Saturday, December 9, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(11)「上院可決から一週間」

この金曜日の夜中でちょうど上院本会議が税法改革の上院案を可決してから一週間となる。あの後、数日東京に行ったりしたせいか、とても長い月日が経過した気がする。先週の金曜日は上院の可決を待って結局夜中の2時まで起きてるはめになったけど、今週はもっと早く床に付けるから安心と思っていたら、いろいろあって実はもっと遅くまで起きているはめに。う~ん。来週後半も数日東京だしチョッとここらでちゃんとした睡眠を取らないとね。

で、この一週間の進展を見てみると、月曜日には早々に下院が両院協議会に参加するメンバーを選抜、上院も週中には正式に任命している。しかし実際の調整はこの前から水面下で熾烈に進んでいる。今日時点の憶測では来週(12月11日の週)はまだ調整に充てられ、両院での投票は翌週明けと言われている。月曜日が18日だから自主的に設定しているに過ぎないとは言え「Drop Dead Date」と言われる22日にかなり近づいていくこととなる。

争点となって炎上しているのは予想通り、個人所得税の州税控除、子女税額控除、医療費控除、と有権者にとって身近なものばかりだ。法人関係で手が付けられる可能性が高いのは上院案のAMT温存案。金曜日の夜に急に数字合わせ的にまずは個人のAMT温存が決まり、そのついでっぽい感じで法人のAMTも温存が決定されたが、拙速に決定されその影響等が余り熟考されていないのは明らか。先週日曜日のポスティング「法人税率は本当に20%?」で触れたけど、従来は通常税率が35%で、AMT税率が20%だったので、確かに「Minimum税」と言えた。しかし通常の税率が20%(22%かもしれない点は前回のポスティング通りだけど)に低減してAMT税率を20%のままキープというのは余りにおかしい。課税ベースはAMTの方が高いケースが多いので、このままだと全法人AMTというような変な状況が想定される。

「どっちでも20%払えばいいからいいじゃん」と思うかもしれないけど、二つ大きな問題がある。まず過去に支払ったAMTのクレジットを使える局面が激減すること。そしてR&Dクレジットのような通常の税金は減らせるけどAMTは減らせないクレジットの使い道が無くなることだ。これらの問題からAMTに関しては両院協議の過程で廃案に戻るのではないかと期待されている。

これら諸々の手当てをする際には当然新たな財源が必要となる。既に規定されている恩典を削ることでも手当はできるが、そんなことでもしようものならようやく取り付けたサポートが台無しになり兼ねない。先週もNYCのトラフィックレポートと同時に書いたけど、そこで噂されているのが法人税率22%という裏技だ。上院案が可決するまでは法人税率は聖域でそこに手を付けるのは禁じ手と考えられていたが、それが先週末に流れが変わった。法人税率は1%上げると歳入が10年で$100B増えると言われているが、22%にする方向が濃厚になると「それでは・・・」ということで「こんな恩典も温存、または追加して下さい」というリスエストが殺到するに決まっている。もう既に来てると思うけど。来週一週間でこれらの難問を解決させ、可決に必要な票を集めるプロセスを終了させないといけない。なかなか大変そうだけど、ここまで来て失敗は許されないだろう。いよいよ天王山ウィーク。

Monday, December 4, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(10)「法人税率は本当に20%?」

トランプ大統領がNYCに帰ってくる度にマンハッタンMidtownは交通規制が激しくなって結構迷惑。トランプタワーに自宅があるせいか、なんだかんだ言ってよく帰ってくるし。昨日の日曜日もマンハッタンで3件Fund Raisingのイベントがあるとかで土曜日の夕方からトランプが通る道の両側に鉄の柵が並べられ、その沿道にあるNYCのマークの入った大きなドラム缶のようなゴミ箱が一時的に撤去された。普段気にならないけど、良く見るとMidtownの道には各コーナーに律儀に大きなゴミ箱が設置されているのに気づく。でもその割に道に落ちてるゴミは後を絶たないけど。ゴミ箱が撤去されて一番困るのはワンちゃんのお散歩をさせているオーナーだろう(なんでかは分かるね?)。

NYCのポリスは鉄の柵を並べたり交通規制してドライバーが行きたい方向と逆に車を誘導したりするのが実にうまい。手慣れている理由はしょっちゅう世界のVIPが来る度に大規模な警備に駆り出されている実績だろう。UN Weekと呼ばれる9月初旬の国連総会時には世界中の要人がMidtown Eastに集まる。あの週の大規模な規制も実に手際よくこなしている。

トランプの自宅がある5th Aveと56th Streetのトランプタワーの前の56th側は大統領選に勝利した頃から無期限に車では通れなくなっちゃったし。マンハッタン運転する人なら分かると思うけど56thはMidtownの真ん中から北辺りで真昼間に西から東に抜ける必要がある際のベストなストリートの1つだった。40番台は観光客とかでごった返していて結構混むし、50とか52はRockefellerセンター辺りとかがややこしい。54は比較的まあまあだけどYork Aveに抜けることができる一番南のストリートなので需要が高い。57は14、23、34、42、72たちと同様に両面通行の大きめの道で59thブリッジ入口の関係でPark Aveより東、特にWhole Foodsの前辺りで急に混みだすのが普通。それより上はBloomingdaleとかやっぱり59thブリッジの影響で常にスローな感じ。で、56が登場していたんだけど、そこが5thで遮断されてしまった。で、そんなことは今では分かってるからGoogle MapやGPSが何て言おうとそこを抜けるようなルートは使わないけど、昨日、たまたまWest Villageの方に用があって午後早めに家に帰ろうと6th Aveを北上して来たら、Fund Raisingの会場のせいか、42より北で右折という右折が禁止されていて、右折できないだけでも困ったけど更にそのせいで大変な渋滞が引き起こされてて酷い目にあった。ロサンゼルスで405をOrange Countyとかから北上して家に帰る際、空港手前から急に混んできて、慌てて空港出口経由右のThrough TrafficでLa Cienegaに降りてSlauson経由でMDRに帰ろうと思ったらCienegaの方が混んでたりして損した気分になるのと同じ。

って、本当にどうでもいい話しで多くの紙面を使ってしまったけど、何の話かと言うとFund Raisingに帰って来た時にトランプがその間に報道陣に向かって発した興味深い言葉。歴史的な大減税がいよいよ現実になると豪語した後、「法人税は35%から20%だぜ。まあもしかしたら法案すり合わせして俺がサインする頃には22%位になってるかもしれないし、もしかしたら20%のままかもしれないしな。まあ最終的に何%になるかは見てのお楽しみだね。」とでも訳すことができる発言をしていた。

え~、前は絶対15%って一人で言い張っててUnified Frameworkが公表された後は20%が「俺のナンバー」でそれ以上は受け入れないって明言してたのに。でも、この22%って発言、単なる気まぐれではない。両院で法案を一本化させる過程で「こういう控除を足してくれないと賛成できない」とか言い出す議員が登場するに決まってるけど、問題はその際にこれ以上の財源が見当たらないことだ。予算調整法に基づき今後10年の間に$1.5Tを超える赤字を作り出さないようあの手この手を尽くし、挙句の果てにAMT廃案もあきらめたくらいだからこれ以上絞っても一滴の水も出ない。ちなみにAMT(=20%)が撤廃されず、通常の法人税率が20%に下がるとほとんどのケースでAMTになってしまうのでは、とも思われる点も今後の検討課題だろう。セコイ控除を捻り出せないという理由で30年に一回の税法改革がおジャンになってしまってはたまらん、と、なったタイミングで水戸黄門のように登場するのが法人税率22%だ。この辺りを共和党指導部から打診されてトランプとしてもExpectation Managementをしているのだろう。この2%で最後にMarco Rubioとかが押してるChild Credit拡充に充てるとか十分に考えられる。Child Creditはイバンカが力を入れてるのでトランプも娘に言われては・・となったのかもしれないし。まあ22%でもOECD平均22.5%より下だから及第点とも言え、絶対20%でないとダメという話しでもないけどね。

Sunday, December 3, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(9)「いよいよ両院すり合わせ – ここからの展開?」

先週金曜日の夜中過ぎ、午前2時前後に上院本会議を通過し、米国税法改革は31年振りの実現に大きく近づいた。今後の焦点は細かい点で多くの差異がある下院案と上院案の一本化となるが、どんなところが争点となり得るか考えてみたい。

共和党指導部は両院一致案とする過程にそれ程時間を要さないと強気の姿勢を崩していない。本当にクリスマスまでに大統領署名に持ち込むつもりだ。下院は月曜日に上院との一本化協議を担当するチームを正式に任命するとしているし、上院案をそのまま下院が可決すべきと心の中では思っている上院も一応、協議に応じるチームを任命するとしている。下院から見ると上院と一緒に事を進めるのは厄介で「敵は上院にあり」という教訓を口にするものも居るくらいで、ここまで来て喧嘩別れにならないといいけどね。

上院案から余り逸脱してしまうと52議席のうち51議席が賛成に回って可決した上院案の微妙なバランスが崩れてしまうリスクが危惧されるので、最終的にはどちらかと言うと上院案に近いものになるはずだ。細かいところで差異は結構あるとは言え、逆の見方をすれば向かっている方向、赤字容認額等の骨子は同じなので調整可能な範囲内とは言えるんじゃないだろうか。Big-6によるUnified Frameworkが功を奏した(?)のかもね。

共和党指導部が可決を急ぐのはもちろん2018年の中間選挙を見込んだり、今年中に達成するとズッと公言しているという理由もあるけど、実はもうひとつ隠された理由(と言っても僕も知ってる位だから全然隠されてないね)がある。アラバマ州上院議員の補欠選挙だ。アラマバ州上院議員だったJeff Sessionsが司法長官に任命されたため、Luther Strangeが臨時で穴を埋めているが、その後手続き的に紆余曲折あり最終的に2017年12月12日に補欠選挙が開催されることになっている。アラバマはかなり保守色が強い州なので通常であれば共和党が議席を失うことは考え難いが、最終候補者となったRoy Mooreに11月頃から過去における複数のハラスメント疑惑がメディアで報道され、共和党指導部から参選を辞退するような要請があったりして様子がおかしくなっている。もしここで民主党候補のDoug Jonesが勝利でもしようものならただでさえ52議席しかなくて綱渡りしてる状態が更に1議席減って51議席と言う危機的な状況に陥ることになる。更にRoy Mooreと共和党指導部はどちらかと言うと敵対しているので、仮にRoy Mooreが当選しても嫌がらせと言うか既得権への見せしめ的に税法改革に反対するのではないかという懸念もある。ホワイトハウスのブルーベリークイーンのKellyanne ConwayはRoy Mooreは税法改革に賛成だと主張しているけど。何だかどうなるか分からないので余計な面倒を避けるためにはアラバマ州で新上院議員が就任する前に税法改革は片付けてしまいたいということとなる。

具体的な両院の法案内容の差異の中でも、個人所得税の個別控除をどこまで廃止し、何を温存するかは大きな争点だろう。上院案はSusan Collinsを取り込むため、最後の最後になって下院同様に$10,000を上限として不動産税の控除を認めた。一方、住宅ローン支払利息に関しては下院の方が$50万までの新規取得に限定するとしているのに対し、上院案は$100万までで、かつEquity Loan以外はOKと比較的寛大だ。日本から見ていると法人税20%だとかテリトリアル課税だとかが一大事に見えたり、法人税低減のタイミングが一年両院案でズレているので、この辺りのすり合わせに目が行きがちだろう。個人の個別控除はどちらかと言うと些細な変更に見えるかもしれないけど、有権者は皆自然人であり、選挙区の民意動向に敏感な議員たちが気にするのは逆にこの辺りの規定となる。ただでさえ、州や地方の所得税の個別控除廃止で、この手の控除を取っている有権者が多いNY、CA、NJ州の議員はディフェンシブになっているところ、住宅ローン支払利息までも低減されては、という想いが強いだろう。31年振りの大改革が住宅ローン金利の控除範囲に合意できないという理由でお流れになるリスクも十分にある訳だ。日本ではニュースにもならないかもしれないけど扶養子女控除金額なんかもその範疇だ。

次に前回のポスティングでも触れた自営業を含むパススルー経由で事業所得を認識している個人オーナーに対する税負担軽減の部分がどう落ち着くかも見もの。下院案ではパススルーされてくる所得は個人オーナー側で25%で課税されるというストラクチャーとしている一方、上院案ではパススルーされてくる事業所得そのものから23%を控除するという形を取っている。元々この23%は17.4%だったんだけど、Ron Johnsonらの尽力で控除%が上院可決直前に上方修正されている。

The Blue Print以来の外せない聖域かのように見えたAMT廃案が上院ではあっさり可決直前になって取り下げられている。税法の簡素化という観点から見るとこれはかなり逆戻りの感じだけど、Triggerメカニズムが予算調整法に準拠していないという判断が下された瞬間、AMTからの歳入を失う訳にはいかなくなったということなんだろう。オバマケア一部廃案に繋がる個人強制加入の実質撤廃も上院だけの規定だけど、これに反対する下院共和党議員は少ないだろう。

日本企業が恐れていた関連者からの仕入れ、その他の支払いに対する20%ペナルティー課税は幸いにも上院案には規定されていない。以前にも触れた通り、上院のBEMTは下院案に比べるとかなり手緩いというかもう少し普通の規定だ。

という訳で余りにStakeが大きい両院一本化プロセスでした。

Saturday, December 2, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(8)「上院も本会議可決(AMT廃案取り下げ)」

今日12月1日夜中過ぎ、上院は数日の駆け引きを経て税法改革法案を51-49で可決した。多数党院内幹事のJohn Cornynらは金曜日朝から可決に要する十分な票を集めたと自信を見せていたので驚きはないけどやはり実際に可決してみるまでは分からない際どいプロセスだっただけに共和党指導部は一安心だろう。下院は先に独自の法案を可決させているので、後は両院一致法案にまとめたものを両院で可決し、大統領の署名という流れとなる。もちろんこれらの手続きがスムースに行くという保証はないが、以前から散々触れている通り、オバマケア廃案に失敗している以上、ここで税法改革も通せないとなるとそもそも何のために与党をしているのかという基本的な疑問を呈されることとなり、可決に対する共和党議員のインセンティブは大きい。

それにしても上院財政委員会を通過した後の水面下での政治交渉は熾烈を極めていた。そのプロセスは議会が休会していたThanksgivingの週も24/7で行われたいたはずだ。

Thanksgivingに突入するタイミングでは複数の潜在的な造反議員が存在していた。何といっても共和党は上院過半数を押さえているとは言え、52議席しかない。100議席の上院を多数決で通すには、ペンス副大統領のCasting Vote(可否同数の場合の決裁権)を考えても3人造反が出てしまうと全てが水の泡と言う際どいところにある。そんな首の皮一枚の状態で、反対票を投じる可能性のある議員が複数いたのだからその説得は慎重かつ熾烈を極めただろう。

潜在的な造反者の反対理由は複数あるが、大別すると法人税が35%から20%に低下するのに比べて小規模事業主に対する手当が十分でないとするRon Johnson、Steve Daines、財政赤字を嫌ういわゆるDeficit Hawk派のBob Corker、Jeff Flakeそして上院案に追加されたオバマケアの一部廃案規定を嫌うSusan Collins、Lisa Murkowski、法制化プロセスの透明性を重要視するJohn McCain、そして予見可能性の低いRand Paul、となる。

まずSch. Cで報告する自営業を含むパススルーから所得を得る個人事業主に対する税負担軽減が法人税低減に比べて十分でないとするRon Johnson一派。Ron Johnsonはこの点を理由に真っ先に法案に反対という態度を表明して世間を驚かせていたが、下院議長でもあり今回の税法改革法案の可決に政治生命を掛けていると言っても過言ではないPaul Ryanと同じウィスコンシン州の議員であることもあり、実際には最終的にRon Johnsonが反対票を投じると信じていた者は少なかったはずだ。投票直前にパススルー所得に対する控除額が増額されてSteve Dainesと共に賛成に回った。

次のDeficit Hawks派だけど、木曜日の段階では財政に与える影響を最小限とするため、経済成長率が予想通りの数値に到達しない場合には自動的に税率が上がるというクリエイティブな「Trigger」というメカニズムを導入することで解決を見たかのようにみえた。ところが上院先例専門委(Senate Parliament)がTrigger規定は予算調整法手続きの要件を充たさないと判断したことから他の方法で歳入を増やすこととなった。この歳入アップのためのイケニエとなったのがAMT廃案取り下げ、また、テリトリアル課税移行時の一時課税率だろう。一時課税率は上院案も結局、下院案よりも高い14.5%(事業資産に再投資されていれば7.5%)に変更されている。結果、Jeff Flakeは賛成となったが、一方のBob Corkerは反対票を投じた唯一の共和党上院議員となった。

オバマケアの個人に医療保険加入を強制する規定の撤廃は実質オバマケアの部分的廃案とも言えるが、これが上院税法改革法案に盛り込まれた点に関して、もともとオバマケア廃案そのものに慎重な態度を見せていたSusan CollinsとLisa Murkowskiは難色を示す可能性があった。Susan Collinsは上院案も下院同様に$10,000を上限に不動産税の個別控除を復活させた点を評価して賛成に、一方のLisa Murkowskiはアラスカ州ノース・スロープ自然保護区の油田開発が税法改革法案に追加されて点を評価(?)して賛成に回っている。みんな結構チャッカリ者な感じ。

そしてオバマケア廃案の最後の試みに引導を渡したJohn McCainだが、今回は財政委員会で法案内容に十分な議論が尽くされた点を評価してこちらも賛成となった。最後に、予算案決議で一人反対票を投じ、自宅の造園(?)で以前からもめていた近所の隣人に襲われて肋骨6本を折ったRand Paul先生も今回は賛成となった。 結局、造反容疑者リストから実際に反対票を投じた議員はBob Corker一名だったことになる。Bob Corkerは投票後に「できれば賛成したかった。両院一致案とする際にもう少し財政面からの配慮が加えられれば最終的には賛成もあり得る」としている。

これで下院、上院の両院で各々の法案が可決。いよいよ両院合同委員会による両院一致法案の作成を残すのみとなった。ここまで来て両院一致化のプロセスでコケないようにね。

Saturday, November 18, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(7)「上院も委員会可決」

昨日11月16日、税法改正下院案が本会議を可決した段階で税法改正の当面の手続き的なフォーカスは上院、特に上院財政委員会に移った。Britney Spearsじゃないけど「All Eyes On Us」の気分だっただろう。で、それに応えるように今度はAdeleの「Hello from the Other Side」で、同日、財政委員会で上院案が可決された。

これで後はThanksgiving直後の上院の本会議審議、そこを通過したら両院一致法案化というプロセスを残すのみとなった。法案可決に至る手続き的な話しは「米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(5)「上院案骨子公開・下院はついに本会議に」」で詳しく触れているのでそちらを参照して欲しい。

もちろん上院における今後の展開はオバマケア廃案の失敗でも分かる通り予断を許さない。ただ、ここで税法改正も実現できないとなるとなんのために与党をやっているのか分からない、と認識している共和党議員も多いだろうから、何か達成しないといけないというプレッシャーは大きい。気になるのはもう再選を気にしなくていい議員が数名いることだろうか。

下院の歳入委員会同様、財政委員会も最後の最後まで修正案を出し続けていたので本会議に掛かる上院案の姿は分かり難い。下院と異なり、公表される文書が法文原案そのものでなく、中途半端な「Description(説明書?)」というのも我々専門家の立場からすると不親切だ。とは言え、現時点で分かる範囲で日本企業に関係が深そうな上院案の規定をザックリとまとめると次の通り。読んで分かると思うけど、下院案とは結構異なっている。う~ん、あんまり違っちゃってると仮に上院を可決してもその後の両院一致調整に苦労しそう。

まず、法人税率は下院案同様に20%だけど、発効のタイミングが一年遅れて2019年度から。法人税率低減の時間差に代表されるように上院は予算決議調整案の10年間は$1.5Tの赤字OKだけどそれ以降の期間に赤字はダメというByrd規定に敏感なので、歳入減に繋がる複数の規定が時限化されたりしている。パススルーや個人事業から所得認識する個人オーナーに対する課税は下院同様軽減はされているけど、アプローチは異なり、パススルーしてくる事業所得の17.4%を非課税処理するというもの。下院同様に人的役務に基づく事業は対象外とされる。AMTは撤廃。

設備投資減税はほぼ同じで、2017年9月28日から2022年末までに取得される動産事業資産が100%初年度償却対象となる。既存のボーナス償却対象資産に加えて、映画・テレビ・劇場プロダクションを含むと追加で規定された一方、公共ユーティリティ用途資産は対象外とされる。米国製造者控除(Section 199)は予想通り撤廃となる。

現状では期間費用として損金算入が認められている米国内で行われる研究開発費用が2026年より5年償却、米国外で行われている場合には15年償却の対象となる。また、2018年および以降の課税年度に発生するNOLは繰越期限が撤廃される一方、繰戻も撤廃。ここは下院と同じ。NOL使用額は繰越年度の課税所得90%上限。下院と似てるけど上院案は90%の制限に抵触するNOLは2018年および以降の課税年度に発生するNOLのみに見える。この90%制限は2023年および以降の課税年度には更に80%に減額される。

最後まで燻っていた上院独自のCorporate Integrationアプローチに基づき法人の二重課税を是正する方向かと思いきや、全く逆で配当所得に対する法人税低減の恩典を打ち消すため、内国法人が受け取る内国法人配当に対する非課税措置(DRD)を現状の70%(持分20%未満のケース)から50%に、現状80%(持分20%以上80%未満のケース)から65%に減額するとしている。

次に下院案でも話題のネット支払利息損金算入制限だけど、上院案ではAdjusted Taxable Incomeの30%を超えるネット支払利息は損金不算入としている。下院案でもこの「Adjusted Taxable Income」という用語を使用していて似てるけど、定義が異なるので注意が必要。下院の言うところのAdjusted Taxable IncomeはEBITDAだけど、上院のAdjusted Taxable Incomeは利息前の課税所得と規定されている。償却費用を加算できない分Adjusted Taxable Incomeの金額が低くなり、よって制限に抵触し易い。また損金不算入額は下院案は5年繰越だけど、上院案では永久に繰越が認められる。

また、米国多国籍企業グループのネット支払利息を全世界Debt/Equityレシオに基づき損金算入制限するという規定もあるんだけど、説明文書のタイトルを読むと米国に親会社がある場合にのみ適用と書いてある。一方で説明書本文を読むとIncludable Corporationは外国法人も含むとなっている。今回の上院案は未だに法文原案そのものは発表されていないので、米国外の多国籍企業グループへの適用は本当にそうなのかどうか若干不明だ。法文ではないDescriptionという形で公開されているのがひとつの問題なんだけど、不明確な理由は当制限規定目的で「Common Parent」を「Includable Corporation」の一人とみるかどうかという点。Includable Corporationであれば外国法人を頂点とするグループも対象となるかのように見える。この点に関して大元のSection 1504を見ると、Section 1504(a)(1)(A)のAffiliated Groupの定義冒頭部分で「The term “affiliated group” means 1 or more chains of includible corporations connected through stock ownership with a common parent corporation which is an includible corporation」となってる。この表現をもって法解釈的にCommon ParentもIncludable Corporationと考えるのか、それともCommon Parentは別カテゴリーだけどIncludable Corporationの要件を充たした法人しか成れない、と考えるか若干不明確。でもどちらにしてもIncludable Corporationに外国法人も含むとしている以上、米国多国籍企業グループだけでない気もするけど、タイトルは「Denial of deduction for interest expense of United States shareholders which are members of worldwide affiliated groups with excess domestic indebtedness」と言い切っているのでこっちの方が正しい気もするし、どっちとも判断し難い部分がある。

そして今や余り関係ない納税者が多いように思うけど、輸出促進策のDISCおよびIC-DISCはようやく撤廃となる。これらの規定の末裔のSection 199自体が撤廃だからDISCとかが生き残るのはおかしいもんね。

次にクロスボーダー系だけど、海外子会社(10%以上投資先)からの配当は非課税で下院同様にテリトリアル課税制度に移行、更に未配当原資累積額に一括課税となっている。一括課税の税率は上院の方が低くてCash Position部分が10%で、事業資産に再投資されているケースは5%。8年間の分割納付可能で部分的に外国税額控除ありという点は下院と同じ。

で、下院案で日本企業に最も注目されている規定のひとつと言えるExcise Tax(およびみなしPE課税選択)に代わる上院案が「Base Erosion Minimum Tax」というやつ。比較すると上院案の方が優しい気がする。Based Erosion Minimum Taxって長いのでここでは勝手に略して「BEMT」ってしとくけど、このBEMTは米国法人が支払うBase Erosion Paymentが損金算入されている場合(費用または償却)、その金額をBase Erosion Benefitとして、通常の課税所得に加算処理して「修正」課税所得というものを算定する。で、これに10%を掛けた金額が通常の法人税より高ければそちらをBEMTとして支払うという仕組みだ。10年間を超えて赤字になってはいけないという縛りの関係から最後に修正が入り、この10%は2026年からは12.5%に上がることになっている。 このBEMTの対象はREIT・RIC以外の米国C Corporationで、50%資本関係にあるグループ売上が$500M以上、さらに対象米国法人のBase Erosion Benefitが損金算入額総計の4%以上の納税者とされる。

Base Erosion Paymentは米国法人が米国外関連会社に行う費用項目および資産取得支出とされ、マークアップの説明では売上原価は対象外と明記されている。下院は仕入にかかわる支出も特定支出として20%ペナルティー課税の対象なので、この点上院案は対照的で、この差は大きい。ここで言う関連者は25%株主、25%株主または該当米国法人と50%超の資本関係にある者、又は米国移転価格税制上関連者と扱われる者と規定されている。

下院の特定支出同様、30%源泉税対象となる支出は対象外で、条約で源泉税が低減されている場合には低減相当分額がBase Erosion Payment扱いとなる。という訳で下院の20%ペナルティー課税と比較するとかなり合理的。それだけ聞いたら酷いニュースでも、先にもっと酷いニュースを聞いた後に聞くと、グッドニュースかのように聞こえる例の典型かもね。

もう一つ日本企業に影響がありそうなのは、米国でECI・PE事業所得を認識するパートナシップ持分を外国人パートナーが売却する際に、あたかもパートナシップ内部資産の持分相当を売却したかのように扱われ、結果として資産のタイプ次第では、その分パートナシップ持分売却益がECI・PE課税の対象となるというもの。これは以前のポスティング「外国法人による米国パートナシップ持分譲渡・売却」で触れたGMMケースでIRSが主張して裁判所に退けられたRR91-32のポジションを法制化しようとするもの。まあ以前からこの動きはあったので想定の範囲内。RRとかセコイやり方、っていうか行政府が法律を変えるような真似しないで、ちゃんとこうやって立法府である議会が法律を変えてくれたら揉めることもないし反ってスッキリする。

という訳で「All Eyes On Us」の感謝祭直後の上院本会議審議に注目しよう。

Thursday, November 16, 2017

米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(6)「下院ついに本会議可決」

先週木曜日に歳入委員会によるマークアップが終了し本会議審議に入っていた下院税法改正案が今日、227対205で可決された。採決に先立ちアジアからDCに戻って間のないトランプ大統領はDCの国会議事堂(Capitol)の地下にある会議室HC-5で下院共和党議員に最後の念押しをしたと言われる。トランプ大統領が念押しをするまでもなく可決は事前の票読みに基づきここ数日既定路線になっていたと言える。そのせいか今のところオバマケア廃案が下院を通過した際に見られたようなホワイトハウスの庭における下院共和党指導部と大統領の集合写真大会のような企画は未だ見ていない(これからかもね)。Paul RyanやKevin Bradyはこれで一安心だろう。ちなみに予想通り民主党議員は全員反対票を投じている。ということは13人の共和党議員も反対票を投じたことになる。おそらくNY州、NJ州、CA州の州税控除反対チームだろう。下院の可決には最低218票必要なので、今回は9票それを上回っている。

これで又一歩31年皆が慣れ親しんだ「Internal Revenue Code of 1986」に別れを告げて「Internal Revenue Code of 2017」が実現する日が近づいた。だけどまだまだ油断大敵。ウィスコンシン州上院議員のRon Johnsonはパススルーに対する恩典が少ないという理由で現状の上院案には反対表明している。他にもオバマケア廃案で反対票を投じた複数の反対票予備軍というか容疑者がいるが、John McCainは今のところ反対とは言っていない様子。オバマケア廃案の最後の試みに引導を渡したアラスカ州上院議員Lisa Murkowskiも今のところ比較的ポジティブ。一部にはLisa Murkowskiが推進しているアラスカ北部のノース・スロープ自然保護区の油田開発関係の法案が税法改正に関連して認められる可能性がある点が影響しているとも言われている。いろいろとポリティカル。 上院案は未だ委員会でマークアップ中なのでどのような姿に落ち着くか現時点で余り詮索しても仕方がないんだけど、可決された下院案は歳入委員会を通過する際にギリギリで複数の修正が入り、最終的な形が一体何だったのか若干分かり難い。日本企業に関心が高いと思われる法人税、国際課税周りの最終的に採択された規定をザックリと復習しておくと次の通り。

まず、法人税率を2018年課税年度より20%にするという点は誰もが知るところ。上院案だと現時点で適用が一年遅れるとなっている。どちらの案も法人税率20%は恒久措置だ。予算関係で赤字幅に敏感な上院案では代わりに個人所得税の恩典の多くが10年後に失効するようになっている。

そしてAMTはようやく撤廃。ここで面白いのは過去からのAMTクレジット繰越額の結構寛容な扱い。2018年および以降の課税年度では、基本的に通常法人税額と相殺が認められる。AMTが存在する現状では、通常税額がAMT税額を超える分しか使用が認められない。まあ、AMT自体が無くなるので、現状の計算はもちろん成り立たないけど。で、更に凄いのが還付規定。なんと2019年から2021年課税年度では各々の時点で残っているAMTクレジット未使用額の50%まで還付可とされ、それでも残っているAMTクレジット未使用額は2022年課税年度に全額還付が認められる。

設備投資減税は既存のボーナス償却を拡充する形で実現。2017年9月28日から2022年末までに取得される特定の事業資産に100%初年度償却が認められる。現状のボーナス償却と異なり納税者にとって新規取得であれば中古資産でもOKとされている。

NOLに関しても結構大きな改正がある。2018年および以降の課税年度に発生するNOLに関しては繰越期限が撤廃される一方で繰戻も撤廃。この規定には小規模事業や災害損失に関して一部免除がある。更に意外にみんなにとって痛いかもしれないのは2018年および以降の課税年度のNOL使用額が繰越年度の課税所得90%に上限されること。現状のAMT規定に似ている。で、下院案に基づくと過去から繰り越されているNOLにも使用が2018年またはそれ以降だとこの90%制限に抵触するように見える。上院は同じく90%(2024年からは80%)制限が審議されているけど、あくまで2018年および以降の課税年度に発生したNOLが対象のようだ。また下院案では2018年および以降の課税年度に発生するNOLに対して毎年繰越額に「短期AFR+4%」の金利を付けて増額させてくれるようになっている。上院案にはこの増額は不在。

特別な控除関係だとR&Dおよび低所得者住宅税額控除、一部のエネジー関係控除は温存されるものの米国製造者控除(Section 199)を含む多くの他の恩典は撤廃となる。

The Blueprint時代から注目度の高いネット支払利息の損金算入制限は二つの新設規定で実現されている。まず、全事業主に適用される新設Section 163(j)。The FrameworkではC Corporationと他の事業主を区別して議論していたので、下院最終案はチョッと意外な感じ。で、小規模事業、不動産・ユーティリティー業など一部の業界を除き、EBITDAの30%を超えるネット支払利息損金は不算入となる。この規定で面白いのは、後述の多国籍企業に対する更なるネット支払利息に対する制限規定と異なり、米国連結納税を行っている内国法人グループにかかわる規定が不在な部分。文字通り読むと(法文なので文字通り読まないといけないけど)個社レベルで適用があるように見える。損金不算入額は5年繰越可となり、長年日本企業が慣れ親しんだ既存のアーニングス・ストリッピング規定(163(j))は撤廃。

多国籍企業グループに属する米国法人(または米国支店)に関してはもう一つネット支払利息損金算入制限が規定された。この対象の決定方法が面白くて、Section 1504や1563という通常の税法上のグループ規定を用いるのではなく、米国法人および外国法人を含む連結財務諸表を作成している多国籍企業グループ、と会計原則を基準としている。グループ売上が3年平均で$100M以下の場合は対象除外。で、前述の通り、この規定の目的では米国連結納税を行っている内国法人グループはまとめて一社扱いと明言されている。この規定が適用となると全世界グループネット支払利息(会計ベース)をEBITDAレシオで米国法人に配賦し、米国法人ネット支払利息(会計ベース)と比較して損金算入可能%算定。もちろん米国の方が低ければ100%となり問題はないが、米国多国籍企業は通常グローバル全ての借り入れは徹底して米国法人のみで認識しているので、ここで100%となるケースは彼らの場合にはないに近いだろう。で、ようやくここで税務ベースの米国法人ネット支払利息が登場。米国税務ベースで当制限考慮前の段階で損金算入できる金額に110%乗じて、そこに先に計算した損金算入可能%を乗じた金額が損金算入額上限。エクセルがないとチョッと難しいね。こちらも損金不算入額は5年繰越可。

前述のEBITDA30%制限下と比較し制限額が大きい方、すなわち納税者から見て不利な方の規定を適用することとなっている(それはそうだよね)。

で、次に国際課税関係だけど、海外子会社(10%以上投資先)からの配当が非課税になり、世の中のトレンドに超遅れてようやくテリトリアル課税制度に移行。ただしタダでは移行させてくれない。2017年11月2日または12月31日時点どちらか大きな未配当原資累積額に一括課税される。税率も以前は3.5%だの8.75%だのと言われていたけど、フタを開けてみると結構高く、委員会最終修正後は何と14%。Cash Position以外の事業資産に再投資されているケースは7%に低減される。Cash Positionの決め方も変な操作やゲームを許さないという覚悟がありありで、2017年度の期首、期末、そして2017年11月2日の3時点の平均で決定するよう規定されている。委員会の議員も良く考えるね。で、海外に巨額の埋蔵金をため込んでいる米国企業にとってはとてつもない負担額となるケースもあるので8年間の割賦払いが認められる。また部分的に外国税額控除が認められる。

そして、何と言っても一瞬日本企業を震撼させた20%ペナルティー課税。米国法人(または外国法人の米国支店)がIFRG内の米国外関連会社に行う「特定支出」に法人最高税率(法改正後は20%)でペナルティー課税するという衝撃的な規定だ。でも実際にはこれを払う法人はないであろうことは以前のポスティング「米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(3)「輸入に対する20%ペナルティー課税」」で触れているので詳しくはそちらを参照して欲しい。

IFRGとはInternational Financial Reporting Groupの略で連結財務諸表を作成している多国籍企業グループ。前述の多国籍企業グループに対するネット支払利息の損金算入制限でも出てきた財務諸表ベースの判断だ。Section 1504や1563ベースでない点は個人的にはとても違和感がある。ちなみに上院側の姉妹規定とでも言うべき「Base Erosion Minimum Tax」はSection 267すなわち基本的にSection 1563の50%バージョンと25%株主基準なのでこちらの方が税法的には普通な感じ。

何が特定支出かと言うと費用項目ばかりでなく棚卸資産の仕入れを含む資産取得コストも含まれるというから凄い。例外は支払利息、コモディティ・債券取得コスト、マークアップなしのサービス費用。また特定支出が3年平均で$100M以下のケースは適用除外だ。更に、特定支出でも受け手の外国法人がECIとして申告していたり、30%源泉税対象となっていたりする支出は対象外。源泉税が条約で低減されている場合には低減相当分額が特定支出扱いになるとされている。ちなみにこの20%ペナルティー課税は法人税算定目的で損金不算入とされているからその厳しさは徹底している。

で、ここからが当規定の神髄だけど、外国法人が特定支出を米国事業所得(ECIまたはPE帰属所得)として申告課税扱いする選択が可能となっている。ネット申告が認められるのでこちらの方が金額的には断然有利。費用実額は損金不算入とされているが「みなし費用」控除が認められる。このみなし費用は全世界グループの該当プロダクトラインの会計上の米国外利益率(金利・税金前)を基に算定するってなってるけど、そんな計算どうやってするんだろう?一瞬みなし経費に104%+短期AFRを掛けてよろしいという修正があったが、歳入不足に気づいて直ぐに取り下げられた。最初から分かってたと思うんだけど立法プロセスって不思議。また外国税額控除も財務諸表ベースの実効税率と修正されたかと思うと最後の最後で本当に計算する外国税額控除となった。特定支出に対する外国の税金80%を上限と規定されている。その上で更に普通のSection 904の上限計算をするんだろうか。そんな計算できるのかな。そもそも特定支出が米国源泉のケースもあり、それだけでは控除枠は存在しないこともあるだろうし。

という訳で共和党下院指導部にとってはようやく有権者に顔向けできない辛い日々が過去のものになるかもしれない重要な一日でした。

Saturday, November 11, 2017

米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(5)「上院案骨子公開・下院はついに本会議に」

「やればできるじゃん!」という感じで下院歳入委員会も上院財政委員会も31年振りに大活躍して税法改正のプロセスをSpeed of Lightで進めた一週間だった。まさしくA Hard Day’s Nightそのもの。Working like a dogって気分だろうけど、まだまだSleeping like a logとはいかない現実は厳しい。このペースを少なくとも今後数週間は続けないと今年中の可決はできない。また法案の内容的にも十分な共和党票が集まるという保証もない。全然簡素化にも法人以外は減税になってない感じで一体全体何のためにこれだけの改革をしているのか分からなくなってきた観もある。

内容はともかく、「法手続き」的には予算決議に税法改正にかかわる財政調整措置が盛り込まれてからここまでの財政調整法としての立案、審議はビックリする程オンタイムだ。この辺り日本の方にはプロセス自体が分かり難いと思うので、手続き面を簡単におさらいしておくと次の通り。

米国では法律は議員立法が基本で、下院では単純過半数、上院は議事妨害(フィルバスター)を乗り切るため実質100票中60票で法案を可決することができる。例外は年一回の予算決議(Budget Resolution)の際に「こういう法律をいくらの歳入または歳出の範囲で策定しなさい」という指示に基づいて立法される財政調整措置(Reconciliation)。この財政調整措置が予算決議に盛り込まれると、財政調整法として上院も下院同様に「過半数」で通すことができる。上院100議席のうち共和党が52議席で、民主党は全員なんでも反対という典型的な野党となっているので60票は夢の夢。したがって税法改正も財政調整案として通すしか手段はない。ただ、上院の過半数というのもなかなか難しいのはオバマケア廃案で白日の下に晒された事実だ。この辺りは過去に散々触れているからいいね。予算決議に基づくこの簡便手続きは、決議に具体的な調整措置が明記されないと発動されない。

で、今年度の予算決議では「$1.5Tまでの赤字増となってもいいから税法改正法を財政調整法として通しなさい」という調整措置が盛り込まれ、それを受けてまずは担当委員会を構成する議員が法案を通す。で、税法は下院では歳入委員会、上院では財政委員会の管轄なので、各々の委員会が法案をドラフトし、その後、委員会の中でマークアップという修正が繰り返される。これが今週、歳入委員会がやっていた手続きで例の20%ペナルティー課税のECI選択した際の計算が紆余曲折した理由だ。最終的には委員会として最終法案を可決して、その後、院のFloorで審議される。これが本会議審議となり最後に票を投じて可決するかどうか決まる。木曜日に歳入委員会は法案を可決しているので、来週明けから(金曜日は連邦の休日らしく)下院本会議審議となる。来週中には余り多くの修正なく下院を通過するであろうと言われている。

一方、上院は木曜日に「説明文書」を公開したが、法案そのものは未だ見ていない。おそらく月曜日に法案が公開され、財政委員会がマークアップを繰り返し、12月頭には委員会として可決、直後に上院本会議審議となる。下院と上院が異なるバージョンを可決するので、最後は二つをすり合わせして両院一致法案に取りまとめないといけない。この作業はいくつかのロードマップが想定されるが、まずはJoint Committeeが双方の法案を一つにまとめるやり方。または上院バージョンを下院が取り上げ、その修正を受けてそれを上院が取り上げ、というピンポン方式もある。または予算決議がそうだったように上院バージョンそのものを下院が可決してしまうという離れ業もあり得る。いずれにしても両院一致法案は両院で再度可決される必要があり、それができて初めて大統領の署名に行きつく。

大統領は法案全体に署名するか、拒否権(Veto)を発動するかのチョイスがあるが、法案の一部をVetoするLine Item Vetoは確か連邦では憲法違反という最高裁(だっけ?)の判例があり認められないはず。なので個別の規定が気に入らないからと言ってそこだけVetoすることはできない。また、大統領が10日間何もしなくて、議会が散会していると自然に法案が失効してしまうPocket Vetoという流れもあるが、今回は法案が両院を通過すれば大統領は署名するだろう。これが12月31日とかだと、米国企業のQ4、多くの日本企業のQ3の決算は新法の影響を加味しないといけないのでお正月がA Hard Day’s Nightになりそう。

という流れで下院は歳入委員会が修正後の法案を可決した訳だけど、最後にまた委員長Kevin Bradyの修正の修正が入った。最初の修正で赤字許容範囲の$1.5Tを超過してしまったので、その穴埋めで、まずはナンとテリトリアル課税移行時の一括課税の税率が12%から14%(現預金部分)、5%から7%(資産再投資部分)に増額。そして日本企業も関心が高い例の20%ペナルティー課税規定のみなしPE課税選択時のみなし経費に104%+短期AFRを掛けてよろしいという規定が僅か3日の短命で取り下げ。更にFTC算定法が変更となった。前回の修正では連結財務諸表に基づいて算定した実効税率の半分または20%のいずれか低い方の税率に基づいてみなしFTCを取る代わりに従来の本当の計算に基づくFTCは認めないというような規定になっていたけど、最終案では従来からECIに対して認められるFTCが80%まで認められるような規定に生まれ変わっている。ただしその際に従来であれば米国源泉所得に対する外国税金は外国法人が居住地で居住者という理由で全世界課税されるケースを除いてFTCの対象ではないとか、難しい規定があるが、それは無視しなさいとされている。難しいけど、本当はPEでもないのにPEにさせておいてそこに帰属する外国税金の金額を確定させ、それに80%を掛けて後は通常の制限枠を上限にクレジットというような流れになるのだろうか?不思議。

他にもR&D経費が将来的に5年間の償却となり、一括費用計上が認められなくなるとかいう規定も急に盛り込まれている。

一方、上院案はなぜか法文原案は公開されていない状態で「Description」という説明文?とでも呼ぶべき文書がJoint Committeeにより木曜日に公表されている。法文でないので良く分からない部分も多いが20%ペナルティーの代わりに「Base Erosion Minimum Tax」という新たな税金が規定されている。下院の20%ペナルティー課税と趣旨は同じだけどアプローチは全く異なる。

法文も出てないので余り詳細に話しても意味ないけど、50%超の海外関連者、25%の米国外親会社またはその関連者、等に支払う費用、資産取得支出、(おそらく)売上原価(これは条文みないと含まれるかどうか若干不確実)を加算処理して出てきた調整後課税所得に10%を掛けて、通常の税金より高ければそれがBase Erosion Minimum Taxになるというような仕組みらしい。

上院のものは他にも下院とは異なる点盛りだくさんだけどそれはそのうち。