Sunday, May 26, 2019

日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??

チョッとスクープみたいな話しがDCやNYCの法曹界で噂になっているのでFDIIの話しの真っ最中だけど、租税条約の批准に関して特番。

米国が他国と締結する条約は、憲法のArticle 2 Section 2の更にSubsection 2(2-2-2で覚えやすいね)に規定されている通り、行政府に締結の権限があり、したがって租税条約は具体的には財務省が当事者他国と交渉・締結する。条約の米国法体系における位置付けは、連邦憲法および連邦法と並ぶ最高の法規と憲法に規定されているので、かなりのステータス。Internal Revenue Codeとかの内国法と同列の立場にあり、条約が内国法を必ずしもオーバライドしないことから、後法優先という日本ではチョッと分かり難い優先順位に基づく判断が必要となる。

更に憲法の2.2.2(もう覚えた?)に規定される通り、条約が正式に効力を持つためには上院の3分の2多数で批准される必要がある。内国法が下院からスタートして法制化されるのに対し、条約に関して下院に物言う権利がないので、下院からしてみると少し悔しい存在。

ちなみに日本語では上院っていうけど、英語ではSenateで、これはもちろん古代ローマのSenetusから来ているけど、なぜか同じSenateでもローマバージョンは「元老院」。米国が名称を借用したくなるような統治制度を2000年前に確立させていた古代ローマは凄い。都市国家から領土を拡大し、帝政となり、その後崩壊していく過程は現在の国家のライフサイクルにも通じるものがありとても勉強になるし興味深い。テクノロジーがどれだけ進歩しても、所詮、人間のサガは今も昔も大差ないということなんだろうか。

米国憲法は、「We the People of the United States…」が「more perfect Union」を形成するために、賢人が過去の歴史・過ちから学び、知力を結集して策定した法律だ。洞察力に富む至上の法律と言えるけど、立派な憲法があっても「法の支配」がなければ、宝の持ち腐れ。独裁国家でも、聞こえのいい憲法を存在させること自体は可能で、それを法的に執行するメカニズムがなければ全く意味がない。法の支配の中でも特に重要なのが「三権分立(Separation of Power)」。立法府(議会)と行政府(Executive Branch)のSeparationはロシア疑惑関連でWilliam Barrとか良く争点となり、最近特に考えさせられることが多いけど、実は司法府、すなわち裁判所の動向も目が離せない。近年、大統領令が出ると訴訟になることが多いけど、本来、裁判所は立法府でも行政府でもない訳だから、大統領が大統領令を出す権限を逸脱していないかどうか、すなわち憲法上、大統領府に対して認められている権限内の行為であるか、という法的な検討にフォーカスするべきで、大統領令の内容そのものが賢いかどうか、という判断を加味する立場にはないはず。なぜかと言えば、賢いかどうかはそれを判断する者の考え方により異なるからで、本来、司法府はそのような視点を盛り込む立場にはないはず。

オバマ政権もトランプ政権も大統領令を乱発気味だけど、最近の司法府は、内容そのものが気に入らないとか、オバマ政策やトランプ政策が嫌い、というイデオロギー的な理由で大統領令を無効とするような判例が多く、しかも地方裁判所が全米有効のInjunctionを言い渡したり、Standingを未だ確立していない、よって訴訟を起こす立場にない、と思われる州が訴えを起こして、それが認められたり、所詮三権分立もそれを担当する判事たちの憲法順守にかかわる見解に左右されることが多く、せっかくの制度も最後はそれを司る人次第、という意味で限界を感じることが多い。この手の話しをし出すと本が一冊書けるので、いずれそのうちに。

で、租税条約だけど、ご存知の通り、上院議員の一人であるRand Paulが情報交換規定が違憲であるというような理想論で、反対し続けていることから、2009年以降10年間にも亘り、米国では租税条約はひとつも批准されていない。塩漬けになっている条約のひとつはもちろん2010年に二国間で合意済みの日米租税条約の議定書だ。なぜ、たった一人の上院議員が3分の2で可決できる条約批准をブロックし続けることができるのかは2016年に「日米租税条約改正は一体いつ発効?」という3回特集を組んでいるので、詳細はぜひそちらを参照して欲しい。要は他に切羽詰まった議題が多く存在する中、また上院議員はいつもDCに居る訳ではない中、各条約を議場で議論して3分の2の多数決で可決させる時間は到底なく、この手の承認は通常、「全員一致」の決議書で行うという点に問題がある。

で、ここに来て急展開があり得る状況になったのは、面白いことにRand Paulと同じケンタッキー上院議員で、上院多数党院内総務、というと堅苦しいけど要は「Majority Leader」のMitch McConnellが条約の批准が10年間滞っている点を問題視し始めたからだ。McConnellはどちらかと言うと無表情かつ冷徹にことを進めるタイプで、Cliff Simsの書物の表現を借りるならば「Viper」ということになるけど、地元ケンタッキー州民の利益のためには努力を惜しまないDCの実力者だ。ケンタッキー農民のためにFarm Billを通したり頑張ってる中、ケンタッキー州のとある酒造会社が「米国とスペインの租税条約の議定書が塩漬けになっていて不利益を被っているが、何とかならないものか」というような話しをMcConnellに持ち込んだらしい。McConnellがその話しを聞くまで条約批准がここまで滞っている状況を理解していたのかどうかは不明だけど、独力で条約批准を10年間も阻止し続けてきた張本人が同じケンタッキー州のもう一方の上院議員(上院議員は下院と異なり州の人口にかかわりなく、各州2名)だったという実態に唖然とした点は想像に難くない。

で、早速Paulに働きかけ、他の上院議員にもここ数週間、根回しを行ってるらしい。ただ、手順としてはSenate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)というところがヒアリングを行い、そこで可決してから本当の上院の審理に回したり、と結構気の長い話。外交委員会はPaulの欠席時に一度可決を成功させてるけど、同じ年内に本院で可決されないと再度委員会に差し戻されるというルールがあり、もう一度、そこから始めないといけない。

条約の批准は当然、既に合意された条約に対して行うものだけど、批准の際に、条項を修正したり条件を付けることが認められる。Paulに賛成させるには、情報交換規定に関して何らかの条件を付けるというような奥の手もあり得るけど、条約だから米国が一方的に新たな条件を盛り込む訳にはいなかい。となると当然、条約締結相手国と再交渉の必要が生じる。しかも2009年当時から合意されてきた条約には、2017年の税制改正なんて全く想定されてない訳だから、そんな条約が後法優先で批准されてしまうことの影響も加味しないといけないだろう。時間が経てば経つほど面倒だね。CPA試験とかさっさと受からないと勉強しないといけない会計原則が増えるばかり、っていう悪循環みたい。う~ん、なんか時間掛かりそう。支払利息の源泉を0%にしたい方は利息の支払いをチョッと待ってみる?または逆に米国法人が米国不動産持分に当たるかどうかの判断が、今の条約が有利だったらさっさと再編とか売却とかしてみる?ここ10年で批准のモーメンタムは最高潮にあると言えるだろうから、価値はあるかもね。

Saturday, May 25, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (4)

早いもので前回FDII絡みのポスティングをしてから一カ月以上の月日が流れてしまった。連日連夜USタックスと格闘し続けても、余りにディープな規定の連発で、全てを良く理解するには全く時間が足りない。もともとこんな複雑な法律を一人で全て理解するのは到底不可能だけど、その際に決めてになるのが、米国のLaw FirmやBig-4、また米国財務省やIRSのChief Counsel Officeの弁護士チームとの情報交換の機会。経験豊かな賢人のコメントは各規定の理解に欠かせない。25年以上税法や判例読み続けても、読む度にその難解さを認識することが多い訳だから、納税者の皆さんが良く理解できないことが多いとしても、それは当り前。自社取引、ストラクチャーにおけるどういうところがSweet Spotsとなり得て、そして法律はとてつもなく複雑なので誰か優秀なアドバイザーが必要で、そして優秀なアドバイザーは高い(?)っていう点を認識していれば十分。 僕がパートナーを務めるEY US Firmは元々米国における国際税務分野では業界No.1だと思うし、他のUS Firmに属してた頃はEYの米国国際税務部門は羨望の的だった。で、自社国際税務チーム内にはDCやNYCに層の厚い多くの有識者が居て、彼らと持つ何気ない会話の中で各規定の理解が一層深まることが多い。財務省やIRSのChief Counsel Officeにも多くのOB/OGが居たり、またその方たちがFirmにブーメランのように戻って来たりするので、裏話し的な情報ももらえて楽しい。

裏話と言えば、「GILTI」とか「BEAT」とかのアクロニム(頭字語)が余りにCatchy(規定内容ではなく名前だけだけどね・・)で出来過ぎているな、っていうのはみんなも感じてると思う。議会のセンスの良さと言うか、洒落が通じる感じが上院議員の重鎮たちのイメージとチョッと違ってて面白い。元々法律をドラフトしている段階で、これらの法文タイトルは略してGILTIやBEATとなるように敢えて命名されてたらしいけど、実はドラフトしている当人たちも未だ本当に税制改正が可決するとは思ってなかったようで、「どうせ廃案だったらよりCatchyな名称で(?)」っていう勢いでドラフトを進めていたところ、本当に数週間と言う前代未聞のスピード可決が実現してしまい、そのままの名称で立派な法律になってしまったという落ちがあるらしい。もちろん規定そのものは、相当前から存在した複数の提案やコンセプトに基づき、可決されることを想定して真剣に考え尽くされてるものだけど、名前はそのままでゴールインしてしまったので、2018年以降の米国税制を語る際の語彙がよりカラフルになった。

ちなみに法文の条文や法律の策定の際には各々の規定に「タイトル」が付いてるけど、条文解釈時にはタイトルは法律の一部ではないことから、その直後に始まる条文そのもののみが法的な効果を持ち、タイトルの内容は加味してはいけない。俗にBase Erostion Anti-Abuse Taxとか呼ばれるので、「僕はAbuseしてないから、BEATの対象になるのはおかしいのでは・・」とか、心情的には分かるんだけど、法的にはBEATミニマムタックス適用有無判断時に納税者側のAbuse意図の有無は一切条件となっていないことから、条文の要件に抵触する場合にはメカニカルにBEATが適用されてしまう。法律が可決して間もない頃、上院財政委員会の弁護士と直接意見交換するという夢のような機会があって、その際にBEATはAMTに代わるミニマムタックスの位置づけなのよ、という趣旨のことを言われ、その当時はこの点に関してなかなかピンとこなかったけど、考えれば考えるほど、そうなんだな~っていう今日この頃でした。

で、FDII。前回のポスティングでは、FDII適格と取り扱われる、すなわち13.125%っていうスーパーアトラクティブな税率の対象となる所得は、敢えてザックリと言ってしまえば、米国法人の課税所得の超過利益のうち外国の顧客(関連者含む)から得ている部分という説明までした。今回は、肝心の、どんな所得が外国の顧客からのものと取り扱われるか、っていうFDIIの神髄とでも言える検討に入りたい。

税制改正後の米国法人税フレームワークだけど、米国法人が認識する所得はPureに国内で終焉している取引と、国外取引に対するものに大別される。国内終焉所得は全て21%で課税され、国外所得は更にルーティン利益と超過利益に区分される。リーティン利益はValuationや経済分析を基に算定するのではなく、有形償却資産の税務簿価の10%と機械的に算定され、所得を認識する法人が所在する国の法人税率に基づいて法人税を支払えばそれで終わり。米国内で認識されるルーティン所得は国外取引にかかわるものでも21%で課税だし、米国外のCFCが認識するもの0%だったり20%だったり30%だったりするかもしれないけど、各々の国で適用法人税を支払えばそれまでとなる。

国外取引から生じる所得のうち、ルーティン利益を上回る部分があれば、それは自動的に超過利益となる。理論的な背景としては、超過利益が存在するということは、結局みなしで何らかのノウハウ、マーケット無形資産(デジタル課税を巡りホットだけど)とか、何らかの無形資産があるはずということだろう。このことから、GILTIの2番目の「I」やFDIIの最初の「I」がIntangibleの頭文字となる。国内終焉取引や国外ルーティン利益が21%課税されるのに対し、国外超過利益には最低13.125%の法人税を世界のどこかで支払ってもらおう、というのがツイン規定であるGILTIとFDIIの考え方。GILTIは米国法人が、米国外に所在するCFC経由で認識する所得に対して、GILTI合算、GILTI控除、FTCという3段階構造メカニズムを通じて「理論的」には、国外で13.125%以上の法人税を支払っていれば、米国での追加法人税はなし、国外の法人税が13.125%に満たない場合には、13.125%を上限として米国で差異(必ずしも13.125%との差異満額ではないが、13.125%が総額の最大値)をミニマム課税として支払って下さい、という規定となる。FTCの枠や控除制限の関係で実際には13.125%で終焉しないケースも多いのは以前のポスティングの通りだけど、フレームワークというか設計コンセプトとしては、13.125%が世界ミニマムタックスだ。

同じ概念を米国法人が認識する国外取引に適用しようとしているのがFDII。FDIIは米国法人自らが認識する米国外派生所得のうち超過利益に13.125%で課税するという仕組み。FDII対象となる取引は通常米国外では課税されないから、GILTIと異なり、合算だの控除だのFTCだのという面倒なステップはなく、単純にFDII適格となれば想定控除を通じて実効税率が13.125%となるようにできている。

ちなみに、米国外派生所得は、英語では「Foreign Derived Income」だけど、これはFTCを算定する際に従来から存在していた「Foreign Source Income」とは全く別のもの。FDII目的では所得の源泉地が米国か米国外か判断する必要は一切なく、派生先、すなわち、顧客が米国外なのかどうかが決め手となる。ロイヤルティを除く大概の国外派生所得は米国源泉所得だろう。

FDII適格所得は、資産の販売とサービス提供に大別される。資産販売は棚卸資産のような有形の資産を販売しているケースばかりでなく、無形資産の販売やロイヤルティの受け取りも含まれる。条文に規定される適格要件が、資産販売とサービス提供取引で微妙に異なる点がややこしい。

資産販売に関しては、「米国人でない顧客(not a United States person)」に販売され、かつ「資産使用場所が米国外」という二つの条件を充たす必要がある。一方、サービス提供に関しては、「米国外に所在する者(any person not located within the United States )」に対して、または「米国外に所在する資産(property not located within the United States)にかかわる」サービスを提供している必要がある。これは言うは易し。第三者に販売した商品がその先、買い手によりどこで使用されているか、なんて売り手側では捕捉できないケースも多い。そこで財務省規則案では資産やサービスのタイプ別にこの法文の要件を具体的にどのように充足するかを詳細に規定している。ペーパーワークは面倒だけど、規定としては熟考されていて評価するべきものだと感じている。

次回から取引タイプ別の判断法と取り揃えておくペーパーワークについて。

Sunday, April 7, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (3)

FDIIの財務省規則案が公表されたのを機に、FDIIについて書き始めてたんだけど、税制改正のインプリメンテーション等でとてつもなく多忙になってしまい、なかなかアップデートできず終いで今に至ってしまった。それにしても税制改正のコンプライアンスに与える負荷は凄まじい。2018年3月期は基本的に留保所得一括課税と即時償却の影響だけを考えればよかったけど、2019年3月期からは部分的に留保所得一括課税も残るケースもある上に、BEAT、GILTI、FDIIが「本当に」申告書に反映されることになるため迫力満点。

早くも一年前となる2018年3月の留保所得一括課税だって、実際に申告書に反映させようと思って規則を適用してみると、Cash v. non-cashの区分、期中の分配、FTCの計算やSection 78グロスアップに対するSection 245Aの適用可否、とか想像を絶する複雑さ。規則とか読んで全て分かったような錯覚を覚えていても、実務に申告書に落とし込んでみると理解が深まるというか、理解しているつもりでも実はアヤフヤにしか分かっていない部分が浮き彫りとなる。

ちなみに留保所得一括課税は「旧」税法の世界で処理されるため、FTCなんかは旧Section 960経由で今は亡きSection 902で処理しないといけない。つまり慣れ親しんだPoolingで分母と分子をどう考えるのか、とかをバスケット毎に詳細検討したり、1986年以降すっかり定着していたFTCの考え方に基づき、「昔こんなエクセル作ったな~」とか、Section 902的にはかなりの郷愁が漂う作業となり、最後の郷愁と言う意味ではビートルズのLet It Beのスタジオセッションを彷彿とさせてくれた。何言ってるか訳わかんないかもしれないけど、それだけ米国で国際税務にかかわってきた者にとって今回の税制改正がゲームチェンジャーだという一面を、FTCのSection 902引退をもって感じることができるということ。もっと訳わかんない?かもね。

Let It Beと言えば、ナンとApple(MACやiPhoneのAppleではなく、元祖ビートルズのApple Corpの方)が、Rooftopコンサートのちょうど50周年に当たる今年の1月30日に、Peter Jacksonの手によりLet It Beセッション(またはGet Backセッション)の未公開映像を編集して新Let It Be製作に着手するというとんでもない吉報を発表した。しかも、80年代に質の悪いビデオが限定的に公開されたきりPublic Domainから姿を消していた元祖Let It Beの方も、再マスターされて「正式」に再公開されるという「今日まで生きててよかった~」レベルの大ニュースも一緒だった。

Appleのプレスリリースによると、1969年1月2日~31日に録画された55時間に上る未公開映像、144時間に上る音源、を基に新たなLet It Beを制作するというもの。凄い!できれば55時間丸ごと55回に分けてでもストリーミングして欲しい。1969年1月2日と言えば、ホワイトアルバムの録音終了から僅か数カ月後に、Twickenham Film Studiosにグループが再集結した日そのものだし、その後、George Harrisonが脱退して(クラプトンを代わりにみたいな凄い話しがあった時期)3人でセッションしていた数日を挟み、和解後にSaville RowのAppleビル(今ではA+Fのお店になっているあのビル)に場所を移しセッションを続け、Rooftopでのランチタイムに予告なく始まった(グループ最後の)Public Apperanceの1月30日までの全てをカバーしていることになる。賢いみんなは、でもプレスリリースでは1月31日までのセッションとなってるけど、って一日の差異を疑問に思ったことだろう(誰も思ってない?)。この空白の一日は、実はオリジナルの映画ではあたかもRooftopコンサート前に行われたかのようにプレゼンされている「Two of Us」「Let It Be」「The Long and Winding Road」3曲の最後のスタジオセッションの日だ。次回、映画Let It Beを見る際には、実はこの部分はRooftopの翌日だったんだ~、って観察すると更に感慨深い鑑賞となるだろう。

1月2日から1月15日までのTwickenham Film Studiosそして1月21日~1月31日までのAppleビルのセッションの様子は数々の海賊版(懐かしい響き!)で流出しているので、内容的には大概想像がつく。Let It Beのアルバムに落ち着いたナンバーに加え、公表は先だけど実際にはその後にレコーディングされたAbbey Roadに収録されている曲、さらには解散後ソロになった後に発表されることになる曲がIncubateされて徐々に形作られている過程だ。

Twickenham Film Studiosって、Abbey RoadやAppleビルと異なり、ロンドン市内ではなくヒースロー空港とロンドンの中間みたいな場所に当たるSt Margaretsっていう実に英国っぽい名前・風貌の街にある。あんなところに新年早々朝から集合しないといけないとは有名アーティストの仕事も楽じゃない。映画見る限り屋内でも相当寒そうだし。実はLet It Beの映画が恋しい余りに(わざわざ)St Margaretsまで訪ねて行ったことがあって、もちろん外からビルディングだけ見てもなんてことはなかったんだけど、そこの空気吸えて、その場に行けただけでも大満足。小さいころ、どんな場所なんだろう・・って夢広がってたイメージとはチョッと違ったりはしたけど。Saville RowやAbbey Road行く人は多くてもTwickenhamまで足を延ばす変わり者は珍しいかもね。

その場に居たと言えば、実は僕はJohn LennonとPaul McCartneyの2人「本物」を、コンサートとかのセッティング以外で、実物を見たことがある。特にJohn Lennonに関してはかなりの自慢話し。1970年代後半、夏休みの一部を軽井沢で過ごしていた時期があり、その時にたまたまJohn LennonとYoko(そして生まれて間もないSean)が旧軽の万平ホテルに滞在しているという噂があったので、毎日(皇太子と美智子様の出会いで有名な)テニスコート付近でわざわざHangoutしていた。そしたら、本当にJohnとYokoが(ナント)自転車に乗って現れ(Seanは確か自転車の前に据え付けられたカゴにチョコンと乗ってた記憶がある)、テニスコートの横で休憩し始めたのだ。写真そのもののJohn Lennonの生の姿を至近距離(2メートルくらい)で拝む結果となり、余りにSurrealな状況に気絶寸前。ビートルズの歌詞以外は英語も今一つな時代だったし、余りのオーラに辺り一面圧倒され半径2メートルくらい円形に自然にスペースができていたりしたこともあり、声を掛けることができなかった。今だったら「一緒にバンドでもやりませんか?」位のジョークは言えただろうに一生の不覚。でも2人が立ち去ろうとしている際に勇気を出して近づこうと思ったら僕の自転車がYokoの自転車に触れてしまい、そしたらYokoが「Sorry」って一言話して(?)くれた。謝る時は「I am sorry」と教わっていたのに、「Sorry」だけでいいんだ~、みたいなとんでもなくイノセントな時代だった。

で、Paul McCartneyの方は、1966年の武道館コンサート以来初、ソロ活動を開始してからも初、しかもVenus and Marsが出てWingsがまあまあ商業的に成功しているっぽかった「Rock Show」での来日時の話し。時は1980年。ウドー音楽事務所から早速手に入れた整理券は順番が遅かったので、代わりに新宿の「プレイガイド」(こんな言葉今でもあるのかな)で4泊徹夜して武道館アリーナ最前線の席のチケットを4日間(確か)予定されていた全コンサート分入手した。いよいよ来日が近づき心臓が止まりそうなくらい楽しみにしてたんだけど、ナント1980年1月に成田に到着したPaul McCartneyは麻薬不法所持で空港で逮捕され、そのまま留置所に。コンサートは全て中止となり、チケットは「額面」で払い戻しとなった。当時一緒にコンサート行く予定だった友人と熟考の末、チケット2枚は記念にとっておいて、残りは当時は珍しかったカラーコピーを新宿紀伊国屋でしてもらい還付、双方共後生大事に宝箱に入れて取っておいた。でも、もちろん今ではどこにいったか不明。で、全くの想定外の展開に夜も寝れない状況だったんだけど、Paul McCartneyが新橋の警視庁に拘留されていて、取り調べが行われている中目黒との間を行ったり来たりしているという噂を聞きつけ、新橋の留置所の前で張っていた。同様の噂を聞きつけたファンが結構な数いて、警視庁の辺りを取り巻いてたんだけど、そしたらナント本当に警察の所有車っぽい黒塗りの車が堂々と新橋の警視庁正面玄関に乗り付け、Paul McCartney本人が車から降りて歩いて階段を上り、建物に入っていったのだ。その瞬間辺りは騒然となり、興奮に包まれた。実はその後、Paul McCartneyとは再会(?)があり、それは時は流れて、2005年。ロサンゼルスの西部、ちょうど2002年頃まで10年近く住んでいたWestwoodの家から徒歩数分の場所にあったBordersっていう本屋さんがまだアマゾンに駆逐される前で健在だったころに、Paul McCartneyの著書「High in the Clouds」刊行記念サイン会みたいなプロモーションを企画した際。またしても本屋の前で張ってたら本当に(というか今回は予定通りに)、Paul McCartneyが、当時何らかの契約関係にあったLexusのSUVに乗って現れた。っていうのが2回目のEncounter。

Section 902の最後の郷愁から話しが飛び過ぎたけど、税制改正と新Let It Beのどっちでより興奮するべきか、という究極の課題を突き付けられたことになる。

で、FDIIだけど、米国法人が認識する当期の単年課税所得のうち、「みなし動産リターン(ルーティン利益)」を差し引いた金額を機械的に「みなし無形資産リターン」とし、そのうち米国外の顧客から発生する取引に帰する部分を13.125%で課税するという仕組み。なので、別に無形資産を有しているとか、価値のある無形資産に基づくリターンを得ているとか、そんな自意識がゼロでも、「みなし」の無形資産リターンが存在する限り、FDII,すなわちForeign Derived 「Intangible Income」の恩典を享受することが可能だ。

FDII計算ステップを簡単にまとめると次の通り。まず、米国法人(連結納税している場合は連結納税グループ)に「みなし無形資産リターン」が存在しないとFDIIの恩典には一切あり着けない点は上述の通りで、まずはここに着眼せざるを得ない。この認定もフォーミュラとしては機械的。すなわち単年課税所得とルーティン利益を比べて、課税所得の方が大きければその部分が超過利益として「みなし無形資産リターン」となる一方、ルーティン利益の方が大きければ、超過利益は存在しないとみなされ、その場でFDIIの検討はお終いとなる。

では、この運命の分かれ道となるみなし無形資産リターンの算定時に使用される、ルーティン利益、すなわち「みなし動産リターン」をどのように算定するかだけど、これは単純に「有形償却資産ネット簿価年間平均額(Qualified Business Asset Investment 「QBAI」)」の 10%。ここでいうネット簿価は米国法人税ベースだけどMACRSではなく、ADSと呼ばれる定額法償却に基づくもの。ADSにはボーナス償却とか、定率法に基づく加速度償却とかが存在しないので、ADSベースの簿価はどちらかというと会計の簿価に近い。各四半期末の簿価を年間平均した金額がQBAIとなり、これに10%掛けた金額がルーティン利益扱いされ、当額と比較して、課税所得の方が大きければ一次試験合格。

ここでは話しを簡単にするため「課税所得」がルーティン利益を超えていれば、と書いてるけど、実はこの算定をする際の課税所得は、申告書上の課税所得全体からいくつかの項目を除外する必要がある。それらは、CFC合算所得(Subpart F所得)、GILTI合算所得、金融サービス所得、CFCからの配当所得(みなし配当含む)、FOGIの逆でDOGI(?)とでも言える米国内オイル・ガス所得、そして米国外支店所得だ。米国外支店に帰属する多くの所得は普通に考えればその大半が米国外のカスタマーからの売上となるはずだけにFDIIの計算から(米国外)支店に帰する所得がカーブアウトされてるのはかなり興味深い。支店に関しては、支店をQBUと定義して、FTCの際に別のバスケット化されたりしているので再注目されているけど、FDII目的では支店に所得が配賦されない方が有難い一方、FTCのことを考えると、Excess Creditの場合には支店により多くの所得を配賦する方が好ましくテンションがある。条約のリソーシングとの関係とか、時間があったら税制改正後の米国法人の海外支店・PEは深掘りしてみたいトピックのひとつだ

みなし無形資産リターンの存在が確認できたら、次はそのうちのどの部分が米国外派生となるかの確定。これも「みなし無形資産リターン」に 「米国外派生%」を掛けた金額なので、フォーミュラとしては機械的に算定され、この金額こそがFDIIだ。米国外派生% は、単純に言えば、上述の除外項目以外の課税所得(適格所得)に占める外国部分の%。外国部分は米国外カスタマーに対する売上(ライセンス含む)およびサービス提供から派生する課税所得。なので米国法人の取引のうち、何がFDII目的で「米国外カスタマー」に対する取引と認められるか、が最重要検討事項となる。この点から次回。

Tuesday, March 12, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (2)

Section 250のFDII財務省規則案が急に公表されたので、またそっちに移り気してしまってるけど、FDIIは、法人税率引き下げ、即時償却、と並んで今回の税制改正で導入された納税者よりの規定のひとつ。それらのグディーズに対し、GILTI、BEAT、163(j)、Anti-Hybridという反納税者規定があり、もうひとつ本来は目玉商品だったはずのテリトリアル課税の恩典は限りなく透明に近いブルー、じゃなくて限りなくゼロに近い、というのが税制改正の全体像と言っていいだろう。日本企業のような米国から見たインバウンドグループは、その気になればCFCを米国傘下から外すことが可能な訳で、税制改正最大の障害であるGILTIからの解放は十分に可能だ。「War is over if you want it」の世界。BEATは残るにしても、他は納税者に有利な規定なので、どのように恩典を最大限化するか検討する必要がある。

FDII適格となる取引に適用される13.125%という法人税率は、単純に税率だけで見るなら(州税も無視して)、香港やシンガポールより低く、アイルランドやリヒテンシュタイン並みだから、これをUnited States of Americasの税率と考えるとかなり迫力がある。それだけに、法律が意図している取引のみが適格となるよう、特に外国人顧客、米国外使用、等にかかわる定義やその証明法を詳細に規定しているのが今回の財務省規則案だ。

まず、Section 250控除の恩典を受けることができる納税者だけど、REIT、RIC、S法人以外の米国法人となる。なんかチョッとBEATと似てるけど、BEATと異なりFDIIは「米国」法人にしか適用がない。FDIIに関してはそれはそれでポリシーマターだからどうってことはないけど、Section 250はFDIIばかりでなく、GILTI控除も規定している。GILTIの「合算」自体はCFCの米国株主であれば法人でなくても適用がある。にもかかわらずSection 250は米国法人以外に適用がないということは米国法人以外の米国株主はフルの税率でGILTI課税されることになる。「と言うことは21%か・・」ではなく、個人は37%が最高税率。CFC保有しているような個人だったら多くの方が37%だろう。しかも個人には間接外国税額控除も認められないので、CFCが所在国で法人税支払った上に米国で37%というとんでもない結果となる。グローバルミニマム税13.125%どころの騒ぎではない。

以前から存在するSection 962と言う、個人が一定の目的で法人かのように取り扱うことを選択する制度を利用するのが唯一の救いとなるけど、Section 962は分配時に不利な取り扱いがあったり完全な解決にはならないだろう。また、Section 962を選択することで外国税額控除は認められそうだったけど、控除項目のGILTI控除はSection 962下でも法律の書き方から難しいのではないか、と疑われていたが、今回の規則案でSection 962を選択する個人の納税者にもSection 250のGILTI控除が認められることになった。ただ、これはSection 250のGILTI控除部分の話しで、個人がSection 962選択をしてもFDII恩典を享受できるということではない。

実際に何がFDII適格の取引・所得になるかという本題に入る前に、規則案では250条控除計算にかかわる諸々の事務的計算法に触れている。とは言え、これが実に難解。下手するとEXCELのIteration機能を駆使した反復計算になりそうで、実際に財務省にはそれが正しいアプローチという声もあったようだけど、最終的には強制的な計算優先順位を設定することでIterationは回避されている。

複雑化する原因は、Section 250控除額は課税所得を上限とすると法律で規定されていて、この目的での課税所得はSection 163(j)やSection 172(NOL)他の控除・制限を全て加味した後のSection 250直前の金額となる一方、Section 163(j)の支払利息損金算入制限を算定する際に使用するATIはSection 250控除後、となっていて、どっちが先か不明な点。それをアーティスティックに解決しているのが今回の規則案。

規則案では、まずSection 163(j)やNOLを無視してFDIIを算定し、GILTIと合わせて課税所得上限は無視して仮の暫定Section 250控除額、すなわち「暫定Section 250控除」を算定するとしている。で、この暫定Section 250控除を加味してSection 163(j)目的の修正課税所得(ATI)を算出し、支払利息損金算入制限額を決定する。その結果、損金算入が認められることになった支払利息を使用して当期課税所得をはじき出し、そこにNOLを充当する。NOLの使用可能額はこのステップで決まり、近年のNOLで80%制限の対象となっている場合にはここで80%上限額を確定させる。さらに上のステップで使用可能となった支払利息およびNOLを使用して最終FDII額を算定。また同時にSection 250控除に対する課税所得上限額もこの段階で算定する。その結果、FDII額およびSection 250控除額が最終となる。Section 250控除額を算定する際に、FDIIとGILTI合算額が課税所得を超過する場合、超過額はGILTI控除とFDII控除に按分され、各々の控除額の対象となる金額を減額させる。なかなか良く考えられたステップだけど、これからの米国法人税コンプライアンスの負荷は果てしなく高い。

さて、いよいよ次回はFDII適格所得の算定法。

Friday, March 8, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案

BEATに戻る!って宣言してから早一カ月。日本からの米国投資も引き続き盛んで、いろんな投資やM&A絡みの話しで24/7米国法人税と格闘しながらもそろそろBEATのポスティングでもと思い立った矢先、お雛祭りの興奮冷めやらぬ3月4日に財務省からGILTI控除とFDII控除の双方規定しているSection 250に係わる財務省規則案が公表された。今回は177ページ。最近は財務省規則が200ページ未満だと「なんだ結構短いじゃん」なんて勘違いするようになってしまった。慣れは恐ろしい。今回の財務省規則は、国外取引がどんな条件でFDIIになるかっていう議論に多くのページが割かれている。なんで、例えばFTCの規則案みたいに超テクニカルな話しではなく、どうやってカスタマーが販売した商品を米国外で使っているか、って証明するとかの話しが多く、反って読むのに苦労した。

Section 250はGILTIとFDII双方の控除を規定してる条文だけど、今回の規則案は基本的にFDIIの話しのみで構成されていると言っても過言ではない。唯一GILTI控除の話しが出てきてるのは、課税所得上限という制限枠の部分だけで後はFDII一色。それもそのはずで、GILTIに関しては既に2018年9月にGILTI課税の中心的な規定となる「GILTI合算」、また11月にはGILTIグローバルミニマム税率を13.125%とするためのキーとなる外国税額控除、に関して既に複雑かつ大量の規則草が公表されている。そんなことから今回規定されるGILTI控除はGILTIの世界ではマイナーな存在なので、規則案もそれに準じているだけの話し。決してGILTI全体が簡単ということではない。

で、Section 250はGILTI合算した金額およびGILTI外国税額控除目的でグロスアップする外国法人税に対する50%の所得控除、そして米国外への販売、ライセンス、役務提供から生じる超過所得であるFDIIに対する37.5%の所得控除を規定する条文。FDIIってForeign-Derived Intangilbe Incomeの略だけど、GILTI同様にIntangilbeの有無はその適用に問われない。GILTIがどう読んでも「ギルティ」以外に発音しようがない一方で、FDIIは当初どんな風に読むのかっていうコンセンサスが出遅れた感じ。フォディーとかって言い出す人もいたけど、いまではサウンドの心地よさから「フィディー」に落ち着いている。で、FDIIに対して37.5%の控除が認められるということは、実際には100の所得があっても62.5しか課税されないから、それに通常の法人税21%を掛けると、実効税率13.125%になるという仕組み。香港とかシンガポールレベルの迫力満点の税率だ。

GILTIはCFCの所得を毎期グローバル連結納税する規定で、FDIIは米国法人が国外から所得を得る際の恩典税率規定。一見、全く異なる2つの規定なだけに、なんでこの2つの控除を敢えて同じSection 250で規定しているんだろう、って不思議に思う人も多いと思う。っていうかそんなに深く考えてない人の方が圧倒的に多いとは思うけど。GILTI合算課税そのものはクロスボーダー系の条文が集まっている辺りのSection 951Aで規定されていて、50%の控除部分のみがFDIIの37.5%と同じ条文に収まっている。これには恐ろしい(?)訳がある。実はFDIIとGILTIは表裏一体の関係にあるからだ。

FDIIは37.5%の控除を認めることで国外販売から派生する米国法人の所得を実効税率13.125%で課税する。GILTIはCFCが国外で認識する所得に50%の控除を認めることで10.5%で課税するけど、CFCが所在国で同じ所得に対して支払う外国法人税は80%まで税額控除が認められる。ということは80%掛けて10.5%になるレベルの外国法人税、すなわち13.125%をCFCが支払っていれば「理論的」には米国側ではそれ以上持ち出しの法人税は発生しないことになる。なぜ「理論的」だけの話しかと言うと、「実際」には米国株主側のGILTI所得に対する費用配賦で、税額控除の枠にリミットが掛かり、10.5がきれいに消えないからで、この問題は以前のポスティングで散々触れている。

すなわち理論的にはGILTIは、CFCが認識する所得にグローバルミニマム税として13.125%の法人税を支払ってればよろしい、という仕組み。これは国外販売等から生じる所得を米国法人に実効税率13.125%で課税するFDIIのミラーイメージだ。OECDとかが「FDIIは不法な輸出助成金でけしからん!」というようなクレームを付けてくる場合には、「米国法人が国外から得る所得もCFCが得る所得もどちらも13.125%をミニマム税としてます」と言ってディフェンスするためだ。

このことから、GILTIとFDIIはセットだと言うことが分かる。昨今の変なノリで、各国がグローバルミニマム税を導入しようとする勢いにのって、まさか日本もGILTI日本版すなわちJILTI(ジルティー!)を導入なんてことはないとは思うけど、でもそれするんだったらシスター規定のFDIIも入れないとおかしい。日本版FDIIのJDII(ジディー!)。

って、チョッと規則案とは関係なくなってきたけど、次回はSection 250規則案の規定そのものについて。

Saturday, February 2, 2019

留保所得一括課税の財務省規則最終化 (4)

グローバルウォーミング・地球温暖化にはいろんな懐疑論もあったりして、悲しいことに米国税務とサブカルチャーの一部にしか知見のない僕個人は、一体何を信じていいのか合理的な推測すらできない。なんで科学的な話しはできないんだけど、体感的は話しとして、比較的温暖だった今年のニューヨークの冬は今週いきなり寒くなった。シカゴとかデトロイトのある中西部では体感温度マイナス50度(摂氏)とか報道され、これは南極より寒いとか騒がれていた。南極ってもちろん行ったことないけど、逆に言えばシカゴとかで体験できる寒さと比較可能なレベルなんだ、っていう変な発見もあった。マンハッタンでもiPhoneの表示だと華氏5度(摂氏でマイナス15度位)って出てたから結構寒い。ここまで寒いとマンハッタン全体、雪も降ってないのに路面とか全体に白っぽくなったりして、寒さで空気が澄んでいる点も合わせて見た目はきれい。夜も光がキラキラしていて外に出なくて済むんだったらいい感じなんだけどね。素人的に言うと、こんなに寒くなるってことは温暖化って表現は余りピンとこない。どっちかっていうと気候変動っていう方が分かり易い。

で、前回は留保所得一括課税の最終規則公表を受けて、CFC株式の簿価と課税済所得の話しを結構延々としてしまった。今日もチョッと似たような話し。なんでこんな話しをいつまでもポスティングしているかというと、簿価とかE&Pっていうのは昔から重要な属性だったけど、留保所得一括課税や今後のGILTIでその重要性が格段に増しているから。また、日本企業の米国子会社を見ていると、一般的にこれらの数値管理は疎かになっているケースが多く、2018年以降は毎期トラッキングしておかないと、CFCからの分配もできない状況になるので警鐘の意味も兼ねて(?)。

簿価関係の話しで一括課税の規則の中に実に興味深い規定がある。CFCの一括課税合算年度の期中にCFCが分配を行った際の取り扱いだ。例えば、米国株主法人からみ株式簿価がゼロのCFCに1987年以降の留保所得が100あり、全額一括課税の対象になるとする。CFCも米国株主法人も12月31日決算とすると、米国株主法人は2017年12月期に当100を課税所得として合算する。これだけの事実関係だと、12月31日時点に100がCFC側で課税済留保所得となり、CFC株式簿価が同額100増額する。もし2018年1月以降にCFCが100を分配すると、課税済留保所得の分配として、配当扱いにはならず(なので新税制下のテリトリアル課税規定である100%配当控除の対象にはならない)、CFC側では課税済留保所得100が減額し、米国株主法人はCFC株式の簿価が100減額して、合算前の簿価ゼロに戻る。。もし、留保所得一括課税以前のCFC簿価がゼロだったとすると、12月31日時点で簿価は100増額し、その後の分配時に100減額してめでたく元のゼロに戻ることとなる。

もし、分配が2017年11月とか、12月31日より以前のタイミング、すなわち留保所得一括課税の合算年度期中に行われているとどういうことが起こるだろうか。期中の分配は一括課税の対象となる留保所得認定には影響がないので、期中の分配がなかったケース同様、米国株主法人は2017年12月期に100合算課税される。ということはこの100の原資となる留保所得は課税済みになるし、CFC株式簿価も100増額するはずなんだけど、実際には分配が先に起こっている。となると、分配された金額100に関して、課税済留保所得を原資にしていたっていう点は12月末の合算確定時点が初めて明らかになる一方、分配時点で他のカテゴリ―の留保所得を分配したと考えるのは変なので、分配時点に遡って課税済留保所得を分配したと取り扱われることになるはず。でも、株主側のCFC株式簿価調整は米国株主法人側で合算されるまで増額しないと考えると、分配時点の株式の簿価は未だゼロだったと考えられる。え~、ってことは分配時点で簿価を100減額しないといけないけど、簿価がゼロなので100のみなし譲渡益課税?っていう恐ろしい事態になりかねない。

この時間差の問題は、実は以前からモヤモヤとしていた問題で、従来のSub F所得が合算され、合算年度の期中に分配があった場合に、分配はSub F所得の範囲で課税済留保所得から行われたと取り扱われる一方、簿価の増額は期末なので、厳密に言うとミスマッチが発生するのでは、って以前から疑われていた。ただ、従来のSub F合算所得は、今回の留保所得一括課税や今後のGILTIに比べて金額が小さいことが多く、仮にそんなミスマッチがあったとしても、分配時点で株式簿価がゼロを割り込んでマイナスになるような事態が発生するリスクは低かった。また、課税済所得という位置づけはSub F合算が発生するCFC側の年度末にならないと確定しないので、実務的には分配・課税済所得の確定・簿価増額そして減額が全て同時に起こったかのように便宜的に処理しているケースも多かっただろう。

で、留保所得一括課税の最終規則では、この点に関して、仮に分配時点で譲渡益を認識するようなケースがあっても、譲渡益は米国株主法人側で合算した金額を上限に減額処理していい、と規定している。すなわち、上の例で言うと、分配時にCFC株式簿価がゼロのままなので現行法を厳格に適用し100のみなし譲渡益が発生したとしても、米国株主法人側で合算している100を上限にこの譲渡益は減額処理することが認められるというものだ。この規定自体はヘルプフルなもので有難いけど、その前提は怖い。すなわち、期中の分配はやはり簿価を増額する前に起こったとされ、その時点の簿価を減額してゼロを割り込むとみなし譲渡益になるという取り扱いを間接的に確認していると読めるからだ。やっぱり今までもそう考えるべきだったのか、とゾクッと来る感じの規定になっている。

で、譲渡益を減額する場合、株式簿価ももちろん対応して減額が必要となる。これらの全ての簿価調整はCFC課税年度の期末時点で一気に発生したかのように取り扱われ、プラス・マイナス調整が混在する場合にはネット金額一本で行うこと、と規定されている。上の簡単な例でも簿価調整関係の動きは複数発生している。100の課税済留保所得が分配された時点で100の簿価減額が求められるが、その時点の簿価はゼロなので、100のみなし譲渡益を認識し簿価はゼロのままを維持する。12月31日時点で合算課税を基に簿価は100増額、そして100のみなし譲渡益課税の減額を行うことによる100のマイナス簿価調整。結局、ネットでゼロ調整が12月末に起こり、かつ分配時のみなし譲渡益も減額されてゼロになるという仕組み。

CFCが複数あり、他のCFCのマイナス留保所得でプラスを相殺しているケースはややこしい。これは以前にも何回も触れているけど、マイナスで相殺された金額も、実際には米国株主側で課税されてないにもかかわらず課税済留保所得に生まれ変わる一方、CFC株式の簿価はその分の増額はない。そんなマイナスで相殺された課税済留保所得を持つCFCが期中に分配を行った場合、みなし譲渡益の減額は、「留保所得一括課税の財務省規則最終化 (2)」で触れた簿価調整を選択をしているケースのみで認められるとしている。そうしないと合算年度の期末以降に分配した場合の取り扱いと整合性が失われてしまうからね。

留保所得一括課税もまだまだ本当はDeepできりがないけど、次回からはBEATに戻る。

Sunday, January 20, 2019

留保所得一括課税の財務省規則最終化 (3)

前回のポスティングでは、「CFC株式税務簿価の調整選択時の金額制限」にかかわる最終規則を詰めた。しつこいけど、これもCFC合算という新しい概念を起因とする歪にかかわる調整規則。この題材では昨日あれだけ書いたから、もういいかな、と思う反面、余りにDeepな世界なので、ついつい考え続けてしまう。NYCは週末雪という予報が出ていたので、外にも行けない環境を逆手に、家でミルクティーでも飲みながら考え続けようかな~、なんてチョッと贅沢な週末を思い描いていたんだけど、「降るぞ」って前評判が高いストームは大概空振りに終わるっていう例に漏れず、今回もマンハッタンではほぼ雪は降らず、代わりに冷たい氷雨が少し降って、それも終わって落ち着いている。まあ、数多い出張の飛行機のダイヤが乱れないのは助かるんだけど、予想してたようなWhite WeekendっぽいCozyな感じにはならず終い。東京の帰りに一瞬寄ったロサンゼルスも先週は雨が多く、新たなクロスボーダー課税を熟考するにはどこも好環境だったのかもね。

で、氷雨だったので雪ほど熟考に至らなかったけど、考え続けた結果を、氷雨レベルで軽くチョッと共有してみたい。みんなに嫌がられるのはもちろん覚悟の上で。

プラスCFCの株式簿価は高いに越したことはないことから、今回の懸念というか検討の主は、マイナスCFCの株式簿価をどう考えるかというニュアンスが強い。ただ、この点に関して財務省規則にはいくつか納税者フレンドリーな規則が入っている。まず、マイナスCFCが複数あり、プラスCFCの留保所得総額を相殺して余りあるケースでは、どのマイナスCFCのマイナス留保所得をいくら使用したかを米国株主側で特定できる仕組みになっている点。近々に売却が予想されるようなCFCの簿価は敢えて減らしたくないだろうし、簿価減額オプションを選択するケースでもそんなCFCにはできるだけ米国株主側で使用してしまったマイナス額を配賦しない、というオプションがあり得る。

次に、時価と簿価と留保所得の関係。各CFCの株式簿価プラスとマイナスを相殺するというのはあくまでも米国株主側における計算のメカニズムの話しなので、各CFCの価値が変わっている訳ではない。これは今後のGILTI課税も同様。ちなみにGILTIにかかわる簿価調整と課税済所得のルールは今回の留保所得一括課税にかかわる規則とは大きく異なるんで面白い。CFC毎に見ると実際には何も起こっていない状況なので、例えば留保所得一括課税の前段階で、一人の米国株主が、100の価値、留保所得も100、米国株主側で株式簿価がゼロのCFC、そしてゼロの価値、留保所得マイナス100、米国株主側の株式簿価が50のCFCを保有しているとする。その時点でプラスCFCの株式を譲渡すると、100のみなし配当扱い譲渡益が発生する。旧法では実際に配当しても100の配当所得となる。一方マイナスCFCを譲渡すると、50の譲渡損が発生する。譲渡損はキャピタルロスなので配当とは相殺できないとか、みなし配当にはFTCが可能とか、細かい点を除くとネットで50のプラスとなる。仮にマイナスCFCからDebt Financeに基づく分配が可能だとすると、留保所得(=E&P)はマイナスなので、配当に当る部分はなく、通常のSub Cの世界で、50の簿価を取り崩し、超過額があればみなし譲渡益になるはず。

留保所得一括課税では、100と100が相殺されるので、米国株主に課税はない。その時点で、プラスCFCの留保所得は全額「課税済み」(全額965(b) PIT)に生まれ変わり、マイナスCFCのマイナス留保所得には100のプラス調整が行われ、ゼロとなる。テクニカルにはプラスCFCのE&P100はそのままだけど、このE&Pは実質消えてしまったに近い。この時点でプラスCFCを譲渡すると、株式価値は基本変わらないので、100の譲渡益が出る。最終規則に基づくとこの100はみなし配当にはならない。マイナスCFCを譲渡すると、50の損失となる。ネットでは50のプラスが認識され、結果として一括課税の以前の状況と似ている。一括課税で米国株主は何も課税されていないことを考えると、前後で経済的な結果が似ているのは何となく正しい気がする。

で、次に選択をしたケース、しかも規則「案」の考え方に遡り、一旦「To-the-extent規定」を無視して簿価調整をしたとする。その結果、プラスCFCの株式簿価は100となり、マイナスCFCの簿価は50しかないから、みなし譲渡益が50発生する。その後、プラスCFCを譲渡すると、譲渡益はゼロ、マイナスCFCを譲渡するとやはり譲渡益はゼロとなり、蓋を開けてみると、やはり最終的に50のプラスが認識されている。

更に最終規則に規定される「To-the-extent規定」を取り込むと、マイナスCFCの簿価割れは禁止なので、50のみ減額となりマイナスCFCの簿価はゼロとなる。一方、プラスCFCの簿価増額も同額を上限とすることから、50となる。その直後に両社の株式を譲渡すると、プラスCFCに関して50の譲渡益、マイナスCFCではゼロの譲渡益となり、やはりネットではプラス50が認識されている。

そう考えると、どのシナリオでも算数的かつ長期的な経済効果は似ているように見える。もちろん実際には、将来的なCFC株式譲渡、どこからどれだけ米国に分配するか、分配の原資があるか、分配時の源泉税、FTCが取れるか、Capital Lossが想定される場合にはCapital Gainがあるか、その他、とても複雑かつ複合的な分析に基づいてどのオプションが各社にとってベストとなるかが決まる。どう考えても、選択した瞬間にみなし譲渡益が発生するようなオプションは選択するべきでないだろう。

財務省側の懸念として考えられるのは、マイナスCFCの100を利用して、プラスCFCの留保所得一括課税をシェルターした訳だから、そのマイナス100の恩典を直接・間接に部分的にでも同じ米国株主が再度、享受するようなことがないように、っていう損失の二重利用だろう。例えば、最初のシナリオで何の選択もしない場合、マイナスCFCの株式のみを譲渡すると、50の損失が出る。もし仮に同時にプラスCFC株式も譲渡すると100の譲渡益が出て、きれいにネット50のプラスとなるけど、そんなことは稀で、50の損失だけを認識してプラスCFCは今後長らく保有し続けるケースも十分に想定される。規則案の選択では、マイナスCFCに関していきなりみなし譲渡益が50認識されてしまい、プラスCFCの株式譲渡を行い、ゼロ譲渡益の恩典を享受するまで、納税者側から見ると辻褄が合わない。最終規則の考え方では、マイナスCFCの簿価をゼロとすることで、マイナスCFC株式譲渡の際の損失恩典は封じ込むことができる。これが最終規則で「To-the-extent規定」を認めた背景・バランス感覚なんだろうか。何もしてないのにみなし譲渡益が出るのはかわいそう、って思ってくれてる反面、損失の時間差も含めた二重利用は許したくない、っていう微妙なバランスをどこで見つけるか、っていうのはこの上なくアーティスティックな検討だ。

上の連結納税していない米国株主が一社で2社のみのCFCを保有しているという非現実的な単純例を見ただけでも、全ての局面で合理的となるパーフェクトルールを策定するのが不可能だということが分かる。現実の世界では100社以上のCFCを保有するケースは珍しくなく、各納税者の事実関係に基づき、変動要素が余りに多い。したがって、超複雑な検討を強いられることは火を見るよりも明らかで、みんなにとってパーフェクトとなるルールを策定するのは不可能。となると、ルールはどれだけ「不完全度合いが少ないか」という尺度に基づき、最終的な落としどころを見つけるしかなくなる。そのような「Close Call」というか、ギリギリの判断を短時間に強いられる中、財務省が公表する規則は実に思慮深い。法曹界・Big 4その他からの強力なインプットがあるとは言え、複雑な税法全体をDeepに理解していないとこんな規則策定できるもんじゃない。米国財務省の実力は凄い、って感心し続ける今日この頃でした。