Sunday, October 18, 2020

ピラー1・2ブループリント完成と目から鱗のUnited Nationsデジタル課税提案

ここ数週間、ネット上で「海賊版」コピーが流出していたBEPS 2.0のピラー1・2のブループリント最終版が10月8~9日のIF会議を経て正式公開された。公式バージョンも海賊版と同じで、相変わらず未解決な問題点が残っていると同時に、とてつもなく複雑な規定に仕上がった印象を受けた。次回から何回かに分けて解析しないとね。

それにしてもインターネットがあると海賊版(Bootleg)が直ぐに出回る恐ろしい世の中。ぜひ見てみたいものに瞬時にアクセスできる、っていう立場で考えると便利だけど、秘匿性の高いマターや守秘義務があるマテリアルを取り扱う者にとっては厄介。なんでもすぐにリークされ、白日の下に晒されることになるからね。

インターネットが普及してきた1990年台後半、こんなワールドワイドのネットワークがあれば、メインストリーム・メディアを迂回することができて、もう少しニュートラルな情報収集ができるようになるのかな、と考えてたことがあった。従来からのメインストリーム・メディアはジャーナリズムとは言え、基本ビジネスだから、各ネットワークや新聞がターゲットとしている視聴者プラットフォームに受けるように情報を加工(歪曲?)してあることないことをセンセーショナルに伝えるのが彼らの本業に近い。なんで、大手新聞とかで報道される記事は基本、加工済みのナラティブ、またはチョッと大げさに言えば創作に近い、くらいに考えて読んでおくのが無難。みんなも、自分が専門にしている分野の記事を新聞で読むことがあったら、偏ったViewがそれらしく記載されてるんで驚いた経験とかあるんじゃないかな。僕も、米国税務の記事とか読むと、例えば、GILTIのGILTI控除はループホールで大企業へのGoodiesみたいな記事が記載されてたりして、それはないでしょ、って思ったりするんだけど。最高裁の判決の報道の仕方も同様。

アメリカは憲法の修正条項1条(「First Amendment」)で、言論の自由が保障されている、って言われている。でもFirst Amendmentは連邦や州政府が法律を通じて宗教や言論を制限したり検閲したりすることを禁じる条項で、個人や大衆の行動に直接制限を与えるものではない。憲法で保障される権利とはいえ、無制限じゃないんで、当然判例に基づく制限やスコープ内での話しだけど、今日のアメリカで政府がFirst Amendmentを無視して変な法律を通したり、検閲を敢行するようなリスクは想定し難い。

一方、政府ではなく、一般市民の間の自主検閲というか、法律とは関係ないPeer Pressureはより強いし、自分の思想に反する言動は徹底的に糾弾・中傷する機会はインターネットの普及で逆に増えている。そんなこんなで、自由闊達に異なるViewにかかわる意見交換する環境は逆に以前より後退している感がある。

インフラとしてのインターネット、すなわちオプティカルケーブルやラウターそのものは、当然だけど、コンテンツを選んだりしない。だけど、結局一般人はサーチエンジン、Youtube、ツイッターとか大手ハイテク企業のサービスを介して情報収集・提供することになる。インターネットでは一見、どんな情報でも入手可能なように感じるけど、検索機能のアルゴリズム設定とか、特定ユーザーのビデオコンテンツをブロックしたりする裁量は、実質大手ハイテク企業が握っている。ということはハイテク企業の価値観に基づく情報・言論統制が敷かれていると同様の状況。ハイテク企業を取り巻くいろんな議論は、僕たちが気にしているデジタル・サービス課税よりも言論の自由にかかわる部分の方が国や世界への長期的なインパクトが大きい。結局、我々情報を読解する側の情報評価・識別能力がますます問われてしまう、ということだろうか。

デジタル・サービス課税(DST)

で、何の話しだったかっていうとOECDのピラー1・2のブループリント。正式に公表されたバージョンを見たら、先に海賊版で見たものと同じだったっていうことから、海賊版やインターネットの話しになったんでした。OECDのピラー1合意が緊急課題となっているのは、複数の国が「Unilateral」、すなわち一方的にデジタル取引にDSTを規定しているからだけど、このDST、大概のケースで「グロス」ベースなんで企業がネット所得を認識しているかどうかに関係なく課税が生じる。また「Unilateral」っていう用語に内包される含意は、条約の適用対象となる租税ではない、すなわちCovered Taxではないっていうことで、条約に基づく二重課税排除メカニズムが効かない。企業側から見るとネットで儲かってるかどうかにかかわらず課税されて二重課税の排除もないと単純な追加コスト。想定していたビジネスモデルに問題を引き起こす可能性がある。

でも、DSTって結局誰が負担することになるかっていう点は興味深い。結局DSTを課す国のベンダーに転嫁される可能性が高い。アマゾンの「Seller Central Website」によると英国の2%DSTやフランス、イタリーの3%DSTはSeller Feeに上乗せチャージされると規定されている。

で、制度が各国間で整合性がなく、利益があってもなくても課税が生じ、また二重課税排除メカニズムがない、っていうDSTの弊害を新たな国際法人税課税ルールを策定して解消しようというのがピラー1だ。これらの複雑な問題に対処すると同時に、多くの参加各国の思惑をできるだけ反映させようとしている間に、とてつもなく複雑な規定に仕上がってしまった感がある。OECDやG20の国ならともかく、発展途上国はピラー1や2に対応したり、執行したりできるんだろうか。

目から鱗のUN案

この前のポスティングで触れ始めたUnited Nationsのデジタル課税。その登場のタイミングが絶妙過ぎてグローバル・ポリティクスの真髄というか、大人の世界(?)を垣間見た気がした。これらの点は前回のポスティング「「デジタル課税」絶妙のタイミングでUnited Nations登場」を参照して欲しい。

United Nations案を見て驚愕するのがそのシンプリシティ。その気になれば即日実践可能な暫定措置を提案しているように見える。特にUnited Nationsが利益を代表している発展途上国にとっては、立派な規則でも実践可能か、また容易に税収に結びつくかどうか、っていう点が重要。

その意味でUnited Nationsのアプローチは世界のシステムをOvernightで変えようというような無謀な(?)なインセンティブは感じられず、いつかは5条のPEの定義にデジタルサービスを加える方向とはしながらも、当面はDSTを公認し、条約の一部に加えることで不確実性や二重課税の問題に対処しようとしている。条約が適用される租税となるので二重課税排除が可能となる。

なかなか賢いアプローチで、ピラー1にかかわる大量の検討を読んだ後だったので、目から鱗の提案だった。各国のDST対象はバラバラで多岐にわたるけど、共通ターゲットとして絞り込んでいくと要はオンライン広告が主になる。この時点で、伝統的な事業に対するデジタル課税は緊急課題ではない、っていう認識に至っているようだ。

8月5日に実際に公開されたUnited Nationsデジタル課税案はUnited Nationsモデル条約の12A条「Fee for Technical Services」の直下に、12B条「Income from Automated Digital Services」を新設している。12A条自体、ロイヤルティをカバーする12条のサブセットだけど、ロイヤルティには当たらない「Technical Services」にかかわる対価は、所得源泉地で源泉税を課してもいいという制度。PEがなくても源泉地課税を認めている点、ピラー1のAmount Aに通じる。この概念をそのまま自動化デジタルサービス(ADS)にかかわる支払い全般に適用することでスマートにDST対応しようとしている。

ADSにかかわる新設12B条そのものを語る前に、Technical Services Feeに対する源泉地課税を規定している12A条の先見性にチラッと触れておきたい。12A条は2017年にUnited Nationsのモデル条約に加えられている。12A条の追加の背景として、サービス収入はその受け手が支払い国にPEを持たない限り、受け手の居住地課税のみとなる点を指摘し、コミュニケーションテクノロジーの進化により、他国にPEを構築せずにハイエンドなサービスを提供することができるビジネスモデルには従来のPEに基づく課税は馴染まないとしている。まさしくOECDのオリジナルBEPSアクションプラン1やピラー1の論点だ。

Technical ServicesのFeeを無理やりロイヤルティと位置付けることができれば、従来の条約でも、条約レートに基づく源泉地課税が可能となる。ただ、現存のロイヤルティの定義ではTechnical Servicesに対する支払いをロイヤルティとして源泉地課税するのは無理なケースが多い。そこで12A条を規定して、ロイヤルティ同様にTechnical Servicesに対するFeeに源泉地課税を認めるというものだ。条約だから二国間で12Aを採択するかどうか交渉することができるし、また源泉税率を12条のロイヤルティと同じに設定することで、支払いをロイヤルティ部分とTechnical Services部分に区分けする必要もなくなる。条約内でグロスベースの源泉税を規定することで、利子や通常のロイヤルティに対する源泉税同様、外国税額控除を通じて二重課税を排除・軽減することが可能となる。

この背景で、さらに今回の12B条追加となる。12Aの延長・明確化措置としてTechnical Servicesにかかわる規定をADS Fee全般に適用している。12B条の設計は12A条のTechnical Servicesにかかわるものに類似していて、条約締結国が合意する%の源泉税を通じて源泉地課税が認められる。条約適用租税となることから外国税額控除を通じて二重課税の排除・軽減が可能な点も12A条と同様。

原則、支払いを行う主体が存在する国がADSの源泉地とみなされる。源泉地にPEが存在しない、または存在してもADSのFeeがPEに帰属しない、ケースが12B条が解決しようとしている問題となるので、源泉地にPEがありADS Feeが当PEに帰属する場合には、12B条の適用はなく、従来通り5条・7条でPE帰属事業所得として課税される。

12B条の規定が、12A条のTechnical Servicesにかかわる源泉税規定と大きく異なるのが、ネット申告課税の選択が設けられている点。United Nations言うところの「Qualified Profits」が申告課税対象になるんだけど、この算定法は注目に値する。すなわち、Qualified Profitsというのは、ADS Feeに多国籍企業グループの利益を乗じて、それにさらに30%を乗じた金額となる。ADSにかかわる信頼できるセグメント情報が存在する場合には、グループ全体の利益率の代わりにADSセグメントの利益率を適用することが認められる。いずれにしても、グループ利益率x30%が、ADS Fee源泉地に配賦される超過利益ということになる。OECDが苦労しているAmount Aの「Quantum」に相当する金額だ。簡単に30%とバッサリ決めてくれている。元々何の理論的な裏付けもないんだから、逆に30%とか決めてしまうのが正解かもね。ピラー1との比較で行くと、ピラー1は多国籍企業グループの利益が一定の利益率を超過する部分だけを参照し、さらにそこの上澄み何%かをAmount Aを通じた配賦対象利益としている。12B条ではこのような若干まどろっこしい感のあるステップは踏まずに、単純に利益の30%をグロスのADS Feeに乗じて配賦対象利益としている。良くも悪くも30%っていう数字は超過利益認定の試金石になってしまったね。

さすが発展途上国の声を代表してきたUnited Nationsの提案だけあって、シンプルだし、かつ市場国からしていると即源泉地課税できるっていうメリットがある。ということで、舞台も整ったのので次回はピラー1ブループリント。

Monday, September 28, 2020

「デジタル課税」絶妙のタイミングでUnited Nations登場

前回のポスティングでは、ユーザー国が言うところの「Fair Share」はいくらか、っていうピラー1が解決しようとしている根本的な問題に関して、ユーザー参加の価値の有無や、もし価値がある場合にはその適切な測定法に関して合理的な議論が尽くされる前に、恣意的に一律%が独り歩きして無理なタイミングでグローバルコンセンサスを取り付けようとしている点がピラー1の停滞の原因の一つではないか、っていう点に触れた。

そんな停滞感漂う中、国際機関の大御所、国連(United Nations)が満を持して、というか絶妙のタイミングで独自のデジタル課税案を公表している。

United Nationsには「UN Economic and Social Council (ECOSOC)」(「国連経済社会理事会」)の一部に「Committee of Experts on International Cooperation in Tax Matters」っていう国際税務専門委員会があり、1968年からクロスボーダー課税に関するグローバルの調和を促進してきた。最近は参照する頻度が減ってる感はあるけど、OECDや米国モデル同様、UNも独自のモデル条約を策定している。ECOSOCにしても国際税務委員会にしても、発展途上国の多くが理事国を形成してるから、当然それらの国の意見がより強く反映され易くなる。このUN専門委員会、本来ならグローバルのデジタル課税の議論に最適なフォーラムだけど、BEPS以降、OECDがクロスボーダー課税にかかわる世界の警察みたいな存在になりつつあり面白い展開だなと思ってことの進展ぶりを見守っていた。各国が主権国家でありながら、経済のデジタル化を鑑み、課税ポリシーや税率の決定権をOECDに献上してしまってもいいと判断しているんだったら、それはそれでいいんだけどね。

6月後半に開催されたUN専門委員会のバーチャル会議を経て8月5日にUNモデル条約の12条にひとつだけ規定を加える、っていうとてつもないシンプルな一撃で当面のデジタル課税論に解決を図っている。う~ん、長編のOECDブループリント読んだ後だけにそのシンプリシティに感動。もちろんシンプルなだけに不足面もあるけど、発展途上国が複雑なピラー1や2に対応するためのリソースを用意できるとは思えず、どっちにしてもユーザー参加の価値とかにかかわる強固なテクニカルな議論なしに課税ありきで、また当面は各国独自の「Unilateral」なDSTに調和を図るっていうメカニズムを模索してるんだったら、なるほど、こういう代替案もあり得るよね、って目から鱗が落ちる感じの斬新な提案だ。

この前からチラッと触れてるけど、United Nationsはここに来て急にデジタル課税に目覚めた訳ではない。BEPSのアクション1やBEPS 2.0の議論が進む中、実行可能性やグローバル・ポリティクスの観点からその内容を辛抱強く静観していたことだろう。United Nationsとしては一枚しかないJokerをいつ切り出すか、っていうタイミングを虎視眈々と狙っていたとも言える。千軍万馬いうか飽経風霜というか、裏の裏まで知り尽くした強者かつトリッキーなプレーヤーが混在するグローバル・ポリティクスにおいて、何事もタイミングが肝心なのは百戦錬磨のUnited Nationsは百も承知。時期尚早に登場すると、OECDの議論にかき消され存在感を出せない一方で、後手に回るとルール策定に関与できないもんね。

United Nationsのアプローチは、ピラー1との比較において、クロスボーダー課税制度そのものに変革をもたらすというような大胆な意図は感じられない。そんなRevolutionは短期には達成できない、という経験に基づき、その気になれば今日から即実践可能な暫定措置を代替案として提案しているように見える。特に後進国にとって実践可能かどうかという点は実務的に重要な課題。

で、長期的には5条のPEの定義にデジタルサービスを加える方向としながら、当面はDST紛いの税金を公認し、条約の一部に加えることで不確実性や二重課税の問題に対処しようとしている。条約でカバーするんで23条を通じてFTCが取れる点も自然に明確になる。当初は2017年UNモデル条約に規定される源泉税条項12A条の「Technical Services」にオンライン広告にかかわる支払いも対象内と解釈することで文言の修正もなく、DSTに調和をもたらすことができる、みたいな議論もあった。

これは賢いアプローチで、各国のDST対象はバラバラで多岐にわたるけど、共通ターゲットとして絞り込んでいくとオンライン広告が主になる。United Nationsの感覚だと、現時点で他のデジタル経済、増してや伝統的な事業に対する課税は緊急課題ではない、っていう認識があるんだろう。PEの定義変更やオンライン広告以外の取引にかかわるGame Changer的な改定は時間を掛けて要検討と位置付けている。GoogleやFacebookの収入源は言うまでもなくオンライン広告だし、Amazonの収益に占めるオンライン広告の比率も高まってるとして、Google Ireland Ltd.がフランスと係争した際に開示されているビジネスモデルをベースに、B2B部分のサービスFeeに源泉税を課せば、当面は皆落ち着くんじゃない?的なアプローチが模索されていた。

そんなアプローチ下では、既存の 12A自体はそのままで、オンライン広告のFeeはテクニカルサービスに含まれるとすればそれで済む話しと言える。面倒な売上基準やAmount AとALPの超過利益との相殺とかがないので極めてシンプルだ。このシンプルさは偶然ではなく、ピラー1の内容を精査し、発展途上国の率直な意見を取り入れた上でのアンチテーゼ的なものと考えられる。

で、8月5日に実際に公開されたドラフトは12A条「Fee for Technical Services」をそのまま使用するのではなく、その直後に12B条「Income from Automated Digital Services」を新設している。12A条自体、ロイヤルティをカバーする12条のサブセットだけど、ロイヤルティには当たらない「テクニカルサービス」にかかわる対価は、事業所得に当たると考えられるがPE規定をオーバライドして所得源泉地で源泉税を課してもいいという制度。PEがなくても源泉地課税を認めている点、ピラー1に通じるかなり先進的な規定だ。新設12B条では、対象をオンライン広告に限定するのではっていう前評判とは異なり、自動化デジタルサービス(ADS)にかかわる支払い全般を対象としている。

次回はこの12条Bに関してもう少し。

Saturday, September 19, 2020

OECDもピラー1早期合意ギブアップ。原因はトランプそれともピラー1のコンセプト欠如?

前回、NYCの話しとかで興奮してしまい、結局BEATのAggregateグループの話しは最初の部分で終わっってしまった。そんな矢先、ピラー1でチョッとアップデートしたいニュースがあるので今回は特番。

OECDのBEPS 2.0で提案されてる2本の柱の1本となるピラー1は、デジタル経済下でのクロスボーダー課税の新基準作りっていうBEPS 2.0の目的そのものの話しで、ピラー2はどちらというとオマケで議論されてる感じで、ピラー1こそが屋台骨だ。柱が2本しかない構造で、そのうち1本の柱がなくなってしまったら普通の建物だったら骨組みにならない。なくなる柱が主たる柱だとしたらなおさらだ。

で、そんな建築の世界だったら大変な出来事が、BEPS 2.0に関しても進行中。BEPS 2.0の屋台骨ピラー1の先行きが徐々に怪しくなっていく様子、そしてついに米国が引導を渡すに至る経緯は、ここ一年くらいのポスティング「DCからのお手紙でOECDデジタル課税・ピラー1に早くも暗雲?」「BEPS 2.0ピラー1の終焉」等で触れてるんで、興味があったら時系列的にその変遷を読んでみて欲しい。

そんな逆風にめげることなく、OECDはピラー1の合意に向けてブループリント・ドラフトをIF各国に共有したり、チョッと痛々しい感じもするんだけど、自らに活を入れるかのように手綱を緩めぜずにテクニカル面での設計に驀進していた。疑ってかかるような意地悪な見方をすると、チョッとスピンがかったPRを繰り返してるようにも感じられたけど、2020年も9月後半というこのタイミングで、あんまりいつまでも非現実的なタイムラインやプランに固執していてもいつかは万事休して信用問題にも発展し兼ねず、「近々に成功する可能性は約束されてないんで、皆さん勘違いしないで下さいね~」みたいなExpectationの調整が、いずれ行われるはずと思い、状況を注視していた。特に10月8日に次のIF全体会議の開催が控えてるんで、その前後の動向は特に気になるところ。

そんな折に登場してきたのが他でもないパスカル・サンタマン氏。OECD租税政策・税務行政センター局長ご本人だ。世界中の政府がコロナ禍でロックダウンという政策を取る直前、神楽坂で開催された会食でご一緒させて頂けて身に余る光栄だったけど、BEPSをここまで世界に浸透させただけのことはあるエネルギッシュかつユーモア溢れるウォリアーだ。そんなパスカル氏が、レマン湖の畔に位置し、豊かな自然、ローマ時代からの歴史、文化の香り漂う古都ローザンヌの名門校のローザンヌ大学のクロスボーダー課税ポリシーイベントで先週9月15日に「新しいクロスボーダー課税ルールを世界で合意しようとしてるんだけど、皆さんもご存じの通り、トランプ大統領は訳わかんない輩で・・・」と切り出してExpectation制御モード。「交渉再開を米国選挙後まで待ってたら、その間にDSTが台頭してくることになるし、Bidenになったとしても交渉が進む保証もないし」とチョッと愚痴っぽいニュアンス。

え~、ピラー1の成否もトランプ大統領次第だったの?ここ4年間、米国のメインストリーム・メディアは「世の中で起こっている諸悪の根源は全てトランプ大統領」って、まるで何かに取りつかれたかのように血走った目で連呼し続けてきたけど、パスカル氏もメインストリーム・メディアの見過ぎなんだろうか(苦笑)。この手の発言は大学のオーディエンスとかには受けるだろうから、それを見越してのOvertureだったのかもしれない。実際にトランプ大統領が世界の諸悪のうち、どの悪に関して根源なのか、っていう点は各人の思想等で判断が異なるだろうけど、ピラー1に関する限りどうだろうか。確かにフランスがDSTを掛けるんだったら、チーズやワインに懲罰的関税を課すぞ、とかフランスとトランプ大統領は喧嘩が絶えないけどね。でも、ピラー1の行き詰まりは、どちらかというと政治的に早期コンセンサスをグローバルで取り付けるっていう結果を優先しようとするがあまり、現時点のピラー1にはコンセプト的な規律が欠けてて納得感がない、っていう致命的な欠点の方が大きいのでは?

米国がピラー1に乗り気でないのはトランプ大統領の気まぐれのせいではなく、ピラー1が課税しようとしている米国ハイテク企業からしてみると、自社の超過利益や企業価値に市場国のユーザー参加を源泉としている部分があるのかないのか、あるとしてもそれがいか程のものなのか、っていう根本的な前提や議論が尽くされる前に、安易に恣意的な%だけ決められてしまうのは釈然としない、っていう点が気になるのでは?このままなし崩し的にあまり意味のない%だけ決まり、超過利益を世界中にばらまくような仕組みに合意されてしまったりすると、そんな制度はSustainabilityに欠ける。

この手の話しで示唆に富んでいるのがUberがOECDに提出しているコメント。コメントを作成したUberのVP Finance Tax & AccountingであるFrancois Chadwickは専門誌への投稿とかで更に深堀したコメントを出している。Uberはピラー1ばかりでなくピラー2にも洞察に富むコメントを出しているからOECDのウェブサイトで見てみると面白い。

ピラー1に関して2019年3月に提出したコメントでUberが疑問を呈している点のひとつに、ユーザー参加が企業価値に貢献しているかどうかは意見が分かれるところだし、仮に何らかの貢献があるとしても一律の%で価値を認定してしまうのは非現実的、というものがある。確かに、デジタル企業というとインターネットで人手を介さずに安易に取引を行って濡れ手に粟みたいに簡単に莫大な利益を認識できる、っていう誤ったイメージがあるかもしれないけど、デジタル企業のビジネスモデルを可能にしている、また厳しい競争に勝ち抜くための価値のあるユニークなIPの開発とかIPを活用して事業を遂行する際の機能一般は結局は広範に人間の手に頼っている。従来、超過利益をそれらの機能を持つ場所で認識し、単なる市場国には超過利益を配賦していないのはまさにこの理由。IPの開発や事業遂行には失敗例も多く、多くのスタートアップが消えて行くけど、それらのリスクや損失を負担しているのも市場国ではない。

その後、2019年11月のコメントでは市場国に配賦される超過利益は少額(Modest)に留めるべきで、超過利益というものは主にIPのDEMPEを源泉としていることから、DEPMEの場所に主たる課税権があり続けるべき、としている。人の移動手段を根本的に変革させてしまったデジタル企業張本人Uberによるコメントだけに、「自国にFair Shareのタックスを支払え」と何がFair Shareかという点に関して理論武装が弱いまま主張し続ける市場国政府との対比で、迫力満点で重みがある。この議論、日本企業の多くも同感ではないだろうか。

Francois Chadwickが専門誌に寄稿している「デジタル時代の新クロスボーダー課税」という論文では、かなり具体的にピラー1のUnified Frameworkに代わる新クロスボーダー課税システムを提案している。基本的にはModified Residual Profit Split (MRPS) methodを適用するとしながらも、PSに付きまとう複雑性を排除し、デジタル時代に対応するようにアップグレードするというもの。そこには詳細な経済分析やUberでの実績に裏付けられた興味深い分析が満載されている。ここでその全てを解説する訳にはいかないんで残念だけど、ザックリ言うと、超過利益をProduct Intangible Profit(「PIP」)とMarketing Intangible Profit(「MIP」)に分けて、MIPをさらにDEMPEに帰する部分とユーザー参加を含む外的要因に帰する部分に分けるというもの。超過利益全体から研究開発の度合いからはじき出される%でPIPをを取り出す。そして残った部分をMIPとし、さらにそこからDEMPEを基とする金額を除き、残った金額が市場国配賦対象となる。Uberの実績からMIPのうち80%はDEMPEに帰するというデータがあるらしい。となると、超過利益からPIPを排除してMIPに分け、さらにその20%だけがAmount A同様となり市場国に配賦対象ってことになる。Amount Aが超過利益の一部のさらに上澄み部分だけになってるのに何となく似てるけどね。Uberの数字を使うべきかどうかという話しではなく、このようにユーザー参加の価値をビジネスモデル別にきちんと検証することなく、コンセンサス作りに邁進している点こそピラー1が暗礁に乗り上げてる大きな理由ではないだろうか。

これらのピラー1の展開、特にここ数か月のピラー1の弱体ぶりを冷徹に観察しているに違いないもう一つの国際機関がある。国連、United Nationsだ。以前、本来発展途上国の代弁者たるべきUNがモタモタしてる間に、OECDがIF大連合を形成し、クロスボーダー課税に関しては国連っぽいノリの機能を横取り(?)しちゃっててチョッと不思議だよね、って「BEPS 2.0ピラー1の終焉」でチラッと触れたけど、UNはここに来て急に絶妙のタイミングでデジタル課税議論にリエントリーしスパートをかけている。このタイミング、もちろん偶然ではない。グローバルのいろんな利権争いは海千山千のプレーヤーがしのぎを削っているってこと。このUNの登場は面白いので次回のポスティングでチラッと触れておきたい。

なかなかBEATのAggregateグループの話しが終わらなくゴメン。最高裁判事のNotorious RBGとして親しまれてきた法曹界の巨匠Ginsburgが選挙まで一か月強のこのタイミングで他界してしまったり、世の中いろいろあり過ぎ。

Sunday, September 13, 2020

BEAT 2020年最終規則 (3)

NYCはここ数週間でめっきり秋めいてきたけど、南カリフォルニア、特にロサンゼルスの北西部っぽいところに位置するValley辺りは相当厳しい残暑に見舞われてる、って報道されている。Valleyって、MDRから405で渋滞さえなければ15分から20分もあれば着く距離。405と101が交差するSherman Oaks辺りだったら距離は20マイルもない。ただ、午前3時とかにドライブするんだったら理論通り15分で着くかもしれないけど、日中のSepulveda Pass、特にコロナ前は、渋滞が激しく、通り抜けるのに平気で1時間以上掛かることも多い。MDRから見てそんな距離に位置するValleyだけど、MDRが海岸沿いにある一方、Valleyは内陸に位置してその名の通り盆地みたいな地形なので、普段からValleyの気温はMDRと比較して20~30度(CじゃなくてFだからね)は高い傾向にある。そんなValleyで記録的っていうのは相当暑いんだろう。

一方のNYCは朝晩はすっかり涼しくなり、早朝にEast River沿い走ったりするにはベストな気候。でもそんな気候に突入したタイミングで、ようやく州知事のお許しが出てジムがリオープン。アパートの29階にあるジムも約6か月ぶりにオープンし、NYC自宅アパートのジムでワークアウトができるようになった。3月以降、MDRその他、NYC外の場所に居る日はジムを利用した経緯はあるけど、こっちに居る間は毎朝、NYCの狭いアパートで簡単なワークアウトした後、外を走る毎日だった。普段、トレッドミルでしか走ったことなくて、最初は外に降りていくのがチョッと面倒だったんだけど、外走ってみるとトレッドミルよりMindにいいというか、心の浄化というか、日本語でベストな表現が見つからないけど、英語で言うところの「Cathartic」、つまりEmotionally Cleansingなんだなってことが実感できた。また、同じ1マイルでも外の方が体力を消耗するように感じられた。トレッドミルに戻ってみて、実は外では自然に速いスピードを出してたことに気づき、トレッドミルのスピードも0.5マイルくらいスピードアップして走れるようになった。ロックダウン中にいろいろあったけど、せめてこんな効能でも見つけないとね。

で、先週からさっそく早朝ジム三昧になったんだけど、前と違って人数制限があるんで前もってApp使って予約したり、入る前に体温測定が義務付けられたり、NY州の規定で走る時もマスク着用がMustだったり、っていう諸々の要件を充たしてようやくワークアウトに漕ぎつけることができる。ワークアウト中もマスクね。結構なスピードでトレッドミル走ったりするとチョッと息苦しくて、結構暑いんだけど、まあリオープンしてくれただけ有難いと思わないとね。物事全て相対的。NYCにあるジムのリオープンは他州よりかなり遅く、しかもキャパの33%っていう制限付き。その間に事業継続が困難になってしまったジムも多いだろう。New York Sports Clubは今週にも破産法申請って噂。

レストランも未だに屋外以外はDining禁止、っていう点からもわかるようにNYCの経済再始動は全米でも遅い。そんなこんなの数か月、ここに来て肌で感じるNYCは、街の劣化というか住みやすさの低下が著しい。市長がBloombergからDe Blasioに変わった後から、ミッドタウンでは、浮浪者が増えたりして公園とかの治安は全体に低下気味だったけど、それでもコロナ前はNYCの好調な経済に支えられて日常の生活に影響を感じることはなかった。もちろん、Bloomberg時代の整然とした感じが懐かしくはあったけど。それがここにきて最悪の状態に。コロナでオフィスが閉鎖されているので街にオフィスワーカーが不在だし、コロナ感染の懸念から囚人を刑務所から解放したり、保釈金制度を改定して逮捕された被疑者の留置が困難になりそのまま釈放されたり、マンハッタンの住宅地に位置するホテル複数を市が借り切ってドラッグ常習者や浮浪者に提供したり、略奪や暴動の爪痕があちこちに残っていたり、Public Spaceは昼間から浮浪者のたまり場になっているところもあり、道でトイレしたり、ドラッグしたり、犯罪も増えててチョッと普通の家族が安心して生活したり、オフィスワーカーが仕事しに戻って来るには程遠い環境に急変しつつある。そんな環境に耐えかねて結構な住人がNYCから脱出しているって聞くし、実際に家賃は下がり(それでも法外だけどね)、Monthlyのパーキング契約が枯渇してるっていう話し。

10月からは屋外だけでなく、IndoorのDiningも25%キャパまでOKとか、徐々に経済は始動しつつあるのはそうなんだけど、多くのビジネスにとってはチョッと遅すぎるし、その間に破綻して2度とNYCには戻ってこないビジネスも増えつつある。日本でもお馴染みのEric Kayserのパン屋Maison Kayserは、3月にNYCの全店舗をいち早くCloseしてしまい、その後も全然リオープンする気配がないのでなんか怪しいなと思ってたけど、先週、破産法を申請してNYC16店舗全店閉鎖するらしい。え~、ショック。もちろん、SOHOとかまでわざわざ出かけて行って、店の前に並んだりすれば美味しいパンにあり付けるかもしれないけど、そんなことしないでもミッドタウンの近所にたくさんあるMaison Kayserで気軽においしいBaguette、ブリオッシュ、Pullman Loafとか買えてたのに。ブリオッシュに関しては昔のポスティングで触れたけど、小さいころからの思い入れがあり、敢えて多く接種しないCarbを取るんだったらMaison Kayserのブリオッシュに優先権を持たせてたんだけどね。大ショック。ミッドタウンでどこかまともなブリオッシュとかパン売ってるとこ見つけなきゃ。Éclairのオーナーおじさんに近所のよしみでお願いして前やってたみたいに特別に焼いてもらうしかないかも。

そんなNYCの惨状を見かねて、160社以上の著名なビジネスで構成される「Partnership for NYC」がDe Blasioに書簡を送りつけた。早急にNYCのワーカーや住民の安全・住みやすさを改善しない限り、こんな状況ではNYCのオフィスには人は戻せない、事業も行えない、と警告している。De Blasioは大手ビジネスや真面目に働いて高額の市所得税を支払っている住民を敵視する傾向にあり、「あいつらの手にお金があるのはおかしい(「the money is in the wrong hands」)」とか言ってたから、対策としてはさらに多くの税金を課すことくらいが関の山だろうか。せっかく、GiulianiとBloombergが20年かけて世界でも最も安全な街にトランスフォームしてくれたのに、また80年代のNYCみたいになってしまうんだとしたら困ったこと。思想はともかく、基本的な安全や生活環境が保障されないと街の繁栄はありえないという大基本を理解して市政を司ってもらわないといけない。その点、同じ民主党でも州知事のCuomoはもう少し現実的だけどね。

実はNYCに限らず、カリフォルニアのMDRの近所も結構荒んだエリアが増えたように感じる。Mar VistaからVenice Beach方面にRoseをドライブした際、Marine Park沿いの住宅地にテントが並んでる姿はチョッと驚きだった。

そんなショックを和らげるには、財務省規則にフォーカスするのが一番(?)。前回、前々回と9月頭に公表された2020年BEAT最終規則に関して触れてきたので、今回は、中でも日本企業にも関心が高いと思われれる「Aggregateグループ合算計算」にフォーカスしたい。っていうかする予定だった。

前回のポスティングに書いた通り、Aggregateグループっていう概念は、BEATミニマム税の計算そのものというより、入り口のBEATミニマム税を計算しないといけないBEAT適用法人になるかどうかの判断時に関係してくるもの。すなわち、売上基準とBE%基準の算定を個々の法人や連結納税グループ単位ではなく、Aggregateグループ単位で行う、っていう規則。BE%に関しては、NOLのうち何%がBEAT計算時の加算額になるか、とかにも使用するので、必ずしも適用法人になるかどうかだけに限られたインパクトではないけどね。

Aggregateグループの構成自体、パートナーシップが絡んでたり、Fundだったりすると、構成メンバーの特定にかなりの検討を要するけど、ここでは日本企業向けということで、グローバルで50%超の資本関係にある法人、と敢えて簡単に定義しておく。この50%超のグループ法人のうち、米国法人と外国法人のECI(条約国のケースはPE帰属所得)部分を「単独法人」かのように取り扱って売上基準とBE%基準を算定することになる。

NYCの話しとかやたら興奮してしまったので、肝心のここからは次回。本題が短くてゴメン。

Saturday, September 5, 2020

BEAT 2020年最終規則 (2)

前回のポスティングで、先週公表された2020年のBEAT「新」最終規則に関して触れ始めた。BEATの計算にかかわる大概のルールは2019年最終規則で既にカバーされているので、今回の2020年最終規則はどちらかというと「ニッチ」っぽい数点にフォーカスされている。具体的には、グループ合算計算、損金算入自己否認、パートナーシップを介したBase Erosion Paymentの考え方の確認、特定の乱用防止規定、にかかわる詳細規定。

損金算入の自己否認に関しては以前の「BEAT財務省2019年「新」規則案(損金算入自己否認)(2)」である程度詳しく触れた提案内容のまま最終化されているのでそちらを見て頂くとして、今回はグループ合算計算に関して少し触れてみたい。ちなみに損金算入自己否認に関して一言だけコメントしておくと、10%のBEATミニマム税を節約するために通常法人税で21%の税効果がある損金算入をなんでわざわざ否認するの?、っていう質問をたまに受ける。この点はNOLとの絡みで期せずしてBEATミニマム税が出てしまうことがあるとか、BEATミニマム税の計算時には外国税額控除が認められないって点が大きい。特に外国税額控除に関しては、TCJA後の米国クロスボーダー課税の世界では、世界中のCFC所得を合算しネットで10.5%支払う税額を、外国税額控除で減少させるっていう設計だから、外国税額控除がなくなってしまうと例え10%の税率でもBEATミニマム税が巨額になることがある。それなら多少の費用を自己否認して21%支払っても、そもそもBEAT適用法人でなくなるのであればそっちの方が断然得策、っていう話しだ。

で、今日のポスティングのテーマとなるグループ合算計算だけど、これもBEAT適用法人になるかどうかの話しに密接にリンクしてる、っていうかその話しそのもの。BEATはその立法趣旨的に、ターゲットとなる納税者のプロファイルは、外国関連者への支出に基づく費用控除がある程度あって、サイズが大きめの多国籍企業となる。このプロファイルに合致する法人を機械的に抽出するため、二つの基準値が法律に規定されていて、それらに達してしまえばBEAT適用法人だし、達していなければBEATの適用自体がない。また、BEAT適用法人になったとしても、BEATミニマム税を支払うことになるかどうかは実際の計算次第。実際に計算してマテリアルなBEATミニマム税が想定される場合には、そもそも適用法人でなくなってしまえば実害ナシということになる。なので、損金算入の自己否認とかいう通常では考え難い発想が登場する。

このテストは機械的な点に注意。BEAT、すなわちBase Erosion Anti-Abuse Taxっていう条文タイトルから、「私はBase Erosionするような意図は一切ありません」みたいなケースにBEATが適用されるのは筋違い、というようなポリシー的な理屈を捏ねたくなるケースもあるけど、納税者の意図はBEAT適用有無に一切関係ない。税法上、条文タイトルは法的効果を持たないしね。

で、誰がBEAT適用法人になるかというと、3つ条件がある。

まず「Corporation」であること。必ずしも米国法人である必要はなく、外国法人もBEAT適用法人になり得るけど、申告法人税の話しだから、ECIがあったり、日本みたいに条約締結国の法人でLOBを満たす場合には、米国PE帰属所得が存在するケースのみ潜在的にBEATとの絡みがある。また、CorporationでもRIC、REIT、S Corpは除外される。Corporationじゃないパートナーシップは直接BEAT適用納税者にはならないけど、パートナーシップの法人パートナーは、パートナーシップ内の取引の自己持分を全て加味してBEATを検討しないといけない。法人がらみの非課税取引、Section 351や332、適格組織再編に基づく資産移管は2019年の最終規則時に財務省の英断(?)でBase Erosion Paymentの定義から除外されてるけど、パートナーシップに関してはそんなカーブアウトが一切存在しない。純粋なAggregateコンセプトで考えるので、Section 721や731に基づく非課税出資や分配時にも常にBEATの影響を検討しないといけない。パートナーシップとBEATの話しはここ1年くらい、そのうちどこかで特集しなきゃ、っていうプレッシャーが夢に出てくる(?)くらいだけど、本当にそのうちね。

で、BEAT適用法人の条件だけど、次に前年までの3年間平均総収入、すなわちCOGSや費用を引く前の売上が$500Mであること、っていう売上基準。返品があったり、固定資産の譲渡があったり、すると売上額の認定自体、結構テクニカルで油断大敵だけどね。

そして3つめの条件がBase Erosion%(「BE%」)が3%以上っていうBE%基準。金融機関は特別に2%。売上基準やBE%基準のベーシックなところ、例えばBE%が何かとか、は規則案時にアップしたポスティングで結構触れているので、「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(2)」等を見て復習していただき、ここでは本題のグループ合算計算にフォーカスする。

以前からさんざん触れてる点だけど、売上基準とBE%基準の算定は「Aggregateグループ」という50%超の資本関係にある関連者を一人の納税者としてみなして行うこと、っていう合算要件がある。ここで重要なのは、BEATの計算そのものは各納税者、または連結納税グループはグループ単位で行う点。グループ合算計算は、あくまでも売上基準とBE%の計算法のみにかかわる要件で、すなわちBEAT適用法人になるかどうかだけは、Aggregateグループ単位で決めて下さい、というものだ。自社のBase Erosion Benefitや売上が少なくても、Aggregateグループ合算で基準値に達する場合には問答無用にBEAT適用法人となり、その上で、個社レベルでBEATミニマム税を計算することになる。この合算の計算は「一人の納税者」というフィクションの適用法とか、これだけでもとてつもなく複雑だけど、ここでは50%超のグループ法人のうち、米国法人とECI(条約国のケースはPE帰属所得)を持つ外国法人の数字を合算して売上基準やBE%基準を算定するとだけ覚えておいて欲しい。

2020年最終規則では、計算方法に関して困難が生じがちな特定の事実関係複数に関して、グループ合算計算時に適用するべきルールを規定してる。大別すると、グループ内のメンバー法人が異なる課税年度を持つ場合、短期課税年度が存在する場合、グループ内メンバー法人がグループに新規加入したり、グループから離脱する場合、支出(Base Erosion Payment)のタイミングと費用控除(Base Erosion Benefit)のタイミングに差異があり、費用控除時点で支出時点とは異なるグループに属してしまっている場合、にかかわる詳細なルールが規定されている。

ここまで書いたところで、今日のNYCは南カリフォルニア顔負けの気持ちのいいお天気なので、チョッと出かけることにします。次回はグループ合算計算の各論点を順番に紐解いていく予定。

Friday, September 4, 2020

BEAT 2020年最終規則

前回のポスティングではOECDピラー1・ブループリント・ドラフトの話しに一区切り付いたので、次のテーマはGILTIの高税率控除かな、ってところで終わっていた。ところが、その後も財務省のTCJA規則攻撃が絶え間なく続き、Section 163(j)の最終規則にかかわる早期適用ルールの明確化、そしてさらに2019年にBEAT規則が最終化された際に同時公表されていた規則案が最終化された。

Section 163(j)の最終規則早期適用の文言アップデートは、もともと7月に公表された際に規則の文言が分かり難くて、2021年以前の課税年度に認められる早期適用を選択する際、2018年以降全ての課税年度に早期適用が強制されるのか、単年毎に選択ができるのか、若干クリアでなかった点の確認。全課税年度に強制適用だとすると、2020年に最終規則の早期適用を選択する場合、2018年の申告書を修正申告しないといけいないの?っていうような訳の分からない話しになっていて物議を醸していたんだけど、結局、そんな必要はなく、各課税年度毎に早期適用できるっていう普通というか、めでたい結果となった。2021年からは強制適用だけど、これらは財務省規則の規定適用タイミングの話しで、言うまでもないけどsection 163(j)の法律そのものは2018年から適用で、その点は変わらない。

次にBEAT最終規則。BEATにかかわる財務省規則の沿革はチョッと込み入ってるんでここで簡単におさらいしておく。まず、2018年12月13日に規則案が公表され、これをたたき台に2019年12月6日に最終規則が公表されている。双方の内容は各々「BEAT財務省規則案」「BEAT財務省最終規則」シリーズで触れているので、詳細はそちらを参照して欲しい。

で、BEAT計算法とか大概の部分は2019年12月の最終規則でカバーされてるんだけど、実は最終規則と同時に新たな規則案が公表されていた。この2019年規則案は、もともと2018年12月の規則案では触れられていなかった新たな検討事項を新規提案する形で構成され、納税者からコメントを募ったりしてたんだけど、この度、この2019年規則案が最終化されている。2019年最終規則と区別するために、今回最終化された規則は2020年最終規則って呼ぶことにする。日本企業的に、BEATは気になるところだろうから、GILTI高税率除外規定の前にチラッと触れておく。

BEATの仕組みは今更繰り返すまでもないけど、米国外関連者への支払い(Base Erosion Payment)に基づく費用控除(Base Erosion Benefit)を否認して再計算する修正課税所得に10%(2026年からは12.5%)という、通常の法人税率21%より低い税率をかけて、そちらが高ければ超過額をBEATミニマム税として支払うというもの。AMTに似てるけど、BEATミニマム税は一旦支払うと将来にクレジットがあったり、還付されたりしない払いきりとなる点AMTとは異なるので要注意だ。

2020年最終規則は大別して、グループ合算計算、損金算入自己否認、パートナーシップを介したBase Erosion Paymentの考え方の確認、法人組織再編や適格出資等を通じて外国関連者から受け取る資産の償却費用をBase Erosion Benefitから除外する規定を利用して直前に対象資産の税務簿価をステップアップさせたりする乱用防止規定、で構成されている。損金算入自己否認に関しては、2019年に規則案として提案された際に「BEAT財務省2019年「新」規則案(損金算入自己否認)」で2回にわたり特集しているので、そちらをみて欲しい。損金算入自己否認は面白いコンセプトだけど大概において規則案から変更はないので、次回、グループ合算計算に関する規定にチラッと触れて、GILTIにMove onしたい。

Thursday, September 3, 2020

Newsweekにブログが載りました!

このブログではオタクな米国税務にフォーカスしてるんだけど、もう少し広範なアメリカ一般の話しに関してNewsweek日本版にオープンした「World Voice」に記事を載せて頂ける運びとなりました。興味があったらぜひ覗いてみて下さい。月に2~3回、70年代のロックミュージック考現学とかに脱線しないよう注意しながらアップしていきます。

リンクは「タックス・法律の視点から見る今のアメリカ」です。

こちらの「専門家のための・・」では今後もGILTIその他米国クロスボーダー課税をDeepに連載していきますので、こちらも引き続きよろしく。