前回のポスティングではOECDピラー1・ブループリント・ドラフトの話しに一区切り付いたので、次のテーマはGILTIの高税率控除かな、ってところで終わっていた。ところが、その後も財務省のTCJA規則攻撃が絶え間なく続き、Section 163(j)の最終規則にかかわる早期適用ルールの明確化、そしてさらに2019年にBEAT規則が最終化された際に同時公表されていた規則案が最終化された。
Section 163(j)の最終規則早期適用の文言アップデートは、もともと7月に公表された際に規則の文言が分かり難くて、2021年以前の課税年度に認められる早期適用を選択する際、2018年以降全ての課税年度に早期適用が強制されるのか、単年毎に選択ができるのか、若干クリアでなかった点の確認。全課税年度に強制適用だとすると、2020年に最終規則の早期適用を選択する場合、2018年の申告書を修正申告しないといけいないの?っていうような訳の分からない話しになっていて物議を醸していたんだけど、結局、そんな必要はなく、各課税年度毎に早期適用できるっていう普通というか、めでたい結果となった。2021年からは強制適用だけど、これらは財務省規則の規定適用タイミングの話しで、言うまでもないけどsection 163(j)の法律そのものは2018年から適用で、その点は変わらない。
次にBEAT最終規則。BEATにかかわる財務省規則の沿革はチョッと込み入ってるんでここで簡単におさらいしておく。まず、2018年12月13日に規則案が公表され、これをたたき台に2019年12月6日に最終規則が公表されている。双方の内容は各々「BEAT財務省規則案」「BEAT財務省最終規則」シリーズで触れているので、詳細はそちらを参照して欲しい。
で、BEAT計算法とか大概の部分は2019年12月の最終規則でカバーされてるんだけど、実は最終規則と同時に新たな規則案が公表されていた。この2019年規則案は、もともと2018年12月の規則案では触れられていなかった新たな検討事項を新規提案する形で構成され、納税者からコメントを募ったりしてたんだけど、この度、この2019年規則案が最終化されている。2019年最終規則と区別するために、今回最終化された規則は2020年最終規則って呼ぶことにする。日本企業的に、BEATは気になるところだろうから、GILTI高税率除外規定の前にチラッと触れておく。
BEATの仕組みは今更繰り返すまでもないけど、米国外関連者への支払い(Base Erosion Payment)に基づく費用控除(Base Erosion Benefit)を否認して再計算する修正課税所得に10%(2026年からは12.5%)という、通常の法人税率21%より低い税率をかけて、そちらが高ければ超過額をBEATミニマム税として支払うというもの。AMTに似てるけど、BEATミニマム税は一旦支払うと将来にクレジットがあったり、還付されたりしない払いきりとなる点AMTとは異なるので要注意だ。
2020年最終規則は大別して、グループ合算計算、損金算入自己否認、パートナーシップを介したBase Erosion Paymentの考え方の確認、法人組織再編や適格出資等を通じて外国関連者から受け取る資産の償却費用をBase Erosion Benefitから除外する規定を利用して直前に対象資産の税務簿価をステップアップさせたりする乱用防止規定、で構成されている。損金算入自己否認に関しては、2019年に規則案として提案された際に「BEAT財務省2019年「新」規則案(損金算入自己否認)」で2回にわたり特集しているので、そちらをみて欲しい。損金算入自己否認は面白いコンセプトだけど大概において規則案から変更はないので、次回、グループ合算計算に関する規定にチラッと触れて、GILTIにMove onしたい。