年2018年12月の申告書を10月に提出したばかりだし、2019年3月期(これは2018年課税年度に当たる)を採択している日本企業米国子会社の申告書はようやくドラフトが完成している(といいけど?)ようなタイミングと言える。実際にはBE%や、GILTIバスケットに配賦する支払利息の金額が未だに定まってなかったりするようなケース満載だろうけどね。

米国法人による申告書作成コンプライアンス業務は従来から負荷が高かったと思うけど、TCJAで更に激しさを増している。一度、実際にTCJA下で申告してみることで、どれだけ大変で、かつどれだけ追加税コストが発生するのか、だいたい当りも付き、また、財務省規則も規則案も含めると徐々に大物は公表されつつあることから、今後はTCJA下のADの世界におけるOptimization的なプランニングのフェーズに入っていくことになる。考えただけでワクワクものだ。もちろん米国だけでなく、欧州等の他国やBEPS系の動きも加味して複合的な検討が必要となる。

で、今日は大晦日なので、TCJAを受けて、周りで米国MNCを担当しているチーム、DCの重鎮、NYやDCの大手弁護士事務所のタックス部門パートナー達、その他の専門家との会話から見て取ることができる、2020年以降に予想されるプラニングのトップ5リストで、一年の締めくくりとしたい。ちなみに、思いつくまま書くので順不同だからね。また、各々の検討は相互に影響があり、個々に検討しても意味がなく、全てを複合かつ総合的に、また定量モデリングしながらベストなストラクチャー等を決定していく必要がある。

【FTC】 GILTIバスケットと支店(QBU)バスケットの2つの新規導入でクロスクレジットがより困難に。しかもGILTIバスケットは繰越・繰戻不可なので二重課税のリスクが増大。Section 902のPooling廃止で毎期、GILTIやSub Fを含む各所得タイプに適切に帰属すると取り扱われる外国法人税のみがFTC対象という厳しいマッチングのNew World。これらの理由も含め、FTCプラニングは今後のますます緻密なモデリングに基づいて行う必要が増してる。GILTI後のクロスボーダー課税の世界ではFTCの最大限化は国際課税プラニングの主役になる。FTCバスケットにExcess CreditとExcess Limitationが混在する場合にはFTCの最大限化のためのクロスボーダーReorganizationも視野に入れたプラニングが開始されるだろう。他のプラニングも同様だけど、各CFCの課税ポジションやプロファイルが毎年同じじゃない部分をどう定量的に加味するかはチャレンジング。

【GILTI】 クロスボーダー課税の既成概念を打ち破ったGILTI。FTC計算時の米国内での費用配賦の関係で米国側の負担が思ったよりも大きいケースが多い。GILTIは、コンプライアンス時にとてつもなく複雑な計算を伴うが、最終規則も出て一応基本的なメカは明らかになったといえる。従来のSub Fだけの世界ではCFCがプラスかマイナスかってい言うのは余り気にならなかったけど、GILTIの世界では、Tested Lossを生み出すCFCはQBAIも使えないし、法人税もフローアップして来ない。GILTI非課税枠を作り出すみなし動産リターンから差し引かれる特定支払利息は、一定額を超えるとTested LossのCFCの額も関係してくるなど、Tested Lossが見込まれるCFCはCTBして他のCFCの支店化するなどのReorganizationの検討がいよいよ実践フェーズに入りそう。ちなみに、規則案として公表されている「High Tax Exception」がどれほど使い勝手いいものに変更されるかは、今後のGILTIプラニングを大きく左右。

【BEAT】 CFCの所得を毎期合算するGILTIの世界で、その悪影響を低減させるのは、Section 250の50%所得控除と同時に何と言ってもFTC。せっかく費用配賦とか工夫して、多額のFTCを計上することができても、BEATミニマムタックスを算定する際に、通常の税額(FTCを引いた後)と比較する修正BEATタックスにFTCは認められない。BEATミニマムタックスを支払うということはFTCが無に帰することだから、何とかBEATの適用対象にならないようなプラニングが重要となる。BEAT規定の公表当時から注目されている、SCM、CSA時の契約関係の見直し、ロイヤルティ等の費用の棚卸資産計上、適格デリバティブ、Debtの外部化、などに加え、規則案として公表されている損金算入の自己否認でBase Erosion %を3%未満とするための策の探求が続くだろう。

【キャピタルストラクチャー】 米国MNCの定石だった全ての借入を米国で行う従来キャピタルストラクチャーは、法人税引き下げ、新Section 163(j) 、Anti-Hybrid、BEAT、等の影響で再検討要になっている。Section 956を使った最後のPoolingを利用したFTCプラニングも規則で不可能になっちゃったし。Section 163(j)の規則は草案の状態にあるけど、最終化の暁にはCFCへの適用法がこのままか、また極限に広いSection 163(j)対象の「利息」の定義に何らかの緩和が見られるか、等、注目度が高い。

【M&A】 Sub CやSub Kの規定はTCJAで余り影響を受けてないけど、TCJAで中古資産でも一定要件下で適格資産には即時償却が認められるようになったことから、ステップアップの検討価値がアップ。以前から、M&Aの税務ってバイヤー側のステップアップとセラー側の二重課税回避、この2点の綱引きに基づく検討がかなり主だったと言えるけど、その傾向に拍車がかかっている。ただ、ステップアップしても償却を取れないと意味がないので、特にGoodwillとかに関してはAnti-Churningとならないよう、ステップアップのさせ方に要注意。ファンド系のM&AでRollover株主が関与する場合は特に慎重にストラクチャーを検討する必要があるし、Rollover株主に帰属する部分も含めてアップフロントに100%含み益を認識するような形態はできれば避けるように。日本企業による米国M&A時にも、ターゲットがS Corporationだったりパススルー扱いされているLLCとかのケースも多いので、この辺りはよく検討する必要あり。でも、みんなが即時償却すると税務簿価が取得時にゼロになるから、次のM&Aでバイヤーにステップアップをデリバーする際のセラー側のコストは当然高くなる傾向にあり、より慎重にモデリングしないとね。

ということで2020年も引き続きよろしくお願いします。

Saturday, December 28, 2019

863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案 (3)

ここ2回のポスティングで、JBL、じゃなくてSection 863の規則案のうちSection 863そのものに関する部分はだいたいカバーしたので、今回はいよいよ規則案が真に意図すると思われる神髄部分に関して。

最初のポスティング「863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案」で触れた通り、所得の源泉地は、米国の納税者にとってはFTCの最大限化、日本企業のような外国法人や非居住者にとっては、所得が米国で課税対象となり得るかどうかを判断する際の最重要検討事項のひとつとなる。租税条約を適用する前の、米国内法に基づく申告課税の対象判断は、外国法人が米国事業(USTOB)に従事しているか(または従事しているとみなされるか)、そしてその場合はUSTOBに関連していると「法的に」取り扱われる所得(ECI)は何か、というステップで検討する。その際、所得の源泉が米国かどうかは大きな分かれ道だ。所得の源泉やECIの概念は16th Amendmentの1913年とは言わないけど、1936年頃の国際課税制度、最低でも1966年くらいまで遡って税法の歴史を紐解かないと理解が進まないとてつもない法体系に基づく。もちろん、真面目にそこまで遡って話し始めると、Larry Carltonどころの話しでなくなり、一生この話題でポスティングし続けるハメになるので、ごく軽く、英語で言うところのTangentiallyにSection 863との絡みが分かる程度、と言っても相当難関だけど、触れてみたい。

という訳で、今日もSection 863の規則案が公表されて以来ハマっているLarry Carltonセットアップして・・・、と。それにしても数十年ぶりに聴くLarry Carlton。Gibson 335ってVersatileなギターだよね。歪みなしでも最高だし、Point It Upみたいに歪ませてもいいし。Larry Carltonだってもちろん他にもいろんなギター使ってるんだろうけど、やっぱりSignature的には335。Room 335とかで使っているアンプはなんなんだろう。その昔ライブで見た当時は、子供の頃Marshallの次に欲しかったMesa/Boogieを使用していたのを覚えてるけど。スタジオでもそうなのかな。335ってFusionや昔のRock’n‘Rollだけでなく、例えばFenderストラトのイメージが定着してるRichie Blackmoreとかも昔、愛用していて、Blackmoreは当然Marshallにプラグインして、ライブで最高の音質やテクニックを披露している。特に昔、海賊版や、たまにFMとかでもエアーされていたUKライブの「Wring That Neck」とか。この曲、なぜか米国では「Hard Road」ってタイトルなんだけど、YouTubeとかで手軽に動画にアクセスできる今と違い、当時は動画どころか、静止画像も見たことなかったから、Blackmoreだから当然ストラトキャスターで結構ギブソンみたいな太めの音を出してるんだな、って信じてたんだけど、その後ビデオを見る機会があったら335なんだよね。なるほどね、って感じだった。

チョッとまた変な話しになりかけてるので、早々に軌道修正するけど、米国源泉のFDAP系の所得、すなわちほぼ全ての通常所得、やキャピタルゲインがECIとなるかどうかは、資産テスト、活動テストを適用して行うことができる。これはPE帰属所得の認定に似ていて、USTOBで使用している資産やUSTOBの活動内容と照らし合わせる「事実関係」に基づく判断。なんで、法的判断とは言え、事実認定に依ることからここのConnectionは納得感がある。この部分こそ、今日我々が知っているECIの「Effectively Connected」を実現している部分だろう。USTOBが存在する場合、資産テストや活動テストの適用できない所得、すなわち棚卸資産を含む動産の譲渡益は米国源泉だと自動的にECIとなる。これは過去の遺物的な存在。さらに、米国不動産持分譲渡に至ってはFIRPTAで、他にUSTOBがあってもなくても、不動産所有自体がUSTOBでもなくても譲渡益は常にECI。

チョッとややこしいのが棚卸資産。余り深掘りすると30回シリーズとかになりそうなので、どれだけ要点絞って話せるかチャレンジングなところだけど、まず、米国人と外国人で所得の源泉地の決め方が異なるっていうのがひとつ目のポイント。ここで言う外国人は米国外法人とTax Homeが米国にない外国人および米国人も含むから要注意。日本企業の切口ってことで、今日は外国人の視点からのみ話しておくけど、外国人が棚卸資産販売からの所得源泉地を決める際、もし販売益が、その外国人が有する米国事務所に帰する所得っていう位置づけになると、通常の所得源泉地の決定法である、所有権移管場所とか、生産活動が関与するものはSection 863とか、は一切無視して米国源泉になる。このルールは正確には棚卸資産ばかりでなく動産一般に適用される。動産って言うのは、不動産ではない資産のことで無形資産を含むけど、償却資産や無形資産には更に特別な規定がある。

で、今度は動産一般ではなく、棚卸資産に限定して、仮に米国事務所に帰する所得でも、同時に米国外の事務所が重要な関与をしていて、かつ棚卸資産が米国内消費ではない場合(なんかFDIIみたいだね)には、米国事務所ルールの適用除外対象となる。この除外規定を適用する際に勘違いしてはいけないのは、あくまでも米国事務所規定が適用されそうになった場合に、同規定から除外するとしているだけで、これをもって自動的に米国外源泉となるとは限らない点。すなわち、米国事務所ルール適用前の、通常ルールに戻るだけの話し。となると、生産に関与していない外国人にとっては所有権移転場所の話しなので、FOBとかCIFとか、たくさんある貿易実務用語、さらにそれらの用語の直後にどこのPortや工場の名前が付くか、とかIncoterms系の知識が求められることになる。

米国事務所に帰する所得のくせに、米国外事務所が同時に重要な関与を持つってどういうこと?って思うかもしれないけど、ここで言う「重要な関与」すなわちMaterial Participationは比率的にMajorityやPredominantよりも低い関与でもその存在が認められるため、このような事実関係があり得るし、実際に租税条約を米国と締結していないシンガポールとか、または締結したつもりだけど米国上院が批准していないチリとかの納税者には頻繁に使用される除外規定となる。

除外規定が適用できない場合、米国事務所に帰する所得が米国源泉となるんだけど、ここからが更にトリッキー。米国事務所を有しているのか、またそこにいくらの所得が帰するのか、の判断は、外国源泉所得を例外的にECIと取り扱うECI側の規定の「考え方(The principles)」を参照して決定するように、と法文に規定されている。で、この考え方の中に、米国事務所に帰すると取り扱う所得は、米国で販売されていたら米国源泉所得となったであろう金額を上限とする、としている部分がある。う~ん難関。そもそも、米国事務所規定は米国源泉所得かどうかを決めるためのものだけど、それを外国源泉の棚卸資産販売益がECIに当たるかどうかの判断をする際のテストの考え方を流用するっていうところからして、どこまでの「考え方」を流用するのか、適用時にかなり解釈の余地が出てくる。The principleを適用するように、という規則は米国税法の条文としてはかなり珍しいと思う。IFRSとかOECDは厭わずに使用するかもしれないけど、基準が明確でないので争点となりがち。でもここではそんな概念の適用を議会が規定してしまっている。

ここまでの議論で既に相当訳分からなくなってきたのでは、と推測するので、この法体系の更なる背景とかを今後数回別にポスティングとかしても、益々混乱させてしまうリスク大で、仕方なく結論めいたフェーズに入るけど、この考え方を文字通り適用し、外国人が米国で販売する棚卸資産からの所得が米国事務所に帰するにもかかわらず、米国外で生産しているケースでは改定後のSection 863では、全額米国外源泉となるのだから、米国事務所を有している以上、米国事務所ルールは適用こそするものの、そこに帰する所得はゼロっていう取り扱いが可能になった、という納税者側の解釈というかプラニングがTCJA可決当時からインバウンド界で囁かれていた。

財務省は今回の規則案で、米国販売だったら米国源泉所得となる額を上限とするという部分は、外国人が有する米国事務所に帰する棚卸資産販売からの所得決定時に流用する「考え方」には含まれない、と断じ、そのような適用はECIそのものの考え方、その他の立法趣旨から「不適切」としている。「不法」と言い切れないところが苦しいところかもね。

ただ、米国外で生産している棚卸資産を外国人が米国で販売し、その際にその外国人の米国事務所が関与している場合には、そこに帰する所得は「販売機能」部分だけに限定するのが適正であるとし、生産部分は除外するという点を財務省規則案で明確にしている。この点の明確化は英断と言え、高い評価に値する。さらに所得の帰属先にかかわる移転価格的な不確実性を排除するため、販売機能に帰属する部分は原則所得の50%とする、とも規定している。え~、タイムトリップして、Section 863が改定される前の按分規定同様の考え方を今から取り入れるんだね。従来、旧Section 863が存在した時点では生産と販売は50%・50%で按分するのが一般的だった点は「863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案 (2)」で触れたけど、当時は同様の按分法をインバウンドの米国事務所帰属の棚卸資産販売に適用するという一般規則はなかった。にもかかわらず、Section 863が改定された途端に、廃止されたばかりのSection 863下の按分方法を取り込む当たり、当ポジションの皮肉さを物語っている、というか異論もあるだろうけど、財務省側の解釈やResult Orientedな部分は十分に理解できる。ある意味、寛容な判断とも言えるけど、下手すると100%外国源泉になってしまうような解釈も可能だっただけに最大限の譲歩なんだろうか。

まだまだ書きたいことは山積みだけど、Playlistも後半に差し掛かかり、曲調がさまよい始めてる観があるので、Section 863の財務省規則案はこの辺にして、Lex沿いのMidtownインド街に本場美味のチキンティッカマサラでも食べに出発することにする(どうでもいいよね)。ちなみにこの規則案、公告後に終了する課税年度から適用が原則だけど、納税者の選択で早期適用も可能だそうだ。

Friday, December 27, 2019

863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案 (2)

前回のポスティングでは、クリスマスイブ前日にサンタさんではなく財務省から届いたプレゼント、Section 863の規則案に触れた。というか、規則案を読む前に、どうやって読み物にフォーカスするための環境をセットアップするか、っていうどうでもいい話しから延々と脱線してしまった。

でも、結局何とか読むことはできて、所得の源泉地を規定するSection 863にかかわる規則案ってことで、どちらかというと低めのExpectationから始まったんだけど、とんでもない話しで、インバウンドの米国税務にかかわる自分のような者にとっては、洞察力に富んだExcitingな読み物となった。まるで、初年度特別償却を規定するSection 168(k)の規則を渋々読み始めて、特定のフルーツやナッツも適格資産なんだ~、ってチョッと眠くなり掛かった頃、実は(h)(10)、336(e)、Busted 351や355(Larry Carltonの話しし過ぎて最初335って書いてしまいました)だけど(e)のアンチ・モーリストラストで法人レベルでは課税される取引との関係とか、パススルーの743とか、M&Aノリの規定がさく裂してる部分があって急に覚醒した時とか、中学の頃、ガールフレンド、というか女の子の友達がロミオとジュリエットの映画(もちろん凄い昔のオリビアハッセーのやつ)の再上映を2本立ての1本でやってるから行きたいという話しとなり(もう一本は何だったんだろう、まさかよく見たEasy Riderじゃないよね。組み合わせ変だもんね)、確か飯田橋だか神楽坂とかあの辺のいわゆる名画座に出かけ、最初はロミオとジュリエットなんて全然期待してなかったんだけど、後半スクリーンの前に釘付けになってた時、みたいな感じだ。

で、チョッと脱線ついでだけど、ようやくセットアップも完了し、East Riverの向こうのQueens方面が赤いどころか、完全に朝になりそうな頃、Larry CarltonのShuffleプレーで、ナンとRobben Fordとの共演ライブが出てきた。自分で作るPlaylistと違って次に何が出てくるか分からないPlaylistは未知との遭遇でワクワク。Robben Fordね~。懐かしい。IRSの大きなセンターがあるFresnoや、地上最大の巨木の多くが生えているセコイア国立公園の近くWoodlake出身で、L.A. ExpressやYellojacketsで有名な、Jazz Fusionと言われているけど、Larry CarltonとかNorman Brownとかと比べると、むしろBlues、それもかなりストラクチャーされたフレーズで構成される、カチッとしたBluesギタリストって言った方が近いセンス抜群のギタリスト。

中学生高学年から高校に掛けて、渋谷とか原宿ではなく、チョッとオフな裏道っぽい隠れ家を知っているのがCoolみたいに信じてる時期があり、皆でムキになってメジャーじゃない場所を探索したりしてたけど、高田馬場とか、今思うともしかしたらかなり神楽坂方面に到達してたのかな、ジャズ喫茶(今では死語?まだあるのかな)と言われる、大概、地下の不健康そうなロケーションにあり、会話はとてもできない音量で最新のFusionとかの「レコード」を掛けてる店が複数あった。そんなお店のひとつでL.A. Expressを聴いた記憶がフラッシュバック。Back Pageとか、隠れ家だけどもう少し明るくてメジャーで格好いいカフェバーに移り気する前のフェーズ、日本の経済もまだまだこれから高度成長っていう予感を感じさせてくれてた、平和かつハイテンションな時代だ。

大音量で音楽をかけるカフェと言えば、もう少し後年だったかもしれないけど、地元、自由が丘にチャーリーブラウンって店があって、やっぱりそこも地下なんだけど、JBLのStudio Monitor、アレなんだったんだろう、4367かな、がド~ンと置いてあり、そこでどちらかというとRock系のレコードを凄い音量で聴かせてくれるお店があって、そこには一人でチョッと気分を変えて勉強したりする際とかに行ったりしてた。

JBLのモニター(要はスピーカー)と言えば、大学に進学して間もない頃、親しくしてもらっていた先輩がいて、ラディックのツインバスやジルジャンンのシンバル一杯持っててCozy Powellみたいなドラムをたたく凄い先輩だったんだけど、その先輩がナント、千歳船橋の自宅の自分の部屋にJBLの4367を置いててビックリしたのを思い出した。街中の住宅地でどれだけ大きな音で音楽聴いてるんだろう、っていう驚きもそうだったけど、JBLの4367なんて当時でも100万円とかしたと思うので、そんなお金良くあるね、っていうのもビックリだった。本人曰く、月賦で買ってて、真面目に生活してれば全然怖くないよ~、みたいな説明だった。その説明自体、良く分からなかったけど、良く遊びに行った勢いで英語で言うところのSleepoverとなり、夜中にRushとかを大音量で聴かせてもらえたので、まあいいか、って納得してた。今ではOnlineで、Google HomeとかAlexaとかで音楽聴くけど、やっぱり昔の「Turntable」で針からJBLのStudio Monitorとかを通じて聴く音の方がベターと思っちゃたりするのは昔の人、って証拠なんだろうね。

で、そのJBLの先輩はいろいろと面白い人で、別の先輩が、当時、ホンダベルノから登場したばかりの「Specialty Car」初代プレリュード、リトラクタブル・ヘッドライトになる前の初期のやつで歴代で一番Coolなやつ、を持ってたんだけど、JBLの先輩が「この車は実は走り屋にいいんだよね」とか言って、人の車だというのに自らドライブして、夜中に甲州街道から山手通りや青山通り経由で外苑の方までカウンターステアとか当てまくって、当時で言うところの深夜レストランのひとつだったO&Oとかにスペアリブとか食べに行ったりしてたんだけど、実はその先輩、免許持ってないことが後年発覚してビックリ。無免でカウンターステア当てて人の車使って公道走ってたんだね、っていうか僕もそんな車に乗せてもらってたんだね。凄い人だった。

で、凄いと言えば、財務省からの素敵なクリスマスプレゼントとなったSection 863の規則案。基本的には、2017年の税制改正、TCJAで法文そのものが改定され、納税者自らが「生産」する棚卸資産から生じる販売益の所得源泉地が、改定前は「生産場所と販売場所に基づいて配賦・按分」して決定、すなわち部分的に生産場所源泉、他の部分は販売場所源泉、だったものが、生産場所のみを基に決定という規定に変更になったことを受けて、財務省規則の更新というのが今回の規則案の建付けとなる。

でも、実際にはそんなことよりも、Section 863の規則変更を利用したプラニングに早々に網を掛けたかった、というのが真の狙いだろう。この点は後述。

まず、Section 863が源泉地を決定する所得だけど、「米国内で生産され米国外で販売」、または逆に「米国外で生産され米国内で販売」される棚卸資産から生じる販売益となる。米国内や米国外で生産も販売も双方完結している取引に基づく所得は、当然、全額米国源泉だったり、米国外源泉だったりするからSection 863の規定の対象にはならない。

上述の通り、TCJAでSection 863が改定される前は、Section 863対象の棚卸資産の販売益の所得源泉地は生産場所と販売場所に基づいて配賦・按分と規定されていた。その際、法文そのものには具体的にどのように配賦・按分するべきか、という算定法は規定されていなかったけど、旧来の財務省規則で原則は50%・50%、納税者の選択で「会計帳簿および記録類」等に基づく個別配賦も可能というアプローチで、基本的には50%・50%で按分するのが通常だった。それがTCJAで生産場所のみを見るように変わったというものだ。

例えば、米国企業がベトナムで自ら生産し、米国で販売している棚卸資産があったとすると、そこから生じる所得は、従来、50%米国外源泉所得(生産部分)、残りの50%は米国源泉所得(販売部分)だったものが、改定後のSection 863では全額外国源泉所得となる。逆に米国で生産し、外国で販売している棚卸資産に関しては、従来は半々だったのが、改定後のSection 863では全額米国源泉所得となる。

生産活動が全て米国外、または米国内の場合にはこのルールだけど、生産活動そのものが米国内外の双方にわたる場合もある。で、そんな時は改定後の863条でも所得を按分する作業が必要となる。当然、従来から同様の事実関係は想定されていて、その際は、生産設備の税務簿価に基づいて按分することってなっていた。今回、規則案では、税務簿価に基づく按分法は継続して適用するとしている。ただし、TCJAで初年度特別償却が中古の生産設備の多くに適用されることとなり、特別償却やMACRSは主に米国外で使用される資産には適用がないことから、通常の償却法を基に税務簿価を算定すると、自ずと国内生産設備の税務簿価がより圧縮される結果となる。となると、所得の多くが経済的には不合理なレベルで外国源泉に按分される懸念が生じる。そんな背景で、按分の基として使用する税務簿価は、定額法に基づく特殊なAlternative Depreciation System(「ADS」)ベースに変更となった。GILTIもFDII目的でもADSベースの償却が必要だから、納税者としては最近ではADSはすっかりお馴染みだね。

ここまでは、フ~ン、そうなんだね、って感じの規定だけど、この後に続く、非居住者が米国外で生産した棚卸資産を米国内で販売する際の取り扱いこそが今回の規則案の神髄だろう。この話しは、ECI課税の詳細を理解しながら考えないといけない、実は超Deep Purpleなもので、ブログのポスティング位では到底解説し尽くせるものではないんだけど、基本的な背景に触れ、それがなぜSection 863の新規定の影響を受けたりするのか整理してみたい。今回もJBLとかで脱線してしまったのでここからは次回。

Wednesday, December 25, 2019

863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案

クリスマスイブからクリスマスにかけてマンハッタンは最高のお天気で、気温も40度台(℃で言うと10度弱)とNYCにしては暖かく、普段の喧騒が嘘のような静かな街をドライブしたり散歩したり、NYCの魅力を満喫できるホリデーとなった。NYCって道は汚いし、インフラもボロボロ、混んでて天候も良くないので、観光とか出張で来ると何コレ、みたいな印象を受けることがあるかもしれないけど、しばらく住んでると他の都市では感じることができない「No one cares who you are」的なLiberation感覚にはまり、なかなか脱出できない体になってくる。いろんな意味で厳しい環境の街なので、誰もが直ぐに好きになる場所じゃないけど、高層ビルの数、世界各地のレストランの豊富さ、金融センターとしてここを通過するお金の量、その他の物質面だけでは計り知れないLiberateされたスピリット面で、世界でも特殊かつ究極のUrban Cityだと思う。また米国税務のような業界に身を置くには、税務専門のプロフェッショナルだけでなく、M&A弁護士や投資銀行等のInfluencer的な方たちとかと常にライブで情報交換できる点も大きな魅力。DCからも近いので政府系の方たちもしょっちゅうイベントに参加してくれるし。彼らを見てると今日も厳しいマンハッタンだけど、もっと修行しなきゃっていうモードにさせてくれるものだ。

一方のカリフォルニアのMDRはというと、今週はどちらかと言うと寒めで、最低気温がNYCの最高気温と同じ位まで下がったりしてる。裏のBike Pathを抜けてBeachの方に散歩する道も、50度台だとなぜかとても寒く感じる。Midtownで50度台だと暖かすぎる感覚に陥ったりするのでこの差は不思議。こちらはNYCみたいなUrbanなLiberation感覚はないけど、乾いた空気でLazyなRetirementモードにさせてくれる。

そんなLazyなホリデーの予感も、クリスマスイブ直前に公表されたSection 863の財務省規則案で台無し。年の瀬も押し迫ったこの期に及んで、こんなニッチな規則案を公表してくるとは。しかも何回も読み直さないと危なくて、これだけの理解で一生掛かりそうなSection 865との関連に触れてくれていて、863と865のInter-Actionにかかわる議会の立法趣旨、財務省の以前からの解釈、などノンフィクションの歴史が盛沢山で、863条のくせに(?)って油断して読み始めた割にInbound系の課税関係を考える上でとても役立つ思いの外凄い規則案だった。

で、公表を受けて早速、熟読せざるを得ないはめに陥ったけど、この手の面倒な規則を読むのは夜明け前の一時がピッタリ。East Riverの向こうのQueensから日が昇り始める前に、コーヒー(EYのNYC事務所のみんなはどんなコーヒーか分かるね)とSpotifyでBGMもセットしてフォーカスっていうパターンだけど、今日のコーヒーはブラジルかコロンビアかさんざん迷い、かつShuffleプレーも、集中度を増すため歌詞のない早朝向きということで最終的にはJim HallかLarry Carltonに絞りこんだものの、こっちもさんざん迷って、なかなか規則に辿り着かない。

Jim Hallは言うまでの無い大御所。Larry Carltonは今思えばCAのTorrance出身なんだよね。Steely Danとかのイメージが強いので、ノリはニューヨークっぽいけどね。ハリウッドに自ら作ったRoom 335で多くのレコーディングをしていたギタリストだ。まさしくそのスタジオ名を曲名としているRoom 335で始まるアルバムが有名だけど、それまでのCrusaders、Steely Danとかその他のスタジオワークとかに魅せられてた友人も多かった当時、あのアルバム、特にPoint It Upとかは、賛否両論で、喧々囂々だったのを覚えてる。個人的にはめちゃイケてる曲でテクニックも抜群でいいじゃん、って思ってたけど、人によってはロック過ぎるというか、フュージョンっぽさに欠けるというか、アル・ディメオラに対抗するような速弾き過ぎるというか。未だ子供だった当時はいろんな見方があったけど、歳とって落ち着いて聞いてみると、Point It Upや同じくロックっぽいリフで似たようなタイトルのDon’t Give It Upも、目くじら立てる必要もなく、アルバムにはちゃんとNite Crawlerみたいなメローなナンバーも入っていて、他の曲も合わせて総合的に考えるとアルバムとしてバランスが取れている逸作。特にオープニングのRoom 335はピッキング・ハーモニクスの使い方や、チョッと敢えてもたった感じのBending(日本語のChoking)が最高。他にもボーカル入っている曲もいいしね。最高過ぎて聴き入っている間に規則案読むの忘れそうになって、Queens方面の空が赤くなってきてしまった。

で、米国税務をかじったことある人なら、863条って聞いただけで、860番台前半に位置することから、所得の源泉地にかかわる規定だな、っていうことは条文読む前から当然理解できるはず。所得の源泉地決定は米国の納税者にとってはFTCの枠をどれだけ最大限化できるかっていうプラニングのキーだし、日本企業のような外国法人や非居住者にとっては、所得が米国で課税対象となり得るかどうかを判断する際に重要な検討事項となる。インバウンドの課税を検討する際、米国源泉所得にならなければFDAPにはならないので源泉税の対象にはならないし、外国源泉所得がECIになるケースはかなり限定的なので、まずは所得、Gross Incomeベースで源泉地がどこになるかの検討が最重要マターだ。

米国法人にとってTCJA以降のクロスボーダー課税の弊害を最小限とする一つのキーがFTCだから、所得の源泉地決定、その後の費用配賦・按分にかかわる検討は従来にも増して重要となっている。課税関係そのものを規定している条文や考え方は熟知しておく必要があるのは当然だけど、所得の源泉地、資産、特に株式の簿価、E&PやPTEP、とか一見脇役っぽい検討が実は主人公同様に課税関係にインパクトを持つことも多い。

それにしても、年の瀬も押し迫るこのタイミングでこんな規則案を公表するあたり、Section 863の改訂に基づく、外国法人のECIプラニングに早々に網を掛けなくては、という財務省側の意欲が見え見え。Section 863が改訂された当時から、外国法人による棚卸資産の販売益かかわる従来の取り扱いとの整合性の検討、および新規定を適用して、外国法人が米国外で生産している棚卸資産の販売益を、外国法人が米国に事業所を有しているにもかかわらず全額外国源泉として、結果としてECIではなくして米国申告課税の対象とならない、とするようなプラニング検討が密かに盛り上がっていたので、財務省の動きは的を得ているし、その感度は抜群。こんな的を得た対応策をタイムリーに講じることができるのも、法曹界、Big 4、業界の代表等との多くのパネルディスカッション等に財務省が普段から参加しているからならでは。更に規則案では、わざわざご丁寧に外国法人がこの手のプラニングに基づき、米国外で生産する棚卸資産販売益を、米国事務所が重要な関与を持つにもかかわらず100%国外源泉として、結果としてECIではないというポジションを取っている場合には、税務調査でチャレンジする可能性があると明言している。う~ん、なかなかDirect。

Larry Carltonとかで話しがそれたので、規則案の内容そのものは次回。

Thursday, December 12, 2019

BEAT財務省2019年「新」規則案(損金算入自己否認)(2)

前回のポスティングでは、BEATの2019年「新」規則で提案されている、BE%を3%未満とするため納税者にBase Erosion Benefitを構成する損金を「自己否認」する選択を認めるという寛容な取り扱いに関して触れ始めた。今回はこの選択の具体的な規定に関して。

BE%のオサライだけど、これは各課税年度に認識されるBase Erosion Benefit額を分子、損金算入される費用総額を分母として算定する%。どれだけ派手にBase Erosionに従事しているか、っていうのを計るための物差しと考えるといい。$500Mの売上基準と並んで、BE%が3%以上(銀行・証券会社を含むグループは2%)となるとBEAT適用対象となる重要な基準値だ。また、BEAT適用対象判断と並び、NOLを認識する課税年度のBE%は、当NOLを使用する将来年度におけるBEAT算定時にNOLのどのポーションがBase Erosion Benefitになるかという判断にも使用される。さらに、BE%は特定合算グループ単位で算定され、一旦特定合算グループで算定されたBE%は各法人または連結納税グループに強制適用される、という複雑な規定がある。Base Erosion Benefitっていうのは損金算入されている費用のうち、外国関連者への支出を基にしているもの。

財務省が、今回の新規則で自己否認を容認する提案をしている法的なバックグラウンドだけど、米国で課税関係を検討する際、様々な状況で、特定の費用が税法上「Allowable」なのか「Allowed」なのか、っていう差異に着眼しないといけないことがある。たかが「able」と「ed」の違いじゃん、って気に留めないで分析してしまいがちかもしれないけど、運命の分かれ道になることがある。BEATを算定する際の、NOLの取り扱い、すなわち繰り越されたNOL全額を使うのか、通常の法人税計算で使用したNOLのみを使うのか、という検討もある意味これで解釈が分かれるところだった。他に、一番分かり易い例としては、償却と資産の簿価の関係を挙げることができる。例えば、100で取得した資産に対して税法が認める、すなわちAllowableな償却が初年度50あったにもかかわらず、納税者側で30しか損金算入、すなわちAllowed、していないとする。償却後に70で当資産を売却したとすると、納税者の計算では70の税務簿価が残っているはずなので、譲渡損益はゼロとなる。ところが譲渡損益を計算する際の税務簿価の定義は「Allowable」な償却で算定すると法律に規定されているので、実際には簿価は50となり、譲渡益が20発生することになる。

それってBE%算定時の損金算入の自己否認と何か関係があるの?って言うと、これが大いに関係する。Base Erosion BenefitとはBase Erosion Paymentのうち毎期実際に損金算入される金額で、多くのケースのこの2つの数字は特定の課税年度内で同額。金額に差異が生じるとすると基本的にはタイミング差異で、例えば、ある課税年度に行われた外国関連者に対する支出、すなわちBase Erosion Payment、の費用計上タイミングがAll Eventテストその他の理由で翌期となる場合、Base Erosion PaymentはYear 1に発生しているが、Base Erosion BenefitはYear 2となる。もっと極端な差異は、外国関連者からの資産取得。Year 1に150で資産を取得し、仮に当資産が15年償却だとすると、Year 1のBase Erosion Paymentは150だけど、Base Erosion Benefitは10だけだ。Year 2以降はBase Erosion Paymentは存在しないけど、償却を続けているので、Base Erosion Benefitは引き続き毎期10計上される。

BEATの法律上、Base Erosion PaymentとBase Erosion Benefitは別々に定義されているけど、もちろん密接にリンクした概念だ。Base Erosion Paymentは最終的に損金として「Allowable」、すなわちいつかは法的に算入対象になる得る、支出と定義される。なので資産取得もその年には損金算入が全額認められなくても、全額立派なBase Erosion Paymentとなる。ここからが面白いんだけど、Base Erosion BenefitはBase Erosion Paymentのうち、特定の課税年度に「Allowed」された損金算入、すなわち実際に損金算入した金額、と定義される。勘のいい皆様は、これが今回の損金算入自己否認の法的なフレームワークとなり得ることに気づかれたと思う。法的に損金算入が可能な金額、Allowableな金額でも、納税者が損金算入していなければ、Allowedでないとも考えらえることから、BE%の算定時に加味しなくてもいい、というポジションはBEAT導入当初から摸索され始めていた法的ポジションだ。もしBase Erosion Benefitの定義もAllowableだったら、このようなポジションは法的にサポートし難かっただろう。議会がこの2つの用語を、BEAT法をドラフトする際にどの程度意識して使い分けしていたかは知らないけど、Section 59A(c)(2)と59A(d)(1)という極めて近距離にある条文2つで敢えて別の用語を使用している訳だから無意識に選択しているとは思えない。

とは言え、法文だけをベースに損金算入を自己否認してBE%を2.999%とかにするのは結構勇気がいるので、財務省規則でこの点を明確にして欲しい旨のコメント・リクエストが寄せられていた。このポイントは大本の2018年財務省規則案では取り上げられていなかったので、今回新たな規則案として公開し、更なるパブリックコメントを経て最終化される運びとなった。

で、2019年新規則案では、規則上で除外としている特定の状況を除き、米国税法全ての目的で損金算入されないという条件でBE%目的でも損金扱いしないでもよろしい、という選択を納税者に与えている。二枚舌は禁止ってことだ。日本的にはそりゃそうでしょう、って思われるかもしれないけど、米国企業や税務アドバイザーは法的解釈が可能であれば、極限に挑んだりするので、税務処理変更の利用との絡みも含め、規則案ではこの辺りに結構細かく釘を刺している。損金不算入の効果を取り込まない、すなわち、あたかも損金算入されたかのような取り扱いをするのは、E&Pの計算とか、FTCの枠の計算時の支払利息の配賦とか、かなり限定的。

ちなみに損金不算入を選択する対象とする金額は外国関連者への支出を基に計上される損金。それ以外の損金を自己否認してしまってはBE%の分子はそのままで分母が減ってBE%が高くなってしまうので逆効果。なんで、必ず分子に計上される損金を自己否認し、分母も同額減額されるので、それで%がどうなるかっていう試算をしないといけない。もともとBEATは大手法人のみを対象としているので、費用の額がそれなりに大きいところが多く、%を目に見えて動かすには結構な大きな額を否認せざるを得ないだろう。例えば、丸い数字で、損金算入総額が元々$1Bあり、4%のBE%、すなわちBase Erosion Benefitが$40Mだとして、これを例えば2.9%に減額させようとすると、$11M強の損金を自己否認しないといけない。もちろん実際には2.9%にまで落とす必要はなく、2.9999%でいいんだけど。$11Mの損金がなくなるっていうことは、通常の課税所得、BEAT算定目的の修正課税所得、双方共に$11M高くなり、FTCを含む諸々のクレジットの計算に影響があったり、多岐に亘る影響があるので詳細なモデリングに基づく検討がMust。州によっては連邦税法に基づいて算定された課税所得を出発点として、州税を算定するところも多いので、それらの影響も加味する必要が出てくる。BE%は特定合算グループ単位だから、誰の損金を否認するのかグループ内で揉めないようにね。

規則草案は早期適用が認められるので、2018年の申告書でも利用できる。既に申告書を提出してしまった場合には修正申告ができる。更に面白いのは税務調査の段階でも損金算入自己否認の機会が提供されている点。例えば、2.999%と信じてたら、調査で実は3%でしたとなってしまったような場合、その場で必要に応じて調整が認めれる。かなり寛大。

最後に当選択を行う際に求めらえる開示やStatementは、BEAT計算の報告様式であるForm 8991を今後改訂してFormそのものに選択関係の情報を開示することになるそうだ。なんか至れり尽くせりな感じ。それまでは別途White Paper Statementで必要情報を開示する必要がある。

かなり納税者フレンドリーな規定だけど、BE%を3%未満することが必ずしも最終目的ではない。BEATの適用対象となっても、結局BEATミニマム税を支払うことになるとは限らないので、変な選択して、その結果支払う通常の法人税が元々のBEATミニマム税を加味した税額より多くなったりしないようにね。

Wednesday, December 11, 2019

BEAT財務省2019年「新」規則案(損金算入自己否認)

Thanksgiving直後に公表されたBEAT最終規則に関しては、先日「BEAT財務省最終規則 (2)」で速報したけど、膨大なFTCの規則が同時に公表されてたり、12月3日には米国財務省長官がOECDデジタル課税ピラー1の今後の行方に重大な影響を与えるレターをOECD事務総長に送付したり、いろいろあってなかなかBEATの続きに触れることができなかった。

実はBEATの規則は、最終規則だけでなく新たな規則案が同時公開されている。2018年に公表され、今回の最終規則の基となる大本の規則案と区別するため、2019年「新」規則案と呼ばれているものだ。オリジナルの規則案を最終化する際に、新たな規則案を同時公表する手法は最近のトレンドで、元々必ずしも想定していなかった新たな切り口の検討事項とか、一旦方向性を決めたはずの取り扱いに関してパブリックコメントによりポリシー選択に再考の余地が生じているケースとか、がカバーされることが多い。

例えば、GILTI最終規則には、GILTIを合算する米国納税者を決定する際に、「米国」パートナーシップを「外国」パートナーシップ同様にLook-throughしてしまうという英断が盛り込まれたけど、これと同様の取り扱いをナンと従来からのCFC課税であるSub Fにも適用するという、60年の歴史を覆す凄い提案が同時に新規則案という形で公表されている。

Sub F適用時に米国パートナーシップをLook-throughする提案は法文解釈としては際どい気はするけど、ポリシーとしては合理的だ。長年、Sub Fを適用する際に、パートナーシップが米国なのか外国なのかっていう、どちらかというと形式的な違いで、課税関係が異なることに対する疑問も多かったし、結果的にストラクチャリングの検討が複雑になって混乱を招いてたり、逆にパートナーシップを利用したSub FのBlockerとか高度なプラニングに利用されたりもしていた。ただ、今まではSub Fっていう「リングフェンス」されたかなり限定的な所得合算に対する影響だったので、費用対効果的に余り深く考える時間がないような感覚だった。GILTI導入でCFCの所得合算のスコープが極端に広がったことで、合算する際にパートナーシップというものをどう考えるべきか、っていう法的フレームワークを再考せざるを得なくなったのは間違いない。特にGILTIは、Sub FのようにCFC側の数字がそのまま合算額になる訳ではなく、Tested Income、Loss、QBAI、特定利息、等のCFC側の属性を米国株主が自分の持分額を米国で通算・再計算し、GILTIという新たに米国株主側で発生する新属性を作り出すことから、米国側で誰がどのように取り込むかにより、所得のLocationだけでなく、金額も異なり、パートナーシップに対する取り扱いもよりHigh Stakeな検討となっていた。

でもGILTIばかりでなくSub Fでも米国パートナーシップをLook-throughさせてくれるようになると、ファンドとかが米国外のターゲットを買収する際に、デラウェア州の代わりにケイマン諸島のExempted Limited Partnership(LPS)を使用する必要がなくなり、ケイマン諸島の経済に悪影響っていう、風が吹けば桶屋が儲かる、みたいなシナリオとならないかチョッと心配(?)。でも外国パートナーシップが不利になる訳ではないから、長年慣れ親しんだケイマン諸島LPSが一夜で取って代わられることはないんだろうし、またGILTIとSub FでLook-throughしてくれてもSection 1248のみなし配当のところはどんなことになるか不明だし、ケイマン諸島も未だ安泰でしょうか。

更に言えば、アウトバウンドの局面で仮にケイマン諸島LPSのニーズが減ってデラウェア州に戻ってきたとしても、ECIを気にする外国投資家やUBTIを気にする米国NPOが利用するフィーダーとしては、ライバルのBVI、更に最近ではアイルランドとかルクセンブルクとかが台頭してきているとは言え、やっぱり本家本元のケイマン諸島が圧倒的なプレゼンスを見せつけているので、こっちはなくならないから風が吹いても桶屋は結局儲からないかもね。でも、フィーダーはブロッカーだからLPSじゃなくてケイマン法人じゃん、って思うかもしれないけど配当相当のスワップに30%の源泉税が課せられるようになってからは、洗練されたヘッジファンドなんかはフィーダーをケイマン諸島LPSとして組成するケースが増えてきてる気がする。更に洗練されたファンドは、その上でCheck-the-BoxしてForeign Reverse Hybridとすることもあって、これはテクニカルにはベストなストラクチャーだ。ただ、ブローカーのバックオフィスが対応できれば、だけどね。実務部隊が対応できなくて訳わかんないことになるリスク大。

で、何の話しだったかというと、そうでした、オリジナルの規則案を最終化する際に、新たな規則案を同時公表する手法が最近のトレンドという話し。BEATもご多分に漏れずこのパターン。実は、Sub Fのパートナーシップの件もそうだけど、意外に最終規則よりも新規則案に納税者の関心を引く、実験的というか英語で言うところの「Juicy」な規定が提案されてることが多い。

BEATの2019年「新」規則では12カ月未満の短期課税年度の取り扱い、売上基準およびBE%算定目的の特定合算グループのメンバーの出入りの取り扱い、パートナーシップの取り扱いで未だ手当てされていない部分、っていうどちらかと言うと無味乾燥な3つの検討と並び、BE%を3%未満とするため納税者自らがBase Erosion Benefitを構成する損金を「自己否認」することを認める取り扱いに関して規定している。

この損金算入自己否認を容認する規定は寛容と言うか面白いのでこの点にフォーカスして触れてみたい。チョッと長くなってきたので、ここからは次回。

Friday, December 6, 2019

DCからのお手紙でOECDデジタル課税・ピラー1に早くも暗雲?

新たな課税権(Nexus)およびその際の所得按分法を提唱しているOECDのデジタル課税ピラー1には各界から多くのコメントが寄せられているけど、基本的にピラー1による課税を集中して負担することになる米国企業を抱える米国政府がどう出るかは今後のコンセンサス作りの成否を占う上で注目度が断然高い。

そんな中、米国がピラー1に引導を渡したとまでは言わないけど、少なくとも不吉な暗雲が立ち込め始めたと言える事態が発生した。BEATやFTCの最終規則+新規則案計1,000ページを解析している真っ最中だというのに、国際課税に関する話題は次々と事欠かない。

その事件は12月3日に起きた。その日、米国財務省長官のMnuchinはOECDのアンヘル・グリア事務総長に書簡、すなわち「お手紙」を送り、ピラー1における従来の移転価格原則からの強制的な逸脱には重大な懸念がある、と表明したのだ。

厳めしい感じの財務省の紋章付きレターヘッドほぼ一枚(正確には2ページ目に一文+Mnuchinのサイン)、本文2パラグラフというかなり簡素なお手紙は「米国は、国際課税制度が直面している問題に真剣に取り組むOECDの姿勢を支持しています」と唐突に始まる。英語は不思議な言語で、反対する時はまず賛成っぽい流れで入ることが多い。ただ、その後に反対が来る前触れの賛成の表現はどことなく反対を予感させてくれるものだ。昇給がない年のHRとのミーティングでまず「あなたの貢献には感謝しています」と切り出されてる感じだろうか。

で、お手紙は続く。以前からの米国のスタンスだけど、まずは、各国独自のデジタルサービス課税(DST)は米国企業を狙い撃ちしていて、グロス課税は従来の国際課税の原則から乖離しているので断固反対と表明している。その上で、新たな国際課税制度が立ち上がるには租税条約の改訂が必要となるばかりでなく、各国の国内法を整備し直す必要があり、選挙で選ばれる議員が議会で立法することを考えると、国民・企業の強い支持が不可欠となる、と何となく変な方向に話しが展開していく。でもこれは本当で、仮に米国財務省がOECDのピラー1に賛同を表明したとしても、米国の国内法を変えることができるのは議会。その点に関して行政府の財務省は無力とまでは言わないまでも、三権分立的には脇役を演じざるを得ない。すなわち、米国企業がどう考えるか、という点を十分に反映させないと米国として真の賛同は不可能ということになる。

で、「米国納税者からの支持に関しては、予見可能性や執行可能性を高める点は納税者の望むところで、広範な支持を取り付けることはできるものの、米国納税者が長年拠り所としてきた従来からの独立企業間価格(ALP)の考え方からの強制的な逸脱には重大な懸念を持っている」と爆弾を落とした。

強制的なALPからの逸脱こそ今回の目玉というかピラー1そのもの。新たに発生する課税はALPから逸脱することを大前提としているからだ。とは言えOECDとしてもALPを完全撤廃するつもりは毛頭なく、だからこそALPに新課税をどのように「かぶせる」かに苦労し、これがピラー1の「Amount A」という苦肉の策に落ち着いている部分だったと言える。例えば20%とか、かなり高めに設定するみなしルーティン利益を上回る超過利益部分の、さらに上澄み部分20%とかの一定部分、OECD言うところのUpper PortionのみをAmount Aとすることで、ALPからの逸脱インパクトを最小限にしようとしていた。Amount Bは課税権に関して新たなものではなく、どちらかというとALPの簡素化というか、Routineマーケット活動に対するALPをみなしで固定リターンとするもの。

なので、米国財務省がALPからの逸脱に重大な懸念を持つということは、すなわちAmount Aに重大な懸念があると言っているに他ならない。で、Amount Aこそが新Nexusに基づく課税額となる訳だから、これは更に言えば、ピラー1そのもののアーキテクチャーに重大な懸念があると言っているに等しい。え~、そんな根底を覆すようなことを挨拶も早々にいきなり最初のパラグラフから告知してしまうんだね。

そして続くその次の提案にまたビックリ。「そうは言うものの・・(英語では「Nevertheless…」)」と続き、ピラー1を「Safe Harbor」制度にしてしまうことで、ピラー1の目標も大概において達成でき、かつ米国納税者の懸念も払拭されるんで、そうしましょう、というもの。

そして最後に「GILTIをまねたピラー2はサポートしますよ」とし、「ここまで行ってきた議論を土台に、この線(すなわちSafe Harbor路線)でOECDと協働していきたいと考えています」と言っている。そしてなぜか2ページ目に一文だけ「各国独自のDSTは即刻取り下げてOECDが国際的な合意が取り付けられますように」と結んでいる。こんな短いセンテンスだけが2ページ目にPush-Out(BBAのパートナーシップ税務調査じゃないけどね)されているのはレターのビジュアルなイメージが何かぎこちなくて変。

Safe Harborにするってどういうこと?って思うけど、米国税法でSafe Harborって言う用語は、通常、安全ガイドラインというか、事実認定を個別にしないでも何かをみなしでOKするというようなニュアンスで使われ、いやなら本当の事実認定に基づいた取り扱いを選択することが認められる制度を意味することが多い。となると、おそらく、従来からの課税方法や国別のDSTで課税されるのが面倒ならピラー1を選択して、従来であれば課税権がない国にNexusを認め、Amount Aの国別配賦額に対する法人税を支払う、ということだろうか。もしかして、超過利益が存在しない法人はSafe Harborを利用し、Amount Aで本当に被害を被むる米国ハイテク大手はSafe HarborではなくALPに基づく主張で戦う選択ができるような制度を想定しているのだろうか。

または逆に、そもそも自分達はデジタル企業でもないし、国別DSTの対象からも外れ、従来の課税システムに基づく各国の課税で大きな歪は生じていない、と考えるどちらかと言うと伝統的な企業はSafe Harborではない純粋なALP、すなわち今と同じ課税システムを選択し、GAFAみたいにDSTの対象となって困るところがAmount Aに基づくピラー1を選択するということかもしれない。Safe Harborの具体的な考え方はレターサイズ一枚ちょっと、しかも沢山マージンがあってBodyは2パラグラフというお手紙からは読み取れない。今後Big Newsになるだろうから、Safe Harborの目指す姿は分かり次第分析してみたい。

ただ、仮にそんなSafe Harbor制度となると、ピラー1で米国大手ハイテク企業に加え、より多くの企業が認識する所得の一部でも課税して税収を得ようと手ぐすねを引いて待ち構えている国は、空振りに終る可能性も出てくるので、取る側としては賛成できるはずではなく、NexusとかAmount A、B、Cとかの理論の話しではなく、もともとどうやって米国大手ハイテクその他企業の超過利益をマーケット国で課税する国際的な枠組みを作るか、っていう出発点から考え直さないといけなくなる。でも、この展開は当然予想されるべきもので、Amount Aのほとんどが米国企業の所得で構成される制度を新たに135国で導入しようとすれば、134対米国という戦いにならざるを得ない。Mnuchinのお手紙のタイミングが、フランスによるDST導入の報復措置として、米国がフランス産ワインとかチーズに追加関税を発表したタイミングと重なっているのも興味深い。

急にこんなお手紙が届いて慌てたのはOECD側。シロやぎさんやクロやぎさんと違ってOECDはMnuchin財務長官からのお手紙を読まずに食べたわけではないんだけど、仕方がないから早速「さっきの手紙のご用事なあに」って(?)お手紙書いた、に近い。

正確には翌日の9月4日に早速返事を出している。やぎさんのお手紙と違って即日に着くところから、当たり前だけど実際には電子メールでやり取りしているのが分かるね。米国のサポートには感謝しています、とか今回のデジタル課税の流れは米国税制改正が大きな転機になっていますとか、欧州の礼儀と言うか慣習というか、カウボーイ的な米国を代表するMnuchinからのレターよりは相当長めの前置きがあり、その後に「既にコンサルテーションのプロセスに入っている」とか「今までピラー1をSafe Harborにするなんて聞いたことないけどどうなってるんでしょうか?」みたいな本題があり、「135カ国のコンセンサス取りに大きな影響があるので、大至急、クリスマス前にパリに来て話しましょう」と締めくくっている。やぎさんのお手紙よりはいいけど、最初のレター、一層のこと読まないで食べちゃった方がよかったかもね(?)。

OECDとしては寝耳に水だったかもしれないけど、過去に米国がピラー1を明確にというか、公式に支持していた訳ではないので、提言に対する米国企業のコメントを反映して、米国財務省の正式コメント・スタンスが今回、初めて公になったって見る方が、僕たちみたいにNYCとかで事を見ている、すなわちどうしても米国側からの視点で見てしまう場合には正確な位置づけのように思う。元々、合意までのタイムラインが非現実的に短いので、このままだと十分な議論が尽くされる前に、ある意味どさくさに紛れて勢いでコンセンサスに至ったかのような錯覚に陥り、結局各国による立法段階で異なる解釈に基づくバラバラな法律が制定され、MAPも実際には機能しないというか、統計には表れないけどMAPに行かせてもらえないケースも世界中に多数あることも踏まえ、かなり混沌とするのであれば、本当のコンセンサスを得る時間を使った方が急がば回れのような気もするけど。同床異夢かつ海千山千の135カ国を束ねるのは難しいね。これからどうなるのでしょうか。

Monday, December 2, 2019

BEAT財務省最終規則 (2)

という訳で342ページ飛ばして読んでみたけど、多岐に亘り過ぎていてどこから話したいいものか。特に大きなSurpriseはなかったけど、関心が高そうなポイントをいくつか挙げると次の通り。

BEATそのものは各納税者、連結納税グループの場合には連結納税グループ単位で計算するんだけど、そもそも自分がBEAT適用対象になるかどうかっていう判断は基本50%超の資本関係にある「特定グループメンバー」を合算して行う。すなわち過去3年売上が$500Mでしたか、とBase Erosion%が3%ですか、の2つの計算だけは特定グループ単位で行うことが強制される。

で、特定グループ内に異なる課税年度を持つメンバーが存在する場合、規則案では、他の特定グループメンバーの決算期にかかわらず、適用対象判断を行う法人の決算期に合わせて金額を確定するっていう面倒な規定になっていて、実際に2019年3月期に申告書作成に関して既にそのような情報収集をしてしまったんだけど、最終規則ではこの部分は変更。

最終的には適用対象判断を行う法人の課税年度と同時にまたは年度内に終了する特定グループメンバーの課税年度の数字を合算して計算することになった。例えば、3月決算の法人の特定グループ内に12月決算のメンバーが居たりすると、BEATになるかどうかは各々がグループの数字を取り込んで算定するので、2020年3月期に自分が適用対象かどうか決める場合、12月決算のメンバーの2019年12月期の売上、費用、やBase Erosion Paymentを合算することにな。一方、12月決算の法人にしてみると、例えば自分が2020年12月期にBEAT適用対象になるかどうかを決める際、3月決算メンバーの2020年3月期の数字を合算することなる。まあ吉報と言えるけど、できればもう少し早く決めて欲しかったけどね。

次に結構期待されていて空振りに終った規定として、支払先の国外関連者がCFCの場合の取り扱い。支払いを受け取る外国関連者が受取額を米国支店として課税所得処理しているケースはBase Erosion Paymentではない、っていう点は規則案でも確認済みだったけど、CFCが支払いを受け取るケースも受取額はTested Incomeの一部を構成し、最終的にGILTIとなったりするので、同じようにBase Erosion Paymentから除外できないものか、という希望が存在していた。最終規則ではECIと異なり、GILTIはCFC自身に対する課税ではない点、また受け取る金額と最終的にGILTIとして米国で課税される金額の間に多くの処理が入り、直接的な関係が見え難い点を理由にバッサリ却下されている。

次はある程度予想通りだけど、規則案でビックリした取り扱いの一つに適格出資、適格清算、組織再編等を通じた外国関連者からの資産取得もBase Erosion Paymentになるというもの。最終規則では一転、これらの取引は対価が株式の範囲でBase Erosion Paymentにはならないとしている。もちろんBootを交付する場合にはその部分は引き続きBase Erosion Payment。

後、Good NewsだったのはPE帰属所得の算定を、米国税法ベースではなく資産、リスク、機能を参照した独立企業ベース、いわゆるAOAで算定する場合のBase Erosion Paymentの考え方。AOAでみなし計上される費用、特に支払利息は、実際に本店が対外的に支出している費用の配賦ではないことから、規則案ではInternal Dealingsとして全額Base Erosion Paymentになる得るような規定になっていた。最終規則では、支払利息に関しては、米国税法下の処理とハイブリッドアプローチとし、米国税法の1.882-5(金融やっている人は良く分かるね?)の範囲では1.882-5に適用されるTracingの考え方を適用してBase Erosion Paymentかどうかの判断をし、Internal Dealingsの金額が1.882-5でECIやPEに配賦される利息を超過する部分のみをInternal Dealingsに基づくものとしてBase Erosion Paymentと取り扱うとしている。AOAを適用するのは、ある意味、1.882-5よりも多額の支払利息を計上できるからだっていう背景を考えると、幾ばくかのBase Erosion PaymentとなるInternal Dealingsに基づく金額は残るんだろうけど、全体には相当な緩和措置のように思えた。

同じく金融っぽい流れで続けると、規則案では、FRBが規定するTLAC、すなわち外国G-SIBsの米国中間持株会社に適用される総損失吸収力(TLAC)最低基準を充たすために発行される内部TLAC適格債に基づく支払いをBase Erosion Paymentから除外としていたが、最終規則ではこの除外を米国外の法令に基づくTLACにも拡大している。これで、外銀G-SIBsの米国支店にも除外規定が適用されることになる。更に除外対象金額枠も最低基準額に15%のバファーを上乗せしてくれることになった。

まだまだあるけど、今日は公表されて未だ数時間なのでこの辺で。

BEAT財務省最終規則

時が経つのは早いもので2019年も11月後半のThanksgivingが終わろうとしている。米国は10月のHalloweenの頃から急激に年末モードになり、一気にThanksgivingそしてクリスマスが来て年始となる。日本と比べると年始は呆気なく、その年のカレンダー次第だけど早ければ1月2日から通常業務となる。

Thanksgivingは11月の第4木曜日で、オフィスも学校も大概、木曜日に加えて金曜日も休みとなるので木曜日から日曜日まで4連休になるけど、今年の4連休前半は西海岸に「ストーム」(って言うけど日本の感覚的には単に若干強めの雨)が来てたし、最終日の日曜日はNYCも雨と言うかみぞれみたいな天気だった。どちらも風が結構あり、特にマンハッタンの両川沿いは激しかったので、傘よりはポンチョの方が役にたって、British Englishで言うところのまさしく「the man in the mac」(これ分かる?) になって闊歩する羽目になった。ポンチョっていうよりMacの方が格好いいね。でもCrucifyされないようにしないとね。

で、Thanksgivingと言えばもちろんStuffingされたターキー(七面鳥)が欠かせないけど、Stuffingって皆が言うたびにファンドがSection 754 選択とかMandatoryの743のステップダウンの代わりにRedemptionして持分を換金化するパートナーに対して行う「Stuffing Allocation」を思い出してしまう。Thanksgivingの日にそんな話しをしたら「それは頭か体のどっちかがおかしい」と言われたけど、体には関係ないからおかしいのはやっぱり頭の方かな。

日本を含む海外からヘッジファンドに投資する事案はここ数年チラホラ担当するけど、Reverse Hybridを含むケイマンブロッカーを経由する外国人投資家ではなく、Delaware LPに直投資、またはパススルーのDomestic Feeder経由で投資してくる米国投資家LP側の税務上の検討もなかなか面白い。National Taxやファンドばっかりやってる法律事務所のGuruみたいな人たちとヘッジファンド投資の話しをする際に、国内投資家の見地から必ず話題になるのがターキーではなくてAllocationのStuffing。Stuffing Allocationは本当に税法上認められるのか、というような議論だけど、Tradingが激しいヘッジファンド保有資産の多くのポジションを考えるとファンドレベルでSection 754選択をすることは現実的じゃないし、他に対処法がないから仕方がなくStuffingしているとしか理由はないけど、でも良く考えてあるよね。全員二重課税にならないし、経済的にはフェアな感じ。償還するパートナーは償還益は全額長期キャピタルゲイン、って思ってたらK-1が来て一部Short-TermやOrdinaryにすり替わってたりするから面食らうかもね。

で、そんなThanksgivingの連休もアッという間に終わり、月曜日になろうとしているんだけど、BEATの最終規則がそろそろ公表されるはず。今週中だろう。このポスティングのタイトルを見て既に公表されているのか、と思われた方には申し訳ないけど、実は未だ。ただ、月曜日の東海岸16時15分には、米国財務省がFTCとBEATの規則に関してブリーフィングのカンファレンスコールを開催すると言っているし秒読み体制にあることは間違いない。2018年12月13日にBEATの規則案が公表されているから何だかんだちょうど一年経つんだね。規則案は193ページだったけど、最終規則は何ページあるんだろう。多分もう少し長い嫌な予感。公表され次第、規則草案との差異とか解説してみたい。BEATはGILTIと並び、OECDデジタル課税のピラー2のモデルだと言われているからより注目度も高いしね。実は全然別物だけどね。。

と、ここまで書いて一旦ポスティングしたら、ジンクスしてしまったのか、本当に公表されてしまった。2019年12月2日の午後。まずはページ数から。さっき、規則案は193ページだったけど、最終規則は多分もう少し長くなりそうな嫌な予感、とか呑気なことを言ってしまったけど、ナンと342ページ。またこんなに読むのか、ってOMG。早速読まないとね。

Thursday, November 14, 2019

米国過少資本税制385条規則の「Funding規定」緩和策 (4)

前回はFunding規定の概要と、Section 385に付きまとう悲劇的な過去を踏襲するかのように、規則最終化の直後に政権が規制過剰のオバマ政権から規制緩和路線のトランプ政権に変わり、Section 385の規則を常に待ち構えている「撤回」の運命がまたしても忍び寄ったところまで触れた。

時は2017年初頭。1月に発足したばかりのトランプ政権は、さっそくオバマ政権時代に制定された過剰な規制の撤回・緩和に着手していた。2017年4月に大統領令が公布され、納税者に過度の負担を強いている、三権分立の観点から行政府として越権行為に近い、と思われる規則を特定し、対策を検討するよう財務省に命じた。その結果、複数の財務省規則が悪法と特定されるが、その中の一つにSection 385の最終規則が含まれていた。

有害認定を受け、最終規則に規定されていた「文書化要件」は早期適用可の規則草案という手法でかなり迅速に「実質」撤廃されていたが、今回の「新Funding規定」の草案と同時に公表された最終規則で「正式」に撤廃となっている。Section 385のサガは続くね。

ちなみに、最終規則の文書化要件の撤廃を受けて、関連者間の借入に係わる文書化そのものが不要になったように解されるケースがあるみたいだけど、それは違う。関連者間の借入を、米国税務上も借入と認めるかEquityとみなすか、の判断は個々の事実関係に基づく判例ベースっていう点は口酸っぱく言い過ぎて、読んでる方も「we got that」みたいな気分だとは思うけど、Section 385の財務省規則の有無とは関係なく、文書化は必要。判例ベースで、納税者による借入という主張が認められるためには、善意の債権債務者間の関係が構築され、また借入が経済的に合理的である、という2点が重要となる。前者に関して、借入と言う形式が整っている必要があり、そのためには基本的なタームを文書化しているローンドキュメントの存在はMustと言える。後者に関しては基本的には借入を実行する段階で返済・利払いにかかわるリアリスティックな可能性が存在していることを証明できる点が重要。

「そんなんだったら最終規則の文書化要件が撤廃されても意味ないじゃん・・・」って思われる方はあわてんぼうのサンタクロースだ。最終規則に規定されてた文書化要件は判例ベースから最低限必要と考えられるスコープを逸していた。特にデフォルトを明確に規定し、デフォルトが発生した場合に取るべき措置を明記し、さらに実際にデフォルトが発生した場合には文書化に基づいて取るべき措置を本当に取っている旨を同時文書化すること、とかしていた。独立企業間だったらっていうフィクションで考えるという趣旨はもちろん分かるけど、所詮は身内の貸し借りなので資産差し押さえてもしょうがないし、この点は重荷のひとつと考えられていた。さらに場合によっては未収金のようなMiscellaneousな取引に文書化が求められたり、キャッシュプーリングやキャッシュマネージメントにかかわる返済能力の同時文書化も従来の域を超えるものが求められていた。さらに「Killer」だったのは、最終規則に基づく同時文書化が存在しない場合にはその事実のみをもって借入をEquityとみなす、という規定。テクニカルにはDebt/Equity Ratioが1:9でも文書化がないと1はEquityになるし、未収金みたいな取引もEquity(苦笑)になったり、少しやり過ぎでは・・・、と思われていた。なので、最終規則の文書化要件が撤廃された意味は、これらのとてつもない困難が無くなった点にある。普通の関連者間の借入に関する基礎的な文書化は引き続き必要だ。

で、最終規則のもう一方のコア規定となる「Funding規定」だけど、こっちは近々無くなるような気配は漂わせながらも、ひっそりと(?)存続していた。2017年12月の税制改正成立前の段階では、税制改正の立法自体が不透明な状態だったので、税制改正が成立するかどうかを見極めてから、Funding規定の運命を決めるとしていた。「トランプ政権を以てしても即撤廃じゃないんだ・・・」って不思議な感覚はあったけど、まあ確かに米国MNCによるBase Erosion懸念は超Realなので、それはそれで一つの見識ではあった。

そして2017年12月に30年振り、クロスボーダー課税に関しては60年振りの全面改定となる税制改正(「TCJA」)が成立。両院共和党、ホワイトハウスも共和党という大型法案の可決に恵まれた環境を利用して電光石火のように可決されたTCJA。OECDのBEPSアクションプランが草野球に見えるくらい、メジャーリーグ級の新規定乱発。僅か数週間の立法プロセスでクロスボーダー課税100年の常識をいとも簡単に書き換えてしまった。可決から2年近くなるけど、読めば読むほどTCJAは凄い。クロスボーダー課税を裏の裏まで知り尽くした者にしかあの法律はドラフトできないだろう。TCJAの凄まじさに触発されてOECDがBEPS 2.0に着手した点は想像に難くない。GILTIとBEATっぽいピラー2はTCJAとは似て非なるものな点は次回触れたい。で、TCJAには新Section 163(j)、BEAT、Anti-Hybrid、GILTIとこれでもか、というレベルでBase Erosion対策が講じられたことから、Funding規定の必要性はなくなったように思われ、TCJAを花道(?)として全面撤廃のステージが整った。

ステージ作りは終り、全面撤廃をパフォームするアーティストの登壇を待つばかり・・・のはずだったんだけど、2019年10月31日、財務省はいきなりFunding規定に大幅な緩和措置を講じるものの、しばらくは撤廃せずに「新Funding規定」という形で様子を見ると発表する。

具体的には「新規則策定にかかわる事前通知」とでも訳したらいいだろうか、「Advance notice of proposed rulemaking」を公表し、その中で財務省はTCJA後のNew WorldでもDebtプッシュダウンを利用したBase Erosion懸念が完全に払拭された訳ではないとし、緩和こそするもののFunding規定は当面存続させる意図を表明した。う~ん。新Funding規定と来たか。さすがSection 385の最終規則はとことん見せてくれる。

事前通知は、新Funding規定下では6年間のみなし事実認定規定は撤廃すると明言している。これはグッドニュース。その代わり、関連者間の借入が邪な取引の資金に使途されているかどうかは個々の取引の事実関係に基づいて判断するとしている。え~、元々そんなことしたらIRSに勝ち目がないからみなし事実認定規定を導入したんじゃなかったっけ。更にどんな時に個々の事実関係に基づいてそのような判断に至り得るかっていう具体例として、「借入と邪な取引が同一のプラン下で実行されているようなケース」が挙げられている。それはそうだけど、当たり前過ぎて例示の価値がないし、そんな狭義な判断だったら、Funding規定はほぼ骨抜きで、実質廃案に近い。なんか、手続き的に撤回するのは面倒だけど、実質無くそうとしているような変な印象を受けてしまった。まあ、納税者の立場からすると悪い話しではないけどね。

この有難い新Funding規定だけど、現時点での早期適用は認められず、実際に今後公表される予定の草案が最終規則になった日以降に開始する課税年度から始めて適用できるそうだ。ということは、当たり前だけど、その日が来るまではテクニカルにはFull-BlownのFunding規定が適用されることになる。運悪く6年間のみなし規定でEquityになってしまった債権は、新Funding規定施行時には新基準で見直してくれるのかな。そうするとその時点でEquityがDebtにRecapされるんだろうか。借入能力やマーケット金利が異なってたら、DebtのみなしIssue Priceとかどうなっちゃんだろう。E型再編とかになっちゃったりしてね。その辺りも規則で規定されるんだろう。それにしても無くなることが分かっていて、複雑過ぎてIRSによる施行実効性に疑問があり、実務的に対応が困難な規定をしばらく適用しないといけない納税者の負担は無駄に大きい。実際にはIRSは余り気にしなさそうだけど、何かケチが付く可能性があるとしたら、会計監査の際に大手監査法人によるTax Provisionレビューとかで受ける指摘かな。

という訳でSection 385最終規則でした。米国税法の条文って9000番台まであるけど(もちろん必ずしも連番ではなく数字は飛んでるけど、要はたくさんあるってこと)、どれ一つとってもDeepで、楽しめるね(後者はちょっとおかしい?)。

Wednesday, November 13, 2019

米国過少資本税制385条規則の「Funding規定」緩和策(3)

前回はSection 385の不遇というかちょっと可哀想な歴史に触れた。オリジナルAbbey Roadが発売された1969年に制定されたSection 385に基づき、1980年にようやく公表された(旧)財務省規則。その11年の間にThe Beatlesは解散し、度々の再結成の噂も結局実現せず、John LennonはNYCのDakota Apartmentsの前で撃たれてしまった。ちなみにDakota Apartments(正確にはあそこの法的所有形態はCo-Op)の「Dakota」って名称だけど、その昔はマンハッタンでもDakotaのある72ndとかは最初の頃人が住んでいたLower Manhattan、今でいうFinancial District、から馬車で遠かったので、まるでDakotaのよう、という意味だったとか。あんなメインでCentral Parkに隣接している一等地がね。1980年と言えば、一方のPaul McCartneyは1月にWingsで来日したんだけど、ナンと成田空港の税関でマリワナ不法所持で逮捕され、The Beatles以来となるはずだった武道館コンサートが全てキャンセルと言う信じられない展開もあったね。全日のアリーナのチケットを持っていて大ショックだった件は以前のポスティングで触れたからもう書かないけど、あの逮捕劇はどうも、John LennonとYokoが日本で定宿としていたホテル・オークラをPaul McCartneyも使用すると知ってそれを良く思わなかったYokoが、Paulの来日前に日本政府に何か連絡をしたとかしないとか、みたいな複雑な裏話をたまたまロンドンで買ったJohn Lennonに若干批判的な伝記(?)のどこかのページで読んだ記憶がある。本を買ったMayflowerの辺の景色とか雰囲気は良く覚えてるんだけど、その話しが書いてあったページが今では探せず仕舞いで、まさか夢じゃないよね。まあ、The BeatlesもLet It Beの頃はいろいろあったみたいだからね。そんな状況でも最後にAbbey Roadみたいな完成度の高いアルバムを残せるっていうは凄い。Abbey Roadの50周年記念盤となるSuper Deluxe Editionに「The Ballad of John and Yoko」のOut-trackが収録されてて、あの曲はJohn LennonとPaul McCartneyの2人だけで録音した曲として昔から有名だけど、ドラムセットにいるPaulのことをJohnが「Ringo」って呼んでたり、それを受けてPaulがJohnを「George」って呼んでたり、和気あいあいな感じでとても最後な感じはしないけどね。あと2~3枚The Beatlesとしてアルバムを残してくれてたら、その後のソロアルバムの質から考えても相当良かっただろうにね。

で、The Beatlesが完成度の高いAbbey Roadを録音して解散してしまった一方、財務省規則の完成度はイマイチで、結局1983年に完全撤回。50周年記念のSuper Deluxe Editionとして(?)2016年の新規則を公表するも、こちらの完成度もかなりイマイチ。というか、債権が実態としてDebtなのかEquityなのか、というSection 385の本来の目的・ポリシーには一切触れず、正当にDebtと区分された債権をBase Erosion対策という別のポリシーに基づき、無理やりEquityにみなすという、どっちかっていうと旧Section 163(j)のEarnings Stripping規定に近い目的の全く別の代物に生まれ変わって登場した。Abbey Roadの50周年記念って言われて聴いてみたら、中身はYellow Submarineでした、みたいな状況だ(?)。

さらに規則の適用が実務的に不可能に近い面倒な内容になっていた。まるで「GILTI」をチョッと真似てるけど、ポリシー的に全然別物でシンプルにしようとして逆に複雑な規定になっているOECDのピラー2みたい(?)。ピラー2のConsultation Paperも公表されたので、この点は次のポスティングで触れないとね。

そんな2016年財務省規則のコアと言える規定が「Funding規定」。Funding規定が何をしようとしているのか、を理解するのにはLeveraged Distributionの話しから入るのがベスト。外国から米国に投資する際に、2016年当時の米国みたいに法人税率が高い国のOperationは可能な限りDebt Financeするべきっていうのは算数的に当たり前過ぎる初歩的な話しだけど、設立当時に間違えて、または余り深く考えずに(?)Equityを手厚くしてしまったとか、米国での業績が好調でEquityが大きくなってしまったり、とかの状況で、後から米国にDebt Pushdownする手っ取り早い手法がLeveraged Distribution。要は現金でなく親会社を債権者とする「Note(日本語だとチョッと変だけど手形?)」を分配することで、米国グループの資産を増額させることなく負債を増額させる(Equityを減額させる)取引だ。

Leveraged Distributionに最適な環境と言うのは、親会社の所在地で配当課税されず、配当に対する米国側の源泉税が条約で免除されているケース。え~もしかしてそれって日本のこと?って思った人が居たら、その通り。2009年の日本のテリトリアル課税化に伴い、日本も立派に米国からのLeveraged Distributionに好環境を提供してくれる国のひとつに仲間入りした。ただ、日本側の法人税率が米国の35%より低かったとは言え、他のOECD諸国の20%前半に比べるとチョッと高めで、Leveraged Distributionの経済効果は見劣りしてたけど。Leveraged DistributionやDebt Pushdown、更にDomestic Reverse Hybridの利用は、テリトリアル課税に移行した他国から米国への投資局面では教科書的なプラニングだったっだけど、2009年にテリトリアル課税に移行した後も、日本企業には全くCatch-onしなかった。なのにBEPSだとかピラー2だとか、Base Erosion対策のコンプライアンスばかり増えてチョッと気の毒。他国からの投資と日本企業の投資全てにアドバイスしたりして対応している米国Firmでの肌感覚から言って、日本企業の実直さというかBase Erosionに対する無頓着さと、他国からの米国投資および特に米国企業のシリアスさの差異はみんなが日本で思っている以上に激しいからね。

で、2016年の財務省規則では、Leveraged Distributionを行うために交付されるNoteは、仮に判例ベースのDebt/Equity Classification的にNoteが正当な借入と認められるとしても、「使用目的」が良くないのでEquityにすると規定していた。それまではLeveraged Distributionは認められていて、合法的だったので180度の転換。更にLeveraged Distributionと同様の効果を持ち得る取引として、米国グループ内の資産取得型適格組織再編、グループ内の株式移管をNoteを対価として実行するケースが挙げられており、これら計3つの取引が「邪な」取引として特定され、その対価として交付されるNoteは税務上は問答無用にEquityにすると断じていた。

更に、対価そのものはNoteでなくちゃんと現金で行ってても、資金をグループ内借入で調達すれば実質同じような効果が達成できる。極端な例で言えば、分配は普通に現金で行うけど、その資金を親会社または米国外関連会社から借り入れているようなケースではLeveraged Distributionと同じ結果を達成できる。Debt/Equity Classificationとは別のCommon Lawで、現金が同一プラン下で巡回するケースではCircular Flowといって、現金の動きはなかったものとして課税関係を検討する原則が存在するが、この手のプラニングを実行する者は、借入と分配は法的に同じプランではないと主張が通り得るようにするのが普通だろう。

そこで登場するのが「Funding規定」。Funding規定はその名の通り、3つの邪な取引をFundingしていると考えられる関連者借入は自動的にEquityにするというもの。ただ、お金には色がないことから、借入が邪な取引の原資となっているのか、すなわちFundingしているのか、って言う点をFacts and circumstancesで判断としてしまうと不確実性が高まると同時に、周到な事実関係を慎重に整える大手会計事務所や法律事務所が付いている大手企業にはIRSも分が悪い。そこで面倒な実態に基づく事実認定を一切不要とするため、2016年最終規則では、3つの邪な取引が実行された時点の前後3年、足掛け6年という長期間内に関連者間借入が存在している場合、特定の除外規定を充足しない限り、納税者の意図にかかわらず、邪な取引は関連者間借入を資金源としているという「反証不可能なみなし事実認定」を規定してしまった。かなり思い切りがいい。最終便でも何の躊躇もなくキャンセルする米国のエアラインのようなバッサリぶりだ。邪な取引って言っても分配とかも含まれる訳だから、常に取引の前後3年、計6年という長期間に亘り借入があるか、除外要件を充足しているか、一旦Equityにみなされる借入の返済や利払い時の取り扱いとか、そんなモニターどうやってするの~?という刺激的な規則だった。

2017年にトランプ新政権となり、オバマ時代の過剰規制から一転して規制緩和に。なんか長くなってきたのでここからは次回。

Thursday, November 7, 2019

米国過少資本税制385条規則の「Funding規定」緩和策 (2)

前回はAbbey Roadに収録されているOut-trackの話しと、Section 385には怖~い歴史があるっていう点に触れた。 実は書き始めてから気付いた偶然だけど、Abbey Roadのオリジナルリリースと385条の制定は共に1969年と双方共50年前の話しだ。今回はSection 385の悲劇の沿革に軽く触れてみたい。しつこいけど、Section 385っていうのは、そのものが過少資本税制という訳ではなく、税務上の「Debt/Equity Classification」に関して、議会が財務省にその判断基準にかかわる規則の策定権を与えている条文に過ぎない。最近は境界線がボケてる局面も散見されるけど、三権分立の概念が徹底している米国では、財務省は、議会が制定する条文そのものに規則の策定権およびその範囲が規定されていない限り、財務省規則を策定することはできない。

従来から引き続き今でも、特定の債務、基本的には関連者からの借入、を米国税務上、借入と認めるかまたはEquityと見るか、っていう検討は個々のケースの事実関係を基に、積み重なる判例ベースで行う。この点が争点となるのは、例えば同じ100を親会社から子会社が受け取り、借入ですって言えば、5とか10の支払利息は毎期米国で費用となり、いくつかの制限規定を乗り越えることができれば損金算入できる。一方、Equityと呼んでしまうと、5とか10のリターンは配当となり、費用化できない。受け手国の税率、受け手側の課税ポジション、所得の取り扱い、源泉税、FTCなど複雑な検討をしないとどちらが得かは一概には決められないけど、米国議会や財務省から見ると100は借入でない方がいい。100の受け取りにどんなラベルを貼るかは身内の話しなのでほぼどうにでもなることから、納税者は借入って言ってるけど、本当に債務者側に借入能力(=返済能力)があるか、返済や利払いの期日が規定されていたり、善意の債権債務者間の関係に準じる関係が構築されてるのか、等の観点から実態として借入と認めるべきか、っていう点の確認が必要となる。その際に、特定のDebt/Equity Ratioとかの安全ガイドラインは存在しない。グループファイナンスカンパニーだったら97・3でもいいかもしれないし、スタートアップだったら50・50でもダメかもしれないし、これは個々の取引の経済分析の世界。

条文との対比で判決は、個々のケースの事実関係を徹底的に加味して法律を適用するため、特定の事実関係には整合性が高い検討・結果が可能になるっている優れた点を持つ一方、複数の判例を基にCommon Lawベースで将来に使える一定のルールを見い出す、すなわち判例をシンクロナイズしようとすると、取引を取り巻く事実関係が判例と同一と言うことはあり得ないし、また控訴審の管轄地域毎に異なる解釈が共存したり、最高裁以外の判決に関してはIRSが必ずしも他のケースで判決結果を踏襲しなかったりと、予見可能性が低いという欠点がある。

そこで、予見可能性を高めるため、The BeatlesがAbbey Roadをリリースして未だ3カ月という1969年12月にTax Reform Act of 1969が可決され、Section 385(a)および(b)が制定される。ちなみにニクソン大統領が署名して法律となった1969年のActはAMTを導入した法律として悪名高い。当時はM&A増加を背景に借入規模の拡大が懸念されており、特定の債務を米国税務上、借入またはEquityのどちらと取り扱うかの判断基準をより明確にするという趣旨で規則策定権を財務省に与えるとしている。具体的には(a)で策定権を与え、(b)は判断基準として加味するべき基準を判例ベースに列挙している。

規則策定権を付与された財務省は、実に法律が制定されてから10年以上の時が経過した1980年3月24日に満を持して(旧)規則草案を公表。9カ月後の1980年12月31日に規則を最終化する。その時点で(旧)規則の適用開始は1981年4月30日の予定だったんだけど・・・。

財務省規則に規定された判断基準は、全ての事実関係に適用できる一般ルール策定の困難さを露呈し、喧喧囂囂の論争の末、1981年内そして1982年へと2度に亘り適用開始が延期される。さらに適用開始を待たずに1982年の七草粥も開けぬ1月5日には早くも修正規則草案が公表されることになる。そして、1982年6月にはナンと3度目の適用開始延期措置が発表され、もはや泥沼化。そして、結局適用開始を迎えることなく(旧)最終規則は1983年11月3日、日本では文化の日だけど、ついに完全撤回となった。今回の2016年(新)最終規則の文書化要件が適用延期の末に撤回されたのと似過ぎてて怖いね。

その後、1992年には議会がSection 385に(c)を追加し、納税者が自らが選択する借入・Equityの形式的な区分は、納税者の税務申告時の取り扱い決定には拘束力を持つ旨を規定した。二枚舌禁止ってこと。

このように規則策定には散々な歴史があり、もう二度とSection 385の規則策定権を行使することはないのでは、と思われいた中、(旧)規則の撤回から30年以上の歳月を経て、再度2016年の規則に繋がっていく。1980年代のドラマに懲りたのか、新規則にはDebt/Equity Classificationの判断基準は一切規定されておらず、前文にそれは今まで通り、判例ベースで決めて下さい、と一言だけ触れられている。。

次回はFunding規定及び今回発表された新Funding規定に関して。

Sunday, November 3, 2019

米国過少資本税制385条規則の「Funding規定」緩和策

せっかくAbbey Roadの50周年記念盤となるSuper Deluxe Editionが発売され、その話題でさんざん盛り上がろうと思ってたのに、GILTI/FDII/BEAT/新163(j)/新FTC、等が初めてフルに申告書に反映される2018年暦年申告書が10月15日Dueだったり、OECDのピラー1・2とか、クロスボーダー課税を取り巻く話題は事欠かず、ついに11月に差し掛かってしまった。そんな中、財務省がSection 385最終規則にかかわるアップデートをハロウィーン・パーティーの一環で公表したので今日はその辺りの話し。

でももちろん、まずはAbbey RoadのSuper Deluxe Editionの話し。オリジナルバージョンのリミックスはもちろんそれはそれで素晴らしいけど、やっぱり今回の目玉は今まで未発売の「Out-Track」たち。Out-Trackだけでも23曲、しかもその中には複数の曲で構成されているメドレーがあるので、実際にはもう少し多くの曲が収録されている。凄い。スタジオにはもっともっとテープが残ってるだろうから、惜しまずに50時間分でも何でも発表しちゃえばいいのにね。$1,000位だったら購入するファンは一杯いると思うけど。Out-Trackの中には、Anthologyや他の海賊版、Youtubeで既に聴いたことあるようなトラックも少しあったけど、初めて聴くものも多い。しかも、もちろんだけど海賊版じゃないので音質にも問題ないし。

Abbey Roadって完成度的にはSGT Pepper’sに勝るとも劣らない名作で、バラバラ感溢れる別の意味での名作のWhite Albumの次に発売(レコーディングはLet It Beの後)されているこから、その対比も楽しい。特にLP時代の人は分かると思うけど、Abbey Roadの「B面」のメドレーっぽいところは緩急自在で、レコーディングっていう意味ではビートルズとして最後のセッションとなった訳だから、集大成的で迫力満点。どこからをメドレーって考えるかは意見の分かれるところだど思うけど、個人的にはYou Never Given Me Your MoneyからThe Endまでをひとつのパッケージと考えている。

Super Deluxe Editionには多くのOut-trackが入っていて大満足。You Never Give Me Your Moneyの初期バージョン格好良すぎ。あの曲自体、大きく分けると3部構成っぽいけど、「out of college…money spent…」の辺りからの「one sweet dream・・・」って変わっていく辺りのドライブ感は初期バージョンで既に実現されていて最高。ギターのオラクルだったEric ClaptonがJohn Lennonはギターがうまいと言っていたらしいけど、良く分かる。サンバーストの色を剥がして白くなってしまったEpiphone使ってるんだろうけど、良くあんなリズム感を出せるね。リンゴのドラムもいいドライブ感が出てる。

Track 20のMean Mr. Mustard初期バージョンでは「his sister Pam works in the shop・・・」の歌詞が「his sister Shelly works・・・」になってたり、Golden Slumbers(Takes 1-3)ではピアノの伴奏にのって「Day after day・・・」ってPaul McCartneyがジョークで The Fool On the Hillをチラッと歌ってみたり、You Never Give Me Your MoneyのTake 36ではなぜかピアノにレスリー効果が掛かっていて、Paul McCartneyが「Leslie off please」とか言ってたり・・。多分ビートルズに興味ない人からしてみると全部どうでもいいことなんだろうけど、小学校低学年の頃から家に走って帰って数枚しか持ってないシングルの両面を繰り返し聴いてた身としてはゾクゾクする感動の音が満載だ。

で、そんな感動の毎日を過ごしている中、今度は余り感動できないニュースがハロウィーンに公表された。385条の財務省規則で、未だにしぶとく行き残っていて、税制改正の暁にはお蔵入りと想定されていたFunding規定が、大幅な緩和措置が講じられるとは言え、撤廃にならないという財務省の通知が公表されたニュースだ。

この385条の財務省規則と言えば、2017年の税制改正前夜の2016年、米国税務業界一番のホット・トピックだった。オバマ政権が末期に無理やり押し込むようにSection 385に基づいて最終化したアレだ。

Section 385って条文に関しては、結構誤解が多く、Section 385が米国の過少資本税制そのもののように言われることがあるけど、そういう訳ではなく、Section 385は、納税者が「借入」って言っている債権を、米国税務上も借入と認めるか、それとも税務上は「Equity」とみなすかという「Debt/Equity Classification」に関して、議会が財務省にその判断基準にかかわる規則の策定権を与えている条文に過ぎない。で、そんな風に議会から付与された権限を基に行政府である財務省がオバマ政権末期の2016年10月に公表した最終規則は、ナンと肝心のDebt/Equity Classificationにかかわる判断基準には一言も触れていない一方、厳しい「文書化要件」を規定すると同時に、実務的には適用が非現実的とも言えるとてつもなく複雑な「Funding規定」に多くのページを割いていた。議会が法的に制定を認めている点には触れず、Funding規定のように、債権が借入かどうかという判断そのものではなく、米国グループへの負債Pushdownを通じたBase Erosion対策を規定している点、行政府に与えらえた権限を逸脱しているのではないか、と公表当初から三権分立の観点で合法性を疑う向きもあった。

実はこのSection 385は、財務省がトラウマに陥るような法文で、恐ろしい(?)過去がある。前にも触れたかもしれないけど、その怖すぎる過去をまずは紐解いた上で、今回の進展の話しに移りたい。

Sunday, October 13, 2019

OECDデジタル課税と米国税法改正

つい先日、10月前半にOECDがここ一年弱取り組んできたデジタル課税にかかわる「Secretarial Proposal」を公開した。日本でも大きく報道され議論を呼んでいると思うけど、このProposalの対象となるピラー1はデジタル化する経済下での新たな国際課税ルールの構築、すなわち物理的プレゼンスなしでも課税、その際にどのように各国に利益を配賦するべきか、のグローバル・コンセンサス作りを目的としている。米国大手ハイテクをどのように各国が課税して、良くメディアが使うフレーズである「GAFA課税逃れ」に網を掛けるか、そして各国税務当局の目から見た「Fair Share」のタックスを支払わせるか、っていうレトリックから始まっている議論。今回のProposalでは直接カバーされていないピラー2はデジタル課税と直接的な関係は低いように見えるけど、米国税制改正で導入された新たなクロスボーダー課税であるGILTIやBEATに触発された切り口の提案。GAFA等の米国企業のイノベーションは米国で構築されている点、元来から米国企業が合法的なクロスボーダー・タックスプラニング(すなわちBase Erosion)に熱心に取り組んできた点、そして世界最高の法人税率とWW課税とは言えSub F以外は永遠にDeferralが可能な税制、等諸々の独特な背景があり、GILTI、FDII、BEAT、Anti-Hybrid、(新)163(j)、税率引き下げ、を複合的に組み合わせて手を打ったのが米国税制改正。この一部を借用するような形で、OECDのピラー2では、米国の立法趣旨とは異なる切口で、各国が法人税率をどんどん下げたりするのはその国の勝手だけど、そんなことしても、本店所在地で差額のタックスを課したり、低税率国にある関連会社に費用を支払っても損金算入できない、とすることで低税率化のトレンドを無意味にする効果を達成しようとしているようなイメージを受ける。

各論には賛否両論あると思うけど、今後の国際課税ルールに関してグローバルで原則的なコンセンサスを得ないといけないっていうのはその通りで、そのためにOECDがInclusiveに頑張っている中での「Secretarial Proposal」。企業側もとにかく「予見可能性」を高めてもらいたい訳だからグローバル・コンセンサスは基本ウェルカムなはず。問題はそのようなコンセンサスは幻想的とまでは言わないまでも、玉石混淆の世界では達成がとても難しいという点だろう。

まず第一に、忘れてはいけないのはこの「Secretarial Proposal」の位置づけ。これで世界が終わっちゃったり、各国が法律を制定するというものではなく、今後、関係諸国と調整を進めるためのステージ作りと考えるといいだろう。決してテクニカルな部分を詳細に規定するような意図はなく、むしろポリティカルにグローバルコン・センサスを取り付ける前提を提示しているものと言える。

OECDがアグレッシブなタイムスケジュールで事を推し進めている背景には、さっさとグローバル・コンセンサスを取り付けないと、セッカチな国やEUとかが独自のDST導入を決定・検討する流れがあり、そのような状況を放っておくと国際課税システムの無秩序化が必至という厳しい現実がある。今回、OECD側の予定通りの進展を誇示することで、各国を牽制する目的があるはず。何らかのハイレベルな原則に基本合意できれば、勝者と敗者が必ず混在する新国際課税ルールに関して、敗者側の納得感を担保し易くなる。テクニカルにいかに完璧でも、各国のポリティカルな事情でコンセンサスに至ることができなければ砂上の楼閣となってしまい、せっかくの試みが瓦解するのは素人でも想像に難くない。まずは比較的シンプルな原則に関してポリティカルなコンセンサス取り付けに注力するしかないだろう。

先に公開されていたピラー1では、「ユーザーベース、Market Intangible、デジタルPE」という3つのアプローチが提案されてたけど、3月にパリで開催されたヘアリングその他の各界からのインプットに基づいて、基本的なアプローチはMarket Intangibleに集約されてきている。他の2案がどちらかというと未焼成の状態にあったと言えるので、これは大方予想通り。ユーザーベースは対象が狭義(GAFA等)で、長期的な国際課税フレームワークとしては若干Sustainabilityに欠ける観があったし、そもそもユーザーがどこの国に居るという判断をどうやってするのか、っていう米国FDIIのユーザー地証明義務に準じる実務的な問題が付きまとう。第三の「拡大PE案」は、そもそもピラー1では物理的PEなしでも課税と言うのが大原則だったはずなので、それ以上のインパクトや具体性に乏しく、今から第三の案をじっくり時間を掛けて構築してヒマはない、ということで消去法(?)に基づきMarket Intangibleに。

ピラー1の大前提である物理的なプレゼンスがなくても各国に課税権を認めるという議論は、米国の2018 年の最高裁判決South Dakota v. Wayfairにも通じるものがある。Wayfairは米国の憲法下でのSales Tax徴収の話しで、憲法のような法的なフレームワークが存在しない世界各国に同様の議論を適用するのは施行面でチャレンジ度合いが段違いに高いけど、概念的には同じ方向。PEという用語は物理的プレゼンスが求められるように感じるケースが多いせいか、最近は代わりに「Nexus」という用語が使われることが多い。米国では州の課税権や、他の民法上の裁判管轄権の話しで古くからよく使う用語なので馴染み深いけど、日本の新聞報道とかでは意外に訳に苦労しているように感じる。「Nexus」とは、国(米国では国同様の州も)が自国の法律を誰かに行使しようとする際に、その者が法律を行使されるに足ると判断されるその国との「最低限の接触」を持っているということ、すなわち法的管轄権のことだ。高級車のブランドや法律のリサーチをする際のOnlineツールと勘違いしないようにね。

Market Intangibleに賛同する者がおおいのは、Market Intangibleの考え方、簡単に言えばDistribution等の活動にまずルーティン所得を配賦し超過利益はスプリットするというもの、は既存の国際課税・TPの考え方に一番近いという理由もあるだろう。従来の考え方から余りに逸脱するルールでは混乱がより大きい。米国財務省は、各国による一方的なDSTは、経済的な利益とは関係のないグロスベースで論じられることが多く、米国側でFTC不適格の可能性が高く、また条約上の取り扱いも不明、等諸々の理由で国際課税フレームワークの中での取り扱いが不透明で、かつDSTが米国企業狙い撃ちしているのは明らかでけしからん、ということで、グローバルコンセンサスが得られるのであれば「積極的」にOEDCの議論には参加する一方、一方的なDSTには断固反対を明言している。その上で、ピラー1の中では上述のような理由でMarket Intangible案を渋々(?)容認している。グローバルレベルで何か合意しておかないと、各国独自のDSTで米国企業が狙い撃ちされるので、グローバル・コンセンサス作りに積極的に参加する流れは自然。ALPとは必ずしも整合性のない利益配賦に同調した点に驚愕した向きもあると思うけど、結局は同調せざる得ないのも、この期に及んで学術的な議論をしていても無駄、という認識があるからだろう。DSTは米国企業狙いではない、と各国が言っても「GAFAタックス」と言っている位だから(苦笑)、多くの負担は米国企業。

Intangibleに基づく超過利益をどのように算定するか、云々の具体的な話しは「Secretarial Proposal」の性格を考えると、時期尚早だと思うけど、一つ想定・期待されるのは、米国が税制改正でGILTIおよびFDIIのセットで米国が国外事業をどこから展開しても米国税務上はニュートラルとした際に、有形償却資産の税務簿価x10%を超過する額はIntangibleからの超過利益と法的に認定したように、各国に配賦対象となる超過利益の算定は「解釈の余地がない機械的な算定法」に「世界中の国」が合意する必要がある点を明確にすることだろう。できるかな?Imagineじゃないけど「Wonder if you can...」。経済的に超過利益がいくらなのか、という話しは、今後の議論の流れの中では無意味で、GILTI・FDIIのように、一定の少額部分の利益を除き、全ての所得が超過利益とみなされると考えておけばいいし、どんなに乱暴な算定法でも各国がそれに合意することの方が重要。予見可能性と係争の最小限化が企業の願うところだろう。

OECDによりパンドラの箱は開けられてしまったので、日本や日本企業として提言していくべき点は、何をもって課税権を行使できるか、どのように利益を配賦するかという2点に関して、極力機械的なフォーミュラに世界中が合意しないといけないという点の強調。そして、それでも係争は後を絶たないだろうから、強固なDispute Resolutionを構築していくこと。これらが日本企業からみたベストなインプットだろう。Dispute Resolutionて言っても、国内の話しだったら法律があり、罰金・禁固・資産没収とかのリコースがあるけど、国家間のDispute Resolutionは、「こんな判定はただの紙切れ」とか言ってその結果に従わない国が出てきたときにどうするのか。まさか戦争したり経済制裁を加えてEnforceする訳にもいかないだろうし。問題は山積み。

という訳で、「Secretarial Proposal」に対する第一印象でした。ピラー2はこれからだけど、そのモデル(?)となっているGILTI(FDIIとのセット)は米国外ではその趣旨が良く理解されていないと思うので、その心は今後機会があったらポスティングしていきたい。NYCとかでEYの日本語セミナーに来てくれた方は散々聞かされてるからもういい、って感じかもしれないけど懲りずによろしくね。

Sunday, September 15, 2019

日米租税条約議定書発効と仲裁手続き

前回、条約の改正と源泉税に関して、ファンドの話しなんかにも至りながら思いつくままに書いてみたけど、今回は、条約改正の目玉と言える二国間協議で解決しきれない問題に対する仲裁手続きの導入について簡単に触れてみたい。

仲裁手続きを語るには、その前提となる二国間協議に触れておく必要がある。二国間協議、相互協議、英語で言うとMAP(地図じゃなくてMutual Agreement Procedureのこと)、Competent Authority、とかいろんな用語が使用されるけど、基本的に意味は一緒。前回のポスティングで触れた通り条約は二国間の契約だけど、どちらかの国で条約不適合と考えられる課税を受けるような事案があれば、二国間で話し合って解決に「努める」という規定だ。二国間協議というと移転価格問題にかかわる事案が多いけど、制度的には条約不適合であれば何でも応じてくれる。特にPE有無とか、PE帰属所得の範囲、裁量で決めるLOBとか、Resourcingに基づくFTCとか、他国に比べて日本企業ももっと活用したらいい。LOB事案以外はタダだし。米国では二国間協議に対応する相互協議担当は移転価格担当のAPMAとそれ以外の事案担当のTAITの2つに分かれている。PEだけはAPMAとTAITが協働し、TAITがPE有無の判断、APMAが帰属所得の算定、を担当する

二国間で解決に努めるって言うと、単に努力するっていう感じにも取れるけど、英語では「Endeavor」と言って、普通の努力よりもSincereかつFormalに頑張るっていう意味が含蓄・内包されている感じがする。ただ、「Endeavor」しても、努めても、絶対に解決するという訳ではない。米国が関与する二国間協議の解決率は一般に90%以上のはずで、さらに日米間のように古くから移転価格問題を中心に二国間協議の歴史が長い間柄となると、確率はもっといいかも。二国間協議の解決率、所要期間等の統計は、OECDかどっかのウェブサイトに記載されていたと思うので、興味がある方は見てみるといいだろう。

この二国間協議、あくまでも条約を締結している当事者となる二国間の協議だから、事案そのものはもちろんどちらかの国の納税者にかかわるものだけど、協議そのものに納税者が参加したりすることは認められない。「我々の事案なので、自ら相手国の税務当局に想いを・・」と勇みたくなるかもしれないけど、あくまでも二国間の交渉となる。基本、両国間のやり取りや、更正を行った国が相手国に提出するポジションペーパーなんかも納税者が閲覧することは認めらない。

で、「Endeavor」したけど、物別れに終わるケースでは、各々の国の内国法に基づく救済措置を利用するしかなくなる。米国で言うと、IRS内のAppealとか裁判所で戦う、などの方法だ。ただ、各々の国で解決を試みるということは、租税条約に基づく救済ではないので、二重課税の排除が不可能となることが多い。そこで、条約を有するにもかかわらず、二国間の二重課税問題が最終的に解決をみないまま、封印されてしまう可能性があることは好ましくないということで、追加策として仲裁手続きを導入しようというグローバルトレンドがある。確かに最終的な決定、Finalityを実現するのは重要で、仲裁手続き導入の第一の目的と言えるけど、仲裁手続きの導入のもう一つの効果として、実務的にはこっちの方が大きいように思うけど、二国間協議を担当する両国の税務当局に24カ月以内に解決に至るようなプレッシャーやインセンティブを提供するというものがある。

日米租税条約で導入される仲裁手続きは、米国が既にカナダ、フランス、ベルギー等との条約で規定されている他の仲裁手続き同様、ベースボール方式と言って、仲裁パネルは双方の国のポジションのどちらかを選択して勝者を選択することしか認められない。すなわち、中間を取ったり、仲裁パネルが独自のポジションを編み出したりすることは認められない。となると、二国間協議に臨む両国は、余り限界に挑戦するようなポジションや自己中心的なポジションを主張して頑張ると、相手国がより節操のあるポジションを提示してきている場合、仲裁に持ち込まれると勝ち目がない。このことから、双方がより合理的なポジションを提示せざるを得ない傾向が強まると言える。

さらに、グローバル的に二国間協議に要する期間を24カ月以内にしたいというトレンドがあり、日米租税条約に導入された仲裁も、二国間協議に必要な情報を提出してから基本的に24カ月経過しても解決を見ない事案に申請が認められる。このことから、自ずと二国間協議を当期間内に何とか終了させたいというインセンティブも生じることとなる。

ちなみに条約上、事前価格合意、すなわちAPAも二国間協議の一つと位置付けられているけど、仲裁は、条約の趣旨に反する「課税を受けた事案」が対象となる。なので、APAの合意がなかなか実現しないケースをいきなり仲裁に持ち込むことはできない。としか読めない。DCのTP専門チームには、カナダとかベルギーとの条約では認められるので、日米でも今後更なる改正で可能にならないか、みたいな議論はある。あれらの国とはMOUとかで「できる」って明記してあるので、日米とは異なると思うんだけど、今後相互協議室間で追加合意でもするんだろうか。ただ、APAは既に二国間協議の申請を行っていると同様の位置づけなので、議定書では、仮にAPAでカバーされる取引に関して、APAが合意されていない状態でどちらかの国が更正を行う場合には、通常の更正と異なり、それ以上二国間協議を申し立てる必要はなく、いきなり仲裁に持ち込むことができる、としている。

APAと関係ない取引の場合、二国間協議のために両国に必要情報を全て提出し終えた日から2年経過するまで仲裁申し立てはできないけど、APAでカバーされる対象取引に関して、更正を受けた場合には、更正通知から6カ月を経過した時点でいきなり仲裁に持ち込むことができる。ただ、APAの検討に必要となる情報を両国に提供してから2年間は仮にこの6カ月という期間を充たしていても仲裁の申請は認められない、としている。 そもそも、APAでカバーされている取引を両国が検討している最中に、税務調査チームが一方的に更正を通知してくることは実務的には考え難い。となると、これはAPAを申請したけど、APA合意に至らないで終わってしまったケースにかかわる短縮手続きと言っていいかもね。それともDCの人たちが期待しているように今後、別契約でAPAだけの状態で仲裁手続きに持ち込めるようなことになるんだろうか。

Sunday, September 8, 2019

日米租税条約議定書発効と源泉税

数回に亘り、批准の動向をポスティングしてきた2013年の日米租税条約の議定書だけど、ついに8月30日に6年越しの米国批准手続きを経て発効した。議定書とかProtocolっていうと名前が堅苦しいけど、要は2003年の日米租税条約の改正のこと。既に簡単な内容とか議定書そのものが発効した後に、各規定が実際に効果を持ち始めるタイミングは前回までのポスティングでカバー済みなので、ここで繰り返えす必要はないけど、発効が際どく8月中だったので、源泉税の軽減は11月1日以降の支払いから有効となる点は一応注目に値する。

例えば、米国の観点からは、支払利息は法的な支払いタイミングが11月1日以降であれば、利息算定の基となる経過期間に10月31日以前の期間が含まれていても源泉税率はゼロ%となる。発生ベースで考える必要はない。源泉税課税が法的に発生するのはあくまで支払いのタイミングだからだ。もちろん、相殺とか元本組み入れは支払い同様と取り扱われる。

源泉税率の軽減って、条約の趣旨が一番分かり易く具現化されてるって感じ。源泉税は支払側が徴収して納付するけど、あくまで受け手の代理人という身分で行っている訳で、実際の納税者は利息等を受け取る外国人。したがって、源泉税はECIやPE帰属所得に対する申告課税と並び「Resident Country」ではない側の国が「Sourcing Country」として外国人に課税権を行使するパターンの典型。条約の特権を受けることができない場合、米国内国法では投資所得は原則30%の源泉税対象となる。

で、租税条約による源泉税率の軽減は、内国法で認められるSourcing Country側の課税を緩和するという、これまた典型的な条約の軽減措置。租税条約っていうのは通常の契約と同様に、締結国が各々のSourcing Countryとしての課税権の一部を軽減・緩和するという「対価」の交換をもって成立する二国間の法的な契約。日本では元々20%、米国では30%の源泉税をお互いにゼロにするので、個々の規定ベースでは対価の価値は必ずしもパラレルではないけどね。契約法をかじったことがある人は分かると思うけど、契約が成立する要件の一つとなる「対価」は、お金を払ったり、サービスを提供したりする行為ばかりでなく、法的な権利を自ら放棄することでも立派に構成させることができる。

外国関連者に源泉税対象となる支払いを行う際、米国税法では米国支払い側の当金額にかかわる損金算入は発生ベースではなく、支払ベースの現金主義で認められるのが原則。これは課税と損金のマッチング概念。受け手となる外国人が米国で課税される、すなわち源泉税が課せられるタイミングと損金算入のタイミングを合わせようとするもの。なので損金算入をトリガーする「支払い」の定義も源泉税をトリガーする取引と規定されている。このようなマッチング規定がないと、関連者に発生する利息とかロイヤルティーを長期に亘り未払いの状態を続けることで、損金側だけ発生ベースで認識し、外国関連者側の米国における所得認識を延々と繰り延べることが可能となってしまう。

課税が支払いベースっていうのを利用して、長期間に亘り所得認識を繰り延べる案を見るたびに、Section 457Aで網が掛けられる前の、ヘッジファンドマネージャーがケイマンとかのオフショアフィーダーから受け取るIncentive Fee(CarryみたいなIncentive Allocationではなく)を10年も繰り延べしていた姿を思い出して苦笑してしまう。ヘッジファンドとかPEのスポンサーたちみたいに、常に自ら限界に挑戦し、かついろんなプロフィールの投資家全ての米国課税関係に応えようとする(でないと次の投資家が集まらないしね)クライアントを持っているとそれはそれは勉強になる。ファンドのスポンサーはどんなにお金持ちでもNY気質で気が短く激しいので失敗は許されないし。でも現実には複雑なストラクチャーになればなるほど、ストラクチャーや申告が100%クリーンと言うのは難しい、というか不可能っていうのが実務家の視点(言い訳?)。それにしてもヘッジファンドは源泉税とかに対する感度も際立ってると言える。

ケイマンフィーダーと言えば、PEの世界ではPEがパススルーに投資する際に毎回組成されるAIVの一部を構成することがあるし、ヘッジファンド投資は流動性が高いのでAIVは不向きとなることから、ヘッジファンドの世界ではファンドをストラクチャーする際にもともと単純にケイマン法人を組成して、「普通の」非課税団体(CalPERS、SERS、NCRS、MainPERSみたいな州の一部となるスーパー非課税団体ではないという意味で普通の)や日本企業を含む外国からの投資家向けにブロッカーとして用意してたけど、ヘッジファンドのオフショアフィーダーがデラウェア州LPSであるマスターファンド、またはブロッカー直下のミニマスターファンド経由で受け取る配当所得が30%源泉税の対象となる問題がある。ケイマン法人だからもちろん条約はないしね。利子所得は条約有無にかかわらず、元々基本的に利益連動や関連者からのものでない限りそもそも内国法で源泉税対象でないから問題ないけど。ヘッジファンドは派手にトレーディングするから、配当所得は少ないかもしれないけど、それでも状況次第では30%源泉税対象となる投資がある程度のポーションを占めると、投資リターンには悪影響。

で、配当に対する30%源泉の問題は、従来、スワップ、しかもデルタワンのスワップで解決するっていうのがヘッジファンド界の常識というか、常套手段だった。というのは想定元本から受け取る所得は配当ではないので、受け手の居住地を基に源泉地を決めるというのが基本的な考え方だからだ。そんな安易な源泉税回避法に業を煮やした議会がSection 871(m)を導入し、デルタワンスワップ策は封じ込められてしまった。 だったらと、今度はケイマン法人ではなくケイマンLPSでせめて条約締結国の投資家には条約に基づく10%とか15%の軽減税率で源泉税が済むように工夫するようなトレンドになっている。投資家のクラス次第だけど。SWFなんかはだったらオフショアフィーダーに鞍替えしてるのかな。マスターファンドでCommercial Activitiesがないと信じてるんだったら引き続きドメスティックフィーダーなのかもね。一方、UBTIが発生したら困まる「普通の」非課税団体から見ると、派手にレバレッジを導入するヘッジファンドがパススルーでは大変。だったらと、彼らのためにCTBしてあげたりして。う~ん、概念的にはシンプルでも、実務的にW-8とか、とてもファンドのバックオフィスがペーパーワークに耐え得ないのでは、って心配になってくる複雑なストラクチャーだ。源泉税コストっていうのは投資の世界ではとても重要。

で、話しが何となく脱線してきたけど、米国税法では、源泉税対象となる支払いの米国支払い側の損金算入は発生ベースではなく、支払ベース、すなわち現金主義で認められるのが原則っていう上の話しの続き。源泉税が条約でゼロ%となる場合、このマッチングは意味がない。支払っても支払ってなくても源泉税がなく、タイミングにかかわらず米国はSourcing Countryとしての課税権を完全に諦めてしまっているので、マッチングする相手がいない。だったら支払い側の損金算入は通常の内国法のAll-Eventテストで判断すればいいのでは?ということになる。

で、ここからはロジックでは説明できないけど、判例その他の沿革があり、現状の財務省規則下では、支払利息に関しては例え条約で源泉税がゼロ%でも外国の関連者に対するものは現金主義でのみ損金算入が認められる。マッチングするものがなくてもね。一方、支払利息以外、典型的な例はロイヤルティーだけど、に関しては条約で源泉税がゼロ%となる場合、マッチングのしようがないので、発生ベースで損金算入となる。したがって日本の親会社に支払うロイヤルティーは条約で源泉税が免除されている限り、2003年以降、発生ベースで損金算入できる一方、2019年11月1日以降に支払う利息の源泉税がゼロ%になるからと言って、発生ベースを適用することはできず、支払利息の損金算入は支払い時点まで待たないと認められない。その場合、Section 163(j)とか他の制限規定がキックインしてくるのも支払い時点だ。支払利息は目の敵にされていて、他の所得と異なり、外国関連者に対するものである限り、米国源泉でなくても支払うまで損金算入が認められない。米国源泉でなければ源泉税の対象でないので、マッチングの必要はなくこれもチョッと不思議。

ちなみに源泉税率が軽減されているけどゼロでないケースは、外国関連者への支払い全額に関して現金主義に基づく損金算入が求められる。BEATとか旧163(j)適用時には、30%が10%に軽減されているようなケースでは支払いを3分の1と3分の2に分岐して取り扱いを決めてたけど、Section 267目的ではそんなことはしない。

ということで、議定書による改正でインパクトが大きいのは関連者間の支払利息に対する源泉税、仲裁規定、不動産持分法人の定義だけど、仲裁は二国間協議との絡みで面白いので次回、チラッと触れてみたい。

Wednesday, July 17, 2019

日米租税条約「議定書」6年越しの批准

昨日、スペインの議定書が上院で批准されたが、今日(2019年7月17日)日本の議定書も圧倒的多数でめでたく批准された。議定書の合意は2013年1月24日だから、実に6年6カ月経ってようやく米国側の批准が完了したことになる。ちなみに日本の国会は2013年6月に批准を早々に終えているので、随分待たされた感じ。議定書に「批准書は、できる限り速やかに交換されるものとする」と両国が宣言しているのがおかしい。

昨日のポスティングでも触れたけど、今後、日米間で批准文書の交換が行われて正式に発効に漕ぎつける。後は形式的な手続きと言えるけど、米国でまず批准文書がドラフトされ、国務省が大統領府間と調整して大統領による署名を行う。署名されたら日米で文書交換され、議定書はめでたく発効となる。

で、実は議定書自体はそれで効力が発生するけど、実際に源泉税に関しては効力発生日から3カ月後を含む月の初日から実際の適用がある。以前に支払利息の支払いをもうチョッと待てばゼロ%というようなことを書いたことがあるけど、正確には仮に7月に批准書が交換されたら、10月1日から源泉税が下がる。源泉税以外の税金に関しては、議定書の効力発生後の1月1日以降に開始する課税年度から適用となる。源泉税に関しては、トランプ大統領が7月中に署名するか、8月にずれ込むか、で発効タイミングが10月1日となるか11月1日となるか、差が出ることになるね。他はいずれにしても2020年1月1日以降に開始する課税年度から、が原則。例外は仲裁手続き、情報交換、租税徴収支援で、これらに関しては批准書交換時から適用となる。

もう忘れてしまった人も多いと思うけど、議定書の目玉は源泉税の更なる軽減、仲裁手続きの導入、租税徴収にかかわる相互援助の拡大。源泉税に関しては支払利息に対する源泉税が撤廃されたのと、配当に対する源泉税率0%の適格要件のうち、「50%超」の持分保有割合要件が「50%以上」に、また「12カ月」の保有期間要件が「6カ月」に緩和されている。

ちょっとオタクっぽいけど、米国不動産持分(USRPI)の定義が、日米租税条約特有の有利な定義から米国内国法の定義に統一されている。外国人が米国の不動産を譲渡すると、譲渡損益はみなし事業所得となり、申告課税の対象となる。その際、この不動産の定義には米国法人株式が含まれる。米国法人株式は、上場企業の5%未満株主のケースを除き、原則、自動的にUSRPIとみなさるけど、米国法人が「過去5年間」に一度も米国不動産保有法人、すなわちUSRPIが資産時価に占める割合が50%超の法人、でなかったことを証明できる場合には、その株式はUSRPIの定義から除外されることになっている。これは米国内国法の定義だけど、従来の条約では、5年テストを適用せず、「株式譲渡時点」において米国不動産保有法人でなければ当該株式はUSRPIとならないと、日本居住者に有利な規定となっていた。今回の改正では残念ながら、この有利な定義は撤廃となり、米国内国法のUSRPIの定義で全てを整理することとなった。ちょっとループホールみたいな恩典だったから仕方がないかもね。

ということで速報でした。

Tuesday, July 16, 2019

スペイン租税条約「議定書」批准・日米は明日

米国時間16日火曜日、上院は本会議で長年眠っていた米国・スペイン租税条約の議定書を圧倒的多数で可決した。ケンタッキー州のとある酒造屋さんがスペインとの議定書を批准して欲しい、と地元の上院議員Mitch McCornellに懇願したことに始る租税条約批准手続きだけに、まずはスペインから取り上げられたのだろう。

Rand Paulは投票前に、情報交換規定が米国市民のプライバシーを侵害するリスクがあるという演説をしたばかりでなく、情報交換規定の条件をタイトにする修正案を提出したようだけど、修正案はあっけなく却下され、議定書は94対2で可決された。Rand Paul以外にも一人反対票を投じた議員が居ることになるけど誰だろうね。最近の上院は全て51対49とか、党ラインできれいに票が割れ、超党的に可決されることはなかっただけに94対2という投票結果は新鮮。スイス、日本、ルクセンブルクの議定書は、明日(17日)DCで審議が開始される。スイスの次に日本の投票となるそうだから早ければ明日中に批准が完了することになる。Stay Tuned。

ちなみに議定書が法的効果を持つのは日米間で批准文書の交換が行われた日となる。米国側の上院批准後の手続きとしては、批准文書がドラフトされ大統領がこれに署名する。大統領による署名手続きは国務省と大統領府間での調整マターとなるので、どれだけ直ぐ実現するかチョッと不明。トランプ大統領がTwitter投稿に忙しかったりすると、一週間から数週間掛かる可能性もある。で、署名されたら日米で文書交換され、議定書がめでたく発効となる。文書交換時には両政府より何らかの発表があるだろう。

Saturday, July 13, 2019

日米租税条約「議定書」いよいよ来週批准?

さすがMitch McCornnellとしかいいようがない。10年近く停滞していた条約の批准プロセスが、McConnellの鶴の一声でいきなり始動し、「Senate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)」で早々に日本、スイス、ルクセンブルグ、スペイン4か国との議定書が可決され、何と、数カ月前までは到底不可能と考えられていた本会議における議場審議および可決投票が来週早々にも敢行されるらしい。この辺りの最近の進展に関しては「日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??」「日米租税条約「議定書」本当に批准間近(2)?」で特集しているのでぜひ参照して欲しい。

条約ブロッカーのRand Paulは、この期に及んでも「簡素手続きに基づく安易な可決は許さない」と最後の抵抗を試みてるようだけど、ここまで来たら超劣勢というか万事休すに近い。本会議で正式手続きさえ踏めば、時間は掛かるけど3分の2の多数決で批准できる訳だからRand Paulが一人で反対票を投じても焼け石に水。いよいよ時間の問題だ。政治家は票をどれだけ集められるかが最終的には勝負だから、一票ではね。票と言えば、条約とは全然関係ないけど、下院のNancy Pelosiと新人議員の力の差異も結局はここに尽きるね。

それにしてもやはり持つべきは影響力を持つ地元議員。ポリティクスはLocalという誰かの名言があるけど本当にその通り。新人議員とかがTweeterで誹謗中傷合戦を演じてユートピア的な話しに終始している間に、McConnellは地元ケンタッキーのスペイン系(?)の酒造のためにここまで尽力していたとは。日本の議定書も棚ぼた的に日の目を見ることになりそうな展開で、ケンタッキーの酒造屋さんに感謝。日本でFTCの枠が十分ないような会社は、週末に米国から利息支払って10%源泉とかにならないように。来週まで待てばゼロ%かもしれないからねって、思ってたけど、良く見たら議定書自体の効力は批准文書交換時だけど、源泉税はその3か月後の1日からだから、10月まで待たないとダメでした。

Saturday, July 6, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (5)

前回はSub FやGILTI課税の適用時の米国パートナーシップの取り扱いを語る際に避けては通れないSection 318の概要だった。で、今回はこの複雑なSection 318のクロスボーダー課税への適用に関して引き続き・・・と思ってたら、「Happy 4th」の独立記念日が訪れた。Thanksgiving、クリスマス~新年と並び、米国企業、そして自分が属する米国Firmの活動が急にストップまたはスローダウンするので、日本以外からのメールが急減していつもより時間ができる。5月の日本10連休の際は日本企業や日本Firmからのメールが一斉にストップして、その際も朝起きてOvernightで溜まったメールが少なくて健やか(?)な時期を過ごすことができたけど、どちらかと言うと米国FirmがCloseしている方が、Firm内のインターナル系の諸々のメールが減るので、よりテクニカルなことに時間を避くことができる感じ。なんで、ブログのポスティングも比較的サクサクとアップデートできたりしている。

独立記念日と言えば花火。East RiverのBrooklyn Bridgeエリアから摩天楼をバックに70,000発打ち上げられたNYCの花火は圧巻。ちなみに隅田川の花火は20,000発だそうだ。ギネスのドバイの50万発には及ばないけど、ManhattanとQueensというビル密集の間でやるので実際の発数よりも迫力。その昔、物心ついたころに、自由が丘の自宅の洗濯干し場(なぜか屋根の上に舞台みたいに洗濯ものを干すエリアがあった)から多摩川の花火を、当時とても貴重だった「アイスキャンディー」を「きくそうやさん」(としか覚えてないんだけど、近所の駄菓子屋)から届けてもらい、見ていた夏を思い出す。あれも今思えば二子橋の辺でやってた花火大会だろう。多摩川の二子橋が、East RiverのBrooklyn Bridgeに変わっただけで、結局夏は川に掛けられた橋の花火大会を満喫しているところがおかしい。しかも気付いたらレモンシャーベット(テクニカルにはレモンジェラート)を食べながら見てたので、かなりのDéjà vu(?)ぶり。だけど、遠い昔とは言え、本当に過去に体験しているのでDéjà vuという表現は間違いだね。NYCって街はチョッと汚くて、古くて他の街みたいに整然としたところがないけど、実は効率的にできていて、アメリカの他の街では感じられない魅力満載。独立記念日の花火のバックに見える街を見ていると、ますますそんな気にさせてくれる。花火大会前のコンサートもLuke Bryan, Brad Paisley, Derek Hough, Jennifer Hudson, Ciara、Khalidと一流どころが揃ってた。

で、花火も終わったので、またクロスボーダー課税と株式保有の話し。外国法人の株式を誰が何%保有してるかって言うと、一瞬簡単な事実認定に聞こえるかもしれないけど、実際にはこれが複雑。外国法人の株主に米国株主が存在するか、外国法人がCFCになるか、米国株主が合算株主となるか、合算株主に帰属するPro-rataのSub FやTested Income等の合算額はいくらか、というクロスボーダー課税の検討各ステップで、株主保有%の正確な把握は避けては通れない確認事項。

前回、保有持分の考え方は「直接」「間接」「みなし」の3通りがある点に触れ、「みなし」保有はSub CのSection 318を借用して決定する点に触れた。ここでさらに、検討を複雑にしているのが、Section 318をクロスボーダー課税目的で借用する際、元祖Section 318を部分的に変更している点だ。ただでさえ複雑なSection 318に追加の部分的変更を加えることで、規則の難易度はアップするけど、これらの微調整は、米国内の組織再編等と必ずしも事情が同じでないクロスボーダー課税への影響を思慮深く反映している。元祖Section 318に対するクロスボーダー課税検討時の変更は次の通り。

まず、家族間のみなし保有規定を適用する際、「非居住者外国人」が保有している株式を、「米国市民・米国居住者」が保有しているとみなすことはない。例えば、日本に住んでいる日本人でグリーンカードを保有していないお父さん・お母さんが保有する株式は、仮に息子や娘が米国籍・グリーンカードを保有していたり、米国にF、J、M、Qビザ以外(これらのビザ保有者は連邦税法上、非居住者扱いとなるケースがほとんど)で居住していても、この例外規定があるお陰で、お父さん・お母さんが保有する株式、例えば、日本の自分の会社がCFCになったりしない。

次に、事業主体が保有する株式は、持分保有比率に応じて事業主体のオーナーが保有していると取り扱うUpward Attribution適用時に、もしオーナーが事業主体の50%超の議決権を有している場合には、元祖Section 318の持分相応ではなく、事業主体が保有している「全」株式をオーナーが保有していると取り扱う。例えば、事業主体が外国法人の100%株式を保有し、この事業主体の持分を80%保有しているオーナーが居るとすると、Sub Cの「通常」のSection 318ではUpward Attributionを事業主体に対する持分に応じて外国法人の株式保有%を決定することができるため、オーナーは外国法人の80%を保有していることになる。ところがクロスボーダー課税を考える際には、オーナーは事業主体の持分を50%超保有していることから、事業主体が保有する外国法人の株式100%をまるまる保有していると取り扱う。

更に、Upward Attributionを適用する際、法人から株主にみなし持分がフローアップしてくる際、Sub Cの「通常」のSection 318では、前回のポスティングで触れた通り、価値ベースで50%以上の持分を保有する株主に対してのみ、法人が保有する株式を、価値ベースの持分に応じて株主が保有しているものと取り扱うが、クロスボーダー課税の適用時には、50%以上ではなく、同じく価値ベースで10%以上の持分を保有する株主は、法人が保有する株式を価値ベースの持分に応じて保有していると取り扱われる。もちろん、上述の2つめの例外があるので、50%超の議決権を保有する場合には、持分ベースではなく、全株式を保有していると取り扱われる。ちなみにこれらのルールを読んで気付いたと思うけど、持分の判断時に議決権を見るのか価値を見るのか、両方を見るのか、の区別が重要。Sub Cの組織再編とか現物出資の際の「Control」要件と連結納税や適格再編の際の「Control」要件も、どのクラスの株式の何を見るのかの部分に差異があり、トリッキーであると同時にプラニングの温床となってるのにチョッと似てる。う~んDeep。

で、実は税制改正前は「3つ目の例外」があった。それはクロスボーダー課税を考える際には、Downward Attributionを適用して、米国人でない者(外国法人、外国パートナーシップを含む)が保有する株式を、米国人(米国法人、米国パートナーシップを含む)が保有しているとは取り扱わない、というものだった。家族関係に基づくみなし保有の例外に似てるけど、税制改正でナンとこの3つ目の貴重な例外が撤廃されてしまった。この改正のせいで、Section 318のDownward Attributionをクロスボーダー課税を考える際に常に適用しないといけなくなり、日本企業のように米国が頂点でないグループとかファンドは急に多くのCFCを保有しているとみなされる結果となっている。この変更の立法趣旨は、濫用に網を掛ける目的とされているけど、両院の法案をバタバタとすり合わせる過程で、法文の微調整を行うことができず、結果として、法文を読む限り、全ての状況でDownward Attributionが適用されることになる。この点にかかわるTechnical Correctionという法文修正案が「ドラフト」されているが、法案として議会にも提出されていないし、仮に提出されたとしても下院は民主党の手に堕ちていることから可決の可能性はないに近い。となると、法文に準じて、常にDownward Attributionを適用してSub FとかGILTIを考えないといけない、というかなりインパクトの高い改正となってしまっている。

さて、ここからが話しの神髄。Sub FやGILTIは「CFC」の所得を「米国株主」が合算するというシステム。そのためにはまず誰が米国株主で、それに基づき外国法人がCFCとなるかの判断が必要。CFCは「外国法人の課税年度内に1日でも米国株主が議決権または価値の50%超を保有する外国法人」と規定されている。プエルトリコ、グアム、アメリカンサモア、北マリアナ諸島で組成されている法人に関しては特殊な規定があるが、ここでは余り関連がないので省く。

CFCの定義を読めば分かると思うけど、外国法人がCFCかどうかの判断時には、外国法人の株主に米国株主が存在するかどうかを判断しないといけない。以前のポスティングで触れたけど、ここで言う「米国株主」っていう用語は法的に定義されていて、単に株式を保有している米国人という意味ではなく、10%以上の議決権または価値を保有する米国人を意味する。実は税制改正前は、米国株主は「議決権」10%以上の米国人となっており、価値は判断に影響がなかったけど、濫用が見られるということで価値ベースの判断も加えられた(CFCの定義は以前から議決権または価値)。直接CFCや米国株主の定義には関係ないけど、税制改正による変更と言えば、改正前は外国法人が課税年度内に少なくとも30日間CFCの状態にないと、その課税年度は米国株主によるSub F合算の必要がなかったけど、この30日ルールも濫用防止目的で撤廃され、改正後は一日でもCFCだと合算が必要となった。

米国株主の定義は、Sub F関係の規定ばかりでなくInternal Revenue Code全てに適用される定義とされているので、税法上「United States shareholder」という用語が出て来たら、それはこの定義を充たす者ということになる。

ここで言う米国人の定義は広範で、米国市民、米国居住者、米国パートナーシップ、米国法人、米国遺産、米国裁判所が信託管理に関して主たる法権を持ち、米国人が信託の意思決定を行使できる信託、となっている。今回のテーマ的にはパートナーシップは課税関係はパススルーだけど、この目的では人格を伴う「Person」となっていて、米国パートナーシップも米国人と取り扱われている点が重要。

米国株主を特定したら、それらの者が合算で50%超の議決権または価値を保有する外国法人がCFCとなる。米国株主およびCFCの判断時には、「直接」「間接」「みなし」全ての持分を加味して決定する必要がある。

前半、花火の話しとかしてしまって長くなってきたので、合算株主は次回。

Wednesday, July 3, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (4)

前回のポスティングでは、GILTI最終規則で採択された米国パートナーシップに対するAggregateアプローチに至る変遷等に関して触れたけど、今回はAggregateアプローチの内容そのものに関して。前回も言ったけど、このAggregateアプローチも、テクニカル面の理解は決して容易ではない。Sub FやGILTIを考える際のステップは、「米国株主の特定」、「CFCの特定」、「合算株主の特定」、「合算額の計算」という複数で構成されるけど、各ステップに適用される外国法人に対する持分保有の考え方をステップバイステップで「Dutifully」に適用する必要がある。米国税務の考え方って直感的に理解し難い部分が多いけど、ここもそのひとつ。

で、最終規則では、上の4つの思考ステップのうち、最初の2ステップとなる米国株主の特定およびその結果に基づくCFCの特定は、従来通りパートナーシップも米国株主となる場合は、そのまま米国株主と取り扱って考えるとしている。米国株主の特定時には、3つの持分を合算する必要がある。まずは「直接」保有規定。直接、本当に事実関係として保有している株式のことで、分かり易いし議論の余地のない絶対的な持分だ。

次が「間接」保有規定。ここの部分がパートナーシップを含む米国主体と外国主体を別扱いしている諸悪の根源と言える部分。外国法人、外国パートナーシップ、外国遺産が保有する株式は、各々持分に応じて株主、パートナー、受益者が保有しているものと取り扱うとしている。これは後述のみなし持分規定ではなく、Look-throughする間接持分規定。この間接持分規定は米国パートナーシップを含む「米国」の主体には適用がない。したがって「間接」の保有持分で課税関係を判断する際には、米国パートナーシップのパートナーに持分が「間接」的にフローアップしてくることはない。一方、間接保有規定の適用対象となる外国パートナーシップに関しては、外国パートナーシップが保有する株式は、各パートナーが持分に応じて保有していると取り扱われる。パートナーが外国主体の場合には、この間接持分の適用を反復適用して、最終的に米国パートナシップを含む米国主体に行きついたところで間接持分の適用は終わりとなる。

3つめの保有規定は米国税法、特にSub Cを取り扱う際に亡霊のように常に付きまとう「みなし」保有にかかわるもの。Constructive OwnershipとかAttributionとか言われ、Section 304を含む多くのシチュエーションに登場し、AttributionがまたAttributionしたりして、かなり「頭の体操」的な規定だ。みなし保有を規定している条文は複数あるけど、Sub FではSub CのSection 318を適用するよう規定されている。ちなみに同じ「Sub」でもSub FはSubpart F、Sub CはSubchaprter CだからCの方が格が上(?)だからね。Subpart FはSubchapter Nの一部。Section 318をきちんと理解するのは大変。サワリだけ紹介しておくと、Section 318は元々組織再編、出資、清算、分配その他、「法人と株主間」取引に対する取り扱いを規定しているSub Cに属する規定、しかもSection 318を適用するとわざわざ言及している条文にのみ適用があるもの。Sub Cは法人税(Corporate)部分だけど(だからCって訳ではなくこれは偶然)、法人税申告書となる1120とか作成する際には余り直接的に関係ない。そっちは普通の(?)税法、Section 61とかの世界が支配的だ。で、Section 318だけど、今回のクロスボーダー課税の例に見られるように、Sub C以外の条文でもその適用を「借用」するケースも多い。

Section 318によるみなし保有は大別すると3パターン。一つ目は家族が保有する株式は、同じ家族内の他の者が保有していると取り扱う「家族みなし保有規定」。配偶者、子供(養子含む)、孫、親が保有している株式は本人が保有しているとみなされるという規定。家族みなし保有の規定を読んでいつも面白いな、と思うのが、孫が保有してくる株式は本人、すなわち孫から見たおじいちゃんやおばあちゃんが保有している、ってみなされるのに、逆は規定されていない。一方通行で、おじいちゃんやおばあちゃんが保有している株式に関して、孫が保有しているとは取り扱われないことになる。おじいちゃんやおばあちゃんが、名義的に孫に株式を持たせることはあっても、孫がおじいちゃんやおばあちゃんに株式を保有してもらうようなプラニングは方向的には懸念は少ないということなのだろうか。確かに比較的考え難いよね。あと兄弟も入ってないね。お兄さんとかお姉さんに株式持ってもらったりしたら、勝手に換金化されちゃうリスクがあるからかな。

2つめのみなし保有は事業主体が保有する株式はそのオーナーが持分比率に応じて保有していると取り扱う「Upward Attribution」。なぜUpwardかと言うと、事業主体からその上のオーナーに持分が上がってくるから。ちなみに組織図によってはオーナーが下に来ているようなデザインを見たことあるけど、直感的に分かり難いし、多分どちらかと言うとマイナーな表示法だろう。そんな組織図は、まるで昔の英国のバランスシートが負債が左で、資産が右に来てるやつを見てるみたいだ。Upward Attributionはパートナーシップ、遺産、信託、法人の4タイプの主体と各々のパートナー、受益者、株主に対して規定されている。パートナーシップに関しては、パートナーシップが保有する株式は各パートナーがパートナーシップに対する持分に応じて保有しているものと取り扱われる。法人に関しては、若干規定が緩和されていて、価値ベースで50%以上の持分を保有する株主に対してのみ、法人が保有する株式を、価値ベースの持分に応じて株主が保有していると取り扱う。この部分の「みなし」保有規定は、先に触れたクロスボーダー課税時の外国主体に適用される「間接」保有規定とダブる。ポイントとしては、クロスボーダー課税で「間接」保有を語る際には、米国パートナーシップからのUpwardのAttributionはなく、同じストラクチャーでも「みなし」保有を語る際には、Upward Attributionがあるという点だ。すなわち、クロスボーダー課税の検討時に、パートナーが外国法人の株式を保有していると取り扱われるかどうか、っていう判断をする際に「間接」持分の話しをしているのか、「みなし」持分の話しをしているのか、で同一の事実関係でも税務上の法的な結果は異なることとなる。「なにそれ?」って思うかもしれないけど、条文法というのはそういうもの。

3つめのみなし保有規定は、逆に事業主体のオーナーが保有する株式は事業主体が保有していると取り扱う「Downward Attribution」。この規定は意外な結果を招き易く、直感的に分かり難いという意味で、3つのみなし保有規定の中で一番トリッキー。Upward Attribution同様に対象はパートナーシップ、遺産、信託、法人だけど、適用はチョッと異なる。まず、パートナーシップに関しては、パートナーが保有する株式は「全て」パートナーシップが保有していると取り扱われる。例えば、パートナーシップ持分を1%保有しているパートナーが、別の法人株式を1億株保有している場合、パートナーシップは1億の1%の100万株ではなく、ナンと1億株まるまる保有していると取り扱われてしまう。PEとかHedgeファンドのストラクチャー図を見ると、いつも誰がどの法人株式を何%保有していると取り扱われるのかな~、というメンタルExerciseの世界への突入を禁じ得ないのはDownward Attributionのせい。2017年(場合によっては2018年)の課税年度の一大仕事となったTansition Tax適用時には、Transition Taxの対象となるかどうかの判断をする際に、この規定の影響が大きいこと、またさらに実務的に株式保有の実態をパートナーシップ側で捕捉できない可能性もあることから、Transition Taxの規則案では5%未満、最終規則では10%未満のパートナーからは、Transition Tax目的ではDownward Attributionに基づくみなし保有を無視していいことになっていた。ただし、これはTransition Taxのみに適用される緩和措置で、他の規定に影響はない。法人に関しても、価値ベースで50%以上保有する株主が保有する(他法人の)株式は、全株に関して法人が保有しているように取り扱われる。例えば、複数の100%子会社を世界中に保有する日本法人2社が50・50でJVを米国に法人形態で設立したとする。この米国JV法人は、日本法人2社が保有する世界中の100%子会社は全て保有していると取り扱われる。以前はそうなってもCFCとなるかどうかとかのクロスボーダー課税検討の際には、Downward AttributionはTurn Offするという思慮深い例外規定があったが、この例外規定が税制改正で撤廃されて物議を醸しだしているのはみんなもご存知の通り。ちなみに、この検討時に米国法人のサイズは一切問われない。例えば、大手企業が趣味で米国に100ドル出資して50%以上の株式を保有するホットドッグスタンドやラーメン屋さんを設立したら、大手企業保有の全世界子会社は全てCFCとなる。合算持分が存在するかどうかは別の話しだけど。

この3つの基幹規定に加え、オプションの取り扱いが規定されていて、株式取得オプション保有者は対象となる株式を保有しているものと取り扱われる。株式取得オプションそのものを取得するオプション保有者に関しても同様。

で、一旦「みなし」保有規定に基づき、保有していると取り扱われると、「実際に」保有していると同様に取り扱われるのが原則。すると、そこから更に「みなし」保有が展開していくことがある。ただ、この点に関しては例外が2つあって、まず家族関係でみなし保有していると取り扱われる株式に関しては、その理由で更に他の家族メンバーにみなし保有を生じさせることはない。でないと先祖代々「ひいおじいさん・おばあさん」「ひいひいおじいさん・おばあさん」とか「曾孫」とかにも影響があったり、義理の両親とかに保有関係がいっちゃったり、と制御不能になってしまう。もうひとつの例外は、Downward Attributionされてきたみなし保有が事業主体から他のオーナーにUpward Attributionすることはない、というもの。これ以外の状況では、連鎖反応的に「反復適用」があり得る。例えば、子供が株式を保有している法人が保有している株式に関して、みなしで子供が保有していると取り扱われる場合、当株式は子供が実際に保有している同様に取り扱われるので(この時点では家族間のみなし保有規定の適用ではない)、親もその株式を保有していると取り扱われる(ここが家族間のみなし保有でここから他の家族メンバーには行かない)。となると、親がパートナーシップに少額でも出資していようもんなら、パートナーシップまで、この株式を保有していることになる。そして当パートナーシップが他のパートナーシップや法人の50%以上の持分を保有していると、それらの事業主体も・・、と「風が吹けば桶屋が儲かる」的にチェーンで繋がっていき、最初にチェーンをトリガーした子供とは一切関係がない者にも影響が及ぶことがある。

実際にTransition Taxの規則に取り上げられていた例だけど、米国パートナーシップに10%個人パートナーと5%の法人パートナーが存在してると仮定する。10%個人パートナーは外国法人の10%持分を保有している。90%の他の株主は全員非関連の外国人とすると、Transition Tax目的では、少なくとも一社10%の米国「法人」株主が存在しないと、Transition Taxの対象となる特定外国法人にならないとされていることから、個人パートナーだけを見れば当外国法人は特定外国法人には当たらないことになる。ところが、5%法人パートナーが米国内に100%子会社を保有しているとするとチョッと意外な展開となる。パートナーからパートナーシップに対するDownward Attributionで、パートナーシップは個人パートナーが保有する外国法人10%と法人が保有する100%米国子会社の双方をまるまる保有していると取り扱われる。この段階で米国子会社は実際にパートナーシップに100%保有されていると取り扱われるため、パートナーシップが保有する株式は全て今度は米国子会社にDownward Attributionしてくる。となると、パートナーシップが保有していると取り扱われる外国法人10%(もともと個人パートナーが実際に保有していた株式)は米国子会社保有となる。すると、この外国法人には少なくとも1社、10%以上の米国法人株主が存在することとなり、Transition Taxの対象となる。結果として個人パートナーは外国法人の1987年以降の留保所得に対してTransition Taxを支払うことになる。これはチョッと酷い、また多分知らぬが仏で終わってしまうのでは、ということで上述のTransition Tax適用時のパートナーシップへのDownward Attributionに限って、5%や10%の例外規定が適用されるに至っている。

と、Section 318の概要だったけど、これを知らないとクロスボーダー課税の米国パートナーシップの話しは全く通じないので簡単に背景を共有した。背景だけでだんだん長くなってきたので、次回はいよいよSection 318のクロスボーダー課税への適用に関して。

Tuesday, July 2, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (3)

前回のポスティングでは、GILTIにかかわる財務省規則が最終化されたのを機に、見直しが行われている米国クロスボーダー課税を考える際の「米国パートナーシップ」の取り扱いに関して触れ始めた。クロスボーダー課税を考える際の米国パートナーシップの位置づけは、テクニカルには過去長い間、燻っていた問題そのものだけど、以前はSub F所得というCFCが国外で認識する所得の極一部のみにかかわる「些細」な問題だったと言え、テクニカル面で複雑な割に、実務的には重要性に欠けていたことから余り時間を掛けて検討したりするインセンティブに欠けていたと言える。もちろん、賢い米国MNCは米国パートナーシップのSub F上の取り扱いが特殊な点に目を付け、CFCの下に米国パートナーシップ組成してSub F所得の「ブロッカー」にしたり、またIRSがそのようなプラニングに網を掛けようとしてNoticeを公表したり、と一部マニアックな世界ではエキサイティングな世界を展開していた。とは言え、マイナーな分野だった事実は否めないだろう。

そんな呑気な状況は、CFCが国外で認識する所得を米国株主側で毎期合算するGILTI課税の税制改正による導入で一変する。GILTIは、Subpart F所得と異なり、米国株主側の属性なので、誰が米国株主としてTested Income等を取り込み、それをどう加工してGILTI計算を行うのか、という従来のSub F所得合算では存在しなかった検討もこの問題の重要性に拍車を掛けていると言える。CFCの所得を毎期全額取り込むという新しい概念のクロスボーダー課税制度が導入されたため、CFCの課税所得をどのように算定するのか、という根本的な問題が他にも浮き彫りになっている。CFCの課税所得は、基本的には米国税法に基づき、CFCをあたかも「米国法人」かのように取り扱って算定、というのが従来のSub F所得時代からのルールだけど、この点も米国パートナーシップの取り扱い同様、従来はそれ程真剣に考えられていた感じはなく、CFCの課税所得を米国で毎期全額合算する制度に移行した今、ガイダンス不足の実態が白日の下に晒されている感じ。実際には米国法人でないCFCをどのように米国法人かのように考えて、米国税法を適用して課税所得の算定をするのか、というベーシックな検討の重要性が飛躍的に高まっている。この点は別の機会に触れるけど、CFCを米国法人のように取り扱って課税所得を計算するのであれば、米国法人にしか認めないと明確に法律で規定されているFDII控除をCFCで取ってみようとか、クリエイティブだけど、「なるほど・・座布団10枚」みたいな常識では考えられないような議論も登場してくる。財務省は「明らかに本当の米国法人にしか適用がない規定は、CFCには適用することは認められない」と常識的には当たり前だけど、法律の適用としてはとても難しいアプローチで、反論し今後ルールを策定をするとしている。

で、米国パートナーシップだけど、財務省のポリシー的な選択肢は元々2つのはずだった。従来のSub F所得同様に、法文を文字通り適用し、米国パートナーシップを合算米国株主としてパートナーシップレベルでGILTI合算させてしまうアプローチが一つ。または、Sub F所得と異なり、GILTIは米国株主レベルで複数のCFCの属性を通算させて計算するという立法趣旨を尊重し、Sub F所得の取り扱いから乖離して、米国パートナーシップを外国パートナーシップ同様にLook-throughしてGILTI合算を考える、というアプローチがもうひとつだ。後者は合算株主を定義している法文を文字通り解釈するとサポートが難しいが、逆にGILTIの立法趣旨はより良く反映しているアプローチと言える。ただ、後者を選択すると、米国パートナーシップが保有するCFCに対して、間接・みなし持分を加味しても10%以上の持分保有に至らない米国人パートナーが、GILTI合算対象から除外されるというチョッとIRSにとっては悔しい結果にもなる。かと言って前者のアプローチ、すなわち米国パートナーシップを合算株主と取り扱う考え方、は米国パートナーシップの利用したストラクチャーを工夫して、プラニングに利用されるのではないか、という懸念もあっただろう。例えば、不都合な属性を米国株主側で他のCFCの属性と通算しないでもいいよう、その部分だけ内部で組成する米国パートナーシップに保有させてみたりとか、Subpart F所得に対するブロッカー・ストラクチャーの例を見ても、米国パートナーシップが悪の温床となる得るリスクは現実のものだ。

このような不整合・不都合をバランス良く解消するため、2018年9月に公表された規則案では、両オプションの双方を組み合わせるという高尚なハイブリッド・アプローチを採択していた。ハイブリッド・アプローチでは、米国パートナーシップの米国パートナーがみなし持分保有を通じてパートナーシップが保有するCFCの10%以上の持分を保有するケース、すなわちパートナーシップばかりでなくパートナー自らも米国株主となっているケースは、米国パートナーシップを合算株主とせずLook-throughと考え、GILTI計算はパートナーシップ・レベルでは行わず、Tested Income、Tested Loss、QBAI、外国法人税等のCFC属性をパートナーに配賦し、米国パートナーが保有するかもしれない他のCFCの属性と通算してGILTI計算をする。その場合、米国パートナーが米国法人だと、50%のGILTI控除が取れたり、GILTIバスケットの外国税額控除が取れる、という追加メリットもある。

それ以外のパートナー、すなわちみなし持分を加味しても10%未満の持分しか保有しないパートナーは自らだけの状況を見ると米国株主には当たらないので、その者に関しては米国パートナーシップ・レベルでGILTI計算を行い、GILTI合算額そのものをパートナーに配賦する、というものだ。オプション2つを併用し、組み合わせているのでハイブリッド。

規則案で提案されたこのハイブリッド・アプローチはポリシー的には、バランスが取れていて確かに一理あるものだった。でも、その適用は複雑で、1065とかK-1とか作成するのは大変だっただろうし、従来からのパートナーシップ税制との絡み、例えば704(b)のキャピタルアカウントの考え方とかへの影響も複雑だった。規則案公表直後から、ハイブリッド・アプローチに対しては喧々囂々の議論があり、財務省にも反対意見が寄せられたことだろう。規則案公表後の業界や法曹界のパネルディスカッションに登場していた財務省やIRSのChief Counsel Officeの方も、この件に関しては、若干ディフェンシブな印象を受けていたので、規則最終化の際に何らかの形で簡素化されるだろう、と考えていた。

という訳で、ハイブリッド・アプローチは、志こそ高いものだったけど、実務対応面での懸念は大きく、最終規則では予想通り撤回され、全てのパートナーに関して、合算株主を決定する際に米国パートナーシップをLook-throughするという「Aggregateアプローチ」で統一されることになった。Aggregateというのは、パートナーシップ税法を語る際に、Entityアプローチと対比的に使われる用語で、パートナーシップはパートナーの集合体(なのでAggregate)と扱い、各パートナーに帰属するパートナーシップ資産、属性はパートナーそのものに属するかのように考えるアプローチを意味する。1954年の税制改正でSub Kが導入されてから、法人課税との比較においてAggregate概念は一貫してパートナーシップ税制のコアな原則だ。Section 752のパートナーシップレベルの負債を、パートナーの投資簿価に加算するような面倒な計算もOutside簿価とInside簿価を可能な限りタンデムにしようとするAggregateアプローチの現れだ。ただ、今回の税制改正では、Sectiton 163(j)の支払利息損金算入制限をパートナーシップレベルで適用したり、特定の状況にはEntityアプローチを適用したりしている。Aggregateアプローチを全体のアーキテクチャーとして構築されているSub KにEntityアプローチを散りばめたりすると、適用時の複雑性が大きく増す。400ページを超えるSection 163(j)の財務省規則案も、CFCと並びパートナーシップへの適用をどのように考えるかで苦労している。

GILTI最終規則で採択されたAggregateアプローチも、テクニカル面の理解は決して容易ではない。というのも、前回のポスティングでも触れた通り、Sub FやGILTIを考えるステップは、米国株主の特定、CFCの特定、合算株主の特定、合算額の計算、という複数のものだけど、各ステップに適用される外国法人に対する持分の考え方が異なっていて、この分野のことを四六時中考えているオタッキーな輩でもない限り、なかなか直感的に理解できるものではないからだ。

ここからは面倒な「みなし保有」規定の話しにならざるを得ないので、次回。

Monday, July 1, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (2)

前回のポスティングでは遂に最終化されたGILTI財務省規則の、HTE規定をメインに触れたけど、これだけ濃厚な規則や規則案が連発されると、全てを消化するのには一日48時間、週に8日(Eight Days a Week – 何か分かるね?)通して規定を読むばかりでなく、内容を良く考え、理解し続ける必要がある。規則や法律の一語一句が全てDeep。余りにDeepなので、規則の理解はEast Riverから朝日が昇ってくる前の早朝4時とかにDeep House聴きながらSpikeしたコーヒーを手に立ち向かうのがベスト。僕がその昔馴染んだ元祖シカゴのHouseはBPMがだいたい125強くらいのスピードでノンストップ系だった。その後House Musicも進化し、ProgressiveとかDeepとかいろいろなサブジャンルに細分化されているけど、BPM120くらいで若干スローなDeepは規則読む際のBGM(ここはBPMじゃないからね)にピッタリ。モーツァルト効果改めDeep House効果で記憶も鮮明(本当?)。TechnicsのDirect Driveターンテーブルを30年以上(40年?)愛用しているので体にBPM感が染みついちゃってる感じ。もし、そんな昔からSubchapter Nの規則とか読み続けてたら、クロスボーダー課税ももっと体に染みついてただろうに残念。でもNever too late。

もう昔と違ってBrooklynのTBAとか行く歳でもないし、HouseとかAcid Jazz系の曲は自宅で静かに聴くのがベスト。この手のジャンルは個人的にはNYC用。西海岸に居る時は、どちらかと言うともう少しJazzyな94.7Waveでエアされているようなタイプとか、下手するとTop 40系の気分。

ちなみにTech-Houseは・・、とかどうでもいい話しに脱線し過ぎる前に約束通り、米国パートナーシップとGILTI、更に米国クロスボーダー課税一般の話しに軌道修正します。

まずは「おさらい」だけど、米国「税務上」パートナーシップと取り扱われる主体に関して。この点は日本企業には未だによく理解されていないように感じることが多い。米国税務上のパートナーシップは広範だ。LLC、LP、LLP、LLLP、とか法的(税法ではなく会社法的)に組成されている主体はもとより、事業または投資目的と認定される信託、さらに事実関係に基づき複数の者がネット利益を協働して追い求めていると認定されるJVやコラボ契約、これらは税務上一派一絡げに「事業主体(Business Entity)」という位置づけとなる。事業主体と認定される主体は、次にパススルー課税または法人課税のいずれか一方の課税関係に区分されるけど、財務省規則に名指しで列挙されている「米国税務上Corporationとしてのみ取り扱いが認められる特定の主体(例、米国の州法で設立されるCorporation、日本だと株式会社)」を除き、区分は納税者側で任意に選択することが認められる。これが前代未聞、クロスボーダー課税のプラニングを一から書き直した1997年のCheck-the-Box規定と言う名のギネス級Inventionだ。それ以前の区分はRulingベースで、まあ実質任意に選択が可能な状態に近かったので、CTBはそれを制度化して面倒な手続きを廃止した「いよっ 財務省!」とでも言うべき画期的なもの。まさかここまでCTBがクロスボーダー課税のプラニングに利用され尽くされるっていうのは1997年当時では想定されていなかったのだろう。

上述した「Corporationにしか区分できな特定の主体」として列挙されていない限り、CTBの選択は米国内外の主体を問わずに適用される。何の選択も行わない場合には、デフォルトの取り扱いが規定されており、米国内の主体であれば通常パススルー、外国の主体はオーナーの有限・無限責任の法的位置づけに基づきデフォルトが変わる。

で、パススルーとなり複数のオーナーが存在する場合には米国税務上、全てパートナーシップとなる。その際、元々会社法上の主体のタイプがLLCでも、LPでも、契約に基づく事実関係に基づくアレンジでも、税務上は全く関係ない。もちろん、パートナーシップと取り扱う上でオーナーの権利関係は実際の法的アレンジに基づくので、所得や負債の配賦計算とかは主体のタイプ、個々の契約により異なるけど、ポイントは一旦事業主体と認定され、パススルー課税扱いになり、複数のオーナーが存在する場合には、全て無差別にパートナーシップ税法、Sub Kの管轄となるという点。

で、税務上のパートナーシップは米国会社法その他の米国法制度に基づき組成されている場合には米国パートナーシップになり、他は外国パートナーシップと区分される。LLCとかLPとか州の会社法に基づいて登記されているような主体はどこのパートナーシップか分かり易いけど、国外の法人が米国外でJV契約とかして、米国も含む複数の国で事業展開するようなアレンジが米国税務上のパートナーシップとなるケースは、米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのか、という区分は必ずしも容易ではない。まあ、グッドニュースがあるとすれば、米国パートナーシップでも、外国パートナーシップでも、レポーティング法とか除くと、最終的な課税関係は原則余り変わらないという点だろうか。すなわち、パートナーシップは課税主体ではないので、そこで認識される所得はオーナーに配賦(パススルー)され、オーナーが自分のタックスポジションと通算して米国の税金を支払う。パートナー自身が米国人(米国法人含む)であれば、米国パートナーシップでも外国パートナーシップでも、またどこから所得を得ていても、配賦される所得は基本全額課税対象。一方、パートナー自身が外国人(外国法人含む)であれば、パートナーシップが認識する所得のパートナーへの配賦額のうちECI部分に関してのみ米国での課税関係が発生する。この取り扱いもパートナーシップそのものが米国パートナーシップなのか外国パートナーシップは関係なく同じ。外国人パートナーが条約居住者で、適用しようとする条約に規定されているLOBを充足し、さらにHybrid規定に基づき条約の特典が与えられるケースでは、ECIではなくパートナーシップから配賦される所得の米国PE帰属部分に関して米国の課税関係が発生する。ECIがあるかないか、PEに帰属する所得があるかないか、はパートナーシップ側の米国事業、施設等を全てパートナーに帰して、米国税務風に言うとAttributeして、検討することになる。

なかなかDeepになってきてるけど、これらの処理だけでも一冊本になるほどDeeper。相変わらず米国タックスにはDeep Houseが良く似合う(?)。

で、このように米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのかっていうのは通常、余り大きなインパクトを持たないことが多いんだけど、米国のアウトバウンド系のクロスボーダー課税に関しては、この違いが大きくものを言うことになる。クロスボーダー課税適用時の、米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのかにより取り扱いの差異はチョッと恣意的だ。ここからはさらにDeeper and deeper。

従来のCFC課税で、Subpart F所得の合算が求められる者は「CFCの米国株主」と規定されている。双方とも税法上、定義されている用語で、米国株主とはまず「Person」で、そのPersonが米国Personであり、外国法人の議決権、価値のいずれかに関して最低10%の持分を保有している者をいう。CFCはこの定義に当てはまる米国株主が合わせて50%超の議決権または価値(この価値の部分は2017年の税制改正で追加された規定)を保有する外国法人のことを言う。なので、EYのNYC事務所のみんなには口酸っぱく言っているけど、まずCFCを決めてその後米国株主を決めるような本末転倒な分析をしないように。米国株主が決まらないと外国法人がCFCかどうかも決まらない。その後、実際にCFCからSubpart FやGILTIを誰が合算するのかは、必ずしも米国株主の定義そのものと同じではなく、米国株主のうち「合算持分」を持つInclusion株主を特定する必要がある。米国税法で言うところのSection 958(a)株主というカテゴリーだ。で誰が合算するか判明したら、次にいくら合算する必要があるかをPro-rata持分という難しいコンセプトを適用する。ここまで来て、ようやく合算に漕ぎつけることができる。

で、問題は従来のCFC課税制度のルール、すなわちGILTIにも流用される予定のルールでは、米国パートナーシップがCFCを保有している場合、パートナーシップは税法上「Person」と定義されることから、パートナーシップが米国パートナーシップの場合、米国Personになり、パートナーシップそのものが10%以上の持分を保有している場合には、「米国株主」と位置付けられ、外国法人がCFCの場合には、パートナーシップそのものがSubpart F所得を認識し、パートナーに合算課税対象額を配賦する仕組みとなっている点だ。一方で外国パートナーシップは基本Look-throughされるので、この点に関してパートナーシップが米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのか、という点に基づく取り扱いが大きく異なる。GITLI合算も、原則Subpart F所得の合算に係わる法的枠組みを踏襲して行うと規定されているので、そのままにしておくと、米国パートナーシップそのものがGILTI合算計算を行うことになってしまう。一方でGILTIはSubpart F所得のようにCFC側の属性がそのままPull-Upされるのではなく、Tested IncomeやTested Loss、QBAI等のCFC側で認識される属性を米国株主側で加工する米国側の属性となので、米国株主が保有する全CFCからの金額を通算してGILTI合算額を確定するという新たな法的フレームワークに基づく新コンセプト。さらにGILTI控除(税率を21%から10.5%とするための合算額の50%の想定控除)やGILTI間接税額控除は法的に米国法人のみに認められるため、パートナーシップが米国株主としてGILTI合算算定を行うと、GILTI控除も外国税額控除も認められず、GILTI合算額がそのまま米国法人パートナーに配賦されるという不都合が起こる。

この点を大胆かつ高尚な提案で解決しようとしたのが2018年9月に公表されていた財務省規則案のハイブリッドアプローチだった。さて、このような高尚なポリシーコールに最終規則ではどのような運命が待ち受けていたか?長くなってきたのでここからは次回。

Wednesday, June 26, 2019

GILTI最終規則遂に公表

前回と前々回のポスティングではFDIIの話しを中断して、ここ10年、米国上院が最終化できなかった条約批准手続きに動きがある、というスクープに触れた。批准の動きは活発なようで、今度こそ長いトンネルの先にようやく光、となるといいけどね。FIRPTA適用時の米国不動産法人の定義が現行の条約では世界一有利なので、再編等で条約を利用するんだったら急がないとね。

税制改正に戻るけど、2017年12月22日に税制改正が可決され、この6月22日で18カ月が経った。2019年6月22日までに最終化される財務省規則は、法律可決日に過去訴求して法的な効力を持たせることができるので、当初から重要な規則はこの日をターゲットに最終化を目指してきた。でも、さすがに規定が複雑過ぎ、かつポリシー的なコールに関しては賛否両論、喧喧囂囂となっている規定も少なくなく、22日までに最終化されるのはTransition Tax以外ではGILTI規則だけだろう、と言われていたけど、本当にGILTIは最終化された。しかもSubpart Fや245Aの取り扱いを規定する新規則案やAnti-Abuse系の暫定規則追加3つのパッケージと共に計4部作。総計505ページの超大作だ。財務省やIRSのChief Counsel Officeは本当に優秀。普段、税務調査で遭遇するIRSのAgentと同じAgencyに属するとは思えない(?)。

6月14日午後4時、金曜日ということもありNYCでは早々に仕事を切り上げマンハッタンからハンプトンに脱出するTrafficで、Midtownトンネルに向かうMidtown East辺りからLong IslandのQueens Midtown Expresswayは既に大渋滞に陥っている頃、またロサンゼルスでは未だ午後1時だというのに、いつも通り何の意味もなく時間にも上下線にも関係なく405が大渋滞になっている頃、何の前触れもなくGILTI最終規則が公表された。DCでは金曜日の午後も後半を迎え、しかもFather’s Dayの直前ということで、「出るとしても月曜日だろう・・」とすっかり油断していた矢先の出来事だった。

このパッケージは凄い。2017年の税制改正はGILTIに始まりGILTIに終わると言っても過言ではないけど、GILTIそのものに留まらず、派生的に影響を受ける100%配当控除や従来からのSub Fへの影響など、を一気にパッケージで複数提示しているところに感動。テリトリアル課税の100%配当控除を規定している245Aの使用にかかわるAnti-Abuseは説明が難しいけど、日本企業にもSituation次第では影響がありそう。FDIIのポスティングを続けないといけないとは知りつつ、今回のポスティングでは「旬」の話題としてGILTIの最終規則に簡単に触れざるを得ない状況。

GILTI最終規則の多くの規則の中でいくつかヘッドライン的なものを挙げるとすると、High-Tax Exception、米国パートナーシップの取り扱い、Tested Lossを他のCFCに使用されたCFCの株式簿価の調整メカニズムの撤回、の3つだろうか。実際に申告書を作成する者には、何十年も遡ってADSに基づく償却を計算しなくてもいいかも、っていう明るいニュース部分が一番ハッピーだったかもね。

まずは、「High-Tax Exception(HTE)」。GILTIにかかわるHTEは最終規則には敢えて規定されていないので、最終規則のポスティングとしては変わったキックオフになるけど、同時公表された新らたな規則「案」で提案されている。HTEはGILTIの法文そのものには規定されていないにも関わらず、既存のSub Fに規定される限定的なHTEを利用した財務省の(かなり)Creativeな理論で規則策定の権限を正当化した上での英断。これは超ビッグディール。三権分立的には行政府の規則策定権限の範囲内かどうか疑義が残るが、納税者に有利な規定なので訴訟に持ち込まれることも考え難いし、おそらくいHill(議会立法府)のメンバーとはすり合わせをした上での策定だろうから、実務的にこの点が問題となるリスクは低い。

以前から触れている通り、GILTI合算のベースとなるTested Incomeは、CFCでどれだけ高税率に晒されていても、原則関係なく合算対象となる。これはGILTIの「Low-Taxed Income」という名称から受ける印象と大きく異なる取り扱いだ。GILTI法に明確に規定されているCFC側の高税率にかかわる唯一の例外は、既存のCFC課税に基づきSub Fになるけど、Sub Fに規定されているHTEで所得がSub Fからキックアウトする選択を納税者が行っている場合、Sub Fから除外されるとは言え、それをもってGILTI目的のTested Incomeにはならない、と言う規定。回りくどいけど、すなわちSub FでないCFCの所得は原則Tested Incomeになるけど、HTEでSub Fではないと選択する所得はTested Incomeからも除外してあげましょう、という規定だ。

GILTIが立法される過程の両院Conference Repotの一部に「CFCが米国外で少なくとも13.125%の法人税を支払っていればFTCを通じてGILTI合算に基づく追加税負担は米国で発生しない」と言い切っている部分がある。FTCがきちんとGILTI合算額マイナスGILTI控除の10.5全額教科書通り取れればそうなんだけど、FTCを勉強した人は初日に習うベーシックとして、FTCの枠は米国株主側で計上される費用を外国源泉所得に配賦して制限枠を減額しないといけないので、現実には、米国株主側の支払利息を代表とする「米国の」費用が控除制限枠を圧縮する。簡単に言うと、外国源泉所得に配賦されてしまう費用は21%で課税される、または費用控除が実質否認されているのと同様の効果をもたらす。なんで米国MNCにとって、費用配賦法を規定しているSection 861は最重要規定のひとつと位置付けられるし、FTC規則パッケージ、Transition TaxやGILTI規則でも大きな話題となる。税制改正ではGILTIと100%配当控除対象となる二つの大きな新カテゴリーが外国源泉所得に加えられたので、FTCおよび費用配賦の計算時にこれらの新カテゴリーをどう処理するかは複雑かつ重要な検討となる。100%配当控除に関しては法律でどのように費用処理を考えると簡単に触れられているが、GILTIに関しては特に新規定は設けられていない。ここは財務省がFTC規則案を公表した際に、結構Creativeに既存のExempt Assetに準じる規定をGILTIバスケットに適用し、GILTIは通常の税率の半分の税率で課税されることから、支払利息のように資産ベースで費用配賦計算を行う場合には、GILTI資産として取り扱われるCFC株式簿価の半分を「非課税資産」として取り扱うとしている。この英断のおかげで、GILTIバスケットへの費用配賦額は低くなるけど、それでも費用配賦が存在する限り、CFCの米国外での税負担がどんなに高くても一切関係なく米国で追加の法人税が発生することになる。

上で触れた、従来から存在するSub FのHTEでは、米国法人税率の90%超の法人税率の対象となっている所得は合算課税の対象外とする、っていうもの。以前は法人税率が35%だったので、その90%は31.5%で、そんな高税率の国はもはや世の中に存在しないに近かったので、あんまり役にたつ除外規定とは言えなかった。税制改正で法人税率が21%に下がり、それに準じて90%も18.9%というそれらしい税率に引き下がったのでHTEがにわかに息を吹き返したような状況になっている。

とは言え、先々週の金曜日までは、これはあくまでSub Fの世界の話しでGILTI目的では、原則CFCが認識するTested Incomeが何%の税率に晒されていても関係ない話しだった。数週間前からDCでは、今回の最終規則でTested Incomeが米国外で18.9%等の一定以上の高税率で課税されている場合、GILTI合算計算から除外するような広範なHTEの導入が噂されていたけど、結局は最終規則そのものには盛り込まれなかった。その意味では米国MNC側の落胆は大きいかも。ただ、HTEを常に選択するのがベストとは限らないので、かりにHTEが規定された後も納税者各々が置かれている個々の状況を基に詳細なモデリングを行って選択のメリット・デメリットを見極める必要がある。

で、なんで最終規則に盛りこまれなかったのに、最終規則のポスティングの冒頭にこの話しをしているかと言うと、上述の通り、最終規則と同時に「新たな」規則案が公表され、そこで従来のSub Fに対するHTEと同様のHTEが提案されているからだ。同様とは言え、Sub FとTested Incomeはその性格が大きく異なるので、実際の適用は結構異なる。また、新規則草案が最終規則となるまでは、規則案で提案されてるHTEは使用してはいけない旨が最終規則、規則案の双方に明記されているので、あくまでも案として提案されている状況。過去訴求はないと明記されているので、規則案が正式に公告された後に開始する課税年度からの適用となり、暦年ベースの場合は早くてCFC課税年度の2020年からの適用となる。これだけ明確に未だ使っちゃダメと書いてあるのに、米国MNCや弁護士事務所は2018年の申告書に適用する法的確証度合いはあるか、とか分析しているところが面白い。もちろんMLTNどころかFiling Positionすら怪しいだろう。

次回はGILTIと米国パートナーシップに関して。

日米租税条約「議定書」本当に批准間近?(2)

前回、「日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??」でDC・NYC界隈でのスクープに触れたけど、具体的に進展があり、つい一カ月前までは遠い夢だと思われていた日米租税条約の議定書の批准も、米国上院の急な動きでにわかに現実味を帯びてきた。

昨日、DCで開催された「Senate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)」で日本、スイス、ルクセンブルグ、スペイン4か国との議定書が発声投票という形で可決された。Rand Paulはスペインの議定書に関して、修正を求めたようだけど却下されたと言われている。

これで残るは上院本会議での可決。前回のポスティングで触れた通り、Rand Paul先生がいる限り全会一致の決議書という手法が不可能なので、実際に議場で審議して発声投票に持ち込む予定らしい。上院は夏は閉会で議員たちもDCにいないから、実際の審議がいつのことになるか分からないけど2019年中には批准が完了する可能性が高い。

ちなみに昨日の上院外交委員会では4カ国の議定書、すなわち既存の条約に対するマイナーな修正、のみを取り扱っている。ハンガリー、チリ、ポーランドとの条約の批准プロセスは開始されていないことになるけど、これはマイナー修正の議定書と異なり、本当の条約改正となる部分は前回のポスティングでも触れている「後法優先」と「2017年の米国税制改正」の絡み、特にBEAT規定に関して、後法の条約が影響しないよう、何らかの修正文言を加えることを検討している理由ではないか、と言われている。さっさの批准しないからそういう面倒なことになるね。米国側の自業自得だけど、アクションを引き延ばしてもロクなことはないという、人生や一般生活にも当てはまるいいレッスン(?)。

Sunday, May 26, 2019

日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??

チョッとスクープみたいな話しがDCやNYCの法曹界で噂になっているのでFDIIの話しの真っ最中だけど、租税条約の批准に関して特番。

米国が他国と締結する条約は、憲法のArticle 2 Section 2の更にSubsection 2(2-2-2で覚えやすいね)に規定されている通り、行政府に締結の権限があり、したがって租税条約は具体的には財務省が当事者他国と交渉・締結する。条約の米国法体系における位置付けは、連邦憲法および連邦法と並ぶ最高の法規と憲法に規定されているので、かなりのステータス。Internal Revenue Codeとかの内国法と同列の立場にあり、条約が内国法を必ずしもオーバライドしないことから、後法優先という日本ではチョッと分かり難い優先順位に基づく判断が必要となる。

更に憲法の2.2.2(もう覚えた?)に規定される通り、条約が正式に効力を持つためには上院の3分の2多数で批准される必要がある。内国法が下院からスタートして法制化されるのに対し、条約に関して下院に物言う権利がないので、下院からしてみると少し悔しい存在。

ちなみに日本語では上院っていうけど、英語ではSenateで、これはもちろん古代ローマのSenetusから来ているけど、なぜか同じSenateでもローマバージョンは「元老院」。米国が名称を借用したくなるような統治制度を2000年前に確立させていた古代ローマは凄い。都市国家から領土を拡大し、帝政となり、その後崩壊していく過程は現在の国家のライフサイクルにも通じるものがありとても勉強になるし興味深い。テクノロジーがどれだけ進歩しても、所詮、人間のサガは今も昔も大差ないということなんだろうか。

米国憲法は、「We the People of the United States…」が「more perfect Union」を形成するために、賢人が過去の歴史・過ちから学び、知力を結集して策定した法律だ。洞察力に富む至上の法律と言えるけど、立派な憲法があっても「法の支配」がなければ、宝の持ち腐れ。独裁国家でも、聞こえのいい憲法を存在させること自体は可能で、それを法的に執行するメカニズムがなければ全く意味がない。法の支配の中でも特に重要なのが「三権分立(Separation of Power)」。立法府(議会)と行政府(Executive Branch)のSeparationはロシア疑惑関連でWilliam Barrとか良く争点となり、最近特に考えさせられることが多いけど、実は司法府、すなわち裁判所の動向も目が離せない。近年、大統領令が出ると訴訟になることが多いけど、本来、裁判所は立法府でも行政府でもない訳だから、大統領が大統領令を出す権限を逸脱していないかどうか、すなわち憲法上、大統領府に対して認められている権限内の行為であるか、という法的な検討にフォーカスするべきで、大統領令の内容そのものが賢いかどうか、という判断を加味する立場にはないはず。なぜかと言えば、賢いかどうかはそれを判断する者の考え方により異なるからで、本来、司法府はそのような視点を盛り込む立場にはないはず。

オバマ政権もトランプ政権も大統領令を乱発気味だけど、最近の司法府は、内容そのものが気に入らないとか、オバマ政策やトランプ政策が嫌い、というイデオロギー的な理由で大統領令を無効とするような判例が多く、しかも地方裁判所が全米有効のInjunctionを言い渡したり、Standingを未だ確立していない、よって訴訟を起こす立場にない、と思われる州が訴えを起こして、それが認められたり、所詮三権分立もそれを担当する判事たちの憲法順守にかかわる見解に左右されることが多く、せっかくの制度も最後はそれを司る人次第、という意味で限界を感じることが多い。この手の話しをし出すと本が一冊書けるので、いずれそのうちに。

で、租税条約だけど、ご存知の通り、上院議員の一人であるRand Paulが情報交換規定が違憲であるというような理想論で、反対し続けていることから、2009年以降10年間にも亘り、米国では租税条約はひとつも批准されていない。塩漬けになっている条約のひとつはもちろん2010年に二国間で合意済みの日米租税条約の議定書だ。なぜ、たった一人の上院議員が3分の2で可決できる条約批准をブロックし続けることができるのかは2016年に「日米租税条約改正は一体いつ発効?」という3回特集を組んでいるので、詳細はぜひそちらを参照して欲しい。要は他に切羽詰まった議題が多く存在する中、また上院議員はいつもDCに居る訳ではない中、各条約を議場で議論して3分の2の多数決で可決させる時間は到底なく、この手の承認は通常、「全員一致」の決議書で行うという点に問題がある。

で、ここに来て急展開があり得る状況になったのは、面白いことにRand Paulと同じケンタッキー上院議員で、上院多数党院内総務、というと堅苦しいけど要は「Majority Leader」のMitch McConnellが条約の批准が10年間滞っている点を問題視し始めたからだ。McConnellはどちらかと言うと無表情かつ冷徹にことを進めるタイプで、Cliff Simsの書物の表現を借りるならば「Viper」ということになるけど、地元ケンタッキー州民の利益のためには努力を惜しまないDCの実力者だ。ケンタッキー農民のためにFarm Billを通したり頑張ってる中、ケンタッキー州のとある酒造会社が「米国とスペインの租税条約の議定書が塩漬けになっていて不利益を被っているが、何とかならないものか」というような話しをMcConnellに持ち込んだらしい。McConnellがその話しを聞くまで条約批准がここまで滞っている状況を理解していたのかどうかは不明だけど、独力で条約批准を10年間も阻止し続けてきた張本人が同じケンタッキー州のもう一方の上院議員(上院議員は下院と異なり州の人口にかかわりなく、各州2名)だったという実態に唖然とした点は想像に難くない。

で、早速Paulに働きかけ、他の上院議員にもここ数週間、根回しを行ってるらしい。ただ、手順としてはSenate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)というところがヒアリングを行い、そこで可決してから本当の上院の審理に回したり、と結構気の長い話。外交委員会はPaulの欠席時に一度可決を成功させてるけど、同じ年内に本院で可決されないと再度委員会に差し戻されるというルールがあり、もう一度、そこから始めないといけない。

条約の批准は当然、既に合意された条約に対して行うものだけど、批准の際に、条項を修正したり条件を付けることが認められる。Paulに賛成させるには、情報交換規定に関して何らかの条件を付けるというような奥の手もあり得るけど、条約だから米国が一方的に新たな条件を盛り込む訳にはいなかい。となると当然、条約締結相手国と再交渉の必要が生じる。しかも2009年当時から合意されてきた条約には、2017年の税制改正なんて全く想定されてない訳だから、そんな条約が後法優先で批准されてしまうことの影響も加味しないといけないだろう。時間が経てば経つほど面倒だね。CPA試験とかさっさと受からないと勉強しないといけない会計原則が増えるばかり、っていう悪循環みたい。う~ん、なんか時間掛かりそう。支払利息の源泉を0%にしたい方は利息の支払いをチョッと待ってみる?または逆に米国法人が米国不動産持分に当たるかどうかの判断が、今の条約が有利だったらさっさと再編とか売却とかしてみる?ここ10年で批准のモーメンタムは最高潮にあると言えるだろうから、価値はあるかもね。

Saturday, May 25, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (4)

早いもので前回FDII絡みのポスティングをしてから一カ月以上の月日が流れてしまった。連日連夜USタックスと格闘し続けても、余りにディープな規定の連発で、全てを良く理解するには全く時間が足りない。もともとこんな複雑な法律を一人で全て理解するのは到底不可能だけど、その際に決めてになるのが、米国のLaw FirmやBig-4、また米国財務省やIRSのChief Counsel Officeの弁護士チームとの情報交換の機会。経験豊かな賢人のコメントは各規定の理解に欠かせない。25年以上税法や判例読み続けても、読む度にその難解さを認識することが多い訳だから、納税者の皆さんが良く理解できないことが多いとしても、それは当り前。自社取引、ストラクチャーにおけるどういうところがSweet Spotsとなり得て、そして法律はとてつもなく複雑なので誰か優秀なアドバイザーが必要で、そして優秀なアドバイザーは高い(?)っていう点を認識していれば十分。 僕がパートナーを務めるEY US Firmは元々米国における国際税務分野では業界No.1だと思うし、他のUS Firmに属してた頃はEYの米国国際税務部門は羨望の的だった。で、自社国際税務チーム内にはDCやNYCに層の厚い多くの有識者が居て、彼らと持つ何気ない会話の中で各規定の理解が一層深まることが多い。財務省やIRSのChief Counsel Officeにも多くのOB/OGが居たり、またその方たちがFirmにブーメランのように戻って来たりするので、裏話し的な情報ももらえて楽しい。

裏話と言えば、「GILTI」とか「BEAT」とかのアクロニム(頭字語)が余りにCatchy(規定内容ではなく名前だけだけどね・・)で出来過ぎているな、っていうのはみんなも感じてると思う。議会のセンスの良さと言うか、洒落が通じる感じが上院議員の重鎮たちのイメージとチョッと違ってて面白い。元々法律をドラフトしている段階で、これらの法文タイトルは略してGILTIやBEATとなるように敢えて命名されてたらしいけど、実はドラフトしている当人たちも未だ本当に税制改正が可決するとは思ってなかったようで、「どうせ廃案だったらよりCatchyな名称で(?)」っていう勢いでドラフトを進めていたところ、本当に数週間と言う前代未聞のスピード可決が実現してしまい、そのままの名称で立派な法律になってしまったという落ちがあるらしい。もちろん規定そのものは、相当前から存在した複数の提案やコンセプトに基づき、可決されることを想定して真剣に考え尽くされてるものだけど、名前はそのままでゴールインしてしまったので、2018年以降の米国税制を語る際の語彙がよりカラフルになった。

ちなみに法文の条文や法律の策定の際には各々の規定に「タイトル」が付いてるけど、条文解釈時にはタイトルは法律の一部ではないことから、その直後に始まる条文そのもののみが法的な効果を持ち、タイトルの内容は加味してはいけない。俗にBase Erostion Anti-Abuse Taxとか呼ばれるので、「僕はAbuseしてないから、BEATの対象になるのはおかしいのでは・・」とか、心情的には分かるんだけど、法的にはBEATミニマムタックス適用有無判断時に納税者側のAbuse意図の有無は一切条件となっていないことから、条文の要件に抵触する場合にはメカニカルにBEATが適用されてしまう。法律が可決して間もない頃、上院財政委員会の弁護士と直接意見交換するという夢のような機会があって、その際にBEATはAMTに代わるミニマムタックスの位置づけなのよ、という趣旨のことを言われ、その当時はこの点に関してなかなかピンとこなかったけど、考えれば考えるほど、そうなんだな~っていう今日この頃でした。

で、FDII。前回のポスティングでは、FDII適格と取り扱われる、すなわち13.125%っていうスーパーアトラクティブな税率の対象となる所得は、敢えてザックリと言ってしまえば、米国法人の課税所得の超過利益のうち外国の顧客(関連者含む)から得ている部分という説明までした。今回は、肝心の、どんな所得が外国の顧客からのものと取り扱われるか、っていうFDIIの神髄とでも言える検討に入りたい。

税制改正後の米国法人税フレームワークだけど、米国法人が認識する所得はPureに国内で終焉している取引と、国外取引に対するものに大別される。国内終焉所得は全て21%で課税され、国外所得は更にルーティン利益と超過利益に区分される。リーティン利益はValuationや経済分析を基に算定するのではなく、有形償却資産の税務簿価の10%と機械的に算定され、所得を認識する法人が所在する国の法人税率に基づいて法人税を支払えばそれで終わり。米国内で認識されるルーティン所得は国外取引にかかわるものでも21%で課税だし、米国外のCFCが認識するもの0%だったり20%だったり30%だったりするかもしれないけど、各々の国で適用法人税を支払えばそれまでとなる。

国外取引から生じる所得のうち、ルーティン利益を上回る部分があれば、それは自動的に超過利益となる。理論的な背景としては、超過利益が存在するということは、結局みなしで何らかのノウハウ、マーケット無形資産(デジタル課税を巡りホットだけど)とか、何らかの無形資産があるはずということだろう。このことから、GILTIの2番目の「I」やFDIIの最初の「I」がIntangibleの頭文字となる。国内終焉取引や国外ルーティン利益が21%課税されるのに対し、国外超過利益には最低13.125%の法人税を世界のどこかで支払ってもらおう、というのがツイン規定であるGILTIとFDIIの考え方。GILTIは米国法人が、米国外に所在するCFC経由で認識する所得に対して、GILTI合算、GILTI控除、FTCという3段階構造メカニズムを通じて「理論的」には、国外で13.125%以上の法人税を支払っていれば、米国での追加法人税はなし、国外の法人税が13.125%に満たない場合には、13.125%を上限として米国で差異(必ずしも13.125%との差異満額ではないが、13.125%が総額の最大値)をミニマム課税として支払って下さい、という規定となる。FTCの枠や控除制限の関係で実際には13.125%で終焉しないケースも多いのは以前のポスティングの通りだけど、フレームワークというか設計コンセプトとしては、13.125%が世界ミニマムタックスだ。

同じ概念を米国法人が認識する国外取引に適用しようとしているのがFDII。FDIIは米国法人自らが認識する米国外派生所得のうち超過利益に13.125%で課税するという仕組み。FDII対象となる取引は通常米国外では課税されないから、GILTIと異なり、合算だの控除だのFTCだのという面倒なステップはなく、単純にFDII適格となれば想定控除を通じて実効税率が13.125%となるようにできている。

ちなみに、米国外派生所得は、英語では「Foreign Derived Income」だけど、これはFTCを算定する際に従来から存在していた「Foreign Source Income」とは全く別のもの。FDII目的では所得の源泉地が米国か米国外か判断する必要は一切なく、派生先、すなわち、顧客が米国外なのかどうかが決め手となる。ロイヤルティを除く大概の国外派生所得は米国源泉所得だろう。

FDII適格所得は、資産の販売とサービス提供に大別される。資産販売は棚卸資産のような有形の資産を販売しているケースばかりでなく、無形資産の販売やロイヤルティの受け取りも含まれる。条文に規定される適格要件が、資産販売とサービス提供取引で微妙に異なる点がややこしい。

資産販売に関しては、「米国人でない顧客(not a United States person)」に販売され、かつ「資産使用場所が米国外」という二つの条件を充たす必要がある。一方、サービス提供に関しては、「米国外に所在する者(any person not located within the United States )」に対して、または「米国外に所在する資産(property not located within the United States)にかかわる」サービスを提供している必要がある。これは言うは易し。第三者に販売した商品がその先、買い手によりどこで使用されているか、なんて売り手側では捕捉できないケースも多い。そこで財務省規則案では資産やサービスのタイプ別にこの法文の要件を具体的にどのように充足するかを詳細に規定している。ペーパーワークは面倒だけど、規定としては熟考されていて評価するべきものだと感じている。

次回から取引タイプ別の判断法と取り揃えておくペーパーワークについて。

Sunday, April 7, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (3)

FDIIの財務省規則案が公表されたのを機に、FDIIについて書き始めてたんだけど、税制改正のインプリメンテーション等でとてつもなく多忙になってしまい、なかなかアップデートできず終いで今に至ってしまった。それにしても税制改正のコンプライアンスに与える負荷は凄まじい。2018年3月期は基本的に留保所得一括課税と即時償却の影響だけを考えればよかったけど、2019年3月期からは部分的に留保所得一括課税も残るケースもある上に、BEAT、GILTI、FDIIが「本当に」申告書に反映されることになるため迫力満点。

早くも一年前となる2018年3月の留保所得一括課税だって、実際に申告書に反映させようと思って規則を適用してみると、Cash v. non-cashの区分、期中の分配、FTCの計算やSection 78グロスアップに対するSection 245Aの適用可否、とか想像を絶する複雑さ。規則とか読んで全て分かったような錯覚を覚えていても、実務に申告書に落とし込んでみると理解が深まるというか、理解しているつもりでも実はアヤフヤにしか分かっていない部分が浮き彫りとなる。

ちなみに留保所得一括課税は「旧」税法の世界で処理されるため、FTCなんかは旧Section 960経由で今は亡きSection 902で処理しないといけない。つまり慣れ親しんだPoolingで分母と分子をどう考えるのか、とかをバスケット毎に詳細検討したり、1986年以降すっかり定着していたFTCの考え方に基づき、「昔こんなエクセル作ったな~」とか、Section 902的にはかなりの郷愁が漂う作業となり、最後の郷愁と言う意味ではビートルズのLet It Beのスタジオセッションを彷彿とさせてくれた。何言ってるか訳わかんないかもしれないけど、それだけ米国で国際税務にかかわってきた者にとって今回の税制改正がゲームチェンジャーだという一面を、FTCのSection 902引退をもって感じることができるということ。もっと訳わかんない?かもね。

Let It Beと言えば、ナンとApple(MACやiPhoneのAppleではなく、元祖ビートルズのApple Corpの方)が、Rooftopコンサートのちょうど50周年に当たる今年の1月30日に、Peter Jacksonの手によりLet It Beセッション(またはGet Backセッション)の未公開映像を編集して新Let It Be製作に着手するというとんでもない吉報を発表した。しかも、80年代に質の悪いビデオが限定的に公開されたきりPublic Domainから姿を消していた元祖Let It Beの方も、再マスターされて「正式」に再公開されるという「今日まで生きててよかった~」レベルの大ニュースも一緒だった。

Appleのプレスリリースによると、1969年1月2日~31日に録画された55時間に上る未公開映像、144時間に上る音源、を基に新たなLet It Beを制作するというもの。凄い!できれば55時間丸ごと55回に分けてでもストリーミングして欲しい。1969年1月2日と言えば、ホワイトアルバムの録音終了から僅か数カ月後に、Twickenham Film Studiosにグループが再集結した日そのものだし、その後、George Harrisonが脱退して(クラプトンを代わりにみたいな凄い話しがあった時期)3人でセッションしていた数日を挟み、和解後にSaville RowのAppleビル(今ではA+Fのお店になっているあのビル)に場所を移しセッションを続け、Rooftopでのランチタイムに予告なく始まった(グループ最後の)Public Apperanceの1月30日までの全てをカバーしていることになる。賢いみんなは、でもプレスリリースでは1月31日までのセッションとなってるけど、って一日の差異を疑問に思ったことだろう(誰も思ってない?)。この空白の一日は、実はオリジナルの映画ではあたかもRooftopコンサート前に行われたかのようにプレゼンされている「Two of Us」「Let It Be」「The Long and Winding Road」3曲の最後のスタジオセッションの日だ。次回、映画Let It Beを見る際には、実はこの部分はRooftopの翌日だったんだ~、って観察すると更に感慨深い鑑賞となるだろう。

1月2日から1月15日までのTwickenham Film Studiosそして1月21日~1月31日までのAppleビルのセッションの様子は数々の海賊版(懐かしい響き!)で流出しているので、内容的には大概想像がつく。Let It Beのアルバムに落ち着いたナンバーに加え、公表は先だけど実際にはその後にレコーディングされたAbbey Roadに収録されている曲、さらには解散後ソロになった後に発表されることになる曲がIncubateされて徐々に形作られている過程だ。

Twickenham Film Studiosって、Abbey RoadやAppleビルと異なり、ロンドン市内ではなくヒースロー空港とロンドンの中間みたいな場所に当たるSt Margaretsっていう実に英国っぽい名前・風貌の街にある。あんなところに新年早々朝から集合しないといけないとは有名アーティストの仕事も楽じゃない。映画見る限り屋内でも相当寒そうだし。実はLet It Beの映画が恋しい余りに(わざわざ)St Margaretsまで訪ねて行ったことがあって、もちろん外からビルディングだけ見てもなんてことはなかったんだけど、そこの空気吸えて、その場に行けただけでも大満足。小さいころ、どんな場所なんだろう・・って夢広がってたイメージとはチョッと違ったりはしたけど。Saville RowやAbbey Road行く人は多くてもTwickenhamまで足を延ばす変わり者は珍しいかもね。

その場に居たと言えば、実は僕はJohn LennonとPaul McCartneyの2人「本物」を、コンサートとかのセッティング以外で、実物を見たことがある。特にJohn Lennonに関してはかなりの自慢話し。1970年代後半、夏休みの一部を軽井沢で過ごしていた時期があり、その時にたまたまJohn LennonとYoko(そして生まれて間もないSean)が旧軽の万平ホテルに滞在しているという噂があったので、毎日(皇太子と美智子様の出会いで有名な)テニスコート付近でわざわざHangoutしていた。そしたら、本当にJohnとYokoが(ナント)自転車に乗って現れ(Seanは確か自転車の前に据え付けられたカゴにチョコンと乗ってた記憶がある)、テニスコートの横で休憩し始めたのだ。写真そのもののJohn Lennonの生の姿を至近距離(2メートルくらい)で拝む結果となり、余りにSurrealな状況に気絶寸前。ビートルズの歌詞以外は英語も今一つな時代だったし、余りのオーラに辺り一面圧倒され半径2メートルくらい円形に自然にスペースができていたりしたこともあり、声を掛けることができなかった。今だったら「一緒にバンドでもやりませんか?」位のジョークは言えただろうに一生の不覚。でも2人が立ち去ろうとしている際に勇気を出して近づこうと思ったら僕の自転車がYokoの自転車に触れてしまい、そしたらYokoが「Sorry」って一言話して(?)くれた。謝る時は「I am sorry」と教わっていたのに、「Sorry」だけでいいんだ~、みたいなとんでもなくイノセントな時代だった。

で、Paul McCartneyの方は、1966年の武道館コンサート以来初、ソロ活動を開始してからも初、しかもVenus and Marsが出てWingsがまあまあ商業的に成功しているっぽかった「Rock Show」での来日時の話し。時は1980年。ウドー音楽事務所から早速手に入れた整理券は順番が遅かったので、代わりに新宿の「プレイガイド」(こんな言葉今でもあるのかな)で4泊徹夜して武道館アリーナ最前線の席のチケットを4日間(確か)予定されていた全コンサート分入手した。いよいよ来日が近づき心臓が止まりそうなくらい楽しみにしてたんだけど、ナント1980年1月に成田に到着したPaul McCartneyは麻薬不法所持で空港で逮捕され、そのまま留置所に。コンサートは全て中止となり、チケットは「額面」で払い戻しとなった。当時一緒にコンサート行く予定だった友人と熟考の末、チケット2枚は記念にとっておいて、残りは当時は珍しかったカラーコピーを新宿紀伊国屋でしてもらい還付、双方共後生大事に宝箱に入れて取っておいた。でも、もちろん今ではどこにいったか不明。で、全くの想定外の展開に夜も寝れない状況だったんだけど、Paul McCartneyが新橋の警視庁に拘留されていて、取り調べが行われている中目黒との間を行ったり来たりしているという噂を聞きつけ、新橋の留置所の前で張っていた。同様の噂を聞きつけたファンが結構な数いて、警視庁の辺りを取り巻いてたんだけど、そしたらナント本当に警察の所有車っぽい黒塗りの車が堂々と新橋の警視庁正面玄関に乗り付け、Paul McCartney本人が車から降りて歩いて階段を上り、建物に入っていったのだ。その瞬間辺りは騒然となり、興奮に包まれた。実はその後、Paul McCartneyとは再会(?)があり、それは時は流れて、2005年。ロサンゼルスの西部、ちょうど2002年頃まで10年近く住んでいたWestwoodの家から徒歩数分の場所にあったBordersっていう本屋さんがまだアマゾンに駆逐される前で健在だったころに、Paul McCartneyの著書「High in the Clouds」刊行記念サイン会みたいなプロモーションを企画した際。またしても本屋の前で張ってたら本当に(というか今回は予定通りに)、Paul McCartneyが、当時何らかの契約関係にあったLexusのSUVに乗って現れた。っていうのが2回目のEncounter。

Section 902の最後の郷愁から話しが飛び過ぎたけど、税制改正と新Let It Beのどっちでより興奮するべきか、という究極の課題を突き付けられたことになる。

で、FDIIだけど、米国法人が認識する当期の単年課税所得のうち、「みなし動産リターン(ルーティン利益)」を差し引いた金額を機械的に「みなし無形資産リターン」とし、そのうち米国外の顧客から発生する取引に帰する部分を13.125%で課税するという仕組み。なので、別に無形資産を有しているとか、価値のある無形資産に基づくリターンを得ているとか、そんな自意識がゼロでも、「みなし」の無形資産リターンが存在する限り、FDII,すなわちForeign Derived 「Intangible Income」の恩典を享受することが可能だ。

FDII計算ステップを簡単にまとめると次の通り。まず、米国法人(連結納税している場合は連結納税グループ)に「みなし無形資産リターン」が存在しないとFDIIの恩典には一切あり着けない点は上述の通りで、まずはここに着眼せざるを得ない。この認定もフォーミュラとしては機械的。すなわち単年課税所得とルーティン利益を比べて、課税所得の方が大きければその部分が超過利益として「みなし無形資産リターン」となる一方、ルーティン利益の方が大きければ、超過利益は存在しないとみなされ、その場でFDIIの検討はお終いとなる。

では、この運命の分かれ道となるみなし無形資産リターンの算定時に使用される、ルーティン利益、すなわち「みなし動産リターン」をどのように算定するかだけど、これは単純に「有形償却資産ネット簿価年間平均額(Qualified Business Asset Investment 「QBAI」)」の 10%。ここでいうネット簿価は米国法人税ベースだけどMACRSではなく、ADSと呼ばれる定額法償却に基づくもの。ADSにはボーナス償却とか、定率法に基づく加速度償却とかが存在しないので、ADSベースの簿価はどちらかというと会計の簿価に近い。各四半期末の簿価を年間平均した金額がQBAIとなり、これに10%掛けた金額がルーティン利益扱いされ、当額と比較して、課税所得の方が大きければ一次試験合格。

ここでは話しを簡単にするため「課税所得」がルーティン利益を超えていれば、と書いてるけど、実はこの算定をする際の課税所得は、申告書上の課税所得全体からいくつかの項目を除外する必要がある。それらは、CFC合算所得(Subpart F所得)、GILTI合算所得、金融サービス所得、CFCからの配当所得(みなし配当含む)、FOGIの逆でDOGI(?)とでも言える米国内オイル・ガス所得、そして米国外支店所得だ。米国外支店に帰属する多くの所得は普通に考えればその大半が米国外のカスタマーからの売上となるはずだけにFDIIの計算から(米国外)支店に帰する所得がカーブアウトされてるのはかなり興味深い。支店に関しては、支店をQBUと定義して、FTCの際に別のバスケット化されたりしているので再注目されているけど、FDII目的では支店に所得が配賦されない方が有難い一方、FTCのことを考えると、Excess Creditの場合には支店により多くの所得を配賦する方が好ましくテンションがある。条約のリソーシングとの関係とか、時間があったら税制改正後の米国法人の海外支店・PEは深掘りしてみたいトピックのひとつだ

みなし無形資産リターンの存在が確認できたら、次はそのうちのどの部分が米国外派生となるかの確定。これも「みなし無形資産リターン」に 「米国外派生%」を掛けた金額なので、フォーミュラとしては機械的に算定され、この金額こそがFDIIだ。米国外派生% は、単純に言えば、上述の除外項目以外の課税所得(適格所得)に占める外国部分の%。外国部分は米国外カスタマーに対する売上(ライセンス含む)およびサービス提供から派生する課税所得。なので米国法人の取引のうち、何がFDII目的で「米国外カスタマー」に対する取引と認められるか、が最重要検討事項となる。この点から次回。

Tuesday, March 12, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (2)

Section 250のFDII財務省規則案が急に公表されたので、またそっちに移り気してしまってるけど、FDIIは、法人税率引き下げ、即時償却、と並んで今回の税制改正で導入された納税者よりの規定のひとつ。それらのグディーズに対し、GILTI、BEAT、163(j)、Anti-Hybridという反納税者規定があり、もうひとつ本来は目玉商品だったはずのテリトリアル課税の恩典は限りなく透明に近いブルー、じゃなくて限りなくゼロに近い、というのが税制改正の全体像と言っていいだろう。日本企業のような米国から見たインバウンドグループは、その気になればCFCを米国傘下から外すことが可能な訳で、税制改正最大の障害であるGILTIからの解放は十分に可能だ。「War is over if you want it」の世界。BEATは残るにしても、他は納税者に有利な規定なので、どのように恩典を最大限化するか検討する必要がある。

FDII適格となる取引に適用される13.125%という法人税率は、単純に税率だけで見るなら(州税も無視して)、香港やシンガポールより低く、アイルランドやリヒテンシュタイン並みだから、これをUnited States of Americasの税率と考えるとかなり迫力がある。それだけに、法律が意図している取引のみが適格となるよう、特に外国人顧客、米国外使用、等にかかわる定義やその証明法を詳細に規定しているのが今回の財務省規則案だ。

まず、Section 250控除の恩典を受けることができる納税者だけど、REIT、RIC、S法人以外の米国法人となる。なんかチョッとBEATと似てるけど、BEATと異なりFDIIは「米国」法人にしか適用がない。FDIIに関してはそれはそれでポリシーマターだからどうってことはないけど、Section 250はFDIIばかりでなく、GILTI控除も規定している。GILTIの「合算」自体はCFCの米国株主であれば法人でなくても適用がある。にもかかわらずSection 250は米国法人以外に適用がないということは米国法人以外の米国株主はフルの税率でGILTI課税されることになる。「と言うことは21%か・・」ではなく、個人は37%が最高税率。CFC保有しているような個人だったら多くの方が37%だろう。しかも個人には間接外国税額控除も認められないので、CFCが所在国で法人税支払った上に米国で37%というとんでもない結果となる。グローバルミニマム税13.125%どころの騒ぎではない。

以前から存在するSection 962と言う、個人が一定の目的で法人かのように取り扱うことを選択する制度を利用するのが唯一の救いとなるけど、Section 962は分配時に不利な取り扱いがあったり完全な解決にはならないだろう。また、Section 962を選択することで外国税額控除は認められそうだったけど、控除項目のGILTI控除はSection 962下でも法律の書き方から難しいのではないか、と疑われていたが、今回の規則案でSection 962を選択する個人の納税者にもSection 250のGILTI控除が認められることになった。ただ、これはSection 250のGILTI控除部分の話しで、個人がSection 962選択をしてもFDII恩典を享受できるということではない。

実際に何がFDII適格の取引・所得になるかという本題に入る前に、規則案では250条控除計算にかかわる諸々の事務的計算法に触れている。とは言え、これが実に難解。下手するとEXCELのIteration機能を駆使した反復計算になりそうで、実際に財務省にはそれが正しいアプローチという声もあったようだけど、最終的には強制的な計算優先順位を設定することでIterationは回避されている。

複雑化する原因は、Section 250控除額は課税所得を上限とすると法律で規定されていて、この目的での課税所得はSection 163(j)やSection 172(NOL)他の控除・制限を全て加味した後のSection 250直前の金額となる一方、Section 163(j)の支払利息損金算入制限を算定する際に使用するATIはSection 250控除後、となっていて、どっちが先か不明な点。それをアーティスティックに解決しているのが今回の規則案。

規則案では、まずSection 163(j)やNOLを無視してFDIIを算定し、GILTIと合わせて課税所得上限は無視して仮の暫定Section 250控除額、すなわち「暫定Section 250控除」を算定するとしている。で、この暫定Section 250控除を加味してSection 163(j)目的の修正課税所得(ATI)を算出し、支払利息損金算入制限額を決定する。その結果、損金算入が認められることになった支払利息を使用して当期課税所得をはじき出し、そこにNOLを充当する。NOLの使用可能額はこのステップで決まり、近年のNOLで80%制限の対象となっている場合にはここで80%上限額を確定させる。さらに上のステップで使用可能となった支払利息およびNOLを使用して最終FDII額を算定。また同時にSection 250控除に対する課税所得上限額もこの段階で算定する。その結果、FDII額およびSection 250控除額が最終となる。Section 250控除額を算定する際に、FDIIとGILTI合算額が課税所得を超過する場合、超過額はGILTI控除とFDII控除に按分され、各々の控除額の対象となる金額を減額させる。なかなか良く考えられたステップだけど、これからの米国法人税コンプライアンスの負荷は果てしなく高い。

さて、いよいよ次回はFDII適格所得の算定法。