Sunday, October 13, 2019

OECDデジタル課税と米国税法改正

つい先日、10月前半にOECDがここ一年弱取り組んできたデジタル課税にかかわる「Secretarial Proposal」を公開した。日本でも大きく報道され議論を呼んでいると思うけど、このProposalの対象となるピラー1はデジタル化する経済下での新たな国際課税ルールの構築、すなわち物理的プレゼンスなしでも課税、その際にどのように各国に利益を配賦するべきか、のグローバル・コンセンサス作りを目的としている。米国大手ハイテクをどのように各国が課税して、良くメディアが使うフレーズである「GAFA課税逃れ」に網を掛けるか、そして各国税務当局の目から見た「Fair Share」のタックスを支払わせるか、っていうレトリックから始まっている議論。今回のProposalでは直接カバーされていないピラー2はデジタル課税と直接的な関係は低いように見えるけど、米国税制改正で導入された新たなクロスボーダー課税であるGILTIやBEATに触発された切り口の提案。GAFA等の米国企業のイノベーションは米国で構築されている点、元来から米国企業が合法的なクロスボーダー・タックスプラニング(すなわちBase Erosion)に熱心に取り組んできた点、そして世界最高の法人税率とWW課税とは言えSub F以外は永遠にDeferralが可能な税制、等諸々の独特な背景があり、GILTI、FDII、BEAT、Anti-Hybrid、(新)163(j)、税率引き下げ、を複合的に組み合わせて手を打ったのが米国税制改正。この一部を借用するような形で、OECDのピラー2では、米国の立法趣旨とは異なる切口で、各国が法人税率をどんどん下げたりするのはその国の勝手だけど、そんなことしても、本店所在地で差額のタックスを課したり、低税率国にある関連会社に費用を支払っても損金算入できない、とすることで低税率化のトレンドを無意味にする効果を達成しようとしているようなイメージを受ける。

各論には賛否両論あると思うけど、今後の国際課税ルールに関してグローバルで原則的なコンセンサスを得ないといけないっていうのはその通りで、そのためにOECDがInclusiveに頑張っている中での「Secretarial Proposal」。企業側もとにかく「予見可能性」を高めてもらいたい訳だからグローバル・コンセンサスは基本ウェルカムなはず。問題はそのようなコンセンサスは幻想的とまでは言わないまでも、玉石混淆の世界では達成がとても難しいという点だろう。

まず第一に、忘れてはいけないのはこの「Secretarial Proposal」の位置づけ。これで世界が終わっちゃったり、各国が法律を制定するというものではなく、今後、関係諸国と調整を進めるためのステージ作りと考えるといいだろう。決してテクニカルな部分を詳細に規定するような意図はなく、むしろポリティカルにグローバルコン・センサスを取り付ける前提を提示しているものと言える。

OECDがアグレッシブなタイムスケジュールで事を推し進めている背景には、さっさとグローバル・コンセンサスを取り付けないと、セッカチな国やEUとかが独自のDST導入を決定・検討する流れがあり、そのような状況を放っておくと国際課税システムの無秩序化が必至という厳しい現実がある。今回、OECD側の予定通りの進展を誇示することで、各国を牽制する目的があるはず。何らかのハイレベルな原則に基本合意できれば、勝者と敗者が必ず混在する新国際課税ルールに関して、敗者側の納得感を担保し易くなる。テクニカルにいかに完璧でも、各国のポリティカルな事情でコンセンサスに至ることができなければ砂上の楼閣となってしまい、せっかくの試みが瓦解するのは素人でも想像に難くない。まずは比較的シンプルな原則に関してポリティカルなコンセンサス取り付けに注力するしかないだろう。

先に公開されていたピラー1では、「ユーザーベース、Market Intangible、デジタルPE」という3つのアプローチが提案されてたけど、3月にパリで開催されたヘアリングその他の各界からのインプットに基づいて、基本的なアプローチはMarket Intangibleに集約されてきている。他の2案がどちらかというと未焼成の状態にあったと言えるので、これは大方予想通り。ユーザーベースは対象が狭義(GAFA等)で、長期的な国際課税フレームワークとしては若干Sustainabilityに欠ける観があったし、そもそもユーザーがどこの国に居るという判断をどうやってするのか、っていう米国FDIIのユーザー地証明義務に準じる実務的な問題が付きまとう。第三の「拡大PE案」は、そもそもピラー1では物理的PEなしでも課税と言うのが大原則だったはずなので、それ以上のインパクトや具体性に乏しく、今から第三の案をじっくり時間を掛けて構築してヒマはない、ということで消去法(?)に基づきMarket Intangibleに。

ピラー1の大前提である物理的なプレゼンスがなくても各国に課税権を認めるという議論は、米国の2018 年の最高裁判決South Dakota v. Wayfairにも通じるものがある。Wayfairは米国の憲法下でのSales Tax徴収の話しで、憲法のような法的なフレームワークが存在しない世界各国に同様の議論を適用するのは施行面でチャレンジ度合いが段違いに高いけど、概念的には同じ方向。PEという用語は物理的プレゼンスが求められるように感じるケースが多いせいか、最近は代わりに「Nexus」という用語が使われることが多い。米国では州の課税権や、他の民法上の裁判管轄権の話しで古くからよく使う用語なので馴染み深いけど、日本の新聞報道とかでは意外に訳に苦労しているように感じる。「Nexus」とは、国(米国では国同様の州も)が自国の法律を誰かに行使しようとする際に、その者が法律を行使されるに足ると判断されるその国との「最低限の接触」を持っているということ、すなわち法的管轄権のことだ。高級車のブランドや法律のリサーチをする際のOnlineツールと勘違いしないようにね。

Market Intangibleに賛同する者がおおいのは、Market Intangibleの考え方、簡単に言えばDistribution等の活動にまずルーティン所得を配賦し超過利益はスプリットするというもの、は既存の国際課税・TPの考え方に一番近いという理由もあるだろう。従来の考え方から余りに逸脱するルールでは混乱がより大きい。米国財務省は、各国による一方的なDSTは、経済的な利益とは関係のないグロスベースで論じられることが多く、米国側でFTC不適格の可能性が高く、また条約上の取り扱いも不明、等諸々の理由で国際課税フレームワークの中での取り扱いが不透明で、かつDSTが米国企業狙い撃ちしているのは明らかでけしからん、ということで、グローバルコンセンサスが得られるのであれば「積極的」にOEDCの議論には参加する一方、一方的なDSTには断固反対を明言している。その上で、ピラー1の中では上述のような理由でMarket Intangible案を渋々(?)容認している。グローバルレベルで何か合意しておかないと、各国独自のDSTで米国企業が狙い撃ちされるので、グローバル・コンセンサス作りに積極的に参加する流れは自然。ALPとは必ずしも整合性のない利益配賦に同調した点に驚愕した向きもあると思うけど、結局は同調せざる得ないのも、この期に及んで学術的な議論をしていても無駄、という認識があるからだろう。DSTは米国企業狙いではない、と各国が言っても「GAFAタックス」と言っている位だから(苦笑)、多くの負担は米国企業。

Intangibleに基づく超過利益をどのように算定するか、云々の具体的な話しは「Secretarial Proposal」の性格を考えると、時期尚早だと思うけど、一つ想定・期待されるのは、米国が税制改正でGILTIおよびFDIIのセットで米国が国外事業をどこから展開しても米国税務上はニュートラルとした際に、有形償却資産の税務簿価x10%を超過する額はIntangibleからの超過利益と法的に認定したように、各国に配賦対象となる超過利益の算定は「解釈の余地がない機械的な算定法」に「世界中の国」が合意する必要がある点を明確にすることだろう。できるかな?Imagineじゃないけど「Wonder if you can...」。経済的に超過利益がいくらなのか、という話しは、今後の議論の流れの中では無意味で、GILTI・FDIIのように、一定の少額部分の利益を除き、全ての所得が超過利益とみなされると考えておけばいいし、どんなに乱暴な算定法でも各国がそれに合意することの方が重要。予見可能性と係争の最小限化が企業の願うところだろう。

OECDによりパンドラの箱は開けられてしまったので、日本や日本企業として提言していくべき点は、何をもって課税権を行使できるか、どのように利益を配賦するかという2点に関して、極力機械的なフォーミュラに世界中が合意しないといけないという点の強調。そして、それでも係争は後を絶たないだろうから、強固なDispute Resolutionを構築していくこと。これらが日本企業からみたベストなインプットだろう。Dispute Resolutionて言っても、国内の話しだったら法律があり、罰金・禁固・資産没収とかのリコースがあるけど、国家間のDispute Resolutionは、「こんな判定はただの紙切れ」とか言ってその結果に従わない国が出てきたときにどうするのか。まさか戦争したり経済制裁を加えてEnforceする訳にもいかないだろうし。問題は山積み。

という訳で、「Secretarial Proposal」に対する第一印象でした。ピラー2はこれからだけど、そのモデル(?)となっているGILTI(FDIIとのセット)は米国外ではその趣旨が良く理解されていないと思うので、その心は今後機会があったらポスティングしていきたい。NYCとかでEYの日本語セミナーに来てくれた方は散々聞かされてるからもういい、って感じかもしれないけど懲りずによろしくね。

Sunday, September 15, 2019

日米租税条約議定書発効と仲裁手続き

前回、条約の改正と源泉税に関して、ファンドの話しなんかにも至りながら思いつくままに書いてみたけど、今回は、条約改正の目玉と言える二国間協議で解決しきれない問題に対する仲裁手続きの導入について簡単に触れてみたい。

仲裁手続きを語るには、その前提となる二国間協議に触れておく必要がある。二国間協議、相互協議、英語で言うとMAP(地図じゃなくてMutual Agreement Procedureのこと)、Competent Authority、とかいろんな用語が使用されるけど、基本的に意味は一緒。前回のポスティングで触れた通り条約は二国間の契約だけど、どちらかの国で条約不適合と考えられる課税を受けるような事案があれば、二国間で話し合って解決に「努める」という規定だ。二国間協議というと移転価格問題にかかわる事案が多いけど、制度的には条約不適合であれば何でも応じてくれる。特にPE有無とか、PE帰属所得の範囲、裁量で決めるLOBとか、Resourcingに基づくFTCとか、他国に比べて日本企業ももっと活用したらいい。LOB事案以外はタダだし。米国では二国間協議に対応する相互協議担当は移転価格担当のAPMAとそれ以外の事案担当のTAITの2つに分かれている。PEだけはAPMAとTAITが協働し、TAITがPE有無の判断、APMAが帰属所得の算定、を担当する

二国間で解決に努めるって言うと、単に努力するっていう感じにも取れるけど、英語では「Endeavor」と言って、普通の努力よりもSincereかつFormalに頑張るっていう意味が含蓄・内包されている感じがする。ただ、「Endeavor」しても、努めても、絶対に解決するという訳ではない。米国が関与する二国間協議の解決率は一般に90%以上のはずで、さらに日米間のように古くから移転価格問題を中心に二国間協議の歴史が長い間柄となると、確率はもっといいかも。二国間協議の解決率、所要期間等の統計は、OECDかどっかのウェブサイトに記載されていたと思うので、興味がある方は見てみるといいだろう。

この二国間協議、あくまでも条約を締結している当事者となる二国間の協議だから、事案そのものはもちろんどちらかの国の納税者にかかわるものだけど、協議そのものに納税者が参加したりすることは認められない。「我々の事案なので、自ら相手国の税務当局に想いを・・」と勇みたくなるかもしれないけど、あくまでも二国間の交渉となる。基本、両国間のやり取りや、更正を行った国が相手国に提出するポジションペーパーなんかも納税者が閲覧することは認めらない。

で、「Endeavor」したけど、物別れに終わるケースでは、各々の国の内国法に基づく救済措置を利用するしかなくなる。米国で言うと、IRS内のAppealとか裁判所で戦う、などの方法だ。ただ、各々の国で解決を試みるということは、租税条約に基づく救済ではないので、二重課税の排除が不可能となることが多い。そこで、条約を有するにもかかわらず、二国間の二重課税問題が最終的に解決をみないまま、封印されてしまう可能性があることは好ましくないということで、追加策として仲裁手続きを導入しようというグローバルトレンドがある。確かに最終的な決定、Finalityを実現するのは重要で、仲裁手続き導入の第一の目的と言えるけど、仲裁手続きの導入のもう一つの効果として、実務的にはこっちの方が大きいように思うけど、二国間協議を担当する両国の税務当局に24カ月以内に解決に至るようなプレッシャーやインセンティブを提供するというものがある。

日米租税条約で導入される仲裁手続きは、米国が既にカナダ、フランス、ベルギー等との条約で規定されている他の仲裁手続き同様、ベースボール方式と言って、仲裁パネルは双方の国のポジションのどちらかを選択して勝者を選択することしか認められない。すなわち、中間を取ったり、仲裁パネルが独自のポジションを編み出したりすることは認められない。となると、二国間協議に臨む両国は、余り限界に挑戦するようなポジションや自己中心的なポジションを主張して頑張ると、相手国がより節操のあるポジションを提示してきている場合、仲裁に持ち込まれると勝ち目がない。このことから、双方がより合理的なポジションを提示せざるを得ない傾向が強まると言える。

さらに、グローバル的に二国間協議に要する期間を24カ月以内にしたいというトレンドがあり、日米租税条約に導入された仲裁も、二国間協議に必要な情報を提出してから基本的に24カ月経過しても解決を見ない事案に申請が認められる。このことから、自ずと二国間協議を当期間内に何とか終了させたいというインセンティブも生じることとなる。

ちなみに条約上、事前価格合意、すなわちAPAも二国間協議の一つと位置付けられているけど、仲裁は、条約の趣旨に反する「課税を受けた事案」が対象となる。なので、APAの合意がなかなか実現しないケースをいきなり仲裁に持ち込むことはできない。としか読めない。DCのTP専門チームには、カナダとかベルギーとの条約では認められるので、日米でも今後更なる改正で可能にならないか、みたいな議論はある。あれらの国とはMOUとかで「できる」って明記してあるので、日米とは異なると思うんだけど、今後相互協議室間で追加合意でもするんだろうか。ただ、APAは既に二国間協議の申請を行っていると同様の位置づけなので、議定書では、仮にAPAでカバーされる取引に関して、APAが合意されていない状態でどちらかの国が更正を行う場合には、通常の更正と異なり、それ以上二国間協議を申し立てる必要はなく、いきなり仲裁に持ち込むことができる、としている。

APAと関係ない取引の場合、二国間協議のために両国に必要情報を全て提出し終えた日から2年経過するまで仲裁申し立てはできないけど、APAでカバーされる対象取引に関して、更正を受けた場合には、更正通知から6カ月を経過した時点でいきなり仲裁に持ち込むことができる。ただ、APAの検討に必要となる情報を両国に提供してから2年間は仮にこの6カ月という期間を充たしていても仲裁の申請は認められない、としている。 そもそも、APAでカバーされている取引を両国が検討している最中に、税務調査チームが一方的に更正を通知してくることは実務的には考え難い。となると、これはAPAを申請したけど、APA合意に至らないで終わってしまったケースにかかわる短縮手続きと言っていいかもね。それともDCの人たちが期待しているように今後、別契約でAPAだけの状態で仲裁手続きに持ち込めるようなことになるんだろうか。

Sunday, September 8, 2019

日米租税条約議定書発効と源泉税

数回に亘り、批准の動向をポスティングしてきた2013年の日米租税条約の議定書だけど、ついに8月30日に6年越しの米国批准手続きを経て発効した。議定書とかProtocolっていうと名前が堅苦しいけど、要は2003年の日米租税条約の改正のこと。既に簡単な内容とか議定書そのものが発効した後に、各規定が実際に効果を持ち始めるタイミングは前回までのポスティングでカバー済みなので、ここで繰り返えす必要はないけど、発効が際どく8月中だったので、源泉税の軽減は11月1日以降の支払いから有効となる点は一応注目に値する。

例えば、米国の観点からは、支払利息は法的な支払いタイミングが11月1日以降であれば、利息算定の基となる経過期間に10月31日以前の期間が含まれていても源泉税率はゼロ%となる。発生ベースで考える必要はない。源泉税課税が法的に発生するのはあくまで支払いのタイミングだからだ。もちろん、相殺とか元本組み入れは支払い同様と取り扱われる。

源泉税率の軽減って、条約の趣旨が一番分かり易く具現化されてるって感じ。源泉税は支払側が徴収して納付するけど、あくまで受け手の代理人という身分で行っている訳で、実際の納税者は利息等を受け取る外国人。したがって、源泉税はECIやPE帰属所得に対する申告課税と並び「Resident Country」ではない側の国が「Sourcing Country」として外国人に課税権を行使するパターンの典型。条約の特権を受けることができない場合、米国内国法では投資所得は原則30%の源泉税対象となる。

で、租税条約による源泉税率の軽減は、内国法で認められるSourcing Country側の課税を緩和するという、これまた典型的な条約の軽減措置。租税条約っていうのは通常の契約と同様に、締結国が各々のSourcing Countryとしての課税権の一部を軽減・緩和するという「対価」の交換をもって成立する二国間の法的な契約。日本では元々20%、米国では30%の源泉税をお互いにゼロにするので、個々の規定ベースでは対価の価値は必ずしもパラレルではないけどね。契約法をかじったことがある人は分かると思うけど、契約が成立する要件の一つとなる「対価」は、お金を払ったり、サービスを提供したりする行為ばかりでなく、法的な権利を自ら放棄することでも立派に構成させることができる。

外国関連者に源泉税対象となる支払いを行う際、米国税法では米国支払い側の当金額にかかわる損金算入は発生ベースではなく、支払ベースの現金主義で認められるのが原則。これは課税と損金のマッチング概念。受け手となる外国人が米国で課税される、すなわち源泉税が課せられるタイミングと損金算入のタイミングを合わせようとするもの。なので損金算入をトリガーする「支払い」の定義も源泉税をトリガーする取引と規定されている。このようなマッチング規定がないと、関連者に発生する利息とかロイヤルティーを長期に亘り未払いの状態を続けることで、損金側だけ発生ベースで認識し、外国関連者側の米国における所得認識を延々と繰り延べることが可能となってしまう。

課税が支払いベースっていうのを利用して、長期間に亘り所得認識を繰り延べる案を見るたびに、Section 457Aで網が掛けられる前の、ヘッジファンドマネージャーがケイマンとかのオフショアフィーダーから受け取るIncentive Fee(CarryみたいなIncentive Allocationではなく)を10年も繰り延べしていた姿を思い出して苦笑してしまう。ヘッジファンドとかPEのスポンサーたちみたいに、常に自ら限界に挑戦し、かついろんなプロフィールの投資家全ての米国課税関係に応えようとする(でないと次の投資家が集まらないしね)クライアントを持っているとそれはそれは勉強になる。ファンドのスポンサーはどんなにお金持ちでもNY気質で気が短く激しいので失敗は許されないし。でも現実には複雑なストラクチャーになればなるほど、ストラクチャーや申告が100%クリーンと言うのは難しい、というか不可能っていうのが実務家の視点(言い訳?)。それにしてもヘッジファンドは源泉税とかに対する感度も際立ってると言える。

ケイマンフィーダーと言えば、PEの世界ではPEがパススルーに投資する際に毎回組成されるAIVの一部を構成することがあるし、ヘッジファンド投資は流動性が高いのでAIVは不向きとなることから、ヘッジファンドの世界ではファンドをストラクチャーする際にもともと単純にケイマン法人を組成して、「普通の」非課税団体(CalPERS、SERS、NCRS、MainPERSみたいな州の一部となるスーパー非課税団体ではないという意味で普通の)や日本企業を含む外国からの投資家向けにブロッカーとして用意してたけど、ヘッジファンドのオフショアフィーダーがデラウェア州LPSであるマスターファンド、またはブロッカー直下のミニマスターファンド経由で受け取る配当所得が30%源泉税の対象となる問題がある。ケイマン法人だからもちろん条約はないしね。利子所得は条約有無にかかわらず、元々基本的に利益連動や関連者からのものでない限りそもそも内国法で源泉税対象でないから問題ないけど。ヘッジファンドは派手にトレーディングするから、配当所得は少ないかもしれないけど、それでも状況次第では30%源泉税対象となる投資がある程度のポーションを占めると、投資リターンには悪影響。

で、配当に対する30%源泉の問題は、従来、スワップ、しかもデルタワンのスワップで解決するっていうのがヘッジファンド界の常識というか、常套手段だった。というのは想定元本から受け取る所得は配当ではないので、受け手の居住地を基に源泉地を決めるというのが基本的な考え方だからだ。そんな安易な源泉税回避法に業を煮やした議会がSection 871(m)を導入し、デルタワンスワップ策は封じ込められてしまった。 だったらと、今度はケイマン法人ではなくケイマンLPSでせめて条約締結国の投資家には条約に基づく10%とか15%の軽減税率で源泉税が済むように工夫するようなトレンドになっている。投資家のクラス次第だけど。SWFなんかはだったらオフショアフィーダーに鞍替えしてるのかな。マスターファンドでCommercial Activitiesがないと信じてるんだったら引き続きドメスティックフィーダーなのかもね。一方、UBTIが発生したら困まる「普通の」非課税団体から見ると、派手にレバレッジを導入するヘッジファンドがパススルーでは大変。だったらと、彼らのためにCTBしてあげたりして。う~ん、概念的にはシンプルでも、実務的にW-8とか、とてもファンドのバックオフィスがペーパーワークに耐え得ないのでは、って心配になってくる複雑なストラクチャーだ。源泉税コストっていうのは投資の世界ではとても重要。

で、話しが何となく脱線してきたけど、米国税法では、源泉税対象となる支払いの米国支払い側の損金算入は発生ベースではなく、支払ベース、すなわち現金主義で認められるのが原則っていう上の話しの続き。源泉税が条約でゼロ%となる場合、このマッチングは意味がない。支払っても支払ってなくても源泉税がなく、タイミングにかかわらず米国はSourcing Countryとしての課税権を完全に諦めてしまっているので、マッチングする相手がいない。だったら支払い側の損金算入は通常の内国法のAll-Eventテストで判断すればいいのでは?ということになる。

で、ここからはロジックでは説明できないけど、判例その他の沿革があり、現状の財務省規則下では、支払利息に関しては例え条約で源泉税がゼロ%でも外国の関連者に対するものは現金主義でのみ損金算入が認められる。マッチングするものがなくてもね。一方、支払利息以外、典型的な例はロイヤルティーだけど、に関しては条約で源泉税がゼロ%となる場合、マッチングのしようがないので、発生ベースで損金算入となる。したがって日本の親会社に支払うロイヤルティーは条約で源泉税が免除されている限り、2003年以降、発生ベースで損金算入できる一方、2019年11月1日以降に支払う利息の源泉税がゼロ%になるからと言って、発生ベースを適用することはできず、支払利息の損金算入は支払い時点まで待たないと認められない。その場合、Section 163(j)とか他の制限規定がキックインしてくるのも支払い時点だ。支払利息は目の敵にされていて、他の所得と異なり、外国関連者に対するものである限り、米国源泉でなくても支払うまで損金算入が認められない。米国源泉でなければ源泉税の対象でないので、マッチングの必要はなくこれもチョッと不思議。

ちなみに源泉税率が軽減されているけどゼロでないケースは、外国関連者への支払い全額に関して現金主義に基づく損金算入が求められる。BEATとか旧163(j)適用時には、30%が10%に軽減されているようなケースでは支払いを3分の1と3分の2に分岐して取り扱いを決めてたけど、Section 267目的ではそんなことはしない。

ということで、議定書による改正でインパクトが大きいのは関連者間の支払利息に対する源泉税、仲裁規定、不動産持分法人の定義だけど、仲裁は二国間協議との絡みで面白いので次回、チラッと触れてみたい。

Wednesday, July 17, 2019

日米租税条約「議定書」6年越しの批准

昨日、スペインの議定書が上院で批准されたが、今日(2019年7月17日)日本の議定書も圧倒的多数でめでたく批准された。議定書の合意は2013年1月24日だから、実に6年6カ月経ってようやく米国側の批准が完了したことになる。ちなみに日本の国会は2013年6月に批准を早々に終えているので、随分待たされた感じ。議定書に「批准書は、できる限り速やかに交換されるものとする」と両国が宣言しているのがおかしい。

昨日のポスティングでも触れたけど、今後、日米間で批准文書の交換が行われて正式に発効に漕ぎつける。後は形式的な手続きと言えるけど、米国でまず批准文書がドラフトされ、国務省が大統領府間と調整して大統領による署名を行う。署名されたら日米で文書交換され、議定書はめでたく発効となる。

で、実は議定書自体はそれで効力が発生するけど、実際に源泉税に関しては効力発生日から3カ月後を含む月の初日から実際の適用がある。以前に支払利息の支払いをもうチョッと待てばゼロ%というようなことを書いたことがあるけど、正確には仮に7月に批准書が交換されたら、10月1日から源泉税が下がる。源泉税以外の税金に関しては、議定書の効力発生後の1月1日以降に開始する課税年度から適用となる。源泉税に関しては、トランプ大統領が7月中に署名するか、8月にずれ込むか、で発効タイミングが10月1日となるか11月1日となるか、差が出ることになるね。他はいずれにしても2020年1月1日以降に開始する課税年度から、が原則。例外は仲裁手続き、情報交換、租税徴収支援で、これらに関しては批准書交換時から適用となる。

もう忘れてしまった人も多いと思うけど、議定書の目玉は源泉税の更なる軽減、仲裁手続きの導入、租税徴収にかかわる相互援助の拡大。源泉税に関しては支払利息に対する源泉税が撤廃されたのと、配当に対する源泉税率0%の適格要件のうち、「50%超」の持分保有割合要件が「50%以上」に、また「12カ月」の保有期間要件が「6カ月」に緩和されている。

ちょっとオタクっぽいけど、米国不動産持分(USRPI)の定義が、日米租税条約特有の有利な定義から米国内国法の定義に統一されている。外国人が米国の不動産を譲渡すると、譲渡損益はみなし事業所得となり、申告課税の対象となる。その際、この不動産の定義には米国法人株式が含まれる。米国法人株式は、上場企業の5%未満株主のケースを除き、原則、自動的にUSRPIとみなさるけど、米国法人が「過去5年間」に一度も米国不動産保有法人、すなわちUSRPIが資産時価に占める割合が50%超の法人、でなかったことを証明できる場合には、その株式はUSRPIの定義から除外されることになっている。これは米国内国法の定義だけど、従来の条約では、5年テストを適用せず、「株式譲渡時点」において米国不動産保有法人でなければ当該株式はUSRPIとならないと、日本居住者に有利な規定となっていた。今回の改正では残念ながら、この有利な定義は撤廃となり、米国内国法のUSRPIの定義で全てを整理することとなった。ちょっとループホールみたいな恩典だったから仕方がないかもね。

ということで速報でした。

Tuesday, July 16, 2019

スペイン租税条約「議定書」批准・日米は明日

米国時間16日火曜日、上院は本会議で長年眠っていた米国・スペイン租税条約の議定書を圧倒的多数で可決した。ケンタッキー州のとある酒造屋さんがスペインとの議定書を批准して欲しい、と地元の上院議員Mitch McCornellに懇願したことに始る租税条約批准手続きだけに、まずはスペインから取り上げられたのだろう。

Rand Paulは投票前に、情報交換規定が米国市民のプライバシーを侵害するリスクがあるという演説をしたばかりでなく、情報交換規定の条件をタイトにする修正案を提出したようだけど、修正案はあっけなく却下され、議定書は94対2で可決された。Rand Paul以外にも一人反対票を投じた議員が居ることになるけど誰だろうね。最近の上院は全て51対49とか、党ラインできれいに票が割れ、超党的に可決されることはなかっただけに94対2という投票結果は新鮮。スイス、日本、ルクセンブルクの議定書は、明日(17日)DCで審議が開始される。スイスの次に日本の投票となるそうだから早ければ明日中に批准が完了することになる。Stay Tuned。

ちなみに議定書が法的効果を持つのは日米間で批准文書の交換が行われた日となる。米国側の上院批准後の手続きとしては、批准文書がドラフトされ大統領がこれに署名する。大統領による署名手続きは国務省と大統領府間での調整マターとなるので、どれだけ直ぐ実現するかチョッと不明。トランプ大統領がTwitter投稿に忙しかったりすると、一週間から数週間掛かる可能性もある。で、署名されたら日米で文書交換され、議定書がめでたく発効となる。文書交換時には両政府より何らかの発表があるだろう。

Saturday, July 13, 2019

日米租税条約「議定書」いよいよ来週批准?

さすがMitch McCornnellとしかいいようがない。10年近く停滞していた条約の批准プロセスが、McConnellの鶴の一声でいきなり始動し、「Senate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)」で早々に日本、スイス、ルクセンブルグ、スペイン4か国との議定書が可決され、何と、数カ月前までは到底不可能と考えられていた本会議における議場審議および可決投票が来週早々にも敢行されるらしい。この辺りの最近の進展に関しては「日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??」「日米租税条約「議定書」本当に批准間近(2)?」で特集しているのでぜひ参照して欲しい。

条約ブロッカーのRand Paulは、この期に及んでも「簡素手続きに基づく安易な可決は許さない」と最後の抵抗を試みてるようだけど、ここまで来たら超劣勢というか万事休すに近い。本会議で正式手続きさえ踏めば、時間は掛かるけど3分の2の多数決で批准できる訳だからRand Paulが一人で反対票を投じても焼け石に水。いよいよ時間の問題だ。政治家は票をどれだけ集められるかが最終的には勝負だから、一票ではね。票と言えば、条約とは全然関係ないけど、下院のNancy Pelosiと新人議員の力の差異も結局はここに尽きるね。

それにしてもやはり持つべきは影響力を持つ地元議員。ポリティクスはLocalという誰かの名言があるけど本当にその通り。新人議員とかがTweeterで誹謗中傷合戦を演じてユートピア的な話しに終始している間に、McConnellは地元ケンタッキーのスペイン系(?)の酒造のためにここまで尽力していたとは。日本の議定書も棚ぼた的に日の目を見ることになりそうな展開で、ケンタッキーの酒造屋さんに感謝。日本でFTCの枠が十分ないような会社は、週末に米国から利息支払って10%源泉とかにならないように。来週まで待てばゼロ%かもしれないからねって、思ってたけど、良く見たら議定書自体の効力は批准文書交換時だけど、源泉税はその3か月後の1日からだから、10月まで待たないとダメでした。

Saturday, July 6, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (5)

前回はSub FやGILTI課税の適用時の米国パートナーシップの取り扱いを語る際に避けては通れないSection 318の概要だった。で、今回はこの複雑なSection 318のクロスボーダー課税への適用に関して引き続き・・・と思ってたら、「Happy 4th」の独立記念日が訪れた。Thanksgiving、クリスマス~新年と並び、米国企業、そして自分が属する米国Firmの活動が急にストップまたはスローダウンするので、日本以外からのメールが急減していつもより時間ができる。5月の日本10連休の際は日本企業や日本Firmからのメールが一斉にストップして、その際も朝起きてOvernightで溜まったメールが少なくて健やか(?)な時期を過ごすことができたけど、どちらかと言うと米国FirmがCloseしている方が、Firm内のインターナル系の諸々のメールが減るので、よりテクニカルなことに時間を避くことができる感じ。なんで、ブログのポスティングも比較的サクサクとアップデートできたりしている。

独立記念日と言えば花火。East RiverのBrooklyn Bridgeエリアから摩天楼をバックに70,000発打ち上げられたNYCの花火は圧巻。ちなみに隅田川の花火は20,000発だそうだ。ギネスのドバイの50万発には及ばないけど、ManhattanとQueensというビル密集の間でやるので実際の発数よりも迫力。その昔、物心ついたころに、自由が丘の自宅の洗濯干し場(なぜか屋根の上に舞台みたいに洗濯ものを干すエリアがあった)から多摩川の花火を、当時とても貴重だった「アイスキャンディー」を「きくそうやさん」(としか覚えてないんだけど、近所の駄菓子屋)から届けてもらい、見ていた夏を思い出す。あれも今思えば二子橋の辺でやってた花火大会だろう。多摩川の二子橋が、East RiverのBrooklyn Bridgeに変わっただけで、結局夏は川に掛けられた橋の花火大会を満喫しているところがおかしい。しかも気付いたらレモンシャーベット(テクニカルにはレモンジェラート)を食べながら見てたので、かなりのDéjà vu(?)ぶり。だけど、遠い昔とは言え、本当に過去に体験しているのでDéjà vuという表現は間違いだね。NYCって街はチョッと汚くて、古くて他の街みたいに整然としたところがないけど、実は効率的にできていて、アメリカの他の街では感じられない魅力満載。独立記念日の花火のバックに見える街を見ていると、ますますそんな気にさせてくれる。花火大会前のコンサートもLuke Bryan, Brad Paisley, Derek Hough, Jennifer Hudson, Ciara、Khalidと一流どころが揃ってた。

で、花火も終わったので、またクロスボーダー課税と株式保有の話し。外国法人の株式を誰が何%保有してるかって言うと、一瞬簡単な事実認定に聞こえるかもしれないけど、実際にはこれが複雑。外国法人の株主に米国株主が存在するか、外国法人がCFCになるか、米国株主が合算株主となるか、合算株主に帰属するPro-rataのSub FやTested Income等の合算額はいくらか、というクロスボーダー課税の検討各ステップで、株主保有%の正確な把握は避けては通れない確認事項。

前回、保有持分の考え方は「直接」「間接」「みなし」の3通りがある点に触れ、「みなし」保有はSub CのSection 318を借用して決定する点に触れた。ここでさらに、検討を複雑にしているのが、Section 318をクロスボーダー課税目的で借用する際、元祖Section 318を部分的に変更している点だ。ただでさえ複雑なSection 318に追加の部分的変更を加えることで、規則の難易度はアップするけど、これらの微調整は、米国内の組織再編等と必ずしも事情が同じでないクロスボーダー課税への影響を思慮深く反映している。元祖Section 318に対するクロスボーダー課税検討時の変更は次の通り。

まず、家族間のみなし保有規定を適用する際、「非居住者外国人」が保有している株式を、「米国市民・米国居住者」が保有しているとみなすことはない。例えば、日本に住んでいる日本人でグリーンカードを保有していないお父さん・お母さんが保有する株式は、仮に息子や娘が米国籍・グリーンカードを保有していたり、米国にF、J、M、Qビザ以外(これらのビザ保有者は連邦税法上、非居住者扱いとなるケースがほとんど)で居住していても、この例外規定があるお陰で、お父さん・お母さんが保有する株式、例えば、日本の自分の会社がCFCになったりしない。

次に、事業主体が保有する株式は、持分保有比率に応じて事業主体のオーナーが保有していると取り扱うUpward Attribution適用時に、もしオーナーが事業主体の50%超の議決権を有している場合には、元祖Section 318の持分相応ではなく、事業主体が保有している「全」株式をオーナーが保有していると取り扱う。例えば、事業主体が外国法人の100%株式を保有し、この事業主体の持分を80%保有しているオーナーが居るとすると、Sub Cの「通常」のSection 318ではUpward Attributionを事業主体に対する持分に応じて外国法人の株式保有%を決定することができるため、オーナーは外国法人の80%を保有していることになる。ところがクロスボーダー課税を考える際には、オーナーは事業主体の持分を50%超保有していることから、事業主体が保有する外国法人の株式100%をまるまる保有していると取り扱う。

更に、Upward Attributionを適用する際、法人から株主にみなし持分がフローアップしてくる際、Sub Cの「通常」のSection 318では、前回のポスティングで触れた通り、価値ベースで50%以上の持分を保有する株主に対してのみ、法人が保有する株式を、価値ベースの持分に応じて株主が保有しているものと取り扱うが、クロスボーダー課税の適用時には、50%以上ではなく、同じく価値ベースで10%以上の持分を保有する株主は、法人が保有する株式を価値ベースの持分に応じて保有していると取り扱われる。もちろん、上述の2つめの例外があるので、50%超の議決権を保有する場合には、持分ベースではなく、全株式を保有していると取り扱われる。ちなみにこれらのルールを読んで気付いたと思うけど、持分の判断時に議決権を見るのか価値を見るのか、両方を見るのか、の区別が重要。Sub Cの組織再編とか現物出資の際の「Control」要件と連結納税や適格再編の際の「Control」要件も、どのクラスの株式の何を見るのかの部分に差異があり、トリッキーであると同時にプラニングの温床となってるのにチョッと似てる。う~んDeep。

で、実は税制改正前は「3つ目の例外」があった。それはクロスボーダー課税を考える際には、Downward Attributionを適用して、米国人でない者(外国法人、外国パートナーシップを含む)が保有する株式を、米国人(米国法人、米国パートナーシップを含む)が保有しているとは取り扱わない、というものだった。家族関係に基づくみなし保有の例外に似てるけど、税制改正でナンとこの3つ目の貴重な例外が撤廃されてしまった。この改正のせいで、Section 318のDownward Attributionをクロスボーダー課税を考える際に常に適用しないといけなくなり、日本企業のように米国が頂点でないグループとかファンドは急に多くのCFCを保有しているとみなされる結果となっている。この変更の立法趣旨は、濫用に網を掛ける目的とされているけど、両院の法案をバタバタとすり合わせる過程で、法文の微調整を行うことができず、結果として、法文を読む限り、全ての状況でDownward Attributionが適用されることになる。この点にかかわるTechnical Correctionという法文修正案が「ドラフト」されているが、法案として議会にも提出されていないし、仮に提出されたとしても下院は民主党の手に堕ちていることから可決の可能性はないに近い。となると、法文に準じて、常にDownward Attributionを適用してSub FとかGILTIを考えないといけない、というかなりインパクトの高い改正となってしまっている。

さて、ここからが話しの神髄。Sub FやGILTIは「CFC」の所得を「米国株主」が合算するというシステム。そのためにはまず誰が米国株主で、それに基づき外国法人がCFCとなるかの判断が必要。CFCは「外国法人の課税年度内に1日でも米国株主が議決権または価値の50%超を保有する外国法人」と規定されている。プエルトリコ、グアム、アメリカンサモア、北マリアナ諸島で組成されている法人に関しては特殊な規定があるが、ここでは余り関連がないので省く。

CFCの定義を読めば分かると思うけど、外国法人がCFCかどうかの判断時には、外国法人の株主に米国株主が存在するかどうかを判断しないといけない。以前のポスティングで触れたけど、ここで言う「米国株主」っていう用語は法的に定義されていて、単に株式を保有している米国人という意味ではなく、10%以上の議決権または価値を保有する米国人を意味する。実は税制改正前は、米国株主は「議決権」10%以上の米国人となっており、価値は判断に影響がなかったけど、濫用が見られるということで価値ベースの判断も加えられた(CFCの定義は以前から議決権または価値)。直接CFCや米国株主の定義には関係ないけど、税制改正による変更と言えば、改正前は外国法人が課税年度内に少なくとも30日間CFCの状態にないと、その課税年度は米国株主によるSub F合算の必要がなかったけど、この30日ルールも濫用防止目的で撤廃され、改正後は一日でもCFCだと合算が必要となった。

米国株主の定義は、Sub F関係の規定ばかりでなくInternal Revenue Code全てに適用される定義とされているので、税法上「United States shareholder」という用語が出て来たら、それはこの定義を充たす者ということになる。

ここで言う米国人の定義は広範で、米国市民、米国居住者、米国パートナーシップ、米国法人、米国遺産、米国裁判所が信託管理に関して主たる法権を持ち、米国人が信託の意思決定を行使できる信託、となっている。今回のテーマ的にはパートナーシップは課税関係はパススルーだけど、この目的では人格を伴う「Person」となっていて、米国パートナーシップも米国人と取り扱われている点が重要。

米国株主を特定したら、それらの者が合算で50%超の議決権または価値を保有する外国法人がCFCとなる。米国株主およびCFCの判断時には、「直接」「間接」「みなし」全ての持分を加味して決定する必要がある。

前半、花火の話しとかしてしまって長くなってきたので、合算株主は次回。