5月12日月曜日の夜にWays and Means Committeeが公表した下院税制改正法案389ページは13日午後から14日の朝まで徹夜のMark-upを経て最終化された。1~2週間前の状態に比べると電光石火みたいな進展。後述のSALT関係の確執がなんとかなればNext StepはEnergy and Commerce、Agricultureその他のCommitteeによるMark-upを含む「Mega-Bill」法案が19日にはRules Committeeに回り、直後に下院全体によるフロア採決になる。うまく行けばMike Johnsonが言っていた通りメモリアルデー(5月29日)までに下院可決で後は上院っていうタイムラインが実現することになる。
Mark-upでそれなりの修正があるんではって言われてたけど結果はNo Change。すなわち12日の389ページがそのままWays and Means Committeeによる最終Mark-upバージョンになった。カリフォルニアみたいなNYCで「どうせ修正あるしね」って思って軽く読んでたけどそのまま最終化してしまったんでもっと細かく読まないとね。ちょうど本当に西海岸に寄ってるんでNYCの気候は気にせずに数日フォーカスします。
下院全体採決とハードル
ここに来て下院共和党内で最後の争点になってるのがSALT Cap。以前もチラッと触れたけど、州個人所得税を連邦所得税を計算する際にどれだけ損金算入できるかっていう争点。カリフォルニアとかニューヨークとか規律に欠ける歳出を繰り返す州は当然税金が高いけど、それを連邦所得税で費用化するっていうことは全米の市民が高税率州の税金の2~3割を間接負担していることになる。所得税ゼロで州財政をManageしてるフロリダやテキサス州を含む9州の市民からしてみると無駄使いやBureaucracyの激しい高税率州のコストを強制的に間接負担させられるのは釈然としない。一方で高税率州の有権者に支えられるカリフォルニアやニューヨーク州の共和党議員は地元で突き上げられてるから最大限の費用化を主張する。いつも触れてる通り下院は2年毎の選挙で全議席改訂なんで接戦Districtの議員は必死だ。
TCJAでは州個人所得税(正確には州および市や学校区等の所得税、所得税がない管轄区の州民は代わりに州および郡等のSales Tax、プラス不動産税や資産の価値に基づく動産税を含む)の個別控除を$10,000(MFS申告の場合は$5,000)に制限した。これを昔みたいに制限なしにして欲しいっていうのが高税率州議員たち、いわゆるSALT Caucus(SALT派?)の希望。無制限化は歳入インパクトが大き過ぎるし他州の議員の意見もあるし、下院最終法案では妥協案として2026年からSALT Capを$30,000(MFS申告の場合は$15,000)に恒久引き上げ。ただMAGI(MAGAじゃないからね!)って言われる修正AGI(課税所得総額から特定のAbove-the-line控除を差し引いた額)が$400,000(MFS申告の場合は$200,000)を超過する場合、超過額の20%に関して恩典がフェーズアウト。
下院最終法案のこの引き上げや所得ベースのフェーズアウトはSALT派からすると「侮辱」テリトリーって言われているんでSALT派と下院リーダーシップは引き続き秘密会(Closed door meeting)や15日に予定されてる下院共和党カンファレンスで駆け引きを続ける予定。したがって法案は最終化されたとは言え、SALT部分はまだセンシティブな状態。下院法案のコストは10年のBudget Windowで$3.7~3.8Tって言われてて(逆にあれだけ全て盛り込んで$4T行ってないのが意外?)、Ways and Means以外のCommitteeによる歳出減はMedicaidで躓いてるんで$2T行かないだろうから、Ways and Meansに許容されるコストは$4TでCapされる。となると他の歳入減を見つけない限りSALT Capのこれ以上の緩和の枠はそんなに大きく残ってないよね。
小さな政府が党是の共和党で、しかもこれだけの内容を盛り込んだMega-Billの最後の争点がSALTっていうのもなんだかな~って感じはあるんだけどね。District単位の利益の問題だからしょうがないね。
上院の反応は?
SALT派と和解できて下院を通過した後は上院。既にDeficit HawkのRon Johnson(R-Wis)は歳出減が手ぬるいみたいなコメントを出してるし、逆にいつものスタンス的には意外なJosh Hawley(R-Mo)はMedicaidの就労義務に懸念を持ってたりするんで上院は上院でひと悶着あるだろう。いずれにしても上院は他にも結構な修正を入れるだろうから、修正版が上院で賛同を得られたとしても今度は修正後バージョンが下院の各派に受け入れられ、両院一致の法律にできるかどうかが争点になる。
Section 899
正式に下院法案の一部を構成することになったSection 899。昨日触れた通りUTPR対抗Estes法案のSuper-BEATも含まれる総合的な対抗条文になってる。下院法案で最終化されている899に関しては以前からの899ポスティングのラップアップも兼ねて次のポスティングで。その後は法人関係で関心が高いであろう即時償却や米国内R&D支出等に関して。