Saturday, July 15, 2017

外国法人による米国パートナシップ持分譲渡

最近、米国税法改正の動向というか停滞にかかわる話しが多く、税法そのものの実質的な話題に乏しい。ひとつには新政権の規制緩和努力に伴い、財務省等の行政府が以前のようにむやみやたらと規則を発行し辛くなっているという背景もあるだろう。ここ数カ月で考えると、5月に公表されたスピンオフの「North South取引」に対するRevenue Ruling 2017-09がSub C的にまあ興味深かった位。

そんな中久しぶりに日本企業に影響大のTax Courtケースが出た。「GRECIAN MAGNESITE MINING, INDUSTRIAL & SHIPPING CO., SA,」(略して「GMM」)だ。SAというから南米の法人のケースからと思ったら実はギリシャ法人の米国における課税のケースだった。社名が「Grecian」だからそれはそうだよね。

で、このケース、外国法人が米国パートナーシップ(LLCとか米国税務上パートナーシップ扱いの主体を含む)持分譲渡から得る譲渡益が米国で課税対象となるかどうかという比較的どこにでもある事実関係にかかわるものだ。日本企業でも直面することが多い問題だ。「えっ~そんな単純な取引の扱いが法廷で争われるってどういうこと?」って皆ビックリかもしれないけど。

この点に対する米国税法上の扱いは比較的明確だったはずだ。譲渡益はSub Kの世界ではパートナーシップ持分と言うパートナシップ内部資産とは別の個別資産を譲渡して得られるキャピタルゲインとなる。すなわち譲渡益の扱いを考える上ではパートナシップをAggregate論ではなくEntity論で扱う。例外はホットアセットと言って含み益を持つ棚卸資産とかの特定の通常所得となるべきパートナシップ資産に帰属すると考えられる部分の譲渡益で、この部分はあたかもパートナシップ内部の資産を個別に譲渡したかのように扱われ、結果としキャピタルゲインではなく、通常所得となる。ただ、原則はパートナシップ持分という個別のひとつのキャピタル資産を譲渡したという扱いとなる。

このことから外国法人が米国パートナシップ持分を譲渡する場合、ホットアセットにかかわる部分以外に関しては、キャピタルゲインを認識したことになるけど、キャピタルゲインは米国源泉だと、Asset Test、Activity Test等に基づきECIかどうかの判断をしないといけなくなり、外国源泉だと米国にある事務所に帰属する場合のみECIとなり得る(これはかなり例外的)。またパートナシップ持分譲渡益がパートナーシップが持つ米国不動産持分に帰属すると扱われる場合には、FIRPTA規定に基づき強制的にECI扱いとなり結果として申告課税となる。

となるとパートナシップ持分を譲渡した際には譲渡益の「源泉地」が重要な検討事項となるけど、パートナシップ持分を含む「動産(Personal Property)」から認識される譲渡益の源泉場所は通常売り手の居住地を基に決定される。米国上場企業の株式を日本の投資家が譲渡してキャピタルゲインを認識しても通常米国で課税対象とならないのと同じ理由だ。売り手の居住地を基に所得源泉地を決定する一般規定の例外は、外国法人が米国に事務所を有しており、かつ譲渡益がその事務所に帰属すると扱われるケースだ。その場合、仮に納税者が米国非居住者でも譲渡益は米国源泉となる。

この米国に事務所があって云々という部分は結構分析が複雑なんだけど、GMMのようなケースでは仮にパートナーシップそのものが米国に事務所を持っていることをもってパートナーである外国法人も間接的に米国事務所を持っていると扱われたとしても、パートナーシップ持分譲渡という行為はパートナーシップ側の米国事務所がMaterialに関与したり、通常の事業活動の一環で行っているものではないので、例外規定は適用がないと考えるべきだろう。

今回のGMMケースでは、一部FIRPTA規定に抵触するものがあり、その部分は課税対象ということで納税者およびIRSで意見の一致をみていたが、それ以外の部分のパートナシップ持分譲渡益が米国で課税対象かどうかが争われていた。

上述の通り、税法の考え方は比較的明確で、パートナシップ持分譲渡益はキャピタルゲインであり、外国法人が認識するキャピタルゲインは米国にある事務所に帰属しない限り、外国源泉となる。となると通常はECIとはなり得ず、米国では非課税となるというものだ。今回のGMMもそのような扱いに基づく申告ポジションを取っていた。

IRSはこのような事実関係に対して税法では説明し切れない理論で、パートナーシップが各資産を個別に譲渡したらECIになる場合には、仮にパートナーがパートナシップ持分を売却したとしてもLook-throughするような形で、ECIになると主張している。この手の主張は従来から展開されていて、古くはRevenue Ruling 91-32が有名だ。この法的に若干訳が分かり難いRulingがあるせいで、税法上は明らかに米国では非課税となるべき日本企業による米国パートナシップ持分譲渡取引に関していつも課税かどうかあれこれ議論しないといけない状況に陥っていた。このRulingは日本企業に米国税務サービスを提供している者なら必ず知っている(べき)有名かつとても迷惑なRulingだった。

今回のTax Courtの判決ではIRSの「結果有き」の主張はバッサリと否定され、長年のもやもやがスッキリした。判決文に記載されているIRSの主張はどれも結果優先で詭弁に過ぎず、時として無理があり過ぎる感じ。パートナシップ持分をひとつの資産と扱ってしまってはFIRPTA規定が適用できないとか、かなり場当たり的な観がある。

Tax Courtの議論で一点不思議だったのは譲渡益はFDAPではないと断った上で、米国源泉であればForce of Attractionに基づき課税となるというような部分。もし米国源泉だったらFDAPでなくれもCapital Gainはsection 864(c)(3)を論じる前にSection 864(c)(2)のAsset TestやActivity TestでECIかどうかを決定するんじゃないかと思ったけど。ここは僕の誤解の可能性もあるのでもう少し後で考えてみたい。でもどっちにしても米国源泉ではないので関係ないけどね。

今回の判決ではRevenue Ruling 91-32に対して「税法を合理的な理由もなく不適切に解釈」している通達として何の法的価値も認めないとまで言っている。IRSによる法的根拠のない暴走型のRevenue Ruling 91-32をバッサリと切ってくれた形だ。これで今後、同様のケースでは米国非課税という法的主張が通り易くなるけど、税務調査の局面でIRSが引き続きどう出てくるかは、Tax Courtの判決にIRSが不本意ながらも従う(Acquiesce)と発表するかどうかで大きく変わる。

そもそもこの問題、議会がSection 741とかチョッと変更すればIRSの主張するような扱いになる訳で、実際Revenue Ruling 91-32を条文化するに近い法案は過去に提出されている。ただ、未だに法制化はされていない。法制化されていないものをポリシー的に行政府がRulingとかの形で自らの手で実質法制化してしまうのは三権分立の観点から大きな問題だ。GMMケースは行政府の暴走を止めるために司法府が立法府の意志を尊重したという形で解決したので、三権分立がうまく機能していて喜ばしい。最近は大統領令の解釈を巡り、Standingがあるかどうかも分からない州とかの訴えに地方裁判所が厳密な憲法解釈ではなくポリシー優先的な判決を出すことも散見され、きちんの憲法の趣旨に立ち返った判断をして欲しいと米国の法の支配の行方を憂えていたが、GMMの判決は明るいニュースだった。

Friday, June 30, 2017

米国税法改正は七面鳥かチョコレートか

最近、何回か続けて「何周年記念」みたいな話しを聞く機会があった。まずは何といってもiPhone発売10周年。発売の日に店前に並んだけどそこでは買えなくて結局別の店でようやく元祖iPhoneを手にしたあの日の感動から10年とは時が経つのは早い。その後買ったiPhoneは次々と空港でなくしたり、タクシーに忘れたり、飛行機のシートに挟まれて割れたり、ポケットに入れたままプールに入ったり、修復不可能な位スクリーンが割れてしまったりといろいろあったけど、初期型は今でも何とか持っている。当時は何て格好いいDeviceと感動したけど、今見ると分厚いし、小さいし、App Storeがなかったりと年月を感じさせる。それにしても10年で世の中を変えてしまったといってもいいiPhoneを世に送り出したAppleは凄い。他のメーカーが後から同じようなものを真似して作るのは容易だけど、あのようなコンセプト自体を創造し現実のものとしたSteve Jobsは偉大だ。

次はBrexit一周年記念。こちらも「え~もう一年?」という感じ。つい最近のことだったかのように感じる。で、次が肝心なAnniversaryなんだけど、下院歳入委員が「The Blueprint」を発表してからも一年が経った。このThe Blueprint、発表当時は共和党の大統領が誕生するかどうか分からなかっただけにそんなに注目されてた記憶はないけど、トランプ大統領が当選を果たした2016年11月に実現可能性が俄然高まり、同時に注目度合が高まった。その後の国境調整狂想曲は皆様もご存知の通り。

で、このThe Blueprintにとって記念すべき日となった2017年6月20日、The Blueprintの生みの親と言っても過言ではない、現下院議長のPaul Ryanは今後の税法改正にかかわる「Major」なスピーチを披露してお祝いした。DCで開催された全米製造業協会、National Association of Manufacturers、略してNAMのサミットでペンス副大統領に続いて登場したRyanはまず「規制緩和、オバマケアの見直し、税法改正、軍の再構築」の4つに注力しているとスピーチを始め、中でもオバマ時代の行き過ぎた規制を次々撤廃しているという功績をその日の聴衆である製造業に対する恩典と結び付け、一周年祝賀スピーチはスムースな滑り出しとなった。

そして満を持して「Ladies and Gentlemen・・・」と改めて切り出し、皆が待ち望んでいた米国税法の話しに移った。「米国税法改正の話しは金輪際二度としないでもいいよう今回こそ大胆な改正を実現する」と力強く宣言。レーガン政権により行われた最後の抜本的税法改正から30年経っている点を「これはその昔、僕が運転免許を取った年です」と新たな税法改正の機が熟している点をおかしく強調した。

でもその後のスピーチの内容には特に目を見張るような新しいポイントは見られなかったと言っていい。税法が複雑過ぎるとか、遺産税やAMTは撤廃するとか、抜け道はふさいで減税するとか、全世界課税なので米国に資金が還元されない等のいつもの話しだ。

今回のスピーチに関して、皆が最も関心を持っていたのは、風前の灯的になってもPaul RyanやKevin Bradyが未だ諦めずに提唱しているDBCFTの特にDBの部分、すなわち国境調整に関してRyanがどのようにコメントをするかという点に他ならない。でも、余りにセンシティブで、触れることすら憚らるという判断に至ったのかどうかは定かじゃないけど、結局この点にかかわる直接的な言及はなかった。一部、DBCFTに暗に触れているかのような部分はあるにはあった。それは、米国企業が外国に行ってしまうような出来の悪い税法は変えないといけないと断じた際に「違う発想で税法を考えないといけない。アプローチはひとつではないが、下院はひとつのアプローチを提唱していて、この点は大統領府と調整している項目のひとつだ」とした部分だ。DBCFTは確かに違う発想。違い過ぎて普通の人にはなかなか受け入れられないんだけどね。「他の国を真似していてはスーパーになれない」みたいな趣旨のスピーチがその後も続くけど、この部分も従来の法人税の枠から脱することを示唆しているように聞こえた。

スピーチ後のインタビューでRyanは税法改正をThanksgiving(11月後半)までに実現したいと語っていた。「それはいくら何でも無理では・・・」という反応がほとんどだったけど、もしそうなったら凄い。七面鳥スタッフィングしてオーブンに入れて料理してる間に新税法を読むことができるかも。でも既に7月間近で未だに上院ではオバマケア廃案に手間取っているくらいだから、Thanksgivingはチョッと非現実的。サンタさんのプレゼントも危なく、早くてもバレンタインデーのチョコレート食べながらくらいのタイミングじゃないだろうか。それとも一部でささやかれているように議会の先生たちが8月の5週間の休暇返上で、税法改正等の最重要法案の制定に精を出してThanksgivingを目指すのでだろうか。このアイディア聞こえはいいけど、実は議員たちは手ぶらで地元に帰って選挙区民たちに怒られるのが怖くてDCに残る口実を探しているのかもね。

Thursday, June 15, 2017

トランププランと今後の税法改正動向 (5)「パススルー」

前回のポスティングでは、税法改正と言うのはテクニカルな話しではなく、むしろポリティカルな話しであること、また税法改正の行方が白紙に近い状態にあることから自分に都合の悪い規定は阻止しようとDCにて強力なロビー活動が展開されている点に触れた。最終化されるかどうか分からない、またされるにしても改正内容が不明な税法改正の話しに、現時点でどれだけ時間を割いて触れていくのかは微妙な問題だけど、パススルーに関しては一回書いておきたい。

現状の税法ではパススルーはその名の通り、所得、費用、税額控除等を事業主体ではなくそのオーナーにパススルーして、各オーナーがパススルー主体からの所得、費用等とオーナー側の他の税務ポジションと合算して申告を行う。したがって、同じ100の所得でも、39.6%の税率に属する個人オーナーにパススルーされるとオーナーは39.6の税金を支払うことになるし、15%の税率に属するオーナーの場合には15の税金となる。法人がオーナーの場合も同様でその場合は大概において34%か35%の法人税率に基づいて税金を支払うことになる。また、もしオーナーレベルで損失が出ていれば、100のパススルーと合算できるのでその年の税金はなくなることもある。逆に損失がパススルーされてくる際もPAL規定とかAt Riskとかに抵触しなければ基本通算が認められる。更にオーナーに配賦されてくる金額は必ずしもネット課税所得に持分を掛けた金額、すなわちBottom Line Allocationである必要はなく、グロス売上、減価償却、キャピタルゲインとか特定の項目がそれぞれ個別%で配賦されてもいい。

株式会社の株主が同じクラスの株式を持っている限り、全員同じ配当を持分に準じて均等に受け取るのと異なり、パススルーはオーナー間で自由にどのような項目をどのように分けるか合意することができる。ただし、オーナー間で合意された配賦が税務上も認められるためには、配賦が「実質的な経済効果」を持つとみなされる安全ガイドライン(Section 1.704(b)のSafe Harbor)の要件を充たすか、またはPIPに準じているか、のいずれかの必要がある。以前は安全ガイドラインが手堅いと言うことで好まれたが、ここ何年もトレンドは逆になり安全ガイドラインはディールのエコノミクスが反映されているのかどうか分かり難いため嫌われる傾向にあり、ターゲット配賦とかのPIP方式がすっかり定着している観がある。この辺の話しはパートナーシップ税法の醍醐味だけど、それだけで10回くらいのシリーズになるのでそのうち。

総じて言えば、上述の点、すなわち事業主体とオーナーで二重課税がない点、損益通算が認められる点、弾力的な配賦が可能な点がパススルー主体の税務上の魅力と言えるだろう。

で、今回の税法改正だけど、パススルーの所得に関してオーナー側で課税するという形は温存するものの、税率はオーナーの税務ポジションにかかわらず一定にしようという動きある。もともと下院歳入委員会のThe Blueprintもパススルーに対する特別課税に言及していてパススルー所得は25%で課税するとしている。

この25%という税率設定は法人税率20%との比較において少し不思議。FICAとSEタックスを無視して所得税の世界で考えてみる。例えば同じビジネスを法人形態で営んでいるとして、そこで100のネット課税所得があるとする。The Blueprintでは法人税20%だから、税引後の分配可能利益は80。個人株主側の税率はThe Blueprintによると所得水準に基づいて12%、25%、35%の3段階。だけど配当、キャピタルゲインは税率は半分と提唱されているので配当課税は6%、12.5%、17.5%だ。となると、100の利益に対するトータル税負担は、各々24.8%、30%、34%となる(法人税20+(80 x 配当税率)。12%区分に属する納税者だとパススルー主体でも法人でも同じような結果となる一方、他の納税者はパススルー主体の方が有利となる。

The Blueprintをそのまま鵜呑みにすると全てのパススルー主体に25%が適用されるようにも見えるが、その後の発言等を加味すると中小規模のパススルーのみを対象にしているようにも聞こえる。パススルーが中小でもオーナーの税率区分は35%のケースは多いだろうから何か変な感じ。その辺を意識して本来給与としてオーナーに支払わらるべき金額に関しては通常の税率、すなわち、12%、25%、35%で課税するとしている。以前のポスティングにも書いたけど、何が適正水準な給与かというValuationの問題は主観的な判断の余地が大きくかなり争点となるだろう。パンドラの箱を開けるようなものだ。それともCamp案で言及されていたように、パススルー所得の70%は自動的に給与所得同様とみなす、というような機械的な判断法を設けるのだろうか?

一方、4月26日発表のトランプ税法改正プランでは法人税の15%同様にパススルーも15%にするということのようだった。トランプ案ではパススルーときちんと言わずに中小事業にという表現をしているので分かり難かったがQ&Aとか聞く限り、S法人を含むパススルー、個人事業主を対象としているようだ。The Blueprintのパススルー規定も文字通り解釈すると個人事業主(Sch. Cの方)には適用がないようにも読めるが、おそらくこちらも個人事業主も含むことを前提としているんだろう。トランプ案は法人もパススルーも一律15%ということみたいだけど、上と同様の税率比較をするとこちらも不思議な結果となる。大手事業主がパススルー税率の適用を乱用しないよう対策を講じると財務長官のMnuchinは言うが、その対策だけでも税法がますます複雑化するのは必至。

トランプ案もThe Blueprint同様に給与として支給されるべき金額は通常の課税にするとしている。何が給与相当なのかというValuationをルール化するのが至難の業と思われる点は上述の通りだが、商務省長官のWilbur Rossは、そんなルール策定はDCの弁護士、税務専門家のブレーンパワーを考えれば朝飯前で、そんなルールも作れないのであれば職を変えた方がいいと言い切る。当人のDCの弁護士や税務専門家たちはそんなルールをどうやって策定したらいいのか途方に暮れているのに。このようなルールは議会がドラフトする税法そのものには入り難いので、財務省規則にて規定される可能性が高い。財務省も頭が痛いだろう。既存の法律下でも、S法人のオーナーがSEタックスに抵触しないよういろいろと試みるのを見ても、一旦パススルーに特別な税率を規定してしまうと多くの争点が生じるだろう。

また、大昔に何回か触れたCarried Interestに関しても網を掛ける、すなわちキャピタルゲイン税率ではなく通常税率で課税するかのような話しが税法改正の一環で相変わらず出ている。でもパススルーに特別税率が認められるんだと今までの単純なキャピタルゲイン税率と通常税率の差異だけの話しではなくなってしまうのでCarried Interestの課税強化を仮に実行するとしても前提がそもそも変わってしまうけどね。ここに来てCarried Interestの扱い変更は、資源、不動産、PEファンドとか特定の業種を狙い撃ちすることになるので現状通りにしてあげればどうかという話しも出ている。でも元々他の業界では適用する機会がないプラニングなんだから、そこを狙い撃ちしているという理由で強化をあきらめるのは何か変。国境調整と輸入業者の関係みたいだ。

実はパススルーの特別扱いに関してはカンザス州が似たようなことをしているので次回は簡単にカンザス州の実体験に関して。

Saturday, June 10, 2017

トランププランと今後の税法改正動向 (4) 税法改正とKaty Perry#2 「ロビー活動」

前回まで3回「国境調整」というかDBCFTが目指す真の姿とそのポリティカルな運命に関して触れた。DBCFTにかかわる議論を見ていると税法改正と言うのはテクニカルな話しでは全くなく、ポリティカルな話しであることが良く分かる。ポリティクスというのは時には事実関係とか法の支配とは関係ないところで事を進めていく傾向があり予見可能性が低く太刀が悪い。

余りにポリティクスの影響が強力で、過去数カ月の議論を見ているとかなり空中分解気味。となると最も現実的な落としどころは何も起こらない現状維持と見る向きもある。ただ、共和党政権の実質的な信任投票と言える2018年の中間選挙が迫っていることを考えると、共和党としては何としても2017年内または2018年前半にはオバマケア廃案と何らかの税法改正を終えてしまう必要があるだろう。ただ、税法改正を2017年末には達成したいという党の総意には誰も異論はないだろうけど、現実には改正案の個々の条件を巡って党内の意見調整が難しく、また大統領府の強力なリーダーシップも不在で、バタバタと慌てて何か法制化したとしてもThe Blueprintが目指していたような抜本的な税法改正と言えるような立派なものに至るのか、それとも単に付け焼刃的な減税で終わってしまうのか、現時点では誰にも分らない。まあ、税法改正と単なる減税は聞こえは違うけどその境界線は必ずしも明確ではない。どこまでやれば税法改正でどこまでは単なる減税なのか、という境目はボヤけてるので余りこの用語の差異に拘っても仕方がないかも。

素早く抜本的な税法改正を法制化しようとする際の障害のうち、議会共和党が一枚岩でない点はイデオロギーの話しなので仕方がないが、本来そんな時こそ大統領がリーダーシップを発揮して全体を取りまとめたり導いたりする必要がある。ところが、トランプ大統領は次々と不必要なTweetとか規律に欠ける行動で自ら墓穴を掘りまくりPolitical Capitalの多くを浪費してしまっている。以前のポスティングで税法改正の議論をKaty Perryの「Hot n Cold」に例えたけど、トランプ大統領の現状は同じくKaty Perryの「Self-Inflicted」の状態と言える。

トランプ大統領府による税法改正プランがほぼ白紙に近い点は前回までのポスティングで再三触れているけど、その点が誘発する悪影響のひとつとして激しいロビー活動が挙げられる。すなわち、税法改正のキャンバスが真っ白な状態で提示されている訳だから、「自分に都合のいい絵を描いてしまおう」という輩がDCに押しかけている。小売業関連の団体はThe BlueprintのDBCFTの更にその一部のDB部分に対する不信感を全力で煽っているし、全米不動産業界は8,000人単位のメンバーをDCに送り込んで、標準控除の拡充や州税控除撤廃反対を展開している。不動産業界がなんでそんなものに反対しているのかチョッと分かり難いかもしれないけど、州税控除がなくなり標準控除が拡充されるとSch. Aで個別控除を取る納税者の数は激減する可能性がある。となるとせっかく住宅ローン金利を支払っても税メリットがなくなってしまい、不動産市場に悪影響?ということなんだろう。風が吹いて桶屋が儲かるような話しにも聞こえるがロビー活動に油断は大敵。不動産業界は更に農場主やPEファンド達と一緒に金利の損金算入温存に注力しているし、多国籍企業のロビー活動の矛先はテリトリアル課税移行時の一時課税を何とかトランプが以前に言及していた10%ではなくThe Blueprintの3.5%または8.75%にするという点に向いている。結局、皆、白いキャンバスに自分たちに都合のいい色を塗ろうとDCに集結している。余りに皆が「これは嫌です、あれも嫌です」と不整合な色を付けすぎると何の色もないブラックになってしまい、歳入を確保した形のきちんとした税法改正にはなりようがない。

個人が支払う州税・地方税の個別控除撤廃は不動産業界に限らず全体にかなり不評。特に州税の高いNY州、CA州居住者への影響が大きい。トランプ政権の全てに大反対を表明するNY民主党上院議員で上院少数党院内総務も務めるChuck Schumerもいち早く反対を表明し、不動産業界と同じく、そんなことをしたら住宅ローン金利が控除できなくなり大問題だとしている。

それはそうなんだろうけど、何か大きな改革を起こしましょうという時に、個人所得税の州税の個別控除すら撤廃できないようでは他は押して知るべし。支払利息の損金不算入にしても、州税控除の撤廃にしても、これらから見込まれる歳入は大きく、それらがあるからこそ15%だの20%だのという低税率の実現が可能になる訳で、損する改正は嫌だけど税率は低くというのは算数的に無理がある。このことから財政均衡は無視してでも減税するという話しがちらほら出てきている。

上院で60議席を持っていれば共和党としては好きな法律を通すことができるが、現実には51議席。その場合には税法改正は上院でも例外的に過半数で通すことができる予算調整法内で立法するオプションしかない。その場合には財政均衡を保つという追加の要件が付いて回る。にもかかわらず赤字になっても減税するというような話しが出てくるのは不思議に思えるけど、実は予算調整法を使っても10年を超えてのマイナス財政は許されないというのが一般的なルールだそうで、だったら10年期限で思い切った減税をするかという話しもある。以前にもブッシュ(息子)が2001年に行った大型減税はこの理由で「なお、この税法は5秒、じゃなく10年で自動的に消滅する」となっていた。

う~ん。このセリフは今聞いても格好いい。これ知ってるよね?「Mission Impossible」で作戦内容を伝えるテープの最終部分だ。メッセージの最後にテープレコーダーが燃えちゃうやつ。ちなみに英語では「This message will self-destruct in five seconds」だけど、日本語だと「なお・・」ってつけてるのがイカしてる。トムクルーズが演じる現代のMission Impossibleはどちらかというとド派手なアクションムービーでこれはこれでもちろん楽しめるけど、昔のもう少しダークな感じの「スパイ大作戦」もよかった。「大作戦」っていう実にレトロっぽい題名が最高。ウルトラマンの「MAT、Monster Attack Teamの略である」の「MAT」も中々笑える格好いい名前だ。「マット隊員」とか呼ばれたりして昔の名前はGuysなんかより凄い。ちなみにメビウスのGIGっていうのはキャプテンスカーレットのSIGから来てるそうだ。で、スパイ大作戦のテープのメッセージには、真ん中辺に「例によって、君あるいは君のメンバーがとらえられたり殺されても、当局は一切関知しない」の部分もあるが、あの言い回しも最高。ちなみにこの部分の「当局」は英語では「Secretary」だ。各省の長官をSecretaryということを知っていれば違和感はないけど、直訳で秘書とならないようにね。税法でも財務省規則策定の権限は「Secretary」、すなわち財務長官に与えられている。ドラマの和訳と言えば、「謎の円盤UFO」の英国オリジナルバージョンだとタイプライターが打ち続けるOPメッセージを「1980年既に人類は・・・」って格好良く訳してたけど、あれも名訳だ。今は2017年だけど、地球防衛組織シャドーは37年前に既に「沈着冷静なストレーカー最高司令官の元に」結成されていたことになる。あのOPは今見ても格好良すぎ。

で、何の話しだったかって言うと、歳入を伴わない減税を実行するには予算調整法等の仕組みから10年の時限立法とするしかないと一般に言われている点でした。ただ、正確なルールは必ずしも10年ではなく「Budget Window」を超えて赤字になってはいけないということのようで、従来Budget Windowは10年と考えられていた。で、この10年と言う数字には少なくとも1974年Budget Actに基づく法的な拘束力はないようで、最近ではBudget Windowは20年、さらには30年と考えてもいいんだ、というような過激な主張も出てきている。30年を超えて赤字にならなければ予算調整法の枠で法制化が可能という主張だ。30年だったら時限立法とは言っても限りなく恒久措置に近い。

ビジネスプラニング面、また立法プロセスの規律面からも税法改正は期間限定ではなく恒久的な法律で実行されるのが本筋だろう。R&Dクレジットが時限立法だったころは毎年ハラハラしたし、ブッシュ減税失効時の2011年、そして2年延命後の2013年もバタバタだった。ただ、今回の税法改正を実行するに当り、ロビー活動が激しくにっちもさっちも行かなくなるようだと、Mnuchin財務長官が しばしば言うように「恒久的な改正は時限立法よりベター、でも時限立法は何もしないよりはベター」ということで結局は時限立法に落ち着くのだろうか?

Tuesday, May 30, 2017

トランププランと今後の税法改正動向(3)「国境調整」(3)

前回、前々回と下院歳入委員会が提唱するThe Blueprintの中のDBCFTのうち消費地課税を実現するためのメカニズムとなる国境調整、そしてキャッシュフロー課税について触れた。また、国境調整に関しては一般メディア等には正しく理解されていないように見受けられる点にも触れた。

5月23日には下院歳入委員会による国境調整に特化したヒアリングが開催されたり、Kevin Brady等による必死の延命措置が展開されているけど、そもそもよく理解されていない税法であること、仕入れを輸入に頼る小売業等による反対ロビー活動が強力なこと、ドル高懸念、等が相まってどんなに導入時のインパクトを軽減すると言っても消費地課税の導入は風前の灯火状態と言える。

そんな状況なので、今となっては学術的な背景となってしまうかもしれないが、経済のグローバル化が更に進み、現状の所得ベースの法人税が機能不全となった暁には又DBCFTが各国で真剣に議論される日が来るかも。ここはそんな日のため備忘記録的に読んでみて欲しい。到着が早すぎたということなんだろうか。Back to the Futureの最初のストーリーで主人公Marty McFlyが何十年も前のダンスパーティー(まだChuck Berryがデビューする前の時代という設定)でEdward Van Halen風のギターソロを弾いて誰も理解できなくて、仕方なくMartyが観客に向かって「皆さんの子供たちの時代になればきっと分かると思うよ」みたいなシーンがあって笑えたけど、DBCFTも実はCheck Berryデビュー前のVan Halenのソロみたいな感じ?全然違うかもね。

DBCFTはVATに類似すると言われるけど、その中でもSubtraction方式のVATに最も類似しているらしい。で、VAT採択済みの150か国の中で一か国だけこのSubtraction方式を採択している国があるということ。どこでしょうか?そう、日本なんです、これが。ということでDBCFTに一番似た仕組みを既に実行しているのはナンと他でもない日本という面白い事実がある。でも日本もSubtraction方式は行く行く改めると聞いたことがある。

で、DBCFTとVATを比較すると決定的に異なる点が2つある。まず1つは米国内の人件費が20%の課税計算上、控除できることだ。米国外のサプライチェーンを経由していくる場合には、輸入時の国境調整メカニズムを通じて、米国外の労力に基づく付加価値も含めて全ての価値に20%課税されるので、この点は国内と輸入を「Level Playing Field」にしている以上の効果、すなわち米国を有利にしていると言える。経済学者に言わせると、この点に関しては国内の給与税を減税しているのと同じ効果、すなわち普通のVAT(人件費控除ナシ)と従来から国内に存在した給与税(米国のFICA)の減額の2つを組み合わせた状況と同じなので、VATが国境調整を原則として国際的に認められていて、かつ国内でFICAを減税しても他国には関係のなく、各々問題ないことを組み合わせて実行しても問題はないであろうというちょっと詭弁(?)のようにも聞こえるが、理論的には間違っていない主張となる。WTOがこれを飲むだろうか?欧州の法体系の影響が強いWTOではそんな実態よりも形式重視となる可能性が高く、WTOで揉めるのは間違いないように思う。ただ、以前にも書いたかもしれないけど、WTOで争っているうちに10年位直ぐに経ってしまうので、その間に$1 Trillionの歳入があるんだったらダメ元でやってしまう、とチャッカリ考えていた節がなくもない。

DBCFTとVATのもう一つの差異は、VATだの消費税だのは、目に見えてそれがサプライチェーンを経由して価格に上乗せされていき、最終的に消費者が消費地で全額負担することとなる。一方DBCFTは法人税として事業主体に課せられるので、価格に転嫁できるかどうかは明確ではなく、小売業が大騒ぎしてロビー活動しているように、最終価格に上乗せし切れない状況も十分に想定され、そうなると輸入に頼っている企業の収益、キャッシュフローを大きく圧迫することがあり得るということだ。

DBCFTが輸入を罰するというよりは輸入と米国製造を同じ土俵に立たせるという目的を持っている点は以前にも触れた。現状は米国から見た輸入は出荷地では国境調整のおかげでVAT免税、かつ米国側でも仕入コストとして35%の節税効果を持っているので、かなり競争力が高い。他方、米国からの輸出は米国で35%課税され、さらに輸入側で国境調整されるのでVAT課税、とダブルタックスとなり競争力なし、となる。これらの現象を「Made in America」課税と呼ぶこともある。で、輸入はとても有利なので、当然、小売業等はその恩典を享受している。輸入有利の現状を是正し、少なくとも税制面では輸入と国内仕入れを同等にしようと言うのが消費地課税だったんだけど、現状恩典を受けている納税者は、例えそのような恩典自体を是正するのが目的だとしても、当然それに反対し、政治家もそれを無視できない。結局、DBCFTのような大きな改正はできず、輸入が競争力をもったまま今後も時が流れていく可能性が大となる。オバマケアじゃないけど、一旦与えられた既得権を取り上げるのは政治的にほぼ不可能。

次にDBCFTの為替への影響だけど、これは経済学者が口を揃えて力説するポイントだ。すなわち、20%の国境調整で輸入に実質20%課税され、輸出は20%免税となると、ドルは25%高となり、その結果、国内終焉型企業も、輸入業者も、輸出業者も、税引後のキャッシュフローは全員きれいに一致するという説だ。DBCFTの税額そのものは為替がどうなろうとも変わらない。これは輸入や輸出が課税所得の計算に入ってこないから当然だ。では為替によって何が調整されるかというと、ドルベースでの仕入価格そのものが25%ドル高になると従来の80%で済み、税負担を相殺してしまうということだ。輸出もしかり。

25%のドル高は政権の為替政策とは真逆の方向に向かうように見える。また、ドルベースの外貨資産が大きく目減りして、大きな混乱を招く可能性が大。もちろんきれいにDBCFT導入翌日からドルが25%高になるという訳ではないだろうが、経済学的には他の変動要因を排除して理論的に考えると必ずそうなるということのようだ。これは業界の実務レベルと意見が合わない点で、小売業のCEO等に言わせれば「世の中学者が言う通りそんな教科書通りに行ってたまるか!」となるだろう。

という訳で、DBCFTはグローバル化する経済、米国が通商の観点から置かれている立場、OECDのBEPSレポートに見られるような従来からの法人税の限界、を加味して将来の税法としてベストなものは何かという点を熟考して経済学者達により策定・検討されたものだったが、実務的に受け入れるには余りに多くの課題があるということだろう。ちなみに面白いのは、経済学者の中でもUC Berkeleyの学者がDBCFTの著名なオピニオンリーダーとなっているが、UC Berkeleyと言えば、Ann Coulterが話しをしに行くと言っただけで、暴動が起きる米国でも最もリベラルな大学のひとつで(Berkeleyは本来言論の自由を標榜していたのではなかったんだっけ?)、それを共和党の下院歳入委員会が取り入れている点。

国境調整はこれ位にして、次回からは税法改正に他の切り口から触れてみたい。

Saturday, May 27, 2017

トランププランと今後の税法改正動向(2)「国境調整」(2)

前回のポスティングでは、トランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表とその後の税法改正の動きの最初のフォーカスとして国境調整に関して書き始めた。下院歳入委員会が提唱するThe Blueprintの中のDBCFTは法人税に消費地課税という概念を導入しているが、その消費地課税を実現するメカニズムが国境調整と言われるものだ。一般メディアの報道を見るとこの「国境調整」とトランプが余り深い考えなく言及しているように見える「国境税」が混同されて論じられることが多いように思う。

先日イタリアで開催されたG7会議でも、各国の財務長官等が米国が国境調整を検討している点に懸念を表明し、Mnuchin財務長官は「現時点で提唱されている形では賛成できない」といつもの回答を繰り返していた。皮肉にもG7に参加している国で「国境調整」という仕組みを導入していないのはVATを持たない米国のみだ。他の国はVAT(日本では消費税)下で堂々と国境調整を行っており、米国に対する輸出に対してはサプライチェーンを通じて自国VATを免税として競争力を高めているばかりか、逆に米国からの輸入に対しては輸入時点で課税して米国からの輸出の競争力を弱めている。しかもThe Blueprintで提案されている20%の税率と同じ税率を適用している国がほとんどで、カナダのGSTは15%程度で若干低く、日本が8%で一番低い。にもかかわらず、米国が名称は法人税とは言え、内容的には同様の方式を導入しようと検討しているだけで自分たちのことは棚に上げて若干ヒステリック気味な反応をしている。おそらくDBCFTをきちんと理解しておらず、通商政策のトランプ国境税と混同しているのではないかと推測される。前回のポスティングで触れたオクスフォード大学の教授の言う通りだ。

DBCFTの消費地課税、すなわち「DB」部分はその名の通り、米国で消費されるものは、輸入だろうが、国内生産だろうが、サプライチェーンの全過程で創出される価値に米国で20%の課税があり、逆に米国外で消費されるものは、国内生産でも、米国外でもサプライチェーンの全過程を通じて米国では課税されない、すなわち輸出時にサプライチェーン過程で米国に納付された税金があれば、それは戻ってくるというシステムとなる。このコンセプトは日本の消費税も同様だ。現実には米国外で消費される米国内生産のサプライチェーンのDBCFT税負担は即還付されると言うよりもNOLに化ける可能性が高いという問題があるが。

DBCFTのもう一つの骨子となるキャッシュフロー課税、すなわち「CF」部分も法人税としては新しい概念だ。The BlueprintのDBCFTでは、従来の法人税のように会計的な期間損益に課税するという概念から、課税年度内トータルのキャッシュインフローからアウトフローを差し引いたネットキャッシュフローに課税するという大胆な方向転換を提唱している。

キャッシュフロー課税で従来と一番異なるのは設備投資に対する減価償却の必要がなくなることだろう。不況になる度に時限的に導入されてきた100%のBonus償却を、有形・無形の全資産を対象に拡充して、更に恒久化するようなイメージ。その意味では設備投資減税の側面も大きいが、実はキャッシュフロー課税とすることで、DBCFTはDB部分と合わさって疑似VATとなる。すなわち、VATとか消費税の算定時には設備投資に対して支払ったVAT・消費税もその年に仕入控除が認められ、売上から徴収されるVAT・消費税と相殺される。換言すると、VAT・消費税の世界では例え耐用年数が10年の設備を購入しても、それに対して支払うVAT・消費税を10年掛けて仕入控除するという概念は存在しない。これは実質キャッシュフローベースで設備投資を費用化しているのと同じ効果を持つ。逆に言えば、DBCFT下でキャッシュフローベースで課税を行わないと、DBCFTは実質VATに近いと言う主張は成り立たない。したがって、設備投資減税の経済効果を達成する点に加え、キャッシュフロー課税を導入することはDBCFTが狙い通りにVAT同様に機能するための「Must」な要件となる。なので、国境調整だけの導入をキャッシュフロー課税とは別に検討したり、またその逆に国境調整は入れないけど、キャッシュフロー課税の導入は検討したりというのは、少なくとも経済学者や識者が提唱している未来型の法人税であるDBCFTとはかけ離れた姿となり、概念的には全く異なるものとなってしまうと言える。歳入委員会長のKevin Bradyとか下院議長のPaul Ryanとかはそんなことは百も承知だろうけど、政治家とかロビイストがいろんなことを言うので現状では少しでもDBCFTに盛り込まれている特色を出せれば始めの一歩としては上出来と考えているんだと思う。

5月18日に開催された歳入委員会のヒアリングでは経済界からは設備投資の一括費用化は米国での投資を活発とし、延いては雇用促進に役立つと賛成の声が多く上がった。DBCFTのDBの部分は意見が割れるところだけど、CFの部分は概して賛成ということだ。CFだけだとCFTにはなるけど、それだとDBCFTにならない。結局は各納税者、自分に有利な改正案には賛成、不利になるようだと反対、と当たり前の流れになっている。勝者と敗者が存在するのはどのような税法改正にも見られるサガ。敗者の声を聴き始めると大胆な改正は実行できない。

更に、キャッシュフロー課税と引き換え(?)にThe Blueprintにはネット支払利息の損金算入撤廃案が盛り込まれている。利息の損金算入がなくなれば、面倒な過小資本税制とか、アーニングス・ストリッピング規定とかの適用を気にしなくていいので、そもそもグループファイナンスストラクチャーを利用してシステマチックな実効税率のプラニングを多く行っている兆候のない日本企業にとってはその方が総合的に得かもしれない。米国企業、特に不動産業、また意外にも農業に従事する納税者、業界団体からは利息の損金不算入に関して強い反対が表明されている。また、他国から米国に投資しているMNCは米国のような高税率国には最大限のDebtをプッシュダウンしているケースが多いので、支払利息の今後の取り扱いは国境調整の動向と並んで気にしているポイントと言える。ただ、税率が15%だの20%になったら今迄みたいに一生懸命頑張ってアーニングス・ストリッピングする必要性も薄れてしまうけど。

キャッシュフロー課税と支払利息の損金不算入の関係だけど、キャッシュフロー課税とするから必ず支払利息の損金算入を認めることができないということもないように思う。各々独立して規定しても必ずしもおかしくないように思えるけど、一方で、設備投資等を取得時にキャッシュフローベースで費用化させるのであれば、そのファイナンスコストとなる支払利息も認めては二重取りになるとも考えられる。そのため、キャッシュフロー課税と支払利息の損金不算入はセットで考えらることが多い。Mnuchin財務長官の話しを聞く限り、トランプ政権は支払利息の損金算入は温存したいようで、その代わりにキャッシュフロー課税ではなく、従来からの減価償却を温存してもいいと考えているようだ。トランプが不動産業に従事しているからだ、と勘繰るメディアもある。仮に支払利息を損金不算入とするのであれば、AT&TのCFOが主張する通り、各企業は既存のキャピタルストラクチャーを再検討する時間が必要なので十分な経過期間を設ける必要がある。

支払利息の損金不算入は10年間で$1 Trillionの歳入増効果があると言われるだけに、消費地課税およびテリトリアル課税への制度移行時の一括課税、と並ぶ大きな歳入源だ。支払利息の損金算入を温存した形で税法改正を実行できるかどうかは、税法改正がどの程度の財政均衡をベースに策定されるかにより影響を受ける。

キャッシュフロー課税だけど、確かに聞こえはいいし、企業側としては賛成のところが多いとは思うけど、実際に税法に入れる際にはいろいろと考えないといけないことが多い。例えばM&Aで資産買収、または338(h)(10)選択して資産買収かのようにした際には、Goodwillとかも含めて全額費用化されてしまうのか、とか、パートナーシップに現物出資した際のSection 704(c)とかどのように考えるのか、とか。実際に条文にするのは結構難しそう。

という訳で、DBCFTの骨子2つ、すなわち「DB」と「CF」に関してどちらかと言うとメカニカルな観点から触れてみたけど、次回はDBCFTの直面する諸問題等に関して。

Tuesday, May 23, 2017

トランププランと今後の税法改正動向(1)「国境調整」

前回のポスティングまで7回に亘って4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表に触れてきた。考えてみれば、僅か23分の会見に7回ものポスティングを費やしたことになる。

で翌日以降のメディア等の反応は温度差はあったとは言え論調は似ていた。まず、主たる反応として「詳細なし」という点に対する失望感。これは大統領府として何をしたいかという方向性が欠如しているというよりも、議会との間で何もコンセンサスが得られていない結果と考えるべきだ。特に会見時点の4月26日では下院でオバマケア廃案に失敗したトラウマが残っていただろうから、大枠でも下院および上院がサポートできる内容となるまでは詳細は発表しない作戦だっただろう。これは下院も同じで従来は上院、大統領府が最終的に反対する部分があるとしても、まずはThe Blueprintに基づく条文案を策定して議論を進めるはずだったが、オバマケア廃案手続きのレッスンからある程度コンセンサスを得た上で条文案を公表という流れにシフトしている。その分、前段階でより多くの時間を使う結果となる。じゃあ、なぜあのタイミングで大統領府側が会見を開いたかと言うと、やはり以前から発表するすると言って延び延びになっていたので、取りあえず何かしないと形にならないというプレッシャーは大きかっただろう。以前にも触れたとおり、トランプ大統領は2月9日の時点で既に「今後2~3週間の間に「Phenomenal」な税法改正の発表をする」と言っていたし、2月末には両院を前にしたジョイントセッションで再び「近々に「Massive」な減税を伴う「Historic」な税法改正を公表する」とぶち上げていたからだ。その後、3月にも何の発表もなく、「Phenomenal」「Massive」「Historic」と言った大袈裟な形容詞だけが空しく印象に残っている日々を悶々と過ごしていた。また、詳細は合意に達していないとは言え、原理原則部分、すなわち、法人税減税、テリトリアル課税、ミドルクラス減税という誰も異論がないハイレベルな点に関してはで共和党も一枚岩になっているというプレゼンという意味もあったように思う。

会見もQ&Aがほぼ半分を占めてもトータルで20分強、サマリーも僅か1ページなので、そこに何が入っていて、何が入っていないという点を深読みしても意味がない。もしあの1ページに入っていることしか実現しないとしたら、ビジネスに関しては税率が15%になり、海外子会社からの配当が非課税になっておしまいだ。もちろん実際にはそうではなく、議会との調整が必要な核心部分、例えば、国境調整、設備投資一括償却、金利損金不算入、テリトリアル化の際の一時課税の適用税率、等は今後調整が要というのがメッセージだ。特に国境調整に関しては日本のメディアを見ると、会見で言及されていないことをもってなくなってしまったかのようなニュアンスの報道もあるがそれは間違い。現に5月23日、歳入委員会は国境調整に特化したヘアリングを開催する。これは米国時間の今日なので喧々諤々の議論となると予想されるが、様子分かり次第速報したい。

でも、だからと言って国境調整が最終法案に入るという保証もない。入るかもしれないし、入らないかもしれないし、それは歳入委員会にも誰にも現時点では不明というのが正しい現状だろう。国境調整に賛成するにしても反対するにしても、日本のメディアを見ているととても国境調整導入の意味、背景をきちんと理解した上で報道しているようには見えない。単に諸悪の根源のように扱われているが、内容も理解せずに、トランプ政権の通商ポリシーと混同して誤ってヒステリック気味に論じられているケースが大半。すなわち国境調整はトランプ政権のポリシーとはその根源が異なり、直接関係のないものという認識が欠けている。

ただ、DBCFTを理解していないのはメディアとか一般企業に限らず、例えば欧州の税務専門家でもよく分からずに早合点しているケースが多いと言う。オクスフォード大学のCentre of Business Taxationの重鎮が「欧州では、税務専門家も含めて、DBCFTはその本当の姿を理解しておらず、相変わらずBEPS的なアプローチを重要視して、DBCFTにはどのように報復するかしか念頭にないことが多く、これはDBCFTにとってとても不利な状況だ」と言っている記事があった。

最終的に反対でも、法制化されないにしても、国境調整とは何だったのか、実務的に制度化する際の難題も含めて少し深く再度ここで触れてみたい。

国境調整の正しい理解にはThe Blueprintで言及されている「DBCFT」をきちんと理解する必要がある。国境調整とかDBCFTと言うとあたかもトランプ政権の誕生と同時に生まれたり、トランプが気まぐれで思いついたり、Twitterで言及されたりしている突飛な税法、悪法というイメージがあるかもしれないが、決してそうではない。トランプが選挙運動中から度々言及している「国境税(Border Tax)」と用語がとても似ているのでそれがThe BlueprintのDBCFTの単なるメカニズムでしかない「国境調整(Border Adjustment)」とごちゃごちゃになり、国境調整=トランプの戯言的なイメージが定着している観がある。DBCFTが最終的に法制化されないとすると、それはDBCFTが無茶苦茶な提案だからということではなく、どちらかと言えば政治的に未だ受け入れられるものではないという側面が強いように思う。学者レベルではDBCFTはベストな税法、というか現状の法人税より全然ベターと考えられていることが多い。

The Blueprintのビジネス課税の部分の骨子は「DBCFT(Destination Based Cash Flow Tax)」、「法人税率低減(20%)」「テリトリアル課税」「金利の損金不算入」の4つから成る。これら4つは必ずしもセットで考えないといけないものではなく、個々の案を個別に導入しても、またどのような組み合わせで導入しても概念的には何の問題もない。The Blueprintではたまたまこの4つを一気に実行することで米国の投資先としての魅力を高め、かつ国内産業と輸入を米国において「Equal Footing」にする、すなわち同じ土俵に立たせることを目標としている。4つのうちDBCFTを除いては賛成反対は別として特に考え方そのものに余り論議を醸し出す部分はない。

DBCFTを法人税という枠で考えた国は従来存在しないので斬新だが、米国で事業を行う納税者側として頭から悪いものとして否定するようなものではない。セミナー等で折に触れて言っている点だが、DBCFTが導入されると米国では法人税は0%(実質撤廃)となり、代わりにVAT(または消費税)が20%が導入されたと考えると概念的に分かり易いし、若干語弊はあるかもしれないけど当たらずしも遠からずだろう。VAT20%は日本の消費税8%と比較すると若干高く感じられるかもしれないけど、世界でVATを導入済みの150か国の水準から言うと平均的な税率のように思う。これらの国のほとんどはVATに加えて法人税を持っているので、0%法人税の米国は究極のタックスヘイブンに化すると言える。日本におけるCFC課税とかは気を付けないといけないけど、米国的には過少資本(Section 385!)、Inversion、移転価格、BEPS等一切対応が不必要となるので納税者としてそんなに悪い話しではないと思うんだけど、メディアの影響かどうも評判が悪い。DBCFTになればもちろん僕たちの仕事は減ってしまうけどね。もちろん他国がDBCFTを導入するまでは米国でこれらの問題がなくなっても、他の国では引き続きBEPS的な対応を強いられるので、理想の姿としては多くの国がDBCFTを採択するということなんだろうけど、それは近未来には実現不可能なのは間違いない。今ではあり得難いシナリオだけど、米国がポリティクス的な障害を排除してThe BlueprintにあるようなDBCFTフルバージョンを採択できるとしたら、その後にそれに追随する国もあるかもしれないけど。貿易収支が黒字の国はしないだろうし、グローバルレベルで認知されるのは困難。

で、The BlueprintのDBCFTだけど、DBCFTの「DB」の部分は消費地課税を意味する。従来の法人税とかIncome Taxは恣意的な箱である納税主体に対して課税する国で作り出される付加価値を課税対象とするというものだ。したがって、米国のような高税率国では付加価値が高い商活動には従事するのは損ということになる。一方これを消費地課税すると、どのような主体だろうが、どの国で価値を生み出していようが、米国で消費・使用される商品、サービスのみが課税対象となる。となると、せっかく腐心してアイルランドに持って行った付加価値の高い無形資産も最終的にその価値が米国で使用される限りにおいてはアイルランドにあっても米国にあるのと変わらなくなる。逆も真なりで、米国外で使用されるのであれば、消費地は米国外なので非課税となり、わざわざ米国外に無形資産を置く意味が失われる。

無形資産より棚卸資産で考える方が概念的に分かり易いかもしれない。米国で一から製造する場合にはサプライチェーンを経由して最終消費者に渡るまでの過程で基本全ての付加価値に20%の課税が起こる。一方で米国外で消費される商品は米国内にサプライチェーンが途中まであっても、最終的に米国内で消費が起こらない限り、サプライチェーンを通じて非課税となる。輸入で米国に入ってきて米国で消費されるものは、輸入される段階までは米国のサプライチェーンを経由していないので、そこまでの付加価値には米国で課税されていないから輸入時点で20%の課税となる。輸入を罰するのではなく、米国から見ると輸入と国内を同じ土俵に立たせることとなる。これはまさしくVATのメカニズムだ。米国に他国から輸出されてくる商品は輸出する側のサプライチェーンの付加価値に対するVATは全て還付されているはずなので、その分、少なくとも米国で課税することで均衡を保つという考え方だ。

VATでは国境調整は当たり前のメカニズムで、むしろしないといけないに近い存在だ。VATであれば、個々のインボイスベースで国境調整を行うが、The BlueprintのDBCFTは法人税申告書を一年に一回出すという枠で実行するものなので、個々の輸入取引に20%のVATを課す代わりに、算数的には全く同じことだけど、納税者に輸入があれば、それを損金不算入とすることで総計で20%を徴収するというメカニズムだ。輸出も同様でVATの場合には輸出取引を免税とし、サプライチェーンで支払われていたVATは仕入控除とすることで輸出にかかわるVATは国内では課せられない仕組みとなっているが、DBCFTでは申告時に輸出売上を益金不算入し、一方で国内からの仕入れ等は輸出にかかわるものでも損金算入を認めることで算数的にはVATと同様、最終的に米国で消費されない商品にかかわる米国内20%課税は存在しないという状況を作り出す。

このように国境調整は消費地課税を達成する単なるメカニズムで、VATとか消費税の世界では当然のように適用されていて、当然日本でも堂々と適用されている。

次はDBCFTの「CF」の部分に関して。 ここからは次回。なお、米国時間の今日、下院でDBCFTに特化したヒアリングが開催されるので、その様子も分かり次第ポスティングしたい。