Tuesday, January 15, 2019

留保所得一括課税の財務省規則最終化

この超バタバタ(いつも)の中、財務省は去年の8月に公表していた留保所得一括課税にかかわる財務省規則案を最終化し、米国時間今日(1月15日)午後に公表した。規則案は249ページだったけど、最終規則は305ページ。ページ数で競ってる訳じゃないけど、最終規則は50ページ強増強されていることになる。

チョッとオサライだけど、留保所得一括課税って、CFCとかの特定外国法人の2017年12月31日以前に開始する直近の課税年度(「合算課税対象年度」)末を含む米国株主側の課税年度に、外国法人の1987年以降の留保所得を15.5%(現金相当額)または8%(その他)の低税率で課税するという仕組み。この移行措置を経て、米国もめでたくテリトリアル課税に移行すると考えていたところが、まったくのダマシ船で、一括課税された上、さらにグローバル連結に近いGILTIに移行してしまったのは、以前からのポスティングで触れている通り。

税制改正に基づく規則で先陣を切って最終化された訳だけど、留保所得一括課税は多くのケースで2017年課税年度に処理するものであり、会計上のインパクトも含めて他の規則よりも一年早く検討事項となっている。米国企業は既に2018年10月、日本企業の多くは、まさしく今日2019年1月15日に提出した申告書で加味しているはず。なんで申告書作成は例年にも増して大変な作業となったケースが多い。

そのため、税制改正可決直後から、多くのNoticeでガイダンスが公表されており、ここに来て真っ先に最終規則に漕ぎつけている。基本的に規則案の構成・方向を踏襲している部分が大半なので、まあまあ読みやすい。取り急ぎ、目についた点をまとめると次の通り。

米国パートナーシップの上に2社CFCを介したりして、Subpart F所得を非課税にしようなんていう米国パートナーシップブロッカー形態は、以前のNoticeやGILTIの財務省規則案で網が掛けられているけど、ここでも同様な背景で、本来、パススルーでもパートナーシップレベルでCFC等の米国株主と取り扱われるはずが、一定の要件下で米国パートナーシップは外国パートナーシップかのようにLook-throughしてパートナーを米国株主として取り扱う規定がある。これは一括課税の規則案にもしっかり規定があったけど、今回の最終規則では、米国パートナーシップがLook-throughになる場合、その結果間接的に10%の持分を持つパートナーだけに対してばかりでなく、少数持分保有のパートナーを含む全てのパートナーに関してLook-throughが適用される、としている。

そして話題のDownward Attribution系の話し。外国法人が特定外国法人になるのかとか、米国人が米国株主になるのか、という判断をする際、規則案では少額免除規定のような形で、5%未満の持分を保有するパートナーからパートナーシップへのみなし株式保有は免除してくれていた。でないと結構ビックリするような結果となることがある。で、最終規則では更に寛容に、当例外規定の基準を10%未満の持分に拡大してくれている。さらに、こちらは日本企業には余り関係ないかもしれないけど、同じような少額免除を受益人から信託に対するみなし保有規定にも新規に規定してくれている。

次はSection 1248と課税済所得。CFC株式を譲渡した際にCFCのE&Pの範囲で譲渡益がみなし配当取り扱いになりますっていうのは比較的初歩的な米国クロスボーダー課税の規則だったけど、原則、このE&Pには課税済留保所得は含まれない。それはそうで、実際に分配しても課税済所得は配当にはならないからだ、従来のSubpart Fの世界では、合算課税が起こればその分CFC株式簿価が上がり、同額が課税済所得なって、というのが常識だったんだけど、留保所得一括課税にしても、GILTIにしても、米国株主側で複数のCFCの数字を合算してしまうので、従来のようなきれいなフォーミュラが成立しない。で、Section 1248では単純に米国株主が過去に実際に合算課税されてる課税済E&Pをみなし配当原資には加味しない、って規定されてるんだけど、留保所得一括課税では、合算されてないのに課税済所得になっているE&Pが存在し得るので、ここをSection 1248でどう考えるのか、というのは不思議な部分があった。

すなわち、留保所得一括課税時には、米国株主が複数のCFCを保有し、他のCFCのマイナス留保所得でプラスの留保所得を相殺している場合、相殺されたプラスの留保所得も「課税済」と取り扱われるけど、この部分は実際には米国株主側で合算されていないので、みなし配当の原資となり得るの?まさか、っていう話しだ。そんなのSection 1248のアップデートし忘れじゃない?とか、いやいやその部分は配当になり100%所得控除の対象と考える楽観的な解釈もあり得るし、またはそもそも実際に分配しても100%所得控除の対象にはならないんだから、簿価を下げるでしょ、みたいなアプローチもあり得た。最終規則では、チョッと語弊があるけど、Section 1248のアップデート忘れに近いスタンスで、他CFCのマイナス留保所得で相殺された留保所得も、実際に合算課税されたE&P同様にみなし配当原資には加味しないと規定している。法文と不整合だけどなかなか度胸あるね。

次はビックリしたCFC株式税務簿価の調整選択時の金額制限。これは面白すぎるので次回。

Tuesday, January 1, 2019

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(5)

2019年、明けましておめでとうございます!昨日、大晦日は例年より気温が高めっぽいから、43rd Streetとかで12時間待つみんなもチョッと楽かも、とうかつなことを書いてしまったけど、結局午後早めからかなり雨が降り始めてTimes Squareでカウントダウン待ってるみんなは大変だったんじゃないかな。あれだけの人が殺到しているので傘は禁止。ということはポンチョのみが頼り。それでもストリーミングで見る限り、たくさんの人が参加してた。せっかくだから一度はライブでって思うこともなくはないけど、ティーンだったり20歳代の頃なら話しのネタに頑張って参加したかもしれないけど、今となってはコストパフォーマンス的に割が合わない気がする。

ちなみにエンパイアステートビルのライトは今でもクリスマス色って昨日の昼時点で書いたけど、大晦日の夜、年越しのタイミングが近づいてくると7色のRainbowになり、普段でもたまに白い光が下から上に流れるようにライトアップされる時間帯があるけど、それと同じように7色の光が滝が逆流するみたい下から上に流れていて凄い綺麗。ミッドタウンはどこに行ってもエンパイアステートビルとクライスラービルが上から守っててくれるみたいで心強い。Freedom Tower(いまでは名前変わったけど)とかParkと56のコーナーにDrakeホテルを壊して建築された超高層アパートの432 Park Avenue Condominiumsとか、他国にももっと高い摩天楼がいくら建ったとしても、エンパイアステートビルとクライスラービルのエレガンスは唯一無二。

で、新年早々BEATに戻るけど、BEATの対象となる納税者かどうかの判断に関してあれこれとポスティングしている途中で年が変わってしまった。売上基準はだいたいカバーしたんじゃないかと思うので、今日はBase Erosion%に関して少し。お正月特番としては地味だけど、売上基準を優に超える法人にとって、Base Erosion%は最後の砦。これを3%未満とすることができるかは重要な分かれ道。米国企業も含めて周り様子を見ていると、取りあえず2017年課税年度ベースで何%くらいになるか試算し、2018年が経過するにつれて、2018年に予想されるマテリアルな差異を取り込んでFine Tuneして、%を予測、場合によっては調整、というのが一般的な対応のようだ。

税制改正でM&A時のタックスDD項目が大幅に増えたり、今までとは異なる視点が鍵となってくることがあるけど、買収後のBase Erosion%もそんな検討のひとつ。ターゲットとグループ間取引が存在しないケースでは、分母となる控除は増えるので、Base Erosion%的にはグッドニュース。しかも、「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(2)」で触れた通り、Aggregateグループの合算計算は、法人の期末時点でグループ構成を判断するので、期の途中で買収したターゲットの金額もまるまる取り込んでグループ合算Base Erosion%を判断することができるはず。ただ、逆に売上基準も同様に期末時点でAggregateグループに属する法人の売上は、期末直前に買収したような法人でも強制的に過去3年の平均に加味されるので、こちらは売上が大きくなって不利。

Base Erosion%が3%未満かどうかが勝負、ってさっき書いたけど、これはあくまで一般法人の話しで、金融機関を含む連結納税グループには特別に厳しく、3%の代わりに2%が適用される。いつ2%で対象になるかっていう点は異なるグループコンセプトが混在しているので結構分かり難い。法文では「銀行または証券ディーラーが含まれる連結納税グループのメンバー」は2%となっている。ちなみにBEATミニマム税を算定する際に使う税率も年度によって5%、10%、12.5%となるけど、銀行や証券ディーラーを含む連結納税グループのメンバーには6%、11%、13.5%とやはり1%厳しくなっている。法文は、銀行や証券ディーラーが連結納税グループの一メンバーの際に適用があるような文言となっていて単体の話しには触れられていない。また、厳密に言うとここで言う連結納税グループは、連結納税の選択が可能なグループのことを意味し、実際には余りないケースだけど、連結納税可能なグループであれば連結納税を選択していなくても同様の取り扱いとなる。連結納税可能なグループは米国法人親会社を起点に80%以上の議決権および価値に基づく資本関係で結ばれる米国法人グループだ。なので、必ずしも自分が銀行とか証券ディーラーでなくても2%のBase Erosion%が適用されることがある。ちなみに、ここで言う証券ディーラーは1934年証券取引所法(Securities Exchange Act of 1934)の第15条(a)に基づき登録される証券ディーラーを意味する。

さらに財務省規則案では、連結納税グループに属する銀行や証券ディーラーをメンバーに持つAggregateグループにも2%を適用するとしている。Aggregateグループは、連結納税グループより広範なので、この規則は法文だけでは読み取れない追加の厳しい規定となる。

また、財務省規則案にはAggregateグループの売上合算額に占める銀行または証券ディーラーの売上が2%未満の場合には、当該Aggregateグループには銀行または証券ディーラーは含まれないかのように取り扱うという少額免除制度が規定されている。Aggregateグループと連結納税グループは異なるグループ定義なので、ここの部分は解釈が難しいけど、財務省規則案はその直後に、銀行や証券ディーラーを含む連結納税グループにAggregateグループが存在しない場合には(連結納税グループ以外にAggregateグループのメンバーがいない場合と理解するのがいいだろう)、連結納税グループの売上に占める銀行または証券ディーラーの売上が2%未満の場合には、同様の少額免除を適用し、当該連結納税グループには銀行または証券ディーラーは含まれないかのように取り扱うとしている。このことから、Aggregateグループに占める銀行または証券ディーラーの売上が2%未満の場合には、当該Aggregateグループ内に存在する銀行または証券ディーラーを含む連結納税グループの銀行または証券ディーラーの売上が2%以上でも、Aggregateグループベースの少額免除をもって、連結納税グループも3%のBase Erosion%に基づく判断をしてよろしい、ということなんだろう。なんか結構思ったよりも難しいね。

という訳で新年早々のBase Erosion%でした。

Monday, December 31, 2018

2018年大晦日「行く年来る年」

ちょうど昨年の大晦日は税制改正可決直後で、「米国税法改革「Tax Cuts and Jobs Act」そして2017年の政局を振り返って」というタイトルのポスティングをしていた。可決当時のまだ詳細も不明な時期だけあり、どことなくイノセントな感じが漂っている。

その後、可決直後のハネムーンは早々に終わり、膨大な量の規則と立ち向かう毎日を過ごしている間に、2018年も早くも12月31日になってしまった。時の経つスピードに驚愕すると共に、早くも想いは2019年のことでいっぱい。2019年もTCJAにかかわる多くのガイダンスが、引き続き公表されていくし、さらに現時点で案(「Proposed」)の状態にあるガイダンスが、順次最終化されていくExcitingな年だ。

多くの規則案は2019年6月21日までに最終化されるはず。なぜ6月21日かっていうところは数回前のポスティング「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(2)」で詳しく触れているのでぜひ読んでみて欲しい。各規則案にはパブリックコメントの提出期間が設定されていて、その間に寄せられるコメントに基づき更なる改訂が行われる。これだけ複雑な規定満載なので思わぬ副作用とかが新たに見つかったりして、最終化までには規則が変わる部分が結構あるはず。コメントの多くは法曹界、Big-4会計事務所、業界団体から寄せられるけど、法律可決直後の規則案の策定過程で、既にテクニカルな多くのコメントが寄せられている。複雑かつ新しい法律を適用する際に直面する不確実な検討事項は、無数にあり、それを財務省だけで潰すのは不可能という現実を考えると、この前倒しのコラボ体制はとても良くワークしている。さらに、どんなプラニングがあり得るかっていう点も比較的トランスペアレントに財務省に伝わる。そのため、乱用防止的な規則が策定される際に、許容範囲がどこにあるのかっていう点も比較的よく考えられていると思う。

年明け早々に公表されるであろう新規の財務省規則案の目玉は、100%配当控除を規定しているSection 245A、GILTI控除とFDII控除をセットで規定しているSection 250にかかわるもの。245Aは保有期間みたいな単純な規則一つとっても深く考えると恐ろしく複雑。FDIIは外国使用をどのように考えるのか、また、外国関連者に対する売上・サービス提供・ライセンスの濫用防止規定となる「Round Tripping防止」が、どのように規定されるか等興味は尽きない。でも、それまでに既に公表されているのメジャーな規則案を、ある程度読み込んでおかないと財務省のペースに二度と追いつけなくなってしまいそう。2019年も引き続きハイテンション間違いなしだ。

日本では既にお正月になっているけどNYCはまだ大晦日のお昼。オフィスのあるTimes Squareは、1904年から毎年恒例の60秒カウントダウンで、オフィス自体もちろん立ち入り不可。本当かどうか知らないけどカウントダウンに100万人の人が殺到するというから凄い。カウントダウン時に6トン近い巨大なボールが、1分かけて落ちるのもお馴染み。今年の「Imagine」はブルックリン生まれの歌姫、Bebe Rexhaが歌うらしい。今年は例年より気持ち気温が高めの大晦日っぽいから、43rd Streetとかで12時間待つみんなもチョッと楽かもね。

という訳で、2018年もいろいろと脱線することもあって、どうでもいいこともたくさんポスティングしてしまったけど、2019年もより多くの日本企業が、グローバルプレイヤーとして活躍できるよう米国税務面からサポートしていきたい。

Sunday, December 30, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(4)

前回のクリスマスイブポスティングでは、BEAT適用対象かどうかの判断時にパートナーシップをどう取り扱うかっていう、法文では明記されてい なかった部分に関して触れた。そうこうしている間に、2018年のクリスマスも過ぎてしまったけど、エンパイアステートビルは相変わらず夕方になると赤と緑で美しくライトアップされているし、ロックフェラーセンターのクリスマスツリーも1月7日まではそのまま煌々と光り続ける。ロックフェラーセンターには、11月28日のライトアップショー以降、ツリーや関連イベントを見ようと多くの観光客が立ち寄る。その間、48とか51とかのストリートは多くの人でごった返し、交通規制が敷かれ、渋滞で大混乱。特にMidtownの中心からマンハッタンを北上して48方面に向かう、6th AveやMadisonの渋滞はひどい。昨日の夕方も、深く考えずに44からMadisonに左折してしまって、数ブロック超えるのに長い時間を要し、その間、BEATの適用対象に関して、他に良く質問される不明点はなかったかな、とか考えたりしてた。

ただ、マンハッタン内の渋滞は仮に時間帯によって激しくても、所詮距離がしれてるからマシ。結局、昨日も数ブロック超えたらスムースオペレーター(Sade!)になって、その後はアッと言う間だったし。その点、南カリフォルニアの405とかで渋滞に巻き込まれ、10マイルとか延々混んでるより全然ベター。405は夜中2時とかは別として、渋滞に巻き込まれない方が珍しいし。夜中の2時とかでも、油断していると、道路工事とかCHPのアクティビティとかで5車線が1車線になったりして渋滞することもあり、そんな時は「こんな時間に・・」とショックの大きさもひとしお。

良くみんな、特にロサンゼルスの人、に南カリフォルニアとNYCのどちらがいいか、っていう比較可能性が低く、余り意味のない質問を受けることがあって、どっちにも愛着もあり、各々別の角度からいいとこだと思うけど、敢えて言うなら基本的にお天気以外ではNYC。お天気も慣れの問題で、冬のマンハッタンとか白い息を吐きながらクライスラービルとか見えてると気が引き締まるし、雨も「12月の雨」(古~)じゃないけど、雨音に気付いて遅く起きた朝、とか結構Cozy。で、なんでこんな話しかって言うと、南カリフォルニアで車に乗ってる時間の無駄さ加減が余りなのと、後、CHPって書いて、南カリフォルニアのポリスとNYPDの余りの態度の違いを思い出したから。平均的な他州のポリスから受ける印象に比べて、特に合法的に暮らしている通常の市民に対するNYPDのフレンドリーかつヘルプフルなポリスに比べて、CHPやLAPDのポリスは意味もなく高圧的。NYPDのモットーは「Courtesy, Professionalism, Respect」だけどそれに忠実なイメージ。CHPは逆。州民の税金から給料もらってる公僕だって意識が全くなく、この前もFWY10で、いかにも善良そうにただ運転しているだけの市民の後ろにいきなり派手に接近してサイレンならし、横によけると「なんで急に横によける!」とかスピーカーで思いっきり怒鳴ってみたり極めて横柄。もちろん文句でも言おうものなら撃ち殺されかねないし、市民としては余りDue Processがない。南カリフォルニアに居ると慣れてくるけど、野蛮と言うか田舎もの丸出しというか、って感じ。もしかしてCHPにチケット良く切られるので愚痴?って言われるかもしれないけど、東西比較検討項目のひとつで、差異が際立っている点のひとつだろう。

またしても貴重な年末の限られた時間をどうでもいい話しに費やしてしまったけど、Madison Aveで一瞬渋滞している間に思い出したのが、売上(Gross Receipt)テスト適用時の売上の考え方。大概のケースでは、テストするまでもなく超えているので、後はBase Erosion%で勝負っていう法人グループか、うちはまだまだスタートアップなので平気って法人グループか、二分化されると思うけど、場合によっては結構際どいケースもあり得る。

BEAT以外の局面でも売上テストは、現金ベースで課税所得を確定してもいいか、263AでInventory Capしないでいいか、Section 163(j)で支払利息の損金算入制限を考えなくてもいいか、とか結構登場する。

ここで言う売上は、米国税務上、当期に認識されるものを意味し、物販に関しては売上原価を差し引く前の総収入から返品を差し引いた金額、サービス提供に関してはグロス全額が含まれる。また、その他の付随的な活動からの受け取りも全て含まれる。投資活動からの受け取りも全て売上を構成し、それにはOIDや地方債のような非課税利子所得も含まれ、配当、賃貸、ロイヤルティーも全て売上だ。例外的に、事業資産やキャピタル資産の譲渡に関しては受取額から税務簿価を差し引くことが認められる。規定上、明確でないけど、売上の話しなので、個人的には事業資産やキャピタル資産から譲渡損が発生する場合には、マイナスと数えるのではなく、ゼロとするんじゃかないか、と考えてる。

BEATに関しては、財務省規則案が公表されるズッと以前、税法改正が可決して間もない頃、手探りでいろいろとポスティングしていた懐かしい時期がある。その時のシリーズで、何と1月10日という早い時期に書いている「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(2)」でも、実はBEAT適用条件の売上基準に関して触れた。そこでも触れたけど、過去3年平均で売上$500M以上かどうかを算定する際に12カ月未満の課税年度が存在するようなケースでは年間換算額を用いるとか、合併等、期の途中で組織再編がある場合には前身の主体の売上も含むとか、通常この手の基準に規定される注意事項が同様に規定されている一方、法文上、不思議なことに、通常は必ずこの手に話しに必ず登場する「3年間存在してない法人はどうするの?」っていう点が規則から抜け落ちている点に触れた。

で、今回の財務省規則案ではしっかりそこも規定されていて、法人が過去3年存在していないケースでは、設立以来の期間で平均売上を計算しなさい、って通常通りの規定となっている。その際、大概において初年度となる課税年度は12カ月未満だろうってことを想定し、上述の12カ月未満の課税年度が存在するようなケースでは年間換算額を用いる規則も同時適用すること、ってしっかり釘を刺している。

ということで今日は、Madison Ave発の売上基準に関するその他規則でした。

Monday, December 24, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(3)

前回のポスティングは、クロスボーダー課税シリーズを一休みして、税制改正可決一周年記念特集となったけど、再びBEAT財務省規則案に戻る。前々回、BEATの対象となる納税者の定義、特にAggregationルールに基づくグループ合算規定に触れた。

その際、Base Erosion%基準に関して、グループ内で基本的に消去するものはない、って書いたけど、厳密に言うと、Aggregationルール下、規則案で「一人の納税者」と取り扱われるグループ内、すなわちグループ米国法人と支店申告をしている外国法人間の支払いに基づく控除が分母に含まれる場合には、当該控除額は、内部取引として消去され、その分、分母が減ることになる。分母は大きければ大きいほどいい訳だから、こんな金額があると損。分子のBase Erosion Benefitsに関しては、Base Erosion Benefitsの大元となるBase Erosion Paymentはそもそも外国関連者への支出に限定され、しかも規則案で米国支店が申告所得の一部に取り込んでいる金額に関しては、仮にテクニカルに外国関連者への支払いでもBase Erosion Paymentとはならない点が明記されているので、Aggregationルールで消去の対象となるものはないはず。

で、今回はAggregationルールそのものではないけど、売上基準とBase Erosion%基準適用時のパートナーシップの取り扱いに関して。

パートナーシップを持つ法人が、パートナーシップ項目をどのように取り扱うか、っていう点は法文には明記されておらず、財務省によるガイダンスが待たれていたが、規則案ではパートナーとパートナーシップを合体して考える、所謂Aggregateコンセプト(BEATのAggregationルールとは関係ない用語なのでご注意)に基づく、合理的なアプローチが規定されている。

パートナーシップの取り扱いは、売上基準とBase Erosion%基準で、そのアプローチが微妙に異なるので注意。まず、売上基準目的では、パートナーシップの売上をパートナーシップ合意書に基づき各パートナーに配賦し、法人パートナーは当金額を自分の売上と合算して、売上基準を適用することになる。もちろん、法人がAggregationルールに基づて合算対象グループに属している場合には、当法人はパートナーシップの持分相当売上を取り込んだ上、更にグループ合算規定を適用することとなる。また、他のAggregationルールにかかわる検討と同様、仮に法人パートナーが取り込むパートナーシップの売上が、当法人パートナーのAggregationルール上の合算グループに対するものであれば、当売上は消去されることになるはず。パートナーシップ売上の各パートナーへの配賦額の決定法だけど、配賦に実質的な経済効果が認められる(704(b)の安全ガイドライン基準)、または安全ガイドラインから逸脱するまたはターゲットAllocationのように最初から安全ガイドラインを適用するつもりがないケースでPIPに準じる限り、パートナーシップ合意書に基づく配賦となる。滅多にないけど、パートナーシップ合意書の配賦に問題がある場合には、PIPに準じる配賦が強要される。ネット損益を常に50・50等で配賦するようなプレーンなケースは分かり易いけど、Special Allocationとかが存在するケースでは、どの売上がどの配賦に帰属するのか、特定した上で、売上そのものの配賦額を決定する必要がある。

次にBase Erosion%だけど、パートナーシップによる支出がBase Erosion Paymentに当るかどうかの判断は、パートナーシップ側の各支出をパートナーシップ合意書に基づき各パートナーに配賦し、当金額をあたかもパートナーが直接支払っているかのように取り扱い、各パートナーにとってBase Erosion Paymentになるかどうか、すなわち、支払先が「パートナーから見て」外国関連者に当るかどうかを基に行う、とされる。え~、ってことはパートナーシップが支払う全項目に関してその相手先を教えてもらい、それが法人パートナーの外国関連者かどうか調べないとBase Erosion Paymentの有無すら特定できないってこと?まあ、テクニカルにはそうだろうけど、実務的には大概のケースで、受け手となる外国関連者で、米国法人が投資しているパートナーシップから受け取りがあれば、それはグループとしてその存在を認知しているはず、と考えられるよね。

Base Erosion%の分母となる控除総額に関しても、法人パートナーはパートナーシップから持分相当を取り込むことができる。ここは、財務省規則案の「Other Relevant Items」の部分で、控除額に関しても取り込むこと、と記載されているので、BEATのパートナーシップに対する原則アプローチとなるAggregateコンセプトの下、分母にも持分相当額を取り込むということだろう。

Base Erosion%基準の適用時、法人パートナーがパートナーシップからBase Erosion Paymentを取り込むかどうかに関して、マイナーな少額免除制度が規定されている。免除規定によると、パートナーの持分が、資本、利益、配賦比率全てに関して10%未満で、かつパートナーの課税年度末時点でパートナーシップ持分の時価が$25M未満の場合は、パートナーシップから取り込みを行う必要はないとされている。このBase Erosion Paymentにかかわる少額持分免除は売上基準には適用がないように読める。また、$25M未満かどうかは時価ベースの判断となるため、厳密には毎期末、パートナシップ持分を時価評価する必要が生じるが、当評価は何らかの合理的な算定法を適用して判断してOKと規定されているので、必ずしも毎期高価な時価評価レポートを用意する必要はなさそうだ。

と、クリスマスイブも早くも午後になってきて、エンパイアステートビルもクリスマス色にライトアップされてきたので、今日はこの辺で。NYCのクリスマスは街中がいい感じ。クリスマスはやっぱり寒い方が感じでるね。

Saturday, December 22, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「今日で可決から1年」

TCJAがトランプ大統領の署名により可決されてから今日2018年12月22日でちょうど1年。アニバーサリーを迎えて様々な思いが頭をよぎる。一年前、最終化された条文を急いで読んで受けた新税法のイメージと、この一年、解析をし続け、不明点が浮き彫りになり、とてつもない量の財務省規則草案が公表され、という進化(深化?)を経た結果今日抱いているイメージは結構異なっていると言える。

法人税引き下げ、米国から国外への販売・ライセンス・サービス提供に低税率を規定しているFDII、設備投資に対する即時償却、など、分かり易い恩典のイメージは確かにそのまま威力を発揮していて、悪いニュースは各社敢えて公表は控えてるんだろうという点を割り引いても、米国経済は基本的に好調に推移しているように見える。

昨日のWSJにも、税制改正一周年を記念して「再び競争力を付ける米国経済(America is Competitive Again)」というタイトル、「税制改正はホワイトハウスが狙った通りの経済・雇用効果を実現(The tax cuts of 2017 have boosted growth and job creation, just as the White House team intended)」というサブタイトルで高らかそこの効果を特集している。ちなみに当記事の著者は当時の国家経済会議委員長のGary Cohnなので当然ポジティブなトーンに終始しているが、米国において肌で感じるビジネスの動向と整合性がある内容だと思う。Gary Cohnの論調は説得力がある。ゴールドマンサックスの元社長だから、相当のやり手だろうし、そんな感じが滲み出てて力強い。ちなみに、最近は、彼が社長の頃、NYCやLVその他でお金使いまくってたJho Low率いる1MDB絡みのビジネスがアジアで始まってたって切り口でメディアに登場することが多かったけど、久しぶりに本道に返り咲いた感じの記事で健在ぶりを披露してくれた。

WSJの記事によると、経済成長率は2018年第三四半期までの9カ月通算3.3%(年率換算)で、これは13年振りの高成長率。トランプ政権誕生時に米国の経済成長率を3%台に戻すという目標を掲げた時点では、オバマ政権下の「New Normal」だった2%台を超えるのは無理というのが「有識者」の一般的な見方だった。たった1%じゃん、って思うかもしれないけど、米国規模の経済が、1%高い成長率を達成するということは、雇用、賃上げ、財政、等にとてつもなく大きなインパクトがある。

企業による米国回帰の動きも顕著しかも迅速で、500社を超える大手企業が、賃上げ、特別ボーナス支給、雇用拡大を発表し、600万人の従業員が何らかの恩典を享受しており、実に89%に上る経営者が税制改正の影響に基づき、従業員に対する報酬パッケージをアップグレードする予定だというサーベイ結果が出ている。経済が好調な状況で雇用環境も申し分ない。2018年に入ってから210万人の雇用増、失業率は3.7%と1969年以来のベスト記録。求人が失業者数より多い状況となり、賃金もアップ。2018年の賃金上昇率は3.1%と過去数十年で最高。低所得者層の賃金アップ率は更に高く4%を記録しているそうだ。経営者にとって頭痛の種は人材確保。

Capexは2017年比較で1,800億ドル(約20兆円)アップ、住宅関連以外の不動産投資は16%(1993年以来の高水準)、知的財産関連投資は10%(1999年以来の高水準)各々前年対比アップとなっている。税制改正のOpportunity Zone条項に基づく特定のエリアへの投資意欲も盛ん。

また、注目の海外からの米国への資金還流に関しては、前年同期1,280億ドルのところ、2018年の最初の3四半期で5,710億ドルを記録している。米国企業による海外子会社からの資金還流だけど、従来は四半期400億ドルが平均だったらしい。これが税制改正直後は一気に3,000億ドルに跳ね上がり、その後、500億ドルから1,000億ドルレベルに落ち着いてきた模様。資金還流のテクニカル面は後半チョッと触れたい。

でも法人税減税で、国家財政がマイナスになるので、税制改正はよくない、と言う声は未だに良く聞かれる。この点に関しては、政策決定時に国家財政に与える影響を加味するのは当然、とした上で、雇用、賃金水準がこれだけ上昇すれば、税収ベースの拡大に繋がる、また連邦政府が恒常的に赤字となっている主たる原因は、歳入が少ないからではなく、歳出が連邦政府の域を出る分野にまで拡大し、制御不能に陥っている点、としている。すなわち、いくら増税しても歳出をコントロールするまで財政赤字は解決しない、ということだ。

ポリシーや経済的な議論はさておき、テクニカルな面からは斬新なクロスボーダー課税およびその複雑さは特筆に値するだろう。法律が審議されている当時から可決に至るバタバタのローラーコースター期間に想定されていた新税制下のクロスボーダー課税に対するザックリとしたイメージは、米国もテリトリアル課税に移行し、その代わりに旧税制下で蓄積された海外留保所得は制度移行の代償(?)として低税率で一括課税、一部BEATのような特殊なBase Erosion対策が講じられ、またCFCが無形資産から超過利益を生み出している場合にはミニマム税が課される、とは言え基本的には海外所得は非課税、というような大枠だった。

法律可決後、間もない頃から、ちゃんと法文読み始めてみると、そんな生易しいものでないという発見に驚愕することとなる。制度移行で留保所得に一括課税された後、待ち受けている新制度は、語弊はあるけど全世界連結納税に近いGILTI。それに追い打ちをかける形でBEAT、Section 163(j)、Hybrid禁止(2日前にこちらも財務省規則草案公表)とこれでもか、って感じ。以前の全世界Deferralシステムと比べて、より厳しく、またコンプライアンス負荷が高いクロスボーダー課税制度になってしまった、という発見だ。

結局のところ、ヘッドラインだったテリトリアル課税を規定している100%配当控除の恩典を受けることが可能な事実関係は極端に少ない作りになっている。特に今後発生する海外所得に関しては、GILTIからシェルターされるCFCの有形償却資産の10%リターンと、複数のCFCを持つ米国株主が米国側のGILTI算定時に、CFCからロールアップしてくるTested Lossで、他のCFCからロールアップしてくるTested Incomeを相殺した際に、プラスのCFCのE&PにはTested Incomeでかつ米国株主側で超過利益となるはずの金額でも、GILTIがプッシュダウンされて戻ってくる際にGILTI「課税済み」とならない部分があるけど、これもテリトリアル課税の恩典を受け得る数少ない原資だ。ただ、優先順位的に、分配はまず課税済留保所得から行われていると取り扱われるから、留保所得一括課税の影響もあり、テリトリアル課税の恩典を受けることができる分配原資に辿り着くことがあるのかどうか、も怪しい。で、未だ規則案出てないけど、100%配当控除を規定している245Aも他のクロスボーダー課税に勝るとも劣らない複雑な規定だ。

上のWSJの記事にもある通り、以前よりは資金還流が税務的に容易になったのは事実。ただ、この点に関しても配当する側の源泉税の問題以外にも、CFCに対する米国株主側の株式簿価増減と課税済所得の還流にかかわるキャピタルゲイン認識の複雑な複合問題、等で一般に考えられるよりも資金に手が付けられない局面は多い。その際、CFCの株式簿価はかなりキーとなる検討なので、税務属性の管理に余り高い意識があるように見受けられない日本企業にとって、M&A時のTDDとかの局面も含めて、今後より高度な検討が強いられる分野となるだろう。

2017年の大統領選挙の結果、誕生が可能になったTCJA。もし選挙結果が異なっていたら米国経済も大きく異なっていただろう。ヒラリークリントンが大統領になっていたら、タダですら財産没収の域に達していると言っても過言ではない米国税制を更に高税率とし、キャピタルゲイン認識には6年間の保有期間を課したり、オバマ政権下でチョッと息が詰まるような「なんでそんなことDCの連邦政府に言われないといけないんだろう?」的な、本来主権国家同様の州政府権限をオーバーライドするような諸々の連邦政府発の行政規制がそのまま継続、または増大していただろうし。

という訳で、もう1年経ったというべきか、未だ1年しか経っていないと言うべきか。TCJAと寝食を共にしてきた身としては、TCJAが存在しなかった時代の税法や生活(大袈裟?)を考えるのは難しい。この法律の解析、適用は未だ始まったばかり。86年の税制改正がそうだったように、今後、何年、何十年も掛けて新たな「Body of Law」が構築されて行くことになるだろう。ロング・ジャーニーは始まったばかり。

Sunday, December 16, 2018

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(2)

で、結局、Pullman Loafは早々に売り切れてたんで、代わりにブリオッシュを買って始まったBEAT規則案のMorning After。幼少の頃、家の近くにあった「アートコーヒー」って店で母がブリオッシュよく買ってて、朝しょっちゅう摘まんでた影響で、時折ブリオッシュが無性に食べたくなる癖がまたしても店頭で頭を擡げてしまった。

規則案の中でも特筆すべき規定は昨日のBreaking Newsで触れているけど、若干もう少し真面目に解説した方がいいBEAT関連項目に関して、今回から数回に亘って触れてみたい。その後、約束通り、FTC、そして更にその後にSection 163(j)と、乞うご期待。でも、その間にもいろいろと気が散る題材が登場してきそう。米国事業に従事している(=ECIがあるという意味)パートナーシップ持分を外国人が譲渡した際の取り扱い、GILTIおよびFDII控除を規定するSection 250、そしてFTCと切っても切れない縁にあるPTI、100%配当控除を規定しているSection 245Aとか、今後も盛沢山そうなので、その都度、Breaking Newsには触れざるを得ない。となると、全て書き終えるのは更に数年(?)を要するかもね。国際税務業界の感覚として税制改正内容の具体的な方向性の探求は始まったばかりで、この長い冒険の旅、オデッセイは何年も続くというもの。楽しい本読んでたり、映画見てたりしても、いつかは終ってしまうのに比べて、国際税務のジャーニーは終わりがないのが嬉しい(?)。

ここに来てなぜ規則案が大量に公開されているかっていうと、いくつか側面はあると思うけど、財務省規則っていうのは普通は過去に遡及して効果を持つことはない。もう少し正確に言うと、最終規則は、最終規則そのものが公布された日、最終規則の基となる規則案(案そのものに法的効果はなし)、または暫定案(法的効果はあるが、一定期間を過ぎて最終化されない場合にはSunset)、が公布された日、IRSが「こんな規則を策定します」っていうNoticeを発行した日のいずれか早い日より前に効果を持つことは認められない。規則によっては納税者の選択で「早期適用」のオプションが規定されることも多いけど、これはあくまでも納税者側が自分の希望で勝手に適用するもの。規則の公布は米国連邦政府の官報または公報に当る「Federal Register」に掲載する形で行われる。ちなみに、規則が一般に公表される日、例えばBEAT規則案だったら2018年12月13日、は実際にFederal Registerに当規則案が掲載される日より数週間早い。過去訴求を認めないこの一般原則の例外として、「法改正に基づき迅速に策定される規則」、って日本語にするとチョッと固いけど、原文で言うところの「Promptly Issued Regulations」っていうのがあって、議会により法律そのものが新たに制定され、その日から「18カ月以内」に当法律に関して策定される財務省規則は、法律制定日まで遡って効果を持たせることができるというものがある。米国税制改正となるTCJAは2017年12月22日(後、1週間でAnniversary!)に署名されて正式に法律になっているので、2018年6月21日までに規則を最終化させることができれば、その内容全てが税制改正が適用される2018年課税年度(ほとんどの米国企業は2018年1月1日に開始する課税年度から新法適用)の初日から適用となる。

もうひとつの理由は、法的な制限ではなく、とてつもなく複雑な新しい法律を納税者に適用させるに当たり、何とか12月末までにできるだけのガイダンスを発行しておきたいという純粋なコンプライアンス面の検討。2018年12月決算の法人税申告そのものは2019年10月が最終期限だけど、予定納税、延長申請とか、また決算書上の法人税引当計算に関するガイダンスの必要性は待ったなしの状況だ。

という訳で洪水のように規則案が連発されていることになる。

で、BEATに戻ると、規則案では、まず諸々の定義を列挙した直後、誰がBEATの対象となるかという最重要検討事項でキックオフされている。これは物事の論理的な始め方と言えるけど、法文の方に目を移すとストラクチャー的にそのようなアプローチは難しく、大概、課税の概要から始まり、その後に適用対象納税者を含む、諸々の定義が来ることがほとんど。BEATを規定しているSection 59Aも、BEATミニマム課税概要から入って、法文で適用対象者の話しが出てくるのは、しばらく経ったSubsectionの(e)。法文をレターサイズにプリントすると、4ページ目で登場してくるキーとなる定義だ。規則案ではまず、この部分を入口で処理している。

BEAT適用対象者の基本は比較的シンプル。すなわち、S法人、RIC、REITを除く米国税務上Corporationと扱われる事業主体(便宜上、以下「法人」とする)。特に内国法人に限定されていない点に注意。ただし、過去3年平均売上が$500M未満(売上基準)、またはBase Erosion%3%未満(Base Erosion%基準)のいずれかの条件を充たす場合は適用除外となる。ちなみに銀行、証券会社のグループに含む納税者は3%ではなく2%。売上基準目的では、パートナーシップ持分を保有する米国法人は持分相当のパートナーシップ売上を加味する必要がある。

Base Erosion%は毎期の損金算入額に占めるBase Erosion Benefitsの占める%だけど、規則案では何を分母や分子に反映させるか、っていう点に関して、追加規則が規定されている。ここの部分はBase Erosion Paymentsから何を除外するかっていう部分と密接にリンクしているので、後日触れるBase Erosion Paymentsにかかわる話しを読んでからの方が分かり易いかもしれないけど、米国移転価格税制に規定されるService Cost Method(「SCM」)に準拠している役務提供対価、適格デリバティブ、Total Loss-Absorbing Capacity (“TLAC”)に基づく支払い、は分母・分子の双方から除外すると規定されている。TLACがBase Erosion Paymentsではないと規定された点は前回のポスティング通り。また、仮に為替差損益が関連者間取引を基に発生していても分母・分子の双方から除外される。逆に米国からInversionした企業に支払うCOGSや再保険プレミアムは分子・分母の双方に加算するとしている。更に、ケースとして多くはないと思うけど2018年1月1日以降に終了するCFCの課税年度が留保所得一括課税の合算課税年度となる場合、一括課税を現金部分は15.5%、それ以外は8%と低税率とするために計上される想定控除額は分母に加味が認められる。

ここまでのベーシックな売上基準やBase Erosion%基準そのものに関して、特に刺激的な部分は皆無と言えるけど、法文では売上基準、Base Erosion%基準の判断をする際に、特定のグループの数字を合算して行うこと、としている。所謂「Aggregationルール」に基づく「グループ合算規定」だ。法文では、Work Opportunity Credit(WOC)というおよそ国際課税に従事している者には馴染みのない条文を参照して、WOCで一人の雇用者と取り扱われる法人グループは、売上基準とBase Erosion%基準の判断時も「一人の納税者」として取り扱うと規定している。WOCのグループは、最終的にはSection 1563(a)のControlled Groupを80%以上ではなく、50%超基準で適用したものとなる。

Section 1563(a)のControlled Groupは世界中のグループ法人を含み、特に外国法人だからという理由のカーブアウトはない。法文にはなぜか、Section 1563(b)(2)(C)に規定される「外国法人はECIの部分を除き対象外」という部分に触れ、この除外規定は適用しないとしている。以前、BEATが法律として誕生した頃の今となっては懐かしいポスティングでも触れたけど、この除外規定の不適用は「弘法も筆の誤り」的な法文のドラフティングエラーとしか思えない。クロスボーダー課税の初心者であれば、Section 1563(a)のControlled Groupのメンバーの定義と、Section 1563(b)のComponentメンバーの定義がごちゃごちゃになりがちだって言うのは理解できるけど、海千山千の天下の上院財政委員会のスタッフライターはそんなことは百も承知のはず。Section 1563(a)には最初から外国法人も分け隔てなく含まれているので、その定義に何の影響も持たないSection 1563(b)で除外している外国法人を慌てて元に戻す、そんな必要もないはず。ただ、法文は全世界グループを意味しているっていう意気込みだけは充分に伝わってきていた。その上で、更に法文は、売上基準適用時に、外国法人に関して加味するべき売上は、米国申告課税対象となるECIに帰属する金額のみとしていた。

このグループ合算規定の解釈は実は結構チャレンジングで、もし全世界グループを合算するだけでなく、グループを一人の納税者と取り扱うとすると、全世界のグループ内法人間売上は消去することになり、計算に加味しなくていいように取れる。そもそもBase Erosion Paymentsは多くのケースで全世界グループの法人間の取引なだけに、Base Erosion%基準の算定時にまさかそれらを消去してしまうのはあり得ない。そこで、大方の解釈、というか個人的な解釈として合理的だと考えていたのは、売上基準目的では、外国法人のECI部分の売上と米国法人の売上に関して、その範囲のみで考えて内部取引がある場合には、消去するのではないか、というものだった。またBase Erosion%基準に関しては、Base Erosion Paymentsの定義がAggregationルールに基づくグループ規定とは異なるので、単純合算ではないかと考えていた。

この点に関して規則案では上の考え方に準じる規定となっている。すなわち、Aggregationルールで一人の納税者と取り扱われるグループは、50%超の資本関係にある米国法人とECI部分(語弊はあるけど分かり易く言うと米国支店部分)のみで構成されるとしている。また、米国と租税条約を持つ国の外国法人が内国法の米国事業活動とかECIではなく、PEプロテクションを適用して、PE帰属所得のみ米国で申告課税の対象とするケースでは、ECIに代わりPE帰属部分のみがAggregationルールでのグループに入ると規定されている。

この規定を基にAggregationルールを整理すると、売上基準に関しては、50%超資本関係にある全世界グループ内の「米国法人」の売上のみを合算する。唯一の例外は、外国法人でECIまたはPE帰属所得があるとして支店として納税申告をしているようなところがあれば、そこに反映されている売上は合算する。グループに含まれる米国法人間の内部取引に基づく売上は消去する一方、全世界グループの他の外国法人はAggregationルールのグループに含まれないことから、米国法人とグループ外国法人の売上は消去されない。例外は米国法人と米国支店間の内部取引でこれは消去される。また、これらの消去だのなんだのと言うルールはあくまで、売上基準の適用時にかかわるもので、Base Erosion Paymentsが何かという判断とは一切関係ない。

次のBase Erosion%基準だけど、こちらは基本的に消去するものはなく、米国法人および支店申告をしている外国法人がECIまたはPE帰属所得のネット課税所得算定時に取り込む、控除額全額合算が分母となり、各社のBase Erosion Benefitsの合計が分子となる。

また、グループメンバーの構成はBEAT適用課税年度末時点で毎期確定する必要があり、一旦確定したら、そのメンバーが過去3年を通じてメンバーだったかどうかにかかわらず、該当メンバーの過去3年の売上を参照することとなる。グループメンバーは固定ではなく、当然流動的なので、このようなルールが必要となる。

グループメンバーの中に異なる課税年度を持つ米国法人が存在することもあるけど、売上基準およびBase Erosion%基準は、算定を行おうとしている納税者本人の課税年度を基に合算する必要がある。例えば、3月課税年度の米国法人が12月課税年度の米国法人をグループメンバーに持つ場合、3月課税年度の米国法人がBEAT適用対象となるかの判断をする際には、12月課税年度のメンバー法人の4月から3月までの売上、費用、またBase Erosion Benefitsを切り出して合算し、基準額を算定することとなる。逆に、その12月課税年度の米国法人は、自分がBEAT適用対象となるかどうかの判断時に、3月課税年度のメンバー法人の1月~12月の数字を合算する。結果として同じグループ内で、一方はBEAT適用対象で、他方はそうでない、というようなケースも理論的には想定可能となる。グループメンバーに自分と異なる課税年度を採択している際、他のグループメンバー法人のために、自分の決算期以外の期間にかかわる金額を確定してあげないといけないという手間が増える。この算定は、何らかの合理的な方法を使用のこと、と規定されているので、必ずしも仮決算をする必要ななさそう。異常項目がなければ単純な按分計算でもいいように読める。

また細かい話しだけど、合算対象期間がBEAT適用課税年度外となる場合も構わず合算は必要と念押しされている。それはそうだろう。これは、例えば、12月決算の米国法人は2018年1月からBEAT対象となっているんで、2018年12月課税年度に自分がBEAT適用対象かどうかの判断をAggregationルールに基づいて行う必要があるけど、3月課税年度の米国法人がグループメンバーに存在する場合、3月課税年度の法人は2019年3月31日の課税年度に初めてBEAT対象となる。12月課税年度の法人がグループ合算計算を行う際に、3月決算の法人のBEAT対象期間外となる2018年1月~3月の金額もきちんと加味しなさい、という規則。

また、グループ内に銀行、証券会社がメンバーとして存在する場合はグループ全体に2%基準が適用 されるっていうのが原則だけど、銀行および証券業のグループに占める売上比率が2%未満の場合には、通常のルールに基づいてBase Erosion%基準は3%となる。

これで皆さん、誰がBEAT適用対象納税者となるか理解できたと思うので、次はBase Erosion Payments等に関して。