Sunday, March 23, 2008

米国のスピンオフ(7)

*持分継続(COI)

「買収系」の非課税再編には持分継続条件(Continuity of Interest - COI)条件がつきものである点は過去のポスティングで何回か触れた。特に60%まで株式以外の対価が可能となるA型再編ではCOI条件の検討が重要だ。一方、スピンオフという局面でもCOI条件は存在する。再編、分割共に非課税となるからには取引が単なる形態変更にとどまる必要があり、その意味で持分の継続が求められる。

*スピンオフとCOI

スピンオフに対するCOI条件は分割される前のDの株主が総計で(個々の株主の持分ではなく)スピンオフ後のDとSubに十分な持分を継続的に持っている場合に満たされると取り扱われる。すなわち、スピンオフと前後してDまたはSubの株式の多くが譲渡されてしまうようなケースでは原則的にCOI条件は満たされない。この条件を読まれて気づかれた方もいるのではないかと思うが、これは「米国のスピンオフ(5)」で詳しく触れた「Device規定」と似ている。財務省規則ではCOI条件は他の条件から独立した別個の条件であるという趣旨の文言があるが、Device規定という条文法を設けることにより、判例を通じて進化してきたCOI条件を補足しているような関係となるだろう。

このようにスピンオフにもCOI条件は適用されるのだが、その内容は買収系の非課税再編に対するものと異なる。買収系の非課税再編に関しては近年の財務省規則の規定下、ターゲット株主が再編で受け取る買い手の株式を直ぐに売却してもCOI条件の達成には問題がないとされる。これは上のスピンオフに係るCOI条件とは相容れない。このため、分割のためのD再編およびスピンオフという局面でのCOI条件の検討時には一般的なCOI条件を規定した財務省規則は適用されないとされる。スピンオフに係るCOI条件としてどのようなものが適切かに関しては今後も財務省が検討を続けるものとしている。

*買収の準備としてのスピンオフ

スピンオフが行われる局面のひとつにDが買収される見込みであるが、Dに買い手が欲していないラインの事業が存在するというものがある。すなわち、Dは買収される前段階で、Dの買い手が不必要であるとする事業をスピンオフしてしまうという作戦に出ることがある。このようなパターンでのスピンオフ実行には極めて複雑な検討が要求される。ランドマーク・ケースである1960年代の「Morris Trust」判例から1997年の税法改正までの歴史を含めてこの点は次回のポスティングで触れたい。