Tuesday, December 31, 2019

2019年大晦日「ゆく年くる年」

2019年も残すところ数時間。日付変更線の向こう側、日本では既に2020年を迎えているはず。こちらTimes Squareは恒例のBall Dropでもちろん午後からオフィスも立ち入り禁止。立ち入りOKでもこんなややこしい日にあの辺りに行くつもりは毛頭ないけどね。Broadwayには「20」っていう大きな数字のオブジェみたいなのが設置されたりして、Times Squareもカウントダウンの準備万端整いつつある感じ。今年のカウントダウンパフォーマンスの「トリ」はPost Maloneらしい。古くは、って言っても2~3年前だけど「Congratulations」とか、それよりチョッと最近の「Sunflower」とか良いよね。最近良くプレーされる「Circles」もいい曲だし。Circlesって、てっきり「Run Away」っていうタイトルだと信じてて、「最近良く聴くRun Awayって曲いいよね?」と言っても「Run Away?」みたいな反応だったのでサーチしたらタイトルはCirclesだった。最近のMale Vocalってこういう感じの曲が多い気がする。Ed SheeranがKhalidとコラボしてる「Beautiful People」も似た感じの曲調だし。

Ed SheeranのBeautiful Peopleって、内容的にはJohn Lennonがその昔、(少なくとも米国のCapitol Records的には)The BeatlesのMagical Mystery Tourに収録されてた「Baby You’re Rich Man」で徹底的にバカにして軽蔑してるように聞こえる「Beautiful People」と同様の類の人たちを歌ってるような印象。John Lennonの歌詞に関してはいろんな解釈があるようだけどね。Baby You're Rich Manのコーラス部分はMcCartneyが付け加えたって言われてるけど、元々のJohn Lennon部分はタイトルが「One of the Beautiful People」だったそう。他にもJohn Lennonが歌うSexy Sadieとか、And Your Bird Can Singとか、Cynicalな感じの歌詞がJohn Lennonっぽくていいね。Ed SheeranのBeautiful Peopleは、米国の都市の中でもL.A.でしか感じることができない、あの独特の皮相的で表面的なバブリー・カルチャーが良く表現されてる。Rented Hummers…(苦笑)。英国出身のEd Sheeranからしてみるとその浅さにピックリだったのでは。

で、Pop MusicよりもズッとExcitingなクロスボーダー課税のここ一年に目を向けると、2019年12月で米国税制改正TCJAの可決から2年が経過したことになる。う~ん、まだ2年なんだね、TCJAは米国クロスボーダー課税の在り方を根本から変えてしまったので、それ以前の世界を思い出すのに苦労する。個人的には2017年12月22日を境にこの世の中BCとADになっているような感じ(大げさ?)。本当のBCもそうだけど、BCの世界に身を置いている時は自分がBCに居るってもちろん知らない訳だけど、2017年までのクロスボーダー課税制度と格闘してた自分たちも、振り返ってみるとそんな感じ。

普通の人にはおおげさに聞こえるかもしれないけど、ここ2年はWhole New Worldで、実際寝ても覚めて、四六時中TCJA一色だったと言える。他の規定より一足先に2017年課税年度より適用が開始されたSection 965の留保所得一括課税を除くと、GILTI、FDII、BEAT、163(j)、Anti-Hybrid、960下のFTC、諸々のその他のTCJA新規定は、2018年課税年度から適用となった。2019年は、そんな「TCJA Fully Loaded」となる2018年の申告書を実際に作成する最初の年。米国の申告期限は延長が当たり前なので、提出まで結構間が開いていて、基本12月決算となる米国法人は翌年10月15日、3月決算だと、翌年の1月15日となる。したがって、米国法人は暦年2018年12月の申告書を10月に提出したばかりだし、2019年3月期(これは2018年課税年度に当たる)を採択している日本企業米国子会社の申告書はようやくドラフトが完成している(といいけど?)ようなタイミングと言える。実際にはBE%や、GILTIバスケットに配賦する支払利息の金額が未だに定まってなかったりするようなケース満載だろうけどね。

米国法人による申告書作成コンプライアンス業務は従来から負荷が高かったと思うけど、TCJAで更に激しさを増している。一度、実際にTCJA下で申告してみることで、どれだけ大変で、かつどれだけ追加税コストが発生するのか、だいたい当りも付き、また、財務省規則も規則案も含めると徐々に大物は公表されつつあることから、今後はTCJA下のADの世界におけるOptimization的なプランニングのフェーズに入っていくことになる。考えただけでワクワクものだ。もちろん米国だけでなく、欧州等の他国やBEPS系の動きも加味して複合的な検討が必要となる。

で、今日は大晦日なので、TCJAを受けて、周りで米国MNCを担当しているチーム、DCの重鎮、NYやDCの大手弁護士事務所のタックス部門パートナー達、その他の専門家との会話から見て取ることができる、2020年以降に予想されるプラニングのトップ5リストで、一年の締めくくりとしたい。ちなみに、思いつくまま書くので順不同だからね。また、各々の検討は相互に影響があり、個々に検討しても意味がなく、全てを複合かつ総合的に、また定量モデリングしながらベストなストラクチャー等を決定していく必要がある。

【FTC】 GILTIバスケットと支店(QBU)バスケットの2つの新規導入でクロスクレジットがより困難に。しかもGILTIバスケットは繰越・繰戻不可なので二重課税のリスクが増大。Section 902のPooling廃止で毎期、GILTIやSub Fを含む各所得タイプに適切に帰属すると取り扱われる外国法人税のみがFTC対象という厳しいマッチングのNew World。これらの理由も含め、FTCプラニングは今後のますます緻密なモデリングに基づいて行う必要が増してる。GILTI後のクロスボーダー課税の世界ではFTCの最大限化は国際課税プラニングの主役になる。FTCバスケットにExcess CreditとExcess Limitationが混在する場合にはFTCの最大限化のためのクロスボーダーReorganizationも視野に入れたプラニングが開始されるだろう。他のプラニングも同様だけど、各CFCの課税ポジションやプロファイルが毎年同じじゃない部分をどう定量的に加味するかはチャレンジング。

【GILTI】 クロスボーダー課税の既成概念を打ち破ったGILTI。FTC計算時の米国内での費用配賦の関係で米国側の負担が思ったよりも大きいケースが多い。GILTIは、コンプライアンス時にとてつもなく複雑な計算を伴うが、最終規則も出て一応基本的なメカは明らかになったといえる。従来のSub Fだけの世界ではCFCがプラスかマイナスかってい言うのは余り気にならなかったけど、GILTIの世界では、Tested Lossを生み出すCFCはQBAIも使えないし、法人税もフローアップして来ない。GILTI非課税枠を作り出すみなし動産リターンから差し引かれる特定支払利息は、一定額を超えるとTested LossのCFCの額も関係してくるなど、Tested Lossが見込まれるCFCはCTBして他のCFCの支店化するなどのReorganizationの検討がいよいよ実践フェーズに入りそう。ちなみに、規則案として公表されている「High Tax Exception」がどれほど使い勝手いいものに変更されるかは、今後のGILTIプラニングを大きく左右。

【BEAT】 CFCの所得を毎期合算するGILTIの世界で、その悪影響を低減させるのは、Section 250の50%所得控除と同時に何と言ってもFTC。せっかく費用配賦とか工夫して、多額のFTCを計上することができても、BEATミニマムタックスを算定する際に、通常の税額(FTCを引いた後)と比較する修正BEATタックスにFTCは認められない。BEATミニマムタックスを支払うということはFTCが無に帰することだから、何とかBEATの適用対象にならないようなプラニングが重要となる。BEAT規定の公表当時から注目されている、SCM、CSA時の契約関係の見直し、ロイヤルティ等の費用の棚卸資産計上、適格デリバティブ、Debtの外部化、などに加え、規則案として公表されている損金算入の自己否認でBase Erosion %を3%未満とするための策の探求が続くだろう。

【キャピタルストラクチャー】 米国MNCの定石だった全ての借入を米国で行う従来キャピタルストラクチャーは、法人税引き下げ、新Section 163(j) 、Anti-Hybrid、BEAT、等の影響で再検討要になっている。Section 956を使った最後のPoolingを利用したFTCプラニングも規則で不可能になっちゃったし。Section 163(j)の規則は草案の状態にあるけど、最終化の暁にはCFCへの適用法がこのままか、また極限に広いSection 163(j)対象の「利息」の定義に何らかの緩和が見られるか、等、注目度が高い。

【M&A】 Sub CやSub Kの規定はTCJAで余り影響を受けてないけど、TCJAで中古資産でも一定要件下で適格資産には即時償却が認められるようになったことから、ステップアップの検討価値がアップ。以前から、M&Aの税務ってバイヤー側のステップアップとセラー側の二重課税回避、この2点の綱引きに基づく検討がかなり主だったと言えるけど、その傾向に拍車がかかっている。ただ、ステップアップしても償却を取れないと意味がないので、特にGoodwillとかに関してはAnti-Churningとならないよう、ステップアップのさせ方に要注意。ファンド系のM&AでRollover株主が関与する場合は特に慎重にストラクチャーを検討する必要があるし、Rollover株主に帰属する部分も含めてアップフロントに100%含み益を認識するような形態はできれば避けるように。日本企業による米国M&A時にも、ターゲットがS Corporationだったりパススルー扱いされているLLCとかのケースも多いので、この辺りはよく検討する必要あり。でも、みんなが即時償却すると税務簿価が取得時にゼロになるから、次のM&Aでバイヤーにステップアップをデリバーする際のセラー側のコストは当然高くなる傾向にあり、より慎重にモデリングしないとね。

ということで2020年も引き続きよろしくお願いします。

Saturday, December 28, 2019

863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案 (3)

ここ2回のポスティングで、JBL、じゃなくてSection 863の規則案のうちSection 863そのものに関する部分はだいたいカバーしたので、今回はいよいよ規則案が真に意図すると思われる神髄部分に関して。

最初のポスティング「863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案」で触れた通り、所得の源泉地は、米国の納税者にとってはFTCの最大限化、日本企業のような外国法人や非居住者にとっては、所得が米国で課税対象となり得るかどうかを判断する際の最重要検討事項のひとつとなる。租税条約を適用する前の、米国内法に基づく申告課税の対象判断は、外国法人が米国事業(USTOB)に従事しているか(または従事しているとみなされるか)、そしてその場合はUSTOBに関連していると「法的に」取り扱われる所得(ECI)は何か、というステップで検討する。その際、所得の源泉が米国かどうかは大きな分かれ道だ。所得の源泉やECIの概念は16th Amendmentの1913年とは言わないけど、1936年頃の国際課税制度、最低でも1966年くらいまで遡って税法の歴史を紐解かないと理解が進まないとてつもない法体系に基づく。もちろん、真面目にそこまで遡って話し始めると、Larry Carltonどころの話しでなくなり、一生この話題でポスティングし続けるハメになるので、ごく軽く、英語で言うところのTangentiallyにSection 863との絡みが分かる程度、と言っても相当難関だけど、触れてみたい。

という訳で、今日もSection 863の規則案が公表されて以来ハマっているLarry Carltonセットアップして・・・、と。それにしても数十年ぶりに聴くLarry Carlton。Gibson 335ってVersatileなギターだよね。歪みなしでも最高だし、Point It Upみたいに歪ませてもいいし。Larry Carltonだってもちろん他にもいろんなギター使ってるんだろうけど、やっぱりSignature的には335。Room 335とかで使っているアンプはなんなんだろう。その昔ライブで見た当時は、子供の頃Marshallの次に欲しかったMesa/Boogieを使用していたのを覚えてるけど。スタジオでもそうなのかな。335ってFusionや昔のRock’n‘Rollだけでなく、例えばFenderストラトのイメージが定着してるRichie Blackmoreとかも昔、愛用していて、Blackmoreは当然Marshallにプラグインして、ライブで最高の音質やテクニックを披露している。特に昔、海賊版や、たまにFMとかでもエアーされていたUKライブの「Wring That Neck」とか。この曲、なぜか米国では「Hard Road」ってタイトルなんだけど、YouTubeとかで手軽に動画にアクセスできる今と違い、当時は動画どころか、静止画像も見たことなかったから、Blackmoreだから当然ストラトキャスターで結構ギブソンみたいな太めの音を出してるんだな、って信じてたんだけど、その後ビデオを見る機会があったら335なんだよね。なるほどね、って感じだった。

チョッとまた変な話しになりかけてるので、早々に軌道修正するけど、米国源泉のFDAP系の所得、すなわちほぼ全ての通常所得、やキャピタルゲインがECIとなるかどうかは、資産テスト、活動テストを適用して行うことができる。これはPE帰属所得の認定に似ていて、USTOBで使用している資産やUSTOBの活動内容と照らし合わせる「事実関係」に基づく判断。なんで、法的判断とは言え、事実認定に依ることからここのConnectionは納得感がある。この部分こそ、今日我々が知っているECIの「Effectively Connected」を実現している部分だろう。USTOBが存在する場合、資産テストや活動テストの適用できない所得、すなわち棚卸資産を含む動産の譲渡益は米国源泉だと自動的にECIとなる。これは過去の遺物的な存在。さらに、米国不動産持分譲渡に至ってはFIRPTAで、他にUSTOBがあってもなくても、不動産所有自体がUSTOBでもなくても譲渡益は常にECI。

チョッとややこしいのが棚卸資産。余り深掘りすると30回シリーズとかになりそうなので、どれだけ要点絞って話せるかチャレンジングなところだけど、まず、米国人と外国人で所得の源泉地の決め方が異なるっていうのがひとつ目のポイント。ここで言う外国人は米国外法人とTax Homeが米国にない外国人および米国人も含むから要注意。日本企業の切口ってことで、今日は外国人の視点からのみ話しておくけど、外国人が棚卸資産販売からの所得源泉地を決める際、もし販売益が、その外国人が有する米国事務所に帰する所得っていう位置づけになると、通常の所得源泉地の決定法である、所有権移管場所とか、生産活動が関与するものはSection 863とか、は一切無視して米国源泉になる。このルールは正確には棚卸資産ばかりでなく動産一般に適用される。動産って言うのは、不動産ではない資産のことで無形資産を含むけど、償却資産や無形資産には更に特別な規定がある。

で、今度は動産一般ではなく、棚卸資産に限定して、仮に米国事務所に帰する所得でも、同時に米国外の事務所が重要な関与をしていて、かつ棚卸資産が米国内消費ではない場合(なんかFDIIみたいだね)には、米国事務所ルールの適用除外対象となる。この除外規定を適用する際に勘違いしてはいけないのは、あくまでも米国事務所規定が適用されそうになった場合に、同規定から除外するとしているだけで、これをもって自動的に米国外源泉となるとは限らない点。すなわち、米国事務所ルール適用前の、通常ルールに戻るだけの話し。となると、生産に関与していない外国人にとっては所有権移転場所の話しなので、FOBとかCIFとか、たくさんある貿易実務用語、さらにそれらの用語の直後にどこのPortや工場の名前が付くか、とかIncoterms系の知識が求められることになる。

米国事務所に帰する所得のくせに、米国外事務所が同時に重要な関与を持つってどういうこと?って思うかもしれないけど、ここで言う「重要な関与」すなわちMaterial Participationは比率的にMajorityやPredominantよりも低い関与でもその存在が認められるため、このような事実関係があり得るし、実際に租税条約を米国と締結していないシンガポールとか、または締結したつもりだけど米国上院が批准していないチリとかの納税者には頻繁に使用される除外規定となる。

除外規定が適用できない場合、米国事務所に帰する所得が米国源泉となるんだけど、ここからが更にトリッキー。米国事務所を有しているのか、またそこにいくらの所得が帰するのか、の判断は、外国源泉所得を例外的にECIと取り扱うECI側の規定の「考え方(The principles)」を参照して決定するように、と法文に規定されている。で、この考え方の中に、米国事務所に帰すると取り扱う所得は、米国で販売されていたら米国源泉所得となったであろう金額を上限とする、としている部分がある。う~ん難関。そもそも、米国事務所規定は米国源泉所得かどうかを決めるためのものだけど、それを外国源泉の棚卸資産販売益がECIに当たるかどうかの判断をする際のテストの考え方を流用するっていうところからして、どこまでの「考え方」を流用するのか、適用時にかなり解釈の余地が出てくる。The principleを適用するように、という規則は米国税法の条文としてはかなり珍しいと思う。IFRSとかOECDは厭わずに使用するかもしれないけど、基準が明確でないので争点となりがち。でもここではそんな概念の適用を議会が規定してしまっている。

ここまでの議論で既に相当訳分からなくなってきたのでは、と推測するので、この法体系の更なる背景とかを今後数回別にポスティングとかしても、益々混乱させてしまうリスク大で、仕方なく結論めいたフェーズに入るけど、この考え方を文字通り適用し、外国人が米国で販売する棚卸資産からの所得が米国事務所に帰するにもかかわらず、米国外で生産しているケースでは改定後のSection 863では、全額米国外源泉となるのだから、米国事務所を有している以上、米国事務所ルールは適用こそするものの、そこに帰する所得はゼロっていう取り扱いが可能になった、という納税者側の解釈というかプラニングがTCJA可決当時からインバウンド界で囁かれていた。

財務省は今回の規則案で、米国販売だったら米国源泉所得となる額を上限とするという部分は、外国人が有する米国事務所に帰する棚卸資産販売からの所得決定時に流用する「考え方」には含まれない、と断じ、そのような適用はECIそのものの考え方、その他の立法趣旨から「不適切」としている。「不法」と言い切れないところが苦しいところかもね。

ただ、米国外で生産している棚卸資産を外国人が米国で販売し、その際にその外国人の米国事務所が関与している場合には、そこに帰する所得は「販売機能」部分だけに限定するのが適正であるとし、生産部分は除外するという点を財務省規則案で明確にしている。この点の明確化は英断と言え、高い評価に値する。さらに所得の帰属先にかかわる移転価格的な不確実性を排除するため、販売機能に帰属する部分は原則所得の50%とする、とも規定している。え~、タイムトリップして、Section 863が改定される前の按分規定同様の考え方を今から取り入れるんだね。従来、旧Section 863が存在した時点では生産と販売は50%・50%で按分するのが一般的だった点は「863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案 (2)」で触れたけど、当時は同様の按分法をインバウンドの米国事務所帰属の棚卸資産販売に適用するという一般規則はなかった。にもかかわらず、Section 863が改定された途端に、廃止されたばかりのSection 863下の按分方法を取り込む当たり、当ポジションの皮肉さを物語っている、というか異論もあるだろうけど、財務省側の解釈やResult Orientedな部分は十分に理解できる。ある意味、寛容な判断とも言えるけど、下手すると100%外国源泉になってしまうような解釈も可能だっただけに最大限の譲歩なんだろうか。

まだまだ書きたいことは山積みだけど、Playlistも後半に差し掛かかり、曲調がさまよい始めてる観があるので、Section 863の財務省規則案はこの辺にして、Lex沿いのMidtownインド街に本場美味のチキンティッカマサラでも食べに出発することにする(どうでもいいよね)。ちなみにこの規則案、公告後に終了する課税年度から適用が原則だけど、納税者の選択で早期適用も可能だそうだ。

Friday, December 27, 2019

863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案 (2)

前回のポスティングでは、クリスマスイブ前日にサンタさんではなく財務省から届いたプレゼント、Section 863の規則案に触れた。というか、規則案を読む前に、どうやって読み物にフォーカスするための環境をセットアップするか、っていうどうでもいい話しから延々と脱線してしまった。

でも、結局何とか読むことはできて、所得の源泉地を規定するSection 863にかかわる規則案ってことで、どちらかというと低めのExpectationから始まったんだけど、とんでもない話しで、インバウンドの米国税務にかかわる自分のような者にとっては、洞察力に富んだExcitingな読み物となった。まるで、初年度特別償却を規定するSection 168(k)の規則を渋々読み始めて、特定のフルーツやナッツも適格資産なんだ~、ってチョッと眠くなり掛かった頃、実は(h)(10)、336(e)、Busted 351や355(Larry Carltonの話しし過ぎて最初335って書いてしまいました)だけど(e)のアンチ・モーリストラストで法人レベルでは課税される取引との関係とか、パススルーの743とか、M&Aノリの規定がさく裂してる部分があって急に覚醒した時とか、中学の頃、ガールフレンド、というか女の子の友達がロミオとジュリエットの映画(もちろん凄い昔のオリビアハッセーのやつ)の再上映を2本立ての1本でやってるから行きたいという話しとなり(もう一本は何だったんだろう、まさかよく見たEasy Riderじゃないよね。組み合わせ変だもんね)、確か飯田橋だか神楽坂とかあの辺のいわゆる名画座に出かけ、最初はロミオとジュリエットなんて全然期待してなかったんだけど、後半スクリーンの前に釘付けになってた時、みたいな感じだ。

で、チョッと脱線ついでだけど、ようやくセットアップも完了し、East Riverの向こうのQueens方面が赤いどころか、完全に朝になりそうな頃、Larry CarltonのShuffleプレーで、ナンとRobben Fordとの共演ライブが出てきた。自分で作るPlaylistと違って次に何が出てくるか分からないPlaylistは未知との遭遇でワクワク。Robben Fordね~。懐かしい。IRSの大きなセンターがあるFresnoや、地上最大の巨木の多くが生えているセコイア国立公園の近くWoodlake出身で、L.A. ExpressやYellojacketsで有名な、Jazz Fusionと言われているけど、Larry CarltonとかNorman Brownとかと比べると、むしろBlues、それもかなりストラクチャーされたフレーズで構成される、カチッとしたBluesギタリストって言った方が近いセンス抜群のギタリスト。

中学生高学年から高校に掛けて、渋谷とか原宿ではなく、チョッとオフな裏道っぽい隠れ家を知っているのがCoolみたいに信じてる時期があり、皆でムキになってメジャーじゃない場所を探索したりしてたけど、高田馬場とか、今思うともしかしたらかなり神楽坂方面に到達してたのかな、ジャズ喫茶(今では死語?まだあるのかな)と言われる、大概、地下の不健康そうなロケーションにあり、会話はとてもできない音量で最新のFusionとかの「レコード」を掛けてる店が複数あった。そんなお店のひとつでL.A. Expressを聴いた記憶がフラッシュバック。Back Pageとか、隠れ家だけどもう少し明るくてメジャーで格好いいカフェバーに移り気する前のフェーズ、日本の経済もまだまだこれから高度成長っていう予感を感じさせてくれてた、平和かつハイテンションな時代だ。

大音量で音楽をかけるカフェと言えば、もう少し後年だったかもしれないけど、地元、自由が丘にチャーリーブラウンって店があって、やっぱりそこも地下なんだけど、JBLのStudio Monitor、アレなんだったんだろう、4367かな、がド~ンと置いてあり、そこでどちらかというとRock系のレコードを凄い音量で聴かせてくれるお店があって、そこには一人でチョッと気分を変えて勉強したりする際とかに行ったりしてた。

JBLのモニター(要はスピーカー)と言えば、大学に進学して間もない頃、親しくしてもらっていた先輩がいて、ラディックのツインバスやジルジャンンのシンバル一杯持っててCozy Powellみたいなドラムをたたく凄い先輩だったんだけど、その先輩がナント、千歳船橋の自宅の自分の部屋にJBLの4367を置いててビックリしたのを思い出した。街中の住宅地でどれだけ大きな音で音楽聴いてるんだろう、っていう驚きもそうだったけど、JBLの4367なんて当時でも100万円とかしたと思うので、そんなお金良くあるね、っていうのもビックリだった。本人曰く、月賦で買ってて、真面目に生活してれば全然怖くないよ~、みたいな説明だった。その説明自体、良く分からなかったけど、良く遊びに行った勢いで英語で言うところのSleepoverとなり、夜中にRushとかを大音量で聴かせてもらえたので、まあいいか、って納得してた。今ではOnlineで、Google HomeとかAlexaとかで音楽聴くけど、やっぱり昔の「Turntable」で針からJBLのStudio Monitorとかを通じて聴く音の方がベターと思っちゃたりするのは昔の人、って証拠なんだろうね。

で、そのJBLの先輩はいろいろと面白い人で、別の先輩が、当時、ホンダベルノから登場したばかりの「Specialty Car」初代プレリュード、リトラクタブル・ヘッドライトになる前の初期のやつで歴代で一番Coolなやつ、を持ってたんだけど、JBLの先輩が「この車は実は走り屋にいいんだよね」とか言って、人の車だというのに自らドライブして、夜中に甲州街道から山手通りや青山通り経由で外苑の方までカウンターステアとか当てまくって、当時で言うところの深夜レストランのひとつだったO&Oとかにスペアリブとか食べに行ったりしてたんだけど、実はその先輩、免許持ってないことが後年発覚してビックリ。無免でカウンターステア当てて人の車使って公道走ってたんだね、っていうか僕もそんな車に乗せてもらってたんだね。凄い人だった。

で、凄いと言えば、財務省からの素敵なクリスマスプレゼントとなったSection 863の規則案。基本的には、2017年の税制改正、TCJAで法文そのものが改定され、納税者自らが「生産」する棚卸資産から生じる販売益の所得源泉地が、改定前は「生産場所と販売場所に基づいて配賦・按分」して決定、すなわち部分的に生産場所源泉、他の部分は販売場所源泉、だったものが、生産場所のみを基に決定という規定に変更になったことを受けて、財務省規則の更新というのが今回の規則案の建付けとなる。

でも、実際にはそんなことよりも、Section 863の規則変更を利用したプラニングに早々に網を掛けたかった、というのが真の狙いだろう。この点は後述。

まず、Section 863が源泉地を決定する所得だけど、「米国内で生産され米国外で販売」、または逆に「米国外で生産され米国内で販売」される棚卸資産から生じる販売益となる。米国内や米国外で生産も販売も双方完結している取引に基づく所得は、当然、全額米国源泉だったり、米国外源泉だったりするからSection 863の規定の対象にはならない。

上述の通り、TCJAでSection 863が改定される前は、Section 863対象の棚卸資産の販売益の所得源泉地は生産場所と販売場所に基づいて配賦・按分と規定されていた。その際、法文そのものには具体的にどのように配賦・按分するべきか、という算定法は規定されていなかったけど、旧来の財務省規則で原則は50%・50%、納税者の選択で「会計帳簿および記録類」等に基づく個別配賦も可能というアプローチで、基本的には50%・50%で按分するのが通常だった。それがTCJAで生産場所のみを見るように変わったというものだ。

例えば、米国企業がベトナムで自ら生産し、米国で販売している棚卸資産があったとすると、そこから生じる所得は、従来、50%米国外源泉所得(生産部分)、残りの50%は米国源泉所得(販売部分)だったものが、改定後のSection 863では全額外国源泉所得となる。逆に米国で生産し、外国で販売している棚卸資産に関しては、従来は半々だったのが、改定後のSection 863では全額米国源泉所得となる。

生産活動が全て米国外、または米国内の場合にはこのルールだけど、生産活動そのものが米国内外の双方にわたる場合もある。で、そんな時は改定後の863条でも所得を按分する作業が必要となる。当然、従来から同様の事実関係は想定されていて、その際は、生産設備の税務簿価に基づいて按分することってなっていた。今回、規則案では、税務簿価に基づく按分法は継続して適用するとしている。ただし、TCJAで初年度特別償却が中古の生産設備の多くに適用されることとなり、特別償却やMACRSは主に米国外で使用される資産には適用がないことから、通常の償却法を基に税務簿価を算定すると、自ずと国内生産設備の税務簿価がより圧縮される結果となる。となると、所得の多くが経済的には不合理なレベルで外国源泉に按分される懸念が生じる。そんな背景で、按分の基として使用する税務簿価は、定額法に基づく特殊なAlternative Depreciation System(「ADS」)ベースに変更となった。GILTIもFDII目的でもADSベースの償却が必要だから、納税者としては最近ではADSはすっかりお馴染みだね。

ここまでは、フ~ン、そうなんだね、って感じの規定だけど、この後に続く、非居住者が米国外で生産した棚卸資産を米国内で販売する際の取り扱いこそが今回の規則案の神髄だろう。この話しは、ECI課税の詳細を理解しながら考えないといけない、実は超Deep Purpleなもので、ブログのポスティング位では到底解説し尽くせるものではないんだけど、基本的な背景に触れ、それがなぜSection 863の新規定の影響を受けたりするのか整理してみたい。今回もJBLとかで脱線してしまったのでここからは次回。

Wednesday, December 25, 2019

863条(生産・販売棚卸資産の所得源泉地)財務省規則案

クリスマスイブからクリスマスにかけてマンハッタンは最高のお天気で、気温も40度台(℃で言うと10度弱)とNYCにしては暖かく、普段の喧騒が嘘のような静かな街をドライブしたり散歩したり、NYCの魅力を満喫できるホリデーとなった。NYCって道は汚いし、インフラもボロボロ、混んでて天候も良くないので、観光とか出張で来ると何コレ、みたいな印象を受けることがあるかもしれないけど、しばらく住んでると他の都市では感じることができない「No one cares who you are」的なLiberation感覚にはまり、なかなか脱出できない体になってくる。いろんな意味で厳しい環境の街なので、誰もが直ぐに好きになる場所じゃないけど、高層ビルの数、世界各地のレストランの豊富さ、金融センターとしてここを通過するお金の量、その他の物質面だけでは計り知れないLiberateされたスピリット面で、世界でも特殊かつ究極のUrban Cityだと思う。また米国税務のような業界に身を置くには、税務専門のプロフェッショナルだけでなく、M&A弁護士や投資銀行等のInfluencer的な方たちとかと常にライブで情報交換できる点も大きな魅力。DCからも近いので政府系の方たちもしょっちゅうイベントに参加してくれるし。彼らを見てると今日も厳しいマンハッタンだけど、もっと修行しなきゃっていうモードにさせてくれるものだ。

一方のカリフォルニアのMDRはというと、今週はどちらかと言うと寒めで、最低気温がNYCの最高気温と同じ位まで下がったりしてる。裏のBike Pathを抜けてBeachの方に散歩する道も、50度台だとなぜかとても寒く感じる。Midtownで50度台だと暖かすぎる感覚に陥ったりするのでこの差は不思議。こちらはNYCみたいなUrbanなLiberation感覚はないけど、乾いた空気でLazyなRetirementモードにさせてくれる。

そんなLazyなホリデーの予感も、クリスマスイブ直前に公表されたSection 863の財務省規則案で台無し。年の瀬も押し迫ったこの期に及んで、こんなニッチな規則案を公表してくるとは。しかも何回も読み直さないと危なくて、これだけの理解で一生掛かりそうなSection 865との関連に触れてくれていて、863と865のInter-Actionにかかわる議会の立法趣旨、財務省の以前からの解釈、などノンフィクションの歴史が盛沢山で、863条のくせに(?)って油断して読み始めた割にInbound系の課税関係を考える上でとても役立つ思いの外凄い規則案だった。

で、公表を受けて早速、熟読せざるを得ないはめに陥ったけど、この手の面倒な規則を読むのは夜明け前の一時がピッタリ。East Riverの向こうのQueensから日が昇り始める前に、コーヒー(EYのNYC事務所のみんなはどんなコーヒーか分かるね)とSpotifyでBGMもセットしてフォーカスっていうパターンだけど、今日のコーヒーはブラジルかコロンビアかさんざん迷い、かつShuffleプレーも、集中度を増すため歌詞のない早朝向きということで最終的にはJim HallかLarry Carltonに絞りこんだものの、こっちもさんざん迷って、なかなか規則に辿り着かない。

Jim Hallは言うまでの無い大御所。Larry Carltonは今思えばCAのTorrance出身なんだよね。Steely Danとかのイメージが強いので、ノリはニューヨークっぽいけどね。ハリウッドに自ら作ったRoom 335で多くのレコーディングをしていたギタリストだ。まさしくそのスタジオ名を曲名としているRoom 335で始まるアルバムが有名だけど、それまでのCrusaders、Steely Danとかその他のスタジオワークとかに魅せられてた友人も多かった当時、あのアルバム、特にPoint It Upとかは、賛否両論で、喧々囂々だったのを覚えてる。個人的にはめちゃイケてる曲でテクニックも抜群でいいじゃん、って思ってたけど、人によってはロック過ぎるというか、フュージョンっぽさに欠けるというか、アル・ディメオラに対抗するような速弾き過ぎるというか。未だ子供だった当時はいろんな見方があったけど、歳とって落ち着いて聞いてみると、Point It Upや同じくロックっぽいリフで似たようなタイトルのDon’t Give It Upも、目くじら立てる必要もなく、アルバムにはちゃんとNite Crawlerみたいなメローなナンバーも入っていて、他の曲も合わせて総合的に考えるとアルバムとしてバランスが取れている逸作。特にオープニングのRoom 335はピッキング・ハーモニクスの使い方や、チョッと敢えてもたった感じのBending(日本語のChoking)が最高。他にもボーカル入っている曲もいいしね。最高過ぎて聴き入っている間に規則案読むの忘れそうになって、Queens方面の空が赤くなってきてしまった。

で、米国税務をかじったことある人なら、863条って聞いただけで、860番台前半に位置することから、所得の源泉地にかかわる規定だな、っていうことは条文読む前から当然理解できるはず。所得の源泉地決定は米国の納税者にとってはFTCの枠をどれだけ最大限化できるかっていうプラニングのキーだし、日本企業のような外国法人や非居住者にとっては、所得が米国で課税対象となり得るかどうかを判断する際に重要な検討事項となる。インバウンドの課税を検討する際、米国源泉所得にならなければFDAPにはならないので源泉税の対象にはならないし、外国源泉所得がECIになるケースはかなり限定的なので、まずは所得、Gross Incomeベースで源泉地がどこになるかの検討が最重要マターだ。

米国法人にとってTCJA以降のクロスボーダー課税の弊害を最小限とする一つのキーがFTCだから、所得の源泉地決定、その後の費用配賦・按分にかかわる検討は従来にも増して重要となっている。課税関係そのものを規定している条文や考え方は熟知しておく必要があるのは当然だけど、所得の源泉地、資産、特に株式の簿価、E&PやPTEP、とか一見脇役っぽい検討が実は主人公同様に課税関係にインパクトを持つことも多い。

それにしても、年の瀬も押し迫るこのタイミングでこんな規則案を公表するあたり、Section 863の改訂に基づく、外国法人のECIプラニングに早々に網を掛けなくては、という財務省側の意欲が見え見え。Section 863が改訂された当時から、外国法人による棚卸資産の販売益かかわる従来の取り扱いとの整合性の検討、および新規定を適用して、外国法人が米国外で生産している棚卸資産の販売益を、外国法人が米国に事業所を有しているにもかかわらず全額外国源泉として、結果としてECIではなくして米国申告課税の対象とならない、とするようなプラニング検討が密かに盛り上がっていたので、財務省の動きは的を得ているし、その感度は抜群。こんな的を得た対応策をタイムリーに講じることができるのも、法曹界、Big 4、業界の代表等との多くのパネルディスカッション等に財務省が普段から参加しているからならでは。更に規則案では、わざわざご丁寧に外国法人がこの手のプラニングに基づき、米国外で生産する棚卸資産販売益を、米国事務所が重要な関与を持つにもかかわらず100%国外源泉として、結果としてECIではないというポジションを取っている場合には、税務調査でチャレンジする可能性があると明言している。う~ん、なかなかDirect。

Larry Carltonとかで話しがそれたので、規則案の内容そのものは次回。

Thursday, December 12, 2019

BEAT財務省2019年「新」規則案(損金算入自己否認)(2)

前回のポスティングでは、BEATの2019年「新」規則で提案されている、BE%を3%未満とするため納税者にBase Erosion Benefitを構成する損金を「自己否認」する選択を認めるという寛容な取り扱いに関して触れ始めた。今回はこの選択の具体的な規定に関して。

BE%のオサライだけど、これは各課税年度に認識されるBase Erosion Benefit額を分子、損金算入される費用総額を分母として算定する%。どれだけ派手にBase Erosionに従事しているか、っていうのを計るための物差しと考えるといい。$500Mの売上基準と並んで、BE%が3%以上(銀行・証券会社を含むグループは2%)となるとBEAT適用対象となる重要な基準値だ。また、BEAT適用対象判断と並び、NOLを認識する課税年度のBE%は、当NOLを使用する将来年度におけるBEAT算定時にNOLのどのポーションがBase Erosion Benefitになるかという判断にも使用される。さらに、BE%は特定合算グループ単位で算定され、一旦特定合算グループで算定されたBE%は各法人または連結納税グループに強制適用される、という複雑な規定がある。Base Erosion Benefitっていうのは損金算入されている費用のうち、外国関連者への支出を基にしているもの。

財務省が、今回の新規則で自己否認を容認する提案をしている法的なバックグラウンドだけど、米国で課税関係を検討する際、様々な状況で、特定の費用が税法上「Allowable」なのか「Allowed」なのか、っていう差異に着眼しないといけないことがある。たかが「able」と「ed」の違いじゃん、って気に留めないで分析してしまいがちかもしれないけど、運命の分かれ道になることがある。BEATを算定する際の、NOLの取り扱い、すなわち繰り越されたNOL全額を使うのか、通常の法人税計算で使用したNOLのみを使うのか、という検討もある意味これで解釈が分かれるところだった。他に、一番分かり易い例としては、償却と資産の簿価の関係を挙げることができる。例えば、100で取得した資産に対して税法が認める、すなわちAllowableな償却が初年度50あったにもかかわらず、納税者側で30しか損金算入、すなわちAllowed、していないとする。償却後に70で当資産を売却したとすると、納税者の計算では70の税務簿価が残っているはずなので、譲渡損益はゼロとなる。ところが譲渡損益を計算する際の税務簿価の定義は「Allowable」な償却で算定すると法律に規定されているので、実際には簿価は50となり、譲渡益が20発生することになる。

それってBE%算定時の損金算入の自己否認と何か関係があるの?って言うと、これが大いに関係する。Base Erosion BenefitとはBase Erosion Paymentのうち毎期実際に損金算入される金額で、多くのケースのこの2つの数字は特定の課税年度内で同額。金額に差異が生じるとすると基本的にはタイミング差異で、例えば、ある課税年度に行われた外国関連者に対する支出、すなわちBase Erosion Payment、の費用計上タイミングがAll Eventテストその他の理由で翌期となる場合、Base Erosion PaymentはYear 1に発生しているが、Base Erosion BenefitはYear 2となる。もっと極端な差異は、外国関連者からの資産取得。Year 1に150で資産を取得し、仮に当資産が15年償却だとすると、Year 1のBase Erosion Paymentは150だけど、Base Erosion Benefitは10だけだ。Year 2以降はBase Erosion Paymentは存在しないけど、償却を続けているので、Base Erosion Benefitは引き続き毎期10計上される。

BEATの法律上、Base Erosion PaymentとBase Erosion Benefitは別々に定義されているけど、もちろん密接にリンクした概念だ。Base Erosion Paymentは最終的に損金として「Allowable」、すなわちいつかは法的に算入対象になる得る、支出と定義される。なので資産取得もその年には損金算入が全額認められなくても、全額立派なBase Erosion Paymentとなる。ここからが面白いんだけど、Base Erosion BenefitはBase Erosion Paymentのうち、特定の課税年度に「Allowed」された損金算入、すなわち実際に損金算入した金額、と定義される。勘のいい皆様は、これが今回の損金算入自己否認の法的なフレームワークとなり得ることに気づかれたと思う。法的に損金算入が可能な金額、Allowableな金額でも、納税者が損金算入していなければ、Allowedでないとも考えらえることから、BE%の算定時に加味しなくてもいい、というポジションはBEAT導入当初から摸索され始めていた法的ポジションだ。もしBase Erosion Benefitの定義もAllowableだったら、このようなポジションは法的にサポートし難かっただろう。議会がこの2つの用語を、BEAT法をドラフトする際にどの程度意識して使い分けしていたかは知らないけど、Section 59A(c)(2)と59A(d)(1)という極めて近距離にある条文2つで敢えて別の用語を使用している訳だから無意識に選択しているとは思えない。

とは言え、法文だけをベースに損金算入を自己否認してBE%を2.999%とかにするのは結構勇気がいるので、財務省規則でこの点を明確にして欲しい旨のコメント・リクエストが寄せられていた。このポイントは大本の2018年財務省規則案では取り上げられていなかったので、今回新たな規則案として公開し、更なるパブリックコメントを経て最終化される運びとなった。

で、2019年新規則案では、規則上で除外としている特定の状況を除き、米国税法全ての目的で損金算入されないという条件でBE%目的でも損金扱いしないでもよろしい、という選択を納税者に与えている。二枚舌は禁止ってことだ。日本的にはそりゃそうでしょう、って思われるかもしれないけど、米国企業や税務アドバイザーは法的解釈が可能であれば、極限に挑んだりするので、税務処理変更の利用との絡みも含め、規則案ではこの辺りに結構細かく釘を刺している。損金不算入の効果を取り込まない、すなわち、あたかも損金算入されたかのような取り扱いをするのは、E&Pの計算とか、FTCの枠の計算時の支払利息の配賦とか、かなり限定的。

ちなみに損金不算入を選択する対象とする金額は外国関連者への支出を基に計上される損金。それ以外の損金を自己否認してしまってはBE%の分子はそのままで分母が減ってBE%が高くなってしまうので逆効果。なんで、必ず分子に計上される損金を自己否認し、分母も同額減額されるので、それで%がどうなるかっていう試算をしないといけない。もともとBEATは大手法人のみを対象としているので、費用の額がそれなりに大きいところが多く、%を目に見えて動かすには結構な大きな額を否認せざるを得ないだろう。例えば、丸い数字で、損金算入総額が元々$1Bあり、4%のBE%、すなわちBase Erosion Benefitが$40Mだとして、これを例えば2.9%に減額させようとすると、$11M強の損金を自己否認しないといけない。もちろん実際には2.9%にまで落とす必要はなく、2.9999%でいいんだけど。$11Mの損金がなくなるっていうことは、通常の課税所得、BEAT算定目的の修正課税所得、双方共に$11M高くなり、FTCを含む諸々のクレジットの計算に影響があったり、多岐に亘る影響があるので詳細なモデリングに基づく検討がMust。州によっては連邦税法に基づいて算定された課税所得を出発点として、州税を算定するところも多いので、それらの影響も加味する必要が出てくる。BE%は特定合算グループ単位だから、誰の損金を否認するのかグループ内で揉めないようにね。

規則草案は早期適用が認められるので、2018年の申告書でも利用できる。既に申告書を提出してしまった場合には修正申告ができる。更に面白いのは税務調査の段階でも損金算入自己否認の機会が提供されている点。例えば、2.999%と信じてたら、調査で実は3%でしたとなってしまったような場合、その場で必要に応じて調整が認めれる。かなり寛大。

最後に当選択を行う際に求めらえる開示やStatementは、BEAT計算の報告様式であるForm 8991を今後改訂してFormそのものに選択関係の情報を開示することになるそうだ。なんか至れり尽くせりな感じ。それまでは別途White Paper Statementで必要情報を開示する必要がある。

かなり納税者フレンドリーな規定だけど、BE%を3%未満することが必ずしも最終目的ではない。BEATの適用対象となっても、結局BEATミニマム税を支払うことになるとは限らないので、変な選択して、その結果支払う通常の法人税が元々のBEATミニマム税を加味した税額より多くなったりしないようにね。

Wednesday, December 11, 2019

BEAT財務省2019年「新」規則案(損金算入自己否認)

Thanksgiving直後に公表されたBEAT最終規則に関しては、先日「BEAT財務省最終規則 (2)」で速報したけど、膨大なFTCの規則が同時に公表されてたり、12月3日には米国財務省長官がOECDデジタル課税ピラー1の今後の行方に重大な影響を与えるレターをOECD事務総長に送付したり、いろいろあってなかなかBEATの続きに触れることができなかった。

実はBEATの規則は、最終規則だけでなく新たな規則案が同時公開されている。2018年に公表され、今回の最終規則の基となる大本の規則案と区別するため、2019年「新」規則案と呼ばれているものだ。オリジナルの規則案を最終化する際に、新たな規則案を同時公表する手法は最近のトレンドで、元々必ずしも想定していなかった新たな切り口の検討事項とか、一旦方向性を決めたはずの取り扱いに関してパブリックコメントによりポリシー選択に再考の余地が生じているケースとか、がカバーされることが多い。

例えば、GILTI最終規則には、GILTIを合算する米国納税者を決定する際に、「米国」パートナーシップを「外国」パートナーシップ同様にLook-throughしてしまうという英断が盛り込まれたけど、これと同様の取り扱いをナンと従来からのCFC課税であるSub Fにも適用するという、60年の歴史を覆す凄い提案が同時に新規則案という形で公表されている。

Sub F適用時に米国パートナーシップをLook-throughする提案は法文解釈としては際どい気はするけど、ポリシーとしては合理的だ。長年、Sub Fを適用する際に、パートナーシップが米国なのか外国なのかっていう、どちらかというと形式的な違いで、課税関係が異なることに対する疑問も多かったし、結果的にストラクチャリングの検討が複雑になって混乱を招いてたり、逆にパートナーシップを利用したSub FのBlockerとか高度なプラニングに利用されたりもしていた。ただ、今まではSub Fっていう「リングフェンス」されたかなり限定的な所得合算に対する影響だったので、費用対効果的に余り深く考える時間がないような感覚だった。GILTI導入でCFCの所得合算のスコープが極端に広がったことで、合算する際にパートナーシップというものをどう考えるべきか、っていう法的フレームワークを再考せざるを得なくなったのは間違いない。特にGILTIは、Sub FのようにCFC側の数字がそのまま合算額になる訳ではなく、Tested Income、Loss、QBAI、特定利息、等のCFC側の属性を米国株主が自分の持分額を米国で通算・再計算し、GILTIという新たに米国株主側で発生する新属性を作り出すことから、米国側で誰がどのように取り込むかにより、所得のLocationだけでなく、金額も異なり、パートナーシップに対する取り扱いもよりHigh Stakeな検討となっていた。

でもGILTIばかりでなくSub Fでも米国パートナーシップをLook-throughさせてくれるようになると、ファンドとかが米国外のターゲットを買収する際に、デラウェア州の代わりにケイマン諸島のExempted Limited Partnership(LPS)を使用する必要がなくなり、ケイマン諸島の経済に悪影響っていう、風が吹けば桶屋が儲かる、みたいなシナリオとならないかチョッと心配(?)。でも外国パートナーシップが不利になる訳ではないから、長年慣れ親しんだケイマン諸島LPSが一夜で取って代わられることはないんだろうし、またGILTIとSub FでLook-throughしてくれてもSection 1248のみなし配当のところはどんなことになるか不明だし、ケイマン諸島も未だ安泰でしょうか。

更に言えば、アウトバウンドの局面で仮にケイマン諸島LPSのニーズが減ってデラウェア州に戻ってきたとしても、ECIを気にする外国投資家やUBTIを気にする米国NPOが利用するフィーダーとしては、ライバルのBVI、更に最近ではアイルランドとかルクセンブルクとかが台頭してきているとは言え、やっぱり本家本元のケイマン諸島が圧倒的なプレゼンスを見せつけているので、こっちはなくならないから風が吹いても桶屋は結局儲からないかもね。でも、フィーダーはブロッカーだからLPSじゃなくてケイマン法人じゃん、って思うかもしれないけど配当相当のスワップに30%の源泉税が課せられるようになってからは、洗練されたヘッジファンドなんかはフィーダーをケイマン諸島LPSとして組成するケースが増えてきてる気がする。更に洗練されたファンドは、その上でCheck-the-BoxしてForeign Reverse Hybridとすることもあって、これはテクニカルにはベストなストラクチャーだ。ただ、ブローカーのバックオフィスが対応できれば、だけどね。実務部隊が対応できなくて訳わかんないことになるリスク大。

で、何の話しだったかというと、そうでした、オリジナルの規則案を最終化する際に、新たな規則案を同時公表する手法が最近のトレンドという話し。BEATもご多分に漏れずこのパターン。実は、Sub Fのパートナーシップの件もそうだけど、意外に最終規則よりも新規則案に納税者の関心を引く、実験的というか英語で言うところの「Juicy」な規定が提案されてることが多い。

BEATの2019年「新」規則では12カ月未満の短期課税年度の取り扱い、売上基準およびBE%算定目的の特定合算グループのメンバーの出入りの取り扱い、パートナーシップの取り扱いで未だ手当てされていない部分、っていうどちらかと言うと無味乾燥な3つの検討と並び、BE%を3%未満とするため納税者自らがBase Erosion Benefitを構成する損金を「自己否認」することを認める取り扱いに関して規定している。

この損金算入自己否認を容認する規定は寛容と言うか面白いのでこの点にフォーカスして触れてみたい。チョッと長くなってきたので、ここからは次回。

Friday, December 6, 2019

DCからのお手紙でOECDデジタル課税・ピラー1に早くも暗雲?

新たな課税権(Nexus)およびその際の所得按分法を提唱しているOECDのデジタル課税ピラー1には各界から多くのコメントが寄せられているけど、基本的にピラー1による課税を集中して負担することになる米国企業を抱える米国政府がどう出るかは今後のコンセンサス作りの成否を占う上で注目度が断然高い。

そんな中、米国がピラー1に引導を渡したとまでは言わないけど、少なくとも不吉な暗雲が立ち込め始めたと言える事態が発生した。BEATやFTCの最終規則+新規則案計1,000ページを解析している真っ最中だというのに、国際課税に関する話題は次々と事欠かない。

その事件は12月3日に起きた。その日、米国財務省長官のMnuchinはOECDのアンヘル・グリア事務総長に書簡、すなわち「お手紙」を送り、ピラー1における従来の移転価格原則からの強制的な逸脱には重大な懸念がある、と表明したのだ。

厳めしい感じの財務省の紋章付きレターヘッドほぼ一枚(正確には2ページ目に一文+Mnuchinのサイン)、本文2パラグラフというかなり簡素なお手紙は「米国は、国際課税制度が直面している問題に真剣に取り組むOECDの姿勢を支持しています」と唐突に始まる。英語は不思議な言語で、反対する時はまず賛成っぽい流れで入ることが多い。ただ、その後に反対が来る前触れの賛成の表現はどことなく反対を予感させてくれるものだ。昇給がない年のHRとのミーティングでまず「あなたの貢献には感謝しています」と切り出されてる感じだろうか。

で、お手紙は続く。以前からの米国のスタンスだけど、まずは、各国独自のデジタルサービス課税(DST)は米国企業を狙い撃ちしていて、グロス課税は従来の国際課税の原則から乖離しているので断固反対と表明している。その上で、新たな国際課税制度が立ち上がるには租税条約の改訂が必要となるばかりでなく、各国の国内法を整備し直す必要があり、選挙で選ばれる議員が議会で立法することを考えると、国民・企業の強い支持が不可欠となる、と何となく変な方向に話しが展開していく。でもこれは本当で、仮に米国財務省がOECDのピラー1に賛同を表明したとしても、米国の国内法を変えることができるのは議会。その点に関して行政府の財務省は無力とまでは言わないまでも、三権分立的には脇役を演じざるを得ない。すなわち、米国企業がどう考えるか、という点を十分に反映させないと米国として真の賛同は不可能ということになる。

で、「米国納税者からの支持に関しては、予見可能性や執行可能性を高める点は納税者の望むところで、広範な支持を取り付けることはできるものの、米国納税者が長年拠り所としてきた従来からの独立企業間価格(ALP)の考え方からの強制的な逸脱には重大な懸念を持っている」と爆弾を落とした。

強制的なALPからの逸脱こそ今回の目玉というかピラー1そのもの。新たに発生する課税はALPから逸脱することを大前提としているからだ。とは言えOECDとしてもALPを完全撤廃するつもりは毛頭なく、だからこそALPに新課税をどのように「かぶせる」かに苦労し、これがピラー1の「Amount A」という苦肉の策に落ち着いている部分だったと言える。例えば20%とか、かなり高めに設定するみなしルーティン利益を上回る超過利益部分の、さらに上澄み部分20%とかの一定部分、OECD言うところのUpper PortionのみをAmount Aとすることで、ALPからの逸脱インパクトを最小限にしようとしていた。Amount Bは課税権に関して新たなものではなく、どちらかというとALPの簡素化というか、Routineマーケット活動に対するALPをみなしで固定リターンとするもの。

なので、米国財務省がALPからの逸脱に重大な懸念を持つということは、すなわちAmount Aに重大な懸念があると言っているに他ならない。で、Amount Aこそが新Nexusに基づく課税額となる訳だから、これは更に言えば、ピラー1そのもののアーキテクチャーに重大な懸念があると言っているに等しい。え~、そんな根底を覆すようなことを挨拶も早々にいきなり最初のパラグラフから告知してしまうんだね。

そして続くその次の提案にまたビックリ。「そうは言うものの・・(英語では「Nevertheless…」)」と続き、ピラー1を「Safe Harbor」制度にしてしまうことで、ピラー1の目標も大概において達成でき、かつ米国納税者の懸念も払拭されるんで、そうしましょう、というもの。

そして最後に「GILTIをまねたピラー2はサポートしますよ」とし、「ここまで行ってきた議論を土台に、この線(すなわちSafe Harbor路線)でOECDと協働していきたいと考えています」と言っている。そしてなぜか2ページ目に一文だけ「各国独自のDSTは即刻取り下げてOECDが国際的な合意が取り付けられますように」と結んでいる。こんな短いセンテンスだけが2ページ目にPush-Out(BBAのパートナーシップ税務調査じゃないけどね)されているのはレターのビジュアルなイメージが何かぎこちなくて変。

Safe Harborにするってどういうこと?って思うけど、米国税法でSafe Harborって言う用語は、通常、安全ガイドラインというか、事実認定を個別にしないでも何かをみなしでOKするというようなニュアンスで使われ、いやなら本当の事実認定に基づいた取り扱いを選択することが認められる制度を意味することが多い。となると、おそらく、従来からの課税方法や国別のDSTで課税されるのが面倒ならピラー1を選択して、従来であれば課税権がない国にNexusを認め、Amount Aの国別配賦額に対する法人税を支払う、ということだろうか。もしかして、超過利益が存在しない法人はSafe Harborを利用し、Amount Aで本当に被害を被むる米国ハイテク大手はSafe HarborではなくALPに基づく主張で戦う選択ができるような制度を想定しているのだろうか。

または逆に、そもそも自分達はデジタル企業でもないし、国別DSTの対象からも外れ、従来の課税システムに基づく各国の課税で大きな歪は生じていない、と考えるどちらかと言うと伝統的な企業はSafe Harborではない純粋なALP、すなわち今と同じ課税システムを選択し、GAFAみたいにDSTの対象となって困るところがAmount Aに基づくピラー1を選択するということかもしれない。Safe Harborの具体的な考え方はレターサイズ一枚ちょっと、しかも沢山マージンがあってBodyは2パラグラフというお手紙からは読み取れない。今後Big Newsになるだろうから、Safe Harborの目指す姿は分かり次第分析してみたい。

ただ、仮にそんなSafe Harbor制度となると、ピラー1で米国大手ハイテク企業に加え、より多くの企業が認識する所得の一部でも課税して税収を得ようと手ぐすねを引いて待ち構えている国は、空振りに終る可能性も出てくるので、取る側としては賛成できるはずではなく、NexusとかAmount A、B、Cとかの理論の話しではなく、もともとどうやって米国大手ハイテクその他企業の超過利益をマーケット国で課税する国際的な枠組みを作るか、っていう出発点から考え直さないといけなくなる。でも、この展開は当然予想されるべきもので、Amount Aのほとんどが米国企業の所得で構成される制度を新たに135国で導入しようとすれば、134対米国という戦いにならざるを得ない。Mnuchinのお手紙のタイミングが、フランスによるDST導入の報復措置として、米国がフランス産ワインとかチーズに追加関税を発表したタイミングと重なっているのも興味深い。

急にこんなお手紙が届いて慌てたのはOECD側。シロやぎさんやクロやぎさんと違ってOECDはMnuchin財務長官からのお手紙を読まずに食べたわけではないんだけど、仕方がないから早速「さっきの手紙のご用事なあに」って(?)お手紙書いた、に近い。

正確には翌日の9月4日に早速返事を出している。やぎさんのお手紙と違って即日に着くところから、当たり前だけど実際には電子メールでやり取りしているのが分かるね。米国のサポートには感謝しています、とか今回のデジタル課税の流れは米国税制改正が大きな転機になっていますとか、欧州の礼儀と言うか慣習というか、カウボーイ的な米国を代表するMnuchinからのレターよりは相当長めの前置きがあり、その後に「既にコンサルテーションのプロセスに入っている」とか「今までピラー1をSafe Harborにするなんて聞いたことないけどどうなってるんでしょうか?」みたいな本題があり、「135カ国のコンセンサス取りに大きな影響があるので、大至急、クリスマス前にパリに来て話しましょう」と締めくくっている。やぎさんのお手紙よりはいいけど、最初のレター、一層のこと読まないで食べちゃった方がよかったかもね(?)。

OECDとしては寝耳に水だったかもしれないけど、過去に米国がピラー1を明確にというか、公式に支持していた訳ではないので、提言に対する米国企業のコメントを反映して、米国財務省の正式コメント・スタンスが今回、初めて公になったって見る方が、僕たちみたいにNYCとかで事を見ている、すなわちどうしても米国側からの視点で見てしまう場合には正確な位置づけのように思う。元々、合意までのタイムラインが非現実的に短いので、このままだと十分な議論が尽くされる前に、ある意味どさくさに紛れて勢いでコンセンサスに至ったかのような錯覚に陥り、結局各国による立法段階で異なる解釈に基づくバラバラな法律が制定され、MAPも実際には機能しないというか、統計には表れないけどMAPに行かせてもらえないケースも世界中に多数あることも踏まえ、かなり混沌とするのであれば、本当のコンセンサスを得る時間を使った方が急がば回れのような気もするけど。同床異夢かつ海千山千の135カ国を束ねるのは難しいね。これからどうなるのでしょうか。

Monday, December 2, 2019

BEAT財務省最終規則 (2)

という訳で342ページ飛ばして読んでみたけど、多岐に亘り過ぎていてどこから話したいいものか。特に大きなSurpriseはなかったけど、関心が高そうなポイントをいくつか挙げると次の通り。

BEATそのものは各納税者、連結納税グループの場合には連結納税グループ単位で計算するんだけど、そもそも自分がBEAT適用対象になるかどうかっていう判断は基本50%超の資本関係にある「特定グループメンバー」を合算して行う。すなわち過去3年売上が$500Mでしたか、とBase Erosion%が3%ですか、の2つの計算だけは特定グループ単位で行うことが強制される。

で、特定グループ内に異なる課税年度を持つメンバーが存在する場合、規則案では、他の特定グループメンバーの決算期にかかわらず、適用対象判断を行う法人の決算期に合わせて金額を確定するっていう面倒な規定になっていて、実際に2019年3月期に申告書作成に関して既にそのような情報収集をしてしまったんだけど、最終規則ではこの部分は変更。

最終的には適用対象判断を行う法人の課税年度と同時にまたは年度内に終了する特定グループメンバーの課税年度の数字を合算して計算することになった。例えば、3月決算の法人の特定グループ内に12月決算のメンバーが居たりすると、BEATになるかどうかは各々がグループの数字を取り込んで算定するので、2020年3月期に自分が適用対象かどうか決める場合、12月決算のメンバーの2019年12月期の売上、費用、やBase Erosion Paymentを合算することにな。一方、12月決算の法人にしてみると、例えば自分が2020年12月期にBEAT適用対象になるかどうかを決める際、3月決算メンバーの2020年3月期の数字を合算することなる。まあ吉報と言えるけど、できればもう少し早く決めて欲しかったけどね。

次に結構期待されていて空振りに終った規定として、支払先の国外関連者がCFCの場合の取り扱い。支払いを受け取る外国関連者が受取額を米国支店として課税所得処理しているケースはBase Erosion Paymentではない、っていう点は規則案でも確認済みだったけど、CFCが支払いを受け取るケースも受取額はTested Incomeの一部を構成し、最終的にGILTIとなったりするので、同じようにBase Erosion Paymentから除外できないものか、という希望が存在していた。最終規則ではECIと異なり、GILTIはCFC自身に対する課税ではない点、また受け取る金額と最終的にGILTIとして米国で課税される金額の間に多くの処理が入り、直接的な関係が見え難い点を理由にバッサリ却下されている。

次はある程度予想通りだけど、規則案でビックリした取り扱いの一つに適格出資、適格清算、組織再編等を通じた外国関連者からの資産取得もBase Erosion Paymentになるというもの。最終規則では一転、これらの取引は対価が株式の範囲でBase Erosion Paymentにはならないとしている。もちろんBootを交付する場合にはその部分は引き続きBase Erosion Payment。

後、Good NewsだったのはPE帰属所得の算定を、米国税法ベースではなく資産、リスク、機能を参照した独立企業ベース、いわゆるAOAで算定する場合のBase Erosion Paymentの考え方。AOAでみなし計上される費用、特に支払利息は、実際に本店が対外的に支出している費用の配賦ではないことから、規則案ではInternal Dealingsとして全額Base Erosion Paymentになる得るような規定になっていた。最終規則では、支払利息に関しては、米国税法下の処理とハイブリッドアプローチとし、米国税法の1.882-5(金融やっている人は良く分かるね?)の範囲では1.882-5に適用されるTracingの考え方を適用してBase Erosion Paymentかどうかの判断をし、Internal Dealingsの金額が1.882-5でECIやPEに配賦される利息を超過する部分のみをInternal Dealingsに基づくものとしてBase Erosion Paymentと取り扱うとしている。AOAを適用するのは、ある意味、1.882-5よりも多額の支払利息を計上できるからだっていう背景を考えると、幾ばくかのBase Erosion PaymentとなるInternal Dealingsに基づく金額は残るんだろうけど、全体には相当な緩和措置のように思えた。

同じく金融っぽい流れで続けると、規則案では、FRBが規定するTLAC、すなわち外国G-SIBsの米国中間持株会社に適用される総損失吸収力(TLAC)最低基準を充たすために発行される内部TLAC適格債に基づく支払いをBase Erosion Paymentから除外としていたが、最終規則ではこの除外を米国外の法令に基づくTLACにも拡大している。これで、外銀G-SIBsの米国支店にも除外規定が適用されることになる。更に除外対象金額枠も最低基準額に15%のバファーを上乗せしてくれることになった。

まだまだあるけど、今日は公表されて未だ数時間なのでこの辺で。

BEAT財務省最終規則

時が経つのは早いもので2019年も11月後半のThanksgivingが終わろうとしている。米国は10月のHalloweenの頃から急激に年末モードになり、一気にThanksgivingそしてクリスマスが来て年始となる。日本と比べると年始は呆気なく、その年のカレンダー次第だけど早ければ1月2日から通常業務となる。

Thanksgivingは11月の第4木曜日で、オフィスも学校も大概、木曜日に加えて金曜日も休みとなるので木曜日から日曜日まで4連休になるけど、今年の4連休前半は西海岸に「ストーム」(って言うけど日本の感覚的には単に若干強めの雨)が来てたし、最終日の日曜日はNYCも雨と言うかみぞれみたいな天気だった。どちらも風が結構あり、特にマンハッタンの両川沿いは激しかったので、傘よりはポンチョの方が役にたって、British Englishで言うところのまさしく「the man in the mac」(これ分かる?) になって闊歩する羽目になった。ポンチョっていうよりMacの方が格好いいね。でもCrucifyされないようにしないとね。

で、Thanksgivingと言えばもちろんStuffingされたターキー(七面鳥)が欠かせないけど、Stuffingって皆が言うたびにファンドがSection 754 選択とかMandatoryの743のステップダウンの代わりにRedemptionして持分を換金化するパートナーに対して行う「Stuffing Allocation」を思い出してしまう。Thanksgivingの日にそんな話しをしたら「それは頭か体のどっちかがおかしい」と言われたけど、体には関係ないからおかしいのはやっぱり頭の方かな。

日本を含む海外からヘッジファンドに投資する事案はここ数年チラホラ担当するけど、Reverse Hybridを含むケイマンブロッカーを経由する外国人投資家ではなく、Delaware LPに直投資、またはパススルーのDomestic Feeder経由で投資してくる米国投資家LP側の税務上の検討もなかなか面白い。National Taxやファンドばっかりやってる法律事務所のGuruみたいな人たちとヘッジファンド投資の話しをする際に、国内投資家の見地から必ず話題になるのがターキーではなくてAllocationのStuffing。Stuffing Allocationは本当に税法上認められるのか、というような議論だけど、Tradingが激しいヘッジファンド保有資産の多くのポジションを考えるとファンドレベルでSection 754選択をすることは現実的じゃないし、他に対処法がないから仕方がなくStuffingしているとしか理由はないけど、でも良く考えてあるよね。全員二重課税にならないし、経済的にはフェアな感じ。償還するパートナーは償還益は全額長期キャピタルゲイン、って思ってたらK-1が来て一部Short-TermやOrdinaryにすり替わってたりするから面食らうかもね。

で、そんなThanksgivingの連休もアッという間に終わり、月曜日になろうとしているんだけど、BEATの最終規則がそろそろ公表されるはず。今週中だろう。このポスティングのタイトルを見て既に公表されているのか、と思われた方には申し訳ないけど、実は未だ。ただ、月曜日の東海岸16時15分には、米国財務省がFTCとBEATの規則に関してブリーフィングのカンファレンスコールを開催すると言っているし秒読み体制にあることは間違いない。2018年12月13日にBEATの規則案が公表されているから何だかんだちょうど一年経つんだね。規則案は193ページだったけど、最終規則は何ページあるんだろう。多分もう少し長い嫌な予感。公表され次第、規則草案との差異とか解説してみたい。BEATはGILTIと並び、OECDデジタル課税のピラー2のモデルだと言われているからより注目度も高いしね。実は全然別物だけどね。。

と、ここまで書いて一旦ポスティングしたら、ジンクスしてしまったのか、本当に公表されてしまった。2019年12月2日の午後。まずはページ数から。さっき、規則案は193ページだったけど、最終規則は多分もう少し長くなりそうな嫌な予感、とか呑気なことを言ってしまったけど、ナンと342ページ。またこんなに読むのか、ってOMG。早速読まないとね。