Wednesday, November 22, 2023

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (3)

前回はKiller B規則を読むには避けることができないSection 367の理解のうち、Section 367が誇る長い歴史、そして1932年当時のオリジナル立法趣旨を脈々と受け継いでいるSection 367(a)のアウトバウンド規定に触れた。1932年から30年後の1962年にThe Beatlesが、じゃなくて議会がケネディ政権の下CFC課税のSub Fや1248規定を導入し、元祖Anti-DeferralのSection 367の役割は低下するかと思いきや、その後も時代を経て進化する異なるポリシーが次々と加味され、クロスボーダー課税にかかわる広範な規定が満載されたとてつもなく複雑な法体系に変身を遂げた。その一例として1990年代のインバージョン対策、Helen of Troy規則の話しに至ったけど、(a)だけでもまだまだきりがなさそう。Section 367(a)を熟知してたらそれだけで十分に食べていけるだろうからその全容を数回のポスティングで片づけるのは非現実的なんでこの辺にしないとね。さらに今年も12月29日とかにCAMTの膨大な規則案とかが突然公表されてマイアミビーチが台無しになりそうな気配なので、その前にKiller Bくらい片づけないと、ってThanksgivingを目の前にチョッと焦ってきてます。ということで(a)はここで強制終了。

Section 367(d) と(e)

それでは(a)が終わったんで次は(b)だねって思ったでしょ?そうだったら「It's easier than learning your ABC's」で「My little baby sister can do it with ease」になっちゃうんでそうじゃないんですね。これらのフレーズはもちろんLocomotion!Grand Funkのバージョン聴くとここ「Ease」じゃなくて「Easy」ってきこえるんだけどグラマー的にはEaseかな?Grand Funk Railroadとか今の読者にはもう馴染みないよね?伝説の1971年後楽園(東京ドームではない)落雷ライブとか。口パクだったんでは?っていう噂はチョッとBummerだったけど。1975年の全米ツアーを収録したライブアルバム「Caught in the Act」はライブアルバム名盤の一つ。Purpleの大阪や武道館ライブの「Made in Japan」やZeppelinのNYC MSGライブ「The Song Remains the Same」とかに並ぶ。PurpleのMade in Japanは一切オーバーダブがない一発取りでコストが掛からず$3,000程度で済んだって話しらしいけど、その実力は凄い。個人的に技術を見極めることができるのはギター部分なんでBlackmoreのライブパフォーマンスには舌を巻くけど他のメンバーの技術も一聴して卓越してることが分かる。うま過ぎ。ZeppelinのMSGライブは結構後からスタジオで手が加えられたって話し。当時、ミキシングの会社に勤めてる先輩がいて、MSGパフォーマンスの生テープと加工後の2つを比較したことがあるようなこと言ってたけどPlantのボーカルには相当な手直しがあったに違いないって言ってた。真偽はともかく幼かった(?)僕はライブはライブって単純に思ってたんでZeppelinの話しは結構ショックだったのを記憶している。確かにオープニングのRock and RollのボーカルってMSGより以前のライブをBootlegで聴くとスタジオ盤と一緒でちゃんとCでボーカルが始まるけどMSGのやつって短3度低く下げてAで歌い始めるよね。曲のキーがAだからAでも外れてはないけど声が出なくなってたのかな。でもスタジオ盤と違う音程で始まるボーカルって妙に臨場感があってそれはそれでワクワク。ただライブパフォーマンスの実力的にはPurpleには及ばないのは明白。まあ格好いいからそんなことはどうでもいいだろう。日本でPurpleとZeppelin聴いてたその昔し、両バンドはブリティッシュロックの双璧っていうようなイメージを持ってたんだけど、米国で暮らすようになって気づいたのは少なくとも米国でのCommercialレベルの成功は圧倒的にZeppelin。PurpleはSmoke on the Water(個人的にはこの曲がPurpleの代表作って言うのはかなり抵抗あるけど野球場とかで今でもQueenのWe Will Rock Youとかと並ぶ応援歌の定番だから仕方ないか…)は知っててもそれ以上じゃないケースが結構あるんだよね。それだけにMade in JapanはPurpleにとって人生のハイライトだったっていうのが分かるね。ちなみにこれらのライブ名盤は3つとも全て2枚組だったんで、定価が2000円じゃなくて倍の4000円とかで限られたお小遣い内の予算では新譜に手が届かず、Disk Unionとか、もうひとつ名前忘れちゃったけど新宿西口辺りのレコード屋で輸入盤の中古とか探して手に入れたものだ。Purpleの「Made in Japan」は日本版は「Live in Japan」ってタイトルだったけど僕は新宿で輸入盤を購入してたんで「Made in Japan」盤だった(中身は同じ)。あの頃から80年代にかけてMade in Japanの製品がグローバルマーケットを席巻してたんでシャレでつけたタイトルだろうけどね。う~ん、時代の流れは怖い。他国で暮らした読者は感じることがあるだろうけど、日本はチョッと独特で、でも世界でも稀に見る質の高い国で、かつ資源がないとか地政学的に独自のリスク管理が問われるんで、欧州とか米国の短期的なトレンド、歪曲が多いメディア報道に基づく情報、海千山千の外交力に惑わされたり、国外をお手本にした小手先の政策・対応ではなく奇想天外な展開で全く別物になるであろう次の世界を見据えた賢い選択をして欲しいものだ。で、PurpleとZeppelinはブリティッシュだけど、Grand Funk Railroadはもちろんバリバリのアメリカン。「We're an American Band」だからね!古き良き時代のアメリカンRockって、独特の下品さ(悪い意味ではなく)が丸出しでそこがまた格好いいよね。所詮Rockだからね。

で、なんで(a)の次が(b)じゃないかって言うと(b)はKiller B的には主人公なんで、まずはSupporting Castに軽く触れてから満を持して(b)とかその傘下の規則、特にKiller Bをトリガーした2011年の最終規則にImmerse、すなわち没頭する予定だからだ。

僕たちがPracticeしてて(b)を除いて頻繁に戦うことになりがちなのは(a)の次に(d)かな~。(d)は無形資産を351や361の非課税規定に基づき外国法人に移管する際、(a)に規定される通常の含み益課税ルールの代わりにロイヤルティーストリームに置き換えて所得認識すること、っていう規定。移転価格やっている読者の方なら「それってsection 482の2文目のCommensurate with Incomeじゃん (「CWI」、日本語だと所得相応性基準)」って思うはず。概念は同じで非課税規定を使わずに関連者に無形資産を移管する場合は482のCWIを考えて、非課税規定を利用している場合は(d)を考える、って覚えておくと当たらずしも遠からず。ちなみに2017年の税制改正TCJAで無形資産の定義が変わり、従来取り扱いがあやふやだったGoodwillも今では正式に(d)目的の無形資産に含まれる。また、TCJAではSection 482に3つ目の文が足され、IPはAggregationして価値を評価するように、ってDisaggregateして個々のIPを過小評価できなくしている。Secton 482ってたった3文であれだけの税務Practiceに至るってすごいよね。もちろんRegulationsはあるけど、それだって「-1」から「‐9」までだし、規則案だって主にSecuritiesのGlobal Dealingにフォーカスしたものが数点で、Sub CとかSub Kに比べたら規則のボリュームもそれほど多いとは言えない。ALPは基本事実認定なんでルールは少なくて当然かもね。

(d)と並んで(e)も頻繁に登場する。インバウンドPractice的には特に(e)(2)が多いかな。(e)(1)の対象になるスピンオフはコストが掛かるから比較的稀だもんね。(e)(2)は例えば100%日本親会社に所有される米国子会社の清算時に適用があり得る。

Section 367(b)

そしていよいよSection 367(b)。(b)のタイトルはシンプルに「Other Transfers」で、その守備範囲の広さを予感させてくれるもの。昔のポスティングで触れた通り、テクニカルに言うと条文のタイトルに法的効果は一切ないけどね。で、条文本文を読むと(a)でカバーされない資産移管に関しては「section 332, 351, 354, 355, 356, または361」適用時に財務省規則で規定されない限り外国法人は米国税務上も外国法人と取り扱うっていうもの。ただ、厳密には(a)と(b)は相互排除の関係にはなく同時適用もあり得る。条文は基本それくらいのことしか書いてないんで行政府の財務省に規則策定権を丸投げして、(a)以外でも非課税の恩典を制限するルールを規定するようにっていうもので、Section 1502読んでも連結納税のルールが全く分からないのと同様、367(b)だけ読んでも何も分からない。

条文だけ読むと余りに漠然としてるけど、1975年の立法趣旨を読むと外国法人の(当時はSub Fで)課税されていない留保所得がSub Cの非課税規定で米国に還流されるタイプの取引が一番の懸念だったことが分かる。この趣旨に沿った規則を策定しなさいっていう使命を全うするため、90年代から財務省は実に多くの規則を公表してるけど、中でもKiller Bに直結することになったのは2011年に最終化されたsection 1.367(b)-10の「Triangular再編に絡む親会社株式取得」を規定した規則(「2011年最終規則」)。この2011年最終規則は中でも、Triangular再編に絡んで外国法人がE&Pの移管を伴うことなく、現金等の資産を米国に還流するような取引にフォーカスがあったと言える。

2017年TCJAとsection 367(b)

チョッと前まで連載してたFIRPTA系のポスティングで、TCJA以降のsection 367(b)は抜本的に見直しが必要、って書いたと思うけど、これはまさしく上述の1975年立法趣旨に反映されているsection 367(b)がフォーカスして取り締まろうとしていた取引の大半がTCJAで合法的または存在しなくなってしまったからだ。すなわちsection 367(b)は外国法人の留保所得が非課税のまま米国に還流されないよう立法された訳だけど、TCJA導入時に過去の(正確には1987年以降の)留保所得は低税率で一括課税され、導入後はGILTIで毎期合算されることになったんで、そもそもCFCの留保所得が米国で非課税っていうケースが激変してしまった。Sub Fも未だに健在だ。さらに、High Tax Exclusion、Deemed Tangible Income Return (QBAI)のシールド、別のCFCがTested Lossを認識してくれて自分のTested Incomeをオフセット、等の隙間規定で多くの困難を乗り越えて(英語で言うところのJump through the hoopsして)GILTIの対象とならない外国源泉留保所得があれば、それを米国法人株主に分配しても一定要件下で100%の配当所得控除が認められて非課税になるため、その手の留保所得は合法的に非課税で米国に還流可能になり、367(b)のフォーカスは根底から無意味化したことになる。

だったらsection 367(b)自体撤廃したらいいじゃん、って思うかもしれないけど一度出来た規則はなかなかなくならない。100%配当所得控除は法人にしか適用がないし、法人が受け取る配当もHybridだと100%所得控除の適用がないとか、確かにテクニカルにはsection 367(b)が全く不要になった訳ではないのは財務省の言う通り。Killer Bにかかわる2011年最終規則も引き続き重要って宣言している。

Killer Bは2011年最終規則に違反しない形で進化してきた。前々回のKiller Bシリーズ冒頭で触れた通り、財務省はその適用法が気に入らなかったため、2014年と2016年にNoticeを公表し、今回の規則案に至っている。では2011年最終規則ってどんな内容?ってところからは次回。

Sunday, November 12, 2023

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (2)

前回のポスティングではKiller Bをキックオフしたけど、Killer Bを語るには、まずsection 367(b)の話しをしないとね、ってなって、さらにsection 367(b)の話しをするには、Section 367全体の話しをしないと、ってところで終了していた。そういえばチョッと前、って言っても一年くらい前かな、に流行ってたSZAの「Kill Bill」って曲があって詩はチョッと怖いけど曲は良くてWestsideに沈んでいく真っ赤な太陽が摩天楼のガラスに反射しているの見ながら黄昏れたりする時にピッタリの曲調だった。どうもこのKill Billって聞くたびにKiller Bを連想してしまってせっかくの黄昏感が台無し(?)でした。

Section 367

さて冒頭で触れた通りsection 367(b)の話しをさざるを得なくて、Section 367(b)の話しをするにはSection 367全体のフレームワークに触れておく必要があるってことでまずはSection 367の超ハイレベルオーバービュー。Section 367ってSub CのM&AとかのCorporate Tax絡みの規則とクロスボーダー課税のブリッジ役を果たしてる条文。なのである程度双方を知らないと理解が進まないSuper-ComplicatedかつInterestingな条文。

Section 367自体は今のCodeでは300番台ってことから分かる通りCorporate規定のSub Cに属する。感覚的にはSub Cっていうよりもクロスボーダー課税に属するって頭の中で整理しているPractitionerが多いんではないでしょうか。前々回のポスティングでも触れた通りSection 367は(a)から(f)で構成されるけど、他の多くの条文に見られる(a)で一般規定して(b)以降は例外や定義みたいなストラクチャーではなく、(a)、(b)、(c)…が各々異なる目的で独立している。とは言えSection 367全体に共通なテーマがある。それはSub Cをそのまま適用すると(Pureな国内取引だったら)非課税になるタイプの取引、具体的にはsection 332, 351, 354, 355, 356, 361等で非課税になる取引、に外国法人が関与している場合にSub Cの非課税措置をオーバーライドするっていうもの。含み益があれば課税するぞ、っていうものもあれば、Sub Cの非課税措置を実現するには追加の条件が課されたりする。

Section 367(a)とSection 367の歴史

Section 367のトップバッターは「一番レフト高田」(知っている人いる?)じゃなくて、もちろんSection 367(a)。(b)から始まる訳ないもんね。(a)はOutbound系の規定でSub Cの世界だけで考えれば非課税になるであろう資産移管でも、米国人が「外国法人」に資産移管を行う場合、「譲渡益」を認識するかどうかの目的のみ、その外国法人は米国税務目的で「法人」とは取り扱わない、っていう規定。このアプローチ回りくどくて面白しろいよね。例えば普通だったらSection 351の適用があり得る出資に対して移管先の法人が外国法人の場合はSection 351を認めない、って直接的に非課税措置を停止するんじゃなくて、移管先の外国法人を法人じゃない、ってすることで間接的にSection 351が不適用になる、っていう仕組み。移管先が法人じゃなかったら当然だけどSection 351の適用はないもんね。ただこれは含み益を持つ資産に対するオーバーライドなんで、含み損を持つ資産の譲渡には適用がない。すなわち(a)を使って含み損をトリガーすることは認められない。マンハッタンの道路みたいにOne-Way Streetだ。

う~ん、何で敢えてこんなアプローチを選んだんだろう、っていうのは個人的に昔から七不思議で、古い立法趣旨とか読んだことあるんだけど今一つ良く分からなかった。おそらく多くのSub Cの非課税措置を一気にTurn-offさせる手法としては容易だったんだろう。それはそうだよね。Sub Cっていうからには法人にかかわる規定なんで「あなたは法人ではありません」って宣言されてしまったら多くのSub C規定の適用はないもんね。

Section 367を紐解いくと、何と言ってもまずその歴史の長さに驚かされる。Section 367の前身にあたる条文はSection 112の一角を占める112(k)として 1932年に登場してる。1932年って言ったら100年近い昔じゃん、ってビックリ。詳細は異なるとは言え、こんな法律の大本がそんな昔に出来ていて、その後の企業側の再編Structureの進化やクロスボーダー取引のあり方の変遷と共に条文およびその傘下の規則も進化してきたっていう沿革は米国税務の法体系の複雑さ、そして人によっては面白さ、に繋がる。当時のCodeに規定されるSection 112は原則、資産譲渡は課税取引ってした上で現在のCodeのSub Cで規定される非課税措置、Section 351や組織再編のSection 368を例外として規定しているパワフルなSection。でSection 367の前身部分はその更に例外、ってことでオリジナルバージョンで既に「外国法人は法人とは取り扱わない」っていうアプローチを確立している。Section 1001とSub Cを一つのSectionでバッサリ片づけるって今の複雑なCodeを知ってたら考えられる?しかも当時はカナダをタックスヘイブンみたいに利用していたとのこと。

Section 112(k)によるアウトバウンド資産移管に対する網掛けって観点から「1932年」ってタイミングを考える際、これが「1962年以前」(当たり前だけど)っていう文脈はよ~く認識しておく必要がある。

1962年がどうした、って?もちろんThe Beatlesがデビューシングル「Love Me Do」を当時のEMI Studio、今のAbbey Road Studioでレコーディングした年だ。もともと1962年の新年早々にDeccaっていうレーベルのオーディションがあって、なんとそれには落ちてるんだよね(笑)。先見の明がなかったとしか言いようがない。で、そのオーディションのテープ(正確にはReelのテープを基に作成したマスターレコードでバイナルよりも固いアセテート版のレコード)を持ってマネージャーのBrian Epsteinが根気よくあちこちに売り込み行った際にEMI傘下のParlophoneレーベルのGeorge Martinの目に留まり、EMI Studioでオーディションに漕ぎつけたってことらしい。George Martinは歌唱力には評価を示したらしいけど、当時ドラマーだったPete Bestの力量に不満足で、直後にドラマーはRingo Starrに変わっている。その頃に既にAsk Me WhyとかPlease Please Meとかレパートリーにあったっていうから曲つくりの才能も相当早くから開花してたんだね。Please Please Meに至っては録音が終わった瞬間にGeorge Martinが「たった今、君達にとって初のチャート1位になる曲のレコーディングが終了した」とメンバーに宣言したのは有名な話し。それくらいの自信作だ。今聞いても格好いいもんね。G、A、Bって上がってくBreakみたいなリフとか。B面のAsk Me Whyもいいよね。ちなみにLove Me DoのレコーディングはPete Bestに変わって登場したRingo StarrにもGeorge Martinは満足できなかったようでセッションドラマーのAndy Whiteがピンチヒッター的にドラムを叩いてるTakeもあるということ。Ringo Starrはタンバリンとマラカス(苦笑)を渡されたって話し。George Martinってドラマーにうるさかったのかもね。それはそうだよね。バンドの屋台骨みたいな存在だからね。Pete Bestの脱退劇の直後だけにタンバリンとマラカス渡されたらRingo Starrも落ち着かなかっただろうね。ただ、結局その直後からRingo Starrのドラムは安定感があるということでGeorge Martinの評価も高くなっていったそうだ。よかったね。Ringo StarrのドラムってBeat感っていうかドライブ感があって格好いいよね。そんな出だしでレコードデビューし、その後は未だに匹敵するバンドはいない存在になるんだね。So the story goes…。

Love Me DoはどのTakeが最初にシングルカットされて、とかその後のEPのバージョンは別のTakeだとか、その後もBootlegとか出回ってて結局どのバージョンがRingo Starrのドラムなのか超分かり難いんだけど、UKバージョンのLove Me Doのシングル(B面がP.S. I Love You(日本のPink Sapphireじゃないからね。彼女たちのP.S. I Love Youも恰好よかったけどね))はRingo Starrだっていう話しがあったんで、小学生の頃、父がロンドン出張に行くっていうんでシングルをお土産に買ってきて欲しいってお願いして入手した。今から思えば父はThe Beatlesとか全然興味なかったんで、わざわざロンドンでレコード屋さん探して(Google Mapとかもちろんないからね)良く買ってきてくれたものだ、と今になって感謝。で、手渡されてビックリだったのは、シングルって日本だったら写真付きのジャケットモドキの表紙があってそれらしくできてたんだけど、UKのやつって黒い硬いドーナツ穴のレコードがただ白い紙のスリーブに入ってるだけなんだよね。「ワ~、本場は違う」って大感激だった。ああいうドキドキ感って、携帯があれば何でもかんでも全てのOuttakeとか動画が瞬時にどこからでも聴いたり見たりできる今の時代には逆に存在しないよね。感動が少ないっていうか。そんな風に思うこと自体Old-Fashionなんだろうけど、AIとかDeep Fakeで一体全体何が本当なのか全く分からない世界にまっしぐらの人類はこれからどうなってしまうのでしょうか。

で、結構派手に脱線したけど、1962年はケネディ政権下、CFC課税制度、すなわちSub Fが導入された年。そしてSection 367とは親戚関係にあると言えるSection 1248もCFC課税を完結させるために1962年に同時規定されている。Sub Fは世界のCFC課税やタックスヘイブン税制のお手本だけど、これ自体60年前、Anti-Deferralは100年近くだから新参の他国や国際機関とかとは年季が違うよね。まあ長くやってればいいとは限んないけど、今や議会よりも国際機関が世界の議会みたいな存在だもんね。誰が選挙で選んだんでしょうね~。え、誰も選んでないって?欧州とか見てると外交能力には一日の長があって「さすが」って感じ。余り神髄に触れない方がいいね。「これカットして下さい」(苦笑)って感じのコメントかもね。

で、CFC課税っていう概念がない時代、外国法人は原則米国課税対象じゃないんで、含み益を持つ資産、当時はHTVのIPとかじゃなくて主に投資資産、を外国法人に非課税規定を利用して移管されてしまうと所得が米国に還流されるまで課税できなかった。それで登場するのが後のSection 367(a)を含むSection 112(k)だ。元祖Anti-Deferralだよね。1962年のSub F導入後、外国法人に投資資産を移管した後の収益に一定の網を掛けることはできるようになったと言えるけど、その後、Section 367は衰えるどころか様々な異なるポリシーを取り締まる膨大かつ複雑極まりない法体系として大成長していく。1986年のPFIC導入後も同じ。

長らく米国クロスボーダー課税に関与しているPractitionerは覚えてると思うけど、実はひと昔前まで、Section 367とパラレルでアウトバウンド現物出資時に含み益に課税するっていう条文がもうひとつ存在した。1997年に撤廃されたSection 1491~1494だ。これはExciseタックス、すなわち懲罰税で法人税じゃなかったけど、パートナーシップや信託に対する拠出もカバーしててより広義なもので趣旨はSection 367(a)に酷似。Section 1491~1494の撤廃は、法人に関してはSection 367(a)で引き続き課税取引なんで、むしろパートナーシップへの出資にかかわる制限緩和の側面が強いな~、っていうのが撤廃された当時の個人的な印象だった。その点は議会も十分に認識していてSection 1471~1474撤廃と同時にパートナーシップへの非課税出資を活用(濫用?)したIP等の国外逃避プラニングに網を掛けるためSection 721に(c)を新設して財務省に濫用防止規則策定権を与えている。その後、しばらく音沙汰がなかったんだけど、時間を空けて2020年に規則が最終化されてる。最初に出された規則案に比べて適用対象が狭義になったりしててウェルカムだったけど罠みたいな規定なんで今でも要注意。Section 704(c)のRemedial Method of Allocationが重要な役割を果たすんで、クロスボーダー専門のPractitionerも当規則を機にSection 704(c)を復習した方が多いのではないでしょうか。

上述の通り、Section 367(a)は資産移管がsection 332, 351, 354, 355, 356, 361にて外国法人に移管される場合、その外国法人は米国税務目的で「法人」とは取り扱わない、っていうアプローチだけど、Sub Cの中にも当事者がCorporationかどうかは関係なく適用がある規則もある。そんなケースではSection 367(a)によるオーバーライドは原則ない。インバージョン対抗規則でIndirect stock transferになってとか狭義の例外は除いて。例えば、A型やD型再編の合併で存続法人の株式を受け取るターゲット法人の旧株主はSub CのSection 354で含み損益に課税はないけど、その適用に株主がCorporationじゃないとダメ、っていう要件はないんでSection 367(a)で急に課税になったりしない。それはそうだよね。株主は個人のケースも多いから。株主側の取り扱いはSection 354だけど、一方で合併当事者2社はCorporationでないと適格非課税再編にはならない。例えばForward Mergerで消滅法人が米国法人で存続法人が外国法人のケースがあるとすると、本来なら資産移管は非課税となるところを(a)がオーバーライドして譲渡人に当たる米国法人にSection 361(a)の適用が原則認められない、なので譲渡益には課税ってことになる。

ちなみに(a)がオーバーライドするのはあくまでもSub Cの世界で規定される非課税取引だけ(Section 1032は微妙だけどね)。全く別のCreatureと言えるSub Kのパススルー課税とかその他の規定には適用されない。もちろんSub K自体にもAnti-Abuseを含む恩典制限規則があるんで、Sub Kを活用するから常に非課税ってわけじゃないけど、少なくともSection 367(a)による制限はない。この点を利用して、バーガーキングとTim Hortonsの合併・一種のInversion取引でバーガーキングの米国人株主でファンドの3G Capitalがカナダに新設されたHold Co(米国税務上Corporation)の株式を受け取る代わりにをHold Co傘下のパートナーシップ持分を受け取ることで(a)を不適用にした取引は有名。バーガーキング取引は前回のポスティングで触れたUP-Cのストラクチャーでもあり、しかもパートナーシップ持分はUP-CのUpper-Tierの上場法人の株式とExchangeして換金できるばかりでなく、パートナーシップ持分自体も上場されていたというSuper-Interestingがストラクチャーだった。投資の神様Warren BuffetがHigh-YieldのPreferred Stockを$3B引き受けて取引に参加してて役者が揃っている取引だったね。さすがBerkshire!って感じの関わり方だ。Tim Hortonsってコービー屋さんでアメリカじゃあんまり見ないけど、地下鉄EからAir Train使ってJFK行く時はSutphin BlvdのAir Train乗り換え上りエスカレーターの手前に大きなお店があるよね。あそこ通るたびにSection 367(a)とかInversionを思い出す。読者の皆さんもMidtown Tunnelの渋滞を避けて安全策でAir Train使う時の乗り換えでSutphin Blvd駅を通過する際は必ずSection 367(a)を連想しながらエスカレーターに乗るように。

この例からも垣間見ることができるように、Section 367(a)はOutboundに対する一般的な禁止に加え、インバージョン対抗策の側面も兼ねている。っていうか1932年にはそんな立法趣旨はなかっただろうけど、Section 367のEver Changing Mood(いい曲!特にスローなピアノバージョンの方がお勧めです)的な拡大路線の一環で90年代前半から兼ねるように進化したって言う方が正確。インバージョン対抗規則と言えば2004年以降はSection 7874の方が主役だけど、それ以前の1996年には90年代前半のインバージョン、特にHelen of Troy取引に危機を感じた財務省がSection 367(a)の規則策定権に基づきSection 1.367-3で、一定要件下でSub Cの非課税措置を利用して実行されるインバージョン取引に関して米国人株主に課税すると規定している。この規則はその由来から今でも「the Helen of Troy regulations」として知られている。ただ、the Helen of Troy regulationsだけではインバージョンをスローダウンできなかったんだけど、その辺りは2016年になんと23回に亘るインバージョンシリーズのポスティング「Inversion/インバージョン(プラスSpin-Off)」で触れてるんで懐かく読んでみて欲しい。

で、Section 367はKiller Bポスティングの主人公格となる(b)以降続いていくけど、久しぶりの脱線も含めて長くなってきたんでここからは次回。

Sunday, November 5, 2023

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (1)

しばらくFIRPTA課税系の話しだったけど、今回からはSub C/クロスボーダー課税ののKiller B。Sub C系のポスティングは久しぶりなんで皆さんもかなりExcitedなのでは?Sub Cって何って?ウ~ン、それはそうだよね。世の中の大半の皆さんはInternal Revenue Code読んで暮らしてる訳じゃないもんね。連邦の税法(Title 26)のSubtitle A、Chapter 1のSubchapter Cで「Corporate Distributions and Adjustments」という部分のことで、分配ばかりでなく組織再編、清算、出資、スピンオフ等のCorporate Taxを取り巻く法律。Corporate Taxっていうと「じゃあ、法人申告書のForm 1120作成するためには知っとかないとね!」って思う読者が居るかもしれないけど、実はそうではない。1120は多くの部分で個人所得税同様、何がGross Incomeで何がDeductionで、とかいつ支出を資産計上して、とかSub C以外の管轄の部分が多い。Sub CはCorporate間、Corporateと株主間の取引を管轄しているものだ。何はともあれ久しぶりにAll-InでSub Cなんで少なくとも僕にとってはExcitingなトピックだ。

話は迎えに行く、っていうか噂をすれば影がさす、じゃないけどFIRPTA系のポスティングのエピソード8で、Killer Bの規則ず~っと待ってるけど出てきたら面白いのにね~、って言った矢先にナント本当に規則案が公表されたんでビックリ。財務省はCAMTとかStock Repurchaseの規則策定で大忙しのはずなんでまさかと思っていただけに喜びもひとしおだ。

Killer Bってミツバチ?

一般読者はKiller Bって何って思うだろうけど、前々回もチラッと触れた通り、米国企業によるRepatプラニング。大雑把に言うとTriangular Reorganizationを利用して外国法人の留保所得を原資に米国親会社の株式を取得し、実質非課税で留保所得を米国に還流するストラクチャー。Killer BのBはBeeじゃないけど、もちろんKiller Beeにちなんだ名称。Killer Beeと言えば泣く子も黙る凶暴なミツバチだ。で、なんでBかって言うとB型再編が絡んでるから。B型って言うと血液型みたいだけど、もちろんそうじゃなくてSection 368(a)に規定されるTax-Free Reorganizationのことで A、B、だけでなくC以降Gまで7タイプある。代わりにAB型とかO型はないけどね。そのうちの(B)Reorganization、所謂「ビー・リオーグ」にちなんだ俗称だ。

Killer Bと対抗策

タックスプランニングと財務省規則の関係は、余り正しい表現じゃないかもしれないけど、多くのケースで「モグラ叩き」みたいなことが多い。規則が特定のストラクチャーに網を掛けようとするタイプの規定になればなるほどこの傾向は顕著。反対にどちらかっていうとPrincipleベースの規則の場合はモグラたたき的な問題は少ないけど、どうしても規則の適用範囲がよく分からなくなるんで課税関係の予見可能性が低下する。この問題を解消するため、米国のPrincipleベースの規則には多くの「Example」が記載され、実質それらがホワイトリストっていうかエンジェルリストみたいに受け止められ、Safe Harborみたいな機能を果たすようになる。例えば連結納税規則のInter-Company Transactionを規定している「-13」(ダッシュ・サーティン)はどんな取引にも適用可能なようにPrincipleベースの規則だけど(で、かつ天才的に良くできてる規則)、多くのExampleが記載されてるんで具体的な規則適用にかかわる理解を深めることができる。それでも2017年のTCJAでクロスボーダー課税に地殻変動が起きてからは、例えば連結納税子会社間Cross-ChainのCFC株式譲渡、その後一回CFCから配当があって、その後株式の価値が下落して第三者に譲渡、みたいな事実関係としてはシンプルな取引でも、どこでsection 1248の金額が決まりPTEPがどうなって、とか従来のPrincipleでは説明が難しくなることがある。

また規則内のExampleは、その前提条件が非現実的にシンプルかつタイトに設定されてるんで(英語で言うところの「Stylized」されてるんで)、例えば株主は一人で100%所有でひとつのクラスの株式しかなく云々とか、法人内の資産は一つとか、Exampleを見て取引をストラクチャーする際にはExampleの設定と現実の事実関係の差異がExampleの結果に影響を与えないかどうかを慎重に見極める必要がある。

で、Killer Bに対する規則は特定の取引に網を掛けるタイプだから上述の「モグラ叩き」的に規則で取り締まろうとすると形を変えた類似取引が再登場したりしてた。新種の凶暴なミツバチに襲われたら結構怖いね。元々2011年に最終化されたsection 367(b)の財務省規則に、外国法人がTriangular Reorganizationの一環で米国親会社の株式を取得する取引にかかわる取り扱いが規定された。で、この規則を適用してるんだけど、IRSの目から見ると規則を「悪用」して外国法人の資産を非課税で米国親会社に移管している、って受け止められる取引が散見され始めたんで、IRSは2014年に最初のKiller B Noticeを公表し、そのような特定の取引に対抗するために新規則を策定する旨を明らかにしている。2016年にはさらに別のNoticeで、2014年のNotice内容を反映して手を変え品を変え、みたいに登場してきた新種の同様取引にも網を掛けるって公表している。そしてようやく2014年のNoticeから10年近い年月を経て今回財務省規則案の公表に漕ぎつけたって訳だ。

もともとKiller Bっていう取引がUSタックス業界で知られるようになった頃から個人的にそのテクニカル面に魅了されていたんで、2014年や2016年のNoticeは興味深く読んだ。2016年と言えばファイザーのインバージョンを阻止するために超スピードで規則が出たり、コンプライアンス負荷が高いDebtを利用したBase Erosion対抗規則の1.385-3のファンディング規定が出たり、あの頃の勢いだと直ぐにでも規則案が公表されるかと思いきや、結局結構な時間を要したよね。その間に2017年税制改正があったんで、国外からのRepatにかかわる税制が大きく変わった点も影響しているのかもね。

Killer Bを語るには、まずsection 367(b)の話しをさざるを得ない。でさらに言えばSection 367(b)の話しをするには、Section 367全体のフレームワークをザックリとでも語る必要がある。これ結構込み入る予感なんでここからは次回。