Thursday, March 27, 2008

ドル紙幣を刷れない州の苦悩と「Decoupling」

*州の法人税

州法人税の法的な検討の多くは「連邦憲法」に基づく。州はもちろん課税権を持つが、事業が複数の州にまたがって展開されている場合、連邦憲法上、課税を行う州と課税対象となる事業主体の間に何らかの「接点」(Nexus)が存在する必要がある。自分の州に何の関係もない事業主体をむやみやたらに課税対象とできないということだ。また、課税対象となる場合でも、州税算定は事業主体全体の所得をその州に按分した部分の金額のみが対象となる。これらの制限は基本的に連邦憲法の定める「Commerce Clause」、「Due Process」、また場合によっては「Privileges and Immunities Clause」に基づく検討事項だ。(Nexus等に関する概要は2007年8月24日にポスティングした「拡大する州の課税権」を参照。)

したがって州法人税の算定の際には州に全体の所得の何%を按分するかという配賦方法がメインの検討事項となることが多い。一方で、配賦%を考える前に事業主体全体(ユニタリー課税の場合にはユニタリーグループ全体)の所得を算定する必要があるが、この算定は多くの州で連邦税法に準じる計算となるために州税の検討をする際には話題に上ることは比較的少ない。しかし、この点が注目を集めることがある。

*連邦税法と州法人税

例外はあるが、配賦%を掛ける前の課税所得は多くの州で連邦税法である「Internal Revenue Code」に準じて算定することと規定されている。「自動的に全て準じる」、「何月何日時点の連邦税法に準じる(日付は定期的に更新される)」その他、連邦税法への準拠の仕方は州によりまちまちだ。州によっては全て準じてしまうというのではなく、CA州のように条文毎に準じる準じないが規定されるところもある。

*ボーナス減価償却と州財政

ほぼ自動的に連邦税法に基づいて法人税を算定する州では、連邦議会が増税、減税法を通すと、それが州の財政を直撃することとなる。2002年に規定されたボーナス減価償却はその好例である。2002年のボーナス減価償却は同時テロによるショックから経済を立て直すために緊急措置として立法された設備投資減税だ。一定の条件を満たす場合には取得時に最高50%までの一括償却を認めるというものだ。残りの簿価は通常の減価償却の対象となる。2002年にはこれを過去訴求しても良いとされた。

そのような大きな償却で税収入が減るのは多くの州の財政上受け入れが困難であった。そのため、通常は連邦税法に準拠して課税所得を算定する州でもボーナス減価償却だけは認めないという「特別分離措置」が多くの州で取られた。これが「Decoupling」だ。

今回、2008年にもまたしても景気対策として同様のボーナス減価償却が立法された。ただでさえ財政難にある州政府にとって追い討ちとなるボーナス減価償却は受け入れ難いケースが多く、またしてもDecouplingとする州が多いようだ。ただ、州によっては簡単にDecouplingを実行できないような法体系となっているところもあり、その場合は苦しい。

*ボーナス減価償却と州内の設備投資

州がDecouplingできない場合に、Decouplingしないということ、すなわち「うちの州ではボーナス減価償却が取れますよ・・・」という点を売り物にして州内の設備投資を促せるのではないかと考えられる方もいるかもしれない。しかし、これは全然効果がない。

というのは、課税所得の算定時には、設備投資をした州がどこであるかに関わらず減価償却が計上されるためだ。ある州でボーナス減価償却を認める場合、その州の配賦前の課税所得は他の州にて設備投資した資産も含めて全てボーナス減価償却の対象として算定される。もちろん「たまたま」その州の設備投資のケースもあるだろうがそれはあくまで偶然の出来事だ。そもそも景気が悪い時にボーナス減価償却があるからといって急に本来行わない設備投資を行うだろうか?その辺の統計は知らないのであくまでも推測に過ぎないが、せいぜい来年取得する予定だった機械を今年の年末に取得してラッキーする程度の事業主体が多いのではないだろうか。

*州は「ドル紙幣」をすることができない

財政が厳しいのは州ばかりでなく連邦も同じはずだ。ではなぜ連邦政府は次々とボーナス減価償却だの、戻し減税だのという「Stimulous Package」を連発できるのだろうか?それは単純にお金が足りなくなれば連邦政府にはドル紙幣を印刷するという隠し技があるからだ。州はそうはいかない。バランス・バジットにならない場合には借りるしかない。連邦は税収、借入という二つの資金源に加えて「ドル紙幣を刷る」という必殺技を持っている点で州とは事情が大きく異なる。

しかしこの必殺技を使いすぎると世界中にドルが溢れる。となると、ものの本質的な価値が同一だとすればドル表示での価格はもちろん高くなる。すなわちインフレとなる。これは単純なことであり、米国政府も分かっている(というか分かっていて欲しい?)と思うのであるがドル供給量は危険レベルに達しているのではないかと見る向きもあるようだ。マネーサプライを図るひとつの指標であるM3をFRBが2006年前半から公開しなくなったのは有名な話しであるが、余りにマネーサプライが膨らんできたのでとてもそれ以上公表できなくなったという説もある。この点に関しては先日の米国議会公聴会で歯に衣着せぬRon Paul大先生がFRB議長のBernanke氏を窮地に追い込める質問を浴びせている。もし削除されていなければ見てみると面白い(Ron Paul v. Bernanke)。

この辺りの話は経済の専門家に譲るが、ドル紙幣を刷ることができないためにDecouplingをせざるを得ない州の財政は実は透明感が高く最終的にはどちらかというと健全であると言える。

Sunday, March 23, 2008

米国のスピンオフ(7)

*持分継続(COI)

「買収系」の非課税再編には持分継続条件(Continuity of Interest - COI)条件がつきものである点は過去のポスティングで何回か触れた。特に60%まで株式以外の対価が可能となるA型再編ではCOI条件の検討が重要だ。一方、スピンオフという局面でもCOI条件は存在する。再編、分割共に非課税となるからには取引が単なる形態変更にとどまる必要があり、その意味で持分の継続が求められる。

*スピンオフとCOI

スピンオフに対するCOI条件は分割される前のDの株主が総計で(個々の株主の持分ではなく)スピンオフ後のDとSubに十分な持分を継続的に持っている場合に満たされると取り扱われる。すなわち、スピンオフと前後してDまたはSubの株式の多くが譲渡されてしまうようなケースでは原則的にCOI条件は満たされない。この条件を読まれて気づかれた方もいるのではないかと思うが、これは「米国のスピンオフ(5)」で詳しく触れた「Device規定」と似ている。財務省規則ではCOI条件は他の条件から独立した別個の条件であるという趣旨の文言があるが、Device規定という条文法を設けることにより、判例を通じて進化してきたCOI条件を補足しているような関係となるだろう。

このようにスピンオフにもCOI条件は適用されるのだが、その内容は買収系の非課税再編に対するものと異なる。買収系の非課税再編に関しては近年の財務省規則の規定下、ターゲット株主が再編で受け取る買い手の株式を直ぐに売却してもCOI条件の達成には問題がないとされる。これは上のスピンオフに係るCOI条件とは相容れない。このため、分割のためのD再編およびスピンオフという局面でのCOI条件の検討時には一般的なCOI条件を規定した財務省規則は適用されないとされる。スピンオフに係るCOI条件としてどのようなものが適切かに関しては今後も財務省が検討を続けるものとしている。

*買収の準備としてのスピンオフ

スピンオフが行われる局面のひとつにDが買収される見込みであるが、Dに買い手が欲していないラインの事業が存在するというものがある。すなわち、Dは買収される前段階で、Dの買い手が不必要であるとする事業をスピンオフしてしまうという作戦に出ることがある。このようなパターンでのスピンオフ実行には極めて複雑な検討が要求される。ランドマーク・ケースである1960年代の「Morris Trust」判例から1997年の税法改正までの歴史を含めてこの点は次回のポスティングで触れたい。

Monday, March 17, 2008

JP MorganによるBear Steans買収

「エエエエエエ、たったの2ドル!?」。先週金曜日、JP MorganがBear Stearnsに緊急融資を実行した際に「Permenent Finance」を模索しているというようなコメントが発表されていたため、JP MorganによるBear Stearns買収もありかなと思っていた人は多いであろう。しかし、その直後、しかも週末である日曜日に買収が発表されるとは思わなかった。そして一番の驚きは買収価格だろう。ナント一株当たり$2である。スーパーに行っても$2で買えるものは少ない。本気で$2なのか?少なくとも直近の決算書の「Book Value」ベースでも一株当りの資産簿価は$80を超えている。余りにビックリしたので日曜日の夜に緊急に開催された一般投資家・アナリスト向けのカンファレンス・コールを聞いてみた。

*買収形態は?

タックス専門家としてはまず基本的な買収形態が気になるところだが、プレスリリースでは「株式交換」(Stock for Stock Exchange)と表現されている。しかし厳密には株式交換ではなく、あくまでも法的には合併となるであろう。上場企業であるBear Stearnsの株主一人一人と株式交換契約を締結するのは不可能だからだ(この点に関しては過去のポスティング「アメリカで三角合併が多用される訳」を参照)。また、プレスリリースの後半にはSECにMerger Agreementのコピーが今後提出されるであろう記述があることからもこの点は間違いがない。したがって、買収形態はJP Morganの株式を対価とする合併ということになる。

Bear Stearnsの現状を考えると多くの偶発債務、訴訟リスクがあって当然であると思われることから、JP Morgan本体に合併してくるというのも考え難い気がする。となると新設子会社を利用した三角合併だろうか?対価が株式であることからA型非課税再編とされる可能性が高く、その場合にはReverse三角合併でなくても、Forwardでもいい。新設子会社がCorporationであればA型の三角合併となり、通常のA型再編よりも若干条件が厳しい。もし厳しい条件が不都合な場合にはLLCを利用して通常のA型再編とすることもできるだろう。現時点ではこれらの細かい点は明らかではないがMerger Agreementのコピーが公開された時点で具体的な形態が明らかとなる。Merger Agreementの公開が待ち遠しい。

ただ、$2では非課税再編となったところでゲインが発生することはなく、単に損失が繰り延べされるだけの話しとなる。

*日曜夜のカンファレンス・コール

JP Morganによるカンファレンス・コールはCFOであるMike Cavanaghが中心に行われた。最初に今回の取引のメリットが説明され、その後、買収の基本的な内容に関して簡単な説明があった。次のような点が興味深かった。

*MACがない?

まず、今回のMerger Agreementには「MAC」条項がないということだ。MAC条項とは「Material Adverse Change」条項のことで、合併のSigningからClosingの間にターゲット企業に想定外の大惨事があり買い手側が買収に合意した基本的前提が崩れ去った際に買い手が買収をキャンセルできるという買い手のProtectionである。何がMACとなるかはMerger Agreement内容の交渉事であるが、今回のMeger Agreementにはそれがないというのだ。

考えてみれば既に余りに想定外の事態に追い込まれているBear Stearnsを買収するというのだからこれ以上のMACは必要はないかもしれない。したがって、簡単に言えば今後Bear Stearnsに何が起ころうともJP MorganはBear Stearnsを買収しないといけないということになる(もちろん株主総会の承認を得られればだが。この点は後述)。このリスク負担が株式$2という破格のPricingのひとつの理由であることは間違いがない。逆に言えばここまで破格であればMACなど要らないということであろうか。

*取引に対する信用保証は即時有効

更にBear Stearnsの取引に対してJP Morganは保証を提供するとしているが、これは即時有効となる。万一合併が承認されない場合にはその時点から後には保証は効かないがそれまでは保証が有効だということだ。どのようなメカニズムかははっきりしないが、最初の株主総会で株主承認が得られない場合も、12ヵ月以内に承認があればいいというような内容にも取れるコメントがあった。この部分もMerger Agreementのコピーを読めば明確となるだろう。

*Book Value$84と取得価格$2の差異はどこから?

一番興味深い質問はメリルのアナリストからのものだ。「Book Value$84と取得価格$2の差異はどこから?」という、まさに今回の買収の核心に迫る質問である。質問の前のカンファレンス・コールの説明部分で買収コストに加えて、訴訟、De-Leveraging、合理化その他の関連コストが$6 Billion掛かると予想されている、というコメントがあった。したがって、$2の株価にプラスで$6 Billionのコストが掛かる。それでもBook Valueには及ばない。

この点に対する回答はどことなく歯切れが悪かった。短時間のDue Diligence、リスクに対するクッション、JP Morganの株主に対する受託者義務等を考えるとこれが適切な金額であるという回答だ。差額の多くはモーゲージ資産の評価か、という突っ込みもあったがこの点に対する明確な回答はなかったと思う。また、最後の質問はマンハッタンにあるBear Stearnsの豪華な本社ビルはBear Stearns所有か?という質問があり、所有されている点も確認された。あのビルだけでも相当な価値だろう。

*合併には株主の承認が必要

カンファレンス・コールを通じてJP Morganは「今回の合併案が株主総会で否決することは考えられないが・・・」というスタンスであった。本当にそうだろうか?つい最近まで$100を超える金額で取引されていたBear Stearnsの株式である。$2という金額でハッピーな株主がいるとは思えない。問題は他に代替案があるかどうかである。代替案としては、更正法適用、清算というオプションがある。また、他の買い手が現れて高い金額を提示してくれるという代替案も考えられる。

Merger AgreementにはおそらくBear Stearnsの経営陣が他の買い手を探してはいけない「No Shop」条項が盛り込まれているはずだが、デラウェアの会社法、判例に基づき「Fiduciary Out」条項も盛り込まれているはずだ。すなわちより価値の高い提案(Superior Proposal)が舞い込んできた場合には、それを検討しなくてはいけない。目的はあくまでもBear Stearnsの株主価値の最大限化にある。その場合にはJP MorganにいくらのBreak-upコストを支払うことになるのか等も全てMerger Agreementが公開されれば明らかになるはずだ。

予断となるが、カンファレンス・コールには、明らかに怒っていると見られるBear Stearnsの株主から「$2という価格はBear Stearnsの株主にとって正当なものか?」という質問があった。回答は「それはBear Steansに聞いてくれ」という素っ気無いが正しいものであった。質問した株主は一瞬シーンとなったが「僕は合併は承認しない」と発言していた。JP Morganサイドは「OK. 次の質問・・・」という対応であった。

全体を通して、JP Morgan側がBear Stearns株主のよる合併承認にかなり強気であったのが印象的だった。大口の株主と既に「Shareholder Agreement」か何か締結しているのだろうか?またまた今後の展開に目が離せない案件が増えた。

Saturday, March 15, 2008

米国のスピンオフ(6)

おそらく言うまでもないと思われるが、スピンオフで非課税の取り扱いを受けることができるのはD株主がSub株式(またはDの債券保有主がSubの債券)を受け取るケースのみだ。他の資産(Boot)が追加で分配される場合には、例え取引そのものが非課税スピンオフと取り扱われる場合も、BootはD株主にとって課税分配となるばかりでなく、Bootに含み益がある場合にはDサイドでも課税される。

*Sub株式分配でもBoot?

このBoot規定で注意を要するのはDが分配するSub株式がスピンオフから遡ること5年以内に課税取引にて取得されている場合には、例えSub株式でもBootと取り扱われるという点だ。(なおSub株式の5年以内取得に関してはActive Trade条件と後に触れるSec.355(d)条件で課税関係が異なるので、詳しくは後のポスティングで触れたい)

*AT&T分割とSub株式Boot問題

この点に関してはAT&Tが1984年に分割された際に株主宛に発行した取引概要説明に興味深い記述がある。

AT&T分割は法務省の10年間に亘る独禁法訴訟の結果1984 年に言い渡された法的措置(Consent Decree)により強制的に行われたが、分割そのものの手法はスピンオフである。AT&Tは米国を7つの地域に分け、各々の地域の電話事業を統括する7つの「Regional Companies」を設立しAT&Tの株主に分配した。スピンオフの結果7つの会社は独立法人となった。ちなみにAT&Tはその後の数多くのスピンオフ、買収を繰り返し、最終的には1984年にスピンオフした法人の後継に逆に買収され現在に至っている。

1984年のスピンオフはその規模、複雑さで他のスピンオフを圧倒する。他のスピンオフ同様にAT&TはIRSの事前通達のを取り付けてスピンオフが非課税となることを確認している。面白いのはその事前通達では7つのRegional CompaniesのひとつであるPac Telの株式の一部がBootとなると結論付けられていることである。

BootであるとIRSが結論付けている部分はAT&Tが1982年にPac Bell(後にPac Telに非課税出資される)の株式を課税取引の買収(Taxable Merger)により取得した部分(Pac Tel全体の株式の約7%に相当)である。スピンオフが1984年に行われていることから、1982年の課税取引によるPac Bell株式取得を起因とするPac Tel株式部分は上の5年以内取得の規定に抵触するという主張だ。

AT&T側の主張はPac Bellの株式そのものは確かに5年以内に課税取引で取得されたものであるが、実際にスピンオフとして分配された株式はPac Bellのものではなく、Pac Bell株式取得後に(他の法人も含む)非課税再編の結果取得されたPac TelのものでありBootの適用はないはずというものだ。

興味深いのは、AT&Tは弁護士事務所(Davis Polk)の意見として、Pac Tel株式の分配は全て非課税スピンオフに適格であるべきだというコメントを盛り込んで公に反論している点だ。弁護士事務所はグレーな部分は残るとはいえ「Should」レベルで非課税であろうと結論付けている。「Should」オピニオンにはかなりの確証度が要求されることから、かなり自信のある結論であることが伺える。

弁護士事務所が全て非課税となるべきだとする理由は、上述の通りスピンオフで分配の対象となる株式そのものが課税取引で取得されたものでないことに加えて、分配は裁判所の命令に基づくものでありDeviceとはなり得ないこと、Pac TelグループにはPac Bell以外に多くの事業資産を有していること、というものだ。さらにIRSの事前通達ではPac Bell取得に起因する部分は課税とされているものの具体的な算定法が記載されていないことからPac Tel株式の分配を受け取る株主としてはどの部分を配当として課税処理すればいいのか明確ではないとされている。

そして最後に「このようにPac Telの数量化されていない一部分に関してはIRSは課税配当であると言っており、その意味で取り扱いがグレーである。したがって各株主は申告書でどのように今回の分配を取り扱うべきか専門家に相談することを強くお勧めする(”Urge”)」と締めくくっている。何となく無責任な感じがしないでもないが、このレターを読んだ多くの株主は敢えて配当扱いしたとは考え難い。

それにしてもIRSの通達に逆らって法律事務所の意見を堂々と公の文書で株主に告知する神経はあくまでも法的に戦うという土壌が確立している米国ならではのもので面白い。

この取引には更に「オチ」があり、その後のIRSによる一株主の税務調査でIRSは事前確認の主張通りにPac Tel株式は部分的にBootであり課税対象であるという調査結果を出した。この結果は裁判に持ち込まれ、納税者側が勝利している。結果として弁護士事務所の意見が正しかったことになる。

このことから課税取引に5年以内に取得した株式であっても適切なステップを踏めば別の株式にすり替えて(「Purge」して)適格のスピンオフとすることも技術的には不可能でないことが分かる。

Wednesday, March 12, 2008

外国法人への支払利息と源泉税

多くの日本企業の米国現地法人にとって、日本親会社からのローンは必要不可欠な資金源である。親会社からローンを受ける際には、過小資本、Earnings Stripping規定、移転価格問題(利率の正当性)等の問題点と並び、利息支払い時の源泉税の徴収、源泉に係る報告(Form 1042)義務に注意する必要がある。この源泉徴収義務に関してTax Courtで一つの判決が下された。

*Guangdong Finance, Inc.ケース

このケースは中国系の米国現地法人が中国のGITICと香港のGXEという関連会社からのローンに対して支払った利子に対する源泉徴収義務に係るものだ。GITICは中国政府に所有される金融機関であり、GXEはその香港現地法人だ。またGITICは米国現地法人の少なくとも25%の持分を持っているとされる。したがって、GITICに対する利子もGXEに対する利子もどちらもPortfolio利子とはならず米国内国法に規定される非課税特典を受けることはできない。

米中租税条約には「一方の国に所有される金融機関に対する利子は他方の国では非課税」という条項がある。すなわち中国政府に所有される金融機関からのローンに対する利子は米国では課税されないということだ。したがって、GITICに対する利子は租税条約により非課税となり、結果として米国現地法人に源泉徴収義務はなかったこととなる。

一方でGXEからのローンに関しては香港法人(=香港居住者)からのものであるため、米中租税条約は適用されない。香港が中国に返還(1997年)された今日でも米中租税条約は香港に適用されないが、今回のケースはナント1994年~1996年という相当古い課税年度を対象としているため、香港がまだ英国の植民地であった頃だ。したがってもちろん米中条約の対象外となる。

この点に関して納税者は形式的にはGXEからのローンであるが「実態はGITICからのローン」であるという「Substance over form」論を主張した。実態はGITICからのローンであるから米中租税条約の適用が可能だという主張である。しかし、Substance over formという実態論は基本的にIRS側が主張するものである。形式を自由に選択できる納税者が後から実態は形式と異なるという抗弁を展開できる局面は極めて限られている。この点は取引の形態を決定する際に肝に銘じておく教訓であろう。また、GXEはGITICの代理人(Agent)であるという主張も展開されたが、提出された証拠書類等を見ても代理人の関係を決定付けるものはなく退けられた。

結果として判決はGXEからのローンに対する支払利息に関して源泉徴収義務違反ということになっている。

*Form 1042

外国人に対して利子、配当、ロイヤリティーその他の支払いを行う者は基本的にその金額、内容を年次報告書であるForm 1042にて報告する必要がある。租税条約で源泉が免除されているケースでもForm 1042の提出義務は残るため、今回のケースではGXEの金額ばかりでなく、GITICの金額もForm 1042にて報告される必要があったことになる。

実際にはForm 1042の提出は行われていなかった。したがってペナルティーが課せられているが、申告書未提出に対するペナルティーは通常、未払い税金の金額に対する%となる(月5%で最高25%)。このことからGITICに関しても報告義務はあったが税金の支払いは必要なかったため、Form 1042未提出に係るペナルティー計算目的ではGXEローンに対する源泉税の25%となるであろう。

*源泉徴収義務

源泉徴収というのは本来、受け手に代わって税金を納めるという手続きである。給与に対する源泉徴収のように「仮の徴収(後で申告書を提出して最終税負担確定)」のケースもあれば、外国法人・外国人に支払われる投資所得に対する源泉徴収のようにそれが「最終税額」となるケースもある。

今回のケースはもちろん後者である。例えば米国法人が外国法人に対して100の利子を支払う際に30の源泉をする必要がある場合には、30はIRSに納付し残りの70を外国法人に送金する。30はあくまでも外国法人に対する課税であり、この30は最終税額である。外国法人が他にECI等の報告をしない限り法人税申告書を提出する必要はない。

30を前もって源泉させるのはでないと税金を取ることが実務的に困難だからだ。相手は外国法人・外国人である。もし外国法人に100全額を支払ってしまったとするとIRSとしては後に外国から税金30を徴収するのは難しい。IRSの法的なパワーも外国ではかなり限定されてしまうからだ。したがって、支払い主にその責任を取ってもらうということになる。

仮に100全部を支払ってしまった後に、30の源泉徴収義務があることが発覚したとすると、この30は外国法人の税金であるにも係らず、源泉徴収義務を持っていた米国法人に対して追徴課税することが認められる。米国法人としては100の利息を支払った上に30の税金を支払うこととなる。これが源泉徴収義務者=Withholding Agentとなることの怖さである。

今回のケースでは適用されていないが、税金の未払い25%ペナルティーに加えて源泉徴収義務違反のケースでは源泉税額の100%をペナルティーとすることができるという規定もあるのでますます怖い。他人の税金を取らなかったという理由で大きなペナルティーを支払うのは最悪のシナリオだ。

日本企業の米国現地法人が親会社に利息を支払っているが源泉税を徴収していないというようなケースは近年では余り見かけなくなった。一方でForm 1042は通常の法人税申告書と異なる様式となるため、会計事務所側で必ずしも自動的に作成してくれるものではなく、実際には提出されていないケースも見受けられることから注意が必要だ。

Thursday, March 6, 2008

政府系ファンド(SWF)が享受する税務上の恩典

今日のニュースを読んでいたら日本の財務省は外貨準備を政府系ファンド(Sovereign Wealth Funds-以下SWF)にて運用することに消極的であるという記事が載っていた。一方、つい先月には日本系SWFの設立検討チームが自民党に設立されたというニュースもあったと記憶している。日本のどことなく消極的なアプローチと比べると、共産主義でありながらさっさとブラックストーンのような超資本主義的なPrivate Equity Fundsに投資している中国の対応は興味深い。

SWFは元々クウェート、アラブ首長国連邦、シンガポールなどでは古くから存在する。近年、中国、ロシア等で新たなSWFが続々と設立され、またその巨額な資金がマーケットに及ぼす影響が潜在的に大きいことから俄かに注目を集めている。サブプライム問題で資本増強を迫られた米国の銀行がSWFから追加出資を受けたニュースもSWFの存在感を更に知らしめることになった。

通常の投資家と異なり、投資家が他の国家の関連するファンドとなると投資を受ける側の国では国家安全保障上の懸念も存在する。例えば最近では、ドバイSWF関連の会社による米国の港湾管理会社買収案、中国国営会社によるUnocal買収案が大問題となった。しかし、実際には安全保障とは何の関係もない80年代の日本企業による米国不動産、映画会社の買収に対してもかなりの反対意見があったことから、純粋に国家安全保障に係る懸念なのかどうかは多少眉唾な部分がある。

*SWFに対する課税

SWFによる米国投資には通常の外国投資家にはない税務上の恩典がある。SWFが外国政府組織の一部であるという位置づけが認められる場合には(それ自体よく分からない部分もあるが)、SWFの受け取る投資所得は基本的に非課税となるからだ。SWFが直接的に商活動に係る場合には非課税措置は認められないが、配当、利子等の投資所得であれば非課税となる。一方で一般の外国人投資家に対しては、銀行利子とポートフォリオ利子は非課税だが、ポートフォリオ利子以外の利子、配当、賃貸には30%または租税条約に基づく税率の源泉税が課せられる。米国の株式等売却から発生するキャピタルゲインは通常、一般外国投資家にとっても非課税となる。

このことから実際にはかなりの投資所得が一般の外国人投資家にとっても非課税とされていることが分かる。特に租税条約締結国に居住する外国人投資家の受け取る投資所得に対する米国の税金はかなり限定的で概して低くで済むことが多い。しかし、一般の外国人投資家が配当に対して少なくとも10%は源泉税を取られることが多いことを考えると、投資所得が全て非課税となるSWFが受ける恩典はやはり大きい。さらにSWFの性格から言って本国で課税されることもないであろう。

*SWFによる不動産売却益

SWFが米国の不動産投資をすることもあり得る。その際に問題となるのは、米国不動産からの売却益に対する特別な規定(FIRPTA)に係る取り扱いであろう。FIRPTA規定下では、外国人投資家が認識する米国不動産売却益は基本的に全てECI(事業所得)となる。したがって常に申告所得として累進税率の対象となることになる。更に申告漏れを最小限とするため、限定的な例外規定が適用されるケースを除き不動産売却時にバイヤーは所得価格の10%を源泉徴収する必要があるとされる。これはSWFに対しても基本的に同様であるとされる。

SWFが不動産持分に直接投資する場合にはFIRPTA規定の適用は分かり易い。一方で、SWFがREIT経由で不動産投資をする際、REITからの分配金を「売却益」に基づく部分までもをSWFに対する非課税規定が適用されるとして非課税扱いしているケースがあるようだ。この点に関してはFIRPTA規定に反するとしてIRSが近々に財務省規則を発表するとしている。現段階ではNotice 2007-55にて、REITからの分配金(清算配当を含む)のうち、不動産そのものの売却益に基づく部分はSWFにとっても課税対象と取り扱う旨が公表されている。

*SWFに対する恩典の今後

現時点で直ぐに非課税措置を見直すという動きはないようだが、外国政府がSWF経由で純粋に投資家としてマーケットに参加してくる局面で、特別扱いを受け続けることがフェアであるかどうかという問題は今後必ず議論となってくるであろう。外国政府の投資所得に対する非課税措置が規定された時代にはSWFのような存在は全く念頭になかったことは間違いない。

Tuesday, March 4, 2008

米国のスピンオフ(5)

前回までのポスティングで非課税スピンオフの条件のうち「Active Trade or Business」「事業目的」「DによるSubのControl」「DによるSubの分配」に触れた。今回は「Divice」という日本語では分かり難い表現の条件に触れる。

*Device規定

この規定は税法上は「Not used principally as a device for the distribution of the earnings and profits of the distributing corporation or the controlled corporation or both...」と記されている。意訳すると「DまたはSubのE&P分配をスピンオフと仮装して実行するための手段ではないこと」となる。E&Pの分配とはもちろん「配当」であることから訳は更に「配当をスピンオフと称して実行するような手段であってはならない」ということだ。

スピンオフは本来であれば配当として株主およびDで課税される取引を、企業再編を促すという目的で特別に非課税とすることを認めている。したがって、スピンオフを偽って本来は配当となるような取引を非課税で行おうとするようなケースと純粋なスピンオフを区別する必要がある。考えてみれば、事業をDが「Divestiture」してその売却価格としての現金を配当すれば当然配当に対して課税されるのに対し、スピンオフとして非課税で受け取った株式を売却すれがキャピタルゲインとなるのだから悪用とまではいかなくても多少無理な解釈をしてスピンオフとしたいと願う者がいても不思議はない。

このDevice規定は「米国のスピンオフ(3)」で触れた事業目的条件と極めて近い。すなわち、強力な事業目的が立証できるのであれば自ずとDevice規定も満たすことができると考えられる。

*Deviceとみなされ易い状況

Device規定を満たすかどうかは個々に事実関係による判断となり、機械的なテストではない。しかし、Deviceと考えられやすい事実関係があることは間違いない。

  • 均等分配: Dの株主の持分に準じてSub株式が分配されるケース(すなわちスピンオフ)は配当と見分けが付き難い。これはスプリットオフやスプリットアップが例え課税取引扱いされたしても配当とはならずに償還、清算と扱われることからも明らかである。しかし、均等分配が全てDeviceとなる訳ではない。さもないと非課税スピンオフは不可能となる。したがって、均等でない分配に比べるとより精査されるという感じであろう。
  • スピンオフ後の株式売却: スピンオフ後にDまたはSubの株式が売却されてしまう場合にはDeviceの疑いが強くなる。スピンオフの前または同時に売却交渉が行われているような事実があるとすればかなりの確率でDeviceとみなされるであろう。一方、スピンオフ後の譲渡が非課税再編に基づく株式交換であればそれだけではDeviceとは言い難い。その場合は再編で受け取る株式がDまたはSub株式の代替であると取り扱われる。スピンオフ後の株式売却のDevice規定に与える影響に関してはCodeと財務省規則で微妙な温度差がある。興味のある方は双方を読み比べてみるといい。
  • 事業ニーズを超えた流動資産: DまたはSubに通常の事業ニーズを超えた多くの現金等の流動資産がある場合にはDeviceとされ易い。
*Deviceではないとみなされ易い状況

一方でDeviceではない、すなわち正当なスピンオフであると立証し易い事実関係もある。

  • 強力なBusiness Purpose: これは上述の通りである。
  • Dが上場会社: Dの株式が上場されており5%を超える株主がいないような場合にはスピンオフはDeviceとはなり難い。そのような状況では、配当扱いしたくないという株主レベルの願望を基に法人レベルでのスピンオフが実行される可能性が低いということであろう。
  • Dの株主が米国法人: Sub株式の分配が米国法人株主にあるものであれば、例え配当とみなされても「Dividend Received Deduction」が適用されるためいずれにしても株主レベルでは非課税部分が大きい。したがって、そのような取引は敢えて巧妙にスピンオフの名を借りて配当を実行する必要が低く、Deviceとはなり難い。通常、法人株主は株式償還、売却によるキャピタルゲインよりも配当としての取り扱いを好む。これとは対照的に個人株主は配当よりも税率が低く(近年は配当も低税率となることが多いが)かつ取得コストを差し引くことができるキャピタルゲインを好む。Deviceという規定の趣旨が配当を配当でないように見せかけて受け取りたいというケースを取り締まるというものであるから、当然個人株主のケースがDevice条件的には怪しいということになる。
スピンオフは買収型の再編と比べても法律上の条件が多く、次回以降も非課税スピンオフの条件について続けて行きたい。

Saturday, March 1, 2008

「LLCにDRO条項」そして「変な判決」二つの不思議

パートナーがパートナーシップから配賦される損失を取り込む際には何重もの制限がある。まず、配賦される損失金額そのものに「Substantial Economic Effect」がなくてはいけないし、損失の取り込みはパートナーがパートナーシップに対して持つ税務上の簿価(Basis)が上限となる。またPassive Activity Loss規定、At-Risk規定など元祖タックス・シェルター対策とでもいえるハードルを越える必要がある。

*At-Risk規定

その中でAt-Risk規定に係る面白い(というかチョッと不思議な)判決がこの程Tax Courtで下された(Hubert Enterprisesケース)。At-Risk規定というのは個人(プラス同族法人)に適用され、タックスシェルターとして利用されることの多い活動(映画制作、資源の採掘、リース等)から発生する損失は「出資額、個人的に返済義務のある金額、または個人資産を担保として差し入れている金額」を上限としてのみ認めるというものだ。

*DRO条項

Tax Courtの判決はリース業を営むLLCから配賦される損失に関してのものだ。LLCはリース資産を取得するために「Recouse」ローンを組んでいる。ただしRecourseとはいえ、LLCという事業主体が借り手となっていることからあくまでも一義的にはLLCの資産内での返済が保障されているに過ぎない。しかし、LLCの合意書には、LLC清算時に自分のキャピタル勘定がマイナス残高となっているパートナーはその金額をLLCに追加出資するという「Deficit Restoration Obligation(DRO)」条項が盛り込まれていた。となると、LLCの資産で返済し切れない負債がある場合には最終的にメンバー個人に間接的であるとはいえ返済義務が生じることとなる。

争点のひとつはこのDRO条項はパートナーのAt Risk金額を、出資額を超えて増やすことができるかどうかという点である。

*DRO条項はAt-Risk金額を増やさない?

今回の判決では結果としてDRO条項があってもAt-Risk金額は増えないという不思議なものである。

その理由のひとつとして挙げられているのが、DRO条項はLLCの合意書上、LLC清算時点まで効力を持たないからというものだ。しかし、パートナーシップ財務省規則に規定されるDRO条項は「清算時点でキャピタル勘定のマイナス残高に責任を持ちなさい」というものである。確かにこのDRO条項の目的は損失の配賦がEconomic Effectを持つかどうかの検討のための規定であり、Economic EffectがあるからAt-Risk規定を必ずしも満たすいうことはない。しかし、双方の規定の目的はパートナーは経済的に損失に対して個人的なリスクを負っているのかどうかの判断であり、経済効果は認められるが、リスクは負っていないという結果も何となく解せない。

DRO条項はEconomic Effectを持たせるために盛り込まれる条項であり、通常は財務省規則に規定される文言通り「パートナーシップが清算した際にはマイナス勘定を補填します」と規定されているはずだ。となると今回の判例に基づく限り、ほぼ全てのDROはSec.704(b)のキャピタル勘定維持目的では機能するが、「At Risk」規定目的では不十分であることになる。

また、今回の判決の考え方はSec.752の負債配賦のアプローチにも反する。パートナーのパートナーシップに対する税務上の簿価(Basis)を決定する際に含むことが認められるパートナーシップ負債のパートナーへの配賦金額は、DRO条項が規定されている場合には、当然DRO条項の効果も加味して行われる。その際には最悪の事態が想定され、最終手段として誰が負債を負うことになるかが検討される。最悪の事態が想定される場合には、資産の価値はなくなり、負債のみが残る。そのような状況でDRO条項が規定されているパートナーシップであれば、キャピタル勘定がマイナスになっている金額に関して各パートナーは追加出資をして、それを原資にパートナーシップは借入金を返済する必要がある。したがってDRO条項が適用されるパートナーに関しては最悪のケースでは負債の返済リスクを負う必要が生じることから簿価決定の目的で負債の配賦を受けることができる。

にも係らず今回の判決ではDRO条項にも係らずAt-Risk金額は増えないとされた。

*差し戻しにも懲りないTax Court

実は今回の判決に至るには多少複雑な経緯がある。もともとこのHubertの判決は2005年9月にTax Courtが出したものである。その後、納税者側の控訴に基づく検討で、2007年4月にケンタッキー、テネシー、ミシガン、オハイオを管轄下に持つ連邦控訴裁判所である6th Circuitは「パートナーがリスクを負っているかどうかの判断は最悪の事態を想定して返済義務を考えて再考するように・・・」と判決を差し戻し(Remand)しているのだ。にも係らず今回の判決となってしまった。今後、ニューヨークを管轄下に持つ2nd Circuitや、カリフォルニア州を持つ9th Circuit辺りで異なる結論が出てもおかしくないのではないかとも思える。

*LLCにDRO条項という不思議

さらに今回の判決同様に不思議にも思えるのは、せっかくLLCという「有限責任」事業主体を組成しておいて、その上でDRO条項を盛り込むという事実関係である。DRO条項など盛り込むと、せっかくのLLCを実質General Partnership同様に変換してしまうのではないだろうか?有限責任が必要だからこそ、S CorpだとかLLCという事業主体形態を選択するのが通常だが、DRO条項はメンバーの責任を潜在的に無限化する。このことを考えると、昔のパートナーシップ合意書を知らずにそのまま流用している合意書を持つようなLLC以外にDRO条項を持つLLCは少ないのではないかとも思われる。その意味で実は今回の判例の適用件数は実際には思った程存在しないのかもしれない。