Saturday, August 5, 2017

GAAケースその後

7月15日の「外国法人による米国パートナシップ持分譲渡」というポスティングで、外国法人が米国パートナーシップ持分を譲渡・売却した際の米国税務上の扱いは国内での譲渡同様、パートナーシップ内の個々の資産の譲渡と見るのではなく、基本的にパートナシップ持分という個別のキャピタル資産を譲渡した扱いとなるというTax Courtの判例(「GAAケース」)に触れた。

その際に触れた通り、Tax Courtの議論の中で、キャピタルゲインはFDAPでないとした上で、米国源泉であればForce of Attraction、すなわちSection 864(c)(3)に基づき課税となるとしている部分がありとても不思議だった。もし米国源泉だったらFDAPでなくれもCapital Gainなんだからsection 864(c)(3)ではなくSection 864(c)(2)のAsset TestやActivities TestでECIかどうかを決定するんじゃないかと思ったからだ。この点に関してTax Courtは数日後にオピニオンを修正し、もし米国源泉だったらSection 864(c)(2)で考えるべきと訂正している。これで話しがスッキリした。

このGAAケース、その判決にIRSが不本意ながらも従う(Acquiesce)のか、それとも控訴に持ち込むのか注目されているけど、未だにIRSは態度を明確にしていない。大方の予想ではIRSは控訴するのではないかと言われているようだけど、法的に余りにサポートがない点はTax Courtの議論でも、IRSの主張には何の法的な根拠ナシとバッサリと切られていることからも明らか。また、Revenue Ruling 91-32にしてもその発表以来その主張は問題とされてきているので、ここはあきらめてSection 741そのものの議会による改正に掛けた方がいいのではないかと思う。

Tax Reformの提案から消費地課税が取り下げられた今、法人税率を20%とかに下げるとなると他に幅広い財源が必要となる。その中のひとつとしてSection 741の改正により実質Revenue Rulingの条文化が実行されるのではないかという憶測もある。いくらの歳入になるものか知らないけど、チリも積もれば的にひとつの財源として目を付けられる可能性はある。Section 741を変えれば、外国法人には不利だけど、法的な不確実性はほぼなくなるのでGAAケースのような争点はなくなる。

GAAケースに準じてパートナシップ持分譲渡からのキャピタルゲインを非課税とする扱いは、Tax Courtの判例にもある通り、キャピタルゲインが外国法人の米国オフィス(パートナーシップを通じたみなし事務所を含む)に帰属しないというのが要件になるが、多くの外国法人による米国パートナーシップ投資はGAA同様のパターンが多いはずで、Blocker Corporationを経由しないで米国パススルーに投資しているようなケースでは法的な改正が実際に行われるまでは既に納付済みの法人税の還付請求の機会も多いだろう。

ちなみに聞いた話しだと、このGAAケース、裁判所で争われてから先日Tax Courtが判決を出すまで3年も掛かったらしい。オピニオン自体は結構短くてどちらかと言うとシンプルだったのでどうしてそんなに時間が掛かったのか少し不思議。

Sunday, July 30, 2017

過少資本税制の文書化要件適用1年延期

国境調整が正式に闇に葬られ「消費地課税よ永遠に」となった翌日の7月29日、日本企業の米国オペレーションにとってもうひとつ最大の関心事と言ってもいい米国過少資本規則に基づく文書化要件適用開始が一年延期されると発表された。

東海岸では金曜日も正午を回り、NYCは比較的涼しくて過ごしやすく週末に向けていい感じのVibeが街に漂い始めた矢先、財務省によるNotice 2017-36発表というニュースが届いた。過少資本税制(正式にはDebt/Equity区分と言うべきだけど)に基づき2016年のオバマ政権末期に滑り込みで最終化された財務省規則は、とてつもなく複雑な「Funding規定」が既に法的な効果を持っている一方、文書化規定は2018年1月1日またはそれ以降に締結される関連者間ローンから遅れて適用となっていた。更に最終規則では、文書化を整えるタイミングも申告書提出までと緩和されていたので、3月決算の多い日本企業的には早くても2019年1月15日(なぜかIRSは申告期限を一月遅らせているので)までに対応すればいいことになっていた。

とは言え、時は既に2017年夏。そろそろ文書化対策も本腰を入れて考えなくては・・、となりそうな絶妙なタイミングで適用一年延期の通達が出たことになる。これで3月決算の場合、最長2020年1月までに文書化を整備しなくてもいい形となり、文書化熱は又しても大きく後退することとなりそうだ。2020年と言えば東京オリンピックの年だし、現時点では遠い未来のように感じられる。でも多分直ぐにその日は来てしまうんだろうけど。

以前から触れてるけど、最終規則は特に従来からのCommon Lawに基づくDebt/Equity区分の概念には手を付けておらず、したがって今までの判例等に基づく考え方がそのまま今日でも適用される。少なくとも前政権下の財務省のポジションは文書化要件は従来から充足が必要であり、最終規則では単にその点を正式に再度認知し、また文書化の内容を統一しただけというものだ。したがって、今回の延長も必ずしも文書化が2019年の関連者間ローンまで存在しなてくもいいと言う性格のものではなく、「文書化ナシ=Equity扱い」という推定規定の適用がない、または文書化の内容に関して必ずしも規則通りでなくてもいい、という意味を持つものと考えるのが正しい。文書化要件の中でも特に不履行時の法的権利の行使実績とかは必ずしも規則通りには担保されていないケースも多いだろうけど、レバレッジが過大と判断され得るケースでは返済能力の合理的可能性とかはある程度文書化しておく必要がある。

ちなみに最終規則はトランプ新政権による「悪法」の見直しプロセスで、納税者側の負担が大きい規則の1つと認定されており、今後、更なる見直しが入る可能性がある。新政権誕生の頃には、この最終規則は即廃案かと期待されていたけど、現実には何をするにも法的なプロセスを経ないといけないので結構時間が掛かる。有権者の忍耐がどれだけのものかという点は2018年の中間選挙の行方を考える上で重要なファクターだろう。ただ、WSJの記事によると、トランプ政権が何も実行できていないというのはオバマケア廃案、税法改正等、立法府の議会の問題が大きく、行政府側で達成できる規制緩和は相当実行されているという。確かに税法の世界でも規制緩和の話しはあっても以前のように複雑な規則が乱発されていることはない。悪法と認定された規則を今後新政権下の財務省がどのように処理していくか興味深い。

Thursday, July 27, 2017

「Big 6」による税法改正声明文発表(国境調整正式取り下げ)

Big 6が今週中にも税法改正に関して何らかの声明を発表するという憶測が週前半からあり、今週に入って以前にも増して下院、上院、大統領府の重鎮がかなり議論を重ねていて慌ただしい感じだった。上院がオバマケア廃案に未だ手間取っている中、次の立法の目玉となる税法改正の方は水面下でかなり動きがあるように見えた。そして今日、Big 6の発表に漕ぎつけここに来て一応一つ心理的に大きな進展を見たと言える。

ここでいうBig 6は会計事務所のことではない。と言っても今の人は「だって会計事務所はBig 4なんだから会計事務所の訳ないじゃん」って思うかもしれないけど、その昔、会計事務所はBig 6だった。というか更に以前は実はグローバルなネットワークを持つ大手会計事務所はBig 8として知られていた。Big 8は70年代後半から80年代に掛けてグローバルネットワークを完備して多国籍企業、特に米英企業に対する世界ベースでのサービス提供能力を誇っていたが、1989年にEWとAYが合併して今のEYができ、DHSとTRが合併して今のDTとなり、Big 6時代が到来した。DHSは黄色いワークペーパー、TRは薄緑のワークペーパーで、合併後しばらくはその色が違うと旧DHSやTRのパートナーはレビューするのが嫌だと言ったりした合併に伴う悲喜交々の逸話も今は昔だ。その後、1998年にPWとCLが合併して今のPwCとなり、Big 5となる。この頃の話は覚えている方もいるだろう。で、2001年には例のEnron事件でAAが解散に追い込まれ、現在のBig 4体制に至っている。

でも今日の話しは会計事務所の歴史の勉強ではなく、米国税法改正の中心的なプレーヤーを意味するBig 6による声明文の話しだ。何がBig 6かと言うと、立法府の両院リーダー、そして両院の税法立案担当委員長、そして行政府から財務省長官、国家経済委員会長という面々で構成される税法改正の最高意思決定の重責を担う方たちのことだ。すなわち、下院議長のPaul Ryan、上院多数党院内総務(凄い役職名・・)のMitch McConnell、Steven Mnuchin財務長官、Gary Cohn国家経済委員会長、下院歳入委員会長のKevin Brady、そして上院財政委員会長のOrrin Hatchの6人だ。迫力満点の強者揃いだ。

そうそうたる顔ぶれのこのBig 6。そんな凄いメンバーによる声明だけに4月の大統領府のレターサイズ一枚の原理原則とは異なる内容の濃いものが発表されるのかと言うとそうではない。内容が軽いであろう点は充分に予想されていたことで、今回の声明は単に両院と行政府が足並みを揃えて税法改正の決意表明ができた点に心理的な意味が見出さるという性格のものだ。税法の内容そのものとしては今回の声明もトランプ大統領案の発表に劣らず目を見張るものはない。敢えて言えば国境調整は正式に取り止めという点が確認された位だろう。国境調整は輸入業者等の反発が激しく、下院、上院 行政府を一枚岩にする際の大きな足かせとなっており、ここ数カ月ゾンビ状態だったのでこの点に特に斬新さはない。

後は相変わらずの共和党節が炸裂していて何となく微笑ましい。何年も実現できなかった税法改正にコミットしている議会と大統領により米国市民の皆さんにより多くの手取りを持ち返ってもらうとか、雇用促進、経済成長を助長するとか、ミドルクラスを一番念頭に置いているとか、大統領の強いリーダーシップの下、行政府は議員の先生200人、経済界から数百人規模のステークホルダーと意見交換を重ねてきたとか、4月26日のトランプ政権記者会見のデジャヴ状態だ。

具体的な点と言えば、税率はできるだけ低くし、中小ビジネスにもその恩典を確保し、前代未聞の設備投資減税を試みるという位。テリトリアル課税移行を示唆するコメントもあるがこの点は既に業界では織り込み済みなので逆にテリトリアル課税にならなかったらビックリ。また10年間とかの期間限定ではなくできるだけ恒久措置にしたいとしている。う~ん、トランプのレターサイズ1枚も軽かったけど、今回のはナンともっと軽い。議員200人だの業界の重鎮だのと何カ月も会ったり、Big 6間で何カ月も議論を重ねてきた結果がこれというのはチョッとお寒い気がしないでもないけど。税率は行政府15%、下院歳入委員会のThe Blueprint20%だけど、特に具体的な税率への言及はなし。中小ビジネス云々はパススルーにも低税率を適用するというものだろうけど、かなりテクニカルな問題を秘めているだけに今後どのように条文化されるか楽しみ。また設備投資減税の部分はキャッシュフロータックスを示唆しているのだろうか。The BlueprintのDBCFTのDBはなくなったのに都合のいいCFは残すということなのだろうか?そんなコンセプトも何もない単なるポリティクスの産物を目の前にUC Berkeleyの経済学者はさぞ落胆していることだろう。金利の損金不算入とか悪いニュースは一つも入っていないけど、設備投資をキャッシュフローで費用化させて、国境調整なしでは一体どこまで税率を落とせるのだろうか?Aggressiveな税率をターゲットにすると代替歳入源が必要となり、変な方向に話しが行く可能性もある。かなり支離滅裂というか場当たり的。オバマケア廃案が失速しているせいで3.8%のNIITとか未だ残った状態での税法改正となるとそちらも税法改正の枠で何とかするんだろうか。党内調整が大変そう。

まあ、下院歳入委員会と上院財政委員会がいよいよ本気でMarkup(条文のドラフト)に入るということが確認できただけでもプラスと評価しておこう。

Saturday, July 15, 2017

外国法人による米国パートナシップ持分譲渡・売却

最近、米国税法改正の動向というか停滞にかかわる話しが多く、税法そのものの実質的な話題に乏しい。ひとつには新政権の規制緩和努力に伴い、財務省等の行政府が以前のようにむやみやたらと規則を発行し辛くなっているという背景もあるだろう。ここ数カ月で考えると、5月に公表されたスピンオフの「North South取引」に対するRevenue Ruling 2017-09がSub C的にまあ興味深かった位。

そんな中久しぶりに日本企業に影響大のTax Courtケースが出た。「GRECIAN MAGNESITE MINING, INDUSTRIAL & SHIPPING CO., SA,」(略して「GMM」)だ。SAというから南米の法人のケースからと思ったら実はギリシャ法人の米国における課税のケースだった。社名が「Grecian」だからそれはそうだよね。

で、このケース、外国法人が米国パートナーシップ(LLCとか米国税務上パートナーシップ扱いの主体を含む)持分譲渡から得る譲渡益が米国で課税対象となるかどうかという比較的どこにでもある事実関係にかかわるものだ。日本企業でも直面することが多い問題だ。「えっ~そんな単純な取引の扱いが法廷で争われるってどういうこと?」って皆ビックリかもしれないけど。

この点に対する米国税法上の扱いは比較的明確だったはずだ。譲渡益はSub Kの世界ではパートナーシップ持分と言うパートナシップ内部資産とは別の個別資産を譲渡して得られるキャピタルゲインとなる。すなわち譲渡益の扱いを考える上ではパートナシップをAggregate論ではなくEntity論で扱う。例外はホットアセットと言って含み益を持つ棚卸資産とかの特定の通常所得となるべきパートナシップ資産に帰属すると考えられる部分の譲渡益で、この部分はあたかもパートナシップ内部の資産を個別に譲渡したかのように扱われ、結果としキャピタルゲインではなく、通常所得となる。ただ、原則はパートナシップ持分という個別のひとつのキャピタル資産を譲渡したという扱いとなる。

このことから外国法人が米国パートナシップ持分を譲渡する場合、ホットアセットにかかわる部分以外に関しては、キャピタルゲインを認識したことになるけど、キャピタルゲインは米国源泉だと、Asset Test、Activity Test等に基づきECIかどうかの判断をしないといけなくなり、外国源泉だと米国にある事務所に帰属する場合のみECIとなり得る(これはかなり例外的)。またパートナシップ持分譲渡益がパートナーシップが持つ米国不動産持分に帰属すると扱われる場合には、FIRPTA規定に基づき強制的にECI扱いとなり結果として申告課税となる。

となるとパートナシップ持分を譲渡した際には譲渡益の「源泉地」が重要な検討事項となるけど、パートナシップ持分を含む「動産(Personal Property)」から認識される譲渡益の源泉場所は通常売り手の居住地を基に決定される。米国上場企業の株式を日本の投資家が譲渡してキャピタルゲインを認識しても通常米国で課税対象とならないのと同じ理由だ。売り手の居住地を基に所得源泉地を決定する一般規定の例外は、外国法人が米国に事務所を有しており、かつ譲渡益がその事務所に帰属すると扱われるケースだ。その場合、仮に納税者が米国非居住者でも譲渡益は米国源泉となる。

この米国に事務所があって云々という部分は結構分析が複雑なんだけど、GMMのようなケースでは仮にパートナーシップそのものが米国に事務所を持っていることをもってパートナーである外国法人も間接的に米国事務所を持っていると扱われたとしても、パートナーシップ持分譲渡という行為はパートナーシップ側の米国事務所がMaterialに関与したり、通常の事業活動の一環で行っているものではないので、例外規定は適用がないと考えるべきだろう。

今回のGMMケースでは、一部FIRPTA規定に抵触するものがあり、その部分は課税対象ということで納税者およびIRSで意見の一致をみていたが、それ以外の部分のパートナシップ持分譲渡益が米国で課税対象かどうかが争われていた。

上述の通り、税法の考え方は比較的明確で、パートナシップ持分譲渡益はキャピタルゲインであり、外国法人が認識するキャピタルゲインは米国にある事務所に帰属しない限り、外国源泉となる。となると通常はECIとはなり得ず、米国では非課税となるというものだ。今回のGMMもそのような扱いに基づく申告ポジションを取っていた。

IRSはこのような事実関係に対して税法では説明し切れない理論で、パートナーシップが各資産を個別に譲渡したらECIになる場合には、仮にパートナーがパートナシップ持分を売却したとしてもLook-throughするような形で、ECIになると主張している。この手の主張は従来から展開されていて、古くはRevenue Ruling 91-32が有名だ。この法的に若干訳が分かり難いRulingがあるせいで、税法上は明らかに米国では非課税となるべき日本企業による米国パートナシップ持分譲渡取引に関していつも課税かどうかあれこれ議論しないといけない状況に陥っていた。このRulingは日本企業に米国税務サービスを提供している者なら必ず知っている(べき)有名かつとても迷惑なRulingだった。

今回のTax Courtの判決ではIRSの「結果有き」の主張はバッサリと否定され、長年のもやもやがスッキリした。判決文に記載されているIRSの主張はどれも結果優先で詭弁に過ぎず、時として無理があり過ぎる感じ。パートナシップ持分をひとつの資産と扱ってしまってはFIRPTA規定が適用できないとか、かなり場当たり的な観がある。

Tax Courtの議論で一点不思議だったのは譲渡益はFDAPではないと断った上で、米国源泉であればForce of Attractionに基づき課税となるというような部分。もし米国源泉だったらFDAPでなくれもCapital Gainはsection 864(c)(3)を論じる前にSection 864(c)(2)のAsset TestやActivity TestでECIかどうかを決定するんじゃないかと思ったけど。ここは僕の誤解の可能性もあるのでもう少し後で考えてみたい。でもどっちにしても米国源泉ではないので関係ないけどね。

今回の判決ではRevenue Ruling 91-32に対して「税法を合理的な理由もなく不適切に解釈」している通達として何の法的価値も認めないとまで言っている。IRSによる法的根拠のない暴走型のRevenue Ruling 91-32をバッサリと切ってくれた形だ。これで今後、同様のケースでは米国非課税という法的主張が通り易くなるけど、税務調査の局面でIRSが引き続きどう出てくるかは、Tax Courtの判決にIRSが不本意ながらも従う(Acquiesce)と発表するかどうかで大きく変わる。

そもそもこの問題、議会がSection 741とかチョッと変更すればIRSの主張するような扱いになる訳で、実際Revenue Ruling 91-32を条文化するに近い法案は過去に提出されている。ただ、未だに法制化はされていない。法制化されていないものをポリシー的に行政府がRulingとかの形で自らの手で実質法制化してしまうのは三権分立の観点から大きな問題だ。GMMケースは行政府の暴走を止めるために司法府が立法府の意志を尊重したという形で解決したので、三権分立がうまく機能していて喜ばしい。最近は大統領令の解釈を巡り、Standingがあるかどうかも分からない州とかの訴えに地方裁判所が厳密な憲法解釈ではなくポリシー優先的な判決を出すことも散見され、きちんの憲法の趣旨に立ち返った判断をして欲しいと米国の法の支配の行方を憂えていたが、GMMの判決は明るいニュースだった。

Friday, June 30, 2017

米国税法改正は七面鳥かチョコレートか

最近、何回か続けて「何周年記念」みたいな話しを聞く機会があった。まずは何といってもiPhone発売10周年。発売の日に店前に並んだけどそこでは買えなくて結局別の店でようやく元祖iPhoneを手にしたあの日の感動から10年とは時が経つのは早い。その後買ったiPhoneは次々と空港でなくしたり、タクシーに忘れたり、飛行機のシートに挟まれて割れたり、ポケットに入れたままプールに入ったり、修復不可能な位スクリーンが割れてしまったりといろいろあったけど、初期型は今でも何とか持っている。当時は何て格好いいDeviceと感動したけど、今見ると分厚いし、小さいし、App Storeがなかったりと年月を感じさせる。それにしても10年で世の中を変えてしまったといってもいいiPhoneを世に送り出したAppleは凄い。他のメーカーが後から同じようなものを真似して作るのは容易だけど、あのようなコンセプト自体を創造し現実のものとしたSteve Jobsは偉大だ。

次はBrexit一周年記念。こちらも「え~もう一年?」という感じ。つい最近のことだったかのように感じる。で、次が肝心なAnniversaryなんだけど、下院歳入委員が「The Blueprint」を発表してからも一年が経った。このThe Blueprint、発表当時は共和党の大統領が誕生するかどうか分からなかっただけにそんなに注目されてた記憶はないけど、トランプ大統領が当選を果たした2016年11月に実現可能性が俄然高まり、同時に注目度合が高まった。その後の国境調整狂想曲は皆様もご存知の通り。

で、このThe Blueprintにとって記念すべき日となった2017年6月20日、The Blueprintの生みの親と言っても過言ではない、現下院議長のPaul Ryanは今後の税法改正にかかわる「Major」なスピーチを披露してお祝いした。DCで開催された全米製造業協会、National Association of Manufacturers、略してNAMのサミットでペンス副大統領に続いて登場したRyanはまず「規制緩和、オバマケアの見直し、税法改正、軍の再構築」の4つに注力しているとスピーチを始め、中でもオバマ時代の行き過ぎた規制を次々撤廃しているという功績をその日の聴衆である製造業に対する恩典と結び付け、一周年祝賀スピーチはスムースな滑り出しとなった。

そして満を持して「Ladies and Gentlemen・・・」と改めて切り出し、皆が待ち望んでいた米国税法の話しに移った。「米国税法改正の話しは金輪際二度としないでもいいよう今回こそ大胆な改正を実現する」と力強く宣言。レーガン政権により行われた最後の抜本的税法改正から30年経っている点を「これはその昔、僕が運転免許を取った年です」と新たな税法改正の機が熟している点をおかしく強調した。

でもその後のスピーチの内容には特に目を見張るような新しいポイントは見られなかったと言っていい。税法が複雑過ぎるとか、遺産税やAMTは撤廃するとか、抜け道はふさいで減税するとか、全世界課税なので米国に資金が還元されない等のいつもの話しだ。

今回のスピーチに関して、皆が最も関心を持っていたのは、風前の灯的になってもPaul RyanやKevin Bradyが未だ諦めずに提唱しているDBCFTの特にDBの部分、すなわち国境調整に関してRyanがどのようにコメントをするかという点に他ならない。でも、余りにセンシティブで、触れることすら憚らるという判断に至ったのかどうかは定かじゃないけど、結局この点にかかわる直接的な言及はなかった。一部、DBCFTに暗に触れているかのような部分はあるにはあった。それは、米国企業が外国に行ってしまうような出来の悪い税法は変えないといけないと断じた際に「違う発想で税法を考えないといけない。アプローチはひとつではないが、下院はひとつのアプローチを提唱していて、この点は大統領府と調整している項目のひとつだ」とした部分だ。DBCFTは確かに違う発想。違い過ぎて普通の人にはなかなか受け入れられないんだけどね。「他の国を真似していてはスーパーになれない」みたいな趣旨のスピーチがその後も続くけど、この部分も従来の法人税の枠から脱することを示唆しているように聞こえた。

スピーチ後のインタビューでRyanは税法改正をThanksgiving(11月後半)までに実現したいと語っていた。「それはいくら何でも無理では・・・」という反応がほとんどだったけど、もしそうなったら凄い。七面鳥スタッフィングしてオーブンに入れて料理してる間に新税法を読むことができるかも。でも既に7月間近で未だに上院ではオバマケア廃案に手間取っているくらいだから、Thanksgivingはチョッと非現実的。サンタさんのプレゼントも危なく、早くてもバレンタインデーのチョコレート食べながらくらいのタイミングじゃないだろうか。それとも一部でささやかれているように議会の先生たちが8月の5週間の休暇返上で、税法改正等の最重要法案の制定に精を出してThanksgivingを目指すのでだろうか。このアイディア聞こえはいいけど、実は議員たちは手ぶらで地元に帰って選挙区民たちに怒られるのが怖くてDCに残る口実を探しているのかもね。

Thursday, June 15, 2017

トランププランと今後の税法改正動向 (5)「パススルー」

前回のポスティングでは、税法改正と言うのはテクニカルな話しではなく、むしろポリティカルな話しであること、また税法改正の行方が白紙に近い状態にあることから自分に都合の悪い規定は阻止しようとDCにて強力なロビー活動が展開されている点に触れた。最終化されるかどうか分からない、またされるにしても改正内容が不明な税法改正の話しに、現時点でどれだけ時間を割いて触れていくのかは微妙な問題だけど、パススルーに関しては一回書いておきたい。

現状の税法ではパススルーはその名の通り、所得、費用、税額控除等を事業主体ではなくそのオーナーにパススルーして、各オーナーがパススルー主体からの所得、費用等とオーナー側の他の税務ポジションと合算して申告を行う。したがって、同じ100の所得でも、39.6%の税率に属する個人オーナーにパススルーされるとオーナーは39.6の税金を支払うことになるし、15%の税率に属するオーナーの場合には15の税金となる。法人がオーナーの場合も同様でその場合は大概において34%か35%の法人税率に基づいて税金を支払うことになる。また、もしオーナーレベルで損失が出ていれば、100のパススルーと合算できるのでその年の税金はなくなることもある。逆に損失がパススルーされてくる際もPAL規定とかAt Riskとかに抵触しなければ基本通算が認められる。更にオーナーに配賦されてくる金額は必ずしもネット課税所得に持分を掛けた金額、すなわちBottom Line Allocationである必要はなく、グロス売上、減価償却、キャピタルゲインとか特定の項目がそれぞれ個別%で配賦されてもいい。

株式会社の株主が同じクラスの株式を持っている限り、全員同じ配当を持分に準じて均等に受け取るのと異なり、パススルーはオーナー間で自由にどのような項目をどのように分けるか合意することができる。ただし、オーナー間で合意された配賦が税務上も認められるためには、配賦が「実質的な経済効果」を持つとみなされる安全ガイドライン(Section 1.704(b)のSafe Harbor)の要件を充たすか、またはPIPに準じているか、のいずれかの必要がある。以前は安全ガイドラインが手堅いと言うことで好まれたが、ここ何年もトレンドは逆になり安全ガイドラインはディールのエコノミクスが反映されているのかどうか分かり難いため嫌われる傾向にあり、ターゲット配賦とかのPIP方式がすっかり定着している観がある。この辺の話しはパートナーシップ税法の醍醐味だけど、それだけで10回くらいのシリーズになるのでそのうち。

総じて言えば、上述の点、すなわち事業主体とオーナーで二重課税がない点、損益通算が認められる点、弾力的な配賦が可能な点がパススルー主体の税務上の魅力と言えるだろう。

で、今回の税法改正だけど、パススルーの所得に関してオーナー側で課税するという形は温存するものの、税率はオーナーの税務ポジションにかかわらず一定にしようという動きある。もともと下院歳入委員会のThe Blueprintもパススルーに対する特別課税に言及していてパススルー所得は25%で課税するとしている。

この25%という税率設定は法人税率20%との比較において少し不思議。FICAとSEタックスを無視して所得税の世界で考えてみる。例えば同じビジネスを法人形態で営んでいるとして、そこで100のネット課税所得があるとする。The Blueprintでは法人税20%だから、税引後の分配可能利益は80。個人株主側の税率はThe Blueprintによると所得水準に基づいて12%、25%、35%の3段階。だけど配当、キャピタルゲインは税率は半分と提唱されているので配当課税は6%、12.5%、17.5%だ。となると、100の利益に対するトータル税負担は、各々24.8%、30%、34%となる(法人税20+(80 x 配当税率)。12%区分に属する納税者だとパススルー主体でも法人でも同じような結果となる一方、他の納税者はパススルー主体の方が有利となる。

The Blueprintをそのまま鵜呑みにすると全てのパススルー主体に25%が適用されるようにも見えるが、その後の発言等を加味すると中小規模のパススルーのみを対象にしているようにも聞こえる。パススルーが中小でもオーナーの税率区分は35%のケースは多いだろうから何か変な感じ。その辺を意識して本来給与としてオーナーに支払わらるべき金額に関しては通常の税率、すなわち、12%、25%、35%で課税するとしている。以前のポスティングにも書いたけど、何が適正水準な給与かというValuationの問題は主観的な判断の余地が大きくかなり争点となるだろう。パンドラの箱を開けるようなものだ。それともCamp案で言及されていたように、パススルー所得の70%は自動的に給与所得同様とみなす、というような機械的な判断法を設けるのだろうか?

一方、4月26日発表のトランプ税法改正プランでは法人税の15%同様にパススルーも15%にするということのようだった。トランプ案ではパススルーときちんと言わずに中小事業にという表現をしているので分かり難かったがQ&Aとか聞く限り、S法人を含むパススルー、個人事業主を対象としているようだ。The Blueprintのパススルー規定も文字通り解釈すると個人事業主(Sch. Cの方)には適用がないようにも読めるが、おそらくこちらも個人事業主も含むことを前提としているんだろう。トランプ案は法人もパススルーも一律15%ということみたいだけど、上と同様の税率比較をするとこちらも不思議な結果となる。大手事業主がパススルー税率の適用を乱用しないよう対策を講じると財務長官のMnuchinは言うが、その対策だけでも税法がますます複雑化するのは必至。

トランプ案もThe Blueprint同様に給与として支給されるべき金額は通常の課税にするとしている。何が給与相当なのかというValuationをルール化するのが至難の業と思われる点は上述の通りだが、商務省長官のWilbur Rossは、そんなルール策定はDCの弁護士、税務専門家のブレーンパワーを考えれば朝飯前で、そんなルールも作れないのであれば職を変えた方がいいと言い切る。当人のDCの弁護士や税務専門家たちはそんなルールをどうやって策定したらいいのか途方に暮れているのに。このようなルールは議会がドラフトする税法そのものには入り難いので、財務省規則にて規定される可能性が高い。財務省も頭が痛いだろう。既存の法律下でも、S法人のオーナーがSEタックスに抵触しないよういろいろと試みるのを見ても、一旦パススルーに特別な税率を規定してしまうと多くの争点が生じるだろう。

また、大昔に何回か触れたCarried Interestに関しても網を掛ける、すなわちキャピタルゲイン税率ではなく通常税率で課税するかのような話しが税法改正の一環で相変わらず出ている。でもパススルーに特別税率が認められるんだと今までの単純なキャピタルゲイン税率と通常税率の差異だけの話しではなくなってしまうのでCarried Interestの課税強化を仮に実行するとしても前提がそもそも変わってしまうけどね。ここに来てCarried Interestの扱い変更は、資源、不動産、PEファンドとか特定の業種を狙い撃ちすることになるので現状通りにしてあげればどうかという話しも出ている。でも元々他の業界では適用する機会がないプラニングなんだから、そこを狙い撃ちしているという理由で強化をあきらめるのは何か変。国境調整と輸入業者の関係みたいだ。

実はパススルーの特別扱いに関してはカンザス州が似たようなことをしているので次回は簡単にカンザス州の実体験に関して。

Saturday, June 10, 2017

トランププランと今後の税法改正動向 (4) 税法改正とKaty Perry#2 「ロビー活動」

前回まで3回「国境調整」というかDBCFTが目指す真の姿とそのポリティカルな運命に関して触れた。DBCFTにかかわる議論を見ていると税法改正と言うのはテクニカルな話しでは全くなく、ポリティカルな話しであることが良く分かる。ポリティクスというのは時には事実関係とか法の支配とは関係ないところで事を進めていく傾向があり予見可能性が低く太刀が悪い。

余りにポリティクスの影響が強力で、過去数カ月の議論を見ているとかなり空中分解気味。となると最も現実的な落としどころは何も起こらない現状維持と見る向きもある。ただ、共和党政権の実質的な信任投票と言える2018年の中間選挙が迫っていることを考えると、共和党としては何としても2017年内または2018年前半にはオバマケア廃案と何らかの税法改正を終えてしまう必要があるだろう。ただ、税法改正を2017年末には達成したいという党の総意には誰も異論はないだろうけど、現実には改正案の個々の条件を巡って党内の意見調整が難しく、また大統領府の強力なリーダーシップも不在で、バタバタと慌てて何か法制化したとしてもThe Blueprintが目指していたような抜本的な税法改正と言えるような立派なものに至るのか、それとも単に付け焼刃的な減税で終わってしまうのか、現時点では誰にも分らない。まあ、税法改正と単なる減税は聞こえは違うけどその境界線は必ずしも明確ではない。どこまでやれば税法改正でどこまでは単なる減税なのか、という境目はボヤけてるので余りこの用語の差異に拘っても仕方がないかも。

素早く抜本的な税法改正を法制化しようとする際の障害のうち、議会共和党が一枚岩でない点はイデオロギーの話しなので仕方がないが、本来そんな時こそ大統領がリーダーシップを発揮して全体を取りまとめたり導いたりする必要がある。ところが、トランプ大統領は次々と不必要なTweetとか規律に欠ける行動で自ら墓穴を掘りまくりPolitical Capitalの多くを浪費してしまっている。以前のポスティングで税法改正の議論をKaty Perryの「Hot n Cold」に例えたけど、トランプ大統領の現状は同じくKaty Perryの「Self-Inflicted」の状態と言える。

トランプ大統領府による税法改正プランがほぼ白紙に近い点は前回までのポスティングで再三触れているけど、その点が誘発する悪影響のひとつとして激しいロビー活動が挙げられる。すなわち、税法改正のキャンバスが真っ白な状態で提示されている訳だから、「自分に都合のいい絵を描いてしまおう」という輩がDCに押しかけている。小売業関連の団体はThe BlueprintのDBCFTの更にその一部のDB部分に対する不信感を全力で煽っているし、全米不動産業界は8,000人単位のメンバーをDCに送り込んで、標準控除の拡充や州税控除撤廃反対を展開している。不動産業界がなんでそんなものに反対しているのかチョッと分かり難いかもしれないけど、州税控除がなくなり標準控除が拡充されるとSch. Aで個別控除を取る納税者の数は激減する可能性がある。となるとせっかく住宅ローン金利を支払っても税メリットがなくなってしまい、不動産市場に悪影響?ということなんだろう。風が吹いて桶屋が儲かるような話しにも聞こえるがロビー活動に油断は大敵。不動産業界は更に農場主やPEファンド達と一緒に金利の損金算入温存に注力しているし、多国籍企業のロビー活動の矛先はテリトリアル課税移行時の一時課税を何とかトランプが以前に言及していた10%ではなくThe Blueprintの3.5%または8.75%にするという点に向いている。結局、皆、白いキャンバスに自分たちに都合のいい色を塗ろうとDCに集結している。余りに皆が「これは嫌です、あれも嫌です」と不整合な色を付けすぎると何の色もないブラックになってしまい、歳入を確保した形のきちんとした税法改正にはなりようがない。

個人が支払う州税・地方税の個別控除撤廃は不動産業界に限らず全体にかなり不評。特に州税の高いNY州、CA州居住者への影響が大きい。トランプ政権の全てに大反対を表明するNY民主党上院議員で上院少数党院内総務も務めるChuck Schumerもいち早く反対を表明し、不動産業界と同じく、そんなことをしたら住宅ローン金利が控除できなくなり大問題だとしている。

それはそうなんだろうけど、何か大きな改革を起こしましょうという時に、個人所得税の州税の個別控除すら撤廃できないようでは他は押して知るべし。支払利息の損金不算入にしても、州税控除の撤廃にしても、これらから見込まれる歳入は大きく、それらがあるからこそ15%だの20%だのという低税率の実現が可能になる訳で、損する改正は嫌だけど税率は低くというのは算数的に無理がある。このことから財政均衡は無視してでも減税するという話しがちらほら出てきている。

上院で60議席を持っていれば共和党としては好きな法律を通すことができるが、現実には51議席。その場合には税法改正は上院でも例外的に過半数で通すことができる予算調整法内で立法するオプションしかない。その場合には財政均衡を保つという追加の要件が付いて回る。にもかかわらず赤字になっても減税するというような話しが出てくるのは不思議に思えるけど、実は予算調整法を使っても10年を超えてのマイナス財政は許されないというのが一般的なルールだそうで、だったら10年期限で思い切った減税をするかという話しもある。以前にもブッシュ(息子)が2001年に行った大型減税はこの理由で「なお、この税法は5秒、じゃなく10年で自動的に消滅する」となっていた。

う~ん。このセリフは今聞いても格好いい。これ知ってるよね?「Mission Impossible」で作戦内容を伝えるテープの最終部分だ。メッセージの最後にテープレコーダーが燃えちゃうやつ。ちなみに英語では「This message will self-destruct in five seconds」だけど、日本語だと「なお・・」ってつけてるのがイカしてる。トムクルーズが演じる現代のMission Impossibleはどちらかというとド派手なアクションムービーでこれはこれでもちろん楽しめるけど、昔のもう少しダークな感じの「スパイ大作戦」もよかった。「大作戦」っていう実にレトロっぽい題名が最高。ウルトラマンの「MAT、Monster Attack Teamの略である」の「MAT」も中々笑える格好いい名前だ。「マット隊員」とか呼ばれたりして昔の名前はGuysなんかより凄い。ちなみにメビウスのGIGっていうのはキャプテンスカーレットのSIGから来てるそうだ。で、スパイ大作戦のテープのメッセージには、真ん中辺に「例によって、君あるいは君のメンバーがとらえられたり殺されても、当局は一切関知しない」の部分もあるが、あの言い回しも最高。ちなみにこの部分の「当局」は英語では「Secretary」だ。各省の長官をSecretaryということを知っていれば違和感はないけど、直訳で秘書とならないようにね。税法でも財務省規則策定の権限は「Secretary」、すなわち財務長官に与えられている。ドラマの和訳と言えば、「謎の円盤UFO」の英国オリジナルバージョンだとタイプライターが打ち続けるOPメッセージを「1980年既に人類は・・・」って格好良く訳してたけど、あれも名訳だ。今は2017年だけど、地球防衛組織シャドーは37年前に既に「沈着冷静なストレーカー最高司令官の元に」結成されていたことになる。あのOPは今見ても格好良すぎ。

で、何の話しだったかって言うと、歳入を伴わない減税を実行するには予算調整法等の仕組みから10年の時限立法とするしかないと一般に言われている点でした。ただ、正確なルールは必ずしも10年ではなく「Budget Window」を超えて赤字になってはいけないということのようで、従来Budget Windowは10年と考えられていた。で、この10年と言う数字には少なくとも1974年Budget Actに基づく法的な拘束力はないようで、最近ではBudget Windowは20年、さらには30年と考えてもいいんだ、というような過激な主張も出てきている。30年を超えて赤字にならなければ予算調整法の枠で法制化が可能という主張だ。30年だったら時限立法とは言っても限りなく恒久措置に近い。

ビジネスプラニング面、また立法プロセスの規律面からも税法改正は期間限定ではなく恒久的な法律で実行されるのが本筋だろう。R&Dクレジットが時限立法だったころは毎年ハラハラしたし、ブッシュ減税失効時の2011年、そして2年延命後の2013年もバタバタだった。ただ、今回の税法改正を実行するに当り、ロビー活動が激しくにっちもさっちも行かなくなるようだと、Mnuchin財務長官が しばしば言うように「恒久的な改正は時限立法よりベター、でも時限立法は何もしないよりはベター」ということで結局は時限立法に落ち着くのだろうか?